説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】歪みの高いキャリア移動領域における寄生抵抗及びエネルギー障壁を小さくするための半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板1上にゲート絶縁膜7を介して形成されたゲート電極13bと、半導体基板1のうちゲート電極13bの下方に形成されるチャネル領域6cと、チャネル領域6cの両側方に形成され、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層23と、第1の炭化シリコン層23上にチャネル領域6cに接合して形成され、第1リン濃度より多い第2リン濃度でリンを含み、第1炭素濃度以下の第2炭素濃度で炭素を含む第2の炭化シリコン層24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSトランジスタを高速動作させるために、ゲート電極の下のチャネル領域に歪みを加えることが知られている。例えば、NMOSトランジスタでは、チャネル領域に引張応力を加える膜がチャネル領域の側部に形成され、またPMOSトランジスタでは、チャネル領域に圧縮応力を加える膜がチャネル領域の側部に形成される。それらにより、チャネル領域を移動するキャリアの移動度を高くすることができる。
【0003】
チャネル領域に歪みを加えるために、ソース/ドレイン領域にリセスを形成し、その中に炭化シリコン(SiC)又はシリコンゲルマニウム(SiGe)のヘテロエピタキシャル膜を選択的に形成することが知られている。
SiCは、緩和状態においてシリコンよりも格子定数が小さい。従って、シリコン基板の(001)面に格子整合させてエピタキシャル成長したSiC膜は、成長方向にも格子が歪み、その結果、チャネル領域の側面の(110)面を基板面に垂直に、格子収縮させることができる。
【0004】
そのようなSiC膜は、チャネル領域の表面より下側の領域で炭素(C)の膜厚方向の濃度分布が一定になるように形成される。Cの膜厚方向の濃度分布を一定するために、例えば、反応室内に導入されるヘリウム中のモノメチルシラン(MMS)を20%に設定することが知られている。
【0005】
また、ソース/ドレイン領域のSiC膜をチャネル領域の表面より上にも形成する場合には、その表面より上のSiCの堆積部分では炭素ガスを徐々に減らすか或いは停止して形成することが知られている。これにより、チャネル領域の表面より上のソース/ドレイン領域ではチャネル領域から離れるほどC濃度が徐々に低下するかほぼゼロになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−216955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、チャネル領域に歪みを加えつつ、ソース/ドレイン領域の寄生抵抗及びエネルギー障壁を抑えることができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの観点によれば、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記半導体基板のうち前記ゲート電極の下方に形成されるチャネル領域と、前記チャネル領域の両側方に形成され、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層と、前記第1の炭化シリコン層上で前記チャネル領域に接合して形成され、第1リン濃度より高い第2リン濃度でリンを含み、前記第1炭素濃度以下の第2炭素濃度で炭素を含む第2の炭化シリコン層とを有することを特徴とする半導体装置が提供される。
他の観点によれば、半導体基板にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板をエッチングすることにより、前記ゲート電極の両側に第1の凹部を形成する工程と、前記第1の凹部を形成する工程の後、前記ゲ
ート電極側壁に第1サイドウォールスペーサを形成する工程と、前記ゲート電極及び前記第1サイドウォールスペーサをマスクとして、前記半導体基板をエッチングすることにより、前記第1の凹部の下に第2の凹部を形成する工程と、前記第2の凹部内に、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層を形成する工程と、前記第1の炭化シリコン層を形成した後、前記第1サイドウォールスペーサを除去する工程と、前記第1サイドウォールスペーサを除去する工程の後、前記第1の凹部内と前記第1の炭化シリコン層の上に、前記第1リン濃度より高い第2リン濃度でリンを含む第2の炭化シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
さらに別の観点によれば、半導体基板にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板に第1のドーズ量、第1の加速エネルギーで炭素をイオン注入する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板に第2のドーズ量、第2の加速エネルギーでリンをイオン注入する工程と、前記ゲート電極の両側面にサイドウォールスペーサを形成する工程と、前記ゲート電極及び前記サイドウォールスペーサをマスクとして前記半導体基板に、第1のドーズ量以上の第3のドーズ量、第3の加速エネルギーで炭素をイオン注入する工程と、前記ゲート電極及び前記サイドウォールスペーサをマスクとして前記半導体基板に、第2のドーズ量以下の第4のドーズ量、第4の加速エネルギーでリンをイオン注入する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
ゲート電極の側方の半導体基板に順に形成される第1の炭化シリコン層、第2の炭化シリコン層にはそれぞれリンがドープされている。第2の炭化シリコン層内のリン濃度は、第1の炭化シリコン層内のリン濃度よりも高い。また、第1の炭化シリコン層内の炭素濃度は、第2の炭化シリコン膜内の炭素濃度よりも高くなっている。
このため、第2の炭化シリコン層に接合するチャネル領域に大きな引張歪みが加わり、第2の炭化シリコン層端のエネルギーバリアを抑制するとともに、抵抗増を抑制することができる。これにより、チャネル領域内の電子の移動度を高くするとともに、チャネル領域から第1の炭化シリコン層に電子を注入し易くなる。
さらに、炭素濃度が高い第2の炭化シリコン層によりチャネル領域に大きな歪みを加えることができる。
第2の炭化シリコン層は、第1の炭化シリコン層に比べて炭素濃度が低い。しかし、高濃度のリンが炭素による歪みの発生を補助するために、第2の炭化シリコン層によるチャネル領域での引っ張り歪みを高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】図1A〜図1Cは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その1)である。
【図1D】図1D〜図1Fは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その2)である。
【図1G】図1G〜図1Iは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その3)である。
【図1J】図1J〜図1Lは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その4)である。
【図1M】図1M〜図1Oは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その5)である。
【図1P】図1P〜図1Rは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その6)である。
【図1S】図1S〜図1Uは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その7)である。
【図1V】図1V〜図1Xは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その8)である。
【図1Y】図1Yは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る半導体装置のNMOSトランジスタのソース領域及びドレイン領域の膜厚方向の炭素、リンの濃度分布図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る半導体装置のNMOSトランジスタのソース領域、チャネル領域及びドレイン領域のエネルギーバンドの伝導帯を示す図である。
【図4】図4は、シリコンゲルマニウムの歪みパラメータの値と炭化シリコン中の炭素の原子数比の関係を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態の半導体装置の製造に用いられるホウ素、炭素、リン、シリコン、ゲルマニウムの各元素についての緩和格子定数と共有結合半径の関係を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態の半導体装置のソース/ドレイン領域のシリコン膜に添加される炭素濃度とリンのドーピング量と面外格子定数の関係を示す図である。
【図7】図7は、不純物濃度と見かけ上のエネルギーバンドギャップの狭窄の関係kを示す図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置のチャネル領域の歪みを従来との関係で示す図である。
【図9】図9は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置のソース/ドレイン領域に形成されるリンドープト炭化シリコン層のラマンシフトとラマン強度の関係を従来との比較で示す図である。
【図10A】図10A〜図10Cは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その1)である。
【図10D】図10D〜図10Fは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その2)である。
【図10G】図10G〜図10Iは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その3)である。
【図10J】図10J〜図10Lは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その4)である。
【図10M】図10M〜図10Oは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その5)である。
【図10P】図10P〜図10Rは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その6)である。
【図11A】図11A〜図11Cは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その1)である。
【図11D】図11D〜図11Fは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その2)である。
【図11G】図11G、図11Hは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の形成工程を示す断面図(その3)である。
【図12】図12A、本発明の実施形態に係る半導体装置に使用されるシリコン層への炭素イオン注入とリンイオン注入の方法を示す断面図、図12Bは、本発明の実施形態に係る半導体装置に使用されるシリコン層への炭素とリンのそれぞれのイオン注入条件の違いによるシリコン化合物をラマン分光法による分析結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の目的および利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素および組み合わせによって実現され達成される。また、前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、典型例および説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない、と理解すべきである。
以下に、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。図面において、同様の
構成要素には同じ参照番号が付されている。
【0012】
チャネル領域に歪みを加えるための方法としては例えば3つの方法が挙げられる。
第1に、2つのソース/ドレイン領域に埋め込まれる2つのエピタキシャル膜の間隔をさらに狭める方法である。第2に、エピタキシャル膜が埋め込まれるリセスをより深くすることである。第3に、SiC膜内のC濃度を高くして歪みを大きくすることである。
【0013】
2つの領域のエピタキシャル膜を互いに接近させて深く形成すると、リセスの(110)面が広くなって歪みを大きくすることができる。
一方、C濃度を高くすると歪みは大きくなるが、C濃度が高くなるにつれてSiC膜による寄生抵抗が増し、ソース領域とドレイン領域の間の抵抗も高くなる。
【0014】
また、SiCのエネルギーバンドギャップは、Siのエネルギーバンドギャップよりも広く、しかもC濃度が高くなるにつれてさらに広くなる。従って、SiC膜のC濃度が高くなると、ソース領域の端部でのキャリア注入効率が高くなるが、ドレイン領域の端部ではシリコンとのエネルギーバンドギャップ差が大きくなり、その境界に電子走行のエネルギー障壁が生じる。
【0015】
以上のことから、SiCエピタキシャル層のC濃度を高くすることにより、抵抗の増加とエネルギー障壁の形成という2つの不都合が生じる。
しかし、C濃度を高くしなければ、ソース領域端で歪みを大きくし、キャリア電子の有効質量を小さくすることができず、これによりキャリア注入速度を大きくすることができない。
(第1の実施の形態)
図1A〜図1Xは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0016】
まず、図1Aに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
半導体基板、例えばn型又はp型のシリコン基板1上面にドライ熱酸化法によりシリコン酸化膜2を例えば約10nmの厚さに形成する。酸化時には、酸素含有雰囲気の温度を例えば約900℃に設定する。なお、半導体基板は、SOI基板であってもよい。
【0017】
その後に、シリコン酸化膜2上にシリコン窒化膜3をCVD法により約112nmの厚さに形成する。シリコン窒化膜3は、例えばジクロルシラン(SiHCl)とアンモニア(NH)を有するガスを使用し。基板温度を約750℃に設定することにより形成される。
【0018】
続いて、素子分離領域Aに開口部を有するレジストパターン(不図示)をシリコン窒化膜3上に形成した後に、そのレジストパターンをマスクに使用してシリコン窒化膜3とシリコン酸化膜2をエッチングする。これにより、素子分離領域Aにおいて、シリコン窒化膜3及びシリコン酸化膜2に開口部3aが形成される。素子分離領域Aは、活性領域Bを区画する領域である。
【0019】
レジストパターンを除去した後に、図1Bに示すように、シリコン窒化膜3をマスクに使用し、開口部3aを通してシリコン基板1をドライエッチングする。これにより、シリコン基板1には素子分離用溝1aが形成される。エッチングガスとして塩素系ガスを用いる。
【0020】
次に、図1Cに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、素子分離用溝1a内とシリコン窒化膜3上に、シリコン酸化膜をプラズマCVD
法により形成する。シリコン酸化膜は、素子分離用溝1a内を完全に埋める厚さに形成される。さらに、シリコン窒化膜3を研磨ストッパーとして使用し、シリコン酸化膜を化学機械研磨(CMP)法により研磨し、シリコン窒化膜3の上面上から除去する。これにより、素子分離用溝1aとその中に埋め込まれたシリコン酸化膜はシャロートレンチアイソレーション(STI)4となる。
なお、素子分離構造として、STI4の替わりに、LOCOS法によりシリコン基板1表面にシリコン酸化膜を形成してもよい。
【0021】
次に、図1Dに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、シリコン窒化膜3を例えば約150℃の熱リン酸により除去し、続いてシリコン窒化膜3の下のシリコン酸化膜2をフッ酸(HF)により除去する。STI4はフッ酸によりエッチングされて薄くなる。
【0022】
さらに、STI4により区画されるPMOS形成領域にn型不純物、例えば燐又は砒素をイオン注入してnウェル5を形成する。また、STI4により区画されるNMOS形成領域にp型不純物、例えばホウ素をイオン注入してpウェル6を形成する。不純物イオンを注入する際には、イオンを注入しない領域をレジストパターンにより覆う。なお、イオン注入された不純物はアニールにより活性化される。
【0023】
次に、図1Eに示すように、シリコン基板1の表面にドライ熱酸化法によりゲート絶縁膜7としてシリコン酸化膜を約1.5nmの厚さに形成する。その後に、ゲート絶縁膜7及びST4Iの上にポリシリコン膜8をCVD法により約100nmの厚さに形成する。
【0024】
続いて、図1Fに示すように、ポリシリコン膜8上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像することにより、pウェル6の上方に開口部9aを有するレジストパターン9を形成する。続いて、レジストパターン9をマスクにして、n型不純物であるリンをポリシリコン膜8内にイオン注入する。リンのドーズ量を例えば8×1015cm―2とする。その後に、レジストパターン9を除去する。
【0025】
さらに、図1Gに示すように、nウェル5の上方に開口部10aを有するレジストパターン10をポリシリコン膜8の上に形成する。続いて、レジストパターン10をマスクにして、ポリシリコン膜8にp型不純物であるホウ素をイオン注入する。ホウ素のドーズ量を例えば6×1015cm−2とする。続いて、レジストパターン10を除去する。
その後に、ポリシリコン膜8に注入されたn型及びp型の不純物を高速熱アニール(RTA)により活性化する。
【0026】
次に、図1Hに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、ポリシリコン膜8の上に絶縁膜11としてシリコン窒化膜をCVD法により約30nmの厚さに形成する。
続いて、絶縁膜11の上にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストを露光、現像等することにより、ゲート電極形状及び配線形状のレジストパターン12を形成する。
【0027】
さらに、レジストパターン12から露出した絶縁膜11及びポリシリコン膜8をエッチングし、その後に、レジストパターン12を除去する。これにより、図1Iに示すように、nウェル5、pウェル6の上方に残されたポリシリコン膜8をそれぞれ第1、第2ゲート電極13a、13bとする。
【0028】
次に、図1Jに示すように、シリコン基板1、第1のゲート電極13a、第2のゲート電極13b及び絶縁膜11の上に厚さ約10nmのシリコン窒化膜14をCVD法により形成する。この場合、ゲート電極13a、13b内の不純物の拡散を防止するために、シ
リコン窒化膜14の形成温度を例えば500℃以上、600℃未満の範囲に設定する。
【0029】
次に、図1Kに示すように、シリコン窒化膜14をエッチバックする。これにより、シリコン基板1の上面を露出させるとともに、第1、第2のゲート電極13a、13bの側面にシリコン窒化膜14を残存させて絶縁性のサイドウォールスペーサ14sとする。
【0030】
次に、図1Lに示すように、サイドウォールスペーサ14s、シリコン窒化膜11及びSTI4をマスクに使用し、nウェル5とpウェル6の表面を例えばプラズマエッチング法によりエッチングする。これにより、nウェル5及びpウェル6において、第1、第2のゲート電極13a、13bのそれぞれの両側の領域に深さ約10nmの第1、第2のリセス(凹部)15、16を形成する。この場合、エッチングガスとして、塩素と希釈ガスを含むガスを用いる。
なお、第1、第2のリセス15、16を形成しない活性領域をレジストパターン17により覆う。
【0031】
フォトレジスト17を除去した後に、図1Mに示すように、第1、第2のゲート電極13a、13b、絶縁膜11、サイドウォールスペーサ14s、STI4及びシリコン基板1の上に、シリコン酸化膜18をCVD法により約5nmの厚さに形成する。この場合の成長ガスとして、例えばシラン、酸素を含むガスを使用する。
【0032】
さらに、シリコン酸化膜18の上にシリコン窒化膜19をプラズマCVD法により約20nmの厚さに形成する。この場合の成長ガスとして、シラン、アンモニアを含むガスを使用する。
続いて、シリコン窒化膜19上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像等することにより、pウェル6の上方に開口部20aを有するレジストパターン20を形成する。
【0033】
次に、図1Nに示すように、開口部20aを通して、シリコン窒化膜19及びシリコン酸化膜18を例えばRIE法によりエッチングすることにより、pウェル6の第2のリセス16を露出させる。そして、シリコン窒化膜18及びシリコン窒化膜19を絶縁性のサイドウォールスペーサ21として第2のゲート電極13bの側面に残す。
この場合のエッチングガスとして、例えばフッ素系ガスを含むガスを使用する。
【0034】
この場合、nウェル5上方のシリコン窒化膜19及びシリコン酸化膜18は、レジストパターン20に覆われているのでエッチングされない。その後に、レジストパターン20を除去する。
【0035】
次に、図1Oに示すように、シリコン窒化膜19、ゲート電極13a、13b、STI4及びサイドウォールスペーサ21をマスクに使用して、pウェル6をドライエッチングする。これにより、第2のリセス16のうち第2のゲート電極13bから離れた一部の領域の下に第3のリセス22を形成する。第3のリセス22は、シリコン基板1の表面から例えば約40nmの深さに形成される。
【0036】
第3のリセス22と第2のリセス16は、第2のゲート電極13bの近くの領域でステップ形状となる。
なお、第3のリセス22を形成するためのエッチングガスとして、例えば、塩素を含むガスを使用する。
【0037】
その後に、第3のリセス22の表面をスムーズにするため、有機アルカリ・酸、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)によりpウェル6をエッチングし、これにより第2のリセス16の深さをさらに約10nm増やしてもよい。
【0038】
次に、図1Pに示すように、第3のリセス22から露出するpウェル6上に、第1のリンドープト炭化シリコン層23を選択エピタキシャル成長する。第1のリンドープト炭化シリコン層23は、第3のリセス22を埋める厚さ、例えば30nm程度の厚さに形成される。リンドープト炭化シリコン層を形成するための反応ガスとして、SiHとPとSiCとHを用いる。
【0039】
リンドープト炭化シリコンは、Si1−y−zの組成で示される。その組成式において、y、zは原子数比であり、yとzの合計は1より小さい。
第1のリンドープト炭化シリコン層23のは、炭素を2.0at%(原子パーセント)以上、2.5at%以下の原子数比率、即ち濃度で含み、さらにリンを0at%より大きく、1.0at%以下の原子数比率で含む。例えば、yを0.02、zを0.005、即ち、炭素を2.0at%、リンを0.5at%とする。リン濃度を2at%は、単位体積当たり1×1021cm―3であり、その濃度の調整はPの流量調整により行う。
【0040】
第1のリンドープト炭化シリコン層23の形成時には、基板温度を600℃未満とする。その温度条件では、Si1−y−zの成長レートが低いので、エッチングガスとなるHClを添加することにより第1のSi1−y−zを選択成長することが難しい。なお、エッチングガスは、シリコン窒化膜19上に成長する非晶質のSi1−y−zを選択的に除去するために添加される。
【0041】
そこで、例えば深さ30nmの第3のリセス22を厚さ約30nmのSi1−y−zで埋めるには、成長を複数回、例えば3回に分けて成長するとともに、それぞれの成長後毎に反応室内の導入ガスを塩素系ガス、例えばHClガスに切り替える。
これにより、シリコン窒化膜19、STI4及びサイドウォールスペーサ21上に形成された多結晶のリンドープト炭化シリコン層を導入ガスとの反応によりエッチングする。この場合、シリコン窒化膜19上の多結晶のリンドープト炭化シリコン層に対する第3のリセス22内の単結晶の第1のリンドープト炭化シリコン層23のエッチング選択比は1/20程度である。
【0042】
従って、シリコン窒化膜19上で厚さ10nmの多結晶のリンドープト炭化シリコン層をエッチングした後には、第3のリセス22内に単結晶の第1のリンドープト炭化シリコン層23が約9.5nmの厚さで残る。これにより、3回の膜形成と3回のエッチングを終えた後に、第3のリセス22内のリンドープト炭化シリコン層23は約28.5nmの厚さとなる。
従って、多結晶のリンドープト炭化シリコン層を約10.5nmの厚さに形成することにより、3回目のリンドープト炭化シリコン層のエッチング後に、第3のリセス22は約10nmの厚さの第1のリンドープト炭化シリコン層23により埋め込まれる。
【0043】
続いて、pウェル6の上に開口部を有するレジストパターン(不図示)を形成した後に、第2のゲート電極13bの側面上のサイドウォールスペーサ21をリン酸により除去する。さらに、レジストパターンを除去した後に、第2のゲート電極13bの側面上のシリコン酸化膜18をフッ酸により除去する。
これにより、図1Qに示すように、pウェル6の第2のリセス16が露出する。
【0044】
次に、図1Rに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第2のリセス16から露出するpウェル6、第1のリンドープト炭化シリコン層23の上に、第2のリンドープト炭化シリコン層24を形成する。第2のリンドープト炭化シリコン層24は、第1のリンドープト炭化シリコン層23に比べてリンの含有量が多く、しかも炭素の含有量が少なくなっている。
【0045】
第2のリンドープト炭化シリコン層24の材料は、Si1−y−zの組成式で示され、Cの原子数比率は0at%より大きく、1.5at%以下であり、Pの原子数比率は0%より大きく、2.0at%以下である。例えば、原子数比yを0.015、原子数比zを0.015、即ち、炭素濃度を1.5at%、リン濃度を1.5at%とする。
【0046】
その後に、塩素系ガス、例えばHClを用いてシリコン窒化膜19、サイドウォールスペーサ21及び第2のゲート電極13bの上に形成された多結晶の第2のリンドープト炭化シリコン層23をドライエッチングにより除去する。
単結晶のリンドープト炭化シリコン層のエッチングレートは多結晶のリンドープト炭化シリコン層のエッチングレートに比べて1/20程度である。従って、第1のリンドープト炭化シリコン層23の上に選択成長される第2のリンドープト炭化シリコン層24の厚さは、成長後のエッチングにより約5%薄くなるので、厚さ減少を見越して第2のリンドープト炭化シリコン層24を形成する。
【0047】
第2のリセス16を埋める第2のリンドープト炭化シリコン層24は、最終的に、その上面がシリコン基板1の上面と実質的に同じ高さになる厚さ、例えば約10nmの厚さに形成される。
【0048】
続いて、第2のリンドープト炭化シリコン層24上に第3のリンドープト炭化シリコン層25を約5nmの厚さに形成する。第3のリンドープト炭化シリコン層25は、例えば、第2のリンドープト炭化シリコン層24と同じ組成を有している。
その後、塩素系ガスを使用するドライエッチングにより、シリコン窒化膜19上の多結晶のリンドープト炭化シリコン層を除去する。
なお、第2、第3のリンドープト炭化シリコン層24、25は、サイドウォールスペーサ14sにより第2のゲート電極13bから分離されている。
【0049】
第1〜第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25の炭素濃度、リン濃度は、膜厚方向で例えば図2に示す分布となる。そして、積層された第1〜第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25は、第2のゲート電極13bの両側でソース領域26s、ドレイン領域26dとなる。
以上により、ソース領域26s、ドレイン領域26d、ゲート絶縁膜7、第2のゲート電極13b、pウェル6を有するNMOSトランジスタTが形成される。
【0050】
次に、図1Sに示すように、シリコン基板1の上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像することによりレジストパターン27を形成する。レジストパターン27は、pウェル6上の第2のゲート電極13b及び第3のリンドープト炭化シリコン層25等を覆うとともに、シリコン窒化膜19を露出する形状を有している。
【0051】
続いて、レジストパターン27から露出した領域のシリコン窒化膜19とシリコン酸化膜18を除去する。シリコン窒化膜19は、例えばフッ素系ガスを使用するプラズマエッチング法により除去され、シリコン酸化膜18は例えばフッ酸により除去される。その後に、レジストパターン27を除去する。
【0052】
次に、図1Tに示すように、シリコン基板1の上に新たにフォトレジストを塗布し、これを露光、現像することによりレジストパターン28を形成する。レジストパターン28は、nウェル5の上方に開口部28aを有するとともに、pウェル6を覆う形状を有している。
続いて、レジストパターン28の開口部28aを通してゲルマニウムイオン(Ge)をnウェル5内に注入することにより、第1のゲート電極13aの両側下方にゲルマニウ
ムシリコン領域30を形成する。Geのイオン注入条件として、加速エネルギーを20keV、ドーズ量を5×1014cm―2に設定する。
【0053】
さらに、開口部28aを通してフッ化ホウ素イオン(BF2+)をnウェル5内に注入することにより、第1のゲート電極13aの両側下方にp型エクステンション領域30aを形成する。その後に、レジストパターン28を除去する。
続いて、急速熱処理、例えばスパイクアニール若しくはミリセカンドアニールにより、p型エクステンション領域30aを活性化する。
【0054】
次に、シリコン基板1上に、第1、第2のゲート電極13a、13bを覆うシリコン酸化膜をCVD法により低温、例えば500以下で20nmの厚さに形成する。
続いて、フッ素系ガスを用いてRIE法によりシリコン酸化膜をエッチバックする。これにより、図1Uに示すように、nウェル5及びソース/ドレイン領域26a、26bを露出させるとともに、シリコン酸化膜を第1、第2のゲート電極13a、13bの側面上に絶縁性のサイドウォールスペーサ31a、31bとして残す。
【0055】
次に、図1Vに示すように、シリコン基板1の上にレジストパターン31を形成する。レジストパターン31は、pウェル6を覆うとともにnウェル5の上の第1のゲート電極13a、p型エクステンション領域30aを露出させる開口部31aを有している。
【0056】
その後に、第1のゲート電極13a及びレジストパターン31をマスクにして、p型不純物イオン、例えばホウ素イオン(B)をnウェル5に注入する。これにより、nウェル5のうち第1のゲート電極13aの両側に高濃度p型不純物領域30bを形成する。イオン注入条件として、例えば、加速エネルギーを3.0keV、ドーズ量を8×1015cm−2とする。
【0057】
続いて、950℃以下の温度で極短時間アニール、例えばスパイクアニールを行って高濃度p型不純物領域30bを活性化する。高濃度p型不純物領域30bは、第1のゲート電極13aの両側において、p型エクステンション領域30aとともにソース領域30s、ドレイン領域30dとなる。その後に、レジストパターン31を除去する。
以上により、ソース領域30s、ドレイン領域30d、ゲート絶縁膜7、第1のゲート電極13a、nウェル5を有するPMOSトランジスタTが形成される。
【0058】
さらに、図1Wに示すように、熱リン酸を使用し、第1、第2のゲート電極13a、13bの上の絶縁膜11であるシリコン窒化膜11を除去する。これにより、第1、第2のゲート電極13a、13bであるポリシリコン膜8の上面が露出する。
【0059】
次に、図1Xに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、ゲート電極13a、13b、シリコン基板1等の上に金属膜、例えばニッケル合金膜をスパッタ法により約10nmの厚さに形成する。さらに、例えば約300℃の急速熱処理(RTP)により、第3のリンドープト炭化シリコン層25、ソース/ドレイン領域30s、30d、ゲート電極13a、13bのそれぞれのシリコンとニッケル合金膜を反応させてシリサイド層32a〜32fを形成する。
【0060】
その後に、過硫酸等を使用してニッケル合金膜を除去する。さらに、400℃〜500℃の温度で追加の熱処理によりシリサイド層32a〜32fを低抵抗化する。
【0061】
次に、図1Yに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、PMOSトランジスタT、NMOSトランジスタT、シリコン基板1の上にエッチストップ膜33としてシリコン窒化膜を形成する。さらに、エッチストップ膜33
の上に、第1層間絶縁膜34としてCVD法によりシリコン酸化膜を形成する。
【0062】
続いて、第1層間絶縁膜34の上にレジストパターン(不図示)を形成する。レジストパターンは、第1、第2のゲート電極13a、13b、ソース/ドレイン領域30、第3のリンドープト炭化シリコン層25のそれぞれの上に開口部を有する
【0063】
さらに、レジストパターンの開口部を通して第1層間絶縁膜34をエッチングして、エッチストップ膜33に達するコンタクトホールを形成する。続いて、コンタクトホールを通してエッチストップ膜33をエッチングすることにより、コンタクトホールを深くして第1、第2のゲート電極13a、13b、ソース/ドレイン領域30及び第3のリンドープト炭化シリコン層25のそれぞれの上のシリサイド32a〜32fを露出させる。
【0064】
続いて、コンタクトホール内にTi膜をプラズマCVD法により2nm〜8nmの厚さに形成する。成膜ガスとして四塩化チタン又は四臭化チタンを含むガスを用いる。
【0065】
その後に、Ti膜上にTiN膜をスパッタ法により1nm〜20nmの厚さに形成する。さらに、TiN膜の上にタングステン(W)膜をメッキ法により形成する。W膜は、コンタクトホールを完全に埋め込む厚さに形成する。
【0066】
次に、第1層間絶縁膜34上のW膜、TiN膜、Ti膜をCMPにより除去する。これによりコンタクトホース内に残されたCu膜、TiN膜、Ti膜を導電性プラグ36a〜36fとする。
【0067】
その後に、第1層間絶縁膜34上に、第2層間絶縁膜37としてシリコン酸化膜を形成し、さらに、第2層間絶縁膜37に配線溝を形成する。配線溝の一部は、導電性プラグ36a〜36fを露出させる。
さらに、配線溝内にTaバリアメタル膜とCu膜を順に埋め込んだ後、第2層間絶縁膜37の上面上のTaバリアメタル膜とCu膜をCMPにより除去する。そして、配線溝内に残存したTaバリアメタル膜及びCu膜を配線38a〜38fとする。なお、配線38a〜38fとして、アルミニウム膜又はアルミニウム合金膜を有する積層構造をフォトリソグラフィ法によりパターニングしてもよい。
この後に、特に図示しないが、第2層間絶縁膜37の上にビア、絶縁膜、配線等が形成される、
【0068】
以上の実施形態において、NMOSトランジスタTでは、チャネル領域6cを挟むソース領域26sとドレイン領域26dは、それぞれ第1、第2及び第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25を有している。
従って、チャネル領域6cには横方向に引張応力が加わるので、チャネル領域6cを走行する電子の移動度が高くなる。
第1〜第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25内のリンと炭素の濃度分布は、厚さ方向で図2に示すプロファイルとなる。なお、膜の厚さ方向は、第2、第3のリセス16、22の深さ方向でもある。
【0069】
図2において、第1のリンドープト炭化シリコン層23内の炭素濃度は、第2のリンドープト炭化シリコン層24の炭素濃度よりも高い。これに対し、第2のリンドープト炭化シリコン層24のリン濃度は、第1のリンドープト炭化シリコン層23のリン濃度よりも高い。
【0070】
そのような炭素濃度の差に起因して、第2のリンドープト炭化シリコン層24のエネルギーバンドギャップは、第1のリンドープト炭化シリコン層23のエネルギーバンドギャ
ップよりも狭くなる。
【0071】
これにより、横方向でチャネル領域6cに接合する第2のリンドープト炭化シリコン層24のエネルギーバンドの伝導帯Ecのプロファイルは図3の実線に示すようになり、チャネル領域6cとソース/ドレイン領域26s、26dの境界にはバンドオフセットが生じる。この場合、ドレイン領域26dの第2のリンドープト炭化シリコン層24とチャネル領域6cの境界にバンドオフセットにより生じるエネルギーバリアは低く、チャネル領域6cからドレイン領域26dに注入される電子量の低減が抑制される。
【0072】
これに対し、第2のリンドープト炭化シリコン層23の炭素濃度を第1のリンドープト炭化シリコン層の炭素濃度と同じにすれば、伝導帯Ecのプロファイルは図3の破線に示す比較例のようになる。これにより、第2のリンドープト炭化シリコン層24とチャネル領域6cの境界のエネルギーバリアが高くなり、電子eがドレイン領域26に注入され難くなる。
【0073】
一方、本実施形態では、第2のリンドープト炭化シリコン層24のリン濃度を高くしているので、ソース領域26sとドレイン領域26dのうちチャネル領域6cに隣接する領域で導電率が増す。これに対し、第1のリンドープト炭化シリコン層24のリン濃度は、第2のリンドープト炭化シリコン層23よりも低いので、ソース領域26sとドレイン領域26dの下部の導電率があまり高くならない。しかし、第1のドープト炭化シリコン層23は、電子eが走行するチャネル領域6cから少し離れているので電子の移動に悪影響を与えない。
【0074】
リンは、チャネル領域6cに加える歪みについて炭素を補う効果があるので、低い炭素濃度の炭化シリコン層であっても、その中にリンをドープすることによりチャネル領域6cに炭素濃度に起因する以上の歪みをかけることができる。その詳細については後述する。
しかも、チャネル領域6cより下の第1のリンドープト炭化シリコン層22は、炭素濃度が高いので、第2のゲート電極13bの下のチャネル領域6cに引張応力をかけて電子走行速度を高くすることができる。
【0075】
以上により、チャネル領域6cで歪み量を高くし、同時に、電子が走行する領域における抵抗値の増加を抑制し、さらにエネルギーバリアの高さを抑制することができる。
ところで、第1のリンドープト炭化シリコン層23内の炭素濃度の原子数比率を2at%以上に設定しているのは次の理由による。
【0076】
nウェル5内のチャネル領域における正孔の移動度を高くするために、チャネル領域の両側にシリコンゲルマニウム(SiGe)膜をエピタキシャル成長する場合には、SiGe膜内でGeが原子数比率で18%以上含まれていることが好ましいとされている。
【0077】
SiGe結晶中のGeの原子数比率が18%の場合には、圧縮歪率は約2%である。歪率は、面内歪率εparaと面外歪率εverとの和である。
面内歪率εpara、面外歪率εverは、どちらもSiの格子定数に対するSiGeの格子定数の差の割合である。ただし、面内歪率εparaは、下面に平行な方向の歪率であり、また、面外歪率εverは、膜の成長方向の面の歪率である。εparaとεverはそれぞれ式(1)、(2)で示される。
なお、式(1)、(2)において、aSiGeはSiGeの面内格子定数、aSiGe⊥はSiGeの膜さ方向の格子定数、aSiはシリコンの格子定数である。
【0078】
εpara=(aSiGe−aSi)/aSi (1)
εver=(aSiGe⊥−aSi)/aSi (2)
【0079】
SiCの歪率の絶対値をSiGeと同様に2%程度にするためには、図4に示す関係から、単結晶SiC膜中のCの原子数比を0.02、即ち濃度を2at%に設定する。
一方、pウェル6のチャネル領域6cの両側のSi層にCをドープしない場合には、チャネル領域6cを挟むソース領域とドレイン領域の間の抵抗が約80Ω/sqとなる。これに対し、チャネル領域6cの両側に、Cを1.5at%の濃度で含むSiC層を形成すると、ソース領域とドレイン領域の間の抵抗が約120Ω/sq〜160Ω/sqとなる。
【0080】
また、C濃度が2at%のSiCをソース/ドレイン領域にエピタキシャル成長すると、ソース/ドレイン領域のエネルギーバンドギャップがシリコンのチャネル領域に比べて約110meV広くなり、図3の破線で示すように、ドレイン領域端にバンドオフセットによるエネルギーバリアが発生する。
ここで、SiC膜のSi膜に対する面内歪率εparaと成長方向の歪み率εverはそれぞれ式(3)、(4)で示される。式(3)、(4)において、aSiCはSiCの面内格子定数、aSiC⊥はSiCの成膜方向の格子定数、aSiはシリコンの格子定数である。
【0081】
εpara=(aSiC−aSi)/aSi (3)
εver=(aSiC⊥−aSi)/aSi (4)
【0082】
ドレイン領域端のエネルギーバリアを小さくするためには、SiC膜のC濃度を1.5at%以下に低くすることが好ましく、その状態で歪率を大きくし、併せて導電率を高くすることが好ましい。その目的を達成するためには、式(3)、(4)のaSiCとaSiC⊥をさらに小さくする方法がある。
例えば、Si母結晶において格子定数がSiより小さく、且つドナーとなる元素をSiC結晶に加える方法を採用する。
【0083】
Si、Ge、C、B(ホウ素)、P(リン)について共有結合半径と疑似ダイアモンド格子定数の関係は図5に示すようになる。なお、図5において、B、PについてはSi膜中でダイアモンド格子の定位置に存在すると仮定して計算している。
それらの元素のうちドナーであるPの共有結合半径は、Siの共有結合半径より小さい。Pの共有結合半径から換算した疑似ダイアモンド格子の格子定数を算出すると、Pの格子定数は0.493nmとなってSiの0.543nmよりも小さい。従って、Pは、格子定数の小さなCの歪効果をアシストすることができる。
【0084】
そこで、図5の格子定数を基にしてリンドープト炭化シリコンの格子定数を予測すると、図6に示す実線で示される。なお、図6において、面外格子定数εverは、膜厚方向の格子定数を示している。
図6によれば、例えば、C濃度=0.5at%、P濃度=1×1021atoms/cmの条件におけるεverは、C濃度=1.0at%、P濃度=0atoms/cmの条件におけるεverとほぼ等しくなる。また、C濃度=1.0at%、P濃度=1×1021atoms/cmの条件におけるεverは、C濃度=1.5at%、P濃度=0atoms/cmの条件におけるεverとほぼ等しくなる。さらに、C濃度=1.5at%、P濃度=1×1021atoms/cmの条件におけるεverは、C濃度=2.0at%、P濃度=0atoms/cmの条件におけるεverとほぼ等しくなる。
【0085】
ところで、シリコン基板の(001)面上に成長され、正方晶が歪んだ状態のリンドープト炭化シリコンについて、格子パラメータは次式(5)、(6)の関係がある。
それらの式において、a||は面内格子定数、aSiCP⊥は膜成長方向の格子定数、abulk(x,y)はPとCの原子数比x、yで示される合金のバルク格子パラメータ、Cij(x,y)はその合金の弾性定数である。CSiij、Ccij、CPijはそれぞれSi、C、Pの弾性定数である。
【数1】

【数2】

【0086】
従って、緩和状態におけるリンドープト炭化シリコンの混晶格子定数の値は、Vegard則により、同じ炭素濃度の炭化シリコン結晶の結晶格子定数よりも確実に小さくなる。
また、炭化シリコン結晶とシリコン結晶の接合部分のエネルギーバンド構造について、図3に示したと同様に、炭化シリコンとシリコンの界面にバンドオフセットが発生し、そのバンドオフセットは炭素濃度が高くなるほど大きくなる。
【0087】
大きなバンドオフセットは、チャネル領域からドレイン領域端に走行する電子のエネルギーバリアとなる。炭化シリコン層のC濃度を2at%とするとバンドオフセットは約100meVとなる。
これに対して、シリコン結晶に含まれるp型又はn型のドーパントが高濃度になると、エネルギーバンドギャップは伝導帯の縮退により縮小する効果、いわゆるバンドギャップナロー効果が発生する。
【0088】
図7は、バンドギャップ狭化の一例を示し、リンの濃度が約1×1019atoms/cm3を超えるとバンドギャップ狭化が顕著に現れ、リン濃度が1×1020atoms/cm3ではバンドギャップ狭化値は約100meVになる。
なお、pウェルのホウ素濃度によってはエネルギーバンドギャップが変わることがあるので、バンドオフセットによるエネルギーバリアを低くするためには、ホウ素濃度を考慮してソース/ドレイン領域のリン濃度を決める必要がある。
従って、炭化シリコン層に混入されるドーパント量を調整することにより、バンドオフセット量を低減してエネルギーバリアを低減できるとともに、ソース/ドレイン領域の抵抗を減らすことができる。
【0089】
ところで、本実施形態のNMOSトランジスタTのソース領域26s及びドレイン領域26dについて、例えば第2のリンドープト炭化シリコン層24内の炭素濃度を1.5at%以下、リン濃度を1.5at%とする。さらに、第1のリンドープト炭化シリコン層23内の炭素濃度を2.0at%、リン濃度を0.5at%の条件とする。
その条件で、ソース領域26sとドレイン領域26dの間のpウェル6において、表面から深さ5nmまでのチャネル領域6cに加わる引張応力による歪量について有限要素法(FEM)により予測したところ、図8の実線に示す結果が得られた。有限要素法では、格子定数の変化から換算した弾性定数を基本データとした。
【0090】
また、第1のリセス16内に、第2のリンドープト炭化シリコン層24の替わりに、第1のリンドープト炭化シリコン層23と同じリンドープト炭化シリコン層を形成したNMOSトランジスタを比較例とする。
そして、比較例についても、引張応力によるチャネ領域の歪量を有限要素法により予測
したところ、図8の波線に示す結果が得られた。
【0091】
図8によれば、本実施形態と比較例の双方におけるチャネル領域の歪量にほぼ差が見られない。従って、リンドープト炭化シリコン層において、シリコン結晶内の炭素濃度を減らしてリン濃度を高くすることはチャネル領域に歪みを発生させるために十分であることがわかる。しかも、ソース領域26sとドレイン領域26dの間の抵抗値とバンドオフセットのそれぞれの縮小については、図3及び図7により、本実施形態の方が比較例よりも優位である。
なお、図8においてεxxは面内歪みを示し、εyyは膜厚方向の歪みを示している。
【0092】
図9は、シリコン層、炭化シリコン層及びリンドープト炭化シリコン層について、UVラマン分光による測定結果を示している。シリコン層は単結晶であって図9ではSiで示している。また、図9においてC1%とC2%はそれぞれCを1at%、2at%含む2つの炭化シリコン層を示している。さらに、図8においてC2%+P1%は、Pを1at%、Cを2at%含むリンドープト炭化シリコン層を示している。
【0093】
図9によれば、シリコン層のラマンシフトのピークが520cm−1に存在する。また、炭化シリコン層及びリンドープト炭化シリコン層は、シリコン層に比べてラマンシフトの値が小さく、チャネル領域6cに引張歪みを生じさせる。また、炭素濃度が高いほどラマンシフトの値が小さく、引張歪みが大きくなる。さらに、炭素濃度が同じであってもリンを加えることによりラマンシフトがさらに小さくなって引張歪み量が増える。
【0094】
以上のことから、図1Yにおいて、ソース領域26sとドレイン領域26dのうちシリコン基板1の表面のチャネル領域6cに近い端部の炭素濃度を減らし、リン濃度を高くすることは、バンドオフセット量を減らすことができるとともに、ソース領域26sとドレイン領域26dの間の抵抗を小さくすることが可能になる。これにより、ソース領域26sとドレイン領域26dの間のチャネル領域6cにおける電子移動度を高くすることができる。
チャネル領域6cの引っ張り歪みを大きくするためには、チャネル領域6cの両側に形成されてチャネル領域6cより下方の第1のリンドープト炭化シリコン層23炭化シリコンの炭素濃度を2%以上にすることが好ましい。
【0095】
(第2の実施の形態)
図10A〜図10Rは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、第1実施形態と同様に、シリコン基板1に、STI4で区画されるnウェル5及びpウェル6を形成する。続いて、第1実施形態に示した方法により、nウェル5とpウェル6のそれぞれの上に、ゲート絶縁膜7を介して第1、第2のゲート電極13a、13bを形成する。
第1、第2のゲート電極13a、13bの上には、第1実施形態と同様に、絶縁膜11としてシリコン窒化膜が形成されている。
【0096】
次に、図10Aに示すように、nウェル5の上に開口部41aを有するとともにpウェル6を覆うレジストパターン41をシリコン基板1の上に形成する。続いて、第1のゲート電極13aをマスクに使用し、開口部41aを通してnウェル5内にp型不純物、例えばホウ素をイオン注入することにより、第1のゲート電極13aの両側のpウェル5内にp型エクステンション領域42を形成する。その後に、レジストパターン41を除去する。
【0097】
次に、図10Bに示すように、第1実施形態で示した方法により、第1、第2のゲート
電極13a、13bのそれぞれの側面に、絶縁性のサイドウォールスペーサ14sを形成する。サイドウォールスペーサ14sは、シリコン窒化膜から形成される。
続いて、図10Cに示すように、第1、第2のゲート電極13a、13b、絶縁膜11、サイドウォールスペーサ14s、STI4及びシリコン基板1の上に、シリコン酸化膜43をCVD法により約5nmの厚さに形成する。さらに、シリコン酸化膜43の上にシリコン窒化膜44をプラズマCVD法により約20nmの厚さに形成する。
その後に、シリコン窒化膜44上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像等することにより、pウェル6の上方でシリコン窒化膜44を露出する開口部45aを有するレジストパターン45を形成する。
【0098】
次に、図10Dに示すように、レジストパターン45の開口部45aを通して、シリコン酸化膜43が露出するまでシリコン窒化膜44をエッチバックする。これにより、第1のゲート電極13aの側面に、絶縁性のサイドウォールスペーサ44sを形成する。
その後に、レジストパターン45及びサイドウォールスペーサ44sをマスクに使用し、nウェル5上で露出しているシリコン酸化膜43をフッ酸により除去する。さらに、レジストパターン45を除去する。
【0099】
次に、図10Eに示すように、サイドウォールスペーサ44s、シリコン窒化膜44、絶縁膜11及びSTI4をマスクに使用し、プラズマエッチングによりnウェル5内に第1のリセス46を例えば30nmの深さに形成する。この場合のエッチングガスとして、例えば塩素系ガスを使用する。
さらに、図10Fに示すように、第1のリセス46から露出しているnウェル5上にSiGe膜47をCVD法により選択的にエピタキシャル成長する。SiGe膜47を形成するために、例えばSiH、GeH、H、B、HClを含む反応ガスを使用する。SiGe膜47において、例えば、Siの原子数比率は80%、Geの原子数比率は20%であり、Si0.8Ge0.2で示される。
【0100】
これにより、第1のゲート電極13aの両側方では、エクステンション領域42とSiGe膜47によりソース領域47s、ドレイン領域47dがそれぞれ形成される。
なお、SiGe膜47を例えば3ステップで形成し、各ステップの後に塩素系ガスを用いて、絶縁膜11、第2のサイドウォールスペーサ41及びシリコン窒化膜44の上の多結晶のSiGe膜を選択的にエッチングしてもよい。
次に、図10Gに示すように、pウェル5を覆うとともにシリコン窒化膜44を露出する形状を有するレジストパターン48をシリコン基板1の上に形成する。続いて、レジストパターン48をマスクにして、シリコン窒化膜44を熱リン酸により選択的に除去し、さらにフッ酸によりシリコン酸化膜43を除去する。続いて、図10Hに示すように、レジストパターン48を除去する。
【0101】
その後に、シリコン基板1の上にシリコン酸化膜49を形成した後に、pウェル6上を開口するレジストパターンをシリコン基板1の上に形成し、さらに、レジストパターンをマスクにしてpウェル6上のシリコン酸化膜49を除去する。これにより、図10Iに示すように、nウェル5上のSiGe膜47、サイドウォールスペーサ44s等を覆うとともに、第2のゲート電極13b及びサイドウォールスペーサ14sの両側でpウェル6を露出させる。
【0102】
次に、図10Jに示すように、絶縁膜11、サイドウォールスペーサ14s及びシリコン酸化膜49をマスクに使用して、pウェル6をプラズマエッチングする。これにより、第2のゲート電極13bの両側に第2のリセス16を例えば約10nmの深さに形成する。この場合のエッチングガスとして塩素系ガスを使用する。その後に、フッ酸によりシリコン酸化膜49を除去する。
【0103】
次に、図10Kに示すように、シリコン基板1の上に、シリコン酸化膜50をCVD法により例えば5nmの厚さに形成する。続いて、シリコン酸化膜50上にシリコン窒化膜51をCVD法により例えば20nmの厚さに形成する。さらに、シリコン窒化膜51の上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像することにより、pウェル6の上に開口部52aを有するレジストパターン52を形成する。
【0104】
さらに、図10Lに示すように、レジストパターン52の開口部52aを通してシリコン窒化膜51、シリコン酸化膜50をエッチバックすることにより、第2のゲート電極13bの側面にサイドウォールスペーサ51sを形成する。その後に、レジストパターン52を除去する。サイドウォールスペーサ51sは、第2のリセス16のうちゲート電極13b寄りの端部を覆う形状となる。
【0105】
次に、図10Mに示すように、シリコン窒化膜51、STI4、サイドウォールスペーサ51s等をマスクにして、プラズマエッチング法によりpウェル6をエッチングする。これにより、第2のゲート電極13bの両側方に第3のリセス22を例えば約30nmの深さに形成する。この場合のエッチングガスとして塩素系ガスを使用する。
その後に、第3のリセス22の表面をスムーズにするため、有機アルカリ・酸によりpウェル6をウェットエッチングしてもよい。
【0106】
続いて、図10Nに示すように、第1実施形態に示した方法に従って、第3のリセス22内のpウェル6上に第1のリンドープト炭化シリコン層23を選択成長する。即ち、第1のリンドープト炭化シリコン層23は、例えば3ステップで形成され、1ステップの堆積を終える毎に、シリコン窒化膜51、STI4等の上に形成される多結晶のリンドープト炭化シリコン層をエッチングして除去する。このエッチングによれば、pウェル6上に形成された単結晶のリンドープト炭化シリコン層23の膜厚は5%程度減少する。
【0107】
次に、図10Oに示すように、シリコン窒化膜51を覆うとともにpウェル6の上に開口部を有するレジストパターン53をシリコン基板1上に形成する。その後、サイドウォールスペーサ51sを構成するシリコン窒化膜51とシリコン酸化膜50をそれぞれ熱リン酸、フッ酸により除去する。その後に、レジストパターン53を除去する。
【0108】
続いて、図10Pに示すように、残された第1のリセス16の底面上と第1のリンドープト炭化シリコン層23上に第2のリンドープト炭化シリコン層24をゲート絶縁膜7の下面の位置まで選択成長する。続いて、第2のリンドープト炭化シリコン層24上に第3のリンドープト炭化シリコン層25を形成する。第2、第3のリンドープト炭化シリコン層24、25は、第1実施形態に示した条件で形成される。第2のリンドープト炭化シリコン層24は、第2のゲート電極13bの下方のチャネル領域に接合する。
【0109】
第1のリンドープト炭化シリコン層23は、Cを2at%以上。2.5at%以下の濃度で含み、Pを濃度0at%より大きく、1at%以下の濃度で含む。
第2のリンドープト炭化シリコン層24は、Cを0at%より大きく、1.5at%以下の濃度で含み、Pを0at%より大きく、2t%以下の濃度で含む。
第3のリンドープト炭化シリコン層25の組成は、例えば第2のリンドープト炭化シリコン層24の組成と同じにする。
【0110】
以上により形成された第1、第2及び第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25に含まれるリンと炭素のそれぞれの厚さ方向の濃度分布は図2に示した状態となる。即ち、第1のリンドープト炭化シリコン層23に含まれる炭素濃度は第2、第3のリンドープト炭化シリコン層24、25の炭素濃度よりも高い。一方、第2、第3のリンドープ
ト炭化シリコン層24、25に含まれるリン濃度は、第1のリンドープト炭化シリコン層23に含まれるリン濃度よりも高い。
【0111】
ここで、第2のゲート電極13bの一側方に形成された第1、第2及び第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25をソース領域26sとし、他側方に形成された第1、第2及び第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25をドレイン領域26sとする。その後に、最上のシリコン窒化膜50を熱リン酸により除去する。
【0112】
その後に、シリコン基板1、シリコン酸化膜50、STI4、サイドウォールスペーサ51s等の上にシリコン酸化膜を形成する。その後に、そのシリコン酸化膜をエッチバックすることにより、図10Qに示すように、第1のゲート電極13aの側面上に4層目のサイドウォールスペーサ54を形成するとともに、pウェル6の上の第2のゲート電極13bの側面上に二層目のサイドウォールスペーサ55を形成する。
【0113】
次に、図10Rに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第1、第2のゲート電極13a、13bの上の絶縁膜11を選択的にエッチングすることにより、第1、第2のゲート電極13a、13bの上面を露出させる。
続いて、第1、第2のゲート電極13a、13b、SiGe膜47、第3のリンドープト炭化シリコン層25等の上にニッケル膜を形成した後に、例えば220℃〜280℃の温度でシリコン基板1をアニールする。これにより、ニッケルとシリコンが反応し、第1、第2のゲート電極13a、13b、SiGe膜47、第3のリンドープト炭化シリコン層25の上部には、シリサイド膜56a〜56fが形成される。
【0114】
その後に、硫酸と過酸化水素水を含む溶液を用いてニッケル膜を除去する。続いて、300℃〜500℃の温度帯でシリサイド膜56a〜56fをアニールする。
この後に、第1実施形態と同様にしてエッチストップ絶縁膜、層間膜、導電性プラグ、配線等を形成する。
以上の工程により、nウェル5、ゲート絶縁膜7、第1のゲート電極13a、ソース領域47s、ドレイン領域47d等を有するPMOSトランジスタTが形成される。また、pウェル6、ゲート絶縁膜7、ソース領域26s、ドレイン領域26d等を有するNMOSトランジスタTが形成される。
【0115】
以上の実施形態において、PMOSトランジスタTのソース領域47sとドレイン領域47dはそれぞれSiGe膜47から形成されているので、それらの間のチャネル領域5cに圧縮応力が加わってチャネル領域5cを走行するホールの移動度が高くなる。
【0116】
一方、NMOSトランジスタTのソース領域26sとドレイン領域26dは、第1実施形態と同様に、それぞれ第1〜第3のリンドープト炭化シリコン層23、24、25から構成されている。このため、ソース領域26sとドレイン領域26dの間のチャネル領域6cには引張応力が加わり、チャネル領域6cの電子の移動度が高くなる。
【0117】
また、ソース領域26sとドレイン領域26sでは、第1実施形態と同様に、第1のリンドープト炭化シリコン層23のC濃度に比べて、第2のリンドープト炭化シリコン層24に含まれるC濃度が低くなっている。このため、チャネル領域6cと第2のリンドープト炭化シリコン層924の界面においてエネルギーバリアが低くなる。また、第1のリンドープト炭化シリコン層23はC濃度が高くしかも厚く形成されているので、チャネル領域6cに大きな圧縮応力を加えることができる。
【0118】
しかも、第1実施形態と同様に、第1のリンドープト炭化シリコン層23のP濃度に比べて、第2のリンドープト炭化シリコン層24に含まれるP濃度が高くなっている。この
ため、チャネル領域の両側の導電率が高くなり、さらに、Cによる圧縮応力がPにより補助されて高くなる。
これらにより、電子がチャネル領域6cからドレイン領域26dに注入し易くなる。
【0119】
(第3の実施の形態)
図11A〜図11Hは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、第1実施形態と同様に、シリコン基板1に、STI4で区画されるnウェル5及びpウェル6を形成する。続いて、第1実施形態に示した方法により、nウェル5とpウェル6のそれぞれの上に、ゲート絶縁膜7を介して第1、第2のゲート電極13a、13bを形成する。第1、第2のゲート電極13a、13bの上には、絶縁膜11としてシリコン酸化膜が形成されている。
【0120】
次に、第1、第2のゲート電極13a、13b及びシリコン基板1の上にシリコン窒化膜を形成する。さらに、図11Aに示すように、シリコン窒化膜をエッチバックすることにより、第1、第2のゲート電極13a、13bの側面に、シリコン窒化膜からなるサイドウォールスペーサ14sを形成する。
続いて、シリコン基板1の上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像する。これにより、図11Bに示すように、pウェル6の上に開口部60aを有するレジストパターン60を形成する。
【0121】
その後に、レジストパターン60、サイドウォールスペーサ14s及び第2のゲート電極13bをマスクにして、pウェル6内にGeをイオン注入する。続いて、開口部60aを通してpウェル6内にCをイオン注入し、その後にPをイオン注入する。
Geは、その後のシリコン基板1内への元素のイオン注入を容易にするために、イオン注入される。
【0122】
この場合、Geのイオン注入条件として、例えば加速エネルギーを15keV、ドーズ量を3×1014cm−2とする。また、Cのイオン注入条件として、例えば加速エネルギーを3keV、ドーズ量を2×1015cm−2とする。Pのイオン注入条件として、例えば加速エネルギーを2keV、ドーズ量を1×1016cm−2とする。
これにより、第2のゲート電極13bの両側のpウェル6の表層に、炭素を第1濃度で含む、さらにリンを第2濃度、例えば1×1021/cm又はそれ以下で含む第1のリンドープト炭化シリコン領域61を形成する。第1のリンドープト炭化シリコン領域61は、第2のゲート電極13bの下のチャネル領域6cに接合する。
【0123】
レジストパターン60を除去した後、さらに、シリコン基板1の上に新たにフォトレジストを塗布し、これを露光、現像することにより、図11Cに示すように、nウェル5の上に開口部62aを有するレジストパターン62を形成する。
その後に、レジストパターン62、サイドウォールスペーサ14s及び第1のゲート電極13aをマスクにして、nウェル5内にGeをイオン注入し、続いて、nウェル5内にフッ化ホウ素イオン(BF2+)を注入する。
【0124】
この場合、Geのイオン注入条件として、例えば、加速エネルギーを20keV、ドーズ量を5×1014cm−2とする。また、BF2+の注入条件として、例えば加速エネルギーを1keV、ドーズ量を1×1015cm−2とする。これにより、第1のゲート電極13aの両側のnウェル5の上層に低不純物濃度のエクステンション領域63aを形成する。
【0125】
レジストパターン62を除去した後に、シリコン基板1をミリ秒単位の短時間でアニー
ルする。アニールとして、例えばフラッシュランプ又はレーザを用いる。これにより、nウェル5及びpウェル6を再結晶化するとともに、リンドープト炭化シリコン領域61内でCとPを結晶格子位置に導く。同時に、nウェル5内に導入されたBを活性化する。
【0126】
次に、シリコン基板1の上に、第1、第2のゲート電極13a、13b及び第1のサイドウォールスペーサ14sを覆うシリコン窒化膜を形成する。その後に、図11Dに示すように、シリコン窒化膜をエッチバックすることにより、第1、第2のゲート電極13a、13bの側方に二層目のサイドウォールスペーサ64を形成する。
【0127】
二層目のサイドウォールスペーサ64であるシリコン窒化膜は、例えばプラズマCVD法により500℃以下の温度で形成される。この場合の反応ガスとして、シランとアンモニアを含むガスを使用する。また、プラズマCVD装置における電極に印加する電力の周波数を2.46GHz、パワーを3000Wとする。
【0128】
続いて、シリコン基板1の上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像する。これにより、図11Eに示すように、pウェル6の上に開口部65aを有するレジストパターン65を形成する。
さらに、レジストパターン65及び第2のゲート電極13b、サイドウォールスペーサ14s、64をマスクにして、開口部65aを通してpウェル6内にGeをイオン注入する。続いて、開口部65aを通してpウェル6内にCをイオン注入し、その後にPをイオン注入する。
【0129】
この場合、Geのイオン注入条件として、例えば加速エネルギーを20keV、ドーズ量を5×1014cm−2とする。また、Cのイオン注入条件として、例えば加速エネルギーを5keV、ドーズ量を2×1015cm−2とする。Pのイオン注入条件として、例えば加速エネルギーを6keV、ドーズ量を8×1015cm−2とする。
【0130】
これにより、第2のゲート電極13b及びサイドウォールスペーサ64の外側のpウェル6内であって第1のリンドープト炭化シリコン領域61の下に、第2のリンドープト炭化シリコン領域66を形成する。第2のリンドープト炭化シリコン領域66内のリン濃度は上記のリンの第2濃度よりも低い。また、第1のリンドープト炭化シリコン領域61と第2のリンドープト炭化シリコン領域66が重なる領域では、リン濃度及び炭素濃度が、第1、第2のリンドープト炭化シリコン領域61、66よりも高くなっている。
【0131】
第2のリンドープト炭化シリコン領域66を形成するためにCをイオン注入する際に、第1のリンドープト炭化シリコン領域61の形成条件に比べて、加速エネルギーだけでなく、ドーズ量を高くしてもよい。これにより、第1のリンドープト炭化シリコン領域61の下の第2のリンドープト炭化シリコン領域66の炭素濃度は、サイドウォールスペーサ48の下の第1のリンドープト炭化シリコン領域61の端部の第1濃度よりも高くなる。
【0132】
第2のゲート電極13bの一側方の第1、第2のリンドープト炭化シリコン領域61、66はソース領域67sであり、さらに、第2のゲート電極13bの他側方の第1、第2のリンドープト炭化シリコン領域61、66はドレイン領域67dである。
レジストパターン65を除去した後、さらに、シリコン基板1の上に新たにフォトレジストを塗布し、これを露光、現像することにより、図11Fに示すように、pウェル6の上を覆うとともにnウェル5の上に開口部68aを有するレジストパターン68を形成する。
【0133】
その後に、レジストパターン68及び第1のゲート電極13a及びサイドウォールスペーサ14s、64をマスクにして、nウェル5内にGeをイオン注入する。続いて、開口
部68aを通してnウェル5内にフッ化ホウ素イオン(BF2+)を注入する。
この場合、Geのイオン注入条件として、例えば加速エネルギーを20keV、ドーズ量を5×1014cm−2とする。また、BF2+の注入条件として、例えば加速エネルギーを1keV、ドーズ量を6×1015cm−2とする。
【0134】
これにより、nウェル5において、第1のゲート電極13a及びサイドウォールスペーサ64が形成された領域の両側方に高不純物濃度のp型不純物拡散領域63bを形成する。p型不純物拡散領域63bは、p型エクステンション領域63aの一部に重なる。
【0135】
2つの領域のp型エクステンション領域63a及びp型不純物拡散領域63bのうちの一方はソース領域63aとなり、他方はドレイン領域63dとなる。
レジストパターン68を除去した後に、図11Gに示すように、ゲート電極13a、13bの上のシリコン酸化膜からなる絶縁膜11をフッ酸により除去する。
【0136】
レジストパターン68を除去した後に、シリコン基板1をミリ秒単位の短時間で急速アニールする。アニールとして、例えばフラッシュランプ又はレーザを用いる。フラッシュを用いる場合には4000Vの放電電圧を1msの時間で発光させる。また、レーザを用いる場合には出力2000Wにて到達換算温度1200℃のレーザ光を1msの時間で照射する。
これにより、nウェル5、pウェル6を再結晶化するとともに、第2のリンドープト炭化シリコン領域66とその上の領域でCとPを結晶格子位置に導く。同時に、nウェル5内に導入されたBを活性化する。
【0137】
次に、シリコン基板1、第1、第2のゲート電極13a、13b、ソース領域63s、67s、ドレイン領域63d、67d等の上に金属膜、例えばニッケル膜を形成した後に、第1実施形態と同じ条件でシリコン基板1と金属膜をアニールする。その後に、金属膜を除去する。
これにより、図11Hに示すように、第1、第2のゲート電極13a、13b、ソース領域63s、67s及びドレイン領域63d、67dの上にシリサイド層69a〜69fが形成される。
【0138】
この後に、第1実施形態と同様にしてエッチストップ絶縁膜、層間膜、導電性プラグ、配線等を形成する。
以上により、nウェル5、ゲート絶縁膜7、第1のゲート電極13a、ソース領域63s、ドレイン領域63d等を有するPMOSトランジスタTが形成される。また、pウェル6、ゲート絶縁膜7、第2のゲート電極13b、ソース領域67s、ドレイン領域67d等を有するNMOSトランジスタTが形成される。
【0139】
以上の実施形態において、NMOSトランジスタTのソース領域67s、ドレイン領域67dには炭素が含まれているので、それらの領域の間のチャネル領域6cには引張応力が加わり、チャネル領域6c内の電子の移動度を高める。この場合、ソース領域67s、ドレイン領域67dに含まれるリンは、第1実施形態と同様に、炭素による引張応力を補助する、
【0140】
また、ソース領域67s、ドレイン領域67dの端部において、リン濃度は、チャネル領域6cに接合する部分で高くなっている。従って、第1実施形態と同様に、エネルギーバンドギャップの伝導帯では、リンによる縮退が生じるので、エネルギーバリアが小さくなる。
【0141】
さらに、第1のリンドープト炭化シリコン領域61のうち第2のゲート電極13b寄り
の端部の炭素濃度を1.5at%以下にすることにより、第1実施形態と同様に、バンドオフセットの効果を小さくしてエネルギーバリアを小さくすることができる。
第1のリンドープト炭化シリコン領域61のリン濃度は高くなっているので、その端部で抵抗が低くなる。これらにより、電子をチャネル領域6cからドレイン領域67dに注入し易くなる。
また、ソース領域67s、ドレイン領域67dのそれぞれの下層部の第2のドープト炭化シリコン流域66の炭素濃度を第1のドープト炭化シリコン膜61よりも高くすることによりチャネル領域6cの引張応力をさらに高くすることができる。
【0142】
従って、ソース領域67s、ドレイン領域67dによりチャネル領域6cに歪みを加えつつソース領域67s、ドレイン領域67dの抵抗値を下げ、かつチャネル領域6cに対するドレイン領域67dの電子の注入を容易にすることが可能になる。
【0143】
第1実施形態で説明したように、NMOSトランジスタTの場合には、リンの共有結合半径から換算した疑似ダイアモンド格子の格子定数を算出すると0.493nmであり、シリコンの格子定数の0.543nmよりも小さい。
従って、リンドープト炭化シリコン層の緩和状態の混晶格子定数の値は、シリコン層よりも確実に小さくなる。これを簡易実験により、ラマン分光法により解析する。
【0144】
まず、図12Aに示すように、開口72aを有するマスク72を単結晶のシリコン層71上に形成した状態で、開口部72aを通して単結晶シリコン層71にGeを加速エネルギー20keV、ドーズ量5×1014cm-2の条件でイオン注入することによりシリコン層の母結晶を壊す。これにより、シリコン層71内に炭素及びリンを入り易くする。そのようなシリコン層71の試料を複数形成した後に、Geイオン注入領域に炭素、又は、炭素及びリンを次の条件でイオン注入する。
【0145】
第1の条件として、図12Aの(1)に示すように、炭素を加速エネルギー4keV、ドーズ量3×1015cm-2の条件でシリコン層71にイオン注入する。第2の条件として、図12Aの(2)に示すように、炭素を加速エネルギー4keV、ドーズ量6×1015cm-2の条件でシリコン層にイオン注入する。第3の条件として、図12Aの(3)に示すように、炭素を加速エネルギー4keV、ドーズ量6×1015cm-2の条件でシリコン層にイオン注入し、さらにリンを加速エネルギー6keV、ドーズ量1.2×1016cm-2の条件でシリコン層にイオン注入する。
【0146】
そして、第1、第2及び第3のイオン注入の後に、急速熱処理によりシリコン層71を活性化した。活性化後のそれぞれのシリコン層71について、UVレーザ・ラマン分光によりラマンシフト値を調べ、ラマンシフトのピークを解析したところ図12Bに示す結果が得られた。
なお、初期の単結晶シリコン層71をUVレーザ−ラマン分光により測定するとラマンシフトが520cm−1となる。
【0147】
第1の条件でイオン注入した後のシリコン層71のラマンシフトの値は517cm−1〜518cm−1になって歪が生じていることがわかる。これに対して、第2の条件でイオン注入した後のシリコン層71のラマンシフトの値は519cm−1になる。これにより、過剰ドーズによりシリコン層71に加わる歪みが開放され、シリコン層71のラマンシフト値に近づく。
これに対し、第3の条件でイオン注入した後のシリコン層71のラマンシフトの値は517cm−1〜518cm−1になった。このことは、リンのイオン注入により、結晶格子の所定位置に炭素、リンが良好に入ったことを意味している。
これにより、リン及び炭素のシリコン層71への導入により、上記したチャネル領域6
cに歪みを加える効果があることがわかる。
【0148】
また、シリコン層、炭化シリコン層及び燐含有炭化シリコン層のそれぞれをUVラマン分光により測定すると、第1実施形態に示した図9と同様の結果が得られる。
従って、炭素濃度が増えるにつれてラマンシフトが小さくなってシリコン層に加える引っ張り歪みが小さくなる。また、シリコン層に2at%の炭素と1at%の濃度でリンを含有させることにより、ラマンシフトはリンを含有させない場合に比べて増加し、シリコン層に加える引っ張り応力はさらに増加する。
それらの実験結果により、炭素によりシリコン膜に発生させる歪みをリン添加により増加する効果がある。
【0149】
ここで挙げた全ての例および条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明および概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例および条件に限定することなく解釈すべきであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換および変形を施すことができると理解すべきである。
【0150】
次に、本発明の実施形態について特徴を付記する。
(付記1)
半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記半導体基板のうち前記ゲート電極の下方に形成されるチャネル領域と、前記チャネル領域の両側方に形成され、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層と、前記第1の炭化シリコン層上で前記チャネル領域に接合して形成され、第1リン濃度より高い第2リン濃度でリンを含み、前記第1炭素濃度以下の第2炭素濃度で炭素を含む第2の炭化シリコン層とを有することを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記第1炭化シリコン層は、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に形成された第1の凹部内に形成され、前記第2炭化シリコン層は、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部内に形成されることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記第1炭素濃度は2.0at%以上、前記第2炭素濃度は1.5at%以下であることを特徴とする付記1又は付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記第1リン濃度は1.0at%以下、前記第2リン濃度は2.0at%以下であることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記5)
前記第2の炭化シリコン層の端部は、前記第1の炭化シリコン層よりも前記ゲート電極に近い位置に形成されていることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記6)
前記ゲート電極の側面には、前記ゲート電極と前記第2の炭化シリコン層を分離するサイドウォールスペーサが形成されていることを特徴とする付記1乃至付記5のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記7)
前記第1の炭化シリコン層は、前記第2の炭化シリコン層よりも厚いことを特徴とする付記1乃至付記6のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記8)
前記第2の炭化シリコン層上に形成され、第1リン濃度より高い第3リン濃度でリンを
含み、前記第1炭素濃度以下の第3炭素濃度で炭素を含む第3の炭化シリコン層を有することを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記9)
半導体基板にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板をエッチングすることにより、前記ゲート電極の両側に第1の凹部を形成する工程と、前記第1の凹部を形成する工程の後、前記ゲート電極側壁に第1サイドウォールスペーサを形成する工程と、前記ゲート電極及び前記第1サイドウォールスペーサをマスクとして、前記半導体基板をエッチングすることにより、前記第1の凹部の下に第2の凹部を形成する工程と、前記第2の凹部内に、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層を形成する工程と、前記第1の炭化シリコン層を形成した後、前記第1サイドウォールスペーサを除去する工程と、前記第1サイドウォールスペーサを除去する工程の後、前記第1の凹部内と前記第1の炭化シリコン層の上に、前記第1リン濃度より高い第2リン濃度でリンを含む第2の炭化シリコン層を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記第1の凹部を形成する前に、前記ゲート電極の側面に第2のサイドウォールスペーサを形成する工程を有することを特徴とする付記9に記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)
前記第2の炭化シリコン層を形成した後に、前記第2のサイドウォールスペーサの上に第3のサイドウォールスペーサを形成する工程を有することを特徴とする付記10に記載の半導体装置の製造方法。
(付記12)
前記第1炭素濃度は2.0at%以上、前記第2炭素濃度は1.5at%以下であることを特徴とする付記9乃至付記11のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記13)
前記第2の炭化シリコン層は、前記第1炭素濃度よりも低い第2炭素濃度で炭素を含むことを特徴とする付記9乃至付記12に記載の半導体装置の製造方法。
(付記14)
前記第1リン濃度は1.0at%以下、前記第2リン濃度は2.0at%以下であることを特徴とする付記13に記載の半導体装置。
(付記15)
半導体基板にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板に第1のドーズ量、第1の加速エネルギーで炭素をイオン注入する工程と、前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板に第2のドーズ量、第2の加速エネルギーでリンをイオン注入する工程と、前記ゲート電極の両側面にサイドウォールスペーサを形成する工程と、前記ゲート電極及び前記サイドウォールスペーサをマスクとして前記半導体基板に、前記第1のドーズ量以上の第3のドーズ量、第3の加速エネルギーで炭素をイオン注入する工程と、前記ゲート電極及び前記サイドウォールスペーサをマスクとして前記半導体基板に、前記第2のドーズ量以下の第4のドーズ量、第4の加速エネルギーでリンをイオン注入する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記16)
前記第3の加速エネルギーは前記第1の加速エネルギーより大きく、前記第4の加速エネルギーは前記第2の加速エネルギーより大きいことを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17)
前記第1のドーズ量、前記第3のドーズ量で前記炭素をイオン注入するそれぞれの前に、前記半導体基板にゲルマニウムをイオン注入する工程を有することを特徴とする付記15又は付記16に記載の半導体装置の製造方法。
(付記18)
前記ゲルマニウムは、前記炭素、前記リンのイオン注入時よりも大きな加速エネルギーでイオン注入されることを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0151】
1 シリコン基板
4 STI
5 nウェル
6 pウェル
7 ゲート絶縁膜
13a、13b ゲート電極
14 シリコン酸化膜
14s、21 サイドウォールスペーサ
16、22 リセス
18 シリコン酸化膜
19 シリコン窒化膜
23、24、25 リンドープト炭化シリコン層
26s、30s ソース領域
26d、30d ドレイン領域
31a、31b サイドウォールスペーサ
42 p型エクステンション領域
43 シリコン酸化膜
44 シリコン窒化膜
44s サイドウォールスペーサ
50 シリコン酸化膜
51 シリコン窒化膜
51s、54、55 サイドウォールスペーサ
61。66 リンドープト炭化シリコン領域
67s ソース流域
67d ドレイン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板のうち前記ゲート電極の下方に形成されるチャネル領域と、
前記チャネル領域の両側方に形成され、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層と、
前記第1の炭化シリコン層上で前記チャネル領域に接合して形成され、第1リン濃度より高い第2リン濃度でリンを含み、前記第1炭素濃度以下の第2炭素濃度で炭素を含む第2の炭化シリコン層と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1炭化シリコン層は、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に形成された第1の凹部内に形成され、
前記第2炭化シリコン層は、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部内に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1炭素濃度は2.0at%以上、前記第2炭素濃度は1.5at%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1リン濃度は1.0at%以下、前記第2リン濃度は2.0at%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板をエッチングすることにより、前記ゲート電極の両側に第1の凹部を形成する工程と、
前記第1の凹部を形成する工程の後、前記ゲート電極側壁に第1サイドウォールスペーサを形成する工程と、
前記ゲート電極及び前記第1サイドウォールスペーサをマスクとして、前記半導体基板をエッチングすることにより、前記第1の凹部の下に第2の凹部を形成する工程と、
前記第2の凹部内に、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層を形成する工程と、
前記第1の炭化シリコン層を形成した後、前記第1サイドウォールスペーサを除去する工程と、
前記第1サイドウォールスペーサを除去する工程の後、前記第1の凹部内と前記第1の炭化シリコン層の上に、前記第1リン濃度より高い第2リン濃度でリンを含む第2の炭化シリコン層を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の凹部を形成する前に、前記ゲート電極の側面に第2のサイドウォールスペーサを形成する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板に第1のドーズ量、第1の加速エネルギーで炭素をイオン注入する工程と、
前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板に第2のドーズ量、第2の加速エネルギーでリンをイオン注入する工程と、
前記ゲート電極の両側面にサイドウォールスペーサを形成する工程と、
前記ゲート電極及び前記サイドウォールスペーサをマスクとして前記半導体基板に、第
1のドーズ量以上の第3のドーズ量、第3の加速エネルギーで炭素をイオン注入する工程と、
前記ゲート電極及び前記サイドウォールスペーサをマスクとして前記半導体基板に、第2のドーズ量以下の第4のドーズ量、第4の加速エネルギーでリンをイオン注入する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3の加速エネルギーは前記第1の加速エネルギーより大きく、前記第4の加速エネルギーは前記第2の加速エネルギーより大きいことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1のドーズ量、前記第3のドーズ量で前記炭素をイオン注入するそれぞれの前に、前記半導体基板にゲルマニウムをイオン注入する工程を有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ゲルマニウムは、前記炭素、前記リンのイオン注入時よりも大きな加速エネルギーでイオン注入されることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。

【図1A】
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【図1D】
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【図1G】
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【図1J】
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【図1M】
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【図1P】
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【図1S】
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【図1V】
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【図1Y】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10D】
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【図10G】
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【図10J】
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【図10M】
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【図10P】
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【図11A】
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【図11D】
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【図11G】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−3788(P2011−3788A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146657(P2009−146657)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】