説明

機能性デバイスの製造方法並びに薄膜トランジスタ及び圧電式インクジェットヘッド

【課題】従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能な機能性デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】熱処理することにより機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程と、基材上に機能性液体材料を塗布することにより、機能性固体材料の前駆体組成物層を形成する第2工程と、前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく第3工程と、前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層に型押し構造を形成する第4工程と、前駆体組成物層を第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前駆体組成物層から機能性固体材料層を形成する第5工程とをこの順序で含む機能性デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性デバイスの製造方法並びに薄膜トランジスタ及び圧電式インクジェットヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
図25は、従来の薄膜トランジスタ900を説明するために示す図である。
従来の薄膜トランジスタ900は、図25に示すように、ソース電極950及びドレイン電極960と、ソース電極950とドレイン電極960との間に位置するチャネル層940と、チャネル層940の導通状態を制御するゲート電極920と、ゲート電極920とチャネル層940との間に形成され、強誘電体材料からなるゲート絶縁層930とを備える。なお、図25において、符号910は絶縁性基板を示す。
【0003】
従来の薄膜トランジスタ900においては、ゲート絶縁層930を構成する材料として、強誘電体材料(例えば、BLT(Bi4−xLaTi12)、PZT(Pb(Zr,Ti1−x)O))が使用され、チャネル層940を構成する材料として、酸化物導電性材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO))が使用されている。
【0004】
従来の薄膜トランジスタ900によれば、チャネル層を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層を構成する材料として強誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0005】
従来の薄膜トランジスタは、図26に示す従来の薄膜トランジスタの製造方法により製造することができる。図26は、従来の薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図である。図26(a)〜図26(e)は各工程図であり、図26(f)は薄膜トランジスタ900の平面図である。
【0006】
まず、図26(a)に示すように、表面にSiO2層が形成されたSi基板からなる絶縁性基板910上に、電子ビーム蒸着法により、Ti(10nm)及びPt(40nm)の積層膜からなるゲート電極920 を形成する。
次に、図26(b)に示すように、ゲート電極920の上方から、ゾルゲル法により、BLT(Bi3.25La0.75Ti12)又はPZT(Pb(Zr0.4Ti0.6)O)からなるゲート絶縁層930(200nm)を形成する。
次に、図26(c)に示すように、ゲート絶縁層930上に、RFスパッタ法により、ITOからなるチャネル層940(5nm〜15nm)を形成する。
次に、図26(d)に示すように、チャネル層940上に、電子ビーム蒸着法により、Ti(30nm)及びPt(30nm)を真空蒸着してソース電極950及びドレイン電極960を形成する。
次に、RIE法及びウェットエッチング法(HF:HCl混合液)により、素子領域を他の素子領域から分離する。
これにより、図26(e)及び図26(f)に示すような、薄膜トランジスタ900を製造することができる。
【0007】
図27は、従来の薄膜トランジスタ900の電気特性を説明するために示す図である。なお、図27中、符号940aはチャネルを示し、符号940bは空乏層を示す。
従来の薄膜トランジスタ900においては、図27に示すように、ゲート電圧が3V(VG=3V)のときのオン電流として約10−4A、オン/オフ比として1×10、電界効果移動度μFEとして10cm/Vs、メモリウインドウとして約2Vの値が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−121029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の薄膜トランジスタ900は、上記のような方法によって製造されているため、ゲート電極920、チャネル層940、ソース電極950及びドレイン電極960を形成する過程で、真空プロセスやフォトリソグラフィープロセスを用いる必要があり、原材料や製造エネルギーの使用効率が低く、また、製造に長時間を要するという問題がある。
【0010】
なお、このような問題は、上記した薄膜トランジスタを製造する方法だけに見られる問題ではなく、アクチュエーター、光学デバイスなどの機能性デバイスを製造する方法全般に見られる問題である。
【0011】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、上記のように優れた薄膜トランジスタをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能な機能性デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]本発明の機能性デバイスの製造方法は、熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程と、基材上に前記機能性液体材料を塗布することにより、前記機能性固体材料の前駆体組成物層を形成する第2工程と、前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく第3工程と、前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前記前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成する第4工程と、前記前駆体組成物層を前記第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層を形成する第5工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の機能性デバイスの製造方法によれば、基材上に機能性液体材料を塗布して前駆体組成物層を形成し、当該前駆体組成物層に対して型押し加工を施して型押し構造を形成し、さらには前駆体組成物層を高温で熱処理することにより、機能性固体材料層を形成することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスタをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0014】
また、本発明の機能性デバイスの製造方法によれば、80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより前駆体組成物層の固化反応をある程度進めて前駆体組成物層の流動性を予め低くしておくとともに、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することにより前駆体組成物層の硬度を低くしておくことで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となり、その結果、所望の性能を有する機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0015】
ところで、高分子材料を用いて型押し加工を行う通常の型押し加工技術の場合とは異なり、熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属となる機能性液体材料を用いて型押し加工を行う型押し加工技術の場合には室温で型押し加工を行うという報告例がある。しかしながら、これによれば、所定の塑性変形能力を付与するためには有機成分や溶媒などを含有させる必要が生ずるため、これに起因して焼成時の形状劣化が激しくなってしまう。
【0016】
しかしながら、本発明の発明者らの研究により、前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱すれば、前駆体組成物層の塑性変形能力が高くなることが明らかとなった。また、主溶媒を除去できることが明らかとなった。そこで、本発明の機能性デバイスの製造方法においては、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得るとともに焼成時の形状劣化の少ない前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているのである。
【0017】
ここで、上記の第2温度を「80℃〜300℃」の範囲内としたのは、上記の第2温度が80℃未満である場合には、前駆体組成物層が十分に軟化しないため前駆体組成物層の塑性変形能力を十分高くすることができないからであり、上記の第2温度が300℃を超える場合には、前駆体組成物層の固化反応が進みすぎて前駆体組成物層の塑性変形能力が再び低下するからである。
【0018】
上記観点から言えば、前駆体組成物層を100℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱した状態で前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことがより好ましい。
【0019】
本発明の機能性デバイスの製造方法においては、第2温度は一定の温度でもよいし、所定の温度範囲内で変動する温度でもよい。本発明の機能性デバイスの製造方法においては、「型押し成形」は「ナノインプリント成形」と呼ばれることもある。
【0020】
[2]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第4工程においては、1MPa〜20MPaの範囲内にある圧力で型押し加工を施すことが好ましい。
【0021】
本発明の機能性デバイスの製造方法によれば、上記したように、高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くしても前駆体組成物層が型の表面形状に追随して変形するようになり、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。また、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くすることにより、型押し加工を施す際に型が損傷し難くなる。
【0022】
ここで、上記の圧力を「1MPa〜20MPa」の範囲内としたのは、上記の圧力が1MPa未満の場合には、圧力が低すぎて前駆体組成物を型押しすることができなくなる場合があるからであり、上記の圧力が20MPaもあれば十分に前駆体組成物を型押しすることができるため、これ以上の圧力を印加する必要がないからである。
【0023】
上記観点から言えば、第4工程においては、2MPa〜10MPaの範囲内にある圧力で型押し加工を施すことがより好ましい。
【0024】
[3]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第4工程においては、80℃〜300℃の範囲内にある第4温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことが好ましい。
【0025】
このような方法とすることにより、型押し加工を施している最中に、前駆体組成物層の塑性変形能力が低下することがなくなるため、所望の型押し構造を一層高い精度で形成することが可能となる。
【0026】
ここで、上記の第4温度を「80℃〜300℃」の範囲内としたのは、上記の第3温度が80℃未満の場合には、前駆体組成物層の温度が低下することに起因して前駆体組成物層の塑性変形能力が低下するからであり、上記の第4温度が300℃を超える場合には、前駆体組成物層の固化反応が進みすぎることに起因して前駆体組成物層の塑性変形能力が低下するからである。
【0027】
上記観点から言えば、第4温度においては、100℃〜200℃の範囲内にある温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことがより好ましい。
【0028】
[4]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第4工程において、少なくとも前記前駆体組成物層の表面に対する離型処理又は前記型の型押し面に対する離型処理を施した後、前記前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことが好ましい。
【0029】
このような方法とすることにより、前駆体組成物層と型との間の摩擦力を低減することができるため、前駆体組成物層に対してより一層精度良く型押し加工を施すことが可能となる。
【0030】
[5]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記機能性液体材料は、金属アルコキシドを含有する溶液、金属有機酸塩を含有する溶液、金属無機酸塩を含有する溶液、金属ハロゲン化物を含有する溶液、金属、窒素及び水素を含有する無機化合物を含有する溶液、金属水素化物を含有する溶液、金属ナノ粒子を含有する溶液又はセラミックス微粒子を含有する溶液であることが好ましい。
【0031】
このような方法とすることにより、所定の塑性変形能力を有する前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことが可能となり、型押し構造をより一層高い精度で形成することが可能となる。
【0032】
[6]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記機能性液体材料は、金属アルコキシドを含有する溶液、金属有機酸塩を含有する溶液又は金属無機酸塩を含有する溶液であり、前記第5工程における前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層への体積収縮率は、30%〜90%の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
このように、第5工程において所定の体積収縮率になるように、前駆体組成物層から機能性固体材料層を形成するようにすることにより、所望の型押し構造をより一層高い精度で形成することが可能となる。
【0034】
ここで、上記の体積収縮率を「30%〜90%」の範囲内としたのは、上記の体積収縮率を30%未満にしようとすると、前駆体組成物層の固化反応が進みすぎて前駆体組成物層の塑性変形能力を十分に高くすることが困難となる場合があるからであり、上記の体積収縮率が90%を超える場合には、体積収縮率が高すぎて、前駆体組成物層が収縮する過程で型押し構造が崩れてしまい易くなる場合があるからである。
【0035】
上記観点から言えば、第5工程における前駆体組成物層から機能性固体材料層への体積収縮率は、40%〜70%の範囲内にあることがより好ましく、50%〜60%の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0036】
なお、体積収縮率とは、「収縮前の体積−収縮後の体積」を「収縮前の体積」で割った値である。すなわち、体積収縮率が大きいほどよく収縮する。
【0037】
[7]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記機能性液体材料は、金属ハロゲン化物を含有する溶液、金属、窒素及び水素を含有する無機化合物を含有する溶液、金属水素化物を含有する溶液、金属ナノ粒子を含有する溶液又はセラミックス微粒子を含有する溶液であり、前記第5工程における前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層への体積収縮率は、1%〜30%の範囲内にあることが好ましい。
【0038】
ここで、上記の体積収縮率を「1%〜30%」の範囲内としたのは、上記の体積収縮率を1%未満にしようとすると、前駆体組成物層の固化反応が進みすぎて前駆体組成物層の塑性変形能力を十分に高くすることが困難となる場合があるからであり、これらの機能性液体材料の場合には体積収縮率が30%を超えない範囲内に自然に収まるからである。
【0039】
[8]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第5工程においては、酸素含有雰囲気で熱処理することにより、金属酸化物セラミックスからなる機能性固体材料層を形成することが好ましい。
【0040】
このような方法とすることにより、後述するように、機能性固体材料層を、「薄膜トランジスタにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層若しくは配線層」、「アクチュエーターにおける圧電体層若しくは電極層」、「光学デバイスにおける格子層」などとすることが可能となるため、種々の機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0041】
この場合、機能性固体材料として用いることができる金属酸化物セラミックスとしては、各種常誘電体材料(例えば、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5又はBST(BaSr1−x)Ti12)、SiO、SrTiO、LaAlO、HfO)、各種強誘電体材料(例えば、PZT(Pb(Zr,Ti1−x)O)、BLT(Bi4−xLaTi12)、NbドープPZT、LaドープPZT、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、BTO(BiTi12)、SBT(SrBiTa)、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5)、ビスマスフェライト(BiFeO))、各種半導体材料又は各種導電体材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム(In)、アンチモンドープ酸化錫(Sb−SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al−ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Ga−ZnO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化錫(SnO)、一酸化錫(SnO)、ニオブドープ二酸化チタン(Nb−TiO)などの酸化物導電体材料、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、ガリウムドープ酸化インジウム(In−Ga−O(IGO))、インジウムドープ酸化亜鉛(In−Zn−O(IZO))などのアモルファス導電性酸化物材料、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb−SrTiO)、ストロンチウムバリウム複合酸化物(SrBaO)、ストロンチウムカルシウム複合酸化物(SrCaO)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、酸化ニッケルランタン(LaNiO)、酸化チタンランタン(LaTiO)、酸化銅ランタン(LaCuO)、酸化ニッケルネオジム(NdNiO)、酸化ニッケルイットリウム(YNiO)、酸化ランタンカルシウムマンガン複合酸化物(LCMO)、鉛酸バリウム(BaPbO)、LSCO(LaSr1−xCuO)、LSMO(La1−xSrMnO)、YBCO(YBaCu7−x)、LNTO(La(NI1−xTi)O)、LSTO((La1−x,Sr)TiO)、STRO(Sr(Ti1−xRu)O)その他のペロブスカイト型導電性酸化物又はパイロクロア型導電性酸化物)、その他材料(例えば、High−k材料(HfO、Ta、ZrO、HfSi、ZrSi、LaAlO、La、(Ba1−x,Sr)TiO、Al、(Bi2−x,Zn)(Zn,Nb2−y)、Y、GeO、Gdなど)、ホイスラー系合金(Co、Co−Pt、Co−Fe、Mn−Pt、Ni−Fe、CoFeBなどの合金、Co−Cr−Fe−Al、CoMnAlなど)、MRAM用バリア材料((La1−x,Sr)MnOなどの酸化物系ハーフメタルなどのMRAM用電極材料、AlAs,MgO、Alなど)、マルチフェロイック材料(ペロブスカイト型BiMnO,BiFeO,YbMnOなど、ガーネット型RFe12(R=Dy,Ho,Er,Tm,Tb,Lu)、YAl12、GdGa12、SGGG(Gd2.7Ca0.3)(Ga4.0Mg0.32Zr0.65Ca0.03)O12など)、PRAM材料(GeTe1−x、GeSbTeなどのカルコゲナイド系、Sb−X合金(X=Ge、Ga、In、Se、Te)など)、光触媒用ルチル型二酸化チタン(TiO))を例示することができる。
【0042】
[9]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第5工程においては、還元雰囲気で熱処理することにより、金属からなる機能性固体材料層を形成することが好ましい。
【0043】
このような方法とすることにより、後述するように、機能性固体材料層を、「薄膜トランジスタにおけるゲート電極層若しくは配線層」、「アクチュエーターにおける電極層」、「光学デバイスにおける金属格子層」などとすることが可能となるため、種々の機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0044】
この場合、機能性固体材料として用いることができる金属としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ti、Ge、In、Snなどを例示することができる。
【0045】
[10]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第4工程において、前記第5工程における熱処理により、最も層厚が薄い領域でクラックが発生するような型押し構造を形成することが好ましい。
【0046】
このような方法とすることにより、第5工程においては、前駆体組成物層における最も層厚が薄い領域でクラックが発生し、当該クラックの存在に起因して、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0047】
[11]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第4工程と前記第5工程との間に、型押し加工が施された前記前駆体組成物層のうち最も層厚が薄い領域において前記前駆体組成物層が完全に除去されるような条件で、前記前駆体組成物層を全面エッチングする工程をさらに含むことが好ましい。
【0048】
このような方法とすることにより、第5工程においては、前駆体組成物層が複数の領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0049】
[12]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記機能性固体材料層が結晶構造を有する機能性固体材料からなり、前記基材又は基材の表面における結晶構造と、前記機能性固体材料層の結晶構造が同一又は類似の結晶構造であることが好ましい。
【0050】
このような方法とすることにより、基材又は基材の表面と、機能性固体材料層との親和性が増大するため、前駆体組成物層が面内方向に収縮し難くなる。
【0051】
[13]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記第2工程においては、前記基材として、表面に前記前駆体組成物層に対する親和性の異なる2つの領域を有する基材を用い、前記第4工程においては、前記2つの領域のうち前記前駆体組成物層に対する親和性が相対的に高い第1領域においては、前記2つの領域のうち前記前駆体組成物層に対する親和性が相対的に低い第2領域においてよりも層厚が厚くなるように、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成することが好ましい。
【0052】
このような方法とすることによっても、基材又は基材の表面と、機能性固体材料層との親和性が増大するため、前駆体組成物層が面内方向に収縮し難くなる。また、このような方法とすることにより、基材表面のパターンと機能性固体材料層のパターンとの整合性を容易に取ることができる。
【0053】
本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記基材として、絶縁性基板(例えば、石英ガラス基板、SiO/Si基板、アルミナ(Al)基板、STO(SrTiO)基板、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板など。)、半導体基板(例えば、Si基板、SiC基板、Ge基板など。)、導電性基板(例えば、Pt基板、Au基板、Al基板、Ti基板、ステンレス基板、SRO(SrRuO)基板など。)ほか、種々の基材を用いることができる。
【0054】
[14]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記機能性デバイスは、薄膜トランジスタであり、前記機能性固体材料層は、前記薄膜トランジスタにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層及び配線層のうち少なくとも1つの層であることが好ましい。
【0055】
このような方法とすることにより、薄膜トランジスタの少なくとも1つの層については、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0056】
なお、機能性固体材料層がゲート電極層又は配線層である場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種導電体材料又は上記した各種金属を用いることができる。
また、機能性固体材料層がゲート絶縁層である場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種常誘電体材料又は各種強誘電体材料を用いることができる。
また、機能性固体材料層がソース層、ドレイン層又はチャネル層である場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種半導体材料又は各種導電体材料を用いることができる。
【0057】
[15]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記機能性デバイスは、圧電体層を備えるアクチュエーターであり、前記機能性固体材料層は、前記圧電体層であることが好ましい。
【0058】
このような方法とすることにより、少なくとも圧電体層については、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0059】
この場合、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種強誘電体材料を用いることができる。
【0060】
[16]本発明の機能性デバイスの製造方法においては、前記機能性デバイスは、基材上に複数の格子層を備える光学デバイスであり、前記機能性固体材料層は、前記格子層であることが好ましい。
【0061】
このような方法とすることにより、格子層については、大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0062】
なお、格子層が絶縁体からなる場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種絶縁体材料を用いることができる。また、格子層が金属からなる場合には、機能性固体材料として、上記した各種金属を用いることができる。
【0063】
[17]本発明の薄膜トランジスタは、ソース領域及びドレイン領域並びにチャネル領域を含む酸化物導電体層と、前記チャネル領域の導通状態を制御するゲート電極と、前記ゲート電極と前記チャネル領域との間に形成され強誘電体材料又は常誘電体材料からなるゲート絶縁層とを備え、前記チャネル領域の層厚は、前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄いことを特徴とする薄膜トランジスタであって、前記チャネル領域の層厚が前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄い前記酸化物導電体層は、本発明の機能性デバイスの製造方法を用いて形成されたものであることを特徴とする。
【0064】
本発明の薄膜トランジスタによれば、チャネル領域を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層を構成する材料として強誘電体材料又は常誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、従来の薄膜トランジスタの場合と同様に、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0065】
また、本発明の薄膜トランジスタによれば、チャネル領域の層厚がソース領域の層厚及びドレイン領域の層厚よりも薄い酸化物導電体層を本発明の機能性デバイスの製造方法を用いて形成するだけで薄膜トランジスタを製造することが可能となるため、従来の薄膜トランジスタの場合のようにチャネル領域とソース領域及びドレイン領域とを異なる材料から形成しなくてもよくなり、上記のように優れた薄膜トランジスタを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0066】
また、本発明の薄膜トランジスタによれば、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度で熱処理することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより形成された、高い精度で形成された型押し構造を有する酸化物導電体層を備えるため、所望の性能を有する薄膜トランジスタとなる。
【0067】
[18]本発明の薄膜トランジスタにおいては、前記酸化物導電体層、前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層はすべて、前記機能性液体材料を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0068】
このような構成とすることにより、後述する実施形態からも分かるように、型押し成形加工技術を用いて薄膜トランジスタを製造することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスタを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0069】
[19]本発明の薄膜トランジスタにおいては、前記酸化物導電体層、前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層はすべて、真空プロセスを用いることなく形成されたものであることが好ましい。
【0070】
このような構成とすることにより、真空プロセスを用いることなしに薄膜トランジスタを製造することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスタを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0071】
[20]本発明の薄膜トランジスタにおいては、前記酸化物導電体層、前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層は、すべて酸化物材料からなることが好ましい。
【0072】
このような構成とすることにより、酸化物導電体層、ゲート電極及びゲート絶縁層を、すべて液体材料を用いて形成することができるようになる。また、信頼性の高い薄膜トランジスタとすることができる。
【0073】
[21]本発明の薄膜トランジスタにおいては、前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層はともに、ペロブスカイト構造を有することが好ましい。
【0074】
このような構成とすることにより、ゲート電極及びゲート絶縁層を同一の結晶構造とすることで、格子欠陥の少ない高品質な薄膜トランジスタを製造することが可能となる。
[22]本発明の薄膜トランジスタにおいては、前記チャネル領域のキャリア濃度及び層厚は、前記薄膜トランジスタがオフ状態のときに、前記チャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていることが好ましい。
【0075】
このような構成とすることにより、酸化物導電体層のキャリア濃度を高くしたとしても薄膜トランジスタがオフ状態の時に流れる電流量を十分低くできるため、必要なオンオフ比を維持しつつ、大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。
この場合において、薄膜トランジスタがエンハンスメント型のトランジスタである場合には、ゲート電極に0Vの制御電圧を印加したときに薄膜トランジスタがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよく、薄膜トランジスタがディプレッション型のトランジスタである場合には、ゲート電極に負の制御電圧を印加したときに薄膜トランジスタがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよい。
【0076】
[23]本発明の薄膜トランジスタにおいては、前記チャネル領域のキャリア濃度は、1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内にあり、前記チャネル領域の層厚は、5nm〜100nmの範囲内にあることが好ましい。
【0077】
このような構成とすることにより、必要なオンオフ比を維持しつつ、大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。
【0078】
なお、本発明の薄膜トランジスタにおいては、前記ソース領域及び前記ドレイン領域の層厚は、50nm〜1000nmの範囲内にあることが好ましい。
【0079】
[24]本発明の圧電式インクジェットヘッドは、キャビティ部材と、前記キャビティ部材の一方側に取り付けられ、圧電体層が形成された振動板と、前記キャビティ部材の他方側に取り付けられ、ノズル孔が形成されたノズルプレートと、前記キャビティ部材、前記振動板及び前記ノズルプレートによって画成されるインク室とを備える圧電式インクジェットヘッドであって、前記圧電体層及び/又は前記キャビティ部材は、本発明の機能性デバイスの製造方法を用いて形成されたものであることを特徴とする。
【0080】
本発明の圧電式インクジェットヘッドによれば、圧電体層及び/又はキャビティ部材が本発明の機能性デバイスの製造方法を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0081】
また、本発明の圧電式インクジェットヘッドによれば、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度で熱処理することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより形成された、高い精度で形成された型押し構造を有する圧電体層及び/又はキャビティ部材を備えるため、所望の性能を有する圧電式インクジェットヘッドとなる。
【0082】
[25]本発明の圧電式インクジェットヘッドにおいては、前記キャビティ部材、前記振動板及び前記圧電体層はともに、前記機能性液体材料を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0083】
このような構成とすることにより、型押し成形加工技術を用いて圧電式インクジェットヘッドを製造することが可能となるため、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて製造することが可能となる。
【0084】
[26]本発明の圧電式インクジェットヘッドにおいては、前記キャビティ部材、前記振動板及び前記圧電体層はともに、真空プロセスを用いることなく形成されたものであることが好ましい。
【0085】
このような構成とすることにより、真空プロセスを用いることなしに圧電式インクジェットヘッドを製造することが可能となるため、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図。
【図2】実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図。
【図3】実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図。
【図4】実施形態4に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図。
【図5】実施形態5に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図。
【図6】実施形態6に係る薄膜トランジスタ100を説明するために示す図。
【図7】実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図。
【図8】実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図。
【図9】実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図。
【図10】実施形態7に係る薄膜トランジスタ100を説明するために示す図。
【図11】実施形態7に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図。
【図12】実施形態7に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図。
【図13】実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300を説明するために示す図。
【図14】実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図15】実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図16】実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図。
【図17】実施例1に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図。
【図18】実施例1に用いる型押し成形加工装置700を説明するために示す図。
【図19】実施例1に用いる凹凸型M12を説明するために示す図。
【図20】実施例1に用いる凹凸型M13を説明するために示す図。
【図21】実施例1に係る薄膜トランジスタ400の電気特性を測定する様子を示す図。
【図22】実施例1に係る薄膜トランジスタ400の電気特性を説明するために示す図。
【図23】実施例1に係る薄膜トランジスタ400の電気特性を説明するために示す図。
【図24】前駆体組成物層の塑性変形能力を説明するために示す図である。
【図25】従来の薄膜トランジスタ900を説明するために示す図である。
【図26】従来の薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図である。
【図27】従来の薄膜トランジスタ900の電気特性を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、本発明の機能性デバイスの製造方法、薄膜トランジスタ及び圧電式インクジェットヘッドについて、図に示す実施の形態に基づいて説明する。実施形態1〜5は本発明の機能性デバイスの製造方法に関する実施形態であり、実施形態6及び7は本発明の薄膜トランジスタに関する実施形態であり、実施形態8は本発明の圧電式インクジェットヘッドに関する実施形態である。
【0088】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図である。図1(a)〜図1(f)は各工程図である。
【0089】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法は、図1に示すように、熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程と、基材10上に機能性液体材料を塗布することにより、機能性固体材料の前駆体組成物層20を形成する第2工程(図1(a)及び図1(b)参照。)と、前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前駆体組成物層20の流動性を予め低くしておく第3工程と、前駆体組成物層20を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前駆体組成物層20に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層22に型押し構造を形成する第4工程(図1(c)〜図1(e)参照。)と、前駆体組成物層22を第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前駆体組成物層22から機能性固体材料層30を形成する第5工程(図1(f)参照。)とをこの順序で含む。
【0090】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、機能性液体材料として、例えば、酸素含有雰囲気で熱処理することにより金属酸化物セラミックス(例えば、PZT(Pb(Zr,Ti1−x)O))からなる機能性固体材料層を形成可能な金属アルコキシドを含有する溶液を用いることができる。この場合、機能性固体材料層としては、金属酸化物セラミックス(例えば、PZT(Pb(Zr,Ti1−x)O))からなる機能性固体材料層となる。
【0091】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、基材として、例えば、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板を用いる。基材のサイズ・形状としては、例えば、縦20mm×横20mm×高さ2mmの直方体のものを用いる。
【0092】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、型として、例えば、10mm×10mmの正方形状の中央部に2mm×2mmのパターン領域を有し、当該パターン領域の中に縦2μm×横2μm×高低差200nmの正方形パターンが、縦横10μmピッチで多数配置された凹凸型M1を用いる。
【0093】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、第2工程において、基材10上に機能性液体材料を塗布することにより、機能性固体材料の前駆体組成物層20(厚さ230nm)を形成する。また、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、第4工程において、前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層に型押し構造(凸部における厚さ220nm、凹部における厚さ20nm)を形成する。
【0094】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、第4工程において、例えば、4MPaの圧力で型押し加工を施す。
【0095】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、第2温度として、例えば、150℃を採用することとしている。また、第4工程においては、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施すこととしている。
【0096】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、第4工程においては、前記前駆体組成物層の表面に対する離型処理及び型の型押し面に対する離型処理を施した後、前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしている。離型処理に用いることができる離型剤としては、界面活性剤(例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等を例示することができる。
【0097】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法においては、第5工程における前駆体組成物層から機能性固体材料層への体積収縮率は、例えば50%とする。
【0098】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法によれば、基材の中央部に2mm×2mmのパターン領域を有し、当該パターン領域の中に縦2μm×横2μm×高低差100nm(凸部における厚さ110nm、凹部における厚さ10nm)の正方形パターンが縦横10μmピッチで多数配置された型押し構造を有する機能性固体材料層を形成することができる。
【0099】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法によれば、基材上に機能性液体材料を塗布して前駆体組成物層を形成し、当該前駆体組成物層に対して型押し加工を施して型押し構造を形成し、さらには前駆体組成物層を高温で熱処理することにより、機能性固体材料層を形成することが可能となるため、上記のように優れた薄膜トランジスタをはじめとする種々の機能性デバイスを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0100】
また、本発明の機能性デバイスの製造方法によれば、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となり、その結果、所望の性能を有する機能性デバイスを製造することが可能となる。
【0101】
また、本発明の機能性デバイスの製造方法によれば、上記したように、高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととしているため、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くしても前駆体組成物層が型の表面形状に追随して変形するようになり、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。また、型押し加工を施す際に印加する圧力を1MPa〜20MPaにまで低くすることにより、型押し加工を施す際に型が損傷し難くなる。
【0102】
また、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法によれば、第4工程において、80℃〜300℃の範囲内にある第4温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すこととしているため、型押し加工を施している最中に、前駆体組成物層の塑性変形能力が低下することがなくなるため、所望の型押し構造を一層高い精度で形成することが可能となる。
【0103】
また、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法によれば、第4工程において、前駆体組成物層の表面及び型の型押し面に離型処理を施した後、前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことしているため、前駆体組成物層と型との間の摩擦力を低減することができる、前駆体組成物層に対してより一層精度良く型押し加工を施すことが可能となる。
【0104】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法によれば、機能性液体材料が、金属アルコキシドを含有する溶液であり、第4工程における前駆体組成物層から機能性固体材料層への体積収縮率は、30%〜90%の範囲内にあるため、所望の型押し構造をより一層高い精度で形成することが可能となる。
【0105】
実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法は、薄膜トランジスタにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層及び配線層のうち少なくとも1つの層を形成する際に適用することができる。この場合、ゲート電極層を形成する場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種導電体材料又は上記した各種金属を用いることができる。また、ゲート絶縁層を形成する場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種常誘電体材料又は各種強誘電体材料を用いることができる。また、ソース層、ドレイン層又はチャネル層を形成する場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種半導体材料又は各種導電体材料を用いることができる。
【0106】
また、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法は、アクチュエーターにおける圧電体層を形成する際に適用することができる。この場合には、機能性固体材料としては、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種強誘電体材料を用いることができる。
【0107】
さらにまた、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法は、複数の格子層を備える光学デバイスにおける格子層を形成する際に適用することもできる。この場合には、機能性固体材料として、上記した金属酸化物セラミックスのうち各種絶縁体材料を用いてもよいし、上記した各種金属を用いてもよい。
【0108】
[実施形態2]
図2は、実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図である。図2(a)は第4工程で前駆体組成物層20に型押し加工を施した直後における前駆体組成物層22の様子を示す図であり、図2(b)は前駆体組成物層22を熱処理することにより前駆体組成物層22から機能性固体材料層30を形成する途中における前駆体組成物層22の様子を示す図であり、図2(c)は前駆体組成物層22から機能性固体材料層30を形成する工程が終了した後における機能性固体材料層30の様子を示す図である。
【0109】
実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法は、基本的には実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法と同様の工程を含むが、第2工程の内容が実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法においては、図2に示すように、第2工程において、厚さ220nmの前駆体組成物層20を形成することとしている。従って、実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法においては、第4工程において、前駆体組成物層20に型押し構造(凸部における厚さ210nm、凹部における厚さ10nm)が形成されるようになり。これにより、第4工程における熱処理により、前駆体組成物層の凹部(前駆体組成物層における最も層厚が薄い領域)でクラックが発生することとなる。
【0110】
このため、実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法によれば、第5工程においては、前駆体組成物層の凹部(前駆体組成物層における最も層厚が薄い領域)でクラックが発生し、当該クラックの存在に起因して、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0111】
なお、実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法は、第2工程以外の内容が実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0112】
[実施形態3]
図3は、実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図である。図3(a)は第4工程で前駆体組成物層20に型押し加工を施した直後における前駆体組成物層22の様子を示す図であり、図3(b)は第4工程終了後に前駆体組成物層22を全面エッチングする様子を示す図であり、図3(c)は前駆体組成物層22から機能性固体材料層30を形成する工程が終了した後における機能性固体材料層30の様子を示す図である。
【0113】
実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法は、基本的には実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法と同様の工程を含むが、第4工程と第5工程との間に前駆体組成物層22を全面エッチングする工程(全面エッチング工程)をさらに含む点で実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法は、図3に示すように、第4工程と第5工程との間に前駆体組成物層22を20nmだけ全面エッチングする全面エッチング工程をさらに含む。従って、実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法においては、全面エッチング工程終了後において、型押し構造(凸部における厚さ200nm、凹部における厚さ0nm)が形成されるようになる。
【0114】
このため、実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法によれば、第5工程においては、前駆体組成物層が複数の領域に分断される結果、前駆体組成物層が無理なく面内方向に収縮できるようになるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0115】
なお、実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法は、第4工程と第5工程との間に前駆体組成物層22を全面エッチングする全面エッチング工程をさらに含む点以外の点で実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法の場合と同様であるため、実施形態1に係る機能性デバイスの製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0116】
[実施形態4]
図4は、実施形態4に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図である。図4(a)は第4工程で前駆体組成物層20に型押し加工を施した直後における前駆体組成物層22の様子を示す図であり、図4(b)は前駆体組成物層22を熱処理することにより前駆体組成物層22から機能性固体材料層30を形成する途中における前駆体組成物層22の様子を示す図であり、図4(c)は前駆体組成物層22から機能性固体材料層30を形成する工程が終了した後における機能性固体材料層30の様子を示す図である。
【0117】
実施形態4に係る機能性デバイスの製造方法は、基本的には実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法と同様の工程を含むが、基材の構成が実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態4に係る機能性デバイスの製造方法においては、図4に示すように、表面に前駆体組成物層に対する親和性の異なる2つの領域を有する基材を用いることとしている。また、これに従って、2つの領域のうち前駆体組成物層に対する親和性が相対的に高い第1領域R1においては、2つの領域のうち前駆体組成物層に対する親和性が相対的に低い第2領域R2においてよりも層厚が厚くなるように、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成することとしている。
【0118】
このため、実施形態4に係る機能性デバイスの製造方法によれば、基材又は基材の表面と、機能性固体材料層との親和性が増大するため、前駆体組成物層が面内方向に収縮し難くなる。従って、基材表面のパターンと機能性固体材料層のパターンとの整合性を容易に取ることができる。
【0119】
なお、実施形態4に係る機能性デバイスの製造方法は、基材の構成以外の内容が実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法の場合と同様であるため、実施形態2に係る機能性デバイスの製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0120】
[実施形態5]
図5は、実施形態5に係る機能性デバイスの製造方法を説明するために示す図である。図5(a)は第4工程で前駆体組成物層20に型押し加工を施した直後における前駆体組成物層22の様子を示す図であり、図5(b)は第4工程終了後に前駆体組成物層22を全面エッチングする様子を示す図であり、図5(c)は前駆体組成物層22から機能性固体材料層30を形成する工程が終了した後における機能性固体材料層30の様子を示す図である。
【0121】
実施形態5に係る機能性デバイスの製造方法は、基本的には実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法と同様の工程を含むが、基材の構成が実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態5に係る機能性デバイスの製造方法においては、図5に示すように、表面に前駆体組成物層に対する親和性の異なる2つの領域を有する基材を用いることとしている。また、これに従って、2つの領域のうち前駆体組成物層に対する親和性が相対的に高い第1領域R1においては、2つの領域のうち前駆体組成物層に対する親和性が相対的に低い第2領域R2においてよりも層厚が厚くなるように、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成することとしている。
【0122】
このため、実施形態5に係る機能性デバイスの製造方法によれば、基材又は基材の表面と、機能性固体材料層との親和性が増大するため、基材又は基材の表面と、機能性固体材料層との親和性が増大するため、前駆体組成物層が面内方向に収縮し難くなる。従って、基材表面のパターンと機能性固体材料層のパターンとの整合性を容易に取ることができる。
【0123】
なお、実施形態5に係る機能性デバイスの製造方法は基材の構成以外の内容が実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法の場合と同様であるため、実施形態3に係る機能性デバイスの製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0124】
[実施形態6]
1.実施形態6に係る薄膜トランジスタ100
図6は、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100を説明するために示す図である。図6(a)は薄膜トランジスタ100の平面図であり、図6(b)は図6(a)のA1−A1断面図であり、図6(c)は図6(a)のA2−A2断面図である。
【0125】
実施形態6に係る薄膜トランジスタ100は、図6(a)及び図6(b)に示すように、ソース領域144及びドレイン領域146並びにチャネル領域142を含む酸化物導電体層140と、チャネル領域142の導通状態を制御するゲート電極120と、ゲート電極120とチャネル領域142との間に形成され強誘電体材料からなるゲート絶縁層130とを備える。チャネル領域142の層厚は、ソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚よりも薄い。チャネル領域142の層厚は、好ましくは、ソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚の1/2以下である。ゲート電極120は、図6(a)及び図6(c)に示すように、スルーホール150を介して外部に露出するゲートパッド122に接続されている。
【0126】
実施形態6に係る薄膜トランジスタ100においては、チャネル領域142の層厚がソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚よりも薄い酸化物導電体層140は、型押し成形技術を用いて形成されたものである。
【0127】
実施形態6に係る薄膜トランジスタ100においては、チャネル領域142のキャリア濃度及び層厚は、ゲート電極120にオフの制御電圧を印加したときに、チャネル領域142が空乏化するような値に設定されている。具体的には、チャネル領域142のキャリア濃度は、1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内にあり、チャネル領域142の層厚は、5nm〜100nmの範囲内にある。
【0128】
なお、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100においては、ソース領域144及びドレイン領域146の層厚は、50nm〜1000nmの範囲内にある。
【0129】
酸化物導電体層140は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)からなり、ゲート絶縁層130は、例えばPZT(Pb(Zr,Ti1−x)O)からなり、ゲート電極120は、例えば酸化ニッケルランタン(LNO(LaNiO))からなり、固体基板としての絶縁性基板110は、例えばSi基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板からなる。
【0130】
2.実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法
実施形態6に係る薄膜トランジスタ100は、以下に示す薄膜トランジスタの製造方法(実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法)により製造することができる。以下、工程順に説明する。
【0131】
図7〜図9は、実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図である。図7(a)〜図7(e)、図8(a)〜図8(e)及び図9(a)〜図9(e)は各工程図である。なお、各工程図において、左側に示す図は図6(b)に対応する図であり、右側に示す図は図6(c)に対応する図である。
【0132】
(1)ゲート電極120の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0133】
次に、図7(a)及び図7(b)に示すように、絶縁性基板110における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層120’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0134】
次に、図7(c)及び図7(d)に示すように、ゲート電極120及びゲートパッド122に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M2(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層120’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層120’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第4工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0135】
次に、前駆体組成物層120’を全面エッチングすることにより、ゲート電極120に対応する領域以外の領域から前駆体組成物層を完全に除去する(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、ウェットエッチング技術を用いて真空プロセスを用いることなく行う。
【0136】
最後に、前駆体組成物層120’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図7(e)に示すように、前駆体組成物層120’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなるゲート電極120及びゲートパッド122を形成する(第5工程)。
【0137】
(2)ゲート絶縁層130の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(PZT)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を準備する(第1工程)。
【0138】
次に、絶縁性基板110における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し(例えば、2000rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き250℃で5分間乾燥させる操作を3回繰り返すことにより、機能性固体材料(PZT)の前駆体組成物層130’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0139】
次に、図8(b)及び図8(c)に示すように、スルーホール150に対応する領域が凸となるように形成された凹凸型M3(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層130’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層130’にスルーホール150に対応する型押し構造を形成する(第4工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0140】
最後に、前駆体組成物層130’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図8(d)に示すように、前駆体組成物層130’から、機能性固体材料層(PZT)からなるゲート絶縁層130を形成する(第5工程)。
【0141】
(3)酸化物導電体層140の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(ITO)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属カルボン酸塩を含有する溶液(株式会社高純度化学研究所製の機能性液体材料(商品名:ITO−05C)、原液:希釈液=1:1.5)を準備する。なお、当該機能性液体材料には、完成時にチャネル領域142のキャリア濃度が1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内になるような濃度の不純物が添加されている。
【0142】
次に、図8(e)に示すように、絶縁性基板110における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し(例えば、2000rpm・25秒)、その後、絶縁体基板110をホットプレート上に置き150℃で3分間乾燥させることにより、機能性固体材料(ITO)の前駆体組成物層140’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0143】
次に、図9(a)〜図9(c)に示すように、ソース領域144に対応する領域及びドレイン領域146に対応する領域よりもチャネル領域142に対応する領域が凸となるように形成され凹凸型M4(高低差350nm)を用いて、前駆体組成物層140’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層140’に型押し構造(凸部の層厚350nm、凹部の層厚100nm)を形成する(第4工程)。これにより、前駆体組成物層140’のうちチャネル領域142となる部分の層厚が他の部分よりも薄くなる。
【0144】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層140’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施すこととしている。この場合、型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0145】
なお、凹凸型M4は、チャネル領域142に対応する領域よりも素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域がさらに凸となるような構造を有しており、絶縁性基板110における一方の表面全面にウェットエッチングを施すことにより、チャネル領域142となる部分を所定の厚さにしつつも素子分離領域160及びスルーホール150に対応する領域から前駆体組成物層140’を完全に除去することができる(図9(d)参照。)。凹凸型M4は、素子分離領域に対応する領域部分が先細となった形状を有していてもよい。
【0146】
最後に、前駆体組成物層140’に熱処理を施す(ホットプレート上で400℃・10分の条件で前駆体組成物層140’の焼成を行い、その後、RTA装置を用いて650℃・30分(前半15分酸素雰囲気、後半の15分窒素雰囲気)の条件で前駆体組成物層140’を加熱する)ことにより、ソース領域144、ドレイン領域146及びチャネル領域142を含む酸化物導電体層140を形成し(第5工程)、図9(e)に示すようなボトムゲート構造を有する、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100を製造することができる。
【0147】
3.実施形態6に係る薄膜トランジスタ100の効果
実施形態6に係る薄膜トランジスタ100によれば、チャネル領域142を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層130を構成する材料として強誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、従来の薄膜トランジスタ900の場合と同様に、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0148】
また、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100によれば、チャネル領域142の層厚がソース領域144の層厚及びドレイン領域146の層厚よりも薄い酸化物導電体層140を形成するだけで薄膜トランジスタを製造することが可能となるため、従来の薄膜トランジスタ900の場合のようにチャネル領域とソース領域及びドレイン領域とを異なる材料から形成しなくてもよくなり、上記のように優れた薄膜トランジスタを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0149】
また、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100によれば、酸化物導電体層、ゲート電極及びゲート絶縁層はすべて、機能性液体材料を用いて形成されたものであるため、型押し成形加工技術を用いて薄膜トランジスタを製造することが可能となり、上記のように優れた薄膜トランジスタを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0150】
また、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100によれば、酸化物導電体層、ゲート電極及びゲート絶縁層はすべて、真空プロセスを用いることなく形成されたものであるため、真空プロセスを用いることなしに薄膜トランジスタを製造することが可能となり、上記のように優れた薄膜トランジスタを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0151】
また、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100によれば、ゲート電極及びゲート絶縁層はともにペロブスカイト構造を有するため、ゲート電極及びゲート絶縁層の界面で格子欠陥が少なくなり、高品質な薄膜トランジスタを製造することが可能となる。
【0152】
また、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100によれば、チャネル領域142のキャリア濃度及び層厚は、ゲート電極120にオフの制御電圧を印加したときに、チャネル領域142が空乏化するような値に設定されているため、酸化物導電体層のキャリア濃度を高くしたとしてもオフ時に流れる電流量を十分低くでき、必要なオンオフ比を維持しつつ大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。この場合において、薄膜トランジスタがエンハンスメント型のトランジスタである場合には、ゲート電極に0Vの制御電圧を印加したときに薄膜トランジスタがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよく、薄膜トランジスタがディプレッション型のトランジスタである場合には、ゲート電極に負の制御電圧を印加したときに薄膜トランジスタがオフ状態となるため、このようなときにチャネル領域全体が空乏化するような値に設定されていればよい。
【0153】
また、実施形態6に係る薄膜トランジスタ100によれば、チャネル領域142のキャリア濃度は、1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内にあり、チャネル領域142の層厚は、5nm〜100nmの範囲内にあるため、必要なオンオフ比を維持しつつ大きな電流を低い駆動電圧で制御することが可能となる。
【0154】
[実施形態7]
1.実施形態7に係る薄膜トランジスタ200
図10は、実施形態7に係る薄膜トランジスタ200を説明するために示す図である。図10(a)は薄膜トランジスタ200の平面図であり、図10(b)は図10(a)のA1−A1断面図であり、図10(c)は図10(a)のA2−A2断面図である。
【0155】
実施形態7に係る薄膜トランジスタ200は、基本的には実施形態6に係る薄膜トランジスタ100と同様の構成を有するが、トップゲート構造を有する点で実施形態6に係る薄膜トランジスタ100の場合と異なる。すなわち、実施形態7に係る薄膜トランジスタ200は、図10に示すように、絶縁性基板210の上方に、酸化物導電体層240、ゲート絶縁層230及びゲート電極220とがこの順序で形成された構造を有する。なお、ソース領域244及びドレイン領域246は、図10(a)及び図10(b)に示すように、それぞれスルーホール250を介して外部に露出している。
【0156】
このように、実施形態7に係る薄膜トランジスタ200は、トップゲート構造を有する点で実施形態6に係る薄膜トランジスタ100の場合と異なるが、チャネル領域242を構成する材料として酸化物導電性材料を用いているためキャリア濃度を高くすることができ、また、ゲート絶縁層220を構成する材料として強誘電体材料を用いているため低い駆動電圧で高速にスイッチングすることができ、その結果、実施形態6に係る薄膜トランジスタの場合と同様に、大きな電流を低い駆動電圧で高速に制御することが可能となる。
【0157】
また、チャネル領域242の層厚がソース領域244の層厚及びドレイン領域246の層厚よりも薄い酸化物導電体層240を形成するだけで薄膜トランジスタを製造することが可能となるため、実施形態6に係る薄膜トランジスタの場合と同様に、上記のように優れた薄膜トランジスタを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0158】
また、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度で熱処理することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより形成された、高い精度で形成された型押し構造を有する酸化物導電体層を備えるため、所望の性能を有する薄膜トランジスタとなる。
【0159】
なお、実施形態7に係る薄膜トランジスタ200は、以下に示す薄膜トランジスタの製造方法により製造することができる。以下、工程順に説明する。
【0160】
図11及び図12は、実施形態2に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図である。図11(a)〜図11(f)及び図12(a)〜図12(e)は各工程図である。
【0161】
(1)酸化物導電体層240の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(ITO)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属カルボン酸塩を含有する溶液(株式会社高純度化学研究所製の機能性液体材料(商品名:ITO−05C))を準備する。なお、当該機能性液体材料には、完成時にチャネル領域242のキャリア濃度が1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内になるような濃度の不純物が添加されている。
【0162】
次に、図11(a)に示すように、絶縁性基板210における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、絶縁体基板210をホットプレート上に置き150℃で3分間乾燥させることにより、機能性固体材料(ITO)の前駆体組成物層240’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0163】
次に、図11(b)及び図11(c)に示すように、ソース領域244に対応する領域及びドレイン領域246に対応する領域よりもチャネル領域242に対応する領域が凸となるように形成された凹凸型M5(高低差350nm)を用いて、前駆体組成物層240’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層240’に型押し構造(凸部の層厚350nm、凹部の層厚100nm)を形成する(第4工程)。これにより、前駆体組成物層240’のうちチャネル領域242となる部分の層厚が他の部分よりも薄くなる。
【0164】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層240’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施す。この場合、型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0165】
なお、凹凸型M5は、チャネル領域242に対応する領域よりも素子分離領域に対応する領域及びゲートパッド222に対応する領域がさらに凸となるような構造を有しており、絶縁性基板210における一方の表面全面にウェットエッチングを施すことにより、チャネル領域242となる部分を所定の厚さにしつつも素子分離領域260及びゲートパッド222に対応する領域上から前駆体組成物層240’を完全に除去することができる。凹凸型M5は、素子分離領域に対応する領域部分が先細となった形状を有していてもよい。
【0166】
最後に、前駆体組成物層240’に熱処理を施すことにより、図11(d)に示すように、ソース領域244、ドレイン領域246及びチャネル領域242を含む酸化物導電体層240を形成する(第5工程)。
【0167】
(2)ゲート絶縁層230の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(PZT)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を準備する。
【0168】
次に、図11(e)に示すように、絶縁性基板210における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、絶縁体基板210をホットプレート上に置き150℃で5分間乾燥させることにより、機能性固体材料(PZT)の前駆体組成物層230’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0169】
次に、図11(e)に示すように、スルーホール250に対応する領域が凸となるように形成された凹凸型M6(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層230’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層230’にスルーホール250に対応する型押し構造を形成する(第4工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。
【0170】
最後に、前駆体組成物層230’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図11(f)に示すように、前駆体組成物層230’から、機能性固体材料層(PZT)からなるゲート絶縁層230を形成する(第5工程)。
【0171】
(3)ゲート電極220の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0172】
次に、図12(a)及び図12(b)に示すように、絶縁性基板210における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し、その後、絶縁体基板210をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層220’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0173】
次に、図12(c)及び図12(d)に示すように、ゲート電極220に対応する領域及びゲートパッド222に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M7(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層220’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層220’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第4工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。これにより、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すこととなるため、所望の型押し構造をより一層高い精度で形成することが可能となる。
【0174】
次に、前駆体組成物層220’を全面エッチングすることにより、ゲート電極220に対応する領域及びゲートパッド222に対応する領域以外の領域から前駆体組成物層220’を完全に除去する(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、ウェットエッチング技術を用いて真空プロセスを用いることなく行う。
【0175】
最後に、前駆体組成物層220’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、前駆体組成物層220’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなるゲート電極220及びゲートパッド222を形成し(第5工程)、図12(e)に示すようなトップゲート構造を有する、実施形態7に係る薄膜トランジスタ200を製造することができる。
【0176】
[実施形態8]
図13は、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300を説明するために示す図である。図13(a)は圧電式インクジェットヘッド300の断面図であり、図13(b)及び図13(c)は圧電式インクジェットヘッド300がインクを吐出するときの様子を示す図である。
【0177】
1.実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300の構成
実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300は、図13(a)に示すように、キャビティ部材340と、キャビティ部材340の一方側に取り付けられ、圧電体素子320が形成された振動板350と、キャビティ部材340の他方側に取り付けられ、ノズル孔332が形成されたノズルプレート330と、キャビティ部材340、振動板350及びノズルプレート330によって画成されるインク室360とを備える。振動板350には、インク室360に連通しインク室360にインクを供給するためのインク供給口352が設けられている。
【0178】
実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、図13(b)及び図13(c)に示すように、圧電体素子320に適宜の電圧を印加することにより、振動板350を一旦上方に撓ませて図示しないリザーバからインクをインク室360に供給した後、振動板350を下方に撓ませることにより、ノズル孔332を介してインク室360からインク滴iを吐出させる。これによって、被印刷物に鮮やかな印刷を行うことができる。
【0179】
2.実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法
このような構造を有する圧電式インクジェットヘッド300は、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)及びキャビティ部材340がともに、本発明の機能性デバイスの製造方法を用いて形成されたものである。以下、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300の製造方法を工程順に説明する。
【0180】
図14〜図16は、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッドの製造方法を説明するために示す図である。図14(a)〜図14(f)、図15(a)〜図15(d)及び図16(a)〜図16(e)は各工程図である。
【0181】
(1)圧電体素子320の形成
(1−1)第1電極層322の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0182】
次に、図14(a)に示すように、ダミー基板310における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層322’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0183】
次に、図14(b)に示すように、第1電極層322に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M8(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層322’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層322’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第4工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。
【0184】
次に、前駆体組成物層322’を全面エッチングすることにより、第1電極層322に対応する領域以外の領域から前駆体組成物層322’を完全に除去する(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、ウェットエッチング技術を用いて真空プロセスを用いることなく行う。
【0185】
最後に、前駆体組成物層322’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図14(c)に示すように、前駆体組成物層326’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなる第1電極層322を形成する(第5工程)。
【0186】
(1−2)圧電体層324の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(PZT)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)を準備する(第1工程)。
【0187】
次に、図14(d)に示すように、ダミー基板310における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き250℃で5分間乾燥させることにより、機能性固体材料(PZT)の前駆体組成物層324’(例えば層厚1μm〜10μm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0188】
次に、図14(e)に示すように、圧電体層324に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M9(高低差500nm)を用いて、前駆体組成物層324’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層324’に型押し構造(例えば凸部の層厚1μm〜10μm、凹部の層厚50nm)を形成する(第4工程)。
【0189】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層324’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施す。型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0190】
次に、前駆体組成物層324’を全面エッチングすることにより、圧電体層324に対応する領域以外の領域から前駆体組成物層324’を完全に除去する(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、ウェットエッチング技術を用いて真空プロセスを用いることなく行う。
【0191】
最後に、前駆体組成物層324’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図14(f)に示すように、前駆体組成物層324’から、機能性固体材料層(PZT)からなる圧電体層324を形成する(第5工程)。
【0192】
(1−3)第2電極層326の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(酸化ニッケルランタン)からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、金属無機塩(硝酸ランタン(六水和物)及び酢酸ニッケル(四水和物))を含有する溶液(溶媒:2ーメトキシエタノール)を準備する。
【0193】
次に、図15(a)に示すように、ダミー基板310における一方の表面に、スピンコート法を用いて機能性液体材料を塗布し(例えば、500rpm・25秒)、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き60℃で1分間乾燥させることにより、機能性固体材料(酸化ニッケルランタン)の前駆体組成物層326’(層厚300nm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0194】
次に、図15(b)に示すように、第2電極層326に対応する領域が凹となるように形成された凹凸型M10(高低差300nm)を用いて、150℃で前駆体組成物層326’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層326’に型押し構造(凸部の層厚300nm、凹部の層厚50nm)を形成する(第4工程)。型押し加工を施すときの圧力は、5MPaとする。
【0195】
次に、前駆体組成物層326’を全面エッチングすることにより、第2電極層326に対応する領域以外の領域から前駆体組成物層326’を完全に除去する(全面エッチング工程)。全面エッチング工程は、ウェットエッチング技術を用いて真空プロセスを用いることなく行う。
【0196】
最後に、前駆体組成物層326’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図15(c)に示すように、前駆体組成物層326’から、機能性固体材料層(酸化ニッケルランタン)からなる第2電極層326を形成する(第5工程)。これにより、第1電極層322,圧電体層324及び第2電極層326からなる圧電体素子320が完成する。
【0197】
(2)振動板350と圧電体素子320との貼り合わせ
図15(d)に示すように、インク供給口352を有する振動板350と圧電体素子320とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0198】
(3)キャビティ部材340の形成
まず、熱処理することにより金属酸化物セラミックス(石英ガラス)となる機能性液体材料を準備する(第1工程)。具体的には、機能性液体材料として、金属アルコキシド(イソプロピルシリケート(Si(OC)を含有する溶液を準備する。
【0199】
次に、図16(a)に示すように、振動板350における一方の表面上に、スピンコート法を用いて上記した機能性液体材料を塗布し、その後、ダミー基板310をホットプレート上に置き150℃で5分間乾燥させることにより、機能性固体材料(石英ガラス)の前駆体組成物層340’(例えば層厚10μm〜20μm)を形成する(第2工程〜第3工程)。
【0200】
次に、図16(b)に示すように、インク室360等に対応する形状を有する凹凸型M11を用いて、前駆体組成物層340’に対して型押し加工を施すことにより、前駆体組成物層340’に型押し構造(例えば凸部の層厚10μm〜20μm、凹部の層厚50nm)を形成する(第4工程)。
【0201】
このとき、上記の工程においては、前駆体組成物層340’を150℃に加熱した状態で、かつ、150℃に加熱した型を用いて型押し加工を施す。型押し加工を施すときの圧力は、4MPa程度とする。
【0202】
最後に、前駆体組成物層340’をRTA装置を用いて高温で(650℃、10分間)熱処理することにより、図16(c)に示すように、前駆体組成物層340’から、機能性固体材料層(石英ガラス)からなるキャビティ部材340を形成する。
【0203】
(4)キャビティ部材340とノズルプレート330との貼り合わせ
図16(d)に示すように、キャビティ部材340と、ノズル孔332を有するノズルプレート330とを接着剤を用いて貼り合わせる。
【0204】
(5)ダミー基板310の取り外し
図16(e)に示すように、圧電体層320からダミー基板310を取り外す。これにより、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300が完成する。
【0205】
3.実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300の効果
実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340が型押し成形技術を用いて形成されたものであるため、圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【0206】
また、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、80℃〜300℃の範囲内にある第2温度で熱処理することで高い塑性変形能力を得た前駆体組成物層に対して型押し加工を施すことにより形成された、高い精度で形成された型押し構造を有する第1電極層、圧電体層、第2電極層及びキャビティ部材を備えるため、所望の性能を有する圧電式インクジェットヘッドとなる。
【0207】
また、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340がともに、機能性液体材料を用いて形成されたものであるため、型押し成形加工技術を用いて圧電式インクジェットヘッドを製造することが可能となり、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない原材料及び製造エネルギーを用いて製造することが可能となる。
【0208】
さらにまた、実施形態8に係る圧電式インクジェットヘッド300によれば、圧電体素子320(第1電極層322、圧電体層324及び第2電極層326)並びにキャビティ部材340がともに、真空プロセスを用いることなく形成されたものであるため、上記のように優れた圧電式インクジェットヘッドを、従来よりも大幅に少ない製造エネルギーを用いて、かつ、従来よりも短工程で製造することが可能となる。
【実施例】
【0209】
[実施例1]
実施例1は、型押し成形技術を用いて本発明の薄膜トランジスタを製造することができることを示す実施例である。
【0210】
1.薄膜トランジスタ400の作製
図17は、実施例1に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明するために示す図である。図17(a)〜図17(d)は各工程図であり、図17(e)は図17(d)の符号R3で示す部分を横方向に引き延ばした図である。
図18は、実施例1に用いる型押し成形加工装置700を説明するために示す図である。なお、図18中、符号710は下型、符号712は断熱板、符号714はヒーター、符号716は載置部、符号718は吸引部、符号720は上型、符号722はヒーター、符号724は固定部、符号726は石英ガラス基材を示す。
【0211】
図19は、実施例1に用いる凹凸型M12を説明するために示す図である。図19(a)は凹凸型M12の平面図であり、図19(b)は図19(a)における領域R5の拡大平面図であり、図19(c)は図19(b)のA3−A3断面図である。
図20は、実施例1に用いる凹凸型M13を説明するために示す図である。図20(a)は凹凸型M13の平面図であり、図20(b)は図20(a)における領域R6の拡大平面図であり、図20(c)は図20(b)のA4−A4断面図である。
【0212】
図17に示すように、以下に示す「ゲート電極形成工程」、「ゲート絶縁層形成工程」、及び「酸化物導電体層形成工程」をこの順序で実施することにより実施例1に係る薄膜トランジスタ400(図示せず。)を製造した。
【0213】
(1)ゲート電極形成工程
実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるゲート電極形成工程と同様の方法により、酸化ニッケルランタン(LNO)からなるゲート電極420を形成した(図17(a)及び図17(b)参照。)。ゲート電極420の層厚は100nmである。
【0214】
なお、型押し加工は、図18に示す型押し成形加工機700(東芝機械製の型押し成形加工装置ST50)を用いた。また、凹凸型M12として、図19に示す凹凸型M12を用いた。なお、凹凸型M12は、図19に示すように、20mm×20mmの正方形状の中央部に2mm×2mmのパターン領域R4を有する。当該パターン領域R4の中にはゲート電極420に対応する形状の凹凸パターン(図19(b)におけるA3−A3線に沿ったピッチ300μm、幅50μm、高さ350nm)が形成されている。凹凸型M12は両面テープを用いて石英ガラス基材726に固定する。型押し加工は、150℃で4MPaの圧力で行った。
【0215】
(2)ゲート絶縁層形成工程
実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるゲート絶縁膜形成工程と同様の方法により、PZTからなるゲート絶縁層430を形成した(図17(c)参照。)。ゲート絶縁層430の層厚は140nmである。
【0216】
(3)酸化物導電体層形成工程
実施形態6に係る薄膜トランジスタの製造方法における酸化物導電体層形成工程と同様の方法により、ITOからなる酸化物導電体層440を形成した(図17(d)及び図17(e)参照。)。酸化物導電体層440の層厚は、チャネル領域442において20nm、ソース/ドレイン領域444において100nmである。
【0217】
なお、型押し加工は、ゲート電極形成工程の場合と同様に、図19に示す型押し成形加工機700(東芝機械製の型押し成形加工装置ST50)を用いた。また、凹凸型M13として、図20に示す凹凸型M13を用いた。なお、凹凸型M13は、図20に示すように、20mm×20mmの正方形状の中央部に2mm×2mmのパターン領域R4を有する。当該パターン領域R4の中にはチャネル領域442に対応する格子状の凹凸パターン(図20(b)におけるA4−A4線に沿ったピッチ110μm、幅10μm、高さ350nm)が形成されている。凹凸型M13は両面テープを用いて石英ガラス基材726に固定する。
【0218】
型押し加工の圧力は、3MPaとして圧力が加わった時点で70℃から昇温していき、圧力を保持した状態で180℃まで加熱した。保持時間は15分とした。その後、水で冷却して、温度が70℃になった時点で離型を行った。
【0219】
以上の工程を経て、実施例1に係る薄膜トランジスタ400が完成した。
【0220】
2.薄膜トランジスタ400の評価
(1)薄膜トランジスタ400の構造
図21は、実施例1に係る薄膜トランジスタ400を説明するために示す図である。図21(a)は複数の薄膜トランジスタ400が配置されている様子を示す平面図であり、図21(b)は図21(a)における符号R7で示す領域を拡大して示す図であり、図21(c)は図21(a)における符号R8で示す領域を拡大して示す図である。
【0221】
実施例1に係る薄膜トランジスタ400においては、凹凸型M12の凹凸パターンにおけるA3−A3線に沿ったピッチと、凹凸型M13の凹凸パターンにおけるA4−A4線に沿ったピッチとを少し異ならしている。このため、実施例1に係る薄膜トランジスタ400においては、ゲート電極420のパターンと酸化物導電体層440のパターンとの位置合わせを行わなくても、基材上のどこかの領域で、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが理想的な第1の位置関係(チャネル領域442が本来のチャネル領域となる位置関係。図21(a)における符号R7で示す領域参照。)となる。なお、実施例1に係る薄膜トランジスタ400においては、逆にどこかの領域では、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが第1の位置関係とは異なる第2の位置関係(ソース/ドレイン領域444がチャネル領域となり、各プローブがソース電極/ドレイン電極となる位置関係。図21(a)における符号R8で示す領域参照。)となる。
【0222】
そこで、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが第1の位置関係となる場合における電気特性を測定した。この場合、図21(b)に示すように、ソース/ドレイン領域444における領域P1と領域P2とに各プローブを接触させた。また、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが第2の位置関係となる場合における電気特性をも測定した。この場合、図21(c)に示すように、ソース/ドレイン領域444における領域P3と領域P4とに各プローブを接触させた。
【0223】
(2)薄膜トランジスタ400の電気特性
まず、酸化物導電体層440の端部を1%フッ酸によりウェットエッチングし、下部のゲート電極420を露出させ、ゲート電極用のプローブを押し当てた。その後、上記したように、領域P1と領域P2とに各プローブを接触させ、さらには、領域P3と領域P4とに各プローブを接触させることにより、薄膜トランジスタ400における電気特性(ドレイン電流IDとゲート電圧VGとの間のID−VG特性、ドレイン電流IDとドレイン電圧VDとの間のID−VD特性)を半導体パラメータアナライザー(アジレント製)を用いて測定した。
【0224】
図22及び図23は、実施例1に係る薄膜トランジスタ400の電気特性を説明するために示す図である。図22はゲート電極420と酸化物導電体層440とが第1の位置関係となる場合における図であり、図23はゲート電極420と酸化物導電体層440とが第2の位置関係となる場合における図である。図22(a)及び図23(a)はID−VG特性を示す図であり、図22(b)及び図23(b)はID−VD特性を示す図である。なお、ID−VG特性を測定するに当たっては、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが第1の位置関係となる場合においては、ドレイン電圧VDを4.0Vに固定した状態で−5V〜+5Vの範囲でゲート電圧VGを走査し、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが第2の位置関係となる場合においては、ドレイン電圧VDを2.5Vに固定した状態で−3V〜+3Vの範囲でゲート電圧VGを走査した。
【0225】
実施例1に係る薄膜トランジスタ400は、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが第1の位置関係となる場合においては、図21(a)及び図21(b)からも分かるように、3桁程度のON/OFF比が得られ、トランジスタとしての挙動を示すことが確認できた。また、ゲート電極420と酸化物導電体層440とが第2の位置関係となる場合においては、図22(a)及び図22(b)からも分かるように、5桁程度のON/OFF比が得られ、トランジスタとしての挙動を示すことが確認できた。
【0226】
[実施例2]
実施例2は、前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することによって、前駆体組成物層の塑性変形能力が高くなることを示す実施例である。
【0227】
前駆体組成物層の塑性変形能力は、以下の手順により評価した。
【0228】
1.試料の準備
スピンコート法を用いて、基材上に機能性液体材料を100nmの層厚で塗布し(例えば、200rpm・25秒)、その後、基材をホットプレート上に置き150℃で30秒間乾燥させることにより、100nmの層厚の前駆体組成物層を形成した。基材としては、「シリコン基板の表面を酸化してSiO層を形成した基板」と、「Pt基板」を用いた。機能性液体材料としては、「金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)」及び「金属カルボン酸塩を含有する溶液(豊島製作所製、PZTゾルゲル溶液)」を用いた。
【0229】
2.カンチレバーによる押し込み
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のプローブ顕微鏡「S−IMAGE」に米国アナシスインスツルメンツ社のカンチレバーユニット「nano−TA2」を取り付けてナノサーマル顕微鏡とする。そして、当該ナノサーマル顕微鏡のカンチレバーを、種々の加重条件、温度条件(室温、100℃、200℃、300℃、400℃)、離型処理条件(離型処理有り、離型処理無し)の下で、上記の前駆体組成物層に押し込み、前駆体組成物層に対するカンチレバーの押し込み状態をプローブ顕微鏡のDFMモードで観察することにより行った。
【0230】
3.結果
「金属アルコキシドを含有する溶液(三菱マテリアル株式会社製、PZTゾルゲル溶液)」を用いて形成した前駆体組成物層及び「金属カルボン酸塩を含有する溶液(豊島製作所製、PZTゾルゲル溶液)」を用いて形成した前駆体組成物層のいずれも、どの加重条件においても、室温及び400℃では前駆体組成物層に対してカンチレバーが押し込まれなかったが、100℃、200℃及び300℃では前駆体組成物層に対してカンチレバーが押し込まれた。
【0231】
この結果により、前駆体組成物層を100℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱することによって、前駆体組成物層の塑性変形能力が高くなることがわかった。
【0232】
図24は、前駆体組成物層の塑性変形能力を説明するために示す図である。
図24からも把握できるように、基材上に機能性液体材料を塗布することにより機能性固体材料の前駆体組成物層を形成した場合、当該前駆体組成物層を形成した初期の時点では、前駆体組成物層が柔らかすぎて塑性変形能力が低く、良好な型押し成形を実施することができない(符号S1参照。)。これに対して、当該前駆体組成物層を加熱して乾燥させた場合には、前駆体組成物層の固化反応がある程度進むため、また、主溶媒が除去されるため、前駆体組成物層の流動性が低くなって前駆体組成物層がちょうどよい硬さになる(符号S2参照。)。しかしながら、この前駆体組成物層を室温で型押し成形したのでは、前駆体組成物層が硬くなりすぎて、塑性変形能力が再び低下する(符号S3参照。)。そこで、固化反応がある程度進んだ状態の前駆体組成物層を100℃〜300℃の範囲内にある第2温度に再び加熱することとしたのである。これにより、前駆体組成物層の硬度を低くすることで前駆体組成物層の塑性変形能力を再び高くして、良好な型押し成形を実施することが可能となる(符号S4参照。)。
【0233】
その後、上記結果を参考にして、前駆体組成物層を室温〜400℃の範囲内にある温度条件で前駆体組成物層に対して4Maの圧力で実際に型押し加工を施したところ、前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある温度に加熱した場合に、1MPa〜20MPという比較的低い圧力で、前駆体組成物層に所定の型押し構造を形成することが可能であることが確認された。
【0234】
以上、本発明の機能性デバイスの製造方法並びに薄膜トランジスタ及び圧電式インクジェットヘッドを上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0235】
(1)上記実施形態6及び7においては、酸化物導電体材料として、インジウム錫酸化物(ITO)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、酸化インジウム(In)、アンチモンドープ酸化錫(Sb−SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(Al−ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(Ga−ZnO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化錫(SnO)、一酸化錫SnO、ニオブドープ二酸化チタン(Nb−TiO)などの酸化物導電体材料を用いることができる。また、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、ガリウムドープ酸化インジウム(In−Ga−O(IGO))、インジウムドープ酸化亜鉛(In−Zn−O(IZO))などのアモルファス導電性酸化物を用いることができる。また、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb−SrTiO)、ストロンチウムバリウム複合酸化物(SrBaO)、ストロンチウムカルシウム複合酸化物(SrCaO)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、酸化ニッケルランタン(LaNiO)、酸化チタンランタン(LaTiO)、酸化銅ランタン(LaCuO)、酸化ニッケルネオジム(NdNiO)、酸化ニッケルイットリウム(YNiO)、酸化ランタンカルシウムマンガン複合酸化物(LCMO)、鉛酸バリウム(BaPbO)、LSCO(LaSr1−xCuO)、LSMO(La1−xSrMnO)、YBCO(YBaCu7−x)、LNTO(La(NI1−xTi)O)、LSTO((La1−x,Sr)TiO)、STRO(Sr(Ti1−xRu)O)その他のペロブスカイト型導電性酸化物又はパイロクロア型導電性酸化物を用いることができる。
【0236】
(2)上記実施形態6及び7においては、強誘電体材料として、PZT(Pb(Zr,Ti1−x)O)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、NbドープPZT、LaドープPZT、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、BTO(BiTi12)、BLT(Bi4−xLaTi12)、SBT(SrBiTa)、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5)又はビスマスフェライト(BiFeO)を用いることができる。
【0237】
(3)上記実施形態6及び7においては、強誘電体材料からなるゲート絶縁層を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、常誘電体材料(例えば、BZN(Bi1.5Zn1.0Nb1.5又はBST(BaSr1−x)Ti12)からなるゲート絶縁層を用いることもできる。
【0238】
(4)上記実施形態6及び7においては、ゲート電極に用いる材料として、酸化ニッケルランタン(LaNiO)を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、Pt、Au、Ag、Al、Ti、ITO、In、Sb−In、Nb−TiO、ZnO、Al−ZnO、Ga−ZnO、IGZO、RuO及びIrO並びにNb−STO、SrRuO、LaNiO、BaPbO、LSCO、LSMO、YBCOその他のペロブスカイト型導電性酸化物を用いることができる。また、パイロクロア型導電性酸化物及びアモルファス導電性酸化物を用いることもできる。
【0239】
(5)上記実施形態6及び7においては、絶縁性基板として、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板を用いたが、石英ガラス(SiO)基板を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、SiO/Si基板、アルミナ(Al)基板、STO(SrTiO)基板又はSRO(SrRuO)基板を用いることもできる。
【0240】
(6)上記実施形態6及び7は薄膜トランジスタを例にとって本発明を説明し、上記実施形態8は圧電式インクジェットヘッドを例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定される物ではない。例えば、本発明の機能性デバイスの製造方法は、基材上に金属酸化物セラミックス層又は金属層が格子状に形成された構造を有する反射型偏光板その他の各種光学デバイスを製造する際にも適用可能である。
【0241】
(7)本発明においては、機能性固体材料として、上記したほか、High−k材料(HfO、Ta、ZrO、HfSi、ZrSi、LaAlO、La、(Ba1−x,Sr)TiO、Al、(Bi2−x,Zn)(Zn,Nb2−y)、Y、GeO、Gdなど)、ホイスラー系合金(Co、Co−Pt、Co−Fe、Mn−Pt、Ni−Fe、CoFeBなどの合金、Co−Cr−Fe−Al、CoMnAlなど)、MRAM用バリア材料((La1−x,Sr)MnOなどの酸化物系ハーフメタルなどのMRAM用電極材料、AlAs,MgO、Alなど)、マルチフェロイック材料(ペロブスカイト型BiMnO,BiFeO,YbMnOなど、ガーネット型RFe12(R=Dy,Ho,Er,Tm,Tb,Lu)、Yl512、GdGa12、SGGG(Gd2.7Ca0.3)(Ga4.0Mg0.32Zr0.65Ca0.03)O12など)、PRAM材料(GeTe1−x,GeSbTeなどのカルコゲナイド系、Sb−X合金(X=Ge,Ga,In,Se,Te)など)及び光触媒用ルチル型二酸化チタン(TiO)を例示することもできる。
【符号の説明】
【0242】
10…基材
20,22…前駆体組成物層
30…機能性固体材料層
40,42,44,46,48…機能性デバイス
100,200,400,900…薄膜トランジスタ
110,210,410,910…絶縁性基板
120,220,420,120,220,920…ゲート電極
120’,220’,420’…前駆体組成物層(ゲート電極)
130,230,430,930…ゲート絶縁層
130’,230’,430’…前駆体組成物層(ゲート絶縁層)
140,240,440…酸化物導電体層、140’,240’,440’…前駆体組成物層(酸化物導電性層)
142,242,442…チャネル領域
144,244…ソース領域
146,246…ドレイン領域
300…圧電式インクジェットヘッド
310…ダミー基板
320…圧電体素子
322…第1電極層
324…圧電体層
326…第2電極層
330…ノズルプレート
332…ノズル孔
340…キャビティ部材
350…振動板
352…インク供給口
360…インク室
444…ソース/ドレイン領域
940…チャネル層、950…ソース電極
960…ドレイン電極、M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7,M8,M9,M10,M11,M12,M13…凹凸型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程と、
基材上に前記機能性液体材料を塗布することにより、前記機能性固体材料の前駆体組成物層を形成する第2工程と、
前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく第3工程と、
前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前記前駆体組成物層に対して、80℃〜300℃の範囲内にある第4温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成する第4工程と、
前記前駆体組成物層を前記第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層を形成する第5工程とをこの順序で含み、かつ
前記機能性デバイスは薄膜トランジスタであるとともに、前記機能性固体材料層は前記薄膜トランジスタにおけるゲート電極層、ゲート絶縁層、ソース層、ドレイン層、チャネル層、及び配線層のうち少なくとも1つの層である、
機能性デバイスの製造方法。
【請求項2】
熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程と、
基材上に前記機能性液体材料を塗布することにより、前記機能性固体材料の前駆体組成物層を形成する第2工程と、
前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく第3工程と、
前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前記前駆体組成物層に対して、80℃〜300℃の範囲内にある第4温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成する第4工程と、
前記前駆体組成物層を前記第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層を形成する第5工程とをこの順序で含み、かつ
前記機能性デバイスは圧電体層を備えるアクチュエーターであるとともに、前記機能性固体材料層は前記圧電体層である、
機能性デバイスの製造方法。
【請求項3】
熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程と、
基材上に前記機能性液体材料を塗布することにより、前記機能性固体材料の前駆体組成物層を形成する第2工程と、
前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく第3工程と、
前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前記前駆体組成物層に対して、80℃〜300℃の範囲内にある第4温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成する第4工程と、
前記前駆体組成物層を前記第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層を形成する第5工程とをこの順序で含み、かつ
前記機能性デバイスは基材上に複数の格子層を備える光学デバイスであり、前記機能性固体材料層は前記格子層である、
機能性デバイスの製造方法。
【請求項4】
ソース領域及びドレイン領域並びにチャネル領域を含む酸化物導電体層と、
前記チャネル領域の導通状態を制御するゲート電極と、
前記ゲート電極と前記チャネル領域との間に形成され強誘電体材料又は常誘電体材料からなるゲート絶縁層とを備え、
前記チャネル領域の層厚は、前記ソース領域の層厚及び前記ドレイン領域の層厚よりも薄いことを特徴とする薄膜トランジスタであって、
前記酸化物導電体層は、
(1)熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程
(2)基材上に前記機能性液体材料を塗布することにより、前記機能性固体材料の前駆体組成物層を形成する第2工程
(3)前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく第3工程
(4)前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前記前駆体組成物層に対して、80℃〜300℃の範囲内にある第4温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成する第4工程
(5)前記前駆体組成物層を前記第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層を形成する第5工程
という上記(1)〜(5)の工程を、この順序で含む製造方法を用いて形成されたものである、
薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル領域のキャリア濃度及び層厚は、前記薄膜トランジスタがオフ状態のときに、前記チャネル領域全体が空乏化するような値に設定され、かつ
前記チャネル領域のキャリア濃度は、1×1015cm−3〜1×1021cm−3の範囲内にあり、
前記チャネル領域の層厚は、5nm〜100nmの範囲内にある、
請求項4に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
キャビティ部材と、
前記キャビティ部材の一方側に取り付けられ、圧電体層が形成された振動板と、
前記キャビティ部材の他方側に取り付けられ、ノズル孔が形成されたノズルプレートと、
前記キャビティ部材、前記振動板及び前記ノズルプレートによって画成されるインク室と
を備える圧電式インクジェットヘッドであって、
前記圧電体層及び/又は前記キャビティ部材は、
(1)熱処理することにより金属酸化物セラミックス又は金属からなる機能性固体材料となる機能性液体材料を準備する第1工程
(2)基材上に前記機能性液体材料を塗布することにより、前記機能性固体材料の前駆体組成物層を形成する第2工程
(3)前記前駆体組成物層を80℃〜200℃の範囲内にある第1温度に加熱することにより、前記前駆体組成物層の流動性を予め低くしておく第3工程
(4)前記前駆体組成物層を80℃〜300℃の範囲内にある第2温度に加熱した状態で前記前駆体組成物層に対して、80℃〜300℃の範囲内にある第4温度に加熱した型を用いて型押し加工を施すことにより、前記前駆体組成物層に型押し構造を形成する第4工程
(5)前記前駆体組成物層を前記第2温度よりも高い第3温度で熱処理することにより、前記前駆体組成物層から前記機能性固体材料層を形成する第5工程
という上記(1)〜(5)の工程を、この順序で含む製造方法を用いて形成されたものである、
圧電式インクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−110423(P2013−110423A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−280468(P2012−280468)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2010−107764(P2010−107764)の分割
【原出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】