説明

パターン形成方法及びそれを利用した表示装置の製造方法

【課題】
互いにパターン(平面形状)の異なる2種類以上の薄膜を積層した積層構造を形成する工程にて、1回のフォトリソグラフィ工程で夫々の薄膜形状を画定すること。
【解決手段】
基板1上に2層の薄膜3,2を順次成膜し、次に薄膜2の上面に形成された第1マスクパターン4を用いて薄膜2のエッチングを行い、第1の薄膜パターン6を形成する。その後、第1マスクパターン4を残した状態で第1マスクパターン4及び薄膜2の上に、有機材料のオフセット印刷、インクジェット印刷、又はディスペンサノズルによる追加塗布で第2マスクパターン5を形成する。最後に、薄膜3を第1マスクパターン4及び第2マスクパターン5を用いて第2の薄膜パターン7に成形し、続いて2つのマスクパターン4,5を除去する。以上の工程により、フォトリソグラフィが第1マスクパターン4を形成する1回のみに制限されるも、基板1の主面に所望の積層構造が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に代表される表示装置の製造方法に係り、特にその基板主面に配線や薄膜トランジスタを形成するに好適なパターン形成方法、及びこれを応用した表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられる薄膜トランジスタは、基板(例えば、板状のガラス)の上に金属材料(含む合金材料)、絶縁材料、導電性酸化物、及び半導体材料の少なくとも一から成る種々の薄膜を形成する成膜工程、この薄膜上にこれを所定のパターンに成形するためのマスクパターンを形成するフォトリソグラフィ工程、この薄膜のマスクパターンに被覆された領域以外を除去するエッチング工程、並びに所定のパターンに成形された薄膜の上面からマスクパターンを除去するマスクパターン除去工程を順次繰り返すことで製造される。
【0003】
しかし、液晶テレビの普及や、その画面の大型化及び高精細化が進むことに伴い、近年ではテレビ用液晶表示パネルの製造装置にも大型化や高性能化が求められている。その結果、製造装置のランニングコストや初期投資額の増大が液晶表示パネルの量産における問題となっている。液晶表示パネルの製造コストを大幅に低減する上で、その薄膜トランジスタ製造工程の短縮により、液晶表示パネルの製造に係る全体の工程数を減らすことが強く要求されている。
【0004】
薄膜トランジスタの製造工程を短縮させるためには、これに要するフォトリソグラフィ工程の数を減らすのが最も効果的である。主工程(main process)としてのフォトリソグラフィ工程は、感光性を有するフォトレジストを基板上に形成された薄膜の全面に塗布する塗布工程、フォトレジスト中に含まれる溶剤成分を蒸発させるとともに薄膜表面に対してフォトレジストが密着するように基板を加熱するプリベーク工程、フォトレジストを所定のパターン(以下、マスクパターン)で選択的に感光させる露光工程、フォトレジストの感光した領域をアルカリ性水溶液で溶解除去する現像工程、このアルカリ性水溶液を薄膜上面から除去し且つ基板を乾燥させるリンス・乾燥工程、薄膜上にマスクパターンとして残ったフォトレジストを感光しないように加熱して当該フォトレジストの化学構造を変化させるポストベーク工程という、多数の副工程(sub-process)を含む。従って、上述した成膜工程、エッチング工程、及びマスクパターン除去工程に比べて多くの副工程から成るフォトリソグラフィ工程は、薄膜トランジスタの製造時間を実質的に決める。
【0005】
上述したフォトリソグラフィ工程の数を減らす手法として、特開2000−164886公報には、(1)ハーフトーンマスクによる方法と、(2)マスクパターンの加熱軟化による方法とが開示されている。これについて、図11及び図12を用いて説明する。
【0006】
ハーフトーンマスクによる薄膜トランジスタの製造工程では:
図11(a)に示すように、基板1の上に順次成膜した薄膜2及び薄膜3の表面に厚い領域8aと薄い領域8bとをもつマスクパターン8を形成する副工程;
図11(b)に示すように、薄膜2及び薄膜3を順次エッチングして、パターン9及びパターン7を形成する副工程;
図11(c)に示すように、マスクパターン8をエッチングすることによって前記薄い領域8bを除去するとともに、厚い領域8aが薄くなったマスクパターン10と、パターン9の一部を露出させる副工程;
図11(d)に示すように、パターン9の露出領域をエッチングしてパターン6を形成する副工程;及び
図11(e)に示すように、マスクパターン10を除去して積層膜パターンを形成するする副工程がこの順に行われる。
【0007】
一方,マスクパターンの加熱軟化による薄膜トランジスタの製造工程では:
図12(a)に示すように、基板1の上に順次成膜した薄膜2及び薄膜3の表面にマスクパターン4を形成する副工程;
図12(b)に示すように、マスクパターン4を加熱軟化させて変形することによって厚い領域11aと薄い領域11bとをもつマスクパターン11を形成する副工程;
図12(c)に示すように、薄膜2及び薄膜3を順次エッチングして、パターン9及びパターン7を形成する副工程;
図12(d)に示すように、マスクパターン11をエッチングすることによって前記薄い領域11bを除去するとともに、マスクパターンの残存領域10(元の厚い領域11aを主とする)から薄膜パターン9の一部を露出させる副工程;及び
図11(d)及び図11(e)を参照して説明された如き手順で、図12(e)に示すようにパターン6を形成し且つマスクパターン10を除去する副工程がこの順に行われる。
【0008】
【特許文献1】特開2000−164886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記ハーフトーンマスクによる方法は、図11(a)におけるマスクパターン8の厚い領域8aと薄い領域8bとが連続的で明確に区分されないため、薄い領域8bの除去を行っても除去領域が明確に画定されず、図11(c)における残存するマスクパターン10の平面形状が画定された形状にはならない。従って、図11(d)におけるパターン6は画定された形状にはならない。
【0010】
また、前記マスクパターンの加熱軟化による方法も同様に、マスクパターン11の厚い領域11aと薄い領域11bとが連続的で明確に区分されないため、薄い領域11bの除去を行っても除去領域が明確に画定されず、図12(d)における残存するマスクパターン10の平面形状が画定された形状にはならない。従って、図12(e)におけるパターン6は画定された形状にはならない。
【0011】
本発明の目的は、互いに形状の異なる2種類以上のパターンが上下に配置された積層膜パターンを形成するのに、フォトリソグラフィ工程の数が1回のみでも画定された形状が得られることを可能とするパターン形成方法及びそれを用いた表示装置の製造方法(及びこれに適した表示装置(液晶表示装置等)の構造)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的に鑑み、本発明は以下に例示されるパターン形成方法及びこれに基づく表示装置の製造方法を提供する。
【0013】
本発明によるパターン形成方法の代表的な例は:
基板主面に第1の膜と該第1膜より該主面側に位置する第2の膜とを含む積層構造を形成する積層工程;
前記積層構造上に前記第1の膜を部分的に覆う第1のマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程;
前記第1のマスクパターンを通して前記第1の膜の一部を除去する第1のエッチング工程;
前記第1のマスクパターンの一部及び前記第2の膜の一部に有機材料を塗布してこれらを被覆する第2のマスクパターンを形成させるマスクパターン追加工程;
前記第1のマスクパターン及び前記第2のマスクパターンを通して、前記第2の膜の該第1及び該第2のマスクパターンのいずれからも露出された領域を除去する第2のエッチング工程;及び、
前記第1のマスクパターンと前記第2のマスクパターンとを除去するマスクパターン除去工程をこの順に行うことに特徴付けられる。
【0014】
本発明によるパターン形成方法の基本的な観点を、図1を参照して具体的に説明する。上記積層工程にて、基板1(その主面)の上に形成された第1の薄膜2と、この下に配置された第2の薄膜3とから構成される被エッチング膜の上に、所定形状の第1のマスクパターン4を形成するのがマスクパターン形成工程である(図1(a)に参照)。このマスクパターン4をマスクとして薄膜2の一部を除去する第1のエッチング工程(図1(b))に続いて、マスクパターン4の一部及び薄膜3の一部が被覆されるように所定形状の有機材料を所定の方法で選択的に追加塗布して第2のマスクパターン5を形成させるマスクパターン追加工程(図1(c)参照)が行われる。その後、マスクパターン4及びマスクパターン5をマスクとして、これらのいずれにも覆われない薄膜3の部分(以下、露出領域と記す)を除去する第2のエッチング工程(図1(d)参照)、及び基板1からマスクパターン4とマスクパターン5を除去するマスクパターン除去工程(図1(e))とがこの順に続く。この発明によれば、厚い領域と薄い領域とが明確に区分されたマスクパターンが形成されるため、パターン6(上記第1の膜のパターン)及びパターン7(上記第2の膜のパターン)のいずれも、その輪郭が明確に画定された形状に成る。
【0015】
上記発明において、マスクパターン形成工程では、従来のフォトリソグラフィ技術でも十分であるが、可能であればオフセット印刷またはインクジェット印刷またはディスペンサノズルを用いて有機材料を塗布することで行うようにしてもよい。
【0016】
上記発明において、第1のエッチング工程の後で、かつマスクパターン追加工程の前に、第1のエッチング工程によりマスクパターン4の表面及び薄膜3の露出領域の表面に生成した変質層を除去する表面変質層除去工程を行うようにしてもよい。この表面変質層除去工程は、オゾンガスと窒素ガスとを含む混合ガスに曝すことで行えばよい。この場合のオゾンガスは、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスに紫外線を照射することで発生されるものである。また、この変質層除去工程は、酸素、または酸素を含む混合ガスによるプラズマ処理を行うことで除去を行うようにしてもよい。この場合のプラズマ処理は、Oガス、またはOガスと不活性ガスとの混合ガス、またはOガスとフッ化物ガスとの混合ガスの何れかのプラズマ処理ガスを用いて行われる。ここで、フッ化物ガスとは、分子構造の中にフッ素原子を含む分子からなるガスである。プラズマ処理ガスがOガスと不活性ガスとの混合ガスである時は、O/He、O/Arの何れかのガスを含む混合ガスであり、プラズマ処理ガスがO2ガスとフッ化物ガスとの混合ガスである時は、O/SF、O/CF、O/CHFの何れかのガスを含む混合ガスである。
【0017】
上記発明において、マスクパターン追加工程の直前に、マスクパターン4の表面及び薄膜3の露出領域の表面に対する、有機材料の密着性を向上させる表面改質工程を行うようにしてもよい。この表面改質工程は、ヘキサメチルジシラザン(Hexamethyldisilazane)に曝すことで行えばよい。この場合のヘキサメチルジシラザンは、液体のヘキサメチルジシラザン、または気体のヘキサメチルジシラザンの何れかでよい。
【0018】
上記発明において、表面改質工程の直後に、乾燥及び加熱して、ヘキサメチルジシラザンの大部分を除去し、マスクパターン4の表面及び薄膜3の露出領域の表面にヘキサメチルジシラザンの一部を吸着させる表面改質後処理工程を行うようにしてもよい。
【0019】
上記発明において、マスクパターン追加工程では、マスクパターン4の一部及び薄膜3の露出領域が選択的に被覆されるように、所定の有機材料からなるマスクパターン5をオフセット印刷またはインクジェット印刷またはディスペンサノズルを用いて形成することで行えばよい。
【0020】
上記発明において、上記有機材料は、レジスト材料としての機能を果たすのであれば十分であり、必ずしも感光性を有する材料が添加されている必要はない。
【0021】
上記発明において、マスクパターン追加工程の後で、かつ第2のエッチング工程の前に、加熱して、マスクパターン5が感光して化学反応することを抑制する、またはマスクパターン4の表面及び薄膜3の露出領域表面に対してマスクパターン5を密着させるマスクパターン追加後加熱工程を行うようにしてもよい。
【0022】
上記発明において、マスクパターン除去工程は、2−アミノエタノール(2-aminoethanol)、または2−アミノエタノールを含む水溶液に曝すことで、マスクパターン4及びマスクパターン5を除去すればよい。
【0023】
上記発明において、第2のエッチング工程の後で、かつマスクパターン除去工程の前に、マスクパターン4の表面、またはマスクパターン5の表面、または薄膜3の露出領域の表面から、前記レジスト材料または薄膜3の一部を除去するマスクパターン除去前処理工程を行うようにしてもよい。このマスクパターン除去前処理工程は、オゾンガスと窒素ガスとを含む混合ガスに曝すことで行えばよい。この場合のオゾンガスは、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスに紫外線を照射することで発生されるものである。また、このマスクパターン除去前処理工程は、酸素、または酸素を含む混合ガスによるプラズマ処理を行うことで除去を行うようにしてもよい。この場合のプラズマ処理は、Oガス、またはOガスと不活性ガスとの混合ガス、またはOガスとフッ化物ガスとの混合ガスの何れかのプラズマ処理ガスを用いて行われ、プラズマ処理ガスがOガスと不活性ガスとの混合ガスである時は、O/He、O/Arの何れかのガスを含む混合ガスであり、プラズマ処理ガスがOガスとフッ化物ガスとの混合ガスである時は、O/SF、O/CF、O/CHFの何れかのガスを含む混合ガスである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、互いに形状の異なる2種類以上のパターンが上下に配置された積層膜パターンを形成するのに、フォトリソグラフィ工程の数が1回のみでも画定された形状が得られる。従って、本発明を用いることにより、液晶表示装置の製造する工程を効率化すること及び製品歩留まりを向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明によるパターン形成方法の第1の実施形態を、アクティブマトリクス方式の表示装置の画素毎に設けられた薄膜トランジスタ(アクティブ素子)への適用例として説明する。図2及び図3は、本発明によるパターン形成方法を用いた、液晶表示装置用逆スタガ型薄膜トランジスタの製造工程の一部を示す模式断面図である。
【0027】
この製造工程を説明する前に、液晶表示装置における当該薄膜トランジシタの位置並びにその機能を、液晶表示装置を成す複数の画素の一つを示す図4を参照して説明する。図4の(a)には、IPS(In-Plane-Switching(面内スイッチング)の略)方式による液晶表示装置の画素の断面(その(b)のA−A’線での切断面)が、図4(b)には画素の平面構造が夫々示される。一対の基板13,100が夫々の周縁でシール剤により貼り合わされ、屈折率異方性に応じた楕円で示された液晶分子50aは、これらの基板間で且つシール剤に囲まれた空間に封止されて液晶層50を成す。一対の基板の一方13は、その液晶層50に対向する主面に形成された薄膜トランジスタ(TFT,図4(a)の破線枠で囲まれた部分)に因み、TFT基板とも記される。一対の基板の他方100は、その液晶層50に対向する主面に形成された色フィルタ(CF)102に因み、本明細書では便宜的にCF基板と記される。本発明が適用される液晶表示装置の他の例では、TFT基板13の主面に薄膜トランジスタTFTと色フィルタ102とが形成されることもあり、画素間を仕切る遮光膜(ブラックマトリクス,BM)101が、CF基板100でなく、TFT基板13の主面に形成されることもある。CF基板100の主面及びこれを含む液晶表示素子の表示画面において、遮光膜101が形成される領域又はこれに対向する領域は「非表示部」とも記される。遮光膜101は、クロム(Cr)等の金属や合金等の無機薄膜、又はカーボン、コバルト酸化物、黒色顔料等の光吸収率の高い粒子が分散された樹脂の薄膜(有機薄膜)として形成される。色フィルタ102は、例えば顔料、染料、及び蛍光材料の少なくとも一つを含む樹脂材料(例えば、レジスト材料等の有機材料)で形成される。遮光膜101は、その可視領域(例えば、380nm〜780nmの波長帯域)の光の透過率がカラーフィルタ36のそれに比べて低いため、不透明であるとも記される。
【0028】
液晶層50により隔てられるTFT基板13とCF基板100との間の隙間(換言すれば、液晶層50の厚さ)は、夫々の液晶層50に対向する面に形成された積層構造の最表面の間に挿入されるスペーサ51で保たれる。本実施例では、ビーズ状のスペーサ51が接着材料52でCF基板100に固定されている。
【0029】
IPS方式による液晶表示装置では、液晶層50に電界を印加し且つその光透過率を制御する2種類の電極(画素電極26,コモン電極32a)のいずれもがTFT基板13に形成されるため、CF基板100に電極を配置しなくともよい。透過型液晶表示装置のTFT基板13及びCF基板100として、光(例えば、可視光)を透過し易い(広義で「透明な」)ガラス等の無機材料やプラスチック等の有機材料(例えば、樹脂材料)から成る絶縁基板が用いられる。本明細書では、透明且つ電気的絶縁性を示すTFT基板13及びCF基板100の各々を、以降、ガラス基板と記す。
【0030】
図4の(b)に示される「画素」は、第1方向(例えば、垂直方向)に延在し且つ第1方向と交差する第2方向(例えば、水平方向)に互いに対向して並ぶ一対の走査信号線(ゲート電極を兼ねる)14と、第2方向に延在し且つ第1方向に互いに対向して並ぶ一対の映像信号線21dとに囲まれた領域として定義される。図4の(b)には、一対の走査信号線14のうち、これに示された画素電極26の駆動に関係のない走査信号線が示されないが、この走査信号線より画素電極26の駆動に係る走査信号線14に近いコモン配線33a(Common Line,共通電位配線、基準電圧配線とも呼ばれる)が示される。コモン配線33aは、コモン電極32a(共通電極、対向電極とも呼ばれる)に電気的に接続される。
【0031】
本実施例における走査信号線(ゲート電極)14及びコモン配線33aは、図4(a)に示される如く、透明導電膜32a,32bと、この上に形成され且つこれより導電性の高い金属又は合金からなる薄膜(以下、金属膜と記す)33a,33bを有する積層膜で成形されている。しかし、走査信号線14やコモン配線33aを成す導電性材料の膜の形状は、本明細書に記された夫々に限定されない。
【0032】
この画素電極26には、上記一対の映像信号線21dの一方から伝送される電圧信号が薄膜トランジスタのチャネル(シリコン膜23)を通して印加される。ゲート電極14から絶縁層15を通してシリコン膜23に印加される電界により、薄膜トランジスタTFTは、映像信号線21dからの上記電圧信号の画素電極26への印加をターンオンし又はターンオフする。上述された画素の各々において、ガラス基板13の主面上にコモン電極32aと画素電極26とが絶縁材料層15,24を介して積層されている。この積層構造にて、コモン電極32aと画素電極26とを隔てる絶縁材料層の数は、特に限定されず、少なくとも1層であってもよい。本実施例では、コモン電極32aが画素毎に透明導電材料32の1枚のベタ膜(Solid Film)として形成され、このコモン電極32aと対向し且つ透明導電性材料からなる画素電極26には複数のスリット、切り欠き、又は開口が形成された、例えば櫛歯形状(Comb-teeth Shape)やフィッシュボーン形状(Fishbone Shape)を呈する。画素電極26やコモン電極32aを成す透明導電性材料は、例えば、ITO(インジウム−錫−酸化物)、IZO(インジウム−亜鉛−酸化物)、ATO(アンチモン添加酸化錫)、及びアルミニウム添加酸化亜鉛を含む「導電性酸化物」の群から選ばれる。コモン電極32aは、画素電極26の如く櫛歯形状に形成され、且つTFT基板13の主面内に櫛歯状の画素電極26と重ならず且つこれから離されて配置されてもよい。斯様に配置された櫛歯状の画素電極26とコモン電極32aは、これらを隔てる隙間で光を透過させられるため、その少なくとも一方が透明導電材料より光透過率が低く且つ電気抵抗の低い金属や合金等の材料で形成できる。
【0033】
画素電極26の開口26sの縁と、これに対向するコモン電極32aの部分との間には、画素電極26とコモン電極32aとの電位差に応じた電気力線が発生し、その液晶層50における強度に応じて液晶分子50aの配向方向が変わる。これにより、画素毎の輝度が決まる。
【0034】
図4(b)に示されるように、画素毎に形成されたコモン電極32aは、これに基準電圧(例えば接地電位)を印加するコモン配線33aとともに、ガラス基板13の主面と絶縁材料層15との間に形成される。コモン配線33aの各々は、そのコモン電極32a(透明導電性材料)との接合面を介してコモン電極32aに基準電位を印加し、上述した走査信号線14と同様に第1の方向(縦方向)に延在している。
【0035】
本実施例にて図2及び図3を参照してその製造工程が説明される薄膜トランジスタTFTは、図4(a)及び(b)に破線枠で囲まれて示され、ガラス基板13の主面上に、走査信号線(ゲート電極)14、絶縁材料層(ゲート絶縁膜とも呼ばれる)15、シリコン膜(薄膜トランジスタの活性領域:チャネルとなる)23、ソース電極21a及びドレイン電極21b、並びに保護絶縁膜24を順次積層して形成される。シリコン膜23は、シリコン(硅素)以外の元素を含み又はシリコン以外の元素から成る半導体材料の薄膜に置き換えてもよく、「半導体層」とも記される。しかし、多くのアクティブマトリクス方式の表示装置において、画素毎に設けられている薄膜トランジスタのチャネルがシリコン膜で形成されている現状に鑑み、本明細書にて参照番号:23で特定される部材は、半導体層に代えて「シリコン膜」と記される。
【0036】
走査信号(電圧信号)が供給されるゲート電極14の上部に、この走査信号による電圧が印加されるチャネル(シリコン膜23)が配置された薄膜トランジスタは、「逆スタガ型」と呼ばれる。これに対して、ゲート電極14の下部にチャネル(シリコン膜23)が配置された薄膜トランジスタは「正スタガ型」と呼ばれる。ゲート電極14とシリコン膜23とを電気的に分離する絶縁材料層15は、半導体材料の酸化物や窒化物(例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜)等の所謂無機材料で形成されることが多い。チャネル(シリコン膜23)の上面には、ソース電極21aとドレイン電極21bとが互いに離間して接合され、夫々の接合面には図示されないオーミック接触層(図2及び図3には参照番号20a,20bが付されて示される)が形成されている。金属又は合金からなるソース電極21a及びドレイン電極21bがシリコン膜23に接合されるとき、オーミック接触層20a,20bは、例えば、金属又は合金に含まれる元素がシリコン膜23の接合界面近傍に拡散して形成される。後述する本発明によるパターン形成方法により、TFT基板13の主面内におけるシリコン膜23の輪郭(外周,図4(b)に破線で示される)は、その上に形成される金属膜(ソース電極21a、ドレイン電極21b、及び映像信号線21dの総称)及びシリコン膜23と当該金属膜との間に形成されるオーミック接触層20a,20bの輪郭(外周)より外側に延在し、または金属膜やオーミック接触層の輪郭と重なる。しかし、シリコン膜23のオーバーエッチングが生じない限り、シリコン膜23の上記輪郭は、金属膜やオーミック接触層の上記輪郭の内側に延びることはない。
【0037】
ソース電極21a、ドレイン電極21b、及び映像信号線21dを覆う絶縁材料層24は保護絶縁膜とも呼ばれ、これによりソース電極21a、ドレイン電極21b、及び映像信号線21dやこれらの下地層によりTFT基板13の主面上に生じた起伏は均される。このため、保護絶縁膜24は平坦化層(Leveling Layer)とも呼ばれる。保護絶縁膜24は、無機材料膜(例えば、半導体材料の酸化物や窒化物)のみならず、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の有機材料膜、又は無機材料と有機材料との複合膜として形成される。本実施例で論じるIPS方式の液晶表示装置では、上述した櫛歯状の画素電極26が保護絶縁膜24上に形成され、ソース電極21aは保護絶縁膜24に形成されたコンタクトホール25(導体膜が形成された開口)を通して画素電極26に電気的に接続される。保護絶縁膜24上には、画素電極26(その開口26sも含む)を覆う感光性樹脂から成る保護絶縁膜36が形成されている。保護絶縁膜36は液晶層50に接し、そのラビング処理等により液晶層50を成す液晶分子50aを所定の方位に配向させる配向能(Alignment Force)が与えられている。このため、保護絶縁膜36は、配向膜とも呼ばれる。保護絶縁膜(平坦化層)24や保護絶縁膜(配向膜)36又は夫々の等価物はCF基板100にも形成され、図4(a)には平坦化層24に相当する保護絶縁膜124と、配向膜36に相当する保護絶縁膜136とが夫々示される。
【0038】
以上に述べた本実施例の液晶表示装置のうち、薄膜トランジスタTFTの構造やこれに接続される走査信号線(ゲート電極)14、映像信号線21d、並びに画素電極26の配置は、IPS方式以外のアクティブマトリクス型液晶表示装置(例えば、後述するVA(Vertical Alignment)方式や広く普及されたTN(Twisted Nematic)方式)にも採用される。
【0039】
図2及び図3を参照して説明される本実施例の液晶表示装置の製造方法では、走査信号線(ゲート電極)14を覆う絶縁材料層15上でのシリコン膜23や金属膜のパターニングが主に論じられるため、金属膜33bのみを以って走査信号線(ゲート電極)14を論じ、その下地層である透明導電膜32bは無視される。
【0040】
図2(a)の説明に入る前に、まず、ガラス基板(TFT基板)13の上に、公知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術、マスクパターン除去技術により、金属で構成されるゲート電極14を形成する。ゲート電極14を成す金属膜は、例えば:
クロム、クロム合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、アルミニウム合金、または銅合金の1層構造;
アルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
銅合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
銅合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
「クロムまたはクロム合金」とアルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」とアルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」とアルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;
「モリブデンまたはモリブデン合金」とアルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造;
「クロムまたはクロム合金」と銅合金と「クロムまたはクロム合金」との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」と銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」と銅合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;及び
「モリブデンまたはモリブデン合金」と銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造からなる群から選ばれる。
【0041】
アルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との「2層構造」は、その下地層上にアルミニウム合金膜とタングステン又はタングステン合金から成る膜とが順次形成された積層構造である。「モリブデンまたはモリブデン合金」とアルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との「3層構造」は、その下地層上にモリブデン又はモリブデン合金から成る膜と、アルミニウム合金膜と、モリブデン又はモリブデン合金から成る膜とが順次形成された積層構造であり、この下地層の主面にモリブデン膜、アルミニウム合金膜、及びモリブデン膜をこの順に積層して成るもの、当該主面にモリブデン合金膜、アルミニウム合金膜、及びモリブデン膜をこの順に積層して成るもの、当該主面にモリブデン膜、アルミニウム合金膜、及びモリブデン合金膜をこの順に積層して成るものを含む。
【0042】
次に、ガラス基板13及びゲート電極14の上に、絶縁膜15、シリコン膜16、不純物が添加されたシリコン膜17、金属膜18を順次成膜する。絶縁膜15は、窒化シリコン、または酸化シリコン、または窒化酸化シリコンのいずれかから構成されていればよい。また、金属膜18は、ゲート電極14と同様に:
クロム、クロム合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、アルミニウム合金、または銅合金の1層構造;
アルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
銅合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
銅合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
「クロムまたはクロム合金」とアルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」とアルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」とアルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;
「モリブデンまたはモリブデン合金」とアルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造;
クロムまたはクロム合金と銅合金とクロムまたはクロム合金との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」と銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」と銅合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;及び、
「モリブデンまたはモリブデン合金」と銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造の何れかで構成されていればよい。
【0043】
上述の如く、ガラス基板(TFT基板)13の主面にゲート電極14(図4の金属膜33b)、絶縁膜15、シリコン膜16、不純物を含むシリコン膜17、及び金属膜18を順次積層した後、この基板の最上面(金属膜18の上面)にフォトレジストを塗布し、このフォトレジスト塗布膜を公知のフォトリソグラフィ技術でマスクパターン19に成形する。本実施例では、マスクパターン19をフォトレジスト塗布膜の露光と現像により形成したが、斯様なフォトリソグラフィ技術に代えて、レジスト材料のオフセット印刷またはインクジェット印刷や、ディスペンサノズルによるレジスト材料のパターンの塗布によりマスクパターン19を形成してもよい。図2(a)には、金属膜18上にマスクパターン19が形成されたガラス基板13並びにその主面上の積層膜の断面構造が示される。金属膜18上にマスクパターン19を形成する工程を、本実施例では第1マスクパターン形成工程と呼ぶ。
【0044】
次に、図2(a)で示したマスクパターン19をマスクとして、金属膜18の一部をウェットエッチングまたはドライエッチングで選択的に除去し、不純物が添加されたシリコン膜17の一部をウェットエッチングまたはドライエッチングで選択的に除去する。この結果、図2(b)に示すように、シリコン膜16の上に、不純物を添加したシリコンからなるオーミック接触層20aと20b、金属膜からなるソース電極21aとドレイン電極21bが形成される。ガラス基板13並びにその主面上の積層膜の断面構造が図2(b)に示される如く処理される工程、換言すれば、第1マスクパターンを用いて被加工物をエッチングする工程、本実施例では第1のエッチング工程と呼ぶ。第1のエッチング工程では、薄膜トランジスタTFTのチャネル(活性領域)となるシリコン膜16の上面にソース電極21a及びドレイン電極21bがオーミック接触層20a,20bとともに形成されるが、シリコン膜16はガラス基板13の主面の概ね全域に広がる「ベタ膜」のままである。シリコン膜16の「ベタ膜」を指す参照番号16は、当該シリコン膜が後述する工程でパターニングされた後、参照番号23(図4参照)に置き換えられる。シリコン膜16の図示されない部分の上面には、映像信号線21dも形成されている。
【0045】
次に、ソース電極21aとドレイン電極21bの上に存在するマスクパターン19の一部及び露出したシリコン膜16の一部が選択的に被覆されるように、所定の有機材料を追加塗布する。この結果、図2(c)に示すように、マスクパターン22が形成される。この時、マスクパターン22は厚さが0.2マイクロメートル以上であることが望ましい。マスクパターン22の厚さに斯様な下限が与えられることで、後述するシリコン膜16のドライエッチングでマスクパターン22が残すべき部分も含めて完全に除去されることが防がれる。マスクパターン22は、その一部がマスクパターン19に形成された開口(Opening)、スリット(Slit)、及び切り欠き(Notch)や、マスクパターン19の一部と他部とを隔てる間隙を埋めるように形成される。マスクパターン19、これによりパターニングされた金属膜18(ソース電極21a及びドレイン電極21b)及びオーミック接触層20a,20b、並びにこれらの下地層(シリコン膜16)の上にマスクパターン22を形成する工程を、本実施例では第2マスクパターン形成工程と呼ぶ。第2マスクパターン形成工程は、直観的に「レジスト材料の追加塗布工程」とも記される。
【0046】
図4(b)に示された画素を形成する途上において、第2マスクパターン形成工程を経た(マスクパターン22が追加塗布された)後のガラス基板13上の平面構造が、図4(c)に示される。走査信号線(ゲート電極)14、コモン電極32a、並びにコモン配線33aは、ガラス基板13の主面全域に広がる絶縁膜15及びシリコン膜16に覆われている。シリコン膜16には、マスクパターン19が形成され、その間には、マスクパターン19によりパターニングされたソース電極21a、ドレイン電極21b、及び映像信号線21dがオーミック接触層20a,20bとともに形成されている。ソース電極21a、ドレイン電極21b、映像信号線21d等の輪郭は、マスクパターン19のそれと概ね重なるため、図4(c)には示されない。
【0047】
マスクパターン22は、図4(c)にハッチングされた実線枠として示されるように、各画素の薄膜トランジスタTFTの活性領域が形成される部分とその周辺のみに形成され、マスクパターン19のソース電極21a及びドレイン電極21bを規定する部分を覆う。従って、シリコン膜16は、後述する工程でのエッチングにより、破線(23)で示された輪郭を有するようにパターニングされる。即ち、パターニングされたシリコン膜23の輪郭(外周)は、ガラス基板13の主面の、マスクパターン19及びマスクパターン22の少なくとも一つで覆われた領域のそれと同じ、又は当該領域より若干外側に延在すると記される。
【0048】
上記レジスト材料の追加塗布は、有機材料のオフセット印刷を用いて実施すればよい。この時、有機材料は、レジスト材料としての機能を果たすのであれば十分であり、必ずしも感光性を有する材料が添加されている必要はない。但し、この有機材料の粘度は100mPa・s(ミリパスカル・秒)以上に調整することが望ましい。
【0049】
また、レジスト材料の追加塗布は、有機材料のインクジェット印刷を用いて実施してもよい。この時も同様に、有機材料は、レジスト材料としての機能を果たすのであれば十分であり、必ずしも感光性を有する材料が添加されている必要はない。但し、この有機材料の粘度は15mPa・s以下に調整することが望ましい。
【0050】
また、レジスト材料の追加塗布は、ディスペンサノズルを用いた有機材料の塗布で実施してもよい。この時も同様に、有機材料は、レジスト材料としての機能を果たすのであれば十分であり、必ずしも感光性を有する材料が添加されている必要はない。
【0051】
次に、ガラス基板13を加熱することによって、マスクパターン22が感光して化学反応することを抑制する、またはマスクパターン19の表面及び露出したシリコン膜16の表面に対してマスクパターン22を密着させる。この加熱の温度は、摂氏90度以上あれば十分であるが、高すぎるとマスクパターン22が軟化して変形するため、摂氏140度以下が望ましい。
【0052】
ここで、図2(b)におけるマスクパターン19を用いたシリコン膜16のドライエッチングにより当該マスクパターン19の表面やこれから露出されたシリコン膜16の表面に生成された変質層は、第2マスクパターン形成工程の前に除去されることが望ましい。この変質層の除去により、追加塗布される有機材料(例えば、マスクパターン22の前駆体)のマスクパターン19の表面やシリコン膜16の露出面に対する付着力が向上される。
【0053】
この変質層は、第1のエッチング工程後で且つ第2マスクパターン形成工程前の段階にあるガラス基板13(その最上面)を、オゾンガスと窒素ガスとを含む混合ガスに曝すことで除去される。この時、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス雰囲気の中で、マスクパターン19の表面に向けて紫外線を照射することで、効率よくオゾンガスが発生するとともに変質層も効率よく除去される。
【0054】
また、変質層の除去は、酸素、または酸素を含む混合ガスにより生成されたプラズマを用いたガラス基板13の処理でも行える。ガラス基板13のプラズマ処理は、Oガス、またはOガスと不活性ガスとの混合ガス、またはOガスとフッ化物ガスとの混合ガスの何れかのプラズマ処理ガスを用いて行われる。プラズマ処理ガスとして用いられる「Oガスと不活性ガスとの混合ガス」の具体例として、不活性ガスとしてヘリウム(He)を含む混合ガス(以下、O/Heと記す)や、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を含む混合ガス(以下、O/Arと記す)が挙げられる。プラズマ処理ガスとして用いられる「Oガスとフッ化物ガスとの混合ガス」の具体例として、フッ化物ガスとして六フッ化イオウ(Sulfur Hexafluoride,SF)を含む混合ガス(以下、O/SFと記す)、フッ化物ガスとして四フッ化メタン(Tetrafluoromethane,CF)を含む混合ガス(以下、O/CFと記す)、及びフッ化物ガスとして三フッ化メタン(Trifluoromethane,CHF)を含む混合ガス(以下、O/CHFと記す)が挙げられる。
【0055】
また、マスクパターン19の表面及びこれから露出されたシリコン膜16の表面を改質することで、これらの表面に対する追加塗布されたマスクパターン22の付着力が向上される。
【0056】
マスクパターン19の表面やこれから露出されたシリコン膜16の表面の改質は、当該表面を液体のヘキサメチルジシラザンに曝して行うとよい。ヘキサメチルジシラザンに曝されたマスクパターン19やシリコン膜16の表面は、ガラス基板13のスピン回転、またはガラス基板13への空気の吹き付け等で乾燥され、さらにガラス基板13は、必要に応じて、その温度が摂氏140度以下の範囲となるように加熱される。これにより、マスクパターン19やシリコン膜16の表面の改質に必要とされる量のヘキサメチルジシラザンが、これらの表面に吸着される。
【0057】
また、マスクパターン19やシリコン膜16の表面の改質は、当該表面を気体のヘキサメチルジシラザンに曝すことでも行える。気体のヘキサメチルジシラザンは、液体のヘキサメチルジシラザンの中に窒素ガスもしくは空気を吹き付けてバブリングさせることにより効率よく発生され、このヘキサメチルジシラザンの雰囲気にマスクパターン19やシリコン膜16の表面を曝すことで、当該表面にその改質に必要とされる量のヘキサメチルジシラザンが吸着される。
【0058】
次に、マスクパターン19及びマスクパターン22を用いて、シリコン膜16の一部(マスクパターン19,22のいずれにも覆われない部分)をウェットエッチングまたはドライエッチングで選択的に除去する。この結果、図2(d)に示すように、シリコン膜23からなる活性領域の上に、不純物を添加したシリコンからなるオーミック接触層20aと20b、金属膜からなるソース電極21aとドレイン電極21bが形成され、薄膜トランジスタTFTが概ね形作られる。パターニングされたシリコン膜23の輪郭の一例は、図4(c)に破線(23)で示される。第1マスクパターン(参照番号:19)及び第2マスクパターン(参照番号:22)を用いて被加工物をエッチングする本工程を、本実施例では第2のエッチング工程と呼ぶ。
【0059】
第2のエッチング工程によりシリコン膜23がパターニングされたガラス基板13は、2‐アミノエタノール、または2‐アミノエタノールを含む水溶液に曝され、マスクパターン19及びマスクパターン22が除去される。
【0060】
2‐アミノエタノールによるマスクパターン19,22の除去において、その液温を上げることで短時間でのマスクパターン除去が可能になる。ただし、液温が高すぎると、2‐アミノエタノールの蒸発が著しく進行してしまうため、摂氏60度以下に調整することが望ましい。
【0061】
2‐アミノエタノールを含む水溶液でのマスクパターン19,22の除去も、その液温を上げることで短時間でのマスクパターン除去が可能になる。ただし、液温が高すぎると、液中の水分蒸発量が増え、当該水溶液の組成が変化してしまうため、この液温を摂氏40度以下に調整することが望ましい。
【0062】
図2(d)を参照して説明したマスクパターン19とマスクパターン22とを用いたシリコン膜16のエッチング工程にて、これらのマスクパターン19,22の表面に生成された変質層を除去する「マスクパターン除去前処理」は、マスクパターン19,22の各々に対する2−アミノエタノール、または2−アミノエタノールを含む水溶液の濡れ性を向上させる。これにより、マスクパターン19,22はガラス基板13(これに形成されたシリコン膜23やソース電極21a等)から除去され、その残滓がガラス基板13に付着することによる不良(マスクパターン残り不良)が低減される。
【0063】
このマスクパターン除去前処理は、第2のエッチング工程で処理されたガラス基板13(その最上面)をオゾンガスと窒素ガスとを含む混合ガスに曝すことで行われる。ガラス基板13を酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガス雰囲気に置き、これに形成されたマスクパターン19,22の表面を紫外線で照射することで、マスクパターン19,22の表面付近に効率よくオゾンガスが発生し、これにより当該表面から変質層も効率よく除去される。
【0064】
また、このマスクパターン除去前処理は、酸素、または酸素を含む混合ガスで生成されたプラズマでガラス基板13を処理することでも行われる。このプラズマは、Oガス、またはOガスと不活性ガスとの混合ガス、またはOガスとフッ化物ガスとの混合ガスの何れかのプラズマ処理ガスを用いて生成される。マスクパターン除去前処理用のプラズマは、マスクパターン19やこれから露出されたシリコン膜16の表面の変質層除去用プラズマと同様なプラズマ処理ガスで生成される。上述した「Oガスと不活性ガスとの混合ガス」は、例えば、O/HeやO/Arの何れかのガスを含む混合ガスである。また、上述した「Oガスとフッ化物ガスとの混合ガス」は、例えば、O/SF、O/CF、及びO/CHFの何れかのガスを含む混合ガスである。
【0065】
この後、図3(a)に示すように、マスクパターン19,22が除去されたガラス基板13の最上面で露出された絶縁膜15、ソース電極21a及びドレイン電極21b(及び図示されない映像信号線21d)、並びにシリコン膜23を被覆するように、保護絶縁膜24が成膜され、図3(b)に示すように、ソース電極21aの延長上にコンタクトホール25を形成する。なお、図示していないが、ゲート電極14からガラス基板13の端部に向けて延長される走査信号線(ゲート線)の端部、及びドレイン電極21bからガラス基板13の端部に向けて延長される映像信号線(ドレイン線の端部にもコンタクトホール25と同時にコンタクトホールを形成する。
【0066】
コンタクトホール25は、窒化シリコン、または酸化シリコン、または窒化酸化シリコンのいずれかから成る(所謂無機材料から成る)保護絶縁膜24において、公知のフォトリソグラフィ技術、エッチング技術、及びマスクパターン除去技術により形成される。また、コンタクトホール25は感光性樹脂材料から成る(所謂有機材料から成る)保護絶縁膜24において、これにフォトレジストを塗布することなく、これを所定のパターン形状を有する光学像で照射(露光)し、これに続いて、当該感光性樹脂材料膜の現像、リンス、乾燥、及びポストベークをこの順に行うことで形成される。後者の場合、保護絶縁膜24用の材料自体が感光性を有するため、以上の工程でコンタクトホール25は労せずして形成され、保護絶縁膜24上へのマスクパターン形成や当該マスクパターンを通した保護絶縁膜24のエッチング、更に保護絶縁膜24の上面からのマスクパターン除去の工程がコンタクトホール25の形成工程にて不要となる。
【0067】
この後、図3(c)に示すように、公知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術、マスクパターン除去技術により、コンタクトホール25内でソース電極21aに接続する画素電極26が形成される。なお、図示していないが、ガラス基板13の周縁に到る走査信号線(ゲート線)14の端部や、映像信号線(ドレイン線)21dの端部に形成されたコンタクトホール内にも同時に端子電極が形成される。画素電極26及び端子電極は、インジウム−スズ酸化物、亜鉛酸化物、インジウム−スズ−亜鉛酸化物に代表される導電性酸化物材料の何れかから構成されたものであればよい。
【0068】
以上の工程により、液晶表示装置用の逆スタガ型薄膜トランジスタが完成する。
【0069】
本実施例で述べた薄膜トランジスタTFTは、そのソース電極21a及びドレイン電極21bのパターニングに用いられるマスクパターン19のみがフォトリソグラフィで形成され、そのチャネルとなる半導体膜(シリコン膜23)のパターニングに用いられるマスクパターン22はフォトリソグラフィを用いずに形成される。即ち、「第1マスクパターン形成工程(マスクパターン形成工程,図2(a))」と、これにより形成されたマスクパターン19でソース電極21a及びドレイン電極21bをパターニングする「第1のエッチング工程(図2(b))」とが終了した後、マスクパターン19を除去することなく且つこれとこれにより成形されたパターン(ソース電極21a等)の上にマスクパターン22を形成する「第2マスクパターン形成工程(マスクパターン追加工程,図2(c))」が行われる。第2マスクパターン形成工程に続く「第2のエッチング工程(図2(d))」にて、ソース電極21a及びドレイン電極21bの言わば下地層(シリコン膜16)を2つのマスクパターン19,22を用いてパターニングするためには、マスクパターン19の形状を維持しながらマスクパターン22を形成することが望ましく、露光や現像を要するフォトリソグラフィでマスクパターン22を形成することは望ましくない。このため、マスクパターン22はその前駆体材料の印刷や塗布によりマスクパターン19に比べて粗い形状に成形される。
【0070】
本発明の背景技術として論じたハーフトーンマスクを用いた手法や、マスクパターンの加熱軟化を用いた手法も、本実施例と同様に「1枚のフォトマスクによる薄膜トランジスタTFTの作製」を実現する。しかし、本発明は、薄膜トランジスタTFTの成形段階に応じて、当該フォトマスクにより形成されたマスクパターン自体を変形させず、むしろ当該マスクパターンの形状を維持しながら、これに他のマスクパターンの形状を重ね合わせる。従って、第1のエッチング工程で薄膜トランジスタTFTのチャネル長を決める微細な加工が行われ、第2のエッチング工程で微細に加工された部分を保護しながら薄膜トランジスタTFTの外形を決める加工が行われる。
【実施例2】
【0071】
本発明によるパターン形成方法の第2の実施形態を、半透過型の液晶表示装置の画素毎における透過領域及び反射領域の形成への適用例として説明する。図5及び図6は、画素電極層上に光学反射膜層が接触する半透過型液晶表示装置の画素を、本発明によるパターン形成方法を用いて形成する製造工程の一部を示す模式断面図である。
【0072】
この製造工程を説明する前に、液晶表示装置における当該画素の構造並びにその機能を、液晶表示装置の画面に設けられた複数の画素の一つを示す図7を参照して説明する。図7の(a)には、VA(Vertical Alignment(垂直配向)の略)方式による半透過型液晶表示装置の画素の断面(その(b)のA−A’線での切断面)が、図4(b)には画素の平面構造が夫々示される。図7に示された部材のうち、既に実施例1にて図4を参照して説明されたもの又はその等価物には同じ参照番号を付し、実施例1と重複する説明は割愛される。
【0073】
図7(b)において、本実施例で論じるVA方式の半透過型液晶表示装置の画素は、遮光膜(ブラックマトリクス)101の開口101hで囲まれた領域としても、色フィルタ(CF)102の輪郭(外周)で囲まれた領域としても、定義される。映像信号線21d’は、図示された画素の薄膜トランジスタTFTに接続されていないこと以外、映像信号線21dと同様に形成されている。図7(b)にその輪郭が点線枠として示されるシリコン膜(半導体層)23の上面には、信号配線21dの分岐部分でもあるドレイン電極21bと、後述する画素電極27aに接続されたソース電極21aとが、互いに対向するように形成されている。ドレイン電極21bのソース電極21aに対向する縁は、ソース電極21aの先端を囲むようにU字状に彎曲している。
【0074】
実施例1で論じられたIPS方式の液晶表示装置において、画素電極26とともにTFT基板13に形成されていたコモン電極32aは、本実施例で論じられるVA方式の液晶表示装置において、画素電極26が形成されたTFT基板13に対向するCF基板100(ガラス、石英、プラスチック等の光透過率の高い材料からなる絶縁性基板)にコモン電極132として形成される。また、本実施例で論じられる半透過型液晶表示装置は、画素毎に反射表示部と透過表示部とが設けられる。透明導電膜27で形成された画素電極のうち、反射表示部に配置されたもの(参照番号:27a)の上には銅やアルミニウム等の反射率の高い導体膜から成る光学反射膜28aが設けられている。液晶表示装置の表示画面(その利用者から見て前面,CF基板100)から液晶層50に入射した光は、光学反射膜28aにより表示画面に向けて反射される。透過表示部に形成された画素電極27bは、液晶表示装置の後面(TFT基板13)側に配置された光源(図示せず)からTFT基板13に入射した光を、液晶層50に通し表示画面(CF基板100側)から出射させる。このような画素構造は、TN方式の半透過型液晶表示装置にも見られるが、VA方式による液晶表示装置のコモン電極132には、更に次の特徴が見られる。
【0075】
CF基板100の液晶層50に対向する主面に「1枚のベタ膜」として形成されたコモン電極132の「反射表示部の画素電極27a及び透過表示部の画素電極27bの各々の中心」に対向する部分には、開口(Opening)132hが形成されている。この開口132hは、画素電極27a,27bの形状に応じて、スリット(Slit)や切り欠き(Notch)として形成されることもある。この開口132hは、VA方式の液晶表示装置における画像表示に不可欠である。図7(a)において、右端に示された画素電極27bとコモン電極132との間には、その間に電界が生じないときの液晶分子50nの配向状態が示され、左側に示された2つの画素電極27a,27bとコモン電極132との間には、その間に生じた電界(破線矢印で示される)の影響を受けた液晶分子50bの配向状態が示される。
【0076】
液晶層50を介して対向した画素電極27a,27bとコモン電極132との間に生じる電界は、コモン電極の開口132hにより、TFT基板13とCF基板100とを隔てる方向(以下、セルギャップ,図7(a)のg,g)に対して所定の角度で傾く。一方、画素電極27bとコモン電極132との間に電界が生じないとき、一軸性の複屈折率を有する液晶分子50nは、その分子軸(図示された「長楕円」の長軸)がセルギャップに沿うように初期配向される。斯様な液晶分子50nの初期配向は「垂直配向(VA)」と呼ばれる。液晶分子50nが初期配向された液晶層50は、これに入射する光の透過を遮る。これに対し、画素電極27a,27bとコモン電極132との間に生じる電界強度に応じて、垂直配向された液晶分子50nの分子軸は、液晶分子50bのそれの如く、セルギャップに対して傾き、その傾斜に応じて液晶層50における光の透過量は増える。即ち、コモン電極132の開口132hは、垂直配向された液晶分子50nの傾斜による表示輝度の制御に不可欠である。
【0077】
厳密に言えば、TFT基板13とCF基板100との各々の外側の主面(液晶層50とは反対側)に設けられた偏光板41,42が、電界の印加された液晶層50(液晶分子50b)で伝搬された光を通し且つ電界が印加されない液晶層50(液晶分子50n)で伝搬された光を通し難いように配置され、液晶層50に印加される電界とともに、液晶パネルの表示輝度を決めている。さらに、偏光板41は、粘着材内にこれと屈折率が異なる透明な微小球が混入された光拡散性の粘着層43でCF基板100の外側の主面に貼り付けられている。
【0078】
液晶分子50nを傾斜させるに好適な電気力線を画素電極27a,27bの各々から当該開口132hに向けて形成するために、コモン電極132の開口132hに応じて複数の画素電極27a,27bが画素内に設けられることもある(図7(b)参照)。本実施例の液晶表示装置では、画素(遮光膜の開口101hで囲まれた領域)内に並べられた画素電極27a,27bが、これより幅が狭く且つ透明導電膜で形成された連結部27cで電気的に接続されている。画素電極にはコモン電極132の如く、スリット、切り欠き、又は開口を形成する必要はないが、本実施例では画素電極間の連結部27cと画素電極27a,27bを隔てる間隙とが「画素電極のスリット」を成し、これらとコモン電極132との間に形成される電界を最適化する。
【0079】
薄膜トランジスタTFTの最上層(ソース電極21aとドレイン電極21b)の上面には、実施例1と同様に保護絶縁膜(平坦化層)24が形成されるが、保護絶縁膜24上に形成される保護絶縁膜36の形状や機能は実施例1のそれと異なる。各画素において、保護絶縁膜36は反射表示部に形成され且つ透過表示部に形成されない。反射表示部の画素電極27aが保護絶縁膜36上に形成され、且つ透過表示部の画素電極27bが保護絶縁膜24上に形成されることにより、反射表示部のセルギャップgは透過表示部のセルギャップgより狭まり、概ねg/2に調整される。従って、反射表示部で液晶層50内を伝播する光(図7(b)における入射光と反射光)の光路長は、透過表示部で液晶層50内を伝播する光(図7(b)における透過光)の光路長に近づけられる。薄膜トランジスタTFTのソース電極21aは、保護絶縁膜24,36に形成されたコンタクトホール25を通して保護絶縁膜36上に形成された画素電極27aに電気的に接続される。ソース電極21aから出力された電圧信号は、画素電極27a上に形成された光学反射膜28a及び連結部27cを介して画素電極27aに接続された画素電極27bに夫々印加される。なお、セルギャップはTFT基板13の最上面(液晶層50に接する面)とCF基板100の最上面(液晶層50に接する面)とを隔てる間隔として定義され、透過表示部におけるセルギャップgは、画素電極27bの表面とコモン電極132の表面とを隔てる距離に相当する。VA方式の液晶表示装置において、液晶分子50nは配向膜を用いずに垂直配向されることもあり、本実施例のTFT基板13及びCF基板100のいずれの最上面にも配向膜はされていない。光学反射膜28aの上面には、フォトリソグラフィ等により波状のパターン(例えば、コルゲート・パターン)を形成してもよい。
【0080】
本実施例で論じるCF基板100は、その主面に形成された遮光膜101及び色フィルタ102を保護絶縁膜(平坦化層)124が覆うことで実施例1に論じたCF基板100と類似するが、この保護絶縁膜124上に形成される保護絶縁膜136の一部が位相差板の機能(複屈折)を示し、この機能を実現させるためのパターンが保護絶縁膜124に形成されていることで実施例1のCF基板100と相違する。本実施例の保護絶縁膜136は、液晶ポリマー等の複屈折を示す材料(例えば、有機分子)を保護絶縁膜124の上面に塗布し、硬化させて形成される。この保護絶縁膜136の材料(以下、前駆体)が塗布される保護絶縁膜124の上面の一部(124a)には、起伏のパターンが形成され、保護絶縁膜124の上面に塗布された保護絶縁膜136の前駆体に対する配向能が付与される。従って、保護絶縁膜124の上面で硬化される保護絶縁膜136の多くの領域は、複屈折を示さず且つ良好な光透過性を示す樹脂膜に成るが、保護絶縁膜124の一部124aの上で硬化される領域136aは複屈折を示す。この領域領域136aは「内蔵位相差板」とも呼ばれ、CF基板100の主面内に、TFT基板13の主面に形成された複数の光学反射膜28a(複数の画素の反射表示領域)に対向させて形成される。
【0081】
本実施例の液晶表示装置の製造方法は、図3(b)を参照して説明された「絶縁膜15、ソース電極21a及びドレイン電極21b並びにシリコン膜23を被覆する保護絶縁膜24が形成されたガラス基板13」の上に、画素電極27a(透明導電膜27)と光学反射膜28a(金属膜28)とが順次形成されるプロセス・フロー(Process Flow)として説明される。図5及び図6は、反射表示部の画素電極27a上に光学反射膜28aを接触させて形成する半透過型液晶表示装置の製造工程の一部を示す模式断面図である。保護絶縁膜24で覆われた逆スタガ型薄膜トランジスタは例えば実施例1で説明された如く形成されるが、本実施例において、その手法は限定されない。従って、薄膜トランジスタ(積層膜のパターン)とこれに接続された配線を露出するコンタクトホール25は、公知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術、マスクパターン除去技術で形成してもよい。
【0082】
図5(a)には、図3(b)に示されたようなガラス基板13とその主面に形成された積層構造の断面が示されるが、保護絶縁膜(平坦化層)24上に別の保護絶縁膜36が形成され、且つソース電極21aを露出するコンタクトホール25が保護絶縁膜36にも形成されていることで、図3(b)に示された断面と異なる。本実施例において、保護絶縁膜36は感光性樹脂により形成される。
【0083】
次に、図5(b)に示すように、上記の図5(a)に示した積層膜パターン上(保護絶縁膜24,36上とコンタクトホール25内)には、図5(b)に示す如く、透明導電膜27と、金属膜28とが、順次成膜される。透明導電膜27は、インジウム−スズ酸化物、亜鉛酸化物、及びインジウム−スズ−亜鉛酸化物に代表される導電性酸化物の何れかで形成されるとよい。また、金属膜28は、ゲート電極14やソース電極21a及びドレイン電極21bと同様に、例えば:
クロム、クロム合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、アルミニウム合金、または銅合金の1層構造;
アルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
銅合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
銅合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
「クロムまたはクロム合金」とアルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」とアルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」とアルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;
「モリブデンまたはモリブデン合金」とアルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造;
「クロムまたはクロム合金」と銅合金と「クロムまたはクロム合金」との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」と銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」と銅合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;及び
「モリブデンまたはモリブデン合金」と銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造からなる群から選ばれる形状を呈するとよい。
【0084】
次に、図5(c)に示すように、金属膜28の上に、公知のフォトリソグラフィ技術で、フォトレジストからなるマスクパターン29が形成される。マスクパターン29は、フォトリソグラフィに代えて、その前駆体材料(レジスト材料)のオフセット印刷やインクジェット印刷、またはディスペンサノズルを用いた前駆体材料の塗布により形成することも可能である。金属膜28上にこれをパターニングするためのマスクパターン29を形成する本工程は、本実施例における第1マスクパターン形成工程となる。マスクパターン29は、金属膜28及びこれに続く透明導電膜27のパターニング工程の間に、金属膜28の上面に形成されたコンタクトホール25の開口を塞ぎ、その内部に形成された透明導電膜27と金属膜28との積層構造を保護する。
【0085】
続いて、図5(d)に示すように、マスクパターン29を用いて、金属膜28の一部をウェットエッチングまたはドライエッチングで選択的に除去することにより、透明導電膜27の部分露出領域と光学反射膜28aとを形成する。金属膜28をマスクパターン29により光学反射膜28aに成形する本工程は、本実施例における第1エッチング工程となる。
【0086】
さらに、光学反射膜28aから露出した透明導電膜27の一部を選択的に保護するために、実施例1と同様の手順で所定の有機材料を、透明導電膜27及びマスクパターン29の上面の一部に追加塗布する。この結果、図6(a)に示すように、透明導電膜27の上面の一部とマスクパターン29の上面の一部にマスクパターン30が形成される。マスクパターン29とこれによりパターニングされた光学反射膜28a、並びにこれらの下地層となる透明導電膜27の上にマスクパターン30を形成する本工程は、本実施例における第2マスクパターン形成工程となる。
【0087】
最後に、マスクパターン29及びマスクパターン30を用いて、透明導電膜27の一部をウェットエッチングまたはドライエッチングにより選択的に除去する。この結果、図6(b)に示すように、画素電極27aの上に光学反射膜28aが形成される。2つのマスクパターン29,30を用いて、マスクパターン29によりパターニングされた被加工物(光学反射膜28a)の下地層(透明導電膜27)を画素電極27aにパターニングする本工程は、本実施例における第2のエッチング工程となる。本工程では、反射表示部の画素電極27aのみならず、図示されない透過表示部の画素電極27bもパターニングされる。
【0088】
以降、マスクパターン29,30は実施例1と同様の手順で、ガラス基板13から除去され、図6(c)に示すような、画素電極の一部(反射表示部の画素電極27a)の上に光学反射膜28aが接触して形成された半透過型液晶表示装置が完成する。半透過型液晶表示装置の各画素に光学反射膜28aを備えた反射表示部と画素電極27bを備えた透過表示部とを作り込む本実施例のプロセス・フローは、当該画素に逆スタガ型薄膜トランジスタを備えた液晶表示装置のみならず、(正)スタガ型薄膜トランジスタを備えた液晶表示装置の作製にも適用可能である。
【実施例3】
【0089】
本発明によるパターン形成方法の第3の実施形態を、図4に示したIPS方式の液晶表示装置(横電界型液晶表示装置とも呼ばれる)の各画素におけるコモン電極32a及びコモン配線33aの形成への適用例として説明する。図8及び図9は、ガラス基板31の主面上で透明導電膜から成るコモン電極層32aと金属配線層として形成されるコモン配線33aとが接触するIPS方式(横電界型)の液晶表示装置の画素の作製工程を、当該画素に設けられる薄膜トランジスタの作製工程とともに示す模式断面図である。
【0090】
まず、図8(a)に示すように、ガラス基板31の上に、透明導電膜32及び金属膜33を順次成膜する。透明導電膜32及び金属膜33は、例えばガラス基板31の主面の全域に広がる1枚の「ベタ膜」として形成される。
透明導電膜32は、インジウム−スズ酸化物、亜鉛酸化物、及びインジウム−スズ−亜鉛酸化物に代表される導電性酸化物の何れかで形成されるとよい。また、金属膜33は:
クロム、クロム合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、アルミニウム合金、または銅合金の1層構造;
アルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
アルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
銅合金と「クロムまたはクロム合金」との2層構造;
銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との2層構造;
銅合金と「チタンまたはチタン合金」との2層構造;
銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との2層構造;
「クロムまたはクロム合金」とアルミニウム合金と「クロムまたはクロム合金」との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」とアルミニウム合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」とアルミニウム合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;
「モリブデンまたはモリブデン合金」とアルミニウム合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造;
「クロムまたはクロム合金」と銅合金と「クロムまたはクロム合金」との3層構造;
「タングステンまたはタングステン合金」と銅合金と「タングステンまたはタングステン合金」との3層構造;
「チタンまたはチタン合金」と銅合金と「チタンまたはチタン合金」との3層構造;及び
「モリブデンまたはモリブデン合金」と銅合金と「モリブデンまたはモリブデン合金」との3層構造、の何れかから構成されていればよい。
【0091】
次に、図8(b)に示すように、金属膜33の上に、公知のフォトリソグラフィ技術で、フォトレジストからなるマスクパターン34が形成される。マスクパターン34は、フォトリソグラフィに代えて、その前駆体材料(レジスト材料)のオフセット印刷やインクジェット印刷、またはディスペンサノズルを用いた当該前駆体材料の塗布により形成することも可能である。金属膜33上にこれをパターニングするためのマスクパターン34を形成する本工程は、本実施例における第1マスクパターン形成工程となる。
【0092】
次に、図8(c)に示すように、マスクパターン34を用いて、金属膜33の一部をウェットエッチングまたはドライエッチングで選択的に除去することにより、透明導電膜32の部分露出領域(金属膜33から露出される領域)とコモン配線層33a及びゲート電極33bとを形成する。金属膜33をマスクパターン34によりコモン配線層33a及びゲート電極33bに成形する本工程は、本実施例における第1エッチング工程となる。
【0093】
続いて、金属膜33から露出された透明導電膜32の一部が選択的に被覆されるように、実施例1と同様の手順で所定の有機材料を透明導電膜32の当該一部の上面に追加塗布する。この結果、図8(d)に示すように、透明導電膜32の一部の上面にはマスクパターン35が形成される。マスクパターン34とこれによりパターニングされた金属膜(コモン配線層)33a、並びにこれらの下地層となる透明導電膜32の上にマスクパターン35を形成する本工程は、本実施例における第2マスクパターン形成工程となる。図10(a)は、図4(b)に示される平面構造を有する画素の製造過程において、マスクパターン35が図8(d)に示す如く形成された段階における当該画素(未完成)の平面構造を示す。破線(19)は、コモン電極32a、コモン配線層33a、及びゲート電極33bが形成された後に、これらを覆う絶縁膜15(図4(a)参照)上に映像信号線と、薄膜トランジスタのソース電極及びドレイン電極とをパターニングするために形成されるマスクパターン19の輪郭を示す。
【0094】
最後に、マスクパターン34及びマスクパターン35を用いて、透明導電膜32の一部をウェットエッチングまたはドライエッチングにより選択的に除去する。この結果、図8(e)に示すように、コモン電極32a(コモン配線層33aの下地層含む)及びゲート電極の下地層32bが形成される。2つのマスクパターン34,35を用いて、マスクパターン34でパターニングされた被加工物(コモン配線層33a)の下地層(透明導電膜32)をコモン電極32aにパターニングする本工程は、本実施例における第2のエッチング工程となる。
【0095】
以降、マスクパターン34,35はガラス基板31から除去され(図9(a))、実施例1に記され又は公知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術、マスクパターン除去技術によりゲート電極33b上には薄膜トランジスタTFTが形成される。図10(a)に示した製造途上にある画素の平面構造は、2つのマスクパターン34,35の除去により、図10(b)に示される平面構造へと変る。図9(b)及び図9(c)は、薄膜トランジスタTFTを覆う保護絶縁膜24の上面に画素電極26が形成された段階での、ガラス基板31及びその主面に形成された積層構造の断面を示す。図9(b)は、図9(a)のゲート電極33bが形成された部分(トランジスタ配線付近の部分)の断面を拡大して示し、図9(c)は、図9(a)のコモン電極32aが形成された部分(画素の主要部分たる表示領域)の断面を拡大して示す。図9(b)及び図9(c)に示される薄膜トランジスタを備えた横電界型液晶表示装置の画素を備えた基板31は、TFT基板13(31)として図4に示す液晶表示装置に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
前述した実施の形態のパターン形成方法は、液晶表示装置のみならず、エレクトロルミネッセンス表示装置、電界放出表示装置、蛍光表示装置、プラズマ表示装置の表示装置(例えば、これに設けられたアクティブ素子)、または集積回路を備えた基板の製造に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明によるパターン形成方法の概要を説明するための模式断面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるパターン形成方法(液晶表示装置の製造方法)を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるパターン形成方法を、図2に引き続いて説明するための模式断面図である。
【図4】本発明の実施例1及び実施例3にて説明されるIPS方式の液晶表示装置の(a)断面構造及び(b)平面構造と、(c)実施例1における製造途上の平面形状を示す図である。
【図5】本発明の実施例2におけるパターン形成方法(液晶表示装置の製造方法)を説明するための模式断面図である。
【図6】本発明の実施例2におけるパターン形成方法を、図5に引き続いて説明するための模式断面図である
【図7】本発明の実施例2にて説明されるVA方式の半透過型液晶表示装置の(a)断面構造及び(b)平面構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例3におけるパターン形成方法(液晶表示装置の製造方法)を説明するための模式断面図である。
【図9】本発明の実施例3におけるパターン形成方法を、図8に引き続いて説明するための模式断面図である。
【図10】本発明の実施例3にて説明されるIPS方式の液晶表示装置の製造途上にある画素の平面形状を示す図である。
【図11】従来のパターン形成方法を示す模式断面図である。
【図12】従来の他のパターン形成方法を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1…基板、2…第1の薄膜、3…第2の薄膜、4,5,8,10,11…マスクパターン、6,9…第1の薄膜からなるパターン、7…第2の薄膜からなるパターン、13,31…ガラス基板、14,33b…ゲート電極、15…絶縁膜、16…シリコン膜、17…不純物が添加されたシリコン膜、18,28,33…金属膜、19,22,29,30,34,35…マスクパターン、20a,20b…オーミック接触層、21a…ソース電極、21b…ドレイン電極、23…シリコン膜、24…保護絶縁膜、25…コンタクトホール、26,27a…画素電極、27,32…透明導電膜、28a…光学反射膜、32a…コモン電極、32b…ゲート電極下透明導電膜、33a…コモン配線層、36…感光性樹脂の保護絶縁膜パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板主面に第1の膜と該第1膜より該主面側に位置する第2の膜とを含む積層構造を形成する積層工程と、
前記積層構造上に前記第1の膜を部分的に覆う第1のマスクパターンを形成するマスクパターン形成工程と、
前記第1のマスクパターンを通して前記第1の膜の一部を除去する第1のエッチング工程と、
前記第1のマスクパターンの一部及び前記第2の膜の一部に有機材料を塗布してこれらを被覆する第2のマスクパターンを形成させるマスクパターン追加工程と、
前記第1のマスクパターン及び前記第2のマスクパターンを通して、前記第2の膜の該第1及び該第2のマスクパターンのいずれからも露出された領域を除去する第2のエッチング工程と、
前記第1のマスクパターンと前記第2のマスクパターンとを除去するマスクパターン除去工程とをこの順に行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記マスクパターン形成工程において、前記第1のマスクパターンを、前記積層構造上に塗布された感光性を有するフォトレジストの露光及び現像により形成することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記フォトレジストは、前記マスクパターン形成工程で、露光された箇所が現像液に溶解するポジ型のフォトレジスト、及び遮光された箇所が現像液に溶解するネガ型のフォトレジストのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記マスクパターン形成工程において、オフセット印刷またはインクジェット印刷またはディスペンサノズルを用いて有機材料を塗布することで前記第1のマスクパターンを形成することを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記第1のエッチング工程後で且つ前記マスクパターン追加工程の前に、前記第1のマスクパターン及び前記第2の膜の該第1のマスクパターンから露出された領域のいずれかの表面の一部を除去する表面変質層の除去工程を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記表面変質層除去工程において、前記一部の表面をオゾンガスと窒素ガスとが含まれる混合ガスに曝すことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記オゾンガスは、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスを紫外線で照射することで発生されることを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記表面変質層除去工程において、前記一部の表面を酸素又は酸素を含む混合ガスで発生されたプラズマで処理することを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記酸素を含む混合ガスは、Oガスと不活性ガスとの混合ガス及びOガスとフッ化物ガスとの混合ガスの何れかであることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記酸素を含む混合ガスは、前記不活性ガスとしてHe及びArの何れかを含むことを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記酸素を含む混合ガスは、前記フッ化物ガスとしてSF、CF、及びCHFの何れかを含むことを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記表面変質層除去工程の後で且つ前記マスクパターン追加工程の前に、前記第1のマスクパターン及びこれから露出された前記第2の膜の露出領域の少なくとも一方の表面を、その前記有機材料に対する密着性が向上するように改質する表面改質工程を行うことを特徴とする請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記表面改質工程において、前記第1のマスクパターンの表面又は前記第2の膜の露出領域の表面をヘキサメチルジシラザンに曝すことを特徴とする請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記表面改質工程の後で且つ前記マスクパターン追加工程の前に、前記第1のマスクパターン及び前記第2の膜の露出領域を乾燥及び加熱して、夫々の表面から前記ヘキサメチルジシラザンの大部分を除去し且つ該表面に該ヘキサメチルジシラザンの一部を吸着させる該表面の改質後処理工程を備えたことを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記第1の膜を金属で形成するときは、前記第2の膜をインジウム−スズ酸化物、亜鉛酸化物、及びインジウム−スズ−亜鉛酸化物の何れかで形成し、前記第1の膜をインジウム−スズ酸化物、亜鉛酸化物、及びインジウム−スズ−亜鉛酸化物の何れかで形成するときは、前記第2の膜を金属で形成することを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記第1の膜を不純物が添加された半導体から成る第1半導体層と該第1半導体層上に積層された金属の層の2層とで形成し、前記第2の膜を半導体から成り且つ該第1半導体層より不純物濃度の低い第2半導体層で形成することを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
二次元的に配置された複数の画素を備えた表示装置を、前記画素の各々に薄膜トランジスタを請求項16に記載のパターン形成方法で形成して製造する方法であって、
前記第1のエッチング工程により、前記第1の膜を、前記第2の膜に各々接合され且つ該第2の膜の一部分を介して対向する一対に分け、
前記第2のエッチング工程により、前記第2の膜を、その前記一部分を成す前記第2半導体層が前記薄膜トランジスタのチャネルとなるように成形して、
前記一対の第1の膜の一方を成す前記金属層と前記第1半導体層とを前記薄膜トランジスタのソース電極とオーミック接触層に、該第1の膜の他方を成す前記金属層と前記第1半導体層とを前記薄膜トランジスタのドレイン電極とオーミック接触層に夫々成形することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項18】
二次元的に配置された複数の画素を備えた表示装置を、前記画素の各々に薄膜トランジスタ、画素電極、及び該薄膜トランジスタから出力される電圧を該画素電極に印加する配線層を請求項15に記載のパターン形成方法で形成して製造する方法であって、
インジウム−スズ酸化物、亜鉛酸化物、及びインジウム−スズ−亜鉛酸化物の何れかから成る前記第1及び第2の膜の一方で前記画素電極の透明電極層を形成し、且つ金属から成る該第1及び第2の膜の他方で前記配線層又は前記画素電極の光学反射層を形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記金属は:
クロム、クロム合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、モリブデン、モリブデン合金、アルミニウム合金、または銅合金の1層構造;
アルミニウム合金とクロムまたはクロム合金との2層構造;
アルミニウム合金とタングステンまたはタングステン合金との2層構造;
アルミニウム合金とチタンまたはチタン合金との2層構造;
アルミニウム合金とモリブデンまたはモリブデン合金との2層構造、
銅合金とクロムまたはクロム合金との2層構造;
銅合金とタングステンまたはタングステン合金との2層構造;
銅合金とチタンまたはチタン合金との2層構造;
銅合金とモリブデンまたはモリブデン合金との2層構造;
クロムまたはクロム合金とアルミニウム合金とクロムまたはクロム合金との3層構造;
タングステンまたはタングステン合金とアルミニウム合金とタングステンまたはタングステン合金との3層構造;
チタンまたはチタン合金とアルミニウム合金とチタンまたはチタン合金との3層構造;
モリブデンまたはモリブデン合金とアルミニウム合金とモリブデンまたはモリブデン合金との3層構造;
クロムまたはクロム合金と銅合金とクロムまたはクロム合金との3層構造;
タングステンまたはタングステン合金と銅合金とタングステンまたはタングステン合金との3層構造;
チタンまたはチタン合金と銅合金とチタンまたはチタン合金との3層構造;及び、
モリブデンまたはモリブデン合金と銅合金とモリブデンまたはモリブデン合金との3層構造の何れかから成るものであることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
前記マスクパターン追加工程は、前記第2の膜の前記第1及び前記第2のマスクパターンのいずれからも露出された露出領域を選択的に被覆するように第2のマスクパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記マスクパターン追加工程は、オフセット印刷またはインクジェット印刷またはディスペンサノズルを用いて前記有機材料からなる第2のマスクパターンを形成することを特徴とする請求項20に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
前記マスクパターン追加工程の後で且つ前記第2のエッチング工程の前に、前記第2のマスクパターンを加熱して、該第2のマスクパターンの感光による化学反応を抑制することを特徴とする請求項21に記載のパターン形成方法。
【請求項23】
前記マスクパターン追加工程に用いられる前記有機材料が、レジスト材料であることを特徴とする請求項1乃至16及び請求項19乃至22の何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項24】
前記マスクパターン除去工程は、前記第1のマスクパターンを除去し、かつ前記第2のマスクパターンを除去することを特徴とする請求項1乃至16及び請求項19乃至23の何れか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項25】
前記マスクパターン除去工程は、前記第1及び前記第2のマスクパターンを2−アミノエタノール、または2−アミノエタノールを含む水溶液に曝すことを特徴とする請求項24に記載のパターン形成方法。
【請求項26】
前記第2のエッチング工程の後で且つ前記マスクパターン除去工程の前に、
前記第1のマスクパターンの表面、または前記第2のマスクパターンの表面、または前記第2の膜の露出領域の表面から、前記有機材料または前記第2の膜の一部を除去するマスクパターン除去の前処理工程を備えたことを特徴とする請求項25に記載のパターン形成方法。
【請求項27】
前記マスクパターン除去の前処理工程は、前記第1のマスクパターン、前記第2のマスクパターン、又は前記第2の膜の露出領域のいずれかの表面をオゾンガスと窒素ガスとを含む混合ガスに曝すことを特徴とする請求項26に記載のパターン形成方法。
【請求項28】
前記オゾンガスは、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスに紫外線を照射することで発生させることを特徴とする請求項27に記載のパターン形成方法。
【請求項29】
前記マスクパターン除去前処理工程は、酸素、または酸素を含む混合ガスによるプラズマ処理であることを特徴とする請求項26に記載のパターン形成方法。
【請求項30】
前記酸素を含む混合ガスは、Oガスと不活性ガスとの混合ガス、またはOガスとフッ化物ガスとの混合ガスの何れかであることを特徴とする請求項29に記載のパターン形成方法。
【請求項31】
前記Oガスと不活性ガスとの混合ガスは、前記不活性ガスとしてHe及びArの何れかを含むことを特徴とする請求項30に記載のパターン形成方法。
【請求項32】
前記Oガスとフッ化物ガスとの混合ガスは、前記フッ化物ガスとしてSF、CF、及びCHFの何れかを含むことを特徴とする請求項30に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−59834(P2009−59834A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225006(P2007−225006)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】