説明

半導体装置の製造方法

【課題】ポリシリコンゲート電極の意図しないフルシリサイド化を防止する。
【解決手段】基板17上に、ゲート絶縁膜12およびシリコン層10をこの順に積層した積層体(10、12)を形成する工程と、積層体(10、12)の側壁沿いにSiN膜を有するオフセットスペーサ13を形成する工程と、その後、シリコン層10の上面を、薬液を用いて洗浄する工程と、その後、少なくともシリコン層10の上面を覆う金属膜19を形成する工程と、その後、加熱する工程と、を有し、オフセットスペーサ13が有するSiN膜は、ALD法を用いて450℃以上で成膜されたSiN膜、または、1Gpa以上の引張/圧縮応力を有するSiN膜であり、前記薬液は、重量比率で、HF/HO=1/100以上であるDHF、または、バッファードフッ酸である半導体装置の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンゲート電極表面をシリサイド化した半導体装置がある。シリサイドは、通常、シリコン表面に金属層(例:Ni層)を形成した後、加熱して金属とシリコンを反応させることによって形成される。
【0003】
なお、本発明に関連する技術としては、特許文献1に、オフセットスペーサとしてHfSiON膜を形成する半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−171910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微細なシリコンゲート電極になるほど、シリコンとその表面に形成された金属とが反応しやすくなり、シリコン全体がシリサイド化する現象(フルシリサイド化)が起きやすくなる。
【0006】
シリサイドはミッドギャップ金属であるため、例えばサリサイドゲートで部分的にでもフルシリサイド化が生じると、トランジスタのしきい値電圧は変動し(多くの場合、絶対値が大きい方にずれる)、所望のトランジスタ特性が得られなくなる。また、High−k/仕事関数制御金属薄膜/シリコンゲート、からなるMIPS(Metal Inserted Poly−Si Stack)構造のような場合でも、部分的なフルシリサイド化はトランジスタのしきい値電圧を所望の値から変化させる。さらに、Niシリサイド層をe−fuseとして使うようなケースでは、部分的なフルシリサイド化によってe−fuseのカット電圧が高くなり、より多くの電流が必要になるなど、ばらつきの原因になる。
【0007】
ここで、本発明者は、次のような要因によっても、シリコンゲート電極のフルシリサイド化が起きやすくなることを発見した。以下、本発明者が想定したシリコンゲート電極のシリサイド化の処理の流れを用いて説明する。
【0008】
まず、図7(a)に示すように、シリコン基板107上にゲート絶縁膜102、メタルゲート電極101、ポリシリコンゲート電極100からなる積層体と、その側壁沿いに形成されるオフセットスペーサ(SiN)103およびサイドウォールスペーサ104とを形成するとともに、シリコン基板107中にエクステンション注入領域105およびソースドレイン領域106を形成する。
【0009】
その後、シリサイド形成前(Niスパッタ直前)の前処理として、WET処理を行う。すなわち、薬液を用いて、基板107のソースドレイン領域106が形成された表面、および、ポリシリコンゲート電極100の露出面(上面)を洗浄し、酸化膜を除去する。この酸化膜は、例えば、ゲート電極加工後のAsher処理などで形成されている。
【0010】
ここで、上述のWET処理は、例えばDHF(HF:HO=1:300程度)などを用いて行われるが、このWET処理により、ポリシリコンゲート電極100の側壁に形成されたオフセットスペーサ(SiN)103やサイドウォールスペーサ104の一部が除去されてしまう。図7(b)は、WET処理後の状態のイメージを示してある。このように、オフセットスペーサ(SiN)103やサイドウォールスペーサ104の一部が除去され、これらの高さが低くなると、ポリシリコンゲート電極100の側壁が露出してしまう。
【0011】
このような状態(図7(b)参照)で、シリサイド化のため、ソースドレイン領域106が形成された基板107の表面、および、ポリシリコンゲート電極100の露出面(上面)を覆う金属膜(例:Ni膜)をスパッタ法などにより形成すると、図7(c)に示すように、ポリシリコンゲート電極100の側壁の露出面にも金属膜が接することとなる。かかる状態で、RTA(Rapid Thermal Annealing)法などを用いて加熱しシリサイド化を行うと、図7(d)に示すように、ポリシリコンゲート電極100の上面のみならず、側面からも、金属とシリコンの反応が進行していく。すなわち、ポリシリコンゲート電極100の側壁からも金属がポリシリコンゲート電極100中に流入し、余剰な金属が比較的短いゲート長のポリシリコンゲート電極100内をかなり深いところまで拡散して、場合によってはフルシリサイド化してしまう。このフルシリサイド化は制御された状態ではなくウエハ面内などでばらつく。すなわち、ゲートシリサイド膜厚がばらつくので、例えばトランジスタのしきい値電圧が所望の値(設計値)からずれたり、e−fuseカットにおけるカット電圧や抵抗ばらつき増加を引き起こすなどの問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、基板上に、ゲート絶縁膜およびシリコン層をこの順に積層した積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体の側壁沿いにSiN膜を有するオフセットスペーサを形成するオフセットスペーサ形成工程と、前記オフセットスペーサ形成工程の後、前記シリコン層が露出している前記積層体の上面を、薬液を用いて洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程の後、少なくとも前記積層体の前記上面を覆う金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記金属膜形成工程の後、加熱するシリサイド化工程と、を有し、前記オフセットスペーサ形成工程で形成される前記SiN膜は、ALD法を用いて450℃以上で成膜されたSiN膜、または、1Gpa以上の引張/圧縮応力を有するSiN膜であり、前記洗浄工程で利用される前記薬液は、重量比率で、HF/HO=1/100以上であるDHF、または、バッファードフッ酸である半導体装置の製造方法が提供される。
【0013】
本発明では、オフセットスペーサの構成および洗浄工程に使用する薬液の種類を適当に選択しているので、シリサイド化の前処理として行う酸化膜除去処理において、シリコン層の側壁に形成されたオフセットスペーサが除去される量を抑制することができる。すなわち、洗浄工程後のシリコン層側壁の露出量を抑制することができる。その結果、その後シリサイド化のためにシリコン層の上に形成される金属膜と、シリコン層の側壁と、の接触量を抑制することができる。
【0014】
このため、金属膜形成後のシリサイド化の際、シリコン層の側壁から金属が流入するのを抑制することができるので、金属は、主として、シリコン層の上面から流入することとなる。
【0015】
かかる場合、単位時間当たりの金属の流入量を抑制することができるので、フルシリサイド化を効果的に回避することができる。また、シリサイド化工程後のシリサイドの膜厚は、主として、シリコン層の上面の上に形成された金属膜の膜厚に起因することとなる。すなわち、金属膜の膜厚および膜厚のばらつきを制御することで、シリサイドの膜厚および膜厚のばらつきを制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポリシリコンゲート電極の意図しないフルシリサイド化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1の半導体装置の製造方法の一例の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図2】実施形態2の半導体装置の製造方法の一例の製造工程を模式的に示した断面図である。
【図3】各種膜のウェットエッチングレート選択比を示す表である。
【図4】本発明の効果を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の効果を説明するためのグラフである。
【図6】本発明の効果を説明するためのグラフである。
【図7】半導体装置の製造方法の参考例の製造工程を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
<実施形態1>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、積層体形成工程と、オフセットスペーサ形成工程と、洗浄工程と、金属膜形成工程と、シリサイド化工程と、を有する。
【0020】
積層体形成工程では、図1(a)に示すようなゲート絶縁膜12およびシリコン層10をこの順に積層した積層体(10、12)を、基板17上に形成する。
【0021】
例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法やLOCOS(Local Oxidation Of Silicon)法などを用いて基板17に素子分離18を形成した後、素子分離18で閉じられた領域に必要に応じてイオン注入してウェルを形成後、基板17の表面に、熱酸化法などを用いてゲート絶縁膜12となる酸化膜を形成する。その後、この酸化膜の上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いてポリシリコン層を形成し、フォトリソグラフィとエッチングにより、絶縁膜およびポリシリコン層を部分的に除去することで、図1(a)に示すような積層体(10、12)を形成する。
【0022】
基板17は、特段制限されず、Si基板、SiGe基板、Ge基板、SOI(Silicon on Insulator)基板などであってもよい。ゲート絶縁膜12は、High−k絶縁膜であってもよい。シリコン層10は、ポリシリコン層、または、アモルファスシリコン層であってもよい。
【0023】
なお、本実施形態の積層体形成工程は、ゲート絶縁膜12、仕事関数制御層(図示せず)、および、シリコン層10をこの順に積層した積層体を形成する工程であってもよい。仕事関数制御層は、例えば、N型半導体装置の場合はTaSiN、TaSi、TaSi、などを含み、P型半導体装置の場合はRu、Pt、Irなどを含んでもよい。このような積層体の形成方法は、上述の積層体(10、12)の形成方法に準じて実現することができる。
【0024】
オフセットスペーサ形成工程は、積層体形成工程の後に行われ、図1(a)に示すようなオフセットスペーサ13を、積層体(10、12)の側壁沿いに形成する。このオフセットスペーサ13は、SiN膜を有する。例えば、オフセットスペーサ13は、SiN膜で構成されてもよい。または、オフセットスペーサ13は、積層体(10、12)に接するSiN膜と、このSiN膜の周囲を覆うSiN膜とは種類の異なる1つ以上の膜と、からなる積層構造であってもよい。
【0025】
このオフセットスペーサ13が有するSiN膜は、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて450℃以上で成膜されたSiN膜、または、1Gpa以上の引張/圧縮応力を有するSiN膜である。1Gpa以上の引張/圧縮応力を有するSiN膜は、例えば100mTorr以下の真空度で基板温度を450℃とするプラズマCVD法により成膜することができる。原料ガスとしてはトリメチルシランなどが例示される。
【0026】
オフセットスペーサ形成工程では、例えば、上述のようなSiN膜を、積層体(10、12)を覆うように基板17上に形成した後、異方性エッチングにより、積層体(10、12)の側壁沿いのSiN膜を残し、積層体(10、12)の上面および基板17上のSiN膜を除去することで、図1(a)に示すようなオフセットスペーサ13を形成する。
【0027】
その後、エクステンション注入領域15、サイドウォールスペーサ14、ソースドレイン領域16を形成する。例えば、積層体(10、12)およびオフセットスペーサ13をマスクとして基板17に所定のイオンを注入してエクステンション注入領域15を形成する。次いで絶縁膜を形成し、この絶縁膜をエッチングすることにより、サイドウォールスペーサ14を形成する。その後、積層体(10、12)およびオフセットスペーサ13およびサイドウォールスペーサ14をマスクとして、基板17に所定のイオンを注入して、ソースドレイン領域16を形成する。なお、本実施形態においては、エクステンション注入領域15、サイドウォールスペーサ14、ソースドレイン領域16の形成方法および原料は特段制限されない。
【0028】
以上の工程により、図1(a)に示すような構造を得ることができる。
【0029】
洗浄工程は、オフセットスペーサ形成工程の後、すなわち図1(a)に示すような構造が得られた後に行われ、シリコン層10が露出している積層体(10、12)の上面を、薬液を用いて洗浄する。なお、この処理と同一処理により、ソースドレイン領域16が形成された基板17の表面を洗浄してもよい。洗浄工程における洗浄は、洗浄対象面に形成された酸化膜を除去することを目的とする。この酸化膜は、例えば、積層体形成工程におけるフォトリソグラフィとエッチング処理後のAsher処理などで形成される。
【0030】
本実施形態の洗浄工程において利用する薬液は、重量比率で、HF/HO=1/100以上であるDHF(Diluted HF)、または、バッファードフッ酸(BHF)である。以下、HF/HO=1/100のDHFを、DHF(1/100)と表し、他の濃度のDHFもこれと同様にして表す。
【0031】
ここで、図3に、原料および製造方法が異なる複数の膜種の熱SiO膜に対するウェットエッチングレート選択比を示す。熱SiO膜は、熱酸化により形成されたSiO膜のことである。このウェットエッチングレート選択比は、値が1の場合は熱SiO膜と同じエッチングレートであり、1未満の場合は熱SiO膜よりもエッチングレートが遅いことを意味する。表中の「ALD−SiN(温度)」は、ALD法を用いてカッコ内の温度で成膜されたSiN膜を意味する。「(応力状態)−Plasma−SiN(応力値)」は、プラズマCVD法を用いて成膜された、カッコ内の応力値を有するSiN膜を意味する。このエッチングレートは、測定対象膜を成膜したウエハ上にパターニングしたレジストを形成した表面に対し、ウェットエッチングを行った後に、レジストを除去して段差測定することにより測定した。
【0032】
図3に示すように、本実施形態の薬液(DHF(1/100)、DHF(1/50)、BHF)を用いて行うエッチングによれば、除去対象の熱SiOに対する、本実施形態のオフセットスペーサ13が有するSiN膜(ALD−SiN(450℃)、Tensile−Plasma−SiN(>1Gpa)、Compressive−Plasma−SiN(<−1Gpa))の選択比を、他の膜種に比べて小さくすることができる。すなわち、洗浄工程において酸化膜を除去する際、オフセットスペーサ13が除去されるのを抑制することができる。その結果、図1(b)に示すように、洗浄工程後におけるシリコン層10の側壁の露出を抑制することができる。
【0033】
金属膜形成工程は、洗浄工程の後に行われ、図1(c)に示すように、少なくとも積層体(10、12)の上面を覆う金属膜19を形成する。例えば、スパッタ法を用いて、10nm程度の厚さの金属膜19を形成してもよい。金属膜19は、図1(c)に示すように、ソースドレイン領域16が形成された基板17の表面をも覆うように形成されてもよい。金属膜の種類としては特段制限されず、例えば、Ni、Ti、Co、Ta、W、Ptなどを1種類以上有する膜であってもよい。
【0034】
なお、本実施形態の場合、洗浄工程に起因するシリコン層10の側壁の露出を抑制することができるので、金属膜形成工程において形成した金属膜19がシリコン層10の側壁と接触することを抑制することができる。
【0035】
シリサイド化工程は、金属膜形成工程の後に行われ、図1(c)に示すような状態の基板17を加熱することで、シリサイド化を行う。例えば、RTA法を用いて、350℃で30秒程度の加熱を行う。すると、シリコン層10と金属膜19の接触部分から、金属がシリコン層10中に流入し拡散していく。本実施形態の場合、シリコン層10の側壁における金属膜19の接触を抑制しているので、主に、シリコン層10の上面から金属が流入し、拡散していくこととなる。すなわち、フルシリサイド化を効果的に防止し、図1(d)に示すようなシリコン層10の上方の一部がシリサイド20となった構造を得ることができる。
【0036】
この後、シリサイド化後も残存している金属膜19を除去することで、図1(e)に示す状態が得られる。例えば、金属膜19としてNi膜を形成した場合には、硫酸過水(重量比で、硫酸/過水=2〜4程度)を用いてウェットエッチングすることで実現してもよい。
【0037】
以降、周知の技術を利用して、層間絶縁膜、コンタクト、配線など(いずれも図示せず)を形成する。
【0038】
このような本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、シリサイド化の前処理として行う酸化膜除去処理において、シリコン層10の側壁に形成されたオフセットスペーサ13が除去される量を抑制することができる。すなわち、シリサイド化の前処理(酸化膜除去処理)に起因するシリコン層10の側壁の露出量を抑制することができる。その結果、シリコン層10の側壁における、シリサイド化のために形成される金属膜との接触量を抑制することができる。
【0039】
このため、その後のシリサイド化の際、シリコン層10の側壁から金属が流入するのを抑制することができるので、金属は、主として、シリコン層10の上面から流入することとなる。
【0040】
このように金属とシリコン層10との接触量を抑制することにより、単位時間当たりの金属の流入量を抑制することができるので、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、フルシリサイド化を効果的に回避することができる。また、シリサイド化工程後のシリサイド20の膜厚(基板17に垂直方向のシリサイド20の厚さ)は、主として、シリコン層10の上面の上に形成された金属膜19の膜厚に起因することとなる。すなわち、金属膜19の膜厚および膜厚のばらつきを制御することで、シリサイド20の膜厚および膜厚のばらつきを制御することが可能となる。
【0041】
<実施形態2>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、実施形態1を基本とし、(1)オフセットスペーサ形成工程の後、かつ、洗浄工程の前に、積層体(10、12)の側壁沿いに形成されたオフセットスペーサ13の周囲を覆う、NSG膜からなるサイドウォールスペーサ14を形成する工程を有する点、(2)洗浄工程で利用される薬液はBHFである点、が異なる。
【0042】
本実施形態のサイドウォールスペーサ14を形成する手段としては、例えば、CVD法を用いて、積層体(10、12)およびオフセットスペーサ13を覆うNSG膜を基板17上に形成後、異方性エッチングにより、NSG膜を部分的に除去することで、形成してもよい。
【0043】
ここで、図3に、原料および製造方法が異なる複数の膜種の熱SiO膜に対するウェットエッチングレート選択比を示す。この表に示すNSG膜のウェットエッチングレート選択比を参照してみれば、薬液としてBHFを選択した場合、他の薬液に比べて、対熱SiO選択比を大幅に低減できることがわかる。すなわち、洗浄工程において酸化膜を除去する際、サイドウォールスペーサ14が除去されるのを抑制することができる。その結果、図2(a)に示すように、洗浄工程後におけるシリコン層10の側壁を、オフセットスペーサ13およびサイドウォールスペーサ14で厚く覆うことが可能となる。
【0044】
その後、図2(b)〜図2(d)に示すように、実施形態1と同様の処理を行う。
【0045】
このような本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、洗浄工程においてサイドウォールスペーサ14が除去される量を抑制することができるので、洗浄工程におけるオフセットスペーサ13と薬液の接触を抑制することができる。その結果、洗浄工程においてオフセットスペーサ13が除去される量を抑制することができ、結果、シリコン層10の側壁の露出量をさらに抑制することが可能となる。
【0046】
また、シリコン層10の側壁を、オフセットスペーサ13およびサイドウォールスペーサ14で厚く覆うことができるので、その上に形成された金属膜19(図2(b)参照)からシリコン層10までの距離を大きくすることができる。
【0047】
以上より、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、実施形態1に比べて、シリサイド化工程におけるシリコン層10の側壁からの金属の流入をより効果的に抑制することが可能となり、結果、フルシリサイド化の回避およびシリサイドの膜厚ばらつきの改善を効果的に実現することができる。
【0048】
<実施例>
<実施例1>
実施形態1の半導体装置の製造方法を利用して、半導体装置を製造した。
【0049】
なお、オフセットスペーサとしては、ALD法を用いて450℃でSiN膜を成膜した。また、サイドウォールスペーサとしては、CVD法を用いて400℃でNSG膜を成膜した。オフセットスペーサおよびサイドウォールスペーサは、最上部の高さが、積層体のシリコン層の最上部の高さと略同一になるように形成した。洗浄工程で使用する薬液としては、DHF(1/100)を用いた。洗浄工程におけるエッチング量としては、熱SiO膜の膜厚が2.5nm程度であったので、100%のオーバーエッチング、すなわち5nm相当の酸化膜エッチングを行う設定とした。さらに、金属膜としては、スパッタ法を用いてNi膜を10nmの膜厚で形成した。シリサイド化は、RTA法を用いて350℃で30秒間加熱した。
【0050】
洗浄工程後に、積層体のシリコン層の上面からオフセットスペーサの最上部までの距離を測定すると、約3nm程度であった。また、積層体のシリコン層の上面からサイドウォールスペーサの最上部までの距離は約20nm程度であった。
【0051】
また、積層体のシリコン層に形成されたシリサイドの膜厚を、STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)を用いた断面観察で測定したところ、平均膜厚は25nm、ばらつき(最大膜厚−最小膜厚)は10nm程度であった。なお、ここでの膜厚とは、基板に垂直方向のシリサイドの厚さのことである。
【0052】
<実施例2>
実施形態2の半導体装置の製造方法を利用して、半導体装置を製造した。
【0053】
なお、実施例1との相違点は、洗浄工程で使用する薬液が、BHFである点のみである。
【0054】
洗浄工程後に、積層体のシリコン層の上面からオフセットスペーサの最上部までの距離を測定すると、約2nm程度であった。また、積層体のシリコン層の上面からサイドウォールスペーサの最上部までの距離は約6.5nm程度であった。
【0055】
また、積層体のシリコン層に形成されたシリサイドの膜厚を、STEMを用いた断面観察で測定したところ、平均膜厚は22nm、ばらつき(最大膜厚−最小膜厚)は3nm程度であった。
【0056】
<比較例1>
実施例1を基本とし、オフセットスペーサとしてALD法を用いて400℃でSiN膜を成膜した点、洗浄工程で使用する薬液としてDHF(1/300)を用いた点、が異なる。
【0057】
洗浄工程後に、積層体のシリコン層の上面からオフセットスペーサの最上部までの距離を測定すると、10nm以上であった。また、積層体のシリコン層の上面からサイドウォールスペーサの最上部までの距離は約30nm程度であった。
【0058】
また、積層体のシリコン層に形成されたシリサイドの膜厚を、STEMを用いた断面観察で測定したところ、平均膜厚は400nm、ばらつき(最大膜厚−最小膜厚)は20nm程度であった。
【0059】
以上の結果より、実施形態1の半導体装置の製造方法によれば、シリサイド化前の前処理(酸化膜の除去)により、オフセットスペーサが除去される量を抑制できることが分かる。また、実施形態2の半導体装置の製造方法によれば、シリサイド化前の前処理(酸化膜の除去)により、オフセットスペーサおよびサイドウォールスペーサが除去される量を抑制できることが分かる。
【0060】
さらに、実施形態1および実施形態2の半導体装置の製造方法によれば、ポリシリコン層に形成されたシリサイドの膜厚のばらつき、および、シリサイド化の進行を抑制できることが分かる。
【0061】
なお、実施例1、2および比較例1のe−fuse素子のカット電圧、および、抵抗ばらつきを比較したところいずれにおいても、実施例1、2の方が、比較例1に比べて1桁以上のばらつき改善が見られた。
【0062】
ここで、図4乃至6に、オフセットスペーサの膜種、および、洗浄工程で使用する薬液の種類を変化させて、上記と同様の測定を行った結果を示す。
【0063】
これらの結果からも、本発明の半導体装置の製造方法によれば、ポリシリコン層に形成されたシリサイドの膜厚のばらつき、および、シリサイド化の進行を抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0064】
10 シリコン層
12 ゲート絶縁膜
13 オフセットスペーサ
14 サイドウォールスペーサ
15 エクステンション注入領域
16 ソースドレイン領域
17 基板
18 素子分離
19 金属膜
20 シリサイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、ゲート絶縁膜およびシリコン層をこの順に積層した積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体の側壁沿いにSiN膜を有するオフセットスペーサを形成するオフセットスペーサ形成工程と、
前記オフセットスペーサ形成工程の後、前記シリコン層が露出している前記積層体の上面を、薬液を用いて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後、少なくとも前記積層体の前記上面を覆う金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜形成工程の後、加熱するシリサイド化工程と、
を有し、
前記オフセットスペーサ形成工程で形成される前記SiN膜は、ALD法を用いて450℃以上で成膜されたSiN膜、または、1Gpa以上の引張/圧縮応力を有するSiN膜であり、
前記洗浄工程で利用される前記薬液は、重量比率で、HF/HO=1/100以上であるDHF、または、バッファードフッ酸である半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記オフセットスペーサ形成工程の後、かつ、前記洗浄工程の前に、前記積層体の側壁沿いに形成された前記オフセットスペーサの周囲を覆う、NSG膜からなるサイドウォールスペーサを形成する工程を有し、
前記洗浄工程で利用される前記薬液は、バッファードフッ酸である半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187498(P2011−187498A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48206(P2010−48206)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】