説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】電気特性の変動が生じにくく、且つ電気特性の良好な半導体装置、およびその作製方法を提供することである。
【解決手段】基板上に下地絶縁膜を形成し、下地絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の酸化物半導体膜を形成した後、第1の加熱処理を行って第2の酸化物半導体膜を形成した後、選択的にエッチングして、第3の酸化物半導体膜を形成し、第1の絶縁膜および第3の酸化物半導体膜上に絶縁膜を形成し、第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように絶縁膜の表面を研磨して、少なくとも第3の酸化物半導体膜の側面に接するサイドウォール絶縁膜を形成した後、サイドウォール絶縁膜および第3の酸化物半導体膜上にソース電極およびドレイン電極を形成し、ゲート絶縁膜およびゲート電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化物半導体を用いる半導体装置および該半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。本明細書中のトランジスタは半導体装置であり、該トランジスタを含む表示装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置に含まれる。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置や発光表示装置に代表されるフラットパネルディスプレイの多くに用いられているトランジスタは、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコン、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンなどのシリコン半導体によって構成されている。また、該シリコン半導体を用いたトランジスタは、集積回路(IC)などにも利用されている。
【0004】
上記シリコン半導体に代わって、半導体特性を示す金属酸化物をトランジスタに用いる技術が注目されている。なお、本明細書中では、半導体特性を示す金属酸化物を酸化物半導体とよぶことにする。
【0005】
例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、In−Ga−Zn系金属酸化物を用いてトランジスタを作製し、該トランジスタを表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が開示されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
酸化物半導体において、酸化物半導体に含まれる水素がキャリアの供給源となることが指摘されている。そのため、酸化物半導体の形成時に水素が混入しないような措置を講じることが求められる。また、酸化物半導体のみならず、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体に接するゲート絶縁膜の水素を低減することで、しきい値電圧の変動を低減している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【特許文献3】特開2009−224479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、酸化物半導体において、キャリアの供給源は、酸化物半導体に含まれる水素のほかに酸化物半導体中の酸素欠損が挙げられる。該酸素欠損の一部はドナーとなり、該酸化物半導体中にキャリアである電子を生成する。従って、酸化物半導体を用いた半導体装置において、チャネル形成領域を含む酸化物半導体中の酸素欠損は、該酸化物半導体中に電子を生成させるため該半導体装置のしきい値電圧をマイナス方向に変動させる要因といえる。
【0009】
また、酸化物半導体を用いた半導体装置を作製するに際し、酸化物半導体の側面を所望の形状に加工すると、該酸化物半導体の側面が活性な状態で反応室内の減圧雰囲気または還元性雰囲気に曝される。そのため、酸化物半導体の側面から反応室へと酸素が引き抜かれ、酸素欠損を生じることになる。該酸素欠損の一部は、ドナーとして酸素欠損の存在する領域を低抵抗化させ、ソース電極およびドレイン電極間にリーク電流を生じさせる要因といえる。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、電気特性の変動が生じにくく、且つ電気特性の良好な半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する手段は、チャネル形成領域を含む酸化物半導体の酸素欠損が低減する作製工程で半導体装置を作製することである。
【0012】
本発明の一態様は、基板上に第1の絶縁膜を形成し、該第1の絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、該第1の酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行って第2の酸化物半導体膜を形成し、該第2の酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、第3の酸化物半導体膜を形成し、該第1の絶縁膜および該第3の酸化物半導体膜上に第2の絶縁膜を形成し、該第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように該第2の絶縁膜の表面を研磨して、少なくとも該第3の酸化物半導体膜の側面に接する第3の絶縁膜を形成し、該第3の絶縁膜および第3の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、該導電膜を選択的にエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成し、該第3の酸化物半導体膜、該ソース電極および該ドレイン電極上に第4の絶縁膜を形成し、該第4の絶縁膜上に該第3の酸化物半導体膜と重畳するゲート電極を形成することである。
【0013】
上記において、第2の酸化物半導体膜を選択的にエッチングする際に、第1の絶縁膜の一部も選択的にエッチングして、第1の絶縁膜の第3の酸化物半導体膜と接する領域に凸部が形成されるように加工してもよい。
【0014】
上記において、第2の絶縁膜は、異なる二以上の絶縁膜を積層して形成することができる。この場合、該第2の絶縁膜の表面を研磨して形成される第3の絶縁膜も積層された絶縁膜である。
【0015】
上記において、第2の絶縁膜を異なる二以上の絶縁膜で形成した場合、第3の酸化物半導体膜と接する絶縁膜の表面が露出するように前記第2の絶縁膜の一部を研磨した後、第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように前記研磨された第2の絶縁膜を異方的にエッチングして、第3の絶縁膜を形成してもよい。
【0016】
上記において、ゲート電極を形成した後、第3の酸化物半導体膜にドーパントを添加し、加熱してもよい。このようすることで、ゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体領域と、第1の酸化物半導体領域を挟む一対の第2の酸化物半導体領域と、ソース電極およびドレイン電極と重畳する領域に設けられる一対の第3の酸化物半導体領域と、をセルフアラインに形成することができる。
【0017】
また、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極をマスクとして、第3の酸化物半導体膜にドーパントを添加しているため、ドーパントが添加されている領域は、一対の第2の酸化物半導体領域となる。なお、ドーパントとしては、窒素、リン、砒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれか一以上とすればよい。
【0018】
また、ソース電極およびドレイン電極の側端に厚さの薄い領域を形成することで、ゲート電極を形成した後、第3の酸化物半導体膜にドーパントを添加する際に、該厚さの薄い領域と重畳する第3の酸化物半導体膜にドーパントを添加することができる。また、第3の酸化物半導体膜にドーパント濃度が異なる2種類の領域を形成することができる。
【0019】
つまり、本発明の別の一態様は、基板上に第1の絶縁膜を形成し、該第1の絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、該第1の酸化物半導体膜に第1の酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行って第2の酸化物半導体膜を形成し、該第2の酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、第3の酸化物半導体膜を形成し、該第1の絶縁膜および該第3の酸化物半導体膜上に第2の絶縁膜を形成し、該第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように該第2の絶縁膜の表面を研磨して第3の絶縁膜を形成し、該第3の絶縁膜および第3の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、該導電膜上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて該導電膜の一部を選択的にエッチングして、一対の導電膜を形成し、該レジストマスクを縮小させることで、少なくとも該一対の導電膜の該第3の酸化物半導体膜と重畳する領域を露出させつつ、第2のレジストマスクを形成し、該第2のレジストマスクを用いて該一対の導電膜の一部をエッチングして、第1の厚さである領域と、前記第1の厚さより薄い第2の厚さである領域とを有するソース電極およびドレイン電極を形成し、該第3の酸化物半導体膜、該ソース電極および該ドレイン電極上に第4の絶縁膜を形成し、該第4の絶縁膜上に該第3の酸化物半導体膜と重畳するゲート電極を形成し、該第3の酸化物半導体膜にドーパントを添加し、加熱して、該ゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体領域と、該第1の酸化物半導体領域を挟む一対の第2の酸化物半導体領域と、該第1の厚さである領域と重畳する一対の第3の酸化物半導体領域と、該第2の厚さである領域と重畳する一対の第4の酸化物半導体領域と、形成することである。
【0020】
上記においても第2の酸化物半導体膜を選択的にエッチングする際に、第1の絶縁膜の一部も選択的にエッチングして、第1の絶縁膜の第3の酸化物半導体膜と接する領域に凸部を形成することができる。
【0021】
上記においても第2の絶縁膜は、異なる二以上の絶縁膜を積層して形成することができる。この場合、該第2の絶縁膜の表面を研磨して形成される第3の絶縁膜も積層された絶縁膜である。
【0022】
上記本発明の別の一態様においても第2の絶縁膜を異なる二以上の絶縁膜で形成した場合、第3の酸化物半導体膜と接する絶縁膜の表面が露出するように前記第2の絶縁膜の一部を研磨した後、第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように前記研磨された第2の絶縁膜を異方的にエッチングして、第3の絶縁膜を形成してもよい。
【0023】
また、上記本発明の別の一態様において、ドーパントが添加されている領域は、一対の第2の酸化物半導体領域およびソース電極およびドレイン電極の側端の第2の厚さである領域と重畳する一対の第4の酸化物半導体領域となる。なお、ドーパントとしては、窒素、リン、砒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれか一以上とすればよい。
【0024】
上記において、第1の絶縁膜乃至第4の絶縁膜の少なくとも一つは、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜で形成してもよく、例えば、化学量論比より過剰な酸素を含む酸化物絶縁膜を形成すればよい。
【0025】
上記において、加熱処理は、第1の酸化物半導体膜から水素を脱離させると共に、第1の絶縁膜に含まれる酸素を第1の酸化物半導体膜に拡散させて、第2の酸化物半導体膜を形成する温度で加熱することである。例えば、上記加熱処理の温度としては、150℃以上基板の歪み点未満である。
【0026】
上記において、第1の酸化物半導体膜乃至第3の酸化物半導体膜は、In、Ga、SnおよびZnから選ばれた一以上の元素を含む。
【0027】
上記において、第1の酸化物半導体膜乃至第3の酸化物半導体膜は、非単結晶であり、且つc軸配向の結晶領域を有している。
【0028】
上記において、第3の酸化物半導体膜を形成した後、さらに加熱処理を行ってもよい。なお、該加熱処理によって、第3の酸化物半導体膜から水素を脱離させると共に、第1の絶縁膜および第3の絶縁膜に含まれる酸素を第3の酸化物半導体膜に拡散させて、第4の酸化物半導体膜を形成される。
【0029】
また、第4の絶縁膜およびゲート電極上に第5の絶縁膜を形成した後、さらに加熱処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様によって、電気特性の変動が生じにくく、且つ電気特性の良好な半導体装置を作製することができる。
【0031】
また、本発明の一態様によって、酸化物半導体の側面に酸素を十分に存在させつつ半導体装置を作製することができる。
【0032】
また、本発明の一態様によって、酸化物半導体中の酸素欠損が十分に少なく、ソース電極およびドレイン電極間のリーク電流が抑制された半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図2】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図3】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図4】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図5】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図6】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図7】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図8】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図9】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図10】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図11】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す断面図。
【図12】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図13】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図14】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図15】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す断面図。
【図16】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す断面図。
【図17】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す断面図。
【図18】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図および回路図。
【図19】本発明の一態様である半導体装置を説明する回路図。
【図20】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図および回路図。
【図21】本発明の一態様である半導体装置を説明する回路図。
【図22】本発明の一態様である半導体装置の具体例を示すブロック図およびその一部の回路図。
【図23】本発明の一態様である半導体装置を説明する断面図および回路図。
【図24】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器の例を示す斜視図。
【図25】本発明の一態様である半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図26】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図27】本発明の一態様である半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図28】本発明の一態様である半導体装置の具体例を示すブロック図。
【図29】本発明の一態様である半導体装置の具体例を示すブロック図。
【図30】本発明の一態様である半導体装置の具体例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0036】
本明細書において、「膜」という用語は、CVD法(プラズマCVD法などを含む。)またはスパッタリング法などにより、被形成面の全面に形成されたものと、該被形成面の全面に形成されたものに対して半導体装置の作製工程に係る処理を行った後のものと、に用いる。
【0037】
本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0038】
本明細書において、「オン電流」とは、トランジスタが導通状態のときに、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。例えば、n型トランジスタの場合には、ゲート電圧がトランジスタのしきい値電圧よりも大きいときに、ソースとドレインとの間に流れる電流が、オン電流である。また「オフ電流」とは、トランジスタが非導通状態のときに、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。例えば、n型トランジスタの場合には、ゲート電圧がトランジスタのしきい値電圧よりも小さいときに、ソースとドレインとの間に流れる電流が、オフ電流である。なお、「ゲート電圧」とは、ソースを基準としたゲートとソースの電位差をいう。
【0039】
「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0040】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置および該半導体装置の作製方法について説明する。具体的には、該半導体装置はトランジスタとして説明する。
【0041】
図1(A)は、本発明の一形態であるトランジスタ100の構成を説明する上面図である。図1(A)の一点鎖線A−B間の断面図は図1(B)に相当し、図1(A)の一点鎖線C−D間の断面図は図1(C)に相当し、図1(A)の一点鎖線E−F間の断面図は図1(D)に相当する。なお、図1(A)において、下地絶縁膜103、ゲート絶縁膜111および保護絶縁膜115は、明瞭化のため図示していない。
【0042】
図1(A)乃至図1(D)より、トランジスタ100は、基板101と、基板101上に設けられた下地絶縁膜103と、下地絶縁膜103上に設けられた酸化物半導体膜105と、下地絶縁膜103上であって、且つ少なくとも酸化物半導体膜105の側面と接して設けられたサイドウォール絶縁膜107と、酸化物半導体膜105およびサイドウォール絶縁膜107上に設けられたソース電極109aおよびドレイン電極109bと、酸化物半導体膜105の一部、ソース電極109aおよびドレイン電極109bを覆うゲート絶縁膜111と、ゲート絶縁膜111上であって、且つ酸化物半導体膜105と重畳するゲート電極113とを有する構造である。つまり、トランジスタ100はトップゲート−トップコンタクト構造である。
【0043】
さらに、トランジスタ100は、酸化物半導体膜105にドーパントが添加された領域とドーパントが添加されていない領域を有する。具体的に、酸化物半導体膜105は、ゲート電極113と重畳する第1の酸化物半導体領域125と、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bと、ソース電極109aおよびドレイン電極109bと重畳する一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bとを有する。また、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bは第1の酸化物半導体領域125を挟んで設けられている。一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bは、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bの側面に接して設けられている。そして、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bにはドーパントが添加されており、第1の酸化物半導体領域125および一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bにはドーパントが添加されていない。
【0044】
一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bにはドーパントが添加されていることから、本明細書では、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bをLDD(Lightly Dope Drain)領域とよぶことにする。なお、トランジスタ100において、チャネル形成される領域はゲート電極113と重畳する第1の酸化物半導体領域125であり、一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bは、ソース領域およびドレイン領域となる。
【0045】
トランジスタ100は、上記構造に対してさらに、ゲート絶縁膜111およびゲート電極113を覆う保護絶縁膜115を有する構造であってもよい(図1(B)乃至図1(D)参照)。
【0046】
次に、トランジスタ100の一変形例であるトランジスタ110について説明する。図2(A)は、トランジスタ110の構成を説明する上面図である。図2(A)の一点鎖線A−B間の断面図は図2(B)に相当し、図2(A)の一点鎖線C−D間の断面図は図2(C)に相当し、図2(A)の一点鎖線E−F間の断面図は図2(D)に相当する。なお、図2(A)においても、下地絶縁膜103、ゲート絶縁膜111および保護絶縁膜115は、明瞭化のため図示していない。
【0047】
図2(A)乃至図2(D)より、トランジスタ110は、下地絶縁膜103の形状がトランジスタ100と異なる。トランジスタ110の下地絶縁膜103は、下地絶縁膜103の酸化物半導体膜105と接する領域に凸部を有する形状である。それゆえ、トランジスタ110のサイドウォール絶縁膜107は、下地絶縁膜103上であって、且つ少なくとも酸化物半導体膜105の側面および下地絶縁膜103の凸部の側面と接して設けられる。また、トランジスタ110の他の構成は、トランジスタ100と同様である。
【0048】
次に、トランジスタ100の一変形例であるトランジスタ130について説明する。図3(A)は、トランジスタ130の構成を説明する上面図である。図3(A)の一点鎖線A−B間の断面図は図3(B)に相当し、図3(A)の一点鎖線C−D間の断面図は図3(C)に相当し、図3(A)の一点鎖線E−F間の断面図は図3(D)に相当する。なお、図3(A)においても、下地絶縁膜103、ゲート絶縁膜111および保護絶縁膜115は明瞭化のため図示していない。
【0049】
図3(A)乃至図3(D)より、トランジスタ130は、トランジスタ110と同様に下地絶縁膜103の形状がトランジスタ100と異なっており、トランジスタ130の下地絶縁膜103は、下地絶縁膜103の酸化物半導体膜105と接する領域に凸部を有する形状である。さらに、トランジスタ130は、異なる二以上の絶縁膜を積層されたサイドウォール絶縁膜107a、107bが設けられている。サイドウォール絶縁膜107aは、下地絶縁膜103上であって、且つ少なくとも酸化物半導体膜105の側面および下地絶縁膜103の凸部の側面と接して設けられている。サイドウォール絶縁膜107bは、サイドウォール絶縁膜107aに接して設けられている。なお、トランジスタ130の他の構成は、トランジスタ100と同様である。
【0050】
次に、トランジスタ100の一変形例であるトランジスタ140について説明する。図25(A)は、トランジスタ140の構成を説明する上面図である。図25(A)の一点鎖線A−B間の断面図は図25(B)に相当し、図25(A)の一点鎖線C−D間の断面図は図25(C)に相当し、図25(A)の一点鎖線E−F間の断面図は図25(D)に相当する。なお、図25(A)においても、下地絶縁膜103、ゲート絶縁膜161および保護絶縁膜166は、明瞭化のため図示していない。
【0051】
図25(A)乃至図25(D)より、トランジスタ140は、酸化物半導体膜105におけるドーパントが添加された領域の形状、ゲート絶縁膜161の形状、および保護絶縁膜166の形状がトランジスタ100と異なる。
【0052】
トランジスタ140の酸化物半導体膜105は、ゲート電極113と重畳する第1の酸化物半導体領域125と、ソース電極109aおよびドレイン電極109bの一部と重畳する一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bとを有する。また、一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bは第1の酸化物半導体領域125を挟んで設けられている。そして、一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bにはドーパントが添加されている。
【0053】
また、トランジスタ140のゲート絶縁膜161は、ゲート電極113と重畳する領域にのみ設けられている。このため、保護絶縁膜166の一部は酸化物半導体膜105に接して設けられる。なお、トランジスタ140の他の構成は、トランジスタ100と同様である。
【0054】
〈トランジスタ100の作製方法〉
次いで、図1に示すトランジスタ100の作製方法について、図4乃至図7を用いて説明する。なお、図4乃至図7は、トランジスタ100の作製方法を説明する断面図であり、図1(A)の一点鎖線A−B間の断面図に相当する。
【0055】
基板101上に第1の絶縁膜として下地絶縁膜103を形成する。
【0056】
基板101は、材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板101として用いてもよい。
【0057】
また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、金属もしくはステンレスなどの導電体でなる導電性基板、またはこれら半導体基板もしくは導電性基板の表面を絶縁材料で被覆した基板などを用いることができる。また、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板101として用いてもよい。
【0058】
また、基板101として、可撓性を有するガラス基板または可撓性を有するプラスチック基板を用いることができる。プラスチック基板としては、屈折率異方性の小さい基板を用いることが好ましく、代表的には、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、アクリル樹脂フィルム、または半硬化した有機樹脂中に繊維体を含むプリプレグ等を用いることができる。
【0059】
下地絶縁膜103は、基板101からの不純物(例えば、LiやNaなどのアルカリ金属など)の拡散を防止する他に、トランジスタ100の作製工程におけるエッチング工程によって、基板101がエッチングされることを防ぐ。
【0060】
また、下地絶縁膜103としては、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、もしくは酸化イットリウムなどの酸化物絶縁膜材料を単層構造、またはこれらの積層構造として形成する。
【0061】
また、トランジスタ100の作製にあたり、LiやNaなどのアルカリ金属は、不純物であるため含有量を少なくすることが好ましい。基板101にアルカリ金属などの不純物を含むガラス基板を用いる場合、アルカリ金属の侵入防止のため、下地絶縁膜103を積層構造として、基板101と接する絶縁膜において、窒化シリコン、もしくは窒化アルミニウムなどの窒化物絶縁膜材料を用いることが好ましい。
【0062】
さらに、下地絶縁膜103は、少なくとも表面に酸素を含み、該酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜としては、化学量論比よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜である。これは、加熱処理により、下地絶縁膜103に接する酸化物半導体膜に酸素を拡散させることができるためである。
【0063】
下地絶縁膜103の厚さは、50nm以上、好ましくは200nm以上500nm以下、さらに好ましくは500nm以上800nm以下とする。下地絶縁膜103を厚くすることで、下地絶縁膜103の酸素脱離量を増加させることができると共に、下地絶縁膜103および後に形成される酸化物半導体膜との界面における界面準位を低減することが可能である。
【0064】
ここで、酸化窒化シリコンとは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上25原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering Spectrometry)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
【0065】
また、「酸素の一部が加熱処理により脱離する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算した酸素の放出量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm以上であることをいう。
【0066】
以下、酸素の放出量をTDS分析で酸素原子に換算して定量する方法について説明する。
【0067】
TDS分析したときの気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、絶縁膜のスペクトルの積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の放出量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分値に対する原子の密度の割合である。
【0068】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(NO2)は、式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるスペクトルの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0069】
【数1】

【0070】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。式1の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照できる。なお、上記した酸素の放出量の数値は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した数値である。
【0071】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0072】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。絶縁膜においては、酸素原子に換算したときの酸素の放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0073】
酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜の一例として、化学量論比より過剰な酸素を含む酸化物絶縁膜が挙げられ、具体的には酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))である。酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0074】
下地絶縁膜103として、酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜を用いることで、後に形成される酸化物半導体膜に酸素を拡散させ、下地絶縁膜103および該酸化物半導体膜の界面準位を低減できる。従って、トランジスタ100の動作に起因して生じうる電荷などが、下地絶縁膜103および該酸化物半導体膜の界面に捕獲されることを抑制でき、トランジスタ100を電気特性劣化の少ないトランジスタとすることができる。
【0075】
下地絶縁膜103は、スパッタリング法、またはCVD法などで形成することができる。CVD法を用いる場合には、下地絶縁膜103を形成した後に加熱処理を行って下地絶縁膜103に含まれる水素などを脱離させて除去することが好ましい。なお、下地絶縁膜103が酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜により形成される場合には、スパッタリング法による形成の方が行いやすいため好ましい。
【0076】
下地絶縁膜103をスパッタリング法で形成する場合、シリコンターゲット、石英ターゲット、アルミニウムターゲットまたは酸化アルミニウムターゲットなどを用いて、酸素を含む雰囲気ガス中で形成すればよい。雰囲気ガス中の酸素の割合は、雰囲気ガス全体に対して6体積%以上とする。好ましくは、50体積%以上とする。雰囲気ガス中の酸素ガスの割合を高めることで、酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜を形成することができる。
【0077】
ターゲット中の水素も極力取り除かれていると好ましい。具体的には、OH基が100ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下の酸化物ターゲットを用いることで、下地絶縁膜103の水素濃度を低減し、トランジスタ100の電気特性および信頼性を高めることができる。例えば、溶融石英は、OH基が10ppm以下としやすく、またコストが低いため好ましい。もちろんOH基濃度の低い合成石英のターゲットを用いてもよい。
【0078】
次に、下地絶縁膜103上に第1の酸化物半導体膜120を形成する(図4(A)参照)。下地絶縁膜103上にスパッタリング法、分子線エピタキシー法、原子層堆積法またはパルスレーザー蒸着法により第1の酸化物半導体膜120が得られる。ここでは、スパッタリング法により第1の酸化物半導体膜120を形成する。第1の酸化物半導体膜120は、厚さ1nm以上50nm以下で形成すればよい。
【0079】
第1の酸化物半導体膜120は、In、Ga、SnおよびZnから選ばれた一以上の元素を含む金属酸化物を用いることできる。なお、該金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上のものを用いる。このように、バンドギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。
【0080】
例えば、第1の酸化物半導体膜120として、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物半導体、In−Sn−Zn系酸化物半導体、In−Al−Zn系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn系酸化物半導体、Al−Ga−Zn系酸化物半導体、Sn−Al−Zn系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系酸化物半導体、Sn−Zn系酸化物半導体、Al−Zn系酸化物半導体、Zn−Mg系酸化物半導体、Sn−Mg系酸化物半導体、In−Mg系酸化物半導体や、In−Ga系の材料、一元系金属酸化物である酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などを用いることができる。なお、n元系金属酸化物はn種類の金属酸化物で構成されるものとする。ここで、例えば、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物半導体は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物という意味であり、その組成比は特に問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでいてもよい。
【0081】
なお、上記金属酸化物では、これらの化学量論比に対し、酸素(O)を過剰に含ませることが好ましい。酸素(O)を過剰に含ませると、形成される第1の酸化物半導体膜120の酸素欠損によるキャリアの生成を抑制することができる。
【0082】
また、第1の酸化物半導体膜120として、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される酸化物半導体を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMn、またはGaおよびCoなどがある。
【0083】
また、第1の酸化物半導体膜120としてIn−Zn系酸化物半導体を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=1.5:1〜15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=3:4〜15:2)とする。例えば、In−Zn系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0084】
また、第1の酸化物半導体膜120は非晶質な酸化物半導体膜でも、結晶領域を含む酸化物半導体膜であってもよい。
【0085】
ここで、第1の酸化物半導体膜120を形成するスパッタリング装置について、以下に詳細を説明する。
【0086】
第1の酸化物半導体膜120を形成する処理室は、リークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることが好ましく、それによりスパッタリング法により形成する際、膜中への不純物の混入を低減することができる。
【0087】
リークレートを低くするには、外部リークのみならず内部リークを低減する必要がある。外部リークとは、微小な穴やシール不良などによって真空系の外から気体が流入することである。内部リークとは、真空系内のバルブなどの仕切りからの漏れや内部の部材からの放出ガスに起因する。リークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とするためには、外部リークおよび内部リークの両面から対策をとる必要がある。
【0088】
外部リークを減らすには、処理室の開閉部分はメタルガスケットでシールするとよい。メタルガスケットは、フッ化鉄、酸化アルミニウム、または酸化クロムによって被覆された金属材料を用いると好ましい。メタルガスケットはOリングと比べ密着性が高く、外部リークを低減できる。また、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態によって被覆された金属材料を用いることで、メタルガスケットから生じる水素を含む放出ガスが抑制され、内部リークも低減することができる。
【0089】
処理室の内壁として用いる部材は、水素を含む放出ガスの少ないアルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、ニッケルもしくはバナジウム、または、これらを鉄、クロムおよびニッケルなどの少なくとも一つを含む合金材料に被覆したものを用いてもよい。鉄、クロムおよびニッケルなどの少なくとも一つを含む合金材料は、剛性があり、熱に強く、また加工に適している。ここで、処理室の内壁の表面積を小さくするために、該部材の表面凹凸を研磨などによって低減しておくと、放出ガスを低減できる。または、該部材をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態で被覆してもよい。
【0090】
さらに、雰囲気ガスを処理室に導入する直前に、雰囲気ガスの精製機を設けることが好ましい。このとき、精製機から処理室までの配管の長さを5m以下、好ましくは1m以下とする。配管の長さを5m以下または1m以下とすることで、配管からの放出ガスの影響を長さに応じて低減できる。
【0091】
処理室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプおよびクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、水の排気能力の高いクライオポンプおよび水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。
【0092】
処理室内に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために処理室の圧力に影響しないが、処理室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、処理室に存在する吸着物をできる限り脱離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、処理室をベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくすることができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性ガスを導入しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。
【0093】
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0094】
第1の酸化物半導体膜120をスパッタリング法で形成する際のターゲットとしては、In、Ga、SnおよびZnから選ばれた一以上の元素を含む金属酸化物ターゲットを用いることができる。ターゲットとしては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系金属酸化物や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系金属酸化物、In−Sn−Zn系金属酸化物、In−Al−Zn系金属酸化物、Sn−Ga−Zn系金属酸化物、Al−Ga−Zn系金属酸化物、Sn−Al−Zn系金属酸化物や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系金属酸化物、Sn−Zn系金属酸化物などのターゲットを用いることができる。
【0095】
ターゲットの一例として、In、Ga、およびZnを含む金属酸化物ターゲットは、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比を有する。また、当該金属酸化物ターゲットはIn:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲット、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するターゲット、In:Ga:ZnO=2:1:8[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0096】
また、第1の酸化物半導体膜120としてIn−Zn系酸化物半導体を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=1.5:1〜15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=3:4〜15:2)とする。例えば、In−Zn系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0097】
なお、雰囲気ガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガスおよび酸素の混合ガスを適宜用いる。また、雰囲気ガスには、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0098】
上記スパッタリング装置を用いることで、水素の混入が低減された第1の酸化物半導体膜120を形成することができる。なお、上記スパッタリング装置を用いても、第1の酸化物半導体膜120は少なからず窒素を含んで形成される。例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定される第1の酸化物半導体膜120の窒素濃度は、5×1018atoms/cm未満となる。
【0099】
また、下地絶縁膜103および第1の酸化物半導体膜120は、真空下で連続して形成してもよい。例えば、基板101表面の水素を含む不純物を、熱処理またはプラズマ処理で除去した後、大気に暴露することなく下地絶縁膜103を形成し、続けて大気に暴露することなく第1の酸化物半導体膜120を形成してもよい。このようにすることで、基板101表面の水素を含む不純物を低減し、また、基板101と下地絶縁膜103の界面、下地絶縁膜103と第1の酸化物半導体膜120との界面に、大気成分が付着することを抑制できる。その結果、トランジスタ100を電気特性が良好で、信頼性に優れたトランジスタとすることができる。
【0100】
また、第1の酸化物半導体膜120を形成する際または形成後において、第1の酸化物半導体膜120の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。第1の酸化物半導体膜120の酸素欠損は、その酸素欠損の一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じるため、トランジスタ100のしきい値電圧をマイナス方向に変動させてしまう。
【0101】
そこで、第1の酸化物半導体膜120を形成後に、第1の加熱処理を行い、第2の酸化物半導体膜122を形成する(図4(B)参照)。
【0102】
第1の加熱処理は、第1の酸化物半導体膜120から水素(水、水酸基または水素化物を含む)を放出させると共に、下地絶縁膜103に含まれる酸素の一部を脱離させ、第1の酸化物半導体膜120中、および下地絶縁膜103と第1の酸化物半導体膜120との界面近傍に該酸素を拡散させる。
【0103】
第1の加熱処理の温度は、上記した酸素の拡散を可能にする温度であり、具体的には、150℃以上基板歪み点温度未満、好ましくは250℃以上450℃以下、さらに好ましくは300℃以上450℃以下とし、酸化性雰囲気または不活性雰囲気で行う。ここで、酸化性雰囲気は、酸素、オゾンまたは窒化酸素などの酸化性ガスを10ppm以上含有する雰囲気をいう。また、不活性雰囲気は、前述の酸化性ガスが10ppm未満であり、その他、窒素または希ガスで充填された雰囲気をいう。処理時間は3分〜24時間とする。24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0104】
第1の加熱処理に用いる加熱処理装置に特別な限定はなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、電気炉や、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。
【0105】
第1の加熱処理は、下地絶縁膜103に含まれる酸素の一部を脱離させ、第1の酸化物半導体膜120中および下地絶縁膜103と第1の酸化物半導体膜120との界面近傍に該酸素を拡散させることから、第1の酸化物半導体膜120の酸素欠損を補う。つまり、下地絶縁膜103から第1の酸化物半導体膜120に酸素が十分に拡散されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へ変動させる第1の酸化物半導体膜120の酸素欠損を補うことができる。
【0106】
さらに、第1の酸化物半導体膜120中の水素はドナーとなりキャリアである電子を生じる。第1の加熱処理によって、第1の酸化物半導体膜120は膜中の水素濃度が低減され、高純度化された第2の酸化物半導体膜122となる。従って、第2の酸化物半導体膜122の水素濃度は、5×1018atoms/cm未満、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より好ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm以下である。なお、第2の酸化物半導体膜122中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定されるものである。
【0107】
第1の加熱処理によって、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、且つ十分な酸素を供給されて酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された第2の酸化物半導体膜122では、水素等のドナーに起因するキャリア密度が1×1013/cm以下となる。また、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、望ましくは10zA以下となる。第2の酸化物半導体膜122を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ100を得ることができる。また、LiやNaなどのアルカリ金属は、不純物であるため含有量を少なくすることが好ましく、また、第2の酸化物半導体膜122中に2×1016cm−3以下、好ましくは、1×1015cm−3以下の濃度とする。さらに、アルカリ土類金属も不純物であるため、含有量を少なくすることが好ましい。
【0108】
上記より、第1の加熱処理はトランジスタ100の電気特性および信頼性を良好にすることができる。
【0109】
次いで、第2の酸化物半導体膜122に第1のフォトリソグラフィ工程を行い、第2の酸化物半導体膜122上にレジストマスクを形成する。該レジストマスクを用いて、第1のエッチング工程で第2の酸化物半導体膜122を加工し、第3の酸化物半導体膜124を形成する(図4(C)参照)。なお、該レジストマスクは、フォトリソグラフィ工程の他にインクジェット法、印刷法等を適宜用いることができる。
【0110】
第1のエッチング工程において、第3の酸化物半導体膜124の端部がテーパ形状となるようにエッチングすることが好ましい。第3の酸化物半導体膜124の端部をテーパ形状とすることで、後にサイドウォール絶縁膜107となる第2の絶縁膜117の被覆性を向上させることができる。フォトリソグラフィ工程を用いる場合は、レジストマスクを後退させつつエッチングすることでテーパ形状とすることができる。
【0111】
第1のエッチング工程は、ドライエッチングまたはウェットエッチングでよく、これらを組み合わせて行ってもよい。ウェットエッチング用のエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、アンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2(体積比))などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0112】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。
【0113】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0114】
ドライエッチングとしては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状に加工できるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度など)を適宜調節する。
【0115】
第3の酸化物半導体膜124を形成した後、上記レジストマスクを除去する。この際、薬液(剥離液)を用いて除去してもよいが、酸素プラズマによるアッシングを行って上記レジストマスクを除去してもよい。上記レジストマスクの除去を、酸素プラズマによるアッシングで行うことにより、該薬液よる第3の酸化物半導体膜124表面の汚染を抑制でき、酸素プラズマによって第3の酸化物半導体膜124に酸素を供給することができる。
【0116】
第3の酸化物半導体膜124のように、所望の形状に加工された酸化物半導体膜は、該酸化物半導体膜の側面が活性である。なお、活性とは不対結合手を有し、不安定な結合状態という意味である。該酸化物半導体膜の側面が活性であるのは、以下の現象によって生じるためである。
【0117】
酸化物半導体膜を所望の形状に加工する際、例えば、上述した条件でドライエッチングをする際、酸化物半導体膜の側面が塩素ラジカル、フッ素ラジカル等を含むプラズマに曝されると、酸化物半導体膜の側面に露出する金属原子と、塩素ラジカル、フッ素ラジカル等とが結合する。このとき、金属原子と塩素原子、フッ素原子が結合して脱離するため、酸化物半導体膜中に当該金属原子と結合していた酸素原子が活性となる。活性となった酸素原子は容易に反応し、脱離しやすい。そのため、酸化物半導体膜の側面には酸素欠損が生じやすい。
【0118】
そして、所望の形状に加工された酸化物半導体膜の側面が活性であると、減圧雰囲気または還元雰囲気において、酸素を引き抜かれ、該酸化物半導体膜の側面で酸素欠損を生じる。減圧雰囲気または還元雰囲気は、膜の形成、加熱処理またはドライエッチングなど、トランジスタの作製工程において、頻繁に用いられる処理雰囲気であり、特に加熱処理された雰囲気では、該酸化物半導体膜の側面で酸素欠損が生じやすい。さらに、その酸素欠損の一部はドナーとなり、キャリアである電子を生成するため、該酸化物半導体膜の側面はn型化する。
【0119】
トランジスタのソース電極およびドレイン電極が、n型化した側面を含む酸化物半導体膜の側面と接することにより、該酸化物半導体膜の側面を介して、ソース電極およびドレイン電極間にリーク電流が発生する。該リーク電流は、トランジスタのオフ電流を増加させる。また、該酸化物半導体膜の側面を介して流れる電流は、場合によって、酸化物半導体膜の側面をチャネル領域とするトランジスタを形成することがある。
【0120】
つまり、第3の酸化物半導体膜124の側面は活性であり、酸素欠損が生じているといえる。
【0121】
次に、下地絶縁膜103および第3の酸化物半導体膜124を覆って第2の絶縁膜117を形成する(図5(A)参照)。
【0122】
第2の絶縁膜117は、下地絶縁膜103の説明で記載した材料を用いて、下地絶縁膜103と同様にして形成すればよい。特に、少なくとも表面に酸素を含み、該酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜が好ましい。
【0123】
次に、第3の酸化物半導体膜124の表面(上面)が露出するように第2の絶縁膜117の表面を研磨し、第3の絶縁膜として、少なくとも第3の酸化物半導体膜124の側面に接するサイドウォール絶縁膜107を形成する(図5(B)参照)。
【0124】
第2の絶縁膜117の表面を研磨する方法としては、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)処理がある。
【0125】
ここで、CMP処理とは、被研磨物の表面を基準にし、それにならって表面を化学的・機械的な複合作用により、平坦化する手法である。一般的に研磨ステージの上に研磨布を貼り付け、被研磨物と研磨布との間にスラリー(研磨剤)を供給しながら研磨ステージと被研磨物とを各々回転または揺動させて被研磨物の表面を、スラリーと被研磨物表面との間での化学反応と、研磨布と被研磨物との機械的研磨の作用により、被研磨物の表面を研磨する方法である。
【0126】
CMP処理は、1回行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うのが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、サイドウォール絶縁膜107表面の平坦性をさらに向上させることができる。
【0127】
例えば、第2の絶縁膜117の表面にCMP処理を行う条件は、研磨布はポリウレタン地の研磨布を用い、スラリー供給用の薬液としては、シリカ系スラリー(粒径60nm)を用いる。他のCMP条件については、スラリー流量100ml/min以上300ml/min以下、研磨圧0.005MPa以上0.08MPa以下、スピンドル回転数20rpm以上50rpm以下、テーブル回転数20rpm以上50rpm以下であり、適宜調整して行う。また、この条件に限定されず、CMP処理を行う装置によっても処理条件が異なることがあるため、適宜調整して行えばよい。
【0128】
なお、トランジスタ100の作製方法において、サイドウォール絶縁膜107は、上記と異なる作製工程を適用することができる。第2の絶縁膜117をCMP処理していくと、多少なりとも第3の酸化物半導体膜124を研磨してしまい、第3の酸化物半導体膜124が削れてしまう可能性がある。第3の酸化物半導体膜124を物理的に研磨すると、第3の酸化物半導体膜124の表面に欠陥が生じるなど、改質してしまう可能性がある。そこで、CMP処理によって第2の絶縁膜117の大部分を削り取り、その後、ドライエッチングによって第3の酸化物半導体膜124の表面を露出させてもよい。
【0129】
CMP処理により、第3の酸化物半導体膜124と同等の厚さであるサイドウォール絶縁膜107を形成することができる。また、第3の酸化物半導体膜124の上面とサイドウォール絶縁膜107の上面とで形成される段差は小さく、第3の酸化物半導体膜124の上面における凹凸とおよびサイドウォール絶縁膜107の上面における凹凸との差も小さく、平坦性が高い。
【0130】
この結果、少なくとも酸化物半導体膜105のチャネル形成領域において、後に形成するゲート絶縁膜111の厚さを薄くすることができる。ゲート絶縁膜111の厚さを該チャネル形成領域において薄くすることで、トランジスタ100のチャネル長を極端に短くすることによって生じるしきい値電圧の変動を低減することができる。
【0131】
上記したように第3の酸化物半導体膜124の側面は活性であり、酸素欠損が生じているといえることから、サイドウォール絶縁膜107を形成した後に第2の加熱処理を行ってもよい。サイドウォール絶縁膜107に含まれる酸素の一部を脱離させ、該酸素を、第3の酸化物半導体膜124中、および第3の酸化物半導体膜124の側面に拡散し、酸素欠損を補う。第2の加熱処理により、第3の酸化物半導体膜124に酸素が十分に拡散されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へ変動させる第3の酸化物半導体膜124の酸素欠損を補うことができる。
【0132】
また、第2の加熱処理は、下地絶縁膜103から第3の酸化物半導体膜124中、および第3の酸化物半導体膜124との界面近傍に酸素を拡散させる。第2の加熱処理の加熱装置は、第1の加熱処理の説明で記載した加熱装置の中から適宜決めればよい。加熱温度は、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下の温度で熱処理を行うとよい。また、第2の加熱処理は、前記温度まで徐々に温度を上昇させて行ってもよいし、前記温度まで段階的に温度を上昇させてもよい。第2の加熱処理は、酸化性雰囲気または不活性雰囲気で行えばよいが、これらに限定されるものではなく、減圧下で行ってもよい。
【0133】
第2の加熱処理により、酸素欠損が低減した第4の酸化物半導体膜を形成することができる。なお、該第4の酸化物半導体膜は図1に示した酸化物半導体膜105に相当する(図5(C)参照)。そこで、図5(C)には、図1に示した酸化物半導体膜105と同様の符号およびハッチングを記す。また、第2の加熱処理は、サイドウォール絶縁膜107を形成する前(第2の絶縁膜117の表面を研磨する前)に行ってもよい。
【0134】
次に、酸化物半導体膜105(第4の酸化物半導体膜)およびサイドウォール絶縁膜107上に、ソース電極109aおよびドレイン電極109bとなる導電膜119を形成する。その後、導電膜119上に第2のフォトリソグラフィ工程を行い、導電膜119上にレジストマスク139a、139bを形成する(図6(A)参照)。レジストマスク139a、139bを用いて、第2のエッチング工程で加工し、ソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成する(図6(B)参照)。
【0135】
導電膜119の導電材料として、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金などがあり、これらを単層構造または積層構造として導電膜119を形成する。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。なお、ソース電極109aおよびドレイン電極109bはソース配線およびドレイン配線としても機能する。
【0136】
導電膜119は、上記した導電材料を用いてスパッタリング法により導電膜を形成すればよい。ソース電極109aおよびドレイン電極109b厚さは、特に限定はなく、用いる導電材料の電気抵抗や、作製工程にかかる時間を考慮し、適宜決めることができる。
【0137】
第2のフォトリソグラフィ工程は、第1のフォトリソグラフィ工程と同様にすればよい。第2のエッチング工程は、ドライエッチングにより行えばよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、例えば塩素ガス、または三塩化ホウ素ガスと塩素ガスの混合ガスを用いればよい。ただし、これに限定されず、ウェットエッチングを用いてもよいし、導電膜119を加工することができる他の手段を用いてもよい。
【0138】
ソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成した後、レジストマスク139a、139bを除去する。この際、薬液(剥離液)を用いて除去してもよいが、酸素プラズマによるアッシングを行ってレジストマスク139a、139bを除去してもよい。レジストマスク139a、139bの除去を、酸素プラズマによるアッシングで行うことにより、該薬液よる酸化物半導体膜105表面の汚染を抑制でき、酸素プラズマによって酸化物半導体膜105に酸素を供給することができる。
【0139】
また、ソース電極109aおよびドレイン電極109bと、酸化物半導体膜105との間に、ソース電極109aおよびドレイン電極109bよりも抵抗率が大きく、酸化物半導体膜105よりも抵抗率が小さい導電膜を設けてもよい(図示せず)。なお、本明細書では、該導電膜を、低抵抗膜とよぶことにする。低抵抗膜としては、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In―SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In―ZnO)などの導電性の金属酸化物膜を適用できる。さらに、低抵抗膜として、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物や、窒素を含むインジウム錫酸化物や、窒素を含むインジウムガリウム酸化物や、窒素を含むインジウム亜鉛酸化物や、窒素を含む酸化錫や、窒素を含むインジウム酸化物や、金属窒化物(InN、ZnNなど)を用いてもよい。また、低抵抗膜を、1枚乃至10枚のグラフェンシートよりなる材料を用いて形成してもよい。このようにソース電極109aおよびドレイン電極109bと、酸化物半導体膜105の間に、低抵抗膜を設けることで、ソース電極109aおよびドレイン電極109bと、酸化物半導体膜105の接触抵抗を低減することが可能となる。なお、該低抵抗膜は、ソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成する第2のエッチング工程を行う際に、導電膜119を加工した後、続けてレジストマスク139a、139b(図6(A)参照)を用いて加工すればよい。
【0140】
次に、酸化物半導体膜105、ソース電極109aおよびドレイン電極109b上に第4の絶縁膜として、ゲート絶縁膜111を形成する(図6(C)参照)。ゲート絶縁膜111は、下地絶縁膜103で説明した絶縁膜材料および方法を適用し、単層構造または積層構造として形成することができる。ゲート絶縁膜111の厚さは、1nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下とするとよい。ゲート絶縁膜111の厚さを5nm以上とすると、トランジスタ100のゲートリーク電流を特に低減することができる。
【0141】
また、ゲート絶縁膜111は、酸化物半導体膜105と接する部分において酸素を含むことが好ましいため、少なくとも表面に酸素を含み、該酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。ゲート絶縁膜111として、酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜を用いることで、後述する第3の加熱処理により、酸化物半導体膜105に生じる酸素欠損を補うことができ、トランジスタ100の電気特性および信頼性を良好にすることができる。
【0142】
また、ゲート絶縁膜111に、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0、z>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、などのhigh−k材料を用いることができる。high−k材料は、誘電率が高いため、例えば、酸化シリコン膜をゲート絶縁膜に用いた場合と同じゲート絶縁膜容量を有したまま、物理的なゲート絶縁膜の厚さを厚くすることができる。それゆえ、ゲートリーク電流を低減できる。
【0143】
なお、ゲート絶縁膜111を形成する前に、酸化物半導体膜105の表面を酸化性ガスのプラズマに曝して酸化物半導体膜105の表面の酸素欠損を少なくすることが好ましい。
【0144】
ここで第3の加熱処理を行ってもよい。第3の加熱処理により、下地絶縁膜103、サイドウォール絶縁膜107およびゲート絶縁膜111から酸化物半導体膜105に酸素を拡散される。第3の加熱処理の加熱装置は、第1の加熱処理の説明で記載した加熱装置の中から適宜決めればよい。加熱温度は、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下の温度で熱処理を行うとよい。また、第3の加熱処理は、前記温度まで徐々に温度を上昇させて行ってもよいし、前記温度まで段階的に温度を上昇させてもよい。第3の加熱処理は、酸化性雰囲気または不活性雰囲気で行えばよいが、これらに限定されるものではなく、減圧下で行ってもよい。
【0145】
なお、本実施の形態では、サイドウォール絶縁膜107を形成した後に第2の加熱処理を行うこととして記載しているが、これは限定的な記載ではなく、サイドウォール絶縁膜107を形成した後に第2の加熱処理を行わず、該第2の加熱処理を兼ねて上記第3の加熱処理を行うようにしてもよい。
【0146】
次に、ゲート絶縁膜111上に、ゲート電極113となる導電膜123を形成する。導電膜123は、ソース電極109aおよびドレイン電極109bとなる導電膜119の説明で記載した導電材料を用いて、スパッタリング法により形成すればよい。
【0147】
その後、導電膜123上に第3のフォトリソグラフィ工程を行い、導電膜123上にレジストマスク133を形成する(図7(A)参照)。レジストマスク133を用いて、第3のエッチング工程で加工し、ゲート電極113を形成する。また、ゲート電極113はゲート配線としても機能する。
【0148】
第3のフォトリソグラフィ工程は、第1のフォトリソグラフィ工程と同様にすればよい。例えば、第3のエッチング工程は、ドライエッチングにより行えばよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、例えば塩素ガス、または三塩化ホウ素ガスと塩素ガスの混合ガスを用いればよい。ただし、第3のエッチング工程は、これに限定されず、ウェットエッチングを用いてもよいし、導電膜123を加工することができる他の手段を用いてもよい。
【0149】
なお、ゲート電極113とゲート絶縁膜111との間に、窒素を含むIn−Ga−Zn系金属酸化物や、窒素を含むIn−Sn系金属酸化物や、窒素を含むIn−Ga系金属酸化物や、窒素を含むIn−Zn系金属酸化物や、窒素を含む酸化スズや、窒素を含む酸化インジウムや、金属窒化物(InN、ZnNなど)で形成した膜を設けることが好ましい。該膜は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、トランジスタ100の電気特性において、しきい値電圧をプラスにすることができ、トランジスタ100を所謂ノーマリーオフのトランジスタとすることができる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn系金属酸化物を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜105より高い窒素濃度、具体的には窒素が7原子%以上のIn−Ga−Zn−O膜を用いる。なお、該膜は、ゲート電極113を形成する第3のエッチング工程を行う際に、導電膜123を加工した後、続けてレジストマスク133(図7(A)参照)を用いて加工すればよい。
【0150】
次に、酸化物半導体膜105に、第1の酸化物半導体領域125と、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135b(LDD領域)と、一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bとを形成する。これらの領域は、ゲート電極113、ソース電極109aおよびドレイン電極109bをマスクとしてドーパント150を添加することでセルフアラインに形成される(図7(B)参照)。
【0151】
添加するドーパント150としては、窒素、リン、もしくは砒素などの15族元素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、もしくはキセノンなどの希ガス元素、または水素から少なくとも一つを選択すればよい。また、ドーパント150を添加する方法としては、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることで、ドーパント150の添加深さ(添加領域)が制御し易くなり、ドーパント150を精度良く添加することができる。また、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法によりドーパント150を添加する際に、基板101を加熱しながら行ってもよい。
【0152】
さらに、ドーパント150の添加はイオンドーピング法またはイオンインプランテーション法以外の方法でも行うことができる。例えば、添加する元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、被添加物に対してプラズマ処理を行うことによって、ドーパントを添加することができる。プラズマ処理を行う装置としては、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置などを用いることができる。このとき、酸化物半導体膜105のLDD領域となる部分に結晶領域が含まれている場合、LDD領域を形成する際のドーパント150の添加によるダメージによって、結晶性が低減し、非晶質領域となることがある。
【0153】
LDD領域は、導電率が10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。なお、導電率が低すぎると、トランジスタ100のオン電流が低下してしまう。
【0154】
LDD領域のドーパント濃度を増加させると、キャリア密度を増加させることができるが、ドーパント濃度を増加させすぎると、ドーパントがキャリアの移動を阻害することになり、LDD領域の導電性を低下させることになる。
【0155】
従って、LDD領域のドーパント濃度は、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。ドーパント150は、ゲート絶縁膜111を通過して添加される。従って、該ドーパント濃度は、ゲート絶縁膜111の厚さに対応することから、LDD領域のドーパント濃度が上記した値となるように、ゲート絶縁膜111の厚さを決める。
【0156】
また、ドーパント150を添加した後に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理は、第1の加熱処理乃至第3の加熱処理と同様にして行えばよいが、LDD領域が結晶化しない温度が好ましい。
【0157】
また、ドーパント150を添加する処理は、複数回行ってもよい。ドーパント150を添加する処理を複数回行う場合、ドーパント150は複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0158】
以上を踏まえ、ドーパント150を添加する条件の一例を記す。(1)例えば、ドーパント150を窒素とし、加速電圧を20kVとして行う。また、(2)ドーパント150をリンとし、加速電圧を40kVとして行う。そして、ドーパント150である窒素またはリンのドーズ量が1×1014cm以下である場合は、450℃未満で加熱処理を行うことが好ましい。これにより、LDD領域のシート抵抗を1×10Ω/sq.以下とすることができる。
【0159】
また、ドーパント150である窒素またはリンのドーズ量が5×1014cm以上5×1015cm未満である場合は、450℃以上600℃以下で熱処理を行うことが好ましい。これにより、LDD領域のシート抵抗を1×10Ω/sq.以下とすることができる。
【0160】
さらに、ドーパント150である窒素またはリンのドーズ量が5×1015cm以上の場合は、600℃以上で熱処理を行うことがこのましい。これにより、LDD領域のシート抵抗を1×10Ω/sq.以下とすることができる。
【0161】
次に、ゲート絶縁膜111およびゲート電極113上に第5の絶縁膜として、保護絶縁膜115を形成する(図7(C)参照)。
【0162】
保護絶縁膜115は、下地絶縁膜103で説明した絶縁膜材料および方法を適用し、単層構造または積層構造として形成する。好ましくは、少なくとも表面に酸素を含み、該酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜を用いて形成する。さらに好ましくは、該酸化物絶縁膜上に、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの絶縁膜材料を用いて、積層構造として形成する。
【0163】
この後、ここまでの工程で得られた構成に第4の加熱処理を行ってもよい。保護絶縁膜115を該積層構造とすることで、第4の加熱処理を行う際に、該酸化物絶縁膜から脱離する酸素がトランジスタ100の系の外に放出されることを抑制(ブロック)し、該酸化物絶縁膜から脱離する酸素を酸化物半導体膜105(第4の酸化物半導体膜)へと効率よく拡散させることができる。
【0164】
第4の加熱処理の加熱装置は、第1の加熱処理で説明した加熱装置の中から適宜決めればよい。加熱温度は、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下の温度で熱処理を行うとよい。また、第4の加熱処理は、前記温度まで徐々に温度を上昇させて行ってもよいし、前記温度まで段階的に温度を上昇させてもよい。第4の加熱処理は、酸化性雰囲気または不活性雰囲気で行えばよいが、これらに限定されるものではなく、減圧下で行ってもよい。
【0165】
必要に応じて、ゲート電極113、ソース電極109aおよびドレイン電極109bの一部を開口し、ゲート配線、ソース配線およびドレイン配線の一部を露出させる。
【0166】
以上の工程により、トランジスタ100を作製することができる。
【0167】
トランジスタ100は、ドーパントが添加されたLDD領域を、チャネル形成領域の第1の酸化物半導体領域125の両端に設けることで、チャネル形成領域である第1の酸化物半導体領域125に加わる電界を緩和させることができる。トランジスタ100のチャネル長が極端に短くすることで生じるしきい値電圧の変動を低減することができる。
【0168】
〈トランジスタ110の作製方法〉
ここで、トランジスタ110(図2(A)乃至(D)参照)の作製方法について、トランジスタ100の作製方法と異なる点を説明する。
【0169】
基板101上に下地絶縁膜103を形成し、下地絶縁膜103上に第1の酸化物半導体膜120を形成し、第1の酸化物半導体膜120を形成した後、第1の加熱処理を行って、酸素欠損が低減された第2の酸化物半導体膜122を形成する(図4(B)参照)。なお、ここまでの工程は、トランジスタ100と同様にして行えばよい。
【0170】
次に、第2の酸化物半導体膜122に第1のフォトリソグラフィ工程を行い、第2の酸化物半導体膜122上にレジストマスクを形成する。該レジストマスクを用いて、第1のエッチング工程で加工し、第3の酸化物半導体膜124を形成する。なお、該レジストマスクは、フォトリソグラフィ工程の他にインクジェット法、印刷法等を適宜用いることができる。
【0171】
トランジスタ110を作製するには、第1のエッチング工程において、第2の酸化物半導体膜122を選択的にエッチングすると同時に、下地絶縁膜103の一部も選択的にエッチングして、下地絶縁膜103の第3の酸化物半導体膜124と接する領域に凸部が形成されるように加工する(図8(A)参照)。このとき、第3の酸化物半導体膜124と接していない領域の下地絶縁膜103が消失しないように、エッチングガスおよびエッチング時間を考慮する必要がある。好ましくは、下地絶縁膜103を450nm以上形成し、第1のエッチング工程により下地絶縁膜103を100nm程度エッチングすることが好ましい。
【0172】
例えば、ICP装置を用いて、ICPパワー450W、バイアスパワー100W、エッチングガスとして三塩化ホウ素を流量60sccmで導入し、塩素を流量20sccmで導入して、処理室内の圧力を1.9Paとして第1のエッチング工程を行えばよい。
【0173】
次に、下地絶縁膜103および第3の酸化物半導体膜124上に第2の絶縁膜117を形成する(図8(B)参照)。第2の絶縁膜117は、トランジスタ100と同様にして形成すればよい。
【0174】
次に、第3の酸化物半導体膜124の表面が露出するように第2の絶縁膜117の表面をCMP処理し、第3の絶縁膜として、少なくとも第3の酸化物半導体膜124の側面に接するサイドウォール絶縁膜107を形成する(図8(C)参照)。なお、第2の絶縁膜117の表面をCMP処理する条件などは、トランジスタ100と同様とすればよい。
【0175】
下地絶縁膜103の第3の酸化物半導体膜124と接する領域に凸部を形成することで、第3の酸化物半導体膜124の周辺がサイドウォール絶縁膜107によって埋め込まれる。これにより、サイドウォール絶縁膜107の形成後に行う第3の加熱処理によって、サイドウォール絶縁膜107に含まれる酸素の一部を第3の酸化物半導体膜124の側面に拡散させ、酸素欠損を充分に補うことができる。
【0176】
以降の作製工程は、トランジスタ100と同様にして行うことでトランジスタ110を作製することができる(図2(B)参照)。
【0177】
〈トランジスタ130の作製方法〉
ここで、トランジスタ130(図3(A)乃至(D)参照)の作製方法について、トランジスタ100およびトランジスタ110の作製方法と異なる点を説明する。
【0178】
トランジスタ130の作製において、下地絶縁膜103の第3の酸化物半導体膜124と接する領域に凸部が形成されるように第1のエッチング工程を行うところまでトランジスタ110と同様である(図8(A)参照)。
【0179】
次に、下地絶縁膜103および第3の酸化物半導体膜124上に形成する第2の絶縁膜117を、絶縁膜117a、117bの積層構造として形成する(図9(A)参照)。
【0180】
第3の酸化物半導体膜124と接する絶縁膜117aは、下地絶縁膜103として適用できる酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、または酸化イットリウムなどの酸化物絶縁膜材料で形成し、好ましくは、上述の少なくとも表面に酸素を含み、該酸素の一部が加熱処理により脱離する酸化物絶縁膜を用いて形成する。なお、絶縁膜117aは単層構造でも積層構造でもよい。
【0181】
絶縁膜117aに接する絶縁膜117bは、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの絶縁膜材料から選ばれる1つを用いて形成する。好ましくは、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウムから選ばれる1つを用いて形成する。
【0182】
次に、第3の酸化物半導体膜124の表面が露出するように絶縁膜117a、117bの表面をCMP処理し、第3の絶縁膜として、少なくとも第3の酸化物半導体膜124の側面に接するサイドウォール絶縁膜107a、107bを形成する。なお、絶縁膜117a、117bの表面をCMP処理する条件などは、トランジスタ100の作製方法で説明した条件を適宜用いればよい。
【0183】
トランジスタ110と同様に、下地絶縁膜103の第3の酸化物半導体膜124と接する領域に凸部を形成することで、第3の酸化物半導体膜124の周辺がサイドウォール絶縁膜107a、107bによって埋め込まれる。さらに、第2の加熱処理を行ってもよく、サイドウォール絶縁膜107a、107bというように積層構造とすることで第2の加熱処理の際、サイドウォール絶縁膜107aから脱離する酸素が、被処理物の系の外に放出されることを抑制(ブロック)できる。従って、サイドウォール絶縁膜107aに含まれる酸素の一部を第3の酸化物半導体膜124の側面に効率よく拡散させ、酸素欠損を充分に補うことができ、酸化物半導体膜105(第4の酸化物半導体膜)を形成することができる(図9(B)参照)。
【0184】
以降の作製工程は、トランジスタ100と同様にして行うことでトランジスタ130を作製することができる(図3(B)参照)。
【0185】
また、トランジスタ130におけるサイドウォール絶縁膜107a、107bの形成方法は、絶縁膜117aの表面が露出するように絶縁膜117bをCMP処理し、その後、絶縁膜117aをドライエッチングによりエッチングし、第3の酸化物半導体膜124の表面を露出させて、サイドウォール絶縁膜107a、107bを形成することが好ましい。
【0186】
また、絶縁膜117bにおいて、特に酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウムのドライエッチングによるエッチングレートは、絶縁膜117aに用いる酸化物絶縁膜材料のエッチングレートより極端に遅いため、サイドウォール絶縁膜107bを絶縁膜117aのエッチングマスクとして用いることができる。このように形成することで、第3の酸化物半導体膜124を物理的に研磨し、第3の酸化物半導体膜124の表面に欠陥の生成や、配向性または結晶性の低下など、酸化物半導体膜が改質してしまうことを抑制することができる。
【0187】
上記した形成方法は、図10(A)のように絶縁膜117bを絶縁膜117aより厚く形成する。具体的には、絶縁膜117bにおける第3の酸化物半導体膜124と重畳していない領域の上面が、絶縁膜117aにおける第3の酸化物半導体膜124と重畳する領域の上面より高く位置するように絶縁膜117bを形成する。例えば、絶縁膜117aを20nm程度形成した場合は、50nm程度の絶縁膜117bを形成すればよい。
【0188】
絶縁膜117aの表面が露出するように絶縁膜117bをCMP処理する(図10(B)参照)。その後、絶縁膜117aをドライエッチングし、第3の酸化物半導体膜124の表面を露出させて、サイドウォール絶縁膜107a、107bを形成する(図10(C)参照)。絶縁膜117bはほとんどエッチングされずに絶縁膜117aがエッチングされ、第3の酸化物半導体膜124周辺部に、サイドウォール絶縁膜107aとサイドウォール絶縁膜107bとからなる段差が形成される。
【0189】
ただし、絶縁膜117aをドライエッチングする際に第3の酸化物半導体膜124もエッチングしてしまう可能性がある。従って、第3の酸化物半導体膜124に対して絶縁膜117aのエッチング選択比が高いエッチング条件を採用することが必要である。ここでのドライエッチングの条件として、例えば、ICP/Bias=500/50W、圧力1.5Pa,エッチングガスはCFおよびOの混合ガスとし、流量比はCF/O=70/30sccmとする。このような条件を採用することにより、絶縁膜117aを選択的に除去してサイドウォール絶縁膜107a、107bを形成することができる。また、このように形成することで、第3の酸化物半導体膜124がエッチングされてしまうことを抑制することができ、酸化物半導体膜が改質してしまうことを抑制することができる。なお、該ドライエッチングの際に、水素を含む不純物が含まれないように行うことが望ましい。
【0190】
ここで、サイドウォール絶縁膜107a、107bを形成する際に、CMP処理およびドライエッチングを順に行った場合のトランジスタ130の断面図を図11に示す。
【0191】
〈トランジスタ140の作製方法〉
ここで、トランジスタ140(図25(A)乃至(D)参照)の作製方法について、トランジスタ100およびトランジスタ110の作製方法と異なる点を説明する。
【0192】
トランジスタ140の作製において、酸化物半導体膜105およびサイドウォール絶縁膜107を形成するところまではトランジスタ110と同様である(図5(C)参照)。
【0193】
次に、酸化物半導体膜105およびサイドウォール絶縁膜107上に、ゲート絶縁膜161となる絶縁膜160およびゲート電極113となる導電膜112を形成する(図26(A)参照)。絶縁膜160および導電膜112はそれぞれ、ゲート絶縁膜111で説明した絶縁材料およびゲート電極113となる導電材料を適宜用いて形成すればよい。この後、加熱処理を行ってもよい。
【0194】
次に、フォトリソグラフィ工程を行い、導電膜112上にレジストマスクを形成した後、レジストマスクを用いて、導電膜112をエッチングしてゲート電極113を形成すると共に、絶縁膜160をエッチングしてゲート絶縁膜161を形成する(図26(B)参照)。当該エッチング工程においては、絶縁膜160の一部がエッチングされるため、酸化物半導体膜105の一部が露出される。
【0195】
次に、酸化物半導体膜105に、ドーパント150を添加する(図26(C)参照)。この結果、第1の酸化物半導体領域125と、一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bとが形成される(図26(D)参照)。これらの領域は、ゲート電極113およびゲート絶縁膜161をマスクとしてドーパントを添加することでセルフアラインに形成される。この後、加熱処理を行ってもよい。またドーパントの添加方法はトランジスタ100と同様にすればよい。
【0196】
次に、酸化物半導体膜105、サイドウォール絶縁膜107、ゲート絶縁膜161およびゲート電極113上に、ソース電極およびドレイン電極となる導電膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ工程を行い、導電膜上にレジストマスクを形成した後、レジストマスクを用いて、導電膜をエッチングして、ソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成する(図27(A)参照)。
【0197】
なお、ソース電極109aおよびドレイン電極109bはそれぞれ、一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bの一部と接するように形成する。この結果、一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bにおいて、ソース電極109aおよびドレイン電極109bに接する領域はソース領域およびドレイン領域として機能し、ソース電極109aおよびドレイン電極109bと接していない領域はLDD領域として機能する。一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bにおいて、ソース電極109aおよびドレイン電極109bに接する領域はドーパントが添加されているため、一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bと、ソース電極109aおよびドレイン電極109bとの接触抵抗を低減することができる。このため、完成したトランジスタ140のオン電流を高めることができる。
【0198】
次に、酸化物半導体膜105、ソース電極109aおよびドレイン電極109b、ゲート絶縁膜161、ならびにゲート電極113上に、保護絶縁膜166を形成する(図27(B)参照)。また、ソース電極109aおよびドレイン電極109bならびに保護絶縁膜166はトランジスタ100と同様にして形成すればよい。
【0199】
以上の工程により、トランジスタ140を作製することができる。
【0200】
以上より、電気特性の変動が生じにくく、且つ電気特性の良好なトランジスタ100、トランジスタ110、トランジスタ130およびトランジスタ140を作製することができる。
【0201】
なお、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0202】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明したトランジスタとは構成が一部異なるトランジスタおよび該トランジスタの作製方法について説明する。
【0203】
図12(A)は、本発明の一形態であるトランジスタ200の構成を説明する上面図である。図12(A)の一点鎖線A−B間の断面図は図12(B)に相当し、図12(A)の一点鎖線C−D間の断面図は図12(C)に相当し、図12(A)の一点鎖線E−F間の断面図は図12(D)に相当する。なお、図12(A)において、下地絶縁膜103、ゲート絶縁膜111および保護絶縁膜115は、明瞭化のため図示していない。
【0204】
図12(A)乃至図12(D)より、トランジスタ200は、基板101と、基板101上に設けられた下地絶縁膜103と、下地絶縁膜103上に設けられた酸化物半導体膜105と、下地絶縁膜103上であって、且つ少なくとも酸化物半導体膜105の側面と接して設けられたサイドウォール絶縁膜107a、107bと、酸化物半導体膜105およびサイドウォール絶縁膜107a、107b上に設けられたソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bと、酸化物半導体膜105の一部、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bを覆うゲート絶縁膜111と、ゲート絶縁膜111上であって、且つ酸化物半導体膜105と重畳するゲート電極113とを有する構造である。
【0205】
なお、トランジスタ200は、上記構造に対してさらに、ゲート絶縁膜111およびゲート電極113を覆う保護絶縁膜115を有する構造であってもよい。
【0206】
ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bにおいて、酸化物半導体膜105と接するソース電極108aおよびドレイン電極108bと、ソース電極108aおよびドレイン電極108bに接するソース電極109aおよびドレイン電極109bとは、互いに異なる導電材料で形成されている。また、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの端部は、ソース電極109aおよびドレイン電極109bの端部より外側に位置する。
【0207】
従って、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bには、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bからなる第1の厚さである領域と、ソース電極108aおよびドレイン電極108bからなり、該第1の厚さより薄い第2の厚さである領域とを有する。例えば、該第2の厚さである領域は、図12(B)において、ソース電極108aおよびドレイン電極108bのソース電極109aおよびドレイン電極109bより突出している領域Lである。
【0208】
トランジスタ200の酸化物半導体膜105は、ドーパントが添加された領域とドーパントが添加されていない領域を有する。具体的に、トランジスタ200における酸化物半導体膜105は、ゲート電極113と重畳する第1の酸化物半導体領域125と、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bと、少なくとも上記第1の厚さである領域と重畳する一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bと、上記第2の厚さである領域(領域L)のみと重畳する第4の酸化物半導体領域155a、155bを有する。
【0209】
一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bは第1の酸化物半導体領域125を挟んで設けられている。また、一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bは、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bの外側に設けられている。一対の第4の酸化物半導体領域155a、155bは、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bの外側に設けられている(図12(B)参照)。
【0210】
また、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bおよび一対の第4の酸化物半導体領域155a、155bには、ドーパントが添加されており、第1の酸化物半導体領域125および一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bにはドーパントが添加されていない。
【0211】
ドーパントが添加されている領域のうち、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bと一対の第4の酸化物半導体領域155a、155bのドーパント濃度には、差があることから、本実施の形態では、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bを第1のLDD領域とよび、一対の第4の酸化物半導体領域155a、155bを第2のLDD領域とよぶことにする。
【0212】
トランジスタ200において、チャネル形成領域はゲート電極113と重畳している第1の酸化物半導体領域125である。
【0213】
〈トランジスタ200の作製方法〉
トランジスタ200の作製方法について、実施の形態1で説明したトランジスタの作製方法と異なる点を説明する。
【0214】
まず、トランジスタ130の作製方法と同様にして、酸化物半導体膜105を形成する工程まで行う(図9(A)及び(B)参照)。
【0215】
次いで、酸化物半導体膜105、およびサイドウォール絶縁膜107a、107b上にソース電極108aおよびドレイン電極108bとなる導電膜128を形成する。導電膜128上にソース電極109aおよびドレイン電極109bとなる導電膜129を形成する。導電膜129上にソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成するためのレジストマスク143a、143bを形成する(図13(A)参照)。なお、レジストマスク143a、143bはフォトリソグラフィ工程により形成すればよい。
【0216】
導電膜128の導電材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金とし、単層構造として導電膜128を形成することが好ましい。また、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を単層構造として形成してもよい。
【0217】
導電膜129は、導電膜128に用いた導電材料とは異なる種類の単体金属、該単体金属を主成分とする合金、上記透明導電材料を単層構造として形成することができる。また、導電膜129は、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにアルミニウム膜上にチタン膜を積層する三層構造を形成してもよい。
【0218】
導電膜128は、導電膜129より薄く形成することが好ましい。導電膜128の厚さが、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの厚さとなり、さらにはソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bにおける第2の厚さとなる。また、後述する第2のLDD領域のドーパント濃度は、ソース電極108aおよびドレイン電極108bの厚さに対応することから、一対の第4の酸化物半導体領域155a、155bのドーパント濃度が下記の値となるように、導電膜128の厚さを決定する。
【0219】
例えば、導電膜128の厚さとしては、10nm以上50nm以下することが好ましい。導電膜128を薄く形成することで、ドライエッチングを用いて、導電膜129を加工し、ソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成する場合に、エッチングガスが既に形成されたソース電極108aおよびドレイン電極108bの側面に周り込んでエッチングすることを抑制できる。従って、ソース電極108aおよびドレイン電極108bを、レジストマスク143a、143bに対して精度良く加工されたものにすることができる。従って、チャネル長が短い微細なトランジスタを作製する際にも、第1のLDD領域および第2のLDD領域を形成することができる。
【0220】
また、導電膜128の厚さによって、形成される第2のLDD領域の厚さも制御することができる。つまり、酸化物半導体膜105に添加されるドーパントの添加深さ(添加領域)を制御することができる。例えば、トランジスタ200では、酸化物半導体膜105の上面から一部に第2のLDD領域が形成されているが、導電膜128の厚さできる限り薄くすると、酸化物半導体膜105の下面から上面まで全ての厚さ方向に第2のLDD領域を形成することができる(図示せず)。
【0221】
まず、レジストマスク143a、143bを用いて、導電膜128および導電膜129を選択的にエッチングして、ソース電極108aおよびドレイン電極108bと、一対の導電膜129a、129bとを形成する。
【0222】
例えば、ICP装置を用いて、ICPパワー450W、バイアスパワー100W、エッチングガスとして三塩化ホウ素を流量60sccm、塩素を流量20sccm、処理室内の圧力を1.9Paとしたエッチング条件で、導電膜129をエッチングし、一対の導電膜129a、129bとを形成する。その後、ICP装置を用いて、ICPパワー500W、バイアスパワー150W、エッチングガスとして四フッ化炭素25sccm、塩素を流量25sccm、酸素を流量10sccm、処理室内の圧力を1.9Paとしたエッチング条件で導電膜128をエッチングし、ソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成する。
【0223】
次いで、レジストマスク143a、143bを縮小(後退)させて、一対の導電膜129a、129bを加工するためのレジストマスク153a、153bを形成する(図13(B)参照)。レジストマスク143a、143bの縮小(後退)は、少なくとも第2のLDD領域の幅となる分のソース電極108aおよびドレイン電極108bを露出させる必要がある。レジストマスク143a、143bの縮小(後退)には、酸素プラズマによるアッシング行えばよい。
【0224】
レジストマスク153a、153bを用いて、一対の導電膜129a、129bを選択的にエッチングして、その後、レジストマスク153a、153bを除去して、ソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成する(図13(C)参照)。
【0225】
なお、一対の導電膜129a、129bを選択的にエッチングする際に、ドライエッチングを行うと、酸化物半導体膜105も同時にエッチングされる可能性があることから、酸化物半導体膜105に対して一対の導電膜129a、129b(導電膜129)のエッチング選択比が高いエッチング条件を用いてソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成することが好ましい。なお、本工程により、酸化物半導体膜105の一部がエッチングされて酸化物半導体膜105に凹部が形成されてもよい。
【0226】
なお、一対の導電膜129a、129bをエッチングする条件としては、例えば、ICP装置を用いて、ICPパワー350W、バイアスパワー20W、エッチングガスとして三塩化ホウ素を流量60sccm、塩素を流量20sccm、処理室内の圧力を2.0Paとした条件である。
【0227】
このように形成することで、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bは、第1の厚さである領域と、該第1の厚さより薄い第2の厚さである領域とを有する。
【0228】
なお、レジストマスク153a、153bは、実施の形態1で説明したように、酸素プラズマによるアッシングによって除去してもよい。
【0229】
また、レジストマスク143a、143bとは異なる第1のレジストマスク(図示せず)を用いて導電膜129をエッチングしてソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成し、その後第1のレジストマスクを除去し、その後フォトリソグラフィ工程によって第2のレジストマスク(図示せず)を形成し、第2のレジストマスクを用いて導電膜128をエッチングしてソース電極108aおよびドレイン電極108bを形成してもよい。このように形成することで、酸化物半導体膜105の表面を処理室内の減圧雰囲気または還元性雰囲気に曝す回数を少なくすることができ、酸化物半導体膜105に生じる酸素欠損を低減することができるため、トランジスタ200の電気特性を良好なものにすることができる。
【0230】
次に、酸化物半導体膜105、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109b上にゲート絶縁膜111を形成し、さらにゲート電極113を形成する(図14(A)参照)。ゲート絶縁膜111およびゲート電極113は、トランジスタ130と同様にして形成すればよい。
【0231】
次に、酸化物半導体膜105に、第1の酸化物半導体領域125と、第1のLDD領域と、一対の第3の酸化物半導体領域145a、145bと、第2のLDD領域とを形成する。これらの領域は、ゲート電極113、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bをマスクとしてドーパント150を添加することでセルフアラインに形成される(図14(B)参照)。
【0232】
ドーパント150を添加する工程はトランジスタ100と同様にして行えばよい。なお、第1のLDD領域のドーパント濃度は、ゲート絶縁膜111の厚さに対応することから、第1のLDD領域のドーパント濃度が下記の値となるように、ゲート絶縁膜111の厚さを決める。このとき、酸化物半導体膜105の第1のLDD領域および第2のLDD領域となる部分に結晶領域が含まれている場合、第1のLDD領域および第2のLDD領域を形成する際のドーパント150の添加によるダメージによって、結晶性が低減し、非晶質領域となることがある。
【0233】
第1のLDD領域は、ゲート絶縁膜111を通過してドーパントが添加され、第2のLDD領域は、ソース電極108aおよびドレイン電極108bを通過してドーパントが添加される。ドーパントはソース電極108aおよびドレイン電極108bより、ゲート絶縁膜111のほうが通過しやすい。従って、第1のLDD領域のドーパント濃度は、第2のLDD領域のドーパント濃度よりも高い。
【0234】
第1のLDD領域および第2のLDD領域は、導電率が10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。なお、導電率が低すぎると、トランジスタ200のオン電流が低下してしまう。
【0235】
第1のLDD領域および第2のLDD領域のドーパント濃度を増加させると、キャリア密度を増加させることができるが、ドーパント濃度を増加させすぎると、ドーパントがキャリアの移動を阻害することになり、第1のLDD領域および第2のLDD領域の導電性を低下させることになる。
【0236】
従って、第1のLDD領域および第2のLDD領域のドーパント濃度は、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。また、ドーパント150を添加した後、加熱処理を行ってもよい。
【0237】
さらに、ドーパント150を添加する処理は、複数回行っても良い。ドーパント150を添加する処理を複数回行う場合、ドーパント150は複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0238】
ドーパント150を添加する条件は実施の形態1で説明した条件とすることができる。
【0239】
以降の作製工程は、トランジスタ130と同様にして行うことでトランジスタ200を作製することができる(図14(C)参照)。なお、サイドウォール絶縁膜107a、107bを形成する際に、CMP処理およびドライエッチングの順に行った場合のトランジスタ200の断面図を図15に示す。
【0240】
トランジスタ200は、ドーパントが添加された第1のLDD領域および第2のLDD領域を、チャネル形成領域の第1の酸化物半導体領域125の両端に設けることで、チャネル形成領域である第1の酸化物半導体領域125に加わる電界を緩和させることができる。従って、トランジスタ200のチャネル長が極端に短くすることで生じるしきい値電圧の変動を低減することができる。
【0241】
また、実施の形態1で説明した低抵抗膜のように、酸化物半導体膜105とソース電極108aおよびドレイン電極108bとの間に、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bよりも抵抗率が大きく、酸化物半導体膜105よりも抵抗率が小さい導電膜を設けてもよい。
【0242】
さらに、実施の形態1で説明したように、ゲート電極113とゲート絶縁膜111との間に、窒素を含むIn−Ga−Zn系金属酸化物や、窒素を含むIn−Sn系金属酸化物や、窒素を含むIn−Ga系金属酸化物や、窒素を含むIn−Zn系金属酸化物や、窒素を含む酸化スズや、窒素を含む酸化インジウムや、金属窒化物(InN、ZnNなど)で形成した膜を設けてもよい。
【0243】
また、ソース電極108a、109aおよびドレイン電極108b、109bにおいて、本実施の形態では導電膜128および導電膜129の積層構造として形成したが、積層構造とせずに、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を用いた単層構造の導電膜を形成し、該単層構造の導電膜に第1の厚さの領域と、該第1の厚さより薄い第2の厚さの領域とを有するように加工し、ソース電極およびドレイン電極としてもよい。なお、該単層構造の導電膜としては、シリコンを含むアルミニウムや、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0244】
なお、トランジスタ200は、トランジスタ130における基板101、下地絶縁膜103、酸化物半導体膜105、およびサイドウォール絶縁膜107a、107bの積層構造をもとにして形成しているが、トランジスタ100およびトランジスタ110における基板101、下地絶縁膜103、酸化物半導体膜105、およびサイドウォール絶縁膜107の積層構造をもとにして、本実施の形態で説明した作製方法を適用してもよい。
【0245】
以上より、電気特性の変動が生じにくく、且つ電気特性の良好なトランジスタ200を作製することができる。
【0246】
なお、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0247】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2で説明したトランジスタと異なる構造のトランジスタについて説明する。
【0248】
図16は、本発明の一形態であるトランジスタ300の構成を説明する断面図である。
【0249】
図16に示すトランジスタ300は、基板101上にソース電極109aおよびドレイン電極109bが設けられ、ソース電極109aおよびドレイン電極109bの間には絶縁膜301が設けられ、ソース電極109aおよびドレイン電極109bならびに絶縁膜301上に酸化物半導体膜105が設けられ、酸化物半導体膜105の側面にはサイドウォール絶縁膜107が設けられ、酸化物半導体膜105およびサイドウォール絶縁膜107上にゲート絶縁膜111が設けられ、ゲート絶縁膜111上にゲート電極113が設けられ、ゲート絶縁膜111およびゲート電極113を覆って保護絶縁膜115が設けられている構造である。つまり、トランジスタ300はトップゲート−ボトムコンタクト構造である。
【0250】
さらに、トランジスタ300は、酸化物半導体膜105において、ゲート電極113と重畳し、且つチャネル形成領域として機能する第1の酸化物半導体領域125と、第1の酸化物半導体領域125を挟み、且つソース領域およびドレイン領域として機能する一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bが形成されている構造である。なお、第1の酸化物半導体領域125にはドーパントが含まれておらず、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bにはドーパントが含まれている。
【0251】
一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bは、導電率が10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。なお、導電率が低すぎると、トランジスタ300のオン電流が低下してしまう。
【0252】
一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bのドーパント濃度を増加させると、キャリア密度を増加させることができるが、ドーパント濃度を増加させすぎると、ドーパントがキャリアの移動を阻害することになり、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bの導電性を低下させることになる。
【0253】
従って、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bのドーパント濃度は、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。
【0254】
さらに、ドーパントを添加する処理は、複数回行っても良い。ドーパントを添加する処理を複数回行う場合、ドーパントは複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0255】
ドーパントを添加する条件は実施の形態1で説明した条件とすることができる。
【0256】
次に、トランジスタ300の作製方法について、以下に説明する。ここでは、実施の形態1に示したトランジスタの作製方法を適用できるものとして説明するが、実施の形態2で説明した方法についても適宜適用することができる。
【0257】
トランジスタ300の作製方法は、基板101上に下地絶縁膜103およびソース電極109aおよびドレイン電極109bを形成する。この後、ソース電極109aおよびドレイン電極109b上に、先の実施の形態で説明した方法を適宜用いて、絶縁膜301を形成する。ソース電極109aおよびドレイン電極109bならびに絶縁膜301上に第1の酸化物半導体膜120を形成し、第1の加熱処理を行って第2の酸化物半導体膜122を形成し、第2の酸化物半導体膜122を選択的にエッチングして、第3の酸化物半導体膜124を形成する。この後、先の実施の形態で説明した方法を適宜用いて、少なくとも第3の酸化物半導体膜124の側面に接するサイドウォール絶縁膜107を形成する。サイドウォール絶縁膜107を形成した後、第2の加熱処理を行い、第4の酸化物半導体膜を形成する。この後、サイドウォール絶縁膜107および第4の酸化物半導体膜上にゲート絶縁膜111を形成し、ゲート絶縁膜111上にゲート電極113を形成する。
【0258】
ゲート電極113を形成した後、ゲート電極113をマスクとしてドーパントを第4の酸化物半導体膜に添加することで、ドーパントを含まずチャネル形成領域として機能する第1の酸化物半導体領域125と、ドーパントを含み、且つソース領域およびドレイン領域として機能する一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bとを有する酸化物半導体膜105をセルフアラインに形成することができる。
【0259】
次に、ゲート絶縁膜111およびゲート電極113上に保護絶縁膜115を形成する。なお、ゲート絶縁膜111および保護絶縁膜115を形成した後はそれぞれ、第2の加熱処理と同様の加熱処理を行うことが好ましい。
【0260】
以上により、トランジスタ300を作製することができる。
【0261】
トランジスタ300は、ソース電極109aおよびドレイン電極109bの間には絶縁膜301が設けられ、酸化物半導体膜105の側面にはサイドウォール絶縁膜107が設けられていることから、ゲート絶縁膜111が酸化物半導体膜105の上面のみと接して設けられる。このような構造とすることで、ゲート絶縁膜111より下層に設けられた部材によって生じる段差を抑制することができるため、ゲート絶縁膜111の厚さを薄くすることができる。ゲート絶縁膜111の厚さを薄くすること、および、ドーパントを含む一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bによって、トランジスタ300のチャネル長を極端に短くすることによって生じるしきい値電圧の変動を低減することができる。
【0262】
なお、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0263】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態3で説明したトランジスタと異なる構造のトランジスタについて説明する。
【0264】
図17は、本発明の一形態であるトランジスタ400の構成を説明する断面図である。
【0265】
図17に示すトランジスタ400は、基板101上に設けられる下地絶縁膜103と、下地絶縁膜103上に設けられるソース電極109aと、ソース電極109aの側面と接する絶縁膜401と、ソース電極109aおよび絶縁膜401と接する酸化物半導体膜105と、酸化物半導体膜105の側面と接するサイドウォール絶縁膜107と、サイドウォール絶縁膜107上に形成され且つ酸化物半導体膜105の上面に接するドレイン電極109bと、サイドウォール絶縁膜107、酸化物半導体膜105、およびドレイン電極109bを覆うゲート絶縁膜111と、ゲート絶縁膜111上に酸化物半導体膜105と重畳するゲート電極113と、ゲート絶縁膜111およびゲート電極113を覆う保護絶縁膜115を有する構造である。
【0266】
さらに、トランジスタ400の酸化物半導体膜105において、ゲート電極113と重畳し、且つチャネル形成領域として機能する第1の酸化物半導体領域125と、第1の酸化物半導体領域125を挟み、且つソース領域およびドレイン領域として機能する一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bと、ドレイン電極109bの一部と接する第3の酸化物半導体領域145が形成されている構造である。なお、第1の酸化物半導体領域125および第3の酸化物半導体領域145にはドーパントが含まれておらず、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bにはドーパントが含まれている。
【0267】
一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bは、導電率が10S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは100S/cm以上1000S/cm以下とする。なお、導電率が低すぎると、トランジスタ400のオン電流が低下してしまう。
【0268】
一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bのドーパント濃度を増加させると、キャリア密度を増加させることができるが、ドーパント濃度を増加させすぎると、ドーパントがキャリアの移動を阻害することになり、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bの導電性を低下させることになる。
【0269】
従って、トランジスタ400において、一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bのドーパント濃度は、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。
【0270】
さらに、ドーパントを添加する処理は、複数回行っても良い。ドーパントを添加する処理を複数回行う場合、ドーパントは複数回すべてにおいて同じであってもよいし、1回の処理毎に変えてもよい。
【0271】
ドーパントを添加する条件は実施の形態1で説明した条件とすることができる。
【0272】
次に、トランジスタ400の作製方法について、以下に説明する。ここでは、実施の形態1に示したトランジスタの作製方法を適用できるものとして説明するが、実施の形態2および実施の形態3で説明した方法も適宜適用することができる。
【0273】
トランジスタ400は、下地絶縁膜103上に酸化物半導体膜を形成する前に、ソース電極109aを形成する。次に、先の実施の形態で説明した方法を適宜用いて絶縁膜401を形成し、第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の加熱処理を行って第2の酸化物半導体膜を形成し、第2の酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、第3の酸化物半導体膜を形成する。第3の酸化物半導体膜を形成した後、先の実施の形態で説明した方法を適宜用いてサイドウォール絶縁膜107を形成し、第2の加熱処理をして第4の酸化物半導体膜を形成する。この後、ドレイン電極109bを形成する。この後、サイドウォール絶縁膜107の一部、酸化物半導体膜105の一部およびドレイン電極109b上にゲート絶縁膜111を形成し、ゲート絶縁膜111上にゲート電極113を形成する。
【0274】
ゲート電極113を形成した後、ゲート電極113およびドレイン電極109bをマスクとしてドーパントを第4の酸化物半導体膜に添加することで、ドーパントを含まずチャネル形成領域として機能する第1の酸化物半導体領域125と、ドーパントを含む一対の第2の酸化物半導体領域135a、135bと、ドーパントを含まない第3の酸化物半導体領域145を有する酸化物半導体膜105をセルフアラインに形成することができる。
【0275】
次に、ゲート絶縁膜111およびゲート電極113上に保護絶縁膜115を形成する。なお、ゲート絶縁膜111および保護絶縁膜115を形成した後はそれぞれ、第2の加熱処理と同様の加熱処理を行うことが好ましい。
【0276】
トランジスタ400はゲート電極113およびドレイン電極109b間に、ドーパントを含む領域を有することで、チャネル形成領域として機能する第1の酸化物半導体領域125に与える電界を緩和することができる。そのため、トランジスタ400のチャネル長が極端に短くすることによって生じるしきい値電圧の変動を低減することができる。
【0277】
以上の工程により、トランジスタ400を作製することができる。
【0278】
なお、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0279】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4に示した酸化物半導体膜105に、結晶領域を有する酸化物半導体を適用する方法について説明する。
【0280】
本実施の形態で説明する結晶領域を有する酸化物半導体は非単結晶であり、詳細には、該非単結晶のab面に垂直な方向から見て、三角形、または、六角形、または正三角形、正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または、金属原子と酸素原子が層状に配列した結晶部分を含む。なお、本明細書では、該結晶部分をc軸配向結晶とよぶことにし、該c軸配向結晶を有する酸化物半導体をCAAC酸化物半導体(CAAC−OS:c−axis aligned crystaline oxide semiconductor)とよぶことにする。
【0281】
チャネル形成領域を含む酸化物半導体膜105をCAAC酸化物半導体膜とすることで、可視光や紫外光の照射前後およびBT(ゲート・熱バイアス)ストレス試験前後において、しきい値電圧の変動を抑制することができ、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0282】
CAAC酸化物半導体は単結晶ではないが、また、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC酸化物半導体は結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。CAAC酸化物半導体を構成する酸素の一部あるいは全部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC酸化物半導体を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC酸化物半導体を支持する基板面やCAAC酸化物半導体の表面や膜面、界面等に垂直な方向)に揃っていてもよい。あるいは、CAAC酸化物半導体を構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、基板面、表面、膜面、界面等に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0283】
CAAC酸化物半導体は、その組成等に応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成等に応じて、可視光に対して透明または不透明となる。このようなCAAC酸化物半導体の例として、膜状に形成され、膜表面、或いは、基板面、或いは、界面に垂直な方向から観察すると三角形、または、六角形の原子配列が認められ、且つ、その膜断面を観察すると金属原子、または、金属原子と酸素原子(あるいは窒素原子)の層状配列が認められる材料を挙げることもできる。
【0284】
CAAC酸化物半導体を有する酸化物半導体膜105の作製方法として、第1の方法および第2の方法がある。まず、第1の方法について説明する。
【0285】
実施の形態1で説明した第1の酸化物半導体膜120を形成する方法において、基板温度を150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下とし、スパッタリング法で第1の酸化物半導体膜120を形成することである。この方法により、第1の酸化物半導体膜120中への水分(水素を含む)などの混入を防ぎつつ、CAAC酸化物半導体を第1の酸化物半導体膜120に形成することができる。
【0286】
上記形成方法により、第1の酸化物半導体膜120を形成した後、実施の形態1で説明した第1の加熱処理により、第1の酸化物半導体膜120からさらに水素を放出させると共に、下地絶縁膜103に含まれる酸素の一部を、第1の酸化物半導体膜120と、下地絶縁膜103および第1の酸化物半導体膜120の界面近傍とに拡散させることができる。また、第1の加熱処理は、第1の酸化物半導体膜120のCAAC酸化物半導体の結晶性を向上させることができる。つまり、第1の加熱処理によって、第1の酸化物半導体膜120より結晶性が高い第2の酸化物半導体膜122を形成することができる。
【0287】
以降、実施の形態1乃至実施の形態4に記載した作製工程を適宜行うことで、CAAC酸化物半導体を有する酸化物半導体膜105を形成することができる。
【0288】
次に、第2の方法について、以下に説明する。第2の方法は、酸化物半導体膜の形成を2回に分けて、それぞれ酸化物半導体膜を形成した後に加熱処理を行うことでCAAC酸化物半導体膜を形成する方法である。
【0289】
下地絶縁膜103上に1層目の酸化物半導体膜を形成する。1層目の酸化物半導体膜は、一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下とする。
【0290】
1層目の酸化物半導体膜の形成時、基板温度を150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下とすることが好ましい。これにより、形成した第1の酸化物半導体膜中に含まれる水分(水素を含む)などの不純物の混入を低減させることができる。さらに、1層目の酸化物半導体膜の表面を含む領域に結晶領域が形成される。1層目の酸化物半導体膜の結晶性を向上させることで、最終的に、結晶性の高いCAAC酸化物半導体膜を形成することができる。
【0291】
なお、1層目の酸化物半導体膜の形成後、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理により、1層目の酸化物半導体膜から、さらに水分(水素含む)を脱離させることができ、結晶性も向上させることができる。該加熱処理を行うことで、1層目の酸化物半導体膜中の非晶質領域に対する結晶領域の割合を多くすることができ、最終的には、結晶性の高いCAAC酸化物半導体膜を形成することができる。また、該加熱処理は、200℃以上基板の歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下とする。
【0292】
また、該加熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成するための時間を短縮することができる。
【0293】
該加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことができ、代表的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。また、酸素雰囲気および減圧雰囲気で行ってもよい。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体膜を形成することができるが、24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0294】
次に、1層目の酸化物半導体膜上に2層目の酸化物半導体膜を、1層目の酸化物半導体膜よりも厚く形成する。2層目の酸化物半導体膜は、1層目の酸化物半導体膜と同様の方法で形成することができる。
【0295】
2層目の酸化物半導体膜を形成する際、基板を加熱しながら形成することで、1層目の酸化物半導体膜を種結晶に、2層目の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。このとき、1層目の酸化物半導体膜と2層目の酸化物半導体膜が同一の元素から構成されるホモ成長としても構わない。また、1層目の酸化物半導体膜と2層目の酸化物半導体膜とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されるヘテロ成長としても構わない。
【0296】
なお、2層目の酸化物半導体膜を形成した後、さらなる加熱処理を行ってもよい。2層目の酸化物半導体膜を形成した後に行う加熱処理は、1層目の酸化物半導体膜を形成した後に行う加熱処理と同様の方法で行えばよい。2層目の酸化物半導体膜を形成した後に加熱処理を行うことによって、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多いCAAC酸化物半導体膜を形成することができる。ここでの加熱処理でも、2層目の酸化物半導体膜をホモ成長またはヘテロ成長させることができる。
【0297】
以上の方法で、CAAC酸化物半導体を有する第1の酸化物半導体膜120を形成することができる。
【0298】
以降は、実施の形態1乃至実施の形態4に記載した作製工程を適宜行うことで、CAAC酸化物半導体を有する酸化物半導体膜105を形成することができる。
【0299】
なお、第2の方法において、CAAC酸化物半導体を有する第1の酸化物半導体膜120を形成する際に行う加熱処理によって、下地絶縁膜103から酸化物半導体膜への酸素が拡散する場合がある。この場合は、実施の形態1乃至実施の形態4に記載した第1の加熱処理を行わなくとも、CAAC酸化物半導体を有する第1の酸化物半導体膜120に含まれる酸素欠損が低減されていることから、第2の方法で形成したCAAC酸化物半導体を有する第1の酸化物半導体膜120を、実施の形態1乃至実施の形態4に記載した第2の酸化物半導体膜122に適用することが可能である。
【0300】
なお、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0301】
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態に示すトランジスタを用いた半導体装置の回路構成および動作の例について、図18乃至図21を参照して説明する。なお、回路図においては、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを示すために、OSの符号を併せて付す場合がある。
【0302】
〈半導体装置の断面構成〉
はじめに、半導体装置の断面構成の一例について、図18(A)を参照して説明する。図18(A)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ660を有し、上部に容量素子664と、第2の半導体材料を用いたトランジスタ601を有するものである。
【0303】
図18(A)におけるトランジスタ660は、基板600上に、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含むチャネル形成領域616a1と、チャネル形成領域616a1を挟むように設けられた不純物領域616b1および不純物領域616b2と、チャネル形成領域616a1上に設けられたゲート絶縁膜608と、ゲート絶縁膜608上に設けられたゲート電極609と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0304】
不純物領域616b1は、トランジスタ660のソース電極またはドレイン電極の一方として機能する。不純物領域616b2は、トランジスタ660のソース電極またはドレイン電極の他方として機能する。また、図18(A)において、不純物領域616b2は、不純物領域616b3、ゲート絶縁膜608に形成された開口、配線607およびドーパントが添加されている領域620bの一部を介して導電膜626bに接続されている。すなわち、トランジスタ660のソース電極またはドレイン電極の他方とトランジスタ601のソース電極またはドレイン電極の一方は電気的に接続されている。
【0305】
ただし、本発明の一態様はこれに限られるものではない。メモリセル、トランジスタおよび容量素子の電気的接続は適宜変更することができる。例えば、不純物領域616b2は、不純物領域616b3および不純物領域616b4を介して、他のメモリセルの不純物領域に接続していてもよい。その場合、ゲート絶縁膜608には開口が形成されなくてもよい。また配線607が形成されなくてもよい。すなわち、トランジスタ660のソース電極またはドレイン電極の他方と他のメモリセルが電気的に接続される場合は、トランジスタ660のソース電極またはドレイン電極の他方とトランジスタ601のソース電極またはドレイン電極の一方は、電気的に接続されていなくてもよい。
【0306】
配線607はゲート電極609と同様の材料および工程により形成することができる。配線607により、CMPのディッシングを防ぐことができ、絶縁膜602a、ゲート電極609および配線607の上面をより平坦化することができる。
【0307】
なお、図18(A)においてゲート電極609および配線607は単層構造となっているが、これに限定するものではない。ゲート電極609および配線607を2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜の上にタングステン膜を積層した構造としてもよい。窒化タンタル膜は、タングステン膜(W)がチャネル形成領域616a1に拡散することを抑制するため、良好な電気特性を示すトランジスタ660を作製できる。また、トランジスタ660のゲート電極609をドライエッチングで形成する際に、塩素ガスをエッチングガスとして用いることで、窒化タンタル膜を選択的にエッチングすることができる。つまり、ゲート絶縁膜608の厚さが薄い場合でも、ゲート電極609と、トランジスタ660のソース電極およびドレイン電極である不純物領域616b1、616b2とが短絡することを抑制できる。
【0308】
なお、高集積化を実現するためには、図18(A)に示すようにトランジスタ660がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ660の特性を重視する場合には、ゲート電極609の側面にサイドウォール絶縁層を設け、そのサイドウォール絶縁層と重畳する領域に形成された不純物濃度が異なる領域を含めて不純物領域616b1、不純物領域616b2を設けてもよい。
【0309】
図18におけるトランジスタ601には、先の実施の形態で説明したトランジスタを適用できる。トランジスタ601は、チャネル形成領域622aと、ドーパントを含む領域620a、620bと、導電膜626a、626bと、ゲート絶縁膜614aと、導電膜616aと、を有する。
【0310】
例えば、トランジスタ601は、実施の形態1で説明したトランジスタ140に相当する(図25参照)。チャネル形成領域622aは第1の酸化物半導体領域125に相当し、ドーパントを含む領域620a、620bは一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bに相当し、導電膜626a、626bはソース電極109aおよびドレイン電極109bに相当し、ゲート絶縁膜614aはゲート絶縁膜161に相当し、導電膜616aはゲート電極113に相当する。
【0311】
また、絶縁膜610a、610bおよび絶縁膜612a、612bは、実施の形態1で説明したトランジスタ130のサイドウォール絶縁膜107a、107bに相当する(図11参照)。そのため、絶縁膜610a、610bおよび絶縁膜612a、612bは、トランジスタ130の作製方法を適用することで形成できる。
【0312】
容量素子664は、トランジスタ601のゲート絶縁膜614aと同じ工程で形成される絶縁膜614b、電極616b、ドーパントを含む領域620aの一部、ゲート電極609、で構成される。すなわち、電極616bは、容量素子664の一方の電極として機能し、ゲート電極609は、容量素子664の他方の電極として機能することになる。
【0313】
トランジスタ601および容量素子664を覆うように絶縁膜630が設けられており、絶縁膜630の上には絶縁膜632が設けられている。そして、配線634は、絶縁膜630および絶縁膜632に形成された開口を介して、導電膜628bおよび導電膜626bと接続されている。なお、図18(A)では導電膜628bを用いて導電膜626bと配線634を接続しているが、開示する発明はこれに限定されない。例えば、配線634を直接、導電膜626bに接触させてもよい。なお、絶縁膜630は実施の形態1で説明したトランジスタ130の保護絶縁膜115に相当する。
【0314】
なお、トランジスタ601およびトランジスタ660は、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するために酸化物半導体のようなオフ電流を十分に低減することが可能な半導体材料をトランジスタ601に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定されるものではない。
【0315】
〈基本回路〉
次に、図18(A)で示した半導体装置の基本的な回路構成およびその動作について、図18(B)を参照して説明する。図18(B)に示す半導体装置において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ660のソース電極またはドレイン電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ660のドレイン電極またはソース電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ601のソース電極またはドレイン電極とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ601のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ660のゲート電極と、トランジスタ601のドレイン電極またはソース電極は、容量素子664の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子664の電極の他方は電気的に接続されている。なお、第1の配線(1st Line)と第3の配線(3rd Line)は電気的に接続されていてもよい。
【0316】
ここで、トランジスタ601には、例えば、先の実施の形態で説明した酸化物半導体を用いたトランジスタを適用できる。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ601をオフ状態とすることで、トランジスタ660のゲート電極の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子664を有することにより、トランジスタ660のゲート電極に与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0317】
なお、トランジスタ660については特に限定されない。情報の読み出し速度を向上させるという観点からは、例えば、単結晶シリコンを用いたトランジスタなど、スイッチング速度の高いトランジスタを適用するのが好適である。
【0318】
図18(B)に示す半導体装置では、トランジスタ660のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0319】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ601がオン状態となる電位にして、トランジスタ601をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ660のゲート電極、および容量素子664に与えられる。すなわち、トランジスタ660のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位を与える電荷(以下、低電位Vによって与えられる電荷を電荷Q、高電位Vによって与えられる電荷を電荷Qという)のいずれかが与えられるものとする。なお、異なる三つまたはそれ以上の電位を与える電荷を適用して、記憶容量を向上させても良い。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ601がオフ状態となる電位にして、トランジスタ601をオフ状態とすることにより、トランジスタ660のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0320】
トランジスタ601のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ660のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0321】
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ660のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ660をnチャネル型とすると、トランジスタ660のゲート電極にQが与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ660のゲート電極にQが与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ660を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位V(たとえばV=接地電位GND)とすることにより、トランジスタ660のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいてQが与えられた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ660は「オン状態」となる。Qが与えられた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ660は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0322】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合には、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように、所定のメモリセルの情報を読み出し、それ以外のメモリセルの情報を読み出さない場合には、読み出しの対象ではないメモリセルの第5の配線に対して、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ660が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより低い電位(たとえばV)を与えればよい。
【0323】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ601がオン状態となる電位にして、トランジスタ601をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ660のゲート電極および容量素子664に与えられる。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ601がオフ状態となる電位にして、トランジスタ601をオフ状態とすることにより、トランジスタ660のゲート電極は、新たな情報に係る電荷が与えられた状態となる。
【0324】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされる高電圧を用いてのフローティングゲートからの電荷の引き抜きが不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
【0325】
なお、トランジスタ601のドレイン電極(またはソース電極)は、トランジスタ660のゲート電極と電気的に接続されることにより、不揮発性メモリ素子として用いられるフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。以下において、トランジスタ601のドレイン電極(またはソース電極)とトランジスタ660のゲート電極が電気的に接続される部位をノードFGと呼ぶ場合がある。トランジスタ601がオフの場合、当該ノードFGは絶縁体中に埋設されたと見ることができ、ノードFGには電荷が保持される。酸化物半導体を用いたトランジスタ601のオフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジスタの10万分の1以下であるため、トランジスタ601のリーク電流による、ノードFGに蓄積された電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導体を用いたトランジスタ601により、電力の供給が無くても情報の保持が可能な不揮発性の記憶装置を実現することが可能である。
【0326】
例えば、トランジスタ601の室温(25℃)でのオフ電流が10zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下であり、容量素子664の容量値が10fF程度である場合には、少なくとも10秒以上のデータ保持が可能である。なお、当該保持時間が、トランジスタ特性や容量値によって変動することはいうまでもない。
【0327】
また、開示する発明の半導体装置においては、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて指摘されているゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化という問題が存在しない。つまり、従来問題とされていた、電子をフローティングゲートに注入する際のゲート絶縁膜の劣化という問題を解消することができる。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味するものである。また、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて書き込みや消去の際に必要であった高電圧も不要である。
【0328】
本実施の形態で示す半導体装置においては、ノードFGが、フラッシュメモリ等のフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用をするが、本実施の形態のノードFGは、フラッシュメモリ等のフローティングゲートと本質的に異なる特徴を有している。
【0329】
フラッシュメモリでは、コントロールゲートに印加される電位が高いため、その電位が、隣接するセルのフローティングゲートに影響を与えないように、セルとセルとの間隔をある程度保つ必要が生じる。このことは、半導体装置の高集積化を阻害する要因の一つである。そして、当該要因は、高電界をかけてトンネル電流を発生させるというフラッシュメモリの根本的な原理に起因するものである。
【0330】
一方、本実施の形態に係る半導体装置は、酸化物半導体を用いたトランジスタのスイッチングによって動作し、上述のようなトンネル電流による電荷注入の原理を用いない。すなわち、フラッシュメモリのような、電荷を注入するための高電界が不要である。これにより、隣接セルに対する、コントロールゲートによる高電界の影響を考慮する必要がないため、高集積化が容易になる。
【0331】
また、高電界が不要であり、大型の周辺回路(昇圧回路など)が不要である点も、フラッシュメモリに対するアドバンテージである。例えば、本実施の形態に係るメモリセルに印加される電圧(メモリセルの各端子に同時に印加される電位の最大のものと最小のものの差)の最大値は、2段階(1ビット)の情報を書き込む場合、一つのメモリセルにおいて、5V以下、好ましくは3V以下とすることができる。
【0332】
なお、半導体装置の記憶容量を大きくするためには、高集積化以外に、多値化の手法を採ることもできる。例えば、メモリセルの一に3段階以上の情報を書き込む構成とすることで、2段階(1ビット)の情報を書き込む場合と比較して記憶容量を増大させることができる。例えば、上述のような、低電位を与える電荷Q、高電位を与える電荷Qに加え、他の電位を与える電荷Qを第1のトランジスタのゲート電極に与えることで、多値化を実現することができる。この場合、比較的規模の大きい回路構成(例えば、15F〜50Fなど:Fは最小加工寸法)を採用しても十分な記憶容量を確保することができる。
【0333】
図19(A)および図19(B)は、(m×n)個のメモリセル690を有する半導体装置の回路図の一例である。図19(A)および図19(B)中のメモリセル690の構成は、図18と同様である。すなわち、図18(B)における第1の配線および第3の配線は電気的に接続され図19(A)および図19(B)におけるビット線BLに相当し、図18(B)における第2の配線が図19(A)および図19(B)におけるソース線SLに相当し、図18(B)における第4の配線が図19(A)および図19(B)における書き込みワード線WWLに相当し、図18(B)における第5の配線が図19(A)および図19(B)における読み出しワード線RWLに相当する(図19(A)および図19(B)参照)。
【0334】
図19(A)に示す半導体装置は、m本(mは2以上の整数)の書き込みワード線WWLと、m本の読み出しワード線RWLと、n本(nは2以上の整数)のビット線BLと、メモリセル690が縦m個(行)×横n個(列)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイと、n本のビット線BLに接続する第1の駆動回路691と、m本の書き込みワード線WWLおよびm本の読み出しワード線RWLに接続する第2の駆動回路692と、を有する。なお、図19(A)に示すメモリセルアレイは、メモリセルが並列に接続されたNOR型のメモリセルアレイである。
【0335】
また、図19(B)に示す半導体装置は、m本(mは2以上の整数)の書き込みワード線WWLと、m本の読み出しワード線RWLと、n本(nは2以上の整数)のビット線BLと、n本の信号線Sと、メモリセル690が縦m個(行)×横n個(列)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイと、n本のビット線BLおよびn本の信号線Sに接続する第1の駆動回路691と、m本の書き込みワード線WWLおよびm本の読み出しワード線RWLに接続する第2の駆動回路692と、を有する。なお、図19(B)に示すメモリセルアレイは、メモリセルが直列に接続されたNAND型のメモリセルアレイである。
【0336】
その他、図19(A)および図19(B)において、第2の駆動回路692には、アドレス選択信号線Aが接続されている。アドレス選択信号線Aは、メモリセルの行方向のアドレスを選択する信号を伝達する配線である。
【0337】
次に、図19(A)に示す半導体装置のデータの書き込み、保持、および読み出しについて説明する。図19(A)に示す半導体装置において、データの書き込み、保持、および読み出しは、基本的に図18の場合と同様である。つまり、具体的な書き込みの動作は以下のようになる。なお、ここでは一例として、ノードFGに電位V(ここで、Vは電源電位VDDより低い。すなわちV<VDD)またはVのいずれかを与える場合について説明するが、ノードFGに与える電位の関係はこれに限られない。また、ノードFGに電位Vを与えた場合に保持されるデータをデータ”1”、ノードFGにVを与えた場合に保持されるデータをデータ”0”とする。
【0338】
まず、メモリセル690に接続される読み出しワード線RWLの電位をVとし、書き込みワード線WWLの電位をVDDとして、書き込むメモリセル690を選択する。
【0339】
メモリセル690にデータ”0”を書き込む場合には、ビット線BLにはVを与える。メモリセル690にデータ”1”を書き込む場合には、トランジスタ601において生じるしきい値分の電位の低下を考慮し、ビット線BLにはVよりトランジスタ601のしきい値分高い電位を与える。
【0340】
データの保持は、読み出しワード線RWLの電位をVとし、書き込みワード線WWLの電位をVまたはVとすることにより行われる(ここでVはVより低い。すなわちV<V、例えばVはVよりVDD分低い)。
【0341】
読み出しワード線RWLの電位をVからVに低下させると、ノードFGの電位は容量素子664との容量結合によってV−V低下する。このため、データ”1”とデータ”0”のいずれが書き込まれた場合でも、トランジスタ660はオフ状態となる。
【0342】
書き込みワード線WWLにはVまたはVが与えられているため、トランジスタ601はオフ状態となる。トランジスタ601のオフ電流は極めて小さいから、ノードFGの電荷は長時間にわたって保持される。
【0343】
データの読み出しは、読み出しワード線RWLの電位をVとし、書き込みワード線WWLの電位をVまたはVとすることにより行われる。
【0344】
読み出しワード線RWLの電位をVからVに上昇させると、ノードFGの電位は容量素子664との容量結合によってV−V上昇する。このため、メモリセル690にデータ”1”が書き込まれている場合、ノードFGの電位はVとなり、メモリセル690にデータ”0”が書き込まれていれば、ノードFGの電位はVとなる。
【0345】
上述の読み出し動作により、メモリセル690にデータ”1”が書き込まれている場合には、トランジスタ660がオン状態となり、ビット線BLの電位が低下する。また、データ”0”が書き込まれている場合には、トランジスタ660がオフ状態となり、読み出し開始時のビット線BLの電位が維持されるか、または上昇する。
【0346】
トランジスタ601には、本発明の一態様である半導体装置が適用される。本発明の一態様である半導体装置は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタであるため、単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタに比べてオフ電流が小さいという特徴を有する。このため、図19(A)および図19(B)に示す半導体装置に当該トランジスタを適用する場合、電力の供給がない場合であっても長期にわたって記憶内容を保持することが可能であり、かつ書き換え可能回数に制限のない記憶装置を得ることが可能である。
【0347】
〈半導体装置の断面構成〉
次に、いわゆるDRAM(Dynamic Random Access Memory)に相当する構成の半導体装置の一例について、図20(A)を参照して説明する。図20(A)に示す半導体装置は、トランジスタ602と、容量素子668を有するものである。
【0348】
図20(A)におけるトランジスタ602は、先の実施の形態で説明したトランジスタを適用できる。トランジスタ602は、チャネル形成領域622aと、ドーパントを含む領域620a、620bと、と導電膜626a、626bと、ゲート絶縁膜614aと、導電膜616aと、を有する。
【0349】
例えば、トランジスタ602は、実施の形態1で説明したトランジスタ140に相当する(図25参照。)。チャネル形成領域622aは第1の酸化物半導体領域125に相当し、ドーパントを含む領域620a、620bは一対の第2の酸化物半導体領域165a、165bに相当し、導電膜626a、626bはソース電極109aおよびドレイン電極109bに相当し、ゲート絶縁膜614aはゲート絶縁膜161に相当し、導電膜616aはゲート電極113に相当する。
【0350】
また、絶縁膜610a、610bおよび絶縁膜612a、612bは、実施の形態1で説明したトランジスタ130のサイドウォール絶縁膜107a、107bに相当する(図11参照)。そのため、絶縁膜610a、610bおよび絶縁膜612a、612bは、トランジスタ130の作製方法を適用することで形成できる。
【0351】
図20(A)おける容量素子668は、絶縁膜630、導電膜628a、導電膜626a、で構成される。すなわち、導電膜628aは、容量素子664の一方の電極として機能し、導電膜626aは、容量素子664の他方の電極として機能することになる。なお、絶縁膜630は実施の形態1で説明したトランジスタ130の保護絶縁膜115に相当する。
【0352】
トランジスタ602および容量素子664を覆うように絶縁膜632が設けられている。そして、配線634は、絶縁膜630および絶縁膜632に形成された開口および導電膜628bを介して、導電膜626bと接続されている。なお、図20(A)では導電膜628bを用いて導電膜626bと配線634を接続しているが、開示する発明はこれに限定されない。例えば、配線634を直接、導電膜626bに接触させてもよい。
【0353】
〈基本回路〉
次に、図20(A)で示した半導体装置の基本的な回路構成およびその動作について、図20(B)を参照して説明する。図20(B)に示す半導体装置において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ602のソース電極またはドレイン電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ602のゲート電極とは、電気的に接続され、容量素子668の電極の一方とトランジスタ602のドレイン電極またはソース電極とは、電気的に接続されている。また、第3の電極(3rd Line)と容量素子668の他方とは、電気的に接続されている。
【0354】
ここで、トランジスタ602には、例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタが適用される。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ602をオフ状態とすることで、容量素子668に与えられた電位を、極めて長時間にわたって保持することが可能である。
【0355】
図20(B)に示す半導体装置では、容量素子668に与えられた電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0356】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。ここでは簡単のため、第3の配線の電位は固定されているものとする。まず、第2の配線の電位を、トランジスタ602がオン状態となる電位にして、トランジスタ602をオン状態とする。これにより、第1の配線の電位が、容量素子668の電極の一方に与えられる。すなわち、容量素子668には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。その後、第2の配線の電位を、トランジスタ602がオフ状態となる電位にして、トランジスタ602をオフ状態とすることにより、容量素子668に与えられた電荷が保持される(保持)。トランジスタ602は上述のとおり、極めてオフ電流が小さいので、長時間にわたって電荷を保持できる。
【0357】
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第2の配線の電位を、トランジスタ602がオン状態となる電位にすると、容量素子668に保持されている電荷量に応じて、第1の配線は異なる電位をとる。このため、第1の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0358】
なお、情報が読み出された場合、容量素子668の電荷は失われるため、再度の書き込みを行う点に留意が必要である。
【0359】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび保持と同様に行われる。つまり、第2の配線の電位を、トランジスタ602がオン状態となる電位にして、トランジスタ602をオン状態とする。これにより、第1の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、容量素子668の電極の一方に与えられる。その後、第2の配線の電位を、トランジスタ602がオフ状態となる電位にして、トランジスタ602をオフ状態とすることにより、容量素子668は、新たな情報に係る電荷が与えられた状態となる。
【0360】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に情報を書き換えることが可能である。このため、半導体装置の高速動作が実現される。
【0361】
なお、上記説明は、電子をキャリアとするn型トランジスタ(nチャネル型トランジスタ)を用いる場合についてのものであるが、n型トランジスタに代えて、正孔を多数キャリアとするp型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。
【0362】
図21に、(m×n)個のメモリセル695を有する半導体装置の回路図の一例を示す。図21中のメモリセル695の構成は、図20と同様である。すなわち、図20(B)における第1の配線が図21におけるビット線BLに相当し、図20(B)における第2の配線が図21におけるワード線WLに相当し、図20(B)における第3の配線が図21におけるソース線SLに相当する。
【0363】
図21に示す半導体装置は、n本のビット線BLと、m本のワード線WLと、メモリセル695が縦m個(行)×横n個(列)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイと、n本のビット線BLに接続する第1の駆動回路696と、m本のワード線WLに接続する第2の駆動回路697と、を有する。
【0364】
メモリセル695は、トランジスタ602と、容量素子668と、から構成されている。トランジスタ602のゲート電極は、ワード線WLと接続されている。また、トランジスタ602のソース電極またはドレイン電極の一方は、ビット線BLと接続されており、トランジスタ602のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子の電極の一方と接続されている。また、容量素子の電極の他方はソース線SLと接続され、一定の電位が与えられている。トランジスタ602には、実施の形態1乃至実施の形態5に示すトランジスタを適用できる。
【0365】
本発明の一態様である半導体装置は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いるトランジスタであるため、単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタに比べてオフ電流が小さいという特徴を有する。このため、いわゆるDRAMとして認識されている図21に示す半導体装置に当該トランジスタを適用する場合、リフレッシュ期間の間隔がきわめて長いメモリを得ることが可能である。
【0366】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0367】
(実施の形態7)
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを少なくとも一部に用いてCPU(Central Processing Unit)を構成することができる。
【0368】
図22(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。図22(A)に示すCPUは、基板1190上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース(ROM I/F)1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROM I/F1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図22(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0369】
Bus I/F1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0370】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0371】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0372】
図22(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、記憶素子が設けられている。レジスタ1196の記憶素子には、実施の形態6に記載されている記憶素子を用いることができる。
【0373】
図22(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1196が有する記憶素子において、位相反転素子によるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。位相反転素子によるデータの保持が選択されている場合、レジスタ1196内の記憶素子への、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0374】
電源停止に関しては、図22(B)または図22(C)に示すように、記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図22(B)および図22(C)の回路の説明を行う。
【0375】
図22(B)および図22(C)では、記憶素子への電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを含む記憶回路の構成の一例を示す。
【0376】
図22(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、記憶素子1142を複数有する記憶素子群1143とを有している。具体的に、各記憶素子1142には、実施の形態6に記載されている記憶素子を用いることができる。記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0377】
図22(B)では、スイッチング素子1141として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
【0378】
なお、図22(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0379】
また、図22(B)では、スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていてもよい。
【0380】
また、図22(C)には、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0381】
記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0382】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
【0383】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0384】
(実施の形態8)
本発明の一態様である半導体装置を用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0385】
図23(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図23(A)はフォトセンサの等価回路であり、図23(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0386】
図23(A)において、フォトセンサ701は、フォトダイオード702と、増幅回路703とを有している。フォトダイオード702は、半導体の接合部に光があたると電流が発生する性質を有する光電変換素子である。増幅回路703は、フォトダイオード702が受光することで得られる電流を増幅する、或いは、上記電流によって蓄積された電荷を保持する回路である。フォトセンサ701は、フォトダイオード702に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0387】
増幅回路703の構成は、フォトダイオード702において生じる電流を増幅できるのであれば良く、あらゆる形態を採用することができるが、少なくとも増幅回路703は、フォトダイオード702において生じる電流を増幅するトランジスタ705を有する。
【0388】
以下、ソース電極とドレイン電極のいずれか一方を第1端子、他方を第2端子とし、図23(A)に示したフォトセンサ701の、具体的な構成について説明する。
【0389】
図23(A)に示すフォトセンサ701は、増幅回路703が、増幅回路703内への上記電流の供給を制御するスイッチング素子として機能するトランジスタ704と、トランジスタ704の第2端子に与えられる電位に従って、その第1端子と第2端子間の電流値或いは抵抗値が定まるトランジスタ705と、上記電流値或いは抵抗値によって定まる出力信号の電位を、配線OUTに供給するためのスイッチング素子として機能するトランジスタ706とを有する。
【0390】
本実施の形態では、トランジスタ704として、実施の形態1乃至実施の形態5で説明したトランジスタを適用することができる。
【0391】
具体的に、図23(A)では、フォトダイオード702の陽極が、配線PRに接続されている。また、フォトダイオード702の陰極が、トランジスタ704の第1端子に接続されている。トランジスタ704の第2端子は、増幅回路703内の他の半導体素子に接続されているため、増幅回路703内の構成によって、トランジスタ704の第2端子の接続先は異なるが、図23(A)では、トランジスタ704の第2端子がトランジスタ705のゲート電極に接続されている。また、トランジスタ704のゲート電極は、配線TXに接続されている。配線TXには、トランジスタ704のスイッチングを制御するための信号の電位が与えられている。トランジスタ705の第1端子は、ハイレベルの電源電位VDDが与えられている配線VRに接続されている。トランジスタ705の第2端子は、トランジスタ706の第1端子に接続されている。トランジスタ706の第2端子は、配線OUTに接続されている。トランジスタ706のゲート電極は、配線SEに接続されており、配線SEにはトランジスタ706のスイッチングを制御する信号の電位が与えられる。そして、配線OUTには、増幅回路703から出力される出力信号の電位が与えられる。
【0392】
図23(A)では、トランジスタ704の第2端子とトランジスタ705のゲート電極が接続されているノードを、ノードFDとして示している。ノードFDに蓄積される電荷の量によって、出力信号の電位が定まる。ノードFDにおいて電荷をより確実に保持するために、ノードFDに保持容量を接続するようにしてもよい。
【0393】
なお、回路図上は独立している構成要素同士が接続されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極として機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0394】
なお、図23(A)では、配線PRと、配線TXと、配線OUTとが各フォトセンサ701に接続されている場合を例示しているが、本発明の一態様では、各フォトセンサ701が有する配線の数はこれに限定されない。上記配線に加えて、電源電位が与えられる配線、増幅回路703に保持されている電荷の量をリセットするための信号の電位が与えられる配線などが、各フォトセンサ701に接続されていてもよい。
【0395】
なお、図23(A)では、増幅回路703がスイッチング素子として機能するトランジスタ704を一つだけ有するフォトセンサ701の構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本実施の形態では、一のトランジスタが一のスイッチング素子として機能する構成を示しているが、複数のトランジスタが一のスイッチング素子として機能していても良い。複数のトランジスタが一のスイッチング素子として機能する場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0396】
本明細書において、トランジスタが直列に接続されている状態とは、例えば、第1のトランジスタの第1端子と第2端子のいずれか一方のみが、第2のトランジスタの第1端子と第2端子のいずれか一方のみに接続されている状態を意味する。また、トランジスタが並列に接続されている状態とは、第1のトランジスタの第1端子が第2のトランジスタの第1端子に接続され、第1のトランジスタの第2端子が第2のトランジスタの第2端子に接続されている状態を意味する。
【0397】
なお、図23(A)において、増幅回路703を構成しているトランジスタ704として、実施の形態1乃至実施の形態5で説明したトランジスタを用いることができる。また、トランジスタ704に、酸化物半導体を用いることで、トランジスタ704のオフ電流を著しく小さくすることができる。トランジスタ704は、フォトセンサ701において蓄積された電荷を保持するためのスイッチング素子として機能するため、電荷保持期間における電荷のリークを小さく抑えることができる。
【0398】
図23(B)に、フォトセンサ701の有するフォトダイオード702、トランジスタ704を含む断面を示す。
【0399】
フォトセンサ701の有するフォトダイオード702は、基板751上に、順に積層されたp型の半導体膜715と、i型の半導体膜716と、n型の半導体膜717とを有している。導電膜710は、フォトダイオード702の陽極として機能するp型の半導体膜715に接続されている。
【0400】
フォトセンサ701の有する導電膜718は、トランジスタ704のゲート電極として機能している。フォトセンサ701の有する導電膜719は、トランジスタ704の第1端子として機能する。フォトセンサ701の有する導電膜720は、トランジスタ704の第2端子として機能する。フォトセンサ701の有する導電膜721は、n型の半導体膜717と、導電膜719とに接続されている。
【0401】
図23(B)において、フォトセンサ701は、配線PRとして機能する導電膜710を有している。導電膜710、導電膜719、導電膜720は、下地絶縁膜728上に形成された一の導電膜を所望の形状に加工することで形成することができる。
【0402】
なお、図23(B)に示すフォトセンサ701の断面図は、導電膜721まで形成された状態を示している。半導体表示装置の場合は、フォトセンサ701に加えて表示素子が設けられているので、実際には、導電膜721を形成した後に、表示素子の形成を行う。
【0403】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0404】
(実施の形態9)
次に、図28は携帯機器のブロック図である。図28に示す携帯機器はRF回路1501、アナログベースバンド回路1502、デジタルベースバンド回路1503、バッテリー1504、電源回路1505、アプリケーションプロセッサ1506、フラッシュメモリ1510、ディスプレイコントローラ1511、メモリ回路1512、ディスプレイ1513、タッチセンサ1519、音声回路1517、キーボード1518などより構成されている。ディスプレイ1513は表示部1514、ソースドライバ1515、ゲートドライバ1516によって構成されている。アプリケーションプロセッサ1506はCPU1507、DSP1508、インターフェース1509(I/F1509)を有している。一般にメモリ回路はSRAMまたはDRAMで構成されており、メモリ回路1512に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を十分に低減することができる。
【0405】
次に、図29はディスプレイのメモリ回路1600に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例である。図29に示すメモリ回路1600は、メモリ1602、メモリ1603、スイッチ1604、スイッチ1605およびメモリコントローラ1601により構成されている。メモリ1602、メモリ1603には、先の実施の形態で説明した半導体装置が適用される。
【0406】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される。この形成された画像データ(入力画像データ1)は、スイッチ1604を介してメモリ1602に記憶される。そしてメモリ1602に記憶された画像データ(記憶画像データ1)は、スイッチ1605、およびディスプレイコントローラ1606を介してディスプレイ1607に送られ、表示される。
【0407】
入力画像データに変更が無い場合、記憶画像データ1は、ディスプレイコントローラ1606によって、通常30〜60Hz程度の周期でスイッチ1605を介してメモリ1602から読み出される。
【0408】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データ2)を形成する。入力画像データ2はスイッチ1604を介してメモリ1603に記憶される。この間も定期的にメモリ1602からスイッチ1605を介して記憶画像データ1は読み出されている。メモリ1603に新たな画像データ(記憶画像データ2)が記憶し終わると、ディスプレイ1607の次のフレームより、記憶画像データ2は読み出され、スイッチ1605、およびディスプレイコントローラ1606を介して、ディスプレイ1607に記憶画像データ2が送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ1602に記憶されるまで継続される。
【0409】
このようにメモリ1602、およびメモリ1603は交互にデータの書き込みと、データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ1607の表示をおこなう。なお、メモリ1602、およびメモリ1603はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ1602、およびメモリ1603に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を十分に低減することができる。
【0410】
次に、図30は電子書籍のブロック図である。図30はバッテリー1701、電源回路1702、マイクロプロセッサ1703、フラッシュメモリ1704、音声回路1705、キーボード1706、メモリ回路1707、タッチパネル1708、ディスプレイ1709、ディスプレイコントローラ1710によって構成される。本発明はメモリ回路1707に使用することができる。メモリ回路1707の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。機能の例としては、ユーザーがハイライト機能を使用する場合などがある。ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキングをしたい場合がある。このマーキング機能をハイライト機能と言い、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。ユーザーが指定した箇所の情報を記憶し、保持する機能である。この情報を長期に保存する場合にはフラッシュメモリ1704にコピーしてもよい。このような場合においても、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0411】
(実施の形態10)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合について、図24を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、先の実施の形態で説明した半導体装置を適用する場合について説明する。
【0412】
図24(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体801、筐体802、表示部803、キーボード804などによって構成されている。筐体801と筐体802の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
【0413】
図24(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体811には、表示部813と、外部インターフェース815と、操作ボタン814等が設けられている。また、携帯情報端末を操作するスタイラス812などを備えている。本体811内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯情報端末が実現される。
【0414】
図24(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍820であり、筐体821と筐体823の2つの筐体で構成されている。筐体821および筐体823には、それぞれ表示部825および表示部827が設けられている。筐体821と筐体823は、軸部837により接続されており、該軸部837を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体821は、電源831、操作キー833、スピーカー835などを備えている。筐体821、筐体823の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された電子書籍が実現される。
【0415】
図24(D)は、携帯電話機であり、筐体840と筐体841の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体840と筐体841は、スライドし、図24(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、筐体841は、表示パネル842、スピーカー843、マイクロフォン844、操作キー845、ポインティングデバイス846、カメラ用レンズ847、外部接続端子848などを備えている。また、筐体840は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル849、外部メモリスロット850などを備えている。また、アンテナは、筐体841に内蔵されている。筐体840と筐体841の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯電話機が実現される。
【0416】
図24(E)は、デジタルカメラであり、本体861、表示部867、接眼部863、操作スイッチ864、表示部865、バッテリー866などによって構成されている。本体861内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたデジタルカメラが実現される。
【0417】
図24(F)は、テレビジョン装置870であり、筐体871、表示部873、スタンド875などで構成されている。テレビジョン装置870の操作は、筐体871が備えるスイッチや、リモコン操作機880により行うことができる。筐体871およびリモコン操作機880には、先の実施の形態に示す半導体装置が搭載されている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたテレビジョン装置が実現される。
【0418】
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、消費電力を低減した電子機器が実現される。
【符号の説明】
【0419】
100 トランジスタ
101 基板
103 下地絶縁膜
105 酸化物半導体膜
107 サイドウォール絶縁膜
107a サイドウォール絶縁膜
107b サイドウォール絶縁膜
108a ソース電極
108b ドレイン電極
109a ソース電極
109b ドレイン電極
110 トランジスタ
111 ゲート絶縁膜
112 導電膜
113 ゲート電極
115 保護絶縁膜
117 絶縁膜
117a 絶縁膜
117b 絶縁膜
119 導電膜
120 第1の酸化物半導体膜
122 第2の酸化物半導体膜
123 導電膜
124 第3の酸化物半導体膜
125 第1の酸化物半導体領域
128 導電膜
129 導電膜
129a 一対の導電膜
129b 一対の導電膜
130 トランジスタ
133 レジストマスク
135a 第2の酸化物半導体領域
135b 第2の酸化物半導体領域
139a レジストマスク
139b レジストマスク
140 トランジスタ
143a レジストマスク
143b レジストマスク
145 第3の酸化物半導体領域
145a 第3の酸化物半導体領域
145b 第3の酸化物半導体領域
150 ドーパント
153a レジストマスク
153b レジストマスク
155a 第4の酸化物半導体領域
155b 第4の酸化物半導体領域
160 絶縁膜
161 ゲート絶縁膜
165a 第2の酸化物半導体領域
165b 第2の酸化物半導体領域
166 保護絶縁膜
200 トランジスタ
300 トランジスタ
301 絶縁膜
400 トランジスタ
401 絶縁膜
600 基板
601 トランジスタ
602 トランジスタ
602a 絶縁膜
607 配線
608 ゲート絶縁膜
609 ゲート電極
610a 絶縁膜
612a 絶縁膜
614a ゲート絶縁膜
614b 絶縁膜
616a 導電膜
616a1 チャネル形成領域
616b 電極
620a ドーパントを含む領域
620b ドーパントを含む領域
622a チャネル形成領域
626a 導電膜
626b 導電膜
628a 導電膜
628b 導電膜
630 絶縁膜
632 絶縁膜
634 配線
660 トランジスタ
664 容量素子
668 容量素子
690 メモリセル
691 駆動回路
692 駆動回路
695 メモリセル
696 駆動回路
697 駆動回路
701 フォトセンサ
702 フォトダイオード
703 増幅回路
704 トランジスタ
705 トランジスタ
706 トランジスタ
710 導電膜
715 半導体膜
716 半導体膜
717 半導体膜
718 導電膜
719 導電膜
720 導電膜
721 導電膜
728 下地絶縁膜
751 基板
801 筐体
802 筐体
803 表示部
804 キーボード
811 本体
812 スタイラス
813 表示部
814 操作ボタン
815 外部インターフェース
820 電子書籍
821 筐体
823 筐体
825 表示部
827 表示部
831 電源
833 操作キー
835 スピーカー
837 軸部
840 筐体
841 筐体
842 表示パネル
843 スピーカー
844 マイクロフォン
845 操作キー
846 ポインティングデバイス
847 カメラ用レンズ
848 外部接続端子
849 太陽電池セル
850 外部メモリスロット
861 本体
863 接眼部
864 操作スイッチ
865 表示部
866 バッテリー
867 表示部
870 テレビジョン装置
871 筐体
873 表示部
875 スタンド
880 リモコン操作機
1141 スイッチング素子
1142 記憶素子
1143 記憶素子群
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 演算回路
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
1501 RF回路
1502 アナログベースバンド回路
1503 デジタルベースバンド回路
1504 バッテリー
1505 電源回路
1506 アプリケーションプロセッサ
1507 CPU
1508 DSP
1509 インターフェース
1510 フラッシュメモリ
1511 ディスプレイコントローラ
1512 メモリ回路
1513 ディスプレイ
1514 表示部
1515 ソースドライバ
1516 ゲートドライバ
1517 音声回路
1518 キーボード
1519 タッチセンサ
1600 メモリ回路
1601 メモリコントローラ
1602 メモリ
1603 メモリ
1604 スイッチ
1605 スイッチ
1606 ディスプレイコントローラ
1607 ディスプレイ
1701 バッテリー
1702 電源回路
1703 マイクロプロセッサ
1704 フラッシュメモリ
1705 音声回路
1706 キーボード
1707 メモリ回路
1708 タッチパネル
1709 ディスプレイ
1710 ディスプレイコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行って第2の酸化物半導体膜を形成し、
前記第2の酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、第3の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の絶縁膜および前記第3の酸化物半導体膜上に第2の絶縁膜を形成し、
前記第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように前記第2の絶縁膜の表面を研磨して、少なくとも前記第3の酸化物半導体膜の側面に接する第3の絶縁膜を形成し、
前記第3の絶縁膜および第3の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、
前記導電膜を選択的にエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成し、
前記第3の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に第4の絶縁膜を形成し、
前記第4の絶縁膜上に前記第3の酸化物半導体膜と重畳するゲート電極を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の酸化物半導体膜および前記第1の絶縁膜を選択的にエッチングして、前記第1の絶縁膜の前記第3の酸化物半導体膜と接する領域に凸部を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2の絶縁膜は、二以上の絶縁膜を積層して形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項3において、
積層構造である前記第2の絶縁膜において、前記第3の酸化物半導体膜と接する絶縁膜の表面が露出するように前記第2の絶縁膜の一部を研磨した後、前記第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように前記研磨された第2の絶縁膜を異方的にエッチングして、少なくとも前記第3の酸化物半導体膜の側面に接する前記第3の絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記ゲート電極を形成した後、前記第3の酸化物半導体膜にドーパントを添加し、加熱して、前記ゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体領域と、前記第1の酸化物半導体領域を挟む一対の第2の酸化物半導体領域と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と重畳する領域に設けられる一対の第3の酸化物半導体領域と、を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記一対の第2の酸化物半導体領域は、前記ドーパントを含む領域であり、
前記ドーパントは、窒素、リン、砒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンから選択されるいずれか一以上の元素であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
基板上に第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜に第1の酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行って第2の酸化物半導体膜を形成し、
前記第2の酸化物半導体膜を選択的にエッチングして、第3の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の絶縁膜および前記第3の酸化物半導体膜上に第2の絶縁膜を形成し、
前記第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように前記第2の絶縁膜の表面を研磨して第3の絶縁膜を形成し、
前記第3の絶縁膜および第3の酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、
前記導電膜上にレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクを用いて前記導電膜の一部を選択的にエッチングして、一対の導電膜を形成し、
前記レジストマスクを縮小させることで、少なくとも前記一対の導電膜の前記第3の酸化物半導体膜と重畳する領域を露出させつつ、第2のレジストマスクを形成し、
前記第2のレジストマスクを用いて前記一対の導電膜の一部をエッチングして、第1の厚さである領域と、前記第1の厚さより薄い第2の厚さである領域とを有するソース電極およびドレイン電極を形成し、
前記第3の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に第4の絶縁膜を形成し、
前記第4の絶縁膜上に前記第3の酸化物半導体膜と重畳するゲート電極を形成し、
前記第3の酸化物半導体膜にドーパントを添加し、加熱して、前記ゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体領域と、前記第1の酸化物半導体領域を挟む一対の第2の酸化物半導体領域と、少なくとも前記第1の厚さである領域と重畳する一対の第3の酸化物半導体領域と、前記第2の厚さである領域のみと重畳する一対の第4の酸化物半導体領域と、を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記第2の酸化物半導体膜および前記第1の絶縁膜を選択的にエッチングして、前記第1の絶縁膜の前記第3の酸化物半導体膜と接する領域に凸部を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、
前記第2の絶縁膜は、二以上の絶縁膜を積層して形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項9において、
積層構造である前記第2の絶縁膜において、前記第3の酸化物半導体膜と接する絶縁膜の表面が露出するように前記第2の絶縁膜の一部を研磨した後、前記第3の酸化物半導体膜の表面が露出するように前記研磨された第2の絶縁膜を異方的にエッチングして、少なくとも前記第3の酸化物半導体膜の側面に接する前記第3の絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10において、
前記一対の第2の酸化物半導体領域および前記一対の第4の酸化物半導体領域は、前記ドーパントを含む領域であり、
前記ドーパントは、窒素、リン、砒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンから選択されるいずれか一以上の元素であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記第1の絶縁膜乃至前記第4の絶縁膜の少なくとも一つは、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記第1の絶縁膜乃至前記第4の絶縁膜の少なくとも一つは、化学量論比より過剰な酸素を含む酸化物絶縁膜であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一において、
前記加熱処理は、前記第1の酸化物半導体膜から水素を脱離させると共に、前記第1の絶縁膜に含まれる酸素を前記第1の酸化物半導体膜に拡散させて、前記第2の酸化物半導体膜を形成する温度で加熱することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一において、
前記加熱処理は、150℃以上前記基板の歪み点未満であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか一において、
前記第1の酸化物半導体膜乃至前記第3の酸化物半導体膜は、In、Ga、SnおよびZnから選ばれた一以上の元素を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか一において、
前記第1の酸化物半導体膜乃至前記第3の酸化物半導体膜は、非単結晶であり、且つc軸配向の結晶領域を有する酸化物半導体膜であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか一において、
前記第3の酸化物半導体膜を形成した後、さらに前記加熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか一において
前記第4の絶縁膜および前記ゲート電極上に第5の絶縁膜を形成した後、さらに前記加熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項20】
絶縁表面上に設けられた酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜の側面に接する第1のサイドウォール絶縁膜と、
前記第1のサイドウォール絶縁膜上に設けられた第2のサイドウォール絶縁膜と、
前記酸化物半導体膜、前記第1のサイドウォール絶縁膜及び前記第2のサイドウォール絶縁膜上に設けられたソース電極及びドレイン電極と、
前記酸化物半導体膜、前記サイドウォール絶縁膜及び前記ソース電極及び前記ドレイン電極上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、前記酸化物半導体膜と重畳したゲート電極と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項21】
請求項20において、
前記第1のサイドウォール絶縁膜の下面は、前記酸化絶縁膜及び前記酸化物半導体膜の界面より前記絶縁表面側に位置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項22】
請求項20または請求項21において、
前記酸化物半導体膜は、非単結晶であり、かつc軸配向の結晶領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項23】
請求項20乃至請求項22のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、In、Ga、SnおよびZnから選ばれた一種以上の元素を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項24】
請求項20乃至請求項23のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、前記ゲート電極と重畳する第1の酸化物半導体領域、前記第1の酸化物半導体領域を挟む一対の第2の酸化物半導体領域、及び前記ソース電極及び前記ドレイン電極と重畳し、且つ前記第2の酸化物半導体領域を挟む一対の第3の酸化物半導体領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項25】
請求項24において、
前記一対の第2の酸化物半導体領域には、窒素、リン、砒素、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンから選択されるいずれか一以上の元素が、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下含まれていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−169606(P2012−169606A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11719(P2012−11719)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】