説明

半導体基板の作製方法

【課題】半導体基板の欠陥を低減する。また、歩留まり高く欠陥の少ない半導体基板を作製する。また、歩留まり高く半導体装置を作製する。
【解決手段】支持基板に酸化絶縁層を介して半導体層を設け、該半導体層の端部における、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高めた後、半導体層の表面の絶縁層を除去し、半導体層にレーザ光を照射して、平坦化された半導体層を得る。半導体層の端部において、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高めるために、半導体層の表面から、レーザ光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板及びその作製方法、及び半導体基板を用いた半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板として、支持基板(ベース基板ともいう。)上に絶縁層及び単結晶シリコン層が設けられたSOI(Silicon On Insulator)基板が広く利用されている。
【0003】
代表的なSOI基板の作製方法としては、スマートカット法、ELTRAN(Epitaxial Layer Transfer、商標登録)法等がある。
【0004】
支持基板としてガラス基板を用いたSOI基板の代表的な作製方法を以下に示す。まず、単結晶シリコン基板に水素イオンを注入することで、単結晶シリコン基板表面から所定の深さに脆化領域(損傷領域ともいう。)を形成する。次に、絶縁層を介して、該単結晶シリコン基板及び支持基板を貼り合わせる。その後、加熱処理を行い、脆化領域から単結晶シリコン基板を分断(分離ともいう。)することにより、支持基板上に絶縁層及び薄い単結晶シリコン層を形成することができる。すなわち、単結晶シリコン基板の一部からなる単結晶シリコン層を支持基板上に転載することで、SOI基板を作製するものである。
【0005】
上記SOI基板の作製方法により支持基板上に転載された単結晶シリコン層は、表面が凹凸状である。このため、単結晶シリコン層の表面を平坦化する工程が必要である。単結晶シリコン層の平坦化方法としては、代表的には、単結晶シリコン層の表面にレーザ光を照射し、単結晶シリコン層の凹部及び凸部を溶融し、固化させ、平坦化する方法がある(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−288563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、支持基板上に転載された単結晶シリコン層の表面の平坦化のために、レーザ光を照射させる際、単結晶シリコン層の表面に自然酸化層のような酸化絶縁層があると、当該酸化絶縁層中に含まれる酸素が単結晶シリコン層の溶融部に混入してしまう。このため、固化した単結晶シリコン層の表面は平坦化されるものの、欠陥を含む単結晶シリコン層が形成されてしまう。
【0008】
一方、平坦化のためのレーザ光照射の前に、支持基板上に転載された単結晶シリコン層の表面の酸化絶縁層を除去すると、当該酸化絶縁層の除去と共に、等方的に支持基板がエッチングされてしまい、支持基板上の酸化絶縁層の端部の下方に空洞ができてしまい、支持基板上に転載された単結晶シリコン層の端部が剥がれやすくなる。
【0009】
単結晶シリコン層の端部が剥がれると、パーティクルとなり、半導体基板の歩留まりの低下の原因となる。
【0010】
そこで、本発明の一形態は、半導体基板の欠陥を低減することを課題の一とする。また、歩留まり高く欠陥の少ない半導体基板を作製することを課題の一とする。また、歩留まり高く半導体装置を作製することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、支持基板に酸化絶縁層を介して半導体層を設け、該半導体層の端部における、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高めた後、半導体層の表面の絶縁層を除去し、半導体層にレーザ光を照射して、平坦化された半導体層を得ることを要旨とする半導体基板(SOI基板)の作製方法である。
【0012】
半導体層の端部において、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高める方法としては、半導体層の表面から、レーザ光を照射する方法がある。このとき、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高めることが可能なエネルギーを有するレーザ光を半導体層の端部に照射する。なお、当該レーザ光のエネルギーは、照射された半導体層を完全溶融するエネルギーであることが好ましい。この結果、レーザ光のエネルギーが酸化絶縁層に伝達し、当該エネルギーにより、支持基板及び酸化絶縁層の密着性が高まる。このため、半導体層の表面の絶縁層の除去工程において、半導体層の端部の浮き及び剥がれを低減することができる。なお、レーザ光の照射により完全溶融した半導体層の一部は、再結晶化するため、多結晶半導体領域となる。
【0013】
また、半導体層の端部において、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高める方法としては、半導体層の端部を加熱する方法がある。このとき、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高めることが可能な温度で半導体層の端部を加熱する。なお、当該加熱温度は、支持基板の歪み点未満の温度であることが好ましい。この結果、当該加熱により、支持基板及び酸化絶縁層の密着性が高まる。このため、半導体層の表面の絶縁層の除去工程において、半導体層の端部の浮き及び剥がれを低減することができる。
【0014】
また、本発明の一態様は、支持基板に酸化絶縁層を介して半導体層を設け、該半導体層の端部における、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高めた後、半導体層の表面の絶縁層を除去し、半導体層にレーザ光を照射して、平坦化された半導体層を得る。次に、当該半導体層を用いて、半導体素子を作製することを要旨とする半導体装置の作製方法である。
【0015】
なお、本明細書において、単結晶とは、結晶構造が一定の規則性を持って形成されており、どの部分においても結晶軸が一定の方向を向いているものをいう。ただし、単結晶は欠陥や格子歪みなどの規則性の乱れを有していてもよい。
【0016】
また、本明細書において、半導体基板とは、SOI基板などのように、支持基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられているものをいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様は、欠陥が少なく、且つ表面が平坦化された半導体基板を得ることができる。また、本発明の一態様は、歩留まり高く、欠陥が少なく、且つ表面が平坦化された半導体基板を作製することができる。また、本発明の一態様は、半導体装置の量産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一形態に係る半導体基板の作製方法を説明する断面図である。
【図2】本発明の一形態に係る半導体基板の作製方法を説明する上面図である。
【図3】本発明の一形態に係る半導体基板の作製方法を説明する上面図である。
【図4】レーザ照射装置を説明する斜視図である。
【図5】レーザ照射装置を説明する斜視図である。
【図6】本発明の一形態に係る半導体基板の作製方法を説明する上面図である。
【図7】本発明の一形態に係る半導体基板の作製方法を説明する上面図である。
【図8】本発明の一形態に係る半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図9】本発明の一形態に係る半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図10】本発明の一形態に係る半導体装置を説明する断面図、上面図及び回路図である。
【図11】半導体基板の端部を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【図12】半導体基板の端部を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【図13】半導体基板の端部を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【図14】半導体基板の端部を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体基板の構造及び作製方法の一形態について説明する。
【0021】
図1を用いて半導体基板の作製方法を説明する。
【0022】
まず、支持基板51(ベース基板ともいう。)を用意する(図1(A)参照。)。
【0023】
支持基板51は、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁性基板を用いる。なお、支持基板51としてプラスチック基板等の絶縁性基板、シリコンなどの半導体基板、金属やステンレスなどの導電性基板等を適宜用いてもよい。
【0024】
ガラス基板としては、歪み点が580度以上730度以下であるものを用いるとよい。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。安価なガラス基板、プラスチック基板を用いることで、コストを低減することができる。
【0025】
また、支持基板51の表面に、絶縁層を形成してもよい。該絶縁層を設けることにより、支持基板51に不純物(アルカリ金属やアルカリ土類金属など)が含まれている場合には、後に支持基板51上に転載される半導体層へ当該不純物が拡散することを防止できる。絶縁層としては、スパッタリング法またはCVD法により形成された酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層などがある。
【0026】
なお、酸化窒化シリコンとは、窒素よりも酸素の含有量が多いものであり、窒化酸化シリコンとは、酸素よりも窒素の含有量が多いものである。ここで、含有量の比較は、ラザフォード後方散乱法または水素前方散乱法の測定結果に基づいて行うこととする。
【0027】
次に、脆化領域55(損傷領域ともいう。)を有する半導体基板53を用意する(図1(B)参照。)。なお、半導体基板53の少なくとも一面には、酸化絶縁層57を有することが好ましい。ここで、脆化領域55を有する半導体基板53の作製方法について、以下に説明する。
【0028】
半導体基板53としては、シリコン、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、またはインジウムリン等の半導体材料を用いた多結晶基板または単結晶基板がある。ここでは、半導体基板53として単結晶シリコン基板を用いる。
【0029】
半導体基板53は、円形状の半導体基板、円形状の半導体基板を矩形状に加工した半導体基板等を適宜用いることができる。ここでは、半導体基板53として矩形状の半導体基板を用いる。
【0030】
次に、半導体基板53に、脆化領域55(損傷領域ともいう。)を形成する。
【0031】
電界で加速されたイオン(イオンビーム)を半導体基板53に照射し、半導体基板53の表面から所定の深さにイオンを導入することで、微小な孔が形成される。微小な孔が形成される領域が脆化領域55となる。脆化領域55が形成される深さにより、半導体基板53から分断される半導体層の厚さが決定される。脆化領域55が形成される深さは、半導体基板53の表面から50nm以上1μm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。
【0032】
また、イオンの導入は、水素、不活性元素またはハロゲンを用いて、イオンドーピング法またはイオン注入法により行うことができる。不活性元素としては、例えばヘリウムがあり、ハロゲンとしては、例えばフッ素がある。
【0033】
次に、半導体基板53の少なくとも一表面に酸化絶縁層57を形成する。酸化絶縁層57は、2つの基板を貼り合わせるための接合層として機能する。酸化絶縁層57は、スパッタリング法、CVD法等の薄膜成膜方法を用いて、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層等を形成することができる。または、酸化絶縁層57として、テトラエトキシシラン等の有機シランを用いて、酸化シリコン層を形成することができる。または、半導体基板53を熱酸化して、半導体基板53の表面全体に酸化絶縁層を形成することができる。なお、熱酸化により酸化絶縁層57を形成する場合、酸素及び塩化水素雰囲気で加熱することで、塩素を含む酸化絶縁層を形成することができる。
【0034】
ここでは、酸素及び塩化水素雰囲気における熱酸化により半導体基板53の表面を酸化して、酸化絶縁層57として塩素を含む酸化シリコン層を形成する。
【0035】
なお、上記脆化領域55及び酸化絶縁層57を有する半導体基板53の作製方法の代わりに、半導体基板の一表面を陽極酸化して多孔質領域を形成し、当該多孔質領域上に半導体層をエピタキシャル成長させた後、当該半導体層上に酸化絶縁層を形成する方法等がある。
【0036】
次いで、酸化絶縁層57を介して半導体基板53及び支持基板51を貼り合わせる(図1(C)参照。)。
【0037】
なお、貼り合わせを行う前に、支持基板51または半導体基板53の貼り合せ面(接合面ともいう。)に表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、親水性または清浄性が向上し、貼り合わせの際の接合強度を向上させることができる。なお、表面処理は、支持基板51及び半導体基板53の貼り合わせ面の少なくとも一方に行えばよい。
【0038】
なお、表面処理としては、ウェット処理(オゾン水洗浄、メガソニック洗浄、または2流体洗浄等)またはドライ処理(紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、またはラジカル処理等)がある。また、これらを組み合わせて行ってもよい。
【0039】
また、支持基板51及び半導体基板53を貼り合わせる直前に、支持基板51または酸化絶縁層57の表面の水分を除去するために、水が蒸発する温度、代表的には55度以上100度以下で支持基板51または半導体基板53を加熱してもよい。この結果、支持基板51及び酸化絶縁層57の界面において、残留する水分と共に気体やパーティクルが混入することを低減できるため、貼り合わせ不良を低減することができる。
【0040】
次に、貼り合わされた2つの基板に対して、脆化領域55において、半導体基板53を分断(分離ともいう。)する。この分断により、半導体基板53の一部からなる半導体層59を、支持基板51上に設けることができる。なお、当該分断において、半導体基板の全面に酸化絶縁層57が形成されている場合、当該酸化絶縁層57も分断される。当該分断された酸化絶縁層57を酸化絶縁層61と示す(図1(D)参照。)。
【0041】
ここでは、加熱処理により、脆化領域55において、半導体基板53を分断する。加熱処理は、500度以上、支持基板51の歪み点未満の温度で行えばよい。当該加熱処理により、脆化領域55の微小な孔の内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、脆化領域55の微小な孔に体積変化が起こり、脆化領域55において半導体基板53が分断される。なお、本実施の形態では、脆化領域55が半導体基板53の端部まで形成されないため、半導体基板53の端部は、支持基板51に転載せず、半導体基板53側に分断される。
【0042】
なお、脆化領域55を半導体基板の陽極酸化により形成した場合、ウォータジェット法を用いて脆化領域55を切断してもよい。
【0043】
次に、支持基板51及び酸化絶縁層61の密着性を高めるため、半導体層59の端部にレーザ光63を照射する。
【0044】
レーザ光63としては、支持基板51及び酸化絶縁層61の密着性を高めるエネルギーを有するレーザ光が好ましい。このようなレーザ光のエネルギーは、半導体層59を完全溶融するエネルギーに相当する。ここで、完全溶融とは、半導体層59が酸化絶縁層61との界面付近まで溶融されて、液体状態になることをいう。半導体層59を完全溶融させると、レーザ光のエネルギーは酸化絶縁層61に伝達し、当該エネルギーにより支持基板51及び酸化絶縁層61の密着性が高まる。
【0045】
レーザ光63の波長は、半導体層59で吸収する波長が好ましく、代表的には、波長190nm〜2000nmの領域の紫外光から近赤外光であることが好ましい。
【0046】
また、連続発振のレーザを用いることで、被照射面におけるレーザ光の形状が、点状または楕円状となる。また、パルス発振レーザを用いることで、被照射面におけるレーザ光の形状が、線状または矩形状となる。パルス発振レーザの発振周波数は、1Hz以上10MHz以下程度とすることが好ましい。
【0047】
レーザ光63の照射方法は、図2(A)に示すように、被照射面におけるレーザ光の形状が、点状または楕円状となるレーザ光63aを、矢印のように半導体層59の端部に沿って走査する方法がある。このようなレーザ光63aの走査方法により、支持基板51を回転せずとも、半導体層59の端部に選択的にレーザ光63aを照射することができる。
【0048】
この結果、図2(B)に示すように、半導体層59の端部に多結晶半導体領域65が形成されると共に、半導体層59の端部における、支持基板51及び酸化絶縁層(図示しない。)の密着性を高めることができる。なお、半導体層59において、レーザ光63aの未照射領域は、半導体層67となる。
【0049】
また、図2と異なるレーザ光の照射方法として、被照射面におけるレーザ光の形状が、線状または矩形状となるレーザ光63bを、半導体層59の一辺それぞれに照射する方法がある。このようなレーザ光63bの照射方法により、半導体層59の端部におけるレーザ光63bの照射時間を短縮することが可能である。例えば、図3(A)に示すように、半導体層59の第1の辺にレーザ光63bを照射した後、支持基板51を90度回転させる。次に、図3(B)に示すように、半導体層59の第2の辺にレーザ光63cを照射する。このように、レーザ光を照射する工程と、基板を回転する工程とを、半導体層の辺の数のみ繰り返すことで、図3(C)に示すように、半導体層59の端部に多結晶半導体領域65が形成されると共に、半導体層59の端部における、支持基板51及び酸化絶縁層(図示しない。)の密着性を高めることができる。なお、半導体層59において、レーザ光63bおよび63cの未照射領域は、半導体層67となる。
【0050】
ここで、図2に示すように、被照射面におけるレーザ光の形状が、円状または楕円状となるレーザ光を照射するレーザ照射装置について、図4を用いて説明する。
【0051】
図4は、レーザ照射装置80の斜視図である。
【0052】
レーザ照射装置80は、レーザ光81を発振するレーザ発振器82、レーザ光81を任意の角度に反射させるガルバノミラー83a、83b、ガルバノミラー83aを駆動するガルバノスキャナ85a、ガルバノミラー83bを駆動するガルバノスキャナ85b、ガルバノミラー83a、83bで反射されたレーザ光81を被照射面に集光するfθレンズ87、支持基板51の位置を制御するXYステージ89、支持基板51とfθレンズ87との距離を調整するZ軸テーブル91を有する。また、レーザ照射装置80は、レーザ光81の照射位置を検知するCCD(Charge Coupled Device)カメラ93、支持基板51とfθレンズ87との距離を検出する位置検出装置95を有する。
【0053】
また、レーザ発振器82、ガルバノスキャナ85a、85b、XYステージ89、Z軸テーブル91、CCDカメラ93、位置検出装置95はそれぞれ制御装置99に接続される。制御装置99により、ガルバノスキャナ85a、85bの駆動を制御する。また、CCDカメラ93で撮像した情報を元に、制御装置99がガルバノスキャナ85a、85bの駆動及びXYステージ89の移動を制御し、半導体層59におけるレーザ光81の照射位置を制御する。また、位置検出装置95で得た情報を元に、制御装置99がfθレンズ87またはZ軸テーブル91を制御し、fθレンズ87及びZ軸テーブル91の間隔を制御する。
【0054】
また、レーザ発振器82及びガルバノミラー83a、83bの間に、シャッターを設けることができる。レーザ発振器82から発振されたレーザ光の光路を変更するためのミラーを適宜設けることができる。また、fθレンズ87のZ軸方向の位置調整が可能なオートフォーカス機構97を有してもよい。
【0055】
レーザ発振器82から発振されたレーザ光81は、ガルバノミラー83a、83bの傾きを制御することで、被照射面の任意の場所にレーザ光を走査することができる。なお、ガルバノミラー83a、83bの代わりに、ポリゴンミラー、音響光学偏向器(Acoust−Optic Deflector;AOD)等を用いてもよい。
【0056】
fθレンズ87でレーザ光81を集光することで、被照射面にレーザ光81の焦点を合わせることができる。
【0057】
位置検出装置95は、代表的には光学式変位計、超音波式変位計、レーザ変位計等を適宜用いることができる。ここでは、位置検出装置95として、レーザ変位計を用いる。
【0058】
なお、図4に示すレーザ照射装置においては、一組のレーザ発振器82、ガルバノミラー83a、83b、ガルバノスキャナ85a、85b及びfθレンズ87を示すが、複数組のレーザ発振器82、ガルバノミラー83a、83b、ガルバノスキャナ85a、85b及びfθレンズ87を設けることで、生産性を高めることができる。
【0059】
図4と異なるレーザ照射装置について、図5を用いて説明する。
【0060】
図5はレーザ照射装置の斜視図である。レーザ発振器82と、被照射面を有する支持基板51との間に、レーザ光の光路を制御するミラー84と、被照射面にレーザ光を集光する集光レンズ88とを有する。また、任意の角度に回転可能なθステージ92と、θステージ92上に設けられるX軸ステージ90aとを有する。また、レーザ発振器82、ミラー84及び集光レンズ88のY軸方向の移動を制御するY軸ステージ90bを有する。なお、図5においては、Y軸ステージ90bをレーザ発振器82、ミラー84及び集光レンズ88に設けた図を示している。なお、X軸ステージまたはY軸ステージに、Z軸方向の位置調整が可能なオートフォーカス機構を設けてもよい。
【0061】
なお、ここでは、Y軸ステージ90bをレーザ発振器82、ミラー84及び集光レンズ88に設けているが、X軸ステージ90aに設けてもよい。
【0062】
次に、図5に示すレーザ照射装置を用いたレーザ光の照射方法を説明する。レーザ発振器82から射出されたレーザ光81の光路をミラー84で支持基板51側へ変更する。集光レンズ88で集光したレーザ光を、X軸ステージまたはY軸ステージの移動により、半導体層59の第1の辺に照射する。
【0063】
次に、θステージ92を90度回転した後、X軸ステージまたはY軸ステージを移動し、第1の辺と直交する第2の辺にレーザ光を照射する。X軸ステージまたはY軸ステージと、θステージ92の操作を交互に行うことで、半導体層59の端部全てにレーザ光を照射することができる。
【0064】
なお、図5においては、一組のレーザ発振器82、ミラー84及び集光レンズ88を示すが、複数組のレーザ発振器82、ミラー84及び集光レンズ88を設けることで、生産性を高めることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、図4及び図5に示すレーザ照射装置の代わりに、適宜他の構成を有するレーザ照射装置を用いることができる。
【0066】
図1(D)に示すように、半導体層59の端部にレーザ光63を照射することで、支持基板51及び酸化絶縁層61の密着性を高めることができる。この結果、後に行われる半導体層59表面に形成される自然酸化層の除去工程において、支持基板51の溶解に伴う半導体層の端部の浮き及び剥がれを低減することができる。
【0067】
また、半導体層59の端部においてレーザ光63が照射された領域は、完全溶融するため、再結晶化し多結晶半導体領域65となる。なお、ここで、レーザ光63が照射されなかった領域を半導体層67と示す。また、半導体層67の表面には、自然酸化層69が形成される(図1(E)参照。)。当該自然酸化層69は、半導体層67が空気中の酸素に触れることで、半導体層67の一部が酸化され、形成される。
【0068】
次に、半導体層67の表面に形成された自然酸化層69を除去する。ここでは、エッチャントとしてフッ酸を用いたウェットエッチング法により自然酸化層69を除去する。なお、レーザ光の照射により支持基板51及び酸化絶縁層61の密着性が高められたため、支持基板51及び酸化絶縁層61の界面におけるエッチャントの浸入が低減される。この結果、半導体層59の端部の浮き及び剥がれを低減することができる。
【0069】
次に、自然酸化層69が除去された半導体層67にレーザ光75を照射する(図1(F)参照。)。当該工程により、半導体層67の凹部および凸部を溶融させた後、冷却することで固化する。この結果、平坦性を高めた半導体層77を形成することができる(図1(G)参照。)。
【0070】
レーザ光75は、レーザ光63と同様に、半導体層67に吸収される波長のレーザ光を用いることができる。
【0071】
また、レーザ光75は、半導体層67が部分溶融または完全溶融するエネルギーで照射する。なお、レーザ光75による半導体層67の溶融は、部分溶融とすることが好ましい。部分溶融とは、この場合、半導体層67の上部は溶融して液相となるが、下部は溶融せずに固相のままであることをいう。半導体層を部分溶融させることにより、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行する。これにより、表面の平坦性が高く、且つ欠陥の少ない半導体層77を形成することができる。また、半導体層67の部分溶融により、支持基板51の温度上昇を低減することができる。このため、支持基板51として、ガラス基板のような耐熱性の低い基板を用いることが可能である。
【0072】
なお、半導体層77の厚さを薄くするため、半導体層77の表面に、エッチング処理(例えばドライエッチングまたはウェットエッチング)や、研磨処理(例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing))などの平坦性を向上させる処理を行ってもよい。
【0073】
また、レーザ光63の照射により形成された多結晶半導体領域を選択的に除去してもよい。
【0074】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる方法で、支持基板に転載された半導体層の端部における浮き及び剥がれを低減する方法について、図6を用いて説明する。
【0076】
本実施の形態では、加熱手段により支持基板に転載された半導体層の端部を加熱することを特徴とする。加熱手段としては、線状のヒータ、または半導体層の端部と同様の形状を有する閉ループ状、代表的にはロ字状または環状のヒータ等がある。
【0077】
加熱手段を半導体層59の端部に圧着する。このとき、加熱手段は、半導体層のみ圧着してもよく、半導体層の端部及び支持基板51を圧着してもよい。図6(A)に示す領域64は、加熱手段が半導体層59の端部及び支持基板51に圧着した領域である。
【0078】
この結果、支持基板51及び酸化絶縁層(図示しない。)の密着性を向上させることが可能であり、半導体層59の端部の浮き及び剥がれを低減できる。
【0079】
なお、こののち、半導体層において加熱手段の圧着により結晶化した領域を除去し、加熱手段が圧着されない領域の半導体層68のみ支持基板51に設けてもよい(図6(B)参照。)。
【0080】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる半導体基板の構造及び作製方法の一形態について、図7を用いて説明する。
【0081】
本実施の形態で示す半導体基板は、図7に示すように、支持基板51に複数の半導体層59a〜59dを有することを特徴とする。以下に、図7に示す半導体基板の作製方法について、説明する。
【0082】
支持基板51に酸化絶縁層を介して複数の半導体基板を貼り合わる。ここでは、実施の形態1と同様に、複数の半導体基板それぞれを支持基板51に貼り合わせる。次に、各基板の脆化領域により半導体基板を分断すると共に、酸化絶縁層(図示しない。)を介して支持基板51に半導体層59a〜59dを転載する。また、分断された半導体層59a〜59dの端部にレーザ光を照射する。この結果、半導体層59a〜59dの端部に多結晶半導体領域65a〜65dが形成されると共に、支持基板51及び酸化絶縁層(図示しない。)の密着性を高めることができ、半導体層59a〜59dの端部の浮き及び剥がれを低減することができる。なお、半導体層59a〜59dにおいて、レーザ光の未照射領域は、半導体層67a〜67dとなる。
【0083】
なお、ここでは、支持基板51上に4つの半導体層59a〜59dが転載された形態を示すが、半導体層の数は適宜選択することができる。
【0084】
この後、実施の形態1の図1(E)乃至図1(G)の工程を経て、半導体基板を作製することができる。
【0085】
なお、ここでは、支持基板51上に転載した半導体層の端部にレーザ光を照射したが、実施の形態2に示すように、加熱手段により半導体層の端部を加熱し、支持基板51及び酸化絶縁層(図示しない。)の端部の密着性を高めてもよい。
【0086】
以上の工程により、半導体基板の大きさにかかわらず、大面積の半導体基板を作製することができる。
【0087】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置の作製方法の一形態について、図8及び図9を用いて説明する。
【0088】
まず、半導体基板100として、実施の形態1乃至実施の形態3により作製された半導体基板を用意する。ここでは、半導体基板100として、実施の形態1により作製された半導体基板を用いる(図8(A)参照。)。
【0089】
半導体基板100は、支持基板101上に酸化絶縁層103を介して半導体層105が設けられている。支持基板101、酸化絶縁層103、半導体層105はそれぞれ、実施の形態1に示す支持基板51、酸化絶縁層61、半導体層77と同様に形成することができる。
【0090】
なお、半導体層105の表面に、エッチング処理(例えばドライエッチングまたはウェットエッチング)や、研磨処理(例えばCMP)などの平坦性を向上させる処理を行ってもよい。
【0091】
また、半導体層105に、TFTのしきい値電圧を制御するための不純物元素を添加してもよい。不純物元素としては、例えば、pチャネル型のTFTを形成する領域にホウ素などのp型の導電性を付与するアクセプターを添加し、nチャネル型のTFTを形成する領域に、リンなどのn型の導電性を付与するドナーを添加すればよい。
【0092】
次に、半導体層105を選択的にエッチングし、半導体層107、109を形成する(図8(B)参照。)。なお、半導体層107はnチャネル型の薄膜トランジスタのチャネル形成領域として機能し、半導体層109はpチャネル型の薄膜トランジスタのチャネル形成領域として機能する。
【0093】
次いで、半導体層107、109上に絶縁層111を形成する。次に、絶縁層111上に導電層113を形成する(図8(C)参照。)。
【0094】
絶縁層111は、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層などを用いて、単層または積層で形成することができる。
【0095】
導電層113は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層または積層により形成することができる。
【0096】
次に、導電層113上にマスクを形成した後、当該マスクを用いて導電層113をエッチングして、ゲート電極119、121を形成する。また、当該マスクを用いて絶縁層111をエッチングして、ゲート絶縁層115、117を形成する(図8(D)参照。)。なお、絶縁層111をエッチングせず、絶縁層111をゲート絶縁層として用いてもよい。
【0097】
次に、半導体層107をマスク123で覆う。次に、半導体層109にアクセプターとなる不純物元素を添加し、高濃度不純物領域125、127を形成する。高濃度不純物領域125、127は、ソース領域及びドレイン領域として機能する。なお、半導体層109において、ゲート電極121と重畳する領域は、チャネル領域129となる(図9(A)参照。)。この後、マスク123を除去する。
【0098】
ここでは、アクセプターとなる不純物元素として、ボロンを用い、高濃度不純物領域125、127として、ボロンが添加された半導体領域を形成する。
【0099】
次に、高濃度不純物領域125、127、及びチャネル領域129をマスク131で覆う。次に、半導体層107にドナーとなる不純物元素を添加し、高濃度不純物領域133、135を形成する。高濃度不純物領域133、135は、ソース領域及びドレイン領域として機能する。なお、半導体層107において、ゲート電極119と重畳する領域は、チャネル領域137となる(図9(B)参照。)。この後、マスク131を除去する。
【0100】
ここでは、ドナーとなる不純物元素として、リンを用い、高濃度不純物領域133、135として、リンが添加された半導体領域を形成する。
【0101】
ここで、ゲート電極119、121をマスクとして半導体層107、109に不純物元素を添加することで、自己整合的に高濃度不純物領域125、127、133、135を形成することができる。なお、不純物元素の添加は、イオンドーピング法またはイオン注入法などにより行えばよい。
【0102】
なお、上記工程の順序を逆にして、半導体層107に高濃度不純物領域133、135を形成した後、半導体層109に高濃度不純物領域125、127を形成してもよい。
【0103】
なお、ゲート電極119、121をマスクとして、半導体層107、109に低濃度不純物領域を形成した後、ゲート電極119、121の側壁にサイドウォールを形成し、ゲート電極119、121及びサイドウォールをマスクとして、低濃度不純物領域に、不純物元素を添加して、高濃度不純物領域を形成してもよい。この場合、高濃度不純物領域とチャネル領域との間に、低濃度不純物領域が形成されるため、薄膜トランジスタの耐圧を高め、劣化を低減することができる。
【0104】
次に、ドナーとなる不純物元素及びアクセプターとなる不純物元素の活性化のための加熱処理を行う。
【0105】
次いで、絶縁層139、141を形成した後、加熱し水素化処理を行う(図9(C)参照。)。絶縁層139、141は、CVD法により酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層の単層または積層を形成する。CVD法により絶縁層139を形成することで、絶縁層139の水素含有量が高まるため、加熱処理により、チャネル領域129、137、高濃度不純物領域125、127、133、135を水素化し、水素によりダングリングボンドを終端させ、欠陥を低減することができる。
【0106】
なお、絶縁層141は、酸化シリコン、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)などの無機材料、または、ポリイミド、アクリルなどの有機材料を用いて形成することで、絶縁層141の平坦性を高めることができる。
【0107】
次に、絶縁層139、141の一部をエッチングして、コンタクトホールを形成した後、高濃度不純物領域125、127、133、135に接する配線143、145、147、149を形成する。
【0108】
配線143、145、147、149は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層または積層により形成することができる。なお、配線143、145、147、149は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0109】
以上の工程により、リンが添加された高濃度不純物領域133、135を有するnチャネル型の薄膜トランジスタ151、及びボロンが添加された高濃度不純物領域125、127を有するpチャネル型の薄膜トランジスタ153を有する半導体装置を作製することができる(図9(D)参照。)。
【0110】
本実施の形態では、薄膜トランジスタの作製方法を説明したが、薄膜トランジスタの他、容量、抵抗など薄膜トランジスタと共に各種の半導体素子を形成することができる。
【0111】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0112】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態3に示す半導体基板を用いたトランジスタまたはダイオードを使用して、半導体装置を作製することができる。半導体装置の代表例としては、液晶表示装置、有機発光表示装置、無機発光表示装置、記憶装置、光電変換装置等がある。ここでは、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い、新たな構造の記憶装置の一形態を示す。
【0113】
図10は、記憶装置の構成の一形態である。図10(A)には、記憶装置の断面を、図10(B)には、記憶装置の上面を、それぞれ示す。ここで、図10(A)は、図10(B)のE1−E2及びF1−F2における断面に相当する。図10(A)及び図10(B)に示す記憶装置は、下部に実施の形態1乃至実施の形態3に示す半導体基板を用いたトランジスタ260を有し、上部に酸化物半導体を用いたトランジスタ280を有するものである。トランジスタ260は、実施の形態4に示す薄膜トランジスタ151と類似しているため、図10(A)、(B)、(C)において図1(E)と同じ箇所は、同じ符号を用いて説明する。
【0114】
トランジスタ260は、支持基板101上に酸化絶縁層103を介して設けられた半導体層と、半導体層上に設けられたゲート絶縁層208と、ゲート絶縁層208上に設けられたゲート電極119と、半導体層の不純物領域と電気的に接続する一対の配線230a、230bを有する。一対の配線230a、230bは、ソース電極及びドレイン電極として機能する。なお、半導体層は、チャネル領域137と、チャネル領域137を挟むように設けられた低濃度不純物領域214、215と、高濃度不純物領域133、135、(これらをあわせて単に不純物領域ともよぶ。)とを有する。
【0115】
本実施の形態では、ゲート電極119の側面にはサイドウォール絶縁層218、219が設けられている。また、半導体層の、支持基板101の表面に垂直な方向から見てサイドウォール絶縁層218、219と重畳する領域には、低濃度不純物領域214、215を有する。また、トランジスタ260を覆うように、絶縁層140及び絶縁層142が設けられている。一対の配線230a、230bは、絶縁層140及び絶縁層142に形成されたコンタクトホールを通じて、高濃度不純物領域133、135と電気的に接続されている。なお、トランジスタ260の集積化などのため、サイドウォール絶縁層218、219が形成されない場合もある。
【0116】
絶縁層140、142は、実施の形態4に示す絶縁層139、141を平坦化処理して形成することができる。平坦化処理としては、エッチング処理(例えばドライエッチングまたはウェットエッチング)や、研磨処理(例えばCMP)等の処理を行う。
【0117】
図10に示すトランジスタ280は、酸化物半導体層240、酸化物半導体層240に接する一対の配線244a、244b、酸化物半導体層240及び一対の配線244a、244bを覆うゲート絶縁層245、ゲート絶縁層245を介して酸化物半導体層240と重畳するゲート電極247を含む。一対の配線244a、244bは、ソース電極及びドレイン電極として機能する。
【0118】
酸化物半導体層240は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系金属酸化物、In−Sn−Zn−O系金属酸化物、In−Al−Zn−O系金属酸化物、Sn−Ga−Zn−O系金属酸化物、Al−Ga−Zn−O系金属酸化物、Sn−Al−Zn−O系金属酸化物や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系金属酸化物、Sn−Zn−O系金属酸化物、Al−Zn−O系金属酸化物、Zn−Mg−O系金属酸化物、Sn−Mg−O系金属酸化物、In−Mg−O系金属酸化物などを用いることができる。ここでは、n元系金属酸化物はn種類の金属酸化物で構成される。なお、酸化物半導体層240に形成することが可能な金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、バンドギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0119】
酸化物半導体層240は、スパッタリング法、塗布法、印刷法、パルスレーザー蒸着法等で形成した後、加熱して、酸化物半導体層240に含まれる水素を除去することが好ましい。
【0120】
図10において、酸化物半導体層240の被形成面である絶縁層140、142の平坦性を高めることで、酸化物半導体層240の膜厚分布を均一にすることができるため、トランジスタ280の特性を向上させることができる。ただし、チャネル長は、短いものとし、例えば0.8μmや3μmとする。
【0121】
一対の配線244a、244bは、実施の形態4に示す一対の配線143、145、147、149と同様に形成することができる。また、一対の配線244a、244bと同時に、配線230aに接続する配線242a、配線230bに接続する配線242bを形成する。
【0122】
ゲート絶縁層245は、実施の形態4に示す絶縁層111と同様に形成することができる。
【0123】
ゲート電極247は、実施の形態4に示すゲート電極119、121と同様に形成することができる。なお、ゲート電極247と同時に、容量素子265の電極248を形成する。
【0124】
また、図10に示す容量素子265は、一対の配線244a、244bの一方と、誘電体として機能するゲート絶縁層245と、電極248とで容量を形成する。
【0125】
また、トランジスタ280及び容量素子265の上には、絶縁層250が設けられている。絶縁層250は、実施の形態4に示す絶縁層111と同様に形成することができる。
【0126】
酸化物半導体層を有するトランジスタは、オフ電流が極めて小さいため、酸化物半導体層を有するトランジスタを用いることにより、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0127】
また、図10(C)に記憶素子の回路図を示す。なお、回路図においては、酸化物半導体層を有するトランジスタであることを示すために、OSの符号を併せて付す場合がある。
【0128】
図10(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ260の一対の配線の一方とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ260の一対の配線の他方とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ280の一対の配線の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ280のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ260のゲート電極と、トランジスタ280の一対の配線の他方は、容量素子265の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子265の電極の他方は電気的に接続されている。
【0129】
図10(C)に示す記憶装置では、トランジスタ260のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0130】
はじめに、情報の書き込み及び保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ280がオン状態となる電位にして、トランジスタ280をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ260のゲート電極、及び容量素子265に与えられる。すなわち、トランジスタ260のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ280がオフ状態となる電位にして、トランジスタ280をオフ状態とすることにより、トランジスタ260のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0131】
トランジスタ280のオフ電流は極めて小さい、具体的には、室温でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、望ましくは10zA/μm以下であるから、トランジスタ260のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0132】
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ260のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ260をnチャネル型とすると、トランジスタ260のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_Hは、トランジスタ260のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値電圧Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ260を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、トランジスタ260のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ260は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ260は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0133】
本実施の形態は、実施の形態1乃至4のいずれか一と組み合わせることができる。
【実施例1】
【0134】
本実施例では、レーザ光が照射された、支持基板に転載した半導体層の端部と、レーザ光が照射されていない、支持基板に転載した半導体層の端部と、半導体層の端部の剥がれの様子について、図1及び図11乃至図14を用いて説明する。
【0135】
はじめに、支持基板51として、洗浄した無アルカリガラス基板(商品名EAGLEXG(登録商標))を準備した(図1(A)参照。)。
【0136】
次に、半導体基板53として単結晶シリコン基板を洗浄した後、酸素及び塩化水素雰囲気において950度で加熱して酸化絶縁層57を形成した。ここでは、酸化絶縁層57として、厚さ100nmの酸化シリコン層を形成した。
【0137】
次に、半導体基板53に脆化領域55を形成した(図1(B)参照。)。ここでは、ドーズ量を2.7×1016cm、加速電圧を50kV、電流密度6.35μA/cmとし、半導体基板53に水素または水素イオンのイオン注入を行った。
【0138】
次に、図1(C)に示すように、酸化絶縁層57を介して半導体基板53及び支持基板51を貼り合わせた。
【0139】
次に、加熱処理を行い、脆化領域55において、半導体基板53を分断した。ここでは、200度で2時間加熱した後、600度で2時間加熱して、支持基板51に酸化絶縁層61を介して半導体層59を転載した。
【0140】
次に、図1(D)に示すように、半導体層59の端部にレーザ光63を照射した。ここでは、波長532nm、17.5Wの連続発振のレーザ光を、走査速度35cm/秒として、半導体層59の一辺に照射した。なお、当該条件は、半導体層を完全溶融するのに十分なエネルギーである。レーザ光63の照射領域は、多結晶半導体領域となった。
【0141】
ここで、レーザ光の照射部、未照射部それぞれの断面を透過型電子顕微鏡(以下、TEM(Transmission Electron Microscope)という。)で観察した結果を図11に示す。
【0142】
図11(A)は、レーザ光の照射部における断面TEM像を示し、図11(B)は、レーザ光の未照射部における断面TEM像を示す。図11(A)において、支持基板51上に酸化絶縁層61が密着しており、酸化絶縁層61上にレーザ光の照射により形成された多結晶半導体領域511が設けられる。また、図11(B)において、支持基板51上に酸化絶縁層61が密着しており、酸化絶縁層61上にレーザ光が照射されない半導体層513が設けられる。
【0143】
次に、図1(F)に示すように、半導体層59の表面の自然酸化層69を除去した。ここでは、エッチャントとしてフッ酸を用いて、半導体層59の自然酸化層69を除去した。
【0144】
ここで、自然酸化層69を除去した後の、レーザ光の照射部、未照射部それぞれの断面をTEMで観察した結果を図12及び図13に示す。図12は、レーザ光の照射部における断面TEM像を示し、図13は、レーザ光の未照射部における断面TEM像を示す。
【0145】
図12(A)は、酸化絶縁層61を介して支持基板51上に転載された半導体層の端部における断面TEM像である。図12(A)の破線521の拡大図を図12(B)に示す。なお、図12(B)は2つの写真をつなぎ合わせており、位置合わせのため一部写真が離れている。支持基板51と酸化絶縁層61の界面に空洞523が形成される。空洞523は、自然酸化層69を除去する工程において、支持基板であるガラスが溶解され、形成されたものである。
【0146】
図13(A)は、酸化絶縁層61を介して支持基板51上に転載された半導体層の端部における断面TEM像である。図13(A)の破線525の拡大図を図13(B)に示す。なお、図13(B)は2つの写真をつなぎ合わせており、位置合わせのため一部写真が離れている。支持基板51と酸化絶縁層61の界面に空洞527が形成される。当該空洞527は、自然酸化層69を除去する工程において、支持基板であるガラスが溶解され、形成されたものである。図12(B)に示す空洞523と比較すると、支持基板51及び酸化絶縁層61の界面における空洞527は、破線529に示すように、厚さは薄いが、より奧にまで形成されている。
【0147】
支持基板及び酸化絶縁層の界面において密着性が高いと、エッチャントによる支持基板の溶解が生じても、酸化絶縁層及び支持基板の間へのエッチャントの浸入が少なく、図12(B)のように、支持基板の溶解がそれほど進まない。しかしながら、支持基板及び酸化絶縁層の密着性が弱いと、支持基板及び酸化絶縁層の間に隙間ができる。当該隙間にエッチャントが浸入することで、支持基板が更にエッチングされる。この結果、酸化絶縁層及び半導体層の端部が浮き上がり隙間が形成されてしまい、レーザ光の未照射部には、図13(B)のように、より奧にまで空洞が形成される。
【0148】
次に、支持基板51及び酸化絶縁層57の密着性を調べた。ここでは、カプトンテープ(商標登録)をレーザ光63の照射領域、及び未照射領域それぞれに貼り付けた後、カプトンテープを剥がして、それぞれの領域の密着性を調べた。
【0149】
図14は、密着性を測定した後の、支持基板51の端部を光学顕微鏡で撮影した写真である。レーザ光の照射部503においては、カプトンテープを剥がした後、多結晶半導体領域が剥がれる様子が観察されなかった。
【0150】
一方、レーザ光の未照射部505は、酸化絶縁層及び半導体層の一部が剥がれ、エッチャントによる溶解が進まない凸状の支持基板が露出している領域(例えば、破線509内)が観察された。これは、支持基板及び酸化絶縁層の密着性が低いため、カプトンテープを剥がす際に、酸化絶縁層及び半導体層の一部が剥がれてしまい、この結果、凸状の支持基板が露出するためである。
【0151】
以上のことから、支持基板に転載した半導体層の端部にレーザ光を照射することで、支持基板及び酸化絶縁層の密着性を高めると共に、半導体層の端部の浮き及び剥がれを低減できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化絶縁層で一表面が覆われ、且つ内部に脆化領域を有する半導体基板と、支持基板とを、前記酸化絶縁層を介して貼り合わせた後、前記脆化領域において前記半導体基板を分断して、前記酸化絶縁層を介して前記支持基板上に半導体層を設け、
前記半導体層の端部に第1のレーザ光を照射して、前記半導体層の一部に多結晶半導体領域を形成し、
前記端部に第1のレーザ光が照射された半導体層の表面の自然酸化層を除去した後、前記端部に第1のレーザ光が照射された半導体層に第2のレーザ光を照射することを特徴とする半導体基板の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1のレーザ光は、前記半導体層を完全溶融するエネルギーを有することを特徴とする半導体基板の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記第2のレーザ光は、前記半導体層を部分溶融するエネルギーを有することを特徴とする半導体基板の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記支持基板はガラス基板であり、前記自然酸化層は、酸化シリコン層であることを特徴とする半導体基板の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、前記自然酸化層は、ウェットエッチングにより除去することを特徴とする半導体基板の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、前記脆化領域は、前記半導体基板にイオンを照射して形成することを特徴とする半導体基板の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、前記脆化領域は、前記半導体基板の一部を陽極酸化して形成することを特徴とする半導体基板の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−119669(P2012−119669A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244073(P2011−244073)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】