説明

電子デバイス材料の製造方法

【課題】電気的特性の優れた絶縁膜のプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るプラズマ処理方法の一形態は、絶縁膜が形成された基板を真空容器内に搬入する工程と、上記真空容器内に供給された処理ガスに300MHz以上2500MHz以下の周波数を有する高周波電力を供給することによりプラズマを生成し、上記プラズマにより、上記絶縁膜を改質する工程と、を含むプラズマ処理方法であって、上記処理ガスは、希ガスと酸素を含む混合ガス、または希ガスと窒素を含む混合ガスであり、上記プラズマは、上記処理ガスが希ガスと酸素を含む混合ガスの場合、上記酸素ガスの流量を1〜1000sccm、上記希ガスの流量を200〜3000sccmとして、上記処理ガスが希ガスと窒素を含むガスの場合、窒素ガスの流量を10〜500sccm、上記希ガスの流量を200〜3000sccmとして生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ないし電子デバイス材料の製造に好適な製造方法に関する。本発明の電子デバイス材料の製造方法は、例えば、MOS型半導体構造を形成するために好適に使用することが可能である。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ないし半導体材料を構成する複数の層を形成するに際しては、種々の層形成技術が使用されて来た。これらの層形成技術の代表的なものとしては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、およびCVD(化学的気相成長)法が挙げられる。これらの層形成技術の中でも、CVD法は、層形成の成膜速度が速く、比較的短時間で成膜できるという特徴を有するため、MOS型半導体装置を始めとする種々の半導体ないし電子デバイス材料の製造に際して、多工程にわたり用いられている。
【0003】
本発明の製造方法は、電子デバイス材料の製造に一般的に広く使用可能であるが、ここでは説明の便宜のために、フラッシュメモリと称される不揮発性メモリの一態様であるEPROMを例にとって、本発明の背景となる技術を説明する。
【0004】
EPROMは、例えば図12に示したような多層構造を有する。
【0005】
図12を参照して、このEPROM多層構造においては、p型単結晶シリコンからなる被処理基体100上に、SiO2からなる絶縁層101と多結晶シリコンからなる半導体層102および103が所定のパターンを形成しながら交互に積層された層と、その上に堆積された金属(アルミニウム、銅等)からなる金属層104とから構成されている。
【0006】
このような半導体装置においては、多結晶シリコンからなる半導体層102、103や層間のSiO2層を形成するために、上記したCVD法が広く用いられている。
【0007】
しかしながら、CVD法により成膜された層は表面粗さ、膜中欠陥が比較的に多く、ダングリングボンドと称される原子結合の手が膜中に向けて形成されている傾向がある。このダングリングボンドが膜中に向けて形成されていると、この層の中および隣接する層の電子の流れに影響を及ぼし、層としての電気特性が劣化したり、ひいては電子デバイス自体の品質が低下するという問題が生ずる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,Vol46,No.9,SEPTEMBER 1999 PP1866−1871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記した従来の問題を解決することが可能な電気的特性の優れた絶縁膜のプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプラズマ処理方法は、絶縁膜が形成された基板を真空容器内に搬入する工程と、上記真空容器内に供給された処理ガスに300MHz以上2500MHz以下の周波数を有する高周波電力を供給することによりプラズマを生成し、上記プラズマにより、上記絶縁膜を改質する工程と、を含むプラズマ処理方法であって、上記処理ガスは、希ガスと酸素を含む混合ガス、または希ガスと窒素を含む混合ガスであり、上記プラズマは、上記処理ガスが希ガスと酸素を含む混合ガスの場合、上記酸素ガスの流量を1〜1000sccm、上記希ガスの流量を200〜3000sccmとして、上記処理ガスが希ガスと窒素を含むガスの場合、窒素ガスの流量を10〜500sccm、上記希ガスの流量を200〜3000sccmとして生成される。
【発明の効果】
【0011】
上述したように本発明によれば、電気的特性の優れた絶縁膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の電子デバイス製造方法を実施するための製造装置の概略図(模式平面図)である。
【図2】図2は、本発明の電子デバイス製造方法に使用可能なスロットプレインアンテナ(Slot Plain Antenna;以下「SPA」と略記する。)プラズマ処理ユニットの一例を示す模式的な垂直断面図である。
【図3】図3は、本発明の電子デバイス製造装置に使用可能なSPAの模式平面図である。
【図4】図4は、本発明の電子デバイス製造方法に使用可能なCVD処理ユニットの模式的な垂直断面図である。
【図5】図5は、本発明の製造方法における各工程の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の製造方法に係るフラッシュメモリの製造途中の状態の一例を示す模式的な垂直断面図である。
【図7】図7は、本発明の製造方法に係るフラッシュメモリの製造途中の状態の一例を示す模式的な垂直断面図である。
【図8】図8は、本発明の製造方法に係るフラッシュメモリの製造途中の状態の一例を示す模式的な垂直断面図である。
【図9】図9は、各種処理条件とその処理条件で得られる絶縁膜の品質特性を比較したグラフである。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係るロジックデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図11A】図11Aは、本発明の第2の実施形態に係るロジックデバイスの製造工程の一例を示す模式的な垂直断面図である。
【図11B】図11Bは、本発明の第2の実施形態に係るロジックデバイスの製造工程の一例を示す模式的な垂直断面図である。
【図12】図12は、典型的なフラッシュメモリの模式的な垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0014】
(電子デバイス材料の製造方法)
本発明の電子デバイス材料の製造方法は、電子デバイス用材料の層と、該層上に配置された絶縁膜とを少なくとも含む被処理基体を、複数のスロットを有する平面アンテナ部材を介するマイクロ波照射に基づき処理ガスから生成したプラズマに晒し、前記絶縁膜を改質する工程を少なくとも含む。
【0015】
(電子デバイス用材料)
本発明において使用可能な電子デバイス用材料は特に制限されず、公知の電子デバイス用材料の1種または2種以上の組合せから適宜選択して使用することが可能である。このような電子デバイス用材料の例としては、例えば、半導体材料、液晶デバイス材料等が挙げられる。半導体材料の例としては、シリコンを主成分とする材料(単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン等)シリコン窒化膜を主成分とする材料、シリコンゲルマニウムを主成分とする材料等が挙げられる。
【0016】
(絶縁膜)
上記電子デバイス用材料の層上に配置される絶縁膜は特に制限されず、公知の電子デバイス用絶縁膜の1種または2種以上の組合せから適宜選択して使用することが可能である。このような絶縁膜の例としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(SiN)等が挙げられる。シリコン酸化膜としては、熱履歴、生産性の点からは、CVDにより形成された膜であることが好ましい。
【0017】
(処理ガス)
本発明において使用可能な処理ガスは特に制限されず、電子デバイス製造に使用可能な公知の処理ガスの1種または2種以上の組合せから適宜選択して使用することが可能である。このような処理ガスの例としては、例えば、希ガスと酸素(O2)もしくは、希ガスと窒素(N2)と水素(H2)を含む混合ガスが挙げられる。
【0018】
(希ガス)
本発明において使用可能な希ガスは特に制限されず、電子デバイス製造に使用可能な公知の希ガスの1種または2種以上の組合せから適宜選択して使用することが可能である。このような処理ガスの例としては、例えば、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ヘリウム(He)、又はアルゴン(Ar)を挙げることができる。
【0019】
本発明の絶縁膜改質においては、形成されるべき改質膜の特性の点からは、下記の改質条件が好適に使用できる。
【0020】
O2:1〜1000sccm、より好ましくは10〜500sccm
希ガス(例えば、Kr、Ar、HeまたはXe):200〜3000sccm、より好ましくは500〜2000sccm、
H2:1〜200sccm、より好ましくは1〜50sccm、
【0021】
温度:室温(25℃)〜700℃、より好ましくは室温〜500℃
圧力:20〜5000mTorr、より好ましくは20〜3000mTorr、特に好ましくは50〜2000mTorr
マイクロ波:0.5〜5W/cm2、より好ましくは1〜4W/cm2
【0022】
(好適な条件の例)
本発明の製造方法において、形成されるべき改質の特性の点からは、下記の条件を好適な例として挙げることができる。
処理ガスの好適な一例:流量10〜500sccmのO2もしくはN2、および、流量500〜2000sccmのKr、He、Xe又はArを含むガス。
SiO2膜の処理条件の好適な一例:室温〜500℃の温度。
【0023】
SiO2膜の処理条件の好適な一例:2.7〜270Pa(20〜2000mTorr)
SiO2膜の形成条件の好適な一例:プラズマが1〜4W/cm2の出力で形成されること。
【0024】
(多結晶シリコン層上のSiO2膜を改質する態様)
本発明の他の態様の製造方法は、電子デバイス用基板と、該基板上に配置された第1のSiO2膜と、該第1のSiO2膜上に配置された第1の多結晶シリコン層と、第1の多結晶シリコン層上に配置された第2のSiO2膜とを少なくとも含む被処理基体を、複数のスロットを有する平面アンテナ部材を介するマイクロ波照射に基づき処理ガスから生成したプラズマに晒し、前記第2のSiO2膜を改質する工程を少なくとも含む。このような多結晶シリコン層上に配置されたSiO2膜を改質した場合には、動作信頼性の向上という利点を得ることができる。
【0025】
例えばフラッシュメモリー用のコントロールゲート電極として、このように改質した前記第2のSiO2膜上に第2の多結晶シリコン層を形成してもよい。第2のSiO2膜は他の絶縁膜(SiNや、SiNとSiO2の積層構造)であってもよい。このような改質SiO2膜上に第2の多結晶シリコン層を形成した場合、更に、動作信頼性の向上という利点を得ることができる。
【0026】
上記した第1の多結晶シリコン層、第2のSiO2膜、および/又は第2の多結晶シリコン層をCVDにより形成した場合には、更に熱履歴の低減等の利点を得ることができる。生産性の点からは、これら第1の多結晶シリコン層、第2のSiO2膜、および第2の多結晶シリコン層の全てをCVDにより形成することが最も好ましい。
【0027】
上記した態様の電子デバイス材料の製造方法において、前記第1の多結晶シリコン層を形成する工程と、前記第1の多結晶シリコン層上に第2のSiO2膜を形成する工程との間、および/又は、前記第2の多結晶シリコン層を形成した後に、前記被処理基体を複数のスロットを有する平面アンテナ部材を介して処理ガスにマイクロ波を照射することにより生成したプラズマに晒し、このプラズマを用いて前記第1又は第2の多結晶シリコン層を改質する工程を更に包含してもよい。このように、更に平面アンテナ部材を介するマイクロ波照射に基づき処理ガスから生成したプラズマに晒す追加的なも包含することにより、第1、および第2の多結晶シリコン層の表面が平滑となり、第2のSiO2膜の信頼性向上が期待できる。また、本工程により第1、第2の多結晶シリコンの耐酸化性を向上させることで、後工程における多結晶シリコンの面積変動の抑制が期待できる。さらに、本工程において多結晶シリコン表面をSPAを介して生成した処理ガスプラズマを用いて酸化することで、第2のSiO2を形成することも可能である。この工程は低温で処理を行うことが可能である。通常の熱酸化工程ではデバイス特性を高温により劣化させる恐れがあるが、本工程を用いることで熱工程によるデバイス特性の劣化(ドーパントの拡散など)を抑制しながら酸化膜を形成することが可能となる。
【0028】
(改質絶縁層上に金属層を形成する態様)
本発明における更に他の電子デバイス材料の製造方法は、電子デバイス用材料の層と、該層上に配置された絶縁膜(例えば、ゲート絶縁膜)とを少なくとも含む被処理基体を、複数のスロットを有する平面アンテナ部材を介するマイクロ波照射に基づき処理ガスから生成したプラズマに晒し、前記絶縁膜を改質する工程と;前記絶縁膜上に金属層を形成する工程とを少なくとも含む。このように改質した絶縁膜上に金属層を形成した場合には、動作信頼性の向上やリークの低減という利点を得ることができる。
【0029】
(絶縁膜の材料)
上記電子デバイスの製造方法において、前期絶縁膜(例えばゲート絶縁膜)としては、従来より使われている低誘電率のSiO2、SiON、SiNや誘電率が高いAl2O3、ZrO2、HfO2、Ta2O5、およびZrSiO、HfSiO等のSilicateやZrAlO等のAluminateからなる群から選択される1又は2以上のものが挙げられる。
【0030】
(平面アンテナ部材)
本発明の電子デバイス材料の製造方法においては、複数のスロットを有する平面アンテナ部材を介してマイクロ波を照射することにより電子温度が低くかつ高密度なプラズマを形成し、このプラズマを用いて膜の改質を行うため、プラズマダメージが小さく、かつ低温で反応性の高いプロセスが可能となる。
【0031】
本発明に係る改質が施された膜は、上記複数のスロットを有する平面アンテナ部材を介してマイクロ波を照射することにより得られた電子温度が低くかつ高密度なプラズマを用いて改質されるため、膜中のダングリングボンドが理想的な形で終端される。その結果、膜自体の絶縁特性が向上し、ひいては特性の優れた電子デバイス材料(例えば半導体材料)を得ることができる。また、ウエハ温度、チャンバー温度を低温で使用できるため、省エネルギーのプロセスが可能である。
【0032】
(好適なプラズマ)
本発明において好適に使用可能なプラズマの特性は、以下の通りである。
電子温度:0.5〜2.0eV
密度:1E10〜5E12 cm−3
プラズマ密度の均一性:±10%以内
【0033】
本発明によれば、良質な改質絶縁膜を形成することができる。したがって、この改質絶縁膜上に他の層(例えば、電極層)を形成することにより、特性に優れた半導体装置の構造を形成することが容易である。
【0034】
(絶縁膜の好適な特性)
本発明によれば、下記のように好適な特性を有する改質絶縁膜を容易に形成することができる。
リーク電流の低減:デバイスの低消費電力化
フラシュメモリに応用することで長寿命の記憶保持能力
信頼性の向上:動作回数の増大に伴う劣化を抑制
【0035】
(半導体構造の好適な特性)
本発明の方法の適用すべき範囲は特に制限されないが、本発明により形成可能な良質な改質絶縁膜は、フラッシュメモリ構造の絶縁膜として特に好適に利用することができる。
【0036】
本発明によれば、下記のように好適な特性を有するフラッシュメモリ構造を容易に製造することができる。なお、本発明により改質した絶縁膜の特性を評価する際には、例えば、文献(IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,Vol46,No.9,SEPTEMBER 1999 PP1866−1871)に記載されたような標準的なフラッシュメモリを形成して、そのフラッシュメモリの特性を評価することにより、上記絶縁膜自体の特性評価に代えることができる。このような標準的なフラッシュメモリ構造においては、該構造を構成する絶縁膜の特性が、フラッシュメモリ特性に強い影響を与えるからである。
特性:高いくり返し動作安定性
【0037】
(電子デバイス材料製造の態様)
以下に本発明における一つの態様について説明する。
【0038】
まず、本発明に係るフラッシュメモリを製造する方法に使用可能な電子デバイス材料の製造装置について説明する。
【0039】
図1は本発明の電子デバイス材料の製造方法を実施するための電子デバイス(半導体装置)製造装置30の全体構成の一例を示す概略図(模式平面図)である。
【0040】
図1に示すように、この半導体製造装置30のほぼ中央には、ウエハW(図2)を搬送するための搬送室31が配設されており、この搬送室31の周囲を取り囲むように、ウエハに種々の処理を行うためのプラズマ処理ユニット32、CVD処理ユニット33、各処理室間の連通/遮断の操作を行うための二機のロードロックユニット34および35、種々の加熱操作を行うための加熱ユニット36、およびウエハに種々の加熱処理を行うための加熱反応炉47が配設されている。なお、加熱反応炉47は、上記半導体製造装置30とは別個に独立して設けてもよい。
【0041】
ロードロックユニット34、35の横には、種々の予備加熱ないし冷却操作を行うための予備加熱ユニット45、冷却ユニット46がそれぞれ配設されている。
【0042】
搬送室31の内部には、搬送アーム37および38が配設されており、前記各ユニット32〜36との間でウエハW(図2)を搬送することができる。
【0043】
ロードロックユニット34および35の図中手前側には、ローダーアーム41および42が配設されている。これらのローダーアーム41および42は、更にその手前側に配設されたカセットステージ43上にセットされた4台のカセット44との間でウエハWを出し入れすることができる。
【0044】
更に、これらプラズマ処理ユニット32およびCVD処理ユニット33は互換性があり、プラズマ処理ユニット32とCVD処理ユニット33とを入れ替えることも可能であり、および/又はプラズマ処理ユニット32やCVD処理ユニット33の位置に一基又は二基のシングルチャンバ型CVD処理ユニットやプラズマ処理ユニットをセットすることも可能である。
【0045】
(プラズマ処理の一態様)
図2は本発明の処理に使用可能なプラズマ処理ユニット32の模式的な垂直断面図である。
【0046】
図2を参照して、参照番号50は、例えばアルミニウムにより形成された真空容器である。この真空容器50の上面には、基板(例えばウエハW)よりも大きい開口部51が形成されており、この開口部51を塞ぐように、例えば石英や酸化アルミニウム等の誘電体により構成された偏平な円筒形状の天板54が設けられている。この天板54の下面である真空容器50の上部側の側壁には、例えばその周方向に沿って均等に配置した16箇所の位置にガス供給管72が設けられており、このガス供給管72からO2や希ガス、N2およびH2等から選ばれた1種以上を含む処理ガスが、真空容器50のプラズマ領域P近傍にムラなく均等に供給されるようになっている。
【0047】
天板54の外側には、複数のスリットを有する平面アンテナ部材、例えば銅板により形成されたスロットプレインアンテナ(Slot Plane Antenna;SPA)60を介して、高周波電源部をなし、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマイクロ波電源部61に接続された導波路63が設けられている。この導波路63は、SPA60に下縁が接続された偏平な円形導波管63Aと、この円形導波管63Aの上面に一端側が接続された円筒形導波管63Bと、この円筒形導波管63Bの上面に接統された同軸導波変換器63Cと、この同軸導波変換器63Cの側面に直角に一端側が接続され、他端側がマイクロ波電源部61に接続された矩形導波管63Dとを組み合わせて構成されている。
【0048】
ここで、本発明においては、UHFとマイクロ波とを含めて高周波領域と呼ぶものとする。すなわち、高周波電源部より供給される高周波電力は300MHz以上のUHFや1GHz以上のマイクロ波を含む、300MHz以上2500MHz以下のものとし、これらの高周波電力により発生されるプラズマを高周波プラズマと呼ぶものとする。
【0049】
前記円筒形導波管63Bの内部には、導電性材料からなる軸部62の、一端側がSPA60の上面のほぼ中央に接続し、他端側が円筒形導波管63Bの上面に接続するように同軸状に設けられており、これにより当該導波管63Bは同軸導波管として構成されている。
【0050】
また真空容器50内には、天板54と対向するようにウエハWの載置台52が設けられている。この載置台52には図示しない温調部が内蔵されており、これにより当該載置台52は熱板として機能するようになっている。更に真空容器50の底部には排気管53の一端側が接続されており、この排気管53の他端側は真空ポンプ55に接続されている。
【0051】
(SPAの一態様)
図3は本発明の電子デバイス材料の製造装置に使用可能なSPA60の一例を示す模式平面図である。
【0052】
この図3に示したように、このSPA60では、表面に複数のスロット60a、60a、…が同心円状に形成されている。各スロット60aは略方形の貫通した溝であり、隣接するスロットどうしは互いに直交して略アルファベットの「T」の文字を形成するように配設されている。スロット60aの長さや配列間隔は、マイクロ波電源部61より発生したマイクロ波の波長に応じて決定されている。
【0053】
(CVD処理ユニットの一態様)
図4は本発明の電子デバイス材料の製造装置に使用可能なCVD処理ユニット33の一例を示す模式的な垂直断面図である。
【0054】
図4に示すように、CVD処理ユニット33の処理室82は、例えばアルミニウム等により気密可能な構造に形成されている。この図4では省略さえているが、処理室82内には加熱機構や冷却機構を備えている。
【0055】
図4に示したように、処理室82には上部中央にガスを導入するガス導入管83が接続され、処理室82内とガス導入管83内とが連通されている。また、ガス導入管83はガス供給源84に接続されている。そして、ガス供給源84からガス導入管83にガスが供給され、ガス導入管83を介して処理室82内にガスが導入されている。このガスとしては、ゲート電極形成の原料となる、例えばシラン等の各種のガス(電極形成ガス)を用いることができ、必要に応じて、不活性ガスをキャリアガスとして用いることもできる。
【0056】
処理室82の下部には、処理室82内のガスを排気するガス排気管85が接続され、ガス排気管85は真空ポンプ等からなる排気手段(図示せず)に接続されている。この排気手段により、処理室82内のガスがガス排気管85から排気され、処理室82内が所望の圧力に設定されている。
【0057】
また、処理室82の下部には、ウエハWを載置する載置台87が配置されている。
【0058】
この図4に示した態様においては、ウエハWと略同径大の図示しない静電チャックによりウエハWが載置台87上に載置されている。この載置台87には、図示しない熱源手段が内設されており、載置台87上に載置されたウエハWの処理面を所望の温度に調整できる構造に形成されている。
【0059】
この載置台87は、必要に応じて、載置したウエハWを回転できるような機構になっている。
【0060】
図4中、載置台87の右側の処理室82壁面にはウエハWを出し入れするための開口部82aが設けられており、この開口部82aの開閉はゲートバルブ98を図中上下方向に移動することにより行われる。図4中、ゲートバルブ98の更に右側にはウエハWを搬送する搬送アーム(図示せず)が隣設されており、搬送アームが開口部82aを介して処理室82内に出入りして載置台87上にウエハWを載置したり、処理後のウエハWを処理室82から搬出するようになっている。
【0061】
載置台87の上方には、シャワー部材としてのシャワーヘッド88が配設されている。このシャワーヘッド88は載置台87とガス導入管83との間の空間を区画するように形成されており、例えばアルミニウム等から形成されている。
【0062】
シャワーヘッド88は、その上部中央にガス導入管83のガス出口83aが位置するように形成され、シャワーヘッド88下部に設置されたガス供給孔89を通し、処理室82内にガスが導入されている。
【0063】
(電子デバイス材料の製造の態様)
次に、本発明に係る電子デバイス材料の製造方法の一態様について以下に説明する。
【0064】
図4は本態様に係る電子デバイス材料の製造方法のフローチャートであり、図6〜図8は本態様に係るフラッシュメモリセルの各製造工程を示した模式的な垂直断面図である。
【0065】
この態様においては、まず、図5および図6Bに示すように、被処理基体としてのp型SiからなるウエハWに選択的にイオン注入とアニーリング工程によって、n+層たる埋込形データライン(不純物埋込層)22を形成する(ステップ1)。
【0066】
次に、図6Cに示すように、第1絶縁膜を形成するためにウエハWを加熱するかまたはCVD処理して表面を処理し、ウエハW全面にSiO2膜(第1のSiO2膜)23を形成する(ステップ2)。なお、加熱酸化によりSiO2膜23を形成する場合には加熱ユニット36や加熱反応炉47(図1)を使用し、CVD法によりSiO2膜23を形成する場合にはCVD処理ユニット33(図1)を使用することができる。
【0067】
次に、図6Dに示すように、表面に第1のSiO2膜23が形成されたウエハWをCVD処理ユニット33のチャンバ内に搬入し、処理ガス、例えばシランガスの存在下に加熱して前記第1のSiO2膜23表面に多結晶シリコン層(第1の多結晶シリコン層)24を形成する(ステップ3)。
【0068】
次いで、この第1の多結晶シリコン層を、例えばフォトリソグラフィおよびドライエッチングの手法により選択的にエッチングしてパターニングし(ステップ4)、図7Aに示すように前記SiO2膜23上に浮遊ゲート(Floating Gate)25を形成する。
【0069】
次いで、再びウエハWをCVD処理ユニット33内(図1)に搬入し、ウエハW表面上にCVD処理を施して、図7Bに示すように、露出された前記浮遊ゲート25の上に第2のSiO2層26を第2絶縁層として形成する(ステップ5)。
【0070】
次に、このウエハWをプラズマ処理ユニット32内(図1)に搬入し、ここで第2のSiO2層26にプラズマ処理を施して第2のSiO2層26を改質する(ステップ6)。
【0071】
即ち、CVD処理ユニット33内に搬送アーム37、38を進入させて表面にSiO2層が形成されたウエハWを取り出し、次いで、プラズマ処理ユニット32内の真空容器50の側壁に設けたゲートバルブ(図示せず)を開いて搬送アーム37、38により、前記ウエハWを載置台52上に載置する。
【0072】
続いてゲートバルブを閉じて内部を密閉した後、真空ポンプ55により排気管53を介して内部雰囲気を排気して所定の真空度まで真空引きし、所定の圧力に維持する。一方マイクロ波電源部61より例えば1.80GHz(2200Wのマイクロ波を発生させ、このマイクロ波を導波路により案内してSPA60および天板54を介して真空容器50内に導入し、これにより真空容器50内の上部側のプラズマ領域Pにて高周波プラズマを発生させる。
【0073】
ここでマイクロ波は矩形導波管63D内を矩形モードで伝送し、同軸導波変換器63Cにて矩形モードから円形モードに変換され、円形モードで円筒形同軸導波管63Bを伝送し、さらに平板状導波路63Aを径方向に伝送していき、SPA60のスロット60aより放射され、天板54を透過して真空容器50に導入される。この際マイクロ波を用いているため高密度、低電子温度のプラズマが発生し、またマイクロ波をSPA60の多数のスロット60aから放射しているためプラズマが高均一な分布となる。
【0074】
そして載置台52の温度を調節してウエハWを例えば400℃に加熱しながら、ガス供給管72より酸化膜形成用の処理ガスであるクリプトンやアルゴン等の希ガスと、O2ガスとを、所定の流量で導入して改質処理を実施する。
【0075】
例えば、このプラズマ処理は以下の条件で好適に行なうことができる。即ち、処理ガスとして、流量5〜50sccmのO2、および、流量500〜2000sccmのクリプトンの混合ガスを用い、300〜700℃、2.7〜135Pa(20〜1000mTorr)の圧力下、プラズマ源の出力1〜3W/cm2の条件下で行なうことができる。
【0076】
この工程では、導入された処理ガスはプラズマ処理ユニット32内にて発生したプラズマ流により活性化(ラジカル化)され、このプラズマにより、ウエハW最上面を覆うSiO2膜26の改質が行なわれる。このようにして、上記の改質処理を例えば40秒間行い、ウエハW最上面のSiO2膜26の表面に前記処理ガスのプラズマを作用させて改質を行なう。このときに発生する処理ガスのプラズマは電子温度が低く、従って処理ガスのプラズマとSiO2膜26とのバイアスは低い値になる。そのため、処理ガスのプラズマがSiO2膜26に当接するときに与える衝撃は小さく、いわゆる処理ガスプラズマがSiO2膜26表面に衝突するときにSiO2膜26に与えるプラズマダメージは小さい。そのためSiO2膜26表面および膜中のダングリングボンドが適切に終端され、SiO2膜26は高品質の木目細かい状態が得られる。
【0077】
次にこのようしてプラズマで改質した後、選択エッチング(例えばフォトリソグラフィおよびドライエッチングの手法により)等によりパターニングする(ステップ7)。
【0078】
次にパターニングが完了したウエハWをCVD処理ユニット33内に搬入し、このCVD処理ユニット33内で処理ガス、例えばシランガスの存在下にウエハWを加熱して、図7Dに示すように、前記改質されたSiO2膜26の表面全体にわたって第2の多結晶シリコン層27を形成する(ステップ8)。
【0079】
次にこの第2の多結晶シリコン層27を選択的エッチング等の方法によりパターニングし(ステップ9)、図8Aに示すように制御ゲート28を形成する。
【0080】
次いで、図8Bに示すように制御ゲート28の上に第3の絶縁層(SiO2膜)29を、例えばCVDにより形成する(ステップ10)。
【0081】
次いで図8Cに示すように第3の絶縁層をパターニングしてデータライン(n+層)22の一部を露出させる(ステップ11)。
【0082】
更に、図8Dに示すように絶縁層23、26、29とデータライン22の上にアルミニウム等の金属を蒸着して金属層31を形成する(ステップ12)。更に、この金属層をパターニング(例えば、フォトリソグラフィおよび選択的エッチングにより)して電極を形成する(ステップ13)。
【0083】
以後、一般的な方法によって絶縁膜形成工程、パッシベーション層形成工程、コンタクトホール形成工程、および配線形成工程などを施してセル製造工程を完了する(このような絶縁膜形成工程、パッシベーション層形成工程、コンタクトホール形成工程、および配線形成工程等を含むセル製造工程に関しては、例えば文献ULSI TECHNOLOGY McGRAW-HILL INTERNATIONAL EDITIONS C.Y.CHANG,S.M.SZEを参照することができる)。
【0084】
上述のSiO2膜26の改質工程(ステップ6)では、SiO2膜26を改質するに際し、処理ガス雰囲気下で、単結晶シリコンを主成分とするウエハWに、複数のスロットを有する平面アンテナ部材(SPA)を介してマイクロ波を照射することにより酸素(O2)および希ガスとを含むプラズマを形成し、このプラズマを用いて前記SiO2膜26を改質しているため、品質が高く、かつ膜質制御を首尾よく行うことができる。
【0085】
上記の改質後の酸化膜(SiO2膜26)の品質は、図9のグラフに示すように高いものである。
【0086】
図9は本態様に係る電子デバイス材料の製造方法の改質工程(ステップ6)によりSiO2膜26表面にSPAを介してプラズマを作用させて改質処理を施したSiO2膜26の信頼性評価結果を表わしたグラフである。
【0087】
このグラフの縦軸には故障率の値をとり、横軸にはQbd値(絶縁破壊電荷)をとった。
【0088】
本測定におけるデバイス構造は、以下1〜7のような方法で作成された。
1:基板
基板にはP型もしくはN型のシリコン基板を用い、比抵抗が1〜30Ωcm、面方位(100)のものを用いる。シリコン基板表面には500A犠牲酸化膜が成膜されている。
【0089】
2:Gate酸化前洗浄
APM(アンモニア、過酸化水素水、純水の混合液)とHPM(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)およびDHF(フッ酸と純水の混合液)を組み合わせたRCA洗浄によって犠牲酸化膜と汚染要素(金属や有機物、パーティクル)を除去した。
【0090】
3:SiO2の成膜
CVDによりSiO2膜を成膜した。780℃に加熱した上記基板上にSiH2Cl2とN2Oをそれぞれ200sccm、400sccmずつ流し、圧力を60Paに保持して30分間処理を行い、60AのCVD酸化膜(High Temperature Oxide:HTO)を成膜した。
【0091】
4:プラズマ酸化プロセス
3のSiO2膜が成膜されたシリコン基板を次に示すような方法で改質した。3のSiO2膜が成膜されたシリコン基板を400℃に加熱し、ウェハ上に希ガスと酸素とをそれぞれ1000sccm、20sccmずつ流し、圧力を13Pa〜107Pa(100mTorr〜900mTorr)に保持する。その雰囲気中に複数のスロットを有する平面アンテナ部材(SPA)を介して3W/cm2のマイクロ波を照射することにより酸素および希ガスとを含むプラズマを形成し、このプラズマを用いて3のSiO2膜の改質を行った。
【0092】
5:Gate電極用ポリシリコン成膜
3、4で形成したSio2膜上にGate電極としてポリシリコンをCVD法にて成膜した。SiO2膜の成膜されたシリコン基板を630℃で加熱し、基板上にシランガス250sccmを33Paの圧力下で導入し30分保持することでSiO2膜上に膜厚3000Aの電極用ポリシリコンを成膜する。
【0093】
6:ポリシリコンへのP(リン)ドープ
5で作製されたシリコン基板を800℃に過熱し、基板上にPOCl3ガスと酸素および窒素をそれぞれ350sccm、200sccm、20000sccmずつ常圧下で導入し24分間保持することでポリシリコン中にリンをドープした。
【0094】
7:パターニング、Gateエッチ
6で作製したシリコン基板上にリソグラフィによりパターニングを施し、HF:HNO3:H2O=1:60:60の比の薬液中にシリコン基板を3分間浸すことでパターニングされていない部分のポリシリコンを溶かし、MOSキャパシタを作製した。
【0095】
測定は次に示すようは方法で行った。Gate電極面積が10000um2のキャパシタに−0.1A/cm2の一定電流のストレスを印加し、絶縁破壊が生じるまでの時間(Break Down Time:Tbd)を測定した。絶縁破壊電荷(Qbd)は電流ストレス−0.1A/cm2とTbdの積の絶対値である。
【0096】
またグラフ(1)は参照の為に従来のCVD法により形成したSiO2膜(High Temperature Oxide:HTO)のQbd値を示し、グラフ(2)はO2と希ガスとしてのクリプトンの2存在下にSPAを用いて、上記のSiO2膜を圧力100mTorrでプラズマ処理して得たもののQbd値を表し、グラフ(3)は上記のSiO2膜をO2とクリプトンの存在下にSPAを用いて圧力500mTorrでプラズマ処理して得たもののQbd値を表し、グラフ(4)は同様に上記のSiO2膜をO2とクリプトンの存在下にSPAを用いて圧力900mTorrでプラズマ処理して得たもののQbd値を表す。
【0097】
図9のグラフから明らかなように、従来のCVD法により形成されるSiO2膜のQbd値に比較して、本発明の製造方法により改質されたSiO2膜のQbd値は高く、信頼性の高い高品質なデバイス特性が期待される。
【0098】
本発明の電子デバイス製造方法により、従来のCVD酸化膜より高品質の、高いQbd値を備えた酸化膜に改質形成することができた。
【0099】
(高品質の改質絶縁膜の推定メカニズム)
このように上述の方法により改質された絶縁膜の品質が高くなる理由は、本発明者の知見によれば、次のように推定される。
【0100】
即ち、SPAを用いて処理ガスにマイクロ波を照射することにより形成されるプラズマは、高密度かつ電子温度が比較的低いプラズマが形成される。そのため、高密度なラジカルを生成することができ、かつプラズマと被処理基体表面とのバイアスは比較的低い値に抑制され、プラズマダメージが小さい。そのためSiO2膜中のダングリングボンドがプラズマによって発生した酸素反応種により適度に終端され、弱いSi−Si結合が強固なSi−O−Si結合に変わることで図9に示したような良好な電気特性を持ったSiO2膜に改質形成されるものと考えられる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
単結晶シリコンを主成分とする被処理基体上に第1のSiO2膜を10nm程度形成し、前記被処理基体にCVD処理を施して前記第1のSiO2膜上に第1の多結晶シリコン層を100nm〜300nm程度形成する。その後前記被処理基体にCVDおよび高温酸化加熱処理を施して前記第1の多結晶シリコン層上に5〜10nm程度の厚さの第2のSiO2膜を形成する。
【0102】
形成された被処理体を400℃に加熱された載置台上に置き、その第2のSiO2膜表面をアルゴン1000sccm、酸素ガス50sccm、全圧500mTの雰囲気において、SPA(Slot Plain Antenna)を介して2W/cm2のマイクロ波を照射することにより生成したプラズマに2min.程度曝す。これらの工程をもって、CVD、高温加熱酸化処理を施された第2のSiO2膜を改質し、特性を改善させるものである。
【0103】
なお、本発明は上記した態様に限定されるものではない。例えば、上記態様では、二つの多結晶シリコン層25と28との間の絶縁層(SiO2層)26のみにSPAを介して生成した処理ガスプラズマを用いて表面処理を行なう構成としたが、上記以外の絶縁層、例えばSiO2層23、29の一方又は両方を上記と同様にしてSPAを介して生成した処理ガスプラズマを用いた表面処理を行なってもよい。
【0104】
また、二つの多結晶シリコン層25と28の表面をSPAを介して生成した処理ガスプラズマを用いて表面改質をすることで、二つの多結晶シリコン層の表面が平滑となり、多結晶シリコン層25と28の間の絶縁層26(SiO2やSiNで形成された層)の信頼性向上が期待できる。また、本工程の処理ガスに希ガスと窒素ガスを用いること等により25もしくは28の多結晶シリコンの耐酸化性を向上させ、後工程における多結晶シリコンの面積変動の抑制が期待できる。
【0105】
さらに、25の多結晶シリコン表面をSPAを介して生成した処理ガスプラズマを用いて酸化することで、26のSiO2を形成することも可能である。この工程は低温で処理を行うことが可能である。通常の熱酸化工程ではデバイス特性を高温により劣化させる恐れがあるが、本工程を用いることで熱工程によるデバイス特性の劣化(ドーパントの拡散など)を抑制しながら酸化膜を形成することが可能となる。
【0106】
その場合には25〜27の工程まで、大気に暴露することなく、かつ図1に示された半導体製造装置内において自動連続処理することが可能となり、半導体性能の信頼性向上および製造工程の簡素化が期待できる。
【0107】
(第2の態様)
以下に、本発明の第2の態様について説明する。この第2の態様においては、ロジックデバイスの製造工程で絶縁膜をSPAプラズマ処理により表面改質させる構成とした。
【0108】
図10は本態様に係るロジックデバイスの製造工程を示したフローチャートであり、図11は本態様に係るロジックデバイスの製造工程を模式的に示した模式的な垂直断面図である。
【0109】
本様態に関わるロジックデバイスの製造方法は大別して以下のような流れとなる。
素子分離→MOSトランジスタ作製→容量作製→層間絶縁膜成膜および配線
以下にSPAのプロセスが含まれるMOSトランジスタ作製の中の前工程であるMOS構造の作製について、一般的な例を挙げて解説を行う。
【0110】
1:基板
基板にはP型もしくはN型のシリコン基板を用い、比抵抗が1〜30Ωcm、面方位(100)のものを用いる。
【0111】
シリコン基板上には目的に応じ、STIやLOCOS等の素子分離工程やチャネルインプラが施されており、Gate酸化膜やGate絶縁膜が成膜されるシリコン基板表面には犠牲酸化膜が成膜されている(図11A)。
【0112】
2:Gate酸化膜(Gate絶縁膜)成膜前の洗浄
一般にAPM(アンモニア、過酸化水素水、純水の混合液)とHPM(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)およびDHF(フッ酸と純水の混合液)を組み合わせたRCA洗浄によって犠牲酸化膜と汚染要素(金属や有機物、パーティクル)を除去する。必要に応じ、SPM(硫酸と過酸化水素水の混合液)、オゾン水、FPM(フッ酸、過酸化水素水、純水の混合液)、塩酸水(塩酸と純水の混合液)、有機アルカリなどを用いる時もある。
【0113】
3:Gate酸化膜(Gate絶縁膜)の形成
Gate絶縁膜形成には熱酸化を用いるプロセスと、CVDを用いるプロセスに大別される。ここでは主にCVDによるGate絶縁膜の形成について述べる。CVDによるGate絶縁膜の形成は、原料ガス(例えばSiH4とN2O)を200℃から1000℃の範囲内で加熱した前述のシリコン基板上に供給し、熱によって形成された反応種(例えばSiラジカルとOラジカル)を膜表面にて反応させることで成膜(例えばSiO2)を行う。反応種はプラズマにより生成されることもある。一般にGate酸化膜の膜厚としては1nmから10nmの膜厚が用いられる(図11B)。
【0114】
4:SPAプラズマによるGate絶縁膜改質処理
3に述べたCVDによる絶縁膜に、SPAプラズマを形成するガスを希ガスと酸素を主とすることで酸化を施し、CVD膜の改質を行う。酸化による効果には、膜中の弱いSi−Si結合を強固なSi−O−Si結合に変えることで膜特性の改善を目指す効果などがある。また、SPAプラズマを形成するガスを希ガスと窒素を含むガスとすることで、プラズマ窒化処理を施すことも可能である。窒化による効果には、高誘電率化による薄膜化やGate電極からのドーパントの拡散抑制作用などがある。(図11B)
【0115】
5:Gate電極用ポリシリコン成膜
3、4で形成したGate絶縁膜(Gate酸化膜、Gate酸窒化膜を含む)上にMOSトランジスタのGate電極としてポリシリコン(アモルファスシリコンを含む)をCVD法にて成膜する。Gate絶縁膜の成膜されたシリコン基板を500℃から650℃の範囲内で加熱し、基板上にシリコンを含むガス(シラン、ジシラン等)を10から100Paの圧力下で導入することでGate絶縁膜上に膜厚50nmから500nmの電極用ポリシリコンを成膜する。Gate電極としてはポリシリコンの代替として、シリコンゲルマニウムやメタル(W、Ru、TiN、Ta、Moなど)が用いられることがある(図11C)。
【0116】
その後、Gateのパターンニング、選択エッチングを行い、MOSキャパシタを形成し(図11D)、イオンエッチングによるソース、ドレインを形成する(図11E)。続いて後工程となる層間絶縁膜の成膜、パターンニング、選択エッチング、メタルの成膜をみ合わせた配線工程を経て本様態に関わるロジックデバイスが得られる(図11F)。
【0117】
なお、本様態では絶縁膜として酸化膜(SiO2膜)を形成したが、それ以外の組成からなる絶縁膜を形成することも可能である。ゲート絶縁膜としては、従来より使われている低誘電率のSiO2、SiON、SiNや誘電率が高いAl2O3、ZrO2、HfO2、Ta2O5、およびZrSiO、HfSiO等のSilicateやZrAlO等のAluminateからなる群から選択される1又は2以上のものが挙げられる。
【0118】
本様態では、SPAを介して生成される低温高密度プラズマにより供給される活性原子が、膜表面もしくは膜中を終端させる効果を持つ以外にも、希ガスと窒素を含むガスからなるプラズマにより供給される窒素反応種が表面層に入り込むことで、多結晶シリコンからのドーパントの拡散を抑制するバリアとしての効果が期待できる。
【符号の説明】
【0119】
上記図面において、使用した符号の意味は、以下の通りである。
20 ウエハ(被処理基体)、
60 SPA(平面アンテナ部材)、
23 絶縁膜(第1のSiO2膜)、
32 プラズマ処理ユニット(プロセスチャンバ)、
33 CVD処理ユニット(プロセスチャンバ)、
47 加熱反応炉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜が形成された基板を真空容器内に搬入する工程と、
前記真空容器内に供給された処理ガスに300MHz以上2500MHz以下の周波数を有する高周波電力を供給することによりプラズマを生成し、前記プラズマにより、前記絶縁膜を改質する工程と、を含むプラズマ処理方法であって、
前記処理ガスは、希ガスと酸素を含む混合ガス、または希ガスと窒素を含む混合ガスであり、前記プラズマは、前記処理ガスが希ガスと酸素を含む混合ガスの場合、前記酸素ガスの流量を1〜1000sccm、前記希ガスの流量を200〜3000sccmとして、前記処理ガスが希ガスと窒素を含むガスの場合、窒素ガスの流量を10〜500sccm、前記希ガスの流量を200〜3000sccmとして生成されることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記絶縁膜を改質する工程は、室温〜700℃の温度且つ20〜5000mTorrの圧力で行われる請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
絶縁膜が形成された基板を真空容器内に搬入する工程と、
前記真空容器内に供給された処理ガスに300MHz以上2500MHz以下の周波数を有する高周波電力を供給することによりプラズマを生成し、前記プラズマにより、前記絶縁膜を改質する工程と、を含むプラズマ処理方法であって、
前記処理ガスは、希ガスと酸素を含む混合ガス、または希ガスと窒素を含む混合ガスであり、前記プラズマは、前記処理ガスが希ガスと酸素を含む混合ガスの場合、前記酸素ガスの流量を1〜1000sccm、前記希ガスの流量を200〜3000sccmとして、前記処理ガスが希ガスと窒素を含むガスの場合、窒素ガスの流量を10〜500sccm、前記希ガスの流量を200〜3000sccmとして生成され、
前記プラズマが、0.5〜2eVの電子温度を有し、
前記絶縁膜を改質する工程は、室温〜700℃の温度且つ20〜5000mTorrの圧力で行われることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記プラズマが、1×1010〜5×1012/cm3の密度を有する請求項1〜3の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記絶縁膜がSiO2、シリコン酸窒化膜(SiON)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、シリケート、およびアルミネートからなる群から選択される1または2以上であり、
前記シリケートがZrSiOもしくはHfSiOの組成であり、前記アルミネートがZrAlOもしくはHfAlOの組成である請求項1〜4の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記絶縁膜が、CVD、熱酸化またはプラズマを用いて形成される請求項1〜5の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に形成する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成する第1の多結晶シリコン層と、
前記第1の多結晶シリコン層上に形成する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上に形成する第2の多結晶シリコン層と、
前記第2の多結晶シリコン層上に形成する第3の絶縁膜と、
で構成する被処理基板の処理方法であって、
真空容器内に供給された処理ガスに300MHz以上2500MHz以下の周波数を有する高周波電力を供給することによりプラズマを生成し、前記プラズマにより、前記真空容器内で前記第2の絶縁膜を改質する工程を含み、
前記第2の絶縁膜を改質する工程では、
前記処理ガスが、希ガスと酸素を含む混合ガス、または希ガスと窒素を含む混合ガスであり、前記処理ガスが希ガスと酸素を含む混合ガスの場合、前記酸素ガスの流量を1〜1000sccm、前記希ガスの流量を200〜3000sccmとして、前記プラズマが生成され、前記処理ガスが希ガスと窒素を含むガスの場合、窒素ガスの流量を10〜500sccm、前記希ガスの流量を200〜3000sccmとして前記プラズマが生成され、
前記第2の絶縁膜を改質する工程が、室温〜700℃の温度且つ20〜5000mTorrの圧力で行われることを特徴とする処理方法。
【請求項8】
前記プラズマの電子温度が、0.5〜2eVである請求項7に記載の処理方法。
【請求項9】
前記第2の絶縁膜が、SiNまたはSiNとSiO2の積層からなる請求項7又は8に記載の処理方法。
【請求項10】
前記第1の絶縁膜がSiO2である請求項7〜9の何れか一項に記載の処理方法。
【請求項11】
前記プラズマの密度が、1×1010〜5×1012/cm3である請求項7〜10の何れか一項に記載の処理方法。
【請求項12】
前記被処理基板が、フラッシュメモリデバイスを構成する請求項7〜11何れか一項に記載の処理方法。
【請求項13】
前記第1の多結晶シリコン及び前記第2の多結晶シリコンの表面それぞれをプラズマで改質する工程を有する請求項7〜12の何れか一項に記載の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−62576(P2010−62576A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244636(P2009−244636)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【分割の表示】特願2006−239558(P2006−239558)の分割
【原出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】