説明

衝突回避支援装置

【課題】障害物を検知したときに、車両を効果的に減速するとともに、障害物に回避スペースがあるときは、車両を回避スペースの方向に旋回して障害物との接触を回避させる、衝突回避支援装置を提供することを目的とする。
【解決手段】左右の後輪2L、2Rのトー角を独立して制御可能なトー角変更装置120を有する車両システム100を備える車両Vにおいて、レーダ装置160が進行方向に障害物を検知したとき、障害物の左右方向に回避スペースがあるときには、操舵制御ECU130は、ブレーキ装置140を作動させるとともに、後輪2のトー角を制御して、車両Vを回避スペースの方向に旋回させる。一方、障害物の左右方向に回避スペースが無いときには、操舵制御ECU130は、ブレーキ装置140を作動させるとともに、後輪2をトーインさせて、車両Vを効果的に停止・減速させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突回避支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Couple Device)カメラやレーダ装置などを車載して、車両の外界の状況を検知しながら走行し、走行を支援する自動車走行支援システムには、先行車との車間距離を警告する車間距離警告システム、先行車との車間距離を一定に保って走行し、先行車がいないときは一定の速度で走行するACCシステム(アダプティブ・クルーズコントロール・システム)などがある。また、車両が走行する車線から逸脱しないようにステアリングを操作するレーンキープアシストシステム、先行車との距離が所定値以下になったり、障害物を検知したときに、自動的に減速・停止する衝突軽減ブレーキシステムなどもよく知られている。
【0003】
前記の自動車走行支援システムのうち、衝突軽減ブレーキシステムとして、先行車との距離が一定値以下になったときや、車両の走行前方に障害物を検知すると、自動的にブレーキ装置を作動させて、車両を減速もしくは停止させ障害物との接触を回避する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、障害物との接触が予測されたときにブレーキ装置を作動させるとともに、路面との摩擦係数の変化に対応して操舵装置を作動させ、車両の進行方向を変えることでも障害物との接触を回避する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、障害物の回避スペースがあり、かつドライバが操舵輪を操作して障害物を回避しようとしているときには、ドライバの操作をアシストする技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特公昭39−5668号公報(図1)
【特許文献2】特開平5−58319号公報(図5)
【特許文献3】特開平11−348799号公報(図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の衝突軽減ブレーキシステムは、ブレーキシステムの動作によってのみ車両を停止・減速するため、例えば、障害物の出現が急で、ブレーキシステムの制動力のみでは、対応しきれない場合があるなど、改善の余地がある。
また、ドライバが操舵輪を操舵しないときには、車両を旋回して障害物を回避する動作をしない点など、改善の余地がある。
さらに、障害物を回避するときには、車両にはブレーキが作動しているため、前輪に大きな荷重がかかった状態であり、制動力にタイヤの摩擦力がほとんど使われているため、前輪操舵してもタイヤに横力があまり発生しないので車両が曲がりにくく、改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、障害物を検知したときに、車両に効果的に制動力を作用させるとともに、障害物の状態に応じて後輪を転舵して車両を旋回し、接触時の影響を軽減することができる衝突回避支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、制動装置と、車両に備わる後輪のトー角を左右独立に変更可能なトー角変更装置と、前記車両の進行方向の障害物の位置および幅方向の大きさを検知する障害物検知装置と、前記障害物検知装置の検知結果を用いて、障害物との衝突・接触を判定する衝突判定装置と、前記障害物検知装置の検知結果を用いて、前記障害物との衝突・接触を回避する回避スペースの有無を判定する回避判定装置と、を備える車両に適用され、当該車両の障害物との衝突・接触回避を支援する衝突回避支援装置とした。そして、前記衝突判定装置が衝突・接触を判定し、前記制動装置により当該車両に制動力が作用しているときに、前記回避判定装置が、前記回避スペースがないと判定したときは、前記トー角変更装置により前記後輪のトー角を、左右ともトーインまたは左右ともトーアウトに変更して制動力を作用させることを特徴とした。
【0007】
請求項1にかかる発明によると、車両の進行方向に、車両と接触する可能性のある障害物が検知され、その障害物の幅方向に回避スペースがない場合は、車両の後輪を左右ともトーインまたは左右ともトーアウトさせることができる。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、前記制動装置は、ドライバの意思とは関係なく制動力を作用させる制動装置であって、前記衝突判定装置が衝突・接触を判定したときには、前記制動装置により当該車両に制動力を作用させ、前記回避判定装置が、前記回避スペースがないと判定したときは、前記トー角変更装置により前記後輪のトー角を、左右ともトーインまたは左右ともトーアウトに変更して制動力を作用させることを特徴とした。
【0009】
請求項2にかかる発明によって、衝突判定装置が衝突・接触を判定したときには、制動装置により当該車両に制動力を作用させるとともに、回避判定装置が、回避スペースがないと判定したときは、後輪のトー角を、左右ともトーインまたは左右ともトーアウトに変更することができる。
【0010】
また、請求項3にかかる発明は、車両に備わる後輪のトー角を左右独立に変更可能なトー角変更装置と、前記車両の進行方向の障害物の位置および幅方向の大きさを検知する障害物検知装置と、前記障害物検知装置の検知結果を用いて、障害物との衝突・接触を判定する衝突判定装置と、前記障害物検知装置の検知結果を用いて、前記障害物との衝突・接触を回避する回避スペースの有無の判定および回避スペースの方向を判定する回避判定装置と、を含んでなる衝突回避支援装置とした。そして、前記衝突判定装置が衝突・接触を判定し、前記回避判定装置が、前記回避スペースがあると判定したときは、前記回避判定装置が判定した回避方向に前記トー角変更装置により前記後輪を転舵することを特徴とした。
【0011】
請求項3にかかる発明によると、検知された障害物の幅方向に回避スペースがあるときは、回避スペースの方向に車両が旋回するように後輪のトー角を変更することができる。
【0012】
また、請求項4にかかる発明は、前記車両が備える前輪操舵装置に対する操舵トルクを検知したときは、前記検知した操舵トルクの方向へと前記車両をさらに旋回させるように、前記トー角変更装置により前記後輪を転舵することを特徴とした。
【0013】
請求項4にかかる発明によると、ドライバが前輪操舵装置を操作したときには、前輪操舵装置が操作された方向に車両が旋回するように後輪のトー角を変更することができる。
【0014】
また、請求項5にかかる発明は、前記衝突判定装置が衝突・接触をすると判定したときに、前記回避判定装置が判定を行うことを特徴とした。
【0015】
請求項5にかかる発明によると、衝突判定装置の判定の後に回避判定装置が判定することができる。
【0016】
また、請求項6にかかる発明は、車両に備わる後輪のトー角を左右独立に変更可能なトー角変更装置と、前記車両の進行方向の障害物の位置を検知する障害物検知装置と、前記障害物検知装置の検知結果を用いて、障害物との衝突・接触を判定する衝突判定装置と、前記車両の旋回方向を判定する旋回方向判定装置と、を含んでなる衝突回避支援装置とした。そして、前記衝突判定装置が衝突・接触を判定したときは、前記旋回方向判定装置が判定した旋回方向へと前記車両をさらに旋回させるように、前記トー角変更装置により少なくとも前記後輪の外輪をトーアウトにすることを特徴とした。
【0017】
請求項6にかかる発明によると、車両の進行方向に、車両と接触する可能性のある障害物が検知されると、旋回方向判定装置が判定した旋回方向に車両が旋回するように、外輪となる後輪をトーアウトさせることができる。
【0018】
また、請求項7にかかる発明は、前記衝突判定装置は、前記車両に備わるナビゲーション装置の地図データを用いて衝突・接触を判定することを特徴とした。
【0019】
請求項7にかかる発明によると、ナビゲーション装置で、障害物への衝突および旋回方向を判定することができる。
【0020】
また、請求項8にかかる発明は、前記衝突判定装置が衝突・接触を判定したときは、前記トー角制御装置により左右ともトーインまたは左右ともトーアウトに変更して制動力を作用させた後、少なくとも前記後輪の外輪をトーアウトにすることを特徴とした。
【0021】
請求項8にかかる発明によると、衝突判定装置が接触・衝突を判定したときには、後輪を左右ともトーインまたは左右ともトーアウトして制動力を作用させた後に、後輪の外輪をトーアウトさせることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、障害物を検知したときに、車両に効果的に制動力を作用させるとともに、障害物の状態に応じて後輪を転舵して車両を旋回し、接触時の影響を軽減することができる衝突回避支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を用いて詳細に説明する。
【0024】
(車両システムの構成)
本実施形態にかかる車両システムの構成を図1から図7を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態にかかる車両システムを適用した4輪車両の概略図であり、図2は操舵制御ECUの構成を示すブロック図であり、図3は電動パワーステアリング装置の構成図であり、図4は左後輪側のトー角変更装置の構成図であり、図5はトー角変更装置のアクチュエータの構成図である。
【0025】
図1に示すように、車両システム100は、前輪1L、1Rを転舵させる操向ハンドル3による操舵を補助する電動パワーステアリング装置110、前輪1L、1Rの転舵角と車速に応じて後輪2L、2Rをそれぞれ独立に転舵させるトー角変更装置120L、120R、車両システム100を制御する制御装置(以下、操舵制御ECUと称する)130、ブレーキ装置140およびレーダ装置160と、車速センサS、ヨーレートセンサS、など各種センサとを含んで構成されている。
【0026】
左右の前輪1L,1Rは、車両システム100が備わる車両Vの進行方向を決定する操舵輪であって、ドライバは操向ハンドル3の操作によって前輪1L,1Rを操舵し、車両Vを左右方向に旋回させる。
操向ハンドル3は、ステアリングギアボックス6(図3参照)を介して、前輪1L,1Rと接続される。そして、前輪1L,1Rは、ドライバによる操向ハンドル3の回転操作に応じて左右方向に回転し、車両Vの進行方向を決定する。
【0027】
ブレーキ装置140は、前輪1および後輪2を制動して、車両Vを減速または停止する装置である。そして、ブレーキ装置140はブレーキECU130a(図2参照)からの指令によって作動が制御されるため、請求項に記載の制動装置である。なお、ブレーキ装置140は、前輪1および後輪2の制動および開放を適宜繰り返して、車両Vを好適に制動することができるアンチロックブレーキシステムを備えることが好ましい。
【0028】
ヨーレートセンサSは、車両Vに発生しているヨーレートを検知するセンサである。ヨーレートセンサSは、例えば、車両Vにヨーレートが発生していないときを「0」として、左方向のヨーレートが発生しているときに正の値、右方向のヨーレートが発生しているときに負の値を出力するようにすればよい。
【0029】
(操舵制御ECUの構成)
操舵制御ECU130は、電動パワーステアリング装置110、ブレーキ装置140、左右のトー角変更装置120L、120R、トー角変更制御ECU37およびレーダ装置160に接続され、それぞれを制御したり、各センサと接続され、各センサが出力する情報を入力したりする装置である。図2に示すように、操舵制御ECU130は、ブレーキ装置140を制御するブレーキECU130a、電動パワーステアリング装置110を制御する電動パワーステアリングECU130b、トー角変更装置120を制御するトー角制御ECU130c、レーダ装置160からの情報を入力して、障害物の検知を制御する障害物検知ECU130d、障害物を回避する目標ヨーレートを算出する衝突回避支援ECU130e、障害物との衝突・接触を判定する衝突判定ECU130f、障害物を回避できるかを判定する回避判定ECU130gを含んで構成される。そして、各ECUは信号線などで接続され、各ECUの間で情報を入出力できる構成とする。
また、各ECUは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備えるコンピュータおよびプログラム、周辺回路などを含んで構成される。
【0030】
(電動パワーステアリング装置の構成)
電動パワーステアリング装置110は、図3に示すように操向ハンドル3が設けられたメインステアリングシャフト3aと、シャフト3cと、ピニオン軸7とが、2つのユニバーサルジョイント(自在継手)3bによって連結され、また、ピニオン軸7の下端部に設けられたピニオンギア7aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラック歯8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9、9を介して左右の前輪1L、1Rが連結されている。この構成により、電動パワーステアリング装置110は、操向ハンドル3の操舵時に車両Vの進行方向を変えることができる。ここで、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9、9は転舵機構を構成する。なお、ピニオン軸7はその上部、中間部、下部を軸受3d、3e、3fを介してステアリングギアボックス6に支持されている。
この電動パワーステアリング装置110は、前輪1を操舵することから、請求項に記載の前輪操舵装置である。
【0031】
また、電動パワーステアリング装置110は、操向ハンドル3による操舵力を軽減するための補助操舵力を供給する電動機4を備えており、この電動機4の出力軸に設けられたウォームギア5aが、ピニオン軸7に設けられたウォームホイールギア5bに噛合している。すなわち、ウォームギア5aとウォームホイールギア5bとで減速機構が構成されている。また、電動機4の回転子と電動機4に連結されているウォームギア5aとウォームホイールギア5bとピニオン軸7とラック軸8とラック歯8aとタイロッド9、9などにより、ステアリング系が構成される。
【0032】
電動機4は、複数の界磁コイルを備えた固定子(図示せず)と、この固定子の内部で回動する回転子(図示せず)からなる3相ブラシレスモータであり、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換するものである。
【0033】
また、電動パワーステアリング装置110は、電動機4を駆動する電動機駆動回路23と、レゾルバ25と、ピニオン軸7に加えられるピニオントルクTを検知するトルクセンサSと、トルクセンサSの出力を増幅する差動増幅回路21と、車速センサSとを備えている。
【0034】
電動機駆動回路23は、例えば、3相のFET(Field Effect Transistor)ブリッジ回路のような複数のスイッチング素子を備え、電動パワーステアリングECU130bから出力されるDUTY信号を用いて、矩形波電圧を生成し、この矩形波電圧を用いて電動機4を駆動するものである。また、電動機駆動回路23は図示しないホール素子を用いて3相の電動機電流Iを検出する機能を備えている。レゾルバ25は、電動機4の電動機回転角θを検出し、角度信号θを出力するものであり、例えば、磁気抵抗変化を検出するセンサを周方向に等間隔の複数の凹凸部を設けた磁性回転体に近接させたものがある。
【0035】
トルクセンサSは、ピニオン軸7に加えられるピニオントルクTを検出するものであり、ピニオン軸7の軸方向2箇所に逆方向の異方性となるように磁性膜が被着され、各磁性膜の表面に検出コイルがピニオン軸7に離間して挿入されている。差動増幅回路21は、検出コイルがインダクタンス変化として検出した2つの磁歪膜の透磁率変化の差分を増幅し、トルク信号Tを出力するものである。このトルク信号Tが請求項に記載の操舵トルクに相当する。
【0036】
車速センサSは、車両Vの車速VSを単位時間あたりのパルス数として検出するものであり、車速信号を出力する。
【0037】
(トー角変更装置の構成)
次に、図4、図5を参照しながらトー角変更装置の構成を説明する。
図4は左後輪側のトー角変更装置を示す平面図、図5はトー角変更装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
【0038】
トー角変更装置(以下、RTC(リアトーコントローラ)と称する場合あり)120L、120Rは、左右の後輪2L、2Rにそれぞれ取り付けられるものであり、図4では、左側の後輪2Lを例にとりトー角変更装置120Lを示している。トー角変更装置120L、120Rは、アクチュエータ30およびトー角変更制御装置(以下、トー角変更制御ECUと称する)37を備えている。なお、図4は、左側の後輪2Lのみを示しているが、アクチュエータ30およびトー角変更制御ECU37は、右側の後輪2Rについても同様(対称)にして取り付けられている。
【0039】
図4に示すように、車体のリアサイドフレーム11には、略車幅方向に延びるクロスメンバ12の車幅方向端部が弾性支持されている。そして、略車体前後方向に延びるトレーリングアーム13の前端がクロスメンバ12の車幅方向端部近くで支持されている。そして、トレーリングアーム13の後端に後輪2Lが取り付けられている。
トレーリングアーム13は、クロスメンバ12に装着される車体側アーム13aと、後輪2Lに固定される車輪側アーム13bとが、略鉛直方向の回転軸13cを介して連結されて構成されている。これにより、トレーリングアーム13が車幅方向へ変位することが可能となっている。
【0040】
前記アクチュエータ30は、その一端が車輪側アーム13bの回転軸13cより前方側の前端部にボールジョイント16を介して取り付けられ、他端がクロスメンバ12にボールジョイント17を介して取り付けられている。
【0041】
図5に示すように、アクチュエータ30は、電動機31、減速機構33、送りねじ部35などを備えて構成されている。
電動機31は、正逆両方向に回転可能なブラシモータやブラシレスモータなどで構成されている。
減速機構33は、例えば、2段のプラネタリギア(図示せず)などが組み合わされて構成されている。
送りねじ部35は、円筒状に形成されたロッド35aと、スクリュー溝35bが形成されてロッド35aの内部に挿入されるナット35cと、スクリュー溝35bと噛合してロッド35aを軸方向に移動可能に支持するスクリュー軸35dとを備えて構成されている。スクリュー軸35dは、減速機構33および電動機31とともに細長形状のケース本体34内に収容され、減速機構33の一端が電動機31の出力軸と連結され、他端がスクリュー軸35dと連結されている。
電動機31からの動力が、減速機構33を介してスクリュー軸35dに伝達されてスクリュー軸35dが回転することで、ロッド35aがケース本体34に対して図示左右方向(軸方向)に伸縮自在に動作するようになっている。また、アクチュエータ30にはブーツ36が取り付けられて、外部からの埃や水などの異物が侵入しないようなっている。
【0042】
また、アクチュエータ30には、ロッド35aの位置(伸縮量)を検出するストロークセンサ38が設けられている。このストロークセンサ38は、例えば、マグネットが内蔵され、磁気を利用して位置を検出できるようになっている。このように、ストロークセンサ38を用いて位置を検出することにより、後輪2Lのトーイン、トーアウトの舵角(トー角)θを個別に高精度に検出できるようになっている。
【0043】
このように構成されたアクチュエータ30は、ロッド35aの先端に設けられたボールジョイント16がトレーリングアーム13の車輪側アーム13b(図4参照)に回動自在に連結され、ケース本体34の基端に設けられたボールジョイント17がクロスメンバ12(図4参照)に回動自在に連結されている。そして、電動機31の動力によってスクリュー軸35dが回転してロッド35aが伸びる(図5の左方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向外側(図4の左方向)に押圧されて、後輪2Lが左方向に旋回し、またロッド35aが縮む(図5の右方向)と、車輪側アーム13bが車幅方向内側(図4の右方向)に引かれて、後輪2Lが右方向に旋回する。
【0044】
なお、アクチュエータ30のボールジョイント16が取り付けられる場所は、ナックルなど後輪2Lのトー角θを変更できる位置であれば、車輪側アーム13bに限定されるものではない。また、本実施形態においてトー角変更装置120L、120Rはセミトレーリングアーム型独立懸架方式のサスペンションに対して適用した場合の例で示したが、それに限定されるものではなく、他の懸架方式のサスペンションにも適用できる。
【0045】
また、アクチュエータ30には、トー角変更制御ECU37が一体に構成されている。トー角変更制御ECU37は、例えばアクチュエータ30のケース本体34に固定され、ストロークセンサ38とコネクタなどを介して接続されて構成されている。
トー角変更制御ECU37には、車両Vに搭載された図示しないバッテリなどの電源から電力が供給される。また、操舵制御ECU130、電動機駆動回路23にも前記とは別系統でバッテリなどの電源から電力が供給される(図示せず)。
【0046】
(トー角変更制御ECUの構成)
次に、図6を参照しながらトー角変更制御ECU37の詳細な構成を説明する。図6はトー角変更制御ECUの構成を示すブロック図である。
図6に示すように、トー角変更制御ECU37はアクチュエータ30(図5参照)を駆動制御する機能を有し、制御部81と電動機駆動回路83とで構成されている。また、各トー角変更制御ECU37は、トー角制御ECU130cと通信線を介して接続され、他方のトー角変更制御ECU37とも通信線を介して接続されている。
【0047】
制御部81は、図示しないが、CPU、RAM、ROM、その他の周辺回路などから構成され、目標電流算出部81a、電動機制御信号生成部81c、自己診断部81dを備えている。
目標電流算出部81aは、トー角制御ECU130cが出力する後輪2L(または後輪2R)のトー角θの目標値信号に基づいて目標電流信号を算出し、電動機制御信号生成部81cに出力する。目標電流信号とは、アクチュエータ30(図5参照)を所望の作動量(後輪2L、2Rを所望のトー角θにする伸縮量)に設定するのに必要な電流信号である。
目標電流算出部81aでは、目標電流信号を参照信号として使用し、トー角θの目標値信号とストロークセンサ38から入力される位置情報と参照信号である目標電流信号とに基づいて、目標電流が指示するトー角θに対する偏差から目標電流信号を補正するための補正電流信号を算出する。そして、補正電流信号を目標電流信号に加算して補正し、補正後の目標電流信号を電動機制御信号生成部81cに出力する。
このように目標電流信号を補正することにより、後輪2L(または2R)の転舵に要する電流値が車速VS、路面環境、車両Vの運動状態、タイヤの磨耗状態などによって変化するのをフィードバックして、目標のトー角θに設定制御することができる。
【0048】
電動機制御信号生成部81cは、目標電流算出部81aから目標電流信号が入力され、電動機駆動回路83に電動機制御信号を出力する。この電動機制御信号は、電動機31に供給する電流値と電流を流す方向を含む信号である。電動機駆動回路83は、FETのブリッジ回路などで構成され、電動機制御信号に基づいて電動機31に電動機電圧を印加する。
【0049】
また、図6に示すように、本実施形態においては、制御部81の自己診断部81dが、ストロークセンサ38からの位置情報や電動機駆動回路83の状態の信号、目標電流算出部81aからの目標電流信号を受信し、また、自分が所属していない他方のトー角変更制御ECU37からの異常検知信号を受信していないかチェックする。つまり、自身のトー角変更制御ECU37に対応する電動機31や電動機駆動回路83が正常に動いているか否かを示す信号を受信して監視しているとともに、他方のトー角変更制御ECU37に対応する電動機31や電動機駆動回路83が正常に動いているか否かを示す信号を監視している。
【0050】
自己診断部81dは、例えば、目標電流信号に対応するトー角θに対して、ストロークセンサ38の示すトー角θが所定値以上離れている状態が所定時間以上継続していることを検知した場合は、目標電流値算出部81aに所定のトー角θ、例えば、0°に対応する目標電流信号を算出させ、目標電流算出部81aに目標トー角0°に対する補正電流を設定させる。そして、自己診断部81dは、自分が属しているトー角変更制御ECU37ではない他方のトー角変更制御ECU37の自己診断部81dに異常検知信号を送る。
【0051】
以上のように構成されるトー角変更装置120は、左右の後輪2L、2Rにそれぞれ1ずつ備わり、左右の後輪2L、2Rに、それぞれ異なったトー角θを設定することができる。
【0052】
(レーダ装置の構成)
レーダ装置160は、例えばレーザレーダを使用して構成される、車両V(図1参照)の前方の障害物までの距離を検知するための障害物検知装置である。図7の(a)は、レーダ装置を示す概略図である。
【0053】
図7の(a)に示すように、レーダ装置160は、送光部161、受光部162および演算部163を含んで構成される。
送光部161は、レーザダイオード(LD)161aとその駆動回路を備え、送出光Loを送出する機能を有する。
受光部162は、フォトダイオード162aとその駆動回路を備え、送光部161から送出された送出光Loが、例えば障害物で反射された受信光Liを受信する機能を有する。
演算部163は、送出光Loの送出から受信光Liの受光までの時間をカウントするカウンタ回路163aと、カウンタ回路163aからの情報に基づいて障害物までの距離や方向を算出するCPU163b、およびカウンタ回路163aやCPU163bを駆動するための図示しない周辺回路が備わっている。
【0054】
以上の構成を有する複数のレーダ装置160が、例えば車両Vの前端側部から側面に向かって放射状に車両Vに備わる。図7の(b)は、レーダ装置の配置を示す図である。なお、図7の(b)は、車両Vの前端左側を図示しているが、レーダ装置160は、車両Vの右側にも対称に配置される。また、図7の(b)には4個のレーダ装置160が図示されているが、個数はこれに限定されるものではない。
ここで、車両Vに備わる4つのレーダ装置160について、車両Vの前端側部から左側に向かって160a〜160dの符号をつける。そして、それぞれのレーダ装置160の送出光をLoa〜Lod、受信光をLia〜Lidとする。
【0055】
レーダ装置160のCPU163bは障害物検知ECU130dと接続され、レーダ装置160が検知する障害物までの距離を障害物検知ECU130dに通知する。
レーダ装置160のカウンタ回路163aは、送出光Loが送出された時点で時間のカウントをスタートし、受信光Liを受信するまでの時間をカウントする機能を有する。送出光Loおよび受信光Liの伝播速度は、約3×10m/秒であるので、例えば、カウンタ回路163aがカウントした時間が5×10−7秒であれば、(3×10)×(5×10−7)/2の計算式より、障害物までの距離は約75mと算出できる。
【0056】
また、回避判定ECU130g(図2参照)は、各レーダ装置160における受信光Liの状況から、障害物の左右方向の大きさを算出できる。図7の(c)は、障害物と車両の位置関係の1例を示す図である。
【0057】
図7の(c)に例示される図を参照して説明すると、レーダ装置160a、160b(図7の(b)参照)からの送出光Loa、Lobは障害物にぶつかるため、障害物で反射され受信光Lia、Libを発生する。一方、レーダ装置160c、160d(図7の(b)参照)からの送出光Loc、Lodは障害物にぶつからないため、受信光Lic、Lidは発生しない。したがって、障害物検知ECU130dは、送出光Lobと送出光Locの間まで障害物が存在すると判定できる。
そして、回避判定ECU130g(図2参照)は、障害物検知ECU130dから各レーダ装置160a〜160dの取付位置(左右中心からの距離など)、および各送出光Loa〜Lodが車両Vの進行方向となす角度などの情報を得て、障害物の幅方向の大きさを算出することができる。
【0058】
さらに、衝突判定ECU130f(図2参照)は、障害物までの距離や大きさと車両Vの車速VSとに基づいて、車両Vが障害物に衝突・接触するかを判定することができる。したがって、衝突判定ECU130fは、請求項に記載の衝突判定装置である。また、回避判定ECU130g(図2参照)は、障害物の幅方向の大きさに基づいて、障害物の回避スペースがあるかを判定することができるため、請求項に記載の回避判定装置である。
【0059】
なお、レーダ装置160は、前記した構成および配置の形態に限定されるものではなく、車両Vの進行方向の障害物までの距離および幅方向の大きさを検知できる機能を有するものであれば、例えば電波を利用したミリ波レーダなどで構成されていてもよい。
【0060】
(衝突回避支援動作)
以上のような構成要素を含んで構成される車両システム100を備える車両V(図1参照)は、レーダ装置160(図1参照)で進行方向の障害物を検知しながら走行する。そして、操舵制御ECU130(図1参照)は、レーダ装置160のCPU163b(図7の(a)参照)から、障害物の検知(障害物までの距離)を通知されると、トー角変更装置120(図1参照)およびブレーキ装置140(図1参照)を制御して衝突回避支援動作を実行する。図8は、衝突回避支援動作のステップを示すフローチャートである。以下図8を参照しながら、操舵制御ECU130を構成する各ECUによる、衝突回避支援動作のステップを説明する(適宜図1〜図7参照)。
【0061】
図8に示すように、操舵制御ECU130は、障害物検知ECU130dによって、所定距離内に障害物を検知したレーダ装置160があるかを判定する(ステップS1)。これは、各レーダ装置160a〜160dが通知する障害物までの距離が所定距離内である場合に、所定距離内に障害物を検知したと判定できる。ここで、所定距離は限定するものではく、例えば100mなど任意に設定すればよい。
操舵制御ECU130は、所定距離内に障害物を検知したレーダ装置160がないときには(ステップS1→No)、進行方向に障害物は無いと判定して、制御をステップS1にもどすが、所定距離内に障害物を検知したレーダ装置160があるときには(ステップS1→Yes)、操舵制御ECU130は、障害物検知ECU130dによって、進行方向に障害物があると判定する。そして、操舵制御ECU130は車速センサSによって、車両Vの車速VSを検出する(ステップS2)。
このとき、障害物の検知をドライバに通知する通知手段(警告表示、警報発報など)によって、車両Vの進行方向に障害物があることをドライバに通知する構成としてもよい。
【0062】
操舵制御ECU130は、衝突判定ECU130fによって、車両Vの車速VSと障害物までの距離とから、ドライバによる通常のブレーキ操作のみで車両Vを停止することで障害物との接触を回避できるかを判定する(ステップS3)。この判定は、例えば、標準的な摩擦係数(μ)を有する路面における、車両Vの車速VSとブレーキを動作させたときの制動距離との相関データをあらかじめ作成して、操舵制御ECU130に備わる、図示しない記憶部に記憶させておき、操舵制御ECU130が記憶部から読み出す形態で実現できる。
【0063】
操舵制御ECU130は、衝突判定ECU130fによって、通常のブレーキ操作のみで車両Vを停止させることができ、障害物との接触を回避できると判定すると(ステップS3→Yes)、操舵制御ECU130は、制御をステップS1にもどす。このとき、ドライバがブレーキ操作をしていれば車速VSは減速していくため、操舵制御ECU130は、障害物との接触を回避できると判定できる(ステップS3→Yes)。
一方、操舵制御ECU130は、衝突判定ECU130fによって、通常のブレーキ操作のみでは車両Vを停止できず、障害物と接触すると判定すると(ステップS3→No)、操舵制御ECU130は、ブレーキECU130aを介して、ブレーキ装置140に指令を与えて、ブレーキ装置140を作動させる(ステップS4)。
【0064】
そして、操舵制御ECU130は、回避判定ECU130gによって、障害物の大きさを算出し(ステップS5)、障害物の右側もしくは左側に回避スペースがあるかを判定する(ステップS6)。すなわち、障害物の幅方向に回避スペースがあるかを判定する。
【0065】
前記したように、障害物検知ECU130dは複数のレーダ装置160による受信光Liの受信状況から、障害物の左右方向の大きさを算出することができる。したがって、回避判定ECU130gは、障害物検知ECU130dからの情報に基づいて車両Vの進行方向に向かって左側と右側のどちらか一方もしくは両方に、回避スペースがあるかどうかを判定できる。
【0066】
操舵制御ECU130が、回避判定ECU130gによって、障害物の左右どちらにも回避スペースがないと判定すると(ステップS6→No)、操舵制御ECU130は、衝突回避支援ECU130eによって、車両Vを停止させること、もしくは車両Vが障害物と接触するときの車速VSをできる限り低くして、障害物との接触による影響を少なくすることが効果的と判定する。そして、車両Vを効果的に停止・減速させるため、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して、左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rをそれぞれ車両Vの内側に向ける、すなわちトーインする(ステップS7)。
なお、ステップS4で作動されるブレーキ装置140は、アンチロックブレーキを動作させることが好ましい。アンチロックブレーキを動作させることで、後輪2が適時ロック状態から開放され、後輪2がともに車両Vの内側に向かって回転し、タイヤの抵抗が増える。したがって、車両Vを効果的に、かつ安定して停止・減速させることができる。
また、本実施形態においては、ステップS7で左右の後輪2L、2Rをトーインしたが、左右の後輪2L、2Rを車両Vの外側に向けてトーアウトする形態であってもよい。
【0067】
一方、操舵制御ECU130は、回避判定ECU130gによって、障害物の左右どちらか一方または両方に回避スペースがあると判定すると(ステップS6→Yes)、操舵制御ECU130は、トルクセンサSから差動増幅回路21を介して入力されるトルク信号Tによって、操向ハンドル3の操舵トルクが「0」かを判定する(ステップS8)。
なお、操舵制御ECU130は、トルクセンサSで検出される操舵トルクが「0」を中心に、あらかじめ設定されている所定の範囲内(閾値の範囲内)にあるときには、操舵トルクは「0」であると判定することが好ましい。
【0068】
操舵トルクが「0」のとき(ステップS8→Yes)、操舵制御ECU130は、衝突回避支援ECU130eによって、左右の後輪2L、2Rに設定するトー角θを算出する(ステップS9)。
左右の後輪2L、2Rに設定するトー角θは、例えば車速VSと障害物までの距離と障害物を回避するのに必要なヨーレート(目標ヨーレート)γに基づいて算出される。
【0069】
なお、図示しない舵角センサを備え、舵角センサからの信号に基づいて左右の後輪2L、2Rに設定するトー角θを算出する構成としてもよい。
【0070】
ここで、目標ヨーレートγは、障害物の大きさと車両Vの車速VSに基づいて算出される。衝突回避支援ECU130eは、障害物の大きさと障害物までの距離とから、車両Vが障害物を回避するのに必要な旋回の角度を算出し、算出された旋回の角度と車両Vの車速VSに基づいて、車両Vが障害物を回避するのに必要なヨーレートγを算出する。
そして、ヨーレートセンサSで検出される、車両Vに発生しているヨーレートγとの差分(γ―γ)が、目標ヨーレートγとなる。
【0071】
そして、目標ヨーレートγと車速VSとトー角θの関係は、例えばあらかじめデータ化しておいて、操舵制御ECU130に備わる、図示しない記憶部に記憶しておき、衝突回避支援ECU130eが記憶部から読み出す形態が考えられる。
【0072】
そして、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して、トー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与えて、左右の後輪2L、2Rをともに算出したトー角θに設定して、回避スペースと反対の方向に向ける(ステップS10)。すなわち、後輪2を回避方向に転舵する。このように、左右の後輪2L、2Rをともに回避スペースとは反対の方向に向ける(回避方向に転舵する)ことで、車両Vは回避スペースの方向に向けて旋回する。なお、障害物の左右両方に回避スペースがあるときは、操舵制御ECU130は、左右の後輪2L、2Rを任意の同じ方向に向ければよい。
【0073】
一方、操舵トルクが「0」ではないとき(ステップS8→No)、操舵制御ECU130は、操舵輪である左右の前輪1L、1Rが向いている方向を確認する(ステップS11)。操舵制御ECU130は、トルクセンサSから差動増幅回路21を介して入力されるトルク信号Tによって操舵トルクの方向を判定し、操舵トルクの方向に等しい方向を左右の前輪1L、1Rが向いている方向と判定する。ここで、図示しない舵角センサを備え、舵角センサからの信号に基づいて左右の前輪1L、1Rの向いている方向を判定してもよい。
【0074】
そして、左右の前輪1L、1Rが回避スペースの方向を向いているときには(ステップS11→Yes)、操舵制御ECU130は、制御をステップS9に進める。すなわち、操舵制御ECU130は、衝突回避支援ECU130eによって、左右の後輪2L、2Rに設定するトー角θを算出し(ステップS9)、トー角制御ECU130cを介してトー角変更装置120L、120Rに指令を与えて、左右の後輪2L、2Rをともに算出したトー角θに設定して、回避スペースと反対の方向に向ける(ステップS10)。すなわち、後輪2を回避方向に転舵する。このように、左右の後輪2L、2Rをともに回避スペースと反対の方向に向ける(回避方向に転舵する)ことで、前輪1L、1Rが車両Vに発生させるモーメントと同じ方向にモーメントが発生し、車両Vが回避スペースの方向に旋回する。
【0075】
また、ステップS11において、左右の前輪1L、1Rが回避スペースの方向を向いているときに(ステップS11→Yes)、例えば車両Vの車速VSが速いなど、左右の後輪2L、2Rをともに回避スペースと反対の方向に向けると、スピンの発生など車両Vが不安定な状態になると判定されるときには、ステップS10において、左右の後輪2L、2Rがともに回避スペースの方向を向くように、トー角制御ECU130cが、トー角変更装置120L、120Rに指令を与える構成にしてもよい。
このように、左右の前輪1L、1Rと左右の後輪2L、2Rをともに回避スペースの方向に向けることで、車両Vは、旋回することなく、斜め前方にスライド移動するように、回避スペースの方向に向かって進行する。
【0076】
一方、左右の前輪1L、1Rが回避スペースと反対の方向を向いているときには(ステップS11→No)、操舵制御ECU130は、ドライバの意思によって前輪1が操舵されていると判定し、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rを回避スペースの方向に、例えば最大のトー角で向ける(ステップS12)。このように、左右の後輪2L、2Rを回避スペースの方向に向けることで、前輪1の操舵によって発生するモーメントと同じ方向のモーメントが発生し、ドライバの意思による操舵を支援することができる。
このように、本実施形態においては、車両Vがドライバの意思で操舵されているときには、操舵の方向にかかわらずにドライバの意思を優先させ、ドライバによる車両Vの操舵を支援できる。
【0077】
以上のように、本実施形態における操舵制御ECU130は、レーダ装置160からの情報に基づいて、障害物の左右方向の大きさを算出することができ、操舵制御ECU130が、車両Vを旋回して障害物を回避したほうが効果的と判断した場合は、後輪2のトー角θを変更する。このことより、操舵制御ECU130が、車両Vを旋回したほうが障害物を効果的に回避できると判定すると、ドライバがあわてて操舵輪の操作ができない場合や、操舵輪の操作による回避をあきらめた場合であっても、後輪2のトー角θを変更して車両Vを旋回させ、効果的に障害物の回避を支援できるという、優れた効果を奏する。
【0078】
また、本実施形態においては前記のように、左右のトー角変更装置120によって後輪2のトー角を変更する。障害物を回避するときは、車両Vに制動力が作用するため、車両Vは前荷重(車両Vの前端に荷重がかかる状態)になり、前輪1には大きな荷重がかかる。そのため、前輪1と路面との摩擦が大きくなることから、前輪1をスムースに操舵できない場合が想定される。一方、後輪2は、ブレーキ作動時にも車両Vからかかる荷重が小さいためスムースに操舵できるという、優れた効果を奏する。
【0079】
さらに、本実施形態においては、障害物の左右に回避スペースがない場合は、後輪2をそれぞれトーイン(またはトーアウト)させる。後輪2をトーイン(またはトーアウト)させることで、後輪2がそれぞれ内側(外側)に向かって回転し、タイヤの抵抗が増えることから、車両Vを効果的に、かつ安定して停止・減速させることができるという、優れた効果を奏する。
【0080】
また、本実施形態では、ステップS2において、車速センサSvで車両Vの車速VSを検出しているが、これは、障害物との相対速度を検出する構成であってもよい。障害物との相対速度は、例えばレーダ装置160を使用することで検出できる。すなわち、レーダ装置160で、障害物との距離を任意の測定間隔(時間)で測定し、その測定間隔における、障害物との距離の増減によって、例えば操舵制御ECU130が、障害物との相対速度を検出(算出)することができる。
【0081】
このように、障害物との相対速度を検出することで、障害物が移動する物体(例えば、同じ方向や対向する方向に進行する他の車両)であっても、障害物を効果的に回避できる。
【0082】
(カーブ走行の支援への応用)
次に、本実施形態にかかる衝突回避支援装置をカーブ走行の支援に応用する実施形態について説明する。本実施形態にかかる衝突回避支援装置をカーブ走行の支援に応用するため、車両システム100の操舵制御ECU130は、車線がカーブすることを事前に検知する必要がある。そのため、ナビゲーション装置170を備える車両システム100´を構成する。図9は、ナビゲーション装置を備える車両を示す図である。なお、図9に示す車両システム100´は、レーダ装置160(図1参照)が外され、ナビゲーション装置170が搭載されている以外は、図1に示す車両システム100と同等であるため、共通の構成要素の符号は車両システム100と同等とし、詳細な説明は省略する。
【0083】
そして、車両システム100´に備わる操舵制御ECU130は、障害物検知ECU130dにナビゲーション装置170が接続され、車線の形状に関する情報がナビゲーション装置170から入力される構成である(図9参照)。
衝突回避支援ECU130e(図2参照)は、障害物検知ECU130dに、ナビゲーション装置170から入力される、車両V´の進行方向の車線の形状に関する情報に基づいて、車両V´の目標ヨーレートを算出する。ここで、目標ヨーレートは、旋回方向を含んだ値であることから、衝突回避支援ECU130eは、車両V´の旋回方向を判定することになる。したがって、衝突回避支援ECU130eは、請求項に記載の旋回方向判定装置である。
【0084】
図9に示すように、ナビゲーション装置170は、地図データ170aを搭載していて、車両V´の位置情報を地図データ170aに重ね合わせて、図示しない表示装置等を介してドライバに表示する機能を有する。地図データ170aには、車両V´が走行する道路の車線形状情報が含まれ、ナビゲーション装置170は、車両V´の現在位置を取得したときに、その進行方向にカーブがあるときには、障害物検知ECU130dにカーブの情報(カーブの半径Rや長さなど)を通知する構成とする。
ここで、ナビゲーション装置170は、地図データ170aに含まれる車線形状情報である、車線の形状を把握するためのノードと各ノードを結ぶリンクとに基づいて、車線のカーブの有無やカーブの半径R、長さなどの情報を検知することができる。そして、これらの情報を障害物検知ECU130dに通知すればよい。
【0085】
以上のような構成の車両システム100´を備える車両V´が走行中に、ナビゲーション装置170からの情報によって、進行方向にカーブがあることを、操舵制御ECU130が検知すると、操舵制御ECU130は以下のように、カーブ走行を支援する。図10は、カーブ走行を支援するステップを示すフローチャートである。以下、図10を参照してカーブ走行を支援するステップを説明する(適宜、図1〜図7、図9参照)。
【0086】
図10に示すように、操舵制御ECU130は障害物検知ECU130dを介して、一定の周期でナビゲーション装置170からの情報を確認し、進行方向にカーブがあるかを判定する(ステップS21)。そして、操舵制御ECU130は、前方にカーブがあると判定すると(ステップS21→Yes)、操舵制御ECU130は車速センサSによって、車両V´の車速VSを検出する(ステップS22)。
一方、前方にカーブがないときは(ステップS21→No)、操舵制御ECU130は制御をステップS21にもどす。
【0087】
操舵制御ECU130は、衝突判定ECU130fによって、検出した車速VSと、ナビゲーション装置170から通知されるカーブ半径Rや長さなどの情報に基づいて、車両V´が、現在の車速VSでカーブを通過可能か、を判定する(ステップS23)。すなわち、衝突判定ECU130fはナビゲーション装置170の地図データ170aを用いて、車両V´がカーブを通過できずに、例えばカーブ外側の側壁などに衝突・接触するかを判定する。
そして、衝突判定ECU130fが、車両V´が、現在の車速VSでカーブを通過可能と判定したら(ステップS23→Yes)、操舵制御ECU130は、ドライバの操向ハンドル3による操作で、カーブを通過させるため、制御をステップS21にもどす。
一方、衝突判定ECU130fが、車両V´が、現在の車速VSでカーブを通過できないと判定したら(ステップS23→No)、操舵制御ECU130は、ブレーキECU130aを介してブレーキ装置140に指令を与え、ブレーキ装置140を作動させる(ステップS24)。
このとき、表示装置等によって、ドライバに警告を与える(警告表示、警報発報など)構成であってもよい。
【0088】
なお、車両V´が、カーブを通過可能かの判定は、例えば、標準的な摩擦係数(μ)を有する路面のカーブの半径Rと、そのカーブを通過可能な車両V´の車速VSとの相関データをあらかじめ作成して、操舵制御ECU130に備わる、図示しない記憶部に記憶させておき、衝突判定ECU130fが記憶部から読み出す形態で実現できる。
【0089】
操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して、左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rをそれぞれ車両V´の内側に向ける、すなわちトーインする(ステップS25)。このように、ブレーキ装置140の動作と、左右の後輪2L、2Rをトーインする効果によって、車両V´を効果的に減速させることができる。そして、操舵制御ECU130は、車速センサSによって車両V´の車速VSを検出して、車両V´が、カーブを通過可能な車速VSまで減速したかを判定する(ステップS26)。
ここで、本実施形態においては、ステップS25で左右の後輪2L、2Rをトーインしたが、左右の後輪2L、2Rをトーアウトする形態であってもよい。
【0090】
操舵制御ECU130は、車両V´が、カーブを通過可能な車速VSまで減速したと判定したら(ステップS26→Yes)、ドライバの操向ハンドル3の操作による旋回でカーブを通過可能と判定して、操舵制御ECU130は、ブレーキECU130aを介して、ブレーキ装置140に指令を与え、ブレーキ装置140の作動を解除する(ステップS27)。そして、操舵制御ECU130は制御をステップS21にもどす。
このように、車両V´の車速VSがカーブを通過可能な速度まで減速したときに、ブレーキ装置140の作動が解除されることで、ドライバは操向ハンドル3を操作して、違和感なくカーブを走行できる。
【0091】
一方、操舵制御ECU130は、車両V´が、カーブを通過可能な車速VSまで減速していないと判定したら(ステップS26→No)、操舵制御ECU130は、操舵輪である左右の前輪1L、1Rが向いている方向を確認する(ステップS28)。操舵制御ECU130は、トルクセンサSから差動増幅回路21を介して入力されるトルク信号Tによって操舵トルクの方向を判定し、操舵トルクの方向に等しい方向を左右の前輪1L、1Rが向いている方向と判定する。あるいは、図示しない舵角センサを備え、舵角センサからの信号に基づいて左右の前輪1L、1Rが向いている方向を判定してもよい。そして、操舵制御ECU130は、左右の前輪1L、1Rがカーブの曲がりの方向を向くまで、車両V´の車速VSを監視し、カーブを通過可能な車速VSまで減速したかを判定する(ステップS28)。
【0092】
そして、車両V´が、カーブを通過可能な車速VSまで減速しないうちに(ステップS26→No)、左右の前輪1L、1Rがカーブの曲がりの方向を向いたら(ステップS28→Yes)、操舵制御ECU130は、衝突回避支援ECU130eによって、左右の後輪2L、2Rに設定するトー角θを算出する(ステップS29)。
左右の後輪2L、2Rに設定するトー角θは、例えば車速VSと、車両V´がカーブの半径Rに沿って旋回を回避するのに必要なヨーレート(目標ヨーレート)γに基づいて算出される。したがって、目標ヨーレートγと車速VSとトー角θの関係を、例えばあらかじめデータ化して、操舵制御ECU130に備わる、図示しない記憶部に記憶しておく。そして、衝突回避支援ECU130eは、目標ヨーレートγに対応するトー角θを記憶部から読み出せばよい。
または、目標ヨーレートγからトー角θを算出する計算式を、衝突回避支援ECU130eを駆動するプログラムに組み込んでおいて、衝突回避支援ECU130eは、この計算式に基づいて、トー角θを算出すればよい。
このとき、表示装置等によって、ドライバに警告を与える(警告表示、警報発報など)構成であってもよい。
【0093】
ここで、目標ヨーレートγは、カーブの半径Rと車両V´の車速VSに基づいて算出される。衝突回避支援ECU130eは、カーブの半径Rからカーブを通過するのに必要な旋回の角度を算出し、算出された旋回の角度と車両V´の車速VSに基づいて、車両V´がカーブを通過するのに必要なヨーレートγを算出する。
そして、ヨーレートセンサSで検出される、車両V´に発生しているヨーレートγとの差分(γ―γ)が、目標ヨーレートγとなる。
【0094】
そして、操舵制御ECU130は、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rを、算出したトー角θでカーブの曲がりと反対の方向に向ける(ステップS30)。
【0095】
ここで、ステップS30において、左右の後輪2L、2Rをカーブの曲がりと反対の方向に向けるときに、旋回外側になる側の後輪2(外輪)のみをカーブの曲がりと反対の方向に向ける構成にしてもよい。すなわち、後輪2の外輪をトーアウトさせる構成である。例えば車両V´が右側にカーブするときは、外輪になる左側の後輪2Lのみを算出したトー角θで、カーブの曲がりと反対の方向に向ける。
このように、外輪になる側の後輪2のトー角θのみを変更することで、外輪とは反対側の内輪が直進性を保つことから、車両V´の挙動が安定するとともに、ドライバが、旋回の方向と反対の方向に操向ハンドル3を操作したときの応答を早くすることができる。
【0096】
操舵制御ECU130は、トルクセンサSによって操向ハンドル3の操舵トルクを検出することによって、左右の前輪1L、1Rが向いている方向を監視し(ステップS31)、左右の前輪1L、1Rが前方を向かないあいだは(ステップS31→No)、左右の後輪2L、2Rをカーブの曲がりと反対の方向に向けた状態を保持する。
そして、左右の前輪1L、1Rが前方を向いたら(ステップS31→Yes)、操舵制御ECU130はカーブを抜け出たと判定して、トー角制御ECU130cを介して左右のトー角変更装置(RTC)120L、120Rに指令を与え、左右の後輪2L、2Rを元に戻す(ステップS32)。さらに、操舵制御ECU130は、ブレーキECU130aを介してブレーキ装置140に指令を与え、ブレーキ装置の作動を解除する(ステップS33)。そして、操舵制御ECU130は、制御をステップS21に戻す。
ここで、左右の後輪2L、2Rを元に戻すとは、左右の後輪2L、2Rのトー角を、左右の後輪2L、2Rの初期状態におけるトー角に戻すことである。
【0097】
ステップS28に戻って、左右の前輪1L、1Rがカーブの曲がりの方向を向かないとき(ステップS28→No)、すなわち、車両V´の前方を向いているときや、カーブの曲がりと反対の方向を向いているときは、操舵制御ECU130は、車両V´がカーブに進入したかを判定する(ステップS34)。
これは、例えばナビゲーション装置170の地図データ170aにおいて、車両V´がカーブを構成する車線(リンク)に進入したことをナビゲーション装置170が検知して、障害物検知ECU130dに通知するように構成することで実現できる。
【0098】
そして、車両V´がカーブに進入しないあいだは(ステップS34→No)、左右の後輪2L,2Rをトーインさせた状態を保持して車両V´を減速する。
【0099】
一方、左右の前輪1L、1Rが前方を向いた状態、もしくはカーブの曲がりと反対の方向を向いた状態で、車両V´がカーブに進入したときは(ステップS34→Yes)、操舵制御ECU130は、ドライバの意思(例えば、ナビゲーション装置170が網羅していない側道への進入など)が作用していると判定し、操舵制御ECU130は、ブレーキECU130aを介してブレーキ装置140に指令を与え、ブレーキ装置140の作動を解除する(ステップS35)。そして、制御をステップS21にもどす。
【0100】
また、図示はしないが、ドライバによってアクセルペダルが操作されたことを検出するセンサを車両システム100´に備え、アクセルペダルが操作されたことを操舵制御ECU130が検出できる構成としてもよい。このような構成によって、例えば車両V´が、カーブ走行中にドライバがアクセルペダルを操作したときは、操舵制御ECU130がブレーキ装置140に指令を与え、ブレーキ装置140の作動を解除することができる。
【0101】
車両V´がカーブを走行するときは、ドライバによる操向ハンドル3の操作によって、操舵輪である左右の前輪1L、1Rをカーブの曲がりの方向に向けて、カーブの曲がりに沿って走行する。しかしながら、車速VSが高い状態でカーブを走行するとアンダステアとなって、車両V´がカーブの外側に膨らむことがある。
本実施形態においては、車両V´の車速VSが高い状態で進行方向にカーブがある場合、ブレーキ装置140を作動させるとともに、後輪2がトーインするようにトー角θが変更されることで、車両V´を効果的に減速できるという、優れた効果を奏する。
さらに、車両V´が、充分に減速できずに車速VSが高い状態でカーブに差し掛かったときに、ブレーキ装置140を作動して車両V´にブレーキをかけながら、後輪2をカーブの曲がりと反対の方向に転舵することで、車両V´に発生するカーブの曲がり方向に向けたヨーレートを増加させ、アンダステアによるカーブの外側への膨らみを抑えられるという、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両システムを適用した4輪車両の概略図である。
【図2】操舵制御ECUの構成を示すブロック図である。
【図3】電動パワーステアリング装置の構成図である。
【図4】左後輪側のトー角変更装置の構成図である。
【図5】トー角変更装置のアクチュエータの構成図である。
【図6】トー角変更制御ECUの構成を示すブロック図である。
【図7】(a)は、レーダ装置を示す概略図、(b)は、レーダ装置の配置を示す図、(c)は、障害物と車両の位置関係の1例を示す図である。
【図8】衝突回避支援動作のステップを示すフローチャートである。
【図9】ナビゲーション装置を備える車両を示す図である。
【図10】カーブ走行を支援するステップを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1(1L、1R) 前輪
2(2L、2R) 後輪
3 操向ハンドル
30 アクチュエータ
37 トー角変更制御ECU
38 ストロークセンサ
100、100´ 車両システム
110 電動パワーステアリング装置(前輪操舵装置)
120(120L、120R) トー角変更装置
130 操舵制御ECU
130a ブレーキECU
130b 電動パワーステアリングECU
130c トー角制御ECU
130d 障害物検知ECU
130e 衝突回避支援ECU(旋回方向判定装置)
130f 衝突判定ECU(衝突判定装置)
130g 回避判定ECU(回避判定装置)
140 ブレーキ装置(制動装置)
160 レーダ装置(障害物検知装置)
170 ナビゲーション装置
170a 地図データ
車速センサ
トルクセンサ
V、V´ 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動装置と、
車両に備わる後輪のトー角を左右独立に変更可能なトー角変更装置と、
前記車両の進行方向の障害物の位置および幅方向の大きさを検知する障害物検知装置と、
前記障害物検知装置の検知結果を用いて、障害物との衝突・接触を判定する衝突判定装置と、
前記障害物検知装置の検知結果を用いて、前記障害物との衝突・接触を回避する回避スペースの有無を判定する回避判定装置と、を備える車両に適用され、当該車両の障害物との衝突・接触回避を支援する衝突回避支援装置であって、
前記衝突判定装置が衝突・接触を判定し、前記制動装置により当該車両に制動力が作用しているときに、
前記回避判定装置が、前記回避スペースがないと判定したときは、前記トー角変更装置により前記後輪のトー角を、左右ともトーインまたは左右ともトーアウトに変更して制動力を作用させることを特徴とする衝突回避支援装置。
【請求項2】
前記制動装置は、ドライバの意思とは関係なく制動力を作用させる制動装置であって、
前記衝突判定装置が衝突・接触を判定したときには、前記制動装置により当該車両に制動力を作用させ、
前記回避判定装置が、前記回避スペースがないと判定したときは、前記トー角変更装置により前記後輪のトー角を、左右ともトーインまたは左右ともトーアウトに変更して制動力を作用させることを特徴とする請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項3】
車両に備わる後輪のトー角を左右独立に変更可能なトー角変更装置と、
前記車両の進行方向の障害物の位置および幅方向の大きさを検知する障害物検知装置と、
前記障害物検知装置の検知結果を用いて、障害物との衝突・接触を判定する衝突判定装置と、
前記障害物検知装置の検知結果を用いて、前記障害物との衝突・接触を回避する回避スペースの有無の判定および回避スペースの方向を判定する回避判定装置と、を含んでなる衝突回避支援装置であって、
前記衝突判定装置が衝突・接触を判定し、
前記回避判定装置が、前記回避スペースがあると判定したときは、前記回避判定装置が判定した回避方向に前記トー角変更装置により前記後輪を転舵することを特徴とする衝突回避支援装置。
【請求項4】
前記車両が備える前輪操舵装置に対する操舵トルクを検知したときは、前記検知した操舵トルクの方向へと前記車両をさらに旋回させるように、前記トー角変更装置により前記後輪を転舵することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の衝突回避支援装置。
【請求項5】
前記衝突判定装置が衝突・接触を判定したときに、前記回避判定装置が判定を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の衝突回避支援装置。
【請求項6】
車両に備わる後輪のトー角を左右独立に変更可能なトー角変更装置と、
前記車両の進行方向の障害物の位置を検知する障害物検知装置と、
前記障害物検知装置の検知結果を用いて、障害物との衝突・接触を判定する衝突判定装置と、
前記車両の旋回方向を判定する旋回方向判定装置と、を含んでなる衝突回避支援装置であって、
前記衝突判定装置が衝突・接触を判定したときは、前記旋回方向判定装置が判定した旋回方向へと前記車両をさらに旋回させるように、前記トー角変更装置により少なくとも前記後輪の外輪をトーアウトにすることを特徴とする衝突回避支援装置。
【請求項7】
前記衝突判定装置は、前記車両に備わるナビゲーション装置の地図データを用いて衝突・接触を判定することを特徴とする請求項6に記載の衝突回避支援装置。
【請求項8】
前記衝突判定装置が衝突・接触を判定したときは、前記トー角制御装置により左右ともトーインまたは左右ともトーアウトに変更して制動力を作用させた後、少なくとも前記後輪の外輪をトーアウトにすることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の衝突回避支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−260390(P2008−260390A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104153(P2007−104153)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】