説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】MRAMを含む半導体装置において、MRAMの特性を向上することができる技術を提供する。
【解決手段】配線L3およびデジット配線DLを形成した層間絶縁膜IL3の表面に対してプラズマ処理を実施する。まず、半導体基板1Sをチャンバ内に搬入し、窒素を含有する分子(アンモニアガス)と窒素を含有しない不活性分子(水素ガス、ヘリウム、アルゴン)とからなる混合ガスをチャンバ内に導入する。このとき、窒素を含有する分子の流量よりも窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、混合ガスを導入し、混合ガスをプラズマ化してプラズマ処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、MRAM(Magnetic Random Access Memory)を含む半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−165388号公報(特許文献1)には、多層配線工程において、低誘電率膜の表面に形成される変質層に起因した埋め込み不良やリソグラフィの解像不良を抑制する技術が記載されている。具体的に、シリコン基板上の低誘電率膜に下層バリアメタル膜および下層金属膜を埋め込んで下層配線を形成する。そして、アルゴンを使用したプラズマ処理により低誘電率膜の表面に所定厚さのダメージ層を形成する。次に、ダメージ層を除去した後、低誘電率膜の表面に露出する変質層を改質する。この変質層の改質は、水素またはヘリウムを使用したプラズマ処理によって行なわれる。その後、下層配線の表面および改質した低誘電率膜の表面上に第1ライナ膜を形成するとしている。
【0003】
特開2003−142580号公報(特許文献2)には、銅配線層の突起の発生を防止し、かつ、銅の拡散を防止することを目的とする技術が記載されている。具体的には、まず、半導体基板の上方に形成された銅配線層の表面をアンモニアガス、窒素と水素との混合ガス、CFガス、Cガス、および、NFガスの群から選択されるガスのプラズマに曝す工程を有する。そして、銅配線層の表面をアンモニアガス、エチレンジアミンガス、β−ジケトンガス、アンモニアガスと炭化水素系ガスとの混合ガス、および、窒素ガスと炭化水素系ガスとの混合ガスの群から選択されるガス雰囲気、または、プラズマに曝す工程を有する。その後、銅配線層の上に銅拡散防止絶縁膜を形成する工程を有するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−165388号公報
【特許文献2】特開2003−142580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、新世代の不揮発性記憶装置として、MRAMデバイスが注目されている。MRAMデバイスは、半導体集積回路に形成された複数のメモリセルを用いて不揮発性のデータ記憶を行ない、かつ、メモリセルのそれぞれに対してランダムアクセスが可能な不揮発性記憶装置である。
【0006】
一般的に、MRAMデバイスのメモリセル(磁気記憶素子)は、磁化方向が固定された強磁性層からなる固定層(ピン層)と、外部磁界に応じて、その磁化方向が変化する強磁性層からなる記録層(フリー層)とが、非磁性層を介して配置されたスピンバルブ(Spin Valve)構造の磁気抵抗素子を含んでいる。そして、このスピンバルブ構造の磁気抵抗素子は、記録層の磁化方向の変化に応じて電気抵抗が変化するので、この磁気抵抗素子の電気抵抗の変化に応じてデータを記憶することで磁気抵抗素子をメモリとして動作させることができる。
【0007】
言い換えれば、MRAMデバイスのメモリセルは、磁性膜からなる固定層と記録層の間に極めて薄いトンネル絶縁膜が配置されている。この固定層と記録層の間にトンネル絶縁膜を介在させた構造は、磁気トンネル接合構造と呼ばれる。この磁気トンネル接合構造は、TMR(Tunneling Magneto Resistance)と呼ばれる磁気抵抗素子から構成される。
【0008】
磁気抵抗素子において、固定層での磁化方向は、一定の方向に固定される。一方、記録層での磁化方向は外部からの磁界により制御可能となっている。固定層の磁化方向と記録層の磁化方向が同じ方向を向いた平行状態である場合、磁気抵抗素子の固定層と記録層間を流れる電流の抵抗値が低くなる。逆に、固定層の磁化方向と記録層の磁化方向が反対方向を向いた反平行状態の場合、磁気抵抗素子の固定層と記録層間を流れる電流の抵抗値は高くなる。したがって、磁化方向の平行状態または反平行状態をデジタル値の「0」または「1」に関連づけて、抵抗値の変化を読み取ることにより、メモリとして動作させることができる。
【0009】
上述したMRAMでは、メモリセルを選択するために半導体基板上に形成されたMISFETと、情報を記憶する磁気記憶素子とを有しており、MISFETと磁気抵抗素子とは多層配線で接続されている。特に、MISFETは半導体基板上に形成されており、磁気抵抗素子は多層配線層に形成されている。例えば、磁気抵抗素子は、下部電極と、下部電極上に形成された固定層と、固定層上に形成されたトンネル絶縁膜と、トンネル絶縁膜上に形成された記録層と、記録層上に形成された上部電極から構成されている。そして、磁気抵抗素子の下部電極は、多層配線を介して半導体基板上に形成されているMISFETに接続されており、磁気抵抗素子の上部電極は、ビット線と接続されている。さらに、磁気抵抗素子の下部電極の下方には、磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるため、電流を流すことにより磁場を発生させるデジット配線が形成されている。このように構成されているMRAMでは、デジット配線とビット線に電流を流すことにより発生する合成磁場により、磁気抵抗素子の記録層の磁化方向を変化させて、磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えることができる。
【0010】
ここで、MRAMを構成する多層配線は、例えば、銅配線から形成されている。つまり、MRAMに限らず半導体装置では、近年、アルミニウムより低い抵抗値を有する銅が配線材料として使用されるようになってきており、この銅を加工して配線を形成する技術としてダマシン(Damascene)と呼ばれる配線形成技術が検討されている。このダマシン法は、シングルダマシン(Single-Damascene)法とデュアルダマシン(Dual-Damascene)法とに大別できる。
【0011】
シングルダマシン法は、例えば絶縁膜に配線溝を形成した後、その絶縁膜上および配線溝内に配線形成用の銅膜を堆積し、さらに、この銅膜を、例えば化学的機械的研磨法(CMP;Chemical Mechanical Polishing)によって配線溝内にのみ残るように研磨することにより、配線溝内に埋め込み配線を形成する方法である。
【0012】
また、デュアルダマシン法は、絶縁膜に配線溝および下層配線との接続を行うための接続孔を形成した後、その絶縁膜上、配線溝および接続孔内に配線形成用の銅膜を堆積し、さらに、堆積した銅膜をCMPによって配線溝および接続孔内にのみ残るように研磨することにより、配線溝および接続孔内に埋め込み配線を形成する方法である。
【0013】
このように半導体装置の配線を銅配線から構成することにより、配線の低抵抗化を実現することができ、配線を伝達する信号の遅延を防止することができる。特に、低抵抗な銅配線を使用する半導体装置では、さらに信号の遅延を防止するために、層間絶縁膜に酸化シリコン膜よりも低誘電率の低誘電率膜が使用される。すなわち、信号の遅延を抑制するには、配線の低抵抗化と配線間の寄生容量の低減することが有用であるため、配線に低抵抗な銅配線を使用し、かつ、層間絶縁膜に低誘電率膜を使用することが検討されている。
【0014】
銅配線は上述したようにダマシン法で形成されるが、銅配線を構成する銅原子は、シリコンや酸化シリコン中を移動しやすい性質を有している。このため、銅配線を直接、酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜に埋め込むように形成すると、銅原子が熱処理などによって層間絶縁膜やMISFETが形成されている半導体基板へ容易に拡散し、MISFETの電気的特性や層間絶縁膜の絶縁特性を劣化させることになる。このため、通常、層間絶縁膜に形成した溝の側面および底面にタンタルや窒化タンタルからなるバリア導体膜を形成し、このバリア導体膜を介して溝に埋め込むように銅膜が形成される。このように構成することにより、銅膜を構成する銅原子はバリア導体膜によって層間絶縁膜や半導体基板への拡散が抑制される。同様に、銅配線の上部には銅の拡散を防止するバリア絶縁膜(ライナー膜)が形成される。つまり、銅配線の上部には、例えば、窒化シリコン膜からなるバリア絶縁膜を形成して、銅配線の上部からの銅原子の拡散を抑制している。このとき、銅配線の表面とバリア絶縁膜との密着性を向上する観点から、銅配線を形成した後、銅配線の表面に対して、アンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を実施し、その後、銅配線上にバリア絶縁膜を形成している。
【0015】
ここで、MRAMでは、消費電力の低減と性能の向上を図るため、メモリセルの書き換え電流の低減と、メモリセル間の書き換え電流のばらつきの低減が求められている。具体的に、メモリセルの書き換え電流の低減を実現するためには、以下に示す手段が考えられる。第1の手段は、磁気抵抗素子とデジット配線との間の距離を短くすることである。このように構成することにより、磁気抵抗素子に供給する磁場を小さくすることなく、デジット配線を流れる電流を低減することができる。すなわち、デジット配線を流れる電流により磁場が発生するが、この磁場は、デジット配線を流れる電流の大きさが大きいほど大きくなるとともに、デジット配線に近い場所ほど大きくなる。したがって、デジット配線と磁気抵抗素子との間の距離を短くすれば、デジット配線を流れる電流を小さくしても、磁気抵抗素子に記憶されている情報の書き換えに必要な磁場の大きさを確保することができる。この結果、磁気抵抗素子の書き換え電流(デジット配線を流れる電流)を低減することができる。
【0016】
続いて、メモリセルの書き換え電流を低減する第2の手段は、デジット配線の構造を工夫することである。具体的に、デジット配線をクラッド配線構造とすることで、デジット配線を流れる電流によって発生した磁場を効率よく磁気抵抗素子に供給することができるのである。ここでいうクラッド配線とは、通常の銅配線と同様に、層間絶縁膜に形成された溝の側面および底面にバリア導体膜を形成し、このバリア導体膜上で溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成する構造をしているが、バリア導体膜が透磁率の高い強磁性体膜を含むように構成している点に特徴がある。このようにバリア導体膜が強磁性体膜を含むように構成されると、発生する磁場が強磁性体膜の内部に沿って通過する結果、通常、デジット配線(クラッド配線)を中心として同心円上に発生する磁場を、強磁性体膜の影響により、デジット配線の上部に配置されている磁気抵抗素子へ集中的に集めることができる。このことは、デジット配線に電流を流すことにより発生した磁場を効率よく磁気抵抗素子に供給できることを意味している。すなわち、デジット配線を流れる書き換え電流を低減しても、デジット配線をクラッド配線構造とすることにより、磁場の利用効率が上昇する結果、磁気抵抗素子に記憶されている情報の書き換えに必要な磁場の大きさを確保することができるのである。
【0017】
以上のように、MRAMにおいては、磁気抵抗素子とデジット配線との間の距離を短くするとともに、デジット配線をクラッド配線構造とすることにより、書き換え電流の低減を図ることができる。
【0018】
MRAMにおけるデジット配線も、バリア導体膜に強磁性体膜を含む点が通常の銅配線と相違するが、基本的にデジット配線の形成方法は、通常の銅配線の形成方法と同様の方法を適用できると考えられる。したがって、MRAMにおけるデジット配線を形成した後、デジット配線の表面とバリア絶縁膜との密着性を向上する観点から、デジット配線の表面に対して、アンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を実施し、その後、デジット配線上にバリア絶縁膜を形成することが考えられる。
【0019】
しかし、デジット配線の表面に対して、アンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を実施すると以下に示すような問題点が生じる。この問題点について説明する。
【0020】
まず、上述したプラズマ処理は、チャンバ内の温度を約400℃程度にして実施される。このときの熱処理によって、デジット配線(銅配線)を構成する銅原子が配線中で移動しやすくなり、粒界近傍で突起状の析出物(以下、ヒロックという)が発生しやすくなる。このようなヒロックが発生する場合、デジット配線と磁気抵抗素子との間の距離を充分に確保する必要が生じる。具体的には、デジット配線の上部にヒロックが発生すると、ヒロックが発生したデジット配線上にバリア絶縁膜を形成し、このバリア絶縁膜上に層間絶縁膜が形成されることになる。このとき、デジット配線と同層で他の銅配線も形成され、これらの銅配線に接続するビアを形成するため、バリア絶縁膜上に形成されている層間絶縁膜の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理で平坦化する。このCMP処理によって、デジット配線上に形成されているヒロックが露出し、この露出したヒロックから銅膜が溶解してデジット配線中に空洞欠陥が生じる。すると、空洞欠陥が生じたデジット配線上に磁気抵抗素子の下部電極が形成されることになる。この場合、空洞欠陥が生じたデジット配線の表面の凹凸(ラフネス)を反映して磁気抵抗素子の下部電極が形成され、この下部電極上に固定層を介して配置されるトンネル絶縁膜もデジット配線の凹凸が反映されてしまう。この結果、トンネル絶縁膜の均一性が劣化して磁気抵抗素子の抵抗値が変動してしまい、MRAMの書き換え特性や読み出し特性が劣化してしまう。
【0021】
このことから、デジット配線の表面に対して、アンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を実施する場合、デジット配線上にヒロックが発生することを考慮して、バリア絶縁膜上に形成される層間絶縁膜を厚くする必要がある。つまり、層間絶縁膜を厚くすることにより、層間絶縁膜に対してCMP処理を実施してもヒロックが露出しないようにする必要がある。このことは、デジット配線と層間絶縁膜上に形成される磁気抵抗素子との間の距離が大きくなることを意味し、デジット配線を流れる書き換え電流の低減を図ることができなくなることを意味する。
【0022】
さらに、デジット配線をクラッド配線から構成する場合には、上述したアンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理によって、メモリセル間で書き換え電流にばらつきが生じる問題点も発生する。例えば、クラッド配線構造の一例として、バリア導体膜に含まれる強磁性体膜をNiFe合金から形成する場合、上述したアンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理により、NiFe合金の一部が窒化され、例えば、強磁性体膜がNiFe合金とNiFeN合金が混在することになる。このNiFeN合金が形成される割合は、通常、複数のデジット配線ごとに異なると考えられる。このため、複数のデジット配線に同じ書き換え電流を流しても、デジット配線(クラッド配線)中の強磁性体膜の窒化されている割合が異なることから、各メモリセルに供給される磁場も異なることになる。このことは、各メモリセルに記憶されている情報を書き換えるために必要な磁場を与えるために、各デジット配線に流す書き換え電流が異なることを意味する。つまり、複数のメモリセル間で書き換え電流にばらつきが生じてしまうのである。
【0023】
このように、通常の銅配線を形成した後、銅配線とバリア絶縁膜との密着性を向上させるために行なわれるアンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を、そのまま、クラッド配線構造をしているデジット配線に適用する場合、MRAMの書き換え電流の低減だけでなく、書き換え電流のメモリセル間でのばらつきを抑制することも困難になる問題点が発生することを本発明者は見出した。
【0024】
本発明の目的は、MRAMを含む半導体装置において、MRAMの特性を向上することができる技術を提供することにある。
【0025】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0027】
代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、(a)半導体基板上にMISFETを形成する工程と、(b)前記MISFETの上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、(c)前記第1層間絶縁膜に第1溝を形成する工程とを有する。そして、(d)前記第1溝の側面および底面を覆う第1バリア導体膜を形成し、前記第1バリア導体膜上に前記第1溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第1溝内に第1配線を形成する工程と、(e)前記第1配線の表面と前記第1層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子からなる第1ガスを使用して第1プラズマ処理を実施する工程とを有する。さらに、(f)前記(e)工程後、前記第1配線および前記第1層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第1銅拡散防止膜を形成する工程と、(g)前記第1銅拡散防止膜上に第2層間絶縁膜を形成する工程と、(h)前記第2層間絶縁膜に第2溝を形成する工程とを有する。次に、(i)前記第2溝の側面および底面を覆うように、強磁性体膜を含む第2バリア導体膜を形成し、前記第2バリア導体膜上に前記第2溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第2溝内に第2配線を形成する工程と、(j)前記第2配線の表面と前記第2層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子と窒素を含有しない不活性分子とからなる第2ガスを使用し、かつ、前記窒素を含有する分子の流量よりも前記窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、第2プラズマ処理を実施する工程とを有する。続いて、(k)前記(j)工程後、前記第2配線および前記第2層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第2銅拡散防止膜を形成する工程と、(l)前記第2層間絶縁膜上に第3層間絶縁膜を形成する工程と、(m)前記第3層間絶縁膜上に磁気抵抗素子を形成する工程とを備える。ここで、前記第2配線は、前記第2配線に電流を流すことにより、前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を発生する機能を有する配線であることを特徴とするものである。
【0028】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、(a)半導体基板上にMISFETを形成する工程と、(b)前記MISFETの上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、(c)前記第1層間絶縁膜に第1溝を形成する工程とを有する。そして、(d)前記第1溝の側面および底面を覆う第1バリア導体膜を形成し、前記第1バリア導体膜上に前記第1溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第1溝内に第1配線を形成する工程と、(e)前記第1配線の表面と前記第1層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子からなる第1ガスを使用して第1プラズマ処理を実施する工程とを有する。さらに、(f)前記(e)工程後、前記第1配線および前記第1層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第1銅拡散防止膜を形成する工程と、(g)前記第1銅拡散防止膜上に第2層間絶縁膜を形成する工程と、(h)前記第2層間絶縁膜に第2溝を形成する工程とを有する。次に、(i)前記第2溝の側面および底面を覆うように、強磁性体膜を含む第2バリア導体膜を形成し、前記第2バリア導体膜上に前記第2溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第2溝内に第2配線を形成する工程とを有する。続いて、(j)前記第2配線の表面と前記第2層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子と窒素を含有しない不活性分子とからなる第2ガスを使用し、かつ、前記窒素を含有する分子の流量よりも前記窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、第2プラズマ処理を実施する工程とを有する。さらに、(k)前記(j)工程後、前記第2配線および前記第2層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第2銅拡散防止膜を形成する工程と、(l)前記第2銅拡散防止膜上に直接接触するように磁気抵抗素子を形成する工程とを備える。ここで、前記第2配線は、前記第2配線に電流を流すことにより、前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を発生する機能を有する配線であることを特徴とするものである。
【0029】
また、代表的な実施の形態による半導体装置は、(a)半導体基板の上方に形成された溝を有する層間絶縁膜と、(b)情報を記憶する磁気抵抗素子とを備える。そして、(c)前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を、電流を流すことにより発生させる機能を有し、強磁性体膜を含むバリア導体膜と銅を主成分とする銅膜とを前記層間絶縁膜に形成された前記溝に埋め込むように構成されたクラッド配線とを備える。さらに、(d)前記クラッド配線上に形成された銅拡散防止膜とを備える。ここで、前記銅拡散防止膜上に直接接触するように前記磁気抵抗素子が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0031】
MRAMを含む半導体装置において、MRAMの特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1における半導体チップのレイアウト例を示す図である。
【図2】MRAMの回路構成を示す回路ブロック図である。
【図3】実施の形態1における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図4】デジット配線が強磁性体膜を含まないように構成されている場合において、デジット配線を流れる電流によって発生する磁場を模式的に示す図である。
【図5】デジット配線が強磁性体膜を含むように構成されている場合において、デジット配線を流れる電流によって発生する磁場を模式的に示す図である。
【図6】従来技術の課題を説明する断面図である。
【図7】図6に続く従来技術の課題を説明する断面図である。
【図8】図7に続く従来技術の課題を説明する断面図である。
【図9】図8に続く従来技術の課題を説明する断面図である。
【図10】図9に続く従来技術の課題を説明する断面図である。
【図11】図10に続く従来技術の課題を説明する断面図である。
【図12】図11に続く従来技術の課題を説明する断面図である。
【図13】図12に続く従来技術の課題を説明する断面図である。
【図14】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図29】図28に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図32】図31に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図33】図32に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図34】図33に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図35】図34に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図36】図35に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図37】図36に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図38】図37に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図39】図38に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図40】図39に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図41】図40に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図42】図41に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図43】図42に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図44】実施の形態2における半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0034】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0035】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0036】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0037】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0038】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1における半導体チップのレイアウト例を示す平面図である。図1に示すように、本実施の形態1における半導体チップCHPには、CPU(中央演算処理装置、マイクロプロセッサユニット)1、MRAM(メモリユニット)2、周辺回路3、パワーライン4が形成されている。そして、半導体チップCHPの周辺部には、これらの回路と外部回路とを接続するための入出力用外部端子であるパッドPDが形成されている。
【0039】
CPU(回路)1は、中央演算処理部とも呼ばれ、コンピュータなどの心臓部にあたる。このCPU1は、記憶装置から命令を読み出して解読し、それに基づいて多種多様な演算や制御を行なうものであり、処理の高速性が要求される。したがって、CPU1を構成しているMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)には、半導体チップCHPに形成されている素子の中で、相対的に大きな電流駆動力が必要とされる。すなわち低耐圧MISFETで形成される。
【0040】
MRAM(回路)2は、記憶情報をランダムに、すなわち随時記憶されている記憶情報を読み出したり、記憶情報を新たに書き込んだりすることができるメモリであり、随時書き込み読み出しができるメモリとも呼ばれる。ICメモリとしてのRAMには、例えば、ダイナミック回路を用いたDRAM(Dynamic RAM)とスタティック回路を用いたSRAM(Static RAM)の2種類があるが、本実施の形態1では次世代デバイスであるMRAMを使用している。MRAM2は、磁気を利用した記憶素子であり、電子のスピンをメモリ素子として使用している。MRAM2の構造はDRAMと似ており、DRAMにおけるキャパシタを磁気トンネル接合素子に置き換えたような構造をしている。MRAM2は、記憶に磁化状態を使用しているため不揮発性メモリであり、DRAMなどとは相違して電源を切っても記憶状態が保持されるという特徴がある。さらに、MRAM2は、SRAMと同様に高速なランダムアクセス機能(数ナノ秒)を有している。つまり、MRAM2は、不揮発性メモリとして機能するだけでなく高速なランダムアクセス機能も有しているメモリ素子ということになる。
【0041】
周辺回路3は、CPU1およびMRAM2とともにシステムを構成するための回路であり、例えば、電源回路、クロック回路やリセット回路などから構成されている。この周辺回路3には、デジタル信号の処理を行なうデジタル回路やアナログ信号を処理するアナログ回路を含んでいる。アナログ回路は、時間的に連続して変化する電圧や電流の信号、すなわちアナログ信号を扱う回路であり、例えば、増幅回路、変換回路、変調回路、発振回路、電源回路などから構成されている。
【0042】
パワーライン4は、CPU1、MRAM2および周辺回路3を動作させるための電圧を供給するラインであり、電源ラインやグランドラインから構成されている。CPU1、MRAM2および周辺回路3は、このパワーライン4と直接的あるいは間接的に接続されており、パワーライン4からの電源供給によって動作できるようになっている。
【0043】
パッドPDは、半導体チップCHPの外部に接続される機器(回路)との入出力を行なうための外部接続端子として機能する。このパッドPDを介して半導体チップCHPに形成されているCPU1などに入力信号が入力されたり、CPU1からの出力信号がこのパッドPDを介して半導体チップCHPの外部に接続されている機器(回路)に出力されるようになっている。
【0044】
図1において、複数のパッドPDは、半導体チップCHPの周辺部に沿って配置されており、この複数のパッドPDに近接してパワーライン4が配置されている。パワーライン4の内側領域にはCPU1、MRAM2および周辺回路3が配置されている。つまり、CPU1、MRAM2および周辺回路3は、パワーライン4で囲まれた半導体チップCHPの中央領域に配置されている。
【0045】
続いて、MRAM2の内部構成について説明する。図2は、MRAM2の回路構成を示す図である。図2において、MRAM2は、外部からの制御信号およびアドレス信号に基づいて、特定のメモリセルにランダムアクセスを行ない、その後、アクセスした特定のメモリセルに対して、入力データDinの書き込みや出力データDoutの読み出しを実行するように構成されている。以下に、この機能を実現する回路構成について説明する。
【0046】
図2において、MRAM2は、行方向(横方向)にn行、列方向に(縦方向)にm列のようにマトリクス状に複数のメモリセルMCが配置されている。つまり、MRAM2は、行列状に配置された複数のメモリセルMCからなるメモリセルアレイを構成している。
【0047】
メモリセルアレイの行に沿って、ワード線WL1〜WLmと、ソース線SL1〜SLmが互いに並行して延在するように配置されている。さらに、メモリセルアレイの行に沿って、デジット線DL1〜DLmも並行して配置されている。一方、メモリセルアレイの列に沿って、ビット線BL1〜BLnが互いに並行して延在するように配置されている。すなわち、MRAM2を構成するメモリセルアレイにおいては、横方向(行方向)にワード線WL1〜WLmと、ソース線SL1〜SLmおよびデジッド線DL1〜DLmが並行して配置される一方、横方向と直交する縦方向(列方向)にビット線BL1〜BLnが配置されている。
【0048】
次に、メモリセルアレイの行列状の交点にはそれぞれ各メモリセルMCが形成されている。各メモリセルMCは、磁気トンネル接合構造をした磁気抵抗素子(磁気トンネル接合素子、磁気記憶素子)TMRと、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)からなるアクセストランジスタATRとを有している。磁気抵抗素子TMRとアクセストランジスタATRとは、磁気抵抗素子TMRを流れるトンネル電流の経路と、アクセストランジスタATRを流れるチャネル電流の経路とが直列接続されるように連結されている。具体的に、各メモリセルMCでは、アクセストランジスタATRのドレイン領域と磁気抵抗素子TMRが接続されるように構成されている。
【0049】
各メモリセルMCにおいて、アクセストランジスタATRのソース領域は、メモリセルアレイを構成するソース線(ソース線SL1〜SLmのいずれか)に接続されている。そして、アクセストランジスタATRのドレイン領域は、磁気抵抗素子TMRの一端に接続され、この磁気抵抗素子TMRの他端はメモリセルアレイを構成するビット線(ビット線BL1〜BLnのいずれか)に接続されている。さらに、アクセストランジスタATRのゲート電極は、メモリセルアレイを構成するワード線(ワード線WL1〜WLmのいずれか)に接続されている。
【0050】
続いて、MRAM2は、ワード線WL1〜WLmと接続されているワード線ドライバ帯WDを有している。このワード線ドライバ帯WDは、データの読み出し時(データアクセス時とも称される)において、列選択結果に応じ、データアクセスの対象となる特定のメモリセルMCに対応するワード線(ワード線WL1〜WLmのいずれか)を選択的に活性化する機能を有している。
【0051】
さらに、MRAM2は、読み出しデータを伝達するためのデータ線DWと、書き込みデータを伝達するための書き込みビット線WBLと、読み出しソース線RSLと、カラムデコーダCD1、CD2と、データ書込回路DWCと、データ読出回路DRCとを有している。
【0052】
読み出しソース線RSLは、ソース線SL1〜SLmのそれぞれとデータ読出回路DRCとを電気的に接続している。データ線DWは、ビット線BL1〜BLnと選択トランジスタを介して接続されており、ビット線BL1〜BLnとデータ書込回路DWCとを電気的に接続している。書き込みビット線WBLは、デジット線DL1〜DLmと選択トランジスタを介して接続されており、デジット線DL1〜DLmとデータ書込回路DWCとを電気的に接続している。
【0053】
データ書込回路DWCは、外部からライトイネーブル信号WEおよび入力データDinを入力すると、データ線DWおよび書き込みビット線WBLに所定の電圧を印加する機能を有している。データ読出回路DRCは、外部からリードイネーブル信号REを入力すると、読み出しソース線RSL上の電圧をセンスアンプで増幅し、図示しない参照抵抗の電圧値と比較する。そして、この比較結果に基づいて出力データDoutを出力する機能を有している。
【0054】
また、MRAM2は、メモリセルアレイのそれぞれの列に対応して選択トランジスタを有しており、この選択トランジスタのゲート電極がゲート電極CSG1〜CSGnで示されている。同様に、MRAM2は、メモリセルアレイのそれぞれの行に対応して選択トランジスタを有しており、この選択トランジスタのゲート電極がゲート電極WCSG1〜WCSGmで示されている。
【0055】
カラムデコーダCD1は、カラムアドレスCAをデコードした結果、この結果に基づいて、データ書き込み時およびデータ読み出し時のそれぞれにおいて、ゲート電極CSG1〜CSGnを選択的に活性化する機能を有している。活性化されたゲート電極(CSG1〜CSGnのいずれか)は、データ線DWを、対応するビット線(ビット線BL1〜BLnのいずれか)と電気的に接続する機能を有している。
【0056】
同様に、カラムデコーダCD2は、カラムアドレスCAをデコードした結果、この結果に基づいて、データ書き込み時およびデータ読み出し時のそれぞれにおいて、ゲート電極WCSG1〜WCSGmを選択的に活性化する機能を有している。活性化されたゲート電極(WCSG1〜WCSGmのいずれか)は、書き込みビット線WBLを、対応するデジット線(デジット線DL1〜DLmのいずれか)と電気的に接続する機能を有している。
【0057】
本実施の形態1におけるMRAM2の回路は上記のように構成されており、以下では、MRAM2のメモリセルの構造について説明する。
【0058】
図3は、MRAM2を構成するメモリセルの構成を示す断面図である。図3において、MRAM2を構成するメモリセルは、半導体基板1S上に形成されたアクセストランジスタATRと、このアクセストランジスタATRの上部に形成された多層配線と、多層配線が形成された配線層に形成されている磁気抵抗素子TMRとを備えている。
【0059】
まず、半導体基板1Sに形成されているアクセストランジスタATRの構成について説明する。図3に示すように、半導体基板1Sの表面(主面)には、複数の素子分離領域STIが形成されており、これらの素子分離領域STIで区画された活性領域にp型ウェルPWLが形成されている。p型ウェルPWLは、半導体基板1Sにボロンなどのp型不純物を導入して形成されたp型半導体領域である。
【0060】
このp型ウェルPWL上には、ゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成され、ゲート電極Gは、例えば、ポリシリコン膜PFとコバルトシリサイド膜CSの積層膜から形成されている。このコバルトシリサイド膜CSは、ゲート電極Gのゲート抵抗を低減するために形成されている。
【0061】
ゲート電極Gの両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSWは、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されている。ただし、サイドウォールSWの構成は、これに限らず、酸化シリコン膜の単層膜や窒化シリコン膜の単層膜から形成することもできる。
【0062】
サイドウォールSW下の半導体基板1S内には、半導体領域として、浅いn型不純物拡散領域EXが形成されている。そして、浅いn型不純物拡散領域EXの外側に深いn型不純物拡散領域NRが形成され、この深いn型不純物拡散領域NRの表面にコバルトシリサイド膜CSが形成されている。
【0063】
サイドウォールSWは、アクセストランジスタATRの半導体領域であるソース領域およびドレイン領域をLDD構造とするために形成されたものである。すなわち、アクセストランジスタのソース領域およびドレイン領域は、浅いn型不純物拡散領域EXと深いn型不純物拡散領域NRとコバルトシリサイド膜CSより形成されている。このとき、浅いn型不純物拡散領域EXの不純物濃度は、深いn型不純物拡散領域NRの不純物濃度よりも低くなっている。したがって、サイドウォールSW下のソース領域およびドレイン領域を低濃度の浅いn型不純物拡散領域EXとすることにより、ゲート電極Gの端部下における電界集中を抑制できる。
【0064】
以上のようにして、アクセストランジスタATRが形成されており、このアクセストランジスタATRの上部には多層配線が形成されている。以下に、多層配線の構成について説明する。図3に示すように、アクセストランジスタATRを形成した半導体基板1S上には、アクセストランジスタATRを覆うようにコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOS(tetra ethyl ortho silicate)とを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、このオゾンTEOS膜上に設けられたTEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通して、アクセストランジスタATRのドレイン領域に達するプラグPLG1が形成されている。このプラグPLG1は、例えば、チタン/窒化チタン膜(以下、チタン/窒化チタン膜はチタンとこのチタン上に設けられた窒化チタンで形成される膜を示す)よりなるバリア導体膜BCF1と、このバリア導体膜BCF1上に形成されたタングステン膜WF1をコンタクトホールCNT1に埋め込むことにより形成されている。チタン/窒化チタン膜は、タングステン膜を構成するタングステンがシリコン中へ拡散することを防止するために設けられている膜で、このタングステン膜が構成される際のWF(フッ化タングステン)を還元処理するCVD法において、フッ素アタックがコンタクト層間絶縁膜CILや半導体基板1Sになされてダメージを与えることを防ぐためのものである。なお、コンタクト層間絶縁膜CILは、酸化シリコン膜(SiO膜)、SiOF膜、あるいは、窒化シリコン膜のいずれかの膜から形成されていてもよい。
【0065】
続いて、コンタクト層間絶縁膜CIL上に第1配線層として配線L1が形成されている。具体的に、配線L1は、プラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたバリア絶縁膜BIF1と層間絶縁膜IL1に埋め込まれるように形成されている。つまり、バリア絶縁膜BIF1と層間絶縁膜IL1を貫通して底部でプラグPLG1が露出する配線溝WD1に、バリア導体膜BCF1と、銅を主体とする膜(以下、銅膜CF1と記載する)を埋め込むことにより、配線L1が形成されている。つまり、配線L1は、配線溝WD1の側面と底面を覆うように形成されたバリア導体膜BCF2と、バリア導体膜BCF2上で配線溝WD1を埋め込むように形成された銅膜CF1から形成されている。
【0066】
このようにバリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL1に形成された配線溝WD1に直接銅膜を形成せずにバリア導体膜BCF1を形成しているのは、銅膜CF1を構成する銅が熱処理などによって、半導体基板1Sを構成するシリコンへ拡散することを防止するためである。すなわち、銅原子のシリコンへの拡散定数は比較的大きいので容易にシリコン中へ拡散する。この場合、半導体基板1SにはアクセストランジスタATRなどの半導体素子が形成されており、これらの形成領域に銅原子が拡散すると耐圧不良などに代表される半導体素子の特性劣化を引き起こす。このことから、配線L1を構成する銅膜CF1から銅原子が拡散しないようにバリア導体膜BCF1が設けられているのである。つまり、バリア導体膜BCF1は、銅原子の拡散を防止する機能を有する膜であることがわかる。
【0067】
バリア導体膜BCF1は、例えば、タンタル膜、チタン膜、ルテニウム膜、タングステン膜、マンガン膜、あるいは、これらの窒化物膜や窒化珪化物膜のいずれかを含む膜から形成されている。さらに、銅膜CF1は、純粋な銅膜に限らず、銅を主成分とする膜から形成されている。具体的に、銅膜CF1は、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成されている。
【0068】
一方、バリア絶縁膜BIF1も、バリア導体膜BCF1と同様に、配線L1を構成する銅原子が、層間絶縁膜IL1や半導体基板1Sの内部へ拡散することを防止するために設けられている膜である。このバリア絶縁膜BIF1は、例えば、SiN膜(窒化シリコン膜)、SiON膜(酸窒化シリコン膜)、SiC膜(炭化シリコン膜)、SiCN膜(炭窒化シリコン膜)、SiCO膜のいずれかを含む膜から形成されている。また、層間絶縁膜は、酸化シリコン膜や酸化シリコン膜よりも低誘電率である低誘電率膜から形成されている。具体的に層間絶縁膜IL1は、例えば、SiOC膜、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−H結合を持つ酸化シリコン膜、又は、水素含有シルセスキオキサン)膜、あるいは、MSQ(メチルシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−C結合を持つ酸化シリコン膜、又は、炭素含有シルセスキオキサン)膜、TEOS膜、酸化シリコン膜、あるいは、SiOF膜から構成されている。
【0069】
次に、配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上には、バリア絶縁膜BIF2が形成されており、このバリア絶縁膜BIF2上に層間絶縁膜IL2が形成されている。バリア絶縁膜BIF2は、上述したバリア絶縁膜BIF1と同様の材料から構成されており、層間絶縁膜IL2は、層間絶縁膜IL1と同様の材料から形成されている。
【0070】
このバリア絶縁膜BIF2と層間絶縁膜IL2を貫通するように、配線溝WD2とビアホールV1が形成されている。そして、このビアホールV1を埋め込むようにプラグPLG2が形成されており、配線溝WD2を埋め込むように配線L2が形成されている。したがって、配線L2は、配線L1とプラグPLG2を介して電気的に接続されていることになる。配線L2は、配線溝WD2の側面および底面を覆うように形成されたバリア導体膜BCF3と、このバリア導体膜BCF3上で配線溝WD2を埋め込むように形成された銅膜CF2から形成されている。同様に、プラグPLG2は、ビアホールV1の側面および底面を覆うように形成されたバリア導体膜BCF3と、このバリア導体膜BCF3上でビアホールV1を埋め込むように形成された銅膜CF2から形成されている。
【0071】
なお、バリア導体膜BCF3は、バリア導体膜BCF2と同様の材料から形成されており、銅膜CF2も銅膜CF1と同様の材料から形成されている。
【0072】
続いて、配線L2を形成した層間絶縁膜IL2上には、バリア絶縁膜BIF3が形成されており、このバリア絶縁膜BIF3上に層間絶縁膜IL3が形成されている。バリア絶縁膜BIF3は、上述したバリア絶縁膜BIF1およびバリア絶縁膜BIF2と同様の材料から構成されており、層間絶縁膜IL3は、層間絶縁膜IL2と同様の材料から形成されている。
【0073】
このバリア絶縁膜BIF3と層間絶縁膜IL3を貫通するように、配線溝WD3とビアホールV2が形成されている。そして、このビアホールV2を埋め込むようにプラグPLG3が形成されており、配線溝WD3を埋め込むように配線L3が形成されている。したがって、配線L3は、配線L2とプラグPLG3を介して電気的に接続されていることになる。配線L3は、配線溝WD3の側面および底面を覆うように形成されたバリア導体膜BCF4と、このバリア導体膜BCF4上で配線溝WD3を埋め込むように形成された銅膜CF3から形成されている。同様に、プラグPLG3は、ビアホールV2の側面および底面を覆うように形成されたバリア導体膜BCF4と、このバリア導体膜BCF4上でビアホールV2を埋め込むように形成された銅膜CF3から形成されている。
【0074】
さらに、層間絶縁膜IL3には、配線L3と同層でデジット配線DLが形成されている。このデジット配線DLも、配線溝WD3の側面および底面を覆うように形成されたバリア導体膜BCF4と、このバリア導体膜BCF4上で配線溝WD3を埋め込むように形成された銅膜CF3から形成されている。
【0075】
ここで、配線L3の一部およびデジット配線DLの一部を構成するバリア導体膜BCF4の構成は、上述した配線L2の一部や配線L1の一部を構成するバリア導体膜BCF2やバリア導体膜BCF3の構成と異なっている。すなわち、バリア導体膜BCF4は、透磁率の高い強磁性体膜を含むように構成されている。例えば、バリア導体膜BCF4は、窒化タンタル膜と、この窒化タンタル膜上に形成された第1タンタル膜と、第1タンタル膜上に形成された強磁性体膜と、強磁性体膜上に形成された第2タンタル膜とからなる積層膜から構成されている。ただし、バリア導体膜BCF4を構成する強磁性体膜以外の膜は、タンタル膜、チタン膜、ルテニウム膜、タングステン膜、マンガン膜、あるいは、これらの窒化物膜や窒化珪化物膜のいずれかを含む膜から形成される場合もある。
【0076】
強磁性体膜は、例えば、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されている。
【0077】
次に、配線L3およびデジット配線DLを形成した層間絶縁膜IL3上には、バリア絶縁膜BIF4が形成されており、このバリア絶縁膜BIF4上に層間絶縁膜IL4が形成されている。バリア絶縁膜BIF4は、上述したバリア絶縁膜BIF1およびバリア絶縁膜BIF2と同様の材料から構成されており、層間絶縁膜IL4は、層間絶縁膜IL2や層間絶縁膜IL3と同様の材料から形成されている。
【0078】
そして、バリア絶縁膜BIF4と層間絶縁膜IL4を貫通するように、ビアホールV3が形成されている。このビアホールV3を埋め込むようにプラグPLG4が形成されている。したがって、プラグPLG4は、配線L3と電気的に接続されていることになる。プラグPLG4は、ビアホールV3の側面および底面を覆うように形成されたバリア導体膜BCF5と、このバリア導体膜BCF5上でビアホールV3を埋め込むように形成されたタングステン膜WF2から形成されている。なお、タングステン膜WF2の代わりに銅膜から形成してもよい。このとき、バリア導体膜BCF5は、例えば、バリア導体膜BCF2やバリア導体膜BCF3と同様の材料から形成されている。
【0079】
続いて、プラグPLG4を形成した層間絶縁膜IL4上に、磁気抵抗素子TMRが形成されている。以下に、この磁気抵抗素子TMRの構成について説明する。図3に示すように、まず、層間絶縁膜IL4に形成されたプラグPLG4と接続し、かつ、デジット配線DL上にまで延在するように下部電極BEが形成されている。この下部電極BEは、例えば、タンタル膜、窒化タンタル膜、チタン膜、窒化チタン膜、ルテニウム膜、ニッケル鉄クロム(NiFeCr)膜、あるいは、これらの積層膜を含む膜から形成されている。
【0080】
そして、この下部電極BE上に磁気抵抗素子TMRが形成されている。具体的に、磁気抵抗素子TMRは、下部電極BE上に形成された固定層FLと、固定層FL上に形成されたトンネル絶縁膜TIと、トンネル絶縁膜TI上に形成された記録層RLから形成されている。このとき、磁気抵抗素子TMRを構成する固定層FL、トンネル絶縁膜TIおよび記録層RLは、デジット配線DLの上方に形成されており、磁気抵抗素子TMRとデジット配線DLとは平面的に重なるような配置関係となっている。
【0081】
固定層FLは、磁化の方向が固定された層であり、外部磁場によって磁化されている方向が変化しないように構成されている。具体的に、固定層FLは、例えば、シード層となる第1非磁性層と、第1非磁性層上に形成された反強磁性層と、反強磁性層上に形成された第1強磁性層と、第1強磁性層上に形成された第2非磁性層と、第2非磁性層上に形成された第2強磁性層から構成されている。このように構成することにより、第2強磁性層の磁化方向を固定することができる。
【0082】
例えば、非磁性層は、結晶配向性を良好にする機能を有する層であり、タンタル膜、ルテニウム膜、アルミニウム膜、マグネシウム膜などの金属膜から形成されている。一方、反強磁性層は、例えば、プラチナマンガン(PtMn)膜、イリジウムマンガン(IrMn)膜などから形成されている。さらに、強磁性層は、例えば、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されている。
【0083】
続いて、トンネル絶縁膜TIは、固定層FLと記録層RLとを分離する層であり、かつ、固定層FLと記録層RLとの間にトンネル電流が流れる程度の厚さに制御されている。このトンネル絶縁膜TIは、例えば、酸化アルミニウム膜や酸化マグネシウム膜などの金属酸化物膜から形成されている。
【0084】
一方、記録層RLは、外部磁場によって磁化方向が可変となるように構成された層であり、強磁性体膜から形成されている。例えば、記録層RLは、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されている。
【0085】
続いて、記録層RL上に上部電極UEが形成されている。上部電極UEは、非磁性層から構成されており、例えば、タンタル膜やルテニウム膜から形成されている。このようにして、磁気抵抗素子TMRが形成されている。
【0086】
そして、磁気抵抗素子TMRを覆うように、絶縁膜IFと層間絶縁膜IL5が形成されている。この絶縁膜IFと層間絶縁膜IL5を貫通して上部電極UEに達するようにビアホールV4が形成されている。このビアホールV4の側面には、強磁性体膜を含むバリア導体膜BCF6が形成されており、さらに、バリア導体膜BCF6上でビアホールV4を埋め込むように銅膜CF4が形成されている。そして、ビアホールV4を埋め込んだ銅膜CF4は、層間絶縁膜IL5に形成された配線溝にも形成されており、銅膜CF4上にクラッド膜CLD1が形成さている。このようにして、バリア導体膜BCF6と、銅膜CF4とクラッド膜CLD1よりなるビット線BLが形成される。
【0087】
ここで、ビット線BLを構成するバリア導体膜BCF6およびクラッド膜CLD1は、強磁性体膜を含むように構成されている。この強磁性体膜は、例えば、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されている。また、銅膜CF4は、銅膜CF1〜銅膜CF3と同様の材質の膜から構成されている。以上のようにして、アクセストランジスタATRと、多層配線および磁気抵抗素子TMRを備えるメモリセルが構成されている。ここで、アクセストランジスタATRのドレイン領域と、磁気抵抗素子TMRの下部電極BE(固定層FL)は、多層配線を構成する配線L1〜配線L3を介して電気的に接続されている。そして、磁気抵抗素子TMRの上部電極UE(記録層RL)は、ビット線BLと電気的に接続されている。さらに、磁気抵抗素子TMRの下方にはデジット配線DLが配置されている。これにより、アクセストランジスタATRと磁気抵抗素子TMRとは直列接続されている。このようにして、本実施の形態1におけるMRAMのメモリセルが構成されている。
【0088】
次に、本実施の形態1のMRAMにおいて、デジット配線DLは強磁性体膜を含む膜から構成しているが、このように構成する利点について図面を参照しながら説明する。図4は、デジット配線DLが強磁性体膜を含まないように構成されている場合を示している、例えば、図4において、デジット配線DLは、窒化タンタル膜TANと、タンタル膜TAと、銅膜CF3の積層膜から形成されている。そして、デジット配線DLの上方に磁気抵抗素子TMRが配置されている。この状態で、デジット配線DLに電流I(書き換え電流の一部)を流すと、この電流Iにより磁場Hが発生する。磁場Hは、電流Iの周囲を囲むように同心円上に生成される。
【0089】
一方、図5は、デジット配線DLが強磁性体膜を含むように構成されている場合を示している。このようにデジット配線DLが強磁性体膜を含むように構成されている配線はクラッド配線(クラッド構造)と呼ばれることがある。この場合、例えば、デジット配線DLは、窒化タンタル膜TAN1と、タンタル膜TA1と、強磁性体膜FMと、タンタル膜TA2と銅膜CF3から構成されている。ここで、強磁性体膜FMと配線溝との間に窒化タンタル膜TAN1とタンタル膜TA1を設けている理由は、強磁性体膜FMが層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜に直接接触して、強磁性体膜FMが酸化されてしまうことを防止するためである。一方、強磁性体膜FMと銅膜CF3の間にタンタル膜TA2を形成している理由は、強磁性体膜FMを構成する原子が銅膜CF3へ拡散することを防止するためである。
【0090】
このように構成されているデジット配線DLに電流Iを流すと、磁場Hは同心円上に発生するのではなく、デジット配線DLを構成する強磁性体膜の内部を通過するようになる。つまり、電流Iによって発生する磁場Hは、透磁率の高い強磁性体膜の内部を通るため、磁場Hは、デジット配線DLの上方に配置されている磁気抵抗素子TMRへ集中的に集まる。つまり、デジット配線DLが強磁性体膜を含むように構成されると、発生する磁場Hが強磁性体膜の内部に沿って通過する結果、通常、デジット配線DL(クラッド配線)を中心として同心円上に発生する磁場を、強磁性体膜の影響により、デジット配線DLの上部に配置されている磁気抵抗素子TMRへ集中的に集めることができる。このことは、デジット配線DLに電流Iを流すことにより発生した磁場Hを効率よく磁気抵抗素子TMRに供給できることを意味している。すなわち、デジット配線DLを流れる電流Iを低減しても、デジット配線DLをクラッド配線構造とすることにより、磁場Hの利用効率が上昇する結果、磁気抵抗素子TMRに記憶されている情報の書き換えに必要な磁場の大きさを確保することができるのである。このように本実施の形態1によるMRAMによれば、デジット配線DLをクラッド構造とすることにより、磁気抵抗素子TMRの記録層RLの磁化方向を少ない書き換え電流で変化させることができる利点がある。
【0091】
ここで、実際に、磁気抵抗素子TMRの記録層RLの磁化方向を変化させるための磁場は、デジット配線DLに電流を流すことにより発生する磁場と、ビット線BLに電流を流すことにより発生する磁場との合成磁場を使用している。これは、デジット線DLを流れる電流による磁場だけで、記録層RLの磁化方向が変化してしまうように構成すると、デジット配線DL上に配置されているすべてのメモリセルで書き換えが起こってしまうからである。そこで、デジット配線DLとビット線BLの交差領域に配置されているメモリセルだけを書き換えることができるように、デジット配線DLとビット線BLの両方に電流を流し、デジット配線DLを流れることにより発生する磁場と、ビット線BLを流れることにより発生する磁場の合成磁場によってはじめて、記録層RLの磁化方向が変化するように構成している。したがって、ビット線BLに電流を流すことにより発生する磁場を効率よく記録層RLに集めることができるように、ビット線BLもクラッド構造をしている。つまり、本実施の形態1では、デジット配線DLとビット線BLをともにクラッド配線構造とすることにより、書き換え電流の低減を図ることができる。
【0092】
続いて、MRAMの動作について図3を参照しながら説明する。まず、書き込み動作について説明する。ビット線BLの所定方向に電流が流れ、かつ、デジット線DLに電流が流れると、両者の電流による第1合成磁界が磁気抵抗素子TMRに印加される。すると、磁気抵抗素子の記録層RLの磁化方向は第1合成磁界の方向(第1方向)に揃うようになる。
【0093】
一方、ビット線BLの上述した所定方向とは反対方向に電流が流れ、かつ、デジット線DLに電流が流れると、上述した第1合成磁界と異なる方向に第2合成磁界が発生する。すると、記録層RLの磁化方向は、この第2合成磁界の方向に揃うようになる。これにより、記録層RLの磁化方向は、上述した第1方向とは反対方向である第2方向に一致するようになる。
【0094】
このように、デジット線DLを通電するとともに、ビット線BLに流す電流の方向を制御することにより、記録層RLの磁化方向を第1方向と第2方向に制御することができる。このことは、記録層RLの磁化方向に対応づけて「0」および「1」の2値状態を記憶できることを意味している。その後、通電をオフにした状態であっても、記録層RLの磁化方向は保持される。なお、第1合成磁界や第2合成磁界が発生しても、固定層FLの磁化方向は変化しない。
【0095】
次に、読み出し動作について説明する。読み出し動作の場合、デジット線DLは関与せず、電流を以下のように流す。すなわち、アクセストランジスタATRをオン状態にした状態で、電流をビット線BL→磁気抵抗素子TMR→下部電極BE→プラグPLG4→配線L3→プラグPLG3→配線L2→プラグPLG2→配線L1→プラグPLG1→ドレイン領域(深いn型不純物拡散領域NR(左))→チャネル領域→ソース領域(深いn型不純物拡散領域NR(右))→ソース線(図示せず)の経路で供給する。これにより、磁気抵抗素子TMRを流れる電流の抵抗値の変化をセンスアンプ(図示せず)で検出する。このとき、記録層RLの磁化方向が固定層FLの磁化方向と平行であれば、磁気抵抗素子TMRの抵抗値は低くなる。一方、記録層RLの磁化方向が固定層FLの磁化方向と反平行であれば、磁気抵抗素子TMRの抵抗値は高くなる。したがって、記録層RLの2値状態は、磁気抵抗素子TMRの抵抗値の大小に反映されて外部に読み出される。このようにして、磁気抵抗素子TMRに記憶されている情報(データ)を読み出すことができる。このようなメモリセルをマトリクス状に配置することにより、大容量のMRAMを実現することができる。
【0096】
本実施の形態1におけるMRAMは上記のように構成されており、以下に、その特徴点について図3を参照しながら説明する。図3において、本実施の形態1におけるMRAMの第1特徴は、磁気抵抗素子TMRとデジット配線DLとの間の距離を短縮した点にある。これにより、デジット配線DLに流す書き換え電流を低減しても、磁気抵抗素子TMRに発生する磁場の大きさを確保できる。つまり、デジット配線DLに流れる書き換え電流によって発生する磁場は、書き換え電流の流れる方向に対して右ねじの進む同心円状に発生する。そしてデジット配線DLから距離が離れるほど磁場の大きさは小さくなる。言い換えれば、デジット配線DLに近いほど磁場が大きくなる。したがって、本実施の形態1のように、デジット配線DLと磁気抵抗素子TMRとの距離を近づけるように構成する場合、デジット配線DLに流す書き換え電流の大きさを小さくしても、充分に磁気抵抗素子TMRに記憶されている情報を書き換えることができる。このことは、磁気抵抗素子TMRに記憶されている情報を書き換えるための書き換え電流を低減することができることを意味し、MRAMの低消費電力化を推進することができることを意味している。
【0097】
具体的に、通常のMRAMでは、下部電極BEの底面とデジット配線DLの上面との間の距離は200nm程度であるが、本実施の形態1では、下部電極BEの底面とデジット配線DLの上面との間の距離を100nm程度としている。これにより、デジット配線DLと磁気抵抗素子TMRとの間の距離が約1/2となるので、同じ磁場を磁気抵抗素子TMRに発生させる場合、本実施の形態1におけるMRAMでは、発生する磁場Hと流す電流Iとの関係(H=I/(2πr))から、デジット配線DLに流す書き換え電流を約半分に低減することができる。
【0098】
さらに、本実施の形態1の第2特徴は、デジット配線DLを、強磁性体膜を含むクラッド配線構造としている点にある。これにより、デジット配線DLに書き換え電流を流すことにより発生する磁場を効率よく磁気抵抗素子TMRに集めることができる。この結果、磁気抵抗素子TMRに記憶されている情報を書き換える磁場を発生するために、デジット配線DLに流す書き換え電流の大きさを低減することができる。つまり、本実施の形態1におけるMRAMでは、磁気抵抗素子TMRとデジット配線DLとの間の距離を短縮する第1特徴点と、デジット配線DLをクラッド配線構造とする第2特徴点の相乗効果により、書き換え電流の低減を図ることができるという顕著な効果が得られる。
【0099】
このような構造を実現するためには、MRAMの製造方法を工夫する必要がある。このことについて説明する。すなわち、単純に従来から使用されているMRAMの製造方法を使用する場合には、本実施の形態1におけるMRAMを製造することが困難になることについて図面を参照しながら説明する。
【0100】
まず、図6に示すように、例えば、ダマシン法を使用することにより、層間絶縁膜IL3に配線L3およびデジット配線DLを形成する。このとき、配線L3およびデジット配線DLは、バリア導体膜BCF4と銅膜CF3の積層膜から形成されている。そして、配線L3およびデジット配線DLを構成するバリア導体膜BCF4は、強磁性体膜を含む膜から形成されている。したがって、デジット配線DLはクラッド配線構造をしているということができる。
【0101】
次に、銅膜CF3を埋め込んだデジット配線DLと、その後、デジット配線DL上に形成されるバリア絶縁膜との密着性を向上させるためにプラズマ処理を実施する。このプラズマ処理は、通常、デジット配線DLの表面に対して、アンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマを導入することにより行われる。このときのプラズマ処理は、チャンバ内の温度を約400℃程度にして実施される。したがって、プラズマ処理で実施される約400℃程度の熱処理によって、デジット配線(銅配線)を構成する銅原子が配線中で移動しやすくなり、粒界近傍で突起状の析出物(以下、ヒロックHRKという)が発生しやすくなる。実際に、図7では、上述したプラズマ処理によって、銅配線から構成されるデジット配線DLの表面(上面)に突起形状のヒロックHRKが形成されている。
【0102】
続いて、図8に示すように、ヒロックHRKが形成されたデジット配線DL上を含む層間絶縁膜IL3上にバリア絶縁膜BIF4を形成し、このバリア絶縁膜BIF4上に層間絶縁膜IL4を形成する。このとき、ヒロックHRKが形成されているデジット配線DL上に形成されているバリア絶縁膜BIF4および層間絶縁膜IL4は、ヒロックHRKの突起形状が反映されることになる。
【0103】
そして、図9に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL4およびバリア絶縁膜BIF4を貫通して配線L3の表面に達するビアホールV3を形成する。その後、図10に示すように、ビアホールV3内を含む層間絶縁膜IL4上にバリア導体膜BCF5を形成し、このバリア導体膜BCF5上にタングステン膜WF2を形成する。
【0104】
次に、図11に示すように、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法を使用することにより、層間絶縁膜IL4上に形成されている不要なタングステン膜WF2およびバリア導体膜BCF5を除去する。これにより、配線L3と接続するプラグPLG4が形成される。同時に、デジット配線DLの表面に形成されているヒロックHRKが露出する。
【0105】
すると、図12に示すように、露出したヒロックHRKから銅膜が溶解してデジット配線DL中に空洞欠陥DFが生じる。そして、図13に示すように、空洞欠陥DFが生じたデジット配線DL上に磁気抵抗素子の下部電極BEが形成される。この場合、空洞欠陥DFが生じたデジット配線DLの表面の凹凸(ラフネス)を反映して磁気抵抗素子の下部電極BEが形成され、この下部電極BE上に固定層を介して配置されるトンネル絶縁膜もデジット配線DLの凹凸が反映されてしまう。この結果、トンネル絶縁膜の均一性が劣化して磁気抵抗素子の抵抗値が変動してしまい、MRAMの書き換え特性や読み出し特性が劣化してしまうのである。
【0106】
このことから、デジット配線DLの表面に対して、アンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を実施する場合、デジット配線DL上にヒロックHRKが発生することを考慮して、バリア絶縁膜BIF4上に形成される層間絶縁膜IL4の膜厚を厚くする必要がある。つまり、層間絶縁膜IL4を厚くすることにより、層間絶縁膜IL4に対してCMP処理を実施してもヒロックHRKが露出しないようにする必要がある。このことは、デジット配線DLと層間絶縁膜IL4上に形成される磁気抵抗素子との間の距離が大きくなることを意味し、デジット配線DLを流れる書き換え電流の低減を図ることができなくなることを意味する。
【0107】
さらに、デジット配線DLをクラッド配線構造から構成する場合には、上述したアンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理によって、メモリセル間で書き換え電流にばらつきが生じる問題点も発生する。例えば、クラッド配線構造の一例として、バリア導体膜BCF4に含まれる強磁性体膜をNiFe合金から形成する場合、上述したアンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理により、NiFe合金の一部が窒化され、例えば、強磁性体膜がNiFe合金とNiFeN合金が混在することになる。このNiFeN合金が形成される割合は、通常、複数のデジット配線DLごとに異なると考えられる。このため、複数のデジット配線DLに同じ書き換え電流を流しても、デジット配線DL中の強磁性体膜の窒化されている割合が異なることから、各メモリセルに供給される磁場も異なることになる。このことは、各メモリセルに記憶されている情報を書き換えるために必要な磁場を与えるために、各デジット配線DLに流す書き換え電流が異なることを意味する。つまり、複数のメモリセル間で書き換え電流にばらつきが生じてしまうのである。
【0108】
このように、通常の銅膜CF3を形成した後、銅膜CF3とバリア絶縁膜BIF4との密着性を向上させるために行なわれるアンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を、そのまま、クラッド配線構造をしているデジット配線DLに適用する場合、MRAMの書き換え電流の低減だけでなく、書き換え電流のメモリセル間でのばらつきを抑制することも困難になる。
【0109】
つまり、クラッド配線構造をしているデジット配線DLを形成した後、通常行なわれるバリア絶縁膜との密着性を向上するためのアンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を実施すると、本実施の形態1のようなMRAM構造を実現することが困難になるのである。具体的には、デジット配線DLを形成した後、アンモニアガスや、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスによるプラズマ処理を実施する場合には、磁気抵抗素子の特性を維持するために、デジット配線DLと磁気抵抗素子との間の距離を大きくとる必要がある。さらに、デジット配線DLをクラッド配線構造とする場合、上述したプラズマ処理を実施すると、メモリセル間で書き換え電流のばらつきが生じてしまい、MRAMの特性が劣化することになる。
【0110】
したがって、磁気抵抗素子TMRとデジット配線DLとの間の距離を短縮する第1特徴点と、デジット配線DLをクラッド配線構造とする第2特徴点とを備える本実施の形態1におけるMRAMを製造するには工夫を施す必要があることがわかる。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0111】
まず、図14に示すように、ホウ素(B)などのp型不純物を導入したシリコン単結晶よりなる半導体基板1Sを用意する。このとき、半導体基板1Sは、略円盤形状をした半導体ウェハの状態になっている。そして、半導体基板1Sに素子間を分離する素子分離領域STIを形成する。素子分離領域STIは、素子が互いに干渉しないようにするために設けられる。この素子分離領域STIは、例えばLOCOS(local Oxidation of silicon)法やSTI(shallow trench isolation)法を用いて形成することができる。例えば、STI法では、以下のようにして素子分離領域を形成している。すなわち、半導体基板1Sにフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して素子分離溝を形成する。そして、素子分離溝を埋め込むように半導体基板上に酸化シリコン膜を形成し、その後、化学的機械的研磨法(CMP;chemical mechanical polishing)により、半導体基板上に形成された不要な酸化シリコン膜を除去する。これにより、素子分離溝内にだけ酸化シリコン膜を埋め込んだ素子分離領域STIを形成することができる。
【0112】
次に、素子分離領域STIで分離された活性領域に不純物を導入してp型ウェルPWLを形成する。p型ウェルPWLは、例えばホウ素などのp型不純物をイオン注入法により半導体基板1Sに導入することで形成される。
【0113】
続いて、p型ウェルPWLの表面領域にチャネル形成用の半導体領域(図示せず)を形成する。このチャネル形成用の半導体領域は、チャネルを形成するしきい値電圧を調整するために形成される。
【0114】
次に、図15に示すように、半導体基板1S上にゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成され、例えば熱酸化法を使用して形成することができる。ただし、ゲート絶縁膜GOXは、酸化シリコン膜に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、ゲート絶縁膜GOXを酸窒化シリコン膜(SiON)としてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜GOXと半導体基板1Sとの界面に窒素を偏析させる構造としてもよい。酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて膜中における界面準位の発生を抑制したり、電子トラップを低減する効果が高い。したがって、ゲート絶縁膜GOXのホットキャリア耐性を向上でき、絶縁耐性を向上させることができる。また、酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて不純物が貫通しにくい。このため、ゲート絶縁膜GOXに酸窒化シリコン膜を用いることにより、ゲート電極中の不純物が半導体基板1S側に拡散することに起因するしきい値電圧の変動を抑制することができる。酸窒化シリコン膜を形成するのは、例えば、半導体基板1SをNO、NOまたはNHといった窒素を含む雰囲気中で熱処理すればよい。また、半導体基板1Sの表面に酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GOXを形成した後、窒素を含む雰囲気中で半導体基板1Sを熱処理し、ゲート絶縁膜GOXと半導体基板1Sとの界面に窒素を偏析させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0115】
また、ゲート絶縁膜GOXは、例えば酸化シリコン膜より誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。従来、絶縁耐性が高い、シリコン−酸化シリコン界面の電気的・物性的安定性などが優れているとの観点から、ゲート絶縁膜GOXとして酸化シリコン膜が使用されている。しかし、素子の微細化に伴い、ゲート絶縁膜GOXの膜厚について、極薄化が要求されるようになってきている。このように薄い酸化シリコン膜をゲート絶縁膜GOXとして使用すると、MISFETのチャネルを流れる電子が酸化シリコン膜によって形成される障壁をトンネルしてゲート電極に流れる、いわゆるトンネル電流が発生してしまう。
【0116】
そこで、酸化シリコン膜より誘電率の高い材料を使用することにより、容量が同じでも物理的膜厚を増加させることができる高誘電率膜が使用されるようになってきている。高誘電率膜によれば、容量を同じにしても物理的膜厚を増加させることができるので、リーク電流を低減することができる。特に、窒化シリコン膜も酸化シリコン膜よりも誘電率の高い膜であるが、本実施の形態1では、この窒化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を使用することが望ましい。
【0117】
例えば、窒化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜として、ハフニウム酸化物の一つである酸化ハフニウム膜(HfO膜)が使用されるが、酸化ハフニウム膜に変えて、HfAlO膜(ハフニウムアルミネート膜)、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)のような他のハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。さらに、これらのハフニウム系絶縁膜に酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどの酸化物を導入したハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。ハフニウム系絶縁膜は、酸化ハフニウム膜と同様、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜より誘電率が高いので、酸化ハフニウム膜を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0118】
続いて、ゲート絶縁膜GOX上にポリシリコン膜PFを形成する。ポリシリコン膜PFは、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用して、アクセストランジスタ形成領域に形成されているポリシリコン膜PF中にリンや砒素などのn型不純物を導入する。
【0119】
次に、パターニングしたレジスト膜をマスクにしたエッチングによりポリシリコン膜PFを加工して、ゲート電極Gを形成する。
【0120】
ここで、ゲート電極Gには、ポリシリコン膜PF中にn型不純物が導入されている。このため、ゲート電極Gの仕事関数値をシリコンの伝導帯近傍(4.15eV)の値にすることができるので、アクセストランジスタのしきい値電圧を低減することができる。
【0121】
続いて、図16に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、ゲート電極Gに整合した浅いn型不純物拡散領域EXを形成する。浅いn型不純物拡散領域EXは、半導体領域である。
【0122】
次に、半導体基板1S上に酸化シリコン膜および窒化シリコン膜からなる積層膜を形成する。酸化シリコン膜および窒化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォールSWをゲート電極Gの側壁に形成する。サイドウォールSWは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜の単層膜や酸化シリコン膜の単層膜からなるサイドウォールSWを形成してもよい。
【0123】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、サイドウォールSWに整合した深いn型不純物拡散領域NRを形成する。深いn型不純物拡散領域NRは、半導体領域である。この深いn型不純物拡散領域NRと浅いn型不純物拡散領域EXによってソース領域が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域NRと浅いn型不純物拡散領域EXによってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を浅いn型不純物拡散領域EXと深いn型不純物拡散領域NRで形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0124】
このようにして、深いn型不純物拡散領域NRを形成した後、1000℃程度の熱処理を行なう。これにより、導入した不純物の活性化が行なわれる。
【0125】
その後、図17に示すように、半導体基板1S上にコバルト膜を形成する。このとき、ゲート電極Gに直接接するようにコバルト膜が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域NRにもコバルト膜が直接接する。
【0126】
コバルト膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、コバルト膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極Gを構成するポリシリコン膜PFとコバルト膜を反応させて、コバルトシリサイド膜CSを形成する。これにより、ゲート電極Gはポリシリコン膜PFとコバルトシリサイド膜CSの積層構造となる。コバルトシリサイド膜CSは、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、深いn型不純物拡散領域NRの表面においてもシリコンとコバルト膜が反応してコバルトシリサイド膜CSが形成される。このため、深いn型不純物拡散領域NRにおいても低抵抗化を図ることができる。
【0127】
そして、未反応のコバルト膜は、半導体基板1S上から除去される。なお、本実施の形態1では、コバルトシリサイド膜CSを形成するように構成しているが、例えば、コバルトシリサイド膜CSに代えてニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、あるいは、プラチナシリサイド膜を形成するようにしてもよい。以上のようにして、半導体基板1S上にアクセストランジスタATRを形成することができる。
【0128】
続いて、図18に示すように、アクセストランジスタATRを形成した半導体基板1S上にコンタクト層間絶縁膜CILを形成する。このコンタクト層間絶縁膜CILは、アクセストランジスタATRを覆うように形成される。具体的に、コンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOSとを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、TEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。なお、オゾンTEOS膜の下層に、例えば、窒化シリコン膜よりなるエッチングストッパ膜を形成してもよい。
【0129】
コンタクト層間絶縁膜CILをTEOS膜から形成する理由は、TEOS膜が下地段差に対する被覆性のよい膜であるからである。コンタクト層間絶縁膜CILを形成する下地は、半導体基板1SにアクセストランジスタATRが形成された凹凸のある状態である。つまり、半導体基板1SにアクセストランジスタATRが形成されているので、半導体基板1Sの表面にはゲート電極Gが形成されて凹凸のある下地となっている。したがって、凹凸のある段差に対して被覆性のよい膜でないと、微細な凹凸を埋め込むことができず、ボイドなどの発生原因となる。そこで、コンタクト層間絶縁膜CILには、TEOS膜が使用される。なぜなら、TEOSを原料とするTEOS膜では、原料であるTEOSが酸化シリコン膜となる前に中間体を作り、成膜表面で移動しやすくなるため、下地段差に対する被覆性が向上するからである。
【0130】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、コンタクト層間絶縁膜CILにコンタクトホールCNT1を形成する。このコンタクトホールCNT1は、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通して、半導体基板1Sに形成されているアクセストランジスタATRのドレイン領域に達するように加工される。
【0131】
続いて、コンタクト層間絶縁膜CILに形成したコンタクトホールCNT1に金属膜を埋め込むことによりプラグPLG1を形成する。具体的には、コンタクトホールCNT1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に、例えば、スパッタリングを使用してバリア導体膜BCF1となるチタン/窒化チタン膜(チタン膜とチタン膜上に形成された窒化チタン膜)を形成する。このチタン/窒化チタン膜は、タングステン膜を構成するタングステンがシリコン中へ拡散することを防止するために設けられている膜で、このタングステン膜が構成される際のWF(フッ化タングステン)を還元処理するCVD法において、フッ素アタックがコンタクト層間絶縁膜CILや半導体基板1Sになされてダメージを与えることを防ぐためのものである。
【0132】
そして、チタン/窒化チタン膜上にタングステン膜WF1を形成する。これにより、コンタクトホールCNT1の内壁(側壁および底面)にバリア導体膜BCF1が形成され、このバリア導体膜BCF1上でコンタクトホールCNT1を埋め込むようにタングステン膜WF1が形成される。その後、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されている不要なバリア導体膜BCF1およびタングステン膜WF1を、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法で除去する。これにより、コンタクトホールCNT1内にだけ、バリア導体膜BCF1とタングステン膜WF1を埋め込んだプラグPLG1を形成することができる。
【0133】
続いて、プラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CILの表面に対してプラズマ処理を実施する。具体的には、半導体基板1Sをチャンバ内に搬入し、アンモニアガス、あるいは、アンモニアガスと窒素ガスを含む混合ガスをチャンバ内に導入する。その後、チャンバ内の温度を約400℃とし、チャンバ内に導入したアンモニアガス、あるいは、混合ガスをプラズマ化する。これにより、プラズマ化されたアンモニアガスや窒素ガスによって、コンタクト層間絶縁膜CILの表面にプラズマ処理を施す。
【0134】
その後、図19に示すように、プラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に、例えば、CVD法を使用することにより、バリア絶縁膜BIF1を形成し、このバリア絶縁膜BIF1上に層間絶縁膜IL1を形成する。このバリア絶縁膜BIF1は、例えば、SiN膜(窒化シリコン膜)、SiON膜(酸窒化シリコン膜)、SiC膜(炭化シリコン膜)、SiCN膜(炭窒化シリコン膜)、SiCO膜のいずれかを含む膜から形成されている。また、層間絶縁膜IL1は、酸化シリコン膜や酸化シリコン膜よりも低誘電率である低誘電率膜から形成されている。具体的に層間絶縁膜IL1は、例えば、SiOC膜、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−H結合を持つ酸化シリコン膜、又は、水素含有シルセスキオキサン)膜、あるいは、MSQ(メチルシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−C結合を持つ酸化シリコン膜、又は、炭素含有シルセスキオキサン)膜、TEOS膜、酸化シリコン膜、あるいは、SiOF膜から構成されている。このとき、コンタクト層間絶縁膜CILの表面に対して、アンモニアガスによるプラズマ処理が実施されているので、コンタクト層間絶縁膜CILとバリア絶縁膜BIF1の密着性が向上する。
【0135】
そして、図20に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL1およびバリア絶縁膜BIF1を貫通する配線溝(トレンチ)WD1を形成する。この配線溝WD1は、層間絶縁膜IL1とバリア絶縁膜BIF1を貫通して底面がコンタクト層間絶縁膜CILに達するように形成される。これにより、配線溝WD1の底部でプラグPLG1の表面が露出することになる。
【0136】
その後、図21に示すように、配線溝WD1を形成した層間絶縁膜IL1上にバリア導体膜BCF2を形成する。具体的に、バリア導体膜BCF2は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。言い換えれば、バリア導体膜BCF2は、タンタル、チタン、ルテニウム、マンガンのいずれかの金属材料からなる金属材料膜、この金属材料とSi、N、O、Cのいずれかの元素との化合物膜のいずれかの膜から形成することができる。
【0137】
続いて、配線溝WD1の内部および層間絶縁膜IL1上に形成されたバリア導体膜BCF2上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解めっき法により銅膜CF1を形成する。この銅膜CF1は、配線溝WD1に埋め込まれるように形成される。この銅膜CF1は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。
【0138】
次に、図22に示すように、層間絶縁膜IL1上に形成された不要なバリア導体膜BCF2および銅膜CF1をCMP法で除去する。これにより、配線溝WD1にバリア導体膜BCF2と銅膜CF1を埋め込んだ配線L1を形成することができる。
【0139】
続いて、配線L1を形成した層間絶縁膜IL1の表面に対してプラズマ処理を実施する。具体的には、半導体基板1Sをチャンバ内に搬入し、アンモニアガス、あるいは、アンモニアガスと窒素ガスを含む混合ガスをチャンバ内に導入する。その後、チャンバ内の温度を約400℃とし、チャンバ内に導入したアンモニアガス、あるいは、混合ガスをプラズマ化する。これにより、プラズマ化されたアンモニアガスや窒素ガスによって、層間絶縁膜IL1の表面にプラズマ処理を施す。
【0140】
その後、図23に示すように、配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上に、例えば、CVD法を使用することにより、バリア絶縁膜BIF2を形成し、このバリア絶縁膜BIF2上に層間絶縁膜IL2を形成する。このバリア絶縁膜BIF2は、例えば、SiN膜(窒化シリコン膜)、SiON膜(酸窒化シリコン膜)、SiC膜(炭化シリコン膜)、SiCN膜(炭窒化シリコン膜)、SiCO膜のいずれかを含む膜から形成されている。また、層間絶縁膜IL2は、酸化シリコン膜や酸化シリコン膜よりも低誘電率である低誘電率膜から形成されている。具体的に層間絶縁膜IL1は、例えば、SiOC膜、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−H結合を持つ酸化シリコン膜、又は、水素含有シルセスキオキサン)膜、あるいは、MSQ(メチルシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−C結合を持つ酸化シリコン膜、又は、炭素含有シルセスキオキサン)膜、TEOS膜、酸化シリコン膜、あるいは、SiOF膜から構成されている。このとき、層間絶縁膜IL1の表面に対して、アンモニアガスによるプラズマ処理が実施されているので、配線L1や層間絶縁膜IL1とバリア絶縁膜BIF2の密着性が向上する。
【0141】
そして、図24に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL2およびバリア絶縁膜BIF2を貫通する配線溝(トレンチ)WD2とビアホールV1を形成する。この配線溝WD2とビアホールV1は、層間絶縁膜IL2とバリア絶縁膜BIF2を貫通している。すなわち、ビアホールV1の底面で配線L1の表面が露出することになる。
【0142】
その後、図25に示すように、配線溝WD2とビアホールV1を形成した層間絶縁膜IL2上にバリア導体膜BCF3を形成する。具体的に、バリア導体膜BCF3は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。言い換えれば、バリア導体膜BCF3は、タンタル、チタン、ルテニウム、マンガンのいずれかの金属材料からなる金属材料膜、この金属材料とSi、N、O、Cのいずれかの元素との化合物膜のいずれかの膜から形成することができる。
【0143】
続いて、配線溝WD2とビアホールV1の内部および層間絶縁膜IL2上に形成されたバリア導体膜BCF3上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解めっき法により銅膜CF2を形成する。この銅膜CF2は、配線溝WD2とビアホールV1に埋め込まれるように形成される。この銅膜CF2は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。
【0144】
次に、図26に示すように、層間絶縁膜IL2上に形成された不要なバリア導体膜BCF3および銅膜CF2をCMP法で除去する。これにより、配線溝WD2にバリア導体膜BCF3と銅膜CF2を埋め込んだ配線L2と、ビアホールV1にバリア導体膜BCF3と銅膜CF2とを埋め込んだプラグPLG2を形成することができる。
【0145】
続いて、配線L2を形成した層間絶縁膜IL2の表面に対してプラズマ処理を実施する。具体的には、半導体基板1Sをチャンバ内に搬入し、アンモニアガス、あるいは、アンモニアガスと窒素ガスを含む混合ガスをチャンバ内に導入する。その後、チャンバ内の温度を約400℃とし、チャンバ内に導入したアンモニアガス、あるいは、混合ガスをプラズマ化する。これにより、プラズマ化されたアンモニアガスや窒素ガスによって、層間絶縁膜IL2の表面にプラズマ処理を施す。
【0146】
その後、図27に示すように、配線L2を形成した層間絶縁膜IL2上に、例えば、CVD法を使用することにより、バリア絶縁膜BIF3を形成し、このバリア絶縁膜BIF3上に層間絶縁膜IL3を形成する。このバリア絶縁膜BIF3は、例えば、SiN膜(窒化シリコン膜)、SiON膜(酸窒化シリコン膜)、SiC膜(炭化シリコン膜)、SiCN膜(炭窒化シリコン膜)、SiCO膜のいずれかを含む膜から形成されている。また、層間絶縁膜IL3は、酸化シリコン膜や酸化シリコン膜よりも低誘電率である低誘電率膜から形成されている。具体的に層間絶縁膜IL1は、例えば、SiOC膜、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−H結合を持つ酸化シリコン膜、又は、水素含有シルセスキオキサン)膜、あるいは、MSQ(メチルシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−C結合を持つ酸化シリコン膜、又は、炭素含有シルセスキオキサン)膜、TEOS膜、酸化シリコン膜、あるいは、SiOF膜から構成されている。このとき、層間絶縁膜IL2の表面に対して、アンモニアガスによるプラズマ処理が実施されているので、配線L2や層間絶縁膜IL2とバリア絶縁膜BIF3の密着性が向上する。
【0147】
そして、図28に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL3およびバリア絶縁膜BIF3を貫通する配線溝(トレンチ)WD3とビアホールV2を形成する。この配線溝WD3とビアホールV2は、層間絶縁膜IL3とバリア絶縁膜BIF3を貫通している。すなわち、ビアホールV2の底面で配線L2の表面が露出することになる。なお、ビアホールV2と接続する配線溝WD3と同層で、デジット配線用の配線溝WD3も形成される。
【0148】
その後、図29に示すように、配線溝WD3とビアホールV2を形成した層間絶縁膜IL3上にバリア導体膜BCF4を形成する。具体的に、バリア導体膜BCF4の構成は、上述した配線L2の一部や配線L1の一部を構成するバリア導体膜BCF2やバリア導体膜BCF3の構成と異なっている。すなわち、バリア導体膜BCF4は、透磁率の高い強磁性体膜を含むように構成されている。例えば、バリア導体膜BCF4は、窒化タンタル膜と、この窒化タンタル膜上に形成された第1タンタル膜と、第1タンタル膜上に形成された強磁性体膜と、強磁性体膜上に形成された第2タンタル膜とからなる積層膜から構成されている。ただし、バリア導体膜BCF4を構成する強磁性体膜以外の膜は、タンタル膜、チタン膜、ルテニウム膜、タングステン膜、マンガン膜、あるいは、これらの窒化物膜や窒化珪化物膜のいずれかを含む膜から形成してもよい。
【0149】
バリア導体膜BCF4に含まれる強磁性体膜は、例えば、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されている。
【0150】
続いて、配線溝WD3とビアホールV2の内部および層間絶縁膜IL3上に形成されたバリア導体膜BCF4上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解めっき法により銅膜CF3を形成する。この銅膜CF3は、配線溝WD3とビアホールV2に埋め込まれるように形成される。この銅膜CF3は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。
【0151】
次に、図30に示すように、層間絶縁膜IL3上に形成された不要なバリア導体膜BCF4および銅膜CF3をCMP法で除去する。これにより、配線溝WD3にバリア導体膜BCF4と銅膜CF3を埋め込んだ配線L3と、ビアホールV2にバリア導体膜BCF4と銅膜CF3とを埋め込んだプラグPLG3を形成することができる。また、配線L3と同層で、配線溝WD3にバリア導体膜BCF4と銅膜CF3を埋め込んだデジット配線DLを形成することができる。本実施の形態1では、バリア導体膜BCF4が強磁性体膜を含む構成となっているので、デジット配線DLはクラッド配線構造となっている。
【0152】
続いて、配線L3およびデジット配線DLを形成した層間絶縁膜IL3の表面に対してプラズマ処理を実施する。このプラズマ処理に本実施の形態1の特徴がある。以下に、本実施の形態1の特徴であるプラズマ処理について説明する。
【0153】
まず、半導体基板1Sをチャンバ内に搬入し、窒素を含有する分子と窒素を含有しない不活性分子とからなる混合ガスをチャンバ内に導入する。このとき、窒素を含有する分子の流量よりも窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、混合ガスを導入し、混合ガスをプラズマ化してプラズマ処理を実施する。
【0154】
具体的には、窒素を含有する分子としてアンモニアガスを使用し、窒素を含有しない不活性分子として水素ガス、ヘリウム、あるいは、アルゴンを使用する。そして、窒素を含有しない不活性分子(水素ガス、ヘリウム、アルゴン)の流量に対する窒素を含有する分子(アンモニアガス)の流量が2%以下となるようにしてチャンバ内に混合ガスを導入する。このとき実施されるプラズマ処理の条件は、チャンバ内に圧力が560Pa、処理時間が20秒および電力が150Wとなっている。さらに、このプラズマ処理は、チャンバ内の温度が約280℃で実施される。
【0155】
このプラズマ処理の利点について説明する。第1の利点は、プラズマ処理の温度が280℃であり、アンモニアガスを単独で使用する従来のプラズマ処理の温度(約400℃)に比べて温度が低くなっている点である。これにより、銅配線から構成されているデジット配線DLの表面にプラズマ処理による熱負荷でヒロックが発生することを抑制できる。つまり、本実施の形態1におけるプラズマ処理では、処理温度を280℃程度に低くすることができるため、デジット配線DLの表面にヒロックが発生することを抑制できるのである。なぜなら、ヒロックはプラズマ処理による処理温度が高くなるほど発生しやすい性質を有しているからである。このように本実施の形態1では、デジット配線DLにヒロックが発生することを抑制できるので、デジット配線DL上に層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜に対してCMP処理を実施した場合にヒロックが露出することを抑制できる。これは、ヒロックが露出することによる空洞欠陥の発生を抑制できることを意味する。
【0156】
空洞欠陥が生じる場合、空洞欠陥が形成されたデジット配線DL上に磁気抵抗素子の下部電極が形成されることになる。この場合、空洞欠陥が生じたデジット配線の表面の凹凸(ラフネス)を反映して磁気抵抗素子の下部電極が形成される。この結果、下部電極上に固定層を介して配置されるトンネル絶縁膜もデジット配線DLの凹凸が反映されてしまう。このため、トンネル絶縁膜の均一性が劣化して磁気抵抗素子の抵抗値が変動してしまい、MRAMの書き換え特性や読み出し特性が劣化してしまう。
【0157】
これに対し、本実施の形態1では、上述したように、空洞欠陥の発生を抑制することができるので、デジット配線DL上の平坦性を確保することができる。このことから、磁気抵抗素子を構成するトンネル絶縁膜の均一性を維持することができ、MRAMの書き換え特性や読み出し特性の劣化を防止することができる。したがって、本実施の形態1では、デジット配線DL上の平坦性を確保することができ、MRAMの特性劣化を抑制できることから、デジット配線DLと磁気抵抗素子との間の距離を近づけることができる。このことは、デジット配線DLを流れる書き換え電流を低減できることを意味している。したがって、本実施の形態1におけるプラズマ処理を実施することにより、デジット配線DLの上面と磁気抵抗素子の下部電極の底面との間の距離を100nm以下とする構造を実現することができる。
【0158】
さらに第1の利点に関して、本実施の形態1におけるプラズマ処理では、プラズマ処理の処理時間が20秒であるという短時間である利点も有している。さらに、熱伝導率の高い水素ガスやヘリウムを使用していることにより、半導体基板1Sの実温度が処理温度である280℃よりも低くなるという利点もある。したがって、チャンバ内の温度を280℃で実施するという第1の利点とともに、本実施の形態1では、アンモニアガスを単独で使用する従来のプラズマ処理よりも処理時間が短いことと、熱伝導率の高い水素ガスやヘリウムガスを使用することの相乗効果により、ヒロックの発生を充分に抑制して、デジット配線DLの平坦性を向上することができる顕著な効果が得られる。
【0159】
次に、第2の利点は、プラズマ処理で窒素ガスを使用しないことと、アンモニアガスを不活性ガスで大幅に希釈している点にある。これにより、クラッド配線構造のデジット配線DLに含まれる強磁性体膜の窒化を抑制することができる。
【0160】
例えば、強磁性体膜をNiFe合金から形成する場合、アンモニアガスを単独で使用したり、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスを使用する従来のプラズマ処理では、高濃度のアンモニアガスによりNiFe合金の一部が窒化され、強磁性体膜がNiFe合金とNiFeN合金が混在することになる。この場合、NiFeN合金が形成される割合は、通常、複数のデジット配線DLごとに異なると考えられる。このため、複数のデジット配線DLに同じ書き換え電流を流しても、デジット配線DL中の強磁性体膜の窒化されている割合が異なることから、各メモリセルに供給される磁場も異なることになる。このことは、各メモリセルに記憶されている情報を書き換えるために必要な磁場を与えるために、各デジット配線DLに流す書き換え電流が異なることを意味する。つまり、複数のメモリセル間で書き換え電流にばらつきが生じてしまう。
【0161】
これに対し、本実施の形態1におけるプラズマ処理では、窒素ガスを使用せず、かつ、アンモニアガスを不活性ガスで大幅に希釈しているので、デジット配線DLを構成する強磁性体膜の窒化を抑制することができる。このため、強磁性体膜がほぼ窒化されないので、複数のデジット配線DLに含まれるそれぞれの強磁性体膜の組成が均一となる。したがって、複数のデジット配線DLに同じ書き換え電流を流す場合、各メモリセルに供給される磁場もほぼ均一になる。この結果、メモリセル間の書き換え電流のばらつきを低減することができるのである。
【0162】
ここで、窒素を含有する分子であるアンモニアガスは、銅配線からなるデジット配線DLとバリア絶縁膜との密着性を向上するために使用されるガスである。ただし、このアンモニアガス単独のプラズマ処理を実施すると、処理温度も高くなり、かつ、デジット配線DLに含まれる強磁性体膜の窒化が生じてしまう。そこで、本実施の形態1では、窒素を含有する分子であるアンモニアガスを使用するとともに、水素ガス、ヘリウム、アルゴンなどの不活性分子を混合している。これにより、プラズマ処理の処理温度を低くすることができるとともに、アンモニアガスの濃度を希釈することができる。つまり、本実施の形態1で導入される不活性分子(水素ガス、ヘリウム、アルゴン)は、プラズマ処理温度を低くできる機能を有するとともに、アンモニアガスの濃度を希釈する機能を有しているということができる。この結果、不活性分子を含む本実施の形態1におけるプラズマ処理では、プラズマ処理温度が低くできることにより、ヒロックの発生を抑制でき、デジット配線DLの上面の平坦性を向上できる。また、アンモニアガスの濃度を大幅に希釈することができることにより、デジット配線DLに含まれる強磁性体膜の窒化を抑制できるのである。したがって、デジット配線DLと磁気抵抗素子との距離を短縮し、かつ、デジット配線DLをクラッド配線構造とするMRAMを容易に実現することができる。すなわち、本実施の形態1における半導体装置の製造方法によれば、書き換え電流の低減と、書き換え電流のばらつきの低減を同時に実現する半導体装置を容易に実現することができる。
【0163】
なお、本実施の形態1におけるプラズマ処理では、デジット配線DLを形成した層間絶縁膜IL3とその後形成されるバリア絶縁膜との密着性を向上する観点から、アンモニアガスも含む混合ガスでプラズマ処理を実施している。ただし、デジット配線DLを構成する強磁性体膜の窒化をさらに抑制して、MRAMの特性向上を図る観点からは、アンモニアガスを含まないガスでプラズマ処理を実施することもできる。
【0164】
つまり、本実施の形態1におけるプラズマ処理を、窒素を含有しない不活性分子からなるガスを使用して実施することもできる。例えば、窒素を含有しない不活性分子からなるガスとして水素ガスを使用することができる。このとき実施されるプラズマ処理の条件は、例えば、水素ガスの流量が1000sccm、チャンバ内に圧力が560Pa、処理時間が20秒および電力が150Wとすることができる。
【0165】
続いて、その後の工程について説明する。図31に示すように、配線L3およびデジット配線DLを形成した層間絶縁膜IL3上に、例えば、CVD法を使用することにより、バリア絶縁膜BIF4を形成し、このバリア絶縁膜BIF4上に層間絶縁膜IL4を形成する。このバリア絶縁膜BIF4は、例えば、SiN膜(窒化シリコン膜)、SiON膜(酸窒化シリコン膜)、SiC膜(炭化シリコン膜)、SiCN膜(炭窒化シリコン膜)、SiCO膜のいずれかを含む膜から形成されている。また、層間絶縁膜IL4は、酸化シリコン膜などから形成されている。このとき、層間絶縁膜IL3の表面に対して、本実施の形態1によるプラズマ処理が実施されているので、配線L3、デジット配線DLや層間絶縁膜IL3とバリア絶縁膜BIF4の密着性が向上する。
【0166】
そして、図32に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL4およびバリア絶縁膜BIF4を貫通するビアホールV3を形成する。このビアホールV3の底面で配線L3の表面が露出することになる。
【0167】
その後、図33に示すように、ビアホールV3を形成した層間絶縁膜IL4上にバリア導体膜BCF5を形成する。具体的に、バリア導体膜BCF5は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。言い換えれば、バリア導体膜BCF5は、タンタル、チタン、ルテニウム、マンガンのいずれかの金属材料からなる金属材料膜、この金属材料とSi、N、O、Cのいずれかの元素との化合物膜のいずれかの膜から形成することができる。
【0168】
続いて、ビアホールV3の内部および層間絶縁膜IL4上に形成されたバリア導体膜BCF5上に、例えば、タングステン膜WF2をCVD法により形成する。なお、タングステン膜WF2に代えて銅膜を形成してもよい。
【0169】
次に、図34に示すように、層間絶縁膜IL4上に形成された不要なバリア導体膜BCF5およびタングステン膜WF2をCMP法で除去する。これにより、ビアホールV3にバリア導体膜BCF5とタングステン膜WF2を埋め込んだプラグPLG4を形成することができる。
【0170】
そして、図35に示すように、プラグPLG4を形成した層間絶縁膜IL4上に下部電極BEを形成し、この下部電極BE上に固定層FLを形成する。その後、固定層FL上にトンネル絶縁膜TIを形成し、このトンネル絶縁膜TI上に記録層RLを形成する。さらに、記録層RL上に上部電極UEを形成する。
【0171】
下部電極BEは、例えば、タンタル膜、窒化タンタル膜、チタン膜、窒化チタン膜、ルテニウム膜、ニッケル鉄クロム(NiFeCr)膜、あるいは、これらの積層膜を含む膜から形成される。また、固定層FLは、非磁性膜、反強磁性体膜および強磁性体膜を含む積層膜から形成される。このとき、非磁性層は、タンタル膜、ルテニウム膜、アルミニウム膜、マグネシウム膜などの金属膜から形成される。一方、反強磁性層は、例えば、プラチナマンガン(PtMn)膜、イリジウムマンガン(IrMn)膜などから形成される。さらに、強磁性層は、例えば、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されている。
【0172】
さらに、トンネル絶縁膜TIは、例えば、酸化アルミニウム膜や酸化マグネシウム膜などの金属酸化物膜から形成される。一方、記録層RLは、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成される。また、上部電極UEは、例えば、タンタル膜やルテニウム膜から形成される。
【0173】
続いて、図36に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、上部電極UE、記録層RL、トンネル絶縁膜TIおよび固定層FLをパターニングする。これにより、記録層RLとトンネル絶縁膜TIと固定層FLを含む磁気抵抗素子TMRを形成することができる。この磁気抵抗素子TMRは、デジット配線DLの上方に位置するように形成される。
【0174】
次に、図37に示すように、磁気抵抗素子TMRを形成した下部電極BE上に絶縁膜IFを形成し、この絶縁膜IF上にレジスト膜FRを形成する。そして、このレジスト膜FRに対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FRをパターニングする。レジスト膜FRのパターニングは、下部電極BEを残す領域にレジスト膜FRが残るように行なわれる。
【0175】
そして、図38に示すように、パターニングしたレジスト膜FRをマスクにしたエッチングにより、絶縁膜IFと下部電極BEを加工する。その後、図39に示すように、磁気抵抗素子TMRを形成した層間絶縁膜IL4上に層間絶縁膜IL5を形成する。層間絶縁膜IL5は、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。
【0176】
続いて、図40に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL5に配線溝WD4およびビアホールV4を形成する。このとき、ビアホールV4は、層間絶縁膜IL5と絶縁膜IFを貫通して、磁気抵抗素子TMRの上部電極UEを露出するように形成される。
【0177】
次に、図41に示すように、配線溝WD4およびビアホールV4を形成した層間絶縁膜IL5上にバリア導体膜BCF6を形成する。具体的に、バリア導体膜BCF6の構成は、上述した配線L2の一部や配線L1の一部を構成するバリア導体膜BCF2やバリア導体膜BCF3の構成と異なっている。すなわち、バリア導体膜BCF6は、透磁率の高い強磁性体膜を含むように構成されている。例えば、バリア導体膜BCF6は、窒化タンタル膜と、この窒化タンタル膜上に形成された第1タンタル膜と、第1タンタル膜上に形成された強磁性体膜と、強磁性体膜上に形成された第2タンタル膜とからなる積層膜から構成されている。ただし、バリア導体膜BCF6を構成する強磁性体膜以外の膜は、タンタル膜、チタン膜、ルテニウム膜、タングステン膜、マンガン膜、あるいは、これらの窒化物膜や窒化珪化物膜のいずれかを含む膜から形成してもよい。
【0178】
バリア導体膜BCF6に含まれる強磁性体膜は、例えば、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されている。
【0179】
その後、図42に示すように、アルゴンを使用したスパッタエッチング法により、配線溝WD4の底面およびビアホールV4の底面に形成されているバリア導体膜BCF6の一部を除去する。具体的には、強磁性体膜および第2タンタル膜を除去する。これにより、配線溝WD4の側面とビアホールV4の側面にだけ強磁性体膜および第2タンタル膜が形成され、配線溝WD4の底面とビアホールV4の側面には窒化タンタル膜および第1タンタル膜が残っていることになる。
【0180】
続いて、図43に示すように、配線溝WD4とビアホールV4の側面に形成されたバリア導体膜BCF6と層間絶縁膜IL5上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解めっき法により銅膜CF4を形成する。この銅膜CF4は、配線溝WD4とビアホールV4に埋め込まれるように形成される。この銅膜CF4は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。
【0181】
次に、層間絶縁膜IL5上に形成された不要な銅膜CF4をCMP法で除去する。これにより、銅膜CF4とバリア導体膜BCF6からなるビット線BLを形成することができる。その後、図3に示すように、ビット線BLを構成する銅膜CF4上にクラッド膜CLD1を形成することにより、バリア導体膜BCF6と銅膜CF4とクラッド膜CLD1からなるビット線BLを形成することができる。クラッド膜CLD1は、例えば、強磁性体膜を含む膜から構成されている。本実施の形態1では、ビット線BLを構成するバリア導体膜BCF6およびクラッド膜CLD1が強磁性体膜を含む構成となっているので、ビット配線BLはクラッド配線構造となっている。以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。
【0182】
なお、上述したように、バリア絶縁膜BIF2〜BIF4を堆積する前に、配線L1〜L3の表面のプラズマ処理を行うが、これらのプラズマ処理はバリア絶縁膜BIF2〜BIF4を堆積する装置で行う。プラズマ処理とバリア絶縁膜BIF2〜BIF4の堆積工程の間において、配線の表面が大気に曝されると、配線の表面の銅が水分により腐食したり、酸素により酸化したりするからである。
【0183】
また、バリア導体膜BCF4は強磁性体材料を含んでいる。したがって、バリア絶縁膜BIF2.BIF3を堆積する装置とバリア絶縁膜BIF4を堆積する装置を共用すると、バリア絶縁膜BIF2、BIF3を堆積する際、強磁性体材料による汚染の問題がある。
【0184】
さらに、上述したようなヒロックの問題を解決するために、バリア絶縁膜BIF2、BIF3の成膜温度(たとえばその前のプラズマ処理と同じく400度程度)よりもバリア絶縁膜BIF4の成膜温度(たとえばその前のプラズマ処理と同じく280度程度)を低い条件にて処理するようにしている。これにより、配線L3に加えられる熱を抑制して、ヒロックを抑えている。したがって、バリア絶縁膜BIF2、BIF3を堆積する装置とバリア絶縁膜BIF4を堆積する装置は少なくとも異なるものであり、動作も異なる。
【0185】
例えば、バリア絶縁膜BIF4を堆積する前のプラズマ処理条件と同じような条件で、バリア絶縁膜BIF2、BIF3を堆積する前のプラズマ処理を行う場合、異なる装置でプラズマ処理の条件設定を行う必要が出てくるために、チューニングに時間がかかり開発コストや期間が増大する。このため、バリア絶縁膜BIF2、BIF3を堆積する前のプラズマ処理と、バリア絶縁膜BIF4を堆積する前のプラズマ処理条件とを上述のように分けることにより、バリア絶縁膜BIF2、BIF3を堆積する前のプラズマ処理は従来から踏襲した条件を用いることが可能となりチューニング期間を短縮することができる。さらに、バリア絶縁膜BIF2、BIF3を堆積する装置を、MRAMを含まない半導体装置の製造と共用することも可能となる。
【0186】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、図3に示すように、デジット配線DL上にバリア絶縁膜BIF4と層間絶縁膜IL4を形成し、この層間絶縁膜IL4上に磁気抵抗素子TMRを形成する例について説明した。本実施の形態2では、デジット配線DL上にバリア絶縁膜BIF4を形成し、このバリア絶縁膜BIF4上に直接磁気抵抗素子TMR(下部電極BEを含む)を形成する例について説明する。
【0187】
図44は、本実施の形態2における半導体装置の構成を示す断面図である。前記実施の形態1における半導体装置の構成を示す図3と、本実施の形態2における半導体装置の構成を示す図44はほぼ同様である。異なる点は、図44において、デジット配線DL上にバリア絶縁膜BIF4を形成し、このバリア絶縁膜BIF4上に直接磁気抵抗素子TMR(下部電極BEを含む)を形成している点である。
【0188】
本発明の特徴は、例えば、配線L3およびデジット配線DLを形成した層間絶縁膜IL3の表面に対してプラズマ処理を実施する点にある。具体的には、半導体基板1Sをチャンバ内に搬入し、窒素を含有する分子と窒素を含有しない不活性分子とからなる混合ガスをチャンバ内に導入する。このとき、窒素を含有する分子の流量よりも窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、混合ガスを導入し、混合ガスをプラズマ化してプラズマ処理を実施するものである。
【0189】
このようなプラズマ処理によれば、ヒロックに起因した空洞欠陥の発生を抑制することができるので、デジット配線DL上の平坦性を確保することができる。このことから、デジット配線DLと磁気抵抗素子との間の距離を近づけることができる。
【0190】
そこで、本実施の形態2では、デジット配線DL上にバリア絶縁膜BIF4を形成し、バリア絶縁膜BIF4上に層間絶縁膜IL4を形成することなく、直接、磁気抵抗素子TMR(下部電極BEを含む)を形成しているのである。このように構成されている本実施の形態2における半導体装置によれば、デジット配線DLと磁気抵抗素子TMRとの間の距離を前記実施の形態1よりも近づけることができるので、さらに、デジット配線DLに流れる書き込み電流を低減できる効果が得られる。
【0191】
なお、本実施の形態2における半導体装置の製造方法は、層間絶縁膜IL4を形成しない点を除けば、前記実施の形態1における半導体装置の製造方法と同様であるため、その説明は省略する。
【0192】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0194】
1 CPU
1S 半導体基板
2 MRAM
3 周辺回路
4 パワーライン
ATR アクセストランジスタ
BCF1 バリア導体膜
BCF2 バリア導体膜
BCF3 バリア導体膜
BCF4 バリア導体膜
BCF5 バリア導体膜
BCF6 バリア導体膜
BE 下部電極
BIF1 バリア絶縁膜
BIF2 バリア絶縁膜
BIF3 バリア絶縁膜
BIF4 バリア絶縁膜
BL ビット線
BL1〜BLn ビット線
CA カラムアドレス
CD1 カラムデコーダ
CD2 カラムデコーダ
CF1 銅膜
CF2 銅膜
CF3 銅膜
CF4 銅膜
CHP 半導体チップ
CIL コンタクト層間絶縁膜
CLD1 クラッド膜
CNT1 コンタクトホール
CS コバルトシリサイド膜
CSG1〜CSGn ゲート電極
DF 空洞欠陥
Din 入力データ
DL デジット配線
DL1〜DLm デジット線
Dout 出力データ
DRC データ読出回路
DW データ線
DWC データ書込回路
EX 浅いn型不純物拡散領域
FL 固定層
FM 強磁性体膜
FR レジスト膜
G ゲート電極
GOX ゲート絶縁膜
H 磁場
HRK ヒロック
I 電流
IF 絶縁膜
IL1 層間絶縁膜
IL2 層間絶縁膜
IL3 層間絶縁膜
IL4 層間絶縁膜
IL5 層間絶縁膜
L1 配線
L2 配線
L3 配線
MC メモリセル
NR 深いn型不純物拡散領域
PD パッド
PF ポリシリコン膜
PLG1 プラグ
PLG2 プラグ
PLG3 プラグ
PLG4 プラグ
PWL p型ウェル
RE リードイネーブル信号
RL 記録層
RSL 読み出しソース線
SL1〜SLm ソース線
STI 素子分離領域
SW サイドウォール
TA タンタル膜
TA1 タンタル膜
TA2 タンタル膜
TAN 窒化タンタル膜
TAN1 窒化タンタル膜
TI トンネル絶縁膜
TMR 磁気抵抗素子
UE 上部電極
V1 ビアホール
V2 ビアホール
V3 ビアホール
V4 ビアホール
WBL 書き込みビット線
WCSG1〜WCSGm ゲート電極
WD ワード線ドライバ帯
WD1 配線溝
WD2 配線溝
WD3 配線溝
WD4 配線溝
WE ライトイネーブル信号
WF1 タングステン膜
WF2 タングステン膜
WL1〜WLm ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体基板上にMISFETを形成する工程と、
(b)前記MISFETの上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記第1層間絶縁膜に第1溝を形成する工程と、
(d)前記第1溝の側面および底面を覆う第1バリア導体膜を形成し、前記第1バリア導体膜上に前記第1溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第1溝内に第1配線を形成する工程と、
(e)前記第1配線の表面と前記第1層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子からなる第1ガスを使用して第1プラズマ処理を実施する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1配線および前記第1層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第1銅拡散防止膜を形成する工程と、
(g)前記第1銅拡散防止膜上に第2層間絶縁膜を形成する工程と、
(h)前記第2層間絶縁膜に第2溝を形成する工程と、
(i)前記第2溝の側面および底面を覆うように、強磁性体膜を含む第2バリア導体膜を形成し、前記第2バリア導体膜上に前記第2溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第2溝内に第2配線を形成する工程と、
(j)前記第2配線の表面と前記第2層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子と窒素を含有しない不活性分子とからなる第2ガスを使用し、かつ、前記窒素を含有する分子の流量よりも前記窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、第2プラズマ処理を実施する工程と、
(k)前記(j)工程後、前記第2配線および前記第2層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第2銅拡散防止膜を形成する工程と、
(l)前記第2層間絶縁膜上に第3層間絶縁膜を形成する工程と、
(m)前記第3層間絶縁膜上に磁気抵抗素子を形成する工程とを備え、
前記第2配線は、前記第2配線に電流を流すことにより、前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を発生する機能を有する配線であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2ガスに含まれる前記窒素を含有しない不活性分子は、水素ガス、ヘリウムガス、あるいは、アルゴンガスのいずれかから構成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1ガスに含まれる前記窒素を含有する分子は、アンモニアガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(j)工程において、前記窒素を含有しない不活性分子の流量に対する前記窒素を含有する分子の流量は、2%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2プラズマ処理を実施する際のチャンバ内の温度は、前記第1プラズマ処理を実施する際のチャンバ内の温度よりも低いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項2記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2プラズマ処理を実施する時間は、前記第1プラズマ処理を実施する時間よりも短いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2バリア導体膜は、前記第2溝の側面および底面上に形成された窒化タンタル膜と、前記窒化タンタル膜上に形成された第1タンタル膜と、前記第1タンタル膜上に形成された前記強磁性体膜と、前記強磁性体膜上に形成された第2タンタル膜から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法であって、
前記強磁性体膜は、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1バリア導体膜は、タンタル膜、チタン膜、ルテニウム膜、タングステン膜、マンガン膜、あるいは、これらの窒化物膜や窒化珪化物膜のいずれかを含む膜から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1銅拡散防止膜および前記第2銅拡散防止膜は、SiN膜、SiON膜、SiC膜、SiCN膜、SiCO膜のいずれかを含む膜から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1層間絶縁膜および前記第2層間絶縁膜は、SiOC膜、HSQ膜、MSQ膜、TEOS膜、酸化シリコン膜、あるいは、SiOF膜のいずれかの膜を含むように形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
(a)半導体基板上にMISFETを形成する工程と、
(b)前記MISFETの上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記第1層間絶縁膜に第1溝を形成する工程と、
(d)前記第1溝の側面および底面を覆う第1バリア導体膜を形成し、前記第1バリア導体膜上に前記第1溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第1溝内に第1配線を形成する工程と、
(e)前記第1配線の表面と前記第1層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子からなる第1ガスを使用して第1プラズマ処理を実施する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1配線および前記第1層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第1銅拡散防止膜を形成する工程と、
(g)前記第1銅拡散防止膜上に第2層間絶縁膜を形成する工程と、
(h)前記第2層間絶縁膜に第2溝を形成する工程と、
(i)前記第2溝の側面および底面を覆うように、強磁性体膜を含む第2バリア導体膜を形成し、前記第2バリア導体膜上に前記第2溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第2溝内に第2配線を形成する工程と、
(j)前記第2配線の表面と前記第2層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有しない不活性分子からなる第2ガスを使用して、第2プラズマ処理を実施する工程と、
(k)前記(j)工程後、前記第2配線および前記第2層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第2銅拡散防止膜を形成する工程と、
(l)前記第2層間絶縁膜上に第3層間絶縁膜を形成する工程と、
(m)前記第3層間絶縁膜上に磁気抵抗素子を形成する工程とを備え、
前記第2配線は、前記第2配線に電流を流すことにより、前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を発生する機能を有する配線であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2ガスを構成する前記窒素を含有しない不活性分子は、水素ガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
情報を記憶する磁気抵抗素子と、前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を、電流を流すことにより発生させるクラッド配線とを有する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板の上方に層間絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記層間絶縁膜に溝を形成する工程と、
(c)前記溝の側面および底面を覆う膜であって強磁性体膜を含むバリア導体膜を形成し、前記バリア導体膜上に前記溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記溝内に前記クラッド配線を形成する工程と、
(d)前記クラッド配線の表面と前記層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子と窒素を含有しない不活性分子とからなるガスを使用し、かつ、前記窒素を含有する分子の流量よりも前記窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、プラズマ処理を実施する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記クラッド配線および前記層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する銅拡散防止膜を形成する工程と、
(f)前記銅拡散防止膜の上方に前記磁気抵抗素子を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法であって、
前記ガスに含まれる前記窒素を含有しない不活性分子は、水素ガス、ヘリウムガス、あるいは、アルゴンガスのいずれかから構成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法であって、
前記窒素を含有しない不活性分子の流量に対する前記窒素を含有する分子の流量は、2%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a)半導体基板上にMISFETを形成する工程と、
(b)前記MISFETの上方に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記第1層間絶縁膜に第1溝を形成する工程と、
(d)前記第1溝の側面および底面を覆う第1バリア導体膜を形成し、前記第1バリア導体膜上に前記第1溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第1溝内に第1配線を形成する工程と、
(e)前記第1配線の表面と前記第1層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子からなる第1ガスを使用して第1プラズマ処理を実施する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1配線および前記第1層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第1銅拡散防止膜を形成する工程と、
(g)前記第1銅拡散防止膜上に第2層間絶縁膜を形成する工程と、
(h)前記第2層間絶縁膜に第2溝を形成する工程と、
(i)前記第2溝の側面および底面を覆うように、強磁性体膜を含む第2バリア導体膜を形成し、前記第2バリア導体膜上に前記第2溝を埋め込むように銅を主体とする銅膜を形成することにより、前記第2溝内に第2配線を形成する工程と、
(j)前記第2配線の表面と前記第2層間絶縁膜の表面に対して、窒素を含有する分子と窒素を含有しない不活性分子とからなる第2ガスを使用し、かつ、前記窒素を含有する分子の流量よりも前記窒素を含有しない不活性分子の流量が多い条件で、第2プラズマ処理を実施する工程と、
(k)前記(j)工程後、前記第2配線および前記第2層間絶縁膜上に銅の拡散を抑制する第2銅拡散防止膜を形成する工程と、
(l)前記第2銅拡散防止膜上に直接接触するように磁気抵抗素子を形成する工程とを備え、
前記第2配線は、前記第2配線に電流を流すことにより、前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を発生する機能を有する配線であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第2ガスに含まれる前記窒素を含有しない不活性分子は、水素ガス、ヘリウムガス、あるいは、アルゴンガスのいずれかから構成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1ガスに含まれる前記窒素を含有する分子は、アンモニアガスであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(j)工程において、前記窒素を含有しない不活性分子の流量に対する前記窒素を含有する分子の流量は、2%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
(a)半導体基板の上方に形成された溝を有する層間絶縁膜と、
(b)情報を記憶する磁気抵抗素子と、
(c)前記磁気抵抗素子に記憶されている情報を書き換えるための磁場の一部を、電流を流すことにより発生させる機能を有し、かつ、強磁性体膜を含むバリア導体膜と銅を主成分とする銅膜とを前記層間絶縁膜に形成された前記溝に埋め込むように構成されたクラッド配線と、
(d)前記クラッド配線上に形成された銅拡散防止膜とを備え、
前記銅拡散防止膜上に直接接触するように前記磁気抵抗素子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項22】
請求項21記載の半導体装置であって、
前記磁気抵抗素子は、
(b1)前記銅拡散防止膜上に直接接触するように形成された下部電極と、
(b2)前記下部電極上に形成され、磁化の方向が固定されている固定層と、
(b3)前記固定層上に形成されたトンネル絶縁膜と、
(b4)前記トンネル絶縁膜上に形成され、磁化の方向を変えることが可能な記録層とを有し、
前記固定層の磁化の方向と前記記録層の磁化の方向が平行となっている場合の抵抗値と、前記固定層の磁化の方向と前記記録層の磁化の方向が反平行となっている場合の抵抗値が異なることを利用して、前記磁気抵抗素子に情報を記憶することを特徴とする半導体装置。
【請求項23】
請求項22記載の半導体装置であって、
前記バリア導体膜は、前記溝の側面および底面上に形成された窒化タンタル膜と、前記窒化タンタル膜上に形成された第1タンタル膜と、前記第1タンタル膜上に形成された前記強磁性体膜と、前記強磁性体膜上に形成された第2タンタル膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項24】
請求項23記載の半導体装置であって、
前記強磁性体膜は、ニッケル膜、鉄膜、コバルト膜、または、これらの膜の合金からなる合金膜、あるいは、前記ニッケル膜、前記鉄膜、前記コバルト膜および前記合金膜にクロム、モリブデン、アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、ホウ素のいずれかの元素を添加した膜のいずれかの膜を含むように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項25】
請求項24記載の半導体装置であって、
前記銅拡散防止膜は、SiN膜、SiON膜、SiC膜、SiCN膜、SiCO膜のいずれかを含む膜から形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項26】
請求項25記載の半導体装置であって、
前記層間絶縁膜は、SiOC膜、HSQ膜、MSQ膜、TEOS膜、酸化シリコン膜、あるいは、SiOF膜のいずれかの膜を含むように形成されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2011−100775(P2011−100775A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253084(P2009−253084)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】