説明

pFET材料としての金属酸窒化物を用いた半導体構造およびその製造方法

【課題】高k誘電体を含むゲート・スタック上において熱に対して安定な新規の金属化合物であって、金属炭化物の場合に起こるような炭素拡散を引き起こさない金属化合物を提供すること。
【解決手段】仕事関数が約4.75から約5.3、好ましくは約5eVであるp型金属であり、高k誘電体とインタフェース層とを含むゲート・スタック上で熱に対して安定なMOを含む金属化合物、およびこのMO金属化合物を製作する方法が提供される。さらに、本発明のMO金属化合物は、1000℃において非常に効率的な酸素拡散障壁であり、p金属酸化物半導体(pMOS)デバイスにおいて、非常に攻撃的な等価酸化膜厚(EOT)および14Å未満の反転層厚を可能にする。上式で、Mは元素周期表のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xは約5から約40原子%、yは約5から約40原子%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスおよび半導体デバイスを製造する方法に関する。詳細には本発明は、熱に対して安定なp型金属酸窒化物(例えばMO)化合物を高誘電率(k)誘電体/インタフェース層スタック上に含む相補型金属酸化物半導体(CMOS)デバイスに関する。本発明はさらに、熱に対して安定なp型金属化合物を形成するプロセスであって、CMOS処理フローに組み込むことができるプロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
標準CMOSデバイスにおける標準のゲート材料は一般にポリシリコンである。ポリシリコン・ゲートを使用したCMOSデバイスを製造する技術は絶え間なく開発が続けられており、この技術は現在、半導体産業において広く使用されている。ポリシリコン・ゲートを使用する1つの利点は、ポリシリコン・ゲートが高温に耐える点である。しかし、ポリシリコン・ゲートの使用に関連した問題もいくつかある。例えば、ポリ空乏効果(poly−depletion effect)および比較的に高い面積抵抗のため、CMOSデバイスにおいて一般的に使用されているポリシリコン・ゲートは、チャネル長0.1ミクロン以下のチップの性能のゲーティングファクター(gating factor)となっている。ポリシリコン・ゲートの他の問題は、ポリシリコン・ゲート中のホウ素などのドーパントは薄いゲート誘電体の中に容易に拡散することができ、これが、デバイス性能のさらなる低下を引き起こすことである。
【0003】
ポリシリコン・ゲートのこれらの問題を回避するため、ポリシリコン・ゲートを単一金属に置換することが提案された。このような技術は提案されたが、単一金属は、高k(誘電率約4.0超)誘電体/インタフェース層ゲート・スタック上で熱に対して安定でない。例えばタングステンWおよびレニウムReは、1000℃において安定性に問題がある。タングステンは、1000℃、5秒のアニール後に4〜5Åの界面SiO再成長を示し、このことはデバイス・スケーリングを制限し、Reは高kゲート・スタック上で安定でなく、このことはデバイス(移動度)の劣化につながる。例えばA.Callegari, et al., IEDM 2004, p.825, S. Francisco Ca., Dec. 13-15,2004およびNarayanan, et al., VLSI Digest 2004, Hawaii June 2004を参照されたい。
【0004】
1000℃における安定性は、自己整合金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)においてソース/ドレイン注入物を活性化するために必要である。また、高温アニールを実行すると高い電子移動度が得られることが報告されている。例えばA.Callegari, et al., IEDM 2004, p.825, S.Francisco Ca., Dec.13-15,2004を参照されたい。TiNなどの金属窒化物は、金属/高k誘電体の熱安定性を向上させるために広く使用されている。しかし、TiNに関して報告された文献の大部分は、TiNが、限定されたデバイス性能を有する可能性があるミッドギャップ材料であることを示している。
【0005】
2005年1月13日に出願された同一譲受人の同時係属U.S.SerialNo.U.S.Patent Application. No.11/034,597は、TiCを、上記の問題の可能な解決策であると述べている。金属炭化物は1000℃において電気的に安定であり、pFETのふるまいも維持されるが、中間層において炭素の拡散が起こる可能性があり、これが炭素汚染に寄与する可能性がある。
【特許文献1】U.S.Serial No.U.S.PatentApplication. No.11/034,597
【特許文献2】U.S.Serial No.10/250,241(現在U.S.PublicationNo.20040256700A1)
【特許文献3】U.S.Serial No.10/725,850
【特許文献4】U.S.Serial No.10/696,634
【非特許文献1】A.Callegari, et al., IEDM 2004,p.825, S.Francisco Ca., Dec.13-15, 2004
【非特許文献2】Narayanan, et al., VLSI Digest2004, Hawaii June 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のことを考慮すれば、高k誘電体を含むゲート・スタック上において熱に対して安定な新規の金属化合物であって、金属炭化物の場合に起こるような炭素拡散を引き起こさない金属化合物を提供することが求められている。特に、pFETデバイスにおいて有用な新規の金属化合物を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、仕事関数が約4.75から約5.3、好ましくは約5eVのp型金属であり、高k誘電体とインタフェース層とを含むゲート・スタック上で熱に対して安定なMOを含む新規の金属化合物を提供する。上式で、Mは元素周期表(CAS版)のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xは約5から約40原子%、yは約5から約40原子%である。Mは、Ti、V、Zr、Nb、Mo、W、Ta、HfおよびReのうちの1つであることが好ましい。xは好ましくは約5から約35原子%、最も好ましくは25原子%であり、yは好ましくは約15から約40原子%、最も好ましくは35原子%である。
【0008】
さらに、本発明のMO金属化合物は、非常に薄い(30nm以下)ときに、1000℃において非常に効率的な酸素拡散障壁であり、p金属酸化物半導体(pMOS)デバイスにおいて、非常にアグレッシブな等価酸化膜厚(EOT)および14Å未満の反転層厚を可能にする。さらに、このMO金属化合物は、金属炭化物の場合のような中間層における重大な炭素拡散を示さない。
【0009】
広く言えば本発明は、
半導体基板上に位置するインタフェース層と、インタフェース層上に位置する高k誘電体と、高k誘電体上に位置するMOゲート金属とを含み、Mが元素周期表のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xが約5から約40原子%、yが約5から約40原子%である
半導体構造、すなわち膜スタックを提供する。
【0010】
さらに本発明は、半導体基板と、前記基板の一部分の上に位置するインタフェース層、前記インタフェース層上に位置する高k誘電体、および前記高ゲート誘電体上に位置するMO金属化合物を少なくとも含むパターン形成されたゲート領域とを含み、Mが元素周期表のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xが約5から約40原子%、yが約5から約40原子%である半導体構造を提供する。
【0011】
上記の膜スタックおよび半導体構造に加え、本発明はさらに、MO金属化合物を製作する方法であって、金属ターゲットと、Ar、窒素および酸素を含む雰囲気とを準備するステップと、酸素を含む雰囲気中で金属ターゲットからMO膜をスパッタリングするステップとを含み、Mが元素周期表のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xおよびyが先に定義したとおりである方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、MO膜を形成する本発明のプロセスを使用して上記の半導体構造を製作する方法を提供する。一般的に言えば、この半導体構造は、最初に、高k誘電体とインタフェース層とを基板の表面に含むスタックを用意し、その後、上記のプロセス・ステップを利用して、このスタック上にMO膜を形成することによって形成される。
【0013】
このMO金属ゲートはゲート電極として単独で使用することができ、FETの製造中に、その上面に非水素含有キャップが形成される。用語「非水素含有」は、本出願全体を通じて、キャップを形成する際に水素が使用されないことを示すために使用される。
【0014】
なお、用語高k誘電体は、本出願全体を通じて、誘電率kがSiOよりも大きく、例えば誘電率kが4.0を超える絶縁材料を表すために使用される。高k誘電体のkは約7.0以上であることが好ましい。
【0015】
用語「インタフェース層」は、本出願全体を通じて、Siなどの半導体原子およびO原子を少なくとも含む絶縁材料を表すために使用される。SiOおよびSiONは、本発明において使用することができるさまざまなタイプのインタフェース層の例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本出願に添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。本発明は、高k誘電体とインタフェース層とを含むスタック上の熱に対して安定なp型金属ゲートとして使用することができるMO金属化合物、ならびにこの金属化合物を製作する方法を提供する。本出願の図面は例示目的で提供されるものであり、そのためそれらの図面は一様な尺度で描かれているわけではないことに留意されたい。
【0017】
最初に図1〜3を参照する。これらの図は、高k誘電体とインタフェース層とを含むスタック上に本発明のMO金属化合物を含む膜スタック構造を形成する際に使用する基本処理ステップを示す図である。図1は、半導体基板10の表面にインタフェース層12を含む初期膜スタック構造を示す。
【0018】
本発明において使用される半導体基板10は、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeC、Ga、GaAs、InAs、InPおよび他の全てのIV/IV、III/VまたはII/VI族化合物半導体を含む任意の半導体材料を含む。ただしこれらに限定されるわけではない。半導体基板10はさらに、有機半導体またはSi/SiGeなどの層状半導体を含み、あるいは例えばシリコン・オン・インシュレータ(SOI)、SiGe・オン・インシュレータ(SGOI)などのセミコンダクタ・オン・インシュレータを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では半導体基板10がSi含有半導体材料、すなわちシリコンを含む半導体材料からなることが好ましい。半導体基板10はドープされた基板またはドープされていない基板とすることができ、あるいは、ドープされた領域およびドープされていない領域をその中に含むことができる。
【0019】
半導体基板10はさらに、ドープされた第1の(nまたはp)領域およびドープされた第2の(nまたはp)領域を含むことができる。平明にするため、本出願の図面にはドープされた領域が特には示されていない。ドープされた第1の領域とドープされた第2の領域は同じとすることができ、ドープされた第1の領域とドープされた第2の領域はあるいは、異なる伝導性ないし異なるドーピング濃度を有し、またはその両方を有することができる。ドープされたこれらの領域は「ウェル」として知られている。半導体基板10は、ひずみが加えられた基板またはひずみが加えられていない基板とすることができ、あるいはその組合せとすることができる。さらに半導体基板10は、例えば100、110、111またはこれらの組合せを含む任意の結晶学的配向を有することができる。半導体基板10はあるいは、結晶学的配向が異なる少なくとも2つの平面を含むハイブリッド基板とすることができる。ハイブリッド基板は例えば、それぞれの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる2003年6月17日出願のU.S.Serial No.10/250,241(現在U.S.Publication No.20040256700A1)、2003年12月2日出願のU.S.SerialNo.10/725,850、および2003年10月29日出願のU.S.Serial No.10/696,634に記載されている技法などによって形成することができる。
【0020】
一般的には次いで、半導体基板10の中に少なくとも1つの分離領域(図示せず)が形成される。この分離領域は、トレンチ分離領域またはフィールド酸化膜分離領域とすることができる。トレンチ分離領域は、当業者によく知られている従来のトレンチ分離プロセスを利用して形成される。トレンチ分離領域を形成する際には例えば、リソグラフィ、エッチング、およびトレンチへのトレンチ誘電体の充填が使用される。任意選択で、トレンチ充填の前にトレンチの中にライナを形成し、トレンチ充填後に高密度化ステップを実行し、トレンチ充填に続いて平坦化プロセスを実行することもできる。フィールド酸化膜は、いわゆるLOCOS(local oxidation of silicon)プロセスを利用して形成することができる。なお、この少なくとも1つの分離領域は、隣接するゲート領域間の分離を提供し、このような分離は一般に、隣接するゲートどうしが反対の伝導性を有するときに必要となる。隣接するゲート領域は同じ伝導性を有することができ(すなわちともにn型かまたはp型)、あるいは異なる伝導性を有することができる(すなわち一方がn型でもう一方がp型)。
【0021】
次いで、酸化、酸窒化などの熱プロセス、化学蒸着(CVD)、プラズマCVD、原子層付着(ALD)、蒸着、スパッタリング、化学溶液付着などの付着プロセス、またはこれらの組合せを利用して、半導体基板10の表面にインタフェース層12を形成する。インタフェース層12はあるいは、付着プロセスおよび窒化を使用して形成することもできる。インタフェース層12は、例えばSiなどの半導体原子およびO原子を少なくとも含み、任意選択でN原子を含む。したがってインタフェース層12は、SiO、SiON、これらのケイ酸塩、またはこれらの多層を含むことができる。いくつかの実施形態ではインタフェース層12がSiOを含み、別の実施形態ではインタフェース層12がSiONを含む。インタフェース層12は、Siを約1から約80原子パーセント、一般に約1から約20原子パーセント含む。残りはO、またはOおよびNである。一般にNが存在しない化学酸化物が使用される。Siはインタフェース層12全体を通じて連続して存在することができ、またはSiの分布を徐々に変化させることができる。
【0022】
インタフェース層12の誘電率は一般に約4.0から約20であり、よりいっそう一般的には約4.5から約18である。インタフェース層12の厚さは一般に約0.1から約5nmであり、より一般的には約0.2から約2.5nmである。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、インタフェース層12が、湿式化学酸化によって形成された厚さ約0.6から約0.8nmの酸化シリコン層である。この湿式化学酸化のためのプロセス・ステップは、(HFラスト半導体表面などの)洗浄した半導体表面を、水酸化アンモニウムと過酸化水素と水(1:1:5)の混合物(65℃)で処理することを含む。インタフェース層12はあるいは、HFラスト半導体表面を、オゾン処理された水溶液で処理することによって形成することもでき、オゾン濃度は通常2ppm(parts per million)から40ppmである。
【0024】
次に、図2に示すように、インタフェース層12の表面に高k誘電体14を形成する。用語「高k」は、誘電率が4.0超、一般に約7.0以上の絶縁体を指す。本出願全体を通じて誘電率は真空中で測定される。高k誘電体14は、例えば酸化、窒化、酸窒化などの熱成長プロセスによって形成することができる。高k誘電体14はあるいは、例えば化学蒸着(CVD)、プラズマCVD、金属有機化学蒸着(MOCVD)、原子層付着(ALD)、蒸着、反応性スパッタリング、化学溶液付着などの付着プロセスによって形成することもできる。高k誘電体14は、上記のプロセスの任意の組合せを利用して形成してもよい。
【0025】
例を挙げると、本発明において使用される高k誘電体14は、酸化物、窒化物、酸窒化物または(金属ケイ酸塩および窒化金属ケイ酸塩を含む)ケイ酸塩、あるいはこれらの組合せを含む。一実施形態では高k誘電体14が、例えばHfO、ZrO、Al、TiO、La、SrTiO、LaAlO、Y、Ga、GdGaO、これらの混合物などの酸化物からなることが好ましい。高k誘電体14の非常に好ましい例には、HfO、ケイ酸ハフニウムおよび酸窒化ハフニウムシリコンが含まれる。
【0026】
高k誘電体14の物理的な厚さはさまざまであることができるが、一般に約0.5から約10nmであり、より一般的には約0.5から約3nmである。
【0027】
図2に示したスタック構造を形成した後、高k誘電体14の上にMO金属化合物層16を形成して、例えば図3に示す構造を得る。本発明によれば、Mは、元素周期表(CAS版)のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された少なくとも1種の金属を含む。Mは一般に、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびReのうちの1つであり、Tiが最も一般的である。上式において、xは約5から約40原子%であり、約5から約35原子%であることが好ましく、25原子%であることが最も好ましい。変量yは約5から約40原子%であり、約15から約40原子%であることが好ましく、35原子%であることが最も好ましい。したがって最も好ましい金属化合物はTi0.40.250.35である。
【0028】
MO金属化合物層16は、最初に、金属(M)ターゲットと、Ar、Nおよび酸素を含む雰囲気とを準備することによって形成する。この雰囲気中には酸素が、結果として生じる膜に約5から約40原子%の酸素を導入することができる濃度で存在する。次に、前記雰囲気中の前記金属ターゲットからMO膜をスパッタリングする。このスパッタリング・プロセスは従来の任意のスパッタリング装置の反応室内で実施される。本発明において使用される金属ターゲットは、前述の金属のうちの1種の金属の任意の固体源を含む。
【0029】
酸素は、以下の2つの方法の1つを利用してスパッタリング雰囲気中に導入することができる:(I)基板とターゲットが反応室内の互いの近くに配置される場合には、酸素リーク弁を使用して酸素を雰囲気中に導入することができる。(II)基板とターゲットがある距離(3インチ(7.62cm)超)によって分離される場合には、プレスパッタリングのバックグラウンド圧力によって酸素を導入することができる。バックグラウンド圧力は約1×10−4トル以下とすることができる。この場合、金属はこのスパッタリング・プロセス中に酸素を捕獲する。
【0030】
本発明において使用されるArおよびNの流量は、Arに関しては約1から約100sccm、N源に関しては約1から約100sccmである。より一般的には、Arの流量が約20sccm、Nの流量が約1.4sccmである。温度、ガス圧、時間などの他のスパッタリング条件は従来どおりであり、これらは当業者によく知られている。
【0031】
形成されるMO膜16の厚さは、使用するスパッタリング条件および製造するデバイスのタイプによって異なる。一般に、スパッタリング後のMO膜16の厚さは約1から約200nmであり、よりいっそう一般的には約30nm以下である。
【0032】
次いで、図3に示した構造を、置換ゲート・プロセスを含む従来の任意のCMOS処理フローを利用して、CMOSデバイス、例えばFETとして形成することができる。いくつかの実施形態では、MO層16の上に非水素含有キャップ18を形成することによって、図3に示したスタック構造を処理することができる。この特定の実施形態を図4〜7に示す。
【0033】
図4に示す実施形態では、MO層16の上に、アモルファス・シリコン、ドープされたアモルファス・シリコンなどの非水素含有キャップ18を形成する。「非水素含有」は、キャップ材料が水素を含まないことを意味する。キャップ18の存在は、以降の処理中に酸窒化金属層16が仕事関数の変化を経験することを防ぐことに留意されたい。キャップ18が存在しないときには仕事関数がミッドギャップに変化する傾向がある。キャップ18は、当技術分野でよく知られている従来の非水素含有付着プロセスを利用して形成する。キャップ18は一般に、in situ付着プロセスを利用して、または付着、イオン注入およびアニールによってドープされる。MOはp型金属であるのでドーパントはp型ドーパントである。本発明のこの時点で形成するキャップ18の厚さ(すなわち高さ)は、使用するプロセスによって変化させることができる。キャップ18の垂直厚さは一般に約20から約180nm、より一般的には約40から約150nmである。
【0034】
示されたこの処理実施形態では次いで、キャップ18およびMiO層16、さらに任意選択で高k誘電体14およびインタフェース層12を、リソグラフィおよびエッチングによってパターン形成して、パターン形成されたゲート領域またはスタック20を形成する。パターン形成された単一のゲート領域(またはスタック)20が示されているが、本発明は、パターン形成された複数のゲート領域(またはスタック)20を形成することを企図する。パターン形成された複数のゲート領域(またはスタック)を形成するときには、これらのゲート領域(またはスタック)が同じ寸法、すなわち同じ長さを有することができ、またはデバイス性能を向上させるためにさまざまな寸法を有することができる。本発明のこの時点におけるパターン形成されたそれぞれのゲート・スタック(または領域)20は、パターン形成されたMO層16を少なくとも含む。図5に、パターン形成されたゲート領域(またはスタック)20を形成した後の構造を示す。示されたこの実施形態では、本発明のこのステップの間に、キャップ18、MO層16、高k誘電体14およびインタフェース層12をエッチング、すなわちパターン形成する。
【0035】
このリソグラフィ・ステップは、図4に示したブランケット積層構造の上面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを所望の放射パターンで露光し、露光したフォトレジストを従来のレジスト現像液を利用して現像することを含む。次いでこのフォトレジスト・パターンを、1つまたは複数のドライ・エッチング・ステップを利用して構造に転写する。いくつかの実施形態では、ブランケット積層構造の1つの層にパターンを転写した後、パターン形成されたフォトレジストを除去する。他の実施形態では、エッチングが完了した後、パターン形成されたフォトレジストを除去する。
【0036】
パターン形成されたゲート領域(またはスタック)20を形成するために本発明において使用することができる適当なドライ・エッチング・プロセスには、反応性イオン・エッチング、イオン・ビーム・エッチング、プラズマ・エッチングまたはレーザ・アブレーションが含まれる。ただしこれらに限定されるわけではない。必ずというわけではないが、使用するドライ・エッチング・プロセスは一般に、下にある高k誘電体14を選択的に残し、したがって、このエッチング・ステップは一般に、高k誘電体14とインタフェース層12とを含むスタックを除去しない。しかし、いくつかの実施形態では図5に示すように、このエッチング・ステップを使用して、以前にエッチングしたゲート領域(またはスタック)の材料層によって保護されていない部分の高k誘電体14およびインタフェース層12を除去する。
【0037】
次に、必ずというわけではないが一般的には、パターン形成されたそれぞれのゲート領域(またはスタック)20の露出した側壁に少なくとも1つのスペーサ22を形成する。例えば図6を参照されたい。この少なくとも1つのスペーサ22は、酸化物、窒化物、酸窒化物、これらの任意の組合せなどの絶縁体からなる。この少なくとも1つのスペーサ22は付着およびエッチングによって形成する。この少なくとも1つのスペーサ22を形成する際には非水素含有プロセスを使用しなければならない。
【0038】
(続いて形成する)ソースおよびドレイン・シリサイド・コンタクトがゲート領域(またはスタック)20の縁の下側に侵入しないように、この少なくとも1つのスペーサ22の幅は十分に広くなければならない。一般に、最下部で測定したこの少なくとも1つのスペーサ22の幅が約20から約80nmであるとき、ソース/ドレイン・シリサイドはゲート領域(またはスタック)20の縁の下側に侵入しない。
【0039】
任意選択で、スペーサ形成の前に、ゲート領域(またはスタック)20を熱酸化、窒化または酸窒化プロセスにかけることによって、ゲート領域(またはスタック)20を不活性化することができる。このパッシベーションは、非水素含有プロセスを利用して実行することが好ましい。このパッシベーション・ステップは、ゲート領域(またはスタック)20の周囲に薄いパッシベーション材料層(図示せず)を形成する。このステップは、上記のスペーサ形成ステップの代わりに、または上記のスペーサ形成ステップとともに使用することができる。スペーサ形成ステップとともに使用するとき、スペーサの形成は、ゲート領域(またはスタック)20のパッシベーション・プロセスの後に実施する。
【0040】
次いで、基板内に、(スペーサを持ちまたはスペーサを持たない)ソース/ドレイン拡散領域24を形成する。ソース/ドレイン拡散領域24は、イオン注入およびアニール・ステップを利用して形成する。アニール・ステップは、その前の注入ステップによって注入されたドーパントを活性化する役目を果たす。イオン注入およびアニールの条件は当業者によく知られている。イオン注入およびアニール後に形成される構造を図7に示す。
【0041】
ソース/ドレイン拡散領域24はさらに、ソース/ドレイン注入の前に従来の延長注入を使用して形成された延長注入領域(区別して標識されてはいない)を含むことができる。この延長注入の後に活性化アニールを実施することができ、あるいは、延長注入の間に注入されたドーパントとソース/ドレイン注入の間に注入されたドーパントを、同じ活性化アニール・サイクルを使用して活性化することもできる。本明細書ではハロー注入(図示せず)も企図される。ソース/ドレイン延長部分は一般に深いソース/ドレイン領域よりも浅く、パターン形成されたゲート領域(またはスタック)20の縁と整列した縁を含む。
【0042】
次に、以前に除去しなかった場合、高k誘電体14の露出部分およびその下のインタフェース層12を、これらの絶縁材料を選択的に除去する化学エッチング・プロセスを利用して除去する。このエッチング・ステップは半導体基板10の上面で止まる。高k誘電体14の露出部分およびその下のインタフェース層12を除去する際には、任意の化学エッチング液を使用することができるが、一実施形態では希フッ化水素酸(DHF)を使用する。
【0043】
図7はさらに、ソース/ドレイン拡散領域24およびキャップ18の上にシリサイド領域26が存在することを示している。シリサイド領域26は、従来の任意のシリサイド化プロセスを利用して形成する。シリサイド化の前には一般に、ソース/ドレイン領域24と非水素含有キャップ18の両方の表面に、エピタキシャルSiなどのSi含有材料が形成される。基板がSi含有基板である実施形態では、キャップ18の上にだけSi含有材料を形成することができる。
【0044】
このシリサイド化プロセスは、シリサイド化する領域の上に、Co、Ti、W、Ni、Ptなどの導電性高融点金属、またはこれらの金属とC、Ge、Siなどの他の合金化添加剤との合金を形成することを含む。CVD、PECVD、スパッタリング、蒸着、めっきなどの従来の付着プロセスを使用することができる。任意選択で、この金属層の上に、この金属が酸化することを防ぐ障壁層を形成することができる。任意選択の障壁層の例には例えば、SiN、TiN、TaN、TiONおよびこれらの組合せが含まれる。金属を付着させた後、少なくともこの構造を、付着金属とSiとの間の反応および続いて起こる金属シリサイドの形成を引き起こす第1のアニールにかける。このアニールは一般に約250℃から約800℃、より一般的には約400℃から約550℃の温度で実行される。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1のアニールが、選択エッチング・プロセスに対して非常に抵抗性の、金属に富むシリサイド相を形成する。金属に富む相が生み出されるときには、低抵抗率シリサイドを形成するためにより高温の第2のアニールが必要となる。他の実施形態では、低抵抗率シリサイドを形成するのに第1のアニールだけで足りる。
【0046】
第1のアニールに続いて、ウェット・エッチング、反応性イオン・エッチング(RIE)、イオン・ビーム・エッチング、プラズマ・エッチングなどの従来のエッチング・プロセスを使用して、付着金属の反応していない残りの部分を除去する。
【0047】
このエッチング・プロセスの後に、必要に応じて第2のアニールを実行する。第2のアニールは一般に、第1のアニールよりも高温で実行される。この任意選択の第2のアニールの一般的な温度範囲は約550℃から約900℃である。
【0048】
当業者によく知られている処理ステップを利用して、金属相互接続を用いたBEOL(back−end−of−the−line)相互接続レベルの形成など、追加のCMOS処理を実施することができる。
【0049】
以下の実施例では、本発明のプロセスの一例、およびこのプロセスを使用してTiOを含むゲート・スタックを形成することによって得られるいくつかの利点を示す。
【実施例1】
【0050】
この実施例では、p型Siウェーハおよびn型Siウェーハの表面に、TiO/HfO/SiOスタックを形成した。SiOインタフェース層はSiウェーハの酸化によって形成した。SiOインタフェース層の厚さは約1nmである。次いでこのSiOインタフェース層上に、厚さ約3nmのHfO誘電体をMOCVDによって形成した。次いで、Ar/N雰囲気中でのTiターゲットからのスパッタリングによってTiO層を形成した。このスパッタリングは、ロング・スロー・システム(基板とターゲットの間の分離距離が6インチ(15.24cm))内で実行し、これにより、約1×10−7トルのプレスパッタリングのバックグラウンド圧力によってTi金属中に25原子パーセントの酸素が取り込まれた。TiO層の厚さは約30nmであった。
【0051】
スタックを形成した後、このスタックを、N中での1000℃の高速熱アニールにかけ、これとは別に450℃のフォーミング・ガス・アニールを実行した。図8に、n型基板上およびp型基板上におけるこのスタックのCV特性を示す。CVは10kHzで測定し、前後にトレースした。このトレースは、低電荷捕獲を示すヒステリシスを示さない。このCV特性は、1×1011電荷/cm未満の低界面状態を示し、理想的に見える。(両方の基板上の)これらのデバイスの仕事関数は、pMOSデバイスでは一般的である約5eV以上であったことに留意されたい。EOT(クラシカル)が約14Åでしかなかったことにも留意されたい。したがって、このスタックを使用して製造したpFETは、反転層厚約14Åで動作するはずであり、このゲート・スタック中に実現される高k誘電体のため、ゲート漏れはかなり(約4〜5桁)低減する。現行のSiO技術の反転層の厚さは約19Åであり、ゲート漏れははるかに大きい。
【0052】
本発明を、本発明の好ましい実施形態に関して具体的に示し説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の上記の変更および他の変更を実施することができることを当業者は理解されたい。したがって本発明は、説明し図示した形態および詳細には限定されず、添付の請求項の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】高k誘電体とインタフェース層とを含むスタック上にMO金属化合物をp型金属ゲートとして含む膜スタック構造を形成する際に使用するさまざまな処理ステップの1つを示す図(断面図)である。
【図2】高k誘電体とインタフェース層とを含むスタック上にMO金属化合物をp型金属ゲートとして含む膜スタック構造を形成する際に使用するさまざまな処理ステップの1つを示す図(断面図)である。
【図3】高k誘電体とインタフェース層とを含むスタック上にMO金属化合物をp型金属ゲートとして含む膜スタック構造を形成する際に使用するさまざまな処理ステップの1つを示す図(断面図)である。
【図4】非水素含有キャップ/ゲート金属自己整合FET構造を形成する本発明の基本処理ステップの1つを示す図(断面図)である。
【図5】非水素含有キャップ/ゲート金属自己整合FET構造を形成する本発明の基本処理ステップの1つを示す図(断面図)である。
【図6】非水素含有キャップ/ゲート金属自己整合FET構造を形成する本発明の基本処理ステップの1つを示す図(断面図)である。
【図7】非水素含有キャップ/ゲート金属自己整合FET構造を形成する本発明の基本処理ステップの1つを示す図(断面図)である。
【図8】N中での1000℃のアニールおよび続くフォーミング・ガス環境中でのアニールの後のTiO/HfO/SiOゲート・スタックの静電容量対電圧(CV)特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
10 半導体基板
12 インタフェース層
14 高k誘電体
16 MO金属化合物層
18 非水素含有キャップ
20 パターン形成されたゲート領域またはスタック
22 スペーサ
24 ソース/ドレイン拡散領域
26 シリサイド領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に位置するインタフェース層と、
前記インタフェース層上に位置し、二酸化シリコンよりも大きな誘電率を有する高k誘電体と、
前記高k誘電体上に位置するMOゲート金属と
を含み、
Mが元素周期表のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xが5から40原子%、yが5から40原子%である
半導体構造。
【請求項2】
前記インタフェース層がSi原子およびO原子を含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項3】
前記インターフェース層が、N原子を含む、請求項2に記載の半導体構造。
【請求項4】
前記インタフェース層がSiO、SiONまたはこれらのケイ酸塩を含む、請求項2に記載の半導体構造。
【請求項5】
前記高k誘電体がHfベースの材料である、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項6】
前記インタフェース層がSiOまたはSiONを含み、前記高k誘電体が、HfO、ケイ酸ハフニウムまたは酸窒化ハフニウムを含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記MOゲート金属の仕事関数が4.75から5.3eVである、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項8】
Mが、Ti、V、Zr、Nb、Mo、W、Ta、HfおよびReのうちの1つである、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項9】
MがTである、請求項8に記載の半導体構造。
【請求項10】
xが25原子%であり、yが35原子%である、請求項9に記載の半導体構造。
【請求項11】
前記MOゲート層の上にさらに非水素含有キャップを含む、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項12】
前記インタフェース層、前記高k誘電体および前記MOゲート金属がパターン形成されて、ゲート領域を形成した、請求項1に記載の半導体構造。
【請求項13】
MO金属化合物を製作する方法であって、
金属ターゲットと、Ar、窒素および酸素を含む雰囲気とを準備するステップと、
酸素を含む前記雰囲気中で前記金属ターゲットからMO膜をスパッタリングするステップと
を含み、
Mが元素周期表のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xが5から40原子%、yが5から40原子%である
方法。
【請求項14】
前記Arが1から100sccmの流量で供給され、前記Nの流量が1から100sccmである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸素が、リーク弁を利用して、または1×10−4トル以下のプレスパッタリングのバックグラウンド圧力によって導入される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
半導体構造を形成する方法であって、
高k誘電体とインタフェース層とを基板の表面に含むスタックを用意するステップと、
金属ターゲットと、Ar、窒素および酸素を含む雰囲気とを準備し、酸素を含む前記雰囲気中で前記金属ターゲットから前記MO膜をスパッタリングすることによって、前記スタック上にMO膜を形成するステップと
を含み、
Mが元素周期表のIVB、VB、VIBまたはVIIB族から選択された金属、xが5から40原子%、yが5から40原子%である
方法。
【請求項17】
前記Arが1から100sccmの流量で供給され、前記窒素が1から100sccmの流量で供給される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記酸素が、リーク弁を利用して、または1×10−4トル以下のプレスパッタリングのバックグラウンド圧力によって導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記MOゲート層の上に非水素含有キャップを形成するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記非水素含有キャップ、前記MO膜、および前記高k誘電体と前記インタフェース層とを含む前記スタックをパターン形成して、パターン形成されたゲート領域を形成するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−173796(P2007−173796A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322537(P2006−322537)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】