半導体装置およびその製造方法
【課題】耐熱性に優れたシリサイド層をソース・ドレイン領域に有するp型MOSFETを備える半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置100は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、半導体基板2上のゲート電極12の両側に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたSi:C16層と、半導体基板2、エレベーテッド層15、およびSi:C16内のゲート電極12の両側に形成されたp型のソース・ドレイン領域19と、Si:C層16上に形成されたシリサイド層17と、を有する。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置100は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、半導体基板2上のゲート電極12の両側に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたSi:C16層と、半導体基板2、エレベーテッド層15、およびSi:C16内のゲート電極12の両側に形成されたp型のソース・ドレイン領域19と、Si:C層16上に形成されたシリサイド層17と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲート電極やソース・ドレイン領域の電気抵抗を低減するために、これらの上に金属シリサイドを形成したトランジスタが知られている。
【0003】
しかし、キャパシタ等のトランジスタの上層の部材を高温条件下で形成するためには、トランジスタを構成する各部材に耐熱性が求められるが、Niシリサイド等の通常用いられる金属シリサイドの耐熱性は高くない。
【0004】
一方、Si:C結晶上にNiシリサイドを形成することにより、Niシリサイドの耐熱性が向上することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Extended Abstracts of the 2007 International Conference on Solid State Devices and Materials, Tsukuba, 2007, pp. 872-873.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性に優れたシリサイド層をソース・ドレイン領域に有するp型MOSFETを備える半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側に形成されたエレベーテッド層と、前記エレベーテッド層上に形成されたSi:C層と、前記半導体基板、前記エレベーテッド層、および前記Si:C内の前記ゲート電極の両側に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、を有する半導体装置を提供する。
【0008】
また、本発明の他の態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記半導体基板の表面近傍の前記ゲート電極の両側に形成された、Si結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であるSi:C層と、前記半導体基板および前記Si:C内に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、を有する半導体装置を提供する。
【0009】
また、本発明の他の態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側にエレベーテッド層を形成する工程と、前記エレベーテッド層上にSi:C層を形成する工程と、前記Si:C層および前記半導体基板にp型不純物を注入して、ソース・ドレイン領域の少なくとも一部を形成する工程と、前記Si:C層の上部をシリサイド化して、シリサイド層を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性に優れたシリサイド層をソース・ドレイン領域に有するp型MOSFETを備える半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図2A】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図2B】(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図9】本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図10】本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図11】(a)〜(d)は、本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の断面図である。半導体装置100は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)10と、p型MOSFET10を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET10上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET10のソース・ドレイン領域19とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0013】
半導体基板2は、Si結晶等のSi系結晶からなる。
【0014】
素子分離領域3は、例えば、SiO2等の絶縁材料からなり、深さ200〜300nmのSTI(Shallow Trench Isolation)構造を有する。
【0015】
層間絶縁膜4a、4bは、TEOS、BPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)、SiN等の絶縁材料からなる。
【0016】
キャパシタ5は、上部電極5a、下部電極5c、およびこれらに挟まれた絶縁膜5bからなる。上部電極5aおよび下部電極5cは、TiN、W等の導電材料からなり、絶縁膜5bは、Ta2O3、ZrO3、HfSiON等の絶縁材料からなる。
【0017】
コンタクトプラグ6は、例えば、Ti、TiN等からなるバリアメタルに覆われたW等の導電材料からなる。
【0018】
p型MOSFET10は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、半導体基板2上のゲート側壁14の両側に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたSi:C層16と、Si:C層16上に形成されたシリサイド層17と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域19と、を含む。
【0019】
ゲート絶縁膜11は、例えば、SiO2、SiN、SiON等の絶縁材料、またはHfSiON等の高誘電率材料からなる。また、ゲート絶縁膜11は、例えば、0.5〜6nmの厚さを有する。
【0020】
ゲート電極12は、例えば、導電型不純物を含む多結晶Si、多結晶SiGe等のSi系多結晶からなる。また、ゲート電極12は、金属からなるメタルゲート電極であってもよく、さらに、金属層と、金属層上のSi系多結晶層からなる二層構造を有してもよい。なお、ゲート電極12がメタルゲート電極である場合は、ゲート電極12上のシリサイド層18は形成されない。また、ゲート電極12は、例えば、50〜200nmの厚さを有する。
【0021】
オフセットスペーサ13、およびゲート側壁14は、SiO2、SiN等の絶縁材料からなる。また、ゲート側壁14は、SiN、SiO2、TEOS(Tetraethoxysilane)等の複数種の絶縁材料からなる2層構造、更には3層以上の構造であってもよい。
【0022】
エレベーテッド層15は、Si結晶等のSi系結晶からなり、半導体基板2と同じ材料を用いて形成することができる。また、エレベーテッド層15は、半導体基板2の上面を下地としたエピタキシャル結晶成長等により形成される。なお、エレベーテッド層15中にSi:C層16中のCが拡散してもよい。
【0023】
Si:C層16は、Si:C結晶からなる。また、Si:C層16は、エレベーテッド層15の上面を下地としたエピタキシャル結晶成長等により形成される。Si:C層16は、半導体基板2上にエレベーテッド層15を介して形成されるため、Si:C層16の底部は、半導体基板2とゲート絶縁膜11との境界よりも高い位置に位置する。
【0024】
Si:C結晶は、Si結晶よりも格子定数が小さいため、Si:C結晶と格子整合するSi結晶に歪みを与える。このため、Si:C層16と半導体基板2中のp型MOSFET10のチャネル領域との距離が小さい場合、Si:C層16はチャネル領域にチャネル方向の伸張歪みを発生させ、キャリア(正孔)の移動度を低下させるおそれがある。そこで、本実施の形態のように半導体基板2上にエレベーテッド層15を介してSi:C層16を形成することにより、Si:C層16に生じる歪みが半導体基板2中のチャネル領域に影響しないようにし、キャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0025】
なお、エレベーテッド層15を形成せずに、半導体基板2上に直接Si:C層16を形成してもよい。この場合であっても、半導体基板2中にSi:C層16を埋め込む場合よりも、チャネル領域への歪み印加を抑えることができる。しかし、Si:C層16形成によるトランジスタ特性劣化を抑えるには、エレベーテッド層15を形成することが好ましい。
【0026】
Si:C層16中のC濃度は、3.0原子%以下であることが好ましい。これは、3.0原子%よりも高いと、結晶欠陥が発生するおそれが高くなるためである。なお、Cがごく僅かでもSi:C層16に含まれていれば、Si:C層16の耐熱性を向上させる効果は得られる。
【0027】
さらに、半導体基板2に発生させる歪みを低減するため、Si結晶の置換位置のC濃度を低くすることが好ましい。Si結晶の置換位置のC濃度を低くして、格子間位置に注入されるCの割合を増やすことにより、シリサイド層17の耐熱性を確保しつつ、半導体基板2中のチャネル領域に与える歪みを低減することによりキャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0028】
エピタキシャル結晶成長法によりSi:C結晶を成長させる際に、SiH3CH3等のCの原料ガスの流量または分圧を適切な大きさに制御することにより、Si結晶の置換位置のC濃度が低いSi:C層16を形成することができる。例えば、流量を0.03slm程度に制御する。または、分圧を20Torr程度に制御する。また、600℃以上の高温条件下でSi:C結晶をエピタキシャル成長させることにより、Si結晶の置換位置のC濃度が低いSi:C層16を形成することができる。ただし、ソース・ドレイン領域19のエクステンション領域中の不純物の拡散を抑えるために、温度条件が850℃よりも大きくならないことが好ましい。また、イオン注入法を用いてエレベーテッド層15にCを注入することによりSi:C層16を形成した場合においても、Si:C層16におけるSi結晶の置換位置のC濃度を低くすることができる。
【0029】
特に、キャリア移動度の低下を効果的に抑えるためには、Si:C層16におけるSi結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であることが好ましい。なお、Si:C層16における格子位置のC濃度は、広いパターン領域に対してXRD(X-Ray Diffraction)を用いることにより精度良く分析することができる。或いは、NBD(Nano-Beam Diffraction)等の測定手段により、チャネル部分に印加されるストレスから、ある程度のC濃度を見積もることができる。また、Si:C層16における全体のC濃度は、広いパターン領域に対してSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いることにより、精度良く分析することができる。或いは、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)等の測定手段により求めることができる。
【0030】
シリサイド層17、18は、Ni、Co、Er、Pt、Pd等の金属を含む金属シリサイドからなり、ソース・ドレイン領域19およびゲート電極12のそれぞれの電気抵抗を低減する。
【0031】
シリサイド層17は、Si:C層16上に形成されているため、Si結晶からなる層上に形成された金属シリサイドと比較して、耐熱性に優れる。
【0032】
ソース・ドレイン領域19は、半導体基板2、エレベーテッド層15、およびSi:C層16にB、BF2等のp型の導電型不純物を注入することにより形成される。
【0033】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を示す。
【0034】
(半導体装置の製造)
図2A(a)〜(d)、図2B(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の製造工程を示す断面図である。
【0035】
まず、図2A(a)に示すように、半導体基板2内に素子分離領域3、ゲート絶縁膜11、ゲート電極12、およびキャップ膜7を形成する。その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)等の熱処理を行い、ウェルおよびチャネル領域内の導電型不純物を活性化させる。
【0036】
また、図示しないが、素子分離領域3を形成した後、n型のウェルおよびp型のチャネル領域を形成する。例えば、Pを用いてn型ウェルを形成する場合は、注入エネルギー500keV、注入量3.0×1013cm−2の条件でイオン注入を行う。Bを用いてp型チャネル領域を形成する場合は、注入エネルギー10keV、注入量1.5×1013cm−2の条件でイオン注入を行う。なお、これらのイオン注入は、半導体基板2上の厚さ10nm以下の自然酸化膜を通して行われる。
【0037】
ゲート絶縁膜11、ゲート電極12、およびキャップ膜7は、例えば、以下のような方法により形成される。まず、ウェルおよびチャネル領域を形成した後、半導体基板2上の自然酸化膜を除去し、熱酸化法、LPCVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition)法等によりSiO2膜等のゲート絶縁膜11の材料膜を半導体基板2上に形成し、その上にLPCVD法により多結晶Si膜等のゲート電極12の材料膜およびSiN等のキャップ膜7の材料膜を形成する。次に、光リソグラフィ法、X線リソグラフィ法、または電子ビームリソグラフィ法とRIE(Reactive Ion Etching)法の組み合わせにより、これらの積層された材料膜をパターニングして、キャップ膜7、ゲート電極12、およびゲート絶縁膜11に加工する。
【0038】
次に、図2A(b)に示すように、オフセットスペーサ13およびp型のソース・ドレイン領域19の浅い領域を形成する。
【0039】
具体的には、例えば、熱酸化法によりゲート電極12の表面にSiO2膜を1〜2nmの厚さに形成した後、その上にLPCVD法によりSiO2膜等を3〜12nmの厚さに形成する。そして、RIE法によりこれらの膜をオフセットスペーサ13に加工する。その後、オフセットスペーサ13およびキャップ膜7をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2上の全面に導電型不純物を注入し、ハロー領域(図示しない)およびソース・ドレイン領域19の浅い領域を形成する。さらに、注入した導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。
【0040】
ここで、Asを用いてハロー領域を形成する場合は、例えば、注入エネルギー40keV、注入量3.0×1013cm−2、注入角度30°(半導体基板2の表面に垂直な方向を基準とした角度)の条件でイオン注入を行う。また、BF2を用いてソース・ドレイン領域19の浅い領域を形成する場合は、例えば、注入エネルギー1〜3keV、注入量5.0×1014〜1.5×1015cm−2の条件でイオン注入を行う。
【0041】
次に、図2A(c)に示すように、ゲート側壁14を形成する。
【0042】
具体的には、例えば、LPCVD法により半導体基板2上の全面にSiO2膜等を形成した後、RIE法によりこれをゲート側壁14に加工する。
【0043】
次に、図2A(d)に示すように、半導体基板2上のゲート側壁14の両側にエレベーテッド層15およびSi:C層16を形成する。
【0044】
具体的には、例えば、水素雰囲気中において700℃以上の高温下で半導体基板2を加熱し、SiH4、SiH2Cl2、SiHCl3、等のSiの原料ガスをHClガス、水素ガス等とともに半導体基板2上に供給することにより、Si結晶をエピタキシャル成長させ、エレベーテッド層15を形成する。また、Si:C層16は、上記のガスに加えてSiH3CH3を用いることにより、エレベーテッド層15と同様の条件により形成することができる。
【0045】
なお、Si結晶からなるエレベーテッド層15の表面近傍にCをイオン注入することによりSi:C層16を形成してもよい。この場合、例えば、注入エネルギー5keV、注入量5.0×1013cm−2の条件でCのイオン注入を行う。Si:C層16をCのイオン注入により形成する場合、Si:C層16をエピタキシャル成長により形成する場合と比較して、エレベーテッド層15を厚く形成しておくことが好ましい。
【0046】
次に、図2B(e)に示すように、キャップ膜7を除去した後、p型のソース・ドレイン領域19の深い高濃度領域を形成する。
【0047】
具体的には、例えば、RIE法または170℃に加熱したリン酸を用いたウェットエッチング法によりキャップ膜7を除去した後、オフセットスペーサ13およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2上の全面に導電型不純物を注入し、ソース・ドレイン領域19の深い高濃度領域を形成する。さらに、注入した導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。
【0048】
次に、図2B(f)に示すように、Si:C層16およびゲート電極12上に、それぞれシリサイド層17、18を形成する。
【0049】
Niシリサイドからなるシリサイド層17、18を形成する場合の形成方法の一例を以下に示す。まず、フッ酸処理によりSi:C層16およびゲート電極12上の自然酸化膜を除去する。次に、スパッタ法等により半導体基板2上の全面にNi膜を形成した後、温度条件400〜500℃のRTA等の熱処理により、Ni膜とSi:C層16およびNi膜とゲート電極12とをシリサイド反応させ、シリサイド層17、18を形成する。次に、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いてNi膜の未反応部分を除去する。
【0050】
なお、Ni膜を形成した後に、その上にTiN膜を形成する工程や、Ni膜を形成し、一度250℃〜400℃の低温RTAを行った後に、これを硫酸と過酸化水素水との混合溶液を用いてエッチングし、再度、低シート抵抗化のために400〜550℃のRTAを行う工程(2ステップアニール)を行ってもよい。
【0051】
なお、シリサイド層18をシリサイド層17と別工程で形成してもよい。これにより、シリサイド層18を厚くすることができる。シリサイド層18は、ソース・ドレイン領域19上のシリサイド層17と異なり、厚くしても接合リークの発生等の問題が発生するおそれがない。
【0052】
次に、図2B(g)に示すように、層間絶縁膜4aおよびコンタクトプラグ6を形成する。
【0053】
これらの部材の具体的な形成方法の一例を以下に示す。まず、CVD法等により、エッチングストッパとしてのライナー膜(図示しない)を半導体基板2上の全面に形成する。次に、TEOS膜等の層間絶縁膜4aの材料膜をライナー膜上に形成し、CMP(Chemical Vapor Deposition)等の平坦化処理により、これを層間絶縁膜4aに加工する。次に、リソグラフィ法とRIE法の組み合わせにより、層間絶縁膜4a中にコンタクトホールを形成する。次に、半導体基板2上の全面にコンタクトホールを埋めるようにTi等のバリアメタルの材料膜、およびW等のコンタクトプラグ6の材料膜を形成し、CMP等の平坦化処理により、これらをバリアメタルを有するコンタクトプラグ6に加工する。
【0054】
なお、上層の配線(図示しない)とソース・ドレイン領域19とを接続するコンタクトプラグ、およびゲート電極12とソース・ドレイン領域19とを接続するコンタクトプラグをコンタクトプラグ6と同時に形成してもよい。
【0055】
次に、図2B(h)に示すように、コンタクトプラグ6の上面に接続されるキャパシタ5を形成する。
【0056】
キャパシタ5の具体的な形成方法の一例を以下に示す。まず、PVD(Physical Vapor Deposition)法またはCVD法により、下部電極5c、絶縁膜5b、および上部電極5aの材料膜を半導体基板2上の全面に形成する。次に、リソグラフィ法とRIE法の組み合わせにより、これらの材料膜を部電極5c、絶縁膜5b、および上部電極5aに加工し、キャパシタ5を得る。
【0057】
その後、層間絶縁膜4a上に層間絶縁膜4bを形成する。
【0058】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、Si:C層16上にシリサイド層17を形成するため、シリサイド層17は優れた耐熱性を有する。このため、p型MOSFET10の上層の各部材を高温条件下で形成することができる。
【0059】
特に、キャパシタ5のようなトランジスタの上層のキャパシタを形成する場合、キャパシタ絶縁膜の誘電率の確保や、キャパシタからのゲートリーク電流の発生の抑制のために、ある程度の高温条件下でキャパシタ絶縁膜を成膜することが求められる。なお、トランジスタの上層にキャパシタを形成する場合、トランジスタの下層(基板内)にキャパシタを形成する場合と比較して、比較的容易に容量の大きなキャパシタを得ることができる。
【0060】
また、本発明の第1の実施の形態によれば、半導体基板2上にエレベーテッド層15を介してSi:C層16を形成することにより、Si:C層16で生じる歪みが半導体基板2中のチャネル領域に影響しないようにし、キャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0061】
また、本実施の形態は、シリサイド層17がNiシリサイドまたはPtを添加したNiシリサイドからなる場合に、特に効果がある。これらの金属シリサイドは、低温で形成でき、優れた成形性を有するため、Coシリサイド等の高温条件下で形成される金属シリサイドと比較して、接合リーク等の問題が発生するおそれが少ない。その一方、NiシリサイドまたはPtを添加したNiシリサイドは、比較的耐熱性が低い。このため、本実施の形態を適用することにより、耐熱性の低さという弱点を補うことができる。
【0062】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態は、ソース・ドレイン領域上に形成されるシリサイド層の厚さにおいて、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0063】
(半導体装置の構成)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置200の断面図である。半導体装置200は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET20と、p型MOSFET20を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET20上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET20のソース・ドレイン領域19とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0064】
p型MOSFET20は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、半導体基板2上のゲート側壁14の両側に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたシリサイド層21と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域19と、を含む。
【0065】
シリサイド層21は、Ni、Co、Er、Pt、Pd等の金属を含む金属シリサイドからなり、ソース・ドレイン領域19の電気抵抗を低減する。
【0066】
シリサイド層21は、第1の領域21aと、第1の領域21a上の第2の領域21bからなる。第1の領域21aは、エレベーテッド層15の上部がシリサイド化した領域であり、第2の領域21bは、Si:C層16がシリサイド化した領域である。このため、第2の領域21bに含まれるCの濃度は、第1の領域21aに含まれるCの濃度よりも高い。
【0067】
シリサイド層21はCを含むため、第1の実施の形態におけるシリサイド17と同様に、耐熱性に優れる。
【0068】
また、金属シリサイドとSi:C結晶との界面における電気抵抗よりも、金属シリサイドとSi結晶との界面における電気抵抗の方が小さい。このため、第1の実施の形態におけるシリサイド層17とSi:C層16との界面における電気抵抗よりも、本実施の形態におけるシリサイド層21とエレベーテッド層15(または半導体基板2)との界面における電気抵抗の方が小さく、寄生抵抗を低減することができる。
【0069】
シリサイド層21は、シリサイド層17と同様の方法により形成される。ただし、シリサイド層17がSi:C層16の上部をシリサイド化して形成されるのに対して、シリサイド層21は、Si:C層16の全領域およびエレベーテッド層15の上部または全領域をシリサイド化することにより形成される。または、エレベーテッド層15が形成されない場合は、Si:C層16の全領域および半導体基板2の上部をシリサイド化することにより形成される。例えば、シリサイド反応に用いるNi膜等の金属膜の厚さを、シリサイド層17を形成する場合よりも厚くすることにより、シリサイド層21を形成する。
【0070】
なお、シリサイド層21が厚くなり過ぎると、接合リークが発生するおそれが高くなるため、シリサイド層21は、その底部とソース・ドレイン領域19の深い高濃度領域の底部との間にある程度の距離を設けることが好ましい。
【0071】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、底部がエレベーテッド層15または半導体基板2に接するシリサイド層21を形成することにより、p型MOSFET200の寄生抵抗を第1の実施の形態のp型MOSFET100の寄生抵抗よりも低減し、トランジスタ特性の劣化を抑えることができる。
【0072】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態は、キャリア移動度を向上させるために、ソース・ドレイン領域にSiGe結晶等のSi結晶よりも格子定数の大きい結晶を埋め込む点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0073】
(半導体装置の構成)
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置300の断面図である。半導体装置300は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET30と、p型MOSFET30を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET30上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET30のソース・ドレイン領域32とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0074】
p型MOSFET30は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域32と、ソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域に対応する領域に埋め込まれたSiGe層31と、SiGe層31上に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたSi:C層16と、Si:C層16上に形成されたシリサイド層17と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、を含む。
【0075】
SiGe結晶は、Si結晶よりも格子定数が大きいため、SiGe結晶と格子整合するSi結晶に歪みを発生させる。このため、SiGe層31は、p型MOSFET30のチャネル領域にチャネル方向の圧縮歪みを発生させ、キャリア(正孔)の移動度を増加させることができる。なお、SiGe層31の代わりに、Si結晶よりも格子定数が大きい他の結晶からなる層を用いてもよい。
【0076】
SiGe層31に含まれるGeの濃度は、10〜40原子%であることが好ましい。また、SiGe層31は、ソース・ドレイン領域32の一部として用いられる。
【0077】
SiGe結晶とSi:C結晶は格子定数の違いが大きいため、SiGe層31上にSi:C層16を直接エピタキシャル成長させることは困難である。そのため、エレベーテッド層15がバッファ層としてSiGe層31とSi:C層16の間に形成される。なお、エレベーテッド層15中にSi:C層16中のCおよびSiGe層31中のGeの一方または両方が拡散してもよい。
【0078】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置300の製造方法の一例を示す。
【0079】
(半導体装置の製造)
図5(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置300の製造工程を示す断面図である。
【0080】
まず、図2A(a)〜図2A(c)に示したゲート側壁14を形成するまでの工程を第1の実施の形態と同様に行う。なお、ソース・ドレイン領域32の浅い領域は、第1の実施の形態のソース・ドレイン領域19の浅い領域と同じ方法により形成される。
【0081】
次に、図5(a)に示すように、キャップ膜7、オフセットスペーサ13、およびゲート側壁14をマスクとして用いて、RIE法等によるエッチングを半導体基板2に施し、溝33を形成する。
【0082】
次に、図5(b)に示すように、溝33により露出した半導体基板2の表面を下地として、溝33を埋めるようにSiGe結晶をエピタキシャル成長させ、SiGe層31を形成する。なお、SiGe結晶を成長させる際に、p型の導電型不純物をインサイチュドーピングしてもよい。
【0083】
次に、図5(c)に示すように、SiGe層31上にエレベーテッド層15およびSi:C層16を形成する。
【0084】
次に、図5(d)に示すように、キャップ膜7を除去した後、p型のソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域を形成し、さらに、シリサイド層17、18を形成する。
【0085】
具体的には、オフセットスペーサ13およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2上の全面に導電型不純物を注入し、Si:C層16、エレベーテッド層15、およびSiGe層31中にソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域を形成する。なお、ソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域は、SiGe層31下の半導体基板2にまで達するように形成されてもよい。さらに、注入した導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。なお、キャップ膜7の除去方法、ならびにエレベーテッド層15、Si:C層16、およびシリサイド層17、18の形成方法は第1の実施の形態と同様である。
【0086】
その後、層間絶縁膜4a、4b、コンタクトプラグ6、およびキャパシタ5等を第1の実施の形態と同様に形成する。
【0087】
(第3の実施の形態の効果)
本発明の第3の実施の形態によれば、SiGe層31を形成することにより、第1の実施の形態の効果に加えて、キャリア移動度が増加する効果を得ることができる。
【0088】
〔第4の実施の形態〕
本発明の第4の実施の形態は、Si:C層およびその上のシリサイド層を半導体基板中に形成する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0089】
(半導体装置の構成)
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置400の断面図である。半導体装置400は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET40と、p型MOSFET40を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET40上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET40のソース・ドレイン領域43とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0090】
p型MOSFET40は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、半導体基板2の表面近傍のゲート側壁14の両側に形成されたSi:C層41と、Si:C層41上に形成されたシリサイド層42と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域43と、を含む。
【0091】
Si:C層41におけるSi結晶の置換位置のC濃度は低い。このため、Si:C層41がチャネル領域に与える歪みは低減される。具体的には、Si:C層41全体のC濃度が3.0原子%以下であり、Si結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であることが好ましい。
【0092】
Si:C層41は、イオン注入法により半導体基板2の表面近傍にCを注入することにより形成される。イオン注入法を用いることにより、CのほとんどをSi結晶の格子間位置に注入することができる。
【0093】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置400の製造方法の一例を示す。
【0094】
(半導体装置の製造)
図7(a)〜(c)は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置400の製造工程を示す断面図である。
【0095】
まず、図2A(a)〜図2A(c)に示したゲート側壁14を形成するまでの工程を第1の実施の形態と同様に行う。なお、ソース・ドレイン領域43の浅い領域は、第1の実施の形態のソース・ドレイン領域19の浅い領域と同じ方法により形成される。
【0096】
次に、図7(a)に示すように、キャップ膜7、オフセットスペーサ13、およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2にCを注入し、Si:C層41を形成する。
【0097】
次に、図7(b)に示すように、キャップ膜7を除去した後、p型のソース・ドレイン領域43の深い高濃度領域を形成する。
【0098】
次に、図7(c)に示すように、Si:C層41およびゲート電極12上に、それぞれシリサイド層42、18を形成する。
【0099】
Niシリサイドからなるシリサイド層42、18を形成する場合の形成方法の一例を以下に示す。まず、フッ酸処理によりSi:C層41およびゲート電極12上の自然酸化膜を除去する。次に、スパッタ法等により半導体基板2上の全面にNi膜を形成した後、温度条件400〜500℃のRTA等の熱処理により、Ni膜とSi:C層41およびNi膜とゲート電極12とをシリサイド反応させ、シリサイド層42、18を形成する。次に、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いてNi膜の未反応部分を除去する。
【0100】
その後、層間絶縁膜4a、4b、コンタクトプラグ6、およびキャパシタ5等を第1の実施の形態と同様に形成する。
【0101】
(第4の実施の形態の効果)
本発明の第4の実施の形態によれば、イオン注入法を用いてSi:C層41を形成することにより、シリサイド層42の耐熱性を向上させつつ、チャネル領域の歪みを低減してキャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0102】
〔第5の実施の形態〕
本発明の第5の実施の形態は、半導体基板上にp型MOSFETに加えてn型MOSFETを形成する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0103】
(半導体装置の構成)
図8は、本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置500の断面図である。半導体装置500は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET10およびn型MOSFET50と、p型MOSFET10およびn型MOSFET50をそれぞれ他の素子から分離する素子分離領域3と、を含む。ここで、p型MOSFET10は、第1の実施の形態におけるp型MOSFET10と同様の構成を有する。なお、p型MOSFET10およびn型MOSFET50上に形成される層間絶縁膜等の部材の図示は省略する。
【0104】
n型MOSFET50は、半導体基板2上にゲート絶縁膜51を介して形成されたゲート電極52と、ゲート電極52の両側面に形成されたオフセットスペーサ53と、オフセットスペーサ53の側面に形成されたゲート側壁54と、半導体基板2上のゲート側壁54の両側に形成されたエレベーテッド層55と、エレベーテッド層55上に形成されたSi:C層56と、Si:C層56上に形成されたシリサイド層57と、ゲート電極52上に形成されたシリサイド層58と、ゲート電極52の両側に形成されたn型のソース・ドレイン領域59と、を含む。n型MOSFET50は、ソース・ドレイン領域等に含まれる不純物の導電型がn型である以外は、p型MOSFET10と同様の構成を有し、同様の方法により形成される。
【0105】
(第5の実施の形態の効果)
本発明の第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、n型MOSFET50のシリサイド層58の耐熱性を向上させることができる。
【0106】
〔第6の実施の形態〕
本発明の第6の実施の形態は、半導体基板上にp型MOSFETに加えてn型MOSFETを形成する点において、第4の実施の形態と異なる。なお、第4の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0107】
(半導体装置の構成)
図9は、本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置600の断面図である。半導体装置600は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET40およびn型MOSFET60と、p型MOSFET40およびn型MOSFET60をそれぞれ他の素子から分離する素子分離領域3と、を含む。ここで、p型MOSFET40は、第4の実施の形態におけるp型MOSFET40と同様の構成を有する。なお、p型MOSFET40およびn型MOSFET60上に形成される層間絶縁膜等の部材の図示は省略する。
【0108】
n型MOSFET60は、半導体基板2上にゲート絶縁膜61を介して形成されたゲート電極62と、ゲート電極62の両側面に形成されたオフセットスペーサ63と、オフセットスペーサ63の側面に形成されたゲート側壁64と、半導体基板2の表面近傍のゲート側壁64の両側に形成されたSi:C層66と、Si:C層66上に形成されたシリサイド層67と、ゲート電極62上に形成されたシリサイド層65と、ゲート電極62の両側に形成されたソース・ドレイン領域68と、を含む。n型MOSFET60は、ソース・ドレイン領域等に含まれる不純物の導電型がn型である以外は、p型MOSFET40と同様の構成を有し、同様の方法により形成される。
【0109】
(第6の実施の形態の効果)
本発明の第6の実施の形態によれば、第4の実施の形態の効果に加え、n型MOSFET60のシリサイド層67の耐熱性を向上させることができる。
【0110】
〔第7の実施の形態〕
本発明の第7の実施の形態は、半導体基板上にp型MOSFETに加えてn型MOSFETを形成する点において、第3の実施の形態と異なる。なお、第3の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0111】
(半導体装置の構成)
図10は、本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置700の断面図である。半導体装置700は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET30およびn型MOSFET70と、p型MOSFET30およびn型MOSFET70をそれぞれ他の素子から分離する素子分離領域3と、を含む。ここで、p型MOSFET30は、第3の実施の形態におけるp型MOSFET30と同様の構成を有する。なお、p型MOSFET30およびn型MOSFET70上に形成される層間絶縁膜等の部材の図示は省略する。
【0112】
n型MOSFET70は、半導体基板2上にゲート絶縁膜71を介して形成されたゲート電極72と、ゲート電極72の両側面に形成されたオフセットスペーサ73と、オフセットスペーサ73の側面に形成されたゲート側壁74と、ゲート電極72の両側に形成されたソース・ドレイン領域78と、ソース・ドレイン領域78の深い高濃度領域に対応する領域に埋め込まれたSi:C層77と、Si:C層77上に形成されたシリサイド層76と、ゲート電極72上に形成されたシリサイド層75と、を含む。
【0113】
Si:C結晶は、Si結晶よりも格子定数が小さいため、Si:C結晶と格子整合するSi結晶に歪みを発生させる。このため、Si:C層77は、n型MOSFET70のチャネル領域にチャネル方向の伸張歪みを発生させ、キャリア(電子)の移動度を増加させることができる。なお、Si:C層77の代わりに、Si:C結晶以外のSi結晶よりも格子定数が小さい結晶からなる層を用いてもよい。
【0114】
Si:C層77に含まれるCの濃度は、0.05〜3.0原子%であることが好ましい。これは、0.05原子%よりも低い場合には、n型MOSFET70のチャネル領域に発生する歪みが弱まり、3.0原子%よりも高いと、結晶欠陥が発生するおそれが高くなるためである。また、Si:C層77は、ソース・ドレイン領域78の一部として用いられる。
【0115】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置700の製造方法の一例を示す。
【0116】
(半導体装置の製造)
図11(a)〜(d)は、本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置700の製造工程を示す断面図である。
【0117】
まず、図11(a)に示すように、図5(a)に示した溝33を形成する工程までの工程を第3の実施の形態と同様に行い、溝33およびゲート電極72の両側の溝79を形成する。溝33、79は、キャップ膜7、ゲート電極72上のキャップ膜8、オフセットスペーサ13、73、およびゲート側壁14、74をマスクとして用いて、半導体基板2にエッチングを施すことにより、同時に形成される。
【0118】
次に、図11(b)に示すように、溝79により露出した半導体基板2の表面を下地として、溝79を埋めるようにSi:C結晶を選択的にエピタキシャル成長させ、Si:C層77を形成する。
【0119】
このとき、溝33内にSi:C結晶が成長しないように、溝33により露出した半導体基板2の表面はマスクで覆われる。このマスクは、Si:C層77を形成した後に除去される。なお、Si:C結晶を成長させる際に、n型不純物をインサイチュドーピングしてもよい。
【0120】
次に、図11(c)に示すように、溝33により露出した半導体基板2の表面を下地として、溝33を埋めるようにSiGe結晶を選択的にエピタキシャル成長させ、SiGe層31を形成する。さらに、SiGe層31の上面を下地としてエレベーテッド層15を選択的にエピタキシャル成長させ、エレベーテッド層15の上面を下地としてSi:C層16を選択的にエピタキシャル成長させる。
【0121】
このとき、Si:C層77上にSiGe結晶が成長しないように、Si:C層77の表面はマスクで覆われる。このマスクは、Si:C層16を形成した後に除去される。なお、SiGe結晶を成長させる際に、p型不純物をインサイチュドーピングしてもよい。
【0122】
次に、図11(d)に示すように、キャップ膜7、8を除去した後、p型のソース・ドレイン領域32、およびn型のソース・ドレイン領域78の深い高濃度領域を形成し、さらに、シリサイド層17、18、75、76を形成する。
【0123】
具体的には、n型のソース・ドレイン領域78の深い高濃度領域は、オフセットスペーサ73およびゲート側壁74をマスクとして用いて、イオン注入法によりSi:C層77にn型不純物を選択的に注入することにより形成される。
【0124】
このとき、Si:C層16、エレベーテッド層15、SiGe層31、およびゲート電極12にn型不純物が注入されないように、これらの表面はマスクで覆われる。このマスクは、n型不純物を注入した後に除去される。
【0125】
一方、p型のソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域は、オフセットスペーサ13およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法によりSi:C層16、エレベーテッド層15、およびSiGe層31にp型不純物を選択的に注入することにより形成される。さらに、ソース・ドレイン領域32、78中の導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。
【0126】
このとき、Si:C層77、およびゲート電極72にp型不純物が注入されないように、これらの表面はマスクで覆われる。このマスクは、p型不純物を注入した後に除去される。
【0127】
Niシリサイドからなるシリサイド層17、18、75、76を形成する場合の形成方法の一例を以下に示す。まず、フッ酸処理によりSi:C層16、Si:C層77、およびゲート電極12、72上の自然酸化膜を除去する。次に、スパッタ法等により半導体基板2上の全面にNi膜を形成した後、温度条件400〜500℃のRTA等の熱処理により、Ni膜とSi:C層16、Ni膜とゲート電極12、Ni膜とSi:C層77、およびNi膜とゲート電極72をそれぞれシリサイド反応させ、シリサイド層17、18、75、76を形成する。次に、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いてNi膜の未反応部分を除去する。
【0128】
(第7の実施の形態の効果)
本発明の第7の実施の形態によれば、Si:C層77を形成することにより、第3の実施の形態の効果に加えて、n型MOSFET70のキャリア移動度が増加する効果を得ることができる。
【0129】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0130】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0131】
100、200、300、400 半導体装置、 10、20、30、40 p型MOSFET、 11 ゲート絶縁膜、 12 ゲート電極、 15 エレベーテッド層、 16、41 Si:C層、 17、21、42 シリサイド層、 19、32、43 ソース・ドレイン領域、 31 SiGe層
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲート電極やソース・ドレイン領域の電気抵抗を低減するために、これらの上に金属シリサイドを形成したトランジスタが知られている。
【0003】
しかし、キャパシタ等のトランジスタの上層の部材を高温条件下で形成するためには、トランジスタを構成する各部材に耐熱性が求められるが、Niシリサイド等の通常用いられる金属シリサイドの耐熱性は高くない。
【0004】
一方、Si:C結晶上にNiシリサイドを形成することにより、Niシリサイドの耐熱性が向上することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Extended Abstracts of the 2007 International Conference on Solid State Devices and Materials, Tsukuba, 2007, pp. 872-873.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性に優れたシリサイド層をソース・ドレイン領域に有するp型MOSFETを備える半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側に形成されたエレベーテッド層と、前記エレベーテッド層上に形成されたSi:C層と、前記半導体基板、前記エレベーテッド層、および前記Si:C内の前記ゲート電極の両側に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、を有する半導体装置を提供する。
【0008】
また、本発明の他の態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記半導体基板の表面近傍の前記ゲート電極の両側に形成された、Si結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であるSi:C層と、前記半導体基板および前記Si:C内に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、を有する半導体装置を提供する。
【0009】
また、本発明の他の態様は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側にエレベーテッド層を形成する工程と、前記エレベーテッド層上にSi:C層を形成する工程と、前記Si:C層および前記半導体基板にp型不純物を注入して、ソース・ドレイン領域の少なくとも一部を形成する工程と、前記Si:C層の上部をシリサイド化して、シリサイド層を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性に優れたシリサイド層をソース・ドレイン領域に有するp型MOSFETを備える半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図2A】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図2B】(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図9】本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図10】本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置の断面図。
【図11】(a)〜(d)は、本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の断面図である。半導体装置100は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)10と、p型MOSFET10を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET10上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET10のソース・ドレイン領域19とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0013】
半導体基板2は、Si結晶等のSi系結晶からなる。
【0014】
素子分離領域3は、例えば、SiO2等の絶縁材料からなり、深さ200〜300nmのSTI(Shallow Trench Isolation)構造を有する。
【0015】
層間絶縁膜4a、4bは、TEOS、BPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)、SiN等の絶縁材料からなる。
【0016】
キャパシタ5は、上部電極5a、下部電極5c、およびこれらに挟まれた絶縁膜5bからなる。上部電極5aおよび下部電極5cは、TiN、W等の導電材料からなり、絶縁膜5bは、Ta2O3、ZrO3、HfSiON等の絶縁材料からなる。
【0017】
コンタクトプラグ6は、例えば、Ti、TiN等からなるバリアメタルに覆われたW等の導電材料からなる。
【0018】
p型MOSFET10は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、半導体基板2上のゲート側壁14の両側に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたSi:C層16と、Si:C層16上に形成されたシリサイド層17と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域19と、を含む。
【0019】
ゲート絶縁膜11は、例えば、SiO2、SiN、SiON等の絶縁材料、またはHfSiON等の高誘電率材料からなる。また、ゲート絶縁膜11は、例えば、0.5〜6nmの厚さを有する。
【0020】
ゲート電極12は、例えば、導電型不純物を含む多結晶Si、多結晶SiGe等のSi系多結晶からなる。また、ゲート電極12は、金属からなるメタルゲート電極であってもよく、さらに、金属層と、金属層上のSi系多結晶層からなる二層構造を有してもよい。なお、ゲート電極12がメタルゲート電極である場合は、ゲート電極12上のシリサイド層18は形成されない。また、ゲート電極12は、例えば、50〜200nmの厚さを有する。
【0021】
オフセットスペーサ13、およびゲート側壁14は、SiO2、SiN等の絶縁材料からなる。また、ゲート側壁14は、SiN、SiO2、TEOS(Tetraethoxysilane)等の複数種の絶縁材料からなる2層構造、更には3層以上の構造であってもよい。
【0022】
エレベーテッド層15は、Si結晶等のSi系結晶からなり、半導体基板2と同じ材料を用いて形成することができる。また、エレベーテッド層15は、半導体基板2の上面を下地としたエピタキシャル結晶成長等により形成される。なお、エレベーテッド層15中にSi:C層16中のCが拡散してもよい。
【0023】
Si:C層16は、Si:C結晶からなる。また、Si:C層16は、エレベーテッド層15の上面を下地としたエピタキシャル結晶成長等により形成される。Si:C層16は、半導体基板2上にエレベーテッド層15を介して形成されるため、Si:C層16の底部は、半導体基板2とゲート絶縁膜11との境界よりも高い位置に位置する。
【0024】
Si:C結晶は、Si結晶よりも格子定数が小さいため、Si:C結晶と格子整合するSi結晶に歪みを与える。このため、Si:C層16と半導体基板2中のp型MOSFET10のチャネル領域との距離が小さい場合、Si:C層16はチャネル領域にチャネル方向の伸張歪みを発生させ、キャリア(正孔)の移動度を低下させるおそれがある。そこで、本実施の形態のように半導体基板2上にエレベーテッド層15を介してSi:C層16を形成することにより、Si:C層16に生じる歪みが半導体基板2中のチャネル領域に影響しないようにし、キャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0025】
なお、エレベーテッド層15を形成せずに、半導体基板2上に直接Si:C層16を形成してもよい。この場合であっても、半導体基板2中にSi:C層16を埋め込む場合よりも、チャネル領域への歪み印加を抑えることができる。しかし、Si:C層16形成によるトランジスタ特性劣化を抑えるには、エレベーテッド層15を形成することが好ましい。
【0026】
Si:C層16中のC濃度は、3.0原子%以下であることが好ましい。これは、3.0原子%よりも高いと、結晶欠陥が発生するおそれが高くなるためである。なお、Cがごく僅かでもSi:C層16に含まれていれば、Si:C層16の耐熱性を向上させる効果は得られる。
【0027】
さらに、半導体基板2に発生させる歪みを低減するため、Si結晶の置換位置のC濃度を低くすることが好ましい。Si結晶の置換位置のC濃度を低くして、格子間位置に注入されるCの割合を増やすことにより、シリサイド層17の耐熱性を確保しつつ、半導体基板2中のチャネル領域に与える歪みを低減することによりキャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0028】
エピタキシャル結晶成長法によりSi:C結晶を成長させる際に、SiH3CH3等のCの原料ガスの流量または分圧を適切な大きさに制御することにより、Si結晶の置換位置のC濃度が低いSi:C層16を形成することができる。例えば、流量を0.03slm程度に制御する。または、分圧を20Torr程度に制御する。また、600℃以上の高温条件下でSi:C結晶をエピタキシャル成長させることにより、Si結晶の置換位置のC濃度が低いSi:C層16を形成することができる。ただし、ソース・ドレイン領域19のエクステンション領域中の不純物の拡散を抑えるために、温度条件が850℃よりも大きくならないことが好ましい。また、イオン注入法を用いてエレベーテッド層15にCを注入することによりSi:C層16を形成した場合においても、Si:C層16におけるSi結晶の置換位置のC濃度を低くすることができる。
【0029】
特に、キャリア移動度の低下を効果的に抑えるためには、Si:C層16におけるSi結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であることが好ましい。なお、Si:C層16における格子位置のC濃度は、広いパターン領域に対してXRD(X-Ray Diffraction)を用いることにより精度良く分析することができる。或いは、NBD(Nano-Beam Diffraction)等の測定手段により、チャネル部分に印加されるストレスから、ある程度のC濃度を見積もることができる。また、Si:C層16における全体のC濃度は、広いパターン領域に対してSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いることにより、精度良く分析することができる。或いは、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)等の測定手段により求めることができる。
【0030】
シリサイド層17、18は、Ni、Co、Er、Pt、Pd等の金属を含む金属シリサイドからなり、ソース・ドレイン領域19およびゲート電極12のそれぞれの電気抵抗を低減する。
【0031】
シリサイド層17は、Si:C層16上に形成されているため、Si結晶からなる層上に形成された金属シリサイドと比較して、耐熱性に優れる。
【0032】
ソース・ドレイン領域19は、半導体基板2、エレベーテッド層15、およびSi:C層16にB、BF2等のp型の導電型不純物を注入することにより形成される。
【0033】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を示す。
【0034】
(半導体装置の製造)
図2A(a)〜(d)、図2B(e)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置100の製造工程を示す断面図である。
【0035】
まず、図2A(a)に示すように、半導体基板2内に素子分離領域3、ゲート絶縁膜11、ゲート電極12、およびキャップ膜7を形成する。その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)等の熱処理を行い、ウェルおよびチャネル領域内の導電型不純物を活性化させる。
【0036】
また、図示しないが、素子分離領域3を形成した後、n型のウェルおよびp型のチャネル領域を形成する。例えば、Pを用いてn型ウェルを形成する場合は、注入エネルギー500keV、注入量3.0×1013cm−2の条件でイオン注入を行う。Bを用いてp型チャネル領域を形成する場合は、注入エネルギー10keV、注入量1.5×1013cm−2の条件でイオン注入を行う。なお、これらのイオン注入は、半導体基板2上の厚さ10nm以下の自然酸化膜を通して行われる。
【0037】
ゲート絶縁膜11、ゲート電極12、およびキャップ膜7は、例えば、以下のような方法により形成される。まず、ウェルおよびチャネル領域を形成した後、半導体基板2上の自然酸化膜を除去し、熱酸化法、LPCVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition)法等によりSiO2膜等のゲート絶縁膜11の材料膜を半導体基板2上に形成し、その上にLPCVD法により多結晶Si膜等のゲート電極12の材料膜およびSiN等のキャップ膜7の材料膜を形成する。次に、光リソグラフィ法、X線リソグラフィ法、または電子ビームリソグラフィ法とRIE(Reactive Ion Etching)法の組み合わせにより、これらの積層された材料膜をパターニングして、キャップ膜7、ゲート電極12、およびゲート絶縁膜11に加工する。
【0038】
次に、図2A(b)に示すように、オフセットスペーサ13およびp型のソース・ドレイン領域19の浅い領域を形成する。
【0039】
具体的には、例えば、熱酸化法によりゲート電極12の表面にSiO2膜を1〜2nmの厚さに形成した後、その上にLPCVD法によりSiO2膜等を3〜12nmの厚さに形成する。そして、RIE法によりこれらの膜をオフセットスペーサ13に加工する。その後、オフセットスペーサ13およびキャップ膜7をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2上の全面に導電型不純物を注入し、ハロー領域(図示しない)およびソース・ドレイン領域19の浅い領域を形成する。さらに、注入した導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。
【0040】
ここで、Asを用いてハロー領域を形成する場合は、例えば、注入エネルギー40keV、注入量3.0×1013cm−2、注入角度30°(半導体基板2の表面に垂直な方向を基準とした角度)の条件でイオン注入を行う。また、BF2を用いてソース・ドレイン領域19の浅い領域を形成する場合は、例えば、注入エネルギー1〜3keV、注入量5.0×1014〜1.5×1015cm−2の条件でイオン注入を行う。
【0041】
次に、図2A(c)に示すように、ゲート側壁14を形成する。
【0042】
具体的には、例えば、LPCVD法により半導体基板2上の全面にSiO2膜等を形成した後、RIE法によりこれをゲート側壁14に加工する。
【0043】
次に、図2A(d)に示すように、半導体基板2上のゲート側壁14の両側にエレベーテッド層15およびSi:C層16を形成する。
【0044】
具体的には、例えば、水素雰囲気中において700℃以上の高温下で半導体基板2を加熱し、SiH4、SiH2Cl2、SiHCl3、等のSiの原料ガスをHClガス、水素ガス等とともに半導体基板2上に供給することにより、Si結晶をエピタキシャル成長させ、エレベーテッド層15を形成する。また、Si:C層16は、上記のガスに加えてSiH3CH3を用いることにより、エレベーテッド層15と同様の条件により形成することができる。
【0045】
なお、Si結晶からなるエレベーテッド層15の表面近傍にCをイオン注入することによりSi:C層16を形成してもよい。この場合、例えば、注入エネルギー5keV、注入量5.0×1013cm−2の条件でCのイオン注入を行う。Si:C層16をCのイオン注入により形成する場合、Si:C層16をエピタキシャル成長により形成する場合と比較して、エレベーテッド層15を厚く形成しておくことが好ましい。
【0046】
次に、図2B(e)に示すように、キャップ膜7を除去した後、p型のソース・ドレイン領域19の深い高濃度領域を形成する。
【0047】
具体的には、例えば、RIE法または170℃に加熱したリン酸を用いたウェットエッチング法によりキャップ膜7を除去した後、オフセットスペーサ13およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2上の全面に導電型不純物を注入し、ソース・ドレイン領域19の深い高濃度領域を形成する。さらに、注入した導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。
【0048】
次に、図2B(f)に示すように、Si:C層16およびゲート電極12上に、それぞれシリサイド層17、18を形成する。
【0049】
Niシリサイドからなるシリサイド層17、18を形成する場合の形成方法の一例を以下に示す。まず、フッ酸処理によりSi:C層16およびゲート電極12上の自然酸化膜を除去する。次に、スパッタ法等により半導体基板2上の全面にNi膜を形成した後、温度条件400〜500℃のRTA等の熱処理により、Ni膜とSi:C層16およびNi膜とゲート電極12とをシリサイド反応させ、シリサイド層17、18を形成する。次に、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いてNi膜の未反応部分を除去する。
【0050】
なお、Ni膜を形成した後に、その上にTiN膜を形成する工程や、Ni膜を形成し、一度250℃〜400℃の低温RTAを行った後に、これを硫酸と過酸化水素水との混合溶液を用いてエッチングし、再度、低シート抵抗化のために400〜550℃のRTAを行う工程(2ステップアニール)を行ってもよい。
【0051】
なお、シリサイド層18をシリサイド層17と別工程で形成してもよい。これにより、シリサイド層18を厚くすることができる。シリサイド層18は、ソース・ドレイン領域19上のシリサイド層17と異なり、厚くしても接合リークの発生等の問題が発生するおそれがない。
【0052】
次に、図2B(g)に示すように、層間絶縁膜4aおよびコンタクトプラグ6を形成する。
【0053】
これらの部材の具体的な形成方法の一例を以下に示す。まず、CVD法等により、エッチングストッパとしてのライナー膜(図示しない)を半導体基板2上の全面に形成する。次に、TEOS膜等の層間絶縁膜4aの材料膜をライナー膜上に形成し、CMP(Chemical Vapor Deposition)等の平坦化処理により、これを層間絶縁膜4aに加工する。次に、リソグラフィ法とRIE法の組み合わせにより、層間絶縁膜4a中にコンタクトホールを形成する。次に、半導体基板2上の全面にコンタクトホールを埋めるようにTi等のバリアメタルの材料膜、およびW等のコンタクトプラグ6の材料膜を形成し、CMP等の平坦化処理により、これらをバリアメタルを有するコンタクトプラグ6に加工する。
【0054】
なお、上層の配線(図示しない)とソース・ドレイン領域19とを接続するコンタクトプラグ、およびゲート電極12とソース・ドレイン領域19とを接続するコンタクトプラグをコンタクトプラグ6と同時に形成してもよい。
【0055】
次に、図2B(h)に示すように、コンタクトプラグ6の上面に接続されるキャパシタ5を形成する。
【0056】
キャパシタ5の具体的な形成方法の一例を以下に示す。まず、PVD(Physical Vapor Deposition)法またはCVD法により、下部電極5c、絶縁膜5b、および上部電極5aの材料膜を半導体基板2上の全面に形成する。次に、リソグラフィ法とRIE法の組み合わせにより、これらの材料膜を部電極5c、絶縁膜5b、および上部電極5aに加工し、キャパシタ5を得る。
【0057】
その後、層間絶縁膜4a上に層間絶縁膜4bを形成する。
【0058】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、Si:C層16上にシリサイド層17を形成するため、シリサイド層17は優れた耐熱性を有する。このため、p型MOSFET10の上層の各部材を高温条件下で形成することができる。
【0059】
特に、キャパシタ5のようなトランジスタの上層のキャパシタを形成する場合、キャパシタ絶縁膜の誘電率の確保や、キャパシタからのゲートリーク電流の発生の抑制のために、ある程度の高温条件下でキャパシタ絶縁膜を成膜することが求められる。なお、トランジスタの上層にキャパシタを形成する場合、トランジスタの下層(基板内)にキャパシタを形成する場合と比較して、比較的容易に容量の大きなキャパシタを得ることができる。
【0060】
また、本発明の第1の実施の形態によれば、半導体基板2上にエレベーテッド層15を介してSi:C層16を形成することにより、Si:C層16で生じる歪みが半導体基板2中のチャネル領域に影響しないようにし、キャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0061】
また、本実施の形態は、シリサイド層17がNiシリサイドまたはPtを添加したNiシリサイドからなる場合に、特に効果がある。これらの金属シリサイドは、低温で形成でき、優れた成形性を有するため、Coシリサイド等の高温条件下で形成される金属シリサイドと比較して、接合リーク等の問題が発生するおそれが少ない。その一方、NiシリサイドまたはPtを添加したNiシリサイドは、比較的耐熱性が低い。このため、本実施の形態を適用することにより、耐熱性の低さという弱点を補うことができる。
【0062】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態は、ソース・ドレイン領域上に形成されるシリサイド層の厚さにおいて、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0063】
(半導体装置の構成)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置200の断面図である。半導体装置200は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET20と、p型MOSFET20を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET20上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET20のソース・ドレイン領域19とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0064】
p型MOSFET20は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、半導体基板2上のゲート側壁14の両側に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたシリサイド層21と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域19と、を含む。
【0065】
シリサイド層21は、Ni、Co、Er、Pt、Pd等の金属を含む金属シリサイドからなり、ソース・ドレイン領域19の電気抵抗を低減する。
【0066】
シリサイド層21は、第1の領域21aと、第1の領域21a上の第2の領域21bからなる。第1の領域21aは、エレベーテッド層15の上部がシリサイド化した領域であり、第2の領域21bは、Si:C層16がシリサイド化した領域である。このため、第2の領域21bに含まれるCの濃度は、第1の領域21aに含まれるCの濃度よりも高い。
【0067】
シリサイド層21はCを含むため、第1の実施の形態におけるシリサイド17と同様に、耐熱性に優れる。
【0068】
また、金属シリサイドとSi:C結晶との界面における電気抵抗よりも、金属シリサイドとSi結晶との界面における電気抵抗の方が小さい。このため、第1の実施の形態におけるシリサイド層17とSi:C層16との界面における電気抵抗よりも、本実施の形態におけるシリサイド層21とエレベーテッド層15(または半導体基板2)との界面における電気抵抗の方が小さく、寄生抵抗を低減することができる。
【0069】
シリサイド層21は、シリサイド層17と同様の方法により形成される。ただし、シリサイド層17がSi:C層16の上部をシリサイド化して形成されるのに対して、シリサイド層21は、Si:C層16の全領域およびエレベーテッド層15の上部または全領域をシリサイド化することにより形成される。または、エレベーテッド層15が形成されない場合は、Si:C層16の全領域および半導体基板2の上部をシリサイド化することにより形成される。例えば、シリサイド反応に用いるNi膜等の金属膜の厚さを、シリサイド層17を形成する場合よりも厚くすることにより、シリサイド層21を形成する。
【0070】
なお、シリサイド層21が厚くなり過ぎると、接合リークが発生するおそれが高くなるため、シリサイド層21は、その底部とソース・ドレイン領域19の深い高濃度領域の底部との間にある程度の距離を設けることが好ましい。
【0071】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、底部がエレベーテッド層15または半導体基板2に接するシリサイド層21を形成することにより、p型MOSFET200の寄生抵抗を第1の実施の形態のp型MOSFET100の寄生抵抗よりも低減し、トランジスタ特性の劣化を抑えることができる。
【0072】
〔第3の実施の形態〕
本発明の第3の実施の形態は、キャリア移動度を向上させるために、ソース・ドレイン領域にSiGe結晶等のSi結晶よりも格子定数の大きい結晶を埋め込む点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0073】
(半導体装置の構成)
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置300の断面図である。半導体装置300は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET30と、p型MOSFET30を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET30上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET30のソース・ドレイン領域32とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0074】
p型MOSFET30は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域32と、ソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域に対応する領域に埋め込まれたSiGe層31と、SiGe層31上に形成されたエレベーテッド層15と、エレベーテッド層15上に形成されたSi:C層16と、Si:C層16上に形成されたシリサイド層17と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、を含む。
【0075】
SiGe結晶は、Si結晶よりも格子定数が大きいため、SiGe結晶と格子整合するSi結晶に歪みを発生させる。このため、SiGe層31は、p型MOSFET30のチャネル領域にチャネル方向の圧縮歪みを発生させ、キャリア(正孔)の移動度を増加させることができる。なお、SiGe層31の代わりに、Si結晶よりも格子定数が大きい他の結晶からなる層を用いてもよい。
【0076】
SiGe層31に含まれるGeの濃度は、10〜40原子%であることが好ましい。また、SiGe層31は、ソース・ドレイン領域32の一部として用いられる。
【0077】
SiGe結晶とSi:C結晶は格子定数の違いが大きいため、SiGe層31上にSi:C層16を直接エピタキシャル成長させることは困難である。そのため、エレベーテッド層15がバッファ層としてSiGe層31とSi:C層16の間に形成される。なお、エレベーテッド層15中にSi:C層16中のCおよびSiGe層31中のGeの一方または両方が拡散してもよい。
【0078】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置300の製造方法の一例を示す。
【0079】
(半導体装置の製造)
図5(a)〜(d)は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置300の製造工程を示す断面図である。
【0080】
まず、図2A(a)〜図2A(c)に示したゲート側壁14を形成するまでの工程を第1の実施の形態と同様に行う。なお、ソース・ドレイン領域32の浅い領域は、第1の実施の形態のソース・ドレイン領域19の浅い領域と同じ方法により形成される。
【0081】
次に、図5(a)に示すように、キャップ膜7、オフセットスペーサ13、およびゲート側壁14をマスクとして用いて、RIE法等によるエッチングを半導体基板2に施し、溝33を形成する。
【0082】
次に、図5(b)に示すように、溝33により露出した半導体基板2の表面を下地として、溝33を埋めるようにSiGe結晶をエピタキシャル成長させ、SiGe層31を形成する。なお、SiGe結晶を成長させる際に、p型の導電型不純物をインサイチュドーピングしてもよい。
【0083】
次に、図5(c)に示すように、SiGe層31上にエレベーテッド層15およびSi:C層16を形成する。
【0084】
次に、図5(d)に示すように、キャップ膜7を除去した後、p型のソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域を形成し、さらに、シリサイド層17、18を形成する。
【0085】
具体的には、オフセットスペーサ13およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2上の全面に導電型不純物を注入し、Si:C層16、エレベーテッド層15、およびSiGe層31中にソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域を形成する。なお、ソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域は、SiGe層31下の半導体基板2にまで達するように形成されてもよい。さらに、注入した導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。なお、キャップ膜7の除去方法、ならびにエレベーテッド層15、Si:C層16、およびシリサイド層17、18の形成方法は第1の実施の形態と同様である。
【0086】
その後、層間絶縁膜4a、4b、コンタクトプラグ6、およびキャパシタ5等を第1の実施の形態と同様に形成する。
【0087】
(第3の実施の形態の効果)
本発明の第3の実施の形態によれば、SiGe層31を形成することにより、第1の実施の形態の効果に加えて、キャリア移動度が増加する効果を得ることができる。
【0088】
〔第4の実施の形態〕
本発明の第4の実施の形態は、Si:C層およびその上のシリサイド層を半導体基板中に形成する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0089】
(半導体装置の構成)
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置400の断面図である。半導体装置400は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET40と、p型MOSFET40を他の素子から分離する素子分離領域3と、p型MOSFET40上に形成された層間絶縁膜4a、4bと、層間絶縁膜4b中に形成されたキャパシタ5と、層間絶縁膜4a中に形成され、p型MOSFET40のソース・ドレイン領域43とキャパシタ5とを接続するコンタクトプラグ6とを含む。
【0090】
p型MOSFET40は、半導体基板2上にゲート絶縁膜11を介して形成されたゲート電極12と、ゲート電極12の両側面に形成されたオフセットスペーサ13と、オフセットスペーサ13の側面に形成されたゲート側壁14と、半導体基板2の表面近傍のゲート側壁14の両側に形成されたSi:C層41と、Si:C層41上に形成されたシリサイド層42と、ゲート電極12上に形成されたシリサイド層18と、ゲート電極12の両側に形成されたソース・ドレイン領域43と、を含む。
【0091】
Si:C層41におけるSi結晶の置換位置のC濃度は低い。このため、Si:C層41がチャネル領域に与える歪みは低減される。具体的には、Si:C層41全体のC濃度が3.0原子%以下であり、Si結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であることが好ましい。
【0092】
Si:C層41は、イオン注入法により半導体基板2の表面近傍にCを注入することにより形成される。イオン注入法を用いることにより、CのほとんどをSi結晶の格子間位置に注入することができる。
【0093】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置400の製造方法の一例を示す。
【0094】
(半導体装置の製造)
図7(a)〜(c)は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置400の製造工程を示す断面図である。
【0095】
まず、図2A(a)〜図2A(c)に示したゲート側壁14を形成するまでの工程を第1の実施の形態と同様に行う。なお、ソース・ドレイン領域43の浅い領域は、第1の実施の形態のソース・ドレイン領域19の浅い領域と同じ方法により形成される。
【0096】
次に、図7(a)に示すように、キャップ膜7、オフセットスペーサ13、およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法により半導体基板2にCを注入し、Si:C層41を形成する。
【0097】
次に、図7(b)に示すように、キャップ膜7を除去した後、p型のソース・ドレイン領域43の深い高濃度領域を形成する。
【0098】
次に、図7(c)に示すように、Si:C層41およびゲート電極12上に、それぞれシリサイド層42、18を形成する。
【0099】
Niシリサイドからなるシリサイド層42、18を形成する場合の形成方法の一例を以下に示す。まず、フッ酸処理によりSi:C層41およびゲート電極12上の自然酸化膜を除去する。次に、スパッタ法等により半導体基板2上の全面にNi膜を形成した後、温度条件400〜500℃のRTA等の熱処理により、Ni膜とSi:C層41およびNi膜とゲート電極12とをシリサイド反応させ、シリサイド層42、18を形成する。次に、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いてNi膜の未反応部分を除去する。
【0100】
その後、層間絶縁膜4a、4b、コンタクトプラグ6、およびキャパシタ5等を第1の実施の形態と同様に形成する。
【0101】
(第4の実施の形態の効果)
本発明の第4の実施の形態によれば、イオン注入法を用いてSi:C層41を形成することにより、シリサイド層42の耐熱性を向上させつつ、チャネル領域の歪みを低減してキャリア移動度の低下を抑えることができる。
【0102】
〔第5の実施の形態〕
本発明の第5の実施の形態は、半導体基板上にp型MOSFETに加えてn型MOSFETを形成する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0103】
(半導体装置の構成)
図8は、本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置500の断面図である。半導体装置500は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET10およびn型MOSFET50と、p型MOSFET10およびn型MOSFET50をそれぞれ他の素子から分離する素子分離領域3と、を含む。ここで、p型MOSFET10は、第1の実施の形態におけるp型MOSFET10と同様の構成を有する。なお、p型MOSFET10およびn型MOSFET50上に形成される層間絶縁膜等の部材の図示は省略する。
【0104】
n型MOSFET50は、半導体基板2上にゲート絶縁膜51を介して形成されたゲート電極52と、ゲート電極52の両側面に形成されたオフセットスペーサ53と、オフセットスペーサ53の側面に形成されたゲート側壁54と、半導体基板2上のゲート側壁54の両側に形成されたエレベーテッド層55と、エレベーテッド層55上に形成されたSi:C層56と、Si:C層56上に形成されたシリサイド層57と、ゲート電極52上に形成されたシリサイド層58と、ゲート電極52の両側に形成されたn型のソース・ドレイン領域59と、を含む。n型MOSFET50は、ソース・ドレイン領域等に含まれる不純物の導電型がn型である以外は、p型MOSFET10と同様の構成を有し、同様の方法により形成される。
【0105】
(第5の実施の形態の効果)
本発明の第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、n型MOSFET50のシリサイド層58の耐熱性を向上させることができる。
【0106】
〔第6の実施の形態〕
本発明の第6の実施の形態は、半導体基板上にp型MOSFETに加えてn型MOSFETを形成する点において、第4の実施の形態と異なる。なお、第4の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0107】
(半導体装置の構成)
図9は、本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置600の断面図である。半導体装置600は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET40およびn型MOSFET60と、p型MOSFET40およびn型MOSFET60をそれぞれ他の素子から分離する素子分離領域3と、を含む。ここで、p型MOSFET40は、第4の実施の形態におけるp型MOSFET40と同様の構成を有する。なお、p型MOSFET40およびn型MOSFET60上に形成される層間絶縁膜等の部材の図示は省略する。
【0108】
n型MOSFET60は、半導体基板2上にゲート絶縁膜61を介して形成されたゲート電極62と、ゲート電極62の両側面に形成されたオフセットスペーサ63と、オフセットスペーサ63の側面に形成されたゲート側壁64と、半導体基板2の表面近傍のゲート側壁64の両側に形成されたSi:C層66と、Si:C層66上に形成されたシリサイド層67と、ゲート電極62上に形成されたシリサイド層65と、ゲート電極62の両側に形成されたソース・ドレイン領域68と、を含む。n型MOSFET60は、ソース・ドレイン領域等に含まれる不純物の導電型がn型である以外は、p型MOSFET40と同様の構成を有し、同様の方法により形成される。
【0109】
(第6の実施の形態の効果)
本発明の第6の実施の形態によれば、第4の実施の形態の効果に加え、n型MOSFET60のシリサイド層67の耐熱性を向上させることができる。
【0110】
〔第7の実施の形態〕
本発明の第7の実施の形態は、半導体基板上にp型MOSFETに加えてn型MOSFETを形成する点において、第3の実施の形態と異なる。なお、第3の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0111】
(半導体装置の構成)
図10は、本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置700の断面図である。半導体装置700は、半導体基板2上に形成されたp型MOSFET30およびn型MOSFET70と、p型MOSFET30およびn型MOSFET70をそれぞれ他の素子から分離する素子分離領域3と、を含む。ここで、p型MOSFET30は、第3の実施の形態におけるp型MOSFET30と同様の構成を有する。なお、p型MOSFET30およびn型MOSFET70上に形成される層間絶縁膜等の部材の図示は省略する。
【0112】
n型MOSFET70は、半導体基板2上にゲート絶縁膜71を介して形成されたゲート電極72と、ゲート電極72の両側面に形成されたオフセットスペーサ73と、オフセットスペーサ73の側面に形成されたゲート側壁74と、ゲート電極72の両側に形成されたソース・ドレイン領域78と、ソース・ドレイン領域78の深い高濃度領域に対応する領域に埋め込まれたSi:C層77と、Si:C層77上に形成されたシリサイド層76と、ゲート電極72上に形成されたシリサイド層75と、を含む。
【0113】
Si:C結晶は、Si結晶よりも格子定数が小さいため、Si:C結晶と格子整合するSi結晶に歪みを発生させる。このため、Si:C層77は、n型MOSFET70のチャネル領域にチャネル方向の伸張歪みを発生させ、キャリア(電子)の移動度を増加させることができる。なお、Si:C層77の代わりに、Si:C結晶以外のSi結晶よりも格子定数が小さい結晶からなる層を用いてもよい。
【0114】
Si:C層77に含まれるCの濃度は、0.05〜3.0原子%であることが好ましい。これは、0.05原子%よりも低い場合には、n型MOSFET70のチャネル領域に発生する歪みが弱まり、3.0原子%よりも高いと、結晶欠陥が発生するおそれが高くなるためである。また、Si:C層77は、ソース・ドレイン領域78の一部として用いられる。
【0115】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置700の製造方法の一例を示す。
【0116】
(半導体装置の製造)
図11(a)〜(d)は、本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置700の製造工程を示す断面図である。
【0117】
まず、図11(a)に示すように、図5(a)に示した溝33を形成する工程までの工程を第3の実施の形態と同様に行い、溝33およびゲート電極72の両側の溝79を形成する。溝33、79は、キャップ膜7、ゲート電極72上のキャップ膜8、オフセットスペーサ13、73、およびゲート側壁14、74をマスクとして用いて、半導体基板2にエッチングを施すことにより、同時に形成される。
【0118】
次に、図11(b)に示すように、溝79により露出した半導体基板2の表面を下地として、溝79を埋めるようにSi:C結晶を選択的にエピタキシャル成長させ、Si:C層77を形成する。
【0119】
このとき、溝33内にSi:C結晶が成長しないように、溝33により露出した半導体基板2の表面はマスクで覆われる。このマスクは、Si:C層77を形成した後に除去される。なお、Si:C結晶を成長させる際に、n型不純物をインサイチュドーピングしてもよい。
【0120】
次に、図11(c)に示すように、溝33により露出した半導体基板2の表面を下地として、溝33を埋めるようにSiGe結晶を選択的にエピタキシャル成長させ、SiGe層31を形成する。さらに、SiGe層31の上面を下地としてエレベーテッド層15を選択的にエピタキシャル成長させ、エレベーテッド層15の上面を下地としてSi:C層16を選択的にエピタキシャル成長させる。
【0121】
このとき、Si:C層77上にSiGe結晶が成長しないように、Si:C層77の表面はマスクで覆われる。このマスクは、Si:C層16を形成した後に除去される。なお、SiGe結晶を成長させる際に、p型不純物をインサイチュドーピングしてもよい。
【0122】
次に、図11(d)に示すように、キャップ膜7、8を除去した後、p型のソース・ドレイン領域32、およびn型のソース・ドレイン領域78の深い高濃度領域を形成し、さらに、シリサイド層17、18、75、76を形成する。
【0123】
具体的には、n型のソース・ドレイン領域78の深い高濃度領域は、オフセットスペーサ73およびゲート側壁74をマスクとして用いて、イオン注入法によりSi:C層77にn型不純物を選択的に注入することにより形成される。
【0124】
このとき、Si:C層16、エレベーテッド層15、SiGe層31、およびゲート電極12にn型不純物が注入されないように、これらの表面はマスクで覆われる。このマスクは、n型不純物を注入した後に除去される。
【0125】
一方、p型のソース・ドレイン領域32の深い高濃度領域は、オフセットスペーサ13およびゲート側壁14をマスクとして用いて、イオン注入法によりSi:C層16、エレベーテッド層15、およびSiGe層31にp型不純物を選択的に注入することにより形成される。さらに、ソース・ドレイン領域32、78中の導電型不純物の活性化のためにスパイクアニール等の熱処理を行う。
【0126】
このとき、Si:C層77、およびゲート電極72にp型不純物が注入されないように、これらの表面はマスクで覆われる。このマスクは、p型不純物を注入した後に除去される。
【0127】
Niシリサイドからなるシリサイド層17、18、75、76を形成する場合の形成方法の一例を以下に示す。まず、フッ酸処理によりSi:C層16、Si:C層77、およびゲート電極12、72上の自然酸化膜を除去する。次に、スパッタ法等により半導体基板2上の全面にNi膜を形成した後、温度条件400〜500℃のRTA等の熱処理により、Ni膜とSi:C層16、Ni膜とゲート電極12、Ni膜とSi:C層77、およびNi膜とゲート電極72をそれぞれシリサイド反応させ、シリサイド層17、18、75、76を形成する。次に、硫酸と過酸化水素水との混合溶液等を用いてNi膜の未反応部分を除去する。
【0128】
(第7の実施の形態の効果)
本発明の第7の実施の形態によれば、Si:C層77を形成することにより、第3の実施の形態の効果に加えて、n型MOSFET70のキャリア移動度が増加する効果を得ることができる。
【0129】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0130】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0131】
100、200、300、400 半導体装置、 10、20、30、40 p型MOSFET、 11 ゲート絶縁膜、 12 ゲート電極、 15 エレベーテッド層、 16、41 Si:C層、 17、21、42 シリサイド層、 19、32、43 ソース・ドレイン領域、 31 SiGe層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側に形成されたSi:C層と、
前記半導体基板および前記Si:C内の前記ゲート電極の両側に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、
前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板中の前記ゲート電極の両側にSi結晶よりも格子定数の大きい結晶からなる結晶層が形成され、
上面が前記半導体基板と前記ゲート絶縁膜との界面よりも上方に位置し、前記結晶層と前記Si:C層のバッファ層として機能するエレベーテッド層が、前記結晶層上かつ前記Si:C下の領域に形成され、
前記p型ソース・ドレイン領域は、前記半導体基板、前記結晶層、前記エレベーテッド層、および前記Si:C内に形成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の表面近傍の前記ゲート電極の両側に形成された、Si結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であるSi:C層と、
前記半導体基板および前記Si:C内に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、
前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、
を有する半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側にSi:C層を形成する工程と、
前記Si:C層および前記半導体基板にp型不純物を注入して、ソース・ドレイン領域の少なくとも一部を形成する工程と、
前記Si:C層の上部をシリサイド化して、シリサイド層を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シリサイド層は、前記Si:C層の全部をシリサイド化することにより形成される、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側に形成されたSi:C層と、
前記半導体基板および前記Si:C内の前記ゲート電極の両側に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、
前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板中の前記ゲート電極の両側にSi結晶よりも格子定数の大きい結晶からなる結晶層が形成され、
上面が前記半導体基板と前記ゲート絶縁膜との界面よりも上方に位置し、前記結晶層と前記Si:C層のバッファ層として機能するエレベーテッド層が、前記結晶層上かつ前記Si:C下の領域に形成され、
前記p型ソース・ドレイン領域は、前記半導体基板、前記結晶層、前記エレベーテッド層、および前記Si:C内に形成される、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の表面近傍の前記ゲート電極の両側に形成された、Si結晶の置換位置のC濃度が0.05原子%以下であるSi:C層と、
前記半導体基板および前記Si:C内に形成されたp型ソース・ドレイン領域と、
前記Si:C層上に形成されたシリサイド層と、
を有する半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記半導体基板上の前記ゲート電極の両側にSi:C層を形成する工程と、
前記Si:C層および前記半導体基板にp型不純物を注入して、ソース・ドレイン領域の少なくとも一部を形成する工程と、
前記Si:C層の上部をシリサイド化して、シリサイド層を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シリサイド層は、前記Si:C層の全部をシリサイド化することにより形成される、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−245233(P2010−245233A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91447(P2009−91447)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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