説明

制駆動力制御装置、自動車及び制駆動力制御方法

【課題】目標前後加速度及び目標ヨーモーメントを発生させる制御時に、車両挙動をより安定化すること。
【解決手段】目標前後加速度αに基づいて目標合計制駆動力Fdを設定し、その目標合計制駆動力Fdを目標ヨーモーメントに基づいて左前後輪13FL、13RL及び右前後輪13FR、13RRに分配し、左前後輪13FL、13RLの摩擦円利用率qijの差及び右前後輪13FR、13RRの摩擦円利用率qijの差がそれぞれ小さくなるように前記左右輪に分配された目標合計制駆動力Fdを前輪及び後輪に分配した。そのため、摩擦円利用率qijが高い車輪の制駆動力が低減され、摩擦円利用率qijが低い車輪により多くの制駆動力が配分されるので、目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMを発生させる制御時に、特定の車輪13FL〜13RRだけタイヤグリップ力限界を超えることを防止でき、車両挙動がより安定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標前後力及び目標ヨーモーメントが発生するように制駆動力を制御する制駆動力制御装置、自動車及び制駆動力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、各車輪の前後方向摩擦円利用率(タイヤ−路面間の摩擦係数と垂直加重から得られる摩擦円に対してタイヤ前後力の占める割合)が最小となるように、目標ヨーモーメント及び目標前後力を発生させる制駆動力を発生するための制駆動力を各車輪に配分することで、所定の車体運動を実現する車体運動実現方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−145256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術にあっては、単に、前後方向摩擦円利用率が最小となるように制駆動力を各車輪に配分する構成となっているため、前後方向に限らない摩擦円利用率全体としては各車輪にばらつきが発生し、タイヤグリップ力限界まで余裕がある車輪とタイヤグリップ力限界を超える車輪とが混在し、運転者に違和感を与える可能性がある。
本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであって、目標前後加速度及び目標ヨーモーメントを発生させる制御時に、車両挙動をより安定化させる制駆動力制御装置、自動車及び制駆動力制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明に係る制駆動力制御装置は、制御対象である車両の目標前後加速度を設定する目標前後加速度設定手段と、前記車両の目標ヨーモーメントを設定する目標ヨーモーメント設定手段と、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度及び前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントが発生するように前記車両の各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御手段と、前記各車輪が発生している横力を推定する横力推定手段と、前記各車輪の摩擦円利用率を推定する摩擦円利用率推定手段と、を備え、前記制駆動力制御手段は、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度に基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値である目標合計制駆動力を設定する制駆動力合計値設定手段と、前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントから前記横力推定手段で推定された横力によるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントを補正するヨーモーメント補正手段と、前記ヨーモーメント補正手段で補正された目標ヨーモーメントに基づいて前記制駆動力合計値設定手段で設定された目標合計制駆動力を左前後輪及び右前後輪に分配する合計値左右分配手段と、前記摩擦円推定手段で推定された左前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で左前後輪に分配された目標合計制駆動力を左前輪及び左後輪に分配し、前記摩擦円推定手段で推定された右前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で右前後輪に分配された目標合計制駆動力を右前輪及び右後輪に分配する合計値前後分配手段と、前記合計値前後分配手段で前記各輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように前記各車輪の制動力を制御する制駆動力発生手段と、を備えたことを特徴とする。
【0005】
また、本発明に係る自動車は、制駆動力を発生するための車輪と、自車の目標前後加速度を設定する目標前後加速度設定手段と、自車の目標ヨーモーメントを設定する目標ヨーモーメント設定手段と、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度及び前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントが発生するように前記各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御手段と、前記各車輪が発生している横力を推定する横力推定手段と、前記各車輪の摩擦円利用率を推定する摩擦円利用率推定手段と、を備え、前記制駆動力制御手段は、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度に基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値である目標合計制駆動力を設定する制駆動力合計値設定手段と、前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントから前記横力推定手段で推定された横力によるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントを補正するヨーモーメント補正手段と、前記ヨーモーメント補正手段で補正された目標ヨーモーメントに基づいて前記制駆動力合計値設定手段で設定された目標合計制駆動力を左前後輪及び右前後輪に分配する合計値左右分配手段と、前記摩擦円推定手段で推定された左前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で左前後輪に分配された目標合計制駆動力を左前輪及び左後輪に分配し、前記摩擦円推定手段で推定された右前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で右前後輪に分配された目標合計制駆動力を右前輪及び右後輪に分配する合計値前後分配手段と、前記合計値前後分配手段で前記各輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように前記各車輪の制動力を制御する制駆動力発生手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
さらに、本発明に係る制駆動力制御方法は、目標前後加速度及び目標ヨーモーメントが発生するように各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御方法であって、目標前後加速度に基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値を設定し、目標ヨーモーメントから前記各車輪が発生している横力によるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントを補正し、その補正された目標ヨーモーメントに基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値を左前後輪及び右前後輪に分配し、左前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように左前後輪に分配された前記制駆動力の合計値を左前輪及び左後輪に分配し、右前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように右前後輪に分配された前記制駆動力の合計値を右前輪及び右後輪に分配し、それら各車輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように前記各車輪の制動力を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明に係る制駆動力制御装置にあっては、摩擦円利用率が高い車輪の制駆動力が低減され、摩擦円利用率が低い車輪により多くの制駆動力が配分されるので、目標前後加速度及び目標ヨーモーメントを発生させる制御時に、各車輪の摩擦円利用率がばらつくことを抑制でき、その結果、タイヤグリップ力限界まで余裕がある車輪があるときに、特定の車輪だけタイヤグリップ力限界を超えることを防止でき、車両挙動がより安定化される。
【0008】
また、本発明に係る自動車にあっては、摩擦円利用率が高い車輪の制駆動力が低減され、摩擦円利用率が低い車輪により多くの制駆動力が配分されるので、目標前後加速度及び目標ヨーモーメントを発生させる制御時に、各車輪の摩擦円利用率がばらつくことを抑制でき、その結果、タイヤグリップ力限界まで余裕がある車輪があるときに、特定の車輪だけタイヤグリップ力限界を超えることを防止でき、車両挙動がより安定化される。
【0009】
さらに、本発明に係る制駆動力制御方法にあっては、摩擦円利用率が高い車輪の制駆動力が低減され、摩擦円利用率が低い車輪により多くの制駆動力が配分されるので、目標前後加速度及び目標ヨーモーメントを発生させる制御時に、各車輪の摩擦円利用率がばらつくことを抑制でき、その結果、タイヤグリップ力限界まで余裕がある車輪があるときに、特定の車輪だけタイヤグリップ力限界を超えることを防止でき、車両挙動がより安定化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の制駆動力制御装置を、4輪をモータで独立に制駆動制御可能な自動車に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
<構成>
図1は、本実施形態の制駆動力制御装置の概略構成を示す構成図である。この図1に示すように、制駆動力制御装置1は、舵角センサ2、アクセル開度センサ3、ブレーキ開度センサ4、四輪車輪速度センサ5、ヨーレートセンサ6、前後加速度センサ7、サスペンションストロークセンサ8、コントローラ9、モータ電源供給用インバータ10、制駆動用モータ11、及びブレーキ12を含んで構成される。
【0011】
舵角センサ2は、運転者のハンドル操作によるハンドル舵角を検出し、その検出結果をコントローラ9に出力する。
アクセル開度センサ3は、運転者のアクセルペダル操作によるアクセル開度を検出し、その検出結果をコントローラ9に出力する。
ブレーキ開度センサ4は、運転者のブレーキ操作によるブレーキ開度を検出し、その検出結果をコントローラ9に出力する。
【0012】
四輪車輪速度センサ5は、各車輪13FL〜13RR(制駆動力を発生するための車輪)の車輪速を検出し、その検出結果をコントローラ9に出力する。
ヨーレートセンサ6は、制御対象である車両のヨーレートを検出し、その検出結果をコントローラ9に出力する。
前後加速度センサ7は、車両の前後加速度を検出し、その検出結果をコントローラ9に出力する。
【0013】
サスペンションストロークセンサ8は、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15のサスペンションストローク量を検出し、その検出結果をコントローラ9に出力する。
コントローラ9は、所定時間(例えば、10msec.)が経過するたびに制駆動力制御処理(後述)を実行し、舵角センサ2、アクセル開度センサ3、ブレーキ開度センサ4、四輪車輪速度センサ5、ヨーレートセンサ6、前後加速度センサ7、及びサスペンションストロークセンサ8から出力される検出結果に基づいて、制駆動用モータ11及びブレーキに制駆動力を発生させる制駆動力発生指令をモータ電源供給用インバータ10及びブレーキ12に出力する。
【0014】
モータ電源供給用インバータ10は、コントローラ9から出力される制駆動力発生指令に応じた制駆動力が発生するように制駆動用モータ11への供給電力を制御する。
制駆動用モータ11は、モータ電源供給用インバータ10から供給される電力によって、コントローラ9から出力される制駆動力発生指令に応じた制駆動力が発生するように各車輪13FL〜13RRの制駆動力を制御する。
ブレーキ12は、コントローラ9から出力される制駆動力発生指令に応じた制動力が発生するように各車輪13FL〜13RRの制動力を制御する。
【0015】
<制駆動力制御処理>
図2は、コントローラ9で実行される制駆動力制御処理を示すフローチャートである。この図2に示すように、制駆動力制御処理は実行されると、まず、そのステップS1で、舵角センサ2から出力されるハンドル舵角、アクセル開度センサ3から出力されるアクセル開度、ブレーキ開度センサ4から出力されるブレーキ開度、及び四輪車輪速度センサ5から出力される車輪速度(車両状態量)を読み込む。
【0016】
次にステップS2に移行して、前記ステップS1で読み込んだ車両状態量に基づいて目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMを算出する。
具体的には、まず、前記ステップS1で読み込んだ車輪速度に基づいて車体速を算出し、その車体速、アクセル開度及びブレーキ開度に基づき、予め用意された制駆動用モータ11及びブレーキ12の制駆動力特性マップ(車体速、アクセル開度、及びブレーキ開度に応じた前後加速度を表すマップ)に従って、目標前後加速度αを算出する。
なお、その際、この演算処理が前回実行されたときに算出された車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qij(後述)が予め設定された閾値(車輪がスリップしていることを示す閾値)より大きい場合には、車輪がスリップする恐れがあるので、目標前後加速度αを小さな値に補正する。
【0017】
また、前記ステップS1で読み込んだハンドル舵角δ及び車体速Vに基づき、下記(1)式に従って、目標ヨーモーメントMを算出する。
M=IZ(dγ/dt) ・・・(1)
γ=V/L・tan(δ/N)
但し、
はヨーレート、Lはホイルベース、Nはステアリングギア比(アッカーマンステアの場合は外輪のステアリングギア比)、IZは車体のヨーイナーシャである。
なお、この(1)式によれば、極低速旋回時に旋回半径が増加することを抑制する目標ヨーモーメントMを設定でき、ニュートラルステア特性を得ることができる。
【0018】
次にステップS3に移行して、前記ステップS2で算出した目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMに基づいて目標合計制駆動力Fd(各車輪に発生させる制駆動力の合計値)及び制駆動力左右配分を算出する。
具体的には、前記ステップS2で算出した目標前後加速度α、車両特性(車体質量、各部回転慣性)及び走行抵抗FRoss(転がり抵抗、空気抵抗、勾配抵抗)に基づき、下記(2)式に従って、目標合計制駆動力Fdを算出する。
Wj・α=Fd−FRoss ・・・(2)
但し、Wjは回転慣性を考慮して補正した車体質量である。
【0019】
また、前記ステップS2で算出した目標ヨーモーメントMから各車輪13FL〜13RRが発生している横力FyijによるヨーモーメントM’(この演算処理が前回実行されたときに算出された目標ヨーモーメントM)を差し引いて前記目標ヨーモーメントMを補正し(制駆動力で発生すべきヨーモーメントとし)、そのヨーモーメントを拘束条件として、目標合計制駆動力Fdを左前後輪及び右前後輪に分配する(左前後輪制駆動力及び右前後輪制駆動力を設定する)。
【0020】
ここで、左前後輪制駆動力と右前後輪合計制駆動力との比の設定方法としては、目標合計制駆動力Fdが1となるように(1−D)/2:(1+D)/2(制動力と駆動力の向きの違いを考慮して、−3≦D≦3とする)と表した場合、モーメントのつりあいを表す下記(3)式に従って、目標ヨーモーメントMから各車輪13FL〜13RRが発生している横力FyijによるヨーモーメントM’を減じることでDの値を算出する方法が挙げられる。
M−(LF(FyFR^+FyFL^)−LR(FyRR^+FyRL^))=d/2((((1+D)/2・Fd+FXFR^+FXRR^)−(((1−D)/2・Fd+FXFL^+FXRL^)) ・・・(3)
但し、Fy^はタイヤ(各車輪13FL〜13RR)が発生している横力Fyijの車体横方向成分、FX^はタイヤが発生している横力Fyijの車体前後方向成分、LFはホイルベースから前輪軸までの距離、LRはホイルベースから後輪軸までの距離、dはトレッドである。
【0021】
次にステップS4に移行して、舵角センサ2から出力されるハンドル舵角、四輪車輪速度センサ5から出力される車輪速度、ヨーレートセンサ6から出力されるヨーレート、及びサスペンションストロークセンサ8から出力されるサスペンションストローク量(車両状態量)を読み込む。
次にステップS5に移行して、前記ステップS4で読み出した車両状態量に基づいて各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyij及び各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率を算出する。
【0022】
具体的には、まず、前記ステップS4で読み出したハンドル舵角に基づき、アッカーマン特性を含めたハンドル舵角−車輪転舵角マップに従って、前輪転舵角(左前輪転舵角δL、右前輪転舵角δR)を算出する。
また、前記ステップS4で読み出したサスペンションストローク量に基づき、所定のマップ(フロントサスペンション14及びリアサスペンション15の幾何学的特性に応じたマップ)に従って、サスペンションストロークによるトー角変化量φを算出する。
【0023】
そして、それら算出結果(前輪転舵角δL、δR、及びトー角変化量φ)に基づいて、各車輪点での実転舵角δL+φFL、δR+φFR、φRL、φRRを算出する。
また、前記ステップS4で読み出した車両状態量に基づいて車体スリップ角βbodYを算出し、その車体スリップ角βbodY、車体速、及びヨーレートに基づいて、各車輪13FL〜13RR点での車体スリップ角βbodY+LF/V・γ、βbodY+LF/V・γ、βbodY−LR/V・γ、βbodY−LR/V・γを算出する。
【0024】
そして、それら実転舵角及び各車輪点での車体スリップ角に基づき、下記(4)式に従って、各車輪13FL〜13RRのタイヤスリップ角βFL〜βRRを算出する。
βFL=βbodY+LF/V・γ+δL+φFL
βFR=βbodY+LF/V・γ+δR+φFR
βRL=βbodY−LR/V・γ+δR+φRL
βRR=βbodY−LR/V・γ+δR+φRR ・・・(4)
【0025】
また、前記ステップS4で読み出したサスペンションストローク量に基づいて垂直荷重FZを算出し、その垂直荷重FZ及び各車輪の前後力FX(この演算処理が前回実行されたときに算出された制駆動力目標値FXFL〜FXRR(後述))に基づき、コーナーリングパワーの荷重依存性を2次関数で近似した下記(5)式に従って、各車輪のコーナーリングパワーKij(i、j=1又は2、iは前後を示し、jは左右を示す)を算出する。
ij=(a1・FZij2+a2・FZij)・(1−(FXij/μFZij21/2 ・・・(5)
但し、a1、a2はタイヤによって決まる定数、μは推定した路面摩擦係数である。
【0026】
そして、それらタイヤスリップ角βFL〜βRR、及びコーナーリングパワーKijに基づき、各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyijのタイヤスリップ角βFL〜βRRに対する非線形性を2次関数で近似した下記(6)式に従って、各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyijを算出する。
yij=Kijβij―Kij2/(4μFZij)・βij2 ・・・(6)
【0027】
また、各車輪13FL〜13RRの前後力FZ(この演算処理が前回実行されたときに算出された制駆動力目標値FXFL〜FXRR)、横力Fyij、垂直荷重FZij、路面摩擦係数μに基づき、下記(7)式に従って、各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijを算出する。
ij=(FXij2+Fyij21/2/(μFZij) ・・・(7)
【0028】
次にステップS6に移行して、前記ステップS5で算出された各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijに基づいて、左前後輪13FL、13RLの摩擦円利用率qFL、qRLの差が最小(0)となるように左前後輪制駆動力を左前輪と右前輪とに分配し、右前後輪13FR、13RRの摩擦円利用率qRL、qRRの差が最小となるように右前後輪制駆動力を右前輪と右後輪とに分配する。
ここで、左前輪の駆動力と左後輪の駆動力との配分比の設定方法としては、DL:1−DL(0≦DL≦1)と表した場合、図3に示すように、左前後輪の摩擦円利用率の差の絶対値|qFL−qRL|が目標値0となるようにDLの値を算出する方法が挙げられる。
【0029】
また、右前輪の駆動力と右後輪の駆動力との配分比の設定方法としては、DR:1−DR(0≦DR≦1)と表した場合、左前後輪の摩擦円利用率の差の絶対値|qFR−qRR|が目標値0となるようにDRの値を算出する方法が挙げられる。
次にステップS7に移行して、前記ステップS3及び106で算出した駆動力配分比D、DL、DRに基づき、下記(8)式に従って、各車輪13FL〜13RRの制駆動力目標値FXFL〜FXRRを算出する。
XFL=DL・(1−D)/2・Fd
XFR=DR・(1+D)/2・Fd
XRL=(1−DL)・(1−D)/2・Fd
XRR=(1−DR)・(1+D)/2・Fd ・・・(8)
【0030】
次にステップS8に移行して、前記ステップS7で算出した各車輪13FL〜13RRの制駆動力目標値FXFL〜FXRRに従って、各車輪13FL〜13RRに制駆動力を発生させる制駆動力発生指令をモータ電源供給用インバータ10及びブレーキ12の少なくとも一方に出力する制駆動力配分制御を行った後、この演算処理を終了する。
ここで、制駆動力配分制御にあっては、通常時は、制駆動力目標値FXFL〜FXRRが発生されるように、制駆動用モータ11の駆動制御又は回生制御を行わせる制駆動力発生指令をモータ電源供給用インバータ10に出力し、制駆動用モータ11による回生制御では十分な制動力が得られないときには、制駆動用モータ11に最大制動力を発生させる制駆動力発生指令をモータ電源供給用インバータ10に出力し、制駆動用モータ11の最大制動力では足りない分をブレーキ12に発生させる制駆動力発生指令をブレーキ12に出力する。
【0031】
<具体的動作>
まず、旋回走行中に、コントローラ9で制駆動力制御処理が実行されたとする。すると、図2及び図4に示すように、まず、そのステップS1で、各種センサ2〜5から出力される車両状態量が読み込まれ、ステップS2で、それら車両状態量に基づいて目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMが算出され、ステップS3で、それら目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMに基づいて目標合計制駆動力Fd及び左右輪の制駆動力左右配分Dが算出され、ステップS4で、各種センサ2、5、6、8から出力される車両状態量が読み込まれる。
【0032】
ここで、車両がオーバステア傾向にあり、旋回外側の後輪がタイヤグリップ力限界に近づいていたとする。すると、ステップS5で、前記読み込まれた車両状態量に基づいて、旋回外側の後輪の摩擦円利用率qijが他の車輪の摩擦円利用率qijより大きな値に算出される。
また、ステップS6で、それら各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijに基づいて、旋回外側の後輪の摩擦円利用率qijが小さくなり、旋回外側の前輪の摩擦円利用率qijが大きくなるように(旋回外側の後輪への分配量が低減され、旋回外側の前輪への分配量が増大されるように)左前後輪の駆動力配分比DL及び右前後輪の駆動力配分比DRが算出される。
【0033】
さらに、ステップS7で、前記算出された駆動力配分比D、DL、DRに基づいて各車輪13FL〜13RRの制駆動力目標値FXが算出され、ステップS8で、制駆動力配分制御が行われ、それら制駆動力目標値FXFL〜FXRRを発生させる制駆動力発生指令がモータ電源供給用インバータ10及びブレーキ12に出力された後、この演算処理を終了する。
そして、制駆動用モータ11及びブレーキ12によって、旋回外側の後輪の制動力が低減され、旋回外側の前輪の制動力が増大され、旋回外側の後輪でタイヤグリップ力限界までの余裕が増加し、旋回外側の後輪の摩擦円利用率が低減され、安定な車両挙動を実現できる。
【0034】
<特許請求の範囲との対応>
以上、本実施形態では、図1のコントローラ9、図2のステップS2が特許請求の範囲に記載の目標前後加速度設定手段及び目標ヨーモーメント設定手段を構成し、以下同様に、図1のコントローラ9、図2のステップS3及びS6が制駆動力制御手段を構成し、図1のコントローラ9、図2のステップS5が横力推定手段及び摩擦円利用率推定手段を構成し、図2のステップS3が制駆動力合計値設定手段、ヨーモーメント補正手段及び合計値左右分配手段を構成し、図2のステップS6及びS7が合計値前後分配手段を構成し、図2のステップS8が制駆動力発生手段を構成し、図1のサスペンションストロークセンサ8がサスペンションストローク量検出手段を構成する。
【0035】
<作用・効果>
(1)このように、本実施形態の制駆動力制御装置1にあっては、目標前後加速度αに基づいて各車輪13FL〜13RRに発生させる制駆動力の合計値(目標合計制駆動力Fd)を設定し、目標ヨーモーメントMから各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyijによるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントMを補正し、その補正された目標ヨーモーメントに基づいて目標合計制駆動力Fdを左前後輪13FL、13RL及び右前後輪13FR、13RRに分配し、左前後輪13FL、13RLの摩擦円利用率qijの差が小さくなるように前記左前後輪に分配された目標合計制駆動力Fdを左前輪13FL及び左後輪13RLに分配し、右前後輪13FR、13RRの摩擦円利用率qijの差が小さくなるように前記右前後輪に分配された目標合計制駆動力Fdを左前輪13FR及び左後輪13RRに分配し、それら各輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように各車輪13FL〜13RRの制動力を制御するようにした。そのため、摩擦円利用率qijが高い車輪の制駆動力が低減され、摩擦円利用率qijが低い車輪により多くの制駆動力が配分されるので、目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMを発生させる制御時に、各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijがばらつくことを抑制でき、その結果、タイヤグリップ力限界まで余裕がある車輪13FL〜13RRがあるときに、特定の車輪13FL〜13RRだけタイヤグリップ力限界を超えることを防止でき、車両挙動がより安定化される。
【0036】
(2)また、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15のストローク量、並びにフロントサスペンション14及びリアサスペンション15の幾何学的特性に基づいて、各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyijを推定するようにした。そのため、路面凹凸等の外乱が生じ、サスペンションストロークによって各車輪13FL〜13RRのトー角が変化し、そのトー角の変化によって各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyijが変化しても、その変化量を高い応答性をもって推定することができる。そのため、その横力Fyに基づいて目標ヨーモーメントMを補正することで、外乱に起因するヨーモーメントを打ち消すように左右輪に制駆動力を配分することができ、より安定な車両挙動を実現できる。
また、その横力Fyijに基づいて各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijを算出することで、摩擦円利用率qijをより正確に推定することができ、各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijのばらつきを小さくする制御の効果を向上することができる。
【0037】
(3)また、本発明に係る自動車は、目標前後加速度αに基づいて各車輪13FL〜13RRに発生させる制駆動力の合計値(目標合計制駆動力Fd)を設定し、目標ヨーモーメントMから各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyijによるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントMを補正し、その補正された目標ヨーモーメントに基づいて目標合計制駆動力Fdを左前後輪13FL、13RL及び右前後輪13FR、13RRに分配し、左前後輪13FL、13RLの摩擦円利用率qijの差が小さくなるように前記左前後輪に分配された目標合計制駆動力Fdを左前輪13FL及び左後輪13RLに分配し、右前後輪13FR、13RRの摩擦円利用率qijの差が小さくなるように前記右前後輪に分配された目標合計制駆動力Fdを左前輪13FR及び左後輪13RRに分配し、それら各輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように各車輪13FL〜13RRの制動力を制御するようにした。そのため、摩擦円利用率qijが高い車輪の制駆動力が低減され、摩擦円利用率qijが低い車輪により多くの制駆動力が配分されるので、目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMを発生させる制御時に、各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijがばらつくことを抑制でき、その結果、タイヤグリップ力限界まで余裕がある車輪13FL〜13RRがあるときに、特定の車輪13FL〜13RRだけタイヤグリップ力限界を超えることを防止でき、車両挙動がより安定化される。
【0038】
(4)さらに、本発明に係る制駆動力制御方法は、目標前後加速度αに基づいて各車輪13FL〜13RRに発生させる制駆動力の合計値(目標合計制駆動力Fd)を設定し、目標ヨーモーメントMから各車輪13FL〜13RRが発生している横力Fyijによるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントMを補正し、その補正された目標ヨーモーメントに基づいて目標合計制駆動力Fdを左前後輪13FL、13RL及び右前後輪13FR、13RRに分配し、左前後輪13FL、13RLの摩擦円利用率qijの差が小さくなるように前記左前後輪に分配された目標合計制駆動力Fdを左前輪13FL及び左後輪13RLに分配し、右前後輪13FR、13RRの摩擦円利用率qijの差が小さくなるように前記右前後輪に分配された目標合計制駆動力Fdを左前輪13FR及び左後輪13RRに分配し、それら各輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように各車輪13FL〜13RRの制動力を制御するようにした。そのため、摩擦円利用率qijが高い車輪の制駆動力が低減され、摩擦円利用率qijが低い車輪により多くの制駆動力が配分されるので、目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMを発生させる制御時に、各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijがばらつくことを抑制でき、その結果、タイヤグリップ力限界まで余裕がある車輪13FL〜13RRがあるときに、特定の車輪13FL〜13RRだけタイヤグリップ力限界を超えることを防止でき、車両挙動がより安定化される。
【0039】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
この第2実施形態は、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15として、定常旋回時に、左右輪の摩擦円利用率qijがほぼ均等となるように、バウンド側及びリバウンド側のトー変化特性がともにトーインとなる機械式サスペンション(摩擦円利用率qijという観点から、サスペンションストロークによるトー角変化量φが前記第1実施形態の制駆動力制御装置に好適な特性を持つサスペンション)を備えた点が前記第1実施形態のものと異なる。
【0040】
<サスペンションの構成>
図5は、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15の概略構成を示す構成図である。この図5に示すように、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15は、ダブルウイッシュボーン式サスペンションを構成しており、ロアアーム16よりトーコントロールアーム17が長く形成され、それらロアアーム16及びトーコントロールアーム17が平行に配置されて、図6に示すように、バウンド側及びリバウンド側のトー変化特性がともにトーインとなり、ロール変化量に対するトー変化量の関係が原点を通る2次関数状となっている。
【0041】
また、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15は、制駆動力制御処理による各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijの算出誤差が小さくなるように、アッパーアーム18がロアアーム16より短く形成され、対地キャンバ変化が極力0に近づくようになっている。
さらに、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15は、前後剛性が低下して乗り心地が向上し、且つ、前後力コンプライアンスステア及び横力コンプライアンスステアが無視できるような十分小さな値となるように、リンク配置とブッシュ剛性が前後方向のみ弾性変形で動くことが可能なものとなっている。
【0042】
<サスペンションの構成と左右輪の摩擦円利用率との関係>
次に、バウンド側及びリバウンド側のトー変化特性がともにトーインとなる機械式サスペンションを用いることで、左右輪の摩擦円利用率qijをほぼ均等にできることを説明する。
まず、横力Fyの釣り合い式及び重心まわりのヨーモーメントの釣り合い式は、横力Fyがタイヤスリップ角βFL〜βRRに対して線形となっており、且つ、前輪13FL、13FRの転舵角δL、δRが小さいものとして線形近似を行うと、それぞれ下記(9)式で表される。
F(KFRβFR+KFLβFL)=LR(KRRβRR+KRLβRL
W・d2y/dt2=KFRβFR+KFLβFL+KRRβRR+KRLβRL ・・・(9)
但し、d2y/dt2は横加速度である。
【0043】
また、各車輪13FL〜13RRの垂直荷重FZFL〜FZRRは、各車輪13FL〜13RRの荷重移動量を考慮すると、下記(10)式で表される。
ZFL=(LR/2L−h/d・GF・d2y/dt2)W
ZFR=(LR/2L+h/d・GF・d2y/dt2)W
ZRL=(LF/2L−h/d・(1−GF)・d2y/dt2)W
ZRR=(LF/2L+h/d・(1−GF)・d2y/dt2)W ・・・(10)
但し、hは重心高、GFは前輪のロール剛性配分比である。
さらに、左右輪の摩擦円利用率qijを均等とする制約条件は、下記(11)式で表される。
FRβFR/(μFZFR)=KFLβFL/(μFZFL
RRβRR/(μFZRR)=KRLβRL/(μFZRL) ・・・(11)
【0044】
そして、タイヤの輪荷重依存性については、前記第1実施形態の場合と同様に、2次関数で近似できるとすると、上記(9)〜(11)式の連立方程式より、各車輪13FL〜13RRのタイヤスリップ角βFL〜βRRは、下記(12)式で表される。
βFL=(d2y/dt2)/(a1(LR/2L)−h/d・GF・d2y/dt2)W+a2
βFR=(d2y/dt2)/(a1(LR/2L)+h/d・GF・d2y/dt2)W+a2
βRL=(d2y/dt2)/(a1(LF/2L)−h/d・(1−GF)・d2y/dt2)W+a2
βRR=(d2y/dt2)/(a1(LF/2L)+h/d・(1−GF)・d2y/dt2)W+a2 ・・・(12)
【0045】
また、サスペンションストローク量Zに対するトー角φijの変化量∂φij/∂Zは、下記(13)式で表すことができる。
φij=∂φij/∂Z・dhW/(2Kφ)・d2y/dt2 ・・・(13)
但し、Kφは車体のロール剛性値である。
ここで、前記(12)式によるタイヤスリップ角βFL〜βRR及び前記(13)式によるトー角φijの値を、内外輪それぞれのタイヤスリップ角βFL〜βRRとトー角φijの変化量∂φij/∂Zの関係式に代入し、車体スリップ角βbodY分を消去すると、d4y/dt4の項を無視でき、且つ、サスペンションストローク量Zに対するトー変化量の関係を2次関数として表現できる場合には(すなわち、下記(14)式で表現できる場合には)、前記(13)式の解を得ることが可能となり、その解は下記(13)式及び図6で表すことができる。
∂φバウンド側/∂Z−∂φリバウンド側/∂Z=Δφ・d2y/dt2 ・・・(14)
ΔφF=(−2Kφ1F)/(d2・(a1・LR/2L・W+a22
ΔφR=(−2Kφ1(1−GF))/(d2・(a1・LR/2L・W+a22)・・・(13)
但し、ΔφFは前輪サスペンションのトー変化特性を決める係数、ΔφRは後輪サスペンションのトー変化特性を決める係数である。
【0046】
よって、前記(11)式の制約条件を用いて導いた前記(13)式及び図6より、バウンド側及びリバウンド側のトー変化特性がともにトーインとなる特性を持ったサスペンションを用いることで、線形領域(すなわち、前後加速度及び横加速度が大きくない定常旋回時)において、左右輪の摩擦円利用率qijをほぼ均等にできることがわかる。
【0047】
<特許請求の範囲との対応>
以上、本実施形態では、図1のフロントサスペンション14及びリアサスペンション15が特許請求の範囲に記載のサスペンションを構成する。
<作用・効果>
このように、本実施形態の制駆動力制御装置にあっては、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15として、定常旋回時に、トー変化特性がバウンド側及びリバウンド側ともトーインとなる機械式サスペンション(左右輪の摩擦円利用率qijがほぼ均等となるサスペンション)を用いた。そのため、日常走行で多用される前後加速度及び横加速度が高くない領域では、目標前後加速度α及び目標ヨーモーメントMを発生させる制御時に、各車輪13FL〜13RRの摩擦円利用率qijをほぼ均等に近づけることができる。そして、各車輪13FL〜13RRとも同じようにタイヤグリップ力限界までの余裕を大きくとりながら、安定な車両挙動を実現できるようになり、日常走行における安全性をより向上させることができる。
【0048】
ちなみに、フロントサスペンション14及びリアサスペンション15は、通常、外乱安定性等を考慮して、ストローク時のトー角変化特性や前後力・横力によるコンプライアンスステア特性がそれぞれアンダーステア方向となるように設計がなされている。つまり、4輪の摩擦円利用率qijが均等に近づくように、各車輪15FL〜15RRで横力Fyijをバランスよく発生できるようにするという観点では設計されていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】制駆動力制御装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】コントローラで実行される制駆動力制御処理を示すフローチャートである。
【図3】前後輪の駆動力配分比の算出方法を示すブロック図である。
【図4】制駆動力制御装置の動作を説明するための説明図である。
【図5】サスペンションの概略構成を示す構成図である。
【図6】サスペンションストロークとトー変化との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1は制駆動力制御装置、2は舵角センサ、3はアクセル開度センサ、4はブレーキ開度センサ、5は四輪車輪速度センサ、6はヨーレートセンサ、7は前後加速度センサ、8はサスペンションストロークセンサ、9はコントローラ、10はモータ電源供給用インバータ、11は制駆動用モータ、12はブレーキ、13は車輪、14はフロントサスペンション、15はリアサスペンション、16はロアアーム、17はトーコントロールアーム、18はアッパーアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象である車両の目標前後加速度を設定する目標前後加速度設定手段と、前記車両の目標ヨーモーメントを設定する目標ヨーモーメント設定手段と、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度及び前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントが発生するように前記車両の各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御手段と、前記各車輪が発生している横力を推定する横力推定手段と、前記各車輪の摩擦円利用率を推定する摩擦円利用率推定手段と、を備え、
前記制駆動力制御手段は、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度に基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値である目標合計制駆動力を設定する制駆動力合計値設定手段と、前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントから前記横力推定手段で推定された横力によるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントを補正するヨーモーメント補正手段と、前記ヨーモーメント補正手段で補正された目標ヨーモーメントに基づいて前記制駆動力合計値設定手段で設定された目標合計制駆動力を左前後輪及び右前後輪に分配する合計値左右分配手段と、前記摩擦円推定手段で推定された左前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で左前後輪に分配された目標合計制駆動力を左前輪及び左後輪に分配し、前記摩擦円推定手段で推定された右前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で右前後輪に分配された目標合計制駆動力を右前輪及び右後輪に分配する合計値前後分配手段と、前記合計値前後分配手段で前記各輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように前記各車輪の制動力を制御する制駆動力発生手段と、を備えたことを特徴とする制駆動力制御装置。
【請求項2】
前記車両のサスペンションのストローク量を検出するサスペンションストローク量検出手段を備え、
前記横力推定手段は、前記サスペンションストローク量検出手段で検出されたストローク量及び前記サスペンションの幾何学的特性に基づいて、前記各車輪が発生している横力を推定する請求項1に記載の制駆動力制御装置。
【請求項3】
制駆動力を発生するための車輪と、自車の目標前後加速度を設定する目標前後加速度設定手段と、自車の目標ヨーモーメントを設定する目標ヨーモーメント設定手段と、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度及び前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントが発生するように前記各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御手段と、前記各車輪が発生している横力を推定する横力推定手段と、前記各車輪の摩擦円利用率を推定する摩擦円利用率推定手段と、を備え、
前記制駆動力制御手段は、前記目標前後加速度設定手段で設定された目標前後加速度に基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値である目標合計制駆動力を設定する制駆動力合計値設定手段と、前記目標ヨーモーメント設定手段で設定された目標ヨーモーメントから前記横力推定手段で推定された横力によるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントを補正するヨーモーメント補正手段と、前記ヨーモーメント補正手段で補正された目標ヨーモーメントに基づいて前記制駆動力合計値設定手段で設定された目標合計制駆動力を左前後輪及び右前後輪に分配する合計値左右分配手段と、前記摩擦円推定手段で推定された左前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で左前後輪に分配された目標合計制駆動力を左前輪及び左後輪に分配し、前記摩擦円推定手段で推定された右前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように前記合計値左右分配手段で右前後輪に分配された目標合計制駆動力を右前輪及び右後輪に分配する合計値前後分配手段と、前記合計値前後分配手段で前記各輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように前記各車輪の制動力を制御する制駆動力発生手段と、を備えたことを特徴とする自動車。
【請求項4】
前記サスペンションは、定常旋回時に、トー変化特性がバウンド側及びリバウンド側ともトーインとなる機械式サスペンションであることを特徴とする請求項3に記載の自動車。
【請求項5】
目標前後加速度及び目標ヨーモーメントが発生するように各車輪の制駆動力を制御する制駆動力制御方法であって、
目標前後加速度に基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値を設定し、目標ヨーモーメントから前記各車輪が発生している横力によるヨーモーメントを差し引いて前記目標ヨーモーメントを補正し、その補正された目標ヨーモーメントに基づいて前記各車輪に発生させる制駆動力の合計値を左前後輪及び右前後輪に分配し、左前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように左前後輪に分配された前記制駆動力の合計値を左前輪及び左後輪に分配し、右前後輪の摩擦円利用率の差が小さくなるように右前後輪に分配された前記制駆動力の合計値を右前輪及び右後輪に分配し、それら各車輪に分配された目標合計制駆動力が発生するように前記各車輪の制動力を制御することを特徴とする制駆動力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−143259(P2008−143259A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330721(P2006−330721)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】