説明

半導体装置

【課題】高い反転層キャリア移動度を有するシングルメタルCMISFETを提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成されたpチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタとを具備し、pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタは、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極層を夫々備え、pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタのゲート電極における、少なくともゲート絶縁膜と接する最下層は、TaとCを含む同一組成を有し、CとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大であり、最下層は同一配向性を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート電極構造の改良を図った相補型MIS半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン相補型MIS(Complementary Metal-Insulator-Semiconductor:CMIS)半導体装置においては、チタン, モリブデン, タングステン, タンタルなどの高融点金属、或いはこれらの窒化物をゲート電極として使用する試みがなされている。これは、いわゆるメタルゲート技術と称される。
【0003】
メタルゲート技術では、ゲート電極内部には原理的に空乏層が発生しないので、従来の多結晶シリコンゲートの場合のように空乏層によるMISトランジスタの電流駆動力の低下は発生しない。特に、単一のメタルゲート材料でnチャネルMISトランジスタ、pチャネルMISトランジスタの双方のゲート電極を構成する、いわゆるシングルメタルゲート技術では、nチャネルMISトランジスタとpチャネルMISトランジスタのゲート電極堆積及び加工を共通化できる。これにより、nチャネルMISトランジスタとpチャネルMISトランジスタで異なるメタルゲートを用いる場合に問題となる工程の複雑化、工程数の増加などの課題を解決できる。
【0004】
シングルメタルゲート技術に関しては、例えば、nチャネルMISトランジスタ、pチャネルMISトランジスタの双方のゲート電極をTaとCの合金で形成し、且つそのTaとCの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が1/3以下1/5以上となるようTaC合金の組成を制御する技術が知られている(特許文献1参照)。この範囲の組成を有するTax1-x電極は、1000℃の熱処理に対しても安定で、4.5〜4.7eVの範囲の仕事関数を示す。
【0005】
一方、TaとCを含む合金を使用するデュアルメタルゲート技術においては、pチャネルMISトランジスタ、nチャネルMISトランジスタの双方のゲート電極のTaC(111)面の結晶配向比率を最適に設定することにより、各々のチャネルに適した仕事関数を実現する技術も知られている(特許文献2参照)。この技術では、pチャネルMISトランジスタのTaC(111)面の結晶配向比率を80%以上、nチャネルMISトランジスタのTaC(111)面の結晶配向比率を60%以下にするのが良いとしている。また、Taに対するCに比率C/Taは、0.5以上、1.5以下の範囲に規定している。
【0006】
しかし、メタルゲート電極を有するMISトランジスタではメタルゲート電極起因の反転層キャリア移動度の低下が頻繁に問題になり、高い移動度を維持するメタルゲート技術が求められているが、これを実現する手法については知られていない。
【特許文献1】特開2007−149755号公報
【特許文献2】特開2007−165414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、トランジスタの電流駆動力を向上させ、処理速度の速いシリコンCMIS(或いはCMOS)デバイスを実現するために、従来の多結晶シリコンゲートに替えてメタルゲート技術を導入することが必須である。しかし、反転層キャリア移動度の低下を最小限に抑えるシングルメタルゲート構造は実現できていないのが現状であった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、シリコンCMISデバイス等に用いるのに適したシングルメタルゲート構造を有する、特に、高い反転層キャリア移動度を維持可能とした半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置の第1は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたpチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタとを具備し、前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタは、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極層を夫々備え、前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタの前記ゲート電極における、少なくとも前記ゲート絶縁膜と接する最下層は、TaとCを含む同一組成を有し、CとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大であり、前記最下層は同一配向性を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体装置の第2は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたpチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタとを具備し、前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタは、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された、TaとCを含む同一の組成と同一の配向性を有するゲート電極層と、前記ゲート電極層上に形成されたポリシリコン層を夫々備え、前記ゲート電極層のCとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大であることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置の第3は、半導体基板上と、前記半導体基板上に形成されたpチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタを具備し、前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタは、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された、TaとCを含む同一の組成と同一の配向性を有する第1のゲート電極層と、前記第1のゲート電極層に接して積層された金属よりなる第2のゲート電極層と、前記第2のゲート電極層上に形成されたポリシリコン層を夫々備え、前記第1のゲート電極層のCとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリコンCMISデバイス等に用いるのに適したシングルメタルゲート構造を有し、高い反転層キャリア移動度を維持可能とした半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態の説明に先立ち、各実施形態の背景となる基本技術に付いて説明する。図1は、後述の実施形態に共通なCMIS半導体装置の模式断面図である。Taリッチ組成のTax1-x電極(x>0.5)をpチャネルMISトランジスタ、nチャネルMISトランジスタの両方のゲート電極として有することを特徴とする。即ち、本実施形態のゲート電極は、TaとCを含む同一組成を有し、CとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大である。
【0014】
基板1の上部表面(主表面)に、p型ウェル領域2及びn型ウェル領域3が、素子分離層4によって電気的に分離されて形成される。p型ウェル領域2には、nチャネルMISトランジスタが形成され、n型ウェル領域3にはpチャネルMISトランジスタが形成される。
【0015】
nチャネルMISトランジスタの構成としては、p型ウェル領域2内に、電流通路となる領域(チャネル領域)のゲート長両側に一対のn型エクステンション領域9が形成され、これらの外側に一対のn型ディープ領域10が形成される。n型ディープ領域10は、n型エクステンション領域9よりもp型ウェル領域2との接合深さが深くなるように構成される。n型エクステンション領域9及びn型ディープ領域10は、nチャネルMISトランジスタのソース・ドレイン領域となる。
【0016】
p型ウェル領域2の上部表面には、n型エクステンション領域9のゲート長方向内側の端部にかかるようにして、チャネル領域上にゲート絶縁膜5が形成される。ゲート絶縁膜5の上部表面には、ゲート電極6が積層形成される。ゲート電極6は、Taリッチ組成のTax1-x電極層(x>0.5)からなる。ゲート絶縁膜5及びゲート電極6の両側には、ゲート側壁8が形成される。
【0017】
pチャネルMISトランジスタの構成としては、n型ウェル領域3内に、電流通路となる領域(チャネル領域)のゲート長両側に一対のp型エクステンション領域19が形成され、これらの外側に一対のp型ディープ領域20が形成される。p型ディープ領域20は、p型エクステンション領域19よりもn型ウェル領域3との接合深さが深くなるように構成される。p型エクステンション領域19及びp型ディープ領域20は、pチャネルMISトランジスタのソース・ドレイン領域となる。
【0018】
n型ウェル領域3の上部表面には、p型エクステンション領域19のゲート長方向内側の端部にかかるようにしてチャネル領域上にゲート絶縁膜15が形成される。ゲート絶縁膜15の上部表面には、ゲート電極16が積層形成される。ゲート電極16は、Taリッチ組成のTax1-x電極層(x>0.5)からなる。ゲート絶縁膜15及びゲート電極16の両側には、ゲート側壁18が形成される。
【0019】
ところで、Tax1-x電極を用いるシングルメタルゲート技術については、前述した(特許文献1)に記載されている。この従来技術と本発明が異なるのは、本発明ではゲート絶縁膜に接するTax1-x電極層の組成xが0.5より大きいこと、即ちTaリッチ組成であるのに対して、従来技術(特許文献1)ではTax1-x電極層の組成xが1/3以下である点にある。
【0020】
従来技術(特許文献1)において、Tax1-xの組成xを0.5以下、即ちCリッチ組成としていた理由の一つは、高温熱処理に耐えうる耐熱安定性を得るにはCリッチ組成が必要と考えられていたためである。
【0021】
これに対して、本発明では、Tax1-x電極の組成xを0.5よりも大きくした場合に、Cリッチ組成の場合と比較して高い反転層キャリア移動度を実現できること、Cリッチ組成の場合と比較してゲートリーク電流特性が改善することを新たに実験的に見出した。本発明の場合においても、Taリッチ組成Tax1-x電極とゲート絶縁膜との界面における反応は、高温熱処理時において、従来予想されていたように発生している。しかし、従来の予想に反して、適度な界面反応はデバイス特性を劣化させず、むしろ向上させていることを新たに見出した。また、さらにTaリッチ組成Tax1-x電極層の層厚を変化させることにより、電極とゲート絶縁膜との界面反応の程度を制御可能であることを見出した。
【0022】
また、従来技術(特許文献2)においては、nMISトランジスタとpMISトランジスタのTaCゲート電極の配向性が異なることが必要条件になっており、nMISとpMISとで電極を作り分なければならない。本発明では、同一組成、同一配向性、同一層厚のTaC層を、nMIS/pMISに共通して同一タイミングで成膜する。即ち、ゲート電極の作り分けを要しないので、プロセスが簡単である。さらに、nMIS/pMISともTaC電極の配向性が同一なので、絶縁膜との反応性が制御し易い。
【0023】
次に、Tax1-x電極の組成をTaリッチ組成にすることが、トランジスタ特性、特に反転層キャリア移動度、ゲートリーク電流特性、実効仕事関数に及ぼす効果を説明する。
【0024】
ここでは、その効果を図2および図3に示すサンプルナンバー#1〜#5の5通りのゲートスタック構造を有するトランジスタの特性を比較した実験結果から明らかにする。#1〜#5は、Tax1-x電極層、TiN電極層、多結晶Si層の三層を有する積層電極構造を有する。#1〜#5は、Tax1-x電極層の組成および層厚、あるいは組成分布プロファイルが異なることを除いて、他の部分の形成条件は完全に同一である。TiN電極層および多結晶Si層は同一である。Si基板は#1〜#5で同一であり、基板不純物濃度は8×1016(/cm3)程度である。また、ゲート絶縁膜の成膜条件は#1〜#5で同じであり、Tax1-x電極層形成前の時点においては同一であるが、後述するようにTax1-x電極層との反応の有無および程度の差により、最終的なトランジスタ完成時にはサンプル間で性質に違いがある。
【0025】
ゲート絶縁膜は、酸窒化ハフニウムシリケート、即ちHfSiONであり、Hf/(Hf+Si)比は0.5、[N]濃度は約20atomic%である。また、図2に図示するように、HfSiON層とSi基板の間には、SiO2に近い組成をもつ界面層ができている。なお、#1〜#5のゲートスタック構造を有するトランジスタは、ゲートスタック構造形成後において1000℃程度の高温の熱処理を施す工程を含む、所謂ゲートファースト工程により作成した。
【0026】
#1〜#5のTax1-x電極層について説明する。#1〜#5のTax1-x電極層は何れもスパッタ法で成膜している。#1、#2および#3は、Taリッチ組成のTax1-x電極層を有し、その層厚はそれぞれ、10nm、5nm、3nmである。一方、#5は、Cリッチ組成のTax1-x電極層を有し、その層厚は10nmである。さらに、#4のTax1-x電極層は層厚が7nm程度であり、ゲート絶縁膜に接する部分、数nmの範囲においてはTaリッチであるが、残りの上部のTiN電極に接する部分においてはCリッチになる傾斜組成プロファイルを持っている。換言すれば、Taリッチ層とCリッチ層からなる積層構造を有している。
【0027】
#1〜#3のTaリッチ組成Tax1-x電極層の組成xは0.59であり、#5のCリッチ組成Tax1-x電極層の組成xは0.43である。この組成は、表面にSiO2 層を有するSi基板上に、#1〜#3と同一組成条件で厚さ50nmのTax1-x層を成膜した試料と、#5と同一組成の条件で厚さ50nmのTax1-x層を成膜した試料とに対して、堆積したまま(as-depo)の状態でRBS(Rutherford Backscattering Spectroscopy)分析を行うことで特定した。#1〜#3と同一組成の場合の結果を図4に、#5と同一組成の場合の結果を図5に示す。RBS測定の結果、Tax1-x層中のO濃度とAr濃度は、それぞれ検出限界以下と0.01atomic%以下であった。なお、#1〜#3と同一組成の場合のTax1-x層については、約1000℃の熱処理を加えた場合やHfSiON層上に形成した場合もRBS測定を行い、組成に変化が無いことを確認している。
【0028】
図4、図5では、Tax1-x層/ゲート絶縁膜/Si基板の分析用試料を用いた結果を示した。Tax1-x層の組成は勿論完成したトランジスタでも測定可能であり、その場合はトランジスタのゲート電極の部分をTEM(Transmission Electron Microscopy)観察などで用いられるピックアップ法で切り出し、ゲート電極の断面をエネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray Analysis:EDX)、若しくは電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy:EELS)で分析すれば、TaとCの組成比を確認できる。この場合、TEM法の電子ビームを用いるので、分析位置のポジショニング精度が高い。これにより、Tax1-x層/ゲート絶縁膜の反応制御性に強く関係する、ゲート絶縁膜と接した領域のTax1-x層の組成を測定できる。
【0029】
次に、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の場合に、従来技術のCリッチ組成Tax1-x電極層の場合よりも、高い反転層キャリア移動度が得られることを示す。図6は、#1〜#5のゲートスタック構造を有するトランジスタの反転層電子移動度の測定結果を示す。縦軸(ログスケール)は反転層電子移動度μ(cm2/Vs)であり、横軸(ログスケール)は反転層電子密度Ns(/cm2)である。#1〜#4の場合に高い移動度が得られ、対照的に#5の場合には#1〜#4と比較して移動度が大幅に低くなっている。即ち、ゲート絶縁膜に接する部分のTax1-x電極の組成がTaリッチ組成の場合に、同部分がCリッチの場合に比べて大幅に高い移動度が得られることが発見された。
【0030】
また、#4は#2とほぼ同じ移動度カーブを示し、#5よりも大幅に高い移動度を示しているから、ゲート絶縁膜との界面におけるTax1-x電極層の組成xが移動度の大小を決めるにあたり第一に重要であって、界面から離れた上部領域の組成はCリッチであっても移動度を低下させる要因にはならないことが分かる。この結果は、Taリッチ組成の場合ゲート絶縁膜と反応するから、その場合トランジスタ特性は劣化するであろうという従来の予想と異なった結果である。反転層キャリア移動度はトランジスタの電流駆動能力に直結する物理量であるから、図6はCMISの性能向上の観点におけるTaリッチ組成のTax1-x電極層の優位性を示している。
【0031】
また、Taリッチ組成Tax1-x電極層を有する#1〜#3を比較した場合、移動度は#1>#2>#3の順に高いことが分かる。即ち、同一のTaリッチ組成を有する場合、Tax1-x電極層の厚さが厚いほど移動度が高いことが明らかになった。
【0032】
次に、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の場合に、従来技術のCリッチ組成Tax1-x電極層の場合よりも、ゲートリーク電流特性が改善することを示す。図7は、#1〜#5のゲートスタック構造を有するトランジスタのゲートリーク電流の測定結果を示す。縦軸はゲートリーク電流Jg(A/cm2)であり、横軸はトランジスタオン状態におけるSiO2 換算の電気的ゲート絶縁膜の膜厚Tinv(nm)である。ここで、JgおよびTinvは、チャネル/界面層界面における電界(Eox)が4.5(MV/cm)となるゲートバイアス条件で評価した値である。
【0033】
図7中には、#1とゲート絶縁膜の厚さのみ異なり、それ以外の基板、ゲート絶縁膜の組成、ゲート電極積層部の条件は全く同じであるサンプル#1´とサンプル#1´´の結果も合わせて示してある。ゲート絶縁膜の厚さのみを意図的に薄くしたものがサンプル#1´であり、厚くした場合がサンプル#1´´に対応する。
【0034】
トランジスタの電流駆動能力はTinvが小さいほど高くなり、一方トランジスタの消費電力はJgが小さい方が小さくなる。従って、トランジスタの電流駆動能力と消費電力を合わせた観点においては、図7のJg−Tinv特性図においては、より左下の領域にあるサンプル、即ちより小さいTinvで、より小さいJgを実現したサンプルの方が性能において優れている。#1´と#1、および#1´´を結んだ黒い実線で示す特性傾向線を基準として、サンプル#2、#3、#4はほぼこの直線状に乗るのでこれらの#2〜#4は#1とほぼ同等のゲートリーク電流特性を示していると言える。
【0035】
一方、#5は実線よりも右上の領域に位置しているので、ゲートリーク電流特性は#1の方が、#5よりも良いことが分かる。従って、ゲート絶縁膜に接する部分のTax1-x電極層の組成がTaリッチ組成の場合に、同部分がCリッチの場合に比べてより優れたゲートリーク電流特性が得られることが発見された。この結果は、Taリッチ組成の場合ゲート絶縁膜と反応するから、その場合トランジスタ特性は劣化するであろうという従来の予想と異なった結果である。
【0036】
次に、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層を有するゲートスタック構造の実効仕事関数EWE(Effective Work Function)がシングルメタルゲート技術に適することを示す。図8には、#1´、#1、#1´´のゲートスタックのVfbとEOT(Equivalent Oxide Thickness)との関係を示す。また図中#A´、#A、#A´´で示す一連のプロットは、それぞれ#1´、#1、#1´´と界面層の形成方法が異なることを除いて、ゲート絶縁膜とゲート電極の形成法とを含め、すべて同一条件で形成したサンプルのVfbとEOTの関係を示す。
【0037】
図8の結果は、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層を有するゲートスタック構造のEWEは、界面層の形成法に依存し50mV程度異なること、また、そのEWEは4.4〜4.5eV程度の範囲となることを示している。これは、シングルメタルゲート技術に適するメタルゲート電極とゲート絶縁膜の組み合わせとして適当な値の範囲、例えば4.4eV〜4.8eVの範囲内にある。
【0038】
通常CMISのnチャネルMISトランジスタとpチャネルMISトランジスタの閾値は対称、即ち値が同じで符号が逆に設定する必要がある。また、低閾値化する場合には、nチャネルMISトランジスタのEWEを、ミッドギャップの値に相当する4.6eV程度以下で、n型バンドエッジの値に相当する4.1eV程度に近づけ、pチャネルMISトランジスタのEWEを、ミッドギャップの値に相当する4.6eV以上で、p型バンドエッジの値に相当する5.1eV程度に近づける必要がある。
【0039】
シングルメタルゲート技術においては、ベースのゲート絶縁膜に対して閾値調整用の元素の添加を行うこと、チャネル材料を従来のSiから変更すること、もしくは、基板に閾値調整用の元素の添加を行うことで、相補的閾値および低閾値化を実現できる。
【0040】
nチャネルMISトランジスタのEWEを、n型バンドエッジの値に近づけるには、例えば、ゲート絶縁膜中へのLa,Mg,Dy,Y,Yb,Erなどの元素の添加や、基板への窒素(N)イオン注入、が有効である。
【0041】
また、pチャネルMISトランジスタのEWEを、p型バンドエッジの値に近づけるには、例えば、ゲート絶縁膜中へのAl、Oなどの元素の添加や、Si基板へのフッ素(F)イオン注入、もしくはチャネル材料をSiからSiGeへ変更することが有効である。
【0042】
これらの技術を適宜組み合わせることで、シングルメタルゲート技術で、CMISに適する相補的閾値を設定可能である。このような閾値調整技術を適応する前のメタルゲート電極とベースの絶縁膜の組み合わせにおいては、前述したようにミッドギャップ近傍のEWEの範囲、例えば4.4eV〜4.8eV程度の範囲のEWEが適当であり、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層のゲートスタック構造はそれを満たすことが可能である。
【0043】
このように、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層は、従来のCリッチ組成Tax1-x電極層と比較して、移動度特性、Jg−Tinv特性、EWEの三点において高性能CMISデバイス等に用いるシングルゲート電極として好ましいことを発見した。
【0044】
本発明のまた別の特徴は、Taリッチ組成Tax1-x電極層がNaCl型構造からなる多結晶構造である特徴を有することである。図9(a)と(b)は、#1,2,3と同一組成条件で成膜した厚さ50nmのTax1-x層に1000℃の熱処理を加えた後、取得した断面TEM像であり、(a)が明視野像、(b)は暗視野像である。図9(a)と(b)は、本発明のTaリッチTax1-x層は多結晶構造を有することを示している。
【0045】
図10(a)、図11(a)は、#1〜#3と同一の組成となる条件(x=0.59)と、#5と同一の組成となる条件(x=0.43)と、また別の条件(x=0.27)とで成膜したTax1-x層(層厚は50nm)XRD分析結果を示す。図10(a)と図11(a)は、夫々1000℃程度の高温熱処理を施した試料と、堆積したまま(as-depo)の試料とに対する結果である。
【0046】
ところで、TaとCからなる合金、即ちタンタルカーバイド系には、TaC結晶(Tax1-x:x=0.5)とTa2C結晶(Tax1-x:x=2/3)の2つの安定な結晶構造の多形が存在していることが知られている。TaC結晶層は、プロトタイプ構造(structure prototype)がNaCl型の立方晶系結晶であり、一方Ta2C結晶層はCdI2型の層状結晶である。図10(a)ならびに図11(a)において、実線で示す位置はTa2C結晶構造の場合にピークが現れる位置を示しており、一方点線で示す位置はTaC結晶構造の場合にピークが現れる位置を示している。
【0047】
図10(a)ならびに図11(a)より、#1,2,3と同一組成条件のx=0.59の場合も、#5と同一組成条件のx=0.43の場合も、TaC結晶構造となっていることが分かる。TaC結晶構造は所謂NaCl型構造であるから、#1,2,3ならびに#5のTax1-x層はNaCl型構造からなることが分かる。
【0048】
図10(b)、図11(b)は、それぞれ図10(a)、図11(a)に示した試料におけるTaC(200)配向性率とTaC(111)配向性比率を示した表である。ここで、TaC(200)の配向性とは、次の式から求めたもので、ゲート電極/ゲート絶縁膜界面の法線方向に対するTax1-x層の結晶配向比率である。
【0049】
TaC(200)配向性=TaC(200)ピーク強度/{TaC(111)ピーク強度+TaC(200)ピーク強度} (1)
TaC(111)配向性は、(1)式の分子をTaC(111)ピーク強度に置き換えることにより求められる。図10(b)、図11(b)より、本発明のTaリッチ組成Tax1-x層においては、TaC(200)面の結晶配向比率は50%より大きいことがわかる。即ち、本発明では、ゲート電極層とゲート絶縁膜の界面の法線方向に対するTaC(200)面の結晶配向比率[TaC(200)面/{TaC(200)面+TaC(111)面}]は、50%より大きいことを特徴とする。
【0050】
TaC結晶構造において、TaC(200)面はTaとCが交互に配置された面である。一方、TaC(111)面にはTa面とC面の2つの異質な面が存在し、Ta面の方が界面の反応性が高いと考えられる。本発明では、TaCと絶縁膜との反応を制御する必要があるが、(111)配向していると組成だけでなく、Ta面とC面のどちらがより高い割合で絶縁膜と接するかによって反応性が異なる。従って、より良く反応を制御するには、(200)配向としておいて、その上で組成と層厚の制御により、余剰TaやC欠損の量を制御することで反応量を制御するのが好ましい。余剰TaやC欠損については、図12、13を用いて後述する。
【0051】
図10、図11は、Tax1-x層/ゲート絶縁膜/Si基板の分析用試料を用いた結果を示した。Tax1-x層の結晶性比率は、勿論完成したトランジスタでも測定可能であり、その場合はトランジスタのゲート電極の部分をTEM観察などで用いられるピックアップ法で切り出し、ゲート電極の断面を透過電子回折法(transmission electron diffraction: TED)で分析すれば、(200)配向と(100)配向の割合を測定できる。この場合、TEM法の電子ビームを用いるので分析位置のポジショニング精度が高い。これにより、Tax1-x層/ゲート絶縁膜の反応制御性に強く関係する、ゲート絶縁膜と接した領域のTax1-x層の配向性を測定できる。
【0052】
本発明のTaリッチTax1-x層は、x=0.59のTaリッチ組成を持つにも拘わらず、x=0.5に相当するTaC結晶相からなる多結晶構造であることがわかる。このことは、図12に示すように、TaC結晶内若しくは結晶粒界に余剰Taが存在するか、TaC結晶中にC欠損が生じていることを示す。
【0053】
図13は、#1および#5と同等のデバイスウェハに対して実施したBackside-XPS分析の結果のうち、Ta4f(7/2、5/2)のスペクトルを示す。図13中には、Metallic Ta,TaC,Ta oxide 中のTaの結合状態に対応するピーク位置も図示してある。
【0054】
図13より、#1と#5ともTaは主にTaCの結合状態であることがわかる。また、#1に対しても Metallic Taの位置に明確な信号は検出されないため、メタル状態のTaが析出していることはない。#5と比較して#1のTa4fスペクトルは低エネルギー側にのみテールを引いていることが分かる。この低エネルギー側の成分は、隣接C原子数が4未満のTaに対応する。そのようなTaは,TaC結晶内のC欠損の隣接サイトや結晶粒界に存在する。
【0055】
Taリッチ組成のTax1-x電極は、余剰Ta若しくはC欠損を含むTaC結晶相からなる多結晶である。この余剰TaやC欠損がTax1-x電極の反応性を高めていると考えられる。図10、図11のXRDの結果より、Taリッチ組成のTax1-x電極は1000℃熱処理時に配向性が向上するとともに結晶化も進行することが分かる。この際に、余剰TaはTax1-x/HfSiON界面にも吐き出されると推察でき、界面の反応性は高まると考えられる。
【0056】
これより、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の層厚について、好ましい層厚の範囲について説明するが、それに先立ち、本発明の電極層はゲート絶縁膜と反応していること、並びにその反応の量は同電極層の層厚に依存することを説明する。
【0057】
図14は#1〜#5のゲートスタック構造を有するトランジスタのゲート-チャネル間容量Cgc(μF/cm2)とゲート電圧Vg(V)の測定結果を示す。また、図15は、図14のCgc−Vg特性から求めたTinvの値を示す。Tinvの値は、#1〜#5のサンプル間で異なっている。#1〜#5のゲート絶縁膜は、成膜条件は同じであるから、Tax1-x電極層形成前の時点においては同一である。その一方、図15の結果は最終的なトランジスタ完成時には、#1〜#5のサンプル間でゲート絶縁膜に違いがあることを示している。この違いは、Tax1-x電極とゲート絶縁膜との界面における反応に起因する。
【0058】
従来技術のCリッチ組成Tax1-x電極層の場合に相当する#5と比べて、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の場合に相当する#1〜#4は、Tinvの値が小さくなっていることが発見された。このことは、Tax1-x電極とゲート絶縁膜の反応はTaリッチ組成Tax1-x電極層の場合に顕著であり、その場合にTinvが小さくなると解釈できる。Tinvが減少する要因としては、ゲート絶縁膜の物理的な膜厚減少と、ゲート絶縁膜の誘電率増加の2点がある。図17〜20を用いて後述するように、その両者が、Taリッチ組成Tax1-x電極層の場合に発生していることを示す物理分析結果がある。Taリッチ組成Tax1-x電極層を有する#1〜#3を比較した場合、Tinvは#1<#2<#3の順に小さいことが分かる。
【0059】
図16は、#5のTinvを基準とした#1〜#3のTinvの減少分、ΔTinvと、Taリッチ組成Tax1-x電極層の層厚との関係を示す。Taリッチ組成Tax1-x電極層の厚さが厚いほどTinvの減少量は大きく、その関係は今回調べた範囲においてほぼ線形であることが分かる。従って、Taリッチ組成Tax1-x電極層が厚いほど、電極とゲート絶縁膜界面の反応が顕著であることが分かる。
【0060】
ここで、Taリッチ組成のTax1-x電極の層厚が厚くなるほど、メタルゲート(MG)/high-kゲート絶縁膜(HK)反応がより顕著になる理由としては、膜厚が厚いほど余剰Taの絶対量が多く、1000℃熱処理時にTax1-x/HfSiON界面に吐き出される量も多くなるということが考えられる。
【0061】
電気的な膜厚であるTinvの減少分、ΔTinvの値は、今回調べた範囲で最大となる#1の場合でも0.1nm程度であり、これは物理的な膜厚としては、HfSiONの誘電率を12と仮定して、0.3nm程度である。一方、HfSiONの構成単位構造であるHfO4分子やSiO4分子の直径はおよそ0.3nm程度である。従って、Taリッチ組成Tax1-x電極層が引き起こした界面反応は、およそ僅かに1原子層ないし2原子層に相当する厚みの範囲で起こる現象であると理解できる。
【0062】
続いて、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の層厚に関して、好ましい層厚の範囲について説明する。本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の層厚は、好ましくは0.5nm以上、また好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0063】
先ず、トランジスタ動作上好ましい効果が得られる、Taリッチ組成Tax1-x電極層の層厚の上限について説明する。図6にあるように、#1〜#3を比較した場合、移動度は#1>#2>#3の順に高いことが分かる。従って、移動度は、Taリッチ組成Tax1-x電極層の厚さが厚いほど高く、今回調べた電極層厚の範囲において飽和していない。
【0064】
図16にあるようにTaリッチ組成Tax1-x電極層の厚さが厚いほどTinvの減少分ΔTinvは大きくなり、電極とゲート絶縁膜界面の反応が顕著となっている。電極とゲート絶縁膜界面の反応があまりに過剰になった場合は、ゲートリーク特性は劣化に転じると思われる。しかし、図7にあるように、#1〜#3は同じJg-Tinvの特性傾向線上にあるから、今回調べた範囲においては電極とゲート絶縁膜界面の反応がより顕著となっても、リーク電流特性において劣化は見られない。従って、トランジスタ動作上好ましい効果が得られるTaリッチ組成Tax1-x電極層の層厚の上限は、少なくとも10nm以上の範囲にある。
【0065】
あるいは、Taリッチ組成Tax1-x電極層の上限は、次の加工容易性の観点からの要請により規定される。メタル電極層の層厚が厚いほどゲート形状加工時のドライエッチングの難度は上がる。特にメタルゲート技術が適応される世代の集積回路の物理ゲート長が45nm程度以下であること考えると、加工容易性の観点からはメタル電極層の層厚の上限は20nm程度と考えられる。
【0066】
トランジスタ動作上好ましい効果が得られる、Taリッチ組成Tax1-x電極層の層厚の下限について説明する。図6の#1〜#5の移動度の比較に関して先述したように、ゲート絶縁膜との界面におけるTax1-x電極層の組成xが移動度の大小を決めるにあたり第一に重要である。#3の例から分かるように層厚が3nmの場合でも、従来技術のCリッチ組成Tax1-x電極層と比べ大幅に高い移動度が得られているから、本発明の効果を発現するに必要な層厚の下限は、3nm以下の範囲にある。
【0067】
ここでは、本発明における発見に基づき、#3と同等の効果をより薄い層厚で得るためのTax1-x電極の組成と層厚の設計を行い、それを通じて本発明の効果を発現するに必要な層厚の下限を求める。
【0068】
#1〜#3を比較した場合、#1、#2、#3の順で、図6にあるように移動度は高く、図16にあるように同じ順で、Tinvの減少分ΔTinvは大きくなる。図6と図16より、ΔTinvが大きいほど、移動度が高くなる相関が見出される。この相関は、#4と#5を含めても成り立つ。
【0069】
この物理的な理由としては、次のものが考えられる。電極層形成時においては、Tax1-x電極層とゲート絶縁膜の界面近傍領域に、原子間結合の欠陥や電極層形成時の成膜損傷による欠陥があると考えられる。本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の場合は、1000℃程度の高温アニール時に電極とゲート絶縁膜との界面反応が起こり、界面近傍の欠陥層を反応除去できる。反応が進むほど、言い換えるとTinvの減少ΔTinvは大きくなるほど、欠陥層の除去が完全なものになり、反転層移動度が上昇する。そのため、移動度はΔTinvに依存する。
【0070】
一方、従来のCリッチ組成Tax1-x電極層の場合、電極とゲート絶縁膜との界面反応が起こらないので、電極層形成時の欠陥層がそのまま維持され、反転層移動度が本発明の場合と比較して低くなる。図21を用いて後述するように、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層の場合と従来のCリッチ組成Tax1-x電極層の場合とで、電極-ゲート絶縁膜間の結合状態が異なることを示す物理分析の結果があり、この説明と矛盾しない。
【0071】
#3と同等の効果をより薄い層厚で得るためには、#3と同じΔTinvをより薄い層厚で実現すればよい。このためには、#3よりもTax1-x電極の組成x(x>0.5)を大きくすれば良い。図12を用いて説明したように、本発明のTaリッチTax1-x電極においては、TaC結晶内若しくは結晶粒界に余剰Taが存在するか、TaC結晶中にC欠損が生じている。この余剰TaとC欠損を合わせた量、これをyと定義すると、y=2x−1となる。yはTax1-x電極の反応性を現す指標であって、ΔTinv∝yの関係があると考えられる。
【0072】
一方、図16において説明したように、Taリッチ組成Tax1-x電極層の厚さdとΔTinvには線形の関係がある。従って、
ΔTinv∝y*d=(2x−1)*d (2)
が考えられる。
【0073】
#3と同等かそれ以上のΔTinvを実現する組成xと層厚dの組み合わせは、次の式で既定される。
【0074】
(2x−1)*d>(2*0.59−1)*3 (3)
式(3)に従うと、#3と同等の効果を得るための最も薄いdはx=1の場合に得えられ、d>0.54nmとなる。このことは、ゲート絶縁膜と別の耐熱メタル層、例えばCリッチ組成Tax1-x電極層の間に0.54nmの100%Ta層を挿入した電極構造を形成すれば、#3と同等の効果が得られることを示している。
【0075】
次に、Taリッチ組成Tax1-x電極層とゲート絶縁膜との界面における反応について説明する。また、Taリッチ組成Tax1-x電極層とゲート絶縁膜との界面構造について、その構造的特徴について説明する。
【0076】
ここでは、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層を有し、ゲート絶縁膜との界面反応が最も顕著である#1と、従来のCリッチ組成Tax1-x電極層を有する#5の物理分析結果を比較する。
【0077】
図17(a)と(b)は、それぞれ#1と#5からゲートスタック部を切り出した試料をTEM観察した結果を示す。図17(a)と(b)は、#1の方が#5と比較して、ゲート絶縁膜(HfSiON)の物理的な膜厚が小さいことを示している。
【0078】
図18は、#1もしくは#5と同一ウェハ上から切り出した試料を、Back-side SIMS分析した結果であり、Siの分布プロファイルを示している。図18は、#1の試料では、電極/ゲート絶縁膜界面反応の結果、HfSiONからSiがTaリッチ組成Tax1-x電極層へ拡散していることを示す。
【0079】
図19は、#1もしくは#5と同一ウェハ上から切り出した試料を、Back-side XPS分析した結果であり、Siの2p軌道に由来するスペクトルを示している。図中には、HfSiON、SiO2、SiONの中のSiに対応するピーク位置(P1)と金属との結合状態にあるSi(Si−Ta、Si−C、Si−Si)に対応するピーク位置(P2)も図示してある。#1に対してのみ、金属との結合状態にあるSiの成分が検出される。これは、#1のTaリッチ組成Tax1-x電極層中にSiが存在することを示している。
【0080】
図20(a)は、#1もしくは#5と同一ウェハ上から切り出した試料を、Back-side XPS分析した結果であり、Oの1s軌道に由来するスペクトルを示している。図中には、HfSiON、SiO2、SiONの中のO(Hf−O−Si、Si−O−Si)に対応するピーク位置(P1)と金属との結合状態にあるO(Hf−O−Hf、Ta−O−Hf、Ta−O−Ta)に対応するピーク位置(P2)も図示してある。図20(b)は、P1成分とP2成分とをピーク分離し、そのピーク強度比のTake off angle(TOA)依存性を示す。P2/(P1+P2)比は、#5よりも#1の方がより多く、またTOAの増大とともに大きくなる。
【0081】
図20(b)は、#5よりも#1の方が金属との結合状態にあるOが多く、さらにその量はメタルゲート(MG)/ゲート絶縁膜(HK)界面近傍によりに多いことを示している。これは、HfSiONからSiが引き抜かれた結果Hf/(Hf+Si)比が増加しHfSiONがHfO2に近いものに変質したため、もしくは、HfSiONを還元したTaがTa−O結合を作るためと考えられる。HfSiONよりもHfO2やTaOxの方が誘電率は高い。
【0082】
図21(a)は、Hf4fのスペクトルを示す。図中には、HfSiONの中のHf(Hf−O−Si)に対応するピーク位置(P1)と金属との結合状態にあるHf(Hf−C、Hf−Ta)に対応するピーク位置(P2)も図示してある。
【0083】
図21(b)は、P2/(P1+P2)比のTOA依存性を示す。P2/(P1+P2)比は、#5よりも#1の方がより多く、またTOAの増大とともに大きくなる。図20(b)は、#5と比べ#1ではMG/HK界面近傍においてTaもしくはCと結合しているHfの割合が多いことを示している。これは、Hf−O結合のOを界面の余剰Taが奪ったためHf−TaもしくはHf−C結合が形成されるためと考えられる。
【0084】
以上の事実より、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層は、従来のCリッチ組成Tax1-x電極層よりも反応性が高いが故に、ゲート絶縁膜と反応し、界面において相互拡散や界面結合状態の組み換えが発生し、結果として電気的に良好な界面特性が実現されることが見出された。上記の知見に基づいて構成されたCMIS半導体装置の実施形態を以下に説明する。
【0085】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るCMIS半導体装置は、本発明の共通概念を説明するのに用いた図1と同一になるので図1を援用し、既に説明した部分の説明は省略する。第1の実施形態のCMIS半導体装置におけるゲート電極6、16は、Taリッチ組成Tax1-x電極層(x>0.5)の単層である。
【0086】
前記したように、Taリッチ組成Tax1-x電極層6、16はNaCl型の多結晶構造で、xは0.5より大である。ゲート電極6,16とゲート絶縁膜5,15の界面の法線方向に対するTaC(200)面の結晶配向比率[TaC(200)面/{TaC(200)面+TaC(111)面}]は、50%より大きい。電極層の層厚は0.5nm以上、50nm以下であるが、単層であることを考慮すると2〜50nmとするのが好ましい。ゲート絶縁膜5、15にはHfSiONを使用する。
【0087】
第1の実施形態によれば、シリコンCMOSデバイス等に用いるのに適した簡易なシングルメタルゲート構造と高い反転層キャリア移動度を有する半導体装置が実現できる。
【0088】
(第2の実施形態)
図22は、第2の実施形態に係るCMOS半導体装置の断面図である。図1と共通部分には共通番号を付して、重複する説明を省略する。第2の実施形態のCMOS半導体装置は、積層ゲート電極構造を有し、TaリッチTax1-x電極層61 、161 と、その上に形成されたポリシリコン電極62 ,162 を有することである。ポリシリコン電極は、従来のMOS半導体装置において賞用されていた材料であり、従来の半導体プロセスとの適合性に優れている。
【0089】
第2の実施形態におけるTax1-x電極層61 、161 は、NaCl型の多結晶構造で、xは0.5より大である。ゲート電極6,16とゲート絶縁膜5,15の界面の法線方向に対するTaC(200)面の結晶配向比率[TaC(200)面/{TaC(200)面+TaC(111)面}]は、50%より大きい。TaC電極層の層厚は0.5nm以上、10nm以下で、ポリシリコン層62 ,162 との層厚は、例えば50nmとする。ゲート絶縁膜5、15にはHfSiONを使用する。
【0090】
第2の実施形態によれば、従来のプロセスに適合したシングルメタルゲート構造と高い反転層キャリア移動度を有するCMOS半導体装置が実現できる。
【0091】
(第3の実施形態)
図23は、本発明の第3の実施形態に係るCMOS半導体装置を表す模式断面図である。第3の実施形態の半導体装置は、Taリッチ組成Tax1-x電極層(x>0.5)61 、161 、耐熱メタル層63 、163 、多結晶Si層62 、162 の三層を有する積層電極構造をp チャネルMISトランジスタ、nチャネルMISトランジスタの両方のゲート電極として有することを特徴としている。
【0092】
メタルゲート技術の一形態として、所謂MIPS構造(Metal Inserted Poly Si)は実用上有望である。これは、ゲート絶縁膜と従来の多結晶Siゲート電極の間に薄いメタル電極層を挿入した構造を言う。ここで、薄いメタル電極層とは、単層でも多層でも良い。MIPS構造は、従来の多結晶ゲート技術の製造工程と類似点が多く、親和性、互換性が高い。十分に低い抵抗のポリシリコン層を使用でき、ゲートのドライエッチング加工が容易になる等の利点もある。そのため、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層(x>0.5)もMIPS技術と組み合わせて使用するのが望ましい。
【0093】
Taリッチ組成Tax1-x電極層とMIPS技術の組み合わせにおいては、Tax1-x電極層の組成xと層厚dの設計値によっては、次の技術的工夫が有効である。
【0094】
Taリッチ組成Tax1-x電極層は従来のCリッチ組成Tax1-x電極層よりも反応性が高く、ゲート絶縁膜だけでなく上部のポリシリコン層と反応する場合がある。その場合所望のTaリッチ組成Tax1-x電極層の性質が変質し、本発明の効果が得られないか、制御性が悪くなる懸念がある。また、 前述のように本発明の効果を発揮するには、2nm以下のTaリッチ組成Tax1-x電極層でも良い。しかし、Taリッチ組成Tax1-x電極層の層厚が特に薄い場合、上記の懸念が高まる。
【0095】
上部ポリシリコンとの反応もあらかじめ考慮し、上部ポリシリコンと反応してもなお下部ゲート絶縁膜との望ましい界面反応を引き起こすよう、Taリッチ組成Tax1-x電極層の組成xと層厚dを設計しておけば、単層Taリッチ組成Tax1-x電極層とMIPS技術の組み合わせも有効である。
【0096】
また、より制御性よく上記の懸念を払拭するには、本発明のTaリッチ組成Tax1-x電極層とポリシリコン層の間に反応性に乏しい、耐熱メタル層を挿入することが有効である。耐熱メタル層としては、Cリッチ組成Tax1-x層、TiN層、HfCx層、WN層、TaN層、などのチタン, モリブデン, タングステン, タンタルなどの高融点金属の炭化物、窒化物が有効である。また、それらの積層であっても良い。その中でも、特に、Cリッチ組成Tax1-x層とTiN層が有効である。
【0097】
Cリッチ組成Tax1-x層が有効な理由は、Taリッチ組成Tax1-x電極層と同じ元素系で構成されるため、ゲート電極層を加工する際の反応性ドライエッチングの工程が簡単化できる。Taリッチ組成Tax1-x層/Cリッチ組成Tax1-x電極層/TiN層/ポリシリコン層の積層は、前述の#4に相当し、従来のCリッチ電極技術と比較して、良好な移動度とゲートリーク電流(Jg )が実証されている。
【0098】
TiN層が有効な理由は、TiNが既に現在の半導体製造工程で使用されている材料であるため、その反応性ドライエッチングの難易度が低いことにある。Tax1-x層の反応性ドライエッチングは、Tax1-xの化学的安定性の高さに由来して比較的難しい。メタル電極層のドライエッチングでは、テーパー(裾引き) 形状発生、アンダーカット(ノッチ) 形状発生などの加工問題がしばし問題となる。これを容易に回避するため、Taリッチ組成Tax1-x電極層の層厚を比較的薄く設計し、上記耐熱メタル層としてTiNを使用する。こうすれば、TiN層はドライエッチング容易であり、Taリッチ組成Tax1-x層も薄いのでドライエッチングが容易になる。また、実際にTaリッチ組成Tax1-x層/TiN層/ポリシリコン層の積層は、前述の#1〜#3に相当し、従来のCリッチ電極技術と比較して、良好な移動度とゲートリーク電流(Jg )が実証されている。
【0099】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。第1および第2の実施形態では製造方法を説明しなかったが、本実施形態に同一工程が含まれるので、本実施形態の説明により兼ねるものとする。
【0100】
まず、半導体基板(1,2,3)の主表面上に素子分離層4を形成する。基板は、シリコン基板や、SOI基板、ゲルマニウム基板、シリコン基板の上にゲルマニウム層を形成したもの、シリコン基板上にシリコンゲルマニウム層の中間層を挟みゲルマニウム層を形成したものであってよい。素子分離層4の形成方法は、局所酸化法や、STI(Shallow Trench Isolation)法であってもよく、素子分離層4の形状は、メサ型でもよい。
【0101】
素子分離層4を形成した後、p型ウェル領域2及びn型ウェル領域3を形成する。また、n型ウェル領域3の上にSiGe層、もしくはSiのキャップ層を有するSiGe層を形成し、最終的にpMISがSiGeチャネルを有するようにしても良い。また、p型ウェル領域2に窒素をイオン注入しても良い。また、n型ウェル領域3にフッ素をイオン注入しても良い。
【0102】
p型ウェル領域2及びn型ウェル領域3の上部表面にゲート絶縁膜5及び15を形成する。また、ゲート絶縁膜形成前に、ゲート絶縁膜とチャネルとの界面層としてSiO2や、SiONを形成しても良い。界面層の形成手法は、熱酸化や、プラズマ熱酸化、オゾン水処理、化学酸化、プラズマ窒化、アンモニア熱処理などであってよく、それらの組み合わせでも良い。
【0103】
また、ゲート絶縁膜形成前に、nMISの界面層上に、La,Ce,Pr,Tb,Dy,Er、Yb,Y、Mg,Sr,Baもしくはそれらの酸化物の薄膜を形成してもよい。また、ゲート絶縁膜形成前に、pMISの界面層上に、AlもしくはAl酸化物の薄膜を形成してもよい。
【0104】
ゲート絶縁膜5,15の形成方法については、Hf及びZrから選ばれる金属元素の酸化物、もしくは、Hf及びZrから選ばれる金属元素のシリケート、もしくはHfのジルコネートからなる高誘電率膜を、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相蒸着)法もしくはALD(Atomic Layer Deposition)法で堆積させてもよい。また、ゲート絶縁膜形成後に、ゲート絶縁膜をプラズマ窒化してもよい。また、La−Hf−O膜や、La−Al−O膜をレーザーアブレーション法、もしくはALD法で形成しても良い。
【0105】
また、ゲート絶縁膜形成後に、nMISのゲート絶縁膜上に、La,Ce,Pr,Tb,Dy,Er、Yb,Y、Mg,Sr,Baもしくはそれらの酸化物の薄膜を形成してもよい。また、ゲート絶縁膜形成後に、pMISのゲート絶縁膜上に、AlもしくはAl酸化物の薄膜を形成してもよい。
【0106】
その後、ゲート絶縁膜5,15の上部表面に、ゲート電極6(61,62,63),16(161,162,163)となる単層または多層の導電膜を、既知の方法で形成する。スパッタ法もしくはCVD法により、Taリッチ組成Tax1-x電極層を形成する。また、Taリッチ組成Tax1-x電極層形成後、連続して、Cリッチ組成Tax1-x電極層を形成しても良い。また、Taリッチ組成Tax1-x電極層の上部にチタンナイトライドをPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長法)により形成しても良い。さらにその後、その上部表面に多結晶シリコン層を減圧CVD法により50nm成膜する。
【0107】
その後、フォトリソグラフィ技術によるパターニングを行い、引き続き、リソグラフィーによるパターニングを行い、異方性エッチングによりゲート電極6,16の形状の加工を行い、リンとボロンのイオン注入によりn型及びp型MISトランジスタの高不純物濃度の浅いエクステンション領域9,19を形成する。エクステンション領域9,19の形成には、選択エピタキシャル成長法を用い、デバイス特性としても短チャネル効果の抑制が可能であるエレベート型ソース・ドレイン構造を用いてもよい。また、エレベート型ソース・ドレイン構造の形成の際に、同時に不純物を導入してもよい。
【0108】
次に、ゲート電極とソース・ドレイン領域の絶縁のための側壁絶縁膜8,18を形成する。エクステンション領域形成時よりも大きな加速電圧により、リン及びボロンのイオン注入を行い、深い拡散領域(ディープ領域)10,20を形成する。その後、不純物の活性化のため、1000℃程度のスパイクアニールを施す。活性化処理方法としては、フラッシュランプアニール、レーザアニール等を用いることもできる。
【0109】
その後、減圧CVDにより層間絶縁膜24となるシリコン酸化膜を堆積し、CMP(Chemical Mechanical Planarization:化学機械平坦化)によりゲート電極6及16の上端を露出させる。
【0110】
その後、図示は省略しているが必要に応じ、スパッタ法等によりポリシリコンゲート電極63及び163の上面にニッケル層を10nm成膜する。その後、500℃の低温熱処理を行うことによって、ニッケルと多結晶シリコンとの界面領域からシリサイドが形成され、Ni2Siが形成される。その後、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いて未反応のNiを除去する。
【0111】
ここで、本実施形態においては多結晶シリコンの一部だけをシリサイド化しているが、Niの膜厚をより厚くすることによって多結晶シリコンを全てシリサイドへと変換しても良い。その場合、通常ソース・ドレインへのイオン注入時に同時に行われる、低抵抗化のためのゲートのポリシリコンへの不純物ドープが不要になり、ゲートポリシリコンから絶縁膜を解して基板への不純物の拡散の懸念を完全に払拭できる。これは、メタルゲート層の層厚が薄い場合有効な場合がある。
【0112】
以上説明した製造方法により、図23に表す構造のCMISFET半導体装置が作製される。本実施形態の半導体装置は、pMISトランジスタとnMISトランジスタと同一のゲート電極を使用するシングルゲート構造であるため、ゲート電極の作り分けの必要が無い。従って、工程が簡便であり、作り分けする際の絶縁膜表面の損傷、変質を完全に回避することが可能である。
【0113】
このように、本実施形態は前述の実施形態と同様な効果を奏するとともに、ゲート加工が容易なCMIS半導体装置を提供することができる。
【0114】
(第4の実施形態)
FIG.24は、第4の実施形態に係るCMIS半導体装置の概略構成を示す斜視図である。本実施形態は、p型、n型の半導体領域を基板表面から突出させた、所謂FinFETに適用したものである。
【0115】
Si基板(半導体基板)30上にSiO2 などの埋め込み絶縁膜31が形成され、この絶縁膜31上に、Fin状のp型Si層(第1の半導体領域)32とFin状のn型SiGe層(第2の半導体領域)33が平行に形成されている。p型Si層32の上面および側面の一部には、Laが添加されたHfSiON膜からなるゲート絶縁膜34が形成されている。n型SiGe層33の上面及び側面の一部には、Alを添加されたHfSiON膜からなるゲート絶縁膜35が形成されている。
【0116】
さらに、各ゲート絶縁膜34、35を覆うように、ポリシリコン/Taリッチ組成Tax1-xの積層膜からなる共通のゲート電極36が形成されている。また、ゲート電極36の側面には、ゲート側壁絶縁膜37が形成されている。
【0117】
なお、ここではポリシリコン/Taリッチ組成Tax1-xの2層積層電極の場合を説明したが、第3の実施形態で説明したように、ポリシリコン/耐熱メタル層/Taリッチ組成Tax1-xの3層の積層電極を適用してもよい。また、図24では、便宜上1つのトランジスタが1つのFin状の半導体層を有しているが、1つのトランジスタが複数のFin状の半導体層を有していても構わない。
【0118】
第4の実施形態によっても、前述の実施形態と同様な効果を奏するとともに、FinFET特有の効果を併せ持たせることができる。
【0119】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0120】
例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各具体例は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも、本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施形態に係るCMIS半導体装置の断面図。
【図2】基礎実験に用いた5種類の試料の電極構造を示す模式図。
【図3】5種類の試料の構成材料、寸法を示す表。
【図4】Taモル比0.59のTaC電極(as depo on SiO2)における深さと構成原子の原子比との関係を示す特性図。
【図5】Taモル比0.43のTaC電極(as depo on SiO2)における深さと構成原子の原子比との関係を示す特性図。
【図6】5種類の試料における表面キャリア濃度と電子移動度の関係を示す特性図。
【図7】5種類+2種類の試料におけるオン時酸化膜換算ゲート絶縁膜厚(Tinv)とゲートリーク電流(Jg)との関係を示す特性図。
【図8】#1およびその派生品の試料におけるEOTとフラットバンド電圧の関係を示す特性図。
【図9】本発明のTaリッチTaC層が多結晶であることを示すTEM像で、(a)は明視野像、(b)は暗視野像。
【図10】Taモル比が0.59、0.43、0.27で、1000℃程度で熱処理したTaC試料のXRD分析の結果を示す図(a)と、配向性比率を示す表(b)。
【図11】Taモル比が0.59、0.43、0.27で、熱処理しないTaC試料のXRD分析の結果を示す図(a)と、配向性比率を示す表(b)。
【図12】TaリッチTaC層における余剰Ta、C欠損の模式図。
【図13】#1と#5に同等なデバイスウェハのBackside XPS分析スペクトル図(Ta4f)。
【図14】5種類のTaC試料についてのゲート電圧とゲート・チャネル間キャパシタンスの関係を示す特性図。
【図15】5種類の試料のTinvを示す図。
【図16】Taモル比0.59のTaC試料の層厚と、ΔTinvの関係を示す図であり、ΔTinvは、Taモル比0.43のTaC試料のTinvを基準としたTinvの減少分。
【図17】ゲート積層部のTEM像で、(a)は#1の試料、(b)は#5の試料。
【図18】#1と#5の試料に対する Backside SIMS分析の結果を示す図。
【図19】#1と#5の試料に対する Backside XPS分析の結果を示す図(Si2p)。
【図20】#1と#5の試料に対する Backside XPS分析の結果を示す図(O1s)。
【図21】#1と#5の試料に対する Backside XPS分析の結果を示す図(Hf4f)。
【図22】第2の実施形態に係るCMIS半導体装置の断面図。
【図23】第3の実施形態に係るCMIS半導体装置の断面図。
【図24】第4の実施形態に係るCMIS半導体装置の斜視図。
【符号の説明】
【0122】
1、30…半導体基板
2…p型ウェル領域
3…n型ウェル領域
4…素子分離層
5、15、34,35、…ゲート絶縁膜
6,16、36…ゲート電極
1 ,161 …TaリッチTaC層
2 ,162 …耐熱メタル層
3 ,163 …ポリシリコン層
8,18、37…側壁絶縁膜
9,19…エクステンション領域
10,20…ディープ領域
24、31…層間(埋め込み)絶縁膜
32…p型Si領域
33…n型SiGe領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたpチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタとを具備し、
前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタは、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極層を夫々備え、
前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタの前記ゲート電極における、少なくとも前記ゲート絶縁膜と接する最下層は、TaとCを含む同一組成を有し、CとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大であり、前記最下層は同一配向性を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたpチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタとを具備し、
前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタは、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された、TaとCを含む同一の組成と同一の配向性を有するゲート電極層と、前記ゲート電極層上に形成されたポリシリコン層を夫々備え、
前記ゲート電極層のCとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上と、前記半導体基板上に形成されたpチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタを具備し、
前記pチャネルMISトランジスタとnチャネルMISトランジスタは、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成された、TaとCを含む同一の組成と同一の配向性を有する第1のゲート電極層と、前記第1のゲート電極層に接して積層された金属よりなる第2のゲート電極層と、前記第2のゲート電極層上に形成されたポリシリコン層を夫々備え、
前記第1のゲート電極層のCとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5より大であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記第2のゲート電極層はTaとCを含む合金からなり、前記第2のゲート電極層のCとTaとの合計に対するTaのモル比(Ta/(Ta+C))が0.5以下であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2のゲート電極層はTiとNを含む合金からなることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のゲート電極層は、NaCl型構造からなる多結晶構造であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1のゲート電極層の膜厚は、0.5nm以上、10nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1のゲート電極層と前記ゲート絶縁膜の界面の法線方向に対するTaC(200)面の結晶配向比率[TaC(200)面/{TaC(200)面+TaC(111)面}]は、50%より大きいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜が、HfとSiとを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜は、前記pチャネル型トランジスタ用には、Alを含み、前記nチャネル用には、La,Ce,Pr,Tb,Dy,Er、Yb,Y、Mg,Sr,Baのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2009−267160(P2009−267160A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116204(P2008−116204)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】