説明

半導体装置及びその駆動方法

【課題】信号処理回路に対する電源電圧の供給及び遮断を選択することができるスイッチとして機能する回路(電源供給制御回路)として好ましい回路を提供する。
【解決手段】信号処理回路に対する電源電位の供給を担う第1の配線と、電源電位を供給する第2の配線との電気的な接続を制御するトランジスタ、及び、信号処理回路に対する電源電位の供給を担う第1の配線を接地させるか否かを制御するトランジスタとを設け、当該2つのトランジスタの少なくとも一方として、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを適用する。これにより、2つのトランジスタの少なくとも一のカットオフ電流に起因する消費電力を低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。特に、信号処理回路に対する電源電圧の供給を停止することが可能な半導体装置に関する。なお、本明細書において、半導体装置とは半導体を利用して構成される全ての装置を指す。
【背景技術】
【0002】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理回路は、その用途によって多種多様な構成を有しているが、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の記憶装置が設けられている。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータを保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算回路とメインメモリの間に介在し、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として設けられている。
【0003】
レジスタやキャッシュメモリ等の記憶装置は、メインメモリよりも高速でデータの書き込みを行う必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップ回路が、キャッシュメモリとしてSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。つまり、これらのレジスタ、キャッシュメモリ等には、電源電位の供給が途絶えるとデータを消失してしまう揮発性の記憶装置が用いられている。
【0004】
消費電力を抑えるため、データの入出力が行われない期間において信号処理回路への電源電圧の供給を一時的に停止するという方法が提案されている。その方法では、レジスタ、キャッシュメモリ等の揮発性の記憶装置の周辺に不揮発性の記憶装置を配置し、上記データをその不揮発性の記憶装置に一時的に記憶させる。こうして、信号処理回路において電源電位の供給を停止する間も、レジスタ、キャッシュメモリ等に記憶されたデータが保持される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、信号処理回路において長時間の電源電圧の供給停止を行う際には、電源電圧の供給停止の前に、揮発性の記憶装置内のデータをハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置に移すことで、データの消失を防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−078836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
信号処理回路に対する電源電圧の供給を停止するためには、当該電源電圧の供給及び遮断を選択することができるスイッチとして機能する回路(電源供給制御回路)が必要になる。そこで、本発明の一態様は、当該回路として好ましい回路を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の半導体装置は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いて電源供給制御回路を構成することを要旨とする。ここで、酸化物半導体は、バンドギャップが広く、且つ真性キャリア密度が低いという特徴を有する。よって、酸化物半導体層に生じるカットオフ電流を極めて低くすることが可能である。このような特徴は、他の半導体(例えば、シリコン)にはない酸化物半導体に特有の特徴である。
【0009】
具体的には、本発明の一態様の半導体装置は、信号処理回路に対する電源電位の供給を担う第1の配線と、電源電位を供給する第2の配線との電気的な接続を制御するトランジスタ、及び、当該第1の配線を接地させるか否かを制御するトランジスタを有する。そして、本発明の一態様の半導体装置は、以下の2つの条件を満たす。(1)当該2つのトランジスタの少なくとも一方は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタである。(2)前者のトランジスタのスイッチングは外部から入力される割り込み信号によって制御され、後者のトランジスタのスイッチングは信号処理回路から入力される電源供給停止信号によって制御される。
【0010】
なお、本明細書において、割り込み信号とは、当該半導体装置に併設された入力装置(例えば、キーボードなど)又は検出装置(例えば、光センサ又は温度センサなどのセンサ)から出力され、当該半導体装置に対して動作を要求する信号を指すこととする。
【発明の効果】
【0011】
当該半導体装置においては、前者のトランジスタをオン状態とし、且つ後者のトランジスタをオフ状態とすることで、信号処理回路に対する電源電位の供給を担う第1の配線に電源電位を供給すること、及び、前者のトランジスタをオフ状態とし、且つ後者のトランジスタをオン状態とすることで、信号処理回路に対する電源電位の供給を停止することが可能である。
【0012】
ここで、条件(1)によって、信号処理回路に対する電源電位の供給を担う第1の配線に対して電源電位を供給する期間における、後者のトランジスタのカットオフ電流に起因する消費電力、又は、信号処理回路に対する電源電位の供給を担う第1の配線に対して電源電位の供給を停止する期間における、前者のトランジスタのカットオフ電流に起因する消費電力を低減することの少なくとも一方が可能となる。
【0013】
加えて、条件(2)によって、信号処理回路に対する電源電位の供給を担う第1の配線に対する電源電位の供給再開に備えて、定常的に電源電位が供給される回路が不要となる。すなわち、当該半導体装置における消費電力をさらに低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)半導体装置の構成例を示す図、(B)電源供給制御回路の構成例を示す図、(C)電源供給制御回路の入出力信号などの経時変化の一例を示す図。
【図2】(A)電源供給制御回路の構成例を示す図、(B)電源供給制御回路の入出力信号などの経時変化の一例を示す図。
【図3】(A)電源供給制御回路の構成例を示す図、(B)電源供給制御回路の入出力信号などの経時変化の一例を示す図。
【図4】(A)信号処理回路の構成例を示す図、(B)、(C)メモリセルの構成例を示す図。
【図5】半導体装置の構造例を示す図。
【図6】(A)〜(D)トランジスタの構造例を示す図。
【図7】CAACに含まれる結晶構造の一例を説明する図。
【図8】CAACに含まれる結晶構造の一例を説明する図。
【図9】CAACに含まれる結晶構造の一例を説明する図。
【図10】計算によって得られた移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図11】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図12】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図13】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図14】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【図15】酸化物半導体層を用いたトランジスタ特性を示す図。
【図16】試料1のトランジスタのBT試験後のVgs−Ids特性を示す図。
【図17】試料2であるトランジスタのBT試験後のVgs−Ids特性を示す図。
【図18】試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す図。
【図19】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を示す図。
【図20】Idsおよび電界効果移動度のVgs依存性を示す図。
【図21】基板温度としきい値電圧の関係および基板温度と電界効果移動度の関係を示す図。
【図22】半導体装置の上面図及び断面図。
【図23】半導体装置の上面図及び断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0016】
<半導体装置の構成例>
図1(A)は、本発明の一態様に係る半導体装置の構成例を示すブロック図である。図1(A)に示す半導体装置は、電源電位(VDD)及び割り込み信号(ITR)が入力される電源供給制御回路10と、電源供給制御回路10から電源電位(VDD)又は接地電位(GND)が供給され、且つ電源供給制御回路10に対して電源供給停止信号(STP)を出力する信号処理回路20とを有する。なお、電源供給制御回路10は、電源電位(VDD)を信号処理回路20に対して供給するか否か(電源電位(VDD)又は接地電位(GND)のいずれを供給するか)を選択する回路である。また、信号処理回路20は、電源供給制御回路10を介して供給される電源電位(VDD)を用いて動作を行う回路である。
【0017】
なお、割り込み信号(ITR)は、外部から入力され、当該半導体装置に対して動作を要求する信号である。また、電源供給停止信号(STP)は、信号処理回路20から電源供給制御回路10に対して電源電位(VDD)の供給停止を要求する信号である。図1(A)に示す半導体装置においては、電源供給制御回路10に割り込み信号(ITR)が入力された際に、信号処理回路20に対する電源電位(VDD)の供給が開始又は継続され、電源供給制御回路10に電源供給停止信号(STP)が入力された際に、信号処理回路20に対する電源電位(VDD)の供給を停止する(電源電位(VDD)の供給を担う配線に接地電位(GND)を供給する)。
【0018】
<電源供給制御回路10の構成例>
図1(B)は、図1(A)に示す電源供給制御回路10の構成例を示す図である。図1(B)に示す電源供給制御回路10は、トランジスタ101乃至トランジスタ104を有する。以下、図1(B)に示すトランジスタ101乃至トランジスタ104の接続関係について詳述する。
【0019】
トランジスタ101のゲート、及びソース及びドレインの一方は、外部から入力される割り込み信号(ITR)の供給を担う配線に電気的に接続されている。
【0020】
トランジスタ102のゲートは、トランジスタ101のソース及びドレインの他方に電気的に接続されている。また、トランジスタ102のソース及びドレインの一方は、電源電位(VDD)を供給する配線に電気的に接続されている。また、トランジスタ102のソース及びドレインの他方は、信号処理回路20に対する電源電位(VDD)の供給を担う配線に電気的に接続されている。
【0021】
トランジスタ103のゲート及びトランジスタ104のゲートは、信号処理回路20が出力する電源供給停止信号(STP)の供給を担う配線に電気的に接続されている。
【0022】
トランジスタ103のソース及びドレインの一方は、トランジスタ101のソース及びドレインの他方、及びトランジスタ102のゲートに電気的に接続されている。また、トランジスタ103のソース及びドレインの他方は、接地されている。
【0023】
トランジスタ104のソース及びドレインの一方は、トランジスタ102のソース及びドレインの他方、及び信号処理回路20に対する電源電位(VDD)の供給を担う配線に電気的に接続されている。また、トランジスタ104のソース及びドレインの他方は、接地されている。
【0024】
<電源供給制御回路10の動作例>
図1(C)は、割り込み信号(ITR)の供給を担う配線(ITR_W)の電位、図1(B)に示す電源供給制御回路10のノードAの電位、図1(B)に示す信号処理回路20に対する電源電位(VDD)の供給を担う配線(VDD/GND_W)の電位、及び電源供給停止信号(STP)の供給を担う配線(STP_W)の電位の経時変化を示す模式図である。以下、図1(C)を参照して当該電源供給制御回路10の動作例について説明する。なお、当該半導体装置においては、電源電位(VDD)は、接地電位(GND)よりも高電位の固定電位である。
【0025】
信号処理回路20に対して動作が要求される場合、配線(ITR_W)の電位がハイレベルの電位に上昇する(割り込み信号(ITR)が供給される)。そのため、トランジスタ101がオン状態となり、ノードAの電位が上昇する。ノードAの電位の上昇に伴い、トランジスタ102のゲートとソース間の電圧がしきい値電圧以上になると、トランジスタ102がオン状態になる。これにより、配線(VDD/GND_W)の電位が上昇する。ここで、ノードAの電位が当該ハイレベルの電位からトランジスタ101のしきい値電圧分低下した値にまで上昇すると、トランジスタ101はオフ状態となる。よって、トランジスタ101を介した電荷供給によるノードAの電位の上昇は起きない。ただし、この状態においてノードAは浮遊状態となっている。そのため、トランジスタ102のゲートとソースの容量結合によって、ノードAの電位はさらに上昇する(ブートストラップ)。その結果、配線(VDD/GND_W)の電位を、電源電位(VDD)からトランジスタ102のしきい値電圧分低下した値を超えて、電源電位(VDD)まで上昇させることが可能となる。
【0026】
また、信号処理回路20に対する電源電位(VDD)の供給を停止する場合、配線(STP_W)の電位がハイレベルの電位に上昇する(電源供給停止信号(STP)が供給される)。そのため、トランジスタ103のゲート及びトランジスタ104のゲートの電位が上昇する。これに伴い、トランジスタ103のゲートとソース間及びトランジスタ104のゲートとソース間の電圧がそれぞれのしきい値電圧以上になると、トランジスタ103及びトランジスタ104がオン状態となる。これにより、ノードA及び配線(VDD/GND_W)をそれぞれ接地させ、両者の電位を接地電位(GND)まで下降させることが可能である。
【0027】
このように、信号処理回路20に対する電源電位(VDD)の供給を停止することで、当該半導体装置における消費電力を低減することが可能である。
【0028】
また、トランジスタ102又はトランジスタ104の少なくとも一方は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタである。これにより、配線(VDD/GND_W)に対して電源電位(VDD)を供給する期間(トランジスタ102がオン状態となる期間)における、トランジスタ104のカットオフ電流に起因する消費電力、又は、配線(VDD/GND_W)に対する電源電位(VDD)の供給を停止(接地電位(GND)を供給)する期間(トランジスタ104がオン状態となる期間)における、トランジスタ102のカットオフ電流に起因する消費電力の少なくとも一方を低減することが可能である。
【0029】
さらに、トランジスタ102のスイッチングは外部から入力される割り込み信号(ITR)によって制御され、トランジスタ104のスイッチングは信号処理回路20から入力される電源供給停止信号(STP)によって制御される。これにより、配線(VDD/GND_W)に対する電源電位(VDD)の供給再開に備えて、定常的に電源電位(VDD)が供給される回路が不要となる。すなわち、当該半導体装置における消費電力をさらに低減することが可能となる。
【0030】
また、トランジスタ101又はトランジスタ103の少なくとも一方として、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを適用することが好ましい。製造行程数を低減することができるからである。
【0031】
また、図1(B)に示す電源供給制御回路10に、一方の電極がトランジスタ102のゲートに電気的に接続され、他方の電極が配線(VDD/GND_W)に電気的に接続された容量素子を追加する構成としてもよい。これにより、上述のブートストラップを確実に行うことが可能となる。
【0032】
<酸化物半導体について>
以下では、酸化物半導体について詳述する。
【0033】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0034】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0035】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0036】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0037】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0038】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0039】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0040】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。また、In−Sn−Zn系酸化物をスパッタ法で形成する場合には、用いるターゲットの組成比は、In:Sn:Znが原子数比で、1:2:2、2:1:3、1:1:1、または20:45:35などとなる酸化物ターゲットを用いる。
【0041】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a―A)+(b―B)+(c―C)≦rを満たすことを言う。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0042】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0043】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0044】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0045】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0046】
【数1】

【0047】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0048】
また、酸化物半導体層としては、電子供与体(ドナー)となる水分又は水素などの不純物が低減されて高純度化される(i型化又はi型に限りなく近い状態にされる)ことが好ましい。これにより、酸化物半導体層にチャネルが形成されない状態において生じる電流を低減することが可能となるからである。具体的には、高純度化された酸化物半導体層は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)による水素濃度の測定値が、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下、更に好ましくは1×1016/cm以下である。また、ホール効果測定により測定できる酸化物半導体層のキャリア密度は、1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、更に好ましくは1×1011/cm未満である。
【0049】
ここで、酸化物半導体層中の、水素濃度の分析について触れておく。半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法で行う。SIMS分析は、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる層との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、層中における水素濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、対象となる層が存在する範囲において、値に極端な変動がなく、ほぼ一定の値が得られる領域における平均値を、水素濃度として採用する。また、測定の対象となる層の厚さが小さい場合、隣接する層内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の値が得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該層が存在する領域における、水素濃度の極大値又は極小値を、当該層中の水素濃度として採用する。更に、当該層が存在する領域において、極大値を有する山型のピーク、極小値を有する谷型のピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【0050】
スパッタリング法を用いて酸化物半導体層を作製する場合には、ターゲット中の水素濃度のみならず、チャンバー内に存在する水、水素の量を極力低減しておくことが重要である。具体的には、当該形成以前にチャンバー内をベークする、チャンバー内に導入されるガス中の水、水素の量を低減する、及びチャンバーからガスの排気する排気系における逆流を防止するなどを行うことが効果的である。
【0051】
また、酸化物半導体層は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。例えば、酸化物半導体を、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面においてはa軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶(CAAC:C Axis Aligned Crystalともいう。)を含む酸化物としてもよい。
【0052】
CAACは、非晶質の酸化物半導体と比較して、金属と酸素の結合が秩序化している。すなわち、酸化物半導体が非晶質の場合は、個々の金属原子によって配位数が異なることも有り得るが、CAACでは金属原子の配位数はほぼ一定となる。そのため、微視的な酸素の欠損が減少し、水素原子(水素イオンを含む)又はアルカリ金属原子の脱着による電荷の移動や不安定性を減少させる効果がある。
【0053】
したがって、酸化物半導体層をCAACを含む酸化物で構成することによって、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタの信頼性を向上させることが可能である。
【0054】
なお、スパッタリング法を用いてCAACを含む酸化物膜を成膜する場合には、雰囲気中の酸素ガス比が高い方が好ましい。例えば、アルゴン及び酸素の混合ガス雰囲気中でスパッタリング法を行う場合には、酸素ガス比を30%以上とすることが好ましく、40%以上とすることがより好ましい。雰囲気中からの酸素の補充によって、CAACの結晶化が促進されるからである。
【0055】
また、スパッタリング法を用いてCAACを含む酸化物膜を成膜する場合には、CAACを含む酸化物膜が成膜される基板を150℃以上に加熱しておくことが好ましく、170℃以上に加熱しておくことがより好ましい。基板温度の上昇に伴って、CAACの結晶化が促進されるからである。
【0056】
また、CAACを含む酸化物膜に対して、窒素雰囲気中又は真空中において熱処理を行った後には、酸素雰囲気中又は酸素と他のガスとの混合雰囲気中において熱処理を行うことが好ましい。先の熱処理で生じる酸素欠損を後の熱処理における雰囲気中からの酸素供給によって復元することができるからである。
【0057】
また、CAACを含む酸化物膜が成膜される膜表面(被成膜面)は平坦であることが好ましい。CAACを含む酸化物膜は、当該被成膜面に概略垂直となるc軸を有するため、当該被成膜面に存在する凹凸は、CAACを含む酸化物膜における結晶粒界の発生を誘発することになるからである。よって、CAACを含む酸化物膜が成膜される前に当該被成膜表面に対して化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)などの平坦化処理を行うことが好ましい。また、当該被成膜面の平均ラフネスは、0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。
【0058】
ここでCAACについて説明する。CAACとは、広義に、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形または正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む結晶をいう。
【0059】
CAACを含む酸化物膜は単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAACを含む酸化物膜は、CAACの境界を明確に判別できないこともある。
【0060】
CAACに酸素が含まれる場合、酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAACを含む酸化物膜を構成する個々のCAACのc軸は一定の方向(例えば、CAACを含む酸化物膜を支持する基板面、CAACを含む酸化物膜の表面などに垂直な方向)に揃っていてもよい。または、CAACを含む酸化物膜を構成する個々のCAACのab面の法線は一定の方向(例えば、CAACを含む酸化物膜を支持する基板面、CAACを含む酸化物膜の表面などに垂直な方向)を向いていてもよい。
【0061】
CAACを含む酸化物膜は、その組成などに応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成などに応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0062】
このようなCAACを含む酸化物の例として、膜状に形成され、膜表面または支持する基板面に垂直な方向から観察すると三角形または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子または金属原子および酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる酸化物を挙げることもできる。
【0063】
CAACの構造の一例について図7乃至図9を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図7乃至図9は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。また、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図7において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0064】
図7(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図7(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図7(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図7(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0065】
図7(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図7(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図7(B)に示す構造をとりうる。図7(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0066】
図7(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図7(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図7(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0067】
図7(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図7(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図7(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0068】
図7(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図7(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図7(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0069】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0070】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。Inの上半分の3個のOは下方向に3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Inを有する。Gaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。Znの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。その理由を以下に示す。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が上半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)の上半分の4配位のO、5配位の金属原子(GaまたはIn)の下半分の4配位のOまたは4配位の金属原子(Zn)の上半分の4配位のOのいずれかと結合することになる。
【0071】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0072】
図8(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図8(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図8(C)は、図8(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0073】
図8(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図8(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図8(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0074】
図8(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0075】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図7(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0076】
具体的には、図8(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。なお、In−Sn−Zn−O系の結晶は、mの数が大きいと結晶性が向上するため、好ましい。
【0077】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Pm−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物や、In−Ga系酸化物、一元系金属の酸化物であるIn系酸化物、Sn系酸化物、Zn系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0078】
例えば、図9(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0079】
図9(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0080】
図9(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図9(C)は、図9(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0081】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0082】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図9(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0083】
<チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタについて>
次いで、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタについて図6(A)〜(D)を参照して説明する。なお、図6(A)〜(D)は、トランジスタの構造例を示す断面模式図である。
【0084】
図6(A)に示すトランジスタは、導電層601(a)と、絶縁層602(a)と、酸化物半導体層603(a)と、導電層605a(a)と、導電層605b(a)と、絶縁層606(a)と、導電層608(a)と、を含んでいる。
【0085】
導電層601(a)は、被素子形成層600(a)の上に設けられている。
【0086】
絶縁層602(a)は、導電層601(a)の上に設けられている。
【0087】
酸化物半導体層603(a)は、絶縁層602(a)を介して導電層601(a)に重畳する。
【0088】
導電層605a(a)及び導電層605b(a)のそれぞれは、酸化物半導体層603(a)の上に設けられ、酸化物半導体層603(a)に電気的に接続されている。
【0089】
絶縁層606(a)は、酸化物半導体層603(a)、導電層605a(a)、及び導電層605b(a)の上に設けられている。
【0090】
導電層608(a)は、絶縁層606(a)を介して酸化物半導体層603(a)に重畳する。
【0091】
なお、導電層601(a)又は導電層608(a)を設けなくてもよい。また、導電層608(a)を設けない場合には、絶縁層606(a)を設けなくてもよい。
【0092】
図6(B)に示すトランジスタは、導電層601(b)と、絶縁層602(b)と、酸化物半導体層603(b)と、導電層605a(b)と、導電層605b(b)と、絶縁層606(b)と、導電層608(b)と、を含んでいる。
【0093】
導電層601(b)は、被素子形成層600(b)の上に設けられている。
【0094】
絶縁層602(b)は、導電層601(b)の上に設けられている。
【0095】
導電層605a(b)及び導電層605b(b)のそれぞれは、絶縁層602(b)の一部の上に設けられている。
【0096】
酸化物半導体層603(b)は、導電層605a(b)及び導電層605b(b)の上に設けられ、導電層605a(b)及び導電層605b(b)に電気的に接続されている。また、酸化物半導体層603(b)は、絶縁層602(b)を介して導電層601(b)に重畳する。
【0097】
絶縁層606(b)は、酸化物半導体層603(b)、導電層605a(b)、及び導電層605b(b)の上に設けられている。
【0098】
導電層608(b)は、絶縁層606(b)を介して酸化物半導体層603(b)に重畳する。
【0099】
なお、導電層601(b)又は導電層608(b)を設けなくてもよい。導電層608(b)を設けない場合には、絶縁層606(b)を設けなくてもよい。
【0100】
図6(C)に示すトランジスタは、導電層601(c)と、絶縁層602(c)と、酸化物半導体層603(c)と、導電層605a(c)と、導電層605b(c)と、を含んでいる。
【0101】
酸化物半導体層603(c)は、領域604a(c)及び領域604b(c)を含んでいる。領域604a(c)及び領域604b(c)は、互いに離間し、それぞれドーパントが添加された領域である。なお、領域604a(c)及び領域604b(c)の間の領域がチャネル形成領域になる。酸化物半導体層603(c)は、被素子形成層600(c)の上に設けられる。なお、必ずしも領域604a(c)及び領域604b(c)を設けなくてもよい。
【0102】
導電層605a(c)及び導電層605b(c)は、酸化物半導体層603(c)の上に設けられ、酸化物半導体層603(c)に電気的に接続されている。また、導電層605a(c)及び導電層605b(c)の側面は、テーパ状である。
【0103】
また、導電層605a(c)は、領域604a(c)の一部に重畳するが、必ずしもこれに限定されない。導電層605a(c)を領域604a(c)の一部に重畳させることにより、導電層605a(c)及び領域604a(c)の間の抵抗値を小さくすることができる。また、導電層605a(c)に重畳する酸化物半導体層603(c)の領域の全てが領域604a(c)でもよい。
【0104】
また、導電層605b(c)は、領域604b(c)の一部に重畳するが、必ずしもこれに限定されない。導電層605b(c)を領域604b(c)の一部に重畳させることにより、導電層605b(c)及び領域604b(c)の間の抵抗を小さくすることができる。また、導電層605b(c)に重畳する酸化物半導体層603(c)の領域の全てが領域604b(c)でもよい。
【0105】
絶縁層602(c)は、酸化物半導体層603(c)、導電層605a(c)、及び導電層605b(c)の上に設けられている。
【0106】
導電層601(c)は、絶縁層602(c)を介して酸化物半導体層603(c)に重畳する。絶縁層602(c)を介して導電層601(c)と重畳する酸化物半導体層603(c)の領域がチャネルになる。
【0107】
また、図6(D)に示すトランジスタは、導電層601(d)と、絶縁層602(d)と、酸化物半導体層603(d)と、導電層605a(d)と、導電層605b(d)と、を含んでいる。
【0108】
導電層605a(d)及び導電層605b(d)は、被素子形成層600(d)の上に設けられる。また、導電層605a(d)及び導電層605b(d)の側面は、テーパ状である。
【0109】
酸化物半導体層603(d)は、領域604a(d)及び領域604b(d)と、を含んでいる。領域604a(d)及び領域604b(d)は、互いに離間し、それぞれドーパントが添加された領域である。また、領域604a(d)及び領域604b(d)の間の領域がチャネルになる。酸化物半導体層603(d)は、例えば導電層605a(d)、導電層605b(d)、及び被素子形成層600(d)の上に設けられ、導電層605a(d)及び導電層605b(d)に電気的に接続される。なお、必ずしも領域604a(d)及び領域604b(d)を設けなくてもよい。
【0110】
領域604a(d)は、導電層605a(d)に電気的に接続されている。
【0111】
領域604b(d)は、導電層605b(d)に電気的に接続されている。
【0112】
絶縁層602(d)は、酸化物半導体層603(d)の上に設けられている。
【0113】
導電層601(d)は、絶縁層602(d)を介して酸化物半導体層603(d)に重畳する。絶縁層602(d)を介して導電層601(d)と重畳する酸化物半導体層603(d)の領域がチャネルになる。
【0114】
さらに、図6(A)乃至図6(D)に示す各構成要素について説明する。
【0115】
被素子形成層600(a)乃至被素子形成層600(d)としては、例えば絶縁層、又は絶縁表面を有する基板などを用いることができる。また、予め素子が形成された層を被素子形成層600(a)乃至被素子形成層600(d)として用いることもできる。
【0116】
導電層601(a)乃至導電層601(d)のそれぞれは、トランジスタのゲートとしての機能を有する。なお、トランジスタのゲートとしての機能を有する層をゲート電極又はゲート配線ともいう。
【0117】
導電層601(a)乃至導電層601(d)としては、例えばモリブデン、マグネシウム、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、若しくはスカンジウムなどの金属材料、又はこれらを主成分とする合金材料の層を用いることができる。また、導電層601(a)乃至導電層601(d)の形成に適用可能な材料の層の積層により、導電層601(a)乃至導電層601(d)を構成することもできる。
【0118】
絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)のそれぞれは、トランジスタのゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0119】
絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)としては、例えば酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、酸化ハフニウム層、又は酸化ランタン層を用いることができる。また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の層の積層により絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)を構成することもできる。
【0120】
また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)としては、例えば元素周期表における第13族元素及び酸素元素を含む材料の絶縁層を用いることもできる。例えば、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)が第13族元素を含む場合に、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)に接する絶縁層として第13族元素を含む絶縁層を用いることにより、該絶縁層と酸化物半導体層との界面の状態を良好にすることができる。
【0121】
第13族元素及び酸素元素を含む材料としては、例えば酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどが挙げられる。なお、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多い物質のことをいい、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上の物質のことをいう。また、Al(x=3+α、αは0より大きく1より小さい値)、Ga(x=3+α、αは0より大きく1より小さい値)、又はGaAl2−x3+α(xは0より大きく2より小さい値、αは0より大きく1より小さい値)で表記される材料を用いることもできる。
【0122】
また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の層の積層により絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)を構成することもできる。例えば、複数のGaで表記される酸化ガリウムを含む層の積層により絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)を構成してもよい。また、Gaで表記される酸化ガリウムを含む絶縁層及びAlで表記される酸化アルミニウムを含む絶縁層の積層により絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)を構成してもよい。
【0123】
また、トランジスタのチャネル長30nmとしたとき、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)の厚さを例えば5nm程度にしてもよい。このとき、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)がCAACの酸化物半導体層であれば、トランジスタにおける短チャネル効果を抑制することができる。
【0124】
領域604a(c)、領域604b(c)、領域604a(d)、及び領域604b(d)は、N型又はP型の導電型を付与するドーパントが添加され、トランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。ドーパントとしては、例えば元素周期表における13族の元素(例えば硼素など)、元素周期表における15族の元素(例えば窒素、リン、及び砒素の一つ又は複数)、及び希ガス元素(例えばヘリウム、アルゴン、及びキセノンの一つ又は複数)の一つ又は複数を用いることができる。なお、トランジスタのソースとしての機能を有する領域をソース領域ともいい、トランジスタのドレインとしての機能を有する領域をドレイン領域ともいう。領域604a(c)、領域604b(c)、領域604a(d)、及び領域604b(d)にドーパントを添加することにより導電層との接続抵抗を小さくすることができるため、トランジスタを微細化することができる。
【0125】
導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)のそれぞれは、トランジスタのソース又はドレインとしての機能を有する。なお、トランジスタのソースとしての機能を有する層をソース電極又はソース配線ともいい、トランジスタのドレインとしての機能を有する層をドレイン電極又はドレイン配線ともいう。
【0126】
導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、若しくはタングステンなどの金属材料、又はこれらの金属材料を主成分とする合金材料の層を用いることができる。例えば、銅、マグネシウム、及びアルミニウムを含む合金材料の層により、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)を構成することができる。また、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)に適用可能な材料の層の積層により、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)を構成することもできる。例えば、銅、マグネシウム、及びアルミニウムを含む合金材料の層と銅を含む層の積層により、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)を構成することができる。
【0127】
また、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)としては、導電性の金属酸化物を含む層を用いることもできる。導電性の金属酸化物としては、例えば酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、又は酸化インジウム酸化亜鉛を用いることができる。なお、導電層605a(a)乃至導電層605a(d)、及び導電層605b(a)乃至導電層605b(d)に適用可能な導電性の金属酸化物は、酸化シリコンを含んでいてもよい。
【0128】
絶縁層606(a)及び絶縁層606(b)としては、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層606(a)及び絶縁層606(b)に適用可能な材料の積層により、絶縁層606(a)及び絶縁層606(b)を構成してもよい。例えば、酸化シリコン層、酸化アルミニウム層などにより絶縁層606(a)及び絶縁層606(b)を構成してもよい。例えば、酸化アルミニウム層を用いることにより、酸化物半導体層603(a)及び酸化物半導体層603(b)への不純物(水)の侵入抑制効果をより高めることができ、また、酸化物半導体層603(a)及び酸化物半導体層603(b)中の酸素の脱離抑制効果を高めることができる。
【0129】
導電層608(a)及び導電層608(b)のそれぞれは、トランジスタのゲートとしての機能を有する。なお、トランジスタが導電層601(a)及び導電層608(a)の両方、又は導電層601(b)及び導電層608(b)の両方を含む構造である場合、導電層601(a)及び導電層608(a)の一方、又は導電層601(b)及び導電層608(b)の一方を、バックゲート、バックゲート電極、又はバックゲート配線ともいう。ゲートとしての機能を有する導電層を、チャネル形成層を介して複数設けることにより、トランジスタの閾値電圧を制御しやすくすることができる。
【0130】
導電層608(a)及び導電層608(b)としては、例えば導電層601(a)乃至導電層601(d)に適用可能な材料の層を用いることができる。また、導電層608(a)及び導電層608(b)に適用可能な材料の層の積層により導電層608(a)及び導電層608(b)を構成してもよい。
【0131】
また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の積層によりチャネル保護層としての機能を有する絶縁層を構成してもよい。
【0132】
また、被素子形成層600(a)乃至被素子形成層600(d)の上に下地層を形成し、該下地層の上にトランジスタを形成してもよい。このとき、下地層としては、例えば絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の層を用いることができる。また、絶縁層602(a)乃至絶縁層602(d)に適用可能な材料の積層により下地層を構成してもよい。例えば、酸化アルミニウム層及び酸化シリコン層の積層により下地層を構成することにより、下地層に含まれる酸素が酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)を介して脱離するのを抑制することができる。
【0133】
また、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)に接する絶縁層中の酸素を過剰にすることにより、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)に供給されやすくなる。よって、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)中、又は当該絶縁層と酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)の界面における酸素欠陥を低減することができるため、酸化物半導体層603(a)乃至酸化物半導体層603(d)のキャリア濃度をより低減することができる。また、これに限定されず、製造過程により酸化物半導体層603(a)に含まれる酸素を過剰にした場合であっても、酸化物半導体層603(a)に接する上記絶縁層により、酸化物半導体層603(a)からの酸素の脱離を抑制することができる。
【0134】
<酸化物半導体を用いたトランジスタの特性>
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0135】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、以下の式で表現できる。
【0136】
【数2】

【0137】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、以下の式で表される。
【0138】
【数3】

【0139】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。線形領域におけるドレイン電流Iは、以下の式となる。
【0140】
【数4】

【0141】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。上式の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、以下のようになる。
【0142】
【数5】

【0143】
数5の右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI―V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0144】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数2および数3よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は35cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0145】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における移動度μは、以下の式で表される。
【0146】
【数6】

【0147】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。BおよびGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数6の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0148】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μを計算した結果を図10に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0149】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0150】
図10で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0151】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図11乃至図13に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図14に示す。図14に示すトランジスタは酸化物半導体層にnの導電型を呈する半導体領域703aおよび半導体領域703cを有する。半導体領域703aおよび半導体領域703cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0152】
図14(A)に示すトランジスタは、下地絶縁膜701と、下地絶縁膜701に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物702の上に形成される。トランジスタは、半導体領域703a、半導体領域703cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域703bと、ゲート705を有する。ゲート705の幅を33nmとする。
【0153】
ゲート705と半導体領域703bの間には、ゲート絶縁膜704を有し、また、ゲート705の両側面には側壁絶縁物706aおよび側壁絶縁物706b、ゲート705の上部には、ゲート705と他の配線との短絡を防止するための絶縁物707を有する。側壁絶縁物の幅は5nmとする。また、半導体領域703aおよび半導体領域703cに接して、ソース708aおよびドレイン708bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0154】
図14(B)に示すトランジスタは、下地絶縁膜701と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物702の上に形成され、半導体領域703a、半導体領域703cと、それらに挟まれた真性の半導体領域703bと、幅33nmのゲート705とゲート絶縁膜704と側壁絶縁物706aおよび側壁絶縁物706bと絶縁物707とソース708aおよびドレイン708bを有する点で図14(A)に示すトランジスタと同じである。
【0155】
図14(A)に示すトランジスタと図14(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁物706aおよび側壁絶縁物706bの下の半導体領域の導電型である。図14(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁物706aおよび側壁絶縁物706bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域703aおよび半導体領域703cであるが、図14(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域703bである。すなわち、半導体領域703a(半導体領域703c)とゲート705がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁物706a(側壁絶縁物706b)の幅と同じである。
【0156】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図11は、図14(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0157】
図11(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図11(B)は10nmとしたものであり、図11(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0158】
図12は、図14(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図12(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図12(B)は10nmとしたものであり、図12(C)は5nmとしたものである。
【0159】
また、図13は、図14(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図13(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図13(B)は10nmとしたものであり、図13(C)は5nmとしたものである。
【0160】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0161】
なお、移動度μのピークは、図11では80cm/Vs程度であるが、図12では60cm/Vs程度、図13では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0162】
<In−Sn−Zn系酸化物を用いたトランジスタの特性>
酸化物半導体としてIn−Sn−Zn系酸化物を用いたトランジスタの特性を説明する。
【0163】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体層を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
【0164】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
【0165】
例えば、図15(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体層と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vは10Vとした。
【0166】
図15(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm/Vsecが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図15(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsecが得られている。
【0167】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図15(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsecが得られている。
【0168】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体層中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体層から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0169】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0170】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/又は成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体層をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体層を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図15(A)と図15(B)の対比からも確認することができる。
【0171】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体層を得ることができる。
【0172】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0173】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/又は成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは±1.0V未満を得ることができる。
【0174】
実際に、酸化物半導体層成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT試験を行った。
【0175】
まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVgsに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行った。これをプラスBT試験と呼ぶ。
【0176】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVgsに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行った。これをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0177】
試料1のプラスBT試験の結果を図16(A)に、マイナスBT試験の結果を図16(B)に示す。また、試料2のプラスBT試験の結果を図17(A)に、マイナスBT試験の結果を図17(B)に示す。
【0178】
試料1のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80Vおよび−0.42Vであった。また、試料2のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79Vおよび0.76Vであった。試料1および試料2のいずれも、BT試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0179】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体層に注入する方法を適用しても良い。
【0180】
酸化物半導体中、及び当該酸化物半導体層と他の膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm以上2×1020/cm以下のとすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0181】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体層を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体層は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体層を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0182】
実際に、In−Sn−Zn系酸化物膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0183】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0184】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn系酸化物膜を100nmの厚さで成膜した。
【0185】
In−Sn−Zn系酸化物膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn系酸化物ターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0186】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0187】
図18に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0188】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0189】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0190】
図19に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0191】
具体的には、図19に示すように、基板温度が125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。
【0192】
もっとも、酸化物半導体層の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0193】
また、酸化物半導体層成膜後に650℃の加熱処理を行った試料Bのトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0194】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vdsは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃および150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極との重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体層に対する一対の電極のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0195】
図20に、Ids(実線)および電界効果移動度(点線)のVgs依存性を示す。また、図21(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図21(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0196】
図21(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0197】
また、図21(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm/Vs〜32cm/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0198】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vsec以上、好ましくは40cm/Vsec以上、より好ましくは60cm/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、Si半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【0199】
<In−Sn−Zn系酸化物膜を用いたトランジスタの例>
In−Sn−Zn系酸化物膜を酸化物半導体層に用いたトランジスタの一例について、図22、23を用いて説明する。
【0200】
図22は、コプラナー型であるトップゲート・トップコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図22(A)にトランジスタの上面図を示す。また、図22(B)に図22(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面A−Bを示す。
【0201】
図22(B)に示すトランジスタは、基板300と、基板300上に設けられた下地絶縁膜302と、下地絶縁膜302の周辺に設けられた保護絶縁膜304と、下地絶縁膜302および保護絶縁膜304上に設けられた高抵抗領域306aおよび低抵抗領域306bを有する酸化物半導体層306と、酸化物半導体層306上に設けられたゲート絶縁膜308と、ゲート絶縁膜308を介して酸化物半導体層306と重畳して設けられたゲート電極310と、ゲート電極310の側面と接して設けられた側壁絶縁膜312と、少なくとも低抵抗領域306bと接して設けられた一対の電極314と、少なくとも酸化物半導体層306、ゲート電極310および一対の電極314を覆って設けられた層間絶縁膜316と、層間絶縁膜316に設けられた開口部を介して少なくとも一対の電極314の一方と接続して設けられた配線318と、を有する。
【0202】
なお、図示しないが、層間絶縁膜316および配線318を覆って設けられた保護膜を有していても構わない。該保護膜を設けることで、層間絶縁膜316の表面伝導に起因して生じる微小リーク電流を低減することができ、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0203】
上記とは異なるIn−Sn−Zn系酸化物膜を酸化物半導体層に用いたトランジスタの他の一例について示す。
【0204】
図23は、トランジスタの構造を示す上面図および断面図である。図23(A)はトランジスタの上面図である。また、図23(B)は図23(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面図である。
【0205】
図23(B)に示すトランジスタは、基板400と、基板400上に設けられた下地絶縁膜402と、下地絶縁膜402上に設けられた酸化物半導体層406と、酸化物半導体層406と接する一対の電極414と、酸化物半導体層406および一対の電極414上に設けられたゲート絶縁膜408と、ゲート絶縁膜408を介して酸化物半導体層406と重畳して設けられたゲート電極410と、ゲート絶縁膜408およびゲート電極410を覆って設けられた層間絶縁膜416と、層間絶縁膜416に設けられた開口部を介して一対の電極414と接続する配線418と、層間絶縁膜416および配線418を覆って設けられた保護膜420と、を有する。
【0206】
基板400としてはガラス基板を、下地絶縁膜402としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体層406としてはIn−Sn−Zn系酸化物膜を、一対の電極414としてはタングステン膜を、ゲート絶縁膜408としては酸化シリコン膜を、ゲート電極410としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜416としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線418としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜420としてはポリイミド膜を、それぞれ用いた。
【0207】
なお、図23(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極410と一対の電極414との重畳する幅をLovと呼ぶ。同様に、酸化物半導体層406に対する一対の電極414のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0208】
<電源供給制御回路10の変形例>
図1に示す電源供給制御回路10は、本発明の一態様であり、図1(A)及び図1(B)と異なる点を有する回路構成も本発明には含まれる。例えば、電源供給制御回路10として、図2(A)に示す回路構成、又は図3(A)に示す回路構成を適用することも可能である。
【0209】
図2(A)に示す電源供給制御回路10は、図1(B)に示す電源供給制御回路10にバッファ105を付加した回路である。なお、バッファ105の入力端子は、信号処理回路20が出力する電源供給停止信号(STP)の供給を担う配線に電気的に接続され、出力端子は、トランジスタ104のゲートに電気的に接続されている。また、バッファ105は、2つのインバータを直列に接続する、又は負荷を設けるなどによって構成することが可能である。バッファ105を設けることによって、配線(VDD/GND_W)の電位の下降をノードAの電位の下降よりも遅延させることが可能である(図2(B)参照)。よって、電源電位(VDD)を供給する配線が接地される蓋然性を低減することができる。
【0210】
図3(A)に示す電源供給制御回路10は、トランジスタ103のゲート及びトランジスタ104のゲートのそれぞれに異なる電源供給停止信号(STP1、STP2)が入力される点が図1に示す電源供給制御回路10と異なる。なお、トランジスタ103のゲートに入力される電源供給停止信号(STP1)は、トランジスタ104のゲートに入力される電源供給停止信号(STP2)よりも先に信号処理回路20から出力される(図3(B)参照)。これにより、配線(VDD/GND_W)の電位の下降をノードAの電位の下降よりも遅延させることが可能である。よって、電源電位(VDD)を供給する配線が接地される蓋然性を低減することができる。
【0211】
<信号処理回路20の構成例及び動作例>
図4(A)は、図1(A)に示す信号処理回路20の構成例を示す図である。図4(A)に示す信号処理回路20は、n個のフリップフロップ(FF1〜FFn)と、n個のフリップフロップのそれぞれに併設されたメモリセル(MC1〜MCn)とを有する。
【0212】
なお、フリップフロップ(FF)とは、1ビットのデータの保持が可能な揮発性メモリであり、メモリセル(MC)とは、1ビットのデータの保持が可能な不揮発性メモリであることとする。そして、フリップフロップ(FF)及びメモリセル(MC)間でデータの送受が可能であることとする。したがって、図4(A)に示す信号処理回路20においては、電源電位(VDD)の供給停止前にデータをフリップフロップ(FF)からメモリセル(MC)に転送し、且つ電源電位(VDD)の供給再開後にデータをメモリセル(MC)からフリップフロップ(FF)に転送することが可能である。すなわち、フリップフロップ(FF)のデータを一時的(電源電位(VDD)の供給が停止されている期間を含む期間)にメモリセル(MC)に退避させることが可能である。
【0213】
これにより、電源電位(VDD)の供給停止によって得られる消費電力の低減と、電源電位(VDD)の供給停止に伴ってフリップフロップ(FF)から消失するデータの復元に要する期間の短縮(処理速度の向上)を両立させることが可能である。
【0214】
図4(B)、(C)のそれぞれは、図4(A)に示すメモリセル(MC)の構成例を示す図である。
【0215】
図4(B)に示すメモリセル(MC)は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタ201と、容量素子202とを有する。そして、トランジスタ201のゲートは制御信号(Cnt)の供給を担う配線に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方はフリップフロップ(FF)に電気的に接続されている。また、容量素子202の一方の電極はトランジスタ201のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極は接地されている。
【0216】
当該メモリセル(MC)は、トランジスタ201のソース及びドレインの他方、及び容量素子202の一方の電極が電気的に接続するノードにおいてデータの保持を行う。ここで、トランジスタ201は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタである。上述の様に、当該トランジスタはカットオフ電流が著しく低い。よって、当該メモリセル(MC)は、不揮発性メモリとしての機能を有する。
【0217】
図4(C)に示すメモリセル(MC)は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタ203と、トランジスタ204と、容量素子205とを有する。そして、トランジスタ203のゲートは制御信号(Cnt)の供給を担う配線に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方はフリップフロップ(FF)に電気的に接続されている。また、トランジスタ204のゲートはトランジスタ203のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、ソース及びドレインの一方はフリップフロップ(FF)に電気的に接続され、ソース及びドレインの他方は固定電位を供給する配線に電気的に接続されている。また、容量素子205の一方の電極はトランジスタ203のソース及びドレインの他方及びトランジスタ204のゲートに電気的に接続され、他方の電極は固定電位を供給する配線に電気的に接続されている。
【0218】
なお、トランジスタ204としては、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを適用することも可能であるし、チャネルが酸化物半導体層以外の半導体層に形成されるトランジスタを適用することも可能である。また、トランジスタ204のソース及びドレインの他方に電気的に接続されている配線が供給する固定電位と、容量素子205の他方の電極に電気的に接続されている配線が供給する固定電位とは共通の電位とすることも可能であるし、異なる電位とすることも可能である。
【0219】
また、当該メモリセル(MC)から、容量素子205を削除した構成とすることも可能である。
【0220】
当該メモリセル(MC)は、トランジスタ203のソース及びドレインの他方、トランジスタ204のゲート、及び容量素子205の一方の電極が電気的に接続するノードにおいてデータの保持を行う。そして、フリップフロップ(FF)においては、トランジスタ204の状態(オン状態又はオフ状態のいずれであるか)を判別することで当該データを取得することが可能である。
【0221】
<半導体装置の構造例>
次いで、上述した半導体装置の構造例について図5を参照して説明する。
【0222】
信号処理回路20が有するフリップフロップ(FF)は、トランジスタなどを用いて構成される。ここで、当該トランジスタとしては、電界効果移動度の高いトランジスタを適用することが好ましい。よって、電源供給制御回路10を構成するトランジスタの少なくとも一は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるのに対して、フリップフロップ(FF)を構成するトランジスタは、チャネルが多結晶シリコン層又は単結晶シリコン層に形成されるトランジスタであることが好ましい。
【0223】
図5は、そのような半導体装置の構造例を示す図である。図5に示す半導体装置は、当該フリップフロップなどを含む層61を有する単結晶シリコン基板60と、層61と重畳する領域に設けられる電源供給制御回路10及びメモリセル(MC)を有する層70とを有する。なお、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いて構成される図4(B)、(C)に示すメモリセルであれば、電源供給制御回路10と同一層に形成することが可能である。
【0224】
そして、層70に設けられる開口部において当該フリップフロップと、電源供給制御回路10及びメモリセル(MC)とを電気的に接続させる。図5に示すように、集積回路が有する当該フリップフロップなどを含む層61と、電源供給制御回路10及びメモリセル(MC)とを重畳して設ける構造は、好ましい構造である。回路面積の縮小が可能となるからである。
【0225】
なお、本明細書で開示される集積回路は、図5に示す構造に限定されないことを付記する。例えば、図5では単結晶シリコン基板60を有する集積回路について例示したが、単結晶シリコン基板60を絶縁表面上に単結晶シリコン層が設けられた基板(いわゆる、SOI基板)に置換することなどが可能である。
【符号の説明】
【0226】
10 電源供給制御回路
20 信号処理回路
60 単結晶シリコン基板
61 層
70 層
101 トランジスタ
102 トランジスタ
103 トランジスタ
104 トランジスタ
105 バッファ
201 トランジスタ
202 容量素子
203 トランジスタ
204 トランジスタ
205 容量素子
300 基板
302 下地絶縁膜
304 保護絶縁膜
306 酸化物半導体層
306a 高抵抗領域
306b 低抵抗領域
308 ゲート絶縁膜
310 ゲート電極
312 側壁絶縁膜
314 電極
316 層間絶縁膜
318 配線
400 基板
402 下地絶縁膜
406 酸化物半導体層
408 ゲート絶縁膜
410 ゲート電極
414 電極
416 層間絶縁膜
418 配線
420 保護膜
600(a) 被素子形成層
600(b) 被素子形成層
600(c) 被素子形成層
600(d) 被素子形成層
601(a) 導電層
601(b) 導電層
601(c) 導電層
601(d) 導電層
602(a) 絶縁層
602(b) 絶縁層
602(c) 絶縁層
602(d) 絶縁層
603(a) 酸化物半導体層
603(b) 酸化物半導体層
603(c) 酸化物半導体層
603(d) 酸化物半導体層
604a(c) 領域
604b(c) 領域
604a(d) 領域
604b(d) 領域
605a(a) 導電層
605b(a) 導電層
605a(b) 導電層
605b(b) 導電層
605a(c) 導電層
605b(c) 導電層
605a(d) 導電層
605b(d) 導電層
606(a) 絶縁層
606(b) 絶縁層
608(a) 導電層
608(b) 導電層
701 下地絶縁膜
702 埋め込み絶縁物
703a 半導体領域
703b 半導体領域
703c 半導体領域
704 ゲート絶縁膜
705 ゲート
706a 側壁絶縁物
706b 側壁絶縁物
707 絶縁物
708a ソース
708b ドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源供給制御回路と、前記電源供給制御回路を介して供給される電源電位を用いて動作する信号処理回路と、を有し、
前記電源供給制御回路は、第1のトランジスタ乃至第4のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタのゲート、及びソース及びドレインの一方は、外部から入力される割り込み信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記電源電位を供給する配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース及びドレインの他方は、前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲート及び前記第4のトランジスタのゲートは、前記信号処理回路が出力する電源供給停止信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方、及び前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの他方は、接地され、
前記第4のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソース及びドレインの他方、及び前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース及びドレインの他方は、接地され、
前記第2のトランジスタ又は前記第4のトランジスタの少なくとも一方は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタである半導体装置。
【請求項2】
電源供給制御回路と、前記電源供給制御回路を介して供給される電源電位を用いて動作する信号処理回路と、を有し、
前記電源供給制御回路は、第1のトランジスタ乃至第4のトランジスタと、バッファと、を有し、
前記第1のトランジスタのゲート、及びソース及びドレインの一方は、外部から入力される割り込み信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記電源電位を供給する配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース及びドレインの他方は、前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記信号処理回路が出力する電源供給停止信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方、及び前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの他方は、接地され、
前記第4のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソース及びドレインの他方、及び前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース及びドレインの他方は、接地され、
前記バッファの入力端子は、前記信号処理回路が出力する前記電源供給停止信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記バッファの出力端子は、前記第4のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第2のトランジスタ又は前記第4のトランジスタの少なくとも一方は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタである半導体装置。
【請求項3】
電源供給制御回路と、前記電源供給制御回路を介して供給される電源電位を用いて動作する信号処理回路と、を有し、
前記電源供給制御回路は、第1のトランジスタ乃至第4のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタのゲート、及びソース及びドレインの一方は、外部から入力される割り込み信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記電源電位を供給する配線に電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソース及びドレインの他方は、前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記信号処理回路が出力する第1の電源供給停止信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方、及び前記第2のトランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース及びドレインの他方は、接地され、
前記第4のトランジスタのゲートは、前記信号処理回路が出力する第2の電源供給停止信号の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース及びドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソース及びドレインの他方、及び前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線に電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソース及びドレインの他方は、接地され、
前記第2のトランジスタ又は前記第4のトランジスタの少なくとも一方は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタである半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1のトランジスタ又は前記第3のトランジスタの少なくとも一方は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタである半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記信号処理回路は、フリップフロップと、前記フリップフロップとの間でデータの送受を行うメモリセルと、を有し、
前記メモリセルは、チャネルが酸化物半導体層に形成されるメモリ用トランジスタを有し、
前記メモリセルは、前記メモリ用トランジスタがオフ状態となることによって浮遊状態となるノードにおいて前記データを保持する半導体装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記フリップフロップは、チャネルが多結晶シリコン層又は単結晶シリコン層に形成されるトランジスタを用いて構成され、
前記電源供給制御回路及び前記メモリセルを有する層は、前記フリップフロップを有する層と重畳する領域に設けられる半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置の駆動方法であって、
前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線の電位が前記電源電位となっている状態において、
前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタをオン状態とし、前記第2のトランジスタのゲート、及び前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線を接地させることで、前記第2のトランジスタをオフ状態とし、且つ前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線の電位を接地電位とする第1の行程と、
前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタをオフ状態とする、前記第1の行程後の第2の行程と、
前記第1のトランジスタを介して、前記第2のトランジスタのゲートに前記第2のトランジスタのゲート及びソース間の電圧がしきい値電圧以上となる電位を供給することをきっかけとして、前記第2のトランジスタのゲートの電位をソースとの容量結合によって上昇させることで、前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線の電位を前記電源電位とする、前記第2の行程後の第3の行程と、を有する半導体装置の駆動方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の半導体装置の駆動方法であって、
前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線の電位が前記電源電位となっている状態において、
前記フリップフロップが保持するデータを前記メモリセルへと転送する第1の行程と、
前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタをオン状態とし、前記第2のトランジスタのゲート、及び前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線を接地させることで、前記第2のトランジスタをオフ状態とし、且つ前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線の電位を接地電位とする、前記第1の行程後の第2の行程と、
前記第3のトランジスタ及び前記第4のトランジスタをオフ状態とする、前記第2の行程後の第3の行程と、
前記第1のトランジスタを介して、前記第2のトランジスタのゲートに前記第2のトランジスタのゲート及びソース間の電圧がしきい値電圧以上となる電位を供給することをきっかけとして、前記第2のトランジスタのゲートの電位をソースとの容量結合によって上昇させることで、前記信号処理回路に対する前記電源電位の供給を担う配線の電位を前記電源電位とする、前記第3の行程後の第4の行程と、
前記メモリセルが保持するデータを前記フリップフロップへと転送する、前記第4の行程後の第5の行程と、を有する半導体装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−257203(P2012−257203A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89257(P2012−89257)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】