説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】サリサイドプロセスで金属シリサイド層を形成した半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】ゲート電極GEと上部に金属シリサイド層11bが形成されたソース・ドレイン領域とを有するMISFETが半導体基板1の主面に複数形成されている。金属シリサイド層11bは、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなる第1金属元素およびニッケルのシリサイドからなる。半導体基板1の主面に形成された複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうち、ゲート長方向に最も近接して隣り合うゲート電極GE間に配置されたソース・ドレイン領域のゲート長方向の幅W1cよりも、金属シリサイド層11bの粒径が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、金属シリサイド層を有する半導体素子を備えた半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化が進むにつれて、電界効果トランジスタ(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)はスケーリング則に従い微細化されるが、ゲートやソース・ドレインの抵抗が増大して電界効果トランジスタを微細化しても高速動作が得られないという問題が生ずる。そこで、ゲートを構成する導電膜およびソース・ドレインを構成する半導体領域の表面に自己整合により低抵抗の金属シリサイド層、例えばニッケルシリサイド層またはコバルトシリサイド層などを形成することにより、ゲートやソース・ドレインを低抵抗化するサリサイド技術が検討されている。
【0003】
特開2009−283780号公報(特許文献1)、特開2008−78559号公報(特許文献2)および特開2006−261635号公報(特許文献3)には、シリサイド層の形成に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−283780号公報
【特許文献2】特開2008−78559号公報
【特許文献3】特開2006−261635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、次のことが分かった。
【0006】
ゲートを構成する導電膜およびソース・ドレインを構成する半導体領域の表面にサリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)プロセスにより形成する金属シリサイド層は、微細化による低抵抗化の要求から、コバルトシリサイドよりも、ニッケルシリサイドからなることが好ましい。金属シリサイド層をコバルトシリサイドではなくニッケルシリサイドとすることで、金属シリサイド層の抵抗をより低くすることができ、ソース・ドレインの拡散抵抗や、コンタクト抵抗などをより低減できる。また、金属シリサイド層をコバルトシリサイドではなくニッケルシリサイドとすることで、金属シリサイド層を薄く形成することができ、ソース・ドレインの接合深さを浅くできるので、電界効果トランジスタの微細化に有利となる。
【0007】
金属シリサイド層としてニッケルシリサイド層を用いる場合、ニッケルシリサイド層中にPtなどが添加されていると、形成された金属シリサイド層の凝集が少ないこと、形成された金属シリサイド層において、高抵抗なNiSi相の異常成長を抑制できることなどの利点を得られるので、半導体装置の信頼性を向上させることができる。このため、半導体基板にMISFETを形成した後、NiにPtを添加したNi−Pt合金膜を半導体基板上に形成し、この合金膜をソース・ドレインを構成する半導体領域およびゲート電極を構成する導電膜と反応させることで、NiとPtのシリサイドからなる金属シリサイド層を形成することが好ましい。
【0008】
しかしながら、ニッケルシリサイド層中にPtなどを単に添加するだけでは、NiSi相の異常成長を完全に防止することはできず、この異常成長が生じたMISFETでは、リーク電流の増大などが生じてしまう虞がある。このため、半導体装置の性能を向上させるためには、金属シリサイド層におけるNiSi相の異常成長をできるだけ抑制することが望まれる。
【0009】
本発明の目的は、半導体装置の性能を向上させることができる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
代表的な実施の形態による半導体装置は、ゲート電極と上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域とを有するMISFETが半導体基板の主面に複数形成された半導体装置であって、前記金属シリサイド層は、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなる第1金属元素およびニッケルのシリサイドからなる。そして、前記金属シリサイド層の粒径は、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向の幅が最も小さい第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さいものである。
【0013】
また、他の代表的な実施の形態による半導体装置は、ゲート電極と上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域とを有するMISFETが半導体基板の主面に複数形成された半導体装置であって、前記金属シリサイド層は、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなる第1金属元素およびニッケルのシリサイドからなる。そして、前記複数のMISFETは、メモリセルアレイを構成する複数の第1MISFETを含み、前記金属シリサイド層の粒径は、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向に隣り合う前記第1MISFETのゲート電極間に配置された第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さいものである。
【0014】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域を有するMISFETを複数備える半導体装置の製造方法であって、前記金増シリサイド層形成用の金属膜が、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなる前記第1金属元素とNiとの合金膜からなるものである。そして、前記金属シリサイド層の粒径が、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向の幅が最も小さい第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さくなるように、前記金属シリサイド層形成用の熱処理を行う。
【0015】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域を有するMISFETを複数備える半導体装置の製造方法であって、前記金増シリサイド層形成用の金属膜が、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなる前記第1金属元素とNiとの合金膜からなるものである。そして、前記複数のMISFETは、メモリセルアレイを構成する複数の第1MISFETを含み、前記金属シリサイド層の粒径が、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向に隣り合う前記第1MISFETのゲート電極間に配置された第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さくなるように、前記金属シリサイド層形成用の熱処理を行う。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
代表的な実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の要部断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図である。
【図8】図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図14】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中(合金膜形成前の段階)の要部断面図である。
【図15】図14と同じ半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図16】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中(第2の熱処理を行った段階)の要部断面図である。
【図17】図16と同じ半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
【図18】金属シリサイド層における粒径を変えたときの、リーク電流欠陥の発生数(発生頻度)を示すグラフである。
【図19】金属シリサイド層の模式的な断面を示す説明図である。
【図20】金属シリサイド層においてNi1−ySiの異常成長が発生した状態を模式的に示す説明図である。
【図21】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中(合金膜形成前の段階)の要部断面図である。
【図22】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中(第2の熱処理を行った段階)の要部断面図である。
【図23】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(合金膜形成前の段階)の要部断面図である。
【図24】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(合金膜を形成した段階)の要部断面図である。
【図25】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(バリア膜を形成した段階)の要部断面図である。
【図26】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(第1の熱処理を行った段階)の要部断面図である。
【図27】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(バリア膜および未反応合金膜の除去工程を行った段階)の要部断面図である。
【図28】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(第2の熱処理を行った段階)の要部断面図である。
【図29】Si領域中におけるNiとPtの拡散係数を示すグラフである。
【図30】金属シリサイド層の比抵抗を示すグラフである。
【図31】第1の熱処理の合金膜消費率とNi1−yPtSi層におけるPt濃度との相関を示すグラフである。
【図32】第1の熱処理の合金膜消費率とNi1−yPtSi層の粒径との相関を示すグラフである。
【図33】Ni1−yPtSi層におけるPt濃度とNi1−yPtSi層の抵抗率との相関を示すグラフである。
【図34】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(合金膜を形成した段階)の要部断面図である。
【図35】図34と同じ半導体装置の製造工程中の他の要部断面図である。
【図36】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程中(第2の熱処理を行った段階)の要部断面図である。
【図37】図36と同じ半導体装置の製造工程中の他の要部断面図である。
【図38】本発明の一実施の形態の半導体装置の製造工程で用いられる熱処理装置の一例を示す説明図である。
【図39】図38の熱処理装置に備わるサセプタの説明図である。
【図40】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図41】図40に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図42】図41に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図43】図42に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図44】図43に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図45】本発明の他の実施の形態である半導体装置の一例を示す平面図である。
【図46】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中(合金膜形成前の段階)の要部断面図である。
【図47】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中(第2の熱処理を行った段階)の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0021】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0022】
(実施の形態1)
本発明の一実施の形態である半導体装置を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態である半導体装置、ここではCMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置の要部断面図である。
【0024】
図1に示されるように、本実施の形態の半導体装置は、半導体基板1に形成された複数のnチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor:MIS型電界効果トランジスタ)Qnと複数のpチャネル型MISFETQpとを有している。半導体装置を構成する半導体基板1には、実際には、更に多くのnチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFETが形成されているが、図1には、それらを代表して、2つのnチャネル型MISFETQnと2つのpチャネル型MISFETQpとが図示されている。
【0025】
すなわち、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板1は、素子分離領域2によって規定されて互いに電気的に分離された活性領域を有しており、この半導体基板1の活性領域にp型ウエルPWおよびn型ウエルNWが形成されている。p型ウエルPWの表面上には、nチャネル型MISFETQnのゲート絶縁膜3を介して、nチャネル型MISFETQnのゲート電極GEが形成されている。また、n型ウエルNWの表面上には、pチャネル型MISFETQpのゲート絶縁膜3を介して、pチャネル型MISFETQpのゲート電極GEが形成されている。
【0026】
ここで、半導体基板1の主面上にゲート絶縁膜3を介して形成された形成された複数のゲート電極GEのうち、nチャネル型MISFETQnを形成するゲート電極GEを、符号GE1を付してゲート電極GE1と称し、pチャネル型MISFETQpを形成するゲート電極GEを、符号GE2を付してゲート電極GE2と称することとする。
【0027】
ゲート電極GEは、導電体膜により形成されている。具体的には、nチャネル型MISFETQn用のゲート電極GE1は、n型の不純物を導入した多結晶シリコン(n型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、pチャネル型MISFETQp用のゲート電極GE2は、p型の不純物を導入した多結晶シリコン(p型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなる。
【0028】
p型ウエルPWには、nチャネル型MISFETQnのLDD(Lightly doped Drain)構造のソースおよびドレイン領域として、n型半導体領域(エクステンション領域、LDD領域)5aとそれよりも高不純物濃度のn型半導体領域(ソース・ドレイン領域)5bとが形成されている。また、n型ウエルNWには、pチャネル型MISFETQpのLDD構造のソースおよびドレイン領域として、p型半導体領域(エクステンション領域、LDD領域)6aとそれよりも高不純物濃度のp型半導体領域(ソース・ドレイン領域)6bとが形成されている。n型半導体領域5bは、n型半導体領域5aよりも接合深さが深くかつ不純物濃度が高く、また、p型半導体領域6bは、p型半導体領域6aよりも接合深さが深くかつ不純物濃度が高い。
【0029】
ゲート電極GE(GE1,GE2)の側壁上には、側壁絶縁膜として、絶縁体(絶縁膜)からなるサイドウォール(サイドウォールスペーサ、側壁スペーサ、側壁絶縁膜)7が形成されている。p型ウエルPWにおいて、n型半導体領域5aは、nチャネル型MISFETQnのゲート電極GE1に整合して形成され、n型半導体領域5bは、nチャネル型MISFETQnのゲート電極GE1の側壁上に設けられたサイドウォール7に整合して形成されている。また、n型ウエルNWにおいて、p型半導体領域6aは、pチャネル型MISFETQpのゲート電極GE2に整合して形成され、p型半導体領域6bは、pチャネル型MISFETQpのゲート電極GE2の側壁上に設けられたサイドウォール7に整合して形成されている。
【0030】
ゲート電極GE(GE1,GE2)、n型半導体領域5b(ソース・ドレイン領域)およびp型半導体領域6b(ソース・ドレイン領域)の各表面(上層部)には、金属シリサイド層11bが形成されている。詳細は後述するが、金属シリサイド層11bは、Ni1−ySi相(ここで0<y<1)となっている。ここで、化学式Ni1−ySiにおけるMは、第1金属元素Mのことであり、この第1金属元素Mは、Pt(白金),Pd(パラジウム),V(バナジウム),Er(エルビウム),Yb(イッテルビウム)からなる群から選択された少なくとも一種からなり、より好ましくはPt(白金)である。第1金属元素MがPt(白金)である場合には、金属シリサイド層11bは、Ni1−yPtSi相(ここで0<y<1)となる。
【0031】
Ni1−yPtSi相は、(Ni1−yPtSi相およびNi1−yPtSi相よりも低抵抗率であるため、金属シリサイド層11bをNi1−ySi相(ここで0<y<1)とすることで、金属シリサイド層11bを低抵抗化することができる。
【0032】
更に、後述の絶縁膜21,22、コンタクトホール23、プラグPG、ストッパ絶縁膜25、絶縁膜26および配線M1(後述の図13参照)や、更に上層の多層配線構造が形成されているが、ここでは図示およびその説明は省略する。
【0033】
次に、本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図2〜図6は、本発明の一実施の形態である半導体装置、例えばCMISFETを有する半導体装置の製造工程中の要部断面図である。図2〜図6には、上記図1に相当する断面領域が示されている。
【0034】
まず、図2に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。それから、半導体基板1の主面に素子分離領域2を形成する。素子分離領域2は酸化シリコンなどの絶縁体からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon )法などにより形成される。例えば、半導体基板1に形成された溝(素子分離溝)2aに埋め込まれた絶縁膜により、素子分離領域2を形成することができる。
【0035】
次に、図3に示されるように、半導体基板1の主面から所定の深さにわたってp型ウエルPWおよびn型ウエルNWを形成する。p型ウエルPWは、pチャネル型MISFET形成予定領域を覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、nチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。また、n型ウエルNWは、nチャネル型MISFET形成予定領域を覆う他のフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、pチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。
【0036】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板1の表面を清浄化(洗浄)した後、半導体基板1の表面(すなわちp型ウエルPWおよびn型ウエルNWの表面)上にゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。
【0037】
次に、半導体基板1上(すなわちp型ウエルPWおよびn型ウエルNWのゲート絶縁膜3上)に、ゲート電極形成用の導体膜として、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜4を形成する。
【0038】
シリコン膜4のうちのnチャネル型MISFET形成予定領域(後でゲート電極GE1となる領域)は、フォトレジスト膜(ここでは図示しないが、このフォトレジスト膜はpチャネル型MISFET形成予定領域を覆っている)をマスクとして用いてリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のn型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされる。また、シリコン膜4のうちのpチャネル型MISFET形成予定領域(後でゲート電極GE2となる領域)は、他のフォトレジスト膜(ここでは図示しないが、このフォトレジスト膜はnチャネル型MISFET形成予定領域を覆っている)をマスクとして用いてホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のp型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされる。また、シリコン膜4は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。
【0039】
次に、図4に示されるように、シリコン膜4をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極GEを形成する。図4では、ゲート電極GEとして、nチャネル型MISFET用のゲート電極GE1とpチャネル型MISFET用のゲート電極GE2とが示されている。
【0040】
nチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極GE1は、n型の不純物を導入した多結晶シリコン(n型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、p型ウエルPW上にゲート絶縁膜3を介して形成される。また、pチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極GE2は、p型の不純物を導入した多結晶シリコン(p型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、n型ウエルNW上にゲート絶縁膜3を介して形成される。すなわち、ゲート電極GE1は、p型ウエルPWのゲート絶縁膜3上に形成され、ゲート電極GE2は、n型ウエルNWのゲート絶縁膜3上に形成される。ゲート電極GEのゲート長は、必要に応じて変更できるが、例えば50nm程度とすることができる。
【0041】
次に、図5に示されるように、p型ウエルPWにおける、各ゲート電極GE1の両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、n型半導体領域5aを形成する。また、n型ウエルNWにおける、各ゲート電極GE2の両側の領域に、ホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、p型半導体領域6aを形成する。n型半導体領域5aを先に形成しても、あるいはp型半導体領域6aを先に形成してもよい。n型半導体領域5aおよびp型半導体領域6aの深さ(接合深さ)は、必要に応じて変更できるが、例えば30nm程度とすることができる。n型半導体領域5a形成用のイオン注入およびp型半導体領域6a形成用のイオン注入では、p型ウエルPWおよびn型ウエルNWにおけるゲート電極GEの直下の領域には、ゲート電極GEに遮蔽されることでイオン注入されない。
【0042】
次に、図6に示されるように、各ゲート電極GE(すなわち各ゲート電極GE1,GE2)の側壁上に、側壁絶縁膜(絶縁膜)として、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンあるいはそれら絶縁膜の積層膜などからなるサイドウォール(サイドウォールスペーサ、側壁スペーサ、側壁絶縁膜)7を形成する。サイドウォール7は、例えば、半導体基板1上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜を堆積し、この酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜をRIE(Reactive Ion Etching)法などにより異方性エッチングすることによって形成することができる。
【0043】
サイドウォール7の形成後、n型半導体領域5b(ソース、ドレイン)を、例えば、p型ウエルPWのゲート電極GE1およびサイドウォール7の両側の領域にヒ素(As)またはリン(P)などのn型の不純物をイオン注入することにより形成する。例えば、ヒ素(As)を10〜30keVの加速電圧で1×1015/cm〜1×1016/cm程度、例えば20keVで4×1015/cm注入して、リン(P)を5〜20keVの加速電圧で1×1014/cm〜1×1015/cm程度、例えば10keVで5×1014/cm注入して、n型半導体領域5bを形成する。また、p型半導体領域6b(ソース、ドレイン)を、例えば、n型ウエルNWのゲート電極GE2およびサイドウォール7の両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより形成する。例えば、ホウ素(B)を1〜3keVの加速電圧で1×1015/cm〜1×1016/cm程度、例えば2keVで4×1015/cm注入して、p型半導体領域6bを形成する。n型半導体領域5bを先に形成しても、あるいはp型半導体領域6bを先に形成してもよい。イオン注入後、導入した不純物の活性化のためのアニール処理を、例えば1050℃程度のスパイクアニール処理にて行うこともできる。n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの深さ(接合深さ)は、必要に応じて変更できるが、例えば80nm程度とすることができる。n型半導体領域5b形成用のイオン注入およびp型半導体領域6b形成用のイオン注入では、p型ウエルPWおよびn型ウエルNWにおけるゲート電極GEおよびサイドウォール7の直下の領域には、ゲート電極GEおよびサイドウォール7に遮蔽されることで、イオン注入されない。
【0044】
型半導体領域5bは、n型半導体領域5aよりも接合深さが深くかつ不純物濃度が高く、また、p型半導体領域6bは、p型半導体領域6aよりも接合深さが深くかつ不純物濃度が高い。これにより、nチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n型半導体領域(不純物拡散層)5bおよびn型半導体領域5aにより形成され、pチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p型半導体領域(不純物拡散層)6bおよびp型半導体領域6aにより形成される。従って、nチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFETのソースおよびドレイン領域は、LDD(Lightly doped Drain)構造を有している。n型半導体領域5aは、nチャネル型MISFET用のゲート電極GE1に対して自己整合的に形成され、n型半導体領域5bは、nチャネル型MISFET用のゲート電極GE1の側壁上に形成されたサイドウォール7に対して自己整合的に形成される。p型半導体領域6aは、pチャネル型MISFET用のゲート電極GE2に対して自己整合的に形成され、p型半導体領域6bは、pチャネル型MISFET用のゲート電極GE2の側壁上に形成されたサイドウォール7に対して自己整合的に形成される。
【0045】
このようにして、p型ウエルPWに、電界効果トランジスタとしてnチャネル型MISFETQnが形成され、n型ウエルNWに、電界効果トランジスタとしてpチャネル型MISFETQpが形成される。これにより、図6の構造が得られる。nチャネル型MISFETQnは、nチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができ、pチャネル型MISFETQpは、pチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができる。また、n型半導体領域5bは、nチャネル型MISFETQnのソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)とみなすことができ、p型半導体領域6bは、pチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)とみなすことができる。
【0046】
次に、サリサイド技術により、nチャネル型MISFET(Qn)のゲート電極GE(GE1)およびソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b)の表面と、pチャネル型MISFET(Qp)のゲート電極GE(GE2)およびソース・ドレイン領域(p型半導体領域6b)の表面とに、低抵抗の金属シリサイド層(後述の金属シリサイド層11bに対応)を形成する。以下に、この金属シリサイド層の形成工程について説明する。
【0047】
図7は、本実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示す製造プロセスフロー図であり、図6の構造が得られた後、サリサイドプロセスによりゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの表面に金属シリサイド層(金属・半導体反応層)を形成する工程の製造プロセスフローが示されている。図8〜図13は、図6に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。なお、図7は、図8〜図10の工程の製造プロセスフローに対応する。
【0048】
上記のようにして図6の構造が得られた後、図8に示されるように、ゲート電極GE(GE1,GE2)、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの表面を露出させてから、ゲート電極GE(GE1,GE2)、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b上を含む半導体基板1の主面(全面)上に合金膜8を、例えばスパッタリング法を用いて形成(堆積)する(図7のステップS1)。すなわち、ステップS1では、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b上を含む半導体基板1上に、ゲート電極GE(GE1,GE2)を覆うように、合金膜8が形成される。
【0049】
それから、合金膜8上にバリア膜(応力制御膜、酸化防止膜、キャップ膜)9を形成(堆積)する(図7のステップS2)。
【0050】
また、ステップS1(合金膜8堆積工程)の前に、HFガス、NFガス、NHガス又はHガスのうち少なくともいずれか一つを用いたドライクリーニング処理を行って、ゲート電極GE、n型半導体領域5b及びp型半導体領域6bの表面の自然酸化膜を除去した後、半導体基板1を大気中(酸素含有雰囲気中)にさらすことなく、ステップS1及びステップS2を行えば、より好ましい。
【0051】
合金膜8は、少なくともニッケル(Ni)を含有する合金膜(すなわちニッケル合金膜)であり、具体的にはニッケル(Ni)と第1金属元素Mとの合金膜、すなわちNi−M合金膜である。この第1金属元素Mは、Pt(白金),Pd(パラジウム),V(バナジウム),Er(エルビウム),Yb(イッテルビウム)からなる群から選択された少なくとも一種からなり、より好ましくはPt(白金)である。第1金属元素MがPt(白金)である場合には、合金膜8は、ニッケル(Ni)とPt(白金)の合金膜、すなわちNi−Pt合金膜であるので、合金膜8は、より好ましくはNi−Pt合金膜(NiとPtの合金膜)である。
【0052】
合金膜8におけるNiと第1金属元素Mの比(原子比)を1−x:xとすると、合金膜8は、Ni1−x合金膜と表記することができる。ここで、Ni1−xにおけるMは第1金属元素Mである。Ni1−x合金膜におけるNiの割合(比率)は、(1−x)×100%であり、Ni1−x合金膜における第1金属元素Mの割合(比率)は、x×100%である。なお、本願で元素の割合(比率、濃度)を%で示す場合には、原子%である。例えば、合金膜8としてNi0.963Pt0.037合金膜などを用いることができ、合金膜8がNi0.963Pt0.037合金膜の場合には、合金膜8におけるNiの割合(比率)は96.3原子%で、合金膜8におけるPtの割合(比率)は3.7原子%となる。
【0053】
バリア膜9は、例えば窒化チタン(TiN)膜またはチタン(Ti)膜からなり、その厚さ(堆積膜厚)は、例えば15nm程度とすることができる。バリア膜9は、応力制御膜(半導体基板の活性領域の応力を制御する膜)および酸素の透過を防止する膜として機能し、半導体基板1に働く応力の制御や合金膜8の酸化防止などのために合金膜8上に設けられる。
【0054】
合金膜8およびバリア膜9を形成した後、半導体基板1に第1の熱処理(アニール処理)を施す(図7のステップS3)。ステップS3の第1の熱処理は、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または窒素(N)ガスあるいはそれらの混合ガス雰囲気で満たされた常圧下で行うことができ、例えばRTA(Rapid Thermal Anneal)法を用いて行なうことができる。
【0055】
ステップS3の第1の熱処理により、図9に示されるように、ゲート電極GE(GE1,GE2)を構成する多結晶シリコン膜と合金膜8、およびn型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bを構成する単結晶シリコンと合金膜8を選択的に反応させて、金属・半導体反応層である金属シリサイド層11aを形成する。ゲート電極GE(GE1,GE2)、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの各上部(上層部)と合金膜8とが反応することにより金属シリサイド層11aが形成されるので、金属シリサイド層11aは、ゲート電極GE(GE1,GE2)、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの各表面(上層部)に形成される。
【0056】
このように、ステップS3の第1の熱処理で、ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b(を構成するSi)と合金膜8を選択的に反応させて、ニッケルおよび第1金属元素Mのシリサイドからなる金属シリサイド層11aを形成するが、ステップS3の第1の熱処理を行った段階では、金属シリサイド層11aは、(Ni1−ySi相(ここで0<y<1)であることが好ましい。なお、化学式(Ni1−ySiにおけるMは上記第1金属元素Mであり、合金膜8がNi−Pt合金膜の場合(すなわち上記第1金属元素MがPtの場合)には、金属シリサイド層11aは、(Ni1−yPtSi相(ここで0<y<1)の白金添加ニッケルシリサイド層からなる。従って、ステップS3の第1の熱処理は、金属シリサイド層11aが(Ni1−ySi相となるが、Ni1−ySi相とはならないような熱処理温度で行なうことが好ましい。
【0057】
ステップS3の第1の熱処理により、合金膜8中のNiと第1金属元素Mとがn型半導体領域5b、p型半導体領域6bおよびゲート電極GE(GE1,GE2)中に拡散して金属シリサイド層11aが形成される。このステップS3では、金属シリサイド層11a上に合金膜8の未反応部分(後述の未反応部分8aに対応)が残存するように、第1の熱処理を行なうことが好ましく、これは後述する第4の条件に対応する。また、ステップS3では、n型半導体領域5b、p型半導体領域6bおよびゲート電極GE中へのNiの拡散係数よりも、n型半導体領域5b、p型半導体領域6bおよびゲート電極GE中への第1金属元素Mの拡散係数の方が大きくなる熱処理温度で第1の熱処理を行なうことが好ましく、これは後述する第5の条件に対応する。第4の条件および第5の条件については後で詳述する。また、上記のような条件(後述する第4の条件および第5の条件)で第1の熱処理を行うことで、形成された金属シリサイド層11aを構成する金属元素(Niおよび第1金属元素M)に占める第1金属元素Mの割合は、合金膜8に占める第1金属元素Mの割合よりも大きくなる。
【0058】
また、バリア膜9は、合金膜8と反応しがたい膜であり、ステップS3の第1の熱処理を行っても合金膜8と反応しない膜であることが望ましく、この観点から、バリア膜9として、窒化チタン(TiN)膜やチタン(Ti)膜は好ましい。なお、本実施の形態においては、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bと反応する合金膜の厚さ(後述する反応部分8bの厚みtn3に対応)よりも十分に厚い合金膜8を形成しているため、酸化防止膜としてのバリア膜9は省略しても良い。
【0059】
次に、ウェット洗浄処理を行うことにより、バリア膜9と、未反応の合金膜8(すなわちステップS3の第1の熱処理工程にてゲート電極GE、n型半導体領域5bまたはp型半導体領域6bと反応しなかった合金膜8)とを除去する(図7のステップS4)。この際、未反応の合金膜8(すなわちステップS3の第1の熱処理工程にてゲート電極GE、n型半導体領域5bまたはp型半導体領域6bと反応しなかった合金膜8)が金属シリサイド層11a上から除去されるが、ゲート電極GE(GE1,GE2)、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの表面上に金属シリサイド層11aを残存させる。ステップS4のウェット洗浄処理は、硫酸を用いたウェット洗浄、または硫酸と過酸化水素水とを用いたウェット洗浄などにより行うことができる。図9には、ステップS4のウェット洗浄処理によって、バリア膜9および未反応の合金膜8を除去した段階が示されている。
【0060】
次に、半導体基板1に第2の熱処理(アニール処理)を施す(図7のステップS5)。ステップS5の第2の熱処理は、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または窒素(N)ガスあるいはそれらの混合ガス雰囲気で満たされた常圧下で行うことができ、例えばRTA法を用いて行なうことができる。また、ステップS5の第2の熱処理は、上記ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高い熱処理温度で行う。
【0061】
ステップS5の第2の熱処理は、金属シリサイド層11aの低抵抗化のために行なわれる。ステップS5の第2の熱処理を行うことにより、ステップS3の第1の熱処理で形成された金属シリサイド層11aは、図10に示されるように、Ni1−ySi相の金属シリサイド層11bに変わり、金属元素(Niと第1金属元素Mを足したもの)とSiとの組成比が1:1の化学量論比により近い金属シリサイド層11bが形成される。
【0062】
すなわち、(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aと、ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bのシリコンとを、ステップS5の第2の熱処理で更に反応させて、(Ni1−ySi相より低抵抗率のNi1−ySi相からなる金属シリサイド層11bを、ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの表面上(上層部分)に形成する。ステップS5の第2の熱処理は、(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aをNi1−ySi相の金属シリサイド層11bにすることができるような温度で行う必要があるため、ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度は、少なくともステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高くする必要がある。また、金属シリサイド層11bがNi1−ySi相よりも高抵抗率のNi1−ySi相にはならないようにするため、ステップS5の第2の熱処理は、金属シリサイド層11bがNi1−ySi相となるが、Ni1−ySi相とはならないような熱処理温度で行なうことが好ましい。
【0063】
なお、Ni1−ySi相は、(Ni1−ySi相およびNi1−ySi相よりも低抵抗率であり、ステップS5以降も(半導体装置の製造終了まで)金属シリサイド層11bは低抵抗のNi1−ySi相のまま維持され、製造された半導体装置では(例えば半導体基板1を個片化して半導体チップとなった状態でも)、金属シリサイド層11bは低抵抗のNi1−ySi相となっている。
【0064】
ここで、上記化学式(Ni1−ySi、Ni1−ySiおよびNi1−ySiにおけるMは上記第1金属元素Mである。合金膜8がNi−Pt合金膜の場合(すなわち上記第1金属元素MがPtの場合)には、ステップS3の第1の熱処理で形成された金属シリサイド層11aは、(Ni1−yPtSi相であり、これが、ステップS5の第2の熱処理を行うことにより、Ni1−yPtSi相の金属シリサイド層11bに変わる。この場合、Ni1−yPtSi相は、(Ni1−yPtSi相およびNi1−yPtSi相よりも低抵抗率であり、ステップS5以降も(半導体装置の製造終了まで)金属シリサイド層11bは低抵抗のNi1−yPtSi相のまま維持され、製造された半導体装置では(例えば半導体基板1を個片化して半導体チップとなった状態でも)、金属シリサイド層11bは低抵抗のNi1−yPtSi相となっている。
【0065】
このようにして、nチャネル型MISFET(Qn)のゲート電極GE(GE1)およびソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b)の表面(上層部)と、pチャネル型MISFET(Qp)のゲート電極GE(GE2)およびソース・ドレイン領域(p型半導体領域6b)の表面(上層部)とに、Ni1−ySi相の金属シリサイド層11bが形成される。
【0066】
次に、図11に示されるように、半導体基板1の主面上に絶縁膜21を形成する。すなわち、ゲート電極GE(GE1,GE2)およびサイドウォール7を覆うように、金属シリサイド層11b上を含む半導体基板1上に絶縁膜21を形成する。絶縁膜21は例えば窒化シリコン膜からなり、成膜温度(基板温度)450℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。それから、絶縁膜21上に絶縁膜21よりも厚い絶縁膜22を形成する。絶縁膜22は例えば酸化シリコン膜などからなり、TEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、またはTetra Ethyl Ortho Silicateとも言う)を用いて成膜温度400℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。これにより、絶縁膜21,22からなる層間絶縁膜が形成される。その後、絶縁膜22の表面をCMP法により研磨するなどして、絶縁膜22の上面を平坦化する。下地段差に起因して絶縁膜21の表面に凹凸形状が形成されていても、絶縁膜22の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜を得ることができる。
【0067】
次に、図12に示されるように、絶縁膜22上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜22,21をドライエッチングすることにより、絶縁膜21,22にコンタクトホール(貫通孔、孔)23を形成する。この際、まず絶縁膜21に比較して絶縁膜22がエッチングされやすい条件で絶縁膜22のドライエッチングを行い、絶縁膜21をエッチングストッパ膜として機能させることで、絶縁膜22にコンタクトホール23を形成してから、絶縁膜22に比較して絶縁膜21がエッチングされやすい条件でコンタクトホール23の底部の絶縁膜21をドライエッチングして除去する。コンタクトホール21の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bの表面上の金属シリサイド層11bの一部や、ゲート電極GEの表面上の金属シリサイド層11bの一部などが露出される。
【0068】
次に、コンタクトホール23内に、タングステン(W)などからなる導電性のプラグ(接続用導体部)PGを形成する。プラグPGを形成するには、例えば、コンタクトホール23の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜22上に、成膜温度(基板温度)450℃程度のプラズマCVD法によりバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜をCVD法などによって上記バリア導体膜上にコンタクトホール23を埋めるように形成し、絶縁膜22上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグPGを形成することができる。図面の簡略化のために、図12および図13では、プラグPGを構成するバリア導体膜および主導体膜を一体化して示してある。ゲート電極GE、n型半導体領域5bまたはp型半導体領域6b上に形成されたプラグPGは、その底部でゲート電極GE、n型半導体領域5bまたはp型半導体領域6bの表面上の金属シリサイド層11bと接して、電気的に接続される。
【0069】
次に、図13に示されるように、プラグPGが埋め込まれた絶縁膜22上に、ストッパ絶縁膜(エッチングストッパ用絶縁膜)25および配線形成用の絶縁膜26を順次形成する。ストッパ絶縁膜25は絶縁膜26への溝加工の際にエッチングストッパとなる膜であり、絶縁膜26に対してエッチング選択比を有する材料を用いる。ストッパ絶縁膜25は、例えばプラズマCVD法により形成される窒化シリコン膜とし、絶縁膜26は、例えばプラズマCVD法により形成される酸化シリコン膜とすることができる。なお、ストッパ絶縁膜25と絶縁膜26には次に説明する第1層目の配線が形成される。
【0070】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線M1を形成する。まず、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜26およびストッパ絶縁膜25の所定の領域に配線溝(配線M1を埋め込むための溝)を形成した後、半導体基板1の主面上(すなわち配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜26上)にバリア導体膜(バリアメタル膜)を形成する。バリア導体膜は、例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜などを用いることができる。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成する。銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の銅めっき膜、シード層およびバリア導体膜をCMP法により除去して、銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。なお、図面の簡略化のために、図13では、配線M1を構成する銅めっき膜、シード層およびバリア導体膜を一体化して示してある。配線M1は、プラグPGを介してnチャネル型MISFET(Qn)およびpチャネル型MISFET(Qp)のソースまたはドレイン用のn型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bやゲート電極GE(GE1,GE2)などと電気的に接続されている。その後、デュアルダマシン法により2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。
【0071】
次に、本実施の形態の主要な特徴について説明する。
【0072】
サリサイドプロセスで形成する金属シリサイド層がニッケルシリサイドの場合、NiSi相およびNiSi相よりもNiSi相の方が低抵抗であるため、ゲートを構成する導電膜およびソース・ドレインを構成する半導体領域の表面には、NiSiからなる金属シリサイド層(NiSi層)を形成する必要がある。ニッケルシリサイドを形成する場合には、Ni(ニッケル)が拡散種であり、シリコン領域側にNi(ニッケル)が移動することによってニッケルシリサイドが形成される。
【0073】
このため、熱処理の際にNi(ニッケル)が過剰に拡散するなどして不要なNiSi部分が形成され、MISFET毎に金属シリサイド層の電気抵抗がばらつく可能性がある。また、熱処理の際にNiSi層からチャネル部へのNiSiの異常成長が生じる可能性がある。NiSi層からチャネル部にNiSiが異常成長していると、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いたり、ソース・ドレイン領域の拡散抵抗の増大を招いたりする。
【0074】
従って、電界効果トランジスタの性能向上のためには、NiSi層中に不要なNiSi部分が形成されるのを防止し、また、NiSi層からチャネル部へのNiSiの異常成長を防止することが望まれる。
【0075】
そこで、本発明者は、金属シリサイド層として、単純なニッケルシリサイド層ではなく、上記第1金属元素Mを添加したニッケルシリサイド層について検討した。ニッケルシリサイド層中に第1金属元素M(最も有効なのはPt)が添加されていると、形成された金属シリサイド層の凝集が少ないこと、形成された金属シリサイド層において、高抵抗なNiSi相の異常成長を抑制できることなどの利点を得られるので、半導体装置の性能や信頼性を向上させることができる。
【0076】
しかしながら、ニッケルシリサイド層中にPtなどを単に添加するだけでは、NiSi相の異常成長を完全に防止することは困難である。このため、電界効果トランジスタの更なる性能向上のためには、第1金属元素M(最も有効なのはPt)を添加した金属シリサイド層において、NiSi相の異常成長を更に抑制することが望まれる。
【0077】
そこで、本発明者は、ニッケルシリサイド層中に第1金属元素M(最も有効なのはPt)を添加した場合に(すなわち前提条件として後述の第1の条件を満たす場合に)、NiSi相の異常成長の抑制(防止)効果は、いかなる条件(要件)で高まるかについて検討した。その結果、次の条件を満たせば、NiSi相の異常成長の抑制(防止)効果を高めることができることが分かった。
【0078】
まず、前提条件である第1の条件として、金属シリサイド層11bが、第1金属元素M(より好ましくはPt)を添加(含有)したニッケルシリサイドからなることである。すなわち、金属シリサイド層11bが、第1金属元素M(より好ましくはPt)およびニッケル(Ni)のシリサイドからなることである。金属シリサイド層11bは、主としてNi1−ySi相となっている。
【0079】
次に、第2の条件として、金属シリサイド層11bにおける粒径(結晶粒径)を制御することである。具体的には、第2の条件として、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bにおける粒径(結晶粒径)G1を、その金属シリサイド層11bが形成されているソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さくする(すなわちG1<W1)。
【0080】
ここで、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1および金属シリサイド層11bにおける粒径G1について説明する。
【0081】
図14および図15は、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bを形成した後でかつ上記ステップS1で上記合金膜8を形成する前の段階(すなわち上記図6と同じ工程段階)における半導体装置の要部断面図(図14)および要部平面図(図15)であり、図15のA−A線の断面図が図14に対応している。図16および図17は、上記ステップS1〜S5を行って金属シリサイド層11bを形成した後でかつ上記絶縁膜21を形成する前の段階(すなわち上記図10と同じ工程段階)における半導体装置の要部断面図(図16)および要部平面図(図17)であり、図17のA−A線の断面図が図16に対応している。なお、図14と図16とには同じ断面領域の異なる工程段階が示され、図15と図17とには同じ平面領域の異なる工程段階が示されている。図14〜図17には、nチャネル型MISFETが形成されている領域が示されているが、pチャネル型MISFETが形成されている領域の場合は、図14〜図17において、p型ウエルPWがn型ウエルNWとなり、n型半導体領域5aがp型半導体領域6aとなり、n型半導体領域5bがp型半導体領域6bとなり、nチャネル型MISFETQnがpチャネル型MISFETQpとなる。この場合、ゲート電極GEは、ゲート電極GE1からゲート電極GE2となる。また、図17は、平面図であるが、理解を簡単にするために、金属シリサイド層11bが形成されている領域をドットのハッチングを付して示してある。
【0082】
上述したソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1とは、そのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)におけるゲート長方向の寸法(幅)に対応しており、図14〜図16に示されている。ここで、ゲート長方向とは、そのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)が属するMISFETのゲート電極GEのゲート長方向に対応しており、図15および図17ではX方向がゲート長方向に対応している。ゲート長方向は、チャネル長方向に一致している。なお、ここで言うソース・ドレイン領域とは、サリサイドプロセスで金属シリサイド層11bを形成した後の段階では、上部に金属シリサイド層11bが形成されたソースまたはドレイン用の半導体領域のことを指し、金属シリサイド層11b形成前の段階では、後で上部に金属シリサイド層11bが形成されるソースまたはドレイン用の半導体領域のことを指す。具体的には、上記n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bがソース・ドレイン領域に対応している。
【0083】
一方、LDD構造における低不純物濃度のエクステンション領域(上記n型半導体領域5aおよび上記p型半導体領域6aがこのエクステンション領域に対応する)は、上部に側壁絶縁膜(上記サイドウォール7がこれに対応する)があるため、上部に金属シリサイド層11bは形成されない。このため、本実施の形態では、エクステンション領域(n型半導体領域5a、p型半導体領域6a)は、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)とは区別するものとする。従って、本実施の形態において、ソース・ドレイン領域と言う場合は、原則として、側壁絶縁膜(本実施の形態ではサイドウォール7)の下に位置する低濃度のエクステンション領域(n型半導体領域5a、p型半導体領域6a)は含まず、側壁絶縁膜(本実施の形態ではサイドウォール7)で覆われていない高濃度領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)を指すものとする。このため、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)は、側壁絶縁膜(サイドウォール7)で覆われずに上部に金属シリサイド層11bが形成された領域または形成される予定の領域と言うこともできる。
【0084】
また、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に金属シリサイド層11bが形成されるため、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1は、そのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bの幅(ゲート長方向の幅)W2にほぼ一致(対応)している(すなわちW1=W2)。ここで、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bの幅W2とは、ゲート長方向の寸法(幅)に対応しており、図16および図17に示されている。ここで、ゲート長方向とは、その金属シリサイド層11bが形成されているソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)が属するMISFETのゲート電極GEのゲート長方向に対応する。
【0085】
ここで、図14および図15のように、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)を共有してゲート長方向にMISFET(のゲート電極GE)が隣り合っている場合について、そのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)を間に挟んで(共有して)ゲート長方向に隣り合うゲート電極GEの間隔を、隣接間隔W3と定義する。この隣接間隔W3は、隣接間隔W3でゲート長方向に隣り合うゲート電極GEの間のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1と、その隣り合うゲート電極GEの対向する側壁上にそれぞれ形成されたサイドウォール7の厚みW4とを合わせた値となる。すなわち、W3=W1+W4+W4となる。ここで、サイドウォール7の厚みW4は、ゲート長方向の寸法に対応している。サイドウォール7の厚みW4は、サイドウォール7形成用の絶縁膜の形成膜厚(堆積膜厚)で制御できる。
【0086】
このため、図14および図15のように、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)を共有してゲート長方向にMISFET(のゲート電極GE)が隣り合っている場合には、そのソース・ドレイン領域の幅W1は、次の式、
W1=W3−W4−W4
で求めることができる。すなわち、ゲート電極GEの隣接間隔W3から、サイドウォール7の厚みW4の2つ分を引いた値が、その隣り合うゲート電極GEの間のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1となる。
【0087】
一方、金属シリサイド層11bにおける粒径G1とは、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bを構成する結晶粒の直径に対応するが、金属シリサイド層11bの厚み方向(半導体基板1の主面に垂直な方向)における粒径ではなく、金属シリサイド層11bの平面方向(半導体基板1の主面に平行な方向)における粒径のことを指す。金属シリサイド層11bにおいて、結晶粒の粒径は均一であることが好ましいが、多少不均一な場合であっても、平均粒径を上記粒径G1とみなすことができる。粒径G1を簡易的に測定するには、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bにおける平面(半導体基板1の主面に略平行な平面)において、所定の長さの線分(粒径よりも長い線分)をとり、その線分を粒界がいくつ横切っているかを求め、線分の長さを、その線分を横切る粒界の数で除した(割った)値により、簡易的に求めることができる。
【0088】
ソース・ドレイン領域の平面寸法(ゲート長方向およびゲート幅方向の両方の寸法)よりも、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層の結晶粒の粒径が小さければ、その金属シリサイド層の結晶粒径から金属シリサイド層11bにおける粒径G1を規定(測定)することができる。
【0089】
しかしながら、ソース・ドレイン領域のゲート長方向の寸法(幅W1)が小さい領域では、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層の結晶粒の粒径が大きくなってくると(具体的には幅W1よりも大きくなると)、ゲート長方向をほぼ一つの結晶粒が占有した状態となる。このような場合には、ソース・ドレイン領域のゲート幅方向(図15ではY方向)の寸法(図15に示される幅W5に対応)がゲート長方向の寸法(幅W1)よりも大きければ、ゲート長方向の結晶粒径により、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を規定(測定)することができる。なお、ゲート幅方向とは、その金属シリサイド11bが上部に形成されているソース・ドレイン領域が属するMISFETのゲート電極GEのゲート幅方向に対応しており、図15および図17ではY方向がゲート幅方向に対応している。ゲート長方向(X方向)とゲート幅方向(Y方向)とは、互いに直交している。ゲート幅方向は、チャネル幅方向に一致している。
【0090】
更に、ソース・ドレイン領域の平面寸法(ゲート長方向およびゲート幅方向の両方の寸法)が小さい領域では、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層の結晶粒の粒径が大きくなってくると(具体的には幅W1,W5よりも大きくなると)、平面寸法全体をほぼ一つの結晶粒が占有した状態となる。このような場合には、寸法(ゲート長方向およびゲート幅方向の少なくとも一方)が比較的大きな他のソース・ドレイン領域において、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層の結晶粒の粒径を測定し、この粒径で、平面寸法が小さいソース・ドレイン領域上の金属シリサイド層の粒径も規定(代用)することができる。これは、n型半導体領域からなるソース・ドレイン領域(nチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域)上に形成された金属シリサイド層(11b)同士では、結晶粒の成長の仕方が同じになるため、結晶粒径がほぼ同じとなるためである。また、p型半導体領域からなるソース・ドレイン領域(pチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域)上に形成された金属シリサイド層(11b)同士では、結晶粒の成長の仕方が同じになるため、結晶粒径がほぼ同じとなるためである。
【0091】
従って、半導体基板1の主面には複数のMISFETが形成されているが、それら複数のMISFETのうち、比較的大きな(上部に形成された金属シリサイド層の結晶粒径よりも大きな)寸法のソース・ドレイン領域を所定数選択(抽出)し、それらの上部に形成された金属シリサイド層の結晶粒の平均粒径を測定すれば、その粒径を金属シリサイド層11bにおける粒径G1とみなすことができる。
【0092】
図18は、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を変えたときの、リーク電流欠陥の発生数(発生頻度)をプロットしたグラフである。図18のグラフの横軸は、金属シリサイド層11bにおける粒径G1に対応し、図18のグラフの縦軸は、リーク電流が所定の基準値よりも大きくなったMISFETの発生数に対応している。また、図18では、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1を105nm(すなわちW1=105nm)としたMISFETを、半導体基板(半導体ウエハ)の主面に多数形成した場合について、金属シリサイド層11bに相当する金属シリサイド層における粒径G1に依存して、リーク電流欠陥の発生数がどのように変化するかについて調べてある。
【0093】
金属シリサイド層11bにおける粒径G1を、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1以上とした場合(すなわちG1≧W1)には、図18のグラフからも分かるように、MISFETのリーク電流欠陥(リーク電流が所定の基準値を越える欠陥)が発生しやすい。一方、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さくした場合(すなわちG1<W1の場合)には、図18のグラフからも分かるように、MISFETのリーク電流欠陥は、ほとんど発生しなくなる。この傾向(G1≧W1ではリーク電流欠陥が発生しやすく、G1<W1ではリーク電流欠陥が発生しにくいという傾向)は、ソース・ドレイン領域の幅W1を105nm(すなわちW1=105nm)とした場合だけでなく、他の値としたときにも維持される。
【0094】
従って、上記第2の条件として、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さくする(すなわちG1<W1)ことで、図18のグラフからも分かるように、リーク電流欠陥の発生を抑制することができる、すなわち、MISFETにおいてリーク電流が増大する欠陥の発生を抑制または防止することができる。
【0095】
上記第2の条件として、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さく(G1<W1)することで、図18のグラフのようにリーク電流欠陥の発生を抑制することができるのは、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を抑制できるためと考えられる。すなわち、上記第2の条件を満たしていない場合(G1≧W1の場合)には、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長が比較的発生しやすいのに比べて、上記第2の条件を満たす場合(G1≧W1の場合)には、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長が比較的発生しにくくなるため、リーク電流欠陥の発生を抑制することができる。
【0096】
上記第2の条件として、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さくした場合(G1<W1の場合)に、Ni1−ySiの異常成長を抑制できる理由の一つを以下に説明する。
【0097】
図19は、金属シリサイド層11bの模式的な断面を示す説明図であり、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bの、ゲート長方向に平行でかつ半導体基板1の主面に垂直な断面が模式的に示されている。すなわち、図19の(a),(b),(c)は、上記図16に示される金属シリサイド層11bの断面と同じ断面が示されており、図19に示されるX方向がゲート長方向である。但し、図19の(a)は、上記第2の条件を満たさない場合(すなわち金属シリサイド層11bにおける粒径G1がソース・ドレイン領域の幅W1以上(G1≧W1)である場合)に対応し、図19の(b),(c)は、上記第2の条件を満たす場合(すなわち金属シリサイド層11bにおける粒径G1がソース・ドレイン領域の幅W1よりも小さい(G1<W1)場合)に対応している。図19の(a),(b),(c)において、金属シリサイド層11bの下部には、実際にはソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)が存在しているが、簡略化のためにその図示は省略している。
【0098】
上記第2の条件を満たさない場合(G1≧W1の場合)には、ソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bは、図19の(a)に示される断面でみると、ゲート長方向をほぼ1個の結晶粒(図19の(a)の場合は結晶粒GR1)が占めた状態となり、ゲート長方向を横切るような粒界はほとんど存在しない状態となっている。
【0099】
それに対して、上記第2の条件を満たす場合(G1<W1の場合)には、ソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bは、図19(b),(c)に示される断面でみると、ゲート長方向を複数の結晶粒(図19の(b)の場合は2つの結晶粒GR2a,GR2b、図19の(c)の場合は3つの結晶粒GR3a,GR3b,GR3c)が占めた状態となり、ゲート長方向を横切るような粒界GBが存在した状態となっている。
【0100】
すなわち、金属シリサイド層11bにおける粒径G1がソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さいか否かで、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bが、ゲート長方向を横切るような粒界GBを有するか否かが、ほぼ決定されることになる。
【0101】
MISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bを構成する各結晶粒(図19の結晶粒GR1,GR2a,GR2b,GR3a,GR3b,GR3cもこの結晶粒に対応する)は、ほぼ単結晶(より特定的にはNi1−ySi相の単結晶)の状態であるが、結晶粒同士を比べると結晶方位は相違する。すなわち、結晶粒径(粒径G1)が小さい場合には、結晶方位が異なる複数の結晶粒によって、金属シリサイド層11bが構成されている。
【0102】
金属シリサイド層11bを構成する各結晶粒と半導体基板1(半導体基板1に不純物を拡散させた領域も半導体基板1の一部とみなすことができる)とは、それぞれ単結晶で構成されているが、結晶粒の結晶方位と半導体基板1の結晶方位との組み合わせによっては、Ni1−ySi相の単結晶でほぼ構成された結晶粒から半導体基板1側に、Ni1−ySiが異常成長しやすい状態が発生する。
【0103】
金属シリサイド層11bを構成する各結晶粒の結晶方位を制御することは困難であり、金属シリサイド層11bには、様々な結晶方位の結晶粒が形成され得る。このため、金属シリサイド層11bには、半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒が、ある確率で発生する。すなわち、半導体基板1の主面に複数(多数)のMISFETを形成した場合には、その複数(多数)のMISFETのうちのある割合のMISFETにおいて、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bに、半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒が発生する。
【0104】
半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒が金属シリサイド層11bに存在すると、その結晶粒から半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長する可能性がある。特に、チャネル部に向かってNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒が金属シリサイド層11bに存在した場合には、その結晶粒からチャネル部にNi1−ySiが異常成長する可能性がある。チャネル部へのNi1−ySiの異常成長が発生すると、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いてしまい(これが上記リーク電流欠陥の発生につながる)、性能への影響が大きい。
【0105】
図20は、金属シリサイド層11bにおいてNi1−ySiの異常成長が発生した状態を模式的に示す説明図であり、上記図19に対して、Ni1−ySiの異常成長部(異常成長領域)12を追加したものが、図20に対応する。このため、図20の(a),(b),(c)は、それぞれ図19の(a),(b),(c)に対応しており、図19の(a)および図20の(a)は、上記第2の条件を満たさない場合(G1≧W1の場合)に対応し、図19の(b),(c)および図20の(b),(c)は、上記第2の条件を満たす場合(G1<W1の場合)に対応する。
【0106】
金属シリサイド層11bにおいて、半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒が存在している場合、その結晶粒がNi1−ySiの異常成長部の供給源となってNi1−ySiの異常成長が発生する。図20の場合、(a)に示される結晶粒GR1と、(b)に示される結晶粒GR2a,GR2bのうちの結晶粒GR2aと、(c)に示される結晶粒GR3a,GR3b,GR3cのうちの結晶粒GR3aとが、半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有していると仮定する。このため、図20の(a)の場合、結晶粒GR1からNi1−ySiの異常成長部12が成長し、図20の(b)の場合、結晶粒GR2aからNi1−ySiの異常成長部12が成長し、図20の(c)の場合、結晶粒GR3aからNi1−ySiの異常成長部12が成長している。Ni1−ySiの異常成長部12は、半導体基板1を構成するSiの<110>方向に成長しやすい。
【0107】
Ni1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒(図20の場合は結晶粒GR1,GR2a,GR3a)の粒径が大きいと、Ni1−ySiの異常成長部の供給源が大きいことになるため、Ni1−ySiの異常成長の量が多くなり、異常成長部12の長さL1が長くなる。一方、Ni1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒の粒径(図20の場合は結晶粒GR1,GR2a,GR3a)が小さいと、Ni1−ySiの異常成長部の供給源が小さいことになるため、Ni1−ySiの異常成長の量が少なくなり、異常成長部12の長さL1が短くなる。金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長部12の長さL1が長いほど、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いてしまい、上記リーク電流欠陥の発生につながるため、上記リーク電流欠陥の発生を抑制するためには、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長部12の長さL1を短くすることが有効である。
【0108】
そこで、本実施の形態では、上記第2の条件として、金属シリサイド層11bにおける粒径を制御しており、金属シリサイド層11bにおける粒径G1をソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さく(G1<W1)する。上記第2の条件を満たすことで、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bは、図19(b),(c)に示される断面でみると、ゲート長方向を複数の結晶粒(図19(b)の場合は結晶粒GR2a,GR2b、図19(c)の場合は結晶粒GR3a,GR3b,GR3c)が占めた状態となり、ゲート長方向を横切るような粒界GBが存在した状態となる。粒界GBを挟んで隣り合う結晶粒同士(図19(b)の場合は結晶粒GR2aと結晶粒GR2bとの間、図19(c)の場合は結晶粒GR3aと結晶粒GR3bとの間結晶粒GR3cとの間)では、結晶方位は互いに異なっている。このため、たとえ金属シリサイド層11bに、半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒(図19(b)の結晶粒GR2a、図19(c)の結晶粒GR3a)が存在している場合でも、Ni1−ySiの異常成長部12の供給源である結晶粒(結晶粒GR2a,GR3a)の粒径が小さいことによるNi1−ySiの異常成長の抑制効果を得ることができる。すなわち、Ni1−ySiの異常成長の量が少なくなり異常成長部12の長さL1が短くなる効果を得ることができる。このため、図20の(a)の場合(G1≧W1の場合)における異常成長部12の長さL1(これを長さL1aと称する)に比べて、図20の(b),(c)の場合(G1<W1の場合)における異常成長部12の長さL1(これを長さL1b,L1cと称する)が短くなる(すなわちL1b,L1c<L1aとなる)。
【0109】
金属シリサイド層11bから半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長する場合に、特に問題になるのは、金属シリサイド層11bからチャネル部側にNi1−ySiが異常成長することである。それに比べると、金属シリサイド層11bからゲート幅方向(チャネル幅方向)にNi1−ySiが異常成長しても、悪影響は少ない。このため、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を抑制する必要があるが、このためには、金属シリサイド層11bに半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長しやすいような結晶方位を有する結晶粒が存在している場合に、その結晶粒のゲート長方向の寸法(粒径)を小さくすることが有効である。すなわち、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を抑制するためには、金属シリサイド層11bにおいて、図19(a)および図20(a)のようにゲート長方向を1個の結晶粒が占めた状態とはならずに、図19(b),(c)および図20(b),(c)のようにゲート長方向を複数の結晶粒が占めた状態となる(ゲート長方向を横切るような粒界GBが存在した状態となる)ことが有効である。また、粒界GBは、Ni1−ySiの異常成長を抑制するように作用するため、金属シリサイド層11bにおいて、ゲート長方向を横切るような粒界GBが存在していることは、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を抑制するように作用する。
【0110】
上記第2の条件を満たさずに、金属シリサイド層11bにおける粒径G1がソース・ドレイン領域の幅W1以上(G1≧W1)であった場合には、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bを構成する各結晶粒のゲート長方向の寸法(粒径)は、ソース・ドレイン領域の幅W1にほぼ一致したものとなる。それに対して、上記第2の条件を満たして、金属シリサイド層11bにおける粒径G1をソース・ドレイン領域の幅W1よりも小さく(G1<W1)することで、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bを構成する各結晶粒のゲート長方向の寸法(粒径)を、ソース・ドレイン領域の幅W1よりも小さくすることができる。すなわち、金属シリサイド層11bにおける粒径G1をソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さくするか否かで、そのソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bを構成する各結晶粒のゲート長方向の寸法(粒径)が、ソース・ドレイン領域の幅W1よりも小さくなるかソース・ドレイン領域の幅W1とほぼ同じになるかが決まることになる。
【0111】
本実施の形態では、上記第2の条件を満たすことで、ソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bは、図19(b),(c)と図20(b),(c)に示される断面でみると、ゲート長方向を複数の結晶粒(図19と図20の(b)では結晶粒GR2a,GR2b、図19と図20の(c)では結晶粒GR3a,GR3b,GR3c)が占めた状態となり、ゲート長方向を横切るような粒界GBが存在した状態となる。このため、図19と図20の(a)の場合(上記第2の条件を満たさない場合)に比べて、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を抑制することができる。
【0112】
金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長部12の長さL1が長いほど、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招きやすく、上記リーク電流欠陥の発生につながるが、本実施の形態では、上記第2の条件を満たすことで、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長部12の長さL1を短くすることができる。このため、Ni1−ySiの異常成長によるMISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を抑制または防止でき、上記図18のグラフにも示されるように、上記リーク電流欠陥の発生を抑制または防止することができる。
【0113】
また、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長をできるだけ抑制するには、金属シリサイド層11bにおいて、ゲート長方向を横切るような粒界GBの数を増やすことが有効である。金属シリサイド層11bにおいて、ゲート長方向を横切るような粒界GBの数は、G1≧W1のときはほぼゼロであり、W1×0.5≦G1<W1のときはほぼ1つであるが、G1<W1×0.5のときはほぼ2つ以上となる。このため、上記第2の条件は、金属シリサイド層11bにおける粒径G1をソース・ドレイン領域の幅W1よりも小さく(G1<W1)するが、金属シリサイド層11bにおける粒径G1をソース・ドレイン領域の幅W1の1/2未満(すなわちG1<W1×0.5)とすれば更に好ましく、これにより、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を更に的確に抑制することができるようになる。
【0114】
このように、本実施の形態では、上記第2の条件として、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1よりも小さく(G1<W1)する(更に好ましくは半分未満(G1<W1×0.5)にする)ことで、Ni1−ySiの異常成長を抑制することができる。
【0115】
本実施の形態の半導体装置は、ゲート電極GEと上部に金属シリサイド層11bが形成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)とを有するMISFETが半導体基板1の主面に複数形成された半導体装置である。しかしながら、半導体装置を構成する半導体基板1には、複数のMISFETが形成されているが、全てのMISFETにおいてソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が一定であるとは限らない。すなわち、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が異なる複数種類のMISFETが、半導体基板1上に混載されていることがある。
【0116】
図21は、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bを形成した後でかつ上記ステップS1で上記合金膜8を形成する前の段階(すなわち上記図6および図14と同じ工程段階)における半導体装置の要部断面図である。図22は、上記ステップS1〜S5を行って金属シリサイド層11bを形成した後でかつ上記絶縁膜21を形成する前の段階(すなわち上記図10および図16と同じ工程段階)における半導体装置の要部断面図である。図21と図22とは同じ断面領域の異なる工程段階が示されている。図21および図22には、nチャネル型MISFETが形成されている領域が示されているが、pチャネル型MISFETが形成されている領域の場合は、図21および図22において、p型ウエルPWがn型ウエルNWとなり、n型半導体領域5aがp型半導体領域6aとなり、n型半導体領域5bがp型半導体領域6bとなる。この場合、ゲート電極GEは、ゲート電極GE1からゲート電極GE2となる。
【0117】
図21および図22の(a)には、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が比較的大きい(広い)MISFETが形成されている領域が示されている。図21および図22の(b)には、図21および図22の(a)よりも、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が小さい(狭い)MISFETが形成されている領域が示されている。図21および図22の(c)には、図21および図22の(a),(b)よりも、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が更に小さい(狭い)MISFETが形成されている領域が示されている。別の見方をすると、上記隣接間隔W3(上記図14および図15に示されている)は、図21および図22の(a)よりも図21および図22の(b)で小さく、図21および図22の(a),(b)よりも図21および図22の(c)で更に小さくなっている。
【0118】
ここで、図21および図22の(a)に示されるMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1を幅W1aと称する。また、図21および図22の(b)に示されるMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1を幅W1bと称する。また、図21および図22の(c)に示されるMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1を幅W1cと称する。幅W1a,W1b,W1cの関係は、幅W1bは幅W1aよりも小さく、幅W1cは幅W1bよりも小さい(すなわちW1c<W1b<W1a)。
【0119】
なお、図21および図22の(c)に示されるMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅(第1の幅)W1cは、本実施の形態の半導体装置を構成する半導体基板1に形成された全てのMISFETのうち、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が最も小さい(狭い)MISFETの、そのソース・ドレイン領域の幅W1に対応している。従って、本実施の形態の半導体装置は、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が幅W1cに等しい(すなわちW1=W1cである)ようなMISFETを含んでいるが、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1が幅W1cよりも小さい(すなわちW1<W1cとなる)ようなMISFETは含んでいない。従って、本実施の形態の半導体装置には複数のMISFETが形成されており、それらのMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1は、MISFETの用途や種類ごとに種々の値をとり得るが、そのうちの最小の幅W1の値が幅W1cである。
【0120】
また、ゲート長方向に隣り合うゲート電極GE間に配置されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)は、ゲート電極GEの隣接間隔W3(図14および図15に示されている)が狭く(小さく)なるほど、その幅W1が小さくなる。このため、図21および図22の(c)に示される幅W1cを有するソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)は、半導体基板1の主面に形成された複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向に最も近接して隣り合う(すなわち上記隣接間隔W3が最小となっている)ゲート電極GE間に配置されたソース・ドレイン領域ということもできる。すなわち、本実施の形態の半導体装置には複数のMISFETが形成されており、上記隣接間隔W3は、MISFETの用途や種類ごとに種々の値をとり得るが、そのうちの最小の隣接間隔W3で隣り合っているゲート電極GE間に配置されているのが、幅W1cのソース・ドレイン領域となる。本実施の形態の半導体装置は、半導体基板1の主面において、ゲート電極GEがゲート長方向に隣り合っている箇所を複数有しているが、上記隣接間隔W3は、図21および図22の(c)に示されるゲート電極GE間(すなわち幅W1cを有するソース・ドレイン領域を間に挟んで隣り合っているゲート電極GE間)で最小となっている。
【0121】
本実施の形態の半導体装置には複数のMISFETが形成されており、各MISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の上部には金属シリサイド層11bがサリサイドプロセスで形成されている。これらの金属シリサイド層11bは同じ工程で形成されるため、熱処理条件(上記第1の熱処理や第2の熱処理の条件)を調整することなどにより、全ての金属シリサイド層11bに対して一律に粒径(上記粒径G1に対応する値)を制御することはできるが、MISFET毎に金属シリサイド層11bの粒径を制御することは困難である。このため、図22(c)に示される幅W1cのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成する金属シリサイド層11bの粒径と、図22(b)に示される幅W1bのソース・ドレイン領域上に形成する金属シリサイド層11bの粒径と、図22(a)に示される幅W1aのソース・ドレイン領域上に形成する金属シリサイド層11bの粒径とを、それぞれ独立に制御することは困難である。
【0122】
そこで、本実施の形態では、第3の条件として、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bにおける粒径(結晶粒径)G1を、上記幅W1cよりも小さく(G1<W1c)する。すなわち、金属シリサイド層11bの粒径G1を、半導体基板1の主面に形成された複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向の幅W1が最も小さいソース・ドレイン領域(第1のソース・ドレイン領域、図21および図22の(c)に示されるソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b))におけるゲート長方向の幅(第1の幅)W1cよりも小さく(すなわちG1<W1c)する。この第3の条件が満たされるように、上記ステップS3,S5の第1の熱処理および第2の熱処理を行う。この第3の条件は、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1に関わらず、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された全ての金属シリサイド層11bに対して適用する。すなわち、図22(a)の金属シリサイド層11bと図22(b)の金属シリサイド層11bと図22(c)の金属シリサイド層11bとは、その粒径G1が、図22(c)のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1cよりも小さくなっている(G1<W1c)ようにするのである。第3の条件を別の見方で表現すると、金属シリサイド層11bが上部に形成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)を有するMISFETが半導体基板1の主面に複数形成されている場合に、ソース・ドレイン領域の幅W1の大小に関わらず、ソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bのそれぞれにおいて、上記第2の条件が満たされているようにする。
【0123】
第3の条件を満たすようにすれば、上記第2の条件を満たさない(すなわちG1≧W1となる)ような金属シリサイド層11bおよびソース・ドレイン領域を有するMISFETが半導体基板1の主面から無くなり、ソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層11bの全てにおいて、上記第2の条件が満たされている状態となる。例えば、図22の(a)と(b)と(c)のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成されたいずれの金属シリサイド層11bにおいても、その粒径G1を、図22(c)のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1cよりも小さく(G1<W1c)する。これにより、図22の(a)と(b)と(c)のいずれにおいても、第2の条件が満たされている(G1<W1)状態となる。
【0124】
第3の条件を満たさずに、上記第2の条件を満たさない(すなわちG1≧W1となる)ような金属シリサイド層11bおよびソース・ドレイン領域を有するMISFETが半導体基板1の主面に形成されていると、そのMISFETでは、ソース・ドレイン領域上の金属シリサイド層11bからチャネル部側にNi1−ySiが異常成長しやすいため、リーク電流が増大して、上記リーク電流欠陥となる可能性がある。
【0125】
それに対して、第3の条件を満たすようにすれば、上記第2の条件を満たさない(すなわちG1≧W1となる)ような金属シリサイド層11b(すなわちNi1−ySiの異常成長が生じやすい金属シリサイド層11b)およびソース・ドレイン領域を有するMISFETが半導体基板1の主面から無くなる。このため、金属シリサイド層11bからのNi1−ySiの異常成長に起因した不具合(リーク電流の増大や、ひいては上記リーク電流欠陥の発生)を、上部に金属シリサイド層11bが形成されたソース・ドレイン領域を有する全てのMISFETに対して抑制または防止することができる。従って、複数のMISFETを有する半導体装置の性能を的確に向上させることができる。
【0126】
このように、上記第1の条件と上記第2の条件との両方を満たすことで、それら第1および第2の条件を満たす個々のMISFETの性能を向上させることができる。これに加えて、更に上記第3の条件を満たすことで、半導体基板1の主面に形成された複数のMISFET全体の性能を向上させることができ、複数のMISFETを含む半導体装置の性能を向上させることができる。
【0127】
また、上記第3の条件は、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を上記幅W1cよりも小さく(G1<W1c)するが、上記第2の条件の場合と同様の考え方により、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を上記W1cの1/2未満(すなわちG1<W1c×0.5)とすれば更に好ましい。これにより、金属シリサイド層11bにおいて、ゲート長方向を横切るような粒界GBの数を増やすことができるため、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を更に的確に抑制することができるようになる。
【0128】
また、本実施の形態では、前提条件として、上記第1の条件を満たしているが、金属シリサイド層11bが第1金属元素M(より好ましくはPt)を含有していることによって得られる効果(例えばNiSi相の異常成長の抑制効果)は、金属シリサイド層11b中の第1金属元素M(より好ましくはPt)の濃度が高くなるほど高まる。このため、金属シリサイド層11b中の第1金属元素M(より好ましくはPt)の濃度を高めて半導体装置の性能をより向上させることが望まれる。また、上記第3の条件を満たすためには、金属シリサイド層11bの粒径を小さくすることが望まれる。従って、形成された金属シリサイド層11bにおける第1金属元素M(より好ましくはPt)の濃度を高めることができる製造技術や、形成された金属シリサイド層11bのおける粒径を小さくすることができる製造技術を提供することが望まれる。
【0129】
このため、本実施の形態では、金属シリサイド層11bをサリサイドプロセスで形成する手法を工夫している。以下に、上記ステップS3の第1の熱処理および上記ステップS5の第2の熱処理について、より詳細に説明する。
【0130】
図23〜図28は、ステップS1,S2,S3,S4,S5の各段階における半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、シリコン(Si)領域31の上部近傍領域が示されている。また、図29は、Si領域(シリコン領域)中におけるNiとPtの拡散係数を示すグラフであり、Si領域中におけるNiとPtの拡散係数のアレニウスプロットが示されている。図29のグラフの縦軸は、Si領域中におけるNiまたはPtの拡散係数に対応し、図29の横軸は、絶対温度Tの逆数を1000倍したものに対応する。また、図23〜図28のうち、図23は、ステップS1で合金膜8を形成する直前の段階が示され、図24は、ステップS1を行って合金膜8を形成した段階(ステップS2のバリア膜9の形成前の段階)が示され、図25は、ステップS2を行ってバリア膜9を形成した段階(ステップS3の第1の熱処理の前の段階)が示されている。また、図26は、ステップS3の第1の熱処理を行った段階(ステップS4のバリア膜9および未反応の合金膜8の除去工程を行う前の段階)が示され、図27は、ステップS4のバリア膜9および未反応の合金膜8の除去工程を行った段階(ステップS5の第2の熱処理を行う前の段階)が示され、図28は、ステップS5の第2の熱処理を行った段階(絶縁膜21を形成する前の段階)が示されている。
【0131】
なお、図29のアレニウスプロットの出展は、O. Madelung, M. Schulz, and H. Weiss eds., /Landolt-Bornstein/ /Zahlenwerte und Funktionen aus Naturwissenshaften und Technik/, p. 494, Berlin: Springer-Verlag, 1984.である。
【0132】
ここで、図23〜図28に示されているシリコン領域31は、ゲート電極GE、n型半導体領域5b(ソース・ドレイン領域)またはp型半導体領域6b(ソース・ドレイン領域)のいずれかに対応する。これは、ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bが、いずれもシリコン領域(具体的にはゲート電極GEは多結晶シリコン膜、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bは単結晶シリコン領域)からなるためである。シリコン領域31がゲート電極GEの場合は、そのシリコン領域31は多結晶シリコンからなり、シリコン領域31がソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の場合は、そのシリコン領域31は単結晶シリコンからなる。
【0133】
上述したように金属シリサイドを形成するためには、図23および図24に示されるように、ステップS1において、シリコン領域31(すなわちゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b)上を含む半導体基板1の主面(全面)上に合金膜8を形成するが、シリコン領域31上の合金膜8の形成膜厚(堆積膜厚)は、厚み(膜厚)tn1である。この厚みtn1は、ステップS3の第1の熱処理の前の、シリコン領域31上の合金膜8の厚みに対応する。形成された合金膜8は、Niと第1金属元素Mの原子比が1−x:xの合金膜であるNi1−x合金膜(ここで0<x<1)である。
【0134】
それから、図25に示されるように、ステップS2において、合金膜8上にバリア膜9が形成される。その後、ステップS3の第1の熱処理を行なうと、図26に示されるように、シリコン領域31と合金膜8とが反応して、(Ni1−ySi相(ここで0<y<1)の金属シリサイド層11aが、シリコン領域31の表面(上層部)に形成される。本実施の形態では、シリコン領域31上の合金膜8の全てをシリコン領域31と反応させるのではなく、金属シリサイド層11a上に合金膜8の未反応部分8aが残存するように、ステップS3の第1の熱処理を行う。ここで、未反応部分8aは、ステップS3の第1の熱処理前にシリコン領域31上に位置していた合金膜8のうち、ステップS3の第1の熱処理でシリコン領域31と反応しなかった部分に対応する。
【0135】
シリコン領域31上に位置していた合金膜8のうち、ステップS3の第1の熱処理後(ステップS4のバリア膜9および未反応の合金膜8の除去工程前)もシリコン領域31上に残存する未反応部分8aの厚みは、厚み(膜厚)tn2であり、形成された金属シリサイド層11aの厚みは、厚みtn4である。
【0136】
なお、理解を簡単にするために、図25においては、点線で示される仮想線で合金膜8を未反応部8aと反応部分8bとに分けている。反応部分8bは、ステップS3の第1の熱処理前にシリコン領域31上に位置していた合金膜8のうち、ステップS3の第1の熱処理でシリコン領域31と反応して金属シリサイド層11aを形成した部分に対応する。従って、反応部分8bと未反応部分8aとを合わせたものが、ステップS3の第1の熱処理前にシリコン領域31上に位置していた合金膜8に相当する。合金膜8は実際には単層であるが、合金膜8の下層部分が反応部分8bで、合金膜8の上層部分が未反応部分8aであり、反応部分8bと未反応部分8aは、合金膜8を略層状に2つに分けた領域(下側が反応部分8bで上側が未反応部分8a)にほぼ対応する。反応部分8bの厚みを厚みtn3とすると、未反応部分8aの厚みtn2と反応部分8bの厚みtn3との和が、合金膜8の厚みtn1に対応する(すなわちtn1=tn2+tn3)。
【0137】
本実施の形態では、金属シリサイド層11a上に合金膜8の未反応部分8aが層状に残存するようにステップS3の第1の熱処理を行うので、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3は、第1の熱処理前のシリコン領域31上の合金膜8の厚みtn1よりも薄く(tn3<tn1)、かつ第1の熱処理後に金属シリサイド層11a上に残存する合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2は、ゼロよりも大きい(tn2>0)。
【0138】
なお、コバルトシリサイド形成の場合は、Si(シリコン)が拡散種であり、Co膜中へSiが移動することによりコバルトシリサイドが形成されるのに対して、本実施の形態のようにNi1−x合金膜を用いる場合は、Ni(ニッケル)および第1金属元素Mが拡散種であり、シリコン領域31側にNi(ニッケル)および第1金属元素Mが移動することによって金属シリサイド11aが形成される。
【0139】
それから、図27に示されるように、ステップS4で、バリア膜9と、未反応の合金膜8(すなわちステップS3の第1の熱処理工程にてシリコン領域31と反応しなかった合金膜8)とを除去する。この際、金属シリサイド層11a上の未反応部分8aも除去される。その後、ステップS5の第2の熱処理を行ない、(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aとシリコン領域31とを更に反応させることで、図28に示されるように、Ni1−ySi相の金属シリサイド層11bをシリコン領域31の表面(上層部分)に形成する。形成された金属シリサイド層11bの厚みは、厚みtn5である。
【0140】
本実施の形態においては、次の2つの条件(第4の条件および第5の条件)を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行なうことを特徴としている。
【0141】
第4の条件として、金属シリサイド層11a上に合金膜8の未反応部分8aが残存するように(すなわちtn1>tn2>0となるように)、ステップS3の第1の熱処理を行なう。
【0142】
すなわち、ステップS3の第1の熱処理においては、シリコン領域31上に位置する部分の合金膜8の全部を、そのシリコン領域31と反応させるのではなく、シリコン領域31上に位置する部分の合金膜8の一部のみを、そのシリコン領域31と反応させる。換言すれば、ステップS3の第1の熱処理において、合金膜8とシリコン領域31との反応率R1が100%未満になるようにする。このようにすることで、シリコン領域31(ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b)上に位置する合金膜8の上層部分は、ステップS3の第1の熱処理を行なっても、未反応のまま未反応部分8aとして金属シリサイド層11a上に残存する。これにより、ステップS3の第1の熱処理を行なうと、金属シリサイド層11a上に合金膜8の未反応部分8aが残存することになる。
【0143】
ここで、合金膜8とシリコン領域31との反応率R1とは、シリコン領域31上に位置する合金膜8のうち、ステップS3の第1の熱処理よって、そのシリコン領域31と反応して金属シリサイド層11aを形成した部分(すなわち反応部分8b)の割合に対応する。従って、合金膜8とシリコン領域31との反応率R1は、ステップS3の第1の熱処理を行なう前の合金膜8の厚みtn1に対する、ステップS3の第1の熱処理中に金属膜11aを形成するために消費された合金膜8の厚み、すなわち反応部分8bの厚みtn2の割合に対応することになる。従って、合金膜8とシリコン領域31との反応率R1は、R1=tn3/tn1、すなわちR1=(tn1−tn2)/tn1と表すことができる。百分率表示する場合は、R1=tn3×100/tn1[%]、すなわちR1=(tn1−tn2)×100/tn1[%]と表すことができる。
【0144】
第5の条件として、シリコン領域31(ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b)中へのニッケル(Ni)の拡散係数よりも、シリコン領域31(ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b)中への第1金属元素M(好ましくはPt)の拡散係数の方が大きくなるような熱処理温度Tで、ステップS3の第1の熱処理を行なう。換言すれば、合金膜8が含有するニッケル(Ni)と第1金属元素Mとについて、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度Tでの、シリコン領域31(ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b)中への拡散係数を比べると、ニッケル(Ni)よりも第1金属元素M(好ましくはPt)の方が大きい。このようにすることで、ステップS3の第1の熱処理において、合金膜8からシリコン領域31中へ、Ni(ニッケル)よりも第1金属元素M(好ましくはPt)の方が、拡散しやすくなる。
【0145】
図29には、Si領域(シリコン領域)中におけるNiとPtの拡散係数の温度依存性のグラフが示されているが、この図29のグラフに示されるように、NiおよびPtの拡散係数は、どちらも温度が高くなるにつれて増大するが、拡散係数の温度依存性はNiとPtとで異なる。このため、図29のグラフから分かるように、温度Tよりも高温では、Si領域中におけるNiの拡散係数が、Si領域中におけるPtの拡散係数よりも大きくなり、PtよりもNiの方がSi領域に拡散しやすくなる。温度Tでは、Si領域中におけるNiの拡散係数と、Si領域中におけるPtの拡散係数とが同じになり、Si領域への拡散しやすさは、NiとPtで同じである。温度Tよりも低温では、Si領域中におけるPtの拡散係数が、Si領域中におけるNiの拡散係数よりも大きくなり、NiよりもPtの方がSi領域に拡散しやすくなる。この温度Tは、279℃である(すなわちT=279℃)。
【0146】
このため、上記第1金属元素MがPt(白金)の場合、すなわち合金膜8がNi−Pt合金膜(Ni1−xPt合金膜)の場合、上記第5の条件を満たすためには、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度Tを上記温度Tよりも低く(すなわちT<T)する。具体的には、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度Tを279℃未満(すなわちT<279℃)とする。ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度Tを上記温度Tよりも低く(T<T、具体的にはT<279℃)すれば、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度Tにおいて、シリコン領域31中へのニッケル(Ni)の拡散係数よりも、シリコン領域31中へのPt(白金)の拡散係数の方が大きくなる。これにより、ステップS3の第1の熱処理では、合金膜8からシリコン領域31(ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b)中へ、Ni(ニッケル)よりもPt(白金)の方が、拡散しやすくなる。
【0147】
従って、上記第5の条件を満たすためには、シリコン領域31中へのニッケル(Ni)の拡散係数と、シリコン領域31中への第1金属元素Mの拡散係数とが一致する温度T(第1金属元素MがPtの場合はT=T)よりも、第1の熱処理の熱処理温度Tを低くする(T<T)ことが必要である。
【0148】
ステップS3の第1の熱処理において、上記第4の条件と上記第5の条件とを両立させることが重要な理由について説明する。
【0149】
ステップS3の第1の熱処理において、合金膜8からシリコン領域31に、合金膜8を構成するNiと第1金属元素Mとが拡散して金属シリサイド層11aを形成するが、この第1の熱処理が上記第5の条件を満たすと、Niよりも第1金属元素M(好ましくはPt)の方がシリコン領域31に拡散しやすくなる。
【0150】
上記第5の条件を満たさず、第1の熱処理において、シリコン領域31へのNiと第1金属元素Mの拡散しやすさが同じであれば、合金膜8からシリコン領域31に拡散するNiと第1金属元素Mの原子数の比は、合金膜8を構成するNiと第1金属元素Mの原子比を維持したものとなり、金属シリサイド層11aにおけるNiと第1金属元素Mの比も、合金膜8を構成するNiと第1金属元素Mの原子比を維持したものとなる。
【0151】
それに対して、本実施の形態のように上記第4の条件および上記第5の条件を満たすように第1の熱処理を行えば、この第1の熱処理において、シリコン領域31へNiよりも第1金属元素Mの方が拡散しやすいため、合金膜8からシリコン領域31に拡散するNiと第1金属元素Mの原子数の比は、合金膜8を構成するNiと第1金属元素Mの原子比に比べて、第1金属元素Mの割合が増加したものとなる。このため、金属シリサイド層11aにおけるNiと第1金属元素Mの比も、合金膜8を構成するNiと第1金属元素Mの原子比に比べて、第1金属元素Mの割合が増加したものとなる。すなわち、合金膜8がNi1−x合金膜(ここで0<x<1)であり、かつ金属シリサイド層11aが、(Ni1−ySi相(ここで0<y<1)であるとすると、x<yとなる。
【0152】
しかしながら、ステップS3の第1の熱処理が上記第5の条件を満たしても、本実施の形態とは異なり、上記第4の条件を満たさず、合金膜8とシリコン領域31との上記反応率R1が100%であった場合には、シリコン領域31上の合金膜8を構成していたNiと第1金属元素Mは、拡散係数の差にかかわらず、全部がシリコン領域31に拡散して金属シリサイド層11aの形成に寄与する。このため、たとえNiよりも第1金属元素Mの方がシリコン領域31に拡散しやすかったとしても、シリコン領域31上の合金膜8を構成していたNiと第1金属元素Mの全量がシリコン領域31と反応して金属シリサイド層11aを形成するので、金属シリサイド層11aにおけるNiと第1金属元素Mの比は、合金膜8におけるNiと第1金属元素Mの比を維持したものになってしまう。すなわち、合金膜8がNi1−x合金膜(ここで0<x<1)であり、かつ金属シリサイド層11aが、(Ni1−ySi相(ここで0<y<1)であるとすると、x=yとなってしまうのである。
【0153】
また、ステップS3の第1の熱処理が上記第4の条件を満たす場合に、本実施の形態とは異なり、上記第5の条件を満たさずに、シリコン領域31中への第1金属元素Mの拡散係数よりもシリコン領域31中へのNiの拡散係数の方が大きくなるような熱処理温度でステップS3の第1の熱処理を行なうと、第1金属元素MよりもNiが優先的にシリコン領域31に拡散してしまう。これにより、金属シリサイド11aにおける第1金属元素Mの割合が、かえって低減してしまう。すなわち、合金膜8としてNi1−x合金膜を用いて(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aを形成すると、y<xとなってしまうのである。
【0154】
従って、上記第4の条件と上記第5の条件の両方を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行うことで、はじめて、金属シリサイド層11aにおける第1金属元素M(好ましくはPt)の比率を高めることが可能になる。すなわち、上記第4の条件と上記第5の条件を両立させることで、金属シリサイド層11aを構成する金属元素(Niと第1元素Mを足したもの)に占める第1金属元素Mの割合を、合金膜8に占める第1金属元素Mの割合よりも大きくすることができる。換言すれば、上記第4の条件と上記第5の条件を両立させることで、合金膜8としてNi1−x合金膜(Mは好ましくはPt)を用いて(Ni1−ySi相(Mは好ましくはPt)の金属シリサイド層11aを形成するにあたって、x<yとすることができるのである。なお、Niと第1金属元素Mとの合金膜8とシリコン領域31とを反応させて金属シリサイド層11aを形成するので、金属シリサイド層11aを構成する金属元素は、合金膜8を構成する金属元素と同じであり、Niおよび第1金属元素Mである。
【0155】
その後、ステップS5の第2の熱処理によって、(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aをNi1−ySi相の金属シリサイド層11bに変えるが、ステップS5の第2の熱処理時には合金膜8は除去されているので、(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aとNi1−ySi相の金属シリサイド層11bとで、Niと第1金属元素Mの比(すなわち1−y:y)は維持されて同じ値になる。すなわち、金属シリサイド層11aを構成する(Ni1−ySiのyと、金属シリサイド層11bを構成するNi1−ySiのyとが、同じ値になる。
【0156】
上述したように、本実施の形態では、金属シリサイド層11bが第1金属元素M(特に好ましくはPt)を含有している(すなわち上記第1の条件を満たしている)が、それによって得られる効果(例えばNiSi相の異常成長の抑制効果)は、金属シリサイド層11b中の第1金属元素M(特に好ましくはPt)の濃度が高くなるほど高まる。このため、金属シリサイド層11b中の第1金属元素M(特に好ましくはPt)の濃度を高めて半導体装置の性能をより向上させることが望まれる。
【0157】
しかしながら、半導体基板上にNi1−x合金膜を成膜する場合、Niと第1金属元素Mのスパッタ角が異なるため、Ni1−x合金膜中の第1金属元素Mの濃度を増加させようとすると、半導体基板上にNi1−x合金膜が不均一に成膜されてしまう可能性があり、この現象は、第1金属元素MがPtの場合に特に顕著である。このため、半導体基板にNi1−x合金膜を均一に成膜しようとすると、Ni1−x合金膜中の第1金属元素Mの濃度(すなわちNi1−xにおけるx)を増加させるには、蜂の巣状のコリメータなどを用いて上記第1金属元素Mのスパッタ角を調整してもコリメータに多く成膜されてしまい、限界がある。
【0158】
本実施の形態では、上記第4の条件および第5の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行うことで、合金膜8に占める第1金属元素Mの割合(すなわち合金膜8をNi1−x合金膜と表したときのx)よりも、金属シリサイド層11aを構成する金属元素に占める第1金属元素Mの割合(すなわち金属シリサイド層11aを(Ni1−ySiと表したときのy)を高める(すなわちy>xとする)ことができる。そして、合金膜8に占める第1金属元素Mの割合(すなわち合金膜8をNi1−x合金膜と表したときのx)よりも、金属シリサイド層11bを構成する金属元素に占める第1金属元素Mの割合(すなわち金属シリサイド層11bをNi1−ySiと表したときのy)を高める(すなわちy>xとする)ことができる。これにより、金属シリサイド層11a,11bにおける凝集を抑制でき、金属シリサイド層11bにおいて、高抵抗なNi1−ySi相の異常成長を抑制することができ、半導体装置の信頼性をより向上させることができる。
【0159】
図30は、合金膜8としてNi0.963Pt0.037合金膜を用いて金属シリサイド層11bを形成した場合の、金属シリサイド層11bの抵抗率(比抵抗)を示すグラフである。図30のグラフの縦軸は、金属シリサイド層11bの抵抗率(比抵抗)に対応し、図30のグラフの横軸は、第1の熱処理の合金膜消費率R2に対応する。図30のグラフには、第1の熱処理の熱処理温度Tが250℃の場合と260℃の場合と270℃の場合とが混在してプロットしてある。
【0160】
ここで、図30のグラフの横軸に示される、第1の熱処理の合金膜消費率R2とは、第1の熱処理によって消費(シリコン領域31と反応)し得る合金膜8の厚みtn6を、第1の熱処理前の合金膜8の厚みtn1で割った値に対応する(すなわちR2=tn6/tn1)。なお、第1の熱処理によって消費(シリコン領域31と反応)し得る合金膜8の厚みtn6とは、合金膜8の厚みtn1を十分に厚くした(厚みtn6よりも厚くした)ときに、第1の熱処理によってシリコン領域31と反応する部分の厚み(すなわち上記反応部分8bの厚みtn3)に対応する。従って、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以下の場合は、第1の熱処理によって消費(シリコン領域31と反応)し得る合金膜8の厚みtn6と、第1の熱処理における合金膜8の反応部分8bの厚みtn3とは、同じ(すなわちtn6=tn3)である。このため、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以下(R2≦100%)の場合は、第1の熱処理の合金膜消費率R2は上記反応率R1と同じ(R2=R1)である。一方、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%を越える場合は、合金膜8の厚みtn1が、第1の熱処理によって消費し得る合金膜8の厚みtn6よりも薄い(tn1<tn6)ために、第1の熱処理における合金膜8の反応部分8bの厚みtn3は、合金膜8の厚みtn1と同じ(tn3=tn1<tn6)になる。このため、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以上(R2≧100%)の場合は、上記反応率R1は常に100%(R1=100%)であり、両者は異なる値となる。
【0161】
例えば、厚みtn1が20nmの合金膜8を形成して第1の熱処理を行ったときに、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3が10nmであった場合には、tn6=tn3=10nm、tn1=20nmとなるため、その第1の熱処理の合金膜消費率R2と上記反応率R1とは、両方とも50%となる。また、例えば、厚みtn1が40nmの合金膜8を形成して第1の熱処理を行ったときに、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3が20nmとなった場合と同じ熱処理条件で、厚みtn1が10nmの合金膜8を形成して第1の熱処理を行った場合には、tn6=20nm、tn1=10nmとなるため、その第1の熱処理の合金膜消費率R2は200%となり、その第1の熱処理の上記反応率R1は100%となる。ここで、同じ熱処理条件とは、少なくとも熱処理温度と熱処理時間が同じである。
【0162】
図30のグラフにおいて、第1の熱処理の熱処理温度を変えたものを混在させてプロットしているが、第1の熱処理は常に上記第5の条件を満たしているように行なっている。しかしながら、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%未満の場合は、上記第4の条件が満たされているが、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以上の場合には、上記第4の条件は満たされていない。これは、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以上の場合には、シリコン領域31上の合金膜8の全部がシリコン領域31と反応し(すなわち上記反応率R1が100%となり)、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%未満の場合には、シリコン領域31上の合金膜8の下部領域のみがシリコン領域31と反応する(すなわち上記反応率R1が100%未満となる)ためである。
【0163】
図30のグラフからは、次のことが分かる。第1の熱処理の合金膜消費率R2が150%を越えると、金属シリサイド層11bの抵抗率(比抵抗)が著しく増大しており、これは、金属シリサイド層11bにおいて、凝集が生じて部分的に断線したような状態になったためと考えられる。一方、第1の熱処理の合金膜消費率R2が80%〜150%の範囲では、金属シリサイド層11bの抵抗率(比抵抗)は、NiSi相のレベルの抵抗率となっているが、第1の熱処理の合金膜消費率R2が80%以下では、金属シリサイド層11bの抵抗率(比抵抗)は、NiSi相のレベルの抵抗率に低下している。ここで、NiSi相はNiSi相よりも低抵抗率である。第1の熱処理の合金膜消費率R2を80%以下とすることで金属シリサイド層11bの抵抗率が低下しているのは、第1の熱処理の合金膜消費率R2を80%以下とすることで、金属シリサイド層11bにおいてNi1−yPtSiの生成を抑制できたためと考えられる。
【0164】
従って、本実施の形態のように、上記第4の条件および上記第5の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行うことで、より好ましくは、ステップS3の第1の熱処理の合金膜消費率R2を80%以下とすることで、形成された金属シリサイド層11bにおける第1金属元素M(好ましくはPt)の割合を高めることができ、金属シリサイド層11bを、より低抵抗化することができる。
【0165】
次に、半導体基板の主面にシリコン領域31に相当する半導体領域(不純物拡散層)を形成してから、その上に合金膜8に相当するNi0.963Pt0.037合金膜を形成し、その後、第1の熱処理および第2の熱処理に相当する熱処理を行うことで、金属シリサイド層11bに相当するNi1−yPtSi層を形成した場合について、各種サンプルを作製して、図31、図32および図33のグラフを得た。
【0166】
そのうち、図31は、「第1の熱処理の合金膜消費率R2」と「形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度」との相関を示すグラフであり、図31のグラフの横軸に「第1の熱処理の合金膜消費率R2」、図31のグラフの縦軸に「Pt濃度」をとってプロットしてある。なお、図31のグラフには、シリコン領域31に相当する半導体領域(不純物拡散層)をn型半導体領域とし、上記厚みtn3(ここではNi0.963Pt0.037合金膜のうち第1の熱処理でシリコン領域と反応して金属シリサイド層を形成した部分の厚み)を10nmにした場合(図31のグラフ中で黒丸印(●)で示してある)と、5nmにした場合(図31のグラフ中で白ダイヤ印(◇)で示してある)とがプロットしてある。更に、図31のグラフには、シリコン領域31に相当する半導体領域(不純物拡散層)をp型半導体領域とし、上記厚みtn3(ここではNi0.963Pt0.037合金膜のうち第1の熱処理でシリコン領域と反応して金属シリサイド層を形成した部分の厚み)を10nmにした場合(図31のグラフ中で黒四角印(■)で示してある)もプロットしてある。ここで、図31のグラフでは、第1の熱処理および第2の熱処理によって形成されたNi1−yPtSi層(金属シリサイド層11bに相当)を構成する金属元素に占めるPtの割合を「Pt濃度」としてプロットしており、この「Pt濃度」は、Ni1−yPtSiにおけるyを100倍した値(%表示のため100倍している)に対応する。この「Pt濃度」は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometry)などによって測定することができる。
【0167】
図31のグラフからも分かるように、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以上の場合は、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度(Ni1−yPtSiにおけるyを%表示のため100倍した値)が、合金膜8として形成したNi0.963Pt0.037合金膜中のPt濃度(すなわち3.7%、図31のグラフで点線で示してある)とほぼ同じである。それに対して、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%未満の場合は、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度(Ni1−yPtSiにおけるyを100倍した値)が、合金膜8として形成したNi0.963Pt0.037合金膜中のPt濃度(すなわち3.7%)よりも大きくなっている。そして、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%未満の場合には、第1の熱処理の合金膜消費率R2が小さくなるほど、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度が大きくなっていることが分かる。第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%未満の場合には、第1の熱処理が上記第4の条件および上記第5の条件の両方を満たしているので、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度が、合金膜8として形成したNi0.963Pt0.037合金膜中のPt濃度(すなわち3.7%)よりも大きくなったものと考えられる。
【0168】
従って、本実施の形態のように、上記第4の条件および上記第5の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行うことで、より好ましくは、ステップS3の第1の熱処理の合金膜消費率R2を80%以下とすることで、金属シリサイド層11bを構成する金属元素に占める第1金属元素M(好ましくはPt)の割合を、合金膜8に占める第1金属元素M(好ましくはPt)の割合よりも大きくすることができる。
【0169】
また、図32は、「第1の熱処理の合金膜消費率R2」と「形成されたNi1−yPtSi層の粒径」との相関を示すグラフであり、図32のグラフの横軸に「第1の熱処理の合金膜消費率R2」、図32のグラフの縦軸に「粒径」をとってプロットしてある。なお、図32のグラフには、シリコン領域31に相当する半導体領域(不純物拡散層)をn型半導体領域としかつ第2の熱処理として500℃のスパイクアニールを行なった場合(図32のグラフ中で黒丸印(●)で示してある)と、シリコン領域31に相当する半導体領域をp型半導体領域としかつ第2の熱処理として500℃のスパイクアニールを行なった場合(図32のグラフ中で黒四角印(■)で示してある)とがプロットしてある。更に、図32のグラフには、シリコン領域31に相当する半導体領域(不純物拡散層)をp型半導体領域とし、かつ第2の熱処理として600℃、60秒のアニールを行なった場合(図32のグラフ中で十字印(+)で示してある)もプロットしてある。ここで示す粒径は、上記粒径G1に相当するものとなる。
【0170】
図32のグラフからも分かるように、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以上の場合は、第1の熱処理におけるNi0.963Pt0.037合金膜を全て消費した後の過剰熱処理により、金属シリサイドの結晶粒径が大きく成長する。それに対して、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%未満の場合(すなわち上記第2の条件を満たす場合)には、そのような過剰熱処理がないため、金属シリサイドの結晶粒の成長が抑制され、金属シリサイド層の結晶粒径はほぼ一定の値となる。従って、本実施の形態のように、上記第4の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行うことで、第1の熱処理で金属シリサイド11aの結晶粒径が大きく成長するのを抑制または防止できるため、形成された金属シリサイド層11bにおける粒径(上記粒径G1に対応するもの)を小さくすることができる。
【0171】
上述したように、上記第2の条件や上記第3の条件を満たすためには、金属シリサイド層11bの粒径を小さく(G<W1、G<W1c)することが必要になるため、形成された金属シリサイド層11bにおける粒径を小さくすることができる製造技術を提供することが望まれる。上記第4の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行えば、金属シリサイド層11bにおける粒径(上記粒径G1に対応するもの)を小さくすることが可能となるため、上記第2の条件や上記第3の条件を満たすような金属シリサイド層11bを的確に形成することができるようになる。従って、上記第2の条件や上記第3の条件を満たすような金属シリサイド層11bを形成するには、上記第4の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行うことが有効であると言える。
【0172】
また、上記図31のグラフからも分かるように、第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%以上(R2≧100%)の場合(すなわち上記反応率R1=100%の場合)は、形成されたNi1−yPtSi層(金属シリサイド層11bに相当)におけるPt濃度(Ni1−yPtSiにおけるyを100倍した値)が、合金膜8として形成したNi0.963Pt0.037合金膜中のPt濃度(すなわち3.7%)とほぼ同じになる。第1の熱処理の合金膜消費率R2が100%未満(R2<100%)の場合は、第1の熱処理の合金膜消費率R2が小さくなるほど、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度が大きくなる。
【0173】
ここで、余剰合金膜比R3を、第1の熱処理を行なった際の合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2を、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3で割った値で定義する(すなわちR3=tn2/tn3)。この場合、R1=tn3/tn1とR3=tn2/tn3とtn1=tn2+tn3とから、R3=(1/R1)−1と表すこともできる。
【0174】
余剰合金膜比R3がゼロの場合(R3=0の場合)は、上記R1=100%の場合および上記R2≧100%の場合(すなわちシリコン領域31上の合金膜8の全部が第1の熱処理でシリコン領域31と反応して金属シリサイド層11aが形成された場合)に対応する。このため、図31の横軸のR2が100%以上の領域が余剰合金膜比R3がゼロの領域に対応し、図31の横軸のR2が100%以下の領域では、R2が小さくなるほど、余剰合金膜比R3(すなわちtn2/tn3)が小さくなる。このため、余剰合金膜比R3がゼロ(R3=0)の場合(すなわち上記反応率R1=100%、上記合金膜消費率R2≧100%の場合)は、形成されたNi1−yPtSi層(金属シリサイド層11bに相当)におけるPt濃度(Ni1−yPtSiにおけるyを100倍した値)が、合金膜8として形成したNi0.963Pt0.037合金膜中のPt濃度(すなわち3.7%)とほぼ同じになる。そして、余剰合金膜比R3が大きくなるほど、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度が大きくなると言うことができる。
【0175】
従って、上記反応率R1が小さくなるほど、すなわち上記合金膜消費率R2が100%以下の領域で小さくなるほど、換言すれば上記余剰合金膜比R3が大きくなるほど、形成されたNi1−yPtSi層(金属シリサイド層11bに相当)におけるPt濃度が高くなる。その理由は、次のように考えられる。
【0176】
合金膜8として、Ni0.963Pt0.037合金膜を用いた場合を仮定する。上記反応率R1=100%(すなわちR2≧100%、R3=0)の場合には、合金膜8の全部がシリコン領域31と反応するため、合金膜8におけるPt濃度と金属シリサイド層11aにおけるPt濃度とは同じになり、3.7%となる。ここで、金属シリサイド層11aにおけるPt濃度とは、金属シリサイド層11aを構成する金属元素に占めるPtの割合であり、金属シリサイド層11aを(Ni1−yPtSiと表記したときのyの値(百分率表示の場合はyを100倍した値)に対応する。
【0177】
一方、上記反応率R1<100%(すなわちR2<100%、R3>0)の場合は、第1の熱処理後に金属シリサイド層11aの上部に合金膜8の未反応部分8aが残存するが、第1の熱処理が上記第1の条件を満たすことにより、第1の熱処理中に合金膜8からシリコン領域31にNiよりもPtが優先的に拡散する。これにより、合金膜8の未反応部分8aのPt濃度は、成膜時(3.7%)よりも減少し、その分、金属シリサイド層11aにおけるPt濃度が増加する。これは、合金膜8の未反応部分8aのPt減少量が、金属シリサイド層11aにおけるPt増加量となるためである。この際、合金膜8の反応部分8bの厚みが同じであれば、合金膜8の未反応部分8aの厚みが厚いほど、未反応部分8a全体のPt減少量が多くなるため、その分、金属シリサイド層11aにおけるPt濃度の増加量が多くなる。このため、合金膜8の反応部分8bの厚みが同じであれば、合金膜8の未反応部分8aの厚みが厚いほど(すなわち第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3が大きいほど)、金属シリサイド層11aにおけるPt濃度が高くなり、第2の熱処理後の金属シリサイド層11bにおけるPt濃度は金属シリサイド層11aにおけるPt濃度と同じであるため、金属シリサイド層11bにおけるPt濃度も高くなる。
【0178】
従って、第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3を大きくするほど(すなわち上記反応率R1を小さくするほど)、金属シリサイド層11bを構成する金属元素(Niと第1金属元素Mを足したもの)に占める第1金属元素Mの割合(金属シリサイド層11bをNi1−ySiと表したときのy)を高めることができる。このため、金属シリサイド層11bを構成する金属元素に占める第1金属元素Mの割合を高めるためには、ステップS3の第1の熱処理を上記第4の条件および第5の条件を満たすように行なうだけでなく、第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3(または上記反応率R1)を制御することが好ましい。
【0179】
すなわち、本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理を上記第4の条件および第5の条件を満たすように行なうため、第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3はゼロより大きく(R3>0)なり、上記反応率R1および上記合金膜消費率R2は100%未満(R1<100%,R2<100%)となる。これにより、合金膜8に占める第1金属元素Mの割合(合金膜8をNi1−x合金膜と表したときのx)よりも、金属シリサイド層11bを構成する金属(Niと第1金属元素Mを足したもの)に占める第1金属元素Mの割合(金属シリサイド層11bをNi1−ySiと表したときのy)を高める(y>xとする)ことができる。
【0180】
更に、本実施の形態では、第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3が0.25以上(R3≧0.25)となるように(すなわち上記反応率R1および上記合金膜消費率R2が80%以下となるように)、ステップS3の第1の熱処理を行うことが好ましい。そして、第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3が1以上(R3≧1)となるように(すなわち上記反応率R1および上記合金膜消費率R2が50%以下となるように)、ステップS3の第1の熱処理を行うことが、更に好ましい。これにより、金属シリサイド層11bを構成する金属元素に占める第1金属元素Mの割合(金属シリサイド層11bをNi1−ySiと表したときのy)を、的確に高めることができる。
【0181】
なお、第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3が0.25以上(R3≧0.25)というのは、R3=tn2/tn3の関係から、第1の熱処理を行なった際の合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2が、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3の0.25倍以上(すなわちtn2≧tn3×0.25)であることを意味する。この場合、合金膜8の厚みtn1は、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3の1.25倍以上(すなわちtn1=tn2+tn3≧tn3×1.25)となる。また、第1の熱処理における上記余剰合金膜比R3が1以上(R3≧1)というのは、R3=tn2/tn3の関係から、第1の熱処理を行なった際の合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2が、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3以上(すなわちtn2≧tn3)であることを意味する。この場合、合金膜8の厚みtn1は、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3の2倍以上(すなわちtn1=tn2+tn3≧tn3×2)となる。
【0182】
従って、本実施の形態では、上記第4の条件および第5の条件を満たすだけでなく、更に、合金膜8の厚みtn1が、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3の好ましくは1.25倍以上(すなわちtn1≧tn3×1.25)、より好ましくは2倍以上(すなわちtn1≧tn3×2)となることが好適であり、これにより、金属シリサイド層11bを構成する金属元素に占める第1金属元素Mの割合を的確に高めることができる。
【0183】
例えば、図31のグラフなどからも分かるように、合金膜8としてNi0.963Pt0.037合金膜を用いた場合には、第1の熱処理における上記合金膜消費率R2が80%未満となる(すなわち上記反応率R1が80%未満となり、上記余剰合金膜比R3が0.25以上となる)ようにステップS3の第1の熱処理を行うことで、金属シリサイド層11bにおけるPt濃度を4%以上とすることができる。換言すれば、金属シリサイド層11bをNi1−yPtSiと表したときにy≧0.04とすることができる。
【0184】
また、形成した金属シリサイド層11bの厚みtn5が薄すぎると、金属シリサイド層11bの抵抗が大きくなるため、第1の熱処理を行なった際の合金膜8の反応部分8bの厚みtn3は、5nm以上(tn3≧5nm)であることが好ましく、7nm以上(tn3≧7nm)であれば更に好ましい。これにより、形成した金属シリサイド層11bの厚みtn5の厚みを確保することができるため、ソース・ドレイン上やゲート電極上に低抵抗率の金属シリサイド層11bを形成した効果を十分に享受することができる。
【0185】
また、第1の熱処理を行なった際の合金膜8の反応部分8bの厚みtn3が同じであれば、合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2を厚くするほど、金属シリサイド層11bを構成する金属に占める第1金属元素Mの割合(金属シリサイド層11bを(Ni1−y)Siと表したときのy)を高めることができる。しかしながら、合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2を厚くしすぎると、合金膜8の厚みtn1が厚くなりすぎて、ステップS1で合金膜8を成膜するのに要する時間が長くなり、また、半導体装置の製造コストの増加を招いてしまう。特にPt(白金)は高価であるため、合金膜8がNi−Pt合金膜である場合には、合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2を厚くしすぎると、製造コストの上昇を招きやすい。このため、第1の熱処理を行なった際の合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2は、200nm以下(tn2≦200nm)であることが好ましく、100nm以下(tn2≦100nm)であれば、更に好ましい。これにより、合金膜8を成膜するのに要する時間を抑制でき、また、半導体装置の製造コストを抑制できる。
【0186】
また、上述したように、金属シリサイド層11a,11b中に上記第1金属元素M(特に好ましくはPt)が添加されていると、形成された金属シリサイド層11a,11bの凝集が少ないことや、金属シリサイド層11a,11bにおいて高抵抗な(Ni1−y)Si相の異常成長を抑制できることなどの利点を得られる。このため、金属シリサイド層11a,11bを構成する金属元素に占める第1金属元素Mの割合(金属シリサイド層11a,11bをそれぞれ(Ni1−ySi,Ni1−ySiと表したときのyの値、百分率表示ではyの値を100倍したもの)が、好ましくは4%以上(y≧0.04)、より好ましくは5%以上(y≧0.05)となるように、ステップS3の第1の熱処理を行うことが効果的である。これにより、上記利点を、より的確に得ることができる。
【0187】
また、本実施の形態では、このように高濃度に第1金属元素Mを含有する金属シリサイド層11bを形成するのに、第1金属元素Mの含有率が4%(4原子%)未満の合金膜8(すなわち合金膜8をNi1−y合金膜と表したときにx≦0.04)を用いることができる。従って、合金膜8として第1金属元素Mの含有率が4%(4原子%)未満の合金膜を用いる場合に、本実施の形態を適用すれば、その効果は極めて大きい。なお、合金膜8における第1金属元素Mの含有率は、合金膜8に占める第1金属元素Mの割合と同義である。
【0188】
第1の熱処理の熱処理時間が同じであれば、熱処理温度を高くするほど、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3が厚くなり、熱処理温度を低くするほど、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3が薄くなる。また、第1の熱処理の熱処理温度が同じであれば、熱処理温度時間を長くするほど、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3が厚くなり、熱処理温度時間を短くするほど、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3が薄くなる。このため、第1の熱処理の熱処理温度と熱処理時間を調整することで、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3を制御することができる。また、合金膜8の未反応部分8aの厚みtn2は、合金膜8の成膜時の厚みtn1から合金膜8の反応部分8bの厚みtn3を引いた値(すなわちtn2=tn1−tn3)である。従って、合金膜8の成膜時の厚みtn1と、第1の熱処理の熱処理温度および熱処理時間を調整することで、第1の熱処理における上記反応率R1、上記合金膜消費率R2および上記余剰合金膜比R3を制御することができる。
【0189】
但し、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度Tが低すぎると、第1の熱処理に要する時間が長くなって、半導体装置の製造時間が長くなり、半導体装置のスループットが低下してしまう。このため、本実施の形態では、上記第4の条件および上記第5の条件を満たした上で、更に、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度Tを200℃以上(T≧200℃)とすることがより好ましい。これにより、ステップS3の第1の熱処理に要する時間を抑制でき、半導体装置の製造時間を抑制して、半導体装置のスループットの低下を防止することができる。
【0190】
また、上述したように、シリコン領域31中へのNiの拡散係数と、シリコン領域31中への第1金属元素Mの拡散係数とが一致する温度T(第1金属元素MがPtの場合はT=T)よりも、第1の熱処理の熱処理温度Tを低く(T<T)し、それによって、第1の熱処理中に合金膜8からシリコン領域31にNiよりも第1金属元素Mが優先的に拡散するようになる。しかしながら、第1の熱処理中に合金膜8からシリコン領域31に、Niよりも第1金属元素Mをできるだけ優先的に拡散させるためには、上記温度T(第1金属元素MがPtの場合はT=T)とステップS3の第1の熱処理の処理温度Tとの差(T−T)を、ある程度確保することが、より好ましい。このため、ステップS3の第1の熱処理の処理温度Tを上記温度Tよりも5℃以上低くする(T≦T−5℃)ことが好ましく、ステップS3の第1の熱処理の処理温度Tを上記温度Tよりも9℃以上低くすれば(T≦T−9℃)、更に好ましい。合金膜8がNi−Pt合金膜の場合には、ステップS3の第1の熱処理の処理温度Tを上記温度Tよりも5℃以上低くする(T≦T−5℃)ことが好ましく、ステップS3の第1の熱処理の処理温度Tを上記温度Tよりも9℃以上低くすれば(T≦T−9℃)、更に好ましい。このようにすることで、第1の熱処理において、合金膜8からシリコン領域31へ、Niよりも第1金属元素Mを、より優先的に拡散させることができる。
【0191】
図33は、「形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度」と「形成されたNi1−yPtSi層の抵抗率」との相関を示すグラフであり、図33のグラフの横軸に「Pt濃度」、図33のグラフの縦軸に「抵抗率」をとってプロットしてある。図33のグラフの横軸の「Pt濃度」は、図31のグラフの縦軸の「Pt濃度」に対応するものである。
【0192】
図33からも分かるように、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度を高くすることで抵抗率を低減することができるが、Pt濃度を4%以上とすることで、抵抗率(比抵抗)を、NiSi相のレベルの低抵抗率とすることができる。これは、形成されたNi1−yPtSi層におけるPt濃度を4%以上とすることで、Ni1−yPtSi層において高抵抗率のNi1−yPtSiの生成を抑制できたためと考えられる。
【0193】
このため、上述したように、金属シリサイド層11a,11bを構成する金属元素に占める第1金属元素Mの割合(金属シリサイド層11a,11bをそれぞれ(Ni1−ySi,Ni1−ySiと表したときのyの値、百分率表示ではyの値を100倍したもの)を、4%以上(y≧0.04、層中の平均濃度で4%以上)とすることが好ましい。これにより、金属シリサイド層11bにおけるNi1−ySiの生成を抑制することができるため、金属シリサイド層11bの抵抗率を低減させることができる。また、Ni1−ySiの生成を抑制できることで、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を抑制できるため、リーク電流の増大(リーク電流欠陥の発生)を抑制または防止することができる。
【0194】
また、ステップS3の第1の熱処理が、上記第4の条件を満たすように行なうことで、図34〜図37に関連して説明する、次のような効果も得られる。図34および図35は、ステップS1で合金膜8を形成した段階を示す要部断面図であり、図36および図37は、ステップS5で金属シリサイド層11bを形成した段階を示す要部断面図である。図34と図35とは、同じ半導体基板1の同じ工程段階の異なる断面領域が示されており、図34は、上記図21の(a)に対応する断面領域が示され、図35は、上記図21の(c)に対応する断面領域が示されている。図36は、図34と同じ断面領域の異なる工程段階が示されており、図37は、図35と同じ断面領域の異なる工程段階が示されている。このため、図36は、上記図22の(a)に対応し、図37は、上記図22の(c)に対応する。
【0195】
ニッケル合金膜である合金膜8の形成膜厚(上記厚みtn1に対応するもの)には、下地のパターン依存性があり、隣り合うパターンの間隔が広い広ピッチパターンに比べて、隣り合うパターンの間隔が狭い狭ピッチパターンでは、合金膜8のカバレッジが悪く、合金膜8が薄く成膜されてしまう。
【0196】
すなわち、図34に示されるように、比較的広い間隔でゲート電極GEが隣り合っている領域では、合金膜8の厚み(形成膜厚)tn1はほぼ均一になり、隣り合うゲート電極GEの間の領域(ソース・ドレイン領域上、ここではn型半導体領域5b上)での合金膜8の形成膜厚(堆積膜厚)tn1aと、ゲート電極GE上の合金膜8の形成膜厚(堆積膜厚)tn1bとは、ほぼ同じとなる(すなわちtn1a=tn1b)。それに対して、図35に示されるように、狭い間隔でゲート電極GEが隣り合っている領域では、隣り合うゲート電極GEの間の領域(ソース・ドレイン領域上、ここではn型半導体領域5b上)での合金膜8の形成膜厚(堆積膜厚)tn1cが、ゲート電極GE上の合金膜8の形成膜厚(堆積膜厚)tn1dよりも薄くなってしまう(すなわちtn1c<tn1d)。図35(および図37)では、図34(および図36)よりも、隣り合うゲート電極GEの間隔が狭くなっているが、ゲート電極GE上での合金膜8の形成膜厚tn1b,tn1dは、ゲート電極GEの間隔に関わらずほぼ同じである(すなわちtn1b=tn1d)。
【0197】
このような状態で熱処理を行い、合金膜8とn型半導体領域5bとの反応率R1が100%となるようなシリサイド化反応を生じさせると、形成される金属シリサイド層も、合金膜8の形成膜厚を反映したものとなり、合金膜8の形成膜厚が厚かった領域では、金属シリサイド層も厚く形成され、合金膜8の形成膜厚が薄かった領域では、金属シリサイド層も薄く形成される。例えば、図35のように狭い間隔で隣り合うゲート電極GEの間の領域(ソース・ドレイン領域上、ここでは図35のn型半導体領域5b上)では、他の領域(例えばゲート電極GE上や図34のn型半導体領域5b上)に比べて、合金膜8の形成膜厚が薄かったことに起因して、金属シリサイド層が薄く形成されてしまう。金属シリサイド層の厚みがばらつくと、MISFETの特性がばらついてしまう可能性があるため、金属シリサイド層の厚みは、できるだけ同じにすることが望ましい。また、金属シリサイド層の厚みが薄いと、Ni1−ySi相が異常成長しやすいため、金属シリサイド層の抵抗のばらつきやリーク電流の増大を招く可能性があり、この観点からも、金属シリサイド層の厚みのばらつきを低減することが望まれる。
【0198】
それに対して、本実施の形態では、ステップS3の第1の熱処理が、上記第4の条件を満たすように行なうため、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3は、合金膜8の形成膜厚(堆積膜厚)の違いを反映せず、合金膜8の形成膜厚が厚い領域と薄い領域とで、合金膜8の反応部分8bの厚みtn3は同じになる。すなわち、狭い間隔で隣り合うゲート電極GEの間の領域(例えば図35のn型半導体領域5b上)では、他の領域(例えばゲート電極GE上や図34のn型半導体領域5b上)に比べて、合金膜8の形成膜厚が薄いが、合金膜8の全厚みを反応させるわけではないため、狭い間隔で隣り合うゲート電極GEの間の領域と他の領域とで、ステップS3の第1の熱処理における合金膜8の反応部分8bの厚みtn3は同じになる。
【0199】
但し、このようにするためには、合金膜8が薄く形成される領域でも、合金膜8の形成膜厚(堆積膜厚)がステップS3の第1の熱処理での合金膜8の反応部分8bの厚みtn3よりも厚く(すなわち、tn1b>tn3)なるように、ステップS1で合金膜8を厚めに成膜する必要がある。換言すれば、半導体基板1の主面のいずれの領域においても、上記シリコン領域31上での合金膜8の厚みtn1が、ステップS3の第1の熱処理における合金膜8の反応部分8bの厚みtn3よりも厚くなる(tn1>tn3)ように、ステップS1で合金膜8を成膜するのである。具体的には、合金膜8が薄く形成されやすい狭ピッチパターン(図35のように狭い間隔で隣り合うゲート電極GEの間の領域)においても、合金膜8の厚みtn1(例えば上記tn1c)が、ステップS3の第1の熱処理での合金膜8の反応部分8bの厚みtn3よりも厚く(tn1>tn3、例えばtn1c>tn3)なるように、ステップS1で合金膜8を成膜する。これにより、半導体基板1の主面のいずれの領域においても、ステッップS3の第1の熱処理での合金膜8とシリコン領域31との反応率R1が100%未満(R1<100%)となる。
【0200】
このように、本実施の形態では、たとえ合金膜8の形成膜厚が場所によって異なっていても、ステップS3の第1の熱処理を、上記第4の条件を満たすように行なうため、合金膜8の形成膜厚が厚い領域と薄い領域とで、形成される金属シリサイド層11aの厚みtn4を同じにすることができ、それによって、金属シリサイド層11bの厚みtn5を同じにすることができる。このため、金属シリサイド層11bの厚みのばらつきを低減することができ、MISFETの特性のばらつきを低減することができる。また、金属シリサイド層11bの厚みのばらつきを低減して、できるだけ同じにすることができるため、Ni1−ySi相の異常成長を抑制でき、金属シリサイド層11bの抵抗のばらつきやリーク電流の増大を抑制することができる。従って、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0201】
例えば、図35のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b)上の合金膜8の形成膜厚tn1cは、図34のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b)上の合金膜8の形成膜厚tn1aや、図34および図35のゲート電極GE上の合金膜8の形成膜厚tn1b,tn1dよりも薄くなっている(すなわちt1c<tn1a,tn1b,tn1d)。このような場合でも、ステップS3の第1の熱処理を、上記第4の条件を満たすように行なうことにより、図36および図37に示されるように、形成された金属シリサイド層11bの厚みtn1をほぼ同じとすることができる。すなわち、図36のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b)上に形成された金属シリサイド層11bの厚みtn5aと、図37のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b)上に形成された金属シリサイド層11bの厚みtn5cと、図36のゲート電極GE上に形成された金属シリサイド層11bの厚みtn5bと、図37のゲート電極GE上に形成された金属シリサイド層11bの厚みtn5dとをほぼ同じにできる。このため、ステップS3の第1の熱処理を、上記第4の条件を満たすように行なうことで、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成されている金属シリサイド層11bの厚みtn5(厚みtn5a,tn5cがこれに対応)を、ゲート電極GE上に形成されている金属シリサイド層11bの厚みtn5(厚みtn5b,tn5dがこれに対応)の0.8倍〜1.2倍の範囲内とすることができる。これは、半導体基板1の主面に形成されたいずれのMISFETにおいても、維持されている。
【0202】
また、本実施の形態では、形成された金属シリサイド層11bの厚み方向(半導体基板1の主面に略垂直な方向)における第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度分布は、次のようになっている。すなわち、金属シリサイド層11bにおける第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度は、金属シリサイド層11bの厚みの中央よりも、金属シリサイド層11bの底面(金属シリサイド層11bとシリコン領域31との界面)が高濃度となっている。また、金属シリサイド層11bにおける第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度は、金属シリサイド層11bの厚みの中央よりも、金属シリサイド層11bの上面(図11の状態における金属シリサイド層11bと絶縁膜21との界面)が高濃度となっている。従って、金属シリサイド層11bにおける第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度は、金属シリサイド層11bの厚みの中央よりも、金属シリサイド層11bの底面および上面が高濃度となっている。
【0203】
つまり、上記図28を参照すると、金属シリサイド層11bの第1金属元素Mの濃度分布(厚み方向の濃度分布)は、金属シリサイド層11bの底面における第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度(例えば図28の位置P2における第1金属元素Mの濃度)が、金属シリサイド層11bの厚みの中央における第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度(例えば図28の位置P1における第1金属元素Mの濃度)よりも高くなっている。また、金属シリサイド層11bの第1金属元素Mの濃度分布(厚み方向の濃度分布)は、金属シリサイド層11bの上面における第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度(例えば図28の位置P3における第1金属元素Mの濃度)が、金属シリサイド層11bの厚みの中央における第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度(例えば図28の位置P1における第1金属元素Mの濃度)よりも高くなっている。このような濃度分布は、EDX(Energy Dispersive X-ray spectroscopy)分析によって確認された。
【0204】
金属シリサイド層11bにおける第1金属元素Mのこのような濃度分布は、上記第4の条件および第5の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行って、第1金属元素Mの濃度を高濃度化し、結晶粒の過剰な成長を抑制することで、得ることができる。その理由は、以下のように考えられる。
【0205】
金属シリサイド層11bに添加されている第1金属元素M(好ましくはPt)は、結晶粒内よりも結晶粒界(結晶粒表面)に偏析しやすく、結晶粒内よりも粒界(結晶粒表面)で高濃度となりやすいが、結晶粒が過剰に成長すると、粒界での第1金属元素Mの偏析は解消されてしまう。金属シリサイド層11bの厚みは、上記粒径(結晶粒径)G1よりも小さく、金属シリサイド層11bにおいて、厚み方向にはほぼ1個の結晶粒が占有した状態となっている。このため、上記第4の条件および第5の条件を満たすようにステップS3の第1の熱処理を行って、第1金属元素Mの濃度を高濃度化し、結晶粒の過剰な成長を抑制することで、結晶粒の中央付近にほぼ相当する位置P1における第1金属元素Mの濃度よりも、結晶粒の表面にほぼ相当する位置P2,P3における第1金属元素Mの濃度を高くすることができる。
【0206】
金属シリサイド層11bにおける第1金属元素Mの上述のような濃度分布により、金属シリサイド層11bから半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長するのを抑制することができる。これは、金属シリサイド層11bの底面(金属シリサイド層11bと半導体基板1との界面)での第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度を高くすることにより、第1金属元素M(好ましくはPt)が高濃度に分布または偏析した底面(金属シリサイド層11bの底面)が、Ni1−ySiの異常成長のバリアとなるためである。金属シリサイド層11bから半導体基板1側にNi1−ySiが異常成長するのを抑制するには、金属シリサイド層11bの底面における第1金属元素M(好ましくはPt)の濃度(例えば図28の位置P2における第1金属元素Mの濃度)を高くすることが特に有効である。このため、上述のような濃度分布(位置P2,P3での第1金属元素Mの濃度が位置P1での第1金属元素Mの濃度よりも高いような濃度分布、特に重要なのは位置P2での第1金属元素Mの濃度が位置P1での第1金属元素Mの濃度よりも高いような濃度分布)により、金属シリサイド層11bから半導体基板1側へのNi1−ySiの異常成長を更に抑制することができ、半導体装置の性能を更に向上させることができる。
【0207】
また、本実施の形態では、ステップS2で、合金膜8上にバリア膜9を形成しているが、ステップS3の第1の熱処理の際に、合金膜8の未反応部分8aが金属シリサイド層11a上に残存し、この未反応部分8aが保護膜(酸化防止膜)として機能することができる。すなわち、第1の熱処理時に合金膜8の未反応部分8aが残存するため、第1の熱処理の際に合金膜8の表面が露出していたとしても、合金膜8とシリコン領域31との反応に悪影響は生じない。このため、ステップS2のバリア膜9の形成工程を省略することもできる。この場合、ステップS1で合金膜8を形成した後、バリア膜9を形成することなく、ステップS3の第1の熱処理が行われ、その後、ステップS4で未反応の合金膜8が除去されてから、ステップS5で第2の熱処理が行われる。
【0208】
また、ステップS3の第1の熱処理が上記第5の条件を満たすためには、合金膜8を例えばNi−Pt合金膜とした場合で279℃未満とする必要がある。このため、ステップS3の第1の熱処理には、ヒータ加熱装置が用いることがより好ましく、これにより、このような温度における温度制御が可能となり、第1の熱処理によって金属シリサイド層11aをより的確に形成することができる。
【0209】
また、ステップS3の第1の熱処理においては、昇温速度を10℃以上/秒に設定することが好ましく、30〜250℃/秒に設定すれば更に好ましい。ステップS3の第1の熱処理の昇温速度を、好ましくは10℃以上/秒、より好ましくは30〜250℃/秒として急速に温度を上げることにより、ウエハ面内において均一にシリサイド反応が生じ、また、シリサイド反応の昇温過程における過剰な熱量の印加を抑制することができる。これにより、Ni1−ySi相、Ni1−ySi相、(Ni1−ySi相、(Ni1−ySi相等を含まない(Ni1−ySi相のみの金属シリサイド層11aを、より的確に形成することができる。すなわち、組成のばらつきを抑えた(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aを形成することができる。また、過剰な粒成長を抑制または防止することができる。
【0210】
更に、ステップS3の第1の熱処理の雰囲気の熱伝導率を向上させるために、熱伝導率が窒素よりも大きい不活性ガス、例えばヘリウム(He)ガスまたはネオン(Ne)ガス、もしくは窒素ガスに窒素ガスよりも熱伝導率が大きい不活性ガスを添加した雰囲気ガスで満たされた常圧下で第1の熱処理を施すことが好ましい。例えば100℃における窒素ガス、ネオンガスおよびヘリウムガスの熱伝導率は、それぞれ3.09×10−2Wm−1−1、5.66×10−2Wm−1−1および17.77×10−2Wm−1−1である。ステップS3の第1の熱処理の雰囲気の熱伝導率を向上させることで、上記昇温速度の実現が容易になる。
【0211】
図38は、ステップS3の第1の熱処理に用いられる熱処理装置(ここではヒータ加熱装置41)の一例を示す説明図であり、図38の(a)に熱処理装置の全体構成平面図および図38の(b)にチャンバ内の要部断面図が示されている。
【0212】
ステップS3の第1の熱処理を行う際、半導体ウエハSW(以下、単にウエハSWと言う)はヒータ加熱装置(熱処理装置)41の処理用のチャンバ42内のサセプタ43上に設置される。ウエハSWは、上記半導体基板1に対応するものである。チャンバ42内は不活性ガス(例えばネオンガスを添加した窒素ガス雰囲気)により絶えず満たされている。ウエハSWの上下(表面と裏面)に抵抗ヒータ44が設置されており、ウエハSWを所定の距離を空けて挟む抵抗ヒータ44からの熱伝導によってウエハSWは加熱される。ウエハSWと抵抗ヒータ44との間の距離は、例えば1mm以下である。抵抗ヒータ44の温度は熱電対を用いて測定されており、抵抗ヒータ44が所定の温度になるように制御されている。また、抵抗ヒータ44にガス導入用の穴が形成されており、第1の熱処理の雰囲気ガスはこの穴を通過してウエハSWの上下(表面と裏面)に供給される。第1の熱処理の雰囲気ガスの流れおよびチャンバ42内の圧力はそれぞれ調整されて、ウエハSWの表面および裏面にかかる圧力を等しくすることでウエハSWを浮揚させ、さらにウエハSWへ伝わる熱量を一定とすることでウエハSW面内の温度バラツキを抑制している。
【0213】
図39は、ヒータ加熱装置41に備わるサセプタ43の説明図であり、図39の(a)および(b)に、ヒータ加熱装置41に備わるサセプタ43の要部平面図および要部断面図がそれぞれ示されている。図39(a)のB−B´線の断面が図39(b)にほぼ対応する。図39(a)および(b)中、符号43aはキャリアプレート、符号43bはガードリング、符号43cはサポートピンを示している。サセプタ43は、サセプタ43に設けられた4本のサポートピン43cを用いてウエハSWと4点のみで接触しており、サセプタ43とウエハSWとの接触点が少ないことから、サセプタ43によるウエハ面内の温度低下を抑制することができる。
【0214】
ヒータ加熱装置41を用いたステップS3の第1の熱処理の手順を以下に説明する。まず、フープ45をヒータ加熱装置41にドッキングした後、ウエハ受け渡し用チャンバ46を経由してウエハSWをフープ45から処理用のチャンバ42内のロードロック47上へ搬送する。処理用のチャンバ42への外気(主に酸素)の混入を避けるために、ロードロック47内において不活性ガス(例えば窒素ガス)を大気圧状態で流すことにより外気の排斥を行っている。続いて、ウエハSWをロードロック47から搬送して、サセプタ43上へ載せる。続いて、ウエハSWを抵抗ヒータ44により挟み、加熱する。その後、冷却されたウエハSWは、ロードロック47へ戻され、それからウエハ受け渡し用チャンバ46を経由してフープ45へ戻される。
【0215】
ヒータ加熱装置41では、ウエハSWと抵抗ヒータ44との間の気体を媒体にして熱伝導により加熱を行っており、ウエハSWの温度を10℃以上/秒(例えば30〜250℃/秒)の昇温速度で抵抗ヒータ44と同じ温度まで上げることが可能であり、ウエハSWへの過剰な熱量の印加を抑制することができる。
【0216】
また、上述のステップS5の第2の熱処理では、金属シリサイド層11a,11bへの過剰な熱量の印加を防ぐために、昇温速度を10℃/秒以上の設定することが好ましく、10〜250℃/秒に設定すれば更に好ましく、かつステップS3の第1の熱処理により形成された(Ni1−ySi相の金属シリサイド層11aをNi1−ySi相の金属シリサイド層11bとするために必要な熱量が第2の熱処理で印加される。これにより、ウエハへの過剰な熱量の印加を抑制することができるため、均一なシリサイド反応と安定化反応が起こり、表面に欠陥が少なく、かつ組成のばらつきを抑えたNi1−ySi相の金属シリサイド層11bを形成することができる。また、金属シリサイド層11bの粒径を小さくしやすいため、上記第2の条件や上記第3の条件を満たすような粒径の金属シリサイド層11bを形成しやすくなる。なお、ステップS5の第2の熱処理では、10℃/秒以上の昇温速度を実現できれば、ランプ加熱装置またはヒータ加熱装置のいずれも用いることができる。ステップS5の第2の熱処理の熱処理温度は、ステップS3の第1の熱処理の熱処理温度よりも高く、ランプ加熱装置において温度制御が困難である280℃以下の温度範囲は使用しないので、ステップS5の第2の熱処理には、ランプ、レーザー、高周波などの加熱装置も用いることができる。
【0217】
また、ステップS5の第2の熱処理の熱処理雰囲気の熱伝導率を向上させるために、熱伝導率が窒素よりも大きい不活性ガス、例えばヘリウム(He)ガスまたはネオン(Ne)ガス、もしくは窒素ガスに窒素ガスよりも熱伝導率が大きい不活性ガス(HeまたはNe)を添加した雰囲気ガスで満たされた常圧下で第2の熱処理を施すことが好ましい。ステップS5の第2の熱処理の雰囲気の熱伝導率を向上させることで、上記昇温速度の実現が容易になる。
【0218】
また、ステップS5の第2の熱処理では、RTA処理を用いることができ、ソークアニール(Soak Anneal)処理またはスパイクアニール(Spike Anneal)処理のいずれかを用いることができる。ここで、ソークアニール処理は、ウエハを熱処理温度まで昇温させた後、ウエハを熱処理温度で一定時間保持した後に降温させる熱処理方法である。スパイクアニール処理は、ウエハを短時間で熱処理温度まで昇温させた後、ウエハを熱処理温度で保持せず(保持時間は0秒)に降温させる熱処理であり、ソークアニール処理よりもウエハにかかる熱量を削減することが可能である。ステップS5の第2の熱処理としてスパイクアニールを行なえば、第2の熱処理による金属シリサイド層11a,11bの結晶粒の過剰な成長を抑制でき、金属シリサイド層41bの抵抗のばらつきを、より低減することができる。また、上記第2の条件や上記第3の条件を満たすような粒径の金属シリサイド層11bを形成しやすくなる。一方、ステップS3の第1の熱処理は、熱処理時間によって合金膜8の反応部分8bの厚みtn3を制御できるので、ソークアニール処理が、より好ましい。
【0219】
また、本実施の形態において、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bを形成する前に、n型半導体領域5b形成予定領域に炭素(C)を、p型半導体領域6b形成予定領域にゲルマニウム(Ge)をそれぞれイオン注入しておき、その後、n型半導体領域5b形成用のn型不純物(例えばリン(P)またはヒ素(As))とp型半導体領域6b形成用のp型不純物(例えばホウ素(B))をイオン注入することもできる。予め炭素(C)やゲルマニウム(Ge)をイオン注入しておくことで、後からイオン注入するn型半導体領域5b形成用のn型不純物とp型半導体領域6b形成用のp型不純物の拡がりを抑制できる。
【0220】
また、本実施の形態では、ソースまたはドレイン用の半導体領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域5b)上とゲート電極GE上とに金属シリサイド層11a,11bを形成する場合について説明した。他の形態として、ゲート電極GE上には金属シリサイド層11a,11bを形成せずに、ソースまたはドレイン用の半導体領域(ここではn型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に金属シリサイド層11a,11bを形成することもできる。
【0221】
(実施の形態2)
図40〜図44は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。図40は、上記図6および図14と同じ工程段階に対応し、図44は、上記図10および図16と同じ工程段階に対応する。
【0222】
上記実施の形態1の図1〜図6で説明したのと同様の工程を行って、上記図6および図14に相当する図40の構造が得られる。ここで、図40に示されるnチャネル型MISFETQnの構造は、上記実施の形態1で説明したのとほぼ同様であるので、ここではその説明は省略する。なお、本実施の形態においても、nチャネル型MISFETQnだけでなく、上記実施の形態1と同様に上記pチャネル型MISFETQpも形成されているが、簡略化のために、ここでは上記pチャネル型MISFETQpについての図示および説明は省略する。
【0223】
また、本実施の形態では、上記シリコン膜4をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極GEだけでなく、抵抗素子(ポリシリコン抵抗素子)用のシリコン膜パターン4aも形成している。従って、シリコン膜パターン4aは、ゲート電極GEと同層のシリコン膜からなり、同じ半導体基板1の主面上にゲート電極GEとシリコン膜パターン4aとが形成されている。シリコン膜パターン4aは、例えば素子分離領域2上に形成され、半導体基板1と電気的に絶縁されている。また、サイドウォール7は、半導体基板1上にゲート電極GEおよびシリコン膜パターン4aを覆うように酸化シリコン膜7aおよび窒化シリコン膜7bを順に形成し、酸化シリコン膜7aおよび窒化シリコン膜7bの積層膜(酸化シリコン膜7aが下層側で窒化シリコン膜7bが上層側)をRIE法などにより異方性エッチングすることによって形成されている。サイドウォール7は、ゲート電極GEの側壁上だけでなく、シリコン膜パターン4aの側壁上にも形成されている。
【0224】
上記図6および図14に対応する図40の構造が得られた後、本実施の形態では、図41に示されるように、半導体基板1上に、ゲート電極GEおよびシリコン膜パターン4aとそれらの側壁上のサイドウォール7とを覆うように、絶縁膜(第2絶縁膜)51を形成する。絶縁膜51は、酸化シリコン膜からなり、例えばTEOSを用いて形成することができる。絶縁膜51の膜厚(堆積厚み)は、例えば10〜50nm程度とすることができる。この絶縁膜51は、金属シリサイド層11a,11bを必要としない領域に、サリサイド工程で金属シリサイド層11a,11bが形成されないようにするために形成される。
【0225】
絶縁膜51の形成後、絶縁膜51上に、レジストパターンとして、フォトリソグラフィ技術によりフォトレジストパターン(レジストパターン、フォトレジスト膜、レジスト膜)PRを形成する。フォトレジストパターンPRは、サリサイド工程で金属シリサイド層11a,11bが形成されるのを防止する領域に形成される。サリサイド工程で金属シリサイド層11a,11bが形成されるのを防止する領域は、例えば、シリコン膜パターン4aのうち、金属シリサイド層11a,11bを形成しない領域である。ゲート電極GE、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6b上には、後で金属シリサイド層11a,11bが形成されるので、ゲート電極GE上と、ゲート電極GEの側壁上に設けられたサイドウォール7上と、n型半導体領域5b(ソース・ドレイン領域)上と、p型半導体領域5b(ソース・ドレイン領域)上とには、フォトレジストパターンPRは形成(配置)されない。
【0226】
次に、図42に示されるように、フォトレジストパターンPRをエッチングマスクとして用いて、絶縁膜51をドライエッチングする。これにより、フォトレジストパターンPRで覆われた領域の絶縁膜51はエッチングされずに残存し、フォトレジストパターンPRで覆われていない領域の絶縁膜51は除去される。しかしながら、絶縁膜51のエッチングが異方性のエッチングであることから、サイドウォール7の側面7cの下部上に、絶縁膜51の一部がサイドウォール(側壁絶縁膜、サイドウォールスペーサ)状に少量残存して、サイドウォール7よりも小さなサイドウォール(側壁絶縁膜、サイドウォールスペーサ)51aが形成される。サイドウォール51aは、絶縁膜51の残存部分(絶縁膜51の一部)からなる。ここで、サイドウォール7の側面7cは、ゲート電極GEやシリコン膜パターン4aと対向している側とは反対側の側面である。
【0227】
次に、図43に示されるように、フォトレジストパターンPRをアッシングなどにより除去する。この段階では、サイドウォール7の側面7cの下部に、残存する絶縁膜51aからなる小さなサイドウォール51aが存在している。
【0228】
以降の工程は、上記実施の形態1と同様である。すなわち、サイドウォール7の側面7cの下部にサイドウォール51aが存在している状態で、上記ステップS1で合金膜8を形成する。それから、上記ステップS2でバリア膜9を形成し、上記ステップS3で第1の熱処理を行い、上記ステップS4でバリア膜9および未反応の合金膜8を除去し、上記ステップS5で第2の熱処理を行う。本実施の形態で行なうステップS1〜S5も、上記実施の形態1と同様であり、上記実施の形態1で詳細に説明したので、ここではその図示および説明は省略する。これにより、図44に示されるように、金属シリサイド層11bが、ゲート電極GE、n型半導体領域5b(および図示しないp型半導体領域6b)およびシリコン膜パターン4a上に形成される。
【0229】
シリコン膜パターン4aの上面においては、上記プラグPGと接続する領域には、金属シリサイド層11bを形成するが、それ以外の領域は絶縁膜51で覆うことで金属シリサイド層11bが形成されないようにして、シリコン膜パターン4aを抵抗素子として機能させる。
【0230】
また、サイドウォール7の側壁上にサイドウォール51aが存在していたことにより、サイドウォール51aの下部での金属シリサイド層11bの形成を抑制または防止することができる。これにより、金属シリサイド層11bをn型半導体領域5a(および図示しないp型半導体領域6a)から、サイドウォール51aの厚みの分だけ離間させることができるので、接合リークをより低減することができ、半導体装置の信頼性を更に向上させることができる。
【0231】
また、サイドウォール51aが残っていると、サイドウォール51aが合金膜8と反応して、Ni1−ySiの異常成長を促進する可能性があるが、本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、上記第1の条件、第2の条件および第3の条件を満たすことでNi1−ySiの異常成長を抑制できるため、サイドウォール51aが残っていることによる悪影響を抑制または防止できる。従って、サイドウォール51aが残っていることによる悪影響を抑制または防止しながら、サイドウォール51aが残っていることによる上記利点(接合リークの低減効果)を享受することができる。
【0232】
本実施の形態の他の構成は、上記実施の形態1と同様であるため、ここではその説明は省略する。
【0233】
ここで、本実施の形態のように、サイドウォール7の側壁上にサイドウォール51aが存在している場合に、上記第2の条件や第3の条件を満たしているかどうかを判別するための上記幅W1をどのように規定するかについて説明する。
【0234】
LDD構造における低不純物濃度のエクステンション領域(n型半導体領域5aおよびp型半導体領域6aがこのエクステンション領域に対応する)は、上部にサイドウォール7があるため、上部に金属シリサイド層11bは形成されない。このため、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、エクステンション領域(n型半導体領域5a、p型半導体領域6a)は、ソース・ドレイン領域の幅W1には含めない。また、本実施の形態では、n型半導体領域5b(またはp型半導体領域6b)のうち、サイドウォール51aで覆われている部分では、上部にサイドウォール51aがあるため、上部に金属シリサイド層11bは形成されない。このため、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bのうち、サイドウォール51aで覆われている部分は、ソース・ドレイン領域の幅W1には含めない。
【0235】
すなわち、本実施の形態では、サイドウォール7とサイドウォール51aとを合わせたものを側壁絶縁膜とみなす。そして、ソース・ドレイン領域の幅W1には、原則として、側壁絶縁膜(サイドウォール7およびサイドウォール51a)の下に位置する部分(サイドウォール7の下の低濃度エクステンション領域およびサイドウォール51aの下の高濃度領域)は含まず、側壁絶縁膜(サイドウォール7およびサイドウォール51a)で覆われていない部分の高濃度領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅(ゲート長方向の幅)を指すものとする。上記実施の形態1と本実施の形態とで共通して、ソース・ドレイン領域の幅W1を規定するときのソース・ドレイン領域には、側壁絶縁膜(上記実施の形態1ではサイドウォール7、本実施の形態ではサイドウォール7とサイドウォール51aとを合わせたもの)で覆われている領域は含まず、側壁絶縁膜で覆われていない部分の高濃度領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)を指すものとする。このため、ソース・ドレイン領域の幅W1を規定するときのソース・ドレイン領域は、側壁絶縁膜(上記実施の形態1ではサイドウォール7、本実施の形態ではサイドウォール7とサイドウォール51aとを合わせたもの)で覆われずに上部に金属シリサイド層11bが形成された領域または形成される予定の領域と言うこともできる。
【0236】
(実施の形態3)
図45は、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)SM1の一例を示す平面図である。なお、図45は平面図であるが、図面を見やすくするために、メモリ領域61にハッチングを付してある。
【0237】
本実施の形態の半導体装置SM1は、SRAM(Static Random Access Memory)などのメモリセルアレイが形成されたメモリ領域(メモリ回路領域、メモリセルアレイ領域、SRAM領域)61と、メモリ以外の回路(周辺回路)が形成された周辺回路領域62とを有している。周辺回路領域62は、例えば、アナログ回路が形成されたアナログ回路領域や、制御回路が形成されたCPU領域などを含んでいる。メモリ領域61と周辺回路領域62との間や、周辺回路領域62同士の間は、半導体装置SM1の内部配線層(上記配線M1およびそれよりも上層の配線)を介して必要に応じて電気的に接続されている。また、半導体装置SM1の主面(表面)の周辺部には、半導体装置SM1の主面の四辺に沿って複数のパッド電極PDが形成されている。各パッド電極PDは、半導体装置SM1の内部配線層を介してメモリ領域61や周辺回路領域62などに電気的に接続されている。
【0238】
上記実施の形態1の半導体装置と同様、本実施の形態の半導体装置も、ゲート電極GEと上部に金属シリサイド層11bが形成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)とを有するMISFETが半導体基板1の主面に複数形成された半導体装置である。メモリ領域61および周辺回路領域62には、種々のMISFETが形成されているが、メモリ領域61のメモリセルを構成するMISFETの上記隣接間隔W3は、他の領域(周辺回路領域62など)のMISFETの上記隣接間隔W3よりも狭く(小さく)なっている。これは、メモリ領域61では、複数のメモリセルがアレイ状に配列してメモリセルアレイが形成されているが、記憶容量の増大や半導体装置の小型化(小面積化)のためには、メモリ領域61のメモリセルを構成するMISFETの隣接間隔W3を狭くすることが有効だからである。
【0239】
図46は、n型半導体領域5bおよびp型半導体領域6bを形成した後でかつ上記ステップS1で上記合金膜8を形成する前の段階(すなわち上記図6、図14および図21と同じ工程段階)における半導体装置の要部断面図である。図47は、上記ステップS1〜S5を行って金属シリサイド層11bを形成した後でかつ上記絶縁膜21を形成する前の段階(すなわち上記図10、図16および図22と同じ工程段階)における半導体装置の要部断面図である。図46と図47とは同じ断面領域の異なる工程段階が示されている。図46および図47には、nチャネル型MISFETが形成されている領域が示されているが、pチャネル型MISFETが形成されている領域の場合は、図46および図47において、p型ウエルPWがn型ウエルNWとなり、n型半導体領域5aがp型半導体領域6aとなり、n型半導体領域5bがp型半導体領域6bとなる。
【0240】
図46および図47において、(c)には、メモリ領域61のメモリセル(より特定的にはSRAMのメモリセル)を構成するMISFETが形成されている領域が示されており、(a),(b)には、メモリセルを構成するMISFET以外のMISFET(例えば周辺回路領域62を構成するMISFET)が形成されている領域が示されている。
【0241】
ここで、図46および図47の(a)に示されるMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1を幅W1dと称する。また、図46および図47の(b)に示されるMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1を幅W1eと称する。また、図46および図47の(c)に示されるMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1を幅W1fと称する。幅W1d,W1e,W1fの関係は、幅W1eは幅W1dよりも小さく、幅W1fは幅W1eよりも小さい(すなわちW1f<W1e<W1d)。
【0242】
メモリ領域61では、メモリセルがアレイ状に配列してメモリセルアレイが形成されているため、メモリセルを構成するMISFETは、メモリセルアレイを構成するMISFETでもある。図46および図47の(c)に示されるゲート電極GEは、メモリセルアレイ(メモリセル)を構成するMISFETのゲート電極GEで、かつ、ゲート長方向に隣り合うゲート電極GEである。図46および図47の(c)に示されるソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)は、メモリセルアレイ(メモリセル)を構成するMISFETのゲート電極GEであって、ゲート長方向に隣り合うゲート電極GE間に配置されたソース・ドレイン領域であり、その幅(ゲート長方向の幅)が幅W1fに対応している。
【0243】
メモリ領域61のメモリセルを構成するMISFETの上記隣接間隔W3は、他の領域(周辺回路領域62など)のMISFETの上記隣接間隔W3よりも狭く(小さく)なっている。このため、メモリセル(より特定的にはSRAMのメモリセル)を構成するMISFET(図46および図47の(c)に示されるMISFET)のソース・ドレイン領域の幅W1fが、メモリセルを構成するMISFET以外のMISFET(図46および図47の(a),(b)に示されるMISFET)のソース・ドレイン領域の幅W1d,W1eよりも小さくなっている。
【0244】
本実施の形態の半導体装置には複数のMISFETが形成されており、各MISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の上部には金属シリサイド層11bがサリサイドプロセスで形成されている。これらの金属シリサイド層11bは同じ工程で形成されるため、熱処理条件(上記第1の熱処理や第2の熱処理の条件)を調整することなどにより、全ての金属シリサイド層11bに対して一律に粒径(上記粒径G1に対応する値)を制御することはできるが、MISFET毎に金属シリサイド層11bの粒径を制御することは困難である。このため、図47(a)に示されるソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成する金属シリサイド層11bの粒径と、図47(b)に示されるソース・ドレイン領域上に形成する金属シリサイド層11bの粒径と、図47(c)に示されるソース・ドレイン領域上に形成する金属シリサイド層11bの粒径とを、それぞれ独立に制御することは困難である。
【0245】
そこで、上記実施の形態では、第3の条件として、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bにおける粒径G1を、上記幅W1cよりも小さく(G1<W1c)していた。それに対して、本実施の形態では、上記第3の条件の代わりの第6の条件として、ソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bにおける粒径(結晶粒径)G1を、メモリセル(メモリセルアレイ)を構成するMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1fよりも小さく(G1<W1f)する。ここで、メモリセル(メモリセルアレイ)を構成するMISFETのソース・ドレイン領域の幅W1fは、メモリセル(メモリセルアレイ)を構成するMISFETのゲート電極GEであって、ゲート長方向に隣り合うゲート電極GE間に配置されたソース・ドレイン領域(図46および図47の(c)に示されるソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b))におけるゲート長方向の幅(第1の幅)W1fに対応している。
【0246】
この第6の条件が満たされるように、上記ステップS3,S5の第1の熱処理および第2の熱処理を行う。この第6の条件は、メモリセル(より特定的にはSRAMのメモリセル)を構成するMISFETかどうかに関わらず、MISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された全ての金属シリサイド層11bに対して適用する。すなわち、図47(a)の金属シリサイド層11bと図47(b)の金属シリサイド層11bと図47(c)の金属シリサイド層11bとは、その粒径G1が、図47(c)のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1fよりも小さくなっている(G1<W1f)ようにするのである。第6の条件を別の見方で表現すると、金属シリサイド層11bが上部に形成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)を有するMISFETが半導体基板1の主面に複数形成されている場合に、メモリセルを構成するMISFETかどうかに関わらず、メモリセルを構成するMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1fよりも小さくする。
【0247】
第6の条件を満たすようにすれば、上記第2の条件を満たさない(G1≧W1fとなる)ような金属シリサイド層11bおよびソース・ドレイン領域を有するMISFETで構成されたメモリセルがメモリ領域61から無くなる。そして、メモリセルを構成するMISFETのソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成された金属シリサイド層11bの全てにおいて、上記第2の条件が満たされている状態となる。例えば、図47の(a)と(b)と(c)のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)上に形成されたいずれの金属シリサイド層11bにおいても、その粒径G1を、図47(c)のソース・ドレイン領域(n型半導体領域5b、p型半導体領域6b)の幅W1fよりも小さく(G1<W1f)することで、図47(c)では、必ず第2の条件が満たされている(G1<W1)状態となる。
【0248】
本実施の形態は、上記実施の形態1の上記第3の条件の代わりに、第6の条件を満たすようにすること以外の条件は、上記実施の形態1とほぼ同様であるので、ここではその説明は省略する。
【0249】
上述したように、上記第2の条件が満たされていない(G1≧W1)とNi1−ySiの異常成長が発生しやすく、一方、上記第2の条件が満たされている(G1<W1)と、Ni1−ySiの異常成長を抑制できるため、リーク電流の増大を抑制または防止できる。第6の条件を満たさずに、上記第2の条件を満たさない(すなわちG1≧W1となる)ような金属シリサイド層11bおよびソース・ドレイン領域を有するMISFETによってメモリセルが構成されていると、メモリセルを構成するMISFETのソース・ドレイン領域上の金属シリサイド層11bからチャネル部側にNi1−ySiが異常成長しやすいため、リーク電流が増大して、誤動作などを生じる虞がある。
【0250】
それに対して、第6の条件を満たすようにすれば、上記第2の条件を満たさない(すなわちG1≧W1となる)ような金属シリサイド層11b(すなわちNi1−ySiの異常成長が生じやすい金属シリサイド層11b)およびソース・ドレイン領域を有するMISFETでメモリセルが構成されなくなる。このため、金属シリサイド層11bからのNi1−ySiの異常成長に起因した不具合(リーク電流の増大や、ひいては上記リーク電流欠陥の発生)を、メモリセルを構成する全てのMISFETに対して抑制または防止することができる。従って、メモリ(メモリセル)が形成されたメモリ領域(61)を有する半導体装置の性能を的確に向上させることができる。
【0251】
また、記憶容量の増大や半導体装置の小型化(小面積化)のためには、メモリセルの隣接間隔W3を狭くすることが有効であるため、メモリセルを構成するMISFETのソース・ドレイン領域の幅W1fは、それ以外のMISFETのソース・ドレイン領域の幅(上記幅W1d,W1eに対応)よりも小さくすることが好ましい。このため、第6の条件を満たすようにすれば、メモリセルを構成するMISFETだけでなく、メモリセルを構成するMISFET以外のMISFETも上記第2の条件を満たす(すなわちG1<W1)ことになる。このため、第6の条件を満たすようにすれば、メモリセルを構成するMISFETだけでなく、半導体基板1の主面に形成された複数のMISFETのうちのほとんどのMISFETで、金属シリサイド層11bからのNi1−ySiの異常成長に起因した不具合(リーク電流の増大や、ひいては上記リーク電流欠陥の発生)を、抑制または防止することができる。従って、メモリ(メモリセル)が形成されたメモリ領域(61)を有する半導体装置において、メモリ領域(61)はもちろん、それ以外の領域(周辺回路領域62など)の特性を向上させることができ、半導体装置全体の性能を向上させることができる。
【0252】
また、上記第6の条件は、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を上記幅W1fよりも小さく(G1<W1f)するが、上記第2および第3の条件の場合と同様の考え方により、金属シリサイド層11bにおける粒径G1を上記W1fの1/2未満(すなわちG1<W1f×0.5)とすれば更に好ましい。これにより、金属シリサイド層11bにおいて、ゲート長方向を横切るような粒界GBの数を増やすことができるため、金属シリサイド層11bからチャネル部側へのNi1−ySiの異常成長を更に的確に抑制することができるようになる。
【0253】
本実施の形態の他の効果は、上記実施の形態1で説明したのとほぼ同様であるので、ここではその説明は省略する。また、本実施の形態の半導体装置の製造工程は、基本的には上記実施の形態1と同様であるので、ここではその説明は省略する。また、上記実施の形態2を本実施の形態に適用することもできる。
【0254】
上記実施の形態1,2および本実施の形態3の技術思想は、半導体基板1に形成するMISFET素子を微細化すると、ソース・ドレイン領域の幅W1が狭く(小さく)なるが、このとき、ソース・ドレイン領域の幅W1を狭く(小さく)するだけでなく、ソース・ドレイン領域上に形成する金属シリサイド層11bの粒径G1も小さくして、W1>G1の関係を維持することにある。つまり、MISFET素子の微細化にあわせて、金属シリサイド層11bの粒径G1を小さく制御することにある。このため、上記実施の形態1,2および本実施の形態3は、半導体基板1に形成するMISFET素子の微細化を図り、ソース・ドレイン領域の幅W1が狭く(小さく)なっている場合に適用すれば、効果が大きい。例えば、上記幅W1cが140nm以下(すなわちW1c≦140nm)の場合に、上記実施の形態1を適用すれば、その効果は大きく、上記幅W1cが120nm以下(すなわちW1c≦120nm)の場合に、上記実施の形態1を適用すれば、その効果は極めて大きい。また、上記幅W1fが140nm以下(すなわちW1f≦140nm)の場合に、本実施の形態3を適用すれば、その効果は大きく、上記幅W1fが120nm以下(すなわちW1f≦120nm)の場合に、本実施の形態3を適用すれば、その効果は極めて大きい。上記幅W1c,W1fがそのような小さな値になっても、金属シリサイド層11bの粒径G1がそれよりも更に小さくなうように(すなわちG1<W1cまたはG1<W1fとなるように)金属シリサイド層11bを形成することで、上記実施の形態1〜3で説明したような効果を的確に享受できるようになる。
【0255】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に適用して有効である。
【符号の説明】
【0257】
1 半導体基板
2 素子分離領域
3 ゲート絶縁膜
4 シリコン膜
4a シリコン膜パターン
5a n型半導体領域
5b n型半導体領域(ソース・ドレイン領域)
6a p型半導体領域
6b p型半導体領域(ソース・ドレイン領域)
7 サイドウォール(側壁絶縁膜)
7a 酸化シリコン膜
7b 窒化シリコン膜
7c 側面
8 合金膜
8a 未反応部分
8b 反応部分
9 バリア膜
11a,11b 金属シリサイド層
21,22 絶縁膜
23 コンタクトホール
25 ストッパ絶縁膜
26 絶縁膜
31 シリコン領域
41 ヒータ加熱装置
42 チャンバ
43 サセプタ
43a キャリアプレート
43b ガードリング
43c サポートピン
44 抵抗ヒータ
45 フープ
46 ウエハ受け渡し用チャンバ
47 ロードロック
51 絶縁膜
51a サイドウォール
61 メモリ領域
62 周辺回路領域
GE,GE1,GE2 ゲート電極
M1 配線
NW n型ウエル
PD パッド電極
PG プラグ
PR フォトレジストパターン
PW p型ウエル
Qn nチャネル型MISFET
Qp pチャネル型MISFET
SW 半導体ウエハ
tn1,tn1a,tn1b,tn1c,tn1d 厚み
tn2,tn3,tn4 厚み
tn5,tn5a,tn5b,tn5c,tn5d 厚み
W1,W1a,W1b,W1c,W1d,W1e,W1f,W2 幅
W3 隣接間隔
W4 厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域とを有するMISFETが半導体基板の主面に複数形成された半導体装置であって、
前記金属シリサイド層は、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなる第1金属元素およびニッケルのシリサイドからなり、
前記金属シリサイド層の粒径は、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向の幅が最も小さい第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1のソース・ドレイン領域は、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向に最も近接して隣り合う前記ゲート電極間に配置されたソース・ドレイン領域であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
ゲート電極と上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域とを有するMISFETが半導体基板の主面に複数形成された半導体装置であって、
前記金属シリサイド層は、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなる第1金属元素およびニッケルのシリサイドからなり、
前記複数のMISFETは、メモリセルアレイを構成する複数の第1MISFETを含み、
前記金属シリサイド層の粒径は、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向に隣り合う前記第1MISFETのゲート電極間に配置された第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1金属元素は、Ptであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記金属シリサイド層における金属元素に占めるPt元素の割合は、4%以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置において、
前記金属シリサイド層は、Ni1−yPtSi相であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置において、
前記金属シリサイド層におけるPt濃度は、前記金属シリサイド層の厚みの中央よりも、前記金属シリサイド層の底面が高濃度であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記金属シリサイド層におけるPt濃度は、前記金属シリサイド層の厚みの中央よりも、前記金属シリサイド層の底面および上面が高濃度であることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項6記載の半導体装置において、
前記ゲート電極の側壁上には側壁絶縁膜が形成されており、
前記ソース・ドレイン領域は、前記ゲート電極の側壁上に形成された前記側壁絶縁膜に整合して形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項6記載の半導体装置において、
前記金属シリサイド層の粒径が、前記第1の幅の1/2未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項6記載の半導体装置において、
前記第1の幅が140nm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域を有するMISFETを複数有する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板を準備する工程、
(b)前記(a)工程後、前記半導体基板上に前記複数のMISFETのゲート電極をゲート絶縁膜を介して形成する工程、
(c)前記(b)工程後、前記ゲート電極の側壁上に側壁絶縁膜を形成する工程、
(d)前記(c)工程後、イオン注入法で前記半導体基板に前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域を形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記ソース・ドレイン領域上を含む前記半導体基板上に、前記ゲート電極を覆うように、ニッケルと第1金属元素との合金膜を形成する工程、
(f)前記(e)工程後、第1の熱処理を行って前記合金膜と前記ソース・ドレイン領域とを反応させて、ニッケルおよび前記第1金属元素のシリサイドからなる前記金属シリサイド層を形成する工程、
(g)前記(e)工程後、前記(e)工程にて前記ソース・ドレイン領域と反応しなかった前記合金膜を前記金属シリサイド層上から除去する工程、
(h)前記(f)工程後、前記第1の熱処理よりも高い熱処理温度で第2の熱処理を行う工程、
(i)前記(g)工程後、前記金属シリサイド層上を含む前記半導体基板上に第1絶縁膜を形成する工程、
を有し、
前記第1金属元素は、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなり、
前記(h)工程で前記第2の熱処理を行った後の前記金属シリサイド層の粒径が、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向の幅が最も小さい第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さくなるように、前記第1の熱処理および前記第2の熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のソース・ドレイン領域は、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向に最も近接して隣り合う前記ゲート電極間に配置されたソース・ドレイン領域であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
上部に金属シリサイド層が形成されたソース・ドレイン領域を有するMISFETを複数有する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板を準備する工程、
(b)前記(a)工程後、前記半導体基板上に前記複数のMISFETのゲート電極をゲート絶縁膜を介して形成する工程、
(c)前記(b)工程後、前記ゲート電極の側壁上に側壁絶縁膜を形成する工程、
(d)前記(c)工程後、イオン注入法で前記半導体基板に前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域を形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記ソース・ドレイン領域上を含む前記半導体基板上に、前記ゲート電極を覆うように、ニッケルと第1金属元素との合金膜を形成する工程、
(f)前記(e)工程後、第1の熱処理を行って前記合金膜と前記ソース・ドレイン領域とを反応させて、ニッケルおよび前記第1金属元素のシリサイドからなる前記金属シリサイド層を形成する工程、
(g)前記(e)工程後、前記(e)工程にて前記ソース・ドレイン領域と反応しなかった前記合金膜を前記金属シリサイド層上から除去する工程、
(h)前記(f)工程後、前記第1の熱処理よりも高い熱処理温度で第2の熱処理を行う工程、
(i)前記(g)工程後、前記金属シリサイド層上を含む前記半導体基板上に第1絶縁膜を形成する工程、
を有し、
前記第1金属元素は、Pt,Pd,V,Er,Ybからなる群から選択された少なくとも一種からなり、
前記複数のMISFETは、メモリセルアレイを構成する複数の第1MISFETを含み、
前記(h)工程で前記第2の熱処理を行った後の前記金属シリサイド層の粒径が、前記複数のMISFETのソース・ドレイン領域のうちの、ゲート長方向に隣り合う前記第1MISFETのゲート電極間に配置された第1のソース・ドレイン領域におけるゲート長方向の第1の幅よりも小さくなるように、前記第1の熱処理および前記第2の熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、前記金属シリサイド層上に前記合金膜の未反応部分が残存するように、前記第1の熱処理を行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、前記ソース・ドレイン領域中へのニッケルの拡散係数よりも、前記ソース・ドレイン領域中への前記第1金属元素の拡散係数の方が大きくなる熱処理温度で前記第1の熱処理を行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置の製造方法において、
前記金属シリサイド層を構成する金属元素に占める前記第1金属元素の割合は、前記合金膜に占める前記第1金属元素の割合よりも大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1金属元素は、Ptであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の熱処理の前記熱処理温度は、279℃未満であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の熱処理の前記熱処理温度は、200℃以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程では、前記ソース・ドレイン領域上の前記合金膜を第1の厚みで形成し、
前記(e)工程で形成された前記ソース・ドレイン領域上の前記合金膜のうち、前記(f)工程で前記ソースドレイン領域と反応した部分の厚みは、前記第1の厚みよりも薄い第2の厚みであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項22】
請求項21記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、前記第1の熱処理により(Ni1−yPtSi相の前記金属シリサイド層が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項23】
請求項22記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程では、前記第2の熱処理によりNi1−yPtSi相の前記金属シリサイド層が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項24】
請求項23記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程で形成された前記合金膜は、Ni1−xPt合金膜であり、
前記Ni1−xPtにおける前記xよりも、前記(Ni1−yPtSiにおける前記yが大きいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項24記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の厚みは、前記第2の厚みの1.25倍以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項26】
請求項25記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1金属元素はPtであって、前記金属シリサイド層における金属元素に占めるPt元素の割合は、4%以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項27】
請求項26記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の幅が140nm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項28】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程後に、
(d1)前記半導体基板上に、前記ゲート電極および前記側壁絶縁膜を覆うように、第2絶縁膜を形成する工程、
(d2)前記第2絶縁膜上にレジストパターンを形成する工程、
(d3)前記レジストパターンをエッチングマスクとして用いて、前記第2絶縁膜をドライエッチングする工程、
(d4)前記レジストパターンを除去する工程、
を更に有し、
前記(d2)工程では、前記レジストパターンは、前記ソース・ドレイン領域、前記ゲート電極および前記側壁絶縁膜上には形成されず、
前記(d3)工程では、前記側壁絶縁膜の前記ゲート電極と対向する側とは反対側の側面の下部に、前記第2絶縁膜の一部が残存し、
前記(d4)工程後に、前記(e)工程が行なわれ、
前記(e)工程では、前記側壁絶縁膜の前記ゲート電極と対向する側とは反対側の側面の下部に前記第2絶縁膜の前記一部が残存した状態で、前記合金膜が形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2011−222857(P2011−222857A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92284(P2010−92284)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】