説明

エンジンの制御装置

【課題】 ディーゼルエンジンを対象として排気通路にHC変動型NOx還元触媒を備える場合に、減速になってもHC変動型NOx還元触媒が活性温度域にある場合に、HC変動型NOx還元触媒のNOx吸蔵量を減らす機会を確保する。
【解決手段】 減速時かつHC変動型NOx還元触媒71が活性温度域にあるかどうかを判定手段72が判定し、この判定結果より減速時かつ前記触媒71が活性温度域にある場合に、HC濃度変動付与手段73が前記触媒71に流入する排気中のHC濃度に変動を与える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はエンジンの制御装置、特に排気通路にNOx還元触媒を備えるものに関する。
【0002】
【従来の技術】リーン空燃比(理論空燃比よりリーン側の空燃比)の領域で排気中のNOxを吸蔵し、排気空燃比が理論空燃比やリッチ空燃比(理論空燃比よりリッチ側の空燃比)で触媒に吸蔵していたNOxを脱離するとともに、この脱離したNOxを理論空燃比やリッチ空燃比の雰囲気に存在するHC、COを還元剤として用いて還元浄化するようにしたNOx還元触媒を排気通路に設けたものがある(特許公報第2600492号公報参照)。このNOx還元触媒は空気過剰率λを変化(変動)させることによって触媒に吸蔵しているNOxの浄化が可能となることから、以下このNOx還元触媒を「λ変動型NOx還元触媒」という。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のλ変動型NOx還元触媒はガソリンエンジンを対象とするものであるため、全運転域において空燃比でほぼ20以上のリーン状態で運転されるディーゼルエンジンにこのλ変動型NOx還元触媒を適用とすることは難しい。これはディーゼルエンジンで空燃比をリッチにすると、スモークの悪化を招いてしまうためである。
【0004】そこで、リーン空燃比の領域で排気中のHC濃度がほぼ一定の場合に排気中のNOxを吸蔵し、同じくリーン空燃比の領域で触媒入口のHC濃度が変化(変動)すると、触媒に吸蔵していたNOxを脱離するとともに、この脱離したNOxを雰囲気中のHC、COを還元剤として用いて還元浄化するようにしたNOx還元触媒を本出願人と同一の出願人が先に提案しており(特願平10−291581号、同10−319689号参照)、このNOx還元触媒を用いれば、ディーゼルエンジンにおける実用運転域においても触媒に吸蔵しているNOxの浄化が可能となる。このNOx還元触媒は、HC濃度を変化(変動)させることによって触媒に吸蔵しているNOxの浄化が可能となることから、このNOx還元触媒を以下「HC変動型NOx還元触媒」という。
【0005】さて、リーン空燃比の領域でHC変動型NOx還元触媒に吸蔵されているNOxを脱離還元するためには、排気温度とHC/NOx比(NOx排出量に対するHC排出量の比)を適正に制御する必要がある。いま、代表的な運転モードである10・15モードでの排気温度とHC/NOx比に対する走行頻度の特性を図48R>8に示すと、同図下段において円の半径が大きいところほど頻繁に運転されることを表している。
【0006】一方、HC変動型NOx還元触媒のNOx吸蔵率、NOx還元率は、所定の排気温度と所定のHC/NOx比でピークをもち(NOx還元率について図49R>9参照)、図48上段のようにNOx吸蔵率がピークになる排気温度よりもNOx還元率がピークになる排気温度のほうが高いところにある。したがって、NOx吸蔵領域での走行頻度が高いのに対して、NOx還元領域での走行頻度はわずかでしかない。つまり、10・15モードではHC変動型NOx還元触媒にNOxを吸蔵できても、NOxを脱離還元する機会がなかなかないことがわかる。
【0007】次に、実際の運転状態の変化をみるため、車速を増して一定速に至らせた後その速度を所定の期間維持させ、その後に減速させた場合の特性を図51に示す。同図においてtbのタイミングからの減速時に着目すると、排気温度(図示しない)は車速の減少とほぼ同じ応答で低下していくのに対して、NOx還元触媒の表面温度(以下「触媒ベッド温度」という)のほうは応答遅れをもって低下していくので、tdのタイミングまで触媒が活性化している。したがって、HC変動型NOx還元触媒に対してtbからtdまでの区間でHC(NOx還元剤)を供給してやれば、触媒に吸蔵しているNOxをこのHCによって脱離還元することができる。
【0008】しかしながら、減速時は燃費向上のため燃料カットが行われるのが一般的であり、図示の場合もtbのタイミングからtcのタイミングまでのあいだで燃料カットが行われている。このため、燃料カット区間では触媒に吸蔵しているNOxが還元されることはなく、したがってNOx吸蔵量は燃料カット直前の値(tbでの値)を保持することになっている。つまり、減速時でも触媒が活性化しているあいだは、HCの供給により触媒のNOx吸蔵量を減らすことができるのに、減速時に一律に燃料カットを行ったのでは触媒のNOx吸蔵量を減らす機会をみすみす逃すことになるのである。
【0009】なお、燃料カット時(減速)時に吸気絞り弁開度を調節することによりNOx触媒の転換効率を向上させるものがある(特開平10−47112号公報参照)が、燃料カット時はHCが排出されないため、この状態で触媒通過ガス量を調節してもNOx還元性能を向上させることは難しい。
【0010】そこで本発明は、ディーゼルエンジンを対象として排気通路にHC変動型NOx還元触媒を備える場合に、減速になっても触媒が活性温度域にある場合に、HC濃度変動手段を作動させて二次的にHCを供給することにより、触媒のNOx吸蔵量を減らす機会を確保することを目的とする。
【0011】同様にしてガソリンエンジンを対象として上述のλ変動型NOx還元触媒を備える場合に、減速になっても触媒が活性温度域にある場合に、空燃比リッチ化手段を作動させることにより、触媒のNOx吸蔵量を減らす機会を確保することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、図64に示すように、HC変動型NOx還元触媒71と、減速時かつ前記触媒71が活性温度域にあるかどうかを判定する手段72と、この判定結果より減速時かつ前記触媒71が活性温度域にある場合に、前記触媒71に流入する排気中のHC濃度に変動(増加または増減)を与える手段73とを備える。
【0013】第2の発明では、第1の発明において前記触媒71が活性温度域にあるかどうかを触媒ベッド温度Texhbdに基づいて判定する。
【0014】第3の発明では、第2の発明において前記触媒71の入口排気温度Texhcの1次遅れで前記触媒ベッド温度Texhbdを演算する。
【0015】第4の発明では、第1から第3までのいずれか一つの発明において前記HC濃度に変動を与える手段73が、前記HC濃度を増加する手段である。
【0016】第5の発明では、第4の発明において主噴射を実行する手段と、運転条件に応じて主噴射時期を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記主噴射時期を遅角補正する手段である。
【0017】第6の発明では、第4の発明において主噴射を実行する手段と、運転条件に応じてEGR率を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記EGR率を増加補正する手段である。
【0018】第7の発明では、第4の発明において主噴射を実行する手段と、運転条件に応じて吸気絞り弁開度を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記吸気絞り弁開度を、吸気を絞る側に補正する手段である。
【0019】第8の発明では、第4の発明において主噴射を実行する手段と、運転条件に応じてスワール強度を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記スワール強度を減少補正する手段である。
【0020】第9の発明では、第4の発明において主噴射を実行する手段と、運転条件に応じて燃料噴射圧力(たとえばコモンレール式燃料噴射装置を備える場合のコモンレール圧力)を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記燃料噴射圧力を減少補正する手段である。
【0021】第10の発明では、第4の発明においてパイロット噴射を実行する手段と、運転条件に応じてパイロット噴射時期を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記パイロット噴射実行手段によりパイロット噴射を行いつつ前記パイロット噴射時期を進角補正する手段である。
【0022】第11の発明では、第4の発明において運転条件に応じてパイロット噴射量を演算する手段と、このパイロット噴射量の燃料をパイロット噴射する手段とを備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記パイロット噴射量を増加補正する手段である。
【0023】第12の発明では、第5の発明において前記小量の主噴射によってエンジンにトルクが発生する場合に、前記主噴射時期をさらに遅角補正する。
【0024】第13の発明では、第6から第8までのいずれか一つの発明において運転条件に応じて主噴射時期を制御する手段を備え、前記小量の主噴射によってエンジンにトルクが発生する場合に、前記主噴射時期を遅角補正する。
【0025】第14の発明では、第1から第3までのいずれか一つの発明において前記HC濃度に変動を与える手段73が、前記HC濃度を増減する手段である。
【0026】第15の発明では、第1から第3までのいずれか一つの発明において前記HC濃度に変動を与える際に排気流量を減少させる。
【0027】第16の発明では、第15の発明において可変ノズル開度により過給圧を制御可能なターボチャージャと、運転条件に応じた前記可変ノズル開度により過給圧を制御する手段とを備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記可変ノズル開度を、過給圧が低下する側に補正する手段である。
【0028】第17の発明では、第15の発明において運転条件に応じて排気絞り弁開度を制御する手段を備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記排気絞り開度を、排気を絞る側に補正する手段である。
【0029】第18の発明では、第15の発明において運転条件に応じてEGR率を制御する手段を備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記EGR率を増加補正する手段である。
【0030】第19の発明では、第15の発明において運転条件に応じて吸気絞り弁開度を制御する手段を備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記吸気絞り弁開度を、吸気を絞る側に補正する手段である。
【0031】第20の発明では、第1から第19までのいずれか一つの発明において前記触媒71の上流にHC吸着触媒を備える。
【0032】第21の発明は、図65に示すように、λ変動型NOx還元触媒81と、減速時かつ前記触媒が活性温度域にあるかどうかを判定する手段72と、この判定結果より減速時かつ前記触媒が活性温度域にある場合に、前記λ変動型触媒81に流入する排気の空燃比をリッチ(理論空燃比を含む)化する手段82とを備える。
【0033】
【発明の効果】定常運転直後および加速運転直後の減速時にHC変動型NOx還元触媒が活性温度域にある場合には、HC濃度変動付与手段を作動させることにより、触媒に吸蔵しているNOxを脱離還元して触媒のNOx吸蔵量を減らすことができ、また定常運転直後および加速運転直後の減速時にλ変動型NOx還元触媒が活性温度域にある場合には、空燃比リッチ化手段を作動させることにより、触媒に吸蔵しているNOxを脱離還元して触媒のNOx吸蔵量を減らすことができるのであるが、この場合にも燃料カットを一律に行ったのでは、触媒のNOx吸蔵量を減らす機会をみすみす逃すことになる。これに対して第1、第2、第3、第4の発明によれば、この場合には、燃料カットを中止してHC濃度変動付与手段を作動させて二次的にHCを供給することで、触媒入口でのHC濃度が変動し、このHC濃度の変動により触媒に吸蔵されているNOxが脱離還元され、触媒のNOx吸蔵量が減少する。同様にして、第21の発明によれば、この場合には、燃料カットを中止して空燃比リッチ化手段を作動させることで、触媒に吸蔵されているNOxが脱離還元されることになり、触媒のNOx吸蔵量が減少する。
【0034】HC変動型NOx還元触媒のNOx吸蔵量が限界に達したとき(再生時期)には、触媒を活性温度に高めるとともに触媒を流れる排気中のHC濃度を変動させて触媒を再生する必要があるのであるが、第1〜第4の発明によれば、加速運転や定常運転からの減速時になるたびに触媒が活性温度域にあれば触媒のNOx吸蔵量が減らされるので、これによって触媒の再生時期を遅らせることができ、運転性を悪化させる機会を減らすことができる。
【0035】同様にして、λ変動型NOx還元触媒のNOx吸蔵量が限界に達したとき(再生時期)には、触媒を活性温度に高めるとともに空燃比をリッチ化して触媒を再生する必要があるのであるが、第21の発明によれば、加速運転や定常運転からの減速時になるたびに触媒が活性温度域にあれば触媒のNOx吸蔵量が減らされるので、これによって触媒の再生時期を遅らせることができ、運転性を悪化させる機会を減らすことができる。
【0036】第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11の発明によれば、減速時の小量の主噴射やパイロット噴射による燃料供給によりその供給燃料の一部がシリンダ内で燃焼するときは、触媒温度の低下がそのぶん遅れ、これによって、触媒のNOx吸蔵量を一段と減らすことができる。
【0037】とはいえ、減速時の小量の主噴射による燃料供給により、供給燃料の一部がシリンダ内で燃焼するときはトルクが発生するので、このトルクが大きいと運転性に違和感が生じるのであるが、この場合に第12の発明によれば主噴射時期をさらに遅角補正することで、また第13の発明によれば主噴射時期を遅角させることで、供給燃料の一部がシリンダ内で燃焼することによるトルクの発生を抑制することができる。
【0038】第14の発明によれば、HC変動型NOx還元触媒のNOx吸蔵量をさらに減少させることができる。
【0039】第15、第16、第17、第18、第19の発明によれば、触媒を通過する排気流量の低下で触媒でのSV比(触媒を通過する排気の質量流量と触媒表面積の比)が小さくなり、これによってさらにNOx還元率が向上する。また、減速時に排気流量を低下させるのであれば、運転性にも影響がない。
【0040】第20の発明によれば、HC吸着触媒から脱離してくるHCによっても後段の触媒に吸蔵されているNOxを還元できるので、二次的な燃料供給量を少なくできる。
【0041】
【発明の実施の形態】図1において、エンジンには公知のコモンレール式の燃料噴射装置10を備える。
【0042】これを図2により概説すると(詳細は特開昭9−112251号公報参照)、この燃料噴射装置10は、主に燃料タンク11、燃料供給通路12、サプライポンプ14、コモンレール(蓄圧室)16、気筒毎に設けられる燃料噴射弁17からなり、サプライポンプ14により加圧された燃料は燃料供給通路15を介してコモンレール16にいったん蓄えられたあと、コモンレール16の高圧燃料が気筒数分の燃料噴射弁17に分配される。
【0043】噴射ノズル17は、針弁18、ノズル室19、ノズル室19への燃料供給通路20、リテーナ21、油圧ピストン22、針弁18を閉弁方向(図で下方)に付勢するリターンスプリング23、油圧ピストン22への燃料供給通路24、この通路24に介装される三方弁(電磁弁)25などからなり、バルブボディ内の通路20と24が連通して油圧ピストン22上部とノズル室19にともに高圧燃料が導かれる三方弁25のOFF時(ポートAとBが連通、ポートBとCが遮断)には、油圧ピストン22の受圧面積が針弁18の受圧面積より大きいことから、針弁18が着座状態にあるが、三方弁25がON状態(ポートAとBが遮断、ポートBとCが連通)になると、油圧ピストン22上部の燃料が戻し通路28を介して燃料タンク11に戻され、油圧ピストン22に作用する燃料圧力が低下する。これによって針弁18が上昇して噴射弁先端の噴孔より燃料が噴射される。三方弁25をふたたびOFF状態に戻せば、油圧ピストン22に蓄圧室16の高圧燃料が導びかれて燃料噴射が終了する。つまり、三方弁25のON時間により燃料噴射量が調整され、蓄圧室16の圧力が同じであれば、ON時間が長くなるほど燃料噴射量が多くなる。26は逆止弁、27はオリフィスである。
【0044】この燃料噴射装置10にはさらに、コモンレール圧力を制御するため、サプライポンプ14から吐出された燃料を戻す通路13に圧力制御弁31を備える。この圧力制御弁31はコントロールユニット41からのデューティ信号に応じて通路13の流路面積を変えるためのもので、コモンレール16への燃料吐出量を調整することによりコモンレール圧力を制御する。コモンレール16の燃料圧力によっても燃料噴射量は変化し、三方弁25のON時間が同じであれば、コモンレール16の燃料圧力が高くなるほど燃料噴射量が多くなる。
【0045】コモンレール圧力PCR1を検出するセンサ32からの信号が、アクセル開度センサ33(アクセルペダルの踏み込み量に比例した出力Lを発生)、クランク角センサ34(エンジン回転数とクランク角度を検出)、クランク角センサ35(気筒判別を行う)、水温センサ36とともに入力されるコントロールユニット41では、エンジン回転数とアクセル開度に応じて主噴射の目標燃料噴射量Qfとコモンレール16の目標圧力を演算し、圧力センサ32により検出されるコモンレール圧力がこの目標圧力と一致するように圧力制御弁31を介してコモンレール16の燃料圧力をフィードバック制御する。また、演算した主噴射の目標燃料噴射量Qfに対応して三方弁25のON時間を制御する。
【0046】エンジンにはまた排気還流装置(EGR装置)を備える。これを図3で説明すると、51はディーゼルエンジンの本体、52は吸気通路、53は排気通路、54は排気通路53の排気の一部を吸気通路に還流するための通路(EGR通路)である。
【0047】吸気通路52は吸入空気量を計測するためのエアフローメータ55が設置され、その下流に吸入空気を2段階に絞り込む吸気絞り弁56が設けられる。この吸気絞り弁56の下流側に前記したEGR通路54が接続され、またEGR通路54の途中には排気還流量をコントロールするための弁(EGR弁)57が介装される。
【0048】したがって、排気通路53から吸気通路52に流れる排気の還流量は、吸気絞り弁56の開度に応じて発生する吸入負圧と、排気通路53との排気圧力との差圧に応じるとともに、そのときのEGR弁57の開度に対応して決定される。
【0049】前記吸気絞り弁56は負圧アクチュエータ56aにより開度が2段階に制御され、負圧アクチュエータ56aには第1の電磁弁61を介して図示しないバキュームポンプからの負圧を導く第1負圧通路62と、第2の電磁弁63を介して同じく負圧を導く第2負圧通路64とが接続され、これら電磁弁61、62によって調圧された負圧により、吸気絞り弁56の開度を2段階に制御し、その下流に発生する吸入負圧をコントロールするようになっている。
【0050】たとえば、第1の電磁弁61が負圧導入をやめ、大気圧を導入し、第2の電磁弁63が負圧を導入しているときは、負圧アクチュエータ56aの負圧は弱く、吸気絞り弁56の開度は比較的大きくなり、これに対して、第1の電磁弁61も負圧を導入しているときは負圧が強く、吸気絞り弁56の開度は小さくなる。また、第1、第2の電磁弁61、63がともに大気圧を導入しているときは、吸気絞り弁56はリターンスプリングにより、全開位置に保持される。
【0051】前記EGR弁57はステップモータ57aの回転によってリフト量が変化し、その開度が調整され、この開度に応じてEGR通路54を通って吸気中に流入する排気還流量が増減する。なお、57bはEGR弁57の開度を検出する手段である。
【0052】コントロールユニット41では、前記した第1、第2電磁弁61、63とステップモータ57aの作動を制御し、排気還流量を制御する。
【0053】図1に戻り、EGR通路54の開口部下流の排気通路53に可変容量ターボチャージャ2を備える。これは、吸気コンプレッサ2bと同軸配置される排気タービン2aのスクロール入口に、ステップモータ2cにより駆動される可変ノズル2dを設けたもので、コントロールユニット41により、可変ノズル2dは低回転域から所定の過給圧が得られるように、低回転側では排気タービン2aに導入される排気の流速を高めるノズル開度(傾動状態)に、高回転側では排気を抵抗なく排気タービン2aに導入させノズル開度(全開状態)に制御する。また、所定の条件にあるときは、可変ノズル2dは、過給圧を下げるノズル開度に制御される。
【0054】本実施形態では、可変ノズル2dのノズル開度をステップモータ2cにより駆動する方式で説明するが、ダイヤフラムアクチュエータおよびこのアクチュエータへの制御負圧を調整する電磁ソレノイドで駆動する方法や直流モータで駆動する方法を用いてもよい。さらにノズル位置センサからの信号に基づいてノズル開度をフィードバック制御するようにしてもかまわない。
【0055】3は吸気コンプレッサ2bの下流かつコレクタ52aの上流の吸気通路52に設けられるインタークーラ、4はスワール制御弁である。
【0056】さて、過給圧制御という観点からみると、EGR制御も、過給圧制御の役割を物理的に果たしている。つまり、EGR量を変化させることにより過給圧も変化する。逆に、過給圧を変化させると、排気圧が変化するため、EGR量も変化することになり、過給圧とEGR量とは独立に制御できない。また、ややもすると、お互いに制御上の外乱となっている。
【0057】そこで、過給圧とEGR弁に供給される制御負圧とをタイムシェアリングによって吸気圧センサにより選択的に検出させ、それら制御負圧、過給圧に基づいて、EGR量の制御、過給圧の制御をそれぞれ行う技術が開示されているが、この技術では特に過渡時の制御応答性が悪くなる。
【0058】ところで、吸気圧(コンプレッサ出口圧)Pm、排気圧(タービン入口圧)Pexh、大気圧(コンプレッサ入口圧)Pa、EGR弁の有効面積相当値Aegr、可変ノズルの有効面積相当値Avntの5変数を知ることができれば、排気量QexhとEGR量Qegrを計算できる。5変数のうち、排気圧以外の変数は検出することが比較的容易であるが、排気圧は高排気温度・酸化雰囲気で耐久性をもつセンサが一般的に入手困難であり、かつ車載用センサとしては高価である。また、前記のような使用条件での耐久性を持たせるために十分な応答性を得ることが難しい。したがって、過給圧とEGR量を精度よくかつ応答性と安定性を損なうことなく制御するためには、排気圧を推定する手段が必要である。
【0059】このためコントロールユニット41では、吸入空気量Qas0と、燃料噴射量Qfと、可変ノズルの有効面積相当値Avntと、排気温度Texhの4つの要素を用いて、排気圧Pexhをダイレクトにかつ簡単な演算式で演算(推定)する。
【0060】また、この推定した排気圧Pexhを用いてEGR制御を行う。たとえば、エンジンの回転数と負荷に応じて目標EGR率Megrを演算し(図38参照)、この目標EGR率Megrに基づいて要求EGR量Tqeを演算し(図41参照)、前記推定した排気圧Pexhと吸気圧Pmの差とこの要求EGR量TqeとからEGR弁57の要求開口面積Tavを演算し(図42参照)、この要求開口面積TavとなるようにEGR弁開度を制御する。
【0061】コントロールユニット41で行われるこの制御を次に詳述する。
【0062】なお、以下に詳述する過給圧制御とEGR制御とは本出願よりも少し早い時期の別の出願によりすでに提案している。
【0063】まず、過給圧制御から説明すると、図4は可変ノズル2dの指令開度の演算フローで、10msec毎に実行する。なお、図4に示す指令開度の演算方法は、基本的に公知のものである。
【0064】ステップ1では回転数Ne、燃料噴射量Qf、コンプレッサ入口圧Pa、実過給圧8Pm_istを読み込む。
【0065】ここで、実過給圧Pm_istはEGR制御で後述する吸気圧(コンプレッサ出口圧)Pmと同じものであり、この吸気圧Pmはコレクタ52aに設けた吸気圧センサ72(図1参照)により、またコンプレッサ入口圧Paはエアフローメータ55の上流に設けた大気圧センサ73(図1参照)により検出している。燃料噴射量Qfの演算は後述する。
【0066】ステップ2では回転数Neと燃料噴射量Qfから図5を内容とするマップを検索することにより基本過給圧MPMを、またステップ3ではコンプレッサ入口圧Paより図6を内容とするテーブルを検索することにより過給圧の大気圧補正値を求め、ステップ4でこの大気圧補正値を基本過給圧MPMに乗じた値を目標過給圧Pm_solとして演算する。
【0067】ステップ5では実過給圧Pm_istがこの目標過給圧Pm_solと一致するようにPI制御によりノズル開度のPI補正量STEP istを演算する。
【0068】ステップ6では回転数Neと燃料噴射量Qfより図7を内容とするマップを検索することにより可変ノズルの基本開度MSTEPを、またステップ7ではコンプレッサ入口圧Paより図8を内容とするテーブルを検索することによりノズル開度の大気圧補正値を求め、この補正値を基本開度MSTEPに乗じた値をステップ8において目標開度STEP solとして演算する。
【0069】ステップ9では、実過給圧Pm_istと回転数NeからD(微分)補正量を算出し、これと前述のPI補正量STEP istとをステップ10において目標開度STEPsolに加算した値をVNTstep1として演算する。
【0070】ステップ11ではエンジン回転数Neと実過給圧Pm_istから所定のマップ(図示しない)を検索してリミッタ上下限値を求め、VNTstep1がこのリミッタ内にあればVNTstep1の値を、そうでない場合はリミッタ上下限値を指令開度VNTstepとして演算する。
【0071】このようにして得られる可変ノズルの指令開度VNTstepは、図示しない所定のテーブルを検索することにより、ステップ数(可変ノズルアクチュエータとしてのステップモータ2cに与える制御量)に変換され、このステップ数により指令開度VNTstepとなるように、ステップモータ2cが駆動される。
【0072】次に、EGR制御について、その制御の大まかなブロック図を図9に、詳細なフローチャートおよびそのフローに使うマップやテーブルを図11〜図34R>4、図36〜図43に示す。
【0073】ここで、コントロールユニット41で行われる制御方法はモデル規範制御(多変数入力制御系のモデルを用いた制御の一つ)である。このため、アクセル開度センサ33、クランク角センサ34、35、水温センサ36以外のセンサといえば、エアフローメータ55、このエアフローメータ55の近傍に設けた吸気温度センサ71および本実施形態で新たに設けた吸気圧センサ72だけで、制御上で必要となる各種のパラメータ(たとえば後述する排気圧など)はコントロールユニット41内ですべて予測演算することになる。なお、モデル規範制御のイメージは、図9の各ブロックが、その各ブロックに与えられた演算を、回りのブロックとの間でパラメータの授受を行いつつ瞬時に行うというものである。近年、モデル規範制御の理論的解析が急速に進んだことから、エンジン制御への適用が可能となり、現在、実用上も問題ないレベルにあることを実験により確認している。
【0074】さらに詳述すると、■エアフローメータ55など、センサ検出値のサンプリングを一定時間毎に(図12ステップ1〜3、図16、図18参照)、■モデル規範制御におけるパラメータの演算を基本的にRef信号(クランク角の基準位置信号)の入力毎に(図12ステップ4〜7、図13、図14、図21、図22、図2525、図31、図34、図36、図38、図41、図42R>2参照)、■最終のアクチュエータへの出力を一定時間毎に実行する。なお、以下ではRef信号の入力毎のジョブであるところを、一定時間毎のジョブとして記載しているところもある(図11参照)。
【0075】また、上記の■における各パラメータの演算は図10に示した順番で行う。図10において全ての処理を行うのに所用の時間がかかるということはなく、Ref信号の入力により全ての処理が一瞬にして終了する。同図において記号の後に付けた「n−1」は、前回値(つまり1Ref信号前に演算した値)であることを意味している。
【0076】以下、図10に示した順番で各パラメータの演算を説明する。
【0077】なお、EGR制御そのものは特願平10−31460号(以下「先願装置」という)によりすでに開示している。
【0078】図11はシリンダ吸入新気量、燃料噴射量、シリンダ吸入ガス温度のサイクル処理のフローである。ステップ1でシリンダ吸入新気量Qac、燃料噴射量Qf、シリンダ吸入ガス温度Tnを読み込む。なお、シリンダ吸入新気量Qac、燃料噴射量Qf、シリンダ吸入ガス温度Tnの各演算についてはそれぞれ図12、図22R>2、図21により後述する。
【0079】ステップ2ではこれらQac、Qf、Tnを用いてQexh=Qac・Z-(CYLN#-1)、Qf0=Qf・Z-(CYLN#-2)、Tn0=Tn・Z-(CYLN#-1)の式によりサイクル処理を施すが、これらはエアフローメータ55の読み込みタイミングに対しての位相差に基づく補正を行うものである。ただし、CYLN#はシリンダ数である。たとえば4気筒エンジンでは、燃料の噴射は、エアフローメータの読み込みタイミングに対して180CA×(気筒数−2)ずれるので、シリンダ数から2引いた分だけディレイ処理を行う。
【0080】図12はシリンダ吸入新気量Qacを演算するフローである。
【0081】ステップ1ではエアフローメータ(AMF)55の出力電圧を読み込み、ステップ2でこの出力電圧からテーブル変換により吸気量を演算する。ステップ3では吸気脈動の影響をならすためこの吸気量演算値に対して加重平均処理を行う。
【0082】ステップ4ではエンジン回転数Neを読み込み、ステップ5においてこの回転数Neと前記した吸気量の加重平均値Qas0とから、シリンダ吸入空気量(1吸気行程当たり)Qac0を、
【0083】
【数1】Qac0=(Qas0/Ne)×KCON#ただし、KCON#:定数、の式により計算する。
【0084】ステップ6ではこのQac0のn回演算分のディレイ処理を行い、このディレイ処理後の値Qac0・Z-nをコレクタ52a入口でのシリンダ新気量(1吸気行程当たり)Qacnとして算出する。これはエアフローメータ55からコレクタ52a入口までの吸入空気の遅れを考慮したものである。
【0085】ステップ7では容積比Kvolと体積効率相当値の前回値Kinn-1を用い、上記のコレクタ52a入口のシリンダ新気量Qacnから
【0086】
【数2】Qac=Qacn-1×(1−Kvol×Kinn-1)+Qacn×Kvol×Kinn-1ただし、Qacn-1:Qacの前回値、Kinn-1:Kinの前回値、の式により遅れ処理を行ってシリンダ吸入新気量(1吸気行程当たり)Qacを求める。これはコレクタ52a入口からシリンダまでの吸入空気の遅れを考慮したものである。
【0087】図13はシリンダ吸入EGR量Qecを演算するフローである。
【0088】この演算内容は上記図12に示したシリンダ吸入新気量Qacの演算方法と同様である。ステップ1で後述(図36参照)のようにして求めるEGR(流)量Qeの前回値であるQen-1を読み込み、ステップ2でエンジン回転数Neを読み込む。
【0089】ステップ4ではQen-1とNeと定数KCON#とからコレクタ52a入口でのシリンダ吸入EGR量(1吸気行程当たり)Qecnを
【0090】
【数3】Qecn=(Qen-1/Ne)×KCON#ただし、KCON#:定数、の式により計算する。さらに、ステップ5でこのコレクタ入口52aでの値Qecnと容積比Kvol、体積効率相当値の前回値Kinn-1を用いて、
【0091】
【数4】Qec=Qecn-1×(1−Kvol×Kinn-1)+Qecn×Kvol×Kinn-1ただし、Qecn-1:Qecの前回値、Kinn-1:Kinの前回値、の式により遅れ処理を行ってシリンダ吸入EGR量(1吸気行程当たり)Qecを計算する。これはコレクタ52a入口からシリンダまでのEGRガスの遅れを考慮したものである。
【0092】なお、先願装置では、EGR量Qeに対して、排気脈動の影響をならすため加重平均処理を行っていたが、本実施形態ではQeに対する加重平均処理を行っていない。これは、次の理由による。排気脈動の影響をならすためとはいえ、Qeの加重平均処理値を用いたのでは、その加重平均に伴う誤差を含めてシリンダ吸入EGR量Qecを演算することになる。そこで、本実施形態では、脈動を持ったQeのままでQecを演算することで、できるだけQecの演算精度を高めるようにしている。
【0093】図14は体積効率相当値Kinを演算するフローである。
【0094】ステップ1ではシリンダ吸入新気量Qac、シリンダ吸入EGR量Qec、吸気圧Pm、吸入ガス温度の前回値であるTnn-1を読み込み、このうちPmとTnn-1からステップ2で図15を内容とするマップを検索することによりガス密度ROUqcylを求め、このガス密度ROUqcylとシリンダガス重量Qcyl(=Qac+Qec)を用いてステップ3において
【0095】
【数5】Kin=Qcyl/(Vc/ROUqcyl)ただし、Vc:1シリンダ容積、の式(体積効率の定義式)により体積効率相当値Kinを演算する。
【0096】ここで、体積効率相当値Kinの演算方法は先願装置と異なっている(先願装置より簡単になっている)。これは、本実施形態では吸気圧センサ72を追加しているため、このセンサ検出値を用いれば体積効率を定義式より算出できるためである。これにより、本実施形態では、体積効率の演算について、適合工数を少なくすることができている。
【0097】図16は吸気圧(コレクタ内)の演算(検出)のフローである。
【0098】ステップ1で吸気圧センサ72の出力電圧Pm vを読み込み、この出力電圧Pmvよりステップ2において図17を内容とするテーブルを検索することにより圧力Pm 0に変換し、この圧力値に対してステップ3で加重平均処理を行い、その加重平均値Pm1を吸気圧Pmとして演算する。
【0099】吸気圧センサが設けられていなかった先願装置と相違して、本実施形態では、吸気圧センサが設けられているため、吸気圧Pmの演算が簡単になっている。
【0100】ここで、吸気圧センサを新たに追加した理由は次の通りである。先願装置ではターボチャージャが可変容量型でなかったのに対して、本実施形態のターボチャージャは可変容量型であるため、ノズル開度が未知数(自由度)として新たに加わり、先願装置より未知数が1だけ増えることになった。そこで、未知数を先願装置と同じにするため、吸気圧センサ72を設けたものである(先願装置では吸気圧も未知数であるが、本実施形態では吸気圧は未知数でない)。
【0101】図18は吸入新気温度Taを演算するフローである。
【0102】ステップ1で吸気温度センサ71の出力電圧Ta vを読み込み、この出力電圧Ta vよりステップ2において図17と同様の特性を内容とするテーブルを検索することにより温度Ta0に変換する。
【0103】ステップ3では吸気温度センサ71がインタークーラ3の上流側と下流側のいずれに装着されているかをみる。
【0104】図1のように、吸気温度センサ71がインタークーラ3の上流側にある場合はステップ4に進み、吸気圧の前回値であるPmn-1に基づいて圧力補正係数Ktmpiを、Ktmpi=Pmn-1×PA#の式より計算する。ただし、PA#は定数である。
【0105】そして、ステップ5ではこの圧力補正係数Ktmpiに基づいてコレクタ52a入口での吸入新気温度Taを、
【0106】
【数6】Ta=Ta0×Ktmpi+TOFF#ただし、TOFF#:定数、の式(近似式)により計算する。この計算は、熱力学の法則による温度変化予測演算である。
【0107】吸気温度を車速や吸気量等により補正してもよい。このときは、図19、図20に示した特性を内容とするテーブルを予め作成しておき、車速と吸気量(Qas0)から各テーブルを検索することにより、吸気温度の車速補正値Kvsp、吸気温度の吸気量補正値Kqaを求め、上記の数7式に代えて、
【0108】
【数7】Ta=Kvsp×Kqa×Ta0×Ktmpi+TOFF#の式により吸入新気温度Taを求めればよい。
【0109】一方、インタークーラ3の下流側に吸気温度センサが装着されている場合は、過給による温度上昇も、インタークーラによる温度低下のいずれも織り込み済みとなるので、ステップ6に進み、Ta0の値をそのまま吸入新気温度Taとした後、処理を終了する。
【0110】図21はシリンダ吸入ガス温度Tnを演算するフローである。ステップ1でシリンダ吸入新気量Qacと吸入新気温度Taとシリンダ吸入EGR量Qecと排気温度の前回値であるTexhn-1を読み込み、このうちステップ2において排気温度の前回値Texhn-1にEGR通路54での排気温度低下係数Ktlosを乗じてシリンダ吸入EGRガス温度Teを算出し、ステップ3では
【0111】
【数8】
Tn=(Qac×Ta+Qec×Te)/(Qac+Qec)
の式によりシリンダ吸入新気とシリンダ吸入EGRガスの平均温度を求めてこれをシリンダ吸気温度Tnとする。
【0112】図22は燃料噴射量Qfを演算するフローである。ステップ1でエンジン回転数Neとコントロールレバー開度(アクセルペダル開度により定まる)CLを読み込み、ステップ2でこれらNeとCLから図23を内容とするマップを検索して基本燃料噴射量Mqdrvを求める。
【0113】ステップ3ではこの基本燃料噴射量に対してエンジン冷却水温等に基づいて各種の補正を行い、この補正後の値Qf1に対してさらにステップ4で図24を内容とするマップに基づいて、燃料噴射量の最大値Qf1MAXによる制限を行い、制限後の値を燃料噴射量Qfとして演算する。
【0114】図25は排気温度Texhを演算するフローである。ステップ1、2では燃料噴射量のサイクル処理値Qf0とシリンダ吸入ガス温度のサイクル処理値Tn0を読み込む。さらに、ステップ3で排気圧の前回値であるPexhn-1を読み込む。
【0115】ステップ4では燃料噴射量のサイクル処理値Qf0から図26を内容とするテーブルを検索して排気温度基本値Texhbを求める。
【0116】ステップ5では前記した吸入ガス温度のサイクル処理値Tn0から排気温度の吸気温度補正係数Ktexh1を、Ktexh1=(Tn0/TA#)KN#(ただし、TA#、KN#は定数)の式により、またステップ6では排気温度の排気圧力補正係数Ktexh2を、排気圧の前回値Pexhn-1からKtexh2=(Pexhn-1/PA#)(#Ke-1)/#Ke(ただし、PA#、#Keは定数)の式によりそれぞれ計算する。これら2つの補正係数Ktexh1、Ktexh2はテーブル検索により求めてもかまわない(図27、図28R>8参照)。
【0117】次に、ステップ7ではスワール弁の開度位置(全開か全閉かの2位置)とエンジン回転数Neから図29を内容とするテーブルを検索することにより排気温度のスワール補正係数Ktexh3を、ステップ8では指令開度VNTstepと排気量Qexhとから図30を内容とするマップを検索することにより排気温度のノズル開度補正係数Ktexh4をそれぞれ求める。
【0118】そして、ステップ9では、排気温度基本値Texhbに4つの各補正係数Ktexh1、Ktexh2、Ktexh3、Ktexh4を乗じて排気温度Texhを計算する。
【0119】ここで、本実施形態では、先願装置にない2つの補正係数Ktexh3、Ktexh4を新たに導入したので、本実施形態のほうが排気温度Texhの演算精度が向上する。排気温度Texhの演算精度を向上させるようにしたのは、次の理由からである。図34のフローで後述するように、排気温度Texhは排気圧Pexhの演算に用いられる。したがって、排気温度Texhの演算精度の向上が排気圧Pexhの演算精度の向上に結びつくので、排気圧Pexhの演算精度の向上を図るため、新たに2つの補正係数Ktexh3、Ktexh4を導入したものである。
【0120】なお、図25の処理は、熱力学の式から導かれる下式を近似したものである。
【0121】
【数9】


図31は可変ノズル2dの有効面積相当値Avntの演算フローである。ステップ1では指令開度VNTstep、総排気重量Qtotal(=Qas0+Qf)、排気温度Texhを読み込む。
【0122】このうち総排気重量Qtotalと排気温度Texhからステップ2で
【0123】
【数10】
Wexh=Qtotal×Texh/Tstd [m3/sec]
ただし、Tstd:標準大気温度、の式により排気流速相当値Wexhを算出する。
【0124】ステップ3では、この排気流速相当値Wexhの平方根をとった値から図32を内容とするテーブルを検索して摩擦損失ξfricを演算する。ステップ4では指令開度VNTstepと総ガス重量Qtotalから図33を内容とするマップを検索してノズル損失ξconvを演算する。そして、これら2つの損失ξfric、ξconvをステップ5において指令開度VNTstepに乗算して、つまり
【0125】
【数11】Avnt= VNTstep×ξfric×ξconvの式により可変ノズルの有効面積相当値Avntを演算する。
【0126】図34は排気圧(タービン入口圧)Pexhの演算のフローである。
【0127】ステップ1では吸気量の加重平均値Qas0、燃料噴射量Qf、有効面積相当値Avnt、排気温度Texh、大気圧(コンプレッサ入口圧)Paを読み込み、これらのパラメータを用い、ステップ2において
【0128】
【数12】Pexh0=Kpexh×{(Qas0+Qfuel)/Avnt}2×Texh+Paただし、Kpexh:定数、の式により排気圧Pexh0を演算し、この排気圧に対してステップ3で加重平均処理を行い、その加重平均値を排気圧Pexhとして求める。排気圧の実測値と予測値の相関を調べた実験結果を図35に示す。同図より、予測値でも十分な精度があることがわかる。
【0129】次に、図36はEGR(流)量Qeを演算するフローである。ステップ1では上記した吸気圧Pm、排気圧Pexh、EGR弁実開度としてのEGR弁実リフト量Liftsを読み込む。あるいは、ステップモータのように目標値を与えれば実際のEGR弁リフト量が一義に決まる場合は、目標EGR弁リフト量でもよい。
【0130】ステップ2では、このEGR弁実リフト量Liftsから図37を内容とするテーブルを検索して、EGR弁57の開口面積相当値Aveを求める。
【0131】そして、ステップ3において、EGR流量Qeを、これら吸気圧Pmと排気圧Pexh、EGR弁57の開口面積相当値Aveとから、
【0132】
【数13】Qe=Ave×{(Pexh−Pm)×KR#}1/2ただし、KR#:補正係数(定数)の式により計算する。
【0133】図38は目標EGR率Megrを演算するフローである。ステップ1でエンジン回転数Ne、燃料噴射量Qf、シリンダ吸入ガス温度Tnを読み込み、このうちNeとQfとから図39を内容とするマップを検索して、目標EGR率基本値Megr0を求める。ステップ3ではシリンダ吸入ガス温度Tnから図40を内容とするテーブルを検索して目標EGR率補正値Hegrを求め、この目標EGR率補正値Hegrを目標EGR率基本値Megr0に乗ずることによって目標EGR率Megrを計算する。
【0134】図41は要求EGR(流)量Tqeの演算フローである。ステップ1でエンジン回転数Ne、目標EGR率Megr、シリンダ吸入新気量Qac、燃料噴射量のサイクル処理値Qf0を読み込み、このうちシリンダ吸入新気量Qacに目標EGR率Megrをステップ2において乗ずることで目標吸入EGR量Mqecを計算する。
【0135】ステップ3ではこの目標吸入EGR量Mqecに対して、Kin×Kvolを加重平均係数として
【0136】
【数14】Rqec=Rqecn-1×(1−Kin×Kvol)+Mqec×Kin×Kvolただし、Rqecn-1:Rqecの前回値、の式により中間処理値(加重平均値)Rqecを演算し、この中間処理値Rqecと上記の目標吸入EGR量Mqecを用いてステップ4で
【0137】
【数15】Tqec=Mqec×GKQEC+Rqecn-1×(1−GKQEC)
ただし、Rqecn-1:Rqecの前回値、GKQEC:進み補償ゲイン、の式により進み処理を行って目標シリンダ吸入EGR量Tqecを求める。要求値に対して吸気系の遅れ(すなわちEGR弁57→コレクタ52a→吸気マニホールド→吸気弁の容量分の遅れ)があるので、ステップ3、4ではこの遅れ分の進み処理を行うものである。
【0138】ステップ5ではこの目標シリンダ吸入EGR量Tqecから、
【0139】
【数16】Tqe=(Tqec/Ne)×KCON#ただし、KCON#:定数、の式により単位変換(1シリンダ当たり→単位時間当たり)を行って、要求EGR量Tqeを計算する。
【0140】図42は指令EGR弁開度としての指令EGR弁リフト量Lifttを演算するフローである。ステップ1では吸気圧Pm、排気圧Pexh、要求EGR量Tqeを読み込む。ステップ2ではEGR弁57の要求開口面積Tavを、
【0141】
【数17】
Tav=Tqe/{(Pexh−Pm)×KR#}1/2ただし、KR#:補正係数(定数)、の式(流体力学の法則)で計算する。
【0142】ステップ3ではこのEGR弁57の要求開口面積Tavより図43を内容とするテーブルを検索して目標EGR弁開度としてのEGR弁目標リフト量Mliftを求め、この目標リフト量Mliftに対して、ステップ4において、EGR弁57の作動遅れ分の進み処理を行い、その進み処理後の値を指令EGR弁リフト量Lifttとして求める。
【0143】このようにして求められた指令EGR弁リフト量Lifttが図示しないフローによりステップモータ57aへと出力され、EGR弁57が駆動される。
【0144】これでEGR制御の説明を終了する。
【0145】このように、本発明の実施形態では、吸気量(の加重平均値)Qas0、燃料噴射量Qf、可変ノズルの有効面積相当値Avnt、排気温度Texhの4つの要素からダイレクトにかつ簡単な上記の数12式を用いて排気圧Pexhを演算できることになったので、可変容量ターボチャージャを備える場合においても、過渡時に応答遅れなく排気圧を推定できる。
【0146】また、有効面積相当値Avntを、可変ノズル2dを流れるガスの効率ηnと可変ノズル2dを駆動するステップモータ2cに与える指令開度VNTstepとの積で与えるようにしたので、可変ノズル2dを流れるガスの効率ηnを考慮できる。
【0147】また、可変ノズル2dを流れるガスの効率ηnは摩擦損失ξfricとノズル損失ξconvの積としたので、摩擦損失とノズル損失を別個に考慮できる。
【0148】また、摩擦損失ξfricを、排気流速相当値Wexhの平方根に比例する値で与えるようにしたので、排気流速が相違しても、摩擦損失ξfricを精度よく与えることができる。
【0149】また、流速の変化が大きい場合、縮まり管に対する損失(1/{1−(A2/A1)21/2の値、ただしA1は入口面積、A2は出口面積)をそのままノズル損失とみなすと、実際のノズル損失と合わないことが多いのであるが、本実施形態ではノズル損失ξconvを、指令開度VNTstepと総排気重量Qtotalに応じた値としたので、流速の変化が大きい場合にも実際のノズル損失とよく合致させることができる。
【0150】また、指令開度VNTstepと排気量Qexhに応じて排気温度のノズル開度補正係数Ktexh4を演算し、この補正係数Ktexh4で排気温度基本値Texhbを補正するようにしたので、排気温度Texhの演算精度が向上し、この向上分だけ排気圧Pexhの演算精度が向上する。同様にして、吸気ポートにスワール弁を備える場合には、このスワール弁の開度位置とエンジン回転数Neに応じて排気温度のスワール補正係数Ktexh3を演算し、この補正係数Ktexh3で排気温度基本値Texhbを補正するようにしたので、吸気ポートにスワール弁を備える場合にも排気温度Texhの演算精度が向上し、この向上分だけ排気圧Pexhの演算精度が向上する。
【0151】図1に戻り、排気タービン2a下流の排気通路53に触媒1を備える。これは、図44に示したように後段にHC変動型NOx還元触媒61を、その前段にHC吸着触媒62を配置(直列配置)したものである。
【0152】ここで、触媒61は、NOx吸蔵機能を持たせるための材料(酸化アルミニウムAl23を担体として白金PtおよびランタンLa、セリウムCe、ジルコニウムZrを担持させたものやメソポーラスシリカ)とNOx脱離還元機能を持たせるための材料(酸化アルミニウムAl23を担体として白金Ptおよび鉄Feを担持させたものや白金PtおよびランタンLaを担持させたもの)とからなり(図47参照)、リーン空燃比の領域で排気中のHC濃度がほぼ一定の場合に排気中のNOxを吸蔵し、同じくリーン空燃比の領域で触媒入口のHC濃度が変化(変動)すると、触媒に吸蔵していたNOxを脱離するとともに、この脱離したNOxを雰囲気中のHC、COを還元剤として用いて還元浄化するNOx還元触媒のことで、この触媒61についての詳細は本出願人と同じ出願人により先に提案されている(特願平10−291581号、同10−319689号参照)。
【0153】この触媒61についてさらに説明すると、触媒61入口のHC、COの濃度をステップ的に大きくしたとき、EOEレベル(触媒61がないときのNOx濃度レベルのこと)を基準にして図45のように触媒61出口のNOx濃度が変化する。同図において、EOEレベルより下にある領域Aでは触媒61にNOxが吸蔵され、HC濃度のステップ増加により、EOEレベルを超える領域Bで触媒61からNOxが脱離し、HC濃度のステップ増加後にEOEレベルより下になる領域CでNOxが還元浄化される。この結果、A+B−C(≧0)が触媒61トータルで浄化されるNOx量となる。
【0154】この場合に、脱離還元過程の雰囲気酸素濃度が3%(リッチに近い条件)の場合と10%(空燃比で18以上のリーン条件)の場合とでNOx低減率を比較したものを図46に示すと、雰囲気酸素濃度が3%の場合にt1、t2の区間で8%、3%のNOxが低減されるのに対して、雰囲気酸素濃度が10%の場合にはt1、t2の区間で35%、2%のNOxが低減されている。つまり、定常のt2区間では両者で違いがないのに対して、過渡のt1区間ではリーン条件のほうが実に4倍以上ものNOxが低減される。言い換えると、触媒61では、空燃比で18以上のリーン条件においてHC濃度変動を与えることで、NOxの脱離還元が可能となるのである。
【0155】これに対してHC吸着触媒62は、ゼオライトとメソポーラスシリカからなり、リーン空燃比の領域において、低排気温度時に排気中のHCを吸着し、排気温度が高くなると触媒62に吸着していたHCを脱離するもので(図50参照)、実際には図47に示したように、さらにHC改質とNOx還元の各機能を付加している。
【0156】さて、リーン空燃比の領域で触媒61に吸蔵されているNOxを還元するためには、排気温度およびHC/NOx比を適正に制御する必要がある。いま、代表的な運転モード(10・15モード)での排気温度とHC/NOx比に対する走行頻度の特性を図48に示すと、同図下段において円の半径が大きいところほど頻繁に運転されることを表している。
【0157】一方、触媒61のNOx吸蔵率、NOx還元率は所定の排気温度と所定のHC/NOx比でピークをもち(NOx還元率について図49参照)、図48上段のように、NOx吸蔵率がピークになる排気温度よりもNOx還元率がピークになる排気温度のほうが高いところにある。したがって、NOx吸蔵領域ではしばしば運転されるけれども、NOx還元領域では運転の機会がわずかでしかない。
【0158】実際の運転状態の変化をみるため、車速を増して一定速に至らせた後その速度を所定の期間維持させ、その後に減速させた場合の特性を図51に示す。同図において減速時には、車速の減少とほぼ同じ応答で低下していく排気温度(図示しない)に対して、触媒ベッド温度のほうは応答遅れがあるためtdのタイミングまで触媒61が活性化している。したがって、tbからtdまでの区間でHC(NOx還元剤)を供給してやれば、触媒61に吸蔵しているNOxをこのHCによって脱離還元することができる。
【0159】しかしながら、減速時は燃費向上のため図示のようにtbからtcまでの区間で燃料カットが行われる(燃料噴射量が0)。このため、燃料カット区間では触媒61に吸蔵しているNOxが還元されることはなく、したがって触媒61のNOx吸蔵量は燃料カット直前の値(tbでの値)を保持することになっている。つまり、減速時でも触媒61が活性温度域にあるあいだは、HCの供給により触媒61のNOx吸蔵量を減らすことができるのに、減速時に一律に燃料カットを行うのでは、触媒61のNOx吸蔵量を減らす機会をみすみす逃すことになるのである。
【0160】なお、燃料カット時(減速)時に吸気絞り弁開度を調節することによりNOx触媒の転換効率を向上させるものがあるが、燃料カット時はHCが排出されないため、この状態で触媒通過ガス量を調節してもNOx還元性能を向上させることは難しい。
【0161】これに対処するためコントロールユニット41では、減速になっても触媒61が活性温度域にあるあいだは、HC濃度変動手段を作動させて二次的にHCを触媒61に供給する。
【0162】コントロールユニット41で行われるこの制御を次に詳述する。
【0163】図53は触媒入口排気温度Texhcを演算するフローである。触媒入口排気温度はタービンの効率によって変化するが、概ね可変ノズル2dのノズル開度、車速および大気温度の関数となるため簡単化を図っている。
【0164】ステップ1では指令開度VNTstep(図4により演算)、車速VSP、吸入新気温度Ta(図18により演算)を読み込み、ステップ2において、指令開度VNTstepと回転数Neおよび燃料噴射量Qfの積とから図5454を内容とするマップを検索して、タービン仕事による排気温度の低下割合係数Ivntを、また車速VSPと吸入新気温度Taとから図55を内容とするマップを検索して、タービン出口から触媒入口までの排気管表面からの放熱割合を示す温度降下係数KTLOSを求める。
【0165】そして、ステップ3ではこれら係数Ivnt、KTLOSを上記の排気温度Texh(図25により演算)に乗じた値を触媒入口排気温度Texhcとして計算する。これは、タービンより触媒入口までの排気温度の低下を考慮するものである。
【0166】図56は触媒ベッド温度Texhbdを演算するフローである。これは、本来ならば排気温度と大気温度とが触媒担体を通した熱伝達の結果として求まるものであるが、ここでは触媒入口排気温度Texhcの1次遅れで記述する。
【0167】ステップ1で上記の触媒入口排気温度Texhcを読み込み、ステップ2において、
【0168】
【数18】Texhbd=Texhc×TDBED#+Texhbdn-1×(1−TDBED#)−Toffsetただし、Texhbdn-1:Texhbdの前回値、TDBED#:定数(昇温時定数相当値)、Toffset:オフセット量、の式(一次遅れの式)により触媒ベッド温度Texhbdを計算する。Texhbdの初期値は一定値でよい。
【0169】オフセット量Toffsetは触媒からの放熱分を考慮する値で、触媒からの放熱を無視できる場合はToffset=0でよい。通常は放熱があるため、運転頻度の高い運転域でToffsetを実験的に求め、予測結果をよくする。
【0170】なお、本願では応答性と耐久性の観点から温度センサを設けることなく触媒ベッド温度を予測しているが、応答性のよい薄膜型熱伝対等からなる温度センサを触媒表面に貼り付け、このセンサにより計測した温度を触媒ベッド温度としてもかまわない。
【0171】図57は減速時であるかどうかを判定するフローである。ステップ1、2で回転数Ne、アクセルペダル開度TVO(コントロールレバー開度でもかまわない)、車速VSPのほか、kサイクル前の回転数Ne・Z-k、mサイクル前のアクセルペダル開度TVO・Z-m、pサイクル前の車速VSP・Z-pを読み込み、ステップ3においてこれらNe、TVO、VSPとこれに対応する所定の計算サイクル前の値との差分dNe、dTVO、dVSPを計算する。
【0172】ステップ4ではこれら差分dNe、dTVO、dVSPとこれに対応する所定値(負の定数)C Ne、C TVO、C VSPを比較し、一つでも所定値より小さいときは減速時であると判断してステップ5に進み、減速フラグFSL=1とし、すべてが所定値以上であるときはステップ6で減速フラグFSL=0とする。
【0173】図58はHC濃度を増加させるかどうかを判定するフローである。ステップ1で、触媒ベッド温度Texhbdと減速フラグFSLを読み込み、ステップ2、3において、減速フラグFSLの値をみるとともに、触媒ベッド温度Texhbdと所定値C Texhを比較する。所定値C Texhは触媒61が活性化する温度の下限を定める値である。したがって、FSL=1(減速時)かつTexhbd>C Texhである場合には、HCを供給してやりさえすれば触媒61に吸蔵されているNOxを脱離還元できるので、ステップ4に進んでHC濃度増加フラグF Red=1とし、そうでない場合にはステップ5に進んでHC濃度増加F Red=0とする。
【0174】図59はHC濃度を増加させるフローである。ステップ1でHC濃度増加フラグF Redをみる。F Red=1の場合にはステップ2で目標主噴射時期ITs、目標スワール弁開度SRs、目標EGR率Megr、目標燃料噴射圧力(目標コモンレール圧力)PRs、目標吸気絞り弁開度THs、目標パイロット噴射量QPLs、目標パイロット噴射時期ITPLsを読み込む。ここで、目標EGR率Megrの特性は前述した(図38参照)。残りの目標主噴射時期ITs、目標スワール弁開度SRs、目標コモンレール圧力PRs、目標吸気絞り開度THs、目標パイロット噴射量QPLs、目標パイロット噴射時期ITPLsの各特性は周知であるため図示しないが、いずれもテーブル値やマップ値である。
【0175】これら目標値と各目標値に対応する補正値(一定値)を用いて、ステップ3では、
【0176】
【数19】ITs=ITs−C IT、SRs=SRs−C SR、Megr=Megr+C EGR、PRs=PRs−C PR、THs=THs−C TH、QPLs=QPLs+C QPL、ITPLs=ITPLs+C ITPL、ただし、C IT:主噴射時期補正値、C SR:スワール弁開度補正値、C EGR:EGR率補正値、C PR:コモンレール圧力補正値、C TH:吸気絞り弁開度補正値、C QPL:パイロット噴射量補正値、C ITPL:パイロット噴射時期補正値、の式により各々の目標値を補正する(主噴射時期を遅角する、スワール弁開度を減少してスワールを弱くする、EGR率を大きくする、コモンレール圧力を下げる、吸気絞り弁を閉じて吸気を絞る、パイロット噴射量を増やす、パイロット噴射時期を進角する)。これら7つの補正方法はいずれも燃焼を悪くするものであり、これによって、排気中のHC濃度が増加する。なお、7つの補正方法は単に羅列したものであり、少なくとも1つの補正方法を実施すればい。個別には、主噴射時期の遅角補正が応答性が最も高く、かつHC増加率も最も高い。パイロット噴射量の増加補正とパイロット噴射時期の進角補正は主噴射時期の遅角補正と同等、コモンレール圧力の減少補正は、応答は少し悪いがHC増加率は主噴射時期の遅角補正と同等である。
【0177】ただし、主噴射時期の遅角補正、スワール弁開度の減少補正、EGR率の増加補正、コモンレール圧力の減少補正、吸気絞り弁開度の減少補正を採用するときは、同時に小量の主噴射を行わなければならない。同様にして、主噴射時期の補正に代えてパイロット噴射時期の進角補正を採用するときは、同時にパイロット噴射を行わなければならない。
【0178】パイロット噴射量を増量補正する方法は、燃焼騒音が問題となる運転域や燃焼開始時のシリンダ内雰囲気温度を上昇させたい領域でパイロット噴射を行っているエンジンを対象とする場合である(後者について特願平11−49824号参照)。したがって、もともとパイロット噴射を行っていないエンジンを対象とする場合には、パイロット噴射を行うことにより未燃のままエンジンアウトに排出させることによって、排気中のHC濃度を増加させればよい。
【0179】図60は排気流量の減量補正を行うフローである。ステップ1でHC濃度増加フラグF Redをみて、F Red=1の場合には、ステップ2で指令開度VNTstep、目標排気絞り弁開度ESsを読み込み、これら目標値と各目標値に対応する補正値(一定値)を用いて、ステップ3において、
【0180】
【数20】VNTstep=VNTstep−C VNT、ESs=ESs−C ES、ただし、C VNT:指令開度補正値、C ES:排気絞り弁開度補正値、の式により各々の目標値を補正する(指令開度を小さくして過給圧を下げる、排気絞り弁開度を小さくして排気を絞る)。これら2つの補正によって、排気流量が減少する。なお、2つの補正方法は単に羅列したもので、排気絞り弁が設けられていない場合には指令開度の減量補正だけを実施すればい。排気絞り弁(図示しない)は、排気通路の下流に設けられ、エンジンの暖機完了前に排気の流量を絞ることによって、エンジンの暖機を促すものである。
【0181】特にEGRを行う場合に、EGR量に応じて排気流量が変化し、触媒61を通過する排気の質量流量と触媒表面積の比であるSV比が大きく変化する。このSV比の変化により、図61に示したように触媒61の還元性能と触媒活性温度が変化するため、SV比を小さくしてやったほうがNOx還元率が高くなるのである。
【0182】ここで、小量の主噴射と主噴射時期の遅角補正によりHC濃度を増加させる場合で、本実施形態の作用を述べると、図52は図51と同じ運転条件のときの特性である。tbのタイミングで燃料カットが行われた従来装置と相違して、本実施形態では、減速時でありながら触媒61が活性温度域にあるあいだ(つまりtbからtdの区間)でHC濃度増加フラグF Red=1となり、減速時にも拘わらず小量の主噴射により燃料供給が行われ、さらに主噴射時期の遅角補正で燃焼が悪化する。これによって触媒61入口でのHC濃度が増加し、このHC濃度の変動により触媒61に吸蔵されているNOxが脱離還元され、触媒61のNOx吸蔵量が減少する。
【0183】これを、図48でみてみると、本実施形態によれば、白抜き矢印で示した領域がNOx還元のため新たに使われることになったわけである。
【0184】触媒61のNOx吸蔵量が限界に達したとき(再生時期)には、触媒61を活性温度に高めるとともに触媒61を流れる排気中のHC濃度を変動させて触媒61を再生する必要があるのであるが、本実施形態によれば、加速運転や定常運転からの減速時になるたびに触媒61が活性温度域にあればNOx吸蔵量が減らされるので、これによって触媒61の再生時期を遅らせることができ、運転性を悪化させる機会を減らすことができる。
【0185】また、本実施形態では減速時に小量の主噴射やパイロット噴射により燃料供給を行うので、その供給燃料の一部がシリンダ内で燃焼するときは、触媒ベッド温度の低下がそのぶん遅れ、これによって触媒61のNOx吸蔵量が一段と減らされることになる。
【0186】とはいえ、小量の主噴射による供給燃料の一部がシリンダ内で燃焼することによりトルクが発生するので、このトルクが大きいと、運転性に違和感が生じる。この場合、主噴射時期を遅角させることで、供給燃料の一部がシリンダ内で燃焼することによるトルクの発生を抑制することができる。したがって、本実施形態の主噴射時期の遅角補正量は、燃焼を悪化させてHC濃度を増やしたいという要求と減速時の燃料供給に伴って発生するエンジントルクを大きくしたくないという要求との2つから定めている。この結果、減速時に燃料カットを中止して小量の主噴射による燃料供給を行っていても、運転性に影響することはない。
【0187】また、HC吸着触媒62から脱離してくるHCによっても後段の触媒61に吸蔵されているNOxを還元できるので、二次的な燃料供給量を少なくできる。
【0188】なお、図51に示す従来装置では減速時(特に燃料カットリカバー時)に主噴射時期を進角させている。これは、低負荷における燃焼室内温度の低下で燃焼状態が悪くなり白煙が発生するので、これを避けるため、進角させて燃焼をよくしようというものである。
【0189】次に、図62は第2実施形態の波形図で、第1実施形態の図52に対応する。減速時かつ触媒61が活性温度域にある場合に、第1実施形態では小量の主噴射を行いつつ主噴射時期を一定値遅角補正したが、第2実施形態では、少量の主噴射を行いつつ主噴射時期を短い周期で遅角と進角を繰り返すようにしたもので、これによって排気中のHC濃度が増加と減少を繰り返す。これは、図63に示したようにHC濃度を一律に増加させる場合より、HC濃度を増減させた場合のほうがNOx還元率が良くなることに着目したもので、この第2実施形態によれば、減速時かつ触媒61が活性温度域にある場合に、触媒61のNOx吸蔵量をさらに減少させることができる。
【0190】なお、主噴射時期を短い周期で遅角と進角を繰り返す方法は周知なので図示しない。
【0191】実施形態では、コモンレール式燃料噴射装置を用いた場合で説明したが、これに限定されるものでない。たとえばユニットインジェクタを用いる場合にも適用可能である。
【0192】実施形態ではディーゼルエンジンを対象としてHC変動型NOx還元触媒を設けた場合で説明したが、ガソリンエンジンを対象としてλ変動型NOx還元触媒を設けた場合に対しても適用できる。このものでは、減速時かつλ変動型NOx還元触媒が活性温度域にある場合に、λ変動型NOx還元触媒に流入する排気の空燃比をリッチ(理論空燃比を含む)化してやることで、触媒に吸蔵されているNOxが脱離還元されることになり、触媒のNOx吸蔵量が減少する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の制御システム図。
【図2】コモンレール式燃料噴射装置のシステム図。
【図3】EGR制御システム図。
【図4】可変ノズルアクチュエータに与える指令開度の演算を説明するためのフローチャート。
【図5】基本過給圧の特性図。
【図6】大気圧補正値の特性図。
【図7】基本開度の特性図。
【図8】大気圧補正値の特性図。
【図9】EGR制御システムのブロック図。
【図10】モデル規範制御におけるパラメータの演算順を示すフローチャート。
【図11】サイクル処理を説明するためのフローチャート。
【図12】シリンダ吸入新気量の演算を説明するためのフローチャート。
【図13】シリンダ吸入EGR量の演算を説明するためのフローチャート。
【図14】体積効率相当値の演算を説明するためのフローチャート。
【図15】空気密度の特性図。
【図16】吸気圧の演算を説明するためのフローチャート。
【図17】センサ出力電圧に対する圧力の特性図。
【図18】吸気温度の演算を説明するためのフローチャート。
【図19】吸気温度の車速補正値の特性図。
【図20】吸気温度の吸気量補正値の特性図。
【図21】シリンダ吸入ガス温度の演算を説明するためのフローチャート。
【図22】燃料噴射量の演算を説明するためのフローチャート。
【図23】基本燃料噴射量の特性図。
【図24】最大噴射量の特性図。
【図25】排気温度の演算を説明するためのフローチャート。
【図26】排気温度基本値の特性図。
【図27】吸気温度補正係数の特性図。
【図28】排気圧補正係数の特性図。
【図29】スワール補正係数の特性図。
【図30】ノズル開度補正係数の特性図。
【図31】ノズル有効面積相当値の演算を説明するためのフローチャート。
【図32】摩擦損失の特性図。
【図33】ノズル損失の特性図。
【図34】排気圧の演算を説明するためのフローチャート。
【図35】排気圧の実測値と予測値の相関を調べた特性図。
【図36】EGR流量の演算を説明するためのフローチャート。
【図37】EGR弁開口面積相当値の特性図。
【図38】目標EGR率の演算を説明するためのフローチャート。
【図39】目標EGR率基本値の特性図。
【図40】目標EGR率補正値の特性図。
【図41】要求EGR量の演算を説明するためのフローチャート。
【図42】指令EGR弁リフト量の演算を説明するためのフローチャート。
【図43】EGR弁目標リフト量の特性図。
【図44】触媒の概略構成図。
【図45】触媒61入口のHC濃度をステップ的に大きくしたときの触媒61出口におけるNOx濃度の変化波形図。
【図46】2つの酸素濃度条件におけるHC濃度変動によるNOx低減率を示す表図。
【図47】2つの触媒61、62の機能と材料例を示す表図。
【図48】10・15モードでの排気温度とHC/NOx比に対する走行頻度の特性図。
【図49】排気温度、HC/NOx比に対する触媒61のNOx還元率の特性図。
【図50】排気温度に対する触媒62のHC吸着率、HC脱離率の特性図。
【図51】従来装置の作用を示す波形図。
【図52】第1実施形態の作用を示す波形図。
【図53】触媒入口排気温度の演算を説明するためのフローチャート。
【図54】温度降下係数の特性図。
【図55】温度降下係数の特性図。
【図56】触媒ベッド温度の演算を説明するためのフローチャート。
【図57】減速判定を説明するためのフローチャート。
【図58】HC濃度増加判定を説明するためのフローチャート。
【図59】HC濃度増加処理を説明するためのフローチャート。
【図60】排気流量減量補正を説明するためのフローチャート。
【図61】SV比を変化させたときのNOx転換率の特性図。
【図62】第2実施形態の作用を示す波形図。
【図63】HC濃度を増減させた場合のNOx還元率の特性図。
【図64】第1の発明のクレーム対応図。
【図65】第23の発明のクレーム対応図。
【符号の説明】
1 触媒
2 可変容量ターボチャージャ
2d 可変ノズル
17 燃料噴射弁
41 コントロールユニット
61 HC変動型NOx還元触媒
62 HC吸着触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】HC変動型NOx還元触媒と、減速時かつ前記触媒が活性温度域にあるかどうかを判定する手段と、この判定結果より減速時かつ前記触媒が活性温度域にある場合に、前記触媒に流入する排気中のHC濃度に変動を与える手段とを備えることを特徴とするディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項2】前記触媒が活性温度域にあるかどうかを触媒ベッド温度に基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項3】前記触媒の入口排気温度の1次遅れで前記触媒ベッド温度を演算することを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項4】前記HC濃度に変動を与える手段は前記HC濃度を増加する手段であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項5】主噴射を実行する手段と、運転条件に応じて主噴射時期を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記主噴射時期を遅角補正する手段であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項6】主噴射を実行する手段と、運転条件に応じてEGR率を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記EGR率を増加補正する手段であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項7】主噴射を実行する手段と、運転条件に応じて吸気絞り弁開度を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記吸気絞り弁開度を、吸気を絞る側に補正する手段であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項8】主噴射を実行する手段と、運転条件に応じてスワール強度を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記スワール強度を減少補正する手段であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項9】主噴射を実行する手段と、運転条件に応じて燃料噴射圧力を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記主噴射実行手段により小量の主噴射を行いつつ前記燃料噴射圧力を減少補正する手段であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項10】パイロット噴射を実行する手段と、運転条件に応じてパイロット噴射時期を制御する手段を備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記パイロット噴射実行手段によりパイロット噴射を行いつつ前記パイロット噴射時期を進角補正する手段であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項11】運転条件に応じてパイロット噴射量を演算する手段と、このパイロット噴射量の燃料をパイロット噴射する手段とを備え、前記HC濃度を増加する手段が、前記パイロット噴射量を増加補正する手段であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項12】前記小量の主噴射によってエンジンにトルクが発生する場合に、前記主噴射時期をさらに遅角補正することを特徴とする請求項5に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項13】運転条件に応じて主噴射時期を制御する手段を備え、前記小量の主噴射によってエンジンにトルクが発生する場合に、前記主噴射時期を遅角補正することを特徴とする請求項6に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項14】前記HC濃度に変動を与える手段は、前記HC濃度を増減する手段であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項15】前記HC濃度に変動を与える際に排気流量を減少させることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項16】可変ノズル開度により過給圧を制御可能なターボチャージャと、運転条件に応じた前記可変ノズル開度により過給圧を制御する手段とを備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記可変ノズル開度を、過給圧が低下する側に補正する手段であることを特徴とする請求項15に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項17】運転条件に応じて排気絞り弁開度を制御する手段を備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記排気絞り開度を、排気を絞る側に補正する手段であることを特徴とする請求項15に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項18】運転条件に応じてEGR率を制御する手段を備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記EGR率を増加補正する手段であることを特徴とする請求項15に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項19】運転条件に応じて吸気絞り弁開度を制御する手段を備え、前記排気流量を減少させる手段が、前記吸気絞り弁開度を、吸気を絞る側に補正する手段であることを特徴とする請求項15に記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項20】前記触媒の上流にHC吸着触媒を備えることを特徴とする請求項1から19までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジンの制御装置。
【請求項21】λ変動型NOx還元触媒と、減速時かつ前記触媒が活性温度域にあるかどうかを判定する手段と、この判定結果より減速時かつ前記触媒が活性温度域にある場合に、前記λ変動型触媒に流入する排気の空燃比をリッチ化する手段とを備えることを特徴とするガソリンエンジンの制御装置。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図17】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図15】
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【図19】
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【図23】
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【図24】
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【図4】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図21】
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【図22】
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【図26】
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【図28】
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【図9】
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【図14】
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【図18】
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【図25】
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【図27】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図46】
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【図44】
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【図45】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図53】
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【図51】
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【図52】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図64】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図65】
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【公開番号】特開2000−356155(P2000−356155A)
【公開日】平成12年12月26日(2000.12.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−168496
【出願日】平成11年6月15日(1999.6.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】