説明

シリコン含有膜を選択的に堆積する方法

1つの実施形態は、単結晶膜を選択的に堆積するための方法を提供する。この方法は、第1の表面形態を有する第1の表面およびこの第1の表面形態とは異なる第2の表面形態を有する第2の表面を含む基体を準備する工程を含む。シリコン前駆体[108]およびBCl[134]は相互混合され、これにより供給ガスが形成される。この供給ガスは、化学気相成長条件[122]下でこの基体へ導入される。Si含有層は、供給ガス[120]を導入することにより、第2の表面上に堆積することなく、第1の表面上に選択的に堆積される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、半導体加工におけるシリコン含有物質の堆積に関する。より具体的には、本願は、BClおよびシリコン供給源を使用する、エピタキシャルなシリコン含有膜の選択的な堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性表面上に堆積することなく半導体表面上にシリコンまたはシリコンゲルマニウムを選択的に堆積することが望ましいことがしばしばある。例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタは、例えば、単結晶、半導体膜を有効面積上のみにエピタキシャルに堆積する選択的な堆積技術を使用して、製作されることが多い。他のトランジスタ設計は、シャロージャンクションデバイス性能を変えることなくソース/ドレイン接触プロセスによって消費される可能性があるさらなるシリコンを提供する、高められたソース/ドレイン構造から恩恵を受ける。選択的なエピタキシーは、有利にも、その後のパターニングおよびエッチング工程に対する必要性を減少させる。
【0003】
選択的な堆積プロセスは当該技術分野で公知であるが、より速い、それほど電力を必要としない電気回路を求める継続的なスケーリングは、集積回路製作に対する要求を高めた。一般的に言えば、選択性は、異種の物質上の堆積の間の差異的な核形成を利用する。選択的な堆積は、堆積されている物質の同時のエッチングおよび堆積によって一般には説明することができる。選択された前駆体は、1つの表面上ではより迅速に、そして別の表面上ではそれほど迅速にではなく核形成し成長する傾向を有する。例えば、シランは、一般に酸化シリコンおよびシリコンの両方の上で核形成するであろうが、酸化シリコン上ではより長い核形成相がある。核形成段階の開始時に、酸化物上の不連続な膜は、シリコン上の融合した、連続的な膜と比べて高い露出された表面積を有する。従って、そのプロセスに加えられるHClなどのエッチング剤は、シリコン上の迅速に核形成する膜と比較して、酸化物の上の核形成が低い膜に対してより大きい効果を有するであろう。従って、プロセスの相対的選択性は、前駆体流量、温度、圧力などの堆積速度に影響を及ぼす要因、ならびにエッチング剤流量、温度、および/または圧力などのエッチング速度に影響を及ぼす要因を調整することによって調節することができる。各変動因子の変化は、一般に、エッチング速度および堆積速度に対して異なる効果を有するであろう。典型的には、選択的な堆積プロセスは、フィールド領域における堆積をまったくなし遂げないで、注目する窓上で実行可能な最も高い堆積速度をもたらすように調節される。公知の選択的なシリコン堆積プロセスは、水素キャリアガスとともに反応物質シランおよび塩化水素酸を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの選択的な堆積技術が公知であるが、改善された均一性、純度、堆積速度および反復性とともに、選択的な半導体堆積の改善された方法を用いる堆積プロセスに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある1つの実施形態は、化学気相成長によって単結晶膜を選択的に堆積するための方法を提供する。この方法は、反応チャンバーの中に基体を準備する工程を含む。この基体は、第1の表面形態を有する第1の表面およびこの第1の表面形態とは異なる第2の表面形態を有する第2の表面を含む。シリコン前駆体およびBClが相互混合され、これにより供給ガスが形成される。この基体は、この反応チャンバーの中でこの供給ガスに曝露される。Si含有層は、この曝露により、第2の表面上に堆積することなく、第1の表面上に選択的に堆積される。
【0006】
別の実施形態は、集積回路を形成するための方法を提供する。この方法は、露出された半導体表面および絶縁領域を備える基体を準備する工程を含む。この基体はシリコン前駆体、BClおよびエッチング剤蒸気に曝露され、これにより当該露出された半導体表面上にSi含有エピタキシャル膜が選択的に堆積される。
【0007】
別の実施形態によれば、装置は、選択的なエピタキシャル堆積用に構成されている。この装置は、ウェーハを支持するように構成されている反応チャンバーを含む。半導体前駆体の供給源、エッチング剤蒸気の供給源およびBClの供給源は、各々、この反応チャンバーと連通している。コントローラは、パターン形成されたウェーハの単結晶領域の上にエピタキシャル半導体膜をこの反応チャンバーの中で選択的に堆積するために、半導体前駆体、エッチング剤蒸気およびBClを、上記供給源からこの反応チャンバーへと同時に送達するように構成される。
【0008】
これらの実施形態および他の実施形態は、より詳細に後述される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】温度の関数としてのBおよびBClの蒸気圧のプロットである。
【図2】BCl流量の関数としての、BClの直接注入を用いて堆積されたSiGe:B膜、および1 slm Hの希釈ループを用いて堆積されたSiGe:B膜の抵抗率のプロットである。
【図3】GeHの関数としてのSiGe中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGeの成長速度のプロットである。
【図4A】Bの1つのドーパント濃度についての、GeHの関数としてのSiGe:B中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGeの成長速度のプロットである。
【図4B】Bの別のドーパント濃度についての、GeHの関数としてのSiGe:B中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGe:Bの成長速度のプロットである。
【図4C】Bの第3のドーパント濃度についての、GeHの関数としてのSiGe:B中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGe:Bの成長速度のプロットである。
【図5A】1つのBClのドーパント濃度についての、GeHの関数としてのSiGe:B中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGeの成長速度のプロットである。
【図5B】BClの別のドーパント濃度についての、GeHの関数としてのSiGe:B中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGeの成長速度のプロットである。
【図5C】第3のBClのドーパント濃度についての、GeHの関数としてのSiGe:B中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGeの成長速度のプロットである。
【図6】理論上の、ならびに露出したシリコンならびにBClおよびBを使用して形成されたパターン形成されたウェーハについてのSiGe:B膜の抵抗率 対 B濃度のプロットである。
【図7】選択性閾値の尺度としての露出された窒化物表面およびポリ−SiGeの非対称的な堆積を有するウェーハの概略図である。
【図8A】1019原子/cmのホウ素および80nmのターゲット厚さを有するSiGe:Bを用いて堆積されたブランケット窒化物膜の光学的結果である。
【図8B】1019原子/cmのホウ素および80nmのターゲット厚さを有するSiGe:Bを用いて堆積されたブランケット窒化物膜の光学的結果である。
【図9】KLA Tencor Surfscan 6200 Unpatterned Surface Inspection Systemを用いた、図8A〜図8Bの窒化物ウェーハの検査の結果を示す。
【図10A】BおよびBClによるSiGe:Bを用いて堆積されたブランケット窒化物膜の強い光の光学的結果である。
【図10B】BおよびBClによるSiGe:Bを用いて堆積されたブランケット窒化物膜の強い光の光学的結果である。
【図11】KLA Tencor Surfscan 6200 Unpatterned Surface Inspection Systemを用いた、図10A〜図10Bの窒化物ウェーハの検査の結果を示す。
【図12A】BおよびBClによるSiGe:Bを用いて堆積されたブランケット窒化物膜ウェーハの光学的結果である。
【図12B】BおよびBClによるSiGe:Bを用いて堆積されたブランケット窒化物膜ウェーハの光学的結果である。
【図13】KLA Tencor Surfscan 6200 Unpatterned Surface Inspection Systemを用いた、図12Bの窒化物ウェーハの検査の結果を示す。
【図14】固有のSiGe膜、BClからのSiGe:B膜および7×1019原子/cmのホウ素を有しかつBClを用いて形成されたSiGe:B膜、およびBから形成され、かつ6×1019原子/cmのホウ素を有しかつBから形成されたSiGe:B膜について選択的な成長が起こる堆積条件(GeHおよびHCl流量)についてのパラメータのプロットである。
【図15A】露出したシリコンウェーハ上にBおよびBClを用いて形成されたSiGe:BについてのXRDプロットである。
【図15B】BおよびBClを用いて形成されたブランケットSiGe:B膜についての、ウェーハ直径の関数としての厚さのプロットである。
【図15C】BおよびBClを用いて形成されたブランケットSiGe:B膜についての、ウェーハ直径の関数としての%Geのプロットである。
【図15D】BおよびBClを用いて形成されたブランケットSiGe:B膜についての、ウェーハ直径の関数としての抵抗率のプロットである。
【図16A】Bを用いて形成された露出したシリコンウェーハ上のブランケットSiGe:B膜についての、深さの関数としてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図16B】パターン形成されたウェーハ上にBを用いて形成されたSiGe:B膜についての、深さの関数としてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図16C】BClを用いて形成された露出したシリコンウェーハ上のブランケットSiGe:B膜についての、ウェーハ深さの関数としてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図16D】パターン形成されたウェーハ上にBClを用いて形成されたSiGe:B膜についての、深さの関数としてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図17A】パターン形成された基体にわたってBを用いて形成されたSiGe:B膜についての、電流に対する抵抗率および電圧のプロットである。
【図17B】パターン形成された基体にわたってBClを用いて形成されたSiGe:B膜についての、電流に対する抵抗率および電圧のプロットである。
【図18A】露出したシリコンウェーハ上にBおよびBClを用いて形成されたSiGe:B膜(19原子%Geおよび5×1019cm−3のBを有する)についてのXRD回折図である。
【図18B】露出したシリコンウェーハ上にBおよびBClを用いて形成されたSiGe:Bのブランケット膜についての、ウェーハ直径の関数としての抵抗率のプロットである。
【図19A】深さの関数としての、Bを用いて形成された露出したシリコンウェーハ上のブランケットSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図19B】深さの関数としての、Bを用いて形成されたパターン形成されたウェーハ上のSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図19C】ウェーハ深さの関数としての、露出したシリコンウェーハ上にBClを用いて形成されたブランケットSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図19D】深さの関数としての、パターン形成されたウェーハ上にBClを用いて形成されたSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図20】減少したHCl流量を用いたことを除いて図18Aについてと同じプロセス条件に対する、露出したシリコンウェーハ上のBおよびBClを用いて形成されたブランケットSiGe:B膜についてのウェーハ直径の関数としての抵抗率のプロットである。
【図21A】深さの関数としての、露出したシリコンウェーハ上のBを用いて形成されたブランケットSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図21B】深さの関数としての、パターン形成されたウェーハ上にBを用いて形成されたSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図21C】ウェーハ深さの関数としての、露出したシリコンウェーハ上にBClを用いて形成されたブランケットSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図21D】深さの関数としての、パターン形成されたウェーハ上にBClを用いて形成されたSiGe:B膜についてのBおよびGe濃度のSIMSプロットである。
【図22A】約1020at/cmのホウ素濃度および95sccmのHCl流量を用いてBプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上のSiGe:B膜のSEM顕微鏡写真である。
【図22B】約1020at/cmのホウ素濃度および95sccmのHCl流量を用いてBプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上のSiGe:B膜のSEM顕微鏡写真である。
【図22C】約1020at/cmのホウ素濃度および95sccmのHCl流量を用いてBプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上のSiGe:B膜のSEM顕微鏡写真である。
【図22D】約1020at/cmのホウ素濃度および95sccmのHCl流量を用いてBプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上のSiGe:B膜のSEM顕微鏡写真である。
【図23A】約1021at/cmのホウ素濃度および75sccmのHCl流量を用いてBClプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上の膜の表面のSEM結果である。
【図23B】約1021at/cmのホウ素濃度および75sccmのHCl流量を用いてBClプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上の膜の表面のSEM結果である。
【図23C】約1021at/cmのホウ素濃度および75sccmのHCl流量を用いてBClプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上の膜の表面のSEM結果である。
【図23D】約1021at/cmのホウ素濃度および75sccmのHCl流量を用いてBClプロセスによって形成された、パターン形成されたウェーハ上の膜の表面のSEM結果である。
【図24A】Bを用いて形成されたSiGe:Bについてのプローブ接合領域を含むパターン形成されたウェーハの上からの光学顕微鏡写真を示す。
【図24B】Bを用いて形成されたSiGe:Bについてのプローブ接合領域を含むパターン形成されたウェーハの上からの光学顕微鏡写真を示す。
【図24C】BClを用いて形成されたSiGe:Bについてのプローブ接合領域を含むパターン形成されたウェーハの上からの光学顕微鏡写真を示す。
【図24D】BClを用いて形成されたSiGe:Bについてのプローブ接合領域を含むパターン形成されたウェーハの上からの光学顕微鏡写真を示す。
【図25A】HCl前洗浄工程後のパターン形成されたウェーハの初期のトポグラフィの3Dプロットである。
【図25B】Bを用いて形成された80nm膜のSiGe:Bのターゲットおよび1020at/cmのホウ素を有するウェーハのトポグラフィの3Dプロットである。
【図25C】2.2sccmのBClを用いて形成された80nm膜のSiGe:Bのターゲットおよび1020at/cmのホウ素を有するウェーハのトポグラフィの3Dプロットである。
【図26A】HCl前洗浄工程後のパターン形成されたウェーハの初期のトポグラフィの3Dプロットである。
【図26B】Bを用いて形成されたSiGe:Bの膜を有するウェーハのトポグラフィの3Dプロットである。
【図26C】2.9sccmのBClを用いて形成されたSiGe:Bの膜を有するウェーハのトポグラフィの3Dプロットである。
【図27】絶縁体および半導体表面を露出された状態で残すフィールド酸化物画定後の、半導体基体の概略断面図である。
【図28】有効面積窓内でのトランジスタゲート電極の形成後の図27の構造を示す。
【図29】ゲート電極のいずれかの側にソースおよびドレイン領域の凹部を形成した後の図28の構造を示す。
【図30】本発明の好ましい実施形態に係る、凹型の領域内での半導体膜の選択的な堆積後の図29の構造を示す。
【図31】高められたソース/ドレイン構造を形成する、任意の連続する選択的な堆積後の図30の構造を示す。
【図32】別の好ましい実施形態に係る、半導体窓を露出して、選択的な堆積を行って高められたソース/ドレイン構造を形成した後の図28の構造を示す。
【図33A】好ましい実施形態に係るシリコン含有膜を選択的に堆積するための、BCl、シリコン供給源、ゲルマニウム供給源、エッチング剤(HClなど)、およびキャリアガスを用いるシステムのための反応器の配置の単純化された概略図である。
【図33B】ドーパント希釈制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
選択的に堆積された結晶シリコンは、シリコン供給源、エッチング剤、および添加剤プロセスガス(炭素供給源、ゲルマニウム供給源および/または電気的ドーパント前駆体など)を使用して結晶性シリコンの堆積を実施することによって、その場で(in situ)ドープされてもよい。選択的に堆積されたシリコン含有膜の商業的価値に加えて、p型ドーパントなどの電気的ドーパントを用いてその場で(in situ)堆積された半導体もまた、様々な工業用途において、たとえば半導体製造、微小電気機械システム「MEMS」デバイス製作において、およびフラットパネルディスプレイにおいてかなりの商業的重要性をもつ。p型ドーパントについての従来から好ましい前駆体は、ジボランなどのドーパント水素化物である。ジボラン(「B」)は、典型的には、H中で希釈されて、例えば、H中の1%ジボランまたは100ppmとして市販されている。残念ながら、Bは、誘電体上でのポリシリコン核形成を促進することにより選択性を阻害し、従って選択性を維持するためにより多くのエッチング剤を必要とする。選択性を高めるためにエッチング剤流量を増加させると、単結晶シリコン表面上でのシリコンまたはSiGeの核形成がさらに抑制され、その結果、非常に低い成長速度が発生する。
【0011】
本発明において、様々な単結晶Si含有物質を選択的に堆積するために有用な堆積方法が開発された。例えば、結晶性のSiおよびSiGeは、シリコン供給源、任意のゲルマニウム供給源および三塩化ホウ素(「BCl」)を使用して堆積を実施することにより、選択的に成長される可能性がある。好ましい実施形態では、得られたドープされたSi含有物質中のドーパントは、堆積時に電気的に活性でもある。この態様に係るドープされた層の堆積は、より詳細に後述されるように、ゲルマニウム供給源を用いてまたは用いずに、HClもしくは塩素ガスを用いてまたは用いずに、およびHキャリアガスを用いてまたは用いずに行うことができる。
【0012】
用語「Si含有物質」および類似の用語は、実に様々なシリコン含有物質を指すために本願明細書において使用され、その例としてはSi、SiGeおよびSiGe:Cが挙げられるが、これらに限定されない。本願明細書で使用する場合、「SiGe」、「炭素をドープしたSiGe」、「SiGe:C」および類似の用語は、示された化学元素を種々の割合で、および任意に、微量の他の元素を含有する物質を指す。例えば、「SiGe」は、シリコン、ゲルマニウムおよび、任意に、他の元素、例えば、ドーパント(炭素および電気的に活性なドーパントなど)を含む物質である。「SiGe」、および「SiGe:C」などの用語は、それら自体は化学量論的な化学式ではなく、従って示された元素の特定の比を含有する物質に限定されない。Si含有膜中におけるドーパント(ゲルマニウム、ホウ素、または他の電気的に活性なドーパントなど)の百分率は、本願明細書においては、特段の記載がない限り全体の膜に基づく原子百分率で表現される。
【0013】
III族ドーパントは周期表のIII族の元素であり、BおよびInが挙げられる。III族ドーパントは、その半導体ドーパントとしての認識された用途のため、本願明細書において電気的ドーパントと呼ばれることがある。本発明は作用の理論によっては限定されないが、III族ドーパントは、半導体の中に置換的に組み込まれた場合は電気的に活性であるが、非置換的に組み込まれた場合は電気的に不活性であると考えられる。用語「p−ドープされた」Si含有物質は、そのSi含有物質がIII族ドーパントを含有するということを示す。
【0014】
ゲルマニウム、炭素および電気的ドーパントなどの種々の元素は、Si含有物質と合金にされ、またはSi含有物質の中へとドープされる。ゲルマニウムおよび炭素はシリコンと合金にされ、ホウ素のような電気的ドーパントはシリコンまたはシリコン合金をドープする。このようなSi含有物質は、本願明細書において、置換的にドープされたまたは合金化されたと呼ばれることがある。このような元素をSi含有物質の中へと組み込むプロセスは、本願明細書において、置換的な組み込みまたはドーピングと呼ばれることがある。さらに、Si含有物質の中へと置換的に組み込まれるIII族ドーパントは、電気的に活性なドーパントを有すると呼ばれることがあり、そしてこのようなSi含有物質は、電気的に活性にドープされたと呼ばれることがある。
【0015】
特段の記載がない限り、置換的であれ侵入型であれ、Si含有物質の中へと組み込まれるIII族ドーパントの総量は、二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定され、そして本願明細書においては、原子/立方センチメートルの単位で表されることがある。例えば、6.3×1020原子/立方センチメートルのIII族ドーパント濃度は、「6.3E20cm−3」と表されることがある。電気的に活性なまたは置換的な組み込まれたIII族ドーパントの量は、電気抵抗率測定、例えば、当業者に公知の四端子プローブ測定によって測定されてもよい。他のSi含有物質の中へと置換的に組み込まれるゲルマニウムなどの他の元素の量は、同様にして、例えば、SIMSまたはXRDによって測定されてもよい。
【0016】
種々の実施形態は、BCl、シリコン供給源および、任意に、ゲルマニウムなどの他の元素の供給源を使用して、Si含有物質を選択的に堆積するための方法を提供する。基体の表面へのBClおよびシリコン供給源の送達は、好ましくは、その基体の表面上でのエピタキシャルSi含有膜の形成をもたらす。ある実施形態では、別々のエッチング剤供給源ガス、例えば、塩素などのハロゲン含有ガスがさらに、BClおよび上記シリコン供給源と併せて基体へと送達され、そしてそのSi含有膜は単結晶基体または混合基体の単結晶領域の上に選択的に堆積される。
【0017】
基体は、堆積が所望されるワークピースまたは堆積ガスに曝露された表面のいずれかを指す。例えば、当該基体は単結晶シリコンウェーハであってもよいし、または半導体・オン・インシュレーター(SOI)基体であってもよいし、またはこのようなウェーハ上に堆積されたエピタキシャルSi、SiGeまたはIII−V物質であってもよい。ワークピースはウェーハに限定されず、ガラス、プラスチック、または半導体加工で用いられるいずれかの他の基体を含む。
【0018】
混合基体またはパターン形成された基体は、異なる物質および/または異なる表面形態などの2以上の異なる種類の表面を有する基体である。例えば、パターン形成された基体または混合基体は、第1の表面形態を有する第1の表面および第2の表面形態を有する第2の表面を含んでもよい。ある実施形態では、Si含有層は、隣接する誘電体または絶縁体にわたる堆積を最少にし、より好ましくはそれを回避しつつ、単結晶半導体物質にわたって選択的に形成される。誘電体の例としては、二酸化シリコン(炭素ドープされた形態およびフッ素ドープされた形態などの低誘電率形態を含む)、窒化シリコン、金属酸化物およびケイ酸金属塩が挙げられる。用語「エピタキシャルな」、「エピタキシャルに」、「ヘテロエピタキシャルな」、「ヘテロエピタキシャルに」および類似の用語は、その堆積された層が結晶性の基体の格子定数を採用するかまたはその格子定数に従うような、その基体上への結晶性Si含有物質の堆積を指すために、本願明細書において使用される。エピタキシャル堆積は、堆積された層の組成が基体の組成とは異なる場合はヘテロエピタキシャルである。堆積された層が基体と同じ組成および本来の格子定数を有する場合は、それは、ホモエピタキシャルである。
【0019】
当該表面が同じ物質によって定められている場合であっても、混合基体の表面は、その表面の形態または結晶性が異なれば、異なる可能性がある。本願明細書に記載されるプロセスは様々な基体上にSi含有膜を堆積するために有用であるが、混合された表面形態を有する混合基体に対して特に有用である。このような混合基体は、第1の表面形態を有する第1の表面および第2の表面形態を有する第2の表面を含む。表面形態は、その基体表面の結晶構造を指す。非晶性および結晶性は異なる形態の例である。多結晶性の形態は、秩序ある結晶の無秩序な配置からなり、従って中間の程度の秩序を有する結晶構造である。多結晶性物質の中の原子は、結晶の各々の中では秩序を有しているが、その結晶自体は互いに対しては長距離秩序を欠く。単結晶形態は、高度の長距離秩序を有する結晶構造である。エピタキシャル膜は、結晶構造、およびそれらが成長した基体、典型的には単結晶と同一の配向によって特徴付けられる。これらの物質の中の原子は、原子スケールでは比較的長距離にわたって続く格子状の構造に配列されている。非晶性の形態は、その原子が明確な周期的配列を欠くため、低度の秩序を有する非結晶構造である。他の形態としては、微結晶性、ならびに非晶性物質および結晶性物質の混合物が挙げられる。単結晶ウェーハおよびその上のエピタキシャル層の両方を含めた「単結晶」は、トランジスタ製作用に一般に用いられるような、その中に許容できる数の断層を有してもよい主に大きい結晶構造を記述するために使用される。当業者なら、層の結晶性は一般に、非晶性から多結晶性へ、そして単結晶への連続体に沿って低下するということは分かるであろう。当業者は、結晶構造が、低密度の断層にもかかわらず、いつ単結晶またはエピタキシャルであると考えることができるかを容易に決定することができる。混合基体の具体例としては、単結晶/多結晶性、単結晶/非晶性、単結晶/誘電体、導体/誘電体、および半導体/誘電体が挙げられるが、これらに限定されない。当然、混合基体は3つ以上の異なる種類の表面を含むことができる。
【0020】
選択的なSi含有膜および方法
ある1つの実施形態は、化学気相成長(CVD)により結晶性Si含有膜を堆積する方法であって、第1の表面形態を有する第1の表面およびこの第1の表面形態とは異なる第2の表面形態を有する第2の表面を含む基体を準備する工程と、シリコン前駆体およびBClを相互混合して、これにより供給ガスを形成する工程と、この供給ガスを上記基体に導入する工程と、Si含有層を当該第2の表面よりも当該第1の表面の上に選択的に堆積する工程とを含む方法を提供する。ある1つの実施形態によれば、このSi含有膜は、約10:1よりも大きい比で誘電体表面にわたる堆積を最少にするかまたは回避しながらSi含有膜が単結晶半導体表面にわたって選択的に形成される場合、選択的に堆積されたと考えられる。別の実施形態によれば、堆積は、約50:1よりも大きい比だけ、第2の表面よりも第1の表面で優先する。好ましくは、堆積は、100%選択的であり、当該第1の表面上に堆積しつつも当該第2の表面上には堆積させないように調節される。しかしながら、不完全な選択性でさえ第2の表面から望まれない堆積を回避するためのマスキング工程を回避することができる。なぜなら、短い乾式または湿式のエッチング工程でこの第2の表面の上から望まれないわずかな堆積を一掃することができるからである。ある1つの実施形態では、当該結晶Si含有膜はまたその場でドープされ(in situ doped)、約1.6mΩ・cm以下の堆積時(as−deposited)抵抗率を有する。別の実施形態では、この膜は約1.3mΩ・cm以下の堆積時抵抗率を有する。別の実施形態では、この膜は約1.1mΩ・cm以下の堆積時抵抗率を有する。ドープされた結晶性Si含有膜は、好ましくは堆積時に少なくとも約7×1019原子cm−3のホウ素を含む。1つの実施形態では、当該膜は、堆積時に少なくとも約1×1020原子cm−3のホウ素を含む。さらに、当該膜の中のホウ素は、全体がBClに由来する。
【0021】
開示される方法は、蒸着および特にCVD(プラズマ強化化学気相成長「PECVD」または熱CVDを含む)を用い、BClおよびシリコン供給源蒸気を利用して、CVDチャンバー内でドープされた結晶性のSi含有膜を基体上に堆積するための、基体に接触する供給ガスを形成する。このSi含有膜は、好ましくは堆積時の電気的に活性なドーパントを含む単結晶のまたはエピタキシャルSi膜である。いくつかの実施形態では、ゲルマンなどのゲルマニウム供給源が供給ガスに添加され、これにより結晶性の電気的にドープされたSiGeまたはSiGe:C膜を当該Si含有膜として堆積される。いくつかの実施形態では、付加的なまたは補完的なエッチング剤供給源ガスがこの供給ガスに添加され、堆積されたSi含有膜の選択性が高められる。以下の説明では、ドープされたSiまたはSi含有膜を選択的に堆積するためのBClおよびシリコン供給源の使用に言及されることがある。それらの説明は、特段の記載がない限り、他のSi含有膜、例えば、ゲルマニウム供給源の使用を伴う電気的にドープされたSiGeおよびSiGe:C膜の堆積にも一般に当てはまるということは認識されるであろう。基体およびプラズマ処理にかかわる設備への損傷の危険なしに効果的に堆積を成し遂げることができるため、熱CVDは好ましい。
【0022】
BClおよびシリコン供給源ならびに、任意に、ゲルマニウムおよび/または補完的なエッチング剤ガスは、別々のガスの形態で、または相互混合して供給ガスを形成することによってチャンバーに導入される。相互混合してその供給ガスを形成することは、そのチャンバー内で、またはチャンバーへのその供給ガスの導入に先立って行われてもよい。CVDチャンバー中の全圧力は、約0.001Torr〜約1000Torr(約0.133Pa〜約133kPa)の範囲、しかし好ましくは約0.25Torr〜約100Torr(約33Pa〜約13.3kPa)の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、この堆積条件は、少なくとも約10Torr(約1.3kPa)のチャンバー圧力を含む。少なくとも約500mTorr(約66.5Pa)のチャンバー圧力は、後述するように、実験が行われた単一ウェーハ・単一通路・層状水平フローリアクター(single wafer,single pass,laminar horizontal flow reactor)に適している。このチャンバー圧力は、本願明細書において「堆積圧力」と呼ばれることがある。この供給ガスは、BCl以外のガス(1種または複数種)(他のシリコン供給源など)、他のドーパント前駆体(1種または複数種)および/または不活性キャリアガスを含むことができるが、好ましくはBClはホウ素ドーパントの唯一の供給源である。シリコン前駆体および補完的なシリコン供給源は、シラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロジシラン、ネオペンタシランのうちの1以上を含むことができる。ジクロロシランは、好ましいシリコン供給源である。補完的なエッチング剤供給源としては塩素ガスおよびHClが挙げられるが、これらに限定されず、HClが好ましい。
【0023】
本願明細書に記載される方法に適したキャリアガスの例としては、He、Ar、H、およびNが挙げられる。ある実施形態では、このキャリアガスはHe、Arおよび/またはNなどの非水素キャリアである。以下の説明から分かるであろうが、いくつかの好ましいシリコン供給源(ジクロロシランなど)は、当該シリコン蒸気を同伴するためのキャリアガスとともに使用される気化器(バブラーなど)によって、より好ましくはバブラーおよびそのバブラーから流れるキャリアガスの中のシリコン前駆体の量を測定するガス濃度センサを備える送達システムによって、当該チャンバーに導入される。このようなセンサは市販されており、例えば米国、ニューヨーク州、ポキプシーのロレックス・インダストリーズ(Lorex Industries)から市販されているPIEZOCON(登録商標)ガス濃度センサがある。
【0024】
供給ガス中のBClの量は、Si含有膜中のホウ素分子の所望のレベルを提供するように調整されてもよい。当該供給ガス中の「純粋な」(未希釈の)BCl蒸気の好ましい濃度は、約0.1sccm〜約10sccm、または等価な量の希釈されたBClであってよいが、より高いかまたはより低い量が、得られた膜において所望の特性を成し遂げるために好ましいときがある。実施形態によれば、当該供給ガス中の純粋なBClの濃度は、約1sccm〜約5sccm、または等価な量の希釈されたBClである。キャリアガス中のドーパント前駆体の希薄な混合物を、所望のドーパント濃度およびドーパントガス濃度に応じて約0.1sccm〜約1000sccmの範囲の設定点を用いて、質量流量コントローラを介して反応器へと送達することができる。ドーパントガスの希釈は、等価な純粋なドーパント流量に到達するための10−7〜10−2という係数を導くことができる。この希薄な混合物は、好ましくは、シリコン供給源、補完的なエッチング剤供給源(後述するように、ClまたはHClなど)、いずれかの適切なキャリアガス、および置換的な組み込みのためのいずれかの他の所望の合金化前駆体(歪みに影響を及ぼす前駆体など)と混合することにより、さらに希釈される。歪みに影響を及ぼす前駆体としては、Si1−xGe(式中、0<x≦1)を含むシリコン含有膜を形成するためのゲルマニウム供給源(ゲルマンなど)を挙げることができる。SiGe膜中の好ましい原子%Geは、約15%〜約25%であることができる。実施形態によれば、約26〜約66sccmの希釈されたGeH(H中10%)(または約2.6〜約6.6sccmの純粋なGeH)は、約10Torr(約1.3kPa)の反応器運転圧力および約760℃の温度に向けて供給ガスと相互混合されてもよい。実施形態によれば、HClなどの補完的なエッチング剤は、約75〜約115sccmの量で添加することができる。流量についての値は、200mmウェーハに対して行われた実験から導かれるが、異なる表面積(例えば、300mmウェーハ)の基体について容易に増減することができる。ClおよびHClの他の補完的なエッチング剤供給源としては、他のハロゲン含有またはCl含有エッチング剤を挙げることができる。好ましいEPSILON(登録商標)シリーズ反応器での堆積のために使用されるガスの典型的な全流量は約20標準リットル/分「slm」〜約180slmの範囲にわたることが多いため、このドーパント前駆体の濃度は全流量に対して一般に小さい。
【0025】
種々の供給ガス成分の相対量は、得られたSi含有膜に対して所望される組成および用いられる堆積条件(温度、圧力、堆積速度などを含む)に応じて幅広い範囲にわたって変わる可能性があり、本願明細書で提示される助言を考慮して、日常的な実験によって決定されてもよい。この供給ガス成分は、相互混合され、次いでチャンバーまたは基体へと送達されてもよく、またはこの供給ガスは、例えば供給ガス成分を別々にCVDチャンバーに供給することにより、基体のところでもしくは基体の近くで成分を混合することによって形成されてもよい。
【0026】
適切なマニホルドが、供給ガスをCVDチャンバーに供給するために使用されてもよい。好ましくは、このCVDチャンバーは、好ましくは放射熱により加熱された単一ウェーハ・単一通路・層状水平ガスフローリアクターである。市販されているこの種の適切な反応器としては、アリゾナ州、フェニックスのエーエスエム・アメリカ(ASM America,Inc.)からの単一ウェーハ反応器のEPSILON(登録商標)シリーズが挙げられる。本願明細書に記載される方法は、シャワーヘッド配置などの代替の反応器の中で用いられてもよい。しかしながら、本願明細書に記載される方法は、特に低プロセスガス滞留時間を用いる、回転する基体を採用するEPSILON(登録商標)チャンバーの水平型単一通路・層状ガスフローリアクター配置において、特に有効であることが判明した。CVDは、プラズマ生成物をその場で(in situ)、または遠隔のプラズマ発生器の下流で導入することにより行われてもよいが、上に記載したように、熱CVDが好ましい。
【0027】
熱CVDは、好ましくはその基体の上に結晶Si含有膜を堆積するのに有効な基体温度で行われる。ある1つの実施形態では、この基体は、シリコン供給源についての、実質的に物質移行により制御される堆積条件と実質的に速度論的に制御される堆積条件との間の転移温度あたりの温度にある。当業者は、実際の製造の現実、例えば、熱量の維持、堆積速度、異なるサイズのチャンバー(単一ウェーハおよびバッチ式反応器を含む)、好ましい全圧および分圧などを考慮に入れて、温度を調整することができる。一般に、より高い分圧は、所定の所望の結果が堆積速度であろうと、層の品質であろうとまたはこれら2つの組み合わせであろうと、その所定の所望の結果のためにより低い温度を必要とする。この基体は、当該技術分野で公知の様々な方法、例えば、抵抗加熱およびランプ加熱によって加熱することができる。
【0028】
以下に記載される例示的な実施形態は、選択的なエピタキシャル堆積のためにBの代わりにBClを使用する。前駆体としてのBClは、後述するような好ましい膜、好ましくはホウ素をドープしたシリコン、SiGeおよびSiGeCの膜および合金の調製のために有用である。BClは室温で液体であり、1500torr(約199kPa)の蒸気圧、および179℃の臨界温度を有する。図1は、BおよびBClの蒸気圧のプロットを示す。Bは、17℃の臨界温度を有し、そして示されるように、BClの蒸気圧よりも約2桁高い蒸気圧を有する。BClは室温で液体であるため、その液体をガスに変換するための加熱、およびプロセスの必要条件と適合するための圧力の調節などのさらなる工程が実施され、この低蒸気圧ガスの連続的な、一相の安定な流れが形成される。加えて、BClは水素によって還元されて、以下の反応:BCl + 3/2 H → B° + 3HCl
でHClを形成することができる。この反応は、反応のために利用できるガス前駆体の量を減少させる可能性があり、その結果として堆積速度を減少させる可能性があり、そのためBClが商業的に用いられることは稀である。しかしながら、理論によっては限定されないが、選択的な堆積のためのBClの使用によって、商業的に供給されるHClに典型的に付随する不純物がなく選択性に寄与することができる純粋な形態のHClが供給される可能性がある。
【0029】
図2〜図6は、堆積パラメータの種々の組み合わせの効果を図示する。図2〜図6に示されるデータは、単結晶シリコン基体上に一連のホウ素をドープしたシリコン含有膜を堆積するために、シリコン前駆体としてジクロロシランを、ホウ素供給源としてBClを使用してEPSILON(登録商標)単一ウェーハ反応器の中で行われた熱的化学気相成長について得られた。
【0030】
図2は、BCl、ジクロロシラン、およびゲルマンを使用して堆積された2つの膜についての、BCl流量の関数としての、20%Geを有するドープされたシリコンの膜抵抗率のグラフである。図のいくつかで用いられる「ドーパント数(Dopant number)」または「DN」は、1sccmの純粋なドーパント流量または等価な希釈された流量を表す。
【0031】
y軸上の抵抗率値は、堆積された膜上での四端子プローブ測定から得られた。このグラフの右側のデータ点100は、室温で、4psi(約27kPa)の蒸気圧の下でボトルからの100%BCl蒸気の直接注入によって堆積されたSiGeの抵抗率を示す。左のデータ点102は、1標準リットル/分(slm)のHの希釈ループに通されたBClでドープされたSiGeの抵抗率を示す。注記されるとおり、この電気抵抗率は、一般に、電気的に活性な組み込まれたドーパントの量を示し、特に、高抵抗率は低いホウ素の組み込みを示す。従って、このグラフは、電気抵抗率は減少し、従って希釈ループを用いた増加するBCl流量とともに、ホウ素の組み込みは1 DNのBClにおける約5×1019at/cmから約2DNのBClにおける約7.8×1019at/cmへと増加するということを示す。他方、100%のBClの直接注入については、電気抵抗率は増加し、ホウ素の組み込みの量は着実に減少する。本発明は理論に結び付けられないが、直接BCl注入のより高い流量における抵抗率の増加は、膜中の電気的に不活性なドーパントの割合の増加に起因する可能性があるということが考えられる。例えば、ホウ素のより高いレベルでは、過剰のホウ素は、実質的に組み込まれる可能性はなく、むしろ結晶粒界へと移動して、転位が起こるかもしくは成長する可能性がある。図23Aは、この説明と整合する表面形態を示し、これは、希釈なしの高ドーパント流量におけるホウ素沈殿によって引き起こされた可能性がある表面粗さを示す。とはいうものの、図2は、置換的なホウ素の組み込みの量は、データ点102によって示されるように、約3.8mΩ・cm以下、約2.4mΩ・cm以下、約2mΩ・cm以下、または約1.8mΩ・cm以下のシリコン膜抵抗率値を得るために、1slmのHの希釈を用いて調節できるということを示す。
【0032】
上述の電気的にドープした単結晶Si含有膜はさらに、別の置換的に組み込まれた元素、例えば、ゲルマニウムなどの歪み改変的な(strain−modifying)置換的な合金化剤を含んでもよい。置換的な電気的ドーパントをシリコンの中へと組み込むための本願明細書に記載される方法は、置換的なGeをシリコンまたはSiGeの中へと組み込むためにも使用されてもよい。例えば、ある1つの実施形態では、シリコン前駆体、BCl、ゲルマニウム供給源およびHClを使用する堆積は、例えばSiGe層内に歪みを作り出すために、選択的に堆積された、電気的にドープされたエピタキシャル膜の中へとゲルマニウムを置換的に組み込むのに有効である。好ましい堆積条件下では、ゲルマニウムの組み込みレベルは、1%〜99%、典型的には17%〜50%、しばしば約20%〜約50%、およびより具体的には20%〜40%であってよい。得られたSiGe膜は、緩和するためにそれら自体を歪んだ状態に留まることなどの種々の応用例で使用されてもよく、そして上に存在するヘテロエピタキシャルなシリコン層上に引張ひずみを誘発するため、またはチャネル上に圧縮応力をもたらすために使用されてもよい。
【0033】
当該技術分野で公知のように、単結晶シリコンについての格子定数は約5.431Åであるのに対し、単結晶ゲルマニウムは、ゲルマニウム原子のより大きいサイズのために5.657Åの格子定数を有する。置換的なゲルマニウムの組み込みから生じるシリコンの本来の格子定数からのずれは、デバイス効率を改善する、半導体における電気的キャリア移動度を改善するのに有利である歪みを導入する。このSiGeが当該物質の臨界厚さ未満まで堆積される場合、その堆積された層は圧縮的に歪んだ状態に留まり、正孔移動度はPMOSデバイス用に改善される。例えば、この堆積されたSiGe層は有効面積全体にわたって選択的に形成することができ、そしてチャネルを画定することができ、またはこの堆積されたSiGe層は、その上に圧縮的に歪んだ層を形成するための緩和された鋳型として作用することができ、次いでこの圧縮的に歪んだ層はそれ自身がチャネル領域としての役割を果たすことができる。
【0034】
図3は、9つの異なる堆積条件についてのGeH流量の関数としてのSiGe中のGeの百分率、ならびにGeHおよびHCl流量の関数としてのSiGeの成長速度のプロットである。ブランケットSiGe膜は、ジクロロシランおよびGeH前駆体およびエッチング剤としてのHClを使用して、露出した8インチ(200mm)直径のシリコンウェーハ上に堆積された。x軸は、2sccmの間隔でGeH流量をプロットし、中央は4.6sccmであり、y軸は、20sccmの間隔でHCl流量をプロットし、中心は95sccmである。例えば、このプロットの中心におけるデータ点は、95sccmのHClおよび4.6sccmの希釈されたGeH(H中の10%)の流量を用いて形成されたSiGe膜についての原子%Geおよび成長速度の結果を示す。中心の点で示されるように、これらの堆積条件を用いた原子%Geは20.3%であり、このSiGe膜の成長または堆積速度は39nm/分であった。GeHの量はGeH(横)軸に沿って2sccmの増分で増やされた。例えば、GeH軸上で中心のすぐ右の点は、6.6sccmの希釈されたGeHおよび95sccmのHClという堆積条件については、原子%Geは23.5%でありかつこのSiGe膜の成長または堆積速度は58nm/分であったということを示す。従って図3は、GeH流量を増加させると、このSiGe膜中のGeの組み込みが増加し、これによりこのSiGeの堆積速度がほぼ直線的に増加するということを示す。この実験では、HClの量も、HCl(縦)軸に沿って20sccmの増分で変更された。例えば、HCl軸上の中心のすぐ上の点は、115sccmのHClおよび4.6sccmの希釈されたGeHという堆積条件については、原子%Geは20.5%でありかつこのSiGe膜の成長または堆積速度は20nm/分であったということを示す。従って図3は、HClの量を増加させるとこのSiGe膜の堆積速度は減少するが、原子%Geは変化しなかったということを示す。
【0035】
図4A〜図4Cは、5つの異なる堆積条件についての、GeHの関数としてのSiGe:B中の原子%Ge、ならびにGeHおよびHClの関数としてのSiGeの成長速度を示すプロットである。これらの実験では、図3のデータを生成するために使用された前駆体およびエッチング剤に加えてB前駆体が使用された。図4Aは、0.1sccmのBおよび75、95および115sccmのHCl(縦軸)ならびに約2.6、4.6および6.6sccmの希釈されたGeH(H中10%)(横軸)を用いて堆積されたSiGe膜についての%Geおよび成長速度を示す。図4Bおよび4Cは、それぞれ0.3sccmおよび0.5sccmのB量を用いたことを除いて、図4Aと同じ堆積条件についての結果を示す。示されるように、4sccmの希釈されたGeHおよび95sccmのHClを用いた異なるレベルのB流量は、約20%Geおよび約38〜41nm/分の膜堆積速度という同様の%Geおよび堆積速度をもたらした。%Geおよび堆積速度のこれらの値は、Bなしということを除いてGeHおよびHClの同じプロセス条件によって画定された図3の中心点に示された値と同様であった。
【0036】
図5A〜図5Cは、図3に反映される実験で使用されたジクロロシラン、GeH前駆体およびHClに加えて、図5A〜図5CではBCl前駆体を添加したことを除いて図3と同様の結果を示すプロットである。従って、図5A〜図5Cは、75、95および115sccmのHClおよび約2.6、4.6および6.6sccmの希釈されたGeH(H中10%)を用いて堆積されたSiGe膜についての%Geおよび成長速度を示す。図5A、図5Bおよび図5Cは、それぞれ、0.1、0.3および0.5sccmの量の純粋なBClを添加した結果を示す。示されるように、4sccmの希釈されたGeHおよび95sccmのHClについての異なるレベルのBCl流量も、20〜20.5%Geおよび38〜39nm/分の膜堆積速度という同様の%Geおよび堆積速度をもたらした。
【0037】
各組の堆積条件についての電気抵抗率およびホウ素濃度も測定され、図4A〜図4Cおよび図5A〜図5Cに示されている。これらの図に示されるように、他は同様の条件に対して、BまたはBClのレベルが上昇すると、電気的に活性なホウ素の組み込みは増加し、電気抵抗率は低下した。図4A〜図4Cに示されるように、Bで堆積された膜の中のホウ素濃度は、最も低い流量(0.1sccm)において1.9×1019at/cm(4.7mΩ・cmの抵抗率)であり、より高い流量(0.3sccm)において5.8×1019at/cm(2.1mΩ・cmの抵抗率)に上昇し、最も高い流量(0.5sccm)において8.9×1019at/cm(1.5mΩ・cmの抵抗率)になおさらに上昇した。図5A〜図5Cに示されるように、BClで堆積された膜の中のホウ素濃度は、最も低い流量(0.1sccm)において.75×1019at/cm(22mΩ・cmの抵抗率)であり、より高い流量(0.3sccm)において1.8×1019at/cm(7mΩ・cmの抵抗率)に上昇し、最も高い流量(0.5sccm)において2.3×1019at/cm(抵抗率は記録せず)になおさらに上昇した。
【0038】
図3、図4A〜図4Cおよび図5A〜図5Cのグラフの中心における値を比較することにより、これらの結果はまとめて、種々の流量におけるBまたはBClの存在は、未ドープのシリコンの%Geまたは堆積速度に顕著には影響を及ぼさないということを例証する。これらの結果はまたまとめて、BまたはBClからの置換的なホウ素の量が増加しても、未ドープのSiGeの%Geまたは堆積速度のどちらにも顕著には影響を及ぼさないということを例証する。上記の試験は、Bの堆積について最適に調節された条件を使用して実施されたため、それらは、BClでBを置き換えることを選択的なSiGe堆積のための実行可能な代替物として示す。
【0039】
図6は、3つの膜についてのホウ素濃度の関数としてのドープされたSiGeの4端子プローブ膜抵抗率、およびSi:Bの理論抵抗率(線によって示される)のプロットである。この3つの膜には、露出したシリコンウェーハ上にBを用いて堆積されかつ16〜35%の原子%Geを有するブランケットSiGe:B膜、パターン形成されたウェーハ上にBを用いて堆積されかつ27〜38%の原子%Geを有するSiGe:B膜、露出したシリコンウェーハ上にBClを用いて堆積されかつ18〜38%の原子%Geを有するブランケットSiGe膜が含まれる。このパターン形成されたウェーハは、酸化シリコンのフィールドに露出された50μm×50μmのシリコン窓を含む混合基体である。図6は、BCl前駆体を用いて堆積されたSiGe:B膜についての、ホウ素濃度の関数としての抵抗率の依存性は、B前駆体を用いて堆積された膜の依存性と整合し、かつ理論とも整合するということを示す。一般に、置換的なゲルマニウムの存在は、置換的なゲルマニウムを含有しない以外は同様に電気的にドープした単結晶Si含有膜と比べて、抵抗率を上昇させる傾向がある分散をもたらす。実施形態に係る、電気的に活性なドーパントおよび置換的なゲルマニウムの組み合わせは、図示された実施形態では約1.1mΩ・cm〜約1.6mΩ・cmなどの望ましく低い抵抗率値を有する膜を生成する。
【0040】
本願明細書に記載されるプロセスは、様々な基体上にSi含有膜を堆積するために有用であり、このような堆積の選択的なバージョンは、混合基体にわたってSi含有膜を堆積するために特に有用である。ある1つの実施形態は、電気的にドープされた歪んだ単結晶SiGe膜を、混合基体の単結晶領域(1つまたは複数個)上に選択的に堆積するための方法を提供する。HClは、補完的なまたは付加的なエッチング剤として提供されてもよく、その場合、非晶性の(典型的には絶縁性の)表面上でのゆっくりと核形成する堆積へのエッチング効果は、露出された半導体表面上でのエッチング効果よりも大きい。HClは精製することが困難であることが公知であり、HClの典型的な商業的供給源は、堆積プロセスの中に水分を持ち込む可能性がある。このような水分は、堆積された膜の伝導率を低下させ、エピタキシャル堆積の中に許容できないレベルの欠陥を引き起こす可能性がある。Bは、実際に選択性を阻害し、選択性を維持するためには、(固有のまたは未ドープの半導体に対して)さらなるエッチング剤を必要とする。Bとは対照的に、ドーパント前駆体BClは、さらなるエッチング剤レベルを必要とすることなく、従ってこのようなさらなるエッチング剤レベルがそのプロセスに加えがちである混入物質を回避して、シリコンベースの堆積の選択性を高める可能性がある。従って、本発明の実施形態に係るBClおよびシリコン供給源を含む供給ガスの使用は、市販のHClに付随しがちな不純物を最少にしつつ、高いレベルの選択性を可能にするという利点を提供する可能性がある。
【0041】
図7の単純化された概略図に図示されるように、人工的に誘導されたわずかの部分のハードウェアの非対称性が、ブランケット窒化シリコン膜を有するウェーハの1つの周縁上に非対称的なポリ−SiGe堆積を引き起こすことができるが、他方で、このウェーハの大部分は正味の堆積を受けない。従って、その条件は、その絶縁体上でゼロの正味の堆積が起こるような条件であるが、それらはハードウェアの非対称性についてではなく選択性についてのまさに閾値にあるため、最大堆積速度はいずれの露出されたシリコン上でも起こるであろう。従って、得られる周縁堆積は、本研究の知見を損ねない。選択性の尺度は、例えば、同じ量のBおよびBClに対して、窒化物表面を、ポリ−SiGe堆積物から清浄に維持するために必要とされるHClの量によって示される。これらの試験は、ホウ素を含まないSiGeおよびBClを用いて形成されたSiGe:Bが同様の選択性閾値を有するということを示す。しかしながら、Bを用いて形成されたSiGe:Bについて清浄な窒化物表面を維持するためにより大量のHClが必要とされた。従って、BClを用いる堆積するSiGeの選択的な成長は、Bを用いてSiGe:Bを堆積することに勝る改善された選択性を示す。
【0042】
図8〜図14は、ドーパント前駆体BおよびBClを用いて堆積されたSiGe:B膜の選択性を比較する結果を示す。選択的な成長についての閾値を決定することは、さらに後述するように不正確な科学である。しかしながら、選択性はBを用いて形成されたSiGe膜とBClを用いて形成されたSiGe膜との間で定性的に比較できるということが示された。
【0043】
図8A〜図8Bは、ブランケット窒化シリコン膜上にBおよびBClを用いて堆積されたSiGe:B膜の選択性を視覚的に比較する光学写真である。堆積条件は、1019原子/cmのホウ素の濃度および80nmの膜の厚さを目標とした。図8Aは、Bを用いて堆積されたSiGe:B膜を示し、図8BはBClを用いて堆積されたSiGe:B膜を示す。図8Bによれば、BClを用いて堆積された膜は青色の表面を生じ、これは、この窒化物表面上での最少のポリ−SiGe成長、従ってBClから形成された膜についての選択的な成長を示す。図8Aは、対照的に、この窒化物膜の周囲全体にわたるポリ−SiGe堆積物の輪を示し、これは、混合基体上のBから形成された膜については非選択的な成長が起こったであろうということを示す。
【0044】
図9は、カリフォルニア州、サンノゼのケーエルエー・テンコール(KLA Tencor)から市販されているKLA Tencor Surfscan 6200 Unpatterned Surface Inspection Systemを使用する、図8A〜図8Bの上記の窒化物ウェーハの検査の結果を示す。図9に示される粒子は、BClプロセスについてはその窒化物表面上のポリ−SiGe核の存在を示す。対照的に、Bプロセスについては検出器の飽和が起こり、これは、窒化物表面上のかなり多い量のポリ−SiGe成長を示す。従って、光学的結果および粒子計数結果は、同じ条件下では、BClプロセスは、混合基体上でBプロセスよりも高められたSiGe:B膜の選択性を提供するであろうということを示す。
【0045】
図10Aおよび図10Bは、それぞれBおよびBClを用いて、しかしホウ素濃度を約1019at/cmから1020at/cmへと増加させて堆積されたブランケット窒化物上のSiGe:B膜を比較する光学的結果である。これらの図に示すように、これらの膜は、強い光源を用いて観察された。図10Aに示されるBで堆積された膜についてのポリ−SiGe核の堆積物は、ウェーハの色を青色から金色へと変えた。対照的に、図10Bは強い光源の反射を示す。なぜなら、このBClプロセスは、単に、さもなくば青色のウェーハの周縁の周りに薄い曇りを形成しただけだからである。図11は、KLA Tencor Surfscan 6200 Unpatterned Surface Inspection Systemを用いた図10A〜図10Bの上記のウェーハの結果を示す。図11は、BClから形成された膜についての窒化物表面上のポリ−SiGe核を示す。対照的に、検出器飽和は、露出したシリコンウェーハ上のBから形成された膜の非選択的なブランケット堆積によって引き起こされた。従って、この光学的結果および粒子計数結果は、ホウ素流量および濃度が高められた場合であってさえも、BClプロセスは、Bプロセスよりも、SiGe:B膜の混合基体上での高められた選択性を提供するであろうということを示す。
【0046】
図12Aおよび12Bは、1020at/cmのホウ素濃度で、しかしHClの流量を95sccmから75sccmへと減少させて、それぞれBおよびBClを用いて堆積されたブランケット窒化物上のSiGe:B膜を比較する光学的結果である。図7の結果は、BClプロセスに対しては窒化物表面を多結晶性の堆積物から清浄にするためにそれほど多くのHClは必要とされなかったということを示すので、成長速度を最大にするためにHClの量は減らした。これらの光学的結果は、95sccmのHCl流量を用いて堆積された膜についての図10A〜図10Bの結果と同様であった。図12Aの結果については、Bで堆積された膜についてのポリ−SiGe堆積物のブランケット層は、ウェーハの色を青色から金色へと変えた。図12Bは、さもなくば青いウェーハ上で観察された強い光源の反射および同様の薄い曇り示す。図13は、KLA Tencor Surfscan 6200 Systemを用いた図12A〜図12Bの上記の膜についての対応する結果を示す。図13は、BClで堆積された膜の表面上で見出された粒子の量を示す。対照的に、Bで堆積された膜を有するウェーハについては検出器飽和が起こった。従って、図12〜図13は、SiGe:Bの選択性は、減少したHClの量を用いて、BプロセスよりもBClプロセスに対して高めされるということを示す。
【0047】
図14は、BClで堆積された膜については7×1019原子/cmの組み込まれたホウ素を有するSiGe:B膜、Bで堆積された膜については6×1019原子/cmの組み込まれたホウ素を有するSiGe:B膜について選択的な成長が起こることが示された堆積条件についてのパラメータ(GeHおよびHClの流量)をプロットする。このホウ素をドープしたSiGe:B膜のターゲット厚さは110nmであり、これは、SiGe中に20%の原子%Geを有するデバイスについての工業規格である。線104は、BClを用いて堆積されたSiGe:Bの選択的な成長が起こるプロセス条件の観察された限界を規定し、線106は、Bを用いて堆積されたSiGe:Bの選択的な成長についての対応する観察された限界を規定する。特に、線104の上に存在するプロセス条件は、BClを用いて堆積されたSiGe:Bの選択的な成長に適し、線104の下に存在するプロセス条件は、BClを用いて堆積されたSiGe:Bの誘電体表面上の非選択的な、ブランケット堆積をもたらす。線104は、約7×1019原子/cmの組み込まれたホウ素を達成するためのBClの量および4sccmのGeH(20.3% Ge)を用いて堆積されたSiGe:B膜については、図14の中心のデータ点を規定するプロセス条件によって示されるように、HClの流量が95sccm以上である場合に選択的な成長が起こるということを示す。BClおよび6sccmのGeH(23.5% Ge)を用いて堆積されたSiGe:B膜(約7×1019原子/cmのホウ素を有する)については、図14の線104に示されるように、HClの流量が100sccm以上である場合に選択的な成長が起こる。同じ線104は、何らのドーパントも用いずに堆積された固有のまたは未ドープのSiGeに対する近似的な選択性条件を表すということに留意されたい。線106は、約6×1019原子/cmの組み込まれたホウ素を達成するためのBの量および2sccmのGeH(15% Ge)を用いて堆積されたSiGe:Bについては、HClの量が約100sccm以上である場合に選択的な成長が起こるということを示す。データ点の数は限定されているが、図14は、線104の傾きが線106の傾きと同程度である場合には、線106を外挿してy軸を横切らせることで、4sccmのGeHを用いると、BClについてよりもBプロセスについてはるかにより高いHClの値にデータ点が得られるであろうということを示唆する。その場合、線104は、x軸、%Ge上のいずれの所定の点においても、y軸、HCl量上で、線106よりもより下側へずれるであろう。従って、図14は、ほぼ同じ量のホウ素の組み込みおよび%Geを有するSiGe:Bについては、BClを用いて堆積されたSiGe:Bの選択的な成長については、Bを用いて堆積されたSiGe:Bの選択的な成長についてよりもかなり少ないHClの量しか必要とされないこと、および従って選択的な堆積のためにより少ないHClしか必要としないことによって、BClは、BよりもSiGe:B膜の選択性を高めるということを示唆する。
【0048】
図15〜図26は、酸化シリコンのフィールドに露出されたシリコン窓の混合基体上にBClおよびBを用いて堆積されたSiGe:B膜の膜特性を比較する。使用される混合基体は直径200mmであり、106個のダイ(die)を含んでいた。露出されたシリコンの全体量は38.7%であったが、露出されたポリシリコンの量は29.6%であった。これは、シリコン窓のわずか約9%が単結晶であったということを示す。このウェーハの表面の一部分は、当該技術分野で公知のマスク材料をも含んでいた。このパターン形成されたウェーハは、露出したSi(100)基体上の最初にブランケット膜によって定められた堆積条件に従う膜を用いて堆積された。
【0049】
図15A〜図15Dは、混合基体上にSiGe:B膜を堆積するためのプロセス条件を決定するために、それぞれBおよびBClを用いて堆積された露出したシリコンウェーハ上の2つのSiGe:Bブランケット膜の、それぞれXRD、膜厚、原子%Geおよび抵抗率の結果のプロットである。図15AはBClを用いて堆積されたSiGe:B膜の平均厚さ(105.7nm)がBを用いて堆積された膜の平均厚さ(107.5nm)よりもわずかに足りないということを示すが、BおよびBClについてプロセス条件が異なるため、このプロットは、ドーパント前駆体に対する厚さ依存性を示すものではない。例えば、同程度の初期量のBおよびBClを注入する代わりに、BおよびBClプロセスの両方について約1020at/cmのホウ素濃度を与えると以前に決定された量が注入された。特に、Bプロセスについては、0.2sccmの純粋なBが50slmのHの希釈ループとともに注入された。BClプロセスについては、2.2sccmの純粋なBClが1slmのHとともに注入された。しかしながら、理論に制限されないが、BおよびBClプロセスについてほぼ同じホウ素濃度に対する、BClを用いて堆積された膜のより小さい膜の厚さは、エッチングへのBClの寄与を示すことができ、BClがSiGe:B膜の選択的な成長を高めるということを示唆することができる。これらの図面に示すように、同程度のホウ素濃度を得るように調節されたBおよびBClプロセスに対するXRD、抵抗率または原子%Geの結果には他の有意差は示されなかった。図15Cに示されるように、当該BおよびBClプロセスは、Bで堆積された膜について18.5%およびBClで堆積された膜について18.27%の平均原子%Ge値を与えた。図15Dに示されるように、当該BおよびBClプロセスは、Bで堆積された膜について1.572mΩ・cmおよびBClで堆積された膜について1.578mΩ・cmの平均抵抗率値を与えた。
【0050】
図16A〜図16Dは、露出したシリコン基体上のSiGe:Bブランケット膜および同じプロセス条件を用いて混合基体上に選択的に堆積された膜について、深さの関数としてホウ素濃度を比較する二次イオン質量分析(SIMS)結果のプロットである。図15A〜図15Dに関して上記した露出したシリコン基体上のブランケット膜堆積からの同じプロセス条件が混合基体上で使用されたが、混合基体においては同じホウ素濃度は予想されなかった。「装填効果」に起因して、混合基体についてははるかにより高いホウ素濃度がBおよびBClプロセスの両方に対して予想された。なぜなら、露出されたシリコンの有効面積ははるかに小さいからである。図16Aは、Bプロセスによって形成された露出したシリコン基体上のSiGe:Bブランケット膜は6.8×1019at/cmのホウ素濃度をもたらすということを示す。図16Bは、混合基体上の同じB処方は1.3×1020at/cmのホウ素濃度をもたらすということを示す。従って、露出したシリコン基体上のSiGe:Bブランケット膜から混合基体上に堆積された膜へのホウ素濃度の増加から、Bプロセスについて装填効果が実証された。図16Cは、BClプロセスを用いて形成された露出したシリコン基体上のSiGe:Bブランケット膜は7.6×1019at/cmのホウ素濃度をもたらすということを示す。しかしながら、図16Dは、混合基体上の同じBCl処方はわずか7.9×1019at/cmのホウ素含量をもたらすということを示す。露出したウェーハから混合基体へのホウ素濃度の変化は著しくはないため、驚くべきことに、BClで堆積された膜については、予想はされたが、SIMS分析下では装填効果は実証されなかった。
【0051】
図17Aおよび17Bは、それぞれ、BClおよびBを用いて堆積された上記の混合基体に対するファン・デル・パウ(Van der Paw)試験の抵抗、電圧および電流の結果 (R、V 対 I)を示す。図17Aに示されるように、Bで堆積された混合基体について1.1Ωcmの抵抗率が測定された。これは、1.1×1020at/cmのホウ素濃度に相当する。ホウ素濃度のこの測定された値は、図16Bに示されるように、Bで堆積された混合基体に対するSIMS試験によって得られた値、1.3×1020at/cmと同程度である。図17Bは、BClで堆積された混合基体について1.3Ωcmの抵抗率が測定されたということを示す。これは、約8.9×1019at/cmのホウ素濃度に相当する。この値は、対照的に、図16Dに示されるように、BClで堆積された混合基体についてのSIMS試験によって得られた値、7.9×1019at/cmよりも大きい。ホウ素濃度の測定におけるこの増加は、80μm×80μmの試験窓サイズを用いるSIMS試験は巨視的装填効果を例証するために有用であること、および40μm×40μmの試験窓サイズを用いるファン・デル・パウ試験は、対照的に微小装填効果を決定することができることを示唆する重要な変化である。本発明は理論に制限されないが、図16DのSIMS結果からのBClで堆積された膜についての装填効果の予想外の不存在は、図17Bのファン・デル・パウ結果によって示唆される微小装填効果によって説明されるかも知れない。
【0052】
図16Dに示されるように、BClで堆積された混合基体のSIMS試験から観察された低ホウ素濃度によって示された巨視的装填効果の見かけの不存在をさらに評価するために、混合基体にわたるSiGe:B膜の中のその場での(in situ)ホウ素の組み込みを増加させるために、BClプロセスについてのドーパントガス流量を増加させた。図18〜図19は、約1019at/cmから1020at/cmへホウ素濃度を増加させるために増加されたBClの量を用いて露出したシリコン基体上および混合基体上に堆積されたSiGe:B膜を比較する。このBCl流量は、1slmのHとともに2.2sccmから2.9sccmへと増やされたが、他方でB流量は50slmのHとともに0.2sccmの純粋なBに同じに保たれた。図15〜図17に関して上で記載されたのと同じ混合基体が使用された。上記のウェーハに関しては、BおよびBClを用いて堆積されたブランケットSiGe:B膜が最初に露出したシリコン基体上に形成され、所望のホウ素濃度を達成するための堆積条件が決定された。図18Aおよび18Bは、それぞれBClおよびBプロセスを用いて堆積された露出したシリコンウェーハ上のブランケットSiGe:B膜についてのXRDおよび電気抵抗率のプロットを示す。図15〜図17のプロセス条件に関してはBCl流量は増やされたが、B流量は同じに保たれたため、BClを用いて堆積された膜の抵抗率はBを用いて堆積された膜よりもかなり低下した。図18Bの線108に示されるように、Bを用いて堆積された膜についての抵抗率は1.6〜1.75mΩ・cmの範囲にあり、線110に示されるようにBClを用いて堆積された膜についての抵抗率は約1.2mΩ・cmと測定された。図18A〜図18BのブランケットSiGe:B膜を形成するために使用されたBClおよびBプロセスは、次に、混合基体上に選択的なSiGe:B膜を形成するために使用された。
【0053】
図19A〜図19Bは、深さの関数として、それぞれ露出したシリコンウェーハ上および混合基体上にBを用いて堆積されたSiGe:B膜についてのホウ素濃度を比較するSIMSプロットである。図19C〜図19Dは、露出したシリコンウェーハ上におよび混合基体上に増加されたBClの流量を用いて堆積された膜についての対応する結果を比較するSIMSプロットである。図19Aは、ブランケットSiGe:B膜についてBプロセスは6×1019at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示す。図19Bは、上記混合基体上での同じBプロセスは9.5×1019at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示す。従って、混合基体上のBで堆積された膜について装填効果がここでも観察された。図19Cは、ブランケットSiGe:B膜について上記のBClプロセスは1.2×1020at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示す。図19Dは、パターン形成されたウェーハ上での同じBClプロセスは1.7×1020at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示す。従って、巨視的装填効果も、混合基体上のBClで堆積された膜について観察された。従って、巨視的装填効果はBClプロセスについては観察されず1019at/cmのその場での(in situ)ホウ素濃度を与えるが、ホウ素濃度が1020at/cmまで増加した後は、その効果が観察された。しかしながら、これらの結果によって示されるように、装填効果の増加の割合(%)は、Bプロセスと比較してBClプロセスについて最少となった。
【0054】
BClが、誘電体表面を堆積物から清浄にするためにより少ないHClしか必要としないことで選択性を高めることが示されたため、このHCl流量が減少された。特に、SiGe:B膜が、より高い流量のBClおよびより低い流量のHClを用いて、露出したシリコンおよび混合基体上に堆積された。B流量は50slmのHとともに0.2sccmの純粋なBで同じに保たれ、BCl流量は、1slmのHとともに2.9sccmで図18〜図19の条件と同じに保たれた。図20は、BおよびBClプロセスの両方を用いて堆積された、露出したシリコン基体上の得られたブランケット膜についての半径の関数としての抵抗率のプロットである。線112に示されるように、Bを用いて堆積された膜についての抵抗率は1.4〜1.6mΩ・cmの範囲にあり、これは、約1.1×1020at/cmの活性化されたホウ素濃度に相当する。線114に示されるように、BClを用いて堆積された膜についての抵抗率は1〜1.1mΩ・cmの範囲にあり、これは約8.6×1019at/cmの活性化されたホウ素濃度に相当する。これらの堆積条件は、パターン形成されたウェーハ上に75sccmの減少したHCl量を用いてSiGe:B膜を堆積するために使用された。
【0055】
図21A〜図21Bは、露出したシリコン基体上のおよび混合基体上のBで堆積された膜を比較する、深さ(SIMSによる)の関数としてのホウ素濃度のプロットである。図21C〜図21Dは、露出したシリコンウェーハ上および混合基体上のBClで堆積された膜についての対応する結果である。図21Aは、ブランケットSiGe:B膜について、上記のBプロセスは8×1019at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示す。図21Bは、混合基体上での同じBプロセスは1.3×1020at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示す。従って、いくらかの装填効果がこのBで堆積された膜について観察された。図21Cは、露出したシリコン基体上のSiGe:Bブランケット膜について上記のBClプロセスは2.8×1020at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示す。図21Dは、混合基体上での同じBClプロセスは5.12×1020at/cmのホウ素濃度をもたらしたということを示し、これはかなりの装填効果を示す。これらの結果は、HCl含量を減少させるとBおよびBClプロセスの両方について混合基体上での装填効果が増大することを示唆する。BClプロセスについてのホウ素濃度のかなりの増加に対して考えられる理由は、SEM観察に関連して下記で論じられる。
【0056】
図22〜図24は、混合基体上の上記のSiGe:B膜の表面を示すSEM顕微鏡写真である。図22A〜図22Cおよび図23A〜図23Cは、3つの異なるダイの中心のSEM顕微鏡写真であり、図22Dおよび図23Dは第4のダイの周縁を示す。図22A〜図22Dは、図21A〜図21Bの結果に対応する、2.2sccmのBおよび75sccmのより低いHCl流量を用いて堆積されたSiGe:B膜のSEM顕微鏡写真である。図23A〜図23Dは、図21Dによって示されたように5.12×1020at/cmという著しく高いホウ素濃度をもたらした、75sccmのより低いHCl流量とともに2.9sccmのBClを用いて堆積されたSiGe:B膜のSEM顕微鏡写真である。図22A〜図22Dを図23A〜図23Dと比較すると、HCl流量の減少は、BClプロセスについては表面粗さに著しい効果を引き起こしたように見える。理論によって制限されないが、より低いHCl量は、パターン形成されたウェーハ上でのBClプロセスについての装填効果を高めたようであり、かつホウ素濃度を増加させたようである。この増加したホウ素濃度は表面被毒(surface poisoning)につながった可能性があり、その粗さは図23A〜図23Dに示される。2.9sccmの同じBCl流量、しかし95sccmのより高いHCl流量を用いたパターン形成されたウェーハ上のSiGe:B膜に対して行われたさらなるSEM観察(図示せず)から、その表面は増加したHCl流量に伴って粗いのではないということが示された。従って、これらの結果は、BClプロセスについてのホウ素の装填効果および過剰の組み込まれたホウ素によって引き起こされる考えられる表面被毒効果は、HCl量を調節することによって調整される可能性があるということを示唆する。
【0057】
図24A〜図24Bは、0.2sccmの純粋なBのB流量および50slmのHおよび95sccmのHCl流量を用いて堆積されたSiGe:B膜の光学顕微鏡写真であり、図24C〜図24Dは、2.2sccmのBCl流量および1slmのH、および95sccmのHCl流量を用いて堆積されたSiGe:B膜の光学顕微鏡写真である。図24A〜図24Dの光学顕微鏡写真は、図15〜図17の結果に対応する。図24Bおよび24Dは、図24Aで強調された四角形の詳細図を示す。特に、両方の膜についての「プローブ接合(probe junction)」領域は高用量のホウ素インプラントを受け取り、これはSiGe層を緩和させる。図24Bに示されるように、Bを用いて堆積された膜についてのプローブ接合領域は滑らかである。しかしながら、図24Dは、BClを用いて堆積された膜についてのプローブ接合領域はその表面上で粗いということを示す。BClで堆積された膜についてのSiGe:Bの粗さは、下に存在する基体のインプラント条件に対する感度を示すようである。本発明は理論に制限されないが、この結果に対する1つの可能性のある説明は、Bはこの層を滑らかにする界面活性剤効果を有する可能性があるということである。別の可能性のある説明は、BClプロセスについてさらなるエッチング剤に寄与するHClが、エピ層の種となる核形成工程の間に欠陥のあるプローブ接合領域をエッチングしたということである。
【0058】
本願明細書に記載される歪み改変的な置換的なドーパント(ゲルマニウムなど)を含む電気的にドープされた単結晶シリコン膜の厚さは、好ましくは臨界膜厚未満である。臨界膜厚は、歪んだ膜が特定の一組の条件下で緩和する厚さであるということを当業者は理解する。置換的なドーパントの濃度が増加するにつれて、この臨界厚さは一般に減少する。その膜についての臨界厚さ未満の厚さを有する膜は、例えば緩和を引き起こすのに十分な熱に曝露されることにより、十分にかき乱されない限り、または十分にかき乱されるまで、歪んだまま留まる傾向があるであろう。歪み改変的な置換的なドーパント(炭素またはゲルマニウムなど)を含む緩和されたSi含有膜は、隣接する層、例えば、そのSi含有膜にわたって堆積されたヘテロエピタキシャルな膜に対して歪みをもたらすために使用されてもよい。
【0059】
好ましいSi含有膜は、その膜の表面にわたって高度に均一な厚さをも有する。本願明細書に記載されるBClとともにシリコン供給源を使用して堆積が行われる場合、得られたSi含有膜についての厚さ不均一性%は、好ましくは約2%以下である。その膜の平均厚さに依存して、厚さ不均一性%についてのさらなる値が、以下の表1に示されるように、好ましい場合がある。表1に示される厚さ不均一性%についての各値は、語「約」が前にあるかのごとくに理解されたい。
【0060】
【表1】

【0061】
一般に、特定の一組のプロセス条件の下で堆積された膜についての膜厚均一性の測定は、その膜を約200mm〜約300mmの範囲の直径を有する均一なまたは混合基体の上に堆積することによって行うことができる。膜厚均一性は、無作為に選択された直径に沿って多点厚さ測定を行い(そのウェーハ周囲にある3mm除外区域(exclusion zone)の内では測定は行われない)、種々の厚さ測定値を平均することにより平均の厚さを決定し、そして二乗平均(rms)変動量を決定することにより、決定される。膜厚を測定するための好ましい機器は、カリフォルニア州、フレモントのサーマウェーブ(Thermawave)から市販されているOPTIPROBE(商標)を利用し、そして好ましい測定方法は、そのような機器を使用して、無作為に選択されたウェーハ直径に沿って49点で膜厚を測定することを含む。実際に、厚さ変動量は、典型的にはこのような測定後にその機器から直接得られ、従って手動で算出する必要はない。比較を可能にするために、これらの結果は、不均一性%として表すことができ、rms厚さ変動量を平均の厚さで割って、その結果を百分率として表すために100倍することにより算出できる。このような測定がアクセスできない表面を有する膜、例えば、上に1以上のさらなる層が付与されている膜、または集積回路内に含まれる膜、の厚さ均一性を測定する場合は、その膜は横断面で切られ、電子顕微鏡観察によって調べられる。その膜厚は横断面で切られた膜の最も薄い部分および最も厚い部分で測定され、これらの2点間の厚さの測定値の幅(例えば、6Å)が次にその2つの測定値の和で除算される。この不均一性は、本願明細書において百分率として表される。
【0062】
図25〜図26は、パターン形成されたウェーハ上にBおよびBClを用いて堆積されたSiGe:B膜の均一性および厚さを示す。図25Aは、未変性の酸化物をそのシリコン表面から除去するHCl前洗浄工程の後の混合基体の初期のトポグラフィを示す。図25B〜図25Cは、80nm膜のターゲット厚さ、95sccmのHClおよび1020at/cmのホウ素を有するSiGe:B(20% Ge)膜の堆積後の混合基体のトポグラフィを示す。図25BのSiGe:B膜は、0.2sccmの純粋なBおよび50slmのHを用いて堆積され、図25CのSiGe:B膜は、2.2sccmのBClおよび1slmのHを用いて堆積された。示されるように、図25Bは、Bを用いて堆積されたSiGe:Bについての125.3nmの平均厚さを示す。図25Cは、BClを用いて堆積されたSiGe:Bについての105.8nmの平均厚さを示す。不均一性の尺度は、図25B〜図25Cの左の凡例に与えられるHi/Lo変化量によって与えられ、これはBプロセスについて1.56%、およびBClプロセスについて6%と測定された。Bで堆積された膜は、より低い不均一性の測定値を有していたが、BClで堆積された膜は、表1の第1の縦列に示されるような好ましい範囲に入るのに十分に低い不均一性測定値を有していた。これらの図は、BおよびBClプロセスについての膜均一性における定性的な差をも図示する。図25Bに示されるように、Bを用いて堆積されたSiGe:B膜は、ウェーハの周縁でより厚く成長したように見える。対照的に、BClを用いて堆積されたSiGe:B膜は、図25Cに示されるように、中心でより厚く成長したように見える。
【0063】
図26A〜図26Cは、上記のBおよびBClプロセスによって形成されたパターン形成されたウェーハの誇張された3Dトポグラフィを示す。図26Aは、HCl前洗浄工程後のパターン形成されたウェーハの初期のトポグラフィを示す。図26Bおよび図26Cは、それぞれBおよびBClによって形成されたSiGe:B膜を有するウェーハのトポグラフィを示す。図26BのSiGe:B膜は、0.2sccmの純粋なBおよび50slmのHを用いて堆積され、図26CのSiGe:B膜は、2.9sccmのBClの増加した流量および1slmのHを用いて堆積された。示されるように、図26Bは、Bを用いて堆積されたSiGe:Bについて133.2nmの平均厚さを示す。図26Cは、BClを用いて堆積されたSiGe:Bについて84.6nmの平均厚さを示す。不均一性は、Bプロセスについては3.74%、およびBClプロセスについては8.3%と測定された。BClで堆積された膜についての値は、表1の左の縦列に示されたとおりの不均一性の好ましい範囲の中にも入り、そしてさらにBClがドーパント前駆体としてBの適切な代替物であるということを示す。
【0064】
上記の結果は、BClは、同等なSiGe:B堆積速度、ドーパントの置換的な組み込み、膜抵抗率および均一性を備えた高度にドープされたSiGe:B層を成し遂げるための適切なCVD前駆体であるということを示す。前駆体としてのBClは、従来のB前駆体がもたらすのと少なくとも同じ選択的なSiGe:Bの成長をもたらすということは、パターン形成されたウェーハについての上記の試験から明らかである。しかし加えて、BClは、誘電体表面上に著しく少ない核を生成し、より少ないHCl(これは、不純物を加えて結晶の品質を低下させる傾向がある)しか必要とせず、従ってSiGe:B膜の選択的な成長にとってはBよりも有効な前駆体である。加えて、これらの結果は、発生して過剰のホウ素の組み込みまたは表面被毒をもたらす可能性がある、パターン形成されたウェーハの中のホウ素濃度の装填効果は、HCl量を増加させることにより調節できるということを示す。とはいうものの、これらの結果は、BClプロセスは、等価な結果のためにはBプロセスよりも少ない全体的な付加的なエッチング剤を用いることができ、従ってより優れた選択的な堆積を提供できるということを示唆する。特に、これらの結果は、1019〜1020at/cmのホウ素濃度に対して、および95sccmのHClを用いた場合、BClプロセスについては、Bプロセスと比べて選択性が高められて装填効果が最小化されるということを示す。従って、本願明細書に記載されるプロセスは、様々な基体上にSi含有膜を堆積するために有用であるが、混合表面形態を有する混合基体にわたってSi含有膜を堆積するために特に有用である。
【0065】
図27は、図示された実施形態におけるシリコンウェーハを含む混合基体またはパターン形成された基体10を示す。上記のとおり、混合基体10は、ウェーハまたはSOI基体にわたって形成されたエピタキシャル層を含むことができる。フィールド分離領域12は、従来の浅溝型素子分離(shallow trench isolation、STI)技術によって形成されており、STI素子の間の窓に単結晶有効面積14が画定された。あるいは、いずれかの適切な方法を使用して、フィールド絶縁体を画定することができる(シリコン局所酸化法(LOCOS)および多くのLOCOSまたはSTIについての変法を含む)。いくつかの有効面積は典型的には基体10にわたってSTIによって同時に画定されること、およびSTIはトランジスタ有効面積14を互いに分離するウェブ(web)を形成することが多いということは理解されるであろう。基体は、好ましくは、チャネル形成に適したレベルにバックグラウンドドープされる。
【0066】
図28は、有効面積14にわたるゲート電極16の形成後の混合基体またはパターン形成された基体10を図示する。絶縁性スペーサおよびキャップ層によって囲まれ、かつゲート誘電体層18によって下に存在する基体10から分離された従来からのシリコン電極として図示されているが、このトランジスタゲートスタックは様々な構成のいずれでも有することができるということは理解されるであろう。いくつかのプロセスフローでは、例えば、スペーサを省くことができる。図示された実施形態では、ゲート電極16の配置によって、有効面積14内のトランジスタゲート電極16のいずれかの側にソースおよびドレイン領域20が画定される。ゲート電極16はまた、ゲート電極16の下でかつソースおよびドレイン領域20間にチャネル領域22を画定する。
【0067】
図29は、ソースおよびドレイン領域20から露出されたシリコンを選択的に除去するエッチング工程の結果を示す。他の凹部形状が適用できるが、垂直の側壁の画定ならびに露出された酸化物および窒化物材料への最少の損傷を確実にするために反応性イオン・エッチング(RIE)を用いることができる。好ましくは、凹部の深さは、その凹部の中に堆積されるべき層の臨界厚さ未満であるが、臨界厚さを超える堆積によってそのチャネル上の歪みを得ることもできる。露出されたシリコンは実質的に有効面積14のソースおよびドレイン(S/D)領域20であるので、このエッチングはソース/ドレイン凹部と呼ばれる。いくつかの配置において、このソース/ドレイン領域にわたって薄い誘電体を清浄にするという第1の工程が用いられてもよいということは理解されるであろう。
【0068】
図30は、凹型のS/D領域20を選択的な堆積プロセスを用いて再充填した結果を示す。特に、この露出された半導体表面は、例えばHF蒸気またはHFへの最後の浸漬(last dip)を用いて清浄にされ、その表面にわたるエピタキシーのために汚れていない表面を残す。図示された実施形態では、この選択的な堆積プロセスは、化学気相成長条件下で混合基体10の表面に供給ガスを導入する工程を含む。ジクロロシラン(DCS)などのシリコン前駆体、およびBClは相互混合されて供給ガスを形成する.図27〜図31の実施形態については、GeをドープしたSi含有膜を堆積してチャネル領域20上に歪みを作り出すために、ゲルマニウム供給源も、当該供給ガスの中に含まれる。図示された実施形態では、BClもドーパント前駆体としての役割を果たし、HClは選択性を支援するためのエッチング種のさらなる供給源としての役割を果たす。Si含有エピタキシャル層30はS/D領域20で選択的に成長する。層30は、S/D領域20を充填してチャネル領域22上に歪みをもたらす、ドープされたヘテロエピタキシャルな膜である。図示された実施形態では、ヘテロエピタキシャルな膜30は、チャネル領域22の表面とおよそ同一平面にある。図示されるように、この選択的な堆積は、非晶性の領域にわたる、例えばフィールド分離領域12(これは一般に酸化シリコンの形態にある)、ならびにゲート電極16(これは、典型的には酸化シリコンまたは窒化シリコンである)上のスペーサおよび/またはキャップ層を含む絶縁体にわたる堆積を最少にするかまたは回避する。
【0069】
図31は、伸長されたヘテロエピタキシャルな膜32を用いて高められたS/D領域20を形成するための、選択的な堆積の任意の伸長を図示する。チャネル領域22の表面の下の伸長された膜32の一部分は、チャネル領域22に対して横方向の応力をもたらすため、その基体の表面の上の部分は、本来のシリコン格子定数からの等しいまたは何らかの格子のずれを含む必要はない。従って、チャネル領域22の表面の上の選択的な堆積の部分については、いずれかのゲルマニウム供給源ガスは徐々に減少されてもよいし、停止されてもよく、そしてBCl、DCSおよびHCl流量は継続される。BClも、任意に中断されてよい。
【0070】
図31の高められたS/D構造32は、その基体の表面10の上にさらなるシリコン材料を提供する。当該技術分野で公知のように、その後の加工によって、絶縁層が堆積され、その絶縁膜を介してソースおよびドレイン領域20へと接点が作製される。このさらなるシリコン材料は、抵抗接点を形成することにより接触抵抗を減少させる自殺接点(suicide contact)の形成を容易にする。従って、ニッケル、コバルトまたは他の金属がコンタクトホールの中へと堆積されて、その金属が、下に存在するソース/ドレイン領域のためのシャロージャンクションの電気特性をかき乱すことなく、過剰のシリコンを消費することが許容される。
【0071】
図32は、図28の構造が、さらなるエッチング剤としてのHClとともにBClおよびシリコン供給源を使用するが、しかし介在するS/D凹部形成工程がない選択的な堆積に供される別の実施形態を示す。この場合、この選択的な堆積は、ソースおよびドレイン領域を上昇させるためだけの役割を果たし、シャロージャンクションを破壊することなく接触ケイ化(contact silicidation)による消費を許容するための過剰のホウ素をドープしたシリコン34を提供する。この堆積は、シリコン合金、例えば、SiGeを堆積するための他の不純物前駆体を任意に含むことができる。しかしながら、全体として過剰のシリコン構造34が接触ケイ化によって消費されうるのであれば、このような不純物は不必要である。
【0072】
当該BCl/シリコン供給源プロセスの選択的な性質は、フィールド領域の上から過剰の堆積を除去するための、その後のパターン形成およびエッチング工程の必要性をなくす。不完全な選択性であっても、有利なことに、高価なマスク工程を必要とするのではなく、望ましくない堆積を絶縁性表面にわたって除去するための時限の湿式エッチングの使用を許容することができる。さらに、より優れた膜の品質が比較的高い堆積速度で得られ、スループットを改善する。例えば、例えばヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)のベース構造を形成するために、シリコン供給源(トリシラン、メチルシランなど)、BCl、および任意に塩素を使用して、ホウ素をドープしたSiGe:Cを選択的に堆積するために特定のプロセスの実施形態が使用されてもよい。図27〜図31の例は、チャネルの電気的キャリア移動度を改善するための凹型のソース/ドレイン領域および歪んだエピタキシャル層を伴う。しかしながら、選択的な、エピタキシャルな、Si含有堆積が望ましい多くの他の応用例は、当業者なら分かるであろう。
【0073】
図33Aは、キャリアガスの供給源、BClの供給源、任意のゲルマニウム供給源、シリコン供給源(この場合、ジクロロシラン)およびさらなるエッチング剤供給源を用いる好ましい反応器システム100を図示する。示されるように、純化装置102がキャリア供給源104の下流に配置されている。キャリアガスの流れのいくらかはバブラー106へと分岐され、このバブラー106からこのキャリアガスは気化されたジクロロシラン108を運ぶ。あるいは、このジクロロシランは単に加熱されて、その液体の上の空間の中のジクロロシランの蒸気圧が高められてもよく、このキャリアガスは、それがその空間を通過するときに、ジクロロシランを受け取る。図示された構成では、液体反応物質供給源容器106の下流には、その蒸気を通る音速を測定することにより、流れるガスの反応物質濃度を測定する分析器110がある。その測定に基づき、ソフトウェア制御された下流の質量流量コントローラ「MFC」112に対する設定値は、分析器110によって変更される。このような分析器は市販されている。
【0074】
このMFC112を通る流れは、主キャリアガスMFC 114を通る主キャリアガスおよび気体パネルの他の反応物質と、堆積チャンバー122のための注入マニホルド120の上流で合流する。エッチング剤ガス130(HClまたはClなど)の供給源も提供される。ゲルマニウム供給源132およびBCl供給源134も提供される。ある1つの実施形態によれば、BCl供給源134は、液体BClを加熱してBCl蒸気を形成することができるか、または撹拌もしくはバブリングによって液体BClをかき乱してその液体の上の空間の中のBClの蒸気圧を上昇させることができる気化器の中に提供される。
【0075】
図示されるように、反応器システム100は、システム100の種々の制御可能な構成要素に電気的に接続された中央コントローラ150も含む。このコントローラは、反応チャンバー122内に収容された基体の上で本願明細書に記載される堆積プロセスを実行するために、ガスの流れ、温度、圧力などを提供するようにプログラムされている。当業者なら分かるとおり、コントローラ150は、典型的にはメモリおよびマイクロプロセッサを含み、そしてソフトウェアによってプログラムされていてもよいし、配線で接続されていてもよいし、またはこれら2つの組み合わせであってもよく、そしてこのコントローラの機能性は、異なる物理的位置に置かれたプロセッサの間で分散されてもよい。従って、コントローラ150は、システム100にわたって分散された複数のコントローラを表すこともできる。
【0076】
図33Bは、ゲルマン供給源132またはBCl供給源134などのドーパント供給源を備えていてもよい、ある1つの実施形態に係るドーパント希釈システムを示す。図示された実施形態では、純粋な未希釈の形態のドーパント供給源は制御された圧力供給源142を通り、次いで「タンク」質量流量コントローラ144に到る。Hの流れが、このドーパントの流れに対して、制御された圧力供給源140から「タンク」質量流量コントローラ144へと加えられる。次いでこの合わされたガス流は、2つのガス流を混合して純粋な未希釈のドーパントを希釈するガス混合装置146を通る。次いでこの合わされたガス流は、バルブ150を通って反応器の本流へまたは排出口154へと向けられる「注入」質量流量コントローラ148を通ってもよい。または、この合わされたガス流は、直接排出口154につながる「希釈」質量流量コントローラ152を通ってもよい。
【0077】
従って、BClおよびシリコン供給源の組み合わせは、シリコン含有物質、特にエピタキシャル層の高められた選択的な堆積をもたらす。ゲルマニウム供給源132もまた、示されるように、任意に提供され、SiGe膜のその場での(in situ)ドーピングを可能にしうる。図示された実施形態では、本願明細書に上で開示されるとおり、高い置換的なホウ素の含量が達成できる。
【0078】
当該方法およびシステムの好ましい実施形態が以下の実施例で示される。この実施例は例示のためだけのものであり、本開示を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
8インチ(約20cm)のパター形成されていない、露出したSi<100>ウェーハ基体を、Epsilon E2500(商標)反応器システムへと装填した。この基体を反応チャンバーの中へと導入し、30slmの水素流量を用いて795℃および10 Torr(約1.3kPa)に2分間加熱し、そしてこの基体を20分間安定させた。次いで、基体の温度が750℃まで低下したときに、この水素流量を20slmまで低下させた。次いでこの基体を1分間安定化させ、このあと、130sccmの流量のジクロロシランおよび2.9sccmのGeH(H中10%)を導入した。2.2sccmの流量のBCl(1slmのHを伴う)を提供し、約10 Torr(約1.3kPa)の堆積圧力で堆積を行った。約106nm(XRD)の厚さを有する連続的な、均一なホウ素をドープしたSiGe膜を、この単結晶基体にわたって2分30秒間堆積した。次いでこの基体を反応器から取り出し、ロードロックに戻した。このシリコンウェーハ上に堆積したホウ素をドープしたSiGe膜は、良好なエピタキシー品質、1.58Ω・cm(平均)の抵抗率を有し、そして約18原子% Geを含有していた。
【0080】
(実施例2)
ホウ素をドープしたSiGe膜を、単結晶領域および絶縁体(酸化物)領域を有するパターン形成された基体を使用したことを除いて、実施例1に記載したようにして堆積した。このホウ素をドープしたSiGe膜は、絶縁体領域上での測定できる堆積なく、その単結晶領域にわたって選択的に生成した。堆積されたSiGeも、約106nmの厚さを有していた。
【0081】
上で示され説明された実施形態は、特定の好ましい実施形態の例としてのみ提供される。添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本開示の趣旨および範囲からの逸脱なしに、当業者によって、本願明細書において提示された実施形態に対して種々の変更および改変が行われうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学気相成長により単結晶シリコン膜を選択的に堆積するための方法であって、
反応チャンバーの中に基体を準備する工程であって、前記基体は第1の表面形態を有する第1の表面および前記第1の表面形態とは異なる第2の表面形態を有する第2の表面を含む、工程と、
シリコン前駆体をBClと相互混合して、これにより供給ガスを形成する工程と、
前記反応チャンバーの中で前記基体を前記供給ガスに曝露する工程と、
前記曝露する工程により、前記第2の表面上に堆積することなく、前記基体の前記第1の表面の上へとSi含有層を選択的に堆積する工程と
を含む方法。
【請求項2】
シリコン供給源が、シラン、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、モノクロロジシラン、ジクロロジシラン、トリクロロシラン、トリクロロジシラン、ネオペンタシラン、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコン供給源がジクロロシランである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコン前駆体およびBClを、ハロゲン含有エッチング剤と相互混合して、前記供給ガスを形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン含有エッチング剤がHClを含み、前記シリコン前駆体およびBClを前記エッチング剤ガスと相互混合する工程が、単一ウェーハCVDチャンバーについて約75sccm〜約115sccmのHClを流すことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコン前駆体およびBClをゲルマニウム供給源と相互混合して、前記供給ガスを形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲルマニウム供給源がゲルマンであり、前記シリコン前駆体およびBClを前記ゲルマニウム供給源と相互混合する工程が、単一ウェーハCVDチャンバーについて、約2sccm〜約6.6sccmの、10% H中で希釈されたゲルマンを流すことを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン前駆体およびBClを相互混合する工程が、単一ウェーハCVDチャンバーについて、約10sccm〜約100sccmの純粋なBClを流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記Si含有層がその場でドープされたシリコン膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記Si含有層が少なくとも約7×1019原子cm−3の堆積時のホウ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記Si含有層が約1.6mΩ・cm以下の抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記Si含有層が約1.1mΩ・cm以下の抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の表面形態が単結晶性であり、前記第2の表面形態が非晶性、多結晶性または非晶性および結晶性物質の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の表面が半導体物質を含み、前記第2の表面が誘電体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の表面が、半製品のトランジスタのソースおよびドレイン領域を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の表面が、前記半製品のトランジスタのチャネル表面よりも凹型である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Si含有層が高められたソース/ドレイン構造を画定する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記Si含有層が前記チャネル領域の中に圧縮歪みを導入する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記Si含有層がヘテロエピタキシャルな膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
水素キャリアガスを相互混合して、前記供給ガスを形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
非水素の不活性キャリアガスを相互混合して、前記供給ガスを形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
集積回路を形成する方法であって、露出された半導体表面および絶縁領域を含む基体を準備する工程と、
前記基体をシリコン前駆体、BClおよびエッチング剤蒸気に曝露して、これにより前記露出された半導体表面上にSi含有エピタキシャル膜を選択的に堆積する工程と
を含む、方法。
【請求項23】
前記Si含有膜がSi1−xGe膜(式中、0<x≦1)を含むように、前記基体にゲルマニウム供給源を提供する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記Si含有膜が約15%〜約25% Geを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
曝露する工程が、前記絶縁領域にわたる堆積を約50:1よりも大きい比で回避しつつ、前記半導体表面にわたって前記Si含有膜を選択的に堆積する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
曝露する工程が、前記絶縁領域にわたる堆積を回避しつつ、前記Si含有膜を前記半導体表面にわたって100%選択性で選択的に堆積する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記エッチング剤蒸気がHClを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
選択的なエピタキシャル堆積用に構成された装置であって、
基体を支持するように構成された反応チャンバーと、
前記反応チャンバーと連通している半導体前駆体の供給源と、
前記反応チャンバーと連通しているエッチング剤蒸気の供給源と、
前記反応チャンバーと連通しているBClの供給源と、
パターン形成されたウェーハの単結晶領域の上にエピタキシャル半導体膜を前記反応チャンバーの中で選択的に堆積するために、半導体前駆体、エッチング剤蒸気およびBClを、前記供給源から前記反応チャンバーへと同時に送達するように構成されたコントローラと、
を備える、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A−13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図23D】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【公表番号】特表2011−505683(P2011−505683A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532124(P2010−532124)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/080198
【国際公開番号】WO2009/061599
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(500019890)エーエスエム アメリカ インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】