説明

半導体装置の作製方法

【課題】酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化する。
【解決手段】酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程において、少なくとも酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、酸化物半導体膜を高純度化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体は薄膜形成工程において、電子供与体を形成する水素や水分の混入などが生じると、その電気伝導度が変化してしまう。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
このような問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程において、酸化物半導体膜に希ガスイオン(希ガス元素)を注入し、該希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行う。この希ガスイオンの注入工程及び加熱工程によって、水素又は水などの水素を含む不純物(水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう))などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、酸化物半導体膜を高純度化する。
【0009】
なお、本明細書において、酸化物半導体膜から水素又は水などの水素を含む不純物を加熱工程によって排除する処理を脱水化又は脱水素化処理ともいう。
【0010】
脱水化又は脱水素化処理を行う加熱工程において、酸化物半導体膜表面は水素又は水等の放出を妨害するような状態(例えば、水素又は水等を通過させない(ブロックする)膜などを設ける等)とせず、酸化物半導体膜は表面を露出した状態とすることが好ましい。
【0011】
酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水素との間の結合が切断され、後に行われる加熱工程により不純物である水素を酸化物半導体膜から脱離させやすくすることができる。さらに、希ガスイオンの注入によって膜中にボイド(欠陥)が形成されるため、結合が切断された水素は、該ボイドを通じて容易に膜中から脱離することができる。
【0012】
また、水素の脱離は、酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水酸基との間の結合も切断されるため、結合が切断された水素と水酸化物イオンが結合し、水として酸化物半導体膜中から脱離する場合もある。
【0013】
n型不純物である水素を酸化物半導体膜から除去し、不純物が極力含まれないように高純度化した後、十分な酸素を供給することによりI型(真性)の酸化物半導体膜、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。すなわち、水素や水等の不純物を極力除去した後、十分な酸素を供給することにより、高純度化されたI型(真性半導体)又はそれに近づけることができる。そうすることにより、酸化物半導体のフェルミ準位(Ef)を真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。
【0014】
脱水化又は脱水素化処理によって酸化物半導体膜を効果的に高純度化するためには、希ガスイオンを注入する注入工程において、酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下(好ましくは1×1020atoms/cm以上3×1021atoms/cm以下)とする。上記濃度範囲となるように希ガスイオンを酸化物半導体膜中(及び界面)に注入すると、酸化物半導体を構成している元素と水素との間の結合の切断、及び膜中におけるボイド(欠陥)の形成を十分に行えるため、酸化物半導体膜からの水素の脱離を効果的に行うことができる。
【0015】
酸化物半導体膜における希ガス元素の濃度のピークが上記濃度より低いと、希ガスイオンを注入することによる、酸化物半導体を構成している元素と水素との間の結合の切断、及び膜中におけるボイド(欠陥)の形成が不十分となり、酸化物半導体膜の脱水化又は脱水素化処理の効果も十分に得られない。
【0016】
一方、酸化物半導体膜における希ガス元素の濃度のピークが上記濃度より高いと、希ガスイオンの多量の注入によって、形状不良や脆弱化など膜質の劣化や、電気的特性の変動など、酸化物半導体膜に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0017】
従って、上記濃度範囲より低い、又は高い濃度では安定した電気特性を有するトランジスタを作製するために、十分高純度化した酸化物半導体膜を得ることは困難である。
【0018】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、酸化物半導体膜を形成し、少なくとも酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、注入工程において、酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とする半導体装置の作製方法である。
【0019】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、酸化物半導体膜を形成し、少なくとも酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、加熱工程を行った酸化物半導体膜の少なくとも一部と接する絶縁層を形成し、注入工程において、酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とする半導体装置の作製方法である。
【0020】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、酸化物半導体膜を形成し、少なくとも酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、注入工程において、酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とし、加熱工程において、酸化物半導体膜は表面を露出した状態とする半導体装置の作製方法である。
【0021】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、酸化物半導体膜を形成し、少なくとも酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、加熱工程を行った酸化物半導体膜の少なくとも一部と接する絶縁層を形成し、注入工程において、酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とし、加熱工程において、酸化物半導体膜は表面を露出した状態とする半導体装置の作製方法である。
【0022】
上記加熱工程を行った酸化物半導体膜は非晶質であってもよいし、結晶部を有していてもよい。また、上記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜をトランジスタのチャネル形成領域として用いてもよい。
【0023】
注入工程で用いる元素(イオン)は希ガス元素(好ましくはアルゴン、クリプトン、又はキセノンなど)を用い、一種類でも複数の種類を用いてもよい。複数の種類を用いる場合、酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度は、複数の種類の希ガス元素の合計の濃度とする。希ガスイオンの注入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる
【0024】
希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に行う加熱工程の温度は、300℃以上700℃以下、又は基板の歪み点未満とする。該加熱工程は、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下で行えばよい。
【0025】
また、水素や水等の不純物の排除工程(希ガスイオン注入工程及び加熱工程)によって、酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素が同時に脱離して減少してしまうおそれがある。酸化物半導体膜において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在し、該酸素欠損に起因してトランジスタの電気的特性変動を招くドナー準位が生じてしまう。
【0026】
よって、脱水化又は脱水素化処理として希ガスイオン注入工程及び加熱工程を行った酸化物半導体膜に、酸素を供給することが好ましい。酸化物半導体膜へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0027】
例えば、酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含む酸化物絶縁層を酸化物半導体膜と接して設けることによって、該酸化物絶縁層から酸化物半導体膜へ酸素を供給することができる。上記構成において、加熱工程を行った酸化物半導体膜及び酸化物絶縁層を少なくとも一部が接した状態で加熱工程を行うことによって酸化物半導体膜への酸素の供給を行ってもよい。
【0028】
また、脱水化又は脱水素化処理として希ガスイオン注入工程及び加熱工程を行った酸化物半導体膜に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0029】
さらに、好ましくはトランジスタに設けられる酸化物半導体膜は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている膜の状態とするとよい。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。
【0030】
なお、酸化物半導体膜は、成膜時にも酸素が多く含まれるような条件で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0031】
このように、酸化物半導体膜を高純度化した後十分な酸素を供給し、電気的にI型(真性)化した酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程において、酸化物半導体膜に希ガスイオン(希ガス元素)を注入し、該希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行う。この希ガスイオンの注入工程及び加熱工程によって、水素又は水などの水素を含む不純物(水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう))などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、酸化物半導体膜を高純度化することができる。高純度化し、十分に酸素が供給され、電気的にI型(真性)化した酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0033】
よって、本発明の一形態は、安定した電気特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0034】
また、本発明の一形態は、電気特性が良好で信頼性のよいトランジスタを有する半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図2】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図3】半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図4】半導体装置の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置の一形態を説明する図。
【図8】半導体装置の一形態を説明する図。
【図9】半導体装置の一形態を説明する図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】電子機器を示す図。
【図12】実施例における試料のSIMS測定結果を示す図。
【図13】実施例における試料のSIMS測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
【0038】
図1(F)に示すように、トランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを含む。トランジスタ410上には、絶縁層407が積層されている。
【0039】
図1(A)乃至(F)にトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0040】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0041】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0042】
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有する半導体装置を作製するには、可撓性基板上に酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410を直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410を作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410との間に剥離層を設けるとよい。
【0043】
下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極層401との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0044】
ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0045】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料、また透光性を有する導電性材料の窒化物を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0046】
また、ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として、In−Sn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、Sn−O系、Zn−O系の金属酸化物を用いてもよい。ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として特に仕事関数の大きな材料であるインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜(IGZON膜とも呼ぶ)を用いることが好ましい。インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜は、アルゴン及び窒素の混合ガス雰囲気下で成膜することにより得られる。
【0047】
例えば、ゲート電極層401として基板400側から銅膜と、タングステン膜と、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜(IGZON膜)との積層構造、タングステン膜と、窒化タングステン膜と、銅膜と、チタン膜との積層構造などを用いることができる。
【0048】
次いで、ゲート電極層401上にゲート絶縁層402を形成する。ゲート絶縁層402は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、酸化ハフニウム層、又は酸化ガリウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0049】
また、本実施の形態の酸化物半導体は、不純物を除去され、酸化物半導体の主成分以外のキャリア供与体となる不純物が極力含まれないように高純度化することにより真性(I型)化又は実質的に真性(I型)化された酸化物半導体を用いる。
【0050】
このような高純度化された酸化物半導体は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感であるため、酸化物半導体膜とゲート絶縁層との界面は重要である。そのため高純度化した後、十分な酸素を供給された酸化物半導体に接するゲート絶縁層は、高品質化が要求される。
【0051】
例えば、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位密度を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0052】
もちろん、ゲート絶縁層として良質な絶縁層を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理によってゲート絶縁層の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁層であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁層としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであればよい。
【0053】
また、酸化物半導体膜403と接するゲート絶縁層402を、酸素を多く含む状態とすると、酸化物半導体膜403へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0054】
次いで、ゲート絶縁層402上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体膜441を形成する(図1(A)参照。)。
【0055】
その際、ゲート絶縁層402、酸化物半導体膜441に水素、又は水がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体膜441の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極層401が形成された基板400、又はゲート絶縁層402までが形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、絶縁層407の成膜前に、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bまで形成した基板400にも同様に行ってもよい。
【0056】
また、酸化物半導体膜441をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行い、ゲート絶縁層402の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)、水又は有機物を除去することが好ましい。逆スパッタリングとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0057】
酸化物半導体膜441に用いる酸化物半導体としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系酸化物半導体、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にSiOを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜、という意味であり、その化学量論的組成比はとくに問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。
【0058】
また、酸化物半導体膜は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0059】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、原子数比で、In/Zn=0.5〜50、好ましくはIn/Zn=1〜20、さらに好ましくはIn/Zn=1.5〜15とする。Znの原子数比を好ましい前記範囲とすることで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることができる。ここで、化合物の原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0060】
本実施の形態では、酸化物半導体膜441としてIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガスと酸素の混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0061】
酸化物半導体膜をスパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn−O膜を成膜する。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol比]の金属酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0062】
また、金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0063】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0064】
減圧状態に保持された成膜室内に基板400を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板400を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜441に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去されたスパッタリングガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に酸化物半導体膜441を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素、水など水素を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜441に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0065】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量30sccm:酸素流量15sccm)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ごみともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0066】
また、酸化物半導体膜441として、結晶化した部分を有する酸化物半導体膜であるCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductorともいう。)を用いてもよい。
【0067】
CAAC−OSとは、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面(あるいは表面または界面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶を含む酸化物半導体のことである。
【0068】
広義に、CAAC−OSとは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形もしくは六角形、または正三角形もしくは正六角形の原子配列を有し、かつc軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0069】
CAAC−OSは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OSは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0070】
CAACを構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAACを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OSが形成される基板面やCAAC−OSの表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAACを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、膜面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0071】
酸化物半導体膜441をCAAC−OS膜とする際には、基板400を加熱しながら酸化物半導体膜441を形成すればよく、基板400を加熱する温度としては、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とする。なお、酸化物半導体膜441の形成時に、基板を加熱する温度を高くすることで、非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC−OSとすることができる。
【0072】
CAAC−OS膜とすることで、可視光や紫外光の照射によるトランジスタの電気的特性変化をより抑制し、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0073】
なお、酸化物半導体膜441は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0074】
また、ゲート絶縁層402と酸化物半導体膜441とを大気に解放せずに連続的に形成することが好ましい。ゲート絶縁層402と酸化物半導体膜441とを大気に曝露せずに連続して形成すると、ゲート絶縁層402表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0075】
次に、酸化物半導体膜441に、希ガスイオン421を注入する(図1(B)参照。)。
【0076】
希ガスイオン421の注入方法としては、酸化物半導体膜441中、又は酸化物半導体膜441中及び界面に、すなわち少なくとも酸化物半導体膜441中に希ガスイオン421を注入可能な方法を用いる。開示する発明に係る半導体装置の作製方法は、希ガスイオンを酸化物半導体膜441中(及び界面)に注入することで、膜中にボイドを形成し、かつ酸化物半導体膜441を構成している金属と水素との結合を切断することによって酸化物半導体膜441からの水素の脱離を容易にするものである。従って、酸化物半導体膜441の表面(界面)のみに希ガスイオンを曝露するプラズマ処理などは、希ガスイオンが表面及び該近傍にしか導入されず膜中(膜内部)にはボイドができないため、方法として不向きである。
【0077】
開示する発明に係る半導体装置の作製方法で用いることのできる希ガスイオン421の注入方法としては、例えば、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いることができる。イオン注入法は、ソースガスをプラズマ化し、このプラズマに含まれるイオン種を引き出し、質量分離して、所定の質量を有するイオン種を加速して、イオンビームとして、被処理物に注入する方法である。また、イオンドーピング法は、ソースガスをプラズマ化し、所定の電界の作用によりプラズマからイオン種を引き出し、引き出したイオン種を質量分離せずに加速して、イオンビームとして被処理物に注入する方法である。質量分離を伴うイオン注入法を用いて希ガスイオンの注入を行うことで、金属元素等の不純物が希ガスイオンと共に酸化物半導体膜に添加されてしまうのを防ぐことができる。また、イオンドーピング法はイオン注入法に比べてイオンビームの照射される面積を大きくすることができるので、イオンドーピング法を用いて希ガスイオンの注入を行うことで、タクトタイムを短縮することができる。
【0078】
また、開示する発明に係る半導体装置の作製方法で用いることのできる希ガスイオン421の注入方法として、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法を用いてもよい。プラズマイマージョンイオンインプランテーション法は、酸化物半導体膜441が凹凸のある形状であっても希ガスイオンの注入を効率よく行うことができる。例えば、酸化物半導体膜441の形成領域が凹部又は凸部であり、酸化物半導体膜441を凹部又は凸部を覆って立体的に成膜する場合などに好ましい。
【0079】
図1(B)においては希ガスイオン421を注入する注入工程は、酸化物半導体膜441の表面が露出した状態の例を示す。希ガスイオン421を注入する注入工程は、酸化物半導体膜441上に他の膜(例えば絶縁膜)を積層し、該積層された膜を通過して、希ガスイオン421を酸化物半導体膜441に注入してもよい。酸化物半導体膜441への希ガスイオン421を、積層された膜を通過して行うと、希ガスイオンの注入深さ(注入領域)がより制御しやすくなるため、酸化物半導体膜441中へ希ガスイオン421を効率よく注入できるという利点がある。
【0080】
希ガスイオン421の注入深さは、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また注入する膜の膜厚を適宜設定して制御すればよい。例えば、希ガスを用いて、イオン注入法で希ガスイオンの注入を行う場合、ドーズ量を1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下とすればよい。
【0081】
以上のように、希ガスイオン421を酸化物半導体膜441に注入し、希ガス元素が注入された酸化物半導体膜442を形成する(図1(B)参照。)。
【0082】
希ガス元素が注入された酸化物半導体膜442における注入された希ガス元素の濃度のピークは1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下(好ましくは1×1020atoms/cm以上3×1021atoms/cm以下)とすることが好ましい。
【0083】
注入工程で用いる希ガス元素(好ましくはアルゴン、クリプトン、又はキセノンなど)は、一種類でも複数の種類を用いてもよい。複数の種類を用いる場合、注入された希ガス元素の濃度は、注入された複数の種類の希ガス元素の合計の濃度とする。
【0084】
なお、上記希ガス元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により分析することによって求めることができる測定値である。
【0085】
次に希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜442に加熱工程を行う。
【0086】
加熱工程の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱工程を行う。
【0087】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0088】
例えば、加熱工程として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を入れ、数分間加熱した後、基板を不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0089】
加熱工程は、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下で行えばよい。また、上記窒素、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0090】
酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水素との間の結合が切断され、後に行われる加熱工程により不純物である水素を酸化物半導体膜から脱離させやすくすることができる。さらに、希ガスイオンの注入によって膜中にボイド(欠陥)が形成されるため、結合が切断された水素は、該ボイドを通じて容易に膜中から脱離することができる。
【0091】
また、水素の脱離は、酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水酸基との間の結合も切断されるため、結合が切断された水素と水酸基が結合し、水として酸化物半導体膜中から脱離する場合もある。
【0092】
希ガスイオンの注入工程及び加熱工程によって、効率よく酸化物半導体膜441の脱水化または脱水素化を行うことができ、水素、又は水などの不純物が排除され、高純度化された酸化物半導体膜443を形成することができる(図1(C)参照。)。
【0093】
n型不純物である水素を酸化物半導体膜から除去し、不純物が極力含まれないように高純度化した後、十分な酸素を供給することによりI型(真性)の酸化物半導体膜、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。
【0094】
脱水化又は脱水素化処理を行う加熱工程において、酸化物半導体膜表面は水素又は水等の放出を妨害するような状態(例えば、水素又は水等を通過させない(ブロックする)膜などを設ける等)とせず、酸化物半導体膜は表面を露出した状態とすることが好ましい。注入工程において酸化物半導体膜上に他の膜を形成した場合、酸化物半導体膜上から該膜を除去し、酸化物半導体膜表面を露出した状態とすればよい。
【0095】
酸化物半導体膜上に形成された膜が、水素又は水等を通過させない(ブロックする)膜でなく、水等の放出を妨害しない場合は、酸化物半導体膜上に他の膜が形成された状態で加熱工程を行ってもよい。
【0096】
注入工程は、図1(B)のように膜状の酸化物半導体膜に行ってもよいし、フォトリソグラフィ工程により島状に加工した後の酸化物半導体膜に行ってもよい。また、加熱工程は、図1(C)のように膜状の酸化物半導体膜に行ってもよいし、フォトリソグラフィ工程により島状に加工した後の酸化物半導体膜に行ってもよい。本実施の形態のように、加熱工程を、酸化物半導体膜442が島状に加工される前に行うと、ゲート絶縁層402に含まれる酸素が加熱工程によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0097】
また、酸化物半導体膜441をCAAC−OS膜とした場合、希ガスイオン注入工程によって酸化物半導体膜441中に含まれる結晶構造が乱されて非晶質化することがあるが、希ガスイオン注入工程後に結晶化する条件(雰囲気、加熱温度)で加熱工程を行うことによって、再度結晶化することが可能である。
【0098】
次いで、酸化物半導体膜443を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体膜403に加工する(図1(D)参照。)。また、島状の酸化物半導体膜403を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0099】
なお、開示する発明の一形態において、酸化物半導体膜は、本実施の形態で示すように島状に加工してもよいし、形状を加工せず、膜状のままでもよい。
【0100】
なお、ここでの酸化物半導体膜443のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、酸化物半導体膜443のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、酸化物半導体材料によって適宜選択し、例えば燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、又はアンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2)などを用いることができる。また、ITO−07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0101】
次いで、ゲート絶縁層402、及び酸化物半導体膜403上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0102】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する(図1(E)参照。)。
【0103】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるとよい。酸化物半導体膜403上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化できる。
【0104】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0105】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体膜403がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体膜403を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体膜403は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体膜となることもある。
【0106】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用い、酸化物半導体膜403にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いたので、エッチング液としてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0107】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している酸化物半導体膜403の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。プラズマ処理を行った場合、大気に触れることなく、酸化物半導体膜403の一部に接する絶縁層407を形成する。
【0108】
絶縁層407は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタリング法など、絶縁層407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁層407に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体膜への侵入、又は水素による酸化物半導体膜中の酸素の引き抜きが生じ酸化物半導体膜のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁層407はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0109】
絶縁層407としては、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜の単層又は積層を用いることができる。
【0110】
脱水化又は脱水素化処理として希ガスイオン注入工程及び加熱工程を行った酸化物半導体膜403に、酸素を供給することが好ましい。酸化物半導体膜403へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0111】
本実施の形態では、酸化物半導体膜403への酸素の供給を、絶縁層407を供給源として行うので、絶縁層407は酸素を含む酸化物絶縁膜(例えば酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜)を用いる例を示す。絶縁層407を酸素の供給源とする場合、絶縁層407は酸素を多く(過剰)含む膜(好ましくは結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている膜)とすると酸素の供給源として好適に機能させることができる。
【0112】
本実施の形態では、絶縁層407として膜厚300nmの酸化シリコン膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化シリコン膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化シリコンターゲットまたはシリコンターゲットを用いることができる。例えば、シリコンターゲットを用いて、酸素を含む雰囲気下でスパッタリング法により酸化シリコン膜を形成することができる。
【0113】
酸化物半導体膜の成膜時と同様に、絶縁層407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁層407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁層407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0114】
絶縁層407を、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0115】
次に酸化物半導体膜に、一部(チャネル形成領域)が絶縁層407と接した状態で加熱工程を行う。
【0116】
加熱工程の温度は、250℃以上700℃以下、または400℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下250℃において1時間の加熱工程を行う。
【0117】
この加熱工程は脱水化又は脱水素化処理を行う加熱工程と同様の加熱方法及び加熱装置を用いることができる。
【0118】
加熱工程は、減圧下、又は窒素、酸素、超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、若しくは希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥エア、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0119】
また、酸化物半導体膜403と酸素を含む絶縁層407とを接した状態で加熱工程を行うため、不純物の排除工程によって同時に減少してしまう酸化物半導体膜403を構成する主成分材料の一つである酸素を、酸素を含む絶縁層407より酸化物半導体膜403へ供給することができる。
【0120】
酸化物半導体膜403中にはキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満である。
【0121】
以上の工程で高純度化し、十分な酸素が供給され、電気的にI型(真性)化された酸化物半導体膜403を含むトランジスタ410が形成される(図1(F)参照。)。トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0122】
絶縁層407上にさらに絶縁層を積層してもよい。特に絶縁層407として酸化物絶縁層を用いた場合、絶縁層407上にさらに水分や水素などの不純物が酸化物半導体膜403に再混入しないように、これらが外部から侵入することをブロックする保護絶縁層を形成することが好ましい。保護絶縁層としては、無機絶縁膜を用い、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いればよい。例えば、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い酸化アルミニウム膜を用いることができる。
【0123】
絶縁層407の形成後の加熱工程は、絶縁層407上に保護絶縁層を積層した後で行ってもよい。
【0124】
保護絶縁層の形成後、さらに加熱工程を行ってもよい。例えば、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱工程を行ってもよい。この加熱工程は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。
【0125】
また、トランジスタ410上にトランジスタ410起因の表面凹凸を低減するために平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0126】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化された酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて10zA/μm未満、85℃にて100zA/μm未満レベルにまで低くすることができる。
【0127】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0128】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置の他の一形態を図2を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0129】
図2(A)乃至(F)に示すトランジスタ440は、トップゲート構造のトランジスタの例である。
【0130】
図2(F)に示すように、トランジスタ440は、絶縁層436が設けられた絶縁表面を有する基板400上に、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、ゲート絶縁層402、ゲート電極層401を含む。
【0131】
図2(A)乃至(F)にトランジスタ440の作製方法の一例を示す。
【0132】
まず、絶縁表面を有する基板400上に絶縁層436を形成する。絶縁層436は絶縁層407と同様な材料及び方法で形成すればよい。
【0133】
絶縁層436としては、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜の単層又は積層を用いることができる。
【0134】
実施の形態1のように、酸化物半導体膜403と接する絶縁層436(絶縁層436が積層構造であった場合酸化物半導体膜403と接する膜)を、酸素を多く含む状態とすると、酸化物半導体膜403へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0135】
本実施の形態では、絶縁層436として酸素を含む絶縁層とし、膜厚200nmの酸化シリコン膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。
【0136】
次いで、絶縁層436上に、酸化物半導体膜441を形成する(図2(A)参照)。本実施の形態では、In−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によりIn−Ga−Zn−O系酸化物膜を成膜する。なお、成膜時に、得られる酸化物半導体膜441が酸素を多く(過剰)に含む膜となる条件で成膜すると好ましい。
【0137】
また、絶縁層436と酸化物半導体膜441とを大気に解放せずに連続的に形成することが好ましい。絶縁層436と酸化物半導体膜441とを大気に曝露せずに連続して形成すると、絶縁層436表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0138】
次に、酸化物半導体膜441に希ガスイオン421を注入し、希ガス元素が注入された酸化物半導体膜442を形成する(図2(B)参照。)。
【0139】
希ガスイオン421の注入方法としては、酸化物半導体膜441中、又は酸化物半導体膜441中及び界面に、すなわち少なくとも酸化物半導体膜441中に希ガスイオン421を注入可能な方法を用いる。開示する発明に係る半導体装置の作製方法は、希ガスイオンを酸化物半導体膜441中(及び界面)に注入することで、膜中にボイドを形成し、かつ酸化物半導体膜441を構成している金属と水素との結合を切断することによって酸化物半導体膜441からの水素の脱離を容易にするものである。
【0140】
開示する発明に係る半導体装置の作製方法で用いることのできる希ガスイオン421の注入方法としては、例えば、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いることができる。また、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法を用いてもよい。
【0141】
図2(B)においては希ガスイオン421を注入する注入工程は、酸化物半導体膜441の表面が露出した状態の例を示す。
【0142】
希ガスイオン421の注入深さは、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また注入する膜の膜厚を適宜設定して制御すればよい。例えば、希ガスを用いて、イオン注入法で希ガスイオンの注入を行う場合、ドーズ量を1×1014ions/cm以上5×1016ions/cm以下とすればよい。
【0143】
希ガス元素が注入された酸化物半導体膜442における注入された希ガス元素の濃度のピークは1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下(好ましくは1×1020atoms/cm以上3×1021atoms/cm以下)とすることが好ましい。
【0144】
注入工程で用いる希ガス元素(好ましくはアルゴン、クリプトン、又はキセノンなど)は、一種類でも複数の種類を用いてもよい。複数の種類を用いる場合、注入された希ガス元素の濃度は、注入された複数の種類の希ガス元素の合計の濃度とする。
【0145】
次に希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜442に加熱工程を行う。
【0146】
加熱工程の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱工程を行う。
【0147】
加熱工程は、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下で行えばよい。また、上記窒素、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0148】
酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水素との間の結合が切断され、後に行われる加熱工程により不純物である水素を酸化物半導体膜から脱離させやすくすることができる。さらに、希ガスイオンの注入によって膜中にボイド(欠陥)が形成されるため、結合が切断された水素は、該ボイドを通じて容易に膜中から脱離することができる。
【0149】
また、水素の脱離は、酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水酸基との間の結合も切断されるため、結合が切断された水素と水酸基が結合し、水として酸化物半導体膜中から脱離する場合もある。
【0150】
希ガスイオンの注入工程及び加熱工程によって、効率よく酸化物半導体膜の脱水化または脱水素化を行うことができ、水素、又は水などの不純物が排除され、高純度化された酸化物半導体膜443を形成することができる(図2(C)参照。)。
【0151】
n型不純物である水素を酸化物半導体膜から除去し、不純物が極力含まれないように高純度化した後、十分な酸素を供給することによりI型(真性)の酸化物半導体膜、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。
【0152】
脱水化又は脱水素化処理を行う加熱工程において、酸化物半導体膜表面は水素又は水等の放出を妨害するような状態(例えば、水素又は水等を通過させない(ブロックする)膜などを設ける等)とせず、酸化物半導体膜は表面を露出した状態とすることが好ましい。注入工程において酸化物半導体膜上に他の膜を形成した場合、酸化物半導体膜上から該膜を除去し、酸化物半導体膜表面を露出した状態とすればよい。
【0153】
酸化物半導体膜上に形成された膜が、水素又は水等を通過させない(ブロックする)膜でなく、水等の放出を妨害しない場合は、酸化物半導体膜上に他の膜が形成された状態で加熱工程を行ってもよい。
【0154】
注入工程及び加熱工程は、図2(B)、(C)のように膜状の酸化物半導体膜に行ってもよいし、フォトリソグラフィ工程により島状に加工した酸化物半導体膜に行ってもよい。本実施の形態のように、脱水化又は脱水素化のための加熱工程を、酸化物半導体膜442が島状に加工される前に行うと、絶縁層436に含まれる酸素が加熱工程によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0155】
次いで、酸化物半導体膜443を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体膜403に加工する(図2(D)参照。)。
【0156】
絶縁層436及び酸化物半導体膜403上にソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成し、絶縁層436、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405b上にゲート絶縁層402を形成する(図2(E)参照)。ゲート絶縁層402としてはスパッタリング法又はプラズマCVD法により成膜される絶縁層を用いる。本実施の形態では、ゲート絶縁層402として、プラズマCVD法により成膜される酸化窒化シリコン膜を用いる。ゲート絶縁層402を酸化物半導体膜403への酸素の供給源としてもよく、この場合、酸素を多く含む絶縁膜をゲート絶縁層402として形成する。
【0157】
脱水化又は脱水素化処理として希ガスイオン注入工程及び加熱工程を行った酸化物半導体膜403に、酸素を供給することが好ましい。酸化物半導体膜403へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0158】
本実施の形態では、酸化物半導体膜403への酸素の供給を、絶縁層436を供給源として行う。
【0159】
本実施の形態では、酸化物半導体膜403と絶縁層436とが接した状態で加熱工程を行う。
【0160】
加熱工程の温度は、250℃以上700℃以下、または400℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜に対して窒素雰囲気下250℃において1時間の加熱工程を行う。
【0161】
酸化物半導体膜403と酸素を含む絶縁層436とを接した状態で加熱工程を行うため、不純物の排除工程によって同時に減少してしまう酸化物半導体膜403を構成する主成分材料の一つである酸素を、酸素を含む絶縁層436より酸化物半導体膜403へ供給することができる。
【0162】
高純度化された酸化物半導体膜403中にはキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満である。
【0163】
次に、酸化物半導体膜403と重なるゲート絶縁層402上にゲート電極層401を形成する(図2(F)参照)。
【0164】
なお、酸化物半導体膜403に酸素を供給するための加熱工程は、ゲート電極層401を形成した後で行ってもよい。
【0165】
以上の工程で高純度化し、十分な酸素が供給され、電気的にI型(真性)化された酸化物半導体膜403を含むトランジスタ440が形成される(図2(F)参照。)。トランジスタ440は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0166】
また、トランジスタ440上に絶縁層を設けてもよい。絶縁層としては、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜の単層又は積層を用いることができる。
【0167】
また、トランジスタ440上にトランジスタ440起因の表面凹凸を低減するために平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0168】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化された酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ440は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて10zA/μm未満、85℃にて100zA/μm未満レベルにまで低くすることができる。
【0169】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0170】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0171】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の他の一形態を、図4を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例としてトランジスタを示す。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0172】
トランジスタの構造は特に限定されず、例えばトップゲート構造、又はボトムゲート構造のスタガ型及びプレーナ型などを用いることができる。また、トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、二つ形成されるダブルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。また、チャネル領域の上下にゲート絶縁層を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型でもよい。
【0173】
なお、図4(A)乃至(C)に示すトランジスタ430、420、450の断面構造の一例を以下に示す。図4(A)乃至(C)に示すトランジスタ420、430、450も実施の形態1又は実施の形態2で示したトランジスタ410、440と同様に、水素、水など水素を含む不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタである。よって、トランジスタ430、420、450は電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0174】
図4(A)に示すトランジスタ430はボトムゲート型のトランジスタであり、絶縁表面を有する基板である基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及び酸化物半導体膜403を含む。また、トランジスタ430を覆い、酸化物半導体膜403に接する絶縁層407が設けられている。
【0175】
トランジスタ430においては、ゲート絶縁層402は基板400及びゲート電極層401上に接して設けられ、ゲート絶縁層402上にソース電極層405a、ドレイン電極層405bが接して設けられている。そして、ゲート絶縁層402、及びソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に酸化物半導体膜403が設けられている。
【0176】
図4(B)に示すトランジスタ420は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型トランジスタともいう。
【0177】
トランジスタ420は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402、酸化物半導体膜403、酸化物半導体膜403のチャネル形成領域を覆うチャネル保護層として機能する絶縁層427、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405bを含む。また、トランジスタ420を覆い、絶縁層409が形成されている。
【0178】
絶縁層427、絶縁層409は絶縁層407と同様な材料及び方法で形成すればよく、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜の単層又は積層を用いることができる。
【0179】
実施の形態1のように、酸化物半導体膜403と接する絶縁層427(絶縁層427が積層構造であった場合酸化物半導体膜403と接する膜)を、酸素を多く含む状態とすると、酸化物半導体膜403へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0180】
図4(C)に示すトランジスタ450は、トップゲート構造のトランジスタの一つである。トランジスタ450は、絶縁表面を有する基板400上に、絶縁層436、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、酸化物半導体膜403、ゲート絶縁層402、及びゲート電極層401を含む。
【0181】
ボトムゲート構造のトランジスタ420、430において、下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極層401の間に設けてもよい。下地膜は、基板からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0182】
酸化物半導体膜403、基板400、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405bは実施の形態1と同様な材料及び方法で形成することができる。
【0183】
また、トランジスタ上にトランジスタ起因の表面凹凸を低減するために平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0184】
トランジスタ420、430、及び450において、酸化物半導体膜403は、希ガスイオンを注入し、その後に加熱工程を行うことによって、水素又は水などの水素を含む不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、高純度化された酸化物半導体膜である。
【0185】
酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水素との間の結合が切断され、後に行われる加熱工程により不純物である水素を酸化物半導体膜から脱離させやすくすることができる。さらに、希ガスイオンの注入によって膜中にボイド(欠陥)が形成されるため、結合が切断された水素は、該ボイドを通じて容易に膜中から脱離することができる。
【0186】
また、水素の脱離は、酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水酸基との間の結合も切断されるため、結合が切断された水素と水酸基が結合し、水として酸化物半導体膜中から脱離する場合もある。
【0187】
高純度化し、十分に酸素を供給させて電気的にI型(真性)化した酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0188】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化された酸化物半導体膜403を用いたトランジスタ410は、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて10zA/μm未満、85℃にて100zA/μm未満レベルにまで低くすることができる。
【0189】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0190】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置の作製方法の他の一形態を説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0191】
なお、本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ410を例として説明するが、実施の形態2及び実施の形態3のいずれかで示したトランジスタ420、430、440、450にも適用できる。
【0192】
本実施の形態では、開示する発明に係るトランジスタの作製方法において、脱水化又は脱水素化処理として希ガスイオン注入工程及び加熱工程を行った酸化物半導体膜に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給する例を示す。
【0193】
酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0194】
図3(A)は、図1(C)の工程後、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜443に酸素431を導入し、酸化物半導体膜443に酸素431を供給する例である。供給された酸素431によって、酸化物半導体膜443中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0195】
図3(B)は、図1(D)の工程後、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜443を島状に加工した酸化物半導体膜403に酸素431を導入し、酸化物半導体膜403に酸素431を供給する例である。供給された酸素431によって、酸化物半導体膜403中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0196】
図3(C)は、図1(E)の工程後、酸化物半導体膜403のチャネル形成領域(ソース電極層405a又はドレイン電極層405bに覆われていない露出された領域)に、酸素431を導入し、酸化物半導体膜403のチャネル形成領域に酸素431を供給する例である。供給された酸素431によって、酸化物半導体膜403のチャネル形成領域中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0197】
図3(D)は、図1(F)の工程後、トランジスタ410上に形成された絶縁層407を通過して酸化物半導体膜403のチャネル形成領域に、酸素431を導入し、酸化物半導体膜403のチャネル形成領域に酸素431を供給する例である。供給された酸素431によって、酸化物半導体膜403のチャネル形成領域中に存在する酸素欠損を補填することができる。図3(D)のように絶縁層407を通過して酸素を導入する場合は、酸化物半導体膜403が露出していないのでプラズマ処理ではなく、イオン注入法、イオンドーピング法、又はプラズマイマージョンイオンインプランテーション法を用いる。
【0198】
このように、酸化物半導体膜への酸素の導入は、希ガスイオン注入工程及び加熱工程によって脱水化又は脱水素化処理を行った後であればよく、特に限定されない。また、上記脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜への酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0199】
本実施の形態のように、酸素を直接酸化物半導体膜へ導入する場合は、酸化物半導体膜と接する絶縁層を、必ずしも酸素を多くに含む膜とする必要はない。導入した酸素が再度酸化物半導体膜から脱離しないように、また、水素、水などの水素を含む不純物が酸化物半導体膜へ再度混入しないように、酸素、水素、水などの水素を含む不純物に対して遮断効果(ブロック効果)が高い膜を絶縁層407として設けることが好ましい。例えば、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して遮断効果(ブロック効果)が高い酸化アルミニウム膜などを用いるとよい。
【0200】
もちろん、酸化物半導体膜と接する絶縁層を、酸素を多く含む膜として酸素供給し、さらに酸素を直接酸化物半導体膜に導入して酸素供給する、というように複数の酸素供給方法を行ってもよい。
【0201】
また、酸化物半導体膜へ酸素を導入した後、加熱工程を行うことが好ましい。
【0202】
脱水化又は脱水素化処理として希ガスイオン注入工程及び加熱工程を行った酸化物半導体膜に、酸素を導入して膜中に酸素を供給することによって、酸化物半導体膜を高純度化、及び電気的にI型(真性)化することができる。
【0203】
高純度化し、十分な酸素を供給させて電気的にI型(真性)化した酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0204】
以上のように、安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0205】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0206】
(実施の形態5)
実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0207】
図6(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図6(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0208】
図6(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図6(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図6(B)(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0209】
また図6(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0210】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図6(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図6(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図6(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0211】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0212】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置を含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0213】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0214】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0215】
半導体装置の一形態について、図7乃至図9を用いて説明する。図7乃至図9は、図6(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0216】
図7乃至図9で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0217】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0218】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図7乃至図9では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図7では、トランジスタ4010、4011上には絶縁層4020、絶縁層4024が設けられ、図8及び図9ではさらに、絶縁層4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0219】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1乃至4のいずれかで示したトランジスタを適用することができる。
【0220】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011において、酸化物半導体膜は、希ガスイオンを注入し、加熱工程を行うことによって、水素又は水などの水素を含む不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、高純度化された酸化物半導体膜である。
【0221】
酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水素との間の結合が切断され、後に行われる加熱工程により不純物である水素を酸化物半導体膜から脱離させやすくすることができる。さらに、希ガスイオンの注入によって膜中にボイド(欠陥)が形成されるため、結合が切断された水素は、該ボイドを通じて容易に膜中から脱離することができる。
【0222】
また、水素の脱離は、酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水酸基との間の結合も切断されるため、結合が切断された水素と水酸基が結合し、水として酸化物半導体膜中から脱離する場合もある。
【0223】
従って、高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタ4010及びトランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図7乃至図9で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0224】
また、本実施の形態では、絶縁層上において駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に導電層が設けられている例である。導電層を酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0225】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(薄膜トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0226】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0227】
図7に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図7において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0228】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
【0229】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0230】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相の液晶材料を用いることはより効果的である。
【0231】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0232】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。高純度の酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0233】
本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0234】
また、本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0235】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0236】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0237】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0238】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0239】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0240】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0241】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0242】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0243】
図8に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0244】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0245】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0246】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0247】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0248】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0249】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0250】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0251】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0252】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0253】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0254】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0255】
図9に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図9の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層間に配置し、電極層間に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0256】
トランジスタ4010と接続する第1の電極層4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極層4031との間には黒色領域4615a及び白色領域4615bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ4612を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極層4031が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極層4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0257】
なお、図7乃至図9において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0258】
絶縁層4020及び絶縁層4024はトランジスタの保護膜として機能する。
【0259】
また、絶縁層4020を、酸素を多く含む膜(例えば酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜)とすると、絶縁層4020を酸化物半導体膜への酸素の供給源として用いることができる。
【0260】
絶縁層4020、絶縁層4024としては、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ガリウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜の単層又は積層を用いることができる。
【0261】
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁層4021は、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0262】
絶縁層4020、絶縁層4024、絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0263】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0264】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0265】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0266】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0267】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0268】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0269】
以上のように実施の形態1乃至4のいずれかで示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0270】
(実施の形態6)
実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0271】
図10(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図10(A)はフォトセンサの等価回路であり、図10(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0272】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0273】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図10(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。
【0274】
図10(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640を示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0275】
トランジスタ640上には絶縁層631、保護絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁層633上に設けられ、層間絶縁層633上に形成した電極層641と、層間絶縁層634上に設けられた電極層642との間に、層間絶縁層633側から順に第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cを積層した構造を有している。
【0276】
電極層641は、層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層641を介してゲート電極層645と電気的に接続している。ゲート電極層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0277】
ここでは、第1半導体層606aとしてp型の導電型を有する半導体層と、第2半導体層606bとして高抵抗な半導体層(I型半導体層)、第3半導体層606cとしてn型の導電型を有する半導体層を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0278】
第1半導体層606aはp型半導体層であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体層606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体層606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0279】
第2半導体層606bは、I型半導体層(真性半導体層)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体層606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。第2半導体層606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行っても良い。第2半導体層606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0280】
第3半導体層606cは、n型半導体層であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体層606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体層606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0281】
また、第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0282】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0283】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどの水素化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH、C等の炭化物気体、GeH、GeF等のゲルマニウム化気体、F等を混入させてもよい。
【0284】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体層側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体層側とは逆の導電型を有する半導体層側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体層側を受光面として用いることもできる。
【0285】
絶縁層631、保護絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いて形成することができる。
【0286】
絶縁層631としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁層の単層、又は積層を用いることができる。
【0287】
保護絶縁層632としては、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁層の単層、又は積層を用いることができる。またμ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので好ましい。
【0288】
層間絶縁層633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁層が好ましい。層間絶縁層633、634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0289】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0290】
トランジスタ640として、実施の形態1乃至4で一例を示したトランジスタを用いることができる。
【0291】
トランジスタ640において、酸化物半導体膜は、希ガスイオンを注入し、加熱工程を行うことによって、水素又は水などの水素を含む不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除し、高純度化された酸化物半導体膜である。
【0292】
酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水素との間の結合が切断され、後に行われる加熱工程により不純物である水素を酸化物半導体膜から脱離させやすくすることができる。さらに、希ガスイオンの注入によって膜中にボイド(欠陥)が形成されるため、結合が切断された水素は、該ボイドを通じて容易に膜中から脱離することができる。
【0293】
また、水素の脱離は、酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入することにより、酸化物半導体を構成している元素(例えば金属元素)と水酸基との間の結合も切断されるため、結合が切断された水素と水酸基が結合し、水として酸化物半導体膜中から脱離する場合もある。
【0294】
従って、高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタ640は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0295】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0296】
(実施の形態7)
実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタは、複数のトランジスタを積層する集積回路を有する半導体装置に好適に用いることができる。本実施の形態では、半導体装置の一例として、記憶媒体(メモリ素子)の例を示す。
【0297】
本実施の形態では、単結晶半導体基板に作製された第1のトランジスタであるトランジスタ140と絶縁層を介してトランジスタ140の上方に半導体膜を用いて作製された第2のトランジスタであるトランジスタ162を含む半導体装置を作製する。実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタは、トランジスタ162に好適に用いることができる。
【0298】
積層するトランジスタ140、トランジスタ162の半導体材料、及び構造は、同一でもよいし異なっていてもよい。本実施の形態では、記憶媒体(メモリ素子)の回路に好適な材料及び構造のトランジスタをそれぞれ用いる例である。
【0299】
図5は、半導体装置の構成の一例である。図5(A)には、半導体装置の断面を、図5(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図5(A)は、図5(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。また、図5(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図5(A)および図5(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ140を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有する。本実施の形態では、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とする。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0300】
図5における半導体装置の作製方法を図5(A)及び図5(B)を用いて説明する。
【0301】
トランジスタ140は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板185に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極110とを有する。
【0302】
半導体材料を含む基板185は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体層は、シリコン半導体層に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0303】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体層を形成する方法等を用いることができる。
【0304】
例えば、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、又は素子基板上のどちらか一方に絶縁層を形成する。単結晶半導体基板と素子基板を、絶縁層を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体層として単結晶半導体層を素子基板上に形成する。上記方法を用いて作製されたSOI基板も好適に用いることができる。
【0305】
基板185上にはトランジスタ140を囲むように素子分離絶縁層106が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図5(A)に示すようにトランジスタ140がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ140の特性を重視する場合には、ゲート電極110の側面にサイドウォール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120を設けても良い。
【0306】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ140は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
【0307】
トランジスタ140を覆うように絶縁層を2層形成する。トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、該絶縁層2層にCMP処理を施して、平坦化した絶縁層128、絶縁層130を形成し、同時にゲート電極110の上面を露出させる。
【0308】
絶縁層128、絶縁層130は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁層128、及び絶縁層130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0309】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁層128、絶縁層130を形成してもよい。
【0310】
本実施の形態では、絶縁層128としてスパッタリング法により膜厚50nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、絶縁層130としてスパッタリング法により膜厚550nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0311】
CMP処理により十分に平坦化した絶縁層130上に半導体膜を形成する。本実施の形態では、半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜した酸化物半導体膜を用いる。
【0312】
次に実施の形態1で示したように、酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入してから、酸化物半導体膜に加熱工程を行い、酸化物半導体膜から膜外部へ水素又は水等の不純物を放出させる。希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に行う加熱工程の温度は、300℃以上700℃以下、又は基板の歪み点未満とする。該加熱工程は、減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下で行えばよい。
【0313】
例えば、加熱工程として、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行えばよい。この間、酸化物半導体膜は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。加熱工程前に酸化物半導体膜に希ガスイオンを注入しておくことによって、加熱工程中での酸化物半導体膜から膜外部への水素又は水分の放出がより促進される。
【0314】
従ってトランジスタにおいて信頼性の悪化を招く水素又は水等の不純物を低減し、十分な酸素を供給させてI型(真性)またはI型に限りなく近い酸化物半導体膜を形成することで、極めて優れた特性のトランジスタを実現することができる。
【0315】
次に酸化物半導体膜を選択的にエッチングして半導体層144を形成する。
【0316】
次に、ゲート電極110、絶縁層128、絶縁層130などの上に導電層を形成し、該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bを形成する。
【0317】
導電層は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0318】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0319】
上部のトランジスタ162のチャネル長(L)は、ソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線を用いるのが望ましい。
【0320】
次に、半導体層144に接するゲート絶縁層146を形成する。ゲート絶縁層146は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、酸化ハフニウム層、又は酸化ガリウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0321】
次に、ゲート絶縁層146上において半導体層144と重畳する領域にゲート電極148aを形成し、ソース電極またはドレイン電極142aと重畳する領域に電極148bを形成する。
【0322】
ゲート絶縁層146の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で加熱工程(第2の加熱工程)を行うのが望ましい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上350℃以下である。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱工程を行えばよい。加熱工程を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、ゲート絶縁層146が酸素を含む膜として、半導体層144に酸素を供給し、該半導体層144の酸素欠損を補償して、I型(真性)またはI型に限りなく近い酸化物半導体膜を形成することもできる。
【0323】
上述のように、希ガスイオンの注入された酸化物半導体膜への加熱工程を行うことによって、半導体層144を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。
【0324】
ゲート電極148aおよび電極148bは、ゲート絶縁層146上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。
【0325】
次に、ゲート絶縁層146、ゲート電極148a、および電極148b上に、絶縁層150および絶縁層152を形成する。絶縁層150および絶縁層152は、スパッタリング法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0326】
次に、ゲート絶縁層146、絶縁層150、及び絶縁層152に、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0327】
その後、上記開口にソース電極またはドレイン電極142bに接する配線156を形成する。なお、図5(A)及び図5にはソース電極またはドレイン電極142bと配線156との接続箇所は図示していない。
【0328】
配線156は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をエッチング加工することによって形成される。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極またはドレイン電極142aなどと同様である。
【0329】
以上により、高純度化された半導体層144を用いたトランジスタ162、および容量素子164が完成する。容量素子164は、ソース電極またはドレイン電極142a、半導体層144、ゲート絶縁層146、および電極148b、で構成される。
【0330】
なお、図5の容量素子164では、半導体層144とゲート絶縁層146を積層させることにより、ソース電極またはドレイン電極142aと、電極148bとの間の絶縁性を十分に確保することができる。もちろん、十分な容量を確保するために、半導体層144を有しない構成の容量素子164を採用しても良い。また、絶縁層を有する構成の容量素子164を採用しても良い。さらに、容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0331】
図5(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図5(C)において、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ140のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ140のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線とも呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0332】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有しているため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極とが電気的に接続されたノード(以下、ノードFG)の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、ノードFGに与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0333】
半導体装置に情報を記憶させる場合(書き込み)は、まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、ロー(Low)レベル電荷、ハイ(High)レベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGが浮遊状態となるため、ノードFGには所定の電荷が保持されたままの状態となる。以上のように、ノードFGに所定量の電荷を蓄積及び保持させることで、メモリセルに情報を記憶させることができる。
【0334】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、ノードFGに供給された電荷は長時間にわたって保持される。したがって、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となり、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0335】
記憶された情報を読み出す場合(読み出し)は、第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、トランジスタ140は異なる状態をとる。一般に、トランジスタ140をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ140を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、ノードFGに保持された電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ140は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ140は「オフ状態」のままである。このため、第5の配線の電位を制御して、トランジスタ140のオン状態またはオフ状態を読み出す(第2の配線の電位を読み出す)ことで、記憶された情報を読み出すことができる。
【0336】
また、記憶させた情報を書き換える場合においては、上記の書き込みによって所定量の電荷を保持したノードFGに、新たな電位を供給することで、ノードFGに新たな情報に係る電荷を保持させる。具体的には、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。その後、第4の配線の電位をトランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGには、新たな情報に係る電荷が保持された状態となる。すなわち、ノードFGに第1の書き込みによって所定量の電荷が保持された状態で、第1の書き込みと同様の動作(第2の書き込み)を行うことで、記憶させた情報を上書きすることが可能である。
【0337】
本実施の形態で示すトランジスタ162は、高純度化され、十分な酸素が供給され、真性化された酸化物半導体膜を半導体層144に用いることで、トランジスタ162のオフ電流を十分に低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0338】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0339】
(実施の形態8)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0340】
図11(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0341】
図11(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0342】
図11(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0343】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図11(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図11(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。表示部2705として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想されるため、太陽電池を設け、太陽電池による発電、及びバッテリーでの充電を行えるようにしてもよい。なおバッテリーとしては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0344】
また、図11(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0345】
また、電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0346】
図11(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0347】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図11(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0348】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図11(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0349】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0350】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0351】
図11(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0352】
図11(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置とすることができる。
【0353】
テレビジョン装置の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0354】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0355】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0356】
本実施例では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法における、希ガスイオンの注入工程及び加熱工程による酸化物半導体膜の脱水素化処理の効果を実験により評価した。図12及び図13に結果を示す。評価方法としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いた。
【0357】
まず、シリコン基板上にスパッタリング法によりIn−Ga−Zn−O膜を膜厚300nm形成し、イオン注入法によりIn−Ga−Zn−O膜に水素イオンを注入した。水素イオンの注入条件は加速電圧22kV、ドーズ量を1×1016ions/cmとした。
【0358】
In−Ga−Zn−O膜の成膜条件は、組成比としてIn:Ga:ZnO=1:1:1[mol比]の酸化物ターゲットを用い、シリコン基板とターゲットとの間の距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量30sccm:酸素流量15sccm)雰囲気下、基板温度200℃とした。
【0359】
試料としては、水素が注入されたIn−Ga−Zn−O膜、水素が注入されたIn−Ga−Zn−O膜に加熱(450℃、又は650℃)工程のみ行った膜、水素が注入されたIn−Ga−Zn−O膜にアルゴンイオンをイオン注入法により注入し、さらに加熱(450℃、又は650℃)工程を行った膜を作製した。なお、アルゴンイオンの注入条件は加速電圧100kV、ドーズ量を1×1016ions/cmとした。該ドーズ量及び注入条件であると、In−Ga−Zn−O膜における注入されたアルゴンの濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とすることができる。また、加熱工程は、450℃又は650℃、窒素雰囲気下で1時間行った。
【0360】
各試料をSIMS分析し、各試料のH元素の濃度を測定した。図12に加熱工程及びアルゴンイオン注入工程なしの膜(点線)、450℃加熱工程のみありの膜(細い実線)、アルゴンイオン注入工程及び450℃加熱工程ありの膜(太い実線)のSIMSによるH元素の濃度プロファイルを示す。また、図13に加熱工程及びアルゴンイオン注入工程なしの膜(点線)、650℃加熱工程のみありの膜(細い実線)、アルゴンイオン注入工程及び650℃加熱工程ありの膜(太い実線)のSIMSによるH元素の濃度プロファイルを示す。
【0361】
図12及び図13において、アルゴンイオンを注入し、かつ注入後加熱工程を行った膜は、加熱工程及びアルゴンイオン注入なしの膜及び加熱工程だけの膜と比較して、水素濃度が一番低い。よって、アルゴンイオンの注入工程及び加熱工程によりIn−Ga−Zn−O膜中の水素が排除され、効率よく脱水素化処理ができたことがわかった。
【0362】
以上のことから、酸化物半導体膜の脱水素化処理において、該酸化物半導体膜に希ガスイオンの注入工程を行い、注入工程後加熱工程を行うことで、酸化物半導体膜は効率よく脱水素化処理され、より高純度化できることが確認できた。
【0363】
高純度化した酸化物半導体膜を用いることで、トランジスタの電気的特性変動を抑制でき、電気的に安定とすることができる。また、電気特性が良好で信頼性のよいトランジスタを有する半導体装置を作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体膜を形成し、
少なくとも前記酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、
減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、
前記注入工程において、前記酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とすることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
酸化物半導体膜を形成し、
少なくとも前記酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、
減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、
前記加熱工程を行った酸化物半導体膜の少なくとも一部と接する絶縁層を形成し、
前記注入工程において、前記酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とすることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
酸化物半導体膜を形成し、
少なくとも前記酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、
減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、
前記注入工程において、前記酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とし、
前記加熱工程において、前記酸化物半導体膜は表面を露出した状態とすることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
酸化物半導体膜を形成し、
少なくとも前記酸化物半導体膜中に希ガスイオンを注入する注入工程を行い、
減圧下、窒素雰囲気下、又は希ガス雰囲気下において、前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に加熱工程を行って前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させ、
前記加熱工程を行った酸化物半導体膜の少なくとも一部と接する絶縁層を形成し、
前記注入工程において、前記酸化物半導体膜における注入された希ガス元素の濃度のピークを1×1019atoms/cm以上3×1022atoms/cm以下とし、
前記加熱工程において、前記酸化物半導体膜は表面を露出した状態とすることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項2又は請求項4において、前記絶縁層として酸化物絶縁層を形成し、前記加熱工程を行った酸化物半導体膜及び前記酸化物絶縁層を少なくとも一部が接した状態で加熱工程を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記加熱工程を行った酸化物半導体膜に酸素の供給を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記注入工程は、イオン注入法、イオンドーピング法、又はプラズマイマージョンイオンインプランテーション法を用いて行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記希ガス元素として、少なくともアルゴン、クリプトン、又はキセノンを用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項において、前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜に温度300℃以上700℃以下の加熱工程を行って前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜中に含まれる水素若しくは水を放出させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項において、前記希ガスイオンを注入した酸化物半導体膜をトランジスタのチャネル形成領域とすることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、前記加熱工程を行った酸化物半導体膜は非晶質であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項において、前記加熱工程を行った酸化物半導体膜は結晶部を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−212880(P2012−212880A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63019(P2012−63019)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】