説明

TiC膜を含む半導体構造を形成する方法

【課題】 TiC膜を含む半導体構造を形成する方法を提供する。
【解決手段】 高誘電率(k)の誘電体14および界面層12を含む積層体を基板10の表面上に設けるステップと、Heによって希釈された炭素(C)源およびArを含む雰囲気において、Tiターゲットをスパッタすることにより、前記積層体上にTiC膜16を形成するステップとを含む、半導体構造を形成する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TiC膜を含む半導体構造を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
標準CMOS装置では、一般に、ポリシリコンが標準のゲート材料である。ポリシリコン・ゲートを使用してCMOS装置を製造する技術は不断の開発状態にあったし、今や半導体産業において広範に使用されている。ポリシリコン・ゲートを使用する1つの利点は、それらが高温に耐え得るということである。
しかし、ポリシリコン・ゲートの使用に関連した幾つかの問題点も存在する。例えば、ポリデプリーション(poly-depletion)効果および比較的高い電気シート抵抗(約150オーム/□)のために、CMOS装置において一般に使用されるポリシリコン・ゲートは、0.1ミクロン以下のチャネル長に対するチップ性能の決定的な要素となりつつある。ポリシリコン・ゲートに関するもう1つの問題点は、ホウ素のようなポリシリコン・ゲートにおけるドーパントが、薄いゲート誘電体を通して容易に拡散してデバイス性能の低下を生じさせ得るということである。
【0003】
ポリシリコン・ゲートに関する問題点を回避するために、ポリシリコン・ゲートを単一の金属と置換することが提案された。そのような技術が提案されたが、単一の金属は、高誘電率(k)誘電体(4.0よりも大きい誘電率)と界面層のゲート積層体上では熱的に安定しない。例えば、タングステンWおよびレニウムReは、1000℃における安定性の問題を有する。タングステンは、1000℃、5秒のアニール後の4〜5Åでの界面SiOの再成長を示して装置のスケーリングを制限し、Reは、高誘電率(k)のゲート積層体上で安定せず、装置(移動度)の低下を導く。これに関しては、例えば、IEDM2004,p825,S.Francisco Ca,Dec.13-15,2004におけるA.Callegari氏他による論文およびVLSI
Digest 2004, Hawaii June 2004におけるNarayanan氏他による論文を参照されたい。
【0004】
1000℃における安定性は、自己整合型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)においてソース/ドレイン注入を活性化することを必要とする。更に、高温アニールを行うと、高い電子移動度が得られることが報告されている。これに関しては、例えば、IEDM 2004, p825, S. Francisco Ca, Dec. 13-15, 2004におけるA.Callegari氏他による論文を参照されたい。TiNのような金属窒化物が、金属/高誘電率(k)誘電体の熱的安定性を改良するために広く使用されてきた。しかし、TiNに関して報告された研究のほとんどは、TiNが、装置性能を制限していると思われるミッド・ギャップ型の材料である。
【0005】
上記に鑑み、高誘電率(k)の誘電体を含むゲート積層体上で熱的に安定した新しい金属化合物の提供を求める要求が存在する。特に、pFET装置において有用な新しい金属化合物の提供を求める要求が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEDM 2004,p825, S.Francisco Ca, Dec.13-15,2004におけるA.Callegari氏他による論文。
【非特許文献2】VLSI Digest 2004,HawaiiJune 2004におけるNarayanan氏他による論文。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、TiC膜を含む半導体構造を形成する方法を提供することであり、具体的には、約4.75乃至約5.3eV、望ましくは、約5eV
の仕事関数を有し且つ高誘電率(k)の誘電体および界面層を含むゲート積層体上で熱的に安定した、p型金属であるTiC膜(金属化合物)の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高誘電率(k)の誘電体および界面層を含む積層体を基板の表面上に設けるステップと、Heによって希釈された炭素(C)源およびArを含む雰囲気において、Tiターゲットをスパッタすることにより、前記積層体上にTiC膜を形成するステップとを含む、半導体構造を形成する方法である。
【0009】
本発明のTiC膜(金属化合物)は、p型金属酸化物半導体(pMOS)装置において14Åよりも小さい反転層厚へのスケーリングおよび非常に意欲的な等価酸化膜厚(EOT)を可能にする、1000℃においても非常に効率的な酸素拡散障壁(バリア)となる。
【0010】
高誘電率(k)の誘電体という用語は、本明細書全体を通して、SiOよりも大きい誘電率を有する絶縁材料、例えば、4.0よりも大きい誘電率kを有する絶縁材料を表わすために使用されるということに留意されたい。望ましくは、高誘電率(k)の誘電体は約7.0以上のkを有する。
【0011】
「界面層」という用語は、本明細書全体を通して、例えば、SiOおよびSiONを含む少なくともSiまたはOの原子から成る絶縁材料を表わすために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】高誘電率(k)の誘電体および界面層を含む積層体上にp型金属ゲートとしてTiC金属化合物を含む積層膜構造を形成する場合に使用される処理ステップを(断面図によって)示す概略図である。
【図2】ポリSi/ゲート金属の自己整合型FET構造を形成するための本発明の基本的な処理ステップを(断面図によって)示す概略図である。
【図3】N内の1000℃でのアニール、その後のフォーミング・ガス環境におけるアニール後の、TiC/HfO/SiOゲート積層体のキャパシタンス対電圧(CV)特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、本願に添付した図面を参照することによって、詳細に説明する。本発明に関する図面は説明を目的に提供され、従って、正確な縮尺で描かれているのではないことに留意されたい。
【0014】
先ず、図1(A)〜(C)を参照する。これらの図は、高誘電率(k)の誘電体および界面層を含む積層体上に本発明のTiC金属化合物を含む積層膜構造を形成する場合に使用される基本的な処理ステップを示す。図1(A)は、半導体基板10の表面上に界面層12を含む初期積層膜構造を示す。
【0015】
本発明において使用される半導体基板10は、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeC、Ga、GaAs、InAs、InP、およびすべての他のIV/IV族、III/V族、またはII/VI族化合物半導体を含むがこれらに限定されない任意の半導体材料を含む。半導体基板10は、有機半導体、またはSi/SiGe、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)或いはSiGeオン・インシュレータ(SGOI)のような積層された半導体も含み得る。本発明の一部の実施例では、半導体基板10が、Si含有半導体材料、即ち、シリコンを含む半導体材料から構成されることが望ましい。半導体基板10は、不純物がドープされるかまたはドープされなくてもよく、或いはドープされた領域およびドープされない領域を含んでもよい。
【0016】
半導体基板10は、第1のドープされた(nまたはp)領域および第2のドープされた(nまたはp)領域を含むことができる。明確にするために、ドープされた領域は本明細書の図面には詳しく示されない。第1のドープされた領域および第2のドープされた領域は同じであってもよく、或いは異なる導電型または異なるドーピング濃度もしくはこれら両方を有してもよい。ドープされた領域は「ウェル(well)」として知られている。半導体基板10は、歪まされてもよいし、歪まされなくてもよく、或いはその組合せであってもよい。更に、半導体基板10は、例えば、100、110、111、またはそれらの組合せを含む任意の結晶配向を有してもよい。それとは別に、半導体基板10は、異なる結晶配向の少なくとも2つの平面を含むハイブリッド基板であってもよい。
【0017】
少なくとも1つの分離領域(図示されていない)が、一般に、半導体基板10内に形成される。分離領域は、トレンチ分離領域またはフィールド酸化物分離領域であってもよい。トレンチ分離領域は、当業者には周知の一般的なトレンチ分離プロセスを利用して形成される。トレンチ分離領域の形成において、例えば、リソグラフィ、エッチング、およびトレンチ誘電体によるトレンチの充填を使用することも可能である。任意選択的に、トレンチ充填の前にライナ層が形成されてもよく、トレンチ充填の後に高密度化ステップが行われてもよく、平坦化プロセスがトレンチ充填に後続してもよい。所謂シリコン・プロセスの局部的酸化を利用して、フィールド酸化物が形成されてもよい。一般には隣接するゲートが反対の導電型を有するときに必要とされる隣接ゲート領域間の分離を、少なくとも
1つの分離領域が行うということに留意されたい。隣接するゲート領域は同じ導電型(即ち、共にn型またはp型)を有してもよく、或いは、それとは別に、それらは異なる導電型(一方がn型および他方がp型)を有してもよい。
【0018】
次に、界面層12が、酸化または酸窒化のような熱プロセス、化学的付着(CVD)、プラズマ支援CVD、原子層付着(ALD)、蒸発、スパッタリング、および化学溶液付着のような付着プロセス、またはそれらの組合せを利用して半導体基板10の表面上に形成される。別の方法として、付着プロセスおよび窒化物形成が、界面層12を形成するために使用されてもよい。界面層12は、任意選択のNと共に、少なくともSiおよびOの原子を含む。従って、界面層12は、SiO、SiON、それらのシリケート(ケイ酸塩)、またはそれらの多層構造を含み得る。一部の実施例では、界面層12はSiOを含むが、別の実施例では、界面層12はSiONを含む。界面層12は、約1乃至約80原子パーセントSi、典型的には、約1乃至約20原子パーセントSiを含む。残りはOまたはNもしくはこれら両方である。化学的酸化物は、典型的には、Nの存在なしで使用される。Siは、界面層12全体にわたって連続的に存在し得るし、或いはそれは段階的に変動され(graded)得る。
【0019】
界面層12は、一般に、約4.0乃至約20の誘電率を有するが、約4.5乃至約18の誘電率が更に典型的である。界面層12は、一般に、約0.1乃至約5nmの厚さを有するが、約0.2乃至約2.5nmの厚さが更に典型的である。
【0020】
次に、図1(B)に示されるように、高誘電率(k)の誘電体14が界面層12の上に形成される。「高誘電率(k)」という用語は、4.0よりも大きい、一般には、約7.0以上の誘電率を有する絶縁物を表わす。高誘電率(k)の誘電体14は、例えば、酸化、窒化、または酸窒化のような熱成長プロセスによって形成されてもよい。それとは別に、高誘電率(k)の誘電体14は、例えば、化学的付着(CVD)、プラズマ支援CVD、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、原子層付着(ALD)、蒸着、反応性スパッタ、および化学的溶液付着、および他の同様の付着プロセスによって形成されてもよい。誘電体14は、上記のプロセスの任意の組合せを利用しても形成されてもよい。
【0021】
例示として、本発明において使用される高誘電率(k)の誘電体14は、酸化物、窒化物、酸窒化物、およびシリケート(金属シリケートおよび窒化金属シリケートを含む)を含むが、それらに限定されない。一実施例では、高誘電率(k)の誘電体14は、HfO、ZrO、Al、TiO、La、SrTiO、Y、Ga、GdGa0およびそれらの混合物のような酸化物から構成される。高誘電率(k)の誘電体14の非常に望ましい例は、HfO、ハフニウム・シリケートまたはハフニウム・シリコン・オキシナイトライドを含む。
【0022】
高誘電率(k)の誘電体14の物理的な厚さは変わり得るが、典型的には、高誘電率(k)の誘電体14は約0.5乃至約10nmの厚さを有し、約0.5乃至約3nmの厚さが更に典型的である。
【0023】
図1(B)に示された積層構造を準備した後、TiC金属化合物層16が高誘電率(k)の誘電体14の上に形成され、例えば、図1(C)に示される構造を与える。本発明によれば、TiC金属化合物層16は、およびTiターゲットと、He希釈された炭素源およびArを含む雰囲気とを準備するステップ、しかる後、前記雰囲気において前記TiターゲットからTiC膜をスパッタするステップによって形成される。本発明によれば、Heは炭素源を希釈するために使用される。炭素源を希釈するために使用することが可能なHeの量は、典型的には約70乃至約99%であるが、更に典型的には約90乃至約98%であり、更に典型的には約95%である。スパッタ処理は、任意の一般的なスパッタ装置の反応室において生じる。
【0024】
本発明において使用されるTiターゲットはTiの任意の固体ソースを含む。TiC膜のスパッタ時の雰囲気において使用される炭素源は、例えば、アルカン(CH、C、および他のC2n+2化合物のようなCの二重結合を含む有機化合物の単一結合を含む有機結合体)、アルケン(Cおよび他のC2nのようなCの二重結合を含む)、およびアルキン(CのようなCの三重結合を含む)を含む炭素化合物を含有した任意の有機物を含む。望ましくは、炭素源はアルキンであり、Cが最も望ましい。炭素源は、固体、液体、または気体であるが、気体の炭素源が最も望ましい。
【0025】
本発明の一部の実施例では、本発明において使用されたHe希釈された炭素源およびArの流量が、Arに対して約1乃至約100sccmであり、炭素源に対しては約1乃至約100sccmである。典型的には、Arの流量は約20sccmであり、He希釈された炭素源の流量は約16sccmである。温度、気圧、および時間のような他のスパッタ条件が一般的であり、当業者にはよく知られている。
【0026】
形成されたTiC膜16の厚さは、使用されたスパッタ条件および製造されるべき装置のタイプ次第で変わり得る。典型的には、TiC膜16は、スパッタの後、約2乃至約200nmの厚さを有し、約5乃至約50nmの厚さが更に典型的である。
【0027】
図1(C)に示された構造は、その後、任意の一般的なCMOS処理フローを利用して、CMOS装置、例えば、FETに形成され得る。一部の実施例では、図1(C)に示された積層構造がそのまま処理され得るし、或いは、それとは別に、Si含有ゲート材料18がTiC層16の上に形成され得る。図2(A)〜(D)はSi含有材料18の存在を示すが、Si含有材料が形成されないときには、一般に次のような処理ステップが使える。TiC層16しか含まないパターン化されたゲート領域20のその後のシリサイド化が一般には行われないということに留意されたい。
【0028】
図2(A)に示された実施例では、ポリシリコン、SiGe、およびSiGeCのようなSi含有材料18がTiC層16の上に形成される。従って、この実施例では、Si含有材料18およびTiC層16が多層ゲートを形成する。別の実施例では、TiCは単一金属ゲートとして使用される。使用されるSi含有材料18は、単結晶、多結晶、またはアモルファス状態であるか、またはそのような形態の混合物から成る。
【0029】
Si含有材料は、一般には、その場(in-situ)付着プロセスを利用して、または付着、イオン注入、およびアニールによってドープされる。TiCがp型金属であるので、ドーパントはp型ドーパントである。本発明のこの時点で形成されたSi含有材料18の厚さ、即ち、高さは使用されるプロセスに従って変わり得る。典型的には、Si含有材料18は約20乃至約180nmの垂直方向厚を有し、約40乃至約150nmの厚さが更に典型的である。
【0030】
図示された処理の実施例では、Si含有材料18、TiC層16、任意選択的には高誘電率(k)の誘電体14、および界面層12が、パターン化されたゲート領域、即ち、積層体20を提供するようにリソグラフィおよびエッチングによってパターン化される。単一のパターン化されたゲート領域(即ち、積層体)20が示されるが、本発明は、複数のパターン化されたゲート領域(即ち、積層体)20を形成することを意図するものである。複数のパターン化されたゲート領域(即ち、積層体)が形成されるとき、そのゲート領域は同じ寸法、即ち、長さを有してもよく、または、装置性能を改善するために可変の寸法を有してもよい。本発明のこの時点における各パターン化されたゲート領域(即ち、積層体)20は少なくともパターン化されたTiC層16を含む。図2(B)は、各パターン化されたゲート領域(即ち、積層体)20の形成後の構造を示す。図示の実施例では、Si含有材料18、TiC層16、高誘電率(k)の誘電体14、および界面層12が、本発明のこのステップ中にエッチングされる、即ち、パターン化される。
【0031】
リソグラフィ・ステップは、図2(A)または図1(C)に示されたブランケット積層構造の上面にフォトレジストを塗布するステップと、そのフォトレジストを所望の照射パターンに露光するステップと、通常のレジスト現像装置を用いて該露光されたフォトレジストを現像するステップとを含む。次に、1つ以上のドライ・エッチング・ステップを利用して、フォトレジストのパターンが構造に変換される。一部の実施例では、パターンがブランケット積層構造の層の1つに変換された後、そのパターン化されたフォトレジストは除去され得る。別の実施例では、エッチングが完了した後で、そのパターン化されたフォトレジストが除去される。
【0032】
パターン化されたゲート領域(即ち、積層体)20を形成する場合に本発明で使用し得る適当なドライ・エッチング・プロセスは、反応性イオン・エッチング、イオン・ビーム・エッチング、プラズマ・エッチング、またはレーザ・アブレーションを含むが、それに限定されない。その使用されるドライ・エッチング・プロセスは、下にある高誘電率(k)の誘電体14にとって一般には選択的であるが、いつもそうであるとは限らず、従って、このエッチング・ステップは、典型的には、高誘電率(k)の誘電体14および界面層12を含む積層体を除去しない。しかし、一部の実施例では、図2(B)に示されるように、以前にエッチングされたゲート領域(即ち、積層体)の材料層によって保護されない高誘電率(k)の誘電体14および界面層12の部分を除去するためにエッチングを使用することも可能である。
【0033】
次に、例えば、図2(C)に示されるように、少なくとも1つのスペーサ22が、一般には、パターン化されたゲート領域(即ち、積層体)20の露出した側壁に形成されるが、いつもそうであるとは限らない。少なくとも1つのスペーサ22が、酸化物、窒化物、酸窒化物、またはそれらの組合せのような絶縁物から構成される。少なくと1つのスペーサ22は、付着またはエッチングによって形成される。
【0034】
少なくとも1つのスペーサ22の幅は、ソースおよびドレイン・シリサイド・コンタクト(その後に形成される)がゲート領域(即ち、積層体)20のエッジの下に侵入しないように十分に幅広くなければならない。典型的には、ソース/ドレイン・シリサイドは、少なくとも1つのスペーサ22が、最下部において測定した場合、約20乃至約80nmの幅を有するとき、ゲート領域(即ち、積層体)20のエッジの下に侵入しない。
【0035】
ゲート領域(即ち、積層体)20は、それに熱的な酸化、窒化、または酸化窒化プロセスを受けさせることによってスペーサ形成前に不動態化してもよい。不動態化(パッシベーション)は、ゲート領域(即ち、積層体)20の付近に不動態材料の薄い層(図示されてない)を形成する。このステップは、スペーサ形成という前のステップの代わりにまたはそれに関連して使用されてもよい。それがスペーサ形成と共に使用されるとき、スペーサ形成は、ゲート領域(即ち、積層体)20の不動態化プロセスの後に行う。
【0036】
次に、ソース/ドレイン拡散領域24が(スペーサ領域と共に、またはそれの存在なしに)基板内に形成される。ソース/ドレイン拡散領域24は、イオン注入およびアニール・ステップを利用して形成される。アニール・ステップは、前の注入ステップによって注入されたドーパントを活性化するように働く。イオン注入およびアニールのための条件は当業者には周知である。イオン注入およびアニールの後に形成された構造が図2(D)に示される。
【0037】
ソース/ドレイン拡散領域24は、通常の拡張(エクステンション)注入を使用してソース/ドレイン注入の前に形成される拡張注入領域(個別にラベル付けされてない)も含んでもよい。拡張注入は活性化アニールによって後続されてもよく、或いは、それとは別に、拡張注入およびソース/ドレイン注入中に注入されたドーパントが同じ活性化アニール・サイクルを使用して活性化されてもよい。本明細書では、ハロー注入(図示されてない)も考慮される。ソース/ドレイン拡張領域は、一般に、深いソース/ドレイン領域よりも狭く、パターン化されたゲート領域(即ち、積層体)20のエッジと揃えられるエッジを含む。
【0038】
次に、高誘電率(k)の誘電体14および下にある界面層12は、それらが事前に除去されなかった場合、これらの絶縁材料を選択的に除去する化学的エッチング・プロセスを利用して除去される。このエッチング・ステップは半導体基板10の上面において停止する。高誘電率(k)の誘電体14および下にある界面層12の露出した部分の除去において任意の化学的エッチング液を使用し得るが、一実施例では希釈フッ化水素酸(DHF)が使用される。
【0039】
図2(D)は、ソース/ドレイン拡散領域24上のシリサイド領域26、およびSi含有材料18(それが存在する場合)の存在を示す。Si含有材料18上のシリサイドは、任意選択であり、ゲート領域(即ち、積層体)上にSi含有材料が存在しない場合には形成されない。シリサイド領域26は、任意の一般的なシリサイド化プロセスを利用して形成される。一部の実施例では、少なくともソース/ドレイン拡散領域24上にSi含有材料が存在しないとき、エピタキシャルSiまたはアモルファスSiのようなSi含有材料がシリサイド化の前に形成されてもよい。
【0040】
シリサイド化プロセスは、シリサイド化されるべき領域の上に、Co、Ti、W、Ni、Pt、またはそれらの合金のような導電性且つ高融点金属をC、Ge、Si等のような他の合金添加物によって形成するステップを含む。CVD、PECVD、スパッタ、蒸着、またはめっきのような通常の付着プロセスを使用することが可能である。任意選択的には、金属の酸化を防ぐ障壁層が金属層の上に形成されてもよい。任意選択的なバリア層の例は、例えば、SiN、TiN、TaN、TiON、およびそれの組合せを含む。金属付着に続いて、その構造は、付着された金属とSiとの間に反応を生じさせ、かつその後の金属シリサイドの形成を生じさせる第1のアニールを受ける。アニールは、典型的には、約250℃乃至約800℃の温度で行われる。なお、約400℃乃至約550℃の第1アニール温度がより典型的である。
【0041】
一部の実施例では、第1アニールは、選択的エッチ・プロセスに対して非常に耐性のある金属に富んだ(メタル・リッチ)シリサイド相を形成する。メタル・リッチ相が生じるとき、低抵抗性のシリサイドを形成するためには第2の高温アニールが必要となる。別の実施例では、低抵抗性のシリサイドを形成する場合、第1アニールが十分である。
【0042】
第1アニールに続いて、付着された金属の未反応の残り部分が、ウェット・エッチング、反応性イオン・エッチング(RIE)、イオン・ビーム・エッチング、またはプラズマ・エッチングのような通常のエッチング・プロセスを使って除去される。
【0043】
必要な場合、第2アニールがエッチング・プロセスの後に行われる。第2アニールは、典型的には、第1アニールよりも高い温度で行われる。その第2アニール(任意選択)に対する典型的な温度範囲は約550℃乃至約900℃である。
【0044】
金属相互接続による後工程(BEOL:バック・エンド・オブ・ザ・ライン)相互接続レベルの形成のような更なるCMOS処理を、当業者には周知である処理ステップを利用して形成することも可能である。
【0045】
以下の例は、本発明のプロセスおよびそれを使ってTiC含有ゲート積層体を形成する場合に得られる幾つかの利点の説明を行うものである。
【0046】
この例では、TiC/HfO/SiO積層体がSiウェハの表面上に形成された。SiO界面層がSiウェハの酸化によって形成された。SiO界面層の厚さは約1.2nmであった。約3nmの厚さを有するHfO誘電体はMOCVDによってSiO界面層上に形成された。次に、それぞれが20および16sccmの流速を用いるAr/C(He中に5%)を含む雰囲気およびTiターゲットを準備することによって、TiC層が形成された。TiC層は約40nmの厚さを有した。
【0047】
積層体の形成後、その積層体はN中で1000℃における急熱アニールを受け、450℃アニールにおけるガスの形成が別個に行われた。図3は、この積層体のCV特性を示す。CVは10kHzで行われ、往復トレースされた。そのトレースは、低い電荷トラップを表わすヒステリシスがないことを示す。1x1011電荷/cmよりも低い低インターフェース状態を表わすCV特性が理想的のように見える。j.Wiley & Sins社のPhysics of Semiconductor Devices誌, Second Edition, pages 395-397 においてS.M. Szeにより計算されたように、積層体に対する仕事関数が、pMOS装置にとっては一般的である、5eVであったということに留意されたい。従って、この積層体を使って製造されたpFETは、ゲート積層体において具現化された高誘電率(k)の誘電体のために、かなりのゲート・リークの減少(〜5桁の大きさ)を伴う約14Åの反転層厚で動作しなければならない。現在のSiO技術は、ずっと大きなゲート・リークを伴う約19Åの反転層厚を有する。
【0048】
本発明を好適な実施例に関して詳しく示し、説明したが、発明の主旨および範囲から逸脱することなく、形態および細部における上記および他の変更を施し得るということは当業者には明らかであろう。従って、本発明が、開示および図示された形態および細部そのものに限定されるのではなく、「特許請求の範囲」の記載の範囲内にあるということは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高誘電率(k)の誘電体および界面層を含む積層体を基板の表面上に設けるステップと、
Heによって希釈された炭素(C)源およびArを含む雰囲気において、Tiターゲットをスパッタすることにより、前記積層体上にTiC膜を形成するステップと
を含む、半導体構造を形成する方法。
【請求項2】
前記TiC膜の上にSi含有導電材料層を形成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記積層体と、前記TiC膜と、前記Si含有導電材料層とをパターン化してゲート構造体を形成するステップを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲート構造体の両側の前記基板内にソース/ドレイン領域を形成するステップを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素(C)源がアルカン、アルケン、またはアルキンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素源がアルキンおよびCである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Heが、前記炭素源を希釈するために70乃至99%の量で使用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−191220(P2012−191220A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108582(P2012−108582)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2007−551253(P2007−551253)の分割
【原出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【復代理人】
【識別番号】100134740
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 文雄
【Fターム(参考)】