説明

半導体装置の作製方法、半導体装置及び電子機器

【課題】製造コストを低減しつつ、高速動作が可能な回路を有する半導体装置の作製方法を提供することを課題の一とする。または、該半導体装置を提供するための半導体基板の作製方法を提供することを課題の一とする。または、該半導体装置を用いた電子機器を提供することを課題の一とする。
【解決手段】基板上に非単結晶半導体層を形成した後、非単結晶半導体層の一部の領域上に単結晶半導体層を形成する。これにより、非単結晶半導体層を用いて大面積が必要とされる領域(例えば、表示装置における画素領域)の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて高速動作が求められる領域(例えば、表示装置における駆動回路領域)の半導体素子を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置の作製方法、半導体装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置などのフラットパネルディスプレイが注目を集めている。
【0003】
フラットパネルディスプレイの駆動方式としては、パッシブマトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。アクティブマトリクス方式は、パッシブマトリクス方式と比較して、低消費電力化、高精細化、基板の大型化等が可能になるというメリットを有する。
【0004】
ここで、アクティブマトリクス方式のパネルの構成例を、図21を用いて簡単に説明する。図21(A)は、駆動回路をTAB(Tape Automated Bonding)方式を用いて設ける構成の一例を示している。
【0005】
図21(A)では、絶縁表面を有する基板2100上に画素2102をマトリクス状に配列させた画素領域2101が形成されている。画素2102は、走査線側入力端子2103から延在する走査線と、信号線側入力端子2104から延在する信号線が交差することで、マトリクス状に配設される。画素領域2101の画素にはそれぞれ、スイッチング素子と、それに接続する画素電極層が備えられている。スイッチング素子の代表的な一例はTFTであり、TFTのゲート電極層側が走査線と、ソース又はドレイン側が信号線と接続される。また、駆動回路を構成するIC2151は、FPC2150(Flexible Printed Circuit)と接続されている。
【0006】
図21(A)のように、パネルの外部に駆動回路を設ける構成においては、単結晶シリコン基板からなる駆動回路を用いることが可能である。しかしながら、このように駆動回路を設ける場合には、パネルと駆動回路を別々に用意する必要があること、パネルと駆動回路との接続工程が必要であること等から、十分に製造コストを低減することができなかった。
【0007】
そこで、コスト低減等の観点から、画素領域と駆動回路領域を一体に形成する方法が用いられるようになった(例えば、特許文献1参照)。図21(B)は、画素領域と駆動回路領域を一体に形成した場合の構成の一例である。
【特許文献1】特開平8−6053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図21(B)に示す場合には、駆動回路2160の半導体層としては、画素領域と同様に非晶質シリコンや微結晶シリコン、多結晶シリコンなどの非単結晶シリコンが用いられている。しかしながら、非晶質シリコンはもとより、微結晶シリコンや多結晶シリコンを用いる場合であっても、その特性は単結晶シリコンを用いる場合には遠く及ばないという問題が存在する。このため、駆動回路一体型のパネルに用いられる半導体素子では、必要かつ十分な特性(例えば、トランジスタにおける移動度やS値)が得られておらず、駆動回路という高速動作が求められる半導体装置を作製するに際して大きな問題となっている。
【0009】
上記問題点に鑑み、製造コストを低減しつつ、高速動作が可能な回路を有する半導体装置の作製方法を提供することを課題の一とする。または、該半導体装置を提供するための半導体基板の作製方法を提供することを課題の一とする。または、該半導体装置を用いた電子機器を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示する発明では、基板(例えば、絶縁体からなる基板)上に非単結晶半導体層を形成した後、非単結晶半導体層の一部の領域上に単結晶半導体層を形成する。これにより、非単結晶半導体層を用いて大面積が必要とされる領域(例えば、表示装置における画素領域)の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて高速動作が求められる領域(例えば、表示装置における駆動回路領域)の半導体素子を形成することができる。つまり、単結晶半導体層を用いた駆動回路を有する駆動回路一体型のパネルを提供することができる。なお、単結晶半導体層の形成方法としては、例えば、単結晶半導体基板に対してイオンを照射し、該単結晶半導体基板を単結晶半導体層の被形成面に貼り合わせ、その後の加熱により、該イオンが照射された領域から単結晶半導体基板を分離させて、被形成面に単結晶半導体層を残存させる方法を用いることができる。
【0011】
開示する半導体装置の作製方法の一は、基板上に絶縁層を形成し、絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、非単結晶半導体層と単結晶半導体基板の表面を貼り合わせ、単結晶半導体基板を損傷領域にて分離させることにより、非単結晶半導体層の一部の領域(第1の領域)上に単結晶半導体層を形成し、非単結晶半導体層の一部の領域以外の領域(第2の領域)を用いて画素領域の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子を形成することを特徴としている。
【0012】
また、開示する半導体装置の作製方法の他の一は、基板上に第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体基板の表面に第2の絶縁層を形成し、単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、非単結晶半導体層と第2の絶縁層を貼り合わせ、単結晶半導体基板を損傷領域にて分離させることにより、非単結晶半導体層の一部の領域(第1の領域)上に単結晶半導体層を形成し、非単結晶半導体層の一部の領域以外の領域(第2の領域)を用いて画素領域の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子を形成することを特徴としている。
【0013】
また、開示する半導体装置の作製方法の他の一は、基板上に第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、単結晶半導体基板の表面に第2の絶縁層を形成し、非単結晶半導体層と第2の絶縁層を貼り合わせ、単結晶半導体基板を損傷領域にて分離させることにより、非単結晶半導体層の一部の領域(第1の領域)上に単結晶半導体層を形成し、非単結晶半導体層の一部の領域以外の領域(第2の領域)を用いて画素領域の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子を形成することを特徴としている。
【0014】
上記において、画素領域の半導体素子を形成する前、且つ、駆動回路領域の半導体素子を形成する前に、非単結晶半導体層、及び、単結晶半導体層に対してレーザー光を照射することにより、非単結晶半導体層を微結晶半導体、又は、多結晶半導体に変化させると共に、単結晶半導体層の表面の平坦性を向上させても良い。
【0015】
また、上記の半導体装置に係る半導体基板の作製方法は、基板上に絶縁層を形成し、絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、非単結晶半導体層と単結晶半導体基板を貼り合わせ、単結晶半導体基板を損傷領域にて分離させることにより、非単結晶半導体層の一部の領域上に単結晶半導体層を形成することを特徴としている。また、基板上に第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体基板上に第2の絶縁層を形成し、単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、非単結晶半導体層と第2の絶縁層を貼り合わせ、単結晶半導体基板を損傷領域にて分離させることにより、非単結晶半導体層の一部の領域上に単結晶半導体層を形成することを特徴としている。また、基板上に第1の絶縁層を形成し、第1の絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、単結晶半導体基板上に第2の絶縁層を形成し、非単結晶半導体層と第2の絶縁層を貼り合わせ、単結晶半導体基板を損傷領域にて分離させることにより、非単結晶半導体層の一部の領域上に単結晶半導体層を形成することを特徴としている。
【0016】
開示する半導体装置の一は、基板上の絶縁層と、絶縁層上の第1の非単結晶半導体層と、絶縁層上の第2の非単結晶半導体層と、第2の非単結晶半導体層上の単結晶半導体層を有し、第1の非単結晶半導体層を用いて画素領域の半導体素子が形成されており、単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子が形成されていることを特徴としている。
【0017】
開示する半導体装置の他の一は、基板上の第1の絶縁層と、第1の絶縁層上の第1の非単結晶半導体層と、第1の絶縁層上の第2の非単結晶半導体層と、第2の非単結晶半導体層上の第2の絶縁層と、第2の絶縁層上の単結晶半導体層を有し、第1の非単結晶半導体層を用いて画素領域の半導体素子が形成されており、単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子が形成されていることを特徴としている。
【0018】
また、上記の半導体装置に係る半導体基板は、基板上の第1の絶縁層と、第1の絶縁層上の第1の非単結晶半導体層と、第1の絶縁層上の第2の非単結晶半導体層と、第2の非単結晶半導体層上の単結晶半導体層を有することを特徴としている。また、基板上の第1の絶縁層と、第1の絶縁層上の第1の非単結晶半導体層と、第1の絶縁層上の第2の非単結晶半導体層と、第2の非単結晶半導体層上の第2の絶縁層と、第2の絶縁層上の単結晶半導体層を有することを特徴としている。
【0019】
なお、上記半導体装置を用いることにより、様々な電子機器を提供することができる。
【0020】
なお、上記において非単結晶半導体層の結晶性は、単結晶以外であれば特に限られない。例えば、非晶質、微結晶、又は多結晶とすることができる。ここで、単結晶とは、結晶構造が一定の規則性を持って形成されており、どの部分においても結晶軸が同じ方向を向いているものをいうものとする。また、欠陥の多少については問わないものとする。
【発明の効果】
【0021】
開示する発明により、非単結晶半導体層を用いて大面積が求められる回路領域(例えば、画素領域)の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて高速動作が求められる回路領域(例えば、駆動回路領域)の半導体素子を形成することができる。これにより、優れた駆動回路を有する半導体装置を提供することができる。また、駆動回路一体型であるため、半導体装置の薄型化、額縁領域の面積縮小などを実現することができる。また、非単結晶半導体層を用いて画素領域を形成することができるため、半導体装置の大型化が極めて容易である。
【0022】
なお、開示する発明では、非単結晶半導体層表面の平坦性が極めて高いことを利用して、非単結晶半導体層上に単結晶半導体層を形成している。このため、接合(貼り合わせ)に係る層を別途設ける必要が無く、半導体基板の作製コストを低減することができる。ここで、単結晶半導体層は、非単結晶半導体層上に接するよう形成しても良いし、非単結晶半導体層上に絶縁層などを形成した後に形成しても良い。
【0023】
なお、レーザー光を照射する場合には、非単結晶半導体層と単結晶半導体層の特性を一度に向上させることができる。すなわち、非単結晶半導体層の微結晶化又は多結晶化の工程と、単結晶半導体層の欠陥低減及び平坦性向上のための工程を、一度に行うことができる。もちろん、非単結晶半導体層及び単結晶半導体層のいずれかのみにレーザー光を照射する構成としても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することができる。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置の作製に用いる半導体基板の作製方法について、図1乃至3を参照して説明する。
【0026】
はじめに、ベース基板100を用意する(図1(A)参照)。ベース基板100には、液晶表示装置などに使用されている透光性を有するガラス基板を用いることができる。ガラス基板としては、歪み点が580℃以上680℃以下(好ましくは、600℃以上680℃以下)であるものを用いると良い。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。
【0027】
なお、ベース基板100としては、ガラス基板の他にも、セラミック基板、石英基板やサファイア基板などの絶縁体でなる基板(ガラス基板含む)、金属やステンレスなどの導電体でなる基板などを用いることもできる。
【0028】
次に、ベース基板100の表面に絶縁層102を形成する(図1(B)参照)。絶縁層102は単層構造でも良いし積層構造でも良い。絶縁層102を構成する材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化ゲルマニウム、酸化窒化ゲルマニウム、窒化酸化ゲルマニウムなどの、珪素またはゲルマニウムを組成に含む絶縁材料を挙げることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物、酸化窒化アルミニウムなどの金属の酸化窒化物、窒化酸化アルミニウムなどの金属の窒化酸化物を用いても良い。
【0029】
なお、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、酸化窒化珪素とは、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化物とは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、窒化酸化珪素とは、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上25原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率の合計は100原子%を超えない。
【0030】
なお、絶縁層102を形成しない構成とすることも可能であるが、ベース基板100にアルカリ金属やアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むような基板を用いる場合には、このような不純物がベース基板100から半導体層に拡散しないように、絶縁層102を設けることが好ましい。このような用途には、特に、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどが適している。
【0031】
その後、絶縁層102の表面に非単結晶半導体層104を形成する(図1(C)参照)。非単結晶半導体層104を構成する材料としては、例えば、シリコン(珪素)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウムなどの第4族元素でなる半導体材料や、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体材料を用いることができる。非単結晶半導体層104の結晶性については、単結晶半導体以外であれば特に限定されず、例えば、非晶質(アモルファス)、1nm〜100nm程度の結晶粒を有する微結晶、100nm以上の結晶粒を有する多結晶など、様々な結晶性の非単結晶半導体層104を用いることができる。例えば、非単結晶半導体層104に非晶質半導体を用いる場合には、スパッタ法、CVD法などにより形成すれば良く、微結晶半導体を用いる場合には、水素の含有量を増加させた原料ガスを用いて、CVD法により形成することができる。多結晶半導体を用いる場合には、例えば非晶質半導体を形成した後さらに結晶化する構成としても良い。
【0032】
なお、開示する発明においては、後に形成する単結晶半導体層と非単結晶半導体層104に同時にレーザー光の照射を行うことが可能であるため、単結晶半導体層にレーザー光を照射する際に非単結晶半導体層104を微結晶化又は多結晶化しても良い。また、必要があれば、上記主成分の他に、微量の不純物元素(リン、ヒ素、ボロン等)が含まれていても良い。
【0033】
非単結晶半導体層104は、半導体素子の活性層として機能すると共に、接合に係る層(接合を形成する層、貼り合わせに係る層)としても機能する。非単結晶半導体層104を接合に係る層として機能させるためには、表面の平坦性が十分に高い非単結晶半導体層104を形成する必要がある。この点、CVD法によって形成される非晶質シリコンは、表面の平坦性が高く、接合に係る層として適しているといえる。
【0034】
なお、非単結晶半導体層104として、プラズマCVD法を用いて非晶質シリコンを形成する場合には、非晶質シリコンから水素を追い出すための熱処理を行っても良い。これは、プラズマCVD法にて形成した非晶質シリコン中には水素が多量に含まれている可能性があるためである。該水素を除去せずにレーザー光の照射処理などを行った場合には、得られる半導体層の表面凹凸が大きくなり、また、ピンホールが生じることもある。このため、水素含有量の多い非晶質シリコンを用いる場合には、水素を追い出すための熱処理を行うと良い。
【0035】
上記熱処理の条件としては、例えば、500℃、1時間とすることができるが、これに限られない。基板の耐熱性が許せば、高温、短時間の条件にて加熱処理を行っても良い。
【0036】
次に、単結晶半導体基板110を用意する(図1(D)参照)。単結晶半導体基板110を薄片化した単結晶半導体層をベース基板100に貼り合わせることで、半導体基板が作製される。単結晶半導体基板110としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなどの第4属元素でなる半導体基板を用いることができる。もちろん、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体でなる基板を用いてもよい。本実施の形態においては、単結晶半導体基板110として、単結晶シリコン基板を用いることとする。単結晶半導体基板110のサイズに制限は無いが、例えば、8インチ(200mm)、12インチ(300mm)、18インチ(450mm)といった円形の半導体基板を、矩形に加工して用いることが好ましい。
【0037】
なお、本実施の形態においては、ベース基板100を処理した後に単結晶半導体基板110を処理する構成としているが、これは説明の便宜のためであり、開示する発明は該順序に限定して解釈されるものではない。すなわち、単結晶半導体基板110を処理した後にベース基板100を処理しても良いし、ベース基板100の処理と単結晶半導体基板110の処理を並列に行う構成としても良い。
【0038】
単結晶半導体基板110を洗浄した後、単結晶半導体基板110表面に、絶縁層112を形成する(図1(E)参照)。絶縁層112は単層構造又は2層以上の多層構造とすることができる。その厚さは10nm以上400nm以下とすると良い。
【0039】
絶縁層112を構成する材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化ゲルマニウム、酸化窒化ゲルマニウム、窒化酸化ゲルマニウムなどの、珪素またはゲルマニウムを組成に含む絶縁材料を挙げることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物、酸化窒化アルミニウムなどの金属の酸化窒化物、窒化酸化アルミニウムなどの金属の窒化酸化物を用いてもよい。
【0040】
絶縁層112の形成方法としては、CVD法、スパッタ法、単結晶半導体基板110の酸化(又は窒化)による方法などがある。絶縁層112も接合に係る層となるから、表面の平坦性が高い絶縁層を形成して絶縁層112とすることが好ましい。なお、絶縁層112は形成しなくても良いが、非単結晶半導体層104と後に形成する単結晶半導体層との絶縁を確保するためには絶縁層112を形成することが好ましい。
【0041】
次に、絶縁層112を介して、電界で加速されたイオンでなるイオンビーム130を単結晶半導体基板110に照射し、単結晶半導体基板110の表面から所定の深さの領域に、損傷領域114を形成する(図1(F)参照)。イオンビーム130の照射前に絶縁層112を形成することで、イオン照射の際の単結晶半導体基板110の汚染を防止し、また、照射されるイオンの衝撃で単結晶半導体基板110が損傷することを防止できる。損傷領域114が形成される領域の深さは、イオンビーム130の加速エネルギーとイオンビーム130の入射角によって制御することができる。ここで、損傷領域114は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。
【0042】
上述の損傷領域114が形成される深さにより、単結晶半導体基板110から分離される単結晶半導体層の厚さが決定される。損傷領域114が形成される深さは、単結晶半導体基板110の表面から50nm以上500nm以下であり、好ましくは50nm以上200nm以下である。
【0043】
イオンを単結晶半導体基板110に照射する際には、イオン注入装置又はイオンドーピング装置を用いることができる。イオン注入装置では、ソースガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離して、所定の質量を有するイオン種を被処理物に注入する。イオンドーピング装置は、プロセスガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離せずに被処理物に照射する。なお、質量分離装置を備えているイオンドーピング装置では、イオン注入装置と同様に、質量分離を伴うイオンの注入を行うこともできる。本明細書において、イオン注入装置又はイオンドーピング装置のいずれか一方を特に用いる必要がある場合にのみそれを明記し、特に明記しないときは、いずれの装置を用いてイオンの照射を行っても良いこととする。
【0044】
イオンドーピング装置を用いる場合のイオンの照射工程は、例えば、以下の条件で行うことができる。
・加速電圧 10kV以上100kV以下(好ましくは30kV以上80kV以下)
・ドーズ量 1×1016ions/cm以上4×1016ions/cm以下
・ビーム電流密度 2μA/cm以上(好ましくは5μA/cm以上、より好ましくは10μA/cm以上)
【0045】
イオンドーピング装置を用いる場合、イオンの照射工程のソースガスには水素を含むガスを用いることができる。該ガスを用いることによりイオン種としてH、H、Hを生成することができる。該ガスをソースガスとして用いる場合には、Hを多く照射することが好ましい。具体的には、イオンビーム130に、H、H、Hの総量に対してHイオンが70%以上含まれるようにすることが好ましい。また、Hイオンの割合を80%以上とすることがより好ましい。このようにHの割合を高めておくことで、損傷領域114に1×1020atoms/cm以上の濃度で水素を含ませることが可能である。これにより、損傷領域114からの剥離が容易になる。また、Hイオンを多く照射することで、H、Hを照射するよりもイオンの照射効率が向上する。つまり、イオン照射に掛かる時間を短縮することができる。また、Hを用いることで、イオンの平均侵入深さを浅くすることができるため、損傷領域114を浅い領域に形成することが可能になる。
【0046】
イオン注入装置を用いる場合には、質量分離により、Hイオンが注入されるようにすることが好ましい。もちろん、Hを注入してもよい。ただし、イオン注入装置を用いる場合には、イオン種を選択して注入するため、イオンドーピング装置を用いる場合と比較して、イオン照射の効率が低下する場合がある。
【0047】
イオン照射工程のソースガスには水素を含むガスの他に、ヘリウムやアルゴンなどの希ガス、フッ素ガスや塩素ガスに代表されるハロゲンガス、フッ素化合物ガス(例えば、BF)などのハロゲン化合物ガスから選ばれた一種または複数種類のガスを用いることができる。ソースガスにヘリウムを用いる場合は、質量分離を行わないことで、Heイオンの割合が高いイオンビーム130を作り出すことができる。このようなイオンビーム130を用いることで、損傷領域114を効率よく形成することができる。
【0048】
また、複数回のイオン照射工程を行うことで、損傷領域114を形成することもできる。この場合、イオン照射工程毎にソースガスを異ならせても良いし、同じソースガスを用いてもよい。例えば、ソースガスとして希ガスを用いてイオン照射を行った後、水素を含むガスをソースガスとして用いてイオン照射を行うことができる。また、初めにハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスを用いてイオン照射を行い、次に、水素ガスを含むガスを用いてイオン照射を行うこともできる。
【0049】
以下において、開示する発明の特徴の一とも言えるイオンの照射方法について考察する。
【0050】
開示する発明では、水素(H)に由来するイオン(以下「水素イオン種」と呼ぶ)を単結晶半導体基板に対して照射している。より具体的には、水素ガス又は水素を組成に含むガスを原材料として用い、水素プラズマを発生させ、該水素プラズマ中の水素イオン種を単結晶半導体基板に対して照射している。
【0051】
(水素プラズマ中のイオン)
上記のような水素プラズマ中には、H、H、Hといった水素イオン種が存在する。ここで、各水素イオン種の反応過程(生成過程、消滅過程)について、以下に反応式を列挙する。
e+H→e+H+e ・・・・・ (1)
e+H→e+H+e ・・・・・ (2)
e+H→e+(H→e+H+H ・・・・・ (3)
e+H→e+(H→e+H+H ・・・・・ (4)
+H→H+H ・・・・・ (5)
+H→H+H+H ・・・・・ (6)
e+H→e+H+H+H ・・・・・ (7)
e+H→H+H ・・・・・ (8)
e+H→H+H+H ・・・・・ (9)
【0052】
図3に、上記の反応の一部を模式的に表したエネルギーダイアグラムを示す。なお、図3に示すエネルギーダイアグラムは模式図に過ぎず、反応に係るエネルギーの関係を厳密に規定するものではない点に留意されたい。
【0053】
(Hの生成過程)
上記のように、Hは、主として反応式(5)により表される反応過程により生成される。一方で、反応式(5)と競合する反応として、反応式(6)により表される反応過程が存在する。Hが増加するためには、少なくとも、反応式(5)の反応が、反応式(6)の反応より多く起こる必要がある(なお、Hが減少する反応としては他にも(7)、(8)、(9)が存在するため、(5)の反応が(6)の反応より多いからといって、必ずしもHが増加するとは限らない。)。反対に、反応式(5)の反応が、反応式(6)の反応より少ない場合には、プラズマ中におけるHの割合は減少する。
【0054】
上記反応式における右辺(最右辺)の生成物の増加量は、反応式の左辺(最左辺)で示す原料の密度や、その反応に係る速度係数などに依存している。ここで、Hの運動エネルギーが約11eVより小さい場合には(5)の反応が主要となり(すなわち、反応式(5)に係る速度係数が、反応式(6)に係る速度係数と比較して十分に大きくなり)、Hの運動エネルギーが約11eVより大きい場合には(6)の反応が主要となることが実験的に確認されている。
【0055】
荷電粒子は電場から力を受けて運動エネルギーを得る。該運動エネルギーは、電場によるポテンシャルエネルギーの減少量に対応している。例えば、ある荷電粒子が他の粒子と衝突するまでの間に得る運動エネルギーは、その間に通過した電位差分のポテンシャルエネルギーに等しい。つまり、電場中において、他の粒子と衝突することなく長い距離を移動できる状況では、そうではない状況と比較して、荷電粒子の運動エネルギー(の平均)は大きくなる傾向にある。このような、荷電粒子に係る運動エネルギーの増大傾向は、粒子の平均自由行程が大きい状況、すなわち、圧力が低い状況で生じ得る。
【0056】
また、平均自由行程が小さくとも、その間に大きな運動エネルギーを得ることができる状況であれば、荷電粒子の運動エネルギーは大きくなる。すなわち、平均自由行程が小さくとも、電位差が大きい状況であれば、荷電粒子の持つ運動エネルギーは大きくなると言える。
【0057】
これをHに適用してみる。プラズマの生成に係るチャンバー内のように電場の存在を前提とすれば、該チャンバー内の圧力が低い状況ではHの運動エネルギーは大きくなり、該チャンバー内の圧力が高い状況ではHの運動エネルギーは小さくなる。つまり、チャンバー内の圧力が低い状況では(6)の反応が主要となるため、Hは減少する傾向となり、チャンバー内の圧力が高い状況では(5)の反応が主要となるため、Hは増加する傾向となる。また、プラズマ生成領域における電場(又は電界)が強い状況、すなわち、ある二点間の電位差が大きい状況ではHの運動エネルギーは大きくなり、反対の状況では、Hの運動エネルギーは小さくなる。つまり、電場が強い状況では(6)の反応が主要となるためHは減少する傾向となり、電場が弱い状況では(5)の反応が主要となるため、Hは増加する傾向となる。
【0058】
(イオン源による差異)
ここで、イオン種の割合(特にHの割合)が異なる例を示す。図22は、100%水素ガス(イオン源の圧力:4.7×10−2Pa)から生成されるイオンの質量分析結果を示すグラフである。なお、上記質量分析は、イオン源から引き出されたイオンを測定することにより行った。横軸はイオンの質量である。スペクトル中、質量1、2、3のピークは、それぞれ、H、H、Hに対応する。縦軸は、スペクトルの強度であり、イオンの数に対応する。図22では、質量が異なるイオンの数量を、質量3のイオンを100とした場合の相対比で表している。図22から、上記イオン源により生成されるイオンの割合は、H:H:H=1:1:8程度となることが分かる。なお、このような割合のイオンは、プラズマを生成するプラズマソース部(イオン源)と、当該プラズマからイオンビームを引き出すための引出電極などから構成されるイオンドーピング装置によっても得ることが出来る。
【0059】
図23は、図22とは異なるイオン源を用いた場合であって、イオン源の圧力がおおよそ3×10−3Paの時に、PHから生成したイオンの質量分析結果を示すグラフである。上記質量分析結果は、水素イオン種に着目したものである。また、質量分析は、イオン源から引き出されたイオンを測定することにより行った。図22と同様、横軸はイオンの質量を示し、質量1、2、3のピークは、それぞれH、H、Hに対応する。縦軸はイオンの数量に対応するスペクトルの強度である。図23から、プラズマ中のイオンの割合はH:H:H=37:56:7程度であることが分かる。なお、図23はソースガスがPHの場合のデータであるが、ソースガスとして100%水素ガスを用いたときも、水素イオン種の割合は同程度になる。
【0060】
図23のデータを得たイオン源の場合には、H、H及びHのうち、Hが7%程度しか生成されていない。他方、図22のデータを得たイオン源の場合には、Hの割合を50%以上(上記の条件では80%程度)とすることが可能である。これは、上記考察において明らかになったチャンバー内の圧力及び電場に起因するものと考えられる。
【0061】
(Hの照射メカニズム)
図22のような複数のイオン種を含むプラズマを生成し、生成されたイオン種を質量分離しないで単結晶半導体基板に照射する場合、単結晶半導体基板の表面には、H、H、Hの各イオンが照射される。イオンの照射からイオン導入領域形成にかけてのメカニズムを再現するために、以下の5種類のモデルを考える。
1.照射されるイオン種がHで、照射後もH(H)である場合
2.照射されるイオン種がHで、照射後もH(H)のままである場合
3.照射されるイオン種がHで、照射後に2個のH(H)に分裂する場合
4.照射されるイオン種がHで、照射後もH(H)のままである場合
5.照射されるイオン種がHで、照射後に3個のH(H)に分裂する場合。
【0062】
(シミュレーション結果と実測値との比較)
上記のモデルを基にして、水素イオン種をSi基板に照射する場合のシミュレーションを行った。シミュレーション用のソフトウェアとしては、SRIM(the Stopping and Range of Ions in Matter:モンテカルロ法によるイオン導入過程のシミュレーションソフトウェア、TRIM(the Transport of Ions in Matter)の改良版)を用いている。なお、計算の関係上、モデル2ではHを質量2倍のHに置き換えて計算した。また、モデル4ではHを質量3倍のHに置き換えて計算した。さらに、モデル3ではHを運動エネルギー1/2のHに置き換え、モデル5ではHを運動エネルギー1/3のHに置き換えて計算を行った。
【0063】
なお、SRIMは非晶質構造を対象とするソフトウェアではあるが、高エネルギー、高ドーズの条件で水素イオン種を照射する場合には、SRIMを適用可能である。水素イオン種とSi原子の衝突により、Si基板の結晶構造が非単結晶構造に変化するためである。
【0064】
図24に、モデル1乃至モデル5を用いて水素イオン種を照射した場合(H換算で10万個照射時)の計算結果を示す。また、図22の水素イオン種を照射したSi基板中の水素濃度(SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)のデータ)をあわせて示す。モデル1乃至モデル5を用いて行った計算の結果については、縦軸を水素原子の数で表しており(右軸)、SIMSデータについては、縦軸を水素原子の密度で表している(左軸)。横軸はSi基板表面からの深さである。実測値であるSIMSデータと、計算結果とを比較した場合、モデル2及びモデル4は明らかにSIMSデータのピークから外れており、また、SIMSデータ中にはモデル3に対応するピークも見られない。このことから、モデル2乃至モデル4の寄与は、相対的に小さいことが分かる。イオンの運動エネルギーがkeV程度なのに対して、H−Hの結合エネルギーは数eV程度に過ぎないことを考えれば、モデル2及びモデル4の寄与が小さいのは、Si元素との衝突により、大部分のHやHが、HやHに分離しているためと思われる。
【0065】
以上より、モデル2乃至モデル4については、以下では考慮しない。図25乃至図27に、モデル1及びモデル5を用いて水素イオン種を照射した場合(H換算で10万個照射時)の計算結果を示す。また、図22の水素イオン種を照射したSi基板中の水素濃度(SIMSデータ)及び、上記シミュレーション結果をSIMSデータにフィッティングさせたもの(以下フィッティング関数と呼ぶ)を合わせて示す。ここで、図25は加速電圧を80kVとした場合を示し、図26は加速電圧を60kVとした場合を示し、図27は加速電圧を40kVとした場合を示している。なお、モデル1及びモデル5を用いて行った計算の結果については、縦軸を水素原子の数で表しており(右軸)、SIMSデータ及びフィッティング関数については、縦軸を水素原子の密度で表している(左軸)。横軸はSi基板表面からの深さである。
【0066】
フィッティング関数はモデル1及びモデル5を考慮して以下の計算式により求めることとした。なお、計算式中、X、Yはフィッティングに係るパラメータであり、Vは体積である。
[フィッティング関数]
=X/V×[モデル1のデータ]+Y/V×[モデル5のデータ]
【0067】
現実に照射されるイオン種の割合(H:H:H=1:1:8程度)を考えればHの寄与(すなわち、モデル3)についても考慮すべきであるが、以下に示す理由により、ここでは除外して考えた。
・モデル3に示される照射過程により導入される水素は、モデル5の照射過程と比較して僅かであるため、除外して考えても大きな影響はない(SIMSデータにおいても、ピークが現れていない)。
・モデル5とピーク位置の近いモデル3は、モデル5において生じるチャネリング(結晶の格子構造に起因する元素の移動)により隠れてしまう可能性が高い。すなわち、モデル3のフィッティングパラメータを見積もるのは困難である。これは、本シミュレーションが非晶質Siを前提としており、結晶性に起因する影響を考慮していないことによるものである。
【0068】
図28に、上記のフィッティングパラメータをまとめる。いずれの加速電圧においても、導入されるHの数の比は、[モデル1]:[モデル5]=1:42〜1:45程度(モデル1におけるHの数を1とした場合、モデル5におけるHの数は42以上45以下程度)であり、照射されるイオン種の数の比は、[H(モデル1)]:[H(モデル5)]=1:14〜1:15程度(モデル1におけるHの数を1とした場合、モデル5におけるHの数は14以上15以下程度)である。モデル3を考慮していないことや非晶質Siと仮定して計算していることなどを考えれば、実際の照射に係るイオン種の比(H:H:H=1:1:8程度)に近い値が得られていると言える。
【0069】
(Hを用いる効果)
図22に示すようなHの割合を高めた水素イオン種を基板に照射することで、Hに起因する複数のメリットを享受することができる。例えば、HはHやHなどに分離して基板内に導入されるため、主にHやHを照射する場合と比較して、イオンの導入効率を向上させることができる。これにより、半導体基板の生産性向上を図ることができる。また、同様に、Hが分離した後のHやHの運動エネルギーは小さくなる傾向にあるから、薄い半導体層の製造に向いている。
【0070】
なお、本明細書では、Hを効率的に照射するために、図22に示すような水素イオン種を照射可能なイオンドーピング装置を用いる方法について説明している。イオンドーピング装置は廉価で、大面積処理に優れているため、このようなイオンドーピング装置を用いてHを照射することで、半導体特性の向上、大面積化、低コスト化、生産性向上などの顕著な効果を得ることができる。一方で、Hの照射を第一に考えるのであれば、イオンドーピング装置を用いることに限定して解釈する必要はない。
【0071】
なお、本実施の形態においては、絶縁層112をイオン照射の前に形成する構成としたが、イオン照射の後に形成しても良い。また、絶縁層112を形成しない構成としても良い。
【0072】
その後、上記の処理が施されたベース基板100の一部の領域に単結晶半導体基板110を貼り合わせる(図1(G)参照)。具体的には、非単結晶半導体層104が形成されたベース基板100、及び絶縁層112が形成された単結晶半導体基板110の表面を超音波洗浄などの方法で洗浄し、その後、非単結晶半導体層104の一部の領域と絶縁層112を密着させる。これにより、非単結晶半導体層104と絶縁層112が接合する。単結晶半導体基板110上に絶縁層112を形成しない場合には、非単結晶半導体層104と単結晶半導体基板110とを密着させて、接合させればよい。なお、接合のメカニズムとしては、ファン・デル・ワールス力が関わるメカニズムや、水素結合が関わるメカニズムなどが考えられる。
【0073】
開示する発明の特徴の一つとして、接合に係る層に非単結晶半導体層を用いることが挙げられる。接合に係る層として非単結晶半導体層を用いることができるのは、その表面の平坦性が極めて高く、接合に係る層として適しているためである。このような、平坦性の高い非単結晶半導体層としては、特に、非晶質半導体層や微結晶半導体層が好ましい。ここで、上述の非単結晶半導体層の平坦性を確保するためには、成膜後、レーザー光の照射などの平坦性に悪影響を及ぼす可能性がある処理は極力避けることが好ましい。もちろん、接合を形成した後はレーザー光を照射しても構わない。また、接合を形成する前に、平坦性に悪影響を与えない処理や平坦性が向上する処理を施してもよい。
【0074】
このように、非単結晶半導体層104を接合に係る層として用いることで、非単結晶半導体層104と絶縁層112を常温で接合する(貼り合わせる)ことができる。これにより、ベース基板100として、ガラス基板をはじめとする耐熱性の低い基板を用いることが可能となる。なお、絶縁層112の接合に係る部分として、有機シランを用いてプラズマCVD法により形成した酸化珪素を用いる場合には、接合をより良好に形成することができるため好ましい。
【0075】
非単結晶半導体層104と絶縁層112の結合をより強固なものとするために、非単結晶半導体層104又は絶縁層112の表面を酸素プラズマ処理又はオゾン処理して、その表面を親水性にしても良い。この処理によって、非単結晶半導体層104又は絶縁層112の表面に水酸基が付加されるため、接合界面に水素結合を形成することができる。なお、単結晶半導体基板110上に絶縁層112を形成しない場合には、単結晶半導体基板110の表面を親水性にする処理を行ってもよい。
【0076】
非単結晶半導体層104と絶縁層112を密着させた後には、加熱処理又は加圧処理を行うことが好ましい。加熱処理又は加圧処理を行うことで、非単結晶半導体層104と絶縁層112の結合力を向上させることができる。加熱処理の温度は、ベース基板100の耐熱性に応じて決定すればよい。例えば、ベース基板100としてガラス基板を用いる場合には、加熱処理の温度はガラスの歪み点以下に抑える必要がある。加圧処理を施す場合には、接合界面に垂直な方向に力が加わるように圧力を加えるとよい。加える圧力はベース基板100及び単結晶半導体基板110の強度を考慮して決定することができる。なお、本実施の形態においては、200℃、2時間の加熱処理を施すこととする。
【0077】
次に、単結晶半導体基板110を、単結晶半導体層116と単結晶半導体基板118に分離する(図1(H)参照)。単結晶半導体基板110の分離は、非単結晶半導体層104と絶縁層112を貼り合わせた後、単結晶半導体基板110を加熱することにより行う。この場合にも、ベース基板100の耐熱温度を目安に加熱温度を決定することができる。例えば、ベース基板100としてガラス基板を用いる場合には、加熱温度は400℃以上ガラスの歪み点以下とすることが好ましい。ただし、短時間であれば、ガラスの歪み点以上の加熱処理を行っても良い。なお、本実施の形態においては、600℃、2時間の加熱処理を施すこととする。
【0078】
上述のような加熱処理を行うことにより、損傷領域114に形成された微小な空孔の体積変化が生じ、損傷領域114に亀裂が生ずる。その結果、損傷領域114に沿って単結晶半導体基板110が分離する。絶縁層112は非単結晶半導体層104と接合しているので、ベース基板100上には単結晶半導体基板110から分離された単結晶半導体層116が残存することになる。また、この加熱処理で、非単結晶半導体層104と絶縁層112の接合界面が加熱されるため、接合界面に共有結合が形成され、非単結晶半導体層104と絶縁層112の結合力が向上する。
【0079】
以上により、ベース基板100の一部の領域上に単結晶半導体層116が形成される。該半導体基板は、ベース基板100上に絶縁層102、非単結晶半導体層104が順に積層され、非単結晶半導体層104の一部の領域上には、絶縁層112、単結晶半導体層116が順に積層された構成となっている。また、非単結晶半導体層104と絶縁層112との界面において接合が形成されている。なお、絶縁層112を形成しない場合には、非単結晶半導体層104と単結晶半導体層116との界面において接合が形成されることになる。
【0080】
上述のようにして形成された半導体基板において、単結晶半導体層116の表面には、分離工程やイオン照射工程による欠陥が存在し、また、その平坦性は損なわれている。このような凹凸のある単結晶半導体層116の表面に、薄く、且つ、高い絶縁耐圧のゲート絶縁層を形成することは困難である。そのため、単結晶半導体層116の平坦化処理を行う。また、単結晶半導体層116に欠陥が存在する場合には、ゲート絶縁層との界面における局在準位密度が高くなるなど、トランジスタの性能及び信頼性に悪影響を与えるため、単結晶半導体層116の欠陥を減少させる処理を行う。
【0081】
本実施の形態において、単結晶半導体層116の平坦性向上、および欠陥の低減は、単結晶半導体層116にレーザー光132を照射することで実現される(図2(A)参照)。レーザー光132を単結晶半導体層116の上面側から照射することで、単結晶半導体層116上面を溶融させる。溶融した後、単結晶半導体層116が冷却、固化することで、その上面の平坦性が向上した単結晶半導体層120が得られる(図2(B)参照)。本実施の形態においては、レーザー光132を用いているため、ベース基板100を加熱する必要が無く、ベース基板100の温度上昇が抑えられる。このため、ガラス基板のような耐熱性の低い基板をベース基板100に用いることが可能になる。もちろん、ベース基板の耐熱温度の範囲内における加熱を行う構成としても良い。ベース基板を加熱することにより、比較的低いエネルギー密度のレーザー光を用いる場合であっても、欠陥の低減を効果的に進めることができる。一方で、650℃以下程度の温度への加熱のみでは欠陥の低減は進まず、この意味において、レーザー光の照射は必須であるといえる。
【0082】
なお、レーザー光132の照射による単結晶半導体層116の溶融は、部分溶融とする必要がある。完全溶融させた場合には、液相となった後の無秩序な核発生により微結晶化し、結晶性が低下するためである。一方で、部分溶融させることにより、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行する。これにより、半導体層中の欠陥を減少させることができる。ここで、完全溶融とは、単結晶半導体層116が絶縁層112との界面まで溶融され、液体状態になることをいう。他方、部分溶融とは、この場合、単結晶半導体層116の上部は溶融して液相となるが、下部は溶融せずに固相のままであることをいう。
【0083】
なお、非単結晶半導体層104として、例えば、非晶質半導体を用いている場合には、レーザー光132の照射により微結晶化又は多結晶化させても良い。これにより、後に形成する半導体装置の特性を向上させることができる。もちろん、後の半導体装置に用いる半導体層として非晶質半導体が好ましい場合や、非単結晶半導体層104としてあらかじめ微結晶半導体や多結晶半導体を用いている場合には、非単結晶半導体層104に対してレーザー光132を照射する必要はない。
【0084】
上記レーザー光の照射には、パルス発振レーザーを用いることが好ましい。これは、瞬間的に高エネルギーのパルスレーザー光を発振することができ、部分溶融状態を作り出すことが容易となるためである。発振周波数は、1Hz以上10MHz以下程度とすることが好ましい。より好ましくは、10Hz以上1MHz以下である。上述のパルス発振レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザー、エキシマ(ArF、KrF、XeCl)レーザー、COレーザー、YAGレーザー、YVOレーザー、YLFレーザー、YAlOレーザー、GdVOレーザー、Yレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザー、金蒸気レーザー等を用いることができる。なお、部分溶融させるためにはパルス発振レーザーを用いることが好ましいが、これに限定して解釈されるものではない。すなわち、連続発振レーザーの使用を除外するものではない。なお、連続発振レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザー、COレーザー、YAGレーザー、YVOレーザー、YLFレーザー、YAlOレーザー、GdVOレーザー、Yレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー等がある。
【0085】
レーザー光132の波長は、単結晶半導体層116に吸収される波長とする必要がある。その波長は、レーザー光の表皮深さ(skin depth)などを考慮して決定すればよい。例えば、250nm以上700nm以下の範囲とすることができる。また、レーザー光132のエネルギー密度は、レーザー光132の波長、レーザー光の表皮深さ、単結晶半導体層116の膜厚などを考慮して決定することができる。レーザー光132のエネルギー密度は、例えば、300mJ/cm以上800mJ/cm以下の範囲とすればよい。なお、上記エネルギー密度の範囲は、パルス発振レーザーとしてXeClエキシマレーザー(波長:308nm)を用いた場合の一例である。
【0086】
なお、イオン照射工程においてイオンの侵入深さを調節し、単結晶半導体層116の厚さを50nmより大きくすることで、レーザー光132のエネルギー密度の調節が容易になる。これにより、レーザー光132の照射による半導体層表面の平坦性の向上、および欠陥の低減を、歩留まりよく実現することができる。なお、単結晶半導体層116を厚くするとレーザー光132のエネルギー密度を高くする必要が出てくるため、単結晶半導体層116の厚さは200nm以下とすることが好ましい。
【0087】
レーザー光132の照射は、大気雰囲気のような酸素を含む雰囲気、または窒素雰囲気のような不活性雰囲気で行うことができる。不活性雰囲気中でレーザー光132を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザー光132を照射し、このチャンバー内の雰囲気を制御すればよい。チャンバーを用いない場合は、レーザー光132の被照射面に窒素ガスなどの不活性ガスを吹き付けることで、窒素雰囲気を形成することもできる。
【0088】
なお、窒素などの不活性雰囲気で行うほうが、大気雰囲気よりも単結晶半導体層116の平坦性を向上させる効果は高い。また、大気雰囲気よりも不活性雰囲気のほうがクラックやリッジの発生を抑える効果が高く、レーザー光132の使用可能なエネルギー密度の範囲が広くなる。なお、レーザー光132の照射は、真空中で行ってもよい。真空中でレーザー光132を照射した場合には、不活性雰囲気における照射と同等の効果を得ることができる。
【0089】
上述のようにレーザー光132を照射した後には、単結晶半導体層120の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。単結晶半導体層120の薄膜化には、ドライエッチングまたはウエットエッチングの一方、または双方を組み合わせたエッチング処理(エッチバック処理)を適用すればよい。例えば、単結晶半導体層120がシリコン材料からなる層である場合、SFと0をプロセスガスに用いたドライエッチング処理で、単結晶半導体層120を薄くすることができる。なお、非単結晶半導体層104と単結晶半導体層120とが同じ半導体材料からなる場合には、上記のエッチング処理により非単結晶半導体層104も薄膜化することになる。このため、上記のエッチング処理を施す場合には、あらかじめ非単結晶半導体層104を厚めに形成しておくか、又は非単結晶半導体層104を覆うマスク等を形成しておくことが好ましい。以上により、薄い単結晶半導体層122を非単結晶半導体層104の一部の領域上に有する半導体基板140を作製することができる(図2(C)参照)。
【0090】
なお、本実施の形態においては、レーザー光の照射により表面を平坦化等した後でエッチング処理を行う構成を例に挙げているが、開示する発明はこれに限定して解釈されるものではない。例えば、レーザー光の照射前にエッチング処理を行ってもよい。この場合には、エッチング処理により半導体層表面の凹凸や欠陥をある程度低減することができる。また、レーザー光の照射前及び照射後の両方に上記エッチング処理を適用しても良い。また、レーザー光の照射と上記エッチング処理を交互に繰り返しても良い。このように、レーザー光の照射とエッチング処理(エッチバック処理)を組み合わせて用いることにより、半導体層表面の凹凸、欠陥等を著しく低減することができる。
【0091】
また、レーザー光132を照射した後に、ベース基板100の耐熱温度以下における加熱処理を施しても良い。これにより、レーザー光132の照射による効果が促進され、効率的な欠陥の除去や平坦性の向上が可能になる。もちろん、上述のエッチング処理や加熱処理などを常に用いる必要はない。また、上述のエッチング処理や加熱処理などに加えて、又は代えて、CMPによる平坦化を施すこともできる。
【0092】
本実施の形態にて示した方法を用いることにより、単結晶半導体層と非単結晶半導体層とが併せて設けられた基板を提供することができる。これにより、高性能な回路(高速動作が要求される領域の回路)を、単結晶半導体層を用いて形成することができ、大面積が要求される領域の回路を、非単結晶半導体層を用いて形成することができる。
【0093】
ここで、本実施の形態における非単結晶半導体層は二つの機能を有している。その一つは、ベース基板と単結晶半導体層を接着する層(接合に係る層、貼り合わせに係る層)としての機能であり、もう一つが、半導体素子を形成する材料層としての機能である。このような機能を有する非単結晶半導体層を用いることにより、接合に係る層と、半導体素子を形成する材料層とを別に形成する場合と比べて、半導体基板の作製コストを低減することができる。
【0094】
なお、上記の高速動作が要求される領域の回路とは、一定以上の周波数での駆動が求められる回路を言う。一例としては、1MHz以上の周波数での動作が求められる回路を言う。用いる半導体層を求められる周波数で規定するのは、回路に用いられるスイッチング素子の動作可能な周波数が半導体材料に大きく依存しているためである。電界効果トランジスタにおけるキャリアの移動度が大きい単結晶半導体(単結晶シリコンにおける電子の場合で500cm/V・s程度)を用いたスイッチング素子は、信号の伝達速度が大きく高周波数動作に向いている。一方で、キャリアの移動度が小さい非単結晶半導体(非晶質シリコンにおける電子の場合で1cm/V・s程度)を用いたスイッチング素子は、信号の伝達速度も小さく高周波数動作には向かない。なお、スイッチング素子の動作可能な周波数の上限は、材料以外のパラメータ(例えばチャネル長、チャネル幅、不純物元素の含有量等)にも依存するため、一律に、ある周波数以上を高速動作と規定することは困難である。ここでは、表示装置における駆動回路に要求される性能を一応の目安として、周波数の基準を示した。
【0095】
また、本実施の形態において示したように、レーザー光を照射して単結晶半導体層の平坦性の向上及び欠陥の低減を図る場合には、同時に、非単結晶半導体層にもレーザー光を照射してその結晶性を向上させることができる。この場合には、一度の工程で、単結晶半導体層の特性向上と非単結晶半導体層の特性向上を実現することができる。つまり、非単結晶半導体層の特性のみを向上させる工程が不要となるため、工程数の増加を抑制することが可能であり、高性能な半導体基板を低コストに作製することができる。
【0096】
なお、単結晶半導体層を用いて全ての半導体素子を作製することも可能であるが、これは、大面積が要求される半導体装置ではあまり現実的なものではない。例えば、大型の表示装置を作製する場合には、ベース基板上に複数の単結晶半導体層を隙間無く配置しなくてはならないが、これは非常に困難である。また、表示装置における画素領域の半導体素子に要求される特性は、非単結晶半導体で十分に満足されるものであり、単結晶半導体層を画素領域の半導体素子に用いるメリットはあまり大きくはない。これらを考慮すれば、開示する発明のように、大面積が要求される領域には非単結晶半導体層を用い、高性能(高速動作)が要求される領域には単結晶半導体層を用いることが、要求される特性及びコストの面から好ましいと言える。
【0097】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1において作製した半導体基板を用いた半導体装置の作製方法について、図4乃至6を参照して説明する。ここでは、一例として複数のトランジスタからなる半導体装置の作製方法について説明することとする。
【0098】
図4(A)は、実施の形態1において作製した半導体基板140の断面図を示している。
【0099】
非単結晶半導体層104及び単結晶半導体層122には、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型を付与する不純物、若しくはリン、砒素などのn型を付与する不純物を添加しても良い。不純物を添加する領域、および添加する不純物の種類は、適宜変更することができる。例えば、nチャネル型トランジスタの形成領域にはp型を付与する不純物を添加し、pチャネル型トランジスタの形成領域にはn型を付与する不純物を添加することができる。上述の不純物を添加する際には、ドーズ量が1×1015/cm以上1×1017/cm以下程度となるように行えばよい。
【0100】
上記単結晶半導体層122及び非単結晶半導体層104に対してエッチング処理を施して、単結晶半導体層122及び非単結晶半導体層104を島状に分離して単結晶半導体層402及び非単結晶半導体層404を形成する(図4(B)参照)。なお、図4(B)では、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404を同じ大きさで表しているが、これは模式図にすぎず、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404とを同じ大きさとすることに限られない。半導体層の特性を考慮すれば、単結晶半導体層を用いたトランジスタは、非単結晶半導体を用いたトランジスタより小型化が可能である。すなわち、単結晶半導体層402を非単結晶半導体層404と比較して小さく形成してもよい。また、本実施の形態においては、絶縁層112の周辺の非単結晶半導体層を残存させているが、これに限定して解釈されるものではない。
【0101】
次に、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404を覆うように、ゲート絶縁層406を形成する(図4(C)参照)。ここでは、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素膜を単層で形成することとする。その他にも、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等を含む膜を、単層構造又は積層構造で形成することによりゲート絶縁層406としても良い。
【0102】
プラズマCVD法以外の作製方法としては、スパッタリング法や、高密度プラズマ処理による酸化または窒化による方法が挙げられる。高密度プラズマ処理は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などとの混合ガスを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体層の表面を酸化または窒化することにより、1nm以上20nm以下、望ましくは2nm以上10nm以下の絶縁層を半導体層に接するように形成する。
【0103】
上述した高密度プラズマ処理による半導体層の酸化又は窒化は固相反応であるため、ゲート絶縁層406と、単結晶半導体層402又は非単結晶半導体層404との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また、高密度プラズマ処理により半導体層を直接酸化又は窒化することで、形成される絶縁層の厚さのばらつきを抑えることが出来る。このように、高密度プラズマ処理により形成された絶縁層をトランジスタのゲート絶縁層の一部または全部に用いることで、特性のばらつきを抑制することができる。
【0104】
プラズマ処理による絶縁層の作製方法のより具体的な一例について説明する。亜酸化窒素(NO)を、アルゴン(Ar)を用いて1倍以上3倍以下(流量比)に希釈し、10Pa以上30Pa以下の圧力下で3kW以上5kW以下のマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404の表面を酸化または窒化させる。この処理により1nm以上10nm以下(好ましくは2nm以上6nm以下)のゲート絶縁層406の下層を形成する。さらに、亜酸化窒素(NO)とシラン(SiH)を導入し、10Pa以上30Pa以下の圧力下で3kW以上5kW以下のマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して気相成長法により酸化窒化珪素膜を形成し、ゲート絶縁層406の上層とする。このように、固相反応と気相成長法を組み合わせてゲート絶縁層406を形成することにより界面準位密度が低く絶縁耐圧の優れたゲート絶縁層406を形成することができる。なお、この場合においてゲート絶縁層406は2層構造となる。
【0105】
或いは、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404を熱酸化させることで、ゲート絶縁層406を形成するようにしても良い。このような熱酸化を用いる場合には、耐熱性の比較的高いベース基板を用いることが好ましい。
【0106】
なお、水素を含むゲート絶縁層406を形成し、その後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行うことで、ゲート絶縁層406中に含まれる水素を単結晶半導体層402及び非単結晶半導体層404中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁層406として、プラズマCVD法を用いた窒化珪素又は窒化酸化珪素を用いることができる。なお、プロセス温度は350℃以下とすると良い。このように、単結晶半導体層402及び非単結晶半導体層404に水素を供給することで、単結晶半導体層402若しくは非単結晶半導体層404の内部、ゲート絶縁層406と単結晶半導体層402の界面及びゲート絶縁層406と非単結晶半導体層404の界面における欠陥を効果的に低減することができる。
【0107】
次に、ゲート絶縁層406上に導電層を形成した後、該導電層を所定の形状に加工(パターニング)することで、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404の上方に電極408及び電極410を形成する(図4(D)参照)。導電層の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることができる。導電層は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等の材料を用いて形成することができる。また、上記金属を主成分とする合金材料を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体層に導電性を付与する不純物元素をドーピングした多結晶珪素など、半導体材料を用いて形成しても良い。
【0108】
本実施の形態では電極408及び電極410を単層の導電層で形成しているが、開示する発明の半導体装置は該構成に限定されない。電極408は積層された複数の導電層で形成されていても良い。2層構造とする場合には、例えば、モリブデン膜、チタン膜、窒化チタン膜等を下層に用い、上層にはアルミニウム膜などを用いればよい。3層構造の場合には、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造や、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜の積層構造などを採用するとよい。
【0109】
なお、電極408及び電極410を形成する際に用いるマスクは、酸化珪素や窒化酸化珪素等の材料を用いて形成してもよい。この場合、酸化珪素膜や窒化酸化珪素膜等をパターニングしてマスクを形成する工程が加わるが、レジスト材料を用いたマスクと比較してエッチング時における膜減りが少ないため、より正確な形状の電極408及び電極410を形成することができる。また、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極408及び電極410を形成しても良い。ここで、液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
【0110】
また、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節し、所望のテーパー形状を有するように導電層をエッチングすることで、電極408及び電極410を形成することもできる。また、テーパー形状は、マスクの形状によって制御することもできる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素もしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ素系ガス又は酸素などを適宜用いることができる。
【0111】
次に、電極408及び電極410をマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を単結晶半導体層402及び非単結晶半導体層404に添加する(図5(A)参照)。本実施の形態では、単結晶半導体層402及び非単結晶半導体層404にn型を付与する不純物元素(例えばリンやヒ素など)を添加する場合について説明するが、p型を付与する不純物元素(例えばボロンなど)を添加してもよい。なお、n型を付与する不純物元素とp型を付与する不純物元素の添加を選択的に行うためには、n型の不純物を添加する際にはp型の不純物が添加される半導体層をマスク等で覆い、p型の不純物を添加する際にはn型の不純物が添加される半導体層をマスク等で覆う。又は、全ての半導体層に、先にp型を付与する不純物元素又はn型を付与する不純物元素の一方を添加した後、一部の半導体層に対して、より高い濃度でp型を付与する不純物元素又はn型を付与する不純物元素の他方を添加するようにしても良い。上記不純物の添加により、単結晶半導体層402に不純物領域412、非単結晶半導体層404に不純物領域414が形成される。
【0112】
次に、電極408の側面にサイドウォール416を、電極410の側面にサイドウォール418を形成する(図5(B)参照)。サイドウォール416及びサイドウォール418は、例えば、ゲート絶縁層406、電極408及び電極410を覆うように新たに絶縁層を形成し、該絶縁層に対して垂直方向を主体とした異方性エッチング処理を施すことにより形成することができる。なお、上記の異方性エッチングにより、ゲート絶縁層406を部分的にエッチングしても良い。本実施の形態においては、電極408及びサイドウォール416の下部のゲート絶縁層406並びに電極410及びサイドウォール418の下部のゲート絶縁層406以外は除去しているが、開示する発明がこれに限定されるものではない。サイドウォール416及びサイドウォール418を形成するための絶縁層としては、プラズマCVD法やスパッタリング法等により、珪素、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、有機材料などを含む膜を、単層構造又は積層構造で形成すれば良い。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化珪素膜をプラズマCVD法によって形成する。また、エッチングガスとしては、CHFとヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール416及びサイドウォール418を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
【0113】
次に、ゲート絶縁層406、電極408及びサイドウォール416並びに電極410及びサイドウォール418をマスクとして、単結晶半導体層402、非単結晶半導体層404に一導電型を付与する不純物元素を添加する(図5(C)参照)。なお、単結晶半導体層402、非単結晶半導体層404には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。これにより、単結晶半導体層402に、一対の高濃度不純物領域420と、一対の低濃度不純物領域422と、チャネル形成領域424が形成され、非単結晶半導体層404に、一対の高濃度不純物領域426と、一対の低濃度不純物領域428と、チャネル形成領域430とが形成される。高濃度不純物領域420、高濃度不純物領域426はソース領域又はドレイン領域として機能し、低濃度不純物領域422、低濃度不純物領域428はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
【0114】
なお、図5においては、単結晶半導体層402上に形成されたサイドウォール416と、非単結晶半導体層404上に形成されたサイドウォール418を同じ大きさで表しているが、これは模式図にすぎず、開示する発明がこれに限定して解釈されるものではない。サイドウォールの大きさに従ってLDD領域の大きさも変化するため、トランジスタが要求される特性に応じてサイドウォール416とサイドウォール418の大きさを適宜設定すればよい。
【0115】
ソース領域及びドレイン領域をさらに低抵抗化するために、単結晶半導体層402及び非単結晶半導体層404の一部をシリサイド化したシリサイド層を形成しても良い。シリサイド化は、半導体層に金属を接触させ、加熱(例えば、GRTA法、LRTA法等を用いた加熱)により、半導体層中の珪素と金属とを反応させて行う。単結晶半導体層402や非単結晶半導体層404が薄い場合には、単結晶半導体層402、非単結晶半導体層404の底部までシリサイド反応を進めても良い。また、レーザー光の照射などによってもシリサイド層を形成することができる。シリサイド化に用いることができる金属材料としては、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等が挙げられる。
【0116】
上述の工程により、単結晶半導体を用いたnチャネル型トランジスタ450及び非単結晶半導体を用いたnチャネル型トランジスタ452が形成される。なお、図5(C)に示す段階では、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層は形成されていないが、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層を含めてトランジスタと呼んでもよい。
【0117】
次に、nチャネル型トランジスタ450、nチャネル型トランジスタ452を覆うように絶縁層432を形成する(図5(D)参照)。絶縁層432は必ずしも設ける必要はないが、絶縁層432を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がnチャネル型トランジスタ450、nチャネル型トランジスタ452に侵入することを防止できる。具体的には、絶縁層432を、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどの材料を用いて形成するのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の窒化酸化珪素膜を、絶縁層432として用いる。この場合、上述の水素化の工程は、該窒化酸化珪素膜形成後に行っても良い。なお、本実施の形態においては、絶縁層432を単層構造としているが、積層構造としても良いことはいうまでもない。例えば、2層構造とする場合には、酸化窒化珪素膜と窒化酸化珪素膜との積層構造とすることができる。
【0118】
次に、nチャネル型トランジスタ450、nチャネル型トランジスタ452を覆うように、絶縁層432上に絶縁層434を形成する。絶縁層434は、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いて形成するとよい。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることもできる。ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層434を形成しても良い。また、絶縁層434は、その表面をCMP法などにより平坦化させても良い。
【0119】
絶縁層434の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0120】
次に、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404がそれぞれ一部露出するように絶縁層432及び絶縁層434にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404に接する導電層436、導電層438を形成する(図6(A)参照)。導電層436及び導電層438は、トランジスタのソース電極又はドレイン電極として機能する。なお、本実施の形態においては、コンタクトホール開口時のエッチングに用いるガスとしてCHFとHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
【0121】
導電層436、導電層438は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。具体的には、導電層436、導電層438として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等の材料を用いることができる。また、上記材料を主成分とする合金を用いても良いし、上記材料を含む化合物を用いても良い。また、導電層436、導電層438は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0122】
アルミニウムを主成分とする合金の例としては、アルミニウムを主成分として、ニッケルを含むものが挙げられる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方を含むものを挙げることができる。アルミニウムやアルミニウムシリコン(Al−Si)は抵抗値が低く、安価であるため、導電層436、導電層438を形成する材料として適している。特に、アルミニウムシリコンは、ヒロックの発生を抑制することができるため好ましい。また、珪素の代わりに、アルミニウムに0.5%程度のCuを混入させた材料を用いても良い。
【0123】
導電層436、導電層438を積層構造とする場合には、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造などを採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物などを用いて形成された膜である。バリア膜の間にアルミニウムシリコン膜を挟むように導電層を形成すると、ヒロックの発生をより一層抑制することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、単結晶半導体層402と非単結晶半導体層404上に薄い酸化膜が形成されていたとしても、バリア膜に含まれるチタンが該酸化膜を還元し、導電層436と単結晶半導体層402、及び導電層438と非単結晶半導体層404のコンタクトを良好なものとすることができる。また、バリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電層436、導電層438を、下層からチタン、窒化チタン、アルミニウムシリコン、チタン、窒化チタンのように、5層構造又はそれ以上の積層構造とすることもできる。
【0124】
また、導電層436、導電層438として、WFガスとSiHガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いても良い。また、WFを水素還元して形成したタングステンを、導電層436、導電層438として用いても良い。
【0125】
なお、導電層436はnチャネル型トランジスタ450の高濃度不純物領域420に接続されている。導電層438はnチャネル型トランジスタ452の高濃度不純物領域426に接続されている。
【0126】
図6(A)に示したnチャネル型トランジスタ450及びnチャネル型トランジスタ452の平面図を、図6(B)に示す。ここで、図6(B)のA−Bにおける断面が図6(A)に対応している。ただし、図6(B)においては、簡単のため、絶縁層432、絶縁層434、導電層436、導電層438などの構成要素を省略している。
【0127】
なお、本実施の形態においては、nチャネル型トランジスタ450とnチャネル型トランジスタ452が、それぞれゲート電極として機能する電極を1つずつ有する場合を例示しているが、開示する発明は該構成に限定されない。開示する発明で作製されるトランジスタは、ゲート電極として機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
【0128】
以上により、複数のトランジスタを有する半導体装置を作製することができる。
【0129】
本実施の形態にて示したように、開示する発明を用いて単結晶半導体と非単結晶半導体の特性を生かした半導体装置を作製することができる。すなわち、高い性能が要求される回路には単結晶半導体層を用い、大面積が要求される回路には、非単結晶半導体層を用いた半導体装置を提供することができる。
【0130】
なお、開示する発明の半導体基板を用いなくとも本実施の形態における半導体装置に近い構造の半導体装置を作製することはできる。例えば、先に、単結晶半導体層を形成して該単結晶半導体層をパターニングし、その後、非単結晶半導体層を形成して該非単結晶半導体層をパターニングするという方法がある。また、先に、非単結晶半導体層を形成して該非単結晶半導体層をパターニングし、その後、非単結晶半導体層が除去された領域に単結晶半導体層を形成し、パターニングするという方法もある。しかしながら、これらの場合には、単結晶半導体層のパターニングに用いるマスクと、非単結晶半導体層のパターニングに用いるマスクを別に用意する必要があり、工程数の増加の点で不利である。
【0131】
この点、開示する発明では非単結晶半導体層を接合に係る層として用いることで、単結晶半導体層と非単結晶半導体層のパターニングを一のマスクにて実現している。また、非単結晶半導体層を接合に係る層として用いることにより、接合に係る層を別途設ける必要がない。このため、半導体装置の作製にかかるコストを低減でき、半導体装置の価格を抑えることができる。また、単結晶半導体層へのレーザー光の照射の際に非単結晶半導体層に対してレーザー光を照射した半導体基板を用いることができるため、特性が優れた大型の半導体装置を安価に作製することができる。
【0132】
本実施の形態は、実施の形態1と適宜組み合わせて用いることができる。
【0133】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体基板の作製方法の別の一例について、図7及び8を参照して説明する。
【0134】
まず、ベース基板100を用意する(図7(A)参照)。ベース基板100の詳細は実施の形態1を参照することができるため、ここでは省略する。
【0135】
次に、ベース基板100の表面に絶縁層102を形成する(図7(B)参照)。絶縁層102は単層構造でも良いし積層構造でも良い。絶縁層102を構成する材料等の詳細についても、実施の形態1を参照することができる。絶縁層102を形成しない構成とすることも可能であるが、ベース基板100にアルカリ金属やアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むような基板を用いる場合には、このような不純物がベース基板100から半導体層に拡散しないように、絶縁層102を設けることが好ましい。このような用途には、特に、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどが適している。
【0136】
その後、絶縁層102の表面に非単結晶半導体層104を形成する(図7(C)参照)。非単結晶半導体層104の詳細についても実施の形態1を参照することができる。
【0137】
非単結晶半導体層104は、半導体素子の活性層として機能すると共に、接合に係る層(接合を形成する層)としても機能する。非単結晶半導体層104を接合に係る層として機能させるためには、表面の平坦性が十分に高い非単結晶半導体層104を形成する必要がある。この点、CVD法によって形成される非晶質シリコンは、表面の平坦性が高く、接合に係る層として適しているといえる。
【0138】
次に、単結晶半導体基板110を用意する(図7(D)参照)。単結晶半導体基板110を薄片化した単結晶半導体層をベース基板100に貼り合わせることで、半導体基板が作製される。単結晶半導体基板110の詳細については実施の形態1を参照することができる。
【0139】
なお、本実施の形態においては、ベース基板100を処理した後に単結晶半導体基板110を処理する構成としているが、これは説明の便宜のためであり、開示する発明が該順序に限定して解釈されるものではない。すなわち、単結晶半導体基板110を処理した後にベース基板100を処理しても良いし、ベース基板100の処理と単結晶半導体基板110の処理を並列に行う構成としても良い。
【0140】
単結晶半導体基板110を洗浄した後、単結晶半導体基板110表面に、絶縁層112aを形成する(図7(E)参照)。絶縁層112aは単層構造又は2層以上の多層構造とすることができる。その厚さは10nm以上400nm以下とすると良い。
【0141】
絶縁層112aを構成する材料は特に限定されないが、例えば、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化ゲルマニウム、酸化窒化ゲルマニウム、窒化酸化ゲルマニウムなどの、珪素またはゲルマニウムを組成に含む絶縁材料を挙げることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物、酸化窒化アルミニウムなどの金属の酸化窒化物、窒化酸化アルミニウムなどの金属の窒化酸化物を用いてもよい。絶縁層112aの形成方法としては、CVD法、スパッタ法、単結晶半導体基板110の酸化(又は窒化)による方法などが挙げられる。
【0142】
次に、絶縁層112aを介して、電界で加速されたイオンでなるイオンビーム130を単結晶半導体基板110に照射し、単結晶半導体基板110の表面から所定の深さの領域に、損傷領域114を形成する(図7(F)参照)。イオンビーム130の照射前に絶縁層112aを形成することで、イオン照射の際の単結晶半導体基板110の汚染を防止し、また、照射されるイオンの衝撃で単結晶半導体基板110が損傷することを防止できる。損傷領域114が形成される領域の深さは、イオンビーム130の加速エネルギーとイオンビーム130の入射角によって制御することができる。ここで、損傷領域114は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。
【0143】
上述の損傷領域114が形成される深さにより、単結晶半導体基板110から分離される単結晶半導体層の厚さが決定される。損傷領域114が形成される深さは、単結晶半導体基板110の表面から50nm以上500nm以下であり、好ましくは50nm以上200nm以下である。
【0144】
イオンを単結晶半導体基板110に照射する際には、イオン注入装置又はイオンドーピング装置を用いることができる。詳細については、実施の形態1を参照することができる。
【0145】
次に、絶縁層112aを除去し、新たに絶縁層112bを形成する(図7(G))。絶縁層112aを除去するのは、イオン照射の際に絶縁層112aが損傷する可能性が高いためである。新たに形成する絶縁層112bは、絶縁層112aと同様の材料を用いて形成することができる。絶縁層112bは接合に係る層となるから、表面の平坦性が高い絶縁層を形成して絶縁層112bとすることが好ましい。
【0146】
その後、上記の処理が施されたベース基板100の一部の領域に単結晶半導体基板110を貼り合わせる(図7(H)参照)。具体的には、ベース基板100上に形成された非単結晶半導体層104の表面、及び単結晶半導体基板110上に形成された絶縁層112bの表面を超音波洗浄などの方法で洗浄し、その後、非単結晶半導体層104の一部の領域と絶縁層112bを密着させる。これにより、非単結晶半導体層104と絶縁層112bが接合する。なお、接合のメカニズムとしては、ファン・デル・ワールス力が関わるメカニズムや、水素結合が関わるメカニズムなどが考えられる。
【0147】
このように、非単結晶半導体層104を接合に係る層として用いることで、非単結晶半導体層104と絶縁層112bを常温で接合することができる。これにより、ベース基板100として、ガラス基板をはじめとする耐熱性の低い基板を用いることが可能となる。なお、絶縁層112bの接合に係る部分として、有機シランを用いてプラズマCVD法により形成した酸化珪素を用いる場合には、接合をより良好に形成することができるため好ましい。接合の際の処理等については、実施の形態1を参照することができる。
【0148】
次に、単結晶半導体基板110を、単結晶半導体層116と単結晶半導体基板118に分離する(図7(I)参照)。単結晶半導体基板110の分離は、非単結晶半導体層104と絶縁層112bを貼り合わせた後、単結晶半導体基板110を加熱することにより行う。この場合にも、実施の形態1を参照して行うことができる。
【0149】
次に、単結晶半導体層116にレーザー光132を照射する(図8(A)参照)。レーザー光132を単結晶半導体層116の上面側から照射することで、単結晶半導体層116上面を溶融させる。溶融した後、単結晶半導体層116が冷却、固化することで、その上面の平坦性が向上した単結晶半導体層120が得られる(図8(B)参照)。本実施の形態においては、レーザー光132の照射により単結晶半導体層116を溶融させるため、ベース基板100を別途加熱する必要が無く、ベース基板100の温度上昇が抑えられる。このため、ガラス基板のような耐熱性の低い基板をベース基板100に用いることが可能になる。その他の詳細については実施の形態1を参照すればよい。
【0150】
上述のようにレーザー光132を照射した後には、単結晶半導体層120の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。単結晶半導体層120の薄膜化には、ドライエッチングまたはウエットエッチングの一方、または双方を組み合わせたエッチング処理(エッチバック処理)を適用すればよい。以上により、薄い単結晶半導体層122を非単結晶半導体層104の一部の領域上に有する半導体基板142を作製することができる(図8(C)参照)。
【0151】
なお、本実施の形態においては、レーザー光の照射により表面を平坦化等した後でエッチング処理を行う構成を例に挙げているが、開示する発明はこれに限定して解釈されるものではない。例えば、レーザー光の照射前にエッチング処理を行ってもよい。この場合には、エッチング処理により半導体層表面の凹凸や欠陥をある程度低減することができる。また、レーザー光の照射前及び照射後の両方に上記処理を適用しても良い。また、レーザー光の照射と上記処理を交互に繰り返しても良い。このように、レーザー光の照射とエッチング処理(エッチバック処理)を組み合わせて用いることにより、半導体層表面の凹凸、欠陥等を著しく低減することができる。
【0152】
また、レーザー光132を照射した後に、ベース基板100の耐熱温度以下における加熱処理を施しても良い。これにより、レーザー光132の照射による効果が促進され、効率的な欠陥の除去や平坦性の向上が可能になる。もちろん、上述のエッチング処理や加熱処理などを常に用いる必要はない。また、上述のエッチング処理や加熱処理などに加えて、又は代えて、CMPによる平坦化を施すこともできる。
【0153】
本実施の形態は、実施の形態1又は2と適宜組み合わせて用いることができる。
【0154】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体基板の作製方法の別の一例について、図9及び10を参照して説明する。なお、ベース基板100上に絶縁層102及び非単結晶半導体層104を形成するまでの工程は実施の形態1又は3と同様であるため、詳細については省略する(図9(A)、(B)、(C)参照)。
【0155】
次に、単結晶半導体基板110を用意し(図9(D)参照)、単結晶半導体基板110に対してイオンビーム130を照射して、損傷領域114を形成する(図9(E)参照)。損傷領域114が形成される領域の深さは、イオンビーム130の加速エネルギーとイオンビーム130の入射角によって制御することができる。ここで、損傷領域114は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。
【0156】
上述の損傷領域114が形成される深さにより、単結晶半導体基板110から分離される単結晶半導体層の厚さが決定される。損傷領域114が形成される深さは、単結晶半導体基板110の表面から50nm以上500nm以下であり、好ましくは50nm以上200nm以下である。
【0157】
イオンを単結晶半導体基板110に照射する際には、イオン注入装置又はイオンドーピング装置を用いることができる。詳細については、実施の形態1を参照することができる。
【0158】
その後、上記の処理が施されたベース基板100の一部の領域に単結晶半導体基板110を貼り合わせる(図9(F)参照)。具体的には、ベース基板100上に形成された非単結晶半導体層104の表面、及び単結晶半導体基板110の表面を超音波洗浄などの方法で洗浄し、その後、非単結晶半導体層104の一部の領域と単結晶半導体基板110を密着させる。これにより、非単結晶半導体層104と単結晶半導体基板110が接合する。なお、接合のメカニズムとしては、ファン・デル・ワールス力が関わるメカニズムや、水素結合が関わるメカニズムなどが考えられる。
【0159】
このように、非単結晶半導体層104を接合に係る層として用いることで、非単結晶半導体層104と単結晶半導体基板110を常温で接合することができる。これにより、ベース基板100として、ガラス基板をはじめとする耐熱性の低い基板を用いることが可能となる。なお、本実施の形態においては、単結晶半導体基板110上に絶縁層を設けていない。これにより、絶縁層を設ける場合と比較して、半導体基板の作製コストを低減することができる。接合の際の処理等については、実施の形態1を参照すればよい。
【0160】
次に、単結晶半導体基板110を、単結晶半導体層116と単結晶半導体基板118に分離する(図9(G)参照)。単結晶半導体基板110の分離は、非単結晶半導体層104と単結晶半導体基板110を貼り合わせた後、単結晶半導体基板110を加熱することにより行う。この場合にも、実施の形態1を参照して行うことができる。
【0161】
次に、単結晶半導体層116にレーザー光132を照射する(図10(A)参照)。レーザー光132を単結晶半導体層116の上面側から照射することで、単結晶半導体層116上面を溶融させる。溶融した後、単結晶半導体層116が冷却、固化することで、その上面の平坦性が向上した単結晶半導体層120が得られる(図10(B)参照)。本実施の形態においては、レーザー光132を用いているため、ベース基板100を加熱する必要が無く、ベース基板100の温度上昇が抑えられる。このため、ガラス基板のような耐熱性の低い基板をベース基板100に用いることが可能になる。その他の詳細については実施の形態1を参照すればよい。
【0162】
上述のようにレーザー光132を照射した後には、単結晶半導体層120の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。単結晶半導体層120の薄膜化には、ドライエッチングまたはウエットエッチングの一方、または双方を組み合わせたエッチング処理(エッチバック処理)を適用すればよい。以上により、薄い単結晶半導体層122を非単結晶半導体層104の一部の領域上に有する半導体基板144を作製することができる(図10(C)参照)。
【0163】
なお、本実施の形態においては、レーザー光の照射により表面を平坦化等した後でエッチング処理を行う構成を例に挙げているが、開示する発明はこれに限定して解釈されるものではない。例えば、レーザー光の照射前にエッチング処理を行ってもよい。この場合には、エッチング処理により半導体層表面の凹凸や欠陥をある程度低減することができる。また、レーザー光の照射前及び照射後の両方に上記処理を適用しても良い。また、レーザー光の照射と上記処理を交互に繰り返しても良い。このように、レーザー光の照射とエッチング処理(エッチバック処理)を組み合わせて用いることにより、半導体層表面の凹凸、欠陥等を著しく低減することができる。
【0164】
また、レーザー光132を照射した後に、ベース基板100の耐熱温度以下における加熱処理を施しても良い。これにより、レーザー光132の照射による効果が促進され、効率的な欠陥の除去や平坦性の向上が可能になる。もちろん、上述のエッチング処理や加熱処理などを常に用いる必要はない。また、上述のエッチング処理や加熱処理などに加えて、又は代えて、CMPによる平坦化を施すこともできる。
【0165】
本実施の形態は、実施の形態1乃至3と適宜組み合わせて用いることができる。
【0166】
(実施の形態5)
本実施の形態では、開示する発明の半導体装置の製造方法の一例について、図11乃至14を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、半導体装置の一例として液晶表示装置を挙げて説明するが、半導体装置は液晶表示装置に限られるものではない。
【0167】
はじめに、実施の形態1に示す方法などを用いて作製された、非単結晶半導体層及び単結晶半導体層を有する半導体基板を用意する(図11(A)参照)。ここでは、絶縁表面を有する基板1100(ベース基板)の上に絶縁層1101及び非単結晶半導体層1102、を順に設け、また、非単結晶半導体層1102の一部の領域上に絶縁層1103及び単結晶半導体層1104を順に設けた構成を用いて説明するが、開示する発明はこれに限られるものではない。詳細については、実施の形態1を参照することができる。なお、該半導体基板は、実施の形態1における半導体基板140に対応したものである。
【0168】
次に、非単結晶半導体層1102及び単結晶半導体層1104を所望の形状にパターニングして、島状の半導体層を形成する。詳細については実施の形態2等を参照することができる。パターニングの際のエッチング加工としては、ドライエッチング(プラズマエッチング等)、ウエットエッチングのいずれを採用しても良いが、大面積基板を処理するにはプラズマエッチングが適している。エッチングガスとしては、CF、NF、Cl、BCl、などのフッ素系又は塩素系のガスを用い、HeやArなどの不活性ガスを適宜加えても良い。また、大気圧放電のエッチング加工を適用すれば、局所的な放電加工も可能であり、基板の全面にマスク層を形成することなくエッチングを行うことができる。
【0169】
また、テーパー形状となるように島状の半導体層を形成しても良いし、島状の半導体層の端部が丸みを帯びた形状となるように加工しても良い。島状の半導体層がテーパー形状となるように形成されることで、後に形成される絶縁層や導電層の被覆が良好に行われるため、絶縁層や導電層の段切れを防止することができる。また、島状の半導体層の端部が丸みを帯びることにより、電界の集中を緩和して半導体素子に不具合が生じることを防止できる。
【0170】
非単結晶半導体層1102及び単結晶半導体層1104をパターニングした後には、しきい値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物を添加すると良い。例えば、p型不純物として、硼素を5×1016/cm以上1×1018/cm以下の濃度で添加することができる。
【0171】
次に、島状の半導体層を覆うゲート絶縁層1108を形成する(図11(B)参照)。なお、ここでは便宜上、パターニングによって形成された島状の半導体層をそれぞれ半導体層1110、半導体層1112、半導体層1114と呼ぶことにする。ゲート絶縁層1108はプラズマCVD法またはスパッタ法などを用い、厚さを10nm以上150nm以下として珪素を含む絶縁膜で形成する。具体的には、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンに代表される珪素の酸化物材料又は窒化物材料等の材料で形成すればよい。なお、ゲート絶縁層1108は単層構造であっても良いし、積層構造としても良い。さらに、半導体層とゲート絶縁層との間に、膜厚1nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上10nm以下、より好ましくは2nm以上5nm以下の薄い酸化シリコン膜を形成してもよい。なお、低い温度でリーク電流の少ないゲート絶縁膜を形成するために、アルゴンなどの希ガス元素を反応ガスに含ませても良い。
【0172】
次に、ゲート絶縁層1108上にゲート電極層として用いる第1の導電膜と第2の導電膜とを積層して形成する。第1の導電膜の膜厚は20nm以上100nm以下程度、第2の導電膜の膜厚は100nm以上400nm以下程度とすれば良い。また、第1の導電膜と第2の導電膜は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法等の手法により形成することができる。第1の導電膜と第2の導電膜は、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム等から選ばれた元素、又は前記の元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料等を用いて形成すればよい。また、第1の導電膜や第2の導電膜としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜や、AgPdCu合金などを用いてもよい。なお、本実施の形態においては2層の積層構造を用いて説明しているが、開示する発明はこれに限定されない。3層以上の積層構造としても良いし、単層構造であっても良い。
【0173】
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジスト材料からなるマスク1116a、マスク1116b、マスク1116c、マスク1116d、及びマスク1116eを形成する。そして、前記のマスクを用いて第1の導電膜と第2の導電膜を所望の形状に加工し、第1のゲート電極層1118a、第1のゲート電極層1118b、第1のゲート電極層1118c、第1のゲート電極層1118d、第1の導電層1118e、導電層1120a、導電層1120b、導電層1120c、導電層1120d、及び導電層1120eを形成する(図11(C)参照)。
【0174】
ここで、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状となるようにエッチングを行うことができる。また、マスクの形状によって、テーパーの角度等を制御することもできる。なお、エッチング用ガスとしては、Cl、BCl、SiClもしくはCClなどを代表とする塩素系ガス、CF、SFもしくはNFなどを代表とするフッ素系ガス、又はOを適宜用いることができる。本実施の形態では、CF、Cl、Oからなるエッチング用ガスを用いて第2の導電膜のエッチングを行い、連続してCF、Clからなるエッチング用ガスを用いて第1の導電膜をエッチングする。
【0175】
次に、マスク1116a、マスク1116b、マスク1116c、マスク1116d、及びマスク1116eを用いて、導電層1120a、導電層1120b、導電層1120c、導電層1120d、及び導電層1120eを所望の形状に加工する。このとき、導電層を形成する第2の導電膜と、第1のゲート電極層及び第1の導電層を形成する第1の導電膜との選択比が高いエッチング条件でエッチングする。このエッチングによって、第2のゲート電極層1122a、第2のゲート電極層1122b、第2のゲート電極層1122c、第2のゲート電極層1122d、及び第2の導電層1122eを形成する。本実施の形態では、第2のゲート電極層及び第2の導電層もテーパー形状であるが、そのテーパー角は、第1のゲート電極層及び第1の導電層の有するテーパー角より大きい。なお、テーパー角とは対象物の底面と側面とが作る角度を言うものとする。よって、テーパー角が90度の場合、導電層は底面に対して垂直な側面を有することになる。テーパー角を90度未満とすることにより、積層される膜の被覆性が向上するため、欠陥を低減することが可能となる。なお、本実施の形態では、第2のゲート電極層及び第2の導電層を形成するためのエッチング用ガスとしてCl、SF、Oを用いる。
【0176】
以上の工程によって、周辺駆動回路領域1180に、ゲート電極層1124a、ゲート電極層1124b、画素領域1182に、ゲート電極層1124c、ゲート電極層1124d、及び導電層1124eを形成することができる(図11(D)参照)。なお、マスク1116a、マスク1116b、マスク1116c、マスク1116d、及びマスク1116eは、上記工程の後に除去する。
【0177】
次に、ゲート電極層1124a、ゲート電極層1124b、ゲート電極層1124c、ゲート電極層1124dをマスクとして、n型を付与する不純物元素を添加し、第1のn型不純物領域1126a、第1のn型不純物領域1126b、第1のn型不純物領域1128a、第1のn型不純物領域1128b、第1のn型不純物領域1130a、第1のn型不純物領域1130b、第1のn型不純物領域1130cを形成する(図12(A)参照)。本実施の形態では、不純物元素を含むドーピングガスとしてホスフィン(PH)を用いてドーピングを行う。ここでは、第1のn型不純物領域に、n型を付与する不純物元素であるリン(P)が1×1016/cm以上5×1019/cm以下程度の濃度で含まれるようにする。
【0178】
次に、半導体層1110、半導体層1114の一部を覆うマスク1132a、マスク1132b、マスク1132cを形成する。そして、マスク1132a、マスク1132b、マスク1132c、及び第2のゲート電極層1122bをマスクとしてn型を付与する不純物元素を添加する。これにより、第2のn型不純物領域1134a、第2のn型不純物領域1134b、第3のn型不純物領域1136a、第3のn型不純物領域1136b、第2のn型不純物領域1140a、第2のn型不純物領域1140b、第2のn型不純物領域1140c、第3のn型不純物領域1142a、第3のn型不純物領域1142b、第3のn型不純物領域1142c、第3のn型不純物領域1142dが形成される。本実施の形態では、不純物元素を含むドーピングガスとしてホスフィン(PH)を用いてドーピングを行う。ここでは、第2のn型不純物領域にn型を付与する不純物元素であるリン(P)が1×1017/cm以上1×1021/cm以下程度の濃度で含まれるようにする。第3のn型不純物領域1136a、第3のn型不純物領域1136bには、第3のn型不純物領域1142a、第3のn型不純物領域1142b、第3のn型不純物領域1142c、第3のn型不純物領域1142dと同程度、もしくは少し高めの濃度でn型を付与する不純物元素が添加される。また、チャネル形成領域1138、チャネル形成領域1144a及びチャネル形成領域1144bが形成される(図12(B)参照)。
【0179】
第2のn型不純物領域は高濃度不純物領域であり、ソース又はドレインとして機能する。一方、第3のn型不純物領域は低濃度不純物領域であり、いわゆるLDD(Lightly Doped Drain)領域となる。第3のn型不純物領域1136a、第3のn型不純物領域1136bは、第1のゲート電極層1118bと重なる領域に形成されている。これにより、ソース又はドレイン近傍の電界を緩和して、ホットキャリアによるオン電流の劣化を防止することができる。一方、第3のn型不純物領域1142a、第3のn型不純物領域1142b、第3のn型不純物領域1142c、第3のn型不純物領域1142dはゲート電極層1124c、ゲート電極層1124dと重なっておらず、オフ電流を低減する効果がある。
【0180】
次に、マスク1132a、マスク1132b、マスク1132cを除去し、半導体層1112、半導体層1114を覆うマスク1146a、マスク1146bを形成する。そして、マスク1146a、マスク1146b、ゲート電極層1124aをマスクとしてp型を付与する不純物元素を添加する。これにより、第1のp型不純物領域1148a、第1のp型不純物領域1148b、第2のp型不純物領域1150a、第2のp型不純物領域1150bが形成される。本実施の形態では、不純物元素を含むドーピングガスとしてジボラン(B)を用いてドーピングを行う。ここでは、第1のp型不純物領域、及び第2のp型不純物領域にp型を付与する不純物元素である硼素(B)が1×1018/cm以上5×1021/cm以下程度の濃度で含まれるようにする。また、チャネル形成領域1152が形成される(図12(C)参照)。
【0181】
第1のp型不純物領域は高濃度不純物領域であり、ソース又はドレインとして機能する。一方、第2のp型不純物領域は低濃度不純物領域であり、いわゆるLDD(LightlyDoped Drain)領域となる。
【0182】
その後、マスク1146a、マスク1146bを除去する。マスクを除去した後に、ゲート電極層の側面を覆うように絶縁膜を形成してもよい。該絶縁膜は、プラズマCVD法や減圧CVD(LPCVD)法を用いて形成することができる。また、不純物元素を活性化するために、加熱処理、強光の照射、レーザー光の照射等を行ってもよい。
【0183】
次いで、ゲート電極層、及びゲート絶縁層を覆う層間絶縁層を形成する。本実施の形態では、絶縁膜1154と絶縁膜1156の積層構造とする(図13(A)参照)。絶縁膜1154として窒化酸化シリコン膜を膜厚100nmにて形成し、絶縁膜1156として酸化窒化シリコン膜を膜厚900nmにて形成する。本実施の形態においては、2層の積層構造としたが、単層構造でも良く、3層以上の積層構造としても良い。本実施の形態では、絶縁膜1154及び絶縁膜1156を、プラズマCVD法を用いて、大気に晒さずに連続的に形成する。なお、絶縁膜1154及び絶縁膜1156は上記材料に限定されるものではない。
【0184】
絶縁膜1154、絶縁膜1156は、他に、酸化シリコンや窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜その他の無機絶縁性材料を含む物質から選ばれた材料を用いて形成することができる。また、シロキサン樹脂を用いてもよい。なお、シロキサン樹脂とは、Si−O−Si結合を含む樹脂をいう。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、有機基(例えばアルキル基、アリール基)やフルオロ基を用いても良い。有機基は、フルオロ基を有していても良い。また、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、ポリシラザン等の有機絶縁性材料を用いることもできる。
【0185】
次いで、レジスト材料からなるマスクを用いて絶縁膜1154、絶縁膜1156、ゲート絶縁層1108に半導体層及びゲート電極層に達するコンタクトホール(開口部)を形成する。エッチングは、用いる材料の選択比によって、一回で行っても複数回行っても良い。本実施の形態では、酸化窒化シリコン膜である絶縁膜1156と、窒化酸化シリコン膜である絶縁膜1154及びゲート絶縁層1108と選択比が取れる条件で、第1のエッチングを行い、絶縁膜1156を除去する。次に、第2のエッチングによって、絶縁膜1154及びゲート絶縁層1108を除去し、ソース又はドレインに達する開口部を形成する。
【0186】
その後、開口部を覆うように導電膜を形成し、該導電膜をエッチングする。これにより、各ソース領域又はドレイン領域の一部とそれぞれ電気的に接続するソース電極層又はドレイン電極層1158a、ソース電極層又はドレイン電極層1158b、ソース電極層又はドレイン電極層1160a、ソース電極層又はドレイン電極層1160b、ソース電極層又はドレイン電極層1162a、ソース電極層又はドレイン電極層1162bを形成する。ソース電極層又はドレイン電極層には、アルミニウム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ネオジム、クロム、ニッケル、白金、金、銀、銅、マグネシウム、スカンジウム、コバルト、亜鉛、ニオブ、シリコン、リン、硼素、ヒ素、ガリウム、インジウム、錫などから選択された一つ又は複数の元素、または、前記元素を成分として含有する化合物や合金材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛、アルミニウムネオジム(Al−Nd)、マグネシウム銀(Mg−Ag)など)、もしくは、これらの化合物を組み合わせた物質等が用いられる。その他にも、シリサイド(例えば、アルミニウムシリコン、モリブデンシリコン、ニッケルシリサイド)や、窒素を含有する化合物(例えば、窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン)、リン(P)等の不純物元素をドーピングしたシリコン(Si)等を用いることもできる。
【0187】
以上の工程で周辺駆動回路領域1180にpチャネル型薄膜トランジスタ1164及びnチャネル型薄膜トランジスタ1166が、画素領域1182にnチャネル型薄膜トランジスタ1168及び容量配線1170が形成される(図13(B)参照)。
【0188】
次に第2の層間絶縁層として絶縁膜1172を形成する。絶縁膜1172としては酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウム、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、ポリシラザン、その他の無機絶縁性材料を含む物質から選ばれた材料で形成することができる。また、シロキサン樹脂を用いてもよい。ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン等の有機絶縁性材料を用いることもできる。
【0189】
次に、画素領域1182の絶縁膜1172にコンタクトホールを形成し、画素電極層1174を形成する(図13(C)参照)。画素電極層1174は、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウムに酸化亜鉛を混合したIZO(indium zinc oxide)、酸化インジウムに酸化シリコンを混合した導電性材料、有機インジウム、有機スズ、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、又はタングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、コバルト、ニッケル、チタン、白金、アルミニウム、銅、銀等の金属又はその合金、若しくはその金属窒化物を用いて形成することができる。
【0190】
また、画素電極層1174としては導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いることもできる。導電性組成物は、薄膜におけるシート抵抗が10000Ω/sq.以下であることが好ましい。また、光透過性を有する画素電極層として薄膜を形成する場合には、波長550nmにおける透過率が70%以上であることが好ましい。また、含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0191】
上記の導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、又は、これらの共重合体等が挙げられる。
【0192】
共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−オクトキシピロール)、ポリ(3−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロール)、ポリN−メチルピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−オクトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(2−オクチルアニリン)、ポリ(2−イソブチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0193】
上記の導電性高分子を、単独で用いても良いし、膜の特性を調整するために有機樹脂を添加して使用しても良い。
【0194】
さらに、導電性組成物にアクセプタ性のドーパントやドナー性のドーパントをドーピングすることで、共役導電性高分子の共役電子の酸化還元電位を変化させ、電気伝導度を調節してもよい。
【0195】
上述の如き導電性組成物を水または有機溶剤(アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤など)に溶解させて、塗布法、コーティング法、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、印刷法等により画素電極層1174となる薄膜を形成することができる。
【0196】
次に、画素電極層1174及び絶縁膜1172を覆うように、配向膜と呼ばれる絶縁層1402を形成する(図14(B)参照)。絶縁層1402は、スクリーン印刷法やオフセット印刷法を用いて形成することができる。なお、図14は、半導体装置の平面図及び断面図を示しており、図14(A)は半導体装置の平面図、図14(B)は図14(A)のE−Fにおける断面図である。半導体装置には、外部端子接続領域1176、封止領域1178、周辺駆動回路領域1180、画素領域1182が設けられる。
【0197】
絶縁層1402を形成した後、ラビング処理を行う。配向膜として機能する絶縁層1406も、絶縁層1402と同様にして形成することができる。
【0198】
その後、対向基板1400と、絶縁性表面を有する基板1100とを、シール材1414及びスペーサ1416を介して貼り合わせ、その空隙に液晶層1404を設ける。なお、対向基板1400には、配向膜として機能する絶縁層1406、対向電極として機能する導電層1408、カラーフィルターとして機能する着色層1410、偏光子1412(偏光板ともいう)等が設けられている。なお、絶縁性表面を有する基板1100にも偏光子1418(偏光板)を設けるが、開示する発明はこれに限られない。例えば、反射型の液晶表示装置においては、偏光子は、一方に設ければ良い。
【0199】
続いて、画素領域と電気的に接続されている端子電極層1420に、異方性導電体層1422を介して、FPC1424を接続する。FPC1424は、外部からの信号を伝達する役目を担う。上記の工程により、液晶表示装置を作製することができる。
【0200】
本実施の形態においては、実施の形態1に示した方法を用いて作製された半導体基板を用いて液晶表示装置を作製している。このため、非単結晶半導体層を用いて画素領域の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子を形成することができる。これにより、大面積な表示領域と優れた駆動回路を有する液晶表示装置を提供することができる。また、駆動回路一体型とすることにより、表示装置の薄型化、額縁領域の面積縮小などを実現することができる。また、非単結晶半導体層を用いて画素領域を形成することができるため、表示装置の大型化が極めて容易である。また、接合に係る層を別途設ける必要が無いため、表示装置の製造コストを低減することができる。
【0201】
また、実施の形態1に示した半導体基板では、非単結晶半導体層と単結晶半導体層にレーザー光を照射することにより、非単結晶半導体層と単結晶半導体層の特性を一度に向上させることができる。これにより、非単結晶半導体層の微結晶化又は多結晶化の工程と、単結晶半導体層の欠陥低減及び平坦性向上のための工程を一度に行うことができるため、工程数の増加を抑制することができ、半導体基板の製造コストを低減することができる。つまり、高性能な表示装置を、低コストに作製することができる。
【0202】
なお、本実施の形態においては液晶表示装置を作製する方法について説明したが、開示する発明はこれに限られるものではない。本実施の形態は、実施の形態1乃至4と適宜組み合わせて用いることができる。
【0203】
(実施の形態6)
本実施の形態では、開示する発明に係る発光素子を有する半導体装置(エレクトロルミネッセンス表示装置)について説明する。なお、周辺回路領域や画素領域等に用いられるトランジスタの作製方法は、実施の形態5を参照することができるため、詳細については省略する。
【0204】
なお、発光素子を有する半導体装置には、下面放射、上面放射、両面放射のいずれかの方式が用いられる。本実施の形態では、下面放射方式を用いた半導体装置について、図15を用いて説明するが、開示する発明はこれに限られるものではない。
【0205】
図15の半導体装置は、下方(図中の矢印の方向)に光を放射する。ここで、図15(A)は半導体装置の平面図であり、図15(B)は、図15(A)のG−Hにおける断面図である。図15において半導体装置は、外部端子接続領域1530、封止領域1532、駆動回路領域1534、画素領域1536を有している。
【0206】
図15に示す半導体装置は、素子基板1500、薄膜トランジスタ1550、薄膜トランジスタ1552、薄膜トランジスタ1554、薄膜トランジスタ1556、発光素子1560、絶縁層1568、充填材1570、シール材1572、配線層1574、端子電極層1576、異方性導電層1578、FPC1580、封止基板1590などによって構成されている。なお、発光素子1560は、第1の電極層1562と発光層1564と第2の電極層1566とを含む。
【0207】
第1の電極層1562としては、発光層1564より放射する光を透過できるように、光透過性を有する導電性材料を用いる。一方、第2の電極層1566としては、発光層1564より放射する光を反射することができる導電性材料を用いる。
【0208】
第1の電極層1562としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物等を用いることができる。勿論、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物(ITSO)等を用いても良い。
【0209】
また、第1の電極層1562としては、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いることもできる。なお、詳細については実施の形態2を参照することができるため、ここでは省略する。
【0210】
第2の電極層1566としては、チタン、タングステン、ニッケル、金、白金、銀、銅、タンタル、モリブデン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、およびそれらの合金からなる導電膜などを用いることができる。可視光の領域で反射性が高い物質を用いることがよく、本実施の形態では、アルミニウム膜を用いることとする。
【0211】
なお、上面放射、両面放射の各方式を用いる場合には、適宜電極層の設計を変更してやれば良い。具体的には、上面放射の場合には、反射性を有する材料を用いて第1の電極層1562を形成し、光透過性を有する材料を用いて第2の電極層1566を形成する。両面放射の場合には、光透過性を有する材料を用いて第1の電極層1562及び第2の電極層1566を形成すれば良い。なお、下面放射、上面放射においては、光透過性を有する材料を用いて一方の電極層を形成し、光透過性を有する材料と光反射性を有する材料の積層構造により、他方の電極層を形成する構成としても良い。電極層に用いることができる材料は下面放射の場合と同様であるため、ここでは省略する。
【0212】
なお、一般に、光透過性を有さないと考えられる金属のような材料であっても、膜厚を小さく(5nm以上30nm以下程度)することにより、光を透過させることができる。これにより、上述の光反射性材料を用いて、光を透過する電極層を作製することも可能である。
【0213】
また、上面放射や両面放射の場合には、封止基板1590にカラーフィルター(着色層)を形成する構成としてもよい。カラーフィルター(着色層)は、蒸着法や液滴吐出法によって形成することができる。また、色変換層を用いる構成であっても良い。
【0214】
本実施の形態においては、実施の形態1に示した方法を用いて作製された半導体基板を用いてエレクトロルミネッセンス表示装置を作製している。このため、非単結晶半導体層を用いて画素領域の半導体素子を形成し、単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子を形成することができる。これにより、大面積な表示領域と優れた駆動回路を有するエレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。また、駆動回路一体型とすることにより、表示装置の薄型化、額縁領域の面積縮小などを実現することができる。また、非単結晶半導体層を用いて画素領域を形成することができるため、表示装置の大型化が極めて容易である。また、接合に係る層を別途設ける必要が無いため、表示装置の製造コストを低減することができる。
【0215】
また、実施の形態1に示した半導体基板では、非単結晶半導体層と単結晶半導体層にレーザー光を照射することにより、非単結晶半導体層と単結晶半導体層の特性を一度に向上させることができる。これにより、非単結晶半導体層の微結晶化又は多結晶化の工程と、単結晶半導体層の欠陥低減及び平坦性向上のための工程を一度に行うことができるため、工程数の増加を抑制することができ、半導体基板の製造コストを低減することができる。つまり、高性能な表示装置を、低コストに作製することができる。
【0216】
なお、本実施の形態ではエレクトロルミネッセンス表示装置を用いて説明したが、開示する発明はこれに限られるものではない。本実施の形態は、実施の形態1乃至5と適宜組み合わせて用いることができる。
【0217】
(実施の形態7)
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の別の例について、図16及び17を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、マイクロプロセッサ及び電子タグを例に挙げて説明するが、半導体装置はこれらに限られるものではない。
【0218】
図16に、マイクロプロセッサの構成の一例を示す。図16のマイクロプロセッサ1600は、開示する発明の半導体基板を用いて製造されるものである。該マイクロプロセッサ1600は、演算回路1601(Arithmetic logic unit(ALU))、演算回路制御部1602(ALU Controller)、命令解析部1603(Instruction Decoder)、割り込み制御部1604(Interrupt Controller)、タイミング制御部1605(Timing Controller)、レジスタ1606(Register)、レジスタ制御部1607(Register Controller)、バスインターフェース1608(Bus I/F)、ROM1609(Read Only Memory、読み出し専用メモリ)、及びROMインターフェース1610(ROM I/F)を有している。
【0219】
バスインターフェース1608を介してマイクロプロセッサ1600に入力された命令は、命令解析部1603に入力され、デコードされた後、演算回路制御部1602、割り込み制御部1604、レジスタ制御部1607、タイミング制御部1605に入力される。演算回路制御部1602、割り込み制御部1604、レジスタ制御部1607、タイミング制御部1605は、デコードされた命令に基づき各種制御を行う。具体的には、演算回路制御部1602は、演算回路1601の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部1604は、マイクロプロセッサ1600のプログラム実行中に、外部の入出力装置や周辺回路からの割り込み要求を、その優先度等から判断して処理する。レジスタ制御部1607は、レジスタ1606のアドレスを生成し、マイクロプロセッサ1600の状態に応じてレジスタ1606の読み出しや書き込みを行う。タイミング制御部1605は、演算回路1601、演算回路制御部1602、命令解析部1603、割り込み制御部1604、レジスタ制御部1607の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミング制御部1605は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。なお、図16に示すマイクロプロセッサ1600の構成は、あくまで一例であり、その用途によって適宜構成を変更することができる。
【0220】
本実施の形態においては、実施の形態1などに示した半導体基板を用いてマイクロプロセッサを作製している。これにより、高速動作が要求される領域にのみ単結晶半導体層を使用することができる。したがって、半導体装置の製造コストを抑えつつ、高性能な半導体装置を提供することができる。また、マイクロプロセッサを表示装置と一体に形成することも可能である。
【0221】
次に、非接触でデータの送受信を行うことのできる演算機能を備えた半導体装置の一例について図17を参照して説明する。図17は無線通信により外部装置と信号の送受信を行って動作する無線タグの一例である。なお、開示する発明の無線タグは内部に中央処理装置(CPU)を有しており、いわば小型のコンピュータである。無線タグ1700は、アナログ回路部1701とデジタル回路部1702を有している。アナログ回路部1701として、共振容量を有する共振回路1703、整流回路1704、定電圧回路1705、リセット回路1706、発振回路1707、復調回路1708、変調回路1709を有している。デジタル回路部1702は、RFインターフェース1710、制御レジスタ1711、クロックコントローラ1712、CPUインターフェース1713、CPU1714、RAM1715、ROM1716を有している。
【0222】
このような構成の無線タグ1700の動作は以下の通りである。アンテナ1717が外部から信号を受けると、共振回路1703は該信号を元に誘導起電力を発生する。整流回路1704を経た誘導起電力により、容量部1718が充電される。この容量部1718はセラミックコンデンサーや電気二重層コンデンサーなどで形成されていることが好ましい。容量部1718は無線タグ1700と一体にて形成されていても良いし、別の部品として無線タグ1700を構成する絶縁表面を有する基板に取り付けられていても良い。
【0223】
リセット回路1706は、デジタル回路部1702をリセットし初期化する信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇のタイミングから遅れて立ち上がる信号をリセット信号として生成する。発振回路1707は、定電圧回路1705により生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。ローパスフィルタで形成される復調回路1708は、例えば振幅変調(ASK)方式の受信信号の振幅の変動を二値化する。変調回路1709は、振幅変調(ASK)方式の送信信号の振幅を変動させて送信する。変調回路1709は、共振回路1703の共振点を変化させることにより通信信号の振幅を変化させている。クロックコントローラ1712は、電源電圧又はCPU1714における消費電流に応じてクロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成している。電源電圧の監視は電源管理回路1719が行っている。
【0224】
アンテナ1717から無線タグ1700に入力された信号は復調回路1708で復調された後、RFインターフェース1710で制御コマンドやデータなどに分けられる。制御コマンドは制御レジスタ1711に格納される。制御コマンドには、ROM1716に記憶されているデータの読み出し命令、RAM1715へのデータの書き込み命令、CPU1714への演算命令などが含まれている。CPU1714は、CPUインターフェース1713を介してROM1716、RAM1715、制御レジスタ1711にアクセスする。CPUインターフェース1713は、CPU1714が要求するアドレスより、ROM1716、RAM1715、制御レジスタ1711のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
【0225】
CPU1714の演算方式は、ROM1716にOS(オペレーティングシステム)を記憶させておき、起動とともにプログラムを読み出し実行する方式を採用することができる。また、演算回路を構成して、演算処理をハードウェア的に処理する方式を採用することもできる。ハードウェアとソフトウェアを併用する方式では、専用の演算回路で一部の処理を行い、残りの演算を、プログラムを用いてCPU1714が実行する方式を適用することができる。
【0226】
本実施の形態においては、実施の形態1などに示した半導体基板を用いて無線タグを作製している。これにより、高速動作が要求される領域にのみ単結晶半導体層を使用することができる。したがって、半導体装置の製造コストを抑えつつ、高性能な半導体装置を提供することができる。また、無線タグを表示装置と一体に形成することも可能である。
【0227】
なお、本実施の形態は、実施の形態1乃至6と適宜組み合わせて用いることができる。
【0228】
(実施の形態8)
本実施の形態では、開示する発明の半導体装置、特に表示装置を用いた電子機器について、図18及び19を参照して説明する。
【0229】
開示する発明の半導体装置(特に表示装置)を用いて作製される電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。
【0230】
図18(A)はテレビ受像器又はパーソナルコンピュータのモニタである。筺体1801、支持台1802、表示部1803、スピーカー部1804、ビデオ入力端子1805等を含む。表示部1803には、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能なテレビ受像器又はパーソナルコンピュータのモニタを提供することができる。
【0231】
図18(B)はデジタルカメラである。本体1811の正面部分には受像部1813が設けられており、本体1811の上面部分にはシャッターボタン1816が設けられている。また、本体1811の背面部分には、表示部1812、操作キー1814、及び外部接続ポート1815が設けられている。表示部1812には、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能なデジタルカメラを提供することができる。
【0232】
図18(C)はノート型パーソナルコンピュータである。本体1821には、キーボード1824、外部接続ポート1825、ポインティングデバイス1826が設けられている。また、本体1821には、表示部1823を有する筐体1822が取り付けられている。表示部1823には、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能なノート型パーソナルコンピュータを提供することができる。
【0233】
図18(D)はモバイルコンピュータであり、本体1831、表示部1832、スイッチ1833、操作キー1834、赤外線ポート1835等を含む。表示部1832にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部1832には、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能なモバイルコンピュータを提供することができる。
【0234】
図18(E)は画像再生装置である。本体1841には、表示部1844、記録媒体読み込み部1845及び操作キー1846が設けられている。また、本体1841には、スピーカー部1847及び表示部1843それぞれを有する筐体1842が取り付けられている。表示部1843及び表示部1844それぞれには、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能な画像再生装置を提供することができる。
【0235】
図18(F)は電子書籍である。本体1851には操作キー1853が設けられている。また、本体1851には複数の表示部1852が取り付けられている。表示部1852には、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能な電子書籍を提供することができる。
【0236】
図18(G)はビデオカメラであり、本体1861には外部接続ポート1864、リモコン受信部1865、受像部1866、バッテリー1867、音声入力部1868、操作キー1869が設けられている、また、本体1861には、表示部1862を有する筐体1863が取り付けられている。表示部1862には、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能なビデオカメラを提供することができる。
【0237】
図18(H)は携帯電話であり、本体1871、筐体1872、表示部1873、音声入力部1874、音声出力部1875、操作キー1876、外部接続ポート1877、アンテナ1878等を含む。表示部1873には、開示する発明の半導体装置が用いられている。開示する発明により、安価で高性能な携帯電話を提供することができる。
【0238】
図19は、電話としての機能と、情報端末としての機能を併せ持った携帯電子機器1900の構成の一例である。ここで、図19(A)は正面図、図19(B)は背面図、図19(C)は展開図である。携帯電子機器1900は、電話と情報端末の双方の機能を備えており、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な、いわゆるスマートフォンと呼ばれる電子機器である。
【0239】
携帯電子機器1900は、筐体1901及び筐体1902で構成されている。筐体1901は、表示部1911、スピーカー1912、マイクロフォン1913、操作キー1914、ポインティングデバイス1915、カメラ用レンズ1916、外部接続端子1917等を備え、筐体1902は、キーボード1921、外部メモリスロット1922、カメラ用レンズ1923、ライト1924、イヤフォン端子1925等を備えている。また、アンテナは筐体1901内部に内蔵されている。上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
【0240】
表示部1911には、開示する発明の半導体装置が組み込まれている。なお、表示部1911に表示される映像(及びその表示方向)は、携帯電子機器1900の使用形態に応じて様々に変化する。また、表示部1911と同一面にカメラ用レンズ1916を備えているため、映像を伴う音声通話(いわゆるテレビ電話)が可能である。なお、スピーカー1912及びマイクロフォン1913は音声通話に限らず、録音、再生等に用いることが可能である。カメラ用レンズ1923(及び、ライト1924)を用いて静止画及び動画の撮影を行う場合には、表示部1911はファインダーとして用いられることになる。操作キー1914は、電話の発信・着信、電子メール等の簡単な情報入力、画面のスクロール、カーソル移動等に用いられる。
【0241】
重なり合った筐体1901と筐体1902(図19(A))は、スライドし、図19(C)のように展開し、情報端末として使用できる。この場合には、キーボード1921、ポインティングデバイス1915を用いた円滑な操作が可能である。外部接続端子1917はACアダプタやUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電やコンピュータ等とのデータ通信を可能にしている。また、外部メモリスロット1922に記録媒体を挿入し、より大容量のデータの保存及び移動に対応できる。上記機能に加えて、赤外線などの電磁波を用いた無線通信機能や、テレビ受信機能等を有していても良い。開示する発明により、安価で高性能な携帯電子機器を提供することができる。
【0242】
以上の様に、開示する発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。なお、本実施の形態は、実施の形態1乃至7と適宜組み合わせて用いることができる。
【0243】
(実施の形態9)
本実施の形態では、開示する発明の半導体装置、特に無線タグの用途について、図20を参照して説明する。
【0244】
開示する発明により無線タグとして機能する半導体装置を形成することができる。無線タグの用途は多岐にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図20(A)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図20(C)参照)、記録媒体(DVDソフトやビデオテープ等、図20(B)参照)、乗物類(自転車等、図20(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、植物類、衣類、生活用品類、電子機器等の商品や荷物の荷札(図20(E)、(F)参照)等の物品に設けて使用することができる。なお、図20において、無線タグは2000で示すものである。
【0245】
なお、電子機器とは、例えば、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(単にテレビ、テレビ受像機、テレビジョン受像機とも呼ぶ)、携帯電話の他、実施の形態5にて示した物品等を指す。また、上記半導体装置を、動物類、人体等に用いることができる。
【0246】
無線タグは、物品の表面に貼ったり、物品に埋め込んだりして、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込み、有機樹脂からなる包装用容器等であれば当該有機樹脂に埋め込むとよい。紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類等に無線タグを設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に無線タグを設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。開示する発明により作製することが可能な無線タグは、安価ながらも高い信頼性を有しており、さまざまな物品に対して適用することができる。
【0247】
開示する発明により形成することが可能な無線タグを、物の管理や流通のシステムに応用することで、システムの高機能化を図ることができる。例えば、荷札に設けられる無線タグに記録された情報を、ベルトコンベアの脇に設けられたリーダライタで読み取ることで、流通過程及び配達先等の情報が読み出され、商品の検品や荷物の分配を容易に行うことができる。また、無線タグを表示装置と一体に設けることで、視覚による認識を可能にしても良い。
【0248】
以上の様に、開示する発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる物品に対して用いることが可能である。なお、本実施の形態は、実施の形態1乃至8と適宜組み合わせて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】半導体基板の作製方法について示す図である。
【図2】半導体基板の作製方法について示す図である。
【図3】水素イオン種のエネルギーダイアグラムについて示す図である。
【図4】半導体装置の作製工程を示す断面図である。
【図5】半導体装置の作製工程を示す断面図である。
【図6】半導体装置の平面図及び断面図である。
【図7】半導体基板の作製方法について示す図である。
【図8】半導体基板の作製方法について示す図である。
【図9】半導体基板の作製方法について示す図である。
【図10】半導体基板の作製方法について示す図である。
【図11】半導体装置の作製工程を示す断面図である。
【図12】半導体装置の作製工程を示す断面図である。
【図13】半導体装置の作製工程を示す断面図である。
【図14】半導体装置の平面図及び断面図である。
【図15】半導体装置の平面図及び断面図である。
【図16】半導体装置の構成を示す図である。
【図17】半導体装置の構成を示す図である。
【図18】半導体装置を用いた電子機器を示す図である。
【図19】半導体装置を用いた電子機器を示す図である。
【図20】半導体装置の用途を示す図である。
【図21】従来の半導体装置を示す図である。
【図22】イオンの質量分析結果を示す図である。
【図23】イオンの質量分析結果を示す図である。
【図24】加速電圧を80kVとした場合の水素元素の深さ方向のプロファイル(実測値及び計算値)を示す図である。
【図25】加速電圧を80kVとした場合の水素元素の深さ方向のプロファイル(実測値、計算値、及びフィッティング関数)を示す図である。
【図26】加速電圧を60kVとした場合の水素元素の深さ方向のプロファイル(実測値、計算値、及びフィッティング関数)を示す図である。
【図27】加速電圧を40kVとした場合の水素元素の深さ方向のプロファイル(実測値、計算値、及びフィッティング関数)を示す図である。
【図28】フィッティングパラメータの比(水素元素比及び水素イオン種比)をまとめた図である。
【符号の説明】
【0250】
100 ベース基板
102 絶縁層
104 非単結晶半導体層
110 単結晶半導体基板
112 絶縁層
112a 絶縁層
112b 絶縁層
114 損傷領域
116 単結晶半導体層
118 単結晶半導体基板
120 単結晶半導体層
122 単結晶半導体層
130 イオンビーム
132 レーザー光
140 半導体基板
142 半導体基板
144 半導体基板
402 単結晶半導体層
404 非単結晶半導体層
406 ゲート絶縁層
408 電極
410 電極
412 不純物領域
414 不純物領域
416 サイドウォール
418 サイドウォール
420 高濃度不純物領域
422 低濃度不純物領域
424 チャネル形成領域
426 高濃度不純物領域
428 低濃度不純物領域
430 チャネル形成領域
432 絶縁層
434 絶縁層
436 導電層
438 導電層
450 nチャネル型トランジスタ
452 nチャネル型トランジスタ
1100 基板
1101 絶縁層
1102 非単結晶半導体層
1103 絶縁層
1104 単結晶半導体層
1108 ゲート絶縁層
1110 半導体層
1112 半導体層
1114 半導体層
1116a マスク
1116b マスク
1116c マスク
1116d マスク
1116e マスク
1118a ゲート電極層
1118b ゲート電極層
1118c ゲート電極層
1118d ゲート電極層
1118e 導電層
1120a 導電層
1120b 導電層
1120c 導電層
1120d 導電層
1120e 導電層
1122a ゲート電極層
1122b ゲート電極層
1122c ゲート電極層
1122d ゲート電極層
1122e 導電層
1124a ゲート電極層
1124b ゲート電極層
1124c ゲート電極層
1124d ゲート電極層
1124e 導電層
1126a n型不純物領域
1126b n型不純物領域
1128a n型不純物領域
1128b n型不純物領域
1130a n型不純物領域
1130b n型不純物領域
1130c n型不純物領域
1132a マスク
1132b マスク
1132c マスク
1134a n型不純物領域
1134b n型不純物領域
1136a n型不純物領域
1136b n型不純物領域
1138 チャネル形成領域
1140a n型不純物領域
1140b n型不純物領域
1140c n型不純物領域
1142a n型不純物領域
1142b n型不純物領域
1142c n型不純物領域
1142d n型不純物領域
1144a チャネル形成領域
1144b チャネル形成領域
1146a マスク
1146b マスク
1148a p型不純物領域
1148b p型不純物領域
1150a p型不純物領域
1150b p型不純物領域
1152 チャネル形成領域
1154 絶縁膜
1156 絶縁膜
1158a ドレイン電極層
1158b ドレイン電極層
1160a ドレイン電極層
1160b ドレイン電極層
1162a ドレイン電極層
1162b ドレイン電極層
1164 pチャネル型薄膜トランジスタ
1166 nチャネル型薄膜トランジスタ
1168 nチャネル型薄膜トランジスタ
1170 容量配線
1172 絶縁膜
1174 画素電極層
1176 外部端子接続領域
1178 封止領域
1180 周辺駆動回路領域
1182 画素領域
1400 対向基板
1402 絶縁層
1404 液晶層
1406 絶縁層
1408 導電層
1410 着色層
1412 偏光子
1414 シール材
1416 スペーサ
1418 偏光子
1420 端子電極層
1422 異方性導電体層
1424 FPC
1500 素子基板
1530 外部端子接続領域
1532 封止領域
1534 駆動回路領域
1536 画素領域
1550 薄膜トランジスタ
1552 薄膜トランジスタ
1554 薄膜トランジスタ
1556 薄膜トランジスタ
1560 発光素子
1562 電極層
1564 発光層
1566 電極層
1568 絶縁層
1570 充填材
1572 シール材
1574 配線層
1576 端子電極層
1578 異方性導電層
1580 FPC
1590 封止基板
1600 マイクロプロセッサ
1601 演算回路
1602 演算回路制御部
1603 命令解析部
1604 制御部
1605 タイミング制御部
1606 レジスタ
1607 レジスタ制御部
1608 バスインターフェース
1609 ROM
1610 ROMインターフェース
1700 無線タグ
1701 アナログ回路部
1702 デジタル回路部
1703 共振回路
1704 整流回路
1705 定電圧回路
1706 リセット回路
1707 発振回路
1708 復調回路
1709 変調回路
1710 RFインターフェース
1711 制御レジスタ
1712 クロックコントローラ
1713 CPUインターフェース
1714 CPU
1715 RAM
1716 ROM
1717 アンテナ
1718 容量部
1719 電源管理回路
1801 筺体
1802 支持台
1803 表示部
1804 スピーカー部
1805 ビデオ入力端子
1811 本体
1812 表示部
1813 受像部
1814 操作キー
1815 外部接続ポート
1816 シャッターボタン
1821 本体
1822 筐体
1823 表示部
1824 キーボード
1825 外部接続ポート
1826 ポインティングデバイス
1831 本体
1832 表示部
1833 スイッチ
1834 操作キー
1835 赤外線ポート
1841 本体
1842 筐体
1843 表示部
1844 表示部
1845 記録媒体読み込み部
1846 操作キー
1847 スピーカー部
1851 本体
1852 表示部
1853 操作キー
1861 本体
1862 表示部
1863 筐体
1864 外部接続ポート
1865 リモコン受信部
1866 受像部
1867 バッテリー
1868 音声入力部
1869 操作キー
1871 本体
1872 筐体
1873 表示部
1874 音声入力部
1875 音声出力部
1876 操作キー
1877 外部接続ポート
1878 アンテナ
1900 携帯電子機器
1901 筐体
1902 筐体
1911 表示部
1912 スピーカー
1913 マイクロフォン
1914 操作キー
1915 ポインティングデバイス
1916 カメラ用レンズ
1917 外部接続端子
1921 キーボード
1922 外部メモリスロット
1923 カメラ用レンズ
1924 ライト
1925 イヤフォン端子
2100 基板
2101 画素領域
2102 画素
2103 走査線側入力端子
2104 信号線側入力端子
2150 FPC
2151 IC
2160 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、
単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、
前記非単結晶半導体層と前記単結晶半導体基板を貼り合わせ、
前記単結晶半導体基板を前記損傷領域にて分離させることにより、前記非単結晶半導体層の一部の領域上に単結晶半導体層を形成し、
前記非単結晶半導体層の前記一部の領域以外の領域を用いて画素領域の半導体素子を形成し、
前記単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
基板上に第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層上に非単結晶半導体層を形成し、
単結晶半導体基板の表面に第2の絶縁層を形成し、
前記単結晶半導体基板にイオンを照射することにより、単結晶半導体基板に損傷領域を形成し、
前記非単結晶半導体層と前記第2の絶縁層を貼り合わせ、
前記単結晶半導体基板を前記損傷領域にて分離させることにより、前記非単結晶半導体層の一部の領域上に単結晶半導体層を形成し、
前記非単結晶半導体層の前記一部の領域以外の領域を用いて画素領域の半導体素子を形成し、
前記単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記画素領域の半導体素子を形成する前、且つ、前記駆動回路領域の半導体素子を形成する前に、
前記非単結晶半導体層、及び、前記単結晶半導体層に対してレーザー光を照射することにより、前記非単結晶半導体層を微結晶半導体、又は、多結晶半導体に変化させると共に、前記単結晶半導体層の表面の平坦性を向上させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
基板上の絶縁層と、
前記絶縁層上の第1の非単結晶半導体層と、
前記絶縁層上の第2の非単結晶半導体層と、
前記第2の非単結晶半導体層上の単結晶半導体層を有し、
前記第1の非単結晶半導体層を用いて画素領域の半導体素子が形成されており、
前記単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
基板上の第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上の第1の非単結晶半導体層と、
前記第1の絶縁層上の第2の非単結晶半導体層と、
前記第2の非単結晶半導体層上の第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上の単結晶半導体層を有し、
前記第1の非単結晶半導体層を用いて画素領域の半導体素子が形成されており、
前記単結晶半導体層を用いて駆動回路領域の半導体素子が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の半導体装置を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−152565(P2009−152565A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293169(P2008−293169)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】