説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】微細化されても、pチャネルトランジスタのチャネル領域には圧縮歪を、nチャネルトランジスタのチャネル領域には引っ張り歪をそれぞれ効果的に印加できる新しい歪技術を提供する。
【解決手段】pチャネルトランジスタ105のゲート電極は、引っ張り内部応力を持つpチャネルメタル電極110を有する。nチャネルトランジスタ106のゲート電極は、圧縮内部応力を持つnチャネルメタル電極116を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、詳細には、高誘電率ゲート絶縁膜を有するゲート電極構造を備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相補型MOS(CMOS:complementary metal oxide semiconductor )デバイスでは、NMOSとPMOSの2種類のトランジスタが用いられている。ここで、NMOSトランジスタでは電子の移動によって電流のオン/オフの制御が行われ、PMOSトランジスタでは正孔の移動によって電流のオン/オフの制御が行われる。
【0003】
トランジスタのオン時にチャネルに流れるオン電流の大きさIdmaxは次式のように表現される。
【0004】
Idmax=(1/2)・μ・(W/L)・Cox・(Vg −Vth)2 ・・・(式1)
ここで、μはチャネルとなる反転層におけるキャリアの移動度、Wはトランジスタのゲート幅、Lはトランジスタのゲート長さ、Coxはゲート絶縁膜の容量(以下、ゲート容量と称する)、Vg はゲート電圧、Vthは閾値電圧である。
【0005】
前記(式1)から、より高速化するためには、つまり、より大きなオン電流を得るためには、μ、W、Cox又は(Vg −Vth)を増大させるか、又はLを縮小させることが必要であることがわかる。従来、半導体装置の高速化はLの縮小、つまり、トランジスタ形状の微細化によって進められてきた。しかし、近年、リソグラフィー技術の進歩が止まりつつあり、微細化によってトランジスタのオン電流を向上させるのではなく、μ又はCoxを増大させる技術が進化している。
【0006】
Coxは、後記(式2)で表され、Coxを増大させるためには、ゲート絶縁膜の比誘電率εr を増大させるか、又はゲート絶縁膜の物理膜厚Toxを縮小させることが必要である。すなわち、以上に述べた要因のうちゲート絶縁膜に関わる要因は、比誘電率εr の増大、及びゲート絶縁膜の物理膜厚Toxの縮小である。そこで、従来、オン電流向上を目指して、ゲート絶縁膜の物理膜厚(酸化膜厚)Toxの極薄化等が試みられてきた。
【0007】
Cox=ε0 ・εr ・(S/Tox)・・・(式2)
尚、(式2)において、ε0 は真空の誘電率であり、Sはゲート面積である。
【0008】
従来、CMOSデバイスのゲート絶縁膜としては一般的にシリコン酸化膜(比誘電率は3.9程度)が用いられてきた。しかし、トランジスタの微細化に伴い、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜が薄膜化されると、リーク電流が増大し、高い消費電力及び待機電力を持つデバイスとなる。そこで、4.0以上の比誘電率を持つゲート絶縁膜(つまり高誘電率ゲート絶縁膜)を用いることによって、実際の膜厚をシリコン酸化膜よりも厚くしながらも、実効的な膜厚(EOT:equivalent oxide thickness)を薄膜化すること、つまりHigh-kゲート絶縁膜技術の開発が進んでいる。
【0009】
しかしながら、従来のポリシリコンゲート電極とHigh-kゲート絶縁膜とを組み合わせただけでは、ゲート電極の空乏化と呼ばれる現象により、High-kゲート絶縁膜とポリシリコンゲート電極との間に空乏層容量が形成されてしまい、その結果、EOTが薄いというHigh-kゲート絶縁膜の利点が失われてしまう。すなわち、ゲート電極の空乏化を防ぐためには、High-kゲート絶縁膜と金属ゲート電極との組み合わせが必須であり、High-kゲート絶縁膜/金属ゲート電極の積層体による適正な閾値電圧(Vt)の制御がCMOSデバイスを構築する上で重要な課題となっている。
【0010】
従来のシリコン酸化膜ゲート絶縁膜/ポリシリコンゲート電極では、ポリシリコン中にホウ素やリンなどの不純物をイオン注入し、熱処理によって活性化することにより、ポリシリコンの仕事関数をノンドープ状態の4.65eVから、例えばホウ素をイオン注入した場合には5.15eVまで向上させることができ、それによってNMOS及びPMOSのそれぞれのVtの制御が可能となった。しかし、High-kゲート絶縁膜を用いると、High-kゲート絶縁膜中に存在する高密度のトラップによりフェルミレベルが固定されてしまうというフェルミレベルピニング現象が起こるため、イオン注入によるドーピングレベルでは仕事関数を変化させることができなくなった。すなわち、イオン注入による閾値電圧の制御は不可能となった。また、金属ゲート電極とポリシリコンゲート電極とを組み合わせたMIPS(Metal-Inserted-Poly-Si Stack)と呼ばれる構造においても、イオン注入による仕事関数の調整は難しい。従って、High-kゲート絶縁膜/金属ゲート電極においては、ゲート電極に用いられる金属の仕事関数がVt制御に対して支配的になる。
【0011】
High-kゲート絶縁膜/金属ゲート電極における仕事関数の研究においては、金属ゲート電極材料として、チタン、タングステン、タンタル又はモリブデンの窒化物が用いられている。特に、DRAM(dynamic random access memory)電極材料として従来から用いられてきたチタンやタングステンの窒化物が、ドライエッチングやウェットエッチングなどの加工特性の点で金属ゲート電極材料として扱いやすく、実用化が進められている。
【0012】
ところで、前記(式1)中のμ(移動度)を増大させるために、近年、チャネル領域に歪を加えてトランジスタを高速化させる技術が報告されている。当該技術においては、まず、トランジスタのソース・ドレイン領域に歪みを生成するための歪み発生層を形成する。例えば、PMOSトランジスタにおいては、シリコン(Si)原子よりも格子間隔が大きいゲルマニウム(Ge)をソース・ドレイン領域に導入して歪み発生層を形成する方法が報告されている(例えば特許文献1参照)。ゲルマニウムを導入することにより、チャネル領域のSi格子に圧縮歪を加えることができ、それにより、正孔の移動度が向上するため、PMOSトランジスタの動作を高速化できる。一方、NMOSトランジスタにおいては、Si原子よりも格子間隔が小さい炭素(C)をソース・ドレイン領域に導入して歪み発生層を形成する方法が報告されている(例えば特許文献2参照)。炭素を導入することにより、チャネル領域のSi格子に引っ張り歪みを加えることができ、それにより、電子の移動度が向上するため、NMOSトランジスタの動作を高速化できる。炭素をソース・ドレイン領域に導入して歪み発生層を形成する方法としては、次の2つが知られている(例えば特許文献2、非特許文献1及び非特許文献2参照)。1つ目は、シラン系のシリコンソースガスと、モノメチルシラン等の炭素ソースガスとを用いて、ソース・ドレイン領域をくりぬいて形成したリセス部に選択的に歪み発生層をエピタキシャル成長させる方法である。2つ目は、炭素をソース・ドレイン領域にイオン注入して900℃程度の熱処理を行うことにより固相成長を起こさせ、シリコンと炭素とを結合させる方法である。
【0013】
その他、チャネル領域に歪みを導入するために、膜応力を持つSiN膜をコンタクトライナー膜として形成する例がある(例えば特許文献3参照)。本例では、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成するためにエッチングを行う際にエッチングストップ膜として形成されていたライナー膜を利用して、チャネル領域に応力を印加する。より具体的には、膜応力を持つSiN膜をライナー膜として使用する場合、NMOSに対しては引張り応力を持つSiN膜を形成し、PMOSに対しては圧縮応力を持つSiN膜を形成する。この方法を用いてキャリア移動度を大きく向上させるためには、ライナー膜の膜厚を厚くすることにより、チャネル領域に印加される歪量を大きくすればよい。また、NMOSにおいて使用するSiN膜については、多くの場合、成膜後の処理により膜収縮を生じさせて引張り応力を発生させる方法が用いられている。
【0014】
尚、ライナー膜の膜厚を大きくする場合、ライナー膜を多層構造にすることも知られている。この場合、一層毎に膜収縮を行っても良い。ライナー膜を多層化する構造については、例えば特許文献4に報告されている。
【0015】
また、チャネル領域に効果的に歪を与えるためには、大きな応力を持つ膜が、チャネル領域に近づくほど好ましい。近年、例えば、ディスポーザブル・サイドウォール技術によって、ライナー膜を形成する前にサイドウォールを除去した後、応力を持ったライナー膜を形成する方法が提案されている(例えば特許文献5参照)。また、Σ型SiGeソース・ドレイン領域を形成することにより、できる限りチャネル領域に近いところまでSiGeエピタキシャル層を形成することによって、チャネル領域に加える歪を増大させる方法も提案されている(例えば非特許文献3参照)。しかし、これらの方法はいずれも、NMOSかPMOSかで選択的に成膜を実施する工程を要するため、マスク費用や工程数が膨大になる等の問題を有しており、トランジスタ能力向上に対する費用対効果が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−196549号公報
【特許文献2】特開2006−216955号公報
【特許文献3】特開2003−060076号公報
【特許文献4】特許第3050193号公報
【特許文献5】特開2008−091536号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Yee-Chia Yeo、"SSDM"、2006年、p.162-163
【非特許文献2】Yaocheng Liu 他、"VLSI Tech. Dig."、2007年、p.44-45
【非特許文献3】Hiroyuki Ota 他、Technical report of IEICE. SDM 105(541)、2006年1月13日、p.13-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、チャネル領域に歪を加えてトランジスタを高速化させる前述の従来技術には以下のような問題点がある。
【0019】
まず、微細化と高集積化がさらに進められると、各素子同士の間隔が小さくなり、MOSトランジスタ間の距離も縮小される。このため、ライナー膜の膜厚を大きくすると、トランジスタのソース領域及びドレイン領域のそれぞれの上にもライナー膜が厚く形成されるので、隣り合うMOSトランジスタのゲート電極同士の間の領域もライナー膜によって埋まってしまう。これにより、コンタクト形成が困難になる等の問題が生じる。
【0020】
また、ソース領域及びドレイン領域にSiGeエピタキシャル層を形成する技術については、例えば、SRAM(static random access memory)領域のようにSTI(shallow trench isolation)によって互いに分離されたNMOS及びPMOSがひしめき合っている領域では、SiO2 で形成されているSTI端でエピタキシャル成長が生じないので、チャネルに歪を印加することが難しくなる。すなわち、微細化が進むと、SiGeエピタキシャル歪Si技術を適用することが難しくなる。
【0021】
以上のように、従来の歪技術には、微細化に伴ってチャネル領域に印加できる歪量が小さくなるという問題があるため、デザインルールが32nm以降のCMOSデバイスへの対応が困難である。
【0022】
そこで、本発明は、微細化されても、nチャネルトランジスタのチャネル領域には引っ張り歪を、pチャネルトランジスタのチャネル領域には圧縮歪をそれぞれ効果的に印加できる新しい歪技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の目的を達成するために、本願発明者らは、金属(メタル)ゲート電極を構成する膜が持つ内部応力に着目し、詳細な評価を行った結果、次のような発明を想到した。
【0024】
すなわち、本発明に係る第1の半導体装置は、基板におけるnチャネルトランジスタ形成領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極を備え、前記ゲート電極は、圧縮内部応力を持つnチャネルメタル電極を有する。
【0025】
本発明に係る第1の半導体装置によると、nチャネルメタル電極が圧縮内部応力を持つ(つまりnチャネルメタル電極自体は膨張しようとしている)ため、nチャネルトランジスタのチャネル領域には、nチャネルメタル電極の内部応力とは逆方向の引っ張り歪が印加される。ここで、nチャネルメタル電極の下側のゲート絶縁膜(例えばHigh-kゲート絶縁膜)の厚さは高々数nm程度であるため、nチャネルメタル電極はチャネル領域に非常に近接しているので、ゲート電極の上側に形成されるライナー膜による応力印加と比べて、nチャネルメタル電極によりチャネル領域に対して効果的に歪を加えることができる。また、実施形態で詳細に述べるように、nチャネルメタル電極膜の厚さが10nm程度以上であれば、効果的な歪印加が可能となるので、微細化されても、nチャネルトランジスタのチャネル領域に引っ張り歪を効果的に印加することができる。
【0026】
また、本発明に係る第2の半導体装置は、基板におけるpチャネルトランジスタ形成領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極を備え、前記ゲート電極は、引っ張り内部応力を持つpチャネルメタル電極を有する。
【0027】
本発明に係る第2の半導体装置によると、pチャネルメタル電極が引っ張り内部応力を持つ(つまりpチャネルメタル電極自体は収縮しようとしている)ため、pチャネルトランジスタのチャネル領域には、pチャネルメタル電極の内部応力とは逆方向の圧縮歪が印加される。ここで、pチャネルメタル電極の下側のゲート絶縁膜(例えばHigh-kゲート絶縁膜)の厚さは高々数nm程度であるため、pチャネルメタル電極はチャネル領域に非常に近接しているので、ゲート電極の上側に形成されるライナー膜による応力印加と比べて、pチャネルメタル電極によりチャネル領域に対して効果的に歪を加えることができる。また、実施形態で詳細に述べるように、pチャネルメタル電極膜の厚さが10nm程度以上であれば、効果的な歪印加が可能となるので、微細化されても、pチャネルトランジスタのチャネル領域に引っ張り歪を効果的に印加することができる。
【0028】
また、本発明に係る第3の半導体装置は、基板におけるnチャネルトランジスタ形成領域上に第1のゲート絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極と、前記基板におけるpチャネルトランジスタ形成領域上に第2のゲート絶縁膜を介して形成された第2のゲート電極とを備え、前記第1のゲート電極は、圧縮内部応力を持つnチャネルメタル電極を有し、前記第2のゲート電極は、引っ張り内部応力を持つpチャネルメタル電極を有する。
【0029】
本発明に係る第3の半導体装置によると、前述の本発明に係る第1及び第2の半導体装置の効果を合わせた効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、nチャネルトランジスタのチャネル領域には引っ張り歪を、pチャネルトランジスタのチャネル領域には圧縮歪をそれぞれ効果的に印加することができる。また、メタルゲート電極を構成する膜が持つ内部応力を利用してチャネル領域に歪を印加するため、微細化されても、つまり、トランジスタ間のピッチが縮小しても、ライナー膜やSiGeソース・ドレイン等の従来の歪技術のように、制約を受けることがない。
【0031】
さらに、本発明によれば、メタル電極膜の厚さが10nm程度以上であれば、効果的な歪印加が可能となるため、ゲート加工できないような厚いメタル電極膜を形成する必要はない。従って、例えばHigh-kゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を持つCMOSトランジスタの高速化及び高集積化を可能としつつ、当該CMOSトランジスタの形成を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、引っ張り内部応力を持つメタル電極膜及び圧縮内部応力を持つメタル電極膜をそれぞれシリコンウェハ上に形成した場合のウェハ反り量を本願発明者らが調べた結果を示している。
【図3】図3は、チャネル領域にかかる歪量のメタル電極膜(TiN膜)の膜厚に対する依存性を本願発明者らが調べた結果を示している。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置におけるnチャネルトランジスタの駆動能力を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置におけるpチャネルトランジスタの駆動能力を示す図である。
【図6】図6(a)〜(f)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)〜(e)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置、具体的には、CMOS構造を有する半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【0035】
図1に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板101上には、例えばシリコン酸化膜からなり且つSTI形状を持つ素子分離層104が形成されており、これにより、pチャネルトランジスタ105とnチャネルトランジスタ106とが区画されている。pチャネルトランジスタ105の半導体基板101には例えばイオン注入によりn型ウェル領域102が形成されていると共に、nチャネルトランジスタ106の半導体基板101には例えばイオン注入によりp型ウェル領域103が形成されている。
【0036】
pチャネルトランジスタ105は、例えばイオン注入により形成されたp型ソース・ドレイン領域107及びp型エクステンション領域108を備えていると共に、例えばHigh-k絶縁膜により構成されたゲート絶縁膜109上に、本実施形態の特徴の1つである引っ張り内部応力を持つメタル電極110を備えている。尚、メタル電極110上には、例えばホウ素などの不純物をイオン注入したポリシリコン電極111が形成されており、メタル電極110とポリシリコン電極111とによって、pチャネルトランジスタ105のゲート電極が構成されていると共に、当該ゲート電極側壁上には、例えばシリコン窒化膜又はシリコン酸化膜等からなる絶縁性サイドウォールスペーサ112が形成されている。
【0037】
尚、図示は省略しているが、p型ソース・ドレイン領域107及びポリシリコンゲート電極111のそれぞれの表面部に、例えばニッケルシリサイド(NiSi)又はニッケル白金シリサイド(NiPtSi)等からなるシリサイド化層が形成されていても良い。また、図示は省略しているが、p型ソース・ドレイン領域107及びp型エクステンション領域108に、ゲルマニウム(Ge)を例えば10atomic%〜30atomic%程度含んだSiGeエピタキシャル層が形成されていても良い。
【0038】
一方、nチャネルトランジスタ106は、例えばイオン注入により形成されたn型ソース・ドレイン領域113及びn型エクステンション領域114を備えていると共に、例えば、High-kゲート絶縁膜により構成されたゲート絶縁膜115上に、本実施形態の特徴である圧縮内部応力を持つメタル電極116を備えている。尚、メタル電極116上には、例えばリンなどの不純物をイオン注入したポリシリコン電極117が形成されており、メタル電極116とポリシリコン電極117とによって、nチャネルトランジスタ106のゲート電極が構成されていると共に、当該ゲート電極側壁上には、例えばシリコン窒化膜又はシリコン酸化膜等からなる絶縁性サイドウォールスペーサ118が形成されている。
【0039】
尚、図示は省略しているが、n型ソース・ドレイン領域113及びポリシリコンゲート電極117のそれぞれの表面部に、例えばニッケルシリサイド(NiSi)又はニッケル白金シリサイド(NiPtSi)等からなるシリサイド化層が形成されていても良い。また、図示は省略しているが、p型ソース・ドレイン領域107及びp型エクステンション領域108に、ゲルマニウム(Ge)を例えば10atomic%〜30atomic%程度含んだSiGeエピタキシャル層が形成されていても良い。また、図示は省略しているが、n型ソース・ドレイン領域113及びn型エクステンション領域114に、炭素(C)を例えば1atomic%〜3atomic%程度含んだカーボンドープSiエピタキシャル層が形成されていても良い。
【0040】
また、本実施形態において、pチャネルトランジスタ105のゲート絶縁膜(High-kゲート絶縁膜)109は、例えばHf又はZrとSiとを含んだ酸化膜から構成されたHigh-k膜中に、仕事関数を制御するためのAlやTaなどを含ませたものである。また、nチャネルトランジスタ106のゲート絶縁膜(High-kゲート絶縁膜)115は、例えばHf又はZrとSiとを含んだ酸化膜から構成されたHigh-k膜中に、仕事関数を制御するためのLaやMgなどを含ませたものである。
【0041】
さらに、本実施形態において、pチャネルトランジスタ105のメタル電極110、及びnチャネルトランジスタ106のメタル電極116はそれぞれ、Al、Ti、Ta、W及びRuを含む金属群の中から選ばれた1つの金属からなる金属膜、前記金属群の中から選ばれた複数の金属からなる金属合金膜、前記金属群の中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む窒化膜若しくは炭化窒化膜、又は前記金属群の中から選ばれた少なくとも1つの金属とシリコンとを含む窒化膜であってもよい。ここで、前述のように、pチャネルトランジスタ105のメタル電極110は引っ張り内部応力を持ち、nチャネルトランジスタ106のメタル電極116は圧縮内部応力を持つ。
【0042】
ところで、従来の歪技術においては、コンタクトエッチングストッパーとなるライナー膜を内部応力の大きいシリコン窒化膜により形成することによって、チャネル領域に歪を加えたり、又は、ソース・ドレイン領域にSiGeやSiCをエピタキシャル成長により埋め込むことによって、チャネル領域に歪を加えたりしていた。しかし、トランジスタの微細化及び高集積化により、隣り合うゲート同士の間でライナー窒化膜の埋め込み不良が生じる場合がある。また、STIからゲートまでの距離、つまりソース・ドレイン領域の面積縮小に起因して、Si結晶ではなくSiO2 により形成されているSTIの端部でエピタキシャル成長が起こらず、埋め込み不良、又はソース・ドレインへのコンタクトホールの接続不良が生じる場合がある。これらの不良が生じた場合、歩留りが低下する等の問題が生じる。
【0043】
それに対して、本実施形態では、最もチャネル領域に近いゲート絶縁膜上に形成されているメタル電極によって、チャネル領域への歪を制御するため、ゲート間距離やソース・ドレイン領域の面積に関係なく、チャネル領域に適切な歪を効果的に加えることができる。これにより、pチャネルトランジスタ105及びnチャネルトランジスタ106のそれぞれの駆動能力、つまりCMOSトランジスタの駆動能力を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、メタル電極膜の厚さが10nm程度以上であれば、効果的な歪印加が可能となるため、ゲート加工できないような厚いメタル電極膜を形成する必要はない。従って、例えばHigh-kゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を持つCMOSトランジスタの高速化及び高集積化を可能としつつ、当該CMOSトランジスタの形成を容易に行うことができる。
【0045】
チャネル領域に加えれる歪量については、下記(式3)(フックの法則)に示すように、バルクに加えられる歪量と同様に、力を与える「応力」と「ヤング率(縦弾性係数)」とから見積ることが可能である。ヤング率は、弾性範囲で単位歪当たり、どれだけの応力が必要であるかを決める定数である。
【0046】
[歪ε]=[応力σ]/[ヤング率E]・・・(式3)
尚、応力方向が一方向である引っ張り応力又は圧縮応力の方向に沿った歪量は、前記(式3)の一次方程式から求めることが可能であるが、実際のデバイスでは、3次元の物体中の応力を考慮する必要があるので、3次の正方行列によってテンソル成分を表示して歪量のシミュレーションを行う。
【0047】
また、例えばチタン窒化膜(TiN)のヤング率はTiとNとの組成比に依存しており、化学量論比に近いTiNではヤング率が増大する一方、化学量論比よりも窒素比率が低下するとヤング率も低下する。
【0048】
ヤング率の測定方法には、膜歪み法(the membrane deflection method)、押し込み試験(the indentation test)、ブリリュアン散乱法(Brillouin scattering technique)、超音波顕微鏡(the ultrasonic microscopy )、共鳴振動法(the resonance vibration test)等の数種類の静的又は動的な方法が存在する。しかし、これらの方法は、特別の試料調製を必要とするなどの特徴があるため、微細な半導体デバイスで用いられるナノメーターレベルの厚さを持つ膜のヤング率測定には不向きである。
【0049】
そこで、本実施形態においては、厚さ数10nmのメタル電極膜(具体的には厚さ15nmのTiN膜)のヤング率を測定するためにレーザー誘導音波を用いた。具体的には、試料表面にパルスレーザーを照射して表面弾性波を発生させ、その伝播速度の周波数依存性(分散曲線)を測定した。この分散曲線は、ヤング率、密度、ポアソン比、膜厚の4パラメータで決定されるため、分散曲線を測定すると共に既知のパラメータを入力することによって、未知のパラメータをフィッティングで求めることが可能となる。
【0050】
ヤング率の測定試料は、シリコン基板上に形成した厚さ100nmのシリコン酸化膜上に厚さ15nmのTiN膜を形成した構造を持つ。TiN膜の膜密度を5.43g/cm3 、ポアソン比を0.21としてヤング率を計算したところ、例えばPVD(physical vapor deposition)により形成したTiN膜は883GPaという非常に大きいヤング率を持つことが分かった。また、ALD(Atomic Layer Deposition )により形成したTiN膜も810GPaという非常に大きいヤング率を持つことが分かった。
【0051】
一方、応力の測定方法としては、シリコン基板(ウェハ)のそり量を用いた測定方法が一般的である。すなわち、シリコン基板上で成膜を行うと、シリコン基板の熱膨張係数と膜の熱膨張係数とが異なるため、基板が凹状又は凸状に反り、この反り(曲率半径)の変化量によりストレスを測定することができる。このウェハ反り測定は、ウェハの中心と重心とが一致するように3点でウェハを支持した状態で、各測定位置でのウェハと光源との焦点距離が一定となるように光源位置を移動させ、この光源位置の推移を測定することにより実施される。ウェハの反りの変化量(曲率半径)に基づいて、下記(式4)に示すストーニーの式を用いて応力を算出することができる。
【0052】
(応力)=(基板のヤング率)・(基板の厚さ)2 /(6・曲率半径・膜厚・(1−基板のポアソン比))・・・(式4)
本実施形態においては、メタル電極膜の内部応力の測定を、775μm厚の300mm径シリコンウェハを用いて実施した。その結果を図2に示す。図2の(a)は、PVDによりTiN膜を形成した場合のウェハの反り量を示している。これによれば、PVDにより形成したTiN膜は300mm径シリコンウェハを凸状に最大約50μm程度歪曲させており、前記(式4)によれば、PVDにより形成したTiN膜は、約3.0GPaの圧縮内部応力を持つことが分かる。また、図2の(b)は、ALDによりTiN膜を形成した場合のウェハの反り量を示している。これによれば、ALDにより形成したTiN膜は300mm径シリコンウェハを凹状に最大約30μm程度歪曲させており、前記(式4)によれば、ALDにより形成したTiN膜は、約1.5GPaの引っ張り内部応力を持つことが分かる。
【0053】
尚、本願発明者らが調べたところ、CVD(Chemical Vapor Deposition )法やALD法等のように膜を熱化学成長させる場合には、膜は引っ張り内部応力を持つことが多く、PVD法等のようにウェハを加熱しない場合には、膜は圧縮内部応力を持つことが多いことが分かった。具体的には、CVDにより形成したW(タングステン)膜は1.5GPa程度の引張り内部応力を持ち、PVDにより形成したTa(タンタル)膜は2.5GPa程度の圧縮内部応力を持ち、PVDにより形成したTaN膜は1.6GPa程度の圧縮内部応力を持つ。
【0054】
図3は、チャネル領域にかかる歪をシミュレーションした結果を示す。図3に示すように、PVDによりTiN膜を形成した場合、当該TiN膜の内部応力は圧縮応力であるが、当該TiN膜によりゲート下のチャネル領域には引っ張り歪がかかるので、PVDにより形成したTiN膜はnチャネルトランジスタのメタルゲート電極に用いることが望ましいことが分かる。一方、図3に示すように、ALDによりTiN膜を形成した場合、当該TiN膜の内部応力は引っ張り応力であるが、当該TiN膜によりゲート下のチャネル領域には圧縮歪がかかるので、ALDにより形成したTiN膜はpチャネルトランジスタのメタルゲート電極に用いることが望ましいことが分かる。
【0055】
また、図3に示すように、前述のヤング率及び内部応力を用いて、前記(式3)に従ってチャネル領域に印加できる歪量をシミュレーションしたところ、nチャネルトランジスタ及びpチャネルトランジスタのいずれにおいても、ソースからドレインに向かう方向(以下、X方向と称する)の歪量は、TiN膜の膜厚が10〜50nm程度で比較的大きくなり、特に15〜25nm程度でほぼ最大になることが分かった。例えばPVDにより形成したTiN膜をnチャネルトランジスタに採用した場合、当該TiN膜の膜厚が20nm程度で350程度の歪量を与えることができる。また、例えばALDにより形成したTiN膜をpチャネルトランジスタに採用した場合、当該TiN膜の膜厚が20nm程度で240程度の歪量を与えることができる。
【0056】
尚、他の歪技術であるライナー膜の場合には膜厚を増やせば増やすほど歪量が増大したことや、他の歪技術であるSiGeソース・ドレインの場合にもSiGe中のGe濃度を増やせば増やすほど歪量が増大したこととは異なり、本実施形態のメタル電極膜により加えられる歪量は膜厚15〜25nm程度で飽和するという特徴を有している。
【0057】
また、前述のライナー膜による方法では、1.6GPa相当の応力を持つ厚さ30nm程度のシリコン窒化膜を使用したとしても、ゲート電極側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサが存在する場合には、X方向の歪量は150程度である。これは、絶縁性サイドウォールスペーサが存在するためにライナー膜とゲート下のチャネル領域との距離が増大する結果、当該距離が増大した分、歪量が減少するからである。但し、絶縁性サイドウォールスペーサを除去した後にライナー膜を形成するディスポーザブル・サイドウォール技術によれば、X方向に350程度の歪量を与えることが可能であるので、本実施形態のメタル電極膜(例えばPVDにより形成したTiN膜)と組み合わせて用いれば、合計700程度以上の歪量をnチャネルトランジスタのチャネル領域に印加することができる。或いは、引っ張り応力を持つライナー膜(例えばSiN膜)に代えて又は当該ライナー膜と共に、SiCソース・ドレイン技術を本実施形態のメタル電極膜(例えばPVDにより形成したTiN膜)と組み合わせて用いることにより、nチャネルトランジスタのチャネル領域に歪量を印加してもよい。
【0058】
同様に、SiGeソース・ドレイン技術を、本実施形態のメタル電極膜(例えばALDにより形成したTiN膜)と組み合わせて用いれば、pチャネルトランジスタのチャネル領域に大きな圧縮歪を印加して駆動電流を向上させることができる。ここで、SiGeソース・ドレイン技術に代えて又はSiGeソース・ドレイン技術と共に、圧縮応力を持つライナー膜(例えばSiN膜)を本実施形態のメタル電極膜(例えばALDにより形成したTiN膜)と組み合わせて用いることにより、pチャネルトランジスタのチャネル領域に歪量を印加してもよい。
【0059】
図4は、nチャネルトランジスタのメタルゲート電極に圧縮内部応力を持つTiN膜を用いることにより、チャネル領域に引っ張り歪を印加した場合の駆動電流の向上を示す図である。図4に示すように、例えばオフ電流(Ioffs)が1000pA/μmの場合で比較すると、圧縮内部応力を持つTiN膜を用いることにより、オン電流(Ion)は817μA/μm(×印)から909μA/μm(○印)へと10%以上向上している。
【0060】
図5は、pチャネルトランジスタのメタルゲート電極に引っ張り内部応力を持つTiN膜を用いることにより、チャネル領域に圧縮歪を印加した場合の駆動電流の向上を示す図である。図5に示すように、例えばオフ電流(Ioffs)が100pA/μmの場合で比較すると、引っ張り内部応力を持つTiN膜を用いることにより、オン電流(Ion)は286μA/μm(×印)から309μA/μm(○印)へと8%以上向上している。
【0061】
以上に説明したように、本願発明者らは、メタルゲート電極に用いられる各種メタル電極膜の内部応力を詳細に調べ、ゲート絶縁膜(例えばHigh-kゲート絶縁膜)上のメタル電極膜として、pチャネルトランジスタでは引っ張り内部応力を持つメタル電極膜を、nチャネルトランジスタでは圧縮内部応力を持つメタル電極膜を形成することにより、従来のライナー膜により印加可能な歪量以上の歪量をチャネル領域に印加して駆動電流を向上させることができるということを見出した。
【0062】
すなわち、本実施形態は、この新しい知見に基づくものであり、従来技術の範疇とは異なる特徴及び効果を発揮する。例えば、本実施形態においては、メタルゲート電極を構成する膜が持つ内部応力を利用してチャネル領域に歪を印加するため、微細化されても、つまり、トランジスタ間のピッチが縮小しても、ライナー膜やSiGeソース・ドレイン等の従来の歪技術のように、制約を受けることがない。また、メタル電極膜の厚さが10nm程度以上であれば、効果的な歪印加が可能となるため、ゲート加工できないような厚いメタル電極膜を形成する必要はない。従って、例えばHigh-kゲート絶縁膜/メタルゲート電極構造を持つCMOSトランジスタの高速化及び高集積化を可能としつつ、当該CMOSトランジスタの形成を容易に行うことができる。
【0063】
尚、本実施形態において、nチャネルトランジスタ及びpチャネルトランジスタのメタルゲート電極の材料はTiN膜に限定されるものではなく、例えば、pチャネルトランジスタのメタルゲート電極として、前述の引っ張り内部応力を持つ、CVDやALDにより形成されたTaN膜やW膜を用いてもよいし、例えば、nチャネルトランジスタのメタルゲート電極として、前述の圧縮内部応力を持つ、PVDにより形成されたTaN膜やTa膜を用いてもよい。
【0064】
また、本実施形態において、CMOS構造におけるnチャネルトランジスタ及びpチャネルトランジスタのそれぞれに、応力を持つメタルゲート電極を用いたが、これに代えて、いずれか一方のトランジスタのみに、所定の応力を持つメタルゲート電極を用いてもよい。
【0065】
また、本実施形態において、nチャネルトランジスタ及びpチャネルトランジスタのそれぞれにおいて、メタルゲート電極上にポリシリコン電極を形成したが、これに代えて、シリコンゲルマニウム電極を形成しても良い、或いは、メタルゲート電極上にポリシリコン電極等を形成しなくてもよい。
【0066】
以下、本実施形態の半導体装置の製造方法を図6(a)〜(f)を参照しながら説明する。
【0067】
まず、図6(a)に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板101上に、例えばシリコン酸化膜からなり且つSTI形状を持つ素子分離層104によって絶縁分離されたn型ウェル領域102及びp型ウェル領域103を形成した後、半導体基板101上の全面にゲート絶縁膜となる絶縁膜109Aを形成し、その後、絶縁膜109A上に、pチャネルトランジスタ(以下、PMOSという)の引っ張り内部応力を持つメタル電極となる金属含有膜110Aを形成する。
【0068】
ここで、絶縁膜109Aは、例えば、水蒸気雰囲気中や一酸化窒素雰囲気中で半導体基板101表面を酸化してなる厚さ1.0nm程度のシリコン酸化膜と、当該シリコン酸化膜上に、Hf又はZrなどの4族元素を主成分とした酸化物、Hf若しくはZrとSiとの酸化物(シリケート)、Hf若しくはZrとAlとの酸化物(アルミネート)、又はこれらの酸化物にプラズマ窒化やアンモニア窒化によって窒素を添加した酸窒化物からなるHigh-k絶縁膜との積層構造を有する。このHigh-k絶縁膜の形成には、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition )法、ALD法又はPVD法などを用いる。また、プラズマ窒化やアンモニア窒化等の窒化処理を行う場合には、例えば1000℃以上の熱処理を行うことが好ましい。
【0069】
尚、nチャネルトランジスタ(以下、NMOSという)及びPMOSのそれぞれのHigh-k絶縁膜中には、閾値電圧を制御するために、それぞれ異なったHigh-k材料を添加することが好ましい。例えば、NMOSのHigh-k絶縁膜中にはLa酸化物やMg酸化物を添加することが好ましく、PMOSHigh-k絶縁膜中にはAl酸化物やTa酸化物を添加することが好ましい。
【0070】
また、本実施形態において、金属含有膜110Aとして、例えばALD法を用いてTiN膜を形成する。具体的には、Tiソースとして塩化チタン(TiCl4 )などの液体ソースを用い、当該液体ソースをArなどの不活性ガスによってバブリングすることよって気化させたTiCl4 ガスをチャンバー内にt1秒(例えば0.05秒)間供給して、絶縁膜109A上にTiを吸着させる。次に、チャンバー内に充満したTiCl4 ガスを排出するために、窒素ガスを、例えば1000mL/min(標準状態)の流量でt2秒(例えば0.3秒)間供給する。その後、窒素ソースガスであるアンモニアを、例えば1000mL/min(標準状態)でt3秒(例えば1秒)間供給することによって、絶縁膜109A上に吸着しているTiとNとを結合させる。その後、チャンバー内に充満しているアンモニアガスを取り除くために、窒素ガスを、例えば1000mL/min(標準状態)の流量でt4秒(例えば0.3秒)間供給する。以上に述べた一連のガス供給サイクルを繰り返し行うことによって、所望の膜厚に達するまでTiN膜の成膜を行う。ここで、TiN膜からなる金属含有膜110Aは、1.0GPa以上の引っ張り内部応力を持つと共に、チャネル領域への歪量が最大になるように、15nm以上で且つ25nm以下の膜厚(例えば20nm)を持つように形成される。金属含有膜110Aのその他の成膜条件は、例えば、チャンバー圧力が0.5Torr(約66.5Pa)であり、ステージヒータ温度が550℃である。また、金属含有膜110AとしてTiN膜を製造する場合、TiCl4 とアンモニアとの組み合わせに代えて、Tiソースとしてアミノ系又はイミド系等の材料を用い、窒素ソースとして、アンモニアにプラズマを印加して得られるアンモニアラジカルやイオン化された窒素などを用いることも可能である。
【0071】
続いて、金属含有膜110A上の全面にレジストを塗布した後、NMOS領域のレジストをフォトリソグラフィー技術によって除去し、その後、PMOS領域を覆うレジスト(図示省略)をマスクとして、図6(b)に示すように、例えば硫酸と過酸化水素水との混合液により、NMOS領域の金属含有膜110Aを除去した後、残存するレジストを除去する。ここで、絶縁膜109Aがエッチングストッパーとして機能する。また、ウェットエッチングに代えて、ハロゲン系のエッチングガスを用いたドライエッチングにより、NMOS領域の金属含有膜110Aを除去してもよい。
【0072】
次に、図6(c)に示すように、基板上の全面に、NMOSの圧縮内部応力を持つメタル電極となる金属含有膜116Aを形成する。本実施形態においては、金属含有膜116Aとして、例えばPVD法を用いてTiN膜を形成する。ここで、TiNターゲットをArでスパッタリングしてTiN膜を形成してもよい。或いは、TiターゲットをArでスパッタリングした後、N2 などの窒素系ガスとTiとを反応させてTiN膜を形成する反応性スパッタリング法を用いてもよい。本実施形態では、DCパワー1000W、Ar流量20mL/min(標準状態)、N2 流量18mL/min(標準状態)の条件で反応性スパッタリング法を用いることによって、厚さ15〜25nm程度のTiN膜を形成した。
【0073】
続いて、金属含有膜116A上の全面にレジストを塗布した後、PMOS領域のレジストをフォトリソグラフィー技術によって除去し、その後、NMOS領域を覆うレジスト(図示省略)をマスクとして、例えば硫酸と過酸化水素水との混合液により、PMOS領域の金属含有膜116Aを除去した後、残存するレジストを除去する。このとき、PMOS領域の金属含有膜110Aの表面は自然酸化膜によって被覆されている。また、硫酸と過酸化水素水との混合液によるエッチングでは、ALDにより形成されたTiN膜よりも、PVDにより形成されたTiN膜の方がエッチングレートが大きいため、両TiN膜の間でエッチング選択比が生じる。従って、PMOS領域の金属含有膜110A上に形成されている金属含有膜116Aを容易に除去することができる。
【0074】
次に、残存する金属含有膜110A及び金属含有膜116A上に形成された自然酸化膜や、レジストの塗布及び除去により変質したTiN層を除去するために、例えばフッ酸を含んだ水溶液によって、金属含有膜110A及び金属含有膜116Aのそれぞれの表面を洗浄した後、金属含有膜110A及び金属含有膜116Aのそれぞれの上に厚さ100nm程度のポリシリコン膜を形成する。ここで、TiN膜とポリシリコン膜との界面に酸化層が存在すると、界面抵抗が上昇するため、ポリシリコン膜の形成前に、金属含有膜110A及び金属含有膜116Aのそれぞれの表面に対して、アンモニア及び過酸化水素水による洗浄を追加で行った方がよい。また、ポリシリコン膜の形成方法としては、例えば、シラン(SiH4 )やジシラン(Si2 6 )を用いて500℃〜650℃の温度でシリコン膜を形成した後に当該シリコン膜に熱処理を加えてポリシリコン化する方法と、600℃〜630℃でシランを流してポリシリコン膜を形成する方法とがある。また、ポリシリコン膜に代えて、シランにゲルマン(GeH4 )を加えてシリコンゲルマニウム膜を形成しても良い。
【0075】
次に、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術とを用いて、ゲート電極形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)を形成した後、当該レジストパターンをマスクとして、例えばハロゲン系のエッチングガスを用いて、前述のポリシリコン膜、金属含有膜110A及び金属含有膜116Aに対して異方性エッチングを行う。これにより、図6(d)に示すように、PMOSのゲート電極として、メタル電極110とポリシリコン電極111との積層構造がn型ウェル領域102上にゲート絶縁膜109を介して形成されると共に、NMOSのゲート電極として、メタル電極116とポリシリコン電極117との積層構造がp型ウェル領域103上にゲート絶縁膜115を介して形成される。すなわち、NMOSとPMOSとで異なる内部応力を持ったメタル電極を形成でき、それにより、NMOSのチャネル領域には引っ張り応力を印加することができると共に、PMOSのチャネル領域には圧縮応力を印加することができる。
【0076】
前述のゲート電極エッチングにおいては、金属含有膜110A及び金属含有膜116Aの膜厚が同じではないため、金属含有膜110A及び金属含有膜116Aのそれぞれと絶縁膜109Aとの間にエッチング選択比を確保できるエッチング条件を用いる。これにより、ゲート電極エッチングを絶縁膜109Aでストップさせることができる。尚、絶縁膜109Aに対して窒化処理及びその後の1000℃以上での熱処理が行われていると、金属含有膜110A及び金属含有膜116Aのそれぞれと絶縁膜109Aとの間にエッチング選択比を確保しやすい。前述のゲート電極エッチングに続いて、例えばフッ酸系の洗浄液を用いて、ゲート電極エッチング時に残った絶縁膜109A(各ゲート電極外側の絶縁膜109A)を除去する。
【0077】
尚、本実施形態において、PMOS領域の金属含有膜110A上に形成されている金属含有膜116Aを除去した。しかし、当該金属含有膜116AとPMOS領域のチャネル領域とは、絶縁膜109Aの厚さとPMOS領域の金属含有膜110Aの厚さとの合計厚さだけ離隔しているため、当該金属含有膜116Aからチャネル領域に加えられる歪量は小さい。従って、PMOS領域の金属含有膜110A上に形成されている金属含有膜116Aについては、必ずしも除去しなくても良い。
【0078】
また、デザインルールが45nmよりも微細なゲート電極を形成するためのリソグラフィーには、例えば液浸リソグラフィー技術を使用するが、例えば300mmの大口径ウェハでは、ウェハの中心部から周縁部まで、下地活性領域とゲート電極との重ね合わせ精度を高精度に保つことは難しく、メタルゲート電極が引き起こすウェハの反りを無視できない。しかし、本実施形態では、nチャネルメタルゲート電極として圧縮内部応力を持つ膜を用い、pチャネルメタルゲート電極として引っ張り内部応力を持つ膜を用いるため、各メタルゲート電極に起因するウェハの反りが相殺される結果、下地活性領域とゲート電極との重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0079】
次に、例えば600℃以下の成膜温度で、基板上の全面にシリコン窒化膜(図示省略)を形成する。シリコン窒化膜の形成方法としては、例えばALD法が好ましい。具体的には、例えば、ジクロロシラン(SiH2 Cl2 )とアンモニアとを交互に供給することによって、厚さ5nm〜10nm程度のシリコン窒化膜を形成する。続いて、例えばハロゲン系のガスを用いてシリコン窒化膜に対して異方性のドライエッチングを行うことによって、各トランジスタのゲート電極側壁上にのみシリコン窒化膜をオフセットスペーサとして残す。
【0080】
次に、NMOS領域をレジスト(図示省略)によって保護しながら、p型ウェル領域103にn型不純物として例えばリン、砒素又はアンチモンなどをイオン注入する。次に、NMOS領域を覆うレジストを除去した後、PMOS領域をレジスト(図示省略)によって保護しながら、n型ウェル領域102にp型不純物として例えばボロン又はインジウム等をイオン注入する。その後、PMOS領域を覆うレジストを除去した後、例えば1000℃以上の熱処理によって注入イオン種を活性化することにより、図6(e)に示すように、n型ウェル領域102の表面部にp型エクステンション領域108を形成すると共にp型ウェル領域103の表面部にn型エクステンション領域114を形成する。
【0081】
次に、基板上の全面に例えば厚さ5nm〜10nm程度のシリコン酸化膜及び厚さ10nm〜30nm程度のシリコン窒化膜を連続して積層した後、当該各膜に対して異方性のドライエッチングを行う。これにより、図6(f)に示すように、PMOSのゲート電極側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサ112が形成されると共に、NMOSのゲート電極側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサ118が形成される。尚、絶縁性サイドウォールスペーサ112及び118の構造として、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の2層構造を用いたが、これに代えて、シリコン酸化膜の1層構造又はシリコン窒化膜の1層構造を用いてもよい。
【0082】
次に、NMOS領域をレジスト(図示省略)によって保護しながら、p型ウェル領域103にn型不純物として例えばリン、砒素又はアンチモンなどをイオン注入する。次に、NMOS領域を覆うレジストを除去した後、PMOS領域をレジスト(図示省略)によって保護しながら、n型ウェル領域102にp型不純物として例えばボロン又はインジウム等をイオン注入する。その後、PMOS領域を覆うレジストを除去した後、例えば900℃〜1050℃程度の熱処理によって注入イオン種を活性化することにより、図6(f)に示すように、n型ウェル領域102にp型ソース・ドレイン領域107を形成すると共に、p型ウェル領域103にn型ソース・ドレイン領域113を形成する。
【0083】
続いて、図示は省略しているが、各ソース・ドレイン領域107及び113の上部並びに各ポリシリコン電極111及び117の上部を例えばNiやPtを用いてシリサイド化した後、基板上の全面に、コンタクトホールエッチングストッパーとなる例えばシリコン窒化膜と層間絶縁膜となる例えばシリコン酸化膜とを順次形成し、その後、平坦化処理などの工程を行うことにより、図1に示す本実施形態の半導体装置を完成させる。
【0084】
以上に説明した本実施形態の製造方法によると、ゲートパターニングのためのフォトリソグラフィーを行う際に、半導体基板101上に、引っ張り内部応力を持つ金属含有膜110Aと圧縮内部応力を持つ金属含有膜116Aとが形成されているため、半導体基板101に反りが生じることを抑制することができるので、フォトリソグラフィーを高精度で実施することができる。
【0085】
尚、本実施形態の製造方法において、PMOSのメタル電極となる金属含有膜110Aを形成した後、NMOSのメタル電極となる金属含有膜116Aを形成したが、これに代えて、金属含有膜116Aを形成した後、金属含有膜110Aを形成してもよい。
【0086】
また、本実施形態の製造方法において、PMOSの圧縮内部応力を持つメタル電極となる金属含有膜110Aを形成する際に、ALD法を用いたが、これに代えて、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、又はMOCVD法等を用いてもよい。
【0087】
また、本実施形態の製造方法において、NMOSの圧縮内部応力を持つメタル電極となる金属含有膜116Aを形成する際に、反応性スパッタリング法を用いたが、これに限らず、例えば、2極スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオン化スパッタリング法、又はイオンビームスパッタリング法等を用いてもよい。
【0088】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0089】
図7(a)〜(e)及び図8(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0090】
まず、図7(a)に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板201上に、例えばシリコン酸化膜からなり且つSTI形状を持つ素子分離層204によって絶縁分離されたn型ウェル領域202及びp型ウェル領域203を形成する。
【0091】
次に、半導体基板201上に、例えば熱酸化法により膜厚4nm程度のシリコン酸化膜205Aを形成した後、シリコン酸化膜205A上に、例えばCVD法により膜厚100nm〜200nm程度のポリシリコン膜206Aを堆積し、その後、ポリシリコン膜206A上に、例えば膜厚30nm〜100nm程度のシリコン窒化膜207Aを堆積する。
【0092】
次に、ゲート電極形成領域を覆うレジストパターン(図示省略)をマスクとして、シリコン窒化膜207A、ポリシリコン膜206A及びシリコン酸化膜205Aに対して順次エッチング加工を行うことにより、図7(b)に示すように、n型ウェル領域202及びp型ウェル領域203のそれぞれの上に、シリコン酸化膜からなるダミーゲート絶縁膜205、ポリシリコンからなるダミーゲート電極206、及びシリコン窒化膜からなるハードマスク層(保護膜)207が順次積層されてなるダミーゲート構造を形成する。続いて、例えばハードマスク層207をマスクとして、p型ウェル領域203にn型不純物として例えばリンを浅くイオン注入することによって、n型エクステンション領域208を形成する。また、例えばハードマスク層207をマスクとして、n型ウェル領域202にP型不純物として例えばホウ素を浅くイオン注入することによって、p型エクステンション領域209を形成する。
【0093】
次に、基板上の全面に、例えばCVD法によりシリコン酸化膜を堆積した後、当該シリコン酸化膜の全面に対して異方性ドライエッチングを行うことによって、図7(c)に示すように、NMOS領域及びPMOS領域のそれぞれのダミーゲート構造の側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサ210を形成する。続いて、例えば絶縁性サイドウォールスペーサ210及びハードマスク層207をマスクとして、p型ウェル領域203にn型不純物を深くイオン注入することによって、n型ソース・ドレイン領域211を形成する。また、例えば絶縁性サイドウォールスペーサ210及びハードマスク層207をマスクとして、n型ウェル領域202にp型不純物を深くイオン注入することによって、p型ソース・ドレイン領域212を形成する。
【0094】
次に、図示は省略しているが、n型ソース・ドレイン領域211及びp型ソース・ドレイン領域212のそれぞれの表面全面に、例えばスパッタリング法によりチタン、コバルト、ニッケル又は白金のいずれかを含んだ高融点金属膜を堆積させた後、当該高融点金属膜と各ソース・ドレイン領域(シリコン領域)とが接触しているところでシリサイド化反応を生じさせる。これにより、n型ソース・ドレイン領域211及びp型ソース・ドレイン領域212のそれぞれの表面部に高融点金属シリサイド膜が形成される。その後、未反応の高融点金属膜を除去する。
【0095】
次に、図7(d)に示すように、ハードマスク層207上を含む基板上の全面を被覆するように例えばCVD法等によりシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜213を堆積した後、ハードマスク層207の上面が露出するまで層間絶縁膜213に対してCMP(chemical mechanical polishing )を行う。
【0096】
次に、層間絶縁膜213つまりシリコン酸化膜がエッチング耐性を有すると共にハードマスク層207が容易にエッチングされるエッチング処理、例えば熱りん酸によるエッチング処理によって、図7(e)に示すように、ハードマスク層207を除去する。続いて、ダミーゲート電極206とダミーゲート絶縁膜205との間に選択比を持つ洗浄液、例えば水酸化カリウムなどのアルカリ性水溶液によってダミーゲート電極206を除去する。続いて、前述のエッチングにより露出したダミーゲート絶縁膜205の表面に対して、例えばアンモニア及びフッ化水素を含むエッチングガスによる処理を行い、それにより生成された生成物を分解及び蒸発させることによってダミーゲート絶縁膜205を除去する。以上のようにして、NMOS領域にゲート電極用溝214を形成すると共にPMOS領域にゲート電極用溝215を形成する。
【0097】
次に、例えば熱酸化法により、ゲート電極用溝214及び215のそれぞれの内壁面及び底面並びに層間絶縁膜213の上面をシリコン酸化膜によって被覆した後、当該シリコン酸化膜上に、Hf又はZrなどの4族元素を主成分とした酸化物、Hf若しくはZrとSiとの酸化物(シリケート)、Hf若しくはZrとAlとの酸化物(アルミネート)、又はこれらの酸化物にプラズマ窒化やアンモニア窒化によって窒素を添加した酸窒化物からなるHigh-k絶縁膜を形成する。これにより、シリコン酸化膜とHigh-k絶縁膜とからなるゲート絶縁膜216が形成される。ここで、High-k絶縁膜の形成には、例えば、MOCVD法、ALD法又はPVD法などを用いることができる。
【0098】
次に、図8(a)に示すように、ゲート絶縁膜216上の全面に、例えばスパッタリング法により、圧縮内部応力を持つ厚さ10〜50nm程度(好ましくは15〜25nm程度)のnチャネルメタル電極膜217を形成する。nチャネルメタル電極膜217は、例えばAl、Ta、Tiなどの金属材料からなる金属膜、それらの金属材料を含む窒化膜、シリサイド膜、炭化窒素膜若しくは炭化膜、又はそれらの金属材料のうちの2種類以上の金属を含む合金膜からなる。
【0099】
次に、図8(b)に示すように、PMOS領域に形成されたnチャネルメタル電極膜217を除去する。具体的には、例えばスピンコータなどのレジスト塗布装置により基板上の全面にレジストを塗布した後、当該レジストに対して選択的に露光を行い、その後、例えばスピンデベロッパなどのレジスト現像装置により現像を行うことにより、NMOS領域を覆うレジストパターン(図示省略)を形成する。次に、当該レジストパターンをマスクとして、例えばウェットエッチング法などのエッチング処理により、PMOS領域に形成されたnチャネルメタル電極膜217を選択的に除去する。このとき、NMOS領域に形成されているnチャネルメタル電極膜217は、前述のレジストパターンにより被覆されているため、除去されることはない。続いて、例えばプラズマアッシングなどにより、前述のレジストパターンを除去する。
【0100】
次に、図8(c)に示すように、nチャネルメタル電極膜217の上を含むゲート絶縁膜216上の全面に、例えばALD法又はCVD法により、引っ張り内部応力を持つ厚さ10〜50nm程度(好ましくは15〜25nm程度)のpチャネルメタル電極膜218を形成する。pチャネルメタル電極膜218は、例えばTi、Ta、Ru、Pt、Mo、W、Ni、Coなどの金属材料からなる金属膜、それらの金属材料を含む窒化膜、シリサイド膜、カーバイド膜(炭化膜)、又はそれらの金属材料のうちの2種類以上の金属を含む合金膜からなる。続いて、pチャネルメタル電極膜218上に、例えばCVD法又はALD法などにより導電体材料膜219をゲート電極用溝214及び215が埋まるように成膜する。導電体材料膜219は例えば金属、ポリシリコン又はシリコンゲルマニウムなどからなり、好ましくは、タングステンからなる。導電体材料膜219の成膜条件は、プロセスガスが例えばWF6 、H2 、SiH4 等であり、基板温度が350℃〜450℃であり、圧力が1Torr(約133Pa)〜100Torr(約13300Pa)である。
【0101】
続いて、図8(d)に示すように、例えばCMPなどの研磨により、ゲート電極用溝214及び215の外部に形成されているゲート絶縁膜216、nチャネルメタル電極膜217、pチャネルメタル電極膜218及び導電体材料膜219を除去することにより、トランジスタ構造を完成させる。
【0102】
以上に説明した本実施形態の製造方法により得られる半導体装置によると、第1の実施形態の半導体装置と同様の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。すなわち、本実施形態の製造方法によると、第1の実施形態のように、各メタル電極膜217及び218がチャネル領域の端部で切断されていないため、言い換えると、各メタル電極膜217及び218がゲート電極用溝214及び215の底面から内壁面まで連続的に形成されているため、各メタル電極膜217及び218からチャネル領域に、より大きな歪を効果的に印加することが可能となる。
【0103】
尚、本実施形態において、NMOS領域のnチャネルメタル電極膜217上に形成されているpチャネルメタル電極膜218を除去していないが、当該pチャネルメタル電極膜218とNMOS領域のチャネル領域との間には、ゲート絶縁膜216及びnチャネルメタル電極膜217が介在しているため、当該pチャネルメタル電極膜218とNMOS領域のチャネル領域との距離が離れているので、当該pチャネルメタル電極膜218の引っ張り応力内部がNMOSに悪影響を及ぼすことはほとんどない。しかし、NMOS領域のnチャネルメタル電極膜217上に形成されているpチャネルメタル電極膜218を除去してもよいことは言うまでもない。
【0104】
また、本実施形態において、NMOSのメタル電極となるnチャネルメタル電極膜217を形成した後、PMOSのメタル電極となるpチャネルメタル電極膜218を形成したが、これに代えて、pチャネルメタル電極膜218を形成した後、nチャネルメタル電極膜217を形成してもよい。
【0105】
また、本実施形態において、NMOSの圧縮内部応力を持つメタル電極となるnチャネルメタル電極膜217を形成する際に、スパッタリング法を用いたが、これに限らず、例えば、2極スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオン化スパッタリング法、又はイオンビームスパッタリング法等を用いてもよい。
【0106】
また、本実施形態において、PMOSの圧縮内部応力を持つメタル電極となるpチャネルメタル電極膜218を形成する際に、ALD法又はCVD法を用いたが、これに限らず、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、又はMOCVD法等を用いてもよい。
【0107】
また、本実施形態において、nチャネルメタル電極膜217及びpチャネルメタル電極膜218として、前述の材料膜に限らず、第1の実施形態の各メタル電極膜と同様の材料膜を用いることができる。
【0108】
また、本実施形態において、NMOSのn型ソース・ドレイン領域211に炭素が導入されていてもよいし、NMOSのゲート電極構造の上を含む半導体基板201の上に、引っ張り応力を持つライナー膜(例えばSiN膜)が形成されていてもよい。
【0109】
また、本実施形態において、PMOSのn型ソース・ドレイン領域212にゲルマニウムが導入されていてもよいし、PMOSのゲート電極構造の上を含む半導体基板201の上に、圧縮応力を持つライナー膜(例えばSiN膜)が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、半導体集積回路を用いる種々の電子機器に好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0111】
101 半導体基板
102 n型ウェル領域
103 p型ウェル領域
104 素子分離層
105 PMOS(pチャネルトランジスタ)
106 NMOS(nチャネルトランジスタ)
107 p型ソース・ドレイン領域
108 p型エクステンション領域
109 ゲート絶縁膜
109A 絶縁膜
110 メタル電極
110A 金属含有膜
111 ポリシリコン電極
112 絶縁性サイドウォールスペーサ
113 n型ソース・ドレイン領域
114 n型エクステンション領域
115 ゲート絶縁膜
116 メタル電極
116A 金属含有膜
117 ポリシリコン電極
118 絶縁性サイドウォールスペーサ
201 半導体基板
202 n型ウェル領域
203 p型ウェル領域
204 素子分離層
205 ダミーゲート絶縁膜
205A シリコン酸化膜
206 ダミーゲート電極
206A ポリシリコン膜
207 ハードマスク層(保護膜)
207A シリコン窒化膜
208 n型エクステンション領域
209 p型エクステンション領域
210 絶縁性サイドウォールスペーサ
211 n型ソース・ドレイン領域
212 p型ソース・ドレイン領域
213 層間絶縁膜
214 ゲート電極用溝
215 ゲート電極用溝
216 ゲート絶縁膜
217 nチャネルメタル電極膜
218 pチャネルメタル電極膜
219 導電体材料膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板におけるnチャネルトランジスタ形成領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極を備え、
前記ゲート電極は、圧縮内部応力を持つnチャネルメタル電極を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記nチャネルメタル電極は、10nm以上で且つ50nm以下の厚さを持つことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記nチャネルメタル電極は、15nm以上で且つ25nm以下の厚さを持つことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記nチャネルメタルゲート電極は、Al、Ti、Ta、W及びRuを含む金属群の中から選ばれた1つの金属からなる金属膜、前記金属群の中から選ばれた複数の金属からなる金属合金膜、前記金属群の中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む窒化膜若しくは炭化窒化膜、又は前記金属群の中から選ばれた少なくとも1つの金属とシリコンとを含む窒化膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記nチャネルメタル電極は前記ゲート絶縁膜と接することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極は、前記nチャネルメタル電極上に形成されたポリシリコン電極又はシリコンゲルマニウム電極をさらに有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜は高誘電率膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記基板はシリコン基板であり、
前記シリコン基板における前記ゲート電極の両側には、炭素が導入されたソース・ドレイン領域が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極の上を含む前記基板の上には、引っ張り応力を持つライナー膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記ライナー膜はSiN膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置を製造する方法であって、
前記基板上に前記ゲート絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記nチャネルメタル電極となる金属含有膜を少なくとも有する導電膜を形成する工程(b)と、
前記導電膜をパターニングして前記ゲート電極を形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記基板にn型不純物を導入してエクステンション領域を形成する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、前記ゲート電極の側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサを形成する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、前記基板にn型不純物を導入してソース・ドレイン領域を形成する工程(f)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置を製造する方法であって、
前記基板上にダミーゲート構造を形成する工程(a)と、
前記工程(a)の後に、前記基板にn型不純物を導入してエクステンション領域を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記ダミーゲート構造の側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサを形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記基板にn型不純物を導入してソース・ドレイン領域を形成する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、前記ダミーゲート構造の頂部が露出するように前記基板を絶縁膜により覆う工程(e)と、
前記ダミーゲート構造を除去して前記絶縁膜に凹部を形成する工程(f)と、
前記凹部の底面上及び側壁上に前記ゲート絶縁膜を形成する工程(g)と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記nチャネルメタル電極となる金属含有膜を少なくとも有する導電膜を前記凹部が埋まるように形成する工程(h)と、
前記凹部の外側に位置する前記導電膜を除去して前記ゲート電極を形成する工程(i)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ダミーゲート構造は、ダミーゲート絶縁膜、ダミーポリシリコン電極及び保護膜が順次積層されてなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記nチャネルメタル電極となる前記金属含有膜を、2極スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオン化スパッタリング法、又はイオンビームスパッタリング法により形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
基板におけるpチャネルトランジスタ形成領域上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極を備え、
前記ゲート電極は、引っ張り内部応力を持つpチャネルメタル電極を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置において、
前記pチャネルメタル電極は、10nm以上で且つ50nm以下の厚さを持つことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項16に記載の半導体装置において、
前記pチャネルメタル電極は、15nm以上で且つ25nm以下の厚さを持つことを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記pチャネルメタルゲート電極は、Al、Ti、Ta、W及びRuを含む金属群の中から選ばれた1つの金属からなる金属膜、前記金属群の中から選ばれた複数の金属からなる金属合金膜、前記金属群の中から選ばれた少なくとも1つの金属を含む窒化膜若しくは炭化窒化膜、又は前記金属群の中から選ばれた少なくとも1つの金属とシリコンとを含む窒化膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記pチャネルメタル電極は前記ゲート絶縁膜と接することを特徴とする半導体装置。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極は、前記pチャネルメタル電極上に形成されたポリシリコン電極又はシリコンゲルマニウム電極をさらに有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート絶縁膜は高誘電率膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記基板はシリコン基板であり、
前記シリコン基板における前記ゲート電極の両側には、ゲルマニウムが導入されたソース・ドレイン領域が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極の上を含む前記基板の上には、圧縮応力を持つライナー膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項24】
請求項23に記載の半導体装置において、
前記ライナー膜はSiN膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項25】
請求項15〜24のいずれか1項に記載の半導体装置を製造する方法であって、
前記基板上に前記ゲート絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記pチャネルメタル電極となる金属含有膜を少なくとも有する導電膜を形成する工程(b)と、
前記導電膜をパターニングして前記ゲート電極を形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記基板にp型不純物を導入してエクステンション領域を形成する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、前記ゲート電極の側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサを形成する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、前記基板にp型不純物を導入してソース・ドレイン領域を形成する工程(f)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項26】
請求項15〜24のいずれか1項に記載の半導体装置を製造する方法であって、
前記基板上にダミーゲート構造を形成する工程(a)と、
前記工程(a)の後に、前記基板にp型不純物を導入してエクステンション領域を形成する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記ダミーゲート構造の側壁上に絶縁性サイドウォールスペーサを形成する工程(c)と、
前記工程(c)の後に、前記基板にp型不純物を導入してソース・ドレイン領域を形成する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、前記ダミーゲート構造の頂部が露出するように前記基板を絶縁膜により覆う工程(e)と、
前記ダミーゲート構造を除去して前記絶縁膜に凹部を形成する工程(f)と、
前記凹部の底面上及び側壁上に前記ゲート絶縁膜を形成する工程(g)と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記pチャネルメタル電極となる金属含有膜を少なくとも有する導電膜を前記凹部が埋まるように形成する工程(h)と、
前記凹部の外側に位置する前記導電膜を除去して前記ゲート電極を形成する工程(i)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項27】
請求項26に記載の半導体装置の製造方法において、
前記ダミーゲート構造は、ダミーゲート絶縁膜、ダミーポリシリコン電極及び保護膜が順次積層されてなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記pチャネルメタル電極となる前記金属含有膜を、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法、又はALD法により形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項29】
基板におけるnチャネルトランジスタ形成領域上に第1のゲート絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極と、
前記基板におけるpチャネルトランジスタ形成領域上に第2のゲート絶縁膜を介して形成された第2のゲート電極とを備え、
前記第1のゲート電極は、圧縮内部応力を持つnチャネルメタル電極を有し、
前記第2のゲート電極は、引っ張り内部応力を持つpチャネルメタル電極を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項30】
請求項29に記載の半導体装置を製造する方法であって、
前記nチャネルメタル電極と前記pチャネルメタル電極とが互いに相反する向きの応力を持つことにより、前記各ゲート電極を形成するためのリソグラフィー時における前記基板の反りを抑制し、それによって、前記各ゲート電極とその下地となる活性領域との重ね合わせ精度を向上させることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29303(P2011−29303A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171882(P2009−171882)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】