説明

半導体装置

【課題】電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い、新たな構造の半導体装置を提供することを目的の一とする。
【解決手段】第1のトランジスタ上に設けられた第2のトランジスタと容量素子とを有し、第1のトランジスタのゲート電極と、該ゲート電極に接する第2のトランジスタのソース電極とは、エッチングの選択比がとれる材料を用いて形成される半導体装置を提供する。第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのソース電極とをエッチングの選択比がとれる材料を用いて形成することで、レイアウトのマージンを低減させることができるため半導体装置の集積度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置およびその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を利用した記憶装置は、電力の供給がなくなると記憶内容が失われる揮発性のものと、電力の供給がなくなっても記憶内容は保持される不揮発性のものとに大別される。
【0003】
揮発性記憶装置の代表的な例としては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)がある。DRAMは、記憶素子を構成するトランジスタを選択してキャパシタに電荷を蓄積することで、情報を記憶する。
【0004】
上述の原理から、DRAMでは、情報を読み出すとキャパシタの電荷は失われるため、情報の読み出しの度に、再度の書き込み動作が必要となる。また、記憶素子を構成するトランジスタにはオフ状態でのソースとドレイン間のリーク電流(オフ電流)等によって、トランジスタが選択されていない状況でも電荷が流出、または流入するため、データの保持期間が短い。このため、所定の周期で再度の書き込み動作(リフレッシュ動作)が必要であり、消費電力を十分に低減することは困難である。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるため、長期間の記憶の保持には、磁性材料や光学材料を利用した別の記憶装置が必要となる。
【0005】
揮発性記憶装置の別の例としてはSRAM(Static Random Access Memory)がある。SRAMは、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を保持するため、リフレッシュ動作が不要であり、この点においてはDRAMより有利である。しかし、フリップフロップなどの回路を用いているため、記憶容量あたりの単価が高くなるという問題がある。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるという点については、DRAMと変わるところはない。
【0006】
不揮発性記憶装置の代表例としては、フラッシュメモリがある。フラッシュメモリは、トランジスタのゲート電極とチャネル形成領域との間にフローティングゲートを有し、当該フローティングゲートに電荷を保持させることで記憶を行うため、データの保持期間は極めて長く(半永久的)、揮発性記憶装置で必要なリフレッシュ動作が不要であるという利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、書き込みの際に生じるトンネル電流によって記憶素子を構成するゲート絶縁層が劣化するため、所定回数の書き込みによって記憶素子が機能しなくなるという問題が生じる。この問題の影響を緩和するために、例えば、各記憶素子の書き込み回数を均一化する手法が採られるが、これを実現するためには、複雑な周辺回路が必要になってしまう。そして、このような手法を採用しても、根本的な寿命の問題が解消するわけではない。つまり、フラッシュメモリは、情報の書き換え頻度が高い用途には不向きである。
【0008】
また、フローティングゲートに電荷を注入させるため、または、その電荷を除去するためには、高い電圧が必要であり、また、そのための回路も必要である。さらに、電荷の注入、または除去のためには比較的長い時間を要し、書き込みまたは消去の高速化が容易ではないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57−105889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の問題に鑑み、開示する発明の一態様では、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い、新たな構造の半導体装置を提供することを目的の一とする。また、開示する発明の一態様では、集積度を向上させた半導体装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する発明では、オフ電流の小さいトランジスタを用いて半導体装置を構成する。このようなトランジスタとして、例えば酸化物半導体を用いたトランジスタ、さらには、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタを適用することができる。酸化物半導体を用いて構成したトランジスタは、リーク電流が小さく、また、高純度化された酸化物半導体を用いることで、さらにリーク電流を低減することができるため、長期間にわたって情報を保持することが可能である。
【0012】
本発明の一態様は、第1のトランジスタと、第1のトランジスタと少なくとも一部が重畳する第2のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域と、第1のチャネル形成領域上に設けられた第1のゲート絶縁層と、第1のチャネル形成領域と重畳して第1のゲート絶縁層上に設けられた第1のゲート電極と、第1のチャネル形成領域と電気的に接続する第1のソース電極および第1のドレイン電極と、を含み、第2のトランジスタは、第2のチャネル形成領域と、第2のチャネル形成領域と電気的に接続する第2のソース電極および第2のドレイン電極と、第2のチャネル形成領域と重畳して設けられた第2のゲート電極と、第2のチャネル形成領域と、第2のゲート電極と、の間に設けられた第2のゲート絶縁層と、を含み、第2のソース電極は、第1のゲート電極とのエッチングの選択比がとれる材料で形成され、且つ、第2のソース電極の下端部の一は、第1のゲート電極の上面に接して設けられる、半導体装置である。
【0013】
また、本発明の一態様は、第1のトランジスタと、第1のトランジスタと少なくとも一部が重畳する第2のトランジスタと、容量素子とを含む複数のメモリセルを有し、第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域と、第1のチャネル形成領域上に設けられた第1のゲート絶縁層と、第1のチャネル形成領域と重畳して第1のゲート絶縁層上に設けられた第1のゲート電極と、第1のチャネル形成領域と電気的に接続する第1のソース電極および第1のドレイン電極と、を含み、第2のトランジスタは、第2のチャネル形成領域と、第2のチャネル形成領域と電気的に接続する第2のソース電極および第2のドレイン電極と、第2のチャネル形成領域と重畳して設けられた第2のゲート電極と、第2のチャネル形成領域と、第2のゲート電極と、の間に設けられた第2のゲート絶縁層と、を含み、第2のソース電極は、第1のゲート電極とのエッチングの選択比がとれる材料で形成され、且つ、第2のソース電極の下端部の一は、第1のゲート電極の上面に接して設けられ、第1のゲート電極と、第2のソース電極と、容量素子の一方の電極と、は、電気的に接続される、半導体装置である。
【0014】
また、上記の半導体装置において、第1のチャネル形成領域は、シリコンを含んで構成されるのが好ましい。
【0015】
また、上記の半導体装置において、第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を含んで構成されるのが好ましい。
【0016】
また、上記の半導体装置において、第1のゲート電極と、第2のソース電極と、のエッチングの選択比は2以上であるのが好ましい。
【0017】
なお、本明細書等において、「エッチングの選択比がとれる」とは、例えば、積層されたA層とB層をエッチングする場合に、A層のエッチングレートとB層のエッチングレートに十分な差が存在する条件を意味する。
【0018】
また、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0019】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0020】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0021】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【発明の効果】
【0022】
酸化物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、このトランジスタを用いることにより極めて長期にわたり記憶内容を保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0023】
また、本発明の一態様に係る半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、浮遊ゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、本発明の一態様に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタをオン状態かオフ状態にすることによって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。また、情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
【0024】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能であるため、これを、酸化物半導体を用いたトランジスタと組み合わせて用いることにより、半導体装置の動作(例えば、情報の読み出し動作)の高速性を十分に確保することができる。また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0025】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタであって、十分な高速動作が可能なトランジスタと、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。
【0026】
さらに、本発明の一態様では、下部のトランジスタ(酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ)のゲート電極の表面と、そのゲート電極上に接して設けられる上部のトランジスタ(酸化物半導体を用いたトランジスタ)のソース電極とを、エッチングの選択比がとれる材料を用いて形成する。これによって、上部のトランジスタのソース電極のパターンを形成する際に下部のトランジスタのゲート電極がエッチングされることがないため、該ソース電極がゲート電極を覆うためのマージンを設ける必要がない。よって、レイアウト面積を縮小することができ、集積度を向上させた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】半導体装置の断面図および平面図。
【図2】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図3】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図4】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図5】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図6】半導体装置の断面図および平面図。
【図7】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図8】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図9】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図10】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図11】半導体装置の回路図。
【図12】半導体装置の回路図。
【図13】タイミングチャート図。
【図14】半導体装置の回路図。
【図15】タイミングチャート図。
【図16】半導体装置を用いた電子機器を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する実施の形態において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0030】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置の構成およびその作製方法について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0032】
〈半導体装置の断面構成および平面構成〉
図1は、半導体装置の構成の一例である。図1(A)には、半導体装置の断面を、図1(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図1(A)は、図1(B)のA1−A2およびB1−B2における断面に相当する。図1(A)および図1(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有するものである。ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料とは異なる材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、インジウムリン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0033】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するために酸化物半導体のようなオフ電流を十分に低減することが可能な半導体材料をトランジスタ162に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0034】
図1におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極110と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0035】
トランジスタ160の金属化合物領域124の一部には、電極126が接続されている。ここで、電極126は、トランジスタ160のソース電極やドレイン電極として機能する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106が設けられており、トランジスタ160上に絶縁層128が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図1に示すようにトランジスタ160がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ160の特性を重視する場合には、ゲート電極110の側面にサイドウォール絶縁層を設け、そのサイドウォール絶縁層と重畳する領域に形成された不純物濃度が異なる領域を含めて不純物領域120を設けても良い。
【0036】
図1におけるトランジスタ162は、絶縁層128上に設けられたソース電極(またはドレイン電極)142a、およびドレイン電極(またはソース電極)142bと、ソース電極142aおよびドレイン電極142bと電気的に接続されている酸化物半導体層144と、ソース電極142a、ドレイン電極142bおよび酸化物半導体層144を覆うゲート絶縁層146と、ゲート絶縁層146上に酸化物半導体層144と重畳するように設けられたゲート電極148aと、を有する。
【0037】
トランジスタ162において、ソース電極142aの下端部の一(ここでは、ソース電極142aの底面の一辺またはその一辺の一領域)は、トランジスタ160のゲート電極110の上面に接して設けられる。例えば、図1では、B1−B2における断面方向で、ソース電極142aの下端部の一が、ゲート電極110の上面に接して設けられている。なお、本発明の実施の形態は、図1に限られず、例えば、A1−A2における断面方向で、ソース電極142aの下端部の一が、ゲート電極110の上面に接して設けられてもよいし、A1−A2における断面方向およびB1−B2における断面方向のそれぞれで、ソース電極142aの下端部がゲート電極110の上面に接して設けられていてもよい。
【0038】
トランジスタ162において、下部のトランジスタ160のゲート電極110上に接して設けられたソース電極142aは、ゲート電極110とエッチングの選択比がとれる材料で形成されている。ソース電極142aとゲート電極110とは、エッチングの選択比が高い材料で形成されている、と言い換えることもできる。より具体的には、ソース電極142aのエッチングレートは、ゲート電極110のエッチングレートの2倍以上とするのが好ましく、3倍以上とするのがより好ましい。すなわち、ソース電極142aとゲート電極110とのエッチング選択比は2以上が好ましく、3以上とするのがより好ましい。このような材料を選択することで、ソース電極142aのパターンずれを考慮してソース電極142aがゲート電極110を覆うためのマージンを設ける必要がないため、レイアウト面積を縮小することができる。
【0039】
例えば、ソース電極142aをゲート電極110とエッチングの選択比がとれる材料で形成することで、ゲート電極110の上端部と、ソース電極142aの下端部とを一致するように設計することができる。この場合、ソース電極142aのパターンずれによって、図1に示すように、ソース電極142aの下端部が、ゲート電極110の上に重畳することがあるが、ソース電極142aはゲート電極110とエッチングの選択比がとれる材料で形成されるため、ゲート電極110に影響を与えることなく、ソース電極142aのパターン形成を行うことができる。
【0040】
また、トランジスタ162において酸化物半導体層144は水素などの不純物が十分に除去されることにより、または、十分な酸素が供給されることにより、高純度化されたものであることが望ましい。具体的には、例えば、酸化物半導体層144の水素濃度は5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下とする。なお、上述の酸化物半導体層144中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定されるものである。このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層144では、ドナーやアクセプタに由来するキャリア濃度が1×1012/cm未満、望ましくは、1×1011/cm未満、より望ましくは1.45×1010/cm未満となる。このように、i型化(真性化)または実質的にi型化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ162を得ることができる。
【0041】
図1における容量素子164は、ソース電極142a、ゲート絶縁層146、および電極148b、で構成される。すなわち、ソース電極142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、電極148bは、容量素子164の他方の電極として機能することになる。
【0042】
なお、ゲート絶縁層146に加えて、酸化物半導体層144を有する構成の容量素子164としてもよい。
【0043】
本実施の形態では、トランジスタ160と、トランジスタ162とは、少なくとも一部が重畳するように設けられている。また、トランジスタ162や容量素子164が、トランジスタ160と重畳するように設けられている。例えば、容量素子164の電極148bは、トランジスタ160のゲート電極110と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような、平面レイアウトを採用することにより、高集積化が可能である。
【0044】
なお、トランジスタ162および容量素子164において、ソース電極142a、およびドレイン電極142bの端部は、テーパー形状であることが好ましい。ソース電極142a、ドレイン電極142bの端部をテーパー形状とすることにより、ゲート絶縁層146の被覆性が向上し、段切れを防止することができるためである。ここで、テーパー角は、例えば、30°以上60°以下とする。なお、テーパー角とは、テーパー形状を有する層(例えば、ソース電極142a)を、その断面(基板の表面と直交する面)に垂直な方向から観察した際に、当該層の側面と底面がなす傾斜角を示す。
【0045】
トランジスタ162および容量素子164の上には絶縁層151が設けられており、絶縁層151上には絶縁層152が設けられている。そして、ゲート絶縁層146、絶縁層151、絶縁層152などに形成された開口には、電極154が設けられ、絶縁層152上には、電極154と接続する配線156が形成される。配線156は、メモリセルの一と他のメモリセルとを電気的に接続する。なお、図1では電極126および電極154を用いて、金属化合物領域124、ドレイン電極142b、および配線156を接続しているが、開示する発明はこれに限定されない。例えば、ドレイン電極142bを直接、金属化合物領域124に接触させても良い。または、配線156を直接、ドレイン電極142bに接触させても良い。
【0046】
なお、図1において、金属化合物領域124とドレイン電極142bを接続する電極126と、ドレイン電極142bと配線156を接続する電極154とは重畳して配置されている。つまり、トランジスタ160のソース電極やドレイン電極として機能する電極126と、トランジスタ162のドレイン電極142bと、が接する領域は、トランジスタ162のドレイン電極142bと、電極154と、が接する領域と重なっている。このようなレイアウトを採用することで、高集積化を図ることができる。
【0047】
〈半導体装置の作製方法〉
次に、上記半導体装置の作製方法の一例について説明する。以下では、はじめに下部のトランジスタ160の作製方法について図2および図3を参照して説明し、その後、上部のトランジスタ162および容量素子164の作製方法について図4および図5を参照して説明する。
【0048】
〈下部のトランジスタの作製方法〉
まず、半導体材料を含む基板100を用意する(図2(A)参照)。半導体材料を含む基板100としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。ここでは、半導体材料を含む基板100として、単結晶シリコン基板を用いる場合の一例について示すものとする。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設けられた構成の基板も含むものとする。つまり、「SOI基板」が有する半導体層は、シリコン半導体層に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0049】
なお、半導体材料を含む基板100として、特に、シリコンなどの単結晶半導体基板を用いる場合には、半導体装置の読み出し動作を高速化することができるため好適である。
【0050】
基板100上には、素子分離絶縁層を形成するためのマスクとなる保護層102を形成する(図2(A)参照)。保護層102としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどを材料とする絶縁層を用いることができる。なお、この工程の前後において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板100に添加してもよい。半導体がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、リンや砒素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0051】
次に、上記の保護層102をマスクとしてエッチングを行い、保護層102に覆われていない領域(露出している領域)の、基板100の一部を除去する。これにより他の半導体領域と分離された半導体領域104が形成される(図2(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0052】
次に、半導体領域104を覆うように絶縁層を形成し、半導体領域104に重畳する領域の絶縁層を選択的に除去することで、素子分離絶縁層106を形成する(図2(C)参照)。当該絶縁層は、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどを用いて形成される。絶縁層の除去方法としては、CMP(化学的機械的研磨)などの研磨処理やエッチング処理などがあるが、そのいずれを用いても良い。なお、半導体領域104の形成後、または、素子分離絶縁層106の形成後には、上記保護層102を除去する。
【0053】
ここで、CMP処理とは、被加工物の表面を基準にし、それにならって表面を化学的・機械的な複合作用により平坦化する手法である。より具体的には、研磨ステージの上に研磨布を貼り付け、被加工物と研磨布との間にスラリー(研磨剤)を供給しながら研磨ステージと被加工物とを各々回転または揺動させて、被加工物の表面を、スラリーと被加工物表面との間での化学反応と、研磨布と被加工物との機械的研磨の作用により、被加工物の表面を研磨する方法である。
【0054】
なお、素子分離絶縁層106の形成方法として、絶縁層を選択的に除去する方法の他、酸素を打ち込むことにより絶縁性の領域を形成する方法などを用いることもできる。
【0055】
次に、半導体領域104の表面に絶縁層を形成し、当該絶縁層上に導電材料を含む層を形成する。
【0056】
絶縁層は後のゲート絶縁層となるものであり、例えば、半導体領域104表面の熱処理(熱酸化処理や熱窒化処理など)によって形成することができる。熱処理に代えて、高密度プラズマ処理を適用しても良い。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのうちいずれかの混合ガスを用いて行うことができる。もちろん、CVD法やスパッタリング法等を用いて絶縁層を形成しても良い。当該絶縁層は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート等を含む単層構造または積層構造とすることが望ましい。また、絶縁層の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0057】
導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良く、これらの層を積層させてもよい。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、例えば、絶縁層と接する層から順に、窒化タンタル層、タングステン層、窒化タンタル層の3層を積層させた構成とする。
【0058】
その後、絶縁層および導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁層108、ゲート電極110を形成する(図2(C)参照)。
【0059】
次に、半導体領域104にリン(P)やヒ素(As)などを添加して、チャネル形成領域116および不純物領域120を形成する(図2(D)参照)。なお、ここではn型トランジスタを形成するためにリンやヒ素を添加しているが、p型トランジスタを形成する場合には、硼素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。ここで、添加する不純物の濃度は適宜設定することができるが、半導体素子が高度に微細化される場合には、その濃度を高くすることが望ましい。
【0060】
なお、ゲート電極110の周囲にサイドウォール絶縁層を形成して、不純物元素が異なる濃度で添加された不純物領域を形成しても良い。
【0061】
次に、ゲート電極110、不純物領域120等を覆うように金属層122を形成する(図3(A)参照)。当該金属層122は、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いて形成することができる。金属層122は、半導体領域104を構成する半導体材料と反応することによって低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成することが望ましい。このような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、コバルト、白金等がある。
【0062】
次に、熱処理を施して、上記金属層122と半導体材料とを反応させる。これにより、不純物領域120に接する金属化合物領域124が形成される(図3(A)参照)。なお、ゲート電極110として多結晶シリコンなどを用いる場合には、ゲート電極110の金属層122と接触する部分にも、金属化合物領域が形成されることになる。
【0063】
上記熱処理としては、例えば、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることができる。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反応の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理を実現できる方法を用いることが望ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成されるものであり、十分に導電性が高められた領域である。当該金属化合物領域を形成することで、電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。なお、金属化合物領域124を形成した後には、金属層122は除去する。
【0064】
次に、金属化合物領域124の一部と接する領域に、電極126を形成する(図3(B)参照)。電極126は、例えば、導電材料を含む層を形成した後に、当該層を選択的にエッチングすることで形成される。導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。
【0065】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁層128を形成する(図3(C)参照)。絶縁層128は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。特に、絶縁層128に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁層128には、これらの材料を用いた多孔性の絶縁層を適用しても良い。多孔性の絶縁層では、密度の高い絶縁層と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する容量をさらに低減することが可能である。また、絶縁層128は、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、絶縁層128の単層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。2層以上の積層構造としても良い。
【0066】
なお、電極126は、絶縁層128を形成した後に、絶縁層128に金属化合物領域124にまで達する開口を形成し、当該開口を埋め込むように形成することも可能である。
【0067】
この場合、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは金属化合物領域124)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0068】
以上により、半導体材料を含む基板100を用いたトランジスタ160が形成される(図3(C)参照)。このようなトランジスタ160は、高速動作が可能であるという特徴を有する。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
【0069】
その後、トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、絶縁層128にCMP処理を施して、ゲート電極110および電極126の上面を露出させる(図3(D)参照)。ゲート電極110および電極126の上面を露出させる処理としては、CMP処理の他にエッチング処理などを適用することも可能であるが、トランジスタ162の特性を向上させるために、絶縁層128の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。
【0070】
なお、上記の各工程の前後には、さらに電極や配線、半導体層、絶縁層などを形成する工程を含んでいても良い。例えば、配線の構造として、絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用して、高度に集積化した半導体装置を実現することも可能である。
【0071】
〈上部のトランジスタの作製方法〉
ゲート電極110、電極126、絶縁層128などの上に酸化物半導体層を形成し、該酸化物半導体層を選択的にエッチングして、酸化物半導体層144を形成する(図4(A)参照)。なお、絶縁層128の上には、下地として機能する絶縁層を設けても良い。当該絶縁層は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。
【0072】
酸化物半導体層は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系や、In−O系、Sn−O系、Zn−O系などを用いて形成することができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiOを含ませてもよい。
【0073】
例えば、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料は、無電界時の抵抗が十分に高くオフ電流を十分に小さくすることが可能であり、また、電界効果移動度も高いため、半導体装置に用いる半導体材料としては好適である。なお、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体材料という意味であり、その組成比は問わない。
【0074】
また、酸化物半導体層は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。なお、上述の組成は結晶構造から導き出されるものであり、あくまでも一例に過ぎないことを付記する。
【0075】
また、酸化物半導体層をスパッタ法で作製するためのターゲットとしては、In:Ga:Zn=1:x:y(xは0以上、yは0.5以上5以下)の組成比で表されるものを用いるのが好適である。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[atom比](x=1、y=1)、(すなわち、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比])の組成比を有するターゲットなどを用いることができる。また、In:Ga:Zn=1:1:0.5[atom比](x=1、y=0.5)の組成比を有するターゲットや、In:Ga:Zn=1:1:2[atom比](x=1、y=2)の組成比を有するターゲットや、In:Ga:Zn=1:0:1[atom比](x=0、y=1)の組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0076】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0077】
本実施の形態では、非晶質構造の酸化物半導体層を、In−Ga−Zn−O系のターゲットを用いるスパッタ法により形成することとする。
【0078】
ターゲット中の金属酸化物の相対密度は80%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99.9%以上である。相対密度の高いターゲットを用いることにより、緻密な構造の酸化物半導体層を形成することが可能である。
【0079】
酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、濃度1ppm以下(望ましくは濃度10ppb以下)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適である。
【0080】
酸化物半導体層の形成の際には、例えば、減圧状態に保持された処理室内に被処理物を保持し、被処理物の温度が100℃以上550℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下となるように被処理物を熱する。または、酸化物半導体層の形成の際の被処理物の温度は、室温(25℃±10℃)としてもよい。そして、処理室内の水分を除去しつつ、水素や水などが除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体層を形成する。被処理物を熱しながら酸化物半導体層を形成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物を低減することができる。また、スパッタによる損傷を軽減することができる。処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどを用いることができる。また、ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。クライオポンプなどを用いて排気することで、処理室から水素や水などを除去することができるため、酸化物半導体層中の不純物濃度を低減できる。
【0081】
酸化物半導体層の形成条件としては、例えば、被処理物とターゲットとの間の距離が170mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素100%)雰囲気、またはアルゴン(アルゴン100%)雰囲気、または酸素とアルゴンの混合雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみ(成膜時に形成される粉状の物質など)を低減でき、膜厚分布も均一となるため好ましい。酸化物半導体層の厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下、より好ましくは1nm以上10nm以下とする。このような厚さの酸化物半導体層を用いることで、微細化に伴う短チャネル効果を抑制することが可能である。ただし、適用する酸化物半導体材料や、半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途などに応じて選択することもできる。
【0082】
なお、酸化物半導体層をスパッタ法により形成する前には、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、形成表面(例えば絶縁層128の表面)の付着物を除去するのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタは、スパッタターゲットにイオンを衝突させる方法を指すが、逆に、基板の処理表面にイオンを衝突させることによってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、被処理物付近にプラズマを生成する方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などによる雰囲気を適用してもよい。
【0083】
その後、酸化物半導体層に対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望ましい。この第1の熱処理によって酸化物半導体層中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することができる。第1の熱処理の温度は、例えば、300℃以上550℃未満、または400℃以上500℃以下とする。
【0084】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体層は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0085】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0086】
例えば、第1の熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0087】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0088】
ところで、上述の熱処理(第1の熱処理)には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理や、脱水素化処理は、酸化物半導体層の形成後やゲート絶縁層の形成後、ゲート電極の形成後、などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0089】
酸化物半導体層のエッチングは、上記熱処理の前、または上記熱処理の後のいずれにおいて行っても良い。また、素子の微細化という観点からはドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0090】
次に、ゲート電極110、電極126、絶縁層128、酸化物半導体層144などの上に導電層を形成し、該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極142aおよびドレイン電極142bを形成する(図4(B)参照)。
【0091】
導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等であって、ゲート電極110とエッチングの選択比がとれる材料を用いることができる。または、ゲート電極110とエッチングの選択比がとれる限りにおいて、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。なお、ソース電極142aおよびドレイン電極142bを形成するための導電層とゲート電極110とのエッチング選択比は2以上が好ましく、3以上とするのがより好ましい。
【0092】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。なお、導電層を積層構造とする場合には、少なくともゲート電極110と接する層において、ゲート電極110(ゲート電極110が積層でなる場合は、その最表面の層)とのエッチングの選択比がとれればよい。本実施の形態においては、ソース電極142aおよびドレイン電極142bを形成するための導電層として、例えば、タングステン層を用いるものとする。
【0093】
なお、ゲート電極110とエッチングの選択比がとれる限りにおいて、導電層は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In−SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In−ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0094】
導電層のエッチングは、形成されるソース電極142a、およびドレイン電極142bの端部が、テーパー形状となるように行うことが好ましい。ここで、テーパー角は、例えば、30°以上60°以下であることが好ましい。ソース電極142aおよびドレイン電極142bの端部をテーパー形状となるようにエッチングすることにより、後に形成されるゲート絶縁層146の被覆性を向上し、段切れを防止することができる。
【0095】
上部のトランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極142aおよびドレイン電極142bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を、微細化することが可能であり、回路の動作速度を高めることが可能である。また、微細化によって、半導体装置の消費電力を低減することも可能である。
【0096】
ここで、ソース電極142aおよびドレイン電極142bを形成するための導電層は、ゲート電極110とのエッチングの選択比がとれる材料を用いて形成されている。例えば、本実施の形態においては、ソース電極142aおよびドレイン電極142bを形成するための導電層としてタングステン層を用い、ゲート電極110において該導電層と接する層には窒化タンタル層を用いているため、そのエッチングの選択比は2以上である。したがって、ソース電極142aおよびドレイン電極142bを形成する際、パターンにずれが生じたとしても、ゲート電極110がエッチングされるのを防ぐことができるため、ゲート電極110とソース電極142aの重なりのマージンを考慮してレイアウトを設計する必要がなく、集積度を向上させることができる。
【0097】
次に、ソース電極142a、ドレイン電極142b、および酸化物半導体層144を覆うゲート絶縁層146を形成し、その後、ゲート絶縁層146上において酸化物半導体層144と重畳する領域にゲート電極148aを、また、ソース電極142aと重畳する領域に電極148bを形成する(図4(C)参照)。
【0098】
ゲート絶縁層146は、CVD法やスパッタ法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層146は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート、酸化ガリウムなどを含むように形成するのが好適である。ゲート絶縁層146は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。また、その厚さは特に限定されないが、半導体装置を微細化する場合には、トランジスタの動作を確保するために薄くするのが望ましい。例えば、酸化シリコンを用いる場合には、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0099】
上述のように、ゲート絶縁層を薄くすると、トンネル効果などに起因するゲートリークが問題となる。ゲートリークの問題を解消するには、ゲート絶縁層146に、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート、などの高誘電率(high−k)材料を用いると良い。high−k材料をゲート絶縁層146に用いることで、電気的特性を確保しつつ、ゲートリークを抑制するために膜厚を大きくすることが可能になる。なお、high−k材料を含む膜と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムなどのいずれかを含む膜との積層構造としてもよい。
【0100】
ゲート絶縁層146の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱処理を行うのが望ましい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上350℃以下である。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、ゲート絶縁層146が酸素を含む場合、脱水化または脱水素化処理後の酸化物半導体層144に酸素を供給し、該酸化物半導体層144の酸素欠損を補填して、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層を形成することもできる。
【0101】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層146の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、ゲート電極の形成後に第2の熱処理を行っても良い。
【0102】
上述のように、第1の熱処理及び第2の熱処理を適用することで、酸化物半導体層144を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。
【0103】
ゲート電極148aおよび電極148bは、ゲート絶縁層146上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。ゲート電極148aおよび電極148bとなる導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。詳細は、ソース電極142aおよびドレイン電極142bの場合と同様であり、これらの記載を参酌することができる。
【0104】
容量素子用の電極となる電極148bは、トランジスタ160のゲート電極110の少なくとも一部と重畳するように形成するのが好ましい。このような構成を適用することで、回路面積を十分に縮小することができるためである。
【0105】
次に、ゲート絶縁層146、ゲート電極148aおよび電極148b上に、絶縁層151および絶縁層152を形成する(図5(A)参照)。絶縁層151および絶縁層152は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0106】
なお、絶縁層151や絶縁層152には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁層151や絶縁層152の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。
【0107】
なお、本実施の形態では、絶縁層151と絶縁層152の積層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されない。トランジスタ162および容量素子164上の絶縁層は、1層としても良いし、3層以上の積層構造としても良い。また、絶縁層を設けない構成とすることも可能である。
【0108】
なお、上記絶縁層152は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。表面が平坦になるように絶縁層152を形成することで、半導体装置を微細化した場合などにおいても、絶縁層152上に、電極や配線などを好適に形成することができるためである。なお、絶縁層152の平坦化は、CMP処理などの方法を用いて行うことができる。
【0109】
次に、ゲート絶縁層146、絶縁層151、絶縁層152に、ドレイン電極142bにまで達する開口153を形成する(図5(B)参照)。当該開口153の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0110】
ここで、上記の開口153は、電極126と重畳する領域に形成することが望ましい。このような領域に開口153を形成することで、電極のコンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制することができる。つまり、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0111】
その後、上記開口153に電極154を形成し、絶縁層152上に電極154に接する配線156を形成する(図5(C)参照)。
【0112】
電極154は、例えば、開口153を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電層を形成した後、エッチング処理やCMP処理といった方法を用いて、上記導電層の一部を除去することにより形成することができる。
【0113】
より具体的には、例えば、開口153を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口153に埋め込むようにタングステン膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここではドレイン電極142b)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0114】
なお、上記導電層の一部を除去して電極154を形成する際には、その表面が平坦になるように加工することが望ましい。例えば、開口153を含む領域にチタン膜や窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口153に埋め込むようにタングステン膜を形成する場合には、その後のCMP処理によって、不要なタングステン、チタン、窒化チタンなどを除去すると共に、その表面の平坦性を向上させることができる。このように、電極154を含む表面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0115】
配線156は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をパターニングすることによって形成される。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極142aまたはドレイン電極142bなどと同様である。
【0116】
以上により、高純度化された酸化物半導体層144を用いたトランジスタ162、および容量素子164が完成する(図5(C)参照)。
【0117】
本実施の形態において示すトランジスタ162では、酸化物半導体層144が高純度化されているため、その水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下である。また、酸化物半導体層144のキャリア密度は、一般的なシリコンウェハにおけるキャリア密度(1×1014/cm程度)と比較して、十分に小さい値(例えば、1×1012/cm未満、より好ましくは、1.45×1010/cm未満)をとる。そして、これにより、オフ電流が十分に小さくなる。
【0118】
このように高純度化され、真性化された酸化物半導体層144を用いることで、トランジスタのオフ電流を十分に低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0119】
さらに、酸化物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV〜3.5eVと大きく熱励起キャリアが極めて少ないこともあり、酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、高温環境下でも特性の劣化を起こさず、且つオフ電流を極めて低く保つことが可能である。
【0120】
また、本実施の形態で示す半導体装置は、下部のトランジスタ160のゲート電極110と、そのゲート電極110上に接して設けられる上部のトランジスタ162のソース電極142aとを、エッチングの選択比がとれる材料を用いて形成している。したがって、ソース電極142aのパターンを形成する際にゲート電極110がエッチングされることがないため、ソース電極142aのパターンずれを考慮してソース電極142aがゲート電極110を覆うためのマージンを設ける必要がないため、レイアウト面積を縮小することができる。よって、集積度を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0121】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0122】
(実施の形態2)
本実施の形態では、開示する発明の別の一態様に係る半導体装置の構成およびその作製方法について、図6乃至図10を参照して説明する。
【0123】
〈半導体装置の断面構成および平面構成〉
図6は、本実施の形態にかかる半導体装置の構成の一例である。図6(A)には、半導体装置の断面を、図6(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図6(A)は、図6(B)のE1−E2およびF1−F2における断面に相当する。図6(A)および図6(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ560を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ562を有するものである。ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料とは異なる材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の材料(シリコン)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の半導体材料(例えば、単結晶シリコン)を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0124】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するために酸化物半導体のようなオフ電流を十分に低減することが可能な材料をトランジスタ562に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0125】
図6におけるトランジスタ560は、ベース基板500上の半導体層中に設けられたチャネル形成領域526と、チャネル形成領域526を挟むように設けられた不純物領域528と、チャネル形成領域526上に設けられたゲート絶縁層522aと、ゲート絶縁層522a上に設けられたゲート電極524aと、を有する。つまり、図6におけるトランジスタ560と、図1におけるトランジスタ160との相違の一は、トランジスタのチャネル形成領域が半導体層中に形成されるか否かにある。半導体基板を用いるか、SOI基板を用いるか、の相違ということもできる。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。
【0126】
トランジスタ560の不純物領域528の一部には、電極530が接続されている。ここで、電極530は、トランジスタ560のソース電極やドレイン電極として機能する。また、トランジスタ560を覆うように絶縁層534が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図6に示すようにトランジスタ560がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ560の特性を重視する場合には、ゲート電極524aの側面にサイドウォール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域528を設けても良い。
【0127】
また、図6における容量素子564は、図1における容量素子164と同様である。すなわち、図6における容量素子564は、ソース電極542a、酸化物半導体層544、ゲート絶縁層546、電極548b、で構成される。ソース電極542aは、容量素子564の一方の電極として機能し、電極548bは、容量素子564の他方の電極として機能することになる。その他の詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
【0128】
図6におけるトランジスタ562と、図1におけるトランジスタ162との相違の一は、ソース電極542aおよびドレイン電極542bと、酸化物半導体層544と、の積層順である。すなわち、図6におけるトランジスタ562は、ソース電極542aおよびドレイン電極542bと、ソース電極542aおよびドレイン電極542b上に設けられた酸化物半導体層544と、ソース電極542a、ドレイン電極542bおよび酸化物半導体層544を覆うゲート絶縁層546と、酸化物半導体層544の一部を重畳してゲート絶縁層546上に設けられたゲート電極548aと、を有する。
【0129】
また、酸化物半導体層544は、ゲート電極548aと重畳するチャネル形成領域と、該チャネル形成領域と接するオフセット領域と、を有する点で、図6におけるトランジスタ562と、図1におけるトランジスタ162とは相違する。酸化物半導体層544において、オフセット領域とは、ソース電極542a、ドレイン電極542bおよびゲート電極548aのいずれとも重畳しない領域である。
【0130】
なお、酸化物半導体層544は水素などの不純物が十分に除去されることにより、または、十分な酸素が供給されることにより、高純度化されたものであることが望ましい。
【0131】
図1に示す半導体装置と同様に、図6に示す半導体装置は、トランジスタ562および容量素子564の上には絶縁層551が設けられており、絶縁層551上には絶縁層552が設けられている。そして、ゲート絶縁層546、絶縁層551、絶縁層552などに形成された開口には、電極554が設けられ、絶縁層552上には、電極554と接続する配線556が形成される。配線556は、メモリセルの一と他のメモリセルとを電気的に接続する。なお、図6では電極530および電極554を用いて、不純物領域528、ドレイン電極542b、および配線556を接続しているが、開示する発明はこれに限定されない。
【0132】
なお、図6において、不純物領域528とドレイン電極542bを接続する電極530と、ドレイン電極542bと配線556を接続する電極554とは重畳して配置されている。つまり、トランジスタ560のソース電極やドレイン電極として機能する電極530と、トランジスタ562のドレイン電極542bと、が接する領域は、トランジスタ562のドレイン電極542bと、電極554と、が接する領域と重なっている。このようなレイアウトを採用することで、高集積化を図ることができる。
【0133】
〈SOI基板の作製方法〉
次に、上記半導体装置の作製に用いられるSOI基板の作製方法の一例について、図7を参照して説明する。
【0134】
まず、ベース基板500を準備する(図7(A)参照)。ベース基板500としては、絶縁体でなる基板を用いることができる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。また、窒化シリコンと酸化アルミニウムを主成分とした熱膨張係数がシリコンに近いセラミック基板を用いてもよい。
【0135】
また、ベース基板500として単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板などの半導体基板を用いても良い。ベース基板500として半導体基板を用いる場合には、ガラス基板などを用いる場合と比較して熱処理の温度条件が緩和するため、良質なSOI基板を得ることが容易になる。ここで、半導体基板としては、太陽電池級シリコン(SOG−Si:Solar Grade Silicon)基板などを用いても良い。また、多結晶半導体基板を用いても良い。太陽電池級シリコンや、多結晶半導体基板などを用いる場合には、単結晶シリコン基板などを用いる場合と比較して、製造コストを抑制することができる。
【0136】
本実施の形態では、ベース基板500としてガラス基板を用いる場合について説明する。ベース基板500として大面積化が可能で安価なガラス基板を用いることにより、低コスト化を図ることができる。
【0137】
上記ベース基板500に関しては、その表面をあらかじめ洗浄しておくことが好ましい。具体的には、ベース基板500に対して、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)、FPM(フッ酸、過酸化水素水、純水の混合液)等を用いて超音波洗浄を行う。このような洗浄処理を行うことによって、ベース基板500表面の平坦性向上や、ベース基板500表面に残存する研磨粒子の除去などが実現される。
【0138】
次に、ベース基板500の表面に、窒素含有層502(例えば、窒化シリコン膜(SiN)や窒化酸化シリコン膜(SiN)(x>y)等の窒素を含有する絶縁膜を含む層)を形成する(図7(B)参照)。窒素含有層502は、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0139】
本実施の形態において形成される窒素含有層502は、後に単結晶半導体層を貼り合わせるための層(接合層)となる。また、窒素含有層502は、ベース基板に含まれるナトリウム(Na)等の不純物が単結晶半導体層に拡散することを防ぐためのバリア層としても機能する。
【0140】
上述のように、本実施の形態では窒素含有層502を接合層として用いるため、その表面が所定の平坦性を有するように窒素含有層502を形成することが好ましい。具体的には、表面の平均面粗さ(Ra、算術平均粗さともいう)が0.5nm以下、自乗平均粗さ(RMS)0.60nm以下、より好ましくは、平均面粗さが0.35nm以下、自乗平均粗さが0.45nm以下となるように窒素含有層502を形成する。なお、上述の平均面粗さや自乗平均粗さには、例えば、10μm×10μmの領域において測定した値を用いることができる。膜厚は、10nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下の範囲とする。このように、表面の平坦性を高めておくことで、単結晶半導体層の接合不良を防止することができる。
【0141】
次に、ボンド基板を準備する。ここでは、ボンド基板として単結晶半導体基板510を用いる(図7(C)参照)。なお、ここでは、ボンド基板として単結晶のものを用いるが、ボンド基板の結晶性を単結晶に限る必要はない。
【0142】
単結晶半導体基板510としては、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、単結晶半導体基板510の形状は円形に限らず、例えば、矩形等に加工したものであっても良い。また、単結晶半導体基板510は、CZ(チョクラルスキー)法やFZ(フローティングゾーン)法を用いて作製することができる。
【0143】
単結晶半導体基板510の表面には酸化膜512を形成する(図7(D)参照)。なお、汚染物除去の観点から、酸化膜512の形成前に、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)、FPM(フッ酸、過酸化水素水、純水の混合液)等を用いて単結晶半導体基板510の表面を洗浄しておくことが好ましい。希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して洗浄してもよい。
【0144】
酸化膜512は、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を単層で、または積層させて形成することができる。上記酸化膜512の作製方法としては、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などがある。また、CVD法を用いて酸化膜512を形成する場合、良好な貼り合わせを実現するためには、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC)等の有機シランを用いて酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
【0145】
本実施の形態では、単結晶半導体基板510に熱酸化処理を行うことにより酸化膜512(ここでは、SiO膜)を形成する。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。
【0146】
例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で単結晶半導体基板510に熱酸化処理を行うことにより、塩素酸化された酸化膜512を形成することができる。この場合、酸化膜512は、塩素原子を含有する膜となる。このような塩素酸化により、外因性の不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して金属の塩化物を形成し、これを外方に除去して単結晶半導体基板510の汚染を低減させることができる。また、ベース基板500と貼り合わせた後に、ベース基板からのNa等の不純物を固定して、単結晶半導体基板510の汚染を防止できる。
【0147】
なお、酸化膜512に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。酸化膜512にはフッ素原子を含有させてもよい。単結晶半導体基板510表面をフッ素酸化する方法としては、HF溶液に浸漬させた後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行う方法や、NFを酸化性雰囲気に添加して熱酸化処理を行う方法などがある。
【0148】
次に、イオンを電界で加速して単結晶半導体基板510に照射し、添加することで、単結晶半導体基板510の所定の深さに結晶構造が損傷した脆化領域514を形成する(図7(E)参照)。
【0149】
脆化領域514が形成される領域の深さは、イオンの運動エネルギー、イオンの質量と電荷、イオンの入射角などによって調節することができる。また、脆化領域514は、イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に形成される。このため、イオンを添加する深さで、単結晶半導体基板510から分離される単結晶半導体層の厚さを調節することができる。例えば、単結晶半導体層の厚さが、10nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下程度となるように平均侵入深さを調節すれば良い。
【0150】
当該イオンの照射処理は、イオンドーピング装置やイオン注入装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表例としては、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種を被処理体に照射する非質量分離型の装置がある。当該装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで被処理体に照射することになる。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種を被処理体に照射する。
【0151】
本実施の形態では、イオンドーピング装置を用いて、水素を単結晶半導体基板510に添加する例について説明する。ソースガスとしては水素を含むガスを用いる。照射するイオンについては、Hの比率を高くすると良い。具体的には、H、H、Hの総量に対してHの割合が50%以上(より好ましくは80%以上)となるようにする。Hの割合を高めることで、イオン照射の効率を向上させることができる。
【0152】
なお、添加するイオンは水素に限定されない。ヘリウムなどのイオンを添加しても良い。また、添加するイオンは一種類に限定されず、複数種類のイオンを添加しても良い。例えば、イオンドーピング装置を用いて水素とヘリウムとを同時に照射する場合には、異なる工程で照射する場合と比較して工程数を低減することができると共に、後の単結晶半導体層の表面荒れを抑えることが可能である。
【0153】
なお、イオンドーピング装置を用いて脆化領域514を形成する場合には、重金属も同時に添加されるおそれがあるが、ハロゲン原子を含有する酸化膜512を介してイオンの照射を行うことによって、これら重金属による単結晶半導体基板510の汚染を防ぐことができる。
【0154】
次に、ベース基板500と、単結晶半導体基板510とを対向させ、窒素含有層502の表面と酸化膜512とを密着させる。これにより、ベース基板500と、単結晶半導体基板510とが貼り合わされる(図7(F)参照)。
【0155】
貼り合わせの際には、ベース基板500または単結晶半導体基板510の一箇所に、0.001N/cm以上100N/cm以下、例えば、1N/cm以上20N/cm以下の圧力を加えることが望ましい。圧力を加えて、貼り合わせ面を接近、密着させると、密着させた部分において窒素含有層502と酸化膜512の接合が生じ、当該部分を始点として自発的な接合がほぼ全面におよぶ。この接合には、ファンデルワールス力や水素結合が作用しており、常温で行うことができる。
【0156】
なお、単結晶半導体基板510とベース基板500とを貼り合わせる前には、貼り合わせに係る表面につき、表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、単結晶半導体基板510とベース基板500との界面での接合強度を向上させることができる。
【0157】
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理とドライ処理の組み合わせ、を用いることができる。また、異なるウェット処理どうしを組み合わせて用いても良いし、異なるドライ処理どうしを組み合わせて用いても良い。
【0158】
なお、貼り合わせの後には、接合強度を増加させるための熱処理を行ってもよい。この熱処理の温度は、脆化領域514における分離が生じない温度(例えば、室温以上400℃未満)とする。また、この温度範囲で加熱しながら、窒素含有層502と酸化膜512とを接合させてもよい。上記熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。なお、上記温度条件はあくまで一例に過ぎず、開示する発明の一態様がこれに限定して解釈されるものではない。
【0159】
次に、熱処理を行うことにより、単結晶半導体基板510を脆化領域において分離して、ベース基板500上に、窒素含有層502および酸化膜512を介して単結晶半導体層516を形成する(図7(G)参照)。
【0160】
なお、上記分離の際の熱処理温度は、できる限り低いものであることが望ましい。分離の際の温度が低いほど、単結晶半導体層516の表面荒れを抑制できるためである。具体的には、例えば、上記分離の際の熱処理温度は、300℃以上600℃以下とすればよく、400℃以上500℃以下とすると、より効果的である。
【0161】
なお、単結晶半導体基板510を分離した後には、単結晶半導体層516に対して、500℃以上の温度で熱処理を行い、単結晶半導体層516中に残存する水素の濃度を低減させてもよい。
【0162】
次に、単結晶半導体層516の表面にレーザー光を照射することによって、表面の平坦性を向上させ、かつ欠陥を低減させた単結晶半導体層518を形成する(図7(H)参照)。なお、レーザー光の照射処理に代えて、熱処理を行っても良い。
【0163】
なお、本実施の形態においては、単結晶半導体層516の分離に係る熱処理の直後に、レーザー光の照射処理を行っているが、本発明の一態様はこれに限定して解釈されない。単結晶半導体層516の分離に係る熱処理の後にエッチング処理を施して、単結晶半導体層516表面の欠陥が多い領域を除去してから、レーザー光の照射処理を行っても良いし、単結晶半導体層516表面の平坦性を向上させてからレーザー光の照射処理を行ってもよい。なお、上記エッチング処理としては、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いてもよい。また、本実施の形態においては、上述のようにレーザー光を照射した後、単結晶半導体層516の膜厚を小さくする薄膜化工程を行ってもよい。単結晶半導体層516の薄膜化には、ドライエッチングまたはウェットエッチングの一方、または双方を用いればよい。
【0164】
以上の工程により、良好な特性の単結晶半導体層518を有するSOI基板を得ることができる(図7(H)参照)。
【0165】
〈半導体装置の作製方法〉
〈下部のトランジスタの作製方法〉
次に、上記のSOI基板を用いた半導体装置の作製方法、特に、トランジスタ560の作製方法について、図8を参照して説明する。なお、図8は、図7に示す方法で作成したSOI基板の一部であって、図6(A)に示す下部のトランジスタに相当する断面図である。
【0166】
まず、単結晶半導体層518を島状に加工して、半導体層520を形成する(図8(A)参照)。なお、この工程の前後において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素や、p型の導電性を付与する不純物元素を半導体層に添加してもよい。半導体がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、リンや砒素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0167】
次に、半導体層520を覆うように絶縁層522を形成し、絶縁層522上に導電層524を形成する(図8(B)参照)。
【0168】
絶縁層522は、後にゲート絶縁層となるものである。絶縁層522は、例えば、半導体層520表面の熱処理(熱酸化処理や熱窒化処理など)によって形成することができる。熱処理に代えて、高密度プラズマ処理を適用しても良い。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのうちいずれかの混合ガスを用いて行うことができる。もちろん、CVD法やスパッタリング法等を用いて絶縁層を形成しても良い。当該絶縁層は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート等を含む単層構造または積層構造とすることが望ましい。また、絶縁層の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、酸化シリコンを含む絶縁層を単層で形成することとする。
【0169】
導電層524は、後にゲート電極となるものである。導電層524は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電層を形成しても良い。また、導電層524は、単層としても積層としてもよい。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、本実施の形態では、導電層524を、例えば、絶縁層と接する層から順に、窒化タンタル層、タングステン層、窒化タンタル層の3層を積層させた構成とする。
【0170】
次に、絶縁層522および導電層524を選択的にエッチングして、半導体層520の上方に、ゲート絶縁層522aおよびゲート電極524aを形成する(図8(C)参照)。当該エッチングには、ドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0171】
次に、ゲート電極524aをマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を半導体層520に添加して、チャネル形成領域526および不純物領域528を形成する(図8(D)参照)。なお、本実施の形態では、n型トランジスタを形成するために、リン(P)やヒ素(As)を添加するが、p型トランジスタを形成する場合には、ホウ素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。ここで、添加される不純物の濃度は適宜設定することができる。また、不純物元素を添加した後には、活性化のための熱処理を行う。
【0172】
なお、半導体層520がシリコンを含む材料でなる場合には、ソース領域およびドレイン領域をさらに低抵抗化するために、半導体層520の一部をシリサイド化したシリサイド領域を形成してもよい。シリサイド領域の形成は、半導体層に金属を接触させ、加熱処理(例えば、GRTA法、LRTA法、レーザー光の照射、等)により、半導体層中のシリコンと金属とを反応させて行う。シリサイドとしては、例えば、コバルトシリサイドやニッケルシリサイドを形成すれば良い。半導体層520が薄い場合には、半導体層520の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いることができる金属材料としては、コバルトやニッケルの他、チタン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、バナジウム、ネオジム、クロム、白金、パラジウム等を挙げることができる。
【0173】
次に、不純物領域528の一部と接する領域に、電極530を形成し、その後、形成された各構成を覆うように、絶縁層534を形成する(図8(E)参照)。
【0174】
電極530は、例えば、導電材料を含む層を形成した後に、当該層を選択的にエッチングすることで形成される。導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。
【0175】
なお、電極530は、絶縁層534を形成した後に、絶縁層534に不純物領域528にまで達する開口を形成し、当該開口を埋め込むように形成することも可能である。
【0176】
絶縁層534は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。特に、絶縁層534に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁層534には、これらの材料を用いた多孔性の絶縁層を適用しても良い。多孔性の絶縁層では、密度の高い絶縁層と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する容量をさらに低減することが可能である。また、絶縁層534は、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、絶縁層534の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。1層としても良いし、3層以上の積層構造としても良い。
【0177】
以上により、SOI基板を用いたトランジスタ560が形成される(図8(E)参照)。トランジスタ560は、高速動作が可能であるから、当該トランジスタを読み出しトランジスタとして用いることにより、読み出し動作を高速化することができる。また、トランジスタ560を用いて、他の論理回路(演算回路ともいう)などを構成することもできる。
【0178】
その後、絶縁層534にCMP処理を施して、ゲート電極524aおよび電極530の上面を露出させる(図示しない)。ゲート電極524aおよび電極530の上面を露出させる処理としては、CMP処理の他にエッチング処理などを適用することも可能であるが、後に形成されるトランジスタ562の特性を向上させるために、絶縁層534の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。
【0179】
なお、上記の各工程の前後には、さらに電極や配線、半導体層、絶縁層などを形成する工程を含んでいても良い。例えば、配線の構造として、絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用して、高度に集積化した半導体装置を実現することも可能である。
【0180】
〈上部のトランジスタの作製方法〉
次に、ゲート電極524a、電極530、絶縁層534などの上に導電層を形成し、該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極542aおよびドレイン電極542bを形成する(図9(A)参照)。導電層の材料は、ゲート電極524aとエッチングの選択比がとれる材料を用いることができ、導電層とゲート電極524aとのエッチング選択比は2以上が好ましく、3以上とするのがより好ましい。例えば、本実施の形態においては、ソース電極542aおよびドレイン電極542bを形成するための導電層としてタングステン層を用いるものとする。
【0181】
ソース電極542aおよびドレイン電極542bを形成するための導電層が、ゲート電極524aとのエッチングの選択比がとれる材料を用いて形成されているため、ソース電極542aおよびドレイン電極542bを形成する際、アライメントにずれが生じたとしても、ゲート電極524aがエッチングされるのを防ぐことができる。したがって、ゲート電極524aとソース電極542aの重なりのマージンを考慮してレイアウトを設計する必要がなく、集積度を向上させることができる。
【0182】
なお、上部のトランジスタ562のチャネル長(L)は、ゲート電極548aのチャネル長方向(キャリアが流れる方向)の幅によって決定される。また、オフセット領域のチャネル長方向の幅(オフセット幅)は、ソース電極542aおよびドレイン電極542bの下端部の間隔と、ゲート電極548aのチャネル長方向の幅と、によって決定される。ソース電極542aおよびドレイン電極542bを形成するための導電層の材料および成膜条件等は、先の実施の形態1で示したソース電極142aおよびドレイン電極142bを形成するための導電層の材料および成膜条件を適用することができる。
【0183】
次に、ソース電極542aおよびドレイン電極542bを覆うように酸化物半導体層を形成した後、当該酸化物半導体層を選択的にエッチングして酸化物半導体層544を形成する(図9(B)参照)。なお、酸化物半導体層544の材料および成膜条件等は、先の実施の形態1で示した酸化物半導体層144の材料および成膜条件を適用することができる。
【0184】
成膜した酸化物半導体層に対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望ましい。この第1の熱処理によって酸化物半導体層中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することができる。第1の熱処理の温度は、例えば、300℃以上550℃未満、または400℃以上500℃以下とする。
【0185】
酸化物半導体層のエッチングは、上記熱処理の前、または上記熱処理の後のいずれにおいて行っても良い。また、素子の微細化という観点からはドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0186】
次に、ソース電極542a、ドレイン電極542b、および酸化物半導体層544を覆うゲート絶縁層546を形成し、その後、ゲート絶縁層546上において酸化物半導体層544の一部と重畳する領域にゲート電極548aを、また、ソース電極542aと重畳する領域に電極548bを形成する(図9(C)参照)。なお、ゲート絶縁層546の材料および成膜条件等は、先の実施の形態1で示したゲート絶縁層146の材料および成膜条件を適用することができる。
【0187】
ゲート絶縁層546の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱処理を行うのが望ましい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上350℃以下である。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、ゲート絶縁層546が酸素を含む場合、脱水化または脱水素化処理後の酸化物半導体層544に酸素を供給し、該酸化物半導体層544の酸素欠損を補填して、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層を形成することもできる。
【0188】
上述のように、第1の熱処理及び第2の熱処理を適用することで、酸化物半導体層544を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。
【0189】
ゲート電極548aおよび電極548bは、ゲート絶縁層546上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。ゲート電極548aおよび電極548bとなる導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。詳細は、ソース電極542aおよびドレイン電極542bの場合と同様であり、これらの記載を参酌することができる。
【0190】
なお、ゲート電極548aのチャネル長方向の幅は、酸化物半導体層544において、ソース電極542aとチャネル形成領域の間と、ドレイン電極542bとチャネル形成領域との間と、の少なくとも一に、オフセット領域が形成されるように、適宜設定するものとする。なお、ソース電極側のオフセット領域の幅(Loff_S)と、ドレイン電極側のオフセット領域の幅(Loff_D)と、は必ずしも一致するものではないが、トランジスタ562と、別のトランジスタ562との間においてLoff_SとLoff_Dとの合計の値は一定となる。Loff_SまたはLoff_Dは、少なくとも0nmよりも大きい必要があり、2μm以下であるのが好ましい。オフセット領域は、トランジスタの駆動時にゲート電極の電界の影響を受けない、または受けにくい抵抗領域として機能するため、トランジスタ562のオフ電流をさらに低減する上で効果的である。なお、トランジスタ562において、オフセット領域は必ずしも設けなくともよい。または、実施の形態1に示したトランジスタ162において、オフセット領域を形成してもよい。
【0191】
なお、オフセット領域は、少なくともソース電極542a側に設けられていることが好ましい。ソース電極542a側にオフセット領域を設けることで、ソース電極542aとトランジスタ560のゲート電極524aが電気的に接続される部位(フローティングゲート部)と、トランジスタ562のゲート電極548aとの間の寄生容量を低減することができる。その結果、書き込みまたは読み出し動作時にトランジスタ562のゲート電極548aがフローティングゲート部の電位に及ぼす影響が減り、安定した動作が可能な半導体装置とすることができる。
【0192】
容量素子用の電極となる電極548bは、トランジスタ560のゲート電極524aの少なくとも一部が重畳するように形成するのが好ましい。このような構成を適用することで、回路面積を十分に縮小することができるためである。
【0193】
次に、実施の形態1で、図5(A)を用いて示した工程と同様に、ゲート絶縁層546、ゲート電極548aおよび電極548b上に、絶縁層551および絶縁層552を形成する(図10(A)参照)。
【0194】
次に、ゲート絶縁層546、絶縁層551、絶縁層552に、ドレイン電極542bにまで達する開口553を形成する(図10(B)参照)。当該開口553の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0195】
ここで、上記の開口553は、電極530と重畳する領域に形成することが望ましい。このような領域に開口553を形成することで、電極のコンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制することができる。つまり、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0196】
その後、実施の形態1で、図5(C)を用いて示した工程と同様に、上記開口553に電極554を形成し、絶縁層552上に電極554に接する配線556を形成する(図10(C)参照)。
【0197】
以上により、高純度化された酸化物半導体層544を用いたトランジスタ562、および容量素子564が完成する(図10(C)参照)。
【0198】
本実施の形態において示すトランジスタ562では、酸化物半導体層544が高純度化されているため、その水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下である。また、酸化物半導体層544のキャリア密度は、一般的なシリコンウェハにおけるキャリア密度(1×1014/cm程度)と比較して、十分に小さい値(例えば、1×1012/cm未満、より好ましくは、1.45×1010/cm未満)をとる。そして、これにより、オフ電流が十分に小さくなる。
【0199】
このように高純度化され、真性化された酸化物半導体層544を用いることで、トランジスタのオフ電流を十分に低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0200】
さらに、酸化物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV〜3.5eVと大きく熱励起キャリアが極めて少ないこともあり、酸化物半導体を用いたトランジスタ562は、高温環境下でも特性の劣化を起こさず、且つオフ電流を極めて低く保つことが可能である。特に、トランジスタ562の酸化物半導体層544においてオフセット領域を設けることは、トランジスタ562のオフ電流をさらに低減する上で効果的である。
【0201】
また、本実施の形態で示す半導体装置は、下部のトランジスタ560のゲート電極524aと、そのゲート電極524a上に接して設けられる上部のトランジスタ562のソース電極542aとを、エッチングの選択比がとれる材料を用いて形成している。したがって、ソース電極542aのパターンを形成する際にゲート電極524aがエッチングされることがないため、ソース電極542aのパターンずれを考慮してソース電極542aがゲート電極524aを覆うためのマージンを設ける必要がないため、レイアウト面積を縮小することができる。よって、集積度を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0202】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0203】
(実施の形態3)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の回路構成およびその動作について、図11を参照して説明する。また、図11に示す回路図においては、図1に示す半導体装置の符号を参照して説明する。なお、回路図においては、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを示すために、OSの符号を併せて付す場合がある。
【0204】
図11(A−1)に示す半導体装置において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子164の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0205】
ここで、トランジスタ162には、例えば、上述の酸化物半導体を用いたトランジスタが適用される。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ160のゲート電極の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。なお、トランジスタ162に代えて、上述のトランジスタ562を適用可能であることはいうまでもない。
【0206】
なお、トランジスタ160については特に限定されない。情報の読み出し速度を向上させるという観点からは、例えば、単結晶シリコンを用いたトランジスタなど、スイッチング速度の高いトランジスタを適用するのが好適である。
【0207】
また、図11(B)に示すように、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0208】
図11(A−1)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0209】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位を与える電荷(以下、低電位を与える電荷を電荷Q、高電位を与える電荷を電荷Qという)のいずれかが第3の配線を通じて与えられるものとする。なお、異なる三つまたはそれ以上の電位を与える電荷を適用して、記憶容量を向上させても良い。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0210】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ160のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0211】
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にQが与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160のゲート電極にQが与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Qが与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Qが与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0212】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合には、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように、所定のメモリセルの情報を読み出し、それ以外のメモリセルの情報を読み出さない場合には、読み出しの対象ではないメモリセルの第5の配線に対して、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0213】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ160のゲート電極および容量素子164に与えられる。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極は、新たな情報に係る電荷が与えられた状態となる。
【0214】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされる高電圧を用いてのフローティングゲートからの電荷の引き抜きが不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
【0215】
なお、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極は、トランジスタ160のゲート電極と電気的に接続されることにより、不揮発性メモリ素子として用いられるフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。このため、図中、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極とトランジスタ160のゲート電極が電気的に接続される部位をフローティングゲート部FGと呼ぶ場合がある。トランジスタ162がオフの場合、当該フローティングゲート部FGは絶縁体中に埋設されたと見ることができ、フローティングゲート部FGには電荷が保持される。酸化物半導体を用いたトランジスタ162のオフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジスタの10万分の1以下であるため、トランジスタ162のリークによる、フローティングゲート部FGに蓄積される電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導体を用いたトランジスタ162により、電力の供給が無くても情報の保持が可能な不揮発性の記憶装置を実現することが可能である。
【0216】
例えば、トランジスタ162の室温(25℃)でのオフ電流が10zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下であり、容量素子164の容量値が10fF程度である場合には、少なくとも10秒以上のデータ保持が可能である。なお、当該保持時間が、トランジスタ特性や容量値によって変動することはいうまでもない。
【0217】
また、この場合、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて指摘されているゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化という問題が存在しない。つまり、従来問題とされていた、電子をフローティングゲートに注入する際のゲート絶縁膜の劣化という問題を解消することができる。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味するものである。また、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて書き込みや消去の際に必要であった高電圧も不要である。
【0218】
図11(A−1)に示す半導体装置は、当該半導体装置を構成するトランジスタなどの要素が抵抗および容量を含むものとして、図11(A−2)のように考えることが可能である。つまり、図11(A−2)では、トランジスタ160および容量素子164が、それぞれ、抵抗および容量を含んで構成されると考えられる。R1およびC1は、それぞれ、容量素子164の抵抗値および容量値であり、抵抗値R1は、容量素子164を構成する絶縁層による抵抗値に相当する。また、R2およびC2は、それぞれ、トランジスタ160の抵抗値および容量値であり、抵抗値R2はトランジスタ160がオン状態の時のゲート絶縁層による抵抗値に相当し、容量値C2はいわゆるゲート容量(ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間に形成される容量、及び、ゲート電極とチャネル形成領域との間に形成される容量)の容量値に相当する。
【0219】
トランジスタ162がオフ状態にある場合のソース電極とドレイン電極の間の抵抗値(実効抵抗とも呼ぶ)をROSとすると、トランジスタ162のゲートリークが十分に小さい条件において、R1およびR2が、R1≧ROS、R2≧ROSを満たす場合には、電荷の保持期間(情報の保持期間ということもできる)は、主としてトランジスタ162のオフ電流によって決定されることになる。
【0220】
逆に、当該条件を満たさない場合には、トランジスタ162のオフ電流が十分に小さくとも、保持期間を十分に確保することが困難になる。トランジスタ162のオフ電流以外のリーク電流(例えば、トランジスタ160のソース電極とゲート電極の間において生じるリーク電流等)が大きいためである。このことから、本実施の形態において開示する半導体装置は、上述の関係を満たすものであることが望ましいといえる。
【0221】
一方で、C1とC2は、C1≧C2の関係を満たすことが望ましい。C1を大きくすることで、第5の配線によってフローティングゲート部FGの電位を制御する際に、第5の配線の電位を効率よくフローティングゲート部FGに与えることができるようになり、第5の配線に与える電位間(例えば、読み出しの電位と、非読み出しの電位)の電位差を低く抑えることができるためである。
【0222】
上述の関係を満たすことで、より好適な半導体装置を実現することが可能である。なお、R1およびR2は、トランジスタ160のゲート絶縁層や容量素子164の絶縁層によって決まる。C1およびC2についても同様である。よって、ゲート絶縁層の材料や厚さなどを適宜設定し、上述の関係を満たすようにすることが望ましい。
【0223】
本実施の形態で示す半導体装置においては、フローティングゲート部FGが、フラッシュメモリ等のフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用をするが、本実施の形態のフローティングゲート部FGは、フラッシュメモリ等のフローティングゲートと本質的に異なる特徴を有する。フラッシュメモリでは、コントロールゲートに印加される電圧が高いため、その電位の影響が、隣接するセルのフローティングゲートにおよぶことを防ぐために、セルとセルとの間隔をある程度保つ必要が生じる。このことは、半導体装置の高集積化を阻害する要因の一つである。そして、当該要因は、高電界をかけてトンネル電流を発生させるというフラッシュメモリの根本的な原理に起因するものである。
【0224】
一方、本実施の形態に係る半導体装置は、酸化物半導体を用いたトランジスタのスイッチングによって動作し、上述のようなトンネル電流による電荷注入の原理を用いない。すなわち、フラッシュメモリのような、電荷を注入するための高電界が不要である。これにより、隣接セルに対する、コントロールゲートによる高電界の影響を考慮する必要がないため、高集積化が容易になる。
【0225】
また、高電界が不要であり、大型の周辺回路(昇圧回路など)が不要である点も、フラッシュメモリに対するアドバンテージである。例えば、本実施の形態に係るメモリセルに印加される電圧(メモリセルの各端子に同時に印加される電位の最大のものと最小のものの差)の最大値は、2値(1ビット)の情報を書き込む場合、一つのメモリセルにおいて、5V以下、好ましくは3V以下とすることができる。
【0226】
容量素子164を構成する絶縁層の比誘電率εr1と、トランジスタ160を構成する絶縁層の比誘電率εr2とを異ならせる場合には、容量素子164を構成する絶縁層の面積S1と、トランジスタ160においてゲート容量を構成する絶縁層の面積S2とが、2・S2≧S1(望ましくはS2≧S1)を満たしつつ、C1≧C2を実現することが容易である。すなわち、容量素子164を構成する絶縁層の面積を小さくしつつ、C1≧C2を実現することが容易である。具体的には、例えば、容量素子164を構成する絶縁層においては、酸化ハフニウムなどのhigh−k材料でなる膜、または酸化ハフニウムなどのhigh−k材料でなる膜と酸化物半導体でなる膜との積層構造を採用してεr1を10以上、好ましくは15以上とし、ゲート容量を構成する絶縁層においては、酸化シリコンを採用して、εr2=3〜4とすることができる。
【0227】
このような構成を併せて用いることで、開示する発明に係る半導体装置の、より一層の高集積化が可能である。
【0228】
なお、半導体装置の記憶容量を大きくするためには、高集積化以外に、多値化の手法を採ることもできる。例えば、メモリセルの一に3段階以上の情報を書き込む構成とすることで、2段階の情報を書き込む場合と比較して記憶容量を増大させることができる。例えば、上述のような、低電位を与える電荷Q、高電位を与える電荷Qに加え、他の電位を与える電荷Qをトランジスタ160のゲート電極に与えることで、多値化を実現することができる。この場合、F値(セル面積の最小加工寸法比)が十分に小さくならない回路構成を採用しても十分な記憶容量を確保することができる。
【0229】
なお、上記説明は、電子を多数キャリアとするn型トランジスタ(nチャネル型トランジスタ)を用いる場合についてのものであるが、n型トランジスタに代えて、正孔を多数キャリアとするp型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。
【0230】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置は高集積化に向いているが、開示する発明の一態様に係る半導体装置の配線の共通化、コンタクト領域の縮小などにより、さらに集積度を高めた半導体装置を提供することが可能である。
【0231】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0232】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態において説明した半導体装置の応用例の一について説明する。具体的には、先の実施の形態において説明した半導体装置をマトリクス状に配列した半導体装置の一例について説明する。
【0233】
図12に(m×n)ビットの記憶容量を有する半導体装置の回路図の一例を示す。
【0234】
本発明の一態様に係る半導体装置は、m本(mは2以上の整数)の信号線Sと、m本のワード線WLと、n本(nは2以上の整数)のビット線BLと、k本(kはn未満の自然数)のソース線SLと、メモリセル1100が縦m個(行)×横n個(列)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイと、第1の駆動回路1111、第2の駆動回路1112、第3の駆動回路1113、第4の駆動回路1114といった周辺回路によって構成されている。ここで、メモリセル1100としては、先の実施の形態において説明した構成(図11(A−1)に示す構成)が適用される。
【0235】
各メモリセル1100は、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、容量素子をそれぞれ有している。各メモリセル1100において、第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極と、容量素子の電極の一方とは、電気的に接続され、ソース線SLと、第1のトランジスタのソース電極(ソース領域)とは、電気的に接続されている。さらに、ビット線BLと、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極と、第1のトランジスタのドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLと、容量素子の電極の他方と、は電気的に接続され、信号線Sと、第2のトランジスタのゲート電極とは電気的に接続されている。つまり、ソース線SLが、図11(A−1)に示す構成における第1の配線(1st Line)に、ビット線BLが第2の配線(2nd Line)及び第3の配線(3rd Line)に、信号線Sが第4の配線(4th Line)に、ワード線WLが第5の配線(5th Line)に相当する。
【0236】
また、図12に示すメモリセルアレイにおいて、ビット線BL、ソース線SL、ワード線WL、及び信号線Sはマトリクスを構成する。ビット線BLの一には、同じ列に配置されたm個のメモリセル1100が接続されている。また、ワード線WLの一、及び、信号線Sの一には、それぞれ同じ行に配置されたn個のメモリセル1100が接続されている。また、ソース線SLの本数は、ビット線BLの本数よりも少ないため、ソース線SLの一は、少なくとも異なるビット線BLに接続されたメモリセル1100を含む複数のメモリセルと接続する必要がある。すなわち、ソース線SLの一には、j個(jは(m+1)以上(m×n)以下の整数)のメモリセル1100が接続されている。なお、ソース線SLの一に接続された複数のメモリセル1100が有する第1のトランジスタのソース領域は共通している。なお、ソース線SLは、複数のビット線BLに対して一本の割合で配置されている(すなわち、(n/k)が整数である)のが好ましく、この場合、各ソース線SLに接続されるメモリセル1100の数が等しいとすれば、ソース線SLの一には、(m×n/k)個のメモリセル1100が接続される。
【0237】
図12に示すメモリセルアレイのように、メモリセル1100の一と他のメモリセルとを接続するソース線SLの一を、少なくとも異なるビット線BLに接続されたメモリセルを含む複数のメモリセル1100と接続する構成として、ソース線SLの本数をビット線BLの本数より少なくすることで、ソース線の数を十分に少なくすることができるため、半導体装置の集積度を向上させることができる。
【0238】
ビット線BLは、第1の駆動回路1111と電気的に接続されており、ソース線SLは、第2の駆動回路1112と電気的に接続されており、信号線Sは第3の駆動回路1113と電気的に接続されており、ワード線WLは、第4の駆動回路1114と電気的に接続されている。なお、ここでは、第1の駆動回路1111、第2の駆動回路1112、第3の駆動回路1113、第4の駆動回路1114は、それぞれ独立に設けているが、開示する発明はこれに限定されない。いずれか一、または複数の機能を有する駆動回路を用いても良い。
【0239】
次に、書き込み動作および読み出し動作について説明する。図13は、図12に示す半導体装置の書き込み動作および読出し動作のタイミングチャートの一例である。
【0240】
なお、ここでは、簡単のため、2行×2列のメモリセルアレイで構成される半導体装置の動作について説明するが、開示する発明はこれに限定されない。
【0241】
第1行目のメモリセル1100(1,1)、およびメモリセル1100(1,2)への書き込みを行う場合と、第1行目のメモリセル1100(1,1)、およびメモリセル1100(1,2)からの読み出しを行う場合について説明する。なお、以下では、メモリセル(1,1)へ書き込むデータを”1”とし、メモリセル(1,2)へ書き込むデータを”0”とする場合について説明する。
【0242】
はじめに、書き込みについて説明する。まず、第1行目の信号線S(1)に電位V1を与え、1行目の第2のトランジスタをオン状態とする。また、第2行目の信号線S(2)に電位0Vを与え、2行目の第2のトランジスタをオフ状態とする。
【0243】
また、第1列目のビット線BL(1)に電位V2を与え、2列目のビット線BL(2)には電位0Vを与える。
【0244】
その結果、メモリセル(1,1)のフローティングゲート部FGには電位V2が、メモリセル(1,2)のフローティングゲート部FGには電位0Vが与えられる。ここでは、電位V2は第1のトランジスタのしきい値より高い電位とする。そして、第1行目の信号線S(1)の電位を0Vとして、1行目の第2のトランジスタをオフ状態とすることで、書き込みを終了する。なお、電位V2は、電位V1と同程度または電位V1以下とするのが好ましい。
【0245】
なお、書き込み動作の間、第1行目のワード線WL(1)及び第2行目のワード線WL(2)は電位0Vとしておく。また、書き込み終了時には、第1列目のビット線BL(1)の電位を変化させる前に第1行目の信号線S(1)を電位0Vとする。書き込み後において、メモリセルのしきい値は、データ”0”の場合にはVw0、データ”1”の場合にはVw1となる。ここで、メモリセルのしきい値とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極の間の抵抗状態が変化する、ワード線WLに接続される端子の電圧をいうものとする。なお、ここでは、Vw0>0>Vw1とする。
【0246】
次に、読み出しについて説明する。ここで、ビット線BLには、図14に示す読み出し回路が電気的に接続されているとする。
【0247】
まず、第1行目のワード線WL(1)に電位0Vを与え、第2行目のワード線WL(2)には電位VLを与える。電位VLはしきい値Vw1より低い電位とする。WL(1)を電位0Vとすると、第1行目において、データ”0”が保持されているメモリセルの第1のトランジスタはオフ状態、データ”1”が保持されているメモリセルの第1のトランジスタはオン状態となる。ワード線WL(2)を電位VLとすると、第2行目において、データ”0”、”1”のいずれが保持されているメモリセルであっても、第1のトランジスタはオフ状態となる。
【0248】
その結果、ビット線BL(1)−ソース線SL間は、メモリセル(1,1)の第1のトランジスタがオン状態であるため低抵抗状態となり、ビット線BL(2)−ソース線SL(1)間は、メモリセル(1,2)の第1のトランジスタがオフ状態であるため、高抵抗状態となる。ビット線BL(1)、ビット線BL(2)に接続される読み出し回路は、ビット線BLの抵抗状態の違いから、データを読み出すことができる。
【0249】
なお、読み出し動作の間、信号線S(1)には電位0Vを、信号線S(2)には電位VLを与え、第2のトランジスタを全てオフ状態としておく。第1行目のフローティングゲート部FGの電位は0VまたはV2であるから、信号線S(1)を電位0Vとすることで第2のトランジスタを全てオフ状態とすることができる。一方、2行目のフローティングゲート部FGの電位は、ワード線WL(2)に電位VLが与えられると、書き込み直後の電位より低い電位となってしまう。これにより、第2のトランジスタがオン状態となることを防止するために、信号線S(2)をワード線WL(2)と同じ低電位(電位VL)とする。つまり、読み出しを行わない行では、信号線Sとワード線WLとを同じ電位(電位VL)とする。以上により、第2のトランジスタを全てオフ状態とすることができる。
【0250】
読み出し回路として、図14に示す回路を用いる場合の出力電位について説明する。図14に示す読出し回路では、ビット線BLは、リードイネーブル信号(RE信号)によって制御されるスイッチを介して、クロックドインバータ、および、電位V1を与えられた配線にダイオード接続されたトランジスタに接続される。また、ソース線SLには定電位(例えば0V)を与えておく。ビット線BL(1)−ソース線SL間は低抵抗であるため、クロックドインバータには低電位が入力され、出力D(1)はHighとなる。ビット線BL(2)−ソース線SL間は高抵抗であるため、クロックドインバータには高電位が入力され、出力D(2)はLowとなる。
【0251】
動作電位は、例えば、V1=2V、V2=1.5V、VH=2V、VL=−2Vとすることができる。
【0252】
次に、上述の書き込み動作とは異なる書き込み動作について説明する。書き込むデータは上述の書き込み動作と同じとする。図15は、当該書き込み動作および読出し動作のタイミングチャートの一例である。
【0253】
図13に示すタイミングチャートを用いた書き込み(1行目の書き込み)では、書き込み時のワード線WL(2)の電位を電位0Vとしているため、例えばメモリセル(2,1)またはメモリセル(2,2)に書き込まれているデータがデータ”1”である場合には、ビット線BL(1)とビット線BL(2)間に定常電流が流れることになる。第1行目の書き込み時には、第2行目のメモリセルが有する第1のトランジスタがオン状態となり、ビット線BL(1)とビット線BL(2)が、ソース線を介して低抵抗で接続されるためである。図15に示す書き込み動作は、このような定常電流の発生を防止する方法である。
【0254】
まず、第1行目の信号線S(1)に電位V1を与え、1行目の第2のトランジスタをオン状態とする。また、第2行目の信号線S(2)に電位0Vを与え、2行目の第2のトランジスタをオフ状態とする。
【0255】
また、第1列目のビット線BL(1)に電位V2を与え、2列目のビット線BL(2)には電位0Vを与える。
【0256】
その結果、メモリセル(1,1)のフローティングゲート部FGには電位V2が、メモリセル(1,2)のフローティングゲート部FGには電位0Vが与えられる。ここでは、電位V2は第1のトランジスタのしきい値より高い電位とする。そして、第1行目の信号線S(1)の電位を0Vとして、1行目の第2のトランジスタをオフ状態とすることで、書き込みを終了する。
【0257】
なお、書き込み動作の間、第1行目のワード線WL(1)の電位は電位0Vに、第2行目のワード線WL(2)の電位は電位VLとしておく。第2行目のワード線WL(2)を電位VLとすることで、第2行目において、データ”0”、”1”のいずれが保持されているメモリセルであっても、第1のトランジスタはオフ状態となる。また、書き込み動作の間、ソース線SLには電位V2を与える。書き込みデータが全て”0”の場合には、ソース線には電位0Vを与えても構わない。
【0258】
また、書き込み終了時には、第1列目のビット線BL(1)の電位を変化させる前に第1行目の信号線S(1)を電位0Vとする。書き込み後において、メモリセルのしきい値は、データ”0”の場合にはVw0、データ”1”の場合にはVw1となる。ここでは、Vw0>0>Vw1とする。
【0259】
当該書き込み動作において、書き込みを行わない行(この場合には第2行目)のメモリセルの第1のトランジスタはオフ状態であるから、ビット線とソース線の間の定常電流が問題になるのは、書き込みを行う行のメモリセルのみである。書き込みを行う行のメモリセルにデータ”0”を書き込む場合には、該メモリセルが有する第1のトランジスタはオフ状態となるため、定常電流の問題は生じない。一方で、書き込みを行う行のメモリセルにデータ”1”を書き込む場合には、該メモリセルが有する第1のトランジスタはオン状態となるため、ソース線SLとビット線BL(この場合にはビット線BL(1))との間に電位差が存在する場合には、定常電流が発生する。そこで、ソース線SLの電位を、ビット線BL(1)の電位V2と同じとすることで、ビット線とソース線の間の定常電流を防止できる。
【0260】
以上のように、当該書き込み動作によって、書き込み時の定常電流の発生を防止できることがわかる。つまり、当該書き込み動作では、書き込み動作時の消費電力を十分に抑制することができる。
【0261】
なお、読み出し動作については、上述の読み出し動作と同様である。
【0262】
図12に示す半導体装置に、オフ電流が極めて小さい酸化物半導体を含む半導体装置を用いることにより、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0263】
また、図12に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。そのため、図12に示す半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタをオン状態かオフ状態にすることによって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。また、情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
【0264】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能であるため、これを、酸化物半導体を用いたトランジスタと組み合わせて用いることにより、半導体装置の動作(例えば、情報の読み出し動作)の高速性を十分に確保することができる。また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0265】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたトランジスタとを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。
【0266】
さらに、図12に示す半導体装置では、メモリセル一個あたりの配線数を削減することができる。これにより、メモリセルの占有面積を低減し、半導体装置の単位面積あたりの記憶容量を増大することができる。
【0267】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0268】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合について、図16を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、上述の半導体装置を適用する場合について説明する。
【0269】
図16(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体701、筐体702、表示部703、キーボード704などによって構成されている。筐体701と筐体702の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
【0270】
図16(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体711には、表示部713と、外部インターフェイス715と、操作ボタン714等が設けられている。また、携帯情報端末を操作するスタイラス712などを備えている。本体711内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯情報端末が実現される。
【0271】
図16(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍720であり、筐体721と筐体723の2つの筐体で構成されている。筐体721および筐体723には、それぞれ表示部725および表示部727が設けられている。筐体721と筐体723は、軸部737により接続されており、該軸部737を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体721は、電源731、操作キー733、スピーカー735などを備えている。筐体721、筐体723の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された電子書籍が実現される。
【0272】
図16(D)は、携帯電話機であり、筐体740と筐体741の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体740と筐体741は、スライドし、図16(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、筐体741は、表示パネル742、スピーカー743、マイクロフォン744、操作キー745、ポインティングデバイス746、カメラ用レンズ747、外部接続端子748などを備えている。また、筐体740は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル749、外部メモリスロット750などを備えている。また、アンテナは、筐体741に内蔵されている。筐体740と筐体741の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯電話機が実現される。
【0273】
図16(E)は、デジタルカメラであり、本体761、表示部767、接眼部763、操作スイッチ764、表示部765、バッテリー766などによって構成されている。本体761内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたデジタルカメラが実現される。
【0274】
図16(F)は、テレビジョン装置770であり、筐体771、表示部773、スタンド775などで構成されている。テレビジョン装置770の操作は、筐体771が備えるスイッチや、リモコン操作機780により行うことができる。筐体771およびリモコン操作機780には、先の実施の形態に示す半導体装置が搭載されている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたテレビジョン装置が実現される。
【0275】
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、消費電力を低減した電子機器が実現される。
【符号の説明】
【0276】
100 基板
102 保護層
104 半導体領域
106 素子分離絶縁層
108 ゲート絶縁層
110 ゲート電極
116 チャネル形成領域
120 不純物領域
122 金属層
124 金属化合物領域
126 電極
128 絶縁層
142a ソース電極
142b ドレイン電極
144 酸化物半導体層
146 ゲート絶縁層
148a ゲート電極
148b 電極
151 絶縁層
152 絶縁層
153 開口
154 電極
156 配線
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
500 ベース基板
502 窒素含有層
510 単結晶半導体基板
512 酸化膜
514 脆化領域
516 単結晶半導体層
518 単結晶半導体層
520 半導体層
522 絶縁層
522a ゲート絶縁層
524 導電層
524a ゲート電極
526 チャネル形成領域
528 不純物領域
530 電極
534 絶縁層
542a ソース電極
542b ドレイン電極
544 酸化物半導体層
546 ゲート絶縁層
548a ゲート電極
548b 電極
551 絶縁層
552 絶縁層
553 開口
554 電極
556 配線
560 トランジスタ
562 トランジスタ
564 容量素子
701 筐体
702 筐体
703 表示部
704 キーボード
711 本体
712 スタイラス
713 表示部
714 操作ボタン
715 外部インターフェイス
720 電子書籍
721 筐体
723 筐体
725 表示部
727 表示部
731 電源
733 操作キー
735 スピーカー
737 軸部
740 筐体
741 筐体
742 表示パネル
743 スピーカー
744 マイクロフォン
745 操作キー
746 ポインティングデバイス
747 カメラ用レンズ
748 外部接続端子
749 太陽電池セル
750 外部メモリスロット
761 本体
763 接眼部
764 操作スイッチ
765 表示部
766 バッテリー
767 表示部
770 テレビジョン装置
771 筐体
773 表示部
775 スタンド
780 リモコン操作機
1100 メモリセル
1111 駆動回路
1112 駆動回路
1113 駆動回路
1114 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと少なくとも一部が重畳する第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、
第1のチャネル形成領域と、
前記第1のチャネル形成領域上に設けられた第1のゲート絶縁層と、
前記第1のチャネル形成領域と重畳して前記第1のゲート絶縁層上に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のチャネル形成領域と電気的に接続する第1のソース電極および第1のドレイン電極と、を含み、
前記第2のトランジスタは、
第2のチャネル形成領域と、
前記第2のチャネル形成領域と電気的に接続する第2のソース電極および第2のドレイン電極と、
前記第2のチャネル形成領域と重畳して設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のチャネル形成領域と、前記第2のゲート電極と、の間に設けられた第2のゲート絶縁層と、を含み、
前記第2のソース電極は、前記第1のゲート電極とのエッチングの選択比がとれる材料で形成され、且つ、前記第2のソース電極の下端部の一は、前記第1のゲート電極の上面に接して設けられる、半導体装置。
【請求項2】
第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタと少なくとも一部が重畳する第2のトランジスタと、容量素子とを含む複数のメモリセルを有し、
前記第1のトランジスタは、
第1のチャネル形成領域と、
前記第1のチャネル形成領域上に設けられた第1のゲート絶縁層と、
前記第1のチャネル形成領域と重畳して前記第1のゲート絶縁層上に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のチャネル形成領域と電気的に接続する第1のソース電極および第1のドレイン電極と、を含み、
前記第2のトランジスタは、
第2のチャネル形成領域と、
前記第2のチャネル形成領域と電気的に接続する第2のソース電極および第2のドレイン電極と、
前記第2のチャネル形成領域と重畳して設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のチャネル形成領域と、前記第2のゲート電極と、の間に設けられた第2のゲート絶縁層と、を含み、
前記第2のソース電極は、前記第1のゲート電極とのエッチングの選択比がとれる材料で形成され、且つ、前記第2のソース電極の下端部の一は、前記第1のゲート電極の上面に接して設けられ、
前記第1のゲート電極と、前記第2のソース電極と、前記容量素子の一方の電極と、は、電気的に接続される、半導体装置。
【請求項3】
前記第1のチャネル形成領域は、シリコンを含んで構成される請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を含んで構成される請求項1乃至3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1のゲート電極と、前記第2のソース電極と、のエッチングの選択比は2以上である、請求項1乃至4のいずれか一に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−15500(P2012−15500A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123881(P2011−123881)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】