説明

延伸スペーサを利用した半導体デバイスおよびその形成方法

【課題】延伸スペーサを利用した半導体デバイスおよびその形成方法を提供する。
【解決手段】半導体デバイスは、半導体基板110を覆うゲートと、ゲートの側壁上にある誘電体ライナー150とを含む。この半導体デバイスは、誘電体ライナー150に隣接して誘電体ライナー150を越えるように半導体基板110に沿って横向きに延伸された延伸スペーサ170を含む。半導体デバイスは、半導体基板110の上面の下方に位置し、ゲート下のチャネル領域145に隣接するソース/ドレインをさらに含む。ソース/ドレインは、誘電体ライナー150および延伸スペーサ170下で延伸される。半導体デバイスは、ソース/ドレインの一部上を覆い、半導体基板110に沿って横向きに延伸するシリサイド領域190をさらに含む。従って、延伸スペーサ170はソース/ドレインの一部上において誘電体ライナー150とシリサイド領域190との間に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスに関し、特に延伸スペーサを利用した半導体デバイスおよびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年の間、半導体デバイス(MOS電界効果トランジスタなど)のサイズ縮小および固有特徴は、集積回路の速度、機能、密度および単位機能当りのコストにおいて継続的に改善されてきている。トランジスタの設計および固有特性の一つとして、トランジスタのソースとドレインとの間のゲート下方にあるチャネル領域の長さを調整した場合、チャネル領域の抵抗を変えてトランジスタの性能に影響を与えることがある。特に、その他のパラメータが比較的一定に保たれている場合、チャネル領域の長さを短くすると、トランジスタのソース−ドレイン抵抗を減少させ、十分な電圧がトランジスタのゲートに印加されたときに、ソースとドレインとの間の電流量を増加させることがあった。
【0003】
凹溝のソースおよびドレイン(例えば、ソースおよびドレインの領域が基板の上面の下方に設けられて、その基板を下層に形成する)を有するトランジスタの環境では、ゲートに隣接するスペーサによりチャネル領域の長さを定義することができる。特に、ソースとドレインのソース/ドレイン領域は、一般にゲートおよびスペーサをマスクとしてそれぞれのソース/ドレイン領域を定義するイオン注入工程により形成される。そのため、ゲート近くのスペーサの幅は、ソースおよびドレインのソース/ドレイン領域のサイズおよび位置に直接影響を与えた。スペーサが薄くなったり細くなるほど、チャネル領域近くに形成されるソースおよびドレインのソース/ドレイン領域も近くなる。従って、チャネル領域が短くなって、ソース−ドレイン抵抗も減るためトランジスタの性能が向上する可能性があった。
【0004】
またトランジスタの性能をさらに強化するため、トランジスタのチャネル領域に歪みを導入してキャリア移動度を向上させていた。これは一般に、NMOS(n-type metal oxide semiconductor)デバイスのチャネル領域中においてソース−ドレイン方向で引っ張り歪みを導入し、PMOS(p-type metal oxide semiconductor)デバイスのチャネル領域中においてソース−ドレイン方向で圧縮歪みを導入することが望ましい。
【0005】
歪みを発生させる一般の技術には、トランジスタの形成後、基板の上および中に形成されたトランジスタ上に高応力膜を堆積することが含まれる。高応力膜またはストレッサー(stressor)は、チャネル領域上に大きな影響を与え、チャネル領域中のシリコンの格子間隔を変更することによりそこに歪みを導入する。この場合には、ストレッサーをトランジスタ上に堆積する。この方法は非特許文献1により開示されている。
【0006】
トランジスタの設計特徴により、トランジスタのゲート近くにあるスリムスペーサを利用してチャネル領域内の歪みを高める。上で述べたように、歪みを導入する一般の方法は、トランジスタ上に高応力膜を堆積する方法である。そのため、ゲート近くにあるスペーサが薄いほど、高応力膜(例えばコンタクトエッチングストップ層)がチャネル領域の近くに堆積される。その結果、高応力膜はチャネル領域内に高レベルの歪みを与えることができるため、トランジスタのチャネル領域内の歪み効果を高めることができる。
【0007】
スリムスペーサをトランジスタ(または他の半導体デバイス)へ入れると決定的な特徴を示すが、トランジスタのゲート近くにあるスリムスペーサには制限もあった。その一般的な制限の一つは、ゲート近くにあるスリムスペーサが、トランジスタのソースおよびドレイン上に形成されるシリサイド領域をトランジスタのチャネル領域へさらに近づけるということである。もしシリサイド領域がソースまたはドレインの軽ドープドレイン(それは一般にチャネル領域に隣接される)を介して拡散されると、シリサイド領域からチャネル領域にかけてソースまたはドレインを透過する電流経路が形成される。その結果、シリサイド領域はチャネル領域と短絡が形成されて、トランジスタ内にシリサイドスパイクが発生する可能性があった。
【0008】
【非特許文献1】清水〔A. Shimizu〕他、表題“Local Mechanical Stress Control(LMC)”、“Digest of Technical Paper of the 2001 International Electron Device Meeting”の433頁〜436頁で開示されている“A New Technique for CMOS Performance Enhancement”。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ゲート近くにスリムスペーサを形成することにより、チャネル領域を短くするとともに従来技術の様々な欠点を解決する延伸スペーサを利用した半導体デバイスおよびその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体デバイスは、半導体基板を覆うゲートと、ゲートの側壁上にある誘電体ライナーとを含む。この半導体デバイスは、誘電体ライナーに隣接して誘電体ライナーを越えるように半導体基板に沿って横向きに延伸された延伸スペーサを含む。半導体デバイスは、半導体基板の上面の下方に位置し、ゲート下のチャネル領域に隣接するソース/ドレインをさらに含む。ソース/ドレインは、誘電体ライナーおよび延伸スペーサ下で延伸される。半導体デバイスは、ソース/ドレインの一部上を覆い、半導体基板に沿って横向きに延伸されたシリサイド領域をさらに含む。延伸スペーサは、ソース/ドレインの一部上において誘電体ライナーとシリサイド領域との間に形成される。
【0011】
また、本発明の半導体基板上にデバイスを形成する方法は、半導体基板を覆うゲートと、ゲートの側壁上の誘電体ライナーの形成を含む。また本発明の方法は、誘電体ライナーに隣接して誘電体ライナーを越えるように半導体基板に沿って横向きに延伸された延伸スペーサを含む。さらに本発明の方法は、半導体基板の上面の下方に位置し、ゲート下のチャネル領域に隣接するソース/ドレインを形成することをさらに含む。ソース/ドレインは、誘電体ライナーおよび延伸スペーサ下で延伸される。また本発明の方法は、ソース/ドレインの一部上を覆い、半導体基板に沿って横向きに延伸されるシリサイド領域の形成をさらに含む。
【0012】
また、本発明の半導体デバイスは、半導体基板上に形成されるトランジスタ内に実施される。このトランジスタは半導体基板上のゲートと、ゲートの側壁上にある第1、第2の誘電体ライナーを含む。トランジスタは、第1、第2の誘電体ライナーに隣接して第1、第2の誘電体ライナーを越えるように半導体基板に沿って横向きに延伸された第1、第2の延伸スペーサをさらに含む。トランジスタは、半導体基板の上面の下方に位置し、ゲート下のチャネル領域に隣接するソースをさらに含む。ソースは、第1の誘電体ライナーおよび第1の延伸スペーサ下で延伸される。トランジスタは、半導体基板の上面の下方に位置し、ゲート下のチャネル領域に隣接するドレインをさらに含む。ドレインは、第2の誘電体ライナーおよび第2の延伸スペーサ下で延伸される。トランジスタは、ソースおよびドレインの一部上を覆う第1、第2シリサイド領域をさらに含み、半導体基板に沿ってそれぞれ第1、第2の延伸スペーサを延伸する。従って、第1の延伸スペーサは、ソースの一部上において第1の誘電体ライナーと第1のシリサイド領域との間に形成される。第2の延伸スペーサは、ドレインの一部上において第2の誘電体ライナーと第2のシリサイド領域との間に形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の好適な実施形態によりその製造および使用を詳細に説明する。しかし、本発明は多くの応用可能な発明概念を提供し、その発明概念は各種特定の条件下でも実施できるものと理解されるべきである。また、ここで説明する特定の実施形態は、本発明の製造および使用の特定方式を示すだけのものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0014】
本発明のトランジスタおよびその製造方法は、特定の条件下における好適な実施形態により説明するが、本発明の趣旨はその他の類似する構造および集積回路の半導体デバイスにも適用することができる。例えば本発明の実施形態は、NORゲート、ロジックゲート、インバータ、XORゲート、NANDゲート、プルアップトランジスタのPMOSデバイス、プルダウントランジスタのNMOSデバイスなどの回路を形成するために用いることもできる。
【0015】
図1〜図7は、本発明の一実施形態による半導体デバイス(トランジスタなど)の製造工程を示す断面図である。図1が示す工程ステップでは、トランジスタの一部が半導体基板(基板とも呼ぶ)上に形成される。この半導体基板は、例えばシリコン・オン・インシュレータ(またはバルクシリコン)基板などであり、下層の基板110(例えば、面方位(100)、(110)または(111)を有する石英、セラミックなどのP型やN型のシリコン基板)、埋め込み絶縁層115(例えば、約3500Åの埋め込み酸化層などの絶縁層)および約1500Åの厚みで埋め込み絶縁層115の一部上に形成されているシリコン120の上層を含む。埋め込み絶縁層115およびシリコン120の上層は、従来の工程により下層の基板110上に形成する。また、その他の実施形態では基板を面方位(100)を有するバルクシリコンで形成することもできる。
【0016】
シャロートレンチ分離領域125は埋め込み絶縁層115上に形成され、延伸してシリコン120の上層およびトランジスタ近くを通す。フォトレジストマスクを用いて埋め込み絶縁層115上のそれぞれの領域を定義してシャロートレンチ分離領域125を形成する。続いて、シャロートレンチ分離領域125をエッチングしてから、二酸化ケイ素、窒化ケイ素およびそれらの組み合わせからなる誘電体材料か、その他適当な誘電体材料で充填する。当該技術に習熟している者なら分かるように、分離領域は、例えばLOCOS(local oxidation of silicon)工程などのその他の従来技術を利用して形成することもできる。
【0017】
トランジスタのゲートは、ゲート誘電体層130およびゲート電極135から構成され、従来技術を利用してシリコン120の上層上に形成してパターニングを行う。ゲート誘電体層130は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化物、含窒素酸化物またはそれらの組み合わせなどである高誘電体材料であることが望ましい。また、ゲート誘電体層130は約4よりも大きい比誘電率を有することが望ましい。その他の誘電体材料は、例えば酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化窒化ハフニウムまたはそれらの組み合わせなどを含む。
【0018】
好適な実施形態において、ゲート誘電体層130は酸化層を含む。このゲート誘電体層130は、酸化物、水、一酸化炭素またはそれらの組み合わせを含む周囲条件で行うウェット式熱酸化やドライ式熱酸化などのあらゆる酸化工程により形成されるか、テトラエチルオルトシリケートおよび酸素を前駆物質として用いる化学気相成長技術により形成される。本実施形態のゲート誘電体層130の厚みは約8〜50Åであるが、好適には約16Åであることが望ましい。
【0019】
ゲート電極135は、金属(例えばタンタル、チタニウム、モリブデン、タングステン、白金、アルミニウム、ハフニウム、ルテニウム)、金属シリサイド(例えばチタンシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、タンタルシリサイド)、金属窒化物(例えば窒化チタン、窒化タンタル)、ドープト多結晶シリコン、その他の導電材料またはそれらの組み合わせなどを含む。本実施形態において、アモルファスシリコンを堆積して再結晶化し、多結晶シリコン(ポリシリコンとも呼ぶ)を形成する。好適な一実施形態において、ゲート電極135はポリシリコンで、減圧化学気相成長により約400〜2500Åの厚さにするが、好適には約1500Åの厚みに堆積して形成されたドープトポリシリコンまたはノンドープトポリシリコンであることが望ましい。
【0020】
ゲート誘電体層130およびゲート電極135は、従来技術のフォトリソグラフィによりパターニングを行う。一般にフォトリソグラフィはフォトレジスト材料を堆積し、その後にマスク、露光および現像を行う。フォトレジストマスクをパターニングした後、エッチング工程を行って不必要なゲート誘電体材料およびゲート電極材料の一部を除去してゲート誘電体層130およびゲート電極135を形成する。本実施形態においてゲート電極135はポリシリコンからなり、ゲート誘電体層130は酸化物であり、エッチング工程はウェット方式またはドライ方式の異方性エッチングまたは等方性エッチングを用いても良いが、好適には異方性ドライエッチング工程を用いることが望ましい。
【0021】
ゲート電極135の幅は、構築する半導体デバイスのタイプの関数である。例えば、PMOSデバイスのゲート幅とNMOSデバイスのゲート幅との比率は、バルクシリコンまたは歪みシリコンにおける電子移動度とホール移動度との比率にほぼ等しい。また他の実施形態において、PMOSデバイスのゲート幅とNMOSデバイスのゲート幅との比率は、バルクシリコンまたは歪みシリコンにおける電子移動度とホール移動度との比率の平方根にほぼ等しい。ここで説明されているゲートのサイズと半導体デバイスのその他の特徴は、製造する半導体デバイスのタイプや応用に応じて変えることができる。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態によるトランジスタのソースおよびドレインの低濃度ドレイン140を形成したときの状態を示す断面図である。説明を明確に行うため、ソースまたはドレインはソース/ドレインとも呼ぶ。低濃度ドレイン140は、シリコン・オン・インシュレータ基板の上面の下方のシリコン120の上層中において、ゲート下方のチャネル領域145に隣接して形成される。そして、低濃度ドレイン140はシリコン・オン・インシュレータ基板内でトランジスタのゲート下方のチャネル領域145に隣接する浅接合を形成する。
【0023】
一般にトランジスタの低濃度ドレイン140を形成するには、ゲートをマスクにして、PMOSデバイスのボロンイオン(またはその他のP型ドーパント)またはNMOSデバイスのヒ素イオン(またはその他のN型ドーパント)をシリコン120の上層へ注入する。P型ドーパントまたはN型ドーパントのイオン注入工程は、エネルギーレベルが約1〜5keVで、ドーズ量が約2×1014〜3×1015原子/cm2で行われる。一実施形態の低濃度ドレイン140の深さは約100Åである。ここで述べるトランジスタの方位によると、低濃度ドレイン140は面方位(100)を有する。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態によるトランジスタの複数のスペーサを形成したときの状態を示す断面図である。詳しく説明すると、トランジスタは、ゲート近くでシリコン・オン・インシュレータ基板の上面の上方にある誘電体ライナー150、スペーサ160および延伸スペーサ170を含む。誘電体ライナー150(第1、第2の誘電体ライナーとも呼ばれる)はゲートの側壁(つまり相対する側壁など)上に形成され、スペーサ160(第1、第2のスペーサとも呼ぶ)は誘電体ライナー150上に形成される。誘電体ライナー150およびスペーサ160は、それぞれ単独またはそれらの組み合わせでも、上述したようにトランジスタのゲート近くのスリムスペーサと呼ぶ。
【0025】
より詳細に説明すると、延伸スペーサ170(第1、第2の延伸スペーサとも呼ぶ)は誘電体ライナー150に隣接するように形成され、シリコン・オン・インシュレータ基板に沿って誘電体ライナー150およびスペーサ160を越えるように横向きに延伸される。誘電体ライナー150および延伸スペーサ170は、一般に一層または多層の酸化層である。この酸化層は酸化物、水、一酸化炭素またはそれらの組み合わせを含む周囲条件で行うウェット方式またはドライ方式の熱酸化などのあらゆる酸化工程により形成されるか、テトラエチルオルトシリケートおよび酸素を前駆物質として用いる化学気相成長技術により形成される。本実施形態の誘電体ライナー150の幅は約50〜400Åであるが、好適には約150Åであることが望ましい。本実施形態の延伸スペーサ170の厚みは約10〜150Åであるが、好適には約30〜100Åの厚みで約50〜400Åの幅であることが望ましい。
【0026】
もう一つのイオン注入物のスペーサ160は、一般に窒化ケイ素、酸窒化ケイ素またはそれらの組み合わせを含む。本実施形態のスペーサ160は、シランおよびアンモニアを前駆体ガスとして用いる化学気相成長技術を使用して形成された窒化ケイ素を含む層から構成される。スペーサ160の幅と誘電体ライナー150の厚みとの比率は5よりも小さいが、好適には3よりも小さいことが望ましい。
【0027】
スペーサ160は、等方性エッチング工程または異方性エッチング工程によりパターニングを行う。等方性エッチング工程を行うときは、リン酸溶液を誘電体ライナー150に用いてエッチング停止にする。ゲート電極135に隣接する領域において、スペーサ160の厚みが大きいため、等方性エッチングによりゲート電極135上の窒化ケイ素(それはスペーサ160を形成する)と、ゲート電極135に隣接していないシリコン・オン・インシュレータ基板の領域とを除去してテーパ状のスペーサ160を残す。スペーサ160の幅は、トランジスタのゲート長さに応じて変える。本実施形態において、スペーサ160の幅とゲート電極135の長さとの比率は約0.8〜1.5である。
【0028】
誘電体ライナー150は、例えばフッ化水素酸溶液を用いる等方性ウェットエッチング工程によりパターニングを行う。また、その他のエッチング液として、一般にピラニア溶液と呼ばれる濃硫酸と過酸化水素との混合溶液を使用してもよい。またリン酸と水とのリン酸溶液を使用して誘電体ライナー150をパターニングしてもよい。延伸スペーサ170は、例えばフッ化水素酸溶液を用いる等方性ウェットエッチング工程を行ってパターニングを行う。また、その他のエッチング液としては、濃縮アンモニアヒドロオキサイドの混合溶液を使用して延伸スペーサ170をパターニングしてもよい。
【0029】
ここで注意しなければならないことは、一般にスペーサの幅は半導体デバイスのタイプにより異なる点である。例えば、大きいスペーサは、入力/出力デバイスの電流量が処理できることが予想されるため、入力/出力デバイスに対して有利である。大きいスペースはPMOSデバイスに対して有利であり、特にPMOSデバイスの大きいスペースはその上にある引っ張り圧力を下げることを助けることができる。このような場合、スペーサを約10%大きく設計する。また、異なる幅のスペーサを製作するためには、追加のマスキング、堆積およびエッチングのステップを加える必要がある。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態によりトランジスタのソースおよびドレインのソース/ドレイン領域180を形成したときの状態を示す断面図である。1000℃を越えるイオン注入工程および急速熱アニール工程を行って、シリコン・オン・インシュレータ基板の上面の下方でシリコン120の上層内にソース/ドレイン領域180を形成する。一般にトランジスタのソース/ドレイン領域180をドーピングするためには、PMOSデバイスのホウ素イオン(またはその他のP型ドーパント)またはNMOSデバイスのヒ素イオン(またはその他のN型ドーパント)がシリコン120の上層へ注入され、ゲートおよびスペーサ160をマスクとする。イオン注入工程は、約5〜40keVのエネルギーレベルにより、1×1013〜5×1015原子/cm2で行う。本実施形態のソース/ドレイン領域180の深さは約200Åである。本実施形態のトランジスタ方位は、ソース/ドレイン領域180が面方位(100)を有する。また、追加のイオン注入を行って異なる傾向接合の配置を形成してもよい。
【0031】
従って、トランジスタはソースおよびドレインと結合したシリコン・オン・インシュレータ基板中の浅接合に関する長所を有する。図4に示すように、低濃度ドレイン140を誘電体ライナー150、スペーサ160および延伸スペーサ170の下方で延伸し、ソースとドレインとの間を電性接続してチャネル領域145をトランジスタのゲート下に形成する。ソース/ドレイン領域180は、低濃度ドレイン140およびチャネル領域145に隣接して形成される。そのため、トランジスタのソースおよびドレインは、シリコン・オン・インシュレータ基板(誘電体ライナー150および延伸スペーサ170の下方に延伸する)の表面の下方で、ゲート下のチャネル領域145に隣接して形成される。しかしながら、接合の深さは非常に浅いため、浅接合で示されるトランジスタに関する長所が残り、特にトランジスタのオン電流を損なわずに短チャネル効果およびオフ電流またはリークを減らすことができる。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態によりトランジスタのシリサイド領域190を形成したときの状態を示す断面図である。一般にシリサイド工程には、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、銅、モリブデン、チタニウム、タンタル、タングステン、エルビウム、ジルコニウムまたはそれらの組み合わせなどである金属層の堆積が含まれ、金属層をシリコンと反応させてシリサイドを形成する。本実施形態のシリサイド工程には、ニッケル、コバルト、白金、パラジウムまたはそれらの組み合わせなどを含む金属を使用する。金属層は、蒸着、スパッタ堆積、化学気相成長などの従来の堆積技術により形成する。
【0033】
金属層を堆積する前に、ウェーハを洗浄して自然酸化物を除去することが望ましい。洗浄溶液には、フッ化水素酸、硫酸、過酸化水素、アンモニアハイドロオキサイドまたはそれらの組み合わせなどを使用することができる。シリサイド工程は、アニールにより金属層を形成し、選択的に露出されたシリコン領域(例えばソース/ドレイン領域180)とポリシリコン領域(例えばゲート電極135など)とを反応させてシリサイドを形成してもよい。好適な一実施形態において、金属層はニッケル、白金、パラジウムまたはコバルトを含み、シリサイド工程はニッケルシリサイド、白金シリサイド、パラジウムシリサイド、コバルトシリサイドをそれぞれ形成する。金属層の過剰な材料は、例えば硫酸、過酸化水素、アンモニアヒドロオキサイドなどの溶液で湿式浸漬(wet dip)法を行って除去する。
【0034】
図5に示すように、シリサイド領域190は、ソース/ドレイン領域180(一部のソースおよびドレインの一部上にそれぞれ位置する第1のシリサイド領域および第2のシリサイド領域とも呼ぶ)上に形成され、誘電体ライナー150および延伸スペーサ170を越えるようにシリコン・オン・インシュレータ基板に沿ってゲートから離れる方向へ延伸される。延伸スペーサ170は、誘電体ライナー150とソース/ドレイン領域180の一部上に形成されたシリサイド領域190との間に形成される。トランジスタのチャネル領域145の長さは誘電体ライナー150の幅の範囲内で縮減され、ゲート近くのスペーサ160は比較的薄い。そのため、本実施形態のトランジスタはチャネル領域145が短いという長所がある。また、延伸スペーサ170はチャネル領域145とシリサイド領域190との間隔を制御して、上述のシリサイドスパイクが発生する可能性を減らすことができる。上述したように、例えばトランジスタのチャネル領域145内のストレイン効果(下で述べるコンタクトエッチングストップ層と関係する)が強化されるなど、トランジスタはその他の情況において利益を得ることができ、必要に応じて延伸スペーサ170を調整し、例えばトランジスタ内のシリサイドスパイクなどの悪い影響を減らすことができる。
【0035】
もう一つの実施形態では、シリサイド領域190をソース/ドレイン領域180の一部上に形成した後に、トランジスタから延伸スペーサ170の全てか一部を除去する。延伸スペーサ170が定義され、チャネル領域145とシリサイド領域190との間隔が保持されると、延伸スペーサ170を残す必要がない。この場合、延伸スペーサ170は、例えばフッ化水素酸溶液で等方性ウェットエッチング工程を行って除去する。その他のエッチング液としては、一般にピラニア溶液と呼ばれる濃硫酸と過酸化水素との混合溶液を使用することもできる。また、リン酸および水からなるリン酸溶液を使用して延伸スペーサ170を除去してもよい。
【0036】
図6は、本発明の一実施形態によるトランジスタ上にコンタクトエッチングストップ層194を形成したときの状態を示す断面図である。コンタクトエッチングストップ層194(一般には高応力膜で実施される)はトランジスタの一部上に形成され、方向〈100〉へ沿って引っ張り圧力が形成される。コンタクトエッチングストップ層194は、窒化ケイ素またはその他の引っ張り圧力材料で、化学気相成長工程により形成される。この化学気相成長工程は、一般に知られて従来技術で使用されている減圧化学気相成長工程、瞬時熱化学気相成長工程、原子層化学気相成長工程またはプラズマエンハンスト化学蒸着工程などでもよい。
【0037】
好適な一実施形態のコンタクトエッチングストップ層194は、ソース−ドレイン方向に沿って約50メガパスカル〜約2.0ギガパスカルの間で引っ張り圧力を加える。コンタクトエッチングストップ層194の厚みは約300〜1000Åである。一実施形態のコンタクトエッチングストップ層194は、約1.2ギガパスカルの減圧化学気相成長工程により堆積された窒化ケイ素を含む。他の実施形態のコンタクトエッチングストップ層194は、約0.7ギガパスカルのプラズマエンハンスト化学蒸着工程により堆積された窒化ケイ素を含む。
【0038】
PMOSデバイスのコンタクトエッチングストップ層194は圧縮応力膜か無応力膜であり、NMOSデバイスのコンタクトエッチングストップ層194は引っ張り圧力膜である。圧縮応力膜は、ソース−ドレイン方向でPMOSデバイスのチャネル領域内に圧縮歪みを発生させてホール移動度を向上させる。一般にコンタクトエッチングストップ層194は、チャネル領域145へ大きな影響を与えてチャネル領域145内のシリコン格子の間隔を変えるため、そこに歪みを導入することができる。そして、トランジスタのチャネル領域145へ導入した歪み効果により、キャリア移動度を改善してトランジスタの性能を向上させることができる。
【0039】
図7は、本発明の一実施形態による層間誘電体層198を示す断面図である。層間誘電体層198はコンタクトエッチングストップ層194上に形成される。層間誘電体層198は一般に平坦化された表面を有し、化学気相成長などの堆積方法により形成された酸化ケイ素を含む。層間誘電体層198の厚みは約1500〜8000Åであるが、好適には約3000〜4000Åであることが望ましい。また好適な一実施形態において、層間誘電体層198は〈100〉方向に沿って約0.1〜2.0ギガパスカルの引っ張り圧力を加える。その後、金属ラインおよび金属層の形成、ビアおよびプラグの形成、封止などの処理ステップを含む標準的な工程技術を使用してトランジスタの製造を完了する。
【0040】
従って、容易に達成可能で定量化が可能な半導体デバイスおよびその製造方法を提供することができる。当該技術に習熟しているものなら分かるように、上述した半導体デバイスおよびその関連製造方法は単に説明のために提示したものであり、延伸スペーサを有するスリムスペーサを利用した半導体デバイスを提供することができる他の実施形態も本発明の範囲内に含まれるべきである。
【0041】
本発明では好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知するものなら誰でも、本発明の主旨と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態による半導体デバイスの形成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による半導体デバイスの形成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による半導体デバイスの形成を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による半導体デバイスの形成を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による半導体デバイスの形成を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による半導体デバイスの形成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による半導体デバイスの形成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
110 基板、115 埋め込み絶縁層、120 シリコン、125 シャロートレンチ分離領域、130 ゲート誘電体層、135 ゲート電極、140 低濃度ドレイン、145 チャネル領域、150 誘電体ライナー、160 スペーサ、170 延伸スペーサ、180 ソース/ドレイン領域、190 シリサイド領域、194 コンタクトエッチングストップ層、198 層間誘電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成されるゲート、誘電体ライナー、延伸スペーサ、ソース/ドレインおよびシリサイド領域を備える半導体デバイスであって、
前記ゲートは前記半導体基板上に形成され、
前記誘電体ライナーは、前記ゲートの側壁上に形成されて前記半導体基板の一部が横向きに延伸され、
前記延伸スペーサは、前記誘電体ライナーに隣接して前記誘電体ライナーを越えるように前記半導体基板に沿って延伸され、
前記ソース/ドレインは、前記半導体基板の上面の下方に形成されて前記ゲート下方にあるチャネル領域に隣接し、前記誘電体ライナーおよび前記延伸スペーサの下で延伸され、
前記シリサイド領域は、前記ソース/ドレインの一部を覆って前記延伸スペーサを越えるように前記半導体基板に沿って横向きに延伸されることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項2】
前記ソース/ドレインは低濃度ドレインおよびソース/ドレイン領域を含み、
前記低濃度ドレインは、前記半導体基板の上面の下方に形成され、前記ゲート下方の前記チャネル領域に隣接し、前記誘電体ライナーおよび前記延伸スペーサの下方で延伸され、
前記ソース/ドレイン領域は、前記半導体基板の上面の下方で前記低濃度ドレインに隣接する位置に形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記誘電体ライナー上に形成されたスペーサをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記延伸スペーサの厚みは30Å〜100Åであることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項5】
半導体基板上にゲートを形成する工程と、
前記ゲートの側壁上に誘電体ライナーを形成し、前記半導体基板の一部を横向きに延伸させる工程と、
延伸スペーサを前記誘電体ライナーに隣接させて前記誘電体ライナーを越えるように前記半導体基板に沿って延伸させる工程と、
前記半導体基板の上面の下方にソース/ドレインを形成し、前記ソース/ドレインを前記ゲート下方にあるチャネル領域に隣接させて前記誘電体ライナーおよび前記延伸スペーサの下方で延伸させる工程と、
前記シリサイド領域を前記ソース/ドレインの一部上へ形成し、前記延伸スペーサを越えるように前記半導体基板に沿って横向きに延伸させる工程と、
を含むことを特徴とする半導体デバイスを半導体基板上に形成する方法。
【請求項6】
前記ソース/ドレインの形成は、
低濃度ドレインを前記半導体基板の上面の下方に設けて前記ゲート下方のチャネル領域へ隣接させ、前記誘電体ライナーおよび前記延伸スペーサの下方で延伸させる工程と、
前記ソース/ドレイン領域を前記半導体基板の上面の下方で前記低濃度ドレインに隣接する位置に形成する工程とを含むことを特徴とする請求項5記載の半導体デバイスを半導体基板上に形成する方法。
【請求項7】
前記誘電体ライナー上にスペーサを形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の半導体デバイスを半導体基板上に形成する方法。
【請求項8】
前記シリサイド領域を除去した後に、実質的に前記延伸スペーサを除去することを特徴とする請求項5記載の半導体デバイスを半導体基板上に形成する方法。
【請求項9】
前記延伸スペーサの厚みは30Å〜100Åであることを特徴とする請求項5記載の半導体デバイスを半導体基板上に形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−148077(P2006−148077A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295223(P2005−295223)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(504285213)台灣積體電路製造股▲分▼有限公司 (7)
【Fターム(参考)】