説明

エンジンの制御装置

【課題】この発明は、スロットル開度の制御と外部補機とエンジン付随補機とを含めた統合的なエンジン出力制御に関し、エンジンの出力感を維持して走行フィーリングを確保し、過渡状態における燃費性能の向上と排気ガス浄化性能の向上を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、エンジンの制御装置において、制御手段は、予め外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の駆動/停止状態の切り替えタイミングに順位を設定するとともに、これらの状態変化に合わせて電子スロットルバルブのスロットル開度を変更制御する機能を有し、加速時には、所定のスロットル開度に向けて前記電子スロットルバルブのスロットル開度を漸増させるとともに、所定スロットル開度に達した際に切り替えタイミングの順位に従い外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の駆動/停止状態の切り替え変更を順次行うように制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエンジンの制御装置に係り、特に、エンジンに駆動される複数の外部補機、および、複数のエンジン付随補機を備え、有段変速機を併設したエンジンの出力を制御するエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンのトルクは、主にアクセルペダルに連動したスロットルバルブによって制御される。また、エンジンの制御装置においては、燃費向上を目的に、低アクセル開度(低スロットル開度)領域では、例えば排気ガス還流装置(EGR)や可変バルブタイミング機構(VVT)等の各種補機を燃費優先設定にすることが行われ、高アクセル開度(高スロットル開度)領域では、トルク優先の目的から排気ガス還流装置の停止や可変バルブタイミング機構をトルク優先設定にすることが行われているとともに、エアコン(空調装置)のコンプレッサやオルタネータ(発電機)の一時停止によるトルク増大を図っている。
このため、エンジンのトルクは、アクセル開度(スロットル開度)をゆっくり滑らかに増加させても、排気ガス還流装置・可変バルブタイミング機構・エアコンのコンプレッサ・オルタネータ等の駆動/停止(ON/OFF)や設定変化により、階段状に増加したり、あるいは減少したりすることがある。
また、自動式の有段変速機を装備した車両では、一般にアクセル開度と車速により有段変速機のギヤ段及びロックアップ状態を切り替え、エンジントルクの増幅率を制御しているため、駆動輪トルクはスロットル開度に対し階段状に変化する問題がある。
【0003】
そのため、従来のエンジンの制御装置には、ある負荷を作動する際に、この負荷が作動したときの駆動力の変化を打ち消すような駆動形態を示す他の負荷を選択し、作動する負荷とこの作動する負荷の駆動力を打ち消す他の負荷とをエンジン出力に回転変動が生じないように制御するものがある。
【特許文献1】特許第2989327号公報
【0004】
また、従来のエンジンの制御装置には、スロットルバルブを回動するアクセルペダルの踏み込み速度によりスロットルバルブの開度速度変化を検出し、車両の加速時に、エンジン冷却ファン、エアコン用コンプレッサを一時的に停止させるものがある。
【特許文献2】実開昭60−82542号公報
【0005】
従来のエンジンの制御装置には、車両の加速時にエアコンの作動を停止させ、その後、エアコンを作動状態に復帰させるタイミングを、自動変速機の変速時のトルクダウンに同期させることで、エアコンを作動状態に復帰させる際のショックを低減するものがある。
【特許文献3】特開平5−104943号公報
【0006】
従来のエンジンの制御装置には、エンジンで駆動される発電機を備え、エンジンの加速過程の間は発電機の駆動を停止させることで、エンジンの全出力を加速に利用するものがある。
【特許文献4】特開昭55−71101号公報
【0007】
従来のエンジンの制御装置には、ブレーキが緩め動作されて加速移行状態に入った場合に、EGRを停止させて加速性能の向上を図ったものがある。
【特許文献5】特開2005−90273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、有段変速機を併設したエンジンを搭載した車両においては、エンジンと有段変速機との制御から、駆動輪トルクがアクセル開度(スロットル開度)に対し階段状に変化したり、状況により様々に変化したりし、運転者の意思と乖離することがある。このため、運転者はアクセル開度の修正やギヤ段の手動選択を行う必要がある。具体例としては、登坂路でのギヤ変速のハンチングが上げられる。
すなわち、登坂路を走行中に、人為的にアクセルペダルを緩めるように戻すと、変速制御に依りギヤ段を自動的にシフトアップすることがある。そのとき、勾配や人為操作を含む各条件のバランスから、駆動トルクが下がり過ぎることがある。その場合、車両が失速し、それに対応して人為的にアクセルペダルを再踏み込みすることにより、変速制御に依り自動的にキックダウンする。そして、勾配や人為操作を含む各条件のバランスから駆動トルクが上がり過ぎることになり、またアクセルを戻す。このようにして運転者の意思と乖離し、ハンチングが起きてしまう。このハンチングを防ぐために、特定のギヤ段を一時的に保持する制御を行う技術があるが、僅かな負荷の変更で済む状態にも一律にその制御を適用すると、燃費を損ねる場合があるという不都合がある。
また、一般には、排気ガス還流装置・可変バルブタイミング機構・エアコンのコンプレッサ・オルタネータ・空燃比等のエンジン制御と、自動式の有段変速機のギヤ段・ロックアップ状態とは、無関係に制御されており、要求駆動輪トルクに対し燃費・運転性上最良な設定を選択しているとはいえない問題がある。
そして、上記文献の各技術のほとんどが単独の個別制御となっている。負荷を打消すようにすることは、補機類の絶対数が少ない小型の車両等には不向きである。変速に同期させることは、燃費の向上には繋がらないものとなっている。
【0009】
この発明は、車両の走行中で、スロットル開度の制御と、過渡状態ないし定常状態における外部補機とエンジン付随補機とを含めた統合的なエンジン出力制御に関し、そのような過渡状態ないし定常状態での負荷制御に関して制御を最適化することと、スロットル制御を協調することにより、ドライバの要求する駆動輪トルクを、常時、正しく実現することと、総合的なパワートレインシステムとして、トルク全域について燃費性能を最良とすることを主たる目的とする。
その際、エンジンの出力感を維持して走行フィーリングを確保するように図るとともに、とりわけ、過渡状態における燃費性能の向上と排出する排気ガスの低減を実現すること、それらのバランスをとって両立を図ることを目的とする。
また、この発明は、過渡状態の中でも特に、エンジンの低負荷から高負荷への変化、すなわち、低スロットル開度から高スロットル開度への変化、あるいは、低加速要求から高加速要求への変化において、要求されるトルクが時間をかけてゆっくり変化する際に、滑らかにトルクが追従し、ステップ状やパルス的な変化をなくす、若しくはできるだけ低減するように、最適化した制御を実現すること、高負荷から低負荷への変化においても同様な最適化した制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、車両のエンジンに有段変速機を併設し、前記エンジンに駆動される外部補機と、アクセルペダルの人為的操作を反映して又は前記アクセルペダルの人為的操作とは独立して動作可能な電子スロットルバルブを含み前記エンジンの出力トルクを変更し得るエンジン付随補機と、前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機を制御する制御手段と、を設けたエンジンの制御装置において、前記制御手段は、予め前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の駆動/停止状態の切り替えタイミングに順位を設定するとともに、これら外部補機、エンジン付随補機、有段変速機のいずれかの状態変化に合わせて前記電子スロットルバルブのスロットル開度を変更制御する機能を有し、加速時には、所定のスロットル開度に向けて前記電子スロットルバルブのスロットル開度を漸増させるとともに、所定スロットル開度に達した際に前記切り替えタイミングの順位に従い前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の駆動/停止状態の切り替え変更を順次行うように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明のエンジンの制御装置は、アクセルペダルの人為的操作(アクセル開度に基づくトルク要求)に対して、車速との関係により設定される駆動輪トルクをステップ的に変化させることがなくなり、スロットル開度と補機類の駆動状態とを、燃費、騒音、排気ガスの排出についてバランスのとれた最適な状態とすることができる。
それにより、例えば、低負荷から高負荷に変化する際のトルク変化を緩やかにして、滑らかな加速フィーリングを得たり、逆に、高負荷から低負荷に変化する際のトルク変化を緩やかにして、シフトハンチングを防止したり、あるいは、定常走行において、従来よりも1段高いギヤ段を使用したり、ロックアップしたりすることで燃費を向上できる。
また、この発明のエンジンの制御装置は、その限られた条件の中で、スロットル開度を比較的小さく保ったまま、相対的なトルクアップを図ることができ、過大なアクセル操作を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明は、エンジンに駆動される複数の外部補機、および、エンジンに設けられた複数のエンジン付随補機を備えるエンジンの出力を制御するエンジンの制御装置、特に、車両の走行中で、スロットル開度の制御と、過渡状態における外部補機とエンジン付随補機とを含めた統合的なエンジン出力制御に関し、加減速から定速走行まで含めた常時、エンジンの燃焼制御と外部負荷制御および変速制御の統合制御に関するものである。ここでは、その過渡状態の中でも、定常走行状態から緩く加速する時(トルクアップ時、パワーオン時)であり、緩加速が継続した後期に自動式の有段変速機の変速制御でシフトダウンが行われるまでの状態におけるエンジンの燃焼制御と外部負荷制御および変速制御の統合制御に関して説明する。
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0013】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。図1はエンジンの制御装置のフローチャート、図2はエンジンの制御装置のタイムチャート、図3はエンジンの制御装置のブロック図である。図3において、1は車両に搭載されたエンジン、2は有段変速機である。
車両のエンジン1は、アクセルペダルの人為的操作を反映して又は前記アクセルペダルの人為的操作とは独立して動作可能な電子スロットルバルブ3を設け、燃料を噴射するインジェクタ4を設け、点火プラグに飛び火させる点火コイル5を設けている。
エンジン1には、このエンジンの出力トルクを変更し得るエンジン付随補機として、排気ガス還流装置(EGR)6を設け、可変バルブタイミング機構(VVT)7を設けている。排気ガス還流装置6は、エンジン1の吸気系に還流される排気ガス量を制御するEGRバルブ8を備えている。可変バルブタイミング機構7は、吸気バルブ・排気バルブの開閉時期を制御するタイミング制御バルブ9を備えている。また、エンジン1には、このエンジン1に駆動される外部補機として、エアコン(空調装置)10のコンプレッサ11を設け、オルタネータ(発電機)12を設けている。
前記有段変速機2は、エンジン1の出力トルクを変換して伝達するトルクコンバータ13と、トルクコンバータ13が伝達するトルクを変換して出力する複数のギヤ段からなるギヤ変速機構14とからなり、トルクコンバータ13のポンプ及びタービンを連結して滑り無くすをロックアップ機構15を備えている。有段変速機2は、変速機制御手段16によりギヤ変速機構14のギヤ段を切り換える(変速する)とともにトルクコンバータ13のロックアップ機構15を結合/解放する。
【0014】
前記エンジン1は、制御装置17の制御手段18により制御される。制御手段18には、前記電子スロットルバルブ3と、インジェクタ4と、点火コイル5とを接続し、エンジン付随補機である排気ガス還流装置6のEGRバルブ8と、可変バルブタイミング機構7のタイミング制御バルブ9とを接続し、エンジン1に駆動される外部補機であるエアコン10のコンプレッサ11と、オルタネータ12とを接続している。また、制御手段18には、前記有段変速機2の変速機制御手段16を接続している。
制御手段18には、エンジン1に吸入される空気量を検出するエアフローセンサ19と、エンジン1に吸入される空気の吸気温度を検出する吸気温センサ20と、エンジン1のクランク軸のクランク角を検出するクランク角センサ21と、エンジン1のカム軸のカム角を検出するカム角センサ22と、エンジン1のバッテリの充放電電流を検出するバッテリ電流センサ23と、エンジン1の吸気系に蒸発燃料を放出するエバポレータ温度を検出するエバポレータ温度センサ24と、車両の速度を検出する車速センサ25と、アクセルペダルのアクセル開度(踏み込み状態)を検出するアクセル開度センサ26と、ヘッドライト状態(点灯・消灯)を入力するヘッドライトスイッチ27と、エンジン1の水温(冷却水温度)を検出する水温センサ28と、大気圧を検出する大気圧センサ29と、エアコンのエアコン指示(エアコン操作状態)を入力するエアコンスイッチ30とを接続している。
制御手段18は、これらセンサ・スイッチ19〜30から信号を入力し、電子制御スロットルバルブ3に目標開度を出力してスロットル開度を制御するとともに実開度の情報を入力し、インジェクタ4に噴射指示を出力して噴射量を制御し、点火コイル5に点火指示を出力して点火時期を制御する。また、制御手段18は、これらセンサ・スイッチ19〜30から信号を入力し、外部補機であるコンプレッサ11にON/OFF指示を出力して駆動/停止状態を切り換え、オルタネータ12にON/OFF指示を出力して駆動/停止状態を切り換え、エンジン付随補機である排気ガス還流装置6のEGRバルブ8に目標開度を出力して排気ガス還流量を制御し、可変バルブタイミング機構7のタイミング制御バルブ9に目標進角量を出力してバルブタイミングを制御し、変速機制御手段16にギヤ段及びロックアップ指示を出力して有段変速機2のギヤ変速機構14のギヤ段及びロックアップ機構15の結合/解放を制御するとともに変速機制御手段16からギヤ段及びロックアップ状態、変速機油温などの情報を入力する。
【0015】
このエンジン1の制御装置17において、前記制御手段18は、予め前記外部補機であるコンプレッサ11、オルタネータ12の駆動/停止状態と、前記エンジン付随補機である排気ガス還流装置6、可変バルブタイミング機構7の駆動/停止状態と、前記有段変速機2のギヤ変速機構14の噛合状態及びロックアップ機構15の結合/解放状態との切り替えタイミングに順位を設定するとともに、これら外部補機、エンジン付随補機、有段変速機のいずれかの状態変化に合わせて電子スロットルバルブ3のスロットル開度を変更制御する機能を有している。
この制御手段18は、加速時には、所定のスロットル開度に向けて電子スロットルバルブ3のスロットル開度を漸増させるとともに、所定スロットル開度に達した際に予め設定した切り替えタイミングの順位に従い前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の駆動/停止状態の切り替え変更を順次行うように制御する。
前記制御手段18は、切り替えタイミングの順位を、外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の順に設定している。
前記エンジン付随補機は、排気ガス還流装置6と可変バルブタイミング機構7を含んでいる。前記制御手段18は、排気ガス還流装置6を可変バルブタイミング機構7より先に駆動/停止状態の切り替え変更するように制御する。
【0016】
次に、この実施例の作用を説明する。
エンジン1の制御装置17は、制御手段18にアクセル開度・車速により目標駆動輪トルクマップを設定し、この目標駆動輪トルクマップからアクセル開度・車速により求められた目標駆動輪トルクとなるように、また燃費・運転性が最良となるように、エンジン1の電子スロットルバルブ3のスロットル開度、排気ガス還流装置6、可変バルブタイミング機構7、エアコン10のコンプレッサ11、オルタネータ12、有段変速機2のギヤ変速機構14のギヤ段(噛合状態)・ロックアップ機構15のロックアップ状態(結合/解放状態)等の、トルクに影響するエンジン付随補機、外部補機、有段変速機2の駆動/停止状態を総合的に制御する。
具体的には、制御装置17は、初め、エンジン付随補機、外部補機、有段変速機2の全ての機器の設定を燃費優先(排気ガス還流装置6等のエンジン付随補機:燃費優先制御、有段変速機2のギヤ変速機構14のギヤ段:最高段、ロックアップ機構15:ON、エアコン10のコンプレッサ11等の外部補機:通常稼動)と仮定し、事前に設定された目標駆動輪トルクマップからその仮定した状態でスロットル開度が全開における目標駆動輪トルクを算出する。これは、一般に高スロットル開度域で燃費率が最良となるためである。
制御装置17は、初期の状態で駆動輪トルクが目標駆動輪トルクを下回る場合、燃費・運転性から設定された優先度に応じて、エンジン付随補機、外部補機、有段変速機2のいずれか一つをトルク優先(排気ガス還流装置6等のエンジン付随補機の停止、エアコン10のコンプレッサ11等の外部補機の停止、有段変速機2のギヤ段を1段下げる)と仮定し直し、再度その状態での最大駆動トルクと目標駆動輪トルクを比較する。この状態で、まだ目標駆動輪トルクを下回る場合は、エンジン付随補機、外部補機、有段変速機2のうちの別の一つをトルク優先に変更する。制御装置17は、この処理を目標駆動輪トルクを上回るまで繰り返す。実際の駆動輪トルクが目標駆動輪トルクを上回る場合は、目標駆動輪トルクと一致するようにスロットル開度を調節する。
【0017】
エンジン1の制御装置17は、図1に示すように、電子スロットルバルブ3、排気ガス還流装置6、可変バルブタイミング機構7、コンプレッサ11、オルタネータ12、ギヤ変速機構14、ロックアップ機構15の駆動/停止状態を設定するように制御する。
制御装置16は、制御がスタートすると(A01)、アクセル開度・車速から目標駆動輪トルクを算出し(A02)、有段変速機2のギヤ段を初めは最高段と仮定し、目標駆動輪トルク・車速から目標タービントルク・目標タービン回転数を算出し(A03)、ロックアップ機構15をON(結合:ロックアップ)できるギヤ段・目標タービントルク・目標タービン回転数であるかを判断する(A04)。
この判断(A04)がYESの場合は、ロックアップ機構15をON(結合:ロックアップ)し(A05)、エンジン回転数=目標タービン回転数とし(A06)、目標エンジンOUTトルク=目標タービントルクとする(A07)。この判断(A04)がNOの場合は、1段低いギヤ段でロックアップ機構14をON(結合:ロックアップ)できるかを判断する(A08)。
この判断(A08)がYESの場合は、有段変速機2のギヤ段を1段落とし(A09)、処理(A03)に戻る。この判断(A08)がNOの場合は、ロックアップ機構15をOFF(解放)し(A10)、トルクコンバータ13の特性からエンジン回転数を算出し(A11)、トルクコンバータ13の特性から目標エンジンOUTトルクを算出する(A12)。
前記(A06)、(A11)でエンジン回転数を求めた後に、現在のエンジン付随補機、外部補機、有段変速機2からなる機器の設定において、(A06)、(A11)のエンジン回転数からアクセル全開での最大エンジン発生トルクを算出する(A13)。なお、初期値は、全ての機器を燃費優先とする。
また、前記(A06)、(A11)でエンジン回転数を求めた後に、現在のエンジン付随補機、外部補機、有段変速機2からなる機器の仮定の設定において、補機トルクを算出する(A14)。なお、初期値は、全ての機器を通常稼働とする。
さらに、前記(A07)、(A12)で求めた目標エンジンOUTトルクに、前記(A14)で求めた補機トルクを加算して、目標エンジン発生トルクを算出する(A15)。
次に、前記(A13)で求めた最大エンジン発生トルクが、前記(A15)で求めた目標エンジン発生トルク以上であるかを判断する(A16)。
最大エンジン発生トルクが目標エンジン発生トルク以上で、判断(A16)がYESの場合は、その状態でエンジン付随補機等の機器の状態・エンジン付随補機等の機器の設定・有段変速機2のギヤ変速機構14のギヤ段及びロックアップ機構15の状態を確定し、目標エンジン発生トルク・目標エンジン回転数・エンジン付随補機等の機器の設定から目標スロットル開度を算出して確定し、有段変速機2のギヤ段及びロックアップ状態を確定し(A17)、制御をエンドにする(A18)。
最大エンジン発生トルクが目標エンジン発生トルク未満で、判断(A16)がNOの場合は、稼働中の補機があり、停止可能か判断する(A19)。この判断(A19)がYESの場合は、稼働中の補機の1つを停止し(A20)、前記(A14)に戻り、再度、補機トルクを算出する。この判断(A19)がNOの場合は、燃費優先からトルク優先に設定を変更可能なエンジン付随補機等の機器があるかを判断する(A21)。
この判断(A21)がYESの場合は、エンジン付随補機等の機器の1つをトルク優先設定に変更し(A22)、前記(A13)に戻り、再度、最大エンジン発生トルクを算出する。この判断(A21)がNOの場合は、ロックアップ機構14がON(結合:ロックアップ)しているかを判断する(A23)。
この判断(A23)がYESの場合は、前記1段低いギヤ段でロックアップ機構15をON(結合:ロックアップ)できるかの判断(A08)に移行する。この判断(A23)がNOの場合は、有段変速機2のギヤ段を1段落とす処理(A09)に移行する。したがって、判断(A23)がNOの場合は、ギヤ段を1段下げるか、ロックアップ機構14をOFF(解放)とし、再度処理(A03)から処理(A15)までのステップを実行してトルクを算出する。この処理は、判断(A16)が満足する(YES)まで繰り返す。
【0018】
図2は、車速一定でアクセルペダルをゆっくり踏み込んで(アクセル開度を増加)いった場合の、外部補機、エンジン付随補機、有段変速機2の駆動/停止状態を示している。
従来は、図2に破線で示すように、車速一定でアクセルペダルをゆっくり踏み込んでいった場合に、アクセル開度が増加するとともに電子スロットルバルブ3のスロットル開度が開くため、スロットル開度が大きくなるほどアクセル開度に対する空気量の増加率は少なくなり、スロットル開度が一定値k以上になって空気量が最大となった後は駆動輪トルクが増加しない(t1)。
その後、さらにアクセルペダルを踏み込むと、適当なアクセル開度で排気ガス還流装置(EGR)6をOFF(停止)し(t3)、可変バルブタイミング機構(VVT)7をトルク優先設定に切り替え(t4)、ロックアップ機構15をOFF(解放)し(t5)、さらにアクセルペダルを踏み込むと、ギヤ変速機構14のギヤ段を1段下げる(t7)。
駆動輪トルクは、アクセル開度に対して階段状に変化し(t3、t4、t5)、ギヤ段を1段下げる前(t7前)では不足し、ギヤ段を1段下げた後(t7後)では過大となる。また、エンジン発生トルクは、アクセル開度に対して排気ガス停止分・可変バルブタイミングトルク設定分だけ階段状に増大変化し(t3、t4)、ギヤ段を1段下げた後(t7後)で回転増加により増大なる。
従来は、破線に示すように駆動輪トルクが小さいので、実線と同一トルクにするために、その分早くアクセルペダルを踏み込んだ位置にする必要がある。なお、補機は、一般にアクセル全開付近以外は独立して制御している場合が多い。
【0019】
この発明のエンジン1の制御装置17は、図2に実線で示すように、車速一定でアクセルペダルをゆっくり踏み込んでいった場合に、アクセル開度が増加するとともに電子スロットルバルブ3のスロットル開度が開いて、スロットル開度が大きくなるほどアクセル開度に対する空気量の増加率は少なくなり、スロットル開度が一定値kに達して空気量が最大となり、駆動輪トルクが増加しなくなると(t1)、オルタネータ12をOFF(停止)し、停止したオルタネータトルクに相当する開度だけスロットル開度を一定値kから閉じる。エンジン発生トルクは、スロットル開度を閉じることでオルタネータトルク分だけ減少する。
時点(t1)からアクセルペダルを踏み込んで、一定値kからオルタネータトルクに相当する開度だけ閉じたスロットル開度を開き、スロットル開度が一定値kに達して空気量が最大となると(t2)、エアコン10のコンプレッサ11をOFF(停止)し、停止したコンプレッサトルクに相当する開度だけスロットル開度を一定値kから閉じる。エンジン発生トルクは、スロットル開度を閉じることでコンプレッサトルク分だけ減少する。
時点(t2)からアクセルペダルを踏み込んで、一定値kからコンプレッサトルクに相当する開度だけ閉じたスロットル開度を開き、スロットル開度が一定値kに達して空気量が最大となると(t3)、排気ガス還流装置6をOFF(停止)し、排気ガス停止による増大トルクに相当する開度だけスロットル開度を一定値kから閉じる。エンジン発生トルクは、排気ガス停止による増大トルクをスロットル開度を閉じることによる減少トルクで相殺され、減少することはない。
時点(t3)からアクセルペダルを踏み込んで、一定値kから排気ガス停止による増大トルクに相当する開度だけ閉じたスロットル開度を開き、スロットル開度が一定値kに達して空気量が最大となると(t4)、可変バルブタイミング機構7を燃費設定からトルク設定に切り替え、トルク設定への切り替えによる増大トルクに相当する開度だけスロットル開度を一定値kから閉じる。エンジン発生トルクは、トルク設定への切り替えによる増大トルクをスロットル開度を閉じることによる減少トルクで相殺され、減少することはない。
時点(t4)からアクセルペダルを踏み込んで、一定値kからトルク設定への切り替えによる増大トルクに相当する開度だけ閉じたスロットル開度を開き、スロットル開度が一定値kに達して空気量が最大となると(t6)、ギヤ変速機構14のギヤ段を1段下げる(シフトダウン)と同時に、オルタネータ12をON(駆動)し、エアコン10のコンプレッサ11をON(駆動)し、排気ガス還流装置6をON(駆動)し、可変バルブタイミング機構7をトルク設定から燃費設定に切り替え、ギヤ段の1段下げ・オルタネータ12等の機器のONによる増大トルクに相当する開度だけスロットル開度を一定値kから閉じる。エンジン発生トルクは、スロットル開度を閉じることで増大トルク分だけ減少する。
時点(t6)からさらにアクセルペダルを踏み込むと、一定値kからギヤ段の1段下げ・オルタネータ12等の機器のONによる増大トルクに相当する開度だけ閉じたスロットル開度を開いて、エンジン発生トルクが増大する。
なお、オルタネータ12等の補機の駆動を停止して一定値kから閉じるときのスロットル開度(スキップ量)は、停止したオルタネータ12等の補機の駆動に必要なトルクに応じた開度であり、この開度を予め設定しておくことで、補機を停止した際のスロットル開度の減少制御をフィードフォワード制御することができる。
エンジン1の制御装置17は、アクセル開度により設定された目標駆動輪トルクに合うように、前述の優先順位で外部補機のコンプレッサ11及びオルタネータ12・エンジン付随補機の排気ガス還流装置6及び可変バルブタイミング機構7・有段変速機2のギヤ段・電子スロットルバルブ3のスロットル開度が制御される。これにより、エンジン1の制御装置17は、アクセル開度にリニアな駆動輪トルクが実現される。また、エンジン1の制御装置17は、有段変速機2のシフトダウン頻度の低下により騒音と燃費が改善され、またシフトダウン後の燃費も改善される。
【0020】
このエンジン1の制御装置17は、エンジン1の出力トルクに影響を与える全ての要素に優先順位をつけて統合制御することにより、エンジン1・有段変速機2からなる動力装置全体を最適化(燃費低減、運転性向上)するものである。特に、多段式の有段変速機では、ギヤ段ごとの駆動力差が大きいため、その差を他のエンジン付随補機・外部補機の駆動/停止状態を切り替える制御で補うことにより、最適化のメリットがある。例えば、従来ならば有段変速機をシフトダウンしなければならない状態で、エンジン付随補機・外部補機の動作を停止するように制御することにより、駆動力差を補ってシフトダウンを回避することができる。なお、無段変速機では、変速比を必要なだけ変化させるだけで良く、エンジンと変速機のみで最適化できる。
最適化する方法としては、本来は、全領域の車速・目標駆動輪トルクにおける全てのエンジン付随補機・外部補機の動作の組み合わせにおける燃料消費率を事前に測定して最良の組み合わせを選び出し、それに沿って制御すべきである。この場合に、燃費効果と騒音(エンジン回転数)を考慮すると、
外部補機→エンジン付随補機→有段変速機2のギヤ変速機構14→有段変速機2のロックアップ機構15
の順に、燃費優先(補機は駆動)からトルク優先(補機は停止)に状態を切り替えて行くのが妥当である。つまり、トルク優先(補機は停止)にしても燃費の悪化しない外部補機を最優先とし、騒音(エンジン回転数)の悪化しないエンジン付随補機をその次の優先度、燃費悪化の大きいロックアップ機構を最後とする。ただし、外部補機やエンジン付随補機によって様々な制御上の制約があるため、自由に制御できない場合がある。
外部補機、エンジン付随補機、有段変速機2の各制御方法、効果、制御上の制約は、以下の通りである。
前記外部補機には、エアコン10のコンプレッサ11とオルタネータ12がある。これら外部補機の制御方法は、一時停止すれば、有段変速機2の高ギヤ段を使用できる又はロックアップできる場合以外は、通常作動とする。エアコン10のコンプレッサ11は、効果として一時停止によりトルクが向上し、制約条件としてエバポレータ温度等により停止時間が制限される問題がある。オルタネータ12は、効果として一時停止によりトルクが向上し、制約条件としてバッテリ放電により停止時間が制限される、ヘッドライト使用中は減光防止のため停止できない問題がある。
前記エンジン付随補機としては、排気ガス還流装置6と可変バルブタイミング機構7がある。これらエンジン付随補機の制御方法は、できるだけ燃費優先の作動とするが、トルク優先の作動とすれば、有段変速機2の高ギヤ段を使用できる又はロックアップ機構15をロックアップできる場合は、トルク優先の作動とする。排気ガス還流装置6は、効果として燃費が向上し、制約条件として低吸気温では凍結により使用できない、低水温では燃焼不安定により使用できない問題がある。可変バルブタイミング機構7は、燃費優先設定により、効果として燃費が向上し、制約条件として低油温時は油圧不安定により使用できない、低回転、又は高油温時は油圧低下により使用できない問題がある。また、可変バルブタイミング機構7は、トルク優先設定により、効果としてトルクが増加し、制約条件として低油温時は油圧不安定により使用できない、低回転、又は高油温時は油圧低下により使用できない問題がある。
前記有段変速機2は、トルクコンバータ13とギヤ変速機構14とからなり、ロックアップ機構15を備えている。有段変速機2の制御方法は、できるだけロックアップ機構15をロックアップ(結合)し、目標駆動輪トルクを実現できるギヤ変速機構14の最高ギヤ段を使用する。有段変速機2のギヤ変速機構14は、効果としてギヤ段の切り替えで駆動輪トルクを増幅することができ、特に制約条件はない。有段変速機2のロックアップ機構15は、効果としてロックアップで燃費が向上し、制約条件として低回転高トルクでは音・振動が発生するため使用できない、低ギヤ段ではロックアップ機構15が装備されていない場合が多い、スリップロックアップは、低油温では油圧不安定により使用できない問題がある。
なお、外部補機の中での優先順位については、外部補機は停止できる時間が限定され、停止時間もその時の状況(環境や人為的要望によって変更される外部負荷に基づいて変更する)によって異なるため、明確な優先順位は付けられない。いずれの外部補機も停止できる状況であれば、どれでも停止して構わない。
また、エンジン付随補機の中での優先順位は、その特性により異なるため、各エンジン回転数・エンジン負荷での燃料消費率を事前に測定して決定すべきである。例えば、排気ガス還流装置6と可変バルブタイミング機構7では、排気ガス還流装置6により排気ガスを還流させている状態で可変バルブタイミング機構7をトルク優先の設定としても、エンジントルクはそれほど増加せず、燃費が悪化するため、排気ガス還流装置6の停止(排気ガスの還流停止)を先に行うべきである。
【0021】
このように、このエンジン1の制御装置17は、制御手段18によって、予め外部補機、エンジン付随補機、有段変速機2の駆動/停止状態との切り替えタイミングに順位を設定するとともに、これら外部補機、エンジン付随補機、有段変速機2のいずれかの状態変化に合わせて電子スロットルバルブ3のスロットル開度を変更制御する機能を有し、加速時には、所定のスロットル開度に向けて電子スロットルバルブ3のスロットル開度を漸増させるとともに、所定スロットル開度に達した際に予め設定した切り替えタイミングの順位に従い前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機2の駆動/停止状態の切り替え変更を順次行うように制御する。
これにより、このエンジン1の制御装置17は、アクセルペダルの人為的操作(アクセル開度に基づくトルク要求)に対して、車速との関係により設定される駆動輪トルクをステップ的に変化させることがなくなり、スロットル開度と補機類の駆動状態とを、燃費、騒音、排ガスの排出についてバランスのとれた最適な状態とすることができる。それにより、例えば、低負荷から高負荷に変化する際のトルク変化を緩やかにして、滑らかな加速フィーリングを得たり、逆に、高負荷から低負荷に変化する際のトルク変化を緩やかにして、シフトハンチングを防止したり、あるいは、定常走行において、従来よりも1段高いギヤ段を使用したり、ロックアップしたりすることで燃費を向上できる。
また、このエンジン1の制御装置17は、その限られた条件の中で、スロットル開度を比較的小さく保ったまま、相対的なトルクアップを図ることができ、過大なアクセル操作を抑制できる。また、3速でロックアップしている場合と同じ駆動トルクであっても、4速でロックアップしている場合のようにエンジン1の出力トルクが必要な場合には、過大なアクセル操作ではなく、スロットル開度を大きく保ったまま走行することもできる。
前記制御手段18は、切り替えタイミングの順位を、外部補機、エンジン付随補機、有段変速機2の順に設定している。
これにより、このエンジン1の制御装置17は、エンジン1に駆動される外部補機の順位を上位にすることにより、停止しても燃費悪化を伴うことがない。一方、このエンジン1の制御装置17は、エンジン付随補機の順位を中位にすることにより、停止しても騒音悪化を伴うことがない。また、このエンジン1の制御装置17は、有段変速機2の順位を下位にすることにより、変速の頻度を減らすことができ、変速によるエンジン1の大きな変動を抑制でき、燃費の悪化防止と、騒音増大の抑止と、排気ガスの悪化抑止を行うことができる。この時、エンジン1の出力トルクは、順序のある切り替えによってステップ的に変化する一方、駆動トルクは、加速では増加傾向に、減速では減少傾向に滑らかに変化させることができる。また、実施形態では、加速を例示したが、減速時には、外部補機とエンジン付随補機の順位を逆にし、有段変速機2の順位を下位にして、スロットル制御を行うことにより、同様の効果を得ることができる。
前記エンジン付随補機は、排気ガス還流装置6と可変バルブタイミング機構7を含んでいる。前記制御手段18は、排気ガス還流装置6を可変バルブタイミング機構7より先に駆動/停止状態の切り替え変更するように制御する。
これにより、このエンジン1の制御装置17は、可変バルブタイミング機構7によるトルク増大を効率よくすることができ、排気ガス還流装置6の状態と協調することで燃費の悪化を抑止できる。
【0022】
前記制御手段18が判断する所定スロットル開度とは、空気量が最大となる時に設定したスロットル開度であり、その中でも最小のスロットル開度(中開度)である。すなわち、回転当りのエンジン1の出力トルクがほぼ一定値に収束する状態でのスロットル開度といえる。オルタネータ12、エアコン10のコンプレッサ11やブロアファン、あるいはラジエータのファンモータなど、これら各外部補機の駆動に必要なトルクは予め分かるため、それに応じたスロットル開度のスキップ量を、それぞれ予め設定しておくことで、スロットル開度の変更制御においてフィードフォワード制御することが可能である。トルク変動を小さく押さえて、所望のトルクに一致させることができる。
このトルクが一定の場合であっても、エンジン回転数が上がるにつれて、出力パワーは増大し、走行速度も上がることになる。スロットル開度の変化によるトルク変化と、負荷トルクとなる補機類とを加算し、その大小バランスによって出力トルクが決まるので、スロットル開度が小さくなってもトルクは増大させることができる。エンジン1は、スロットル開度の中間域を主体として、小さな変動幅かつ短い周期で運転することになり、燃焼効率も良く、触媒の容量が小さくても浄化が可能となる。あるいは、触媒に用いる貴金属類を減らすことができる。
エンジン1の外部補機の中での優先順位は、流動的となる。バッテリ容量が充分満たされている場合や気温の高い時には、エアコン10のコンプレッサ11・ブロアファンよりオルタネータ12の方が先に止まることになる(図2のタイムチャートに図示)。バッテリ容量が低下している時や、夜間、降雨、AV(音響映像)機器等のアクセサリ使用時には、電力消費が大きいのでオルタネータ12よりエアコン10のコンプレッサ11・ブロアファンの方が先に止まることになる。
【0023】
なお、この実施例では、エンジン付随補機を排気ガス還流装置6、可変バルブタイミング機構7とし、外部補機をエアコン10のコンプレッサ11、オルタネータ12としたが、その他に、可変吸気システム、スワール・タンブルコントロールバルブ、各種可変バルブ機構、気筒休止等の機器や、希薄燃焼等の空燃比の制御装置等も、トルクに影響がある場合には同様の考え方で制御できる。
また、この実施例では、アクセル開度と車速からエンジン発生トルクを算出したが、大気圧・吸気温度等によりエンジン発生トルクを補正することにより、より精度の高い制御が可能である。さらに、駆動系各部の摩擦・粘性トルクについて、温度等により予測することができれば、より精度の高い制御が可能である。さらにまた、オルタネータ12やエアコン10のコンプレッサ11等の負荷情報を補機トルクとしてリニアに得られれば、より精度の高い制御が可能である。また、目標エンジン発生トルクに制御する時に、スロットル開度だけでなく点火時期も制御することにより、より精度の高い制御が可能である。
さらに、この実施例では、エンジン付随補機である可変バルブタイミング機構7の位相変更する動作を、単純な2値(駆動/停止)の選択となるように説明したが、設定を細かく刻んで多数のステップとしたり、無段階となるように連続的に変化させることが可能なもので切り換える構造としたりすることもできる。また、可変バルブタイミング機構7は、可変バルブリフト機構に替えることもでき、これら両者を備えるように構成しても良い。さらに、この実施例では、緩加速を例にしたが、減少する要求トルクに対して補機類の順序を決めて制御するようにして、緩減速にも応用することもできる。さらにまた、従来の変速マップ(速度とスロットル開度のマップ)は基本的に不要であるが、特定の運転状態に限って組み合わせることや、任意に選択することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、スロットル開度の制御と、過渡状態における外部補機とエンジン付随補機とを含めた統合的なエンジン出力制御に関し、有段変速機、電子スロットルバルブ及びエンジントルクに影響する各種補機を備えた車両のエンジンの制御に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例を示すエンジンの制御装置のフローチャートである。
【図2】実施例を示すエンジンの制御装置のタイムチャートである。
【図3】実施例を示すエンジンの制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジン
2 有段変速機
3 電子スロットルバルブ
6 排気ガス還流装置
7 可変バルブタイミング機構
8 EGRバルブ
9 タイミング制御バルブ
10 エアコン
11 コンプレッサ
12 オルタネータ
13 トルクコンバータ
14 ギヤ変速機構
15 ロックアップ機構
16 変速機制御手段
17 制御装置
18 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンに有段変速機を併設し、前記エンジンに駆動される外部補機と、アクセルペダルの人為的操作を反映して又は前記アクセルペダルの人為的操作とは独立して動作可能な電子スロットルバルブを含み前記エンジンの出力トルクを変更し得るエンジン付随補機と、前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機を制御する制御手段と、を設けたエンジンの制御装置において、前記制御手段は、予め前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の駆動/停止状態の切り替えタイミングに順位を設定するとともに、これら外部補機、エンジン付随補機、有段変速機のいずれかの状態変化に合わせて前記電子スロットルバルブのスロットル開度を変更制御する機能を有し、加速時には、所定のスロットル開度に向けて前記電子スロットルバルブのスロットル開度を漸増させるとともに、所定スロットル開度に達した際に前記切り替えタイミングの順位に従い前記外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の駆動/停止状態の切り替え変更を順次行うように制御することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、切り替えタイミングの順位を、外部補機、エンジン付随補機、有段変速機の順に設定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記エンジン付随補機は、排気ガス還流装置と可変バルブタイミング機構を含み、前記制御手段は、前記排気ガス還流装置を可変バルブタイミング機構より先に駆動/停止状態の切り替え変更するように制御することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−161158(P2009−161158A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3280(P2008−3280)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】