説明

表示装置の修正方法およびその装置

【課題】 修正の領域、材料、あるいは種類等における適用範囲を大幅に拡大できる表示装置の修正方法およびその装置の提供。
【解決手段】 基板の表面にパターン欠陥を有する電子回路パターンが形成された表示装置の前記パターン欠陥を修正する修正装置であって、
前記パターン欠陥の領域に局所的なプラズマの照射によって前記パターン欠陥を修正するプラズマ照射手段を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置の修正方法およびその装置に係り、大気圧下で生成したプラズマジェットを用いて表示装置の基板上の電子回路パターンの短絡箇所や開放箇所を修正によって正常化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば液晶表示装置は一対の基板の間に液晶を挟み込んだ構造となっており、一方の基板(フィルタ基板と称される場合がある)には青、緑、赤の樹脂を交互に塗布したカラーフィルタが形成され、もう一方の基板(TFT基板と称される場合がある)には薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む電子回路パターンが形成されている。
【0003】
カラーフィルタや配線にパターン欠陥が生じると、液晶表示装置の表示異常となり、不良品となる。表示異常には、例えば、カラーフィルタに塗布された樹脂が隣の画素にはみ出したために生じる色不良や、樹脂の膜厚やTFT基板が均一でないために生じる色むら、配線間のショートや断線などがある。
【0004】
これらパターン欠陥を検出する方法としては、外観検査装置で回路パターンを撮像し、画像処理を行うことで欠陥を顕在化させる、一般的なパターン検査装置を用いることができる。
【0005】
カラーフィルタの色のはみ出しやTFT基板の配線ショートの修正方法としては、たとえば下記特許文献1に開示されているように、ショート箇所にレーザ光を照射し、該ショート箇所を除去することによって修正する方法が一般的である。
【0006】
パターン欠損箇所に配線材料を形成する方法としては、たとえば下記特許文献2に開示されているに、先端径が細く絞られた中空のピペットを用いて前記配線材料を塗布する方法がある。また、たとえば下記特許文献3、下記特許文献4には、レーザCVD法と呼ばれ、回路基板上の所望領域に金属配線の原料となるガスを供給し、そこにレーザ光を照射することによって原料ガスを分解し、金属薄膜を析出する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平9−307217公報
【特許文献2】特開平8−66652公報
【特許文献3】特公平7−484967公報
【特許文献4】特開平11−61413公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたレーザ光によるショート修正装置は、材料の選択加工が困難なため、レーザ照射部は上層のみならず下層膜まで損傷を与えてしまう。そのため、修正に適用できる領域には、制限があるといった問題があった。
【0008】
特許文献2に記載された塗布方法は、ピペットを接触させて塗布するため、修正時の基板への損傷が考えられるため、特許文献1の場合と同様に修正領域に制限があった。
【0009】
特許文献3に記載されたレーザCVD技術は、原料ガスの分解が照射したレーザ光の光吸収特性に大きく依存するという欠点を有するため、形成可能な物質はタングステン(W)などの金属薄膜である場合が多く、シリコン酸化膜(SiO2)などの絶縁薄膜など原料ガスの光吸収が小さいものに対しては形成が困難であるという問題があった。
【0010】
また、特許文献1〜3に記載された表示装置の修正方法は、1つの装置で修正できる欠陥に制約があり、複数種の欠陥を一つの修正装置で処理可能なものが必要とされていた。
【0011】
本発明の目的は、修正の領域、材料、あるいは種類等における適用範囲を大幅に拡大できる表示装置の修正方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置の修正方法は、いわゆるプラズマの照射によって電子回路パターンのパターン欠陥を修正するようにしたものである。
【0013】
本発明の構成は、たとえば、以下のようなものとすることができる。
【0014】
(1)本発明の表示装置の修正装置は、基板の表面にパターン欠陥を有する電子回路パターンが形成された表示装置の前記パターン欠陥を修正する修正装置であって、
前記パターン欠陥の領域に局所的なプラズマの照射によって前記パターン欠陥を修正するプラズマ照射手段を備えてなることを特徴とする。
【0015】
(2)本発明の表示装置の修正装置は、(1)において、前記プラズマ照射手段は、プラズマ生成部と、第1のガス供給部と、第2のガス供給部と、開放部とを有するプラズマ反応部を備え、
前記プラズマ生成部は、プラズマ生成用細管と、このプラズマ生成用細管の外周領域に配置され、高周波電源からマッチングネットワークを介して高周波電力を供給するための電極とを備え、
前記プラズマ生成用細管の一方の端部は前記開放部の対面側から前記プラズマ反応部内に挿入され、
前記開放部に前記表示装置を保持して移動可能なステージ機構が配置され、
前記欠陥パターンの情報を検査装置から受信し、前記欠陥パターンの欠陥を認識・分類する観察機構を備えてなることを特徴とする。
【0016】
(3)本発明の表示装置の修正装置は、(2)において、前記第1のガス供給部から供給されるガスの物理量により、第2のガス供給部から供給された反応性ガスを分解させることを特徴とする。
【0017】
(4)本発明の表示装置の修正装置は、(1)において、前記プラズマ反応部にプラズマジェットを細径化するマスクを具備し、
前記マスクは前記プラズマ生成細管と基板の間に配置され、第2のガス供給部は、前記マスクと基板との間に配置されることを特徴とする。
【0018】
(5)本発明の表示装置の修正装置は、(4)において、前記マスクは、絶縁体であることを特徴とする。
【0019】
(6)本発明の表示装置の修正装置は、(1)において、前記第1のガス供給部から供給されるガスの物理量により、被加工物の温度を制御することを特徴とする。
【0020】
(7)本発明の表示装置の修正装置は、(3)、(6)のいずれかにおいて、前記ガスの物理量は、少なくとも、流量、流速、ガス種、電離度のいずれかであることを特徴とする。
【0021】
(8)本発明の表示装置の修正方法は、基板の表面にパターン欠陥を有する電子回路パターンが形成された表示装置の前記パターン欠陥を修正する修正方法であって、
前記パターン欠陥の領域に局所的なプラズマの照射によって前記パターン欠陥を修正することを特徴とする。
【0022】
(9)本発明の表示装置の修正方法は、プラズマ生成用細管の一方の端部から前記プラズマ生成用細管の内部に供給した不活性ガスに高周波電力の印加によってプラズマを発生させ、
前記プラズマ生成用細管の他方の端部と基板との間に配置したマスクを通してプラズマジェットを微細化し、
前記第1のガス供給部から供給されるガスの物理量により、第2のガス供給部から供給された反応性ガスを分解させ、前記基板上の電子回路パターンのパターン欠陥を修正することを特徴とする。
【0023】
(10)本発明の表示装置の修正方法は、(9)において、前記ガスの物理量は、少なくとも、流量、流速、ガス種、電離度のいずれかであることを特徴とする。
【0024】
なお、上記した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、上記した構成以外の本発明の構成の例は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0025】
上述した本発明の表示装置の修正方法およびその装置によれば、修正の領域、材料、あるいは種類等における適用範囲を大幅に拡大できるようになる。
【0026】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0028】
(第1の実施例)
図1は、本発明の第1の実施例である液晶表示装置の修正に用いる装置(以下、修正装置と称する場合がある)の概略図である。
【0029】
図1において、修正装置は、大別して、欠陥を修正するための局所プラズマ生成部1と、ガス供給部2と、プラズマ反応部3と、微細加工用のレーザ4と、塗布機構5と、欠陥を認識するためのカメラ6と、プラズマ状態をモニタリングするための計測機構7と、制御部8と、で構成されている。
【0030】
プラズマ生成部1は、石英などの誘電体からなるプラズマ生成用細管9とこの細管9の外周領域に高周波電源10からマッチングネットワーク11を介して高周波電力を供給するための電極12を配置して構成されている。具体的な例として、プラズマ生成用細管9には内径φ1.5mm、外径φ3.5mmの石英管を用いた。そして、高周波電源10(たとえば144MHz、200W電源)から所定の高周波電力をプラズマ生成用細管9に印加するための電極12には、対向する2つの銅製電極をプラズマ生成用細管9の外周部に設けて構成した。なお、プラズマ生成用細管9に高周波電力を供給する際、マッチングネットワーク11を自動制御することで高周波電源10からの反射波が最小になるように調整した。
【0031】
なお、後述するが、プラズマ生成用細管9の一方の端部にはガス供給部を構成する第1のガス供給部の配管13が接続されており、プラズマ生成用細管9の内部には第1のガスが供給され、そして高周波電源10から所望の高周波電力が印加された後、着火装置15を用いてプラズマの着火が行われる。この着火装置15は、その材料である金属が、基板上に金属不純物として飛来しないために、プラズマ生成用細管9の外側に接触する構成としている。複数のガス種を使用してプラズマを生成する場合は、安定したプラズマを生成するために、第1のガス供給部13にて混合した後に、プラズマ生成用細管9を経由して、プラズマ反応部3に供給する。
【0032】
また、プラズマ生成部1の側方にはμmオーダーでの微細加工を行うためのレーザ発振器4と形状制御するためのマスクおよび光学系(図示せず)、さらに、マスキング処理のためのレジストなどの樹脂材料を基板上に塗布する塗布機構5、また、欠陥位置の確認と分類と修正処理後の状態を確認するための観察カメラ6が設置されている。少なくとも前記光学系を含むレーザ発振器4と塗布機構5と観察カメラ6とプラズマ生成部1、細管9、高周波印加用電極12およびプラズマ反応部3は一体となって移動する機構とし、基板16との距離を可変させる場合にはこれらが同時に移動するようにした。
【0033】
プラズマ反応部3はその一端に開放部17が設けられ、この開放部17の対面側からプラズマ反応部3の内部に前記プラズマ生成用細管9の一方の端部が挿入されている。この端部からプラズマ生成用細管9の内部で生成した第1のガスによるプラズマジェット19が前記開放部17に向かって射出される。プラズマ生成用細管9の延長線上には、プラズマ反応部3の開放部17に対面する状態で基板ステージ18上が配置されその上に基板16が搭載されている。
【0034】
ガス供給部を構成する第2のガス供給部14はプラズマ反応部3の内部に直接に挿入され、その第2のガス供給部14の供給口は前記プラズマ生成用細管9の延長線上にガスが供給され、基板16の表面と交差する領域に可能な限り接近させて配置されている。
【0035】
ここで、第1のガスはAr、He等に代表される不活性ガスであって、プラズマ反応部3の内部におけるプラズマジェット19の形成に用いられる。そして、第2のガスはモノシランやTEOS等に代表される薄膜形成用原料ガス、または塩素やフッ化炭素などに代表されるエッチング用ガスであるが、本発明で適用可能なガス種は上記の具体例に限定されるものではない。
【0036】
次に、前記基板16として、たとえば、液晶表示装置のTFT基板(駆動用電子回路基板)の欠陥修正を例に揚げ、具体的に説明する。ここでは、たとえばシリコン酸化膜からなる保護膜あるいは絶縁膜を局所的に形成する場合を説明する。
【0037】
まず、プラズマジェット19の生成には第1のガス(不活性ガス)としてアルゴンガス(以下Ar)を用い、絶縁膜形成用の第2のガス(反応性ガス)としてTEOS(tetraethoxysilane)ガスを用いた。これら2種類のガスはそれぞれ別系統のガス配管(第1の配管13および第2の配管14)からプラズマ反応部3の内部に供給される。
【0038】
ここで、第1のガスおよび第2のガスを個別に供給し、基板16の表面に接近させた領域で反応させることの重要性は次の理由に基づく。すなわち、(1)薄膜形成用である第2のガス(TEOSガス)を細管9の内部に導入し、そこでプラズマを生成する場合、TEOSガスによる活性種がプラズマ生成用細管9の内部に堆積し、その結果として安定したプラズマの維持が困難になる、(2)薄膜形成に寄与するプラズマ中の活性種やイオンの寿命が短いため(大気圧下では活性種の平均自由工程は数十nm程度)、活性種が基板16表面に輸送されるまでの間に活性種の性質が変化してしまう、などの不都合があるからである。
【0039】
これを回避して基板16の表面に所望の特性を有する薄膜(例えば、シリコン酸化膜の絶縁破壊強度が500MV/m以上)を形成するために、上記したようにプラズマ形成に用いられるArガスと薄膜形成に用いられるTEOSガスとを個別に供給し、Arガスによるプラズマジェット19を用いてTEOSガスを基板16の表面上に輸送し、シリコン酸化膜の形成に寄与させるようにしている。
【0040】
ここで第2のガスとして用いるTEOSガスは室温において液体である。そのため、TEOSガスの供給はTEOSガスをArガスなどの不活性ガスを用いて、TEOSボンベをバブリングしながら供給する。この時、TEOSガスボンベから配管14を経由してプラズマ反応部3内に到達するまでに、配管内にTEOSガスが付着・蓄積するのを抑制するために、温度調整付きのヒータ21を配管に装着し、配管を約100℃程度に保温することが必要である。さらに、TEOSガスを効率よく供給するため、TEOSガスボンベそのものを加熱機構22などで約100℃程度に保温すると効果的である。
【0041】
プラズマ形成用Arガスおよび薄膜形成用TEOSガスの流量制御は、それぞれの配管に設置されたマス・フロー・コントローラ23a(以下、MFC)により行われる。TEOSガスのバブリングに用いる不活性ガス(ここではArガス)制御もMFC23bを用い、TEOSガスとともにプラズマ反応部3の内部に供給される。なお、配管は、ステンレス製の1/4インチ管を用いるが、プラズマ反応部3の内部で1/8インチ管を用いて絞込み、基板16の表面近傍に限定して第2のガスを供給できるようにした。
【0042】
プラズマ反応部3内に供給されたTEOSガスは、プラズマ反応部3に接続されたプラズマ反応部3内の圧力を調整する排気機構24を介して排気設備および反応ガスの除害設備(図示せず)で処理される。また、プラズマ反応部3内の圧力はプラズマ反応部3の開放部から散逸されることを防止するために、プラズマ反応部3内から流れるガスをその周囲に設置された少なくとも1つの排気機構28またはガス供給と排気機構の組み合わせにより、使用されたガスを収集し、排気機構24により廃棄処理する。
【0043】
次に、本発明の修正装置に用いた局所プラズマの制御方法について説明する。
【0044】
図1において、第1のガス供給部13からプラズマ生成用ガスとしてArガスを1L/分の割合でプラズマ生成用細管9に導入する。そして、高周波電源10から投入電力100Wをマッチングネットワーク11を介して電極12に印加した。Arガスのプラズマは点火装置15を用いて行われる。高周波電源10への反射波が大きく、プラズマ放電が不安定である場合には、反射波が最小となるようにマッチングネットワーク11を用いて調整する。この調整は、高周波印加直後のプラズマ発生前後で必要となる。マッチングネットワーク11のコンデンサを調整することで高周波のマッチングは可能であるが、進行波と反射波の値をモニタして自動調整を行う機構を修正装置に搭載した。
【0045】
プラズマの放電状態はプラズマ反応部3に設置された観察用窓(図示せず)から計測装置7により観察される。例えば、プラズマ発光を分光計測装置を用いて250nm〜900nm範囲のプラズマ発光を分析することで知ることができる。本実施例では、Arの発光輝線696nmや750nmを計測してその電離状態からプラズマの安定性を判断した。また、ここでは示さないが、プラズマ反応部3の内部を5〜15μmの波長領域に感度を有する赤外線センサを用いて計測することで、基板16やプラズマ生成用細管9の温度状態もモニタし、このデータを元にプラズマ制御することも可能である。
【0046】
上記の放電条件において、プラズマ生成用細管9の先端部から基板16の方向に向かって約10mm程度のArプラズマジェット19が観察された。プラズマジェット19の径は細管9の先端から射出された後、しだいにプラズマが消失することで少しずつ細くなり、プラズマジェット19の先端部では約数百μmであった。そして、この条件のプラズマジェット19では、基板16上に形成したアルミニウム配線が溶融する660℃以上に達していることを確認した。また、このプラズマジェット19は、プラズマ生成用細管9から離れるほど温度が低下していることを前述の赤外線センサを用いて基板上16の温度をモニタすることで確認した。
【0047】
さらに、高周波電力を変化させずにArガスの流量を4L/分に増加させた場合、プラズマジェット19の長さは最大15mmまで増大したが、プラズマジェット19により基板16上のアルミニウム配線の溶融は観察されなかった。赤外線センサによる基板16の表面温度を観測した結果、250℃以下であることが確認され、流量の増加により温度が低下した。
【0048】
また、高周波電源10の投入電力を40〜200W、Ar流量を1〜7L/分、プラズマジェット19と基板16との距離を変化させた結果、基板16の表面温度を約100℃からシリコン融点である1400℃程度まで制御することができた。
【0049】
また、従来のCVD(Chemical Vapor Deposition)では不可欠であった基板加熱は不要となる。上記したようにプラズマジェット19の放射熱を制御することで、基板温度を変化させることなく(室温程度で)、良質な膜を形成できるようになる。
【0050】
プラズマ反応部3の内部に生成されるプラズマジェット19の直径は細管9の内径を上記の1mmから更に細くすることが可能である。しかし、細管9の内径が0.5mm程度に小径化すると細管9中で生成するプラズマが不安定になる。
【0051】
そこで、図1に示すようにマスク20によるプラズマジェット19の径制御を検討した。図2(a)に本発明で用いたマスク20の構成を示す。マスク20は細管9の先端部から射出されたプラズマジェット19と基板16との間に配置される。マスク20の材料は、石英板やセラミックスなどの耐熱性の非金属材料を用い。これは、金属材料のような導電材料ではプラズマジェット19が大きく減衰するためである。このマスクに、所望のプラズマジェット19の径を得るために、寸法の異なる複数の貫通穴202を形成している。この貫通穴202にプラズマジェット19を照射することで、プラズマはさらに細径化され基板16上の照射領域が小さくなるとともに、プラズマ処理領域も制御することが可能となる。マスク20から射出されるプラズマは、集光レンズ27を介して計測装置7により、マスク20とプラズマジェット19の軸ズレや、プラズマジェット19の安定性をモニタリングする。なお、このマスク20はプラズマ反応部3内で、ステージなどにより制御されて、所望の貫通穴202位置へ移動することができる。
【0052】
マスク方式によるプラズマ径の微細化は、プラズマジェット19の生成部と分離し、安定した放電が得られるところにある。また、プラズマ生成用細管9の先端部を細くしてプラズマジェット19を細径化することも可能であるが、極端に小さくすると、プラズマ生成用ガスの流速が低下し温度制御が難しくなる、さらに内径が細くなる部分に蓄熱しプラズマ生成用細管9から基板16の表面への不純物飛散やプラズマ生成用細管9の耐久性がいちじるしく低下するといった不都合が生じる。上記では、放電部と微細化部を分離する方法としてマスク方式を例に説明したが、図2(b)に示すように、プラズマ生成する細管9とその周辺部にプラズマジェット19を絞るための外周細管203を設けて2重管構造とするようにしてもよい。この場合、プラズマ生成用のガスとは独立に、外周細管203にはArガスまたはプラズマ反応容器3の雰囲気ガスが流れる構造とし、細管9からの流れにとともに外周細管203からも気体が流れることにより、プラズマジェット19の低温化を実現できる。
【0053】
上記の図1に示した修正装置を用い、ArガスとTEOSガスによる絶縁膜(シリコン酸化膜)の形成を試みた。一例として、基板16にはガラス基板を用い、成膜条件である高周波電源10の投入電力を70W、第1のガス供給部13から細管9に供給されるArガスの流量を3L/分、第2のガス供給部14から基板16の表面近傍に供給されるTEOSガスの供給量はそのバブリングに用いたArガスの流量をMFC23bで制御し、その流量を0.1L/分とした。プラズマ生成用細管9と基板16の表面までの距離、すなわちArプラズマジェット19の長さは約15mmとし、先端部が基板16と接触するように調整した。この条件での成膜では、基板16の表面約100μm径の領域にシリコン酸化膜(膜厚約1μm)が形成されていることが、光学顕微鏡観察および赤外吸収計測から確認された。
【0054】
一般にTEOSガスの熱分解によってシリコン酸化膜を堆積させる場合、基板16を予め600℃以上に加熱しておくことが必要とされているが、上記の例では基板16の表面温度が約200℃程度で形成可能であることが、赤外線センサおよび基板16に設置した熱電対の計測から明らかとなった。
【0055】
これは、プラズマジェット19の形成とTEOSガスの供給を独立して行い、TEOSガスの供給をプラズマジェット19が基板16と交差する領域に直接行うことによって、TEOSガスの活性種が基板表面近傍で生成・付着するため、大気圧下でも薄膜形成できると考えられる。なお、得られたシリコン酸化膜の絶縁破壊特性は800MV/mであって、一般的な熱酸化膜と同程度の良好な絶縁特性を示している。
【0056】
上記したように、図1における第2のガス供給系からTEOSガスを供給することで基板16上に局所的にシリコン酸化膜を形成することが可能であることを説明した。そこで、TEOSガスの代わりにCF4ガスを第2のガス供給部からプラズマ反応部3の内部に供給した。Arガスの流量、高周波電力、CF4ガスの流量はシリコン酸化膜の形成時とほぼ同じ条件で行った。基板16としてガラス基板上に窒化シリコン薄膜(膜厚約1μm)を形成して用いた。なお、プラズマ生成用細管9にはCF4ガスに対してエッチング耐性の優れた材料を使用することが望ましく、ここでは石英ではなくアルミナなどのセラミックチューブ(内径約1mm)を用いた。その結果、基板6上に形成されている窒化シリコン薄膜が、約数百μm径の範囲ですり鉢状にエッチングされていることを確認した。
【0057】
以上に述べたように、プラズマ生成ガスとしてArガスを、また、薄膜形成用反応ガスとしてTEOSガスを、そしてエッチング用ガスとしてCF4ガスを用いた例を説明したが、これらのガス種に限定されるものではない。例えば、プラズマ生成ガスとしてHeガス、薄膜形成用反応性ガスとしてSiH4ガスやSiH2Cl2ガス、エッチング用ガスとしてCl2などは一例であって、通常の半導体製造工程で使用されているガスを用いることが可能である。
【0058】
(第2の実施例)
次に、本発明の第2の実施例として、上記した修正装置を用いた液晶表示装置の欠陥修正の方法について説明する。
【0059】
ここで、欠陥修正の方法の説明に先立ち、欠陥修正の対象となる液晶表示装置の構成を図3(a)、(b)を用いて概略的に説明する。図3(a)は断面図で、図3(b)は画素部の平面図である。
【0060】
図3(a)において、複数の画素部が形成されたTFT基板311と、複数のカラーフィルタ308が形成されたフィルタ基板312とを、画素部とカラーフィルタ308とを対向させて配置し、その間に液晶310を挟み込んだ構成となっている。そして、上記の画素部は、図3(b)に示すように、TFT基板311上にゲート配線305が形成され、その上にゲート絶縁層303(図3(a)参照)が形成されている。そして、このゲート絶縁層303上であって、ゲート配線305に接続されたゲート電極の位置する領域(薄膜トランジスタTFTの形成領域)にアイランド状の半導体層303(アモルファスシリコン膜)が形成されている。そして、この半導体層303の一方の端部に電極(ドレイン電極)を介して接続されたドレイン配線304がゲート配線305と交差する方向に形成されている。半導体層303の他方の端部にはソース電極306が形成され、ソース電極306と透明導電膜からなる画素電極309とが接続されている。一対の隣接するゲート配線305と一対の隣接するドレイン配線304で囲まれた領域によって一画素の領域を構成している。
【0061】
このように構成される画素部は、ゲート配線305からの信号によって薄膜トランジスタTFTがオンされ、このオンされた薄膜トランジスタTFTを通してドレイン配線304からの信号(映像信号)が画素電極309に供給されることになる。画素電極309は、フィルタ基板312側に形成された透明導電膜からなる対向電極309'との間に電界を生じせしめ、液晶の分子を駆動させるようになっている。
【0062】
このような構成の液晶表示装置は、複数の成膜工程(配線、半導体層、電極)やエッチング工程を経て製造される。この場合、その過程で混入した異物やホトマスクなどの不都合によって配線間の短絡、配線の断線、半導体層の形状不良などが生じ、これらが液晶表示装置の特性や品質、さらには製造歩留まりの低下を招く要因とされる。従って、液晶表示装置の限られた領域で発生した上記の欠陥部を必要に応じて修正することが重要となる。
【0063】
図4は、上述した修正装置を用いて欠陥部の正常化(修正処理)を行う方法を示した図で、ゲート配線305の断線を修正する過程を示した工程図である。
【0064】
まず、図4(a)において、ガラス基板401(図1の基板16に相当する)上にたとえばAl等からなるゲート配線305が形成されている。ゲート配線305の上にはたとえば窒化シリコン膜からなるゲート絶縁膜403が形成され、さらにその上に窒化シリコン膜またはシリコン酸化膜からなる保護膜404が形成されている。この場合、ゲート配線305の形成工程において異物の付着が原因してゲート配線305に断線部405が生じていることが、ゲート配線305の形成後の検査工程で判明したとする。このままではゲート配線305の一部に信号を供給することが不可能となり、液晶表示装置として致命的な「線欠陥品」として処分される。
【0065】
そこで、本発明の局所プラズマによる修正装置を用いて、上記した断線欠陥部405の修正を試みた。先ず、検査工程により出力された欠陥情報を修正装置で受信し、基板16を載せたステージ18を欠陥箇所(断線欠陥部405)に移動する。本発明のプラズマ反応部3は、ガントリー構造を有した修正装置にレーザ加工機構4、塗布機構5、観察カメラ6とともに搭載され、基板16を載せる平面に対して、一軸方向または二軸方向の移動機構を備えている。
【0066】
検査工程では、1m角や2m角の大型基板を検査するため、検出分解能は一般的に低い。そのため、修正装置で欠陥データを基板16とともに受信した際には、高分解能カメラ6で再度撮像し、正確な欠陥座標や欠陥種を認識した。欠陥の再確認は、作業員による作業も可能であるが、修正処理時間を短縮するために自動化も試みた。そのため、欠陥自動認識の感度を高めるため、カメラは1μm程度の欠陥も認識可能なXGA(1024×768画素)以上の高解像度のものを採用し、サブミクロンオーダまでの分解能を確保した。これにより高分解能画像とともに広視野による隣接した正常画素と欠陥画素を比較することで、欠陥位置と欠陥寸法と欠陥種類の自動認識が可能となり、修正の自動化も可能となった。認識した欠陥寸法により処理する範囲を決定し、マスク20機構を適切なマスク径のものに調整する。
【0067】
欠陥が断線欠陥405であると認識すると、予めオフセットしておいたプラズマ生成部3に移動し、修正処理する。プラズマ生成部3は外気と遮断する構造となっている。すなわち、プラズマ生成部3の少なくとも1周り外周は排気機構を有しており、プラズマ生成部3のガスを装置周辺に漏洩しない構造としている。
【0068】
ここで、第2のガスを供給部14からプラズマ反応部3内にエッチング性ガス用ボンベ29からCF4ガスを供給した。そして、第1のガス供給部13からプラズマ生成用細管9とマスク20を通してArガスを導入し、高周波電源10に電力を投入し、プラズマ点火装置15によりプラズマを着火した。その前後に、自動調整機構を搭載したマッチングネットワーク11でプラズマの反射波を調整して、Arプラズマジェット19を安定させた。Arプラズマジェット19により励起された基板16表面近傍のCF4ガスの反応種により、基板16の断線欠陥部405に断線部405の上部を覆っている保護膜404およびゲート絶縁膜403を順次エッチングし、ガラス基板401の表面を露出させて、エッチング除去部406を形成した(図4(a)、(b))。なお、保護膜404やゲート絶縁膜403の開口部はゲート配線402の断線欠陥部405よりも大きくしておく必要がある。
【0069】
次に、図4(c)に示すように、第2のガス供給部14から供給される反応性ガスをエッチング性のCF4ガスから(CH3)3Alガス(トリメチルアルミニウムガス)に切り替え、ゲート配線305の断線欠陥部405の両端部と重なるようにしてAl配線形成部407を形成した。ここでは、(CH3)3Alガスを用いているが、低抵抗特性を有する金属原子含有のガスであれば良い。ただし、金属配線を形成する際には、成膜雰囲気に注意しなければならない。酸素が含まれると、原料ガスの金属原子が膜構造を形成する際に、酸化の原因となる。そのため、金属膜の成膜では、特にArやHeなどの不活性ガスや窒素ガスなどにて雰囲気置換する。またHガスなどで積極的に還元雰囲気を用いることもできる。
【0070】
次に、図4(d)に示すように。再び第2のガス供給部14から供給される反応性ガスの種類を替えて、上記した配線形成部407の内部を埋めるように絶縁膜408を形成した。ここで、用いた反応性ガスはTEOSであって、形成した絶縁膜408は酸化シリコン薄膜である。
【0071】
この様にして液晶表示装置にとって致命的な欠陥とされたゲート配線305の断線欠陥部405を本発明の局所プラズマによる修正装置を用いて正常化し、本来の機能を取り戻すことを可能にした。
【0072】
同様に、液晶表示装置の製造過程で発生する様々な欠陥、例えば、配線間の短絡(欠陥種A)、配線や絶縁膜などの積層膜の間に混入した異物(欠陥種B)、上記した配線の断線(欠陥種C)について、製造工程中での修正手順について、以下、それぞれ説明する。
【0073】
図5は、TFT基板の形成工程の流れと上記した欠陥の検査・分類およびその修復の流れとをまとめて示したフロー図である。TFT基板の形成工程では、各種配線や半導体薄膜および絶縁膜を形成する薄膜形成工程501、ホトリソ工程502およびエッチング・レジスト剥離工程503を経て所望の回路パターンおよびTFTを形成する。次に、TFTアレイ検査工程504により外観検査装置やアレイテスタなどを用いて欠陥検出する。修正装置は、上記の検査装置で検出された欠陥情報やその欠陥位置情報を生産ラインに構築されたネットワークを介して受信する。その情報に基づいて、欠陥の検出されたTFT基板を搭載したステージを駆動して、修正装置の観察カメラの光学系視野内に欠陥位置を再現する。その後、観察カメラのレビュー画像により、欠陥の色、平面形状、高さ情報などの欠陥種の詳細な弁別を行う(欠陥種弁別工程505)。
【0074】
これら欠陥の弁別には、例えば、自動焦点機構により観察光学系全体をステージのTFT基板を設置する面に垂直なZ方向に移動して、TFT基板の表面に焦点を合わせる。または、ステージによりTFT基板をZ軸方向に移動しても良い。そして、観察カメラにより撮像された画像から欠陥の高さ情報を得た後、修正処理を行う。その他にも、垂直落射照明や斜方照明、フィルタによる薄膜干渉効果を欠陥種の弁別に利用できる。
【0075】
これにより、たとえば欠陥種A、欠陥種B、欠陥種Cを弁別できたとし、これらの欠陥種に応じた行程を以下説明する。
【0076】
(欠陥種Aの場合の修正506)
まず、欠陥種弁別工程505において、配線間の短絡欠陥である欠陥種A506が検出された場合、図1に示した修正装置における第1のガス供給部13からArガスをプラズマ生成用細管9に供給する。また、高周波電源10から高周波電力を電極12に印加して、プラズマジェット19を生成する。このプラズマジェット19を欠陥種A506に照射し、配線間の余分な領域を除去する。この場合、第2のガス供給部である配管14から配線材料をエッチング可能なガスを適宜選択して欠陥種A508近傍に供給し、余分な配線をエッチング除去するようにしてもよい。
【0077】
その後、配線の除去された箇所を観察カメラで観察・検査し、配線除去が不十分であればプラズマジェット19をさらに照射、またはプラズマ処理条件を変更して再度処理する。仮に、余分な配線の除去が十分であると判定された場合、処理された配線近傍の表面に保護膜を形成(保護膜形成工程509)して、回路基板としての信頼性を高め、欠陥修正を終了させ、TFT基板を次工程に移送する。
【0078】
(欠陥種Bの場合の修正507)
次に、欠陥種弁別工程505において、配線や絶縁膜などの積層膜の間に混入した異物(欠陥種B)が検出された場合の修正方法について説明する。ここでは、TFT基板16のゲート配線上に異物(凸状欠陥)が存在した例を示す。凸状欠陥は、配線膜を形成する際、例えばスパッタリングによる金属薄膜の溶融物が付着するスプラッシュ欠陥や、成膜時の異物混入などにより発生する。この凸状欠陥の高さが大きい場合にはその上に形成したゲート絶縁膜や保護膜を突き抜けてカラーフィルタ基板に形成された透明対向電極に接触し、上下電極間ショートや液晶ギャップ不良による表示特性不良を引き起こす。
【0079】
まず、異物を覆っている保護膜を除去するため、前述した方法によりArプラズマジェット19を生成する。そして、第2のガス供給部14に保護膜をエッチングするための適切なガスを入れて、凸状欠陥の存在する保護膜の表面に供給することで、保護膜のエッチング処理を行う。保護膜が窒化シリコン薄膜である場合、第2のガス供給部14から供給されるガスはCF4ガスあるいはCl2ガスを用いる。観察カメラ6によりエッチング状態を確認し、プラズマジェット19の条件を適正化する。次に保護膜の下層に位置するゲート絶縁膜を同様にして除去する。そして、凸状欠陥が表面に露出したとき、第2のガス供給部14からのガス供給を替え、スプラッシュなどの金属系材料をエッチングし上記凸状欠陥を除去する。
【0080】
ここではエッチングの選択性を得るために、層毎にエッチングガスである第2のガスを替えた。この場合、Arプラズマジェット19のみを用いて、保護膜および凸状欠陥を一括で除去することも可能であるが、熱的作用が大きくなると、保護膜と凸状欠陥との材料の違いにより除去すべき材料が周囲に飛散することもあり、前述のようにそれぞれ分離して除去するのが望ましい。
【0081】
その後、修正部分に改めて保護膜(必要に応じてゲート絶縁膜も形成する)を形成して(保護膜形成工程509)凸状欠陥の修正が完了する。
【0082】
(欠陥種Cの場合の修正508)
上記の欠陥種Bの修正507において、配線上に存在していた凸状欠陥を修正した場合、配線そのものが欠落している可能性が高い。この欠陥修正に対しては、ここで説明する欠陥種Cの修正509を継続処理する。
【0083】
断線欠陥部405の修正の詳細については図4で説明したので、ここでは欠陥種弁別工程505において、配線の断線欠陥(欠陥種C)が検出された場合の手順を説明する。
【0084】
まず、配線の断線が存在する領域の保護膜を断線領域よりも広い領域にわたって除去加工する。すなわち、図1の修正装置において、第1のガス供給部13からArガスを細管9に供給し、画像認識にて判定された好適なマスク20を選定して、Arプラズマジェット19を形成する。そして、第2のガス供給部14から保護膜(ここでは窒化シリコン薄膜とする)のエッチング可能なCF4ガスを用いて保護膜の除去を行う。保護膜の除去状況は、観察カメラ6にて確認し、加工が不足しているようであれば、再度プラズマジェット19にて配線が露出するまでプラズマ処理を行う。
【0085】
次に、CF4ガスの代わりに第2のガス供給部14から導電率の高い金属を含むガスを、上記した配線を覆うようにして配線を形成する。配線修正部の導通が確認された後、その修正部に再び保護膜を形成し、配線の断線修正が終了する。この導通確認は、断線欠陥が発生した配線の両端部にプロービングにて導通試験を行うことで確認できる(図示せず)。また、金属膜が形成されたことを観察カメラ6と同軸に設けられた観察用カメラ6や赤外線センサ(図示せず)の撮像により、形成された金属膜の反射強度からも確認可能である。
【0086】
以上に述べたように、本発明の修正装置を用いることによって単なる異物の除去のみならず保護膜や絶縁膜の除去、配線の接続や保護膜の形成など多用な用途に適用することができる。特に、液晶表示素子のTFT基板に適用すれば、配線間の短絡、層間膜の中に存在する異物や配線の断線といった液晶表示装置の致命的な欠陥の修復が可能となる。
【0087】
なお、本発明においては、144MHzの高周波電源を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0088】
(第3の実施例)
本発明の第3の実施例は、上記修正装置に、接触マスクとなるレジストなどの樹脂系材料を塗布する塗布機構と、数μmの微細加工と数百μmの広範囲をレーザ照射できる機構を有しているレーザ加工装置を備えた、修正装置による欠陥部の正常化処理である。
【0089】
上記したプラズマジェット19は、基板16に照射されたプラズマ強度がガウス分布を有する。そのため、プラズマ照射領域の中心部から周辺部にかけて、膜厚および膜質特性分布を生じ、μmオーダの微細な加工を高精度に処理するのは困難である。そこで本実施例では樹脂系材料を用いたマスクプロセスを用いた。
【0090】
図6に、この接触マスク方式での断線欠陥部の修正手順を示す。ここでは、図6に示したTFT基板の製造工程を例に説明する。欠陥種弁別工程505までは第2の実施例と同様な処理を行う。ここで、欠陥がμmオーダであったりTFTチャネル部などのように寸法精度がその性能に大きく影響する部分であったりする場合は、接触マスク方式による修正を行うと修正装置は判断する。
【0091】
以下、図7(a)〜(c)、図8(d)〜(f)を用いて接触式マスク工程による配線修正方法を示す。なお、図7(a)〜(c)、図8(d)〜(f)において、左側の図は平面図を、右側の図は断面図(平面図の矢印における断面図)を示す。
【0092】
まず、図7(a)に示すように、基板701に形成されたゲート配線702に欠陥部703が生じ、該ゲート配線702上に絶縁膜705、保護膜704が形成されている。そして、図7(b)に示すように、数μmオーダの微細な寸法精度が必要な欠陥部703に対して塗布機構5にてレジスト材料706を塗布する(塗布工程601)。この塗布精度は、修正箇所のμmオーダの精度は不要であり、断線欠陥部703を覆う塗布ができれば良い。ここではディスペンサ方式により、膜厚1μm程度のレジストを直径約50μmで塗布した。この塗布領域は任意でよいが、少なくともこの後の工程で行うプラズマジェット19の照射領域と照射精度を考慮して、その範囲をカバーできる大きさとする。その後、レーザ装置4にて紫外光による光硬化、または赤外光による熱硬化を行い、膜厚0.5μmのマスクを得た。
【0093】
次に、レーザ加工装置4に移動し、図7(c)に示すように、欠陥部703に塗布したレジスト膜706の窓開け加工を行い(レーザ窓開け加工603)、窓開け部707を形成する。さらに、図8(d)に示すように、保護膜704、絶縁膜705に至る窓開け部708を形成し、この窓開け部708からゲート配線702の各端部を露出させる。ゲート配線702の各端部は欠陥部703の発生によって断続された部分である。レーザ加工はプラズマジェット19に比べ、光学系を組み合わせることによりμmオーダでの加工が容易に実現できる。ここでのレーザ波長は、例えばYAGレーザの第4高調波である266nmなどの紫外パルスレーザを用いると、高い形状精度加工により窓開け部708を形成することができる。また、マスクに使用しているレジスト706材料と、下層となる金属配線、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などと加工しきい値が大きく異なるため、下層に損傷を与えることなく窓開け加工が可能である。今回の加工では、YAGの第4高調波266nm波長、パルス幅10nmのレーザ発振器を用い、エネルギー0.1mJ、10ショット、スリット幅5μmにて矩形のレーザ窓開け加工602を施した。
【0094】
次に、図8(e)に示すように、窓開け部708を修正装置のプラズマ反応部3に移動して、プラズマジェット19により配線膜709を形成する。プラズマでの成膜は、窓開け部708かつレジスト塗布領域706内に行う。第1のガス供給部13からArガスを導入してプラズマジェット19を生成し、第2のガス供給部14から金属系材料となる反応性ガスを導入して金属膜709を形成する。前述したように金属膜709の堆積には、薄膜の酸化を抑制するために、ArやHeの不活性ガスやN2などの雰囲気にし、酸素を除去した環境とする。または、Hなどの還元性のガスを導入する。これにより、金属膜709は、窓開け部709とレジスト塗布部706に形成される。
【0095】
次に、再びレーザ加工装置4に移動し、図8(f)に示すように、レジスト膜706の除去加工を行う(レーザリフトオフ工程604)。ここでは、上記レジスト塗布部706のレジスト除去を行うため、窓開け加工708とは異なりレジスト塗布部706を広範囲にレーザを照射する。レーザ照射領域は数十〜数百μm範囲である。前述したように、レジスト加工エネルギーは下地層への損傷がないため、必ずしもレーザを照射する場所にレジスト膜が存在しなくてもよい。この工程により金属膜709がリフトオフされ、断線欠陥部703に新しい配線709が形成され、保護膜710を成膜して修正完了とする。
【0096】
その後、必要に応じてArプラズマジェット19に酸素を数%程度添加して、基板の表面クリーニング処理をし、修正を完了する。
【0097】
以上、本発明を実施例を用いて説明してきたが、これまでの各実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、それぞれの実施例で説明した構成は、互いに矛盾しない限り、組み合わせて用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
プラズマジェットを用いた修正装置により、従来のレーザプロセスでは困難であった欠陥も正常化が可能となり、これまで廃棄処分とされていた液晶表示素子などの製品を復活させることができるなど、工業利用上さらには環境維持の観点からその利するところは大きい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の修正装置の実施例を示す構成図である。
【図2】本発明によるプラズマジェットの細径化のための構成図である。(a)は非接触マスクを用いた場合、(b)は二重管を用いた場合の構成図である。
【図3】修正の対象となる液晶表示装置の構成を示す概略図である。(a)は断面図、(b)は画素の平面図である。
【図4】液晶表示装置のTFT基板においてゲート配線のパターン欠陥を修正する行程を示した図である。
【図5】液晶表示装置のTFT基板の製造工程及びその製造工程で発生した各種欠陥に対応させた修正方法を示したフローチャートである。
【図6】接触マスクを用いた微細箇所の修正方法を説明するフローチャートである。
【図7】接触マスクを用いた断線欠陥修正の実施例を示す行程図で、図7とともに一連の工程を示すようになっている。
【図8】接触マスクを用いた断線欠陥修正の実施例を示す行程図で、図7とともに一連の工程を示すようになっている。
【符号の説明】
【0100】
1…プラズマ生成部、2…プロセスガス、3…プラズマ反応部、4…レーザ加工機構、5…塗布機構、6…観察カメラ、7…計測装置、8…制御装置、9…プラズマ生成用細管、10…高周波電源、11…マッチングネットワーク、12…電極、13…第一のガス供給部、14…第2のガス供給部、15…点火装置、16…基板、18…ステージ、19…プラズマジェット、20…マスク、21…配管加熱機構、22…ボンベヒータ、23a、b…マスフローコントローラー、24…排気機構、25…プラズマ生成用ガスおよびバブリング用ガス、26…アシストガス、27…集光レンズ、202…貫通穴、203…外周細管、301…ガラス基板、302…配向膜、303…半導体活性層、304…ドレイン電極(配線)、305…ゲート電極(配線)、306…ソース電極、307…ブラックマトリックス、308…偏光板、309…透明電極、310…液晶分子、311…TFTアレイ基板、312…カラーフィルタ基板、401…ガラス基板、402…ゲート配線、403…絶縁膜、404…保護膜、405…断線欠陥、406…エッチング除去部、407…金属膜形成部、408…保護膜形成部、501…薄膜成膜工程、502…ホトリソ工程、503…エッチング・剥離工程、504…TFTアレイ検査工程、505…欠陥種弁別工程、506…欠陥種A修正工程、507…欠陥種B修正工程、508…欠陥種C修正工程、509…保護膜形成工程、601…マスク塗布工程、602…レーザ窓開け工程、603…プラズマ処理工程、604…レーザリフトオフ工程、605…加工状態観察工程、606…判定、607…クリーニング工程、701…TFTアレイ基板、702…ゲート配線、703…断線欠陥部、704…保護膜、705…絶縁膜、706…マスク塗布部、707…レーザ窓開け部、708…エッチング処理部、709…金属膜形成部、710…保護膜形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にパターン欠陥を有する電子回路パターンが形成された表示装置の前記パターン欠陥を修正する修正装置であって、
前記パターン欠陥の領域に局所的なプラズマの照射によって前記パターン欠陥を修正するプラズマ照射手段を備えてなることを特徴とする表示装置の修正装置。
【請求項2】
前記プラズマ照射手段は、プラズマ生成部と、第1のガス供給部と、第2のガス供給部と、開放部とを有するプラズマ反応部を備え、
前記プラズマ生成部は、プラズマ生成用細管と、このプラズマ生成用細管の外周領域に配置され、高周波電源からマッチングネットワークを介して高周波電力を供給するための電極とを備え、
前記プラズマ生成用細管の一方の端部は前記開放部の対面側から前記プラズマ反応部内に挿入され、
前記開放部に前記表示装置を保持して移動可能なステージ機構が配置され、
前記欠陥パターンの情報を検査装置から受信し、前記欠陥パターンの欠陥を認識・分類する観察機構を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の修正装置。
【請求項3】
前記第1のガス供給部から供給されるガスの物理量により、第2のガス供給部から供給された反応性ガスを分解させることを特徴とする請求項2に記載の表示装置の修正装置。
【請求項4】
前記プラズマ反応部にプラズマジェットを細径化するマスクを具備し、
前記マスクは前記プラズマ生成細管と基板の間に配置され、第2のガス供給部は、前記マスクと基板との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の修正装置。
【請求項5】
前記マスクは、絶縁体であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置の修正装置。
【請求項6】
前記第1のガス供給部から供給されるガスの物理量により、被加工物の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の修正装置。
【請求項7】
前記ガスの物理量は、少なくとも、流量、流速、ガス種、電離度のいずれかであることを特徴とする請求項3、6のいずれかに記載の表示装置の修正装置。
【請求項8】
基板の表面にパターン欠陥を有する電子回路パターンが形成された表示装置の前記パターン欠陥を修正する修正方法であって、
前記パターン欠陥の領域に局所的なプラズマの照射によって前記パターン欠陥を修正することを特徴とする表示装置の修正方法。
【請求項9】
プラズマ生成用細管の一方の端部から前記プラズマ生成用細管の内部に供給した不活性ガスに高周波電力の印加によってプラズマを発生させ、
前記プラズマ生成用細管の他方の端部と基板との間に配置したマスクを通してプラズマジェットを微細化し、
前記第1のガス供給部から供給されるガスの物理量により、第2のガス供給部から供給された反応性ガスを分解させ、前記基板上の電子回路パターンのパターン欠陥を修正することを特徴とする表示装置の修正方法。
【請求項10】
前記ガスの物理量は、少なくとも、流量、流速、ガス種、電離度のいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の表示装置の修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−78899(P2010−78899A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247112(P2008−247112)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】