説明

高kゲート誘電体のための、不純物酸素を捕捉する半導体構造および該構造を形成する方法(高kゲート誘電体のための捕捉金属スタック)

【課題】CMOS集積過程での高温処理の後であっても一定の閾値電圧を維持する高kゲート誘電体の提供。
【解決手段】高kゲート誘電体30と、下部金属層40、捕捉金属層50、および上部金属層60を含む金属ゲート構造とのスタックを提供する。該捕捉金属層は、次の2つの基準、1)Si+2/yM→2x/yM+SiOの反応によるギブス自由エネルギの変化が正である金属(M)であること、2)酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギが、下部金属層の金属および上部金属層の金属より大きな負である金属であること、を満たす。これらの基準を満たす捕捉金属層は、酸素原子がゲート電極を通って高kゲート誘電体に向け拡散するときに該酸素原子を捕捉する。さらに、該捕捉金属層は、高kゲート誘電体の下の酸化ケイ素界面層の厚さを遠隔から低減する。この結果、ゲート誘電体全体の等価酸化膜厚(EOT)の変動が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に半導体デバイスに関し、具体的には、高kゲート誘電体上の電極中に含まれる金属ゲート・スタックおよび該スタックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先端的な電界効果トランジスタの性能を向上する上で、ゲート誘電体のスケーリングは難題である。酸化ケイ素ベースのゲート誘電体を用いている電界効果トランジスタでは、ゲート誘電体の厚さが減ずるにつれて該ゲート誘電体を通り抜けるリーク電流が指数関数的に増大する。通常、かかるデバイスは、酸化ケイ素ゲート誘電体の厚さが1.1nm以下ではリークが大きすぎて高い性能は提供できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高kゲート誘電体は、ゲート・リーク電流を過度に増大させることなくゲート誘電体の厚さをスケール・ダウンする手段を提供してくれる。しかしながら、高kゲート誘電体材料はゲート電極またはゲート・スペーサを介して拡散してくる酸素と反応するので、高kゲート誘電体材料の等価酸化膜厚(EOT:effective oxide thickness)は変動しやすい。高温処理ステップ過程における、シリコン基板と高kゲート誘電体との間での酸化ケイ素界面層の再成長は、等価酸化膜厚をうまくスケールするための重大な障害である。具体的には、高kゲート誘電体と金属ゲートとの典型的なスタックは、酸素雰囲気下での高温アニールの影響を受けやすいことが知られている。酸素雰囲気中でのかかる高温アニールは、酸化ケイ素界面層の再生をもたらし、電界効果トランジスタの閾値電圧の不安定さを生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、高kゲート誘電体と、下部金属層、捕捉金属層、および上部金属層を含む金属ゲート構造とのスタックを提供する。該捕捉金属層は、次の2つの基準、1)Si + 2/y M→2x/y M + SiOの反応によるギブス自由エネルギの変化が正である金属(M)であること、2)酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギが、下部金属層の金属および上部金属層の金属より大きな負である金属であること、を満たす。これらの基準を満たす捕捉金属層は、酸素原子がゲート電極を通って高kゲート誘電体に向け拡散するときに該酸素原子を捕捉する。さらに、該捕捉金属層は、高kゲート誘電体の下の酸化ケイ素界面層の厚さを遠隔から低減する。この結果、ゲート誘電体全体の等価酸化膜厚(EOT)は低減され、電界効果トランジスタは、CMOS集積過程での高温処理の後であっても一定の閾値電圧を維持する。
【0005】
本発明のある態様によって半導体構造が提供され、該構造は、半導体材料を包含する半導体基板と、7.5より大きい誘電率有し該半導体基板上に配置された高誘電率(高k)誘電体層を包含するゲート誘電体と、該ゲート誘電体に隣接している下部金属層、該下部金属に隣接する捕捉金属層、および該捕捉金属層に隣接する上部金属層を包含する、ゲート誘電体に隣接するゲート電極とを含み、該捕捉金属層は、Si + 2/y M→2x/y M + SiOの反応によるギブス自由エネルギの変化が正である金属(前式のM)を包含し、該金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギは、下部金属層中の第一金属化合物内の第一元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負であり、さらに上部金属層中の第二金属化合物内の第二元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負である。
【0006】
本発明の別の態様によって半導体構造を形成する方法が提供され、該方法は、7.5より大きい誘電率を有する高誘電率(高k)誘電体層を包含するゲート誘電体を半導体基板上に形成するステップと、底部から上方向に、下部金属層、捕捉金属層、および上部金属層を包含するスタックを形成するステップであって、該補足金属層との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギは、該下部金属層中の第一金属化合物内の第一元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負であり、さらに該上部金属層中の第二金属化合物内の第二元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負である、上記形成するステップと、ゲート電極およびゲート誘電体を形成するステップであって、ゲート電極は上記スタックにパターン形成することによって形成され、ゲート電極は高k誘電体層の一部を包含する、上記形成するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による、高k誘電体層、下部金属層、捕捉金属層、上部金属層、および多結晶半導体層を形成した後の第一例示的半導体構造の垂直断面図である。
【図2】本発明による、ゲート誘電体およびゲート電極をパターン形成した後の該第一例示的半導体構造の垂直断面図である。
【図3】ゲート・スペーサと、ソースおよびドレインの拡張領域とを形成した後の該第一例示的半導体構造の垂直断面図である。
【図4】シリサイド域、誘電体材料層、および接続ビアを形成した後の該第一例示的半導体構造の垂直断面図である。
【図5】さまざまな金属の酸化過程におけるギブス自由エネルギの変化量を示すグラフである。
【図6】4種類の金属ゲート電極に対し、ゲート電圧の関数としての静電容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前述のように、本発明は、高kゲート誘電体上の電極に含まれる金属ゲート・スタックと、同スタックを製造する方法とに関し、以下に添付の図面を使って詳細を説明する。なお、同一のまたは類似のエレメントは同じ参照番号で呼ぶ。図面は正確な縮尺で描かれてはいない。
【0009】
図1を参照すると、本発明による例示的半導体構造は、半導体基板8およびその上に形成された材料層のスタックを含む。半導体基板8は、基板半導体層10および浅溝絶縁構造12を包含する。基板半導体層10は半導体材料を有し、該材料は、以下に限らないが、シリコン、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム合金、シリコン炭素合金、シリコン−ゲルマニウム−炭素合金、ガリウムヒ素、ヒ化インジウム、リン化インジウム、III−V族化合物半導体材料、II−VI族化合物半導体材料、有機半導体材料、および他の化合物半導体材料から選択することができる。典型的には、基板半導体層10の半導体材料はシリコンを含み、さらに典型的には、基板半導体層10の半導体材料はシリコンである。
【0010】
基板半導体層10の半導体材料が単結晶シリコン含有半導体材料である場合、該単結晶シリコン含有半導体材料は、望ましくは、単結晶シリコン、単結晶シリコン炭素合金、単結晶シリコンゲルマニウム合金、および単結晶シリコンゲルマニウム炭素合金から選択される。
【0011】
基板半導体層10の半導体材料は、p型ドーパント原子もしくはn型ドーパント原子を使って適切にドープすることができる。基板半導体層10のドーパント濃度は、1.0×1015/cmから1.0×1019/cm、典型的には、1.0×1016/cmから3.0×1018/cmとすることができる。但し、本明細書ではこれより低いまたは高いドーパント濃度も意図されている。望ましくは、基板半導体層10は単結晶である。半導体基板8は、バルク基板、半導体・オン・絶縁体(SOI:semiconductor−on−insulator)、またはハイブリッド基板とすることができる。半導体基板8は、基板半導体層10中に内部応力を有することも有しないこともできる。本発明は、バルク基板を使って説明されているが、本発明をSOI基板上またはハイブリッド基板上に実装することも、本明細書では明確に意図されている。浅溝絶縁構造12は、酸化ケイ素または窒化ケイ素などの誘電体材料を含み、従来技術で周知の方法によって形成される。
【0012】
パターン形成前化学的酸化物層20Lは、基板半導体層10の露出された半導体表面に形成することができる。パターン形成前高誘電率(高k)誘電体層30Lは、該パターン形成前化学的酸化物層20Lの上面に直接形成される。パターン形成前化学的酸化物層20Lが形成されない場合であっても、パターン形成前高誘電率(高k)誘電体層30Lの堆積とその後の熱処理によって、基板半導体層10とパターン形成前高誘電率(高k)誘電体層30Lとの間に先在的界面層の形成がもたらされる。パターン形成前化学的酸化物層20Lは、露出した半導体表面を化学剤で処理して形成することができる。例えば、このような湿式の化学的酸化工程のステップには、洗浄された半導体表面(例、フッ化水素酸で処理した半導体表面など)を、水酸化アンモニウムと過酸化水素と水との(1:1:5の比の)混合液を使い65℃で処理するステップを含めることができる。上記に換えて、この化学的酸化物層は、HF前処理した半導体表面を、通常オゾン濃度を、通常、以下に限らないが2百万分率(ppm:parts per million)から40ppmの範囲で振ったオゾン化水溶液中で処理して形成することができる。パターン形成前化学的酸化物層20Lは、パターン形成前高k誘電体層30L中の高k誘電体材料に起因して生じる、基板半導体層10中の移動度劣化を最小限にする助力となる。しかしながら、パターン形成前化学的酸化物層20Lの厚さは必要以上に厚く、パターン形成前化学的酸化物層20Lとパターン形成前高k誘電体層30Lとを含む複合誘電体スタックの等価酸化膜厚(EOT)を増大させる。EOTのスケーラビリティは、パターン形成前化学的酸化物層20Lの厚さによって大幅に制限される。基板半導体層がシリコン層の場合、パターン形成前化学的酸化物層20Lは酸化ケイ素層である。典型的には、パターン形成前化学的酸化物層20Lの厚さは、0.1nmから0.4nmである。但し、本明細書ではこれより薄いものも厚いものも意図されている。
【0013】
高誘電率(高k)誘電体層30Lは、半導体基板8の上面に形成される。パターン形成前高k誘電体層30Lは、誘電体金属酸化物を包含し窒化ケイ素の誘電率7.5より大きな誘電率を有する高誘電率(高k)材料、を含む。パターン形成前高k誘電体層30Lは、例えば、化学気相堆積法(CVD:chemical vapor deposition)、原子層堆積法(ALD:atomic layer deposition)、分子ビーム堆積法(MBD:molecular beam deposition)、パルス・レーザ堆積法(PLD:pulsed laser deposition)、液体ミスト化学堆積法(LSMCD:liquid source misted chemical deposition)などを含め、当該技術分野で周知の方法によって形成することができる。
【0014】
誘電体金属酸化物は、金属および酸素を含み、随意的に窒素またはケイ素あるいはその両方を含む。例示的な高k誘電体材料には、HfO、ZrO、La、Al、TiO、SrTiO、LaAlO、Y、HfO、ZrO、La、Al、TiO、SrTiO、LaAlO、Y、これらのケイ酸塩、およびこれらの合金が含まれる。上記のxの各値は、それぞれ独立に0.5から3までであり、yの各値は、それぞれ独立に0から2までである。パターン形成前高k誘電体層30Lの厚さは、1nmから10nmまで、望ましくは1.5nmから3nmまでとすることができる。パターン形成前高k誘電体層30Lは、1nmのオーダーまたはそれより小さい等価酸化膜厚を有することができる。
【0015】
パターン形成前下部金属層40Lは、パターン形成前高k誘電体層30Lの上面に直接堆積される。該パターン形成前下部金属層40Lは、例えば、化学気相堆積法(CVD)、物理的気相堆積法(PVD:physical vapor deposition)、または原子層堆積法(ALD)によって形成することができる。
【0016】
本明細書では、パターン形成前下部金属層40Lの材料を「第一金属化合物」といい、該材料は、導電性遷移金属窒化物または導電性遷移金属炭化物とすることができる。第一金属化合物は、遷移金属から選択された第一金属元素と非金属元素との化合物である。非金属元素が窒素の場合、第一金属化合物は遷移金属窒化物となる。非金属元素が炭素の場合、第一金属化合物は遷移金属炭化物となる。例えば、第一金属化合物は、TiN、TiC、TaN、TaCおよびこれらの組合せから選択することができる。本明細書で用いる用語遷移金属は、元素周期表中の、族3B、4B、5B、6B、7B、8B、1B、および2Bの元素、並びにランタニド系元素およびアクチニド系元素を含む。パターン形成前下部金属層40Lの厚さは、1nmから10nmまで、望ましくは3nmから10nmとすることができる。但し、本明細書ではこれより薄いものも厚いものも意図されている。
【0017】
パターン形成前捕捉金属層50Lは、パターン形成前下部金属層40Lの上面に直接堆積される。パターン形成前捕捉金属層50Lは、例えば、化学気相堆積法(CVD)、物理的気相堆積法(PVD)、または原子層堆積法(ALD)によって形成することができる。望ましくは、第一例示的半導体構造は、パターン形成前下部金属層40Lを堆積した処理チャンバから、パターン形成前捕捉金属層50Lを堆積する別の処理チャンバに、酸素による一切の界面層形成を防止しパターン形成前下部金属層40Lへの酸素の導入を防止するため、真空を破らないで移される。
【0018】
パターン形成前捕捉金属層50Lの材料は、後続の処理過程で、隣接する金属層からの不純物酸素を「捕捉する」。パターン形成前捕捉金属層50Lが、後続の処理ステップで不純物酸素を効果的に捕捉するためには、該パターン形成前捕捉金属層50Lの形成ステップ過程で、該層への酸素の導入を抑える必要がある。さらに、パターン形成前捕捉金属層50Lの材料が、パターン形成前下部金属層40Lと、後で形成されることになるパターン形成前上部金属層60Lとからの不純物酸素原子を効果的に捕捉するように、パターン形成前捕捉金属層50Lに対する該材料を選択する必要がある。
【0019】
パターン形成前捕捉金属層50Lには、元素形態の金属を含めることができる。パターン形成前捕捉金属層50L用として選択できる典型的な元素金属には、以下に限らないが、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeが含まれる。一つの実施形態において、パターン形成前捕捉金属層50Lは、少なくとも一つのアルカリ土類金属から成る。別の実施形態において、パターン形成前捕捉金属層50Lは、少なくとも一つの遷移金属から成る。さらに別の実施形態において、パターン形成前捕捉金属層50Lは、少なくとも一つのアルカリ土類金属と少なくとも一つの遷移金属との混合体から成る。望ましくは、パターン形成前捕捉金属層50Lの厚さは、0.1nmから3.0nmまでとすることができる。但し、本明細書ではこれより薄いものも厚いものも意図されている。
【0020】
パターン形成前上部金属層60Lは、パターン形成前捕捉金属層50Lの上面に直接堆積される。パターン形成前上部金属層60Lは、例えば、化学気相堆積法(CVD)、物理的気相堆積法(PVD)、または原子層堆積法(ALD)によって形成することができる。望ましくは、第一例示的半導体構造は、パターン形成前捕捉金属層50Lを堆積した処理チャンバから、パターン形成前上部金属層60Lを堆積する処理チャンバに、酸素による一切の界面層形成を防止しパターン形成前捕捉金属層50Lへの酸素の導入を防止するため、真空を破らないで移される。
【0021】
本明細書では、パターン形成前上部金属層60Lの材料を「第二金属化合物」といい、該材料は、導電性遷移金属窒化物または導電性遷移金属炭化物とすることができる。第二金属化合物は、遷移金属から選択された第二金属元素と非金属元素との化合物である。該非金属元素が窒素の場合、第二金属化合物は遷移金属窒化物となる。非金属元素が炭素の場合、第二金属化合物は遷移金属炭化物となる。例えば、第二金属化合物は、TiN、TiC、TaN、TaCおよびこれらの組合せから選択することができる。パターン形成前上部金属層60Lの厚さは、1nmから100nmまで、望ましくは3nmから10nmとすることができる。但し、本明細書ではこれより薄いものも厚いものも意図されている。
【0022】
ある事例では、第一金属化合物と第二金属化合物とは同一の材料である。別の事例では、該第一金属化合物と第二金属化合物とは相異なる材料である。
【0023】
一つの実施形態において、パターン形成前捕捉金属層50L用の材料は、該パターン形成前捕捉金属層50Lとの酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギが、パターン形成前下部金属層40Lに対する第一金属化合物内の第一元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負になるように選択される。さらに、パターン形成前捕捉金属層50L用の材料は、該パターン形成前捕捉金属層50Lの酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギが、パターン形成前上部金属層60Lに対する第二金属化合物内の第二元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負であるように選択される。
【0024】
例えば、第一および第二金属化合物は、TiN、TiC、TaN、TaCおよびこれらの組合せから選択することができる。パターン形成前捕捉金属層50Lは、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeの少なくとも一つを含む。
【0025】
別の実施形態において、パターン形成前捕捉金属層50L用の材料は、該パターン形成前捕捉金属層50Lの酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギが、パターン形成前下部金属層40Lに対する第一金属化合物内の第一元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギより大きな負であるように、選択される。さらに、パターン形成前捕捉金属層50L用の材料は、該パターン形成前捕捉金属層50Lの酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギが、パターン形成前上部金属層60Lに対する第二金属化合物内の第二元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギより大きな負であるように選択される。
【0026】
本実施形態の一つの具体例において、第一金属化合物および第二金属化合物の各々は、TaN、TaC、およびこれらの組合せから選択することができる。チタン(Ti)は、タンタル(Ta)よりも大きな負の、酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギを有するので、この具体例では、パターン形成前捕捉金属層50Lには、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeから選択された元素形態の金属を含めることができる。
【0027】
本実施形態による別の具体例において、第一金属化合物および第二金属化合物の少なくとも一つは、TiN、TiC、およびこれらの組合せから選択することができる。本具体例において、パターン形成前捕捉金属層50Lには、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeから選択された元素形態の金属を含めることができる。
【0028】
好適な事例において、パターン形成前下部金属層40Lの第一金属化合物およびパターン形成前上部金属層60Lの第二金属化合物はTiNであり、パターン形成前捕捉金属層50Lは、元素金属形態のアルミニウムを含むアルミニウム層である。
【0029】
必須ではないが望ましくは、パターン形成前多結晶半導体層70Lが、パターン形成前上部金属層60Lの上面に、例えば、低圧化学気相堆積法(LPCVD:low pressure chemical vapor deposition)、急速熱化学気相堆積法(RTCVD:rapid thermal chemical vapor deposition)、またはプラズマ化学気相成長法(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)によって直接堆積される。パターン形成前多結晶半導体層70Lには、多結晶シリコン、多結晶シリコンゲルマニウム合金、多結晶シリコン炭素合金、または多結晶シリコンゲルマニウム炭素合金を含めることができる。パターン形成前多結晶半導体層70Lは、その場ドーピングによってドープ多結晶半導体層として形成することができる。上記に換えて、パターン形成前多結晶半導体層70Lは、パターン形成前多結晶半導体層70Lの堆積後、ゲート電極のパターン形成の前に、ドーパント原子のイオン注入によってドープすることができる。さらに別法として、ゲート電極のパターン形成の後、パターン形成前多結晶半導体層70Lの残存部分にドーパント・イオンの注入を行うことができる。パターン形成前多結晶半導体層70Lの厚さは、10nmから300nmまで、典型的には50nmから100nmとすることができる。但し、本明細書ではこれより薄いものも厚いものも意図されている。該パターン形成前多結晶半導体層70Lが形成されない実施形態では、パターン形成前下部金属層40Lとパターン形成前捕捉金属層50Lとパターン形成前上部金属層60Lとのスタックがゲート電極層を構成する。
【0030】
フォトレジスト層(図示せず)が、パターン形成前多結晶半導体層70Lの上面に塗布され、リソグラフィでパターン取りされフォトレジスト部分77(図2参照)が形成され、該部分はこの後形成されることになるゲート電極の形状を有する。フォトレジスト部分77のパターンは、パターン形成前多結晶半導体層70Lと、パターン形成前上部金属層60Lと、パターン形成前捕捉金属層50Lと、パターン形成前下部金属層40Lと、パターン形成前高k誘電体層30Lと、パターン形成前化学的酸化物層20Lとのスタックに転写される。このパターン転写は、フォトレジスト部分77をエッチング・マスクとして用い、異方性エッチングによって達成することができる。
【0031】
図2を参照すると、パターン形成前多結晶半導体層70Lと、パターン形成前上部金属層60Lと、パターン形成前捕捉金属層50Lと、パターン形成前下部金属層40Lとの残存部分がゲート電極を構成しており、該電極は、多結晶半導体層70と、上部金属層60と、捕捉層50と、下部金属層40とを含む。ゲート電極(40、50、60、70)は、通常、幅を持つラインとしてパターン形成され、この幅は図2に示されるように下部金属層40の幅であり「ゲート長」と呼ばれる。このゲート長はデバイスの特性によって決まり、リソグラフィで印刷可能な最小寸法から10ミクロンまでの間とすることができる。典型的には、該ゲート長は32nmから1ミクロンまでである。但し、本明細書ではこれより短いゲート長も長いゲート長も意図されている。
【0032】
本明細書では、パターン形成前高k誘電体層30Lの残存部分を高k誘電体層30といい、パターン形成前化学的酸化物層20Lの残存部分を化学的酸化物層20という。高k誘電体層30と化学的酸化物層20とは、併せてゲート誘電体(20、30)を構成する。典型的には、ゲート誘電体(20、30)は、1.2nmより小さい等価酸化膜厚(EOT)を有し、1.0nmよりも小さなEOTを有することも可能である。フォトレジスト部分77は、後で、例えば灰化によって除去される。
【0033】
ゲート電極(40、50、60、70)およびゲート誘電体(20、30)の側壁は、通常、ほぼ垂直、すなわち基板半導体層10の露出面の表面法線に平行である。さらに、ゲート電極(40、50、60、70)およびゲート誘電体(20、30)の側壁は、通常、相互に垂直方向にそってほぼ合致している。
【0034】
図3を参照すると、ソースおよびドレインの伸張域18が、ゲート電極(40、50、60、70)およびゲート誘電体(20、30)を注入マスクとして用いたイオン注入によって形成されている。ソースおよびドレインの伸張域18は、基板半導体層10のドーピングとは正反対の導電型のドーピングを有する。例えば、基板半導体層10がp型ドーピングを有する場合、ソースおよびドレインの伸張域18はn型ドーピングを有し、その逆もある。ソースおよびドレインの伸張域18のドーパント濃度は、1.0×1019/cmから1.0×1021/cmまでとすることができる。但し、本明細書では、これより低いドーパント濃度も高いドーパント濃度も意図されている。ソースおよびドレインの伸張域18の各々は、ゲート誘電体(20、30)の周辺部に隣接している。
【0035】
このステップで、随意的にハロー注入を行って、基板半導体層10のドーピングと同じ導電型のドーパントを、ゲート電極(40、50、60、70)およびゲート誘電体(20、30)の周辺部の下に位置する基板半導体層10の容積に導入することができる。
【0036】
ゲート電極(40、50、60、70)の側壁とゲート誘電体(20、30)の側壁側面とに沿って隣接するゲート・スペーサ80が、例えば、コンフォーマルな誘電体材料層の堆積とその後の異方性イオン・エッチングによって形成される。誘電体材料層の、ゲート電極(40、50、60、70)およびゲート誘電体(20、30)の側壁上に直接形成された部分は、異方性エッチングのあとも残存し、ゲート電極(40、50、60、70)およびゲート誘電体(20、30)を側面沿いに取り巻くスペーサ80を構成する。望ましくは、ゲート・スペーサ80は、窒化ケイ素などの酸素不浸透性材料を含む。
【0037】
図4を参照すると、ゲート電極(40、50、60、70)およびゲート・スペーサ80を注入マスクとして用いたイオン注入によって、ソースおよびドレイン域19が形成されている。ソースおよびドレイン域19は、ソースおよびドレインの伸張域18のドーピングと同じ導電型のドーピングを有する。ソースおよびドレイン域19のドーパント濃度は、1.0×1019/cmから1.0×1021/cmまでとすることができる。但し、本明細書では、これより低いドーパント濃度も高いドーパント濃度も意図されている。
【0038】
この後、活性化アニールが行われ、ソースおよびドレインの伸張域18およびソースおよびドレイン域19内に注入された電気的ドーパントが活性化される。かかる活性化アニールは、通常、酸化雰囲気中で行われ、従来技術の半導体構造では、この過程で高k誘電体層の組成整合性が損なわれる可能性がある。しかしながら、本発明では、図4中の例示的半導体構造において、化学的酸化物層20が存在してもその肥厚化は防止される。というのは、捕捉金属層50が多結晶半導体層70から下方に拡散する酸素を費消するからである。本発明の該例示的構造中に化学的酸化物層20が存在しない場合には、同一のメカニズムによって、基板半導体層10と高k誘電体層30との間の界面半導体酸化物層の形成を防止する。従って、基板半導体層10、ゲート誘電体(20、30),および下部金属ゲート40を含む構造のフラット・バンド電圧は、酸化雰囲気中での活性化アニールまたは他の任意の熱処理ステップの過程で影響を受けることはない。
【0039】
例示的半導体構造の露出した上面全体に、金属層(図示せず)が形成され、露出した半導体材料と反応してさまざまな金属半導体合金域が形成される。該金属層は、ソースおよびドレイン域19並びに多結晶半導体層70中の半導体材料と反応する金属を含む。該金属層に対する例示的材料には、以下に限定はされないが、ニッケル、白金、パラジウム、コバルト、またはこれらの組合せが含まれる。該金属層の形成は、物理的気相堆積法(PVD)、化学気相堆積法(CVD)、または原子層堆積法(ALD)によって達成することができる。該金属層は、コンフォーマルなあるいは非コンフォーマルなやり方で堆積することができる。望ましくは、この金属堆積は大体はコンフォーマルである。
【0040】
該金属層と直接接している露出した半導体表面は、金属化アニールの過程で、金属層中の金属と反応することによって金属化される。この金属化は、350℃から550℃までの温度でのアニールによって達成され、通常、He、Ar、N、またはフォーミング・ガスなどの不活性ガス雰囲気の中で行われる。望ましくは、該アニールは400℃から500℃までの温度で行われる。一定温度またはさまざまな温度傾斜での連続加熱を用いることができる。さらに、該金属化は、400℃から750℃までの温度、望ましくは500℃から700℃までの温度の追加アニールによって達成することができる。金属化処理の後、ゲート・スペーサ80および浅溝絶縁構造12などの誘電体の表面上に存在する金属層の未反応部分は、さまざまな金属半導体合金部分から選び分けてエッチングによって除去され、該エッチングを湿式エッチングとすることができる。かかる湿式エッチングのための典型的なエッチング液として王水が使われる。
【0041】
この金属化によって、ソースおよびドレイン域19各々の上に直接にソースおよびドレイン金属半導体合金域89が形成される。さらに、ゲート金属半導体合金域87が、多結晶半導体層70上面の上に直接に形成される。
【0042】
誘電体材料層92が、該例示的半導体構造の上面全体を覆って堆積される。誘電体材料層92は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、またはこれらの組合せなどの誘電体材料を含む。
【0043】
望ましくは、誘電体材料層92は、可動イオン・バリア層(図示せず)を含む。可動イオン・バリア層は、通常、窒化ケイ素などの不浸透性の誘電体材料を含み、さまざまな金属半導体合金域(89、87)と直接に接している。誘電体材料層92には、例えば、非ドープ・ケイ酸塩ガラス(USG:undoped silicate glass)、ホウケイ酸ガラス(BSG:borosilicate glass)、リンケイ酸ガラス(PSG:phosphosilicate glass)、フルオロケイ酸ガラス(FSG:fluorosilicate glass)、ホウリンケイ酸塩ガラス(BPSG:borophosphosilicate glass)またはこれらの組合せなどの、スピン・オン・ガラス法または化学気相堆積法(CVD)あるいはその両方による酸化物をさらに含めることができる。上記に換えて、誘電体材料層92には、誘電率が3.9(酸化ケイ素の誘電率)より低い、望ましくは2.5より低い誘電率を有する低k誘電体材料を含めることができる。代表的な低k誘電体材料には、有機ケイ酸塩ガラス(OSG:organosilicate glass)およびSiLK(商標)が含まれる。
【0044】
誘電体材料層92は、この後平坦化され、ほぼ平坦な上面を形成する。ソースおよびドレインの接続ビア93とゲートの接続ビア95とが、誘電体材料層92を貫通して形成され、ソースおよびドレイン域19のそれぞれと、ゲート電極(40、50、60、70)とへの電気的接続が具備される。
【0045】
図4の例示的半導体構造は、高kゲート誘電体および金属ゲートを有する電界効果トランジスタとして機能する。ゲート電極(40、50、60、70)内の捕捉金属層50の存在によって、該捕捉金属層50が酸素原子を捕捉するので、多結晶半導体層70から下方に拡散する酸素原子は下部金属層40内に入るのを阻止される。従って、本発明の電界効果トランジスタは、電解効果トランジスタのデバイス・パラメータを劣化または変化させる可能性のある酸素拡散に対する優れた信頼性を提供する。
【0046】
図5を参照すると、各種金属の酸化過程における酸素原子あたりのギブス自由エネルギの変化量が300Kから2,200Kの温度範囲内で示されている。酸素原子あたりのギブス自由エネルギのより大きな負の変化を有するある反応が、限られて供給される反応物質をめぐって、酸素原子あたりのギブス自由エネルギのより小さな負の変化を有する別の反応と競合しているとき、ギブス自由エネルギのより大きな負の変化を有する反応が該反応で優位を占め、利用可能な反応物質の大半を費消する。酸化雰囲気中の高温アニール過程でのゲート電極(40、50、60、70、図4を参照)内の酸化反応の場合、多結晶半導体層70(図4参照)と上部金属層60(図4参照)とを介して拡散する酸素原子または酸素分子は、限られた量で供給される反応物質である。通常、約1,000℃または約1,300Kで行われる、活性化アニールの温度範囲内では、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeなどの元素金属は、TiおよびTaなどの典型的遷移金属に比べ、ギブス自由エネルギはより大きな負への変化を有する。従って、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeなどの元素金属が、捕捉金属層50(図4参照)用の捕捉材料として効果的に機能する。
【0047】
いくつかの選定された元素金属に対する、Si + 2/y M→2x/y M + SiOの反応によるギブス自由エネルギの変化を表1に示す。
【0048】
表1:1000KにおけるSi + 2/y M→2x/y M + SiOの反応によるギブス自由エネルギの変化。前式のMは元素金属である。
【0049】
【表1】

【実施例】
【0050】
図6を参照すると、ゲート電圧の関数としての静電容量の試験データが、4種類の金属ゲート電極について示されている。第一のカーブ610は、従来技術による、8nm厚さのTiN層とその上に直接形成された多結晶半導体層とを含む参考ゲート電極に対する静電容量を示す。第二のカーブ620は、底部から上方向に、下部金属層として3.5nm厚さのTiN層と、捕捉金属層として1.0nmのTi層と、上部金属層として3.5nm厚さのTiN層と、多結晶半導体層と、のスタックを含む、本発明による例示的ゲート電極に対する静電容量を示す。第三のカーブ630は、底部から上方向に、下部金属層として3.5nm厚さのTiN層と、捕捉金属層として1.0nmのAl層と、上部金属層として3.5nm厚さのTiN層と、多結晶半導体層と、のスタックを含む、本発明による別の例示的ゲート電極に対する静電容量を示す。第四のカーブ640は、底部から上方向に、下部金属層として3.5nm厚さのTiN層と、捕捉金属層として1.0nmのTa層と、上部金属層として3.5nm厚さのTiN層と、多結晶半導体層と、のスタックを含めることによって、本発明の教示に反して形成された反例ゲート電極に対する静電容量を示す。TaはTiより小さなギブス自由エネルギ負変化を有するので、本発明によれば、下部金属層および上部金属層がTiNを含む場合、捕捉金属層としてTaを使うのは避けるべきである。しかして、反例ゲート電極の構造は望ましくない。高k誘電体層としてHfO層が用いられ、この層が基板半導体層と各ゲート電極との間に形成された。4つ全てのゲート電極構造が、酸化雰囲気中で約1,000℃の温度で活性化アニールに付された。
【0051】
3つのカーブ(610、620、630)を比較すると、第二および第三カーブ(620、630)によって示されるように、本発明のゲート・スタックによって実現された実効静電容量が、第一カーブ610で示される参考ゲート・スタックによって実現された静電容量よりも大きいことが分かる。しかして、本発明のゲート・スタックによって実現された等価酸化膜厚(EOT)は、参考ゲート・スタックにより実現されたEOTよりも小さく、向上されたパフォーマンスを提供する。言い換えれば、下部金属層、捕捉金属層、および上部金属層を包含する本発明のゲート電極の使用によって、代わりに単一の金属層を用いている従来技術の参考構造との比較においてEOTの低減が得られた。
【0052】
反面、第四カーブ640に示されるように、反例ゲート・スタックにより実現された実効静電容量は、第一カーブ610に示された、従来技術のゲート・スタックで実現された静電容量よりもさらに小さい。しかして、反例ゲート・スタックによって実現された等価酸化膜圧(EOT)は、従来技術のゲート・スタックで実現されたEOTよりも大きく、より低劣なパフォーマンスをもたらす。言い換えれば、本発明から乖離すると教示された間違った種類の材料の捕捉層への使用は、代わりに単一の金属層を用いている従来技術の参考構造との比較でEOTの増大をもたらした。しかして、該反例によって、捕捉金属層に対する材料選定の重要性が明確に示された。
【0053】
捕捉金属層50は、上側からおよび下側からの酸素原子を捕捉する。すなわち、捕捉金属層50は、酸素原子が、多結晶半導体層70とゲート電極中の上部金属層60とを介して、高kゲート誘電体30に向かって拡散する過程で酸素原子を捕捉する。捕捉金属層は、下部金属層40および上部金属層60よりも酸化物形成性向が高いので、酸素原子は該捕捉金属層50内で費消され、酸素原子が高k誘電体30に到達しない。さらに、捕捉金属層50は、さらなる酸素電子が化学的酸化物層20の下側からあるいは側面から化学的酸化物層20に向かってマイグレートするのに対し、高k誘電体30の下の該化学的酸化物層20の厚さを能動的に低減する。かかるマイグレート酸素原子は、化学的酸化物層20に取り込まれるのに代わり捕捉金属層50によって捕捉される。高k誘電体30の下の化学的酸化物層20の肥大が阻止されるばかりでなく、該化学的酸化物層20の中の酸素原子の相当な部分が捕捉金属層50によって費消されるので、化学的酸化物層20の厚さはむしろ低減される。かくして、電界効果トランジスタは、酸化雰囲気中の高温アニールの後にあっても、一定した閾値電圧を維持する。化学的酸化物層20の厚さを従来式の処理で通常得られる厚さよりも薄く抑えることによって、化学的酸化物層20と高k誘電体30とを含む複合ゲート誘電体スタックの等価酸化膜厚(EOT)を低下させ、これにより、該複合ゲート誘電体スタックのスケーラビリティと該電界効果トランジスタの性能を向上させる。
【0054】
本発明をその好適な実施形態に関連させて具体的に示し説明してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態と細部に前述のおよび他の変更を加えることが可能なことを理解していよう。従って、本発明は、説明、図示した通りの形態および細部に限定されることなく、添付の請求項の範囲に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0055】
8:半導体基板
10:基板半導体層
12:浅溝絶縁構造
18:ソースおよびドレインの伸張域
19:ソースおよびドレイン域
20:化学的酸化物層
30:高k誘電体層
40:下部金属層
50:捕捉金属層
60:上部金属層
70:多結晶半導体層
80:ゲート・スペーサ
87:ゲート金属半導体合金域
89:ソースおよびドレイン金属半導体合金域
92:誘電体材料層
93:ソースおよびドレインの接続ビア
95:ゲートの接続ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料を包含する半導体基板と
7.5より大きい誘電率を有し前記半導体基板上に配置された高誘電率(高k)誘電体層、を包含するゲート誘電体と、
前記ゲート誘電体に隣接する下部金属層と、前記下部金属層に隣接する捕捉金属層と、前記捕捉金属層に隣接する上部金属層とを含む、前記ゲート誘電体に隣接するゲート電極と、
を含む半導体構造であって、
前記捕捉金属層は、Si + 2/y M→2x/y M + SiOの反応のギブス自由エネルギの変化が正である金属(前式のM)を含み、
前記金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギは、前記下部金属層中の第一金属化合物内の第一元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかまたはそれより大きな負であり、前記上部金属層中の第二金属化合物内の第二元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかまたはそれより大きな負である、
前記半導体構造。
【請求項2】
前記捕捉金属層は0.1nmから3.0nmまでの厚さを有する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項3】
前記下部金属層は1nmから10nmまでの厚さを有し、前記上部金属層は1nmから100nmまでの厚さを有する、請求項2に記載の半導体構造。
【請求項4】
前記第一金属化合物および前記第二金属化合物の各々は、導電性窒化遷移金属または導電性炭化遷移金属である、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項5】
前記第一金属化合物および前記第二金属化合物の各々は、TiN、TiC、TaN、TaCおよびこれらの組合せから選択される、請求項4に記載の半導体構造。
【請求項6】
前記第一金属化合物と前記第二金属化合物とは同一の材料である、請求項4に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記捕捉金属層は元素形態の金属を含む、請求項4に記載の半導体構造。
【請求項8】
前記捕捉金属層は、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeの少なくとも一つを含む、請求項7に記載の半導体構造。
【請求項9】
前記第一金属化合物および前記第二金属化合物は、TiNであり、前記捕捉金属層はアルミニウム層である、請求項4に記載の半導体構造。
【請求項10】
前記捕捉金属層との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギは、前記下部金属層の第一金属化合物内の第一元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギよりも大きな負であり、前記上部金属層の第二金属化合物内の第二元素金属の酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギよりも大きな負である、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項11】
前記第一金属化合物および前記第二金属化合物の各々は、TaN、TaC、およびこれらの組合せから選択され、前記捕捉金属層は、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeから選択された元素形態の金属を含む、請求項10に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記第一金属化合物および前記第二金属化合物の少なくとも一つはTiN、TiC、およびそれらの組合せから選択され、前記捕捉金属層は、Al、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zr、Hf、Dy、Lu、Er、Pr、およびCeから選択された元素形態の金属を含む、請求項10に記載の半導体構造。
【請求項13】
前記半導体基板は、前記ゲート誘電体に隣接する単結晶シリコン含有半導体材料を含み、前記単結晶シリコン含有半導体材料は、単結晶シリコン、単結晶シリコン炭素合金、単結晶シリコンゲルマニウム合金、および単結晶シリコンゲルマニウム炭素合金から選択される、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記高k誘電体層は、HfO、ZrO、La、Al、TiO、SrTiO、LaAlO、Y、HfO、ZrO、La、Al、TiO、SrTiO、LaAlO、Y、これらのケイ酸塩、これらの合金、およびこれらの非化学量論的変異体の一つを含み、xの各値は独立に0.5から3までであり、yの各値は独立に0から2までである、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項15】
前記ゲート電極は、前記上部金属層に鉛直に隣接するドープ多結晶半導体層をさらに含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項16】
前記ゲート電極の側面に沿って隣接して取り巻き、酸素不浸透性材料を包含する誘電体スペーサと、
前記半導体基板中に配置され、前記ゲート・スペーサの周辺部に隣接するソース域と、
前記半導体基板中に配置され、前記ゲート・スペーサの別の周辺部に隣接するドレイン域と、
をさらに含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項17】
前記ゲート誘電体は、酸化ケイ素を包含する化学的酸化物層と前記高k誘電体層との垂直スタックを含み、前記化学的酸化物層は前記半導体基板に隣接する、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項18】
半導体構造を形成する方法であって、
7.5より大きい誘電率を有する高誘電率(高k)誘電体層を半導体基板上に形成するステップと、
底部から上方向に、下部金属層、捕捉金属層、および上部金属層を包含するスタックを形成するステップであって、前記捕捉金属層は、Si +2/y M→2x/y M + SiOの反応によるギブス自由エネルギの変化が正である金属(前式のM)を包含し、前記金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギは、前記下部金属層中の第一金属化合物内の第一元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負であり、さらに前記上部金属層中の第二金属化合物内の第二元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギと等しいかより大きな負である、前記形成するステップと、
ゲート電極およびゲート誘電体を形成するステップであって、前記ゲート電極は前記スタックをパターン形成することによって形成され、前記ゲート誘電体は前記高k誘電体層の一部を包含する、前記形成するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記捕捉金属層は0.1nmから3.0nmまでの厚さを有し、前記下部金属層は1nmから10nmまでの厚さを有し、前記上部金属層は1nmから100nmまでの厚さを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第一金属化合物および前記第二金属化合物の各々は、導電性窒化遷移金属または導電性炭化遷移金属である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第一金属化合物および前記第二金属化合物は、TiNであり、前記捕捉金属層はアルミニウム層である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記捕捉金属層との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギは、前記下部金属層の第一金属化合物内の第一元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギよりも大きな負であり、さらに前記上部金属層の第二金属化合物内の第二元素金属との酸化物形成に対する酸素原子あたりのギブス自由エネルギよりも大きな負である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記高k誘電体層は、HfO、ZrO、La、Al、TiO、SrTiO、LaAlO、Y、HfO、ZrO、La、Al、TiO、SrTiO、LaAlO、Y、これらのケイ酸塩、これらの合金、およびこれらの非化学量論的変異体の一つを含み、xの各値は独立に0.5から3までであり、yの各値は独立に0から2までである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記上部金属層上にドープ多結晶半導体層を形成するステップをさらに含み、前記ゲート電極は前記ドープ多結晶半導体層の一部を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記ゲート電極の側壁上に直接誘電体スペーサを形成するステップであって、前記誘電体スペーサは酸素不浸透性材料を包含する、前記形成するステップと、
前記半導体基板中に、前記ゲート・スペーサの周辺部に接するソース域を形成するステップと、
前記半導体基板中に、前記ゲート・スペーサの別の周辺部に接するドレイン域を形成するステップと、
をさらに含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−3899(P2011−3899A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136861(P2010−136861)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】