説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ゲート絶縁膜とゲート電極を工夫することにより、ゲート空乏化を抑制しつつ実効仕事関数を制御することを可能とする。
【解決手段】P型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第1トランジスタ2と、N型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第2トランジスタ3とを有し、前記第1トランジスタ2のゲート絶縁膜21と前記第2トランジスタ3のゲート絶縁膜21は、前記ゲート電極側に金属不純物22が存在していて、前記第1トランジスタ2のゲート電極23NがN型のポリシリコンである、もしくは前記第2トランジスタ3のゲート電極23PがP型のポリシリコンである、もしくは前記第1トランジスタ2のゲート電極23NがP型のポリシリコンであり前記第2トランジスタ3のゲート電極23PがP型のポリシリコンであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のCMOSにおいて、酸化シリコン膜よりも高い値の誘電率を持つ、いわゆる高誘電率(high-k)膜がゲート絶縁膜に使われ始めている。これは、技術導入の容易な低リーク電流の製品に使われ始めている(例えば、非特許文献1、2参照。)。また、ゲート絶縁膜にHfSiONを使うことによって仕事関数を制御することが報告されている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0003】
しかしながら、仕事関数を適当な量(0.1V〜0.3V)だけ変化させるためのHf量は、例えば1E13/cm2〜5E14/cm2と、非常に少ないことから、図7に示すように、従来のゲート電極123側のゲート絶縁膜121上にハフニウム(Hf)122を存在させるハフニウム(Hf)処理(例えば、特許文献1、2参照。)が施されている。このときのPFETのゲート電極123はP型不純物がドーピングされており、NFETのゲート電極123はN型不純物がドーピングされている。
【0004】
ハフニウム(Hf)などの金属不純物をゲート絶縁膜上に導入して、ゲート電極の仕事関数を変化させるメカニズムはまだ明らかになっていないが、いわゆるフェルミレベルピニング現象(例えば、非特許文献4参照。)、もしくは酸化ハフニウム膜の酸素欠陥に起因したダイポール分極(例えば、非特許文献5参照。)などによって説明されようと試みられている。この現象はハフニウム(Hf)のみならずアルミニウム(Al)でも報告(例えば、非特許文献4参照。)されており、多種多様な金属不純物によりMOSFETのしきい値電圧の制御が提案されている。
【0005】
非常に少ない量のハフニウム(Hf)を導入する目的は、低リークを達成できる高い閾値電圧を、低い不純物密度で達成することである。これにより、イオン化不純物散乱による移動度劣化を抑制し、電界緩和することによってGIDL(Gate Induced Drain Leakage)を抑制させる。
【0006】
また、P型のFET(以下、PFETという)のゲート電極にフェルミレベルピニングが起こらないようにする技術として、シリコン(Si)を減らした白金(Pt)リッチシリサイドとホウ素(B)のドーピングの組み合わせる技術(例えば、特許文献3参照。)、N型のFET(以下、NFETという)にニッケル(Ni)シリサイドとPFETに白金(Pt)シリサイドの組み合わせる技術(例えば、特許文献4参照。)、PFETの高誘電率(high-k)膜を薄膜化することで、しきい値変化量の抑制する技術(例えば、特許文献5参照。)などが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006-93670号公報、
【特許文献2】特開2006-332179号公報、
【特許文献3】特開2006-344713号公報
【特許文献4】特開2006-80133号公報
【特許文献5】特開2006-327902号公報
【非特許文献1】“55ナノメートルノードのCMOSロジックプロセス技術を実用レベルとして世界で初めて開発”[online]、平成17年12月5日、NEC Electronics、[平成19年8月27日検索]、インターネット<URL:{ HYPERLINK "http://www.necel.com/news/ja/archive/0512/0501.html" ,http://www.necel.com/news/ja/archive/0512/0501.html}>
【非特許文献2】“消費電力を大幅に低減した55ナノメートルノードのセルベースICの受注開始について”[online]、平成19年1月17日、NEC Electronics、[平成19年8月27日検索]、インターネット<{ HYPERLINK "http://www.necel.com/news/ja/archive/0701/1801.html" ,http://www.necel.com/news/ja/archive/0701/1801.html}>
【非特許文献3】H. Nakamura, et al, “55nm CMOS Technology for Low Standby Power/Generic Applications Deploying the Combination of Gate Work Function Control by HfSiON and Stresinduced Mobility Enhancement”, 2006 Symp. of VLSI Tech.
【非特許文献4】C.Hobbs, et al, “Fermi Level Pinning at the PolySi/Metal Oxide Interface”, 2003 Symp. of VLSI Tech.
【非特許文献5】K. Shiraishi, et al. “Physics in Fermi Level Pinning at the PolySi/Hf-based High-k Oxide Interface”, 2004 Symp. of VLSI Tech. p.108
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、従来のCMOS製造技術にハフニウム(Hf)など金属不純物を使ったしきい値制御を適用することができるが、一方、従来のCMOS製造技術がPFETにホウ素(B)を含んだP+型ポリシリコン電極を用いるため、従来のCMOS製造技術の課題であるゲート空乏化の問題をそのまま引き継いでしまう点である。
【0009】
本発明は、ゲート絶縁膜とゲート電極を工夫することにより、ゲート空乏化を抑制しつつ実効仕事関数を制御することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、第1導電型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第1トランジスタと、前記第1導電型とは逆の第2導電型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第2トランジスタとを有し、前記第1トランジスタのゲート絶縁膜と前記第2トランジスタのゲート絶縁膜は、前記ゲート電極側に金属不純物が存在していて、前記第1トランジスタのゲート電極が第2導電型のポリシリコンである、もしくは前記第2トランジスタのゲート電極が第1導電型のポリシリコンである、もしくは前記第1トランジスタのゲート電極が第2導電型のポリシリコンであり前記第2トランジスタのゲート電極が第1導電型のポリシリコンであることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置では、第1導電型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタに第1導電型とは逆の第2導電型のポリシリコンからなるゲート電極を有し、第2導電型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタに第1導電型のポリシリコンからなるゲート電極を有することから、ゲート空乏層が生じず、より高いゲート容量が得られる。ここでいう、より高いゲート容量とは、必要以上にゲート容量を大きくして、寄生容量を増やすという意味ではない。本来微細化によって得られるべき、ゲート空乏化によって損なわれていたゲート容量を得るという意味である。また、ゲート絶縁膜のゲート電極側に金属不純物が存在していることから、実効仕事関数を例えば0.1V〜0.3V程度変化させることができる。また高い閾値電圧が達成されるので、イオン化不純物散乱による移動度劣化を抑制し、電界緩和することによってGIDL(Gate Induced Drain Leakage)を抑制できる。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法は、P型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第1トランジスタと、N型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第2トランジスタとを形成する半導体装置の製造方法であって、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に金属不純物を堆積する工程と、前記金属不純物が堆積された前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極に両側の前記半導体基板にソース・ドレイン領域を形成する工程を有し、前記第1トランジスタのゲート電極にN型の不純物を導入する工程と、前記第2トランジスタのゲート電極にP型の不純物を導入する工程のいずれか一方の工程、もしくは両方に工程を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法では、P型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第1トランジスタのゲート電極にN型の不純物を導入し、N型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第2トランジスタのゲート電極にP型の不純物を導入することから、ゲート空乏層が生じず、より高いゲート容量が得られる。また、ゲート絶縁膜のゲート電極側に金属不純物が存在していることから、実効仕事関数を例えば0.1V〜0.3V程度変化させることができる。また高い閾値電圧が達成されるので、イオン化不純物散乱による移動度劣化を抑制し、電界緩和することによってGIDL(Gate Induced Drain Leakage)を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体装置は、ゲート空乏化を抑制しつつ実効仕事関数を制御することができるので、リークの低減、移動度の向上が図れるという利点がある。
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法は、ゲート空乏化を抑制しつつ実効仕事関数を制御することができる構成を形成することができるので、半導体装置のリークの低減、移動度の向上が図れるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の半導体装置に係る一実施例を、図1の模式的に示した概略構成断面図によって説明する。
【0017】
図1に示すように、半導体基板11には、素子が形成される活性領域となる素子形成領域12、13を分離するための素子分離領域14が形成されている。この素子分離領域14は、例えば、半導体基板11に形成した素子分離溝(トレンチ領域)15に酸化シリコンを埋め込むことで形成されている。この素子分離溝15は、上記半導体基板11に、例えば350nm〜400nmの深さに形成されている。
また半導体基板11上において、上記素子分離領域14は平坦化されている。
このように、上記素子分離領域14によって分離された活性領域である素子形成領域12、13が形成されている。
以下、素子形成領域12に第1導電型(例えばP型)の電界効果トランジスタ(以下、PFET2という)が形成され、素子形成領域13に第1導電型とは逆の第2導電型(例えばN型)の電界効果トランジスタ(以下、NFET3という)が形成された半導体装置1を説明する。
【0018】
上記素子形成領域12、13表面には、ゲート絶縁膜21が形成されている。このゲート絶縁膜21は、例えば、酸化シリコン膜で形成されている。
このゲート絶縁膜21上には、金属不純物22が存在している。この金属不純物22には、例えばハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、プラセオジム、イットリウム、チタン、タンタル、タングステンのいずれかを用いることができきる。
上記金属不純物22は、例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)法、原子層蒸着(ALD)法、もしくはPVD法等の成膜方法を用いて、上記ゲート絶縁膜21上に直接に形成したものであってもよい。もしくは、ゲート電極を形成した後に、上記金属不純物22をイオンインプランテーション(Ion implantation)で導入したものであってもよい。例えば、ALD法を用いた場合、上記ゲート絶縁膜21上に数原子層に堆積したハフニウム原子もしくはアルミニウム原子で上記金属不純物22が形成されている。
【0019】
表面に上記金属不純物22が存在する上記ゲート絶縁膜21上には、ゲート電極23(23N、23P)が形成されている。このゲート電極23(23N、23P)は、例えばNFETのゲート電極23PにP型の不純物(例えばホウ素(B))、PFETのゲート電極23NにN型の不純物(例えばリン(P))のいずれか、もしくは両方が用いられているものである。上記導入条件は、上記不純物がゲート絶縁膜21に到達しない程度である。
【0020】
上記ゲート電極23Nの側壁には、オフセットスペーサ24が形成され、上記ゲート電極23Pの側壁には、オフセットスペーサ25が形成されている。このオフセットスペーサ24、25は、例えば5nm〜15nm程度の厚さの窒化シリコン(Si34)膜で形成されている。
【0021】
上記ゲート電極23Nの両側の各オフセットスペーサ24下部におけるPFETの素子形成領域12には、P型のLDD(Lightly Doped Drain)領域26、27が形成されている。
また上記ゲート電極23Pの両側の各オフセットスペーサ25下部におけるPFETの素子形成領域13には、N型のLDD(Lightly Doped Drain)領域28、29が形成されている。
【0022】
また、短チャネル効果を抑制するために、上記LDDの形成と同時に、いわゆるハロ(halo)(図示せず)が形成されていてもよい。
【0023】
上記ゲート電極23Nの側壁には、上記オフセットスペーサ24を介してサイドウォール31が形成されている。また上記ゲート電極23Pの側壁には、上記オフセットスペーサ25を介してサイドウォール32が形成されている。上記サイドウォール31、32は、例えば50nm〜70nmの厚さの窒化シリコン(Si34)で形成されている。
【0024】
さらに、上記ゲート電極23Nの一方側における素子形成領域12には、上記P型のLDD領域26を介してP型のソース・ドレイン領域33が形成されていて、上記ゲート電極23Nの他方側の素子形成領域12には、上記P型のLDD領域27を介してP型のソース・ドレイン領域34が形成されている。
また、上記ゲート電極23Pの一方側の素子形成領域13には、上記N型のLDD領域28を介してN型のソース・ドレイン領域35が形成されていて、上記ゲート電極23Pの他方側の素子形成領域13には、上記N型のLDD領域29を介してP型のソース・ドレイン領域36が形成されている。
【0025】
上記ゲート電極23N上、ソース・ドレイン領域33、35上、ゲート電極23P上、ソース・ドレイン領域35、36上には、低抵抗なシリサイド層37、38、39、40、41、42が形成されている。上記シリサイド層37〜42は、例えばコバルトシリサイド(CoSi2)で形成され、または、ニッケルシリサイド(NiSi)で形成されている。
【0026】
また、上記構成において、不必要に上昇したしきい値電圧は、逆極性の不純物を用いるカウンタードーピングを行うことで、しきい値電圧を調整、例えば下げることができる。
または、既知の技術(例えば、Y. Nishida, et al. “Performance Enhancement in 45-nm Ni Fully-Silicided Gate/High-k CMIS using Substrate Ionimplantation”, 2007 Symp. of VLSI Tech.参照)である窒素(N)もしくはフッ素(F)を導入することで、しきい値電圧Vthを調整することもできる。例えば、PFETの第1トランジスタ2のチャネル領域にフッ素を導入する。また、NFETの第2トランジスタ3のチャネル領域に窒素を導入する。上記構成では、ゲート電極の実効仕事関数がバンド端から離れているような高誘電率(high-k)膜をゲート絶縁膜に用いた技術において、Vthを下げる量を減らすことができことが、より容易になっている。
【0027】
上記構成の半導体装置1では、PFETの第1トランジスタ2がN型のポリシリコンからなるゲート電極23Nを有し、NFETの第2トランジスタ3がP型のポリシリコンからなるゲート電極23Pを有することから、ゲート空乏層が生じず、より高いゲート容量が得られる。ここでいう、より高いゲート容量とは、必要以上にゲート容量を大きくして、寄生容量を増やすという意味ではない。本来微細化によって得られるべき、ゲート空乏化によって損なわれていたゲート容量を得るという意味である。
また、ゲート絶縁膜22のゲート電極23側にハフニウムやアルミニウム等の金属不純物22が存在していることから、実効仕事関数を例えば0.1V〜0.3V程度変化させることができる。
また高い閾値電圧が達成されるので、イオン化不純物散乱による移動度劣化を抑制し、電界緩和することによってGIDL(Gate Induced Drain Leakage)を抑制できる。
【0028】
よって、ゲート空乏化を抑制しつつ実効仕事関数を制御することができるので、リークの低減、移動度の向上が図れるという利点がある。
【0029】
次に、本発明の半導体装置の製造方法に係る一実施例を、図2〜図6の製造工程断面図によって説明する。
【0030】
図2に示すように、半導体基板11に活性領域となる素子形成領域12、13を分離するための素子分離領域14を形成する。この素子分離領域14の形成方法は、通常の素子分離技術を用いることができる。例えば、上記半導体基板11にはシリコン基板を用いる。この半導体基板11上に酸化膜71として酸化シリコン膜を形成した後、ハードマスク層72として窒化シリコン膜を形成する。
【0031】
上記素子形成領域12、13上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをエッチングマスクにして、ハードマスク層72、酸化膜71、半導体基板11を順次エッチングし、素子分離溝(トレンチ領域)15を形成する。
このとき、半導体基板11は、例えば350nm〜400nmの深さにエッチングされる。ハードマスク層72で被覆されている半導体基板11の領域は活性領域となり、素子分離溝15は素子分離領域14が形成される領域となる。
その後、素子分離溝15を酸化シリコン73で埋め込む。例えば、高密度プラズマCVDによって酸化シリコン73の埋め込みを行うことによって、段差被覆性が良好で緻密な膜を形成することが可能となる。
【0032】
続いて、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polish)によって、半導体基板11上の余剰な酸化シリコン73を研磨して平坦化を行う。ハードマスク層72が形成されている領域ではハードマスク層72上の酸化シリコン73が除去できる程度まで研磨を行う。図2では、この研磨後の状態を示した。
【0033】
次に、図3に示すように、上記ハードマスク層72(前記図2参照)を除去する。このハードマスク層72の除去は、ハードマスク層72が窒化シリコンで形成されていることから、例えば熱燐酸によるウエットエッチングにより除去する。
そして、上記素子分離溝15を酸化シリコン73で埋め込んだ素子分離領域14が形成され、活性領域である素子形成領域12、13がこの素子分離領域14によって分離される。
また、洗浄工程によって、上記酸化膜71(前記図2参照)を除去する。
【0034】
続いて、上記素子形成領域12、13表面に、犠牲酸化膜75を形成する。この犠牲酸化膜75は例えば10nmの厚さの酸化シリコン膜で形成する。
【0035】
次に、PFETを形成する素子形成領域12にNウエル領域16を形成し、FETのパンチスルー阻止を目的とした埋め込み層(図示せず)を形成するためのイオン注入、Vth調整のためのイオン注入を行って、Nウエル領域16の上部にPFETのチャネル領域(図示せず)を形成する。例えば、Vth調整のためのイオン注入ではフッ素を導入する。
また、NFETを形成する素子形成領域13にPウエル領域17を形成し、FETのパンチスルー阻止を目的とした埋め込み層(図示せず)を形成するためのイオン注入、Vth調整のためのイオン注入を行って、Pウエル領域17の上部にNFETのチャネル領域(図示せず)を形成する。例えば、Vth調整のためのイオン注入では窒素を導入する。
その後、上記犠牲酸化膜75を除去する。この犠牲酸化膜75の除去は、例えばフッ酸溶液によるウエットエッチングにて行う。図3では、犠牲酸化膜75を除去する前の状態を示した。
【0036】
次に、図4に示すように、半導体基板11の素子形成領域12、13の表面に、ゲート絶縁膜21を形成する。このゲート絶縁膜21は、例えば、ドライ酸化(O2700℃の酸化雰囲気)により、例えば1.5nm〜2.0nm程度の厚さに酸化シリコン膜を成長させて形成される。上記酸化に用いる酸化ガスには、例えばドライ酸素(O2)の他に、水素(H2)と酸素(O2)を混合したガスを用いてもよく、一酸化二窒素(N2O)や酸化窒素(NO)を混合したガスを用いてもよい。またファーネスアニールの他にRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いることも可能である。またプラズマ窒化技術によって、酸化膜中に窒素のドーピングを行うことも可能である。
【0037】
その後、上記ゲート絶縁膜21上、もしくはゲート電極側のゲート絶縁膜21界面もしくはその近傍に、金属不純物22を存在させる。上記金属不純物22には、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、プラセオジム、イットリウム、チタン、タンタル、タングステンのいずれかが用いられ、例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)法、原子層蒸着(ALD)法、もしくはPVD法等の成膜方法を用いて、上記ゲート絶縁膜21上に直接に存在させる、もしくは、ゲート電極のポリシリコンを形成した後に、ハフニウム(Hf)をイオンインプランテーション(Ion implantation)で導入させる。
一例として、上記金属不純物22にハフニウム(Hf)を用いて、ALD法で形成する場合、例えば、窒素(N2)フロー、四塩化ハフニウム(HfCl4)の化学吸着、窒素(N2)フロー、水(H2O)の化学吸着、窒素(N2)フロー、という順でサイクル処理することにより非常に少ないハフニウム(Hf)をゲート絶縁膜21上に存在させる。例えば、上記ゲート絶縁膜21上に例えば数原子層のハフニウムで上記金属不純物22を形成する。
なお、後に説明する図5、図6の図面では、この金属不純物22の図示は省略した。
【0038】
また、イオンインプランテーションでハフニウム(Hf)を導入する場合、ポリシリコン膜を100nm程度堆積した後、Hfイオンを50keV〜100keVで1×1014atoms/cm2程度の条件で処理する。このときハフニウムイオンの平均飛程がポリシリコンの底面付近すなわち、ハフニウムを導入したいところに設定する。
【0039】
次に、上記金属不純物22(前記図4参照)を導入する処理をした上記ゲート絶縁膜21上に、ゲート電極を形成するための電極形成膜75を形成する。この電極形成膜75は、例えばポリシリコンで形成される。この成膜方法は、例えば減圧CVD法により、例えばモノシラン(SiH4)を原料ガスとし、堆積温度を580℃〜620℃に設定して、100nm〜150nmの厚さにポリシリコンを堆積して形成する。
【0040】
次いで、上記電極形成膜75のNFETのゲート電極領域にホウ素(B)、上記電極形成膜75のPFETのゲート電極領域にリン(P)のいずれか、もしくは両方を導入する。上記導入条件は、上記不純物がゲート絶縁膜21に到達しない程度で十分である。例えば、ホウ素(B)を導入する場合には、不純物に二フッ化ホウ素イオン(BF2+)を用い、打ち込みエネルギーを5keV、ドーズ量を5×1015/cm2に設定する。また、リンイオン(P+)を導入する場合には、打ち込みエネルギーを5keV、ドーズ量を5×1015/cm2に設定する。
【0041】
続いて、上記電極形成膜75上にハードマスク層76を形成する。このハードマスク層76は、例えば窒化シリコン膜で形成され、例えば減圧化学気相成長(LP−CVD)法により、例えば50nm〜100nm程度の厚さに形成される。
次いで、レジスト塗布によるレジスト膜の形成、リソグラフィー技術によるレジスト膜のパターニングを行なった後、そのパターニングされたレジスト膜(図示せず)をマスクとして異方性エッチングによって、上記ハードマスク層76、電極形成膜75をエッチングし、ゲート電極23(23N、23P)を形成する。
【0042】
次に、図5に示すように、各ゲート電極23およびハードマスク層76の側壁にオフセットスペーサ24、25を形成する。このオフセットスペーサ24、25は、例えば、各ハードマスク層76、ゲート電極23を被覆するように、例えばLP−CVDにより窒化シリコン(Si34)膜を、例えば5nm〜15nm程度の厚さに堆積した後、異方性エッチングを行なうことによって、各ゲート電極23およびハードマスク層76の側壁に窒化シリコン膜を残すことで形成する。
【0043】
次に、NFETの素子形成領域13上を被覆するようにイオン注入マスク(図示せず)を例えばレジストで形成した後、PFETの素子形成領域12にP型のLDD領域26、27を形成する。このP型のLDD領域26、27は、例えば素子形成領域12に二フッ化ホウ素イオン(BF2+)を3keV〜5keVの打ち込みエネルギーで、5×1014/cm2〜2×1015/cm2のドーズ量でイオン注入して形成される。
その後、上記イオン注入マスクを除去する。
【0044】
次に、PFETの素子形成領域12上を被覆するようにイオン注入マスク(図示せず)を例えばレジストで形成した後、NFETの素子形成領域13にN型のLDD領域28、29を形成する。このN型のLDD領域28、29は、例えば素子形成領域13にヒ素イオン(As+)を5keV〜10keVの打ち込みエネルギーで、5×1014/cm2〜2×1015/cm2のドーズ量でイオン注入して形成される。
その後、上記イオン注入マスクを除去する。
【0045】
上記P型のLDD領域26、27、N型のLDD領域28、29はどちらを先に形成してもよい。
【0046】
また、短チャネル効果を抑制する為に、LDD形成と同時にいわゆるハロ(halo)注入を行うことが多い。例えばNFETには、ホウ素イオン(B+)を12keVの打ち込みエネルギーで、3×1013/cm2/45度(deg)、PFETにはAs/70keV/2×1013/cm2のドーズ量で、基板面内を4分割して基板表面に対して45度(deg)方向から、斜めイオン注入する。
【0047】
次に、上記ゲート電極23Nおよびハードマスク層76の側壁に上記オフセットスペーサ24を介してサイドウォール31を形成する。同時に上記ゲート電極23Pおよびハードマスク層76の側壁に上記オフセットスペーサ25を介してサイドウォール32を形成する。上記サイドウォール31、32は、上記ハードマスク層76、オフセットスペーサ24、25等を被覆するように、例えばプラズマCVDにより窒化シリコン(Si34)を50nm〜70nmの厚さに堆積した後、さらにプラズマCVDにより酸化シリコン(SiO2)を50nm〜70nmの厚さに堆積し、その後、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜のそれぞれに対して異方性エッチングを行って形成する。
このエッチング時にゲート電極23N、23p上のハードマスク層76も一緒にエッチングされる。
これによって、ゲート電極23N、23p上が露出される。図5では、ハードマスク層76を除去する前の状態を示した。
【0048】
次に、NFETの素子形成領域13上を被覆するようにイオン注入マスク(図示せず)を例えばレジストで形成した後、PFETの素子形成領域12にP型のソース・ドレイン領域33、34を形成する。このP型のソース・ドレイン領域33、34は、例えば素子形成領域13に二フッ化ホウ素イオン(BF2+)を5keV〜10keVの打ち込みエネルギーで、5×1015/cm2〜2×1015/cm2のドーズ量でイオン注入して形成される。
その後、上記イオン注入マスクを除去する。
【0049】
次に、PFETの素子形成領域12上を被覆するようにイオン注入マスク(図示せず)を例えばレジストで形成した後、NFETの素子形成領域13にN型のソース・ドレイン領域35、36を形成する。このN型のソース・ドレイン領域35、36は、例えば素子形成領域12にヒ素イオン(As+)を40keV〜50keVの打ち込みエネルギーで、1×1015/cm2〜2×1015/cm2のドーズ量でイオン注入して形成される。
その後、上記イオン注入マスクを除去する。
【0050】
この時、NFETのゲート電極23P内のホウ素(B)はAsよりも活性化しやすいので大量にAsを入れない限り反転しない。また、PFETのゲート電極23N内のリン(P)はホウ素(B)よりかなり活性化しやすく、大量にホウ素(B)を入れない限り反転しない。
【0051】
上記P型のソース・ドレイン領域33、34、N型のソース・ドレイン領域35、36はどちらを先に形成してもよい。
【0052】
次いで、RTA(Rapid Thermal Annealing)により、1000℃、5秒の条件で不純物の活性化を行ない、P型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(PFET)からなる第1トランジスタ2とN型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(NFET)からなる第2トランジスタ3が構成される。
【0053】
次に、シリサイド化を行うための金属膜を形成する。この金属膜には、例えばコバルト(Co)膜を用いる。コバルト膜は、例えばスパッタによりコバルト(Co)を6nm〜8nmの厚さに堆積して形成する。
その後、RTAを500℃〜600℃、30秒の条件で行い、シリコン上のみシリサイド化(CoSi)を行った後、ウエットエッチングによって、酸化膜上の未反応なコバルト(Co)を除去する。このウエットエッチングでは、硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H22)からなるいわゆる硫酸過水を用いた。
続いて、650℃〜850℃、30秒のRTAを行い、ゲート電極23N上、ソース・ドレイン領域33、34上、ゲート電極23P上、ソース・ドレイン領域35、36上に、低抵抗なCoSi2を生成し、低抵抗なシリサイド層37、38、39、40、41、42に形成する。
また、コバルトシリサイドの代わりに、ニッケル(Ni)やニッケル白金(NiPt)を堆積してシリサイド化反応させて得たニッケルシリサイド(NiSi)を用いることも可能である。
【0054】
次に、図6に示すように、各シリサイド層37〜42が形成されている側の全面にエッチングストッパ層43を形成する。このエッチングストッパ層43は、例えば窒化シリコン膜で形成される。
さらに、層間絶縁膜44を形成する。この層間絶縁膜44は、例えばCVDによって、酸化シリコン(SiO2)膜を例えば300nm〜1000nm程度の厚さに堆積した後、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により、層間絶縁膜44の表面を平坦化する。この研磨は、ゲート電極23N、23P上の層間絶縁膜44の膜厚が100nm〜800nm程度となるように行われる。
【0055】
続いて、通常のリソグラフィー技術とエッチング技術によって、上記層間絶縁膜44に各シリサイド層37〜42に通じる接続孔45〜50を形成する。このエッチングでは、上記エッチングストッパ層43が形成されていることから、接続孔45〜50を形成するエッチング条件を窒化シリコンとの選択比が確保できる条件に設定することによって、各シリサイド層37〜42上の窒化シリコンでエッチングを停止させることが可能である。
これによって、シリサイド層37〜42への過剰エッチングを防止することが可能となり、接合リーク低減のための補償イオン注入を削減することができる。
続いて上記エッチングストッパ層43の膜厚分のみ窒化シリコンを除去するエッチングすることで接続孔45〜50が形成される。
【0056】
続いて、各接続孔45〜50の内面に密着層(図示せず)となる例えばチタン(Ti)膜を形成した後、バリアメタル層(図示せず)となる例えば窒化チタン(TiN)膜を形成する。
次いで、各接続孔45〜50を埋め込むように、例えばCVD法によって、タングステン(W)を堆積し、上記層間絶縁膜44上の余剰なタングステン(W)、バリアメタル層、密着層を除去する。
この結果、各接続孔45〜50に密着層、バリアメタル層を介してタングステン(W)からなるプラグ51〜56が形成される。
上記密着層のチタン(Ti)膜、バリアメタル層の窒化チタン(TiN)膜の形成方法としては、CVD法の他にIMPを用いたスパッタ等の方法で行うことも可能であり、また、上記CMPの代わりに全面エッチバックを用いても良い。
【0057】
続いて、各プラグ51〜56に接続する配線57〜62を形成する。この配線形成は、通常の配線形成技術によるものである。例えばアルミニウム、銅、高融点金属、金属シリサイドのような金属化合物等の、通常の半導体装置に用いられる配線材料により形成される。
このようにして、CMOS回路を形成する。また、配線層は多層配線を行うことが可能であり、目的に応じて、多層配線に設定することが可能である。
また、溝配線構造(例えばダマシン構造、デュアルダマシン構造等)を用いた銅等の配線で形成することも可能である。
【0058】
上記構成の製造方法では、PFETからなる第1トランジスタ2にN型のポリシリコンからなるゲート電極23Nを形成し、NFETからなる第2トランジスタ3にP型のポリシリコンからなるゲート電極23Pを形成することから、ゲート空乏層が生じず、より高いゲート容量が得られる。ここでいう、より高いゲート容量とは、必要以上にゲート容量を大きくして、寄生容量を増やすという意味ではなく、本来微細化によって得られるべき、ゲート空乏化によって損なわれていたゲート容量を得るという意味である。
また、ゲート絶縁膜22のゲート電極23側にハフニウムやアルミニウム等の金属不純物22を存在させていることから、実効仕事関数を例えば0.1V〜0.3V程度変化させることができる。
また高い閾値電圧が達成されるので、イオン化不純物散乱による移動度劣化を抑制し、電界緩和することによってGIDL(Gate Induced Drain Leakage)を抑制できる。
【0059】
よって、ゲート空乏化を抑制しつつ実効仕事関数を制御することができるので、リークの低減、移動度の向上が図れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の半導体装置に係る実施例を模式的に示した概略構成断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法に係る実施例を示した製造工程断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法に係る実施例を示した製造工程断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法に係る実施例を示した製造工程断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法に係る実施例を示した製造工程断面図である。
【図6】本発明の半導体装置の製造方法に係る実施例を示した製造工程断面図である。
【図7】従来の半導体装置のゲート電極部分を模式的に示した概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1…半導体装置、2…第1トランジスタ、3…第2トランジスタ、21…ゲート絶縁膜、22…金属不純物、23N,23P…ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第1トランジスタと、
前記第1導電型とは逆の第2導電型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第2トランジスタとを有し、
前記第1トランジスタのゲート絶縁膜と前記第2トランジスタのゲート絶縁膜は、前記ゲート電極側に金属不純物が存在していて、
前記第1トランジスタのゲート電極が第2導電型のポリシリコンである、
もしくは前記第2トランジスタのゲート電極が第1導電型のポリシリコンである、
もしくは前記第1トランジスタのゲート電極が第2導電型のポリシリコンであり前記第2トランジスタのゲート電極が第1導電型のポリシリコンである
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属不純物は、ハフニウム、アルミニウム、ジルコニウム、ランタン、プラセオジム、イットリウム、チタン、タンタル、タングステンのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1トランジスタがP型の電界効果トランジスタであり、
前記第2トランジスタがN型の電解効果トランジスタであり、
前記第1トランジスタの前記ゲート電極がN型ポリシリコンである、
もしくは前記第2トランジスタの前記ゲート電極がP型ポリシリコンである、
もしくは前記第1トランジスタの前記ゲート電極がN型ポリシリコンであり前記第2トランジスタの前記ゲート電極がN型ポリシリコンである
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1トランジスタのチャネルにフッ素が導入され、
前記第2トランジスタのチャネルに窒素が導入されている
ことを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
P型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第1トランジスタと、
N型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタの第2トランジスタとを形成する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に金属不純物を堆積する工程と、
前記金属不純物が堆積された前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極に両側の前記半導体基板にソース・ドレイン領域を形成する工程を有し、
前記第1トランジスタのゲート電極にN型の不純物を導入する工程と、前記第2トランジスタのゲート電極にP型の不純物を導入する工程のいずれか一方の工程、もしくは両方に工程を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜上に金属不純物を堆積する工程の代わりに、前記ゲート絶縁膜中に金属イオンを注入する工程を有する
ことを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ゲート絶縁膜を形成する前に、
前記半導体基板の前記第1トランジスタのチャネルが形成される領域にフッ素を導入する工程と、
前記半導体基板の前記第2トランジスタのチャネルが形成される領域に窒素を導入する工程と
を有することを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−181978(P2009−181978A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17119(P2008−17119)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】