説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】素子の特性や信頼性を向上させることが可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜3上にゲート電極13、14を有する相補型電界効果型トランジスタにおいて、ゲート電極13、14の少なくともゲート絶縁膜3に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、pチャネル上のゲート電極14に含まれるNiシリサイドとゲート絶縁膜3との界面にB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を含み、且つ、nチャネル上のゲート電極13に含まれるNiシリサイドとゲート絶縁膜3との界面にN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を含む半導体装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層装置および半導体装置の製造方法に関する。より詳細には、フルシリサイドゲート電極を有する半導体装置およびその製造方法に関し、特にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の高性能化と高信頼性化に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタの微細化が進む先端CMOS(相補型MOS)デバイスの開発では、poly−Si(シリコン)電極の空乏化による駆動電流の劣化が問題となっている。そこで、メタルゲート電極の適用により電極の空乏化を回避することで駆動電流の劣化を防ぐ技術が検討されている。
【0003】
メタルゲート電極に用いる材料として、純金属や金属窒化物あるいはシリサイド材料等が検討されているが、いずれの場合においても、N型MOSFET、P型MOSFETの閾値電圧(Vth)を適切な値に設定可能でなければならない。
【0004】
例えば、高性能CMOSトランジスタではVthを±0.1V程度とする必要がある。このため、N型MOSFETではn型poly−Siの仕事関数(4.0eV)程度の材料を、P型MOSFETではp型poly−Siの仕事関数(5.2eV)程度の材料をゲート電極に用いる必要がある。一方、低消費電力CMOSトランジスタではVthを±0.4〜0.5V程度とする必要がある。このため、N型MOSFETでは実効的な仕事関数が4.4〜4.5eV程度の材料を、P型MOSFETでは実効的な仕事関数が4.7〜4.8eV程度の材料をゲート電極に用いる必要がある。
【0005】
また、近年、次世代のCMOSトランジスタの微細化・ばらつき抑制のため、超薄膜SOIデバイス(Ultra Thin Bodyデバイス:通常UTBデバイスと呼ばれる)やFinFETなどのチャネルの幾何学的形状により、短チャンネル効果を抑制するデバイスの適用が有効であると考えられている。UTBデバイスやFinFETでは通常チャネルにドーパントを添加しないが、チャネルがノンドープの場合、閾値電圧はゲート電極の仕事関数によって制御する必要がある。ITRSのロードマップによれば、25nm以降のUTBデバイスやFinFETにおいて必要な実効仕事関数は、MPU/ASICもしくはLOPトランジスタ用にはmidgap、LSTPトランジスタ用にはmidgap±0.1eVであり、1つのチップ上で複数の実効仕事関数をもつメタルゲートを作り分ける必要がある。
【0006】
これらを実現する手段として、異なる仕事関数を持った異種の金属あるいは合金をN型MOSFET、P型MOSFETの電極にそれぞれ使い分けることでトランジスタのVthを制御する方法(デュアルメタルゲート技術)が提案されている。例えば、非特許文献1では、SiO2上に形成したTaとRuの仕事関数はそれぞれ4.15eVと4.95eVであり、この二つの電極間で0.8eVの仕事関数が変調可能であると述べられている。
【0007】
また、poly−Si電極をNi、Hf、Wなどで完全にシリサイド化したフルシリサイドゲート電極に関する技術が最近注目されている。例えば、特許文献1には、ゲート絶縁膜にSiOを用い、ゲート電極として、PやBなどの不純物を注入したpoly−Si電極をNiで完全にシリサイド化したNiシリサイド電極が記載されている。そして、この技術によれば、(1)形成プロセスが従来CMOSプロセスと整合性が高く、(2)SiO上でシリサイド化前のpoly−Siへの不純物添加により閾値電圧制御が行えることが記載されている。これらの特長から、Niフルシリサイドゲート電極は有望なメタルゲート材料と考えられている。特に、(2)の不純物添加による閾値制御によれば、従来半導体プロセスで用いられている不純物(pMOS:B、Al、Ga、In、Tl、nMOS:N、P、As、Sb、Bi)を用いた場合、n型トランジスタ用には4.2−4.4eV程度の、またp型トランジスタ用には4.7−4.9eV程度の実効仕事関数が得られている。
【0008】
このような閾値変化は、シリサイド化時に上記の添加不純物がいわゆる「雪かき」効果によってNiSi/SiO界面に偏析することによって起こる。(2)の不純物添加による閾値制御は、pMOS/nMOSの作りわけが可能であることからSiOをゲート絶縁膜に用いたトランジスタの閾値制御法として有望と考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0064636号明細書
【特許文献2】特開2008−192822号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】インターナショナル・エレクトロン・デバイス・ミーティング・テクニカルダイジェスト(International electron devices meeting technical digest)2002,p.359〜p.362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の技術にはそれぞれ以下のような問題点が存在する。
【0012】
異なる仕事関数を持った異種の金属あるいは合金を作り分けるデュアルメタルゲート技術は、P型MOSFETとN型MOSFETのどちらかのゲート上に堆積された層をエッチング除去するプロセスが必要であり、エッチングの際にゲート絶縁膜の品質を劣化させてしまうため、素子の特性や信頼性が損なわれる。
【0013】
また、従来用いられてきたフルシリサイドゲートであるNiSiフルシリサイドゲート電極の場合、Hfを含むHigh−kゲート絶縁膜をゲート絶縁膜として用いると、SiONなどのHfを含まないゲート絶縁膜に比べて仕事関数の制御幅が著しく減少し、実質的には伝導帯、価電子帯の中間であるミッドギャップ位置に固定されてしまうため、技術そのものが適用できない。
【0014】
さらに、CMOSデバイスを作製する場合、工程の簡便化によるコスト低減のため一回のシリサイド化でnMOS及びpMOSトランジスタのNiフルシリサイドゲート電極を形成できることが好ましい。そのためにはnMOS及びpMOSトランジスタのNiフルシリサイドゲート電極の組成は同一であることが必要である。しかし、同一組成のNiフルシリサイドゲート電極でnMOS及びpMOSトランジスタに必要な閾値を実現できる実効仕事関数(高性能バルクトランジスタn/pMOS:4.0/5.2eV、低消費電力バルクトランジスタn/pMOS:4.4〜4.5/4.7〜4.8eV、高性能ノンドープチャネルトランジスタ:midgap、低消費電力ノンドープチャネルトランジスタn/pMOS:midgap+0.1/midgap−0.1eV)を持つNiシリサイド電極は見出されていない。
【0015】
本発明は、上記従来の課題に対してなされたものであり、上述した問題を改善し、素子の特性や信頼性を向上させることが可能な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有するMISトランジスタであって、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、pチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0017】
ここで、前記「高誘電率ゲート絶縁膜」の「高誘電率」とは、酸化シリコンよりも誘電率が高いことを意味する。また、「Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし」とは、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドが80%以上、より好ましくは90%以上のことを意味する。当該前提は、以下のすべての発明において同様である。
【0018】
本発明では、pチャネル上のゲート電極中のNiシリサイドの結晶相が実質的にNiSiであることが好ましい。ここでいう「Niシリサイドの結晶相が実質的にNiSiである」とは、Niシリサイド中の全体積の中で90%以上が結晶化したNiSiであることを指し、全体積の中で残りの10%以下は、例えば他の組成の結晶化Niシリサイド、非晶質NiSiなどである場合をいう(以下「Niシリサイドの結晶相が実質的にNiSiである」とはこのことを指す)。
【0019】
また、本発明によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有するMISトランジスタであって、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、nチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0020】
本発明では、前記nチャネル上のゲート電極中のNiシリサイドの結晶相が実質的にNiSiであることが好ましい。
【0021】
また、本発明によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有する相補型電界効果型トランジスタにおいて、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、pチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を含み、且つ、nチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜界面にN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0022】
本発明では、前記nチャネルおよびpチャネル上のゲート電極中のNiシリサイドの結晶相が実質的にNiSiであることが好ましい。
【0023】
本発明では、前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面に含まれる前記元素の濃度は、前記界面近傍において、1×1020cm−3以上であることが好ましい。なお、前記ゲート絶縁膜としてHfSiOまたはHfSiONを含む絶縁膜を用いることができる。この場合ゲート絶縁膜の前記ゲート電極と接する部分に、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜の中の少なくとも一以上を有することが好ましい。
【0024】
また、本発明によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有する相補型電界効果型トランジスタであって、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、pチャネルトランジスタが形成される第一領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には第一不純物元素が添加されており、nチャネルトランジスタが形成される第二領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には第二不純物元素が添加されており、前記第一領域及び前記第二領域のトランジスタよりも閾値電圧が低く電流駆動能力が高いトランジスタが形成される第三領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には前記第一不純物元素及び前記第二不純物元素が添加されないことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0025】
本発明では、前記第一、第二、及び第三領域上のチャネル中の不純物量が実質的に同一であることが好ましい。さらに、前記第一、第二、及び第三領域上のチャネル中の不純物量が1×1016cm−3以下であることが好ましい。
【0026】
本発明では、前記第一不純物元素は、B、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素からなるようすることができる。また、前記第二不純物元素は、N、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素からなるようすることができる。
【0027】
本発明では、前記第一不純物元素及び前記第二不純物元素の濃度が、前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との前記界面近傍において、1×1020cm−3以上であることが好ましい。
【0028】
本発明では、前記ゲート絶縁膜としてHfSiOまたはHfSiONを含む絶縁膜を用いることができる。この場合ゲート絶縁膜の前記ゲート電極と接する部分に、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜の中の少なくとも一以上を有することが好ましい。
【0029】
また、本発明によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にシリコン(poly−Si)を堆積した後、第一の領域上のシリコン(poly−Si)に対してB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加するとともに、第二の領域上のシリコン(poly−Si)に対してN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加する工程と、前記シリコン(poly−Si)の上方にNiを成膜後、620℃以上で熱処理することによって、前記シリコン(poly−Si)をシリサイド化する工程と、を含む半導体装置の製造方法であって、前記シリコン(poly−Si)の膜厚TSiと、前記シリコン(poly−Si)の上方に成膜されたNiの膜厚TNiとは、TNi/TSi=0.28〜0.54の関係をみたすことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0030】
本発明では、前記ゲート絶縁膜上のシリコン(poly−Si)に添加元素を添加する方法がイオン注入法であることが好ましい。
【0031】
また、本発明によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にシリコン(poly−Si)を堆積する工程と、前記シリコン(poly−Si)の上方にNiを成膜後、620℃以上で熱処理することによって、前記シリコン(poly−Si)をシリサイド化する工程と、第一の領域上のNiシリサイドに対してB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素をレジストマスクとイオン注入法を用いて選択的に添加するとともに、第二の領域上のNiシリサイドに対してN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素をレジストマスクとイオン注入法を用いて選択的に添加した後、熱処理する工程と、を含む半導体装置の製造方法であって、前記シリコン(poly−Si)の膜厚TSiと、前記シリコン(poly−Si)の上方に成膜されたNiの膜厚TNiとは、TNi/TSi=0.28〜0.54の関係をみたすことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0032】
本発明による半導体装置の製造方法では、ゲート絶縁膜上にpoly−Si電極を形成した後に、再度これを除去する工程がないために、ゲート絶縁膜表面がウェットエチング液や有機溶剤に数度にわたり晒されることがない。このため、信頼性に優れたメタルゲート/ゲート絶縁膜CMOSトランジスタを作製することが可能である。また、添加量をイオン注入等これまでに確立された技術で制御可能なため、Vthのバラツキを抑えることができる。
【発明の効果】
【0033】
素子の特性や信頼性を向上させることが可能な半導体装置およびその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一の半導体製造装置を示した断面図である。
【図2】本発明の第二の半導体製造装置を示した断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係わる結晶化Niシリサイド組成とシリサイド化前のSiとNiの膜厚比の関係を示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係わる結晶化Niシリサイドの実効仕事関数の組成依存性を示した図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係わる半導体製造装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係わる半導体製造装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図7A】本発明の第二の実施形態に係わる半導体製造装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図7B】本発明の第二の実施形態に係わる半導体製造装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図7C】本発明の第二の実施形態に係わる半導体製造装置の製造工程についての一部を示した断面図である。
【図8】本発明の半導体製造装置においてHfSiON上の最表面にSiONをもつ絶縁膜を用いた場合を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図面中、同様の構成要素には、同様のハッチングを付すことで、適宜符号を付すのを省略する。なお、ハッチングの数の制限上、識別可能な範囲で、異なる構成要素に対し同様のハッチングを付すこともある。
【0036】
本発明は、Hfを含むHigh−kゲート絶縁膜上のNiSi電極の実効仕事関数が、不純物偏析によって変化させることができるという新しい発見に基づく。この発見は以下のようなMOS容量を用いた予備実験から見いだされたものである。
【0037】
まず、Si基板上にてHfSiOゲート絶縁膜(膜厚:2nm)を形成し、その上に膜厚80nmのpoly−Si(シリコン)ゲート電極を形成した。次にpoly−Siゲート電極に対して添加元素をイオン注入した。例えば、通常の平面型nMOSトランジスタを実現するためには、poly−Siゲート電極に対してn型不純物であるN、P、As、Sb、Biなどを、また通常の平面型pMOSトランジスタを実現するためには、poly−Siゲート電極に対してp型不純物であるB、Al、In、Ga、Tlなどをイオン注入した。
【0038】
その後、poly−Siゲート電極(膜厚を「TSi」とする)上にNi膜(膜厚を「TNi」とする)を堆積して、熱処理によってpoly−Siゲート電極をフルシリサイド化した。
【0039】
ここで、上記のように作製したMOS容量のNiシリサイドの結晶相をXRD(X−ray diffraction)で特定した結果を表1にまとめる。表1は、シリサイド化前のNi膜及びpoly−Siゲート電極の膜厚比(Ni膜厚/Si膜厚の比(=TNi/TSi))と、シリサイド化温度(アニール温度)と、形成されるNiシリサイド結晶相と、の関係を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
シリサイド化温度が620℃より高く、TNi/TSi=0.28〜0.54の場合、形成されるNiシリサイドは実質的にNiSiからなる。ただし、XRDスペクトルに弱くNiSiのピークが見られた。XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)によるシリサイド電極組成の深さ方向分析によれば、電極表面側に若干Ni組成がNiSiのものに比べて高いところがありNiSiは主にその部分に存在すると考えられる。TNi/TSi=0.55〜0.95の場合、形成されるNiシリサイドは実質的にNiSiからなる。TNi/TSi=1.6以上の場合、形成されるNiシリサイドは実質的にNiSiからなる。
【0042】
このように、形成されるNiシリサイドの結晶相は、シリサイド化前のNi膜及びpoly−Siゲート電極の膜厚比に依存する。poly−Siゲート電極の膜厚が一定である場合には、poly−Siゲート電極上に堆積したNi膜の厚さ、すなわち、poly−Siゲート電極に供給されるNiの量に応じて、形成されるNiシリサイドの結晶相は段階的に決まる。
【0043】
この事実によれば、例えば、実効仕事関数に影響を与えるpoly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面付近のNiシリサイドの結晶相を主にNiSi相としたい場合には、poly−Siゲート電極の厚さ(TSi)とNi膜の厚さ(TNi)の比(TNi/TSi)を0.55〜0.95の範囲に設定し、シリサイド化温度を400〜500℃程度にすればよいこととなる。また、poly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面付近のNiシリサイドの結晶相を、NiSi相を主成分とするシリサイドにしたい場合には、TNi/TSiを0.28〜0.54の範囲に設定し、シリサイド化温度を620℃より高く、好ましくは650℃以上にすればよい。さらに、poly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面付近のNiシリサイドの結晶相を主にNiSi相としたい場合には、TNi/TSiを1.60以上の範囲に設定し、シリサイド化温度を400〜500℃程度にすればよい。この手段によれば、Niシリサイドの仕事関数を決定するNi/(Ni+Si)組成は、NiSi、NiSiなどの結晶相によりほぼ自己整合的に決まるため、同じ結晶相を得る(即ち同じ仕事関数を得る)ことが出来るNi膜の堆積膜厚やシリサイド化温度などのプロセス条件のマージンが広く、シリサイドが非晶質の場合に比べて製造プロセスのバラツキを低く抑えることができる。
【0044】
図3は、上記のように作製したMOS容量のpoly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面における電極中Ni組成のNi膜厚/poly−Si膜厚の比(TNi/TSi)の依存性を示す。電極中Ni組成はXPS測定から求めた。電極組成のエラーバーはXPSによる多点測定におけるバラつきを示す。
【0045】
図3より、poly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面における電極中Ni組成は、TNi/TSi比に応じて段階的に決まることがわかる。具体的には、TNi/TSi=0.28〜0.54の場合、及び0.55〜0.95の場合、及び1.60以上の場合それぞれにおける、poly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面の電極中Ni組成の割合は、各々33.3±7%、50±5%、及び75±5%である。これらの組成は各々実質的にNiSi中のNi組成の割合(33.3%)、NiSi中のNi組成の割合(50%)、及びNiSi中のNi組成の割合(75%)に一致した。これは、前記界面における電極中Ni組成が、表1に見られる結晶相によって自己整合的に決定されていることに起因するものと考えられる。
【0046】
ここで、上記のようなMOS容量の作製方法の場合、上述したフルシリサイド化の際に、poly−Siゲート電極に対してイオン注入された添加元素が「雪かき」効果によってpoly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面に偏析する。図4は、上記のようにして作製したMOS容量において、poly−Siゲート電極に対してP及びBのそれぞれを添加した場合(P及びBのpoly−Si中への添加量は両方とも7.5×1020cm−3)及び不純物を添加していない場合(undope)の結晶化Niシリサイドの実効仕事関数の界面付近のシリサイド電極組成依存性を示す。
【0047】
図4より、結晶化NiシリサイドがNiSiの場合、実効仕事関数はPやBを添加しても、不純物を添加しない場合(undope)と実質的に同一である。一方、結晶化NiシリサイドがNiSiの場合には、不純物添加によって実効仕事関数がおおよそSiのmidgap±0.1eVの範囲で制御できることがわかる。すなわち、シリサイド電極をNiSiとすれば、実効仕事関数が制御できることによって低消費電力用のバルクトランジスタに適切な閾値電圧を実現できることとなる。
【0048】
なお、「雪かき」効果によって偏析した不純物の濃度が、poly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面近傍において、1×1020cm−3を下回ると、NiSiの場合においても、ほとんど実効仕事関数が変化しなかった。従って、不純物偏析により実効仕事関数を変化させるためには、偏析不純物の濃度が、poly−Siゲート電極/HfSiO絶縁膜界面近傍において1×1020cm−3以上であることが好ましい。
【0049】
その他、チャネルがノンドープであるUTBデバイス及びFinFETなどのトランジスタの場合、Siのmidgapの実効仕事関数を持つメタルゲート電極が必要な高性能トランジスタにはundopeのNiSiを適用すれば所望の閾値が得られることがわかった。また、Siのmidgap±0.1eV(通常のバルクTrと逆にNMOSにはSiのmidgap+0.1eV、PMOSにはmidgap−0.1eV)の実効仕事関数が必要な低消費電力用N及びPMOSトランジスタには、各々p及びn型のドーパントを添加したNiSiを適用すれば所望の閾値が得られることがわかった。
【0050】
以上説明した事実に基づけば、閾値電圧を基板中の不純物濃度ではなく電極の実効仕事関数で決定できるため、基板中の不純物濃度を低く保ちながら所望の閾値電圧を得ることができる。その結果、基板不純物の高濃度化による閾値電圧のばらつきや移動度の低下を抑制することが可能となる。また、不純物添加はPR工程及びイオン注入工程によって簡便に行うことができるため、低コストに所望のデバイスを得ることが可能となる。
【0051】
その他、Ni組成が40%を越えない結晶化Niシリサイド(NiSi)電極の場合、電極起因の応力もほとんど発生しないのでMOSFETの高信頼性化を実現できる。また、Ni組成が40%を越えない結晶化Niシリサイド電極の場合は高い耐熱性を有するため、ゲート積層構造の安定性も高まる。
【0052】
その他、CMOSデバイスを作製する場合、工程の簡便化によるコスト低減のため、一回のシリサイド化でnMOS及びpMOSトランジスタのNiフルシリサイドゲート電極を形成できることが好ましいが、不純物を添加した結晶化NiSi電極をゲート電極に用いる上述した手段によればこれを達成することができる。
【0053】
なお、Hfを含むHigh−kゲート絶縁膜はHfSiOもしくはHfSiONであってもよい。この場合、poly−Siゲート電極と接する部分に、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、もしくはシリコン窒化膜を挿入することにより実効仕事関数変化を大きくでき、その結果、MOSFETにおいてより低い閾値を実現することができる。
【0054】
ここで、上述の事実に基づき、上述の作用を実現した本実施形態の半導体装置の一例を図1及び図2に示す。図1及び図2は、バルクCMOSFETの構造図およびノンドープチャネルトランジスタの構造図を示す。このようなCMOSFETを作製すると、シリサイドをCMOSデバイスのゲート電極に用いることによりゲート電極の空乏化を回避するだけでなく、これまで困難とされていた高性能トランジスタを高い再現性と信頼性で実現できる。
【0055】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について、説明する。
【0056】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にpoly−Si(シリコン)を堆積した後、第一の領域上のpoly−Siに対してB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加するとともに、第二の領域上のpoly−Siに対してN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加する工程と、poly−Siの上方にNiを成膜後、620℃以上で熱処理することによって、poly−Siをシリサイド化する工程と、を含み、poly−Siの膜厚TSiと、poly−Siの上方に成膜されたNiの膜厚TNiとは、TNi/TSi=0.28〜0.54の関係をみたす。
【0057】
なお、第一の領域上のpoly−Siは、pチャネル素子上のpoly−Siであり、第二の領域上のpoly−Siは、nチャネル素子上のpoly−Siであってもよい。そして、第一の領域上のpoly−Siに対してB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を添加し、第二の領域上のpoly−Siに対してN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を添加する方法はイオン注入法であってもよい。
【0058】
以下、本実施形態の半導体装置の製造方法により実現される製造例および半導体装置の構成を図5(a)〜(h)、図6(i)〜(j)を用いて具体的に説明する。なお、本実施形態において必須の工程は上述の工程であり、以下の例で説明するその他の工程はあくまで一例であって、これらの例以外のその他の適切な他の技術、材料などを用いた他の工程に置き換えることも可能である。
【0059】
まず、図5(a)に示す状態を得るため、シリコン基板1の表面領域に例えばSTI(Shallow Trench Isolation)技術を用いて素子分離領域2を形成する。続いて、素子分離されたシリコン基板表面に、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3としては、例えば、HfSiO、HfSiONなどとすることができる。また、ゲート絶縁膜3の厚さとしては、例えば、2nmとすることができる。
【0060】
次に、ゲート絶縁膜3上に、poly−Si膜4(例:膜厚80nm)を形成する。そして、このPoly−Si膜4に対しレジストを用いた通常のPRプロセスとイオン注入を組み合わせることによりnMOSFET領域には、N、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加し、pMOSFET領域には、B、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加する。各々の注入エネルギー及びドーズ量は特段制限されないが、例えば、P注入の場合5KeV及び5×1015cm−2、B注入の場合2KeV及び6×1015cm−2とすることができる。これにより、図5(a)に示す状態が得られる。
【0061】
その後、図5(b)に示すように、poly−Si膜4の上に、例えば厚さ150nmのシリコン酸化膜からなる積層膜5を形成する。次に、図5(c)に示す状態を得るため、積層膜5を、例えばリソグラフィー技術およびRIE(Reactive Ion Etching)技術を用いてゲート電極に加工し、引き続いてイオン注入を行い、エクステンション拡散層領域6を、ゲート電極をマスクとして自己整合的に形成する。
【0062】
次に、図5(d)に示す状態を得るため、例えばシリコン窒化膜とシリコン酸化膜を順次堆積し、その後エッチバックすることによってゲート側壁7を形成する。この状態で再度イオン注入を行い、活性化アニールを経てソース・ドレイン拡散層8を形成する。
【0063】
次に、図5(e)に示すように、例えば厚さ20nmの金属膜9をスパッタにより略全面に堆積し、例えばサリサイド技術によりゲート電極及びゲート側壁膜、STIをマスクとして、ソース・ドレイン拡散層のみに厚さ約40nmのシリサイド層10を形成する(図5(f))。このシリサイド層10は、例えば、コンタクト抵抗を最も低くすることができるNiモノシリサイド(NiSi)とすることができる。なお、Niシリサイドの代わりにCoシリサイドやTiシリサイドを用いてもよい。
【0064】
次に、図5(g)に示すように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってシリコン酸化膜の層間絶縁膜11を形成する。この層間絶縁膜11を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術によって図5(h)に示すように平坦化し、さらに、層間絶縁膜のエッチバックを行うことでゲート電極のpoly−Si膜4を露出させる。
【0065】
次に、図6(i)に示すように、poly−Si膜4の上方に、ゲート電極のpoly−Si膜4とのシリサイドを形成させるNi膜12を堆積する。この工程でのNi膜厚は、poly−SiとNiが十分反応してシリサイド化した時に、ゲート絶縁膜3に接している側の組成がNiSiとなるような膜厚を設定する。具体的には、poly−Si膜4の膜厚TSiと、Ni膜12の膜厚TNiとが、TNi/TSi=0.28〜0.54の関係をみたすように定める。このような膜厚を制御したNi膜12を成膜する手段としては特段制限されないが、例えば、DCマグネトロンスパッタ法を用いてもよい。
【0066】
その後、620℃より高い温度、例えば650℃で2分の熱処理を行い、poly−SiとNiを十分に反応させて、結晶化NiSi電極を形成する。このシリサイド化においてN型MOSFET領域のpoly−Siゲート電極4中の添加元素(例:P)は図6(j)のように、フルシリサイドゲート電極13/絶縁膜3の界面に偏析する(偏析不純物19)。また、P型MOSFET領域のpoly−Siゲート電極4中の添加元素(例:B)も、図6(j)に示すように、フルシリサイドゲート電極14/絶縁膜3の界面に偏析する(偏析不純物20)。この後、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜12は硫酸過酸化水素水溶液を用いてウェットエッチング除去する。
【0067】
ここで、以上説明した半導体装置製造方法では、シリサイド化する前に、偏析不純物19または20となる不純物をpoly−Si膜4に注入し、シリサイド化と同じ加熱処理により、前記不純物をフルシリサイドゲート電極13、14/絶縁膜3の界面に偏析させた。しかし、poly−Si膜4をシリサイド化した後に、シリサイド化により得られたフルシリサイドゲート電極中に偏析不純物19または20となる不純物を注入し、シリサイド化とは異なる加熱処理により、前記不純物をフルシリサイドゲート電極13、14/絶縁膜3の界面に偏析させてもよい。
【0068】
上述した本実施形態によれば、Hfを含むHigh−kゲート絶縁膜上に、ゲート電極として不純物添加NiSiフルシリサイドゲート電極を適用することにより、ゲート電極の空乏化を回避するだけでなく、これまで困難とされていた同一組成のNiフルシリサイドゲート電極を用いて、nMOS及びpMOS用電極および低閾値および高閾値電圧の実現が可能となる。また、本実施形態の製造方法によれば、ゲート絶縁膜上にpoly−Si電極を形成した後に、再度これを除去する工程がないため、ゲート絶縁膜表面がウェットエチング液や有機溶剤に数度にわたり晒されることがない。このため、信頼性に優れたメタルゲート/ゲート絶縁膜CMOSトランジスタを作製することが可能である。その際、不純物の添加量をイオン注入等これまでに確立された技術で制御可能なため、Vthのバラツキを抑えることができる。
【0069】
ここで、特許文献2には、High−kゲート絶縁膜の上にゲート電極としてNiシリサイドを設け、ゲート絶縁膜とゲート電極との界面にアルミニウムを偏析させた半導体装置が記載されている。具体的には、nチャネルMISトランジスタの界面にアルミニウムを偏析させ、pチャネルMISトランジスタの界面にはアルミニウムを多量に偏析させないような構成となっている。
【0070】
これに対し、本実施形態では、上述の通り、nチャネルMISトランジスタのゲート電極/絶縁膜の界面には、「n型」のドーパントを偏析させるため、アルミニウムを偏析させることはない。そして、pチャネルMISトランジスタのゲート電極/絶縁膜の界面には、「p型」のドーパントを偏析させるため、アルミニウムを偏析させてもよい構成となっている。
【0071】
このように、特許文献2に記載の技術と、本実施形態とは、nチャネルMISトランジスタおよびpチャネルMISトランジスタの前記界面に偏析させる不純物の極性が逆であり、発明の思想が明らかに異なる。よって、特許文献2に記載の技術から本発明を想到することはない。
【0072】
上述の本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有するMISトランジスタであって、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、pチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置を製造することができる。
【0073】
また、上述の本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有するMISトランジスタであって、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、nチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置を製造することができる。
【0074】
また、上述の本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有する相補型電界効果型トランジスタにおいて、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、pチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を含み、且つ、nチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置を製造することができる。
【0075】
また、上述の本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有する相補型電界効果型トランジスタであって、前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、nチャネルトランジスタが形成される第一領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には第一不純物元素が添加されており、pチャネルトランジスタが形成される第二領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には第二不純物元素が添加されており、前記第一領域及び前記第二領域のトランジスタよりも閾値電圧が低く電流駆動能力が高いトランジスタが形成される第三領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には前記第一不純物元素及び前記第二不純物元素を添加されないことを特徴とする半導体装置を製造することができる。
【0076】
以下、本実施形態の半導体装置の実施例およびその効果について具体的に説明する。
<実施例1>
【0077】
まず、本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。本実施例の製造方法は、上述した本実施形態の製造例とほぼ同様である。図5(a)〜(h)、図6(i)〜(j)は第1の実施例に関わるMOSFETの作製工程を示した断面図である。本実施例は、層間絶縁膜形成後にこれを研磨することにより平坦化すると同時に、ゲート電極上部を露出させることが可能なCMP技術を用いてMOSFETを作製した。
【0078】
まず、図5(a)に示す状態を得るため、シリコン基板1の表面領域にSTI技術を用いて素子分離領域2を形成した。続いて、素子分離されたシリコン基板表面にゲート絶縁膜3を形成した。ゲート絶縁膜は、HfSiO(例:膜厚2nm)を用いた。
【0079】
次に、ゲート絶縁膜3上に厚さ80nmのpoly−Si膜4を形成し、このPoly−Si膜4に対しレジストを用いた通常のPRプロセスとイオン注入を組み合わせることにより、nMOSFET領域及びpMOSFET領域におのおの異なる不純物元素をイオン注入した。具体的には、nMOSFET領域にはPを、またpMOSFET領域に対してはBを注入した。各々の注入エネルギー及びドーズ量は、P注入の場合5KeV及び5×1015cm−2、B注入の場合2KeV及び6×1015cm−2とした。これにより、図5(a)に示す状態が得られた。
【0080】
その後、図5(b)に示すように、厚さ150nmのシリコン酸化膜からなる積層膜5を形成した。この積層膜5を、図5(c)に示すように、リソグラフィー技術およびRIE技術を用いてゲート電極に加工し、引き続いてイオン注入を行い、エクステンション拡散層領域6を、ゲート電極をマスクとして自己整合的に形成した。
【0081】
その後、図5(d)に示す状態を得るため、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜を順次堆積し、その後エッチバックすることによってゲート側壁7を形成した。この状態で再度イオン注入を行い、活性化アニールを経てソース・ドレイン拡散層8を形成した。
【0082】
次に、図5(e)に示すように、厚さ20nmの金属膜9をスパッタにより全面に堆積し、サリサイド技術により、ゲート電極及びゲート側壁膜、STIをマスクとして、ソース・ドレイン拡散層のみに厚さ約40nmのシリサイド層10を形成した(図5(f))。このシリサイド層10はコンタクト抵抗を最も低くすることができるNiモノシリサイド(NiSi)とした。
【0083】
その後、図5(g)に示すように、CVD法によってシリコン酸化膜の層間絶縁膜11を形成した。この層間絶縁膜11をCMP技術によって図5(h)に示すように平坦化し、さらに、層間絶縁膜のエッチバックを行うことでゲート電極のpoly−Si膜4を露出させた。
【0084】
次に図6(i)に示すように、poly−Si膜4の上方に、ゲート電極のpoly−Si膜4とのシリサイドを形成させるNi膜12を堆積した。本実施例では、DCマグネトロンスパッタ法により室温でNiを25nm成膜した。その後、650℃2分の熱処理によりpoly−SiとNiを十分に反応させて結晶化NiSi電極を形成した。このシリサイド化においてN型MOSFET領域のフルシリサイドゲート電極13中の添加元素(P)は図6(j)のように偏析する(偏析不純物19)。また、P型MOSFET領域のフルシリサイドゲート電極14中の添加元素(B)も図6(j)のように偏析する(偏析不純物20)。この後、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜は硫酸過酸化水素水溶液を用いてウェットエッチング除去した。
【0085】
本実施例では、上述のような工程を経ることにより、図6(j)に示すような、N型MOSFET領域とP型MOSFET領域それぞれで、フルシリサイドゲート電極13、14/HfSiO絶縁膜3の界面に異なる添加元素が偏析したフルシリサイドゲート電極をもつN型MOSFET及びP型MOSFETを形成した。このようにして作製したMOSFETにおいてフルシリサイドゲート電極13、14の実効仕事関数は、N型MOSFETで4.4eV、P型MOSFETで4.7eVであった。その結果、N型及びP型MOSFETの閾値電圧は各々+0.5V及び−0.5Vと低消費電力用トランジスタに適した値となった。
【0086】
なお、pMOS用フルシリサイドゲート電極14にB以外のp型ドーパント不純物(Al、In、Ga、Tlなど)を添加した場合、及びnMOS用フルシリサイドゲート電極13にP以外のn型ドーパント不純物(N、As、Sb、Biなど)を添加した場合であっても同じ効果が得られた。
【0087】
また、本実施例では、上述のシリサイド化により生成されたのがNiSiであるので、電極起因の応力もほとんど発生せず、MOSFETの高信頼性化を実現できた。
【0088】
また、CMOSデバイスを作製する場合、工程の簡便化によるコスト低減のため一回のシリサイド化でnMOS及びpMOSトランジスタのフルシリサイドゲート電極13、14を形成できることが好ましいが、本実施例によれば、不純物を添加した結晶化NiSiをゲート電極に用いることでこれが実現された。
【0089】
以上より本実施例で示した実効的にNiSiの組成を持つ結晶化したNiフルシリサイドゲート電極に上記の不純物を添加したゲート電極とHfSiOゲート絶縁膜を組み合わせることで優れたトランジスタ特性を得ることができた。
<実施例2>
【0090】
本実施例に関わるMOSFETは、超薄膜SOI基板上に作製されるUTBデバイスであり、第一領域100上に作製されるpMOSFETと、第二領域200上に作製されるnMOSFETと、第三領域300上に作製されるnMOSFET(もしくはpMOSFET)とからなる。
【0091】
まず、本実施例の半導体装置の製造方法について図7(A)〜(C)を用いて説明する。図7A〜7Cに示す(a)〜(h)の各図は、本発明の第2の実施例に関わるMOSFETの作製工程を示した断面図である。(a)〜(h)の各図における左端の図が第一領域100を示し、中央の図が第二領域200を示し、右端の図が第三領域300を示す。本実施例でも、層間絶縁膜形成後にこれを研磨することにより平坦化すると同時に、ゲート電極上部を露出させることが可能なCMP技術を用いてMOSFETを作製した。
【0092】
まず、図7A(a)に示す状態を得るため、第一領域100、第二領域200、及び第三領域300の超薄膜SOI基板1000(図中にBOX層を図示せずSOI層のみ図示。SOI層はノンドープ:基板中不純物濃度は、第一領域100、第二領域200、及び第三領域300いずれも、1×1016cm−3以下)の表面領域にSTI技術を用いて素子分離領域2を形成した。続いて、SOI層表面上にゲート絶縁膜3を形成した。ゲート絶縁膜3には、HfSiONを用いた。その後、ゲート絶縁膜3上に厚さ80nm程度のpoly−Si膜4を形成した。
【0093】
次に、図7A(b)に示す状態を得るため、poly−Si膜4上に厚さ150nmのシリコン酸化膜5を形成した。このpoly−Si膜4と150nmのシリコン酸化膜5からなる積層膜を、リソグラフィー技術およびRIE技術を用いてゲート電極に加工し、引き続いてイオン注入を行い、第一領域100、第二領域200、及び第三領域300のSOI層表面上に、おのおのエクステンション拡散層領域107、207、および307を、ゲート電極をマスクとして自己整合的に形成した。これにより、図7(A)(b)に示す状態が得られた。
【0094】
次に、図7A(c)に示す状態を得るため、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜を順次堆積し、その後エッチバックすることによってゲート側壁7を形成した。この状態で再度イオン注入を行い、活性化アニールを経て、第一領域100、第二領域200、及び第三領域300のSOI層表面上に、おのおのソース・ドレイン拡散層109、209、および309を形成した。
【0095】
次に、図7B(d)に示す状態を得るため、厚さ20nmの金属膜をスパッタにより全面に堆積し、サリサイド技術により、ゲート電極及びゲート側壁膜、STIをマスクとして、ソース・ドレイン拡散層のみに厚さ約40nmのシリサイド層10を形成した。このシリサイド層10はコンタクト抵抗を最も低くすることができるNiモノシリサイド(NiSi)とした。
【0096】
次に、図7B(e)に示す状態を得るため、CVD法によってシリコン酸化膜の層間絶縁膜11を形成した。この層間絶縁膜11をCMP技術によって図7B(f)に示すように平坦化し、さらに、層間絶縁膜のエッチバックを行うことでゲート電極のpoly−Si膜4を露出させた。
【0097】
次に、図7B(f)に示す状態の後、図示しないが、図6(i)に示すNi膜12と同様に、Ni膜を堆積した。この工程でのNi膜厚は、poly−Si膜4とNiが十分反応してシリサイド化した時に、poly−Si膜4のゲート絶縁膜3に接している側の組成がNiSiとなるような膜厚を設定する。本実施例では、DCマグネトロンスパッタ法により室温でNiを25nm成膜した。その後、650℃2分の熱処理によりpoly−SiとNiを十分に反応させてフルシリサイド(結晶化NiSi)ゲート電極120を形成し、熱処理においてシリサイド化反応しなかった余剰のNi膜は硫酸過酸化水素水溶液を用いてウェットエッチング除去した。
【0098】
次に、図7C(g)に示すように、第一領域100及び第二領域200上のフルシリサイドゲート電極120に対して、レジストを用いた通常のPRプロセスとイオン注入を組み合わせることにより、おのおの異なる不純物元素をイオン注入した。具体的には、第一領域100にはBを、第二領域200にはAsを注入した。各々の注入エネルギー及びドーズ量は、B注入の場合2KeV及び6×1015cm−2、As注入の場合5KeV及び5×1015cm−2とした。
【0099】
このイオン注入後、500℃30分程度のアニールを行うことによって、第一領域100の、イオン注入されたフルシリサイドゲート電極112中の添加元素(B)は図7C(h)のようにフルシリサイドゲート電極112/絶縁膜3界面に偏析した(偏析不純物113)。また、第二領域200の、イオン注入されたフルシリサイドゲート電極212の添加元素(As)も図7C(h)のようにフルシリサイドゲート電極212/絶縁膜3界面に偏析した(偏析不純物213)。一方、第三領域300のフルシリサイドゲート電極120は、ドーパントを添加されていないノンドープフルシリサイドゲート電極312であるため、フルシリサイドゲート電極312/絶縁膜3界面にはドーパントは偏析しない。その後、通常の配線工程を行った。
【0100】
以上のような工程を経ることにより、図2に示すような第一領域100、第二領域200、及び第三領域300に応じて電極112、212、312/絶縁膜3界面に異なる添加元素が偏析したフルシリサイドゲート電極112、212または添加元素が偏析しないフルシリサイドゲート電極312をもつMOSFETを形成した。このようにして作製したデバイスにおいては、第一領域100及び第二領域200に作製されたフルシリサイドゲート電極112、212の実効仕事関数が、各々4.7eV及び4.4eVだった。これは、ノンドープチャネルの低消費電力用N及びPMOSトランジスタに適したものとなっている。また、第三領域300に作製されたフルシリサイドゲート電極312の実効仕事関数は4.5eVだった。これは、ノンドープチャネルの高性能トランジスタに適したものとなっている。
【0101】
このように本実施例の構成を用いると、閾値電圧を基板中の不純物濃度ではなく電極の実効仕事関数で決定できるため、基板中の不純物濃度を低く保ちながら所望の閾値電圧が得られた。その結果、基板不純物の高濃度化による閾値電圧のばらつきや移動度の低下を抑制することができる。そのため本実施例の場合においても優れたトランジスタ特性を得ることができた。
【0102】
また、本実施例による作製方法によれば、ゲート絶縁膜上にpoly−Si電極を形成した後に、再度これを除去する工程がないために、ゲート絶縁膜表面がウェットエチング液や有機溶剤に数度にわたり晒されることがない。このため、信頼性に優れたメタルゲート/ゲート絶縁膜CMOSトランジスタを作製することが可能である。
【0103】
また、一般に、ドープされたpoly−Siゲート電極をエッチングするとドーパントの種類によってエッチング速度が違うためゲート寸法が異なったり、ゲート端部のラフネスがノンドープの場合に比べて大きくなり特性ばらつきを引き起こす。しかし、本実施例の作製方法によれば、不純物添加をPR工程及びイオン注入工程によって簡便に行うことができるため、このような不都合を回避し、簡便に所望のデバイスを得ることができた。さらに、本実施例の作製方法によれば、ゲートpoly−Siのエッチング時にはゲートpoly−Siをノンドープにしておけるため、上記のドーピングによるゲート寸法・形状に関わる問題を回避できる。
【0104】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、材料及び構造を選択して実施することが可能である。
【0105】
例えば、閾値電圧の制御範囲を広くしたい場合には、図8に示すようにゲート電極13、14と接する部分に、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、もしくはシリコン窒化膜などのギャップ膜22を挿入すると良い。このような構成をとることにより、実効仕事関数の不純物偏析による変化範囲を大きくすることができ、閾値電圧の制御範囲を広くすることができることを確認した。
【符号の説明】
【0106】
1・・・・・シリコン基板
2・・・・・素子分離領域
3・・・・・ゲート絶縁膜
4・・・・・poly−Si膜
5・・・・・シリコン酸化膜
6・・・・・エクステンション拡散層領域
7・・・・・ゲート側壁
8・・・・・ソース・ドレイン拡散層
9・・・・・金属膜
10・・・・シリサイド層
11、17・層間絶縁膜
12・・・・第1金属膜
13・・・・N型フルシリサイドゲート電極
14・・・・P型フルシリサイドゲート電極
15、16・シリコン窒化膜
19・・・・NMOSFET領域の電極/絶縁膜界面に偏析した添加元素
20・・・・PMOSFET領域の電極/絶縁膜界面に偏析した添加元素
21・・・・HfSiONを最表面に持つゲート絶縁膜
22・・・・SiOもしくはSiONもしくはSiNキャップ膜
100・・・第一領域
200・・・第二領域
300・・・第三領域
102・・・第一領域電極への不純物注入
202・・・第二領域電極への不純物注入
107・・・第一領域のエクステンション拡散層領域
207・・・第二領域のエクステンション拡散層領域
307・・・第三領域のエクステンション拡散層領域
109・・・第一領域のソース・ドレイン拡散層
209・・・第二領域のソース・ドレイン拡散層
309・・・第三領域のソース・ドレイン拡散層
112・・・第一領域のP型フルシリサイドゲート電極
212・・・第二領域のN型フルシリサイドゲート電極
312・・・第三領域のノンドープフルシリサイドゲート電極
113・・・第一領域の電極/絶縁膜界面に偏析したP型添加元素
213・・・第二領域の電極/絶縁膜界面に偏析したN型添加元素
120・・・結晶化NiSi電極
1000・・SOI基板(SOI層のみ図示)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有するMISトランジスタであって、
前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、
pチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記pチャネル上の前記ゲート電極中の前記Niシリサイドの結晶相がNiSiであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有するMISトランジスタであって、
前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、
nチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記nチャネル上の前記ゲート電極中の前記Niシリサイドの結晶相がNiSiであることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有する相補型電界効果型トランジスタにおいて、
前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、
pチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を含み、且つ、
nチャネル上の前記ゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面にN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記nチャネルおよび前記pチャネル上の前記ゲート電極中の前記Niシリサイドの結晶相がNiSiであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面に含まれる前記元素の濃度は、前記界面の近傍において、1×1020cm−3以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート絶縁膜がHfSiOまたはHfSiONを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜の前記ゲート電極と接する部分に、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜の中の少なくとも一以上を有することを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にゲート電極を有する相補型電界効果型トランジスタであって、
前記ゲート電極の少なくとも前記ゲート絶縁膜に接する部分は、Ni組成が40%を超えない結晶化したNiシリサイドを主成分とし、
pチャネルトランジスタが形成される第一領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には第一不純物元素が添加されており、
nチャネルトランジスタが形成される第二領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には第二不純物元素が添加されており、
前記第一領域及び前記第二領域のトランジスタよりも閾値電圧が低く電流駆動能力が高いトランジスタが形成される第三領域上のゲート電極に含まれる前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との界面及びその付近には前記第一不純物元素及び前記第二不純物元素を添加されないことを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
前記第一、第二、及び第三領域上のチャネル中の不純物量が同一であることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第一、第二、及び第三領域上のチャネル中の不純物量が1×1016cm−3以下であることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第一不純物元素は、B、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素からなることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第二不純物元素は、N、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素からなることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第一不純物元素及び前記第二不純物元素の濃度が、前記Niシリサイドと前記ゲート絶縁膜との前記界面の近傍において、1×1020cm−3以上であることを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ゲート絶縁膜がHfSiOまたはHfSiONを含むことを特徴とする請求項10から15のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記ゲート絶縁膜の前記ゲート電極と接する部分に、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜の中の少なくとも一以上を有することを特徴とする請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にシリコン(poly−Si)を堆積した後、第一の領域上のシリコン(poly−Si)に対してB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加するとともに、第二の領域上のシリコン(poly−Si)に対してN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を選択的に添加する工程と、
前記シリコン(poly−Si)の上方にNiを成膜後、620℃以上で熱処理することによって、前記シリコン(poly−Si)をシリサイド化する工程と、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記シリコン(poly−Si)の膜厚TSiと、前記シリコン(poly−Si)の上方に成膜されたNiの膜厚TNiとは、TNi/TSi=0.28〜0.54の関係をみたすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第一の領域上のシリコン(poly−Si)は、pチャネル素子上のシリコン(poly−Si)であり、
前記第二の領域上のシリコン(poly−Si)は、nチャネル素子上のシリコン(poly−Si)である請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記第一の領域上のシリコン(poly−Si)に対してB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素を添加する方法、および、前記第二の領域上のシリコン(poly−Si)に対してN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素を添加する方法がイオン注入法であることを特徴とする請求項18または19に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
Hfを含む高誘電率ゲート絶縁膜上にシリコン(poly−Si)を堆積する工程と、
前記シリコン(poly−Si)の上方にNiを成膜後、620℃以上で熱処理することによって、前記シリコン(poly−Si)をシリサイド化する工程と、
第一の領域上のNiシリサイドに対してB、Al、Ga、In、Tlの中の少なくともひとつの元素をレジストマスクとイオン注入法を用いて選択的に添加するとともに、第二の領域上のNiシリサイドに対してN、P、As、Sb、Biの中の少なくともひとつの元素をレジストマスクとイオン注入法を用いて選択的に添加した後、熱処理する工程と、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記シリコン(poly−Si)の膜厚TSiと、前記シリコン(poly−Si)の上方に成膜されたNiの膜厚TNiとは、TNi/TSi=0.28〜0.54の関係をみたすことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−44576(P2011−44576A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191615(P2009−191615)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】