説明

半導体装置の作製方法

【課題】レジストを使用することなく、薄膜加工を簡単な工程で精度良く行う方法を提案する。また、低コストで半導体装置を作製する方法を提案する。
【解決手段】基板上に第1の層を形成し、第1の層上に剥離層を形成し、剥離層側から剥離層に選択的にレーザビームを照射して一部の剥離層の付着力を低減させる。次に、付着力が低減された剥離層を除去し、残存した剥離層をマスクとして第1の層を選択的にエッチングする。また、基板上に剥離層を形成し、少なくとも剥離層に選択的に第1のレーザビームを照射して一部の剥離層の付着力を低減させる。次に、付着力が低減された剥離層を除去する。次に、残存した剥離層上に第1の層を形成し、残存した剥離層に第2のレーザビームを照射して残存した剥離層の付着力を低減させ、残存した剥離層及び当該剥離層に接する第1の層を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を有する半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」ともいう。)やMOS薄膜トランジスタに代表される半導体素子によって構成される所謂アクティブマトリクス駆動方式の表示パネル、又は半導体集積回路は、フォトマスクを使った光露光工程(以下、フォトリソグラフィー工程と示す。)によりレジストマスクを形成し、各種薄膜を選択的にエッチングすることにより製造されている。
【0003】
フォトリソグラフィー工程は、レジストを基板全面に塗布しプリベークを行った後、フォトマスクを介して紫外線等をレジストに照射してフォトマスクのパターンを露光し、現像し純水で洗浄してレジストマスクを形成する。この後、該レジストマスクをマスクとして、半導体層や配線となるべき部分以外に存在する薄膜(半導体材料、絶縁体材料、又は導電体材料で形成される薄膜)をエッチング除去して、半導体層や配線を形成している。
【0004】
また、本出願人は、400nm以下の波長を有するレーザビームを用いて、線状のビームを透光性導電膜に照射し、溝を形成する薄膜加工方法が特許文献1に記載されている。
【0005】
また、レーザビームを用いて、線状のビームを透光性を有する膜に照射し、透光性を有する膜を瞬時に溶発(アブレーション)して除去して、パターニングを行う薄膜加工方法が特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開昭63−84789号公報
【特許文献2】特開平9−152618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フォトリソグラフィー技術で用いるレジストは有機溶媒を含むため、現像で用いた廃液やレジストマスクを剥離する溶液の処分にかかるコストが高い。また、レジストマスクを用いて薄膜をエッチングする際に、ドライエッチングを用いる場合、エッチングガスとしてCFガスなどの有害物質を用いることが多く、エッチングガスの処分に多大な費用がかかる。
【0007】
また、レーザビームを用いて薄膜を選択的にアブレーションして薄膜をパターニングする場合は、薄膜の積層構造に大きく左右される。このため、薄膜トランジスタを作製するプロセスのように、複雑な積層構造においては、レーザアブレーションの適用が困難である。
【0008】
そこで、本発明は、レジストを使用することなく、薄膜加工を簡単な工程で精度良く行う方法を提案する。また、低コストで半導体装置を作製する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一は、基板上に第1の層を形成し、第1の層上に剥離層を形成し、剥離層側から剥離層に選択的にレーザビームを照射して一部の剥離層の付着力を低減させる。次に、付着力が低減された剥離層を除去し、残存した剥離層をマスクとして第1の層を選択的にエッチングすることを要旨とする。
【0010】
また、本発明の一は、透光性を有する基板上に透光性を有する第1の層を形成し、第1の層上に剥離層を形成し、透光性を有する基板側から少なくとも剥離層に選択的にレーザビームを照射して一部の剥離層の付着力を低減させる。次に、付着力が低減された剥離層を除去し、残存した剥離層をマスクとして透光性を有する第1の層を選択的にエッチングすることを要旨とする。
【0011】
また、本発明の一は、基板上に剥離層を形成し、少なくとも剥離層に選択的に第1のレーザビームを照射して一部の剥離層の付着力を低減させる。次に、付着力が低減された剥離層を除去する。次に、残存した剥離層上に第1の層を形成し、残存した剥離層に第2のレーザビームを照射して残存した剥離層の付着力を低減させ、残存した剥離層及び当該剥離層に接する第1の層を除去することを要旨とする。なお、第1の層が遮光性を有する場合、基板は透光性を有し、第2のレーザビームは基板側から照射する。また、第1の層及び基板が透光性を有する場合、第2のレーザビームは基板側からでも、第1の層側からでも照射できる。
【0012】
剥離層は、レーザビームが照射されることにより、剥離層、または剥離層に接する層のいずれかで応力が変化し、剥離層及び剥離層に接する界面に歪が生じる場合がある。このため、剥離層と剥離層の下地膜(上記第1の層)の界面において剥離が生じる。よって、選択的にレーザビームを剥離層に照射した後、付着力の低下した剥離層を除去することで、選択的に剥離層をマスクとして形成することができる。
【0013】
また、レーザビームが剥離層に接する層に照射されると、剥離層に接する層はレーザビームのエネルギーを吸収し加熱される。当該熱が剥離層に伝達し、剥離層の性質が変化する場合がある。この結果、下地膜に対する剥離層の付着力が低下する。よって、選択的にレーザビームを剥離層に接する層に照射した後、付着力の低下した剥離層を除去することで、選択的に剥離層をマスクとして形成することができる。
【0014】
また、レーザビームが剥離層に照射されると、剥離層はレーザビームのエネルギーを吸収し加熱される場合がある。当該熱により剥離層の性質が変化する。この結果、下地膜に対する剥離層の付着力が低下する。よって、選択的にレーザビームを剥離層に照射することで、選択的に剥離層を除去することができる。また、残存する剥離層をマスクとして用いることができる。
【0015】
また、上記剥離層上に透光性を有する層を形成してもよい。剥離層上に透光性を有する層を形成することにより、少なくとも剥離層にレーザビームを照射することができる。また、レーザビームが照射された剥離層、さらには剥離層に接する層は、レーザビームのエネルギーを吸収し、剥離層及び剥離層に接する層の界面における応力変化、剥離層の性質変化等により、剥離層の付着力が低下する。当該付着力の低下した剥離層を除去することで、剥離層及び透光性を有する層を選択的に加工することができる。また、透光性を有する層を形成することにより、剥離層及び剥離層に接する層においてエッチングの選択比がとりにくい材料、すなわちエッチング速度差が小さい材料を用いたとしても、加工された透光性を有する層、更には剥離層をマスクとして用いて、第1の層をエッチングすることができる。このため、透光性を有する層を剥離層上に設けることにより、剥離層及び剥離層に接する層の材料の選択の幅を広げることができる。
【0016】
また、剥離層の深さ方向にレーザビームのエネルギーを伝達させるため、光吸収層の膜厚は薄いことが好ましい。但し、剥離層上に透光性を有する層を形成せず剥離層のみとし、レーザビームの照射により加工された剥離層をマスクとして用いる場合、剥離層の膜厚が薄いと剥離層に接する層をエッチングする際に、マスクである剥離層もエッチングされてしまい、剥離層に接する層を所望の形状に形成するのが困難である。この結果、歩留まりの低下及び半導体装置の不良の原因となる。しかしながら、剥離層上に透光性を有する層を形成することで、レーザビームの照射により加工された透光性を有する層、さらには剥離層をマスクとして用いることができる。透光性を有する層の膜厚は任意に設定することが可能であるため、剥離層に接する層を加工するためのマスクとして機能させることが可能である。このため、レーザビームの照射により加工された透光性を有する層をマスクとして用いることにより、歩留まりを高めることが可能である。
【0017】
なお、レーザビームの照射方法としては、パターンが形成されるフォトマスクを用いてレーザビームを少なくとも剥離層に照射することができる。
【0018】
また、電気光学素子を有するレーザ照射装置を用いて少なくとも剥離層に選択的にレーザビームを照射することができる。電気光学素子は、CAD(計算支援設計)装置で設計されたデータにより選択的にレーザビームを照射する位置及び面積を制御することが可能である。このため、フォトマスクを用いずとも少なくとも剥離層に選択的にレーザビームを照射することができる。
【0019】
なお、本発明において、表示装置とは、表示素子を用いたデバイス、即ち画像表示デバイスを指す。また、表示パネルにコネクター、例えばフレキシブルプリント配線(FPC:Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)やCPUが直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0020】
レーザビームの照射により付着力が低下する剥離層を用いて選択的に剥離層の付着力を低下させ、当該付着力の低下した剥離層を除去し、残存した剥離層をマスクとして用いることができる。また、当該マスクを用いて薄膜をエッチングして所望の場所に所望の形状で加工することができる。
【0021】
また、レーザアブレーションを用いず、剥離層の付着力の変化を用いて、選択的に剥離層を加工することができる。レーザアブレーションのようなアブレーション層の気化と急激な体積膨張による爆発的な過程を必要とせず、少ないエネルギー密度のレーザビームを、更には少ないショット数で剥離層に照射することで、薄膜を所望の形状に加工することができる。このため、薄膜や薄膜の下地となる層へのダメージを抑制することが可能である。この結果、積層構造の一部である薄膜をも選択的に加工することができる。また、スループットの向上及びコスト削減が可能である。
【0022】
また、剥離層にレーザビームを選択的に照射してマスクを形成し、当該マスクを用いて薄膜を加工することができる。このため、マスクを形成する際レーザビームの大きさを制御することで、マスクを微細な形状に加工することも容易である。このため、加工される薄膜の形状の選択幅を広げることが可能であり、微細化も可能である。
【0023】
また、剥離層上に引っ張り応力を有する透光性を有する層を形成すると、剥離層において、レーザビームが照射された領域と照射されない領域との界面において応力集中が高まり、当該界面においてクラックが発生しやすくなる。即ち、透光性を有する層の膜厚方向に亀裂が入る。このため、剥離層の付着力が低下するとともに、透光性を有する層104が脆くなる。このため、レーザビームが照射された剥離層及び透光性を有する層を、容易に除去することができる。また、残渣少なく剥離層及び剥離層上の透光性を有する層を除去することができる。また、より低いレーザビームのエネルギー及び少ないショット数で剥離層の付着力を低減することができる。
【0024】
以上のことから、本発明により、従来のフォトリソグラフィー技術で必要であったレジストを用いずとも、薄膜を任意の形状に加工することができる。また、レジストおよびレジストの現像液を使用しないため、大量の薬液や水を必要としない。以上のことから、従来のフォトリソグラフィー技術を用いたプロセスと比較して、工程の大幅な簡略化及びコストの低減が可能である。
【0025】
このように、本発明を用いることによって、半導体装置の作製における薄膜加工を簡単な工程で精度良く行うことが可能である。また、低コストで、スループットや歩留まり高く半導体装置を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、各図面において共通の部分は同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、フォトリソグラフィー工程を経ずとも、レーザビームを用いて薄膜を加工するプロセスについて、以下に示す。図1は、基板上に選択的に任意の形状の層を形成する工程を示す断面図である。
【0028】
図1(A)に示すように、基板100の片側に下地膜として機能する層(以下、下地層101と示す。)、下地層101上に第1の層102、第1の層102上に剥離層103を形成する。
【0029】
基板100としては、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板、セラミック基板等を適宜用いることができる。また、プリント配線基板やFPCを用いることができる。基板100がガラス基板やプラスチック基板の場合、320mm×400mm、370mm×470mm、550mm×650mm、600mm×720mm、680mm×880mm、1000mm×1200mm、1100mm×1250mm、1150mm×1300mmのような大面積基板を用いることができる。ここでは、基板100としてガラス基板を用いる。
【0030】
下地膜として機能する下地層101は必ずしも必須ではないが、後に第1の層102をエッチングする際に、基板100がエッチングされるのを防止する機能を有すため、設けることが好ましい。下地層101は、適する材料を適宜用いて形成すればよい。代表的には、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム等がある。ここでは、下地層101として、厚さ50〜200nmの酸化窒化珪素層をCVD法により形成する。
【0031】
第1の層102は、電極、画素電極、配線、アンテナ、半導体層、絶縁層、プラズマディスプレイの隔壁、蛍光体等の作製する部位に合わせて、導電性材料、半導体材料、絶縁性材料を適宜用いて形成すればよい。なお、第1の層102は単層でも積層でもよい。
【0032】
第1の層102が半導体材料で形成される場合、半導体材料としては、シリコン、ゲルマニウム等を用いることができる。また、非晶質半導体、非晶質状態と結晶状態とが混在したセミアモルファス半導体(SASとも表記する)、非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができる微結晶半導体、及び結晶性半導体膜から選ばれたいずれかの状態を有する膜を用いることができる。さらには、リン、ヒ素、ボロン等のアクセプター型元素又はドナー型元素が含まれていても良い。なお上記半導体材料に限定される物ではなく、半導体材料であれば適宜用いることができる。
【0033】
第1の層102が導電材料で形成される場合、導電材料としては、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、バリウム(Ba)から選ばれた元素を用いることができる。また、該元素を主成分とする合金材料、窒素化合物等の単層または積層で形成することができる。また、酸化タングステンを含むインジウム酸化物(IWO)、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物(IWZO)、酸化チタンを含むインジウム酸化物(ITiO)、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物(ITTiO)インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物(ITSO)などの透光性を有する導電性材料も用いることができる。なお上記導電性材料に限定される物ではなく、導電性材料であれば適宜用いることができる。
【0034】
絶縁性材料としては、上記導電性材料元素の酸素化合物、窒素化合物、炭素化合物、若しくはハロゲン化合物の単層で形成することができる。また、これらの積層を用いることができる。代表的には、窒化アルミニウム、窒化珪素、酸化珪素、シリコンカーバイド、窒化炭素、塩化アルミニウム等がある。また、ポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリルなどの有機樹脂を用いることができる。また、シロキサン、ポリシラザン等を用いることができる。なお上記絶縁性材料に限定される物ではなく、絶縁性材料であれば適宜用いることができる。
【0035】
ここでは、第1の層102として、厚さ50〜300nmのタングステン層をスパッタリング法により形成する。
【0036】
剥離層103は、レーザビームを吸収して付着力が低下する材料を用いて形成する。剥離層103の代表例としては、金属酸化物があり、その代表例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化クロム、酸化テクネチウム、酸化レニウム、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化オスミウム、酸化コバルト、酸化ロジウム、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化パラジウム等がある。なお、金属酸化物は、金属元素の価数により酸素の結合数が異なり、また吸収する光の波長も異なる。このため、のちに剥離層103に照射するレーザビームの波長は、剥離層にあわせて適宜選択する。
【0037】
剥離層103の形成方法としては、塗布法、蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、又はCVD法(Chemical Vapor Deposition)を用いることができる。また、膜厚の薄い導電層を成膜した後、加熱して酸化物層を剥離層103として形成することができる。また、第1の層102が金属の場合、第1の層の表面を酸化して剥離層を形成することができる。第1の層の表面の酸化方法としては、酸素雰囲気における加熱(電気炉またはランプを用いた加熱)、酸素プラズマ、一酸化二窒素プラズマ、オゾンプラズマ等のプラズマ処理、酸素を用いたアッシング、オゾン水、水等の酸化力を有する液体による酸化処理等がある。ここでは、剥離層103として、第1の層102のタングステン層の表面を一酸化二窒素プラズマ処理して、厚さ5〜50nm、好ましくは10〜30nmの酸化タングステン層を形成する。
【0038】
次に、剥離層103及び第1の層102にレーザビーム105を照射する。ここでは、のちに第1の層102が除去される領域と重畳する剥離層103にレーザビームを照射する。
【0039】
レーザビーム105としては、少なくとも剥離層103に吸収されるエネルギーを有するものを選択する。または、剥離層103及び第1の層102に吸収されるエネルギーを有するものを適宜選択する。この場合、剥離層103がレーザビームを吸収する量は100%ではなく、一部のレーザビームが剥離層103を透過し、当該透過したレーザビームが第1の層102で吸収される。代表的には、紫外領域、可視領域、又は赤外領域のレーザビームを適宜選択して照射する。
【0040】
ここで、本発明に用いることが可能なレーザ照射装置について、以下に示す。
【0041】
図7で示すレーザ照射装置は、フォトマスクを用いて基板100上の少なくとも剥離層にレーザビームを照射する装置の模式図である。
【0042】
図7において、レーザ照射装置1700は、レーザ発振器1702と、レーザビームを整形する第1の光学系1704と、レーザビームを均一化する第2の光学系1706と、フォトマスク1708と、第3の光学系1710と、ステージ1712とを具備している。マスクホルダ1720には、フォトマスク1708が配置される。ステージ1712には、基板100が配置される。
【0043】
レーザ発振器1702で発振して得られたレーザビームは、第1の光学系1704を通り整形される。整形されたレーザビームは、第2の光学系1706を通り、均一化される。そして、整形され、均一化されたレーザビームがフォトマスク1708を通過し、第3の光学系1710内で所望の倍率に縮小され、ステージ1712上に保持された基板100上にパターンを結像する。
【0044】
レーザ発振器1702としては、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ(ArF、KrF、XeCl)などの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザ発振器、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、出力が比較的に安定している利点を有している。
【0045】
また、レーザビーム105は、連続発振のレーザビームやパルス発振のレーザビームを適宜適用することができる。パルス発振のレーザビームにおいては、通常、数十Hz〜数kHzの周波数帯を用いるが、それよりも著しく高い10MHz以上の発振周波数を有するパルス発振レーザを用いてもよい。
【0046】
第1の光学系1704は、レーザ発振器1702から得られたレーザビームを所望の形状に整形するための光学系である。具体的には、レーザビームの断面形状を、円形、楕円形、矩形等の面状、または線状(厳密には、細長い長方形状)等に整形する。例えば、第1の光学系1704にエキスパンダ等を用いて、レーザビームのビーム径を調整すればよい。その他、レーザビームの偏光方向を揃えるポーラライザーや、レーザビームのエネルギーを調整するアテニュエーター、スペクトロメーター等を設けてもよい。
【0047】
第2の光学系1706は、第1の光学系1704により整形されたレーザビームのエネルギー分布を均一化するための光学系である。具体的には、フォトマスク1708に照射されるレーザビームのエネルギー分布を均一化する。例えば、ホモジナイザ等を用いて、レーザビームのエネルギー分布を均一化すればよい。また、レーザビームが効率良くフォトマスク1708に照射されるように、ホモジナイザとフォトマスク1708との間にフィールドレンズ等を設けて集光させてもよい。
【0048】
ミラー1707は、第2の光学系1706でエネルギー分布が均一化されたレーザビームの光路を制御するために設けている。ここでは、ミラー1707に照射されたレーザビームが鉛直方向に曲げられる。
【0049】
フォトマスク1708としては、バイナリーマスクを用いることができる。バイナリーマスクは、石英等の透光性を有する基板上に、クロムや酸化クロム等の光を吸収する遮光層が選択的に形成されている。遮光層が形成されない領域において、光を透過することができる。
【0050】
また、光吸収層に照射されるレーザビームのエネルギーが高いとき、透光性を有する基板及び遮光層の間に反射層を形成することが好ましい。反射層を設けることにより、遮光層におけるレーザビームの吸収量を低減することができる。このため、レーザビームの光吸収によるエネルギーの熱転化及び当該熱よる遮光層のパターンが変形することを回避することができる。
【0051】
反射層としては、誘電体ミラーや反射性を有する層を用いることができる。誘電体ミラーとは、屈折率の異なる2種類の透明な絶縁層を交互に積層したものである。このとき2種類の透明な絶縁層の屈折率が大きいほど、また層数が多いほど反射効率は高くなる。なお、誘電体ミラーは照射されるレーザビームの波長により適宜積層する材料を選択する。例えば可視光を反射する誘電体ミラーの積層構造としては、二酸化チタン及び二酸化珪素の積層構造、硫化亜鉛及びフッ化マグネシウムの積層構造、アモルファスシリコン及び窒化珪素の積層構造などがある。
【0052】
また、反射性を有する層として、アルミニウム、金、銀、ニッケル等で形成される層を用いてもよい。さらには、誘電体ミラー及び反射性を有する層を積層させてもよい。
【0053】
また、フォトマスク1708として、位相シフトマスクを用いることができる。位相シフトマスクを用いることにより、微細な形状、代表的には幅が小さい層、または幅及び長さが小さい層を形成することができる。
【0054】
第3の光学系1710は、フォトマスク1708を通過してパターン化されたレーザビームを縮小するための光学系である。レーザビームはフォトマスク1708の透過領域のみ透過するため、フォトマスク1708を通過したレーザビームは、透過領域で形成されるパターンに対応したものとなる。第3の光学系1710は、フォトマスク1708によるレーザビームのパターン形状を維持したまま、縮小して基板100に結像する光学系である。例えば、5分の1、10分の1等に縮小される縮小レンズ、代表的にはプロジェクションレンズを用いればよい。
【0055】
基板100は、ステージ1712で保持され、XYZθ方向に移動することができる。
【0056】
また、基板100を保持するステージ1712に代えて、ガスを吹きつけて基板100を浮上させる方法で基板を移動させてもよい。大面積の基板サイズとしては、590mm×670mm、600mm×720mm、650mm×830mmが製造ラインで使用されており、さらには680mm×880mm、730mm×920mm、またはこれら以上のサイズが使用されることになると推測される。一辺が1mを越えるガラス基板を用いる場合には、基板の自重による撓みを軽減できる搬送方法、例えばガスを吹きつけて基板を浮上させる方法で基板を移動させることが好ましい。
【0057】
また、横に置かれた基板を保持するステージに代えて、立っている基板を保持する基板ホルダーを用いても良い。基板を立てながらレーザビームを照射することにより、飛散物を基板から除去することができる。
【0058】
レーザ照射装置1700には、フォトマスク1708にレーザビームが均一に照射されているかを監視、制御するための受光素子を設けてもよい。その他、基板にレーザビームの焦点を合わせるためのオートフォーカス機構として、受光素子を設けてもよい。受光素子の代表例としては、CCDカメラがある。
【0059】
また、光学系を用いて、線状レーザビーム、矩形状レーザビーム、円形状レーザビーム等の面積の大きな面状レーザビームに加工することで、短時間で複数の領域にレーザビームを照射することが可能になる。したがって、大面積基板に、短時間で多くのパターンを形成することも可能となり、量産性を向上させることができる。
【0060】
図8で示すレーザ照射装置は、レーザビームを照射する面積及び位置をCAD装置で設計されたデータを用いて制御することができる。このようなレーザ照射装置を用いることにより、フォトマスクを用いずとも選択的にレーザビームを照射することができる。
【0061】
図8はレーザ照射装置1000の一例を示す斜視図である。射出されるレーザビームはレーザ発振器1003(YAGレーザ装置、エキシマレーザ装置など)から出力され、ビーム形状を矩形状とするための第1の光学系1004と、ビーム形状を整形するための第2の光学系1005と、ビームのエネルギーを均一化するための第3の光学系1006とを通過し、反射ミラー1007で光路を鉛直方向に曲げられる。その後、剥離層103に照射されるレーザビームの面積及び位置を選択的に調節する電気光学素子1008にレーザビームを通過させてレーザビームを被照射面に照射する。
【0062】
レーザ発振器1003としては、図7に示すレーザ発振器1702を適宜用いることができる。また、第1の光学系1004としては、スリット等を用いることができる。また、第2の光学系1005、第3の光学系1006、及びステージ1009はそれぞれ、図7の第1の光学系1704、第2の光学系1706、及び基板ステージ1712を適宜用いることができる。
【0063】
制御装置1016は、代表的にはコンピュータがあり、半導体装置の設計データを格納する記憶部(RAM、ROM等)や、CPU等を含むマイクロプロセッサを有する。制御装置1016から、電気光学素子に半導体装置を設計するためのCADデータに基づく電気信号をレーザ照射装置に入力することで、電気光学素子により基板に照射するレーザビームの位置及び面積を制御する。また、被処理基板を固定したステージを移動させる場合、レーザ発振器の射出タイミングと、電気光学素子に入力する電気信号と、ステージの移動速度を同期させることで、レーザビームの照射位置及び面積を制御することができる。
【0064】
電気光学素子1008は、半導体装置の設計CADデータに基づく電気信号を入力することで、光シャッターまたは光リフレクターとして機能し、可変のマスクとして機能する。光シャッターとなる電気光学素子に入力する電気信号を制御装置1016により変更することで、レーザビームの面積及び位置を変更することが可能である。即ち、薄膜の加工する面積及び位置を選択的に変更することができる。このため、レーザビームの形状を線状、矩形状、さらには任意の形状とすることができ、複雑な形状のレーザビームをも照射することができる。
【0065】
電気光学素子1008としては、選択的に光透過する面積を調節できる素子、例えば、液晶材料、エレクトロクロミック材料を有する素子がある。また選択的に光反射が調節できる素子、例えばデジタルマイクロミラーデバイス(DMDとも呼ぶ。)がある。DMDとは空間光変調器の一種であり、静電界作用などによって固定軸周りに回転するマイクロミラーと呼ばれる複数の小型ミラーがSi等の半導体基板にマトリクス状に配置されたデバイスである。また、他の電気光学素子としては、電気光学効果により透過光を変調する光学素子であるPLZT素子を用いることができる。なお、PLZT素子とは、鉛、ランタン、ジルコン、チタンを含む酸化物セラミックスで、それぞれの元素記号の頭文字からPLZTと呼ばれているデバイスである。PLZT素子は、透明なセラミックで光を透過するが、電圧をかけると光の偏光の向きを変えることができ、偏光子と組み合わせることによって光シャッターが構成される。ただし、電気光学素子1008は、レーザビームを通過させても耐えうるデバイスを用いる。
【0066】
電気光学素子1008は、レーザビームが通過できる領域を被処理基板と同じ大きさとすることができる。電気光学素子において、レーザビームが通過できる領域が被処理基板と同じ大きさ場合、被処理基板と電気光学素子の位置合わせをしてそれぞれの位置を固定したままレーザビームを走査する。なお、この場合、1回の薄膜の加工において、電気光学素子に入力する電気信号は1回とする。
【0067】
レーザ照射装置の小型化を図るために、電気光学素子を少なくとも矩形ビームが通過または反射できるような細長い矩形としてもよい。例えば、細長いDMDを用いる場合、反射の角度を制御するマイクロミラーの個数を少なくすることができるため、変調速度を速くすることができる。また、細長い液晶を用いた電気光学素子を用いる場合にも、走査線や信号線が少なくなり駆動速度を速くすることができるので、同様の効果を得ることができる。また、電気光学素子を細長い矩形とした場合、1回の薄膜の加工において、電気光学素子に入力する電気信号を変更する回数は複数回とする。矩形ビームの走査に同期するように、電気光学素子に入力する電気信号を順次変更させることで、薄膜の加工が連続的に行われる。
【0068】
また、照射面に照射されるレーザビームのスポットの形状は、矩形状または線状とすることが好ましく、具体的には、短辺が1mm〜5mm、且つ長辺が10mm〜50mmの矩形状とすればよい。収差の少ないレーザビームのスポットとしたい場合には、5mm×5mm〜50mm×50mmの正方形としてもよい。また、大面積基板を用いる場合には、処理時間を短縮するため、レーザビームのスポットの長辺を20cm〜100cmとすることが好ましい。さらには、1ショットあたりの面積を上記大きさとし、その中で複雑なスポット形状のレーザビームが照射されるように電気光学素子を制御してもよい。例えば、配線の形状と同様のスポット形状を有するレーザビームを照射することもできる。
【0069】
さらには、矩形状または線状のレーザビームを重ね合わせて複雑なスポット形状のレーザビームを用いてもよい。
【0070】
また、図8または図7に示すレーザ発振器及び光学系を複数設置して大面積の基板を短時間に処理してもよい。具体的には、基板ステージの上方に複数の電気光学素子を設置して、それぞれに対応するレーザ発振器からレーザビームをそれぞれ照射して基板1枚における処理面積を分担してもよい。
【0071】
また、レーザ発振器1003と、基板100との間の光路上に複数の光学系を配置し、さらに微細な加工を行ってもよい。代表的には、基板より大きい電気光学素子及び縮小用の光学系を有するステッパー方式を用い縮小投影することで、レーザビームの面積及び位置を微細に加工することができる。また、ミラープロジェクジョン方式を用いた等倍投影をしてもよい。
【0072】
また、制御装置に電気的に接続する位置アライメント手段を設置することが好ましい。照射位置のアライメントは、CCDカメラ等の撮像素子を設置し、撮像素子から得られるデータを基にレーザ照射を行うことで高精度に行うことができる。また、本レーザ照射装置で所望の位置にレーザビームを照射して位置マーカを形成することもできる。
【0073】
また、レーザビームの照射によって粉塵が生じた場合、粉塵が被処理基板表面に付着しないようにするためのブロー手段、または粉塵のバキューム手段をさらにレーザ照射装置1700、1000に設置することが好ましい。レーザビームの照射を行いながら、同時にブロー、または粉塵のバキュームを行うことで粉塵が基板表面に付着することを防止できる。
【0074】
なお、図8及び図7は一例であり、レーザビームの光路に配置する各光学系や電気光学素子の位置関係は特に限定されない。例えば、レーザ発振器1003を基板100の上方に配置し、レーザ発振器1003から射出するレーザビームが基板面に垂直な方向となるように配置すれば、反射ミラーを用いずともよい。また、各光学系は、集光レンズ、ビームエキスパンダ、ホモジナイザ、または偏光子などを用いればよく、これらを組み合わせてもよい。また、各光学系としてスリットを組み合わせてもよい。
【0075】
被照射面上でレーザビームの照射領域を2次元的に、適宜、レーザビームまたは基板を走査させることによって、基板の広い面積に照射を行うことができる。ここでは、基板を保持している基板ステージ1009をXYZθ方向に移動させる移動手段(図示しない)で走査を行う。
【0076】
また、制御装置1016は、基板ステージ1009をXYZθ方向に移動させる移動手段も制御できるように連動させることが好ましい。さらに、制御装置1016は、レーザ発振器1003も制御できるように連動させることが好ましい。さらに、制御装置1016は、位置マーカを認識するための位置アライメント機構と連動させることが好ましい。
【0077】
レーザビーム105は、剥離層103の付着力を低下させるのに十分なエネルギー密度、代表的には、50mJ/cm〜500mJ/cmのエネルギー密度範囲内とすることができる。また、レーザビーム105としてエキシマレーザビーム(波長308nm)を用いる場合、剥離層103の付着力を低下させるのに十分なエネルギー密度としては、200mJ/cm〜300mJ/cmが好ましい。レーザビーム105が少なくとも剥離層103に照射されると、レーザビームが照射された剥離層の付着力が低下する。当該付着力が低下した剥離層を除去することで、図1(B)に示すように、第1の層102上に、剥離層113を形成することができる。
【0078】
ここでは、レーザ照射装置として図7に示すような装置を用い、レーザ発振器1702としてYAGを用いて、YAGの第2高調波(波長532nm)をレーザビーム105として用いる。
【0079】
なお、レーザビーム105の照射は大気圧下、または減圧下で行うことができる。減圧下で行うと、剥離層103にレーザビームを照射することで、剥離層103の一部の飛散物の回収が容易となる。
【0080】
さらには、基板100を加熱しながらレーザビームを剥離層103に照射してもよい。
【0081】
こののち、レーザビームの照射により付着力が低下した剥離層を除去する。除去方法としては、剥離層が溶融可能な溶液による洗浄処理等の化学的除去がある。また、水洗除去、粘着部材に付着力が低下した剥離層を貼り付けることによる剥離除去、減圧による吸引除去等の物理的除去を用いることもできる。さらには、化学的除去及び物理的除去を組み合わせることもできる。ここでは、基板を水洗して付着力が低下した剥離層を除去する。
【0082】
以上の工程により、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、レーザビームを少なくとも剥離層に照射することで、基板上に選択的に剥離層の一部を用いてマスクを形成することができる。
【0083】
次に、図1(C)に示すように、残存する剥離層113をマスクとして、第1の層102をエッチングして第2の層112を形成する。第1の層102のエッチング方法としては、ドライエッチング、ウェットエッチング等を適宜用いることができる。ここでは、フッ化炭素ガスをエッチングガスとして用いてタングステン層をエッチングする。代表的には、CF及びClの混合気体や、CHF及びHeの混合気体をエッチングガスとして用いることができる。
【0084】
なお、第1の層102及び剥離層113において、エッチング速度差が大きい場合、代表的には、第1の層102の方がエッチング速度が速い場合、第1の層102及び剥離層113の膜厚は適宜設定すればよい。
【0085】
一方、第1の層102及び剥離層113において、エッチング速度差が小さい場合、第1の層102の膜厚を剥離層113の膜厚より薄くすることが好ましい。この結果、第1の層102をエッチングする際、剥離層113が先にエッチングし終わることを回避することができる。
【0086】
次に、図1(D)に示すように、マスクとして機能する剥離層113を除去する。剥離層113の除去方法としては、ドライエッチングまたはウェットエッチング等がある。また、マスクとして機能する剥離層113に再度レーザビームを照射した後、図1(B)で行ったような付着力の低下した剥離層の除去方法を適宜行っても良い。
【0087】
なお、マスクとして機能する剥離層113の除去方法として、ドライエッチングまたはウェットエッチングを用いる場合は、下地層101及び剥離層113において、エッチング速度差が大きい場合、代表的には、下地層101の方がエッチング速度が遅い場合、下地層101及び剥離層の膜厚は適宜設定すればよい。
【0088】
一方、下地層101及び剥離層において、エッチング速度が小さい場合、下地層101の膜厚を剥離層の膜厚より厚くすることが好ましい。この結果、剥離層113をエッチングする際、下地層101ともに基板100までもエッチングすることを回避することができる。
【0089】
以上の工程により、所定の場所に所定の形状の第2の層112を形成することができる。即ち、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、基板上に選択的に任意の形状の層を形成することができる。
【0090】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる工程により、所望の形状を有する層の形成する工程を、図2を用いて説明する。本実施の形態では、実施の形態1と比較して、剥離層にレーザビームを照射する方向が異なる。
【0091】
図2(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板100上に下地層101を形成し、下地層101上に第1の層121を形成し、第1の層121上に剥離層103を形成する。
【0092】
本実施の形態では、基板100、下地層101、及び第1の層121がのちに剥離層に照射するレーザビームを透過する材料を用いて形成することが好ましい。即ち、後に照射されるレーザビームのエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有する材料を用いて形成する。レーザビームの波長が可視光の場合、基板100の代表例としては、ガラス基板、石英基板、可視光を透過するプラスチック基板等がある。しかしながら、当該基板に限定されるものではない。
【0093】
レーザビームの波長が可視光の場合、下地層101の代表例としては、酸化珪素層、窒化珪素層、酸化窒化珪素層、可視光を透過する有機樹脂層等がある。しかしながら、当該材料で形成される層に限定されるものではない。
【0094】
レーザビームの波長が可視光の場合、第1の層121の代表例としては、IWO、IWZO、ITiO、ITTiO、ITO、IZO、ITSOなどの透光性を有する導電性材料、可視光を透過する有機樹脂等がある。しかしながら、当該材料で形成される層に限定されるものではない。
【0095】
ここでは、基板100としてガラス基板を用い、下地層101として酸化窒化珪素層をCVD法により形成し、第1の層121として厚さ50〜200nmのITOをスパッタリング法により形成し、剥離層103として蒸着法により厚さ5〜50nm、好ましくは10〜30nmの酸化モリブデン層を形成する。
【0096】
次に、実施の形態1に示すレーザ照射装置を用いて、基板100側から剥離層103にレーザビーム122を照射する。具体的には、基板100、下地層101、及び第1の層121を介して剥離層103にレーザビーム122を照射する。ここでは、のちに第1の層121の残存させない領域を介して、剥離層103にレーザビームを照射する。ここでは、レーザビーム122として、可視光であるYAGの第2高調波を用いる。
【0097】
この結果、図2(B)に示すように、レーザビームが照射された剥離層の一部の付着力が低下する。こののち、実施の形態1に示す除去方法により、付着力が低下した剥離層を除去する。
【0098】
次に、図2(C)に示すように、実施の形態1と同様に、残存する剥離層113をマスクとして、第1の層121をエッチングする。ここでは、ウェットエッチング法によりシュウ酸を含む水溶液により第1の層121をエッチングする。この結果、第2の層141を形成することができる。
【0099】
この後、図2(D)に示すように、剥離層113をエッチングして、第2の層141を露出してもよい。
【0100】
以上の工程により、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、基板上に選択的に任意の形状の層を形成することができる。
【0101】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる工程により、所望の形状を有する層の形成する工程を、図3を用いて説明する。本実施の形態では、実施の形態1及び2と比較して、マスクとして機能する剥離層を形成する順序が異なる。
【0102】
図3(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板100上に下地層101を形成する。次に、下地層101上に剥離層103を形成する。
【0103】
本実施の形態では、基板100及び下地層101は、のちに剥離層に照射するレーザビームを透過する材料を用いて形成することが好ましい。基板100及び下地層101の代表例は、実施の形態2に示す基板100及び下地層101の代表例を適宜用いることができる。
【0104】
次に、実施の形態1に示すレーザ照射装置を用いて、剥離層103側から剥離層103にレーザビーム105を照射し、剥離層103の一部の付着力を低下させる。ここでは、のちに形成される第1の層133の残存させたい領域に剥離層が残存しないように、レーザビームを照射する。即ち、のちに形成される第2の層151が形成される領域と重畳する剥離層103にレーザビームを照射する。こののち、付着力の低下した剥離層を、実施の形態1に示す除去方法を用いて除去する。なお、レーザビーム105として、基板100及び下地層101を透過することが可能な波長の場合は、レーザビーム105を基板100側から照射することもできる。
【0105】
この結果、図3(B)に示すように、レーザビーム105が照射されない領域に、マスクとして機能する剥離層131を形成することができる。
【0106】
次に、図3(C)に示すように、下地層101の露出部及びマスクとして機能する剥離層131の露出部に第1の層133を形成する。第1の層133としては、実施の形態1で示す第1の層102と同様の材料を用いて形成することができる。
【0107】
次に、基板100側から剥離層131及び第1の層133にレーザビーム122を照射し、剥離層131の付着力を低下させる。こののち、付着力の低下した剥離層131を、実施の形態1に示す除去方法を用いて除去する。この際、剥離層131に接する第1の層133も除去される。この結果、図3(D)に示すように、第2の層151を形成することができる。なお、レーザビーム122が第1の層133を透過する波長である場合、レーザビーム122は第1の層の表面側から照射するができる。
【0108】
以上の工程により、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、基板上に選択的に任意の形状の層を形成することができる。
【0109】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態1乃至3と比較して、剥離層及び第1の層の膜厚及び材料の選択幅を広げることが可能なプロセスについて図4を用いて説明する。なお、ここでは実施の形態1を用いて説明する。
【0110】
図4(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板100上に下地層101を形成し、下地層101上に第1の層102を形成し、第1の層102上に剥離層103を形成する。次に、剥離層103上に透光性を有する層104を形成する。
【0111】
透光性を有する層104は、後に照射されるレーザビームを透過することが可能である材料を用いて形成する。なお、透光性を有する層104が、後に加工される第1の層102と比較してエッチング速度の遅い材料を適宜選択して形成することが好ましい。レーザビームを透過する材料としては、後に照射されるレーザビームのエネルギーよりも大きなバンドギャップエネルギーを有する材料を用いて形成する。
【0112】
また、透光性を有する層104の膜厚は、膜厚が薄いほど好ましい。これは、レーザビームが剥離層及び第1の層に照射された場合、一部のレーザビームが透光性を有する層でも吸収される場合がある。しかしながら、透光性を有する層104が薄いとレーザビームのエネルギーを低減することが可能であるため、第1の層や、第1の層に接する層へのダメージを低減することができる。また、透光性を有する層104の膜厚を薄くすると、レーザビームが照射されたとき、透光性を有する層104が脆弱化しやすくなる。このため、レーザビームのエネルギーを低減することが可能である。
【0113】
また、透光性を有する層104は、引っ張り応力を有する層で形成することが好ましい。このような層を形成すると、剥離層において、レーザビームが照射された領域と照射されない領域との界面において応力集中が高まり、当該界面においてクラックが発生しやすくなる。即ち、透光性を有する層の膜厚方向に亀裂が入る。このため、剥離層の付着力が低下するとともに、透光性を有する層104が局所的に脆くなる。このため、レーザビームが照射された剥離層及び透光性を有する層を、容易に除去することができる。また、残渣少なく剥離層及び剥離層上の透光性を有する層を除去することができる。また、より低いレーザビームのエネルギー及び少ないショット数で剥離層の付着力を低減することができる。
【0114】
第1の層102が導電層または半導体層の場合、透光性を有する層104は絶縁層で形成することが好ましい。代表的には、窒化珪素、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム等を用いればよい。ここでは、引っ張り応力を有する厚さ10〜40nmの酸素を含む窒化珪素層をCVD法により形成する。
【0115】
次に、透光性を有する層104を介して少なくとも剥離層103にレーザビーム105を照射する。ここでは、のちに第1の層102を選択的に除去する領域と重畳する剥離層103にレーザビームを照射する。この結果、剥離層103の一部の付着力が低下する。こののち、付着力の低下した剥離層及びその上に設けられる透光性を有する層を実施の形態1に示す除去方法により除去する。ここでは、フッ酸含有水溶液を用いて付着力の低下した剥離層及びその上に設けられる透光性を有する層を除去する。
【0116】
この結果、図4(B)に示すように、剥離層103及び透光性を有する層のそれぞれ一部が除去され、剥離層113及び透光性を有する層114の積層が残存する。
【0117】
以上の工程により、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、レーザビームを剥離層に照射することで、基板上に選択的に透光性を有する層及びを剥離層の一部を用いてマスクを形成することができる。
【0118】
次に、図4(C)に示すように、残存する剥離層113及び透光性を有する層114をマスクとして、第1の層102をエッチングして第2の層112を形成する。なお、このとき、マスクとして機能する透光性を有する層114も若干エッチングされる。エッチングされた透光性を有する層を115と示す。
【0119】
次に、図4(D)に示すように、マスクとして機能する剥離層113及び透光性を有する層115を除去する。透光性を有する層115の除去方法としては、ドライエッチングまたはウェットエッチングを用いることができる。この場合は、下地層101及び透光性を有する層115において、エッチング速度差が大きい場合、代表的には、下地層101の方がエッチング速度が遅い場合、下地層101及び透光性を有する層115の膜厚は適宜設定すればよい。
【0120】
一方、下地層101及び透光性を有する層115において、エッチング速度が小さい場合、下地層101の膜厚を透光性を有する層115の膜厚より厚くすることが好ましい。この結果、透光性を有する層115をエッチングする際、下地層101ともに基板100までもエッチングすることを回避することができる。なお、透光性を有する層115のエッチング時にエッチングされた下地層101を下地層116と示す。
【0121】
以上の工程により、所定の場所に所定の形状の第2の層112を形成することができる。
【0122】
以上の工程により、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、基板上に選択的に任意の形状の層を形成することができる。また、剥離層上に引っ張り応力を有する透光性を有する層を形成することで、残渣少なく剥離層及び剥離層上の透光性を有する層を除去することができる。また、より低いレーザビームのエネルギー及び少ないショット数で剥離層の付着力を低減することができる。
【0123】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態1乃至3と比較して、剥離層及び第1の層の膜厚及び材料の選択幅を広げることが可能なプロセスについて図5を用いて説明する。なお、ここでは実施の形態2を用いて説明する。
【0124】
図5(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板100上に下地層101を形成し、下地層101上に第1の層121を形成し、第1の層121上に剥離層103を形成する。次に、剥離層103上に透光性を有する層104を形成する。
【0125】
本実施の形態では、基板100、下地層101、及び第1の層121がのちに剥離層に照射するレーザビームを透過する材料を用いて形成することが好ましい。基板100、下地層101、及び第1の層121の代表例としては、実施の形態2に示す基板100、下地層101、及び第1の層121を適宜用いることができる。
【0126】
次に、実施の形態1に示すレーザ照射装置を用いて、基板100側から剥離層103にレーザビーム122を照射する。具体的には、基板100、下地層101、及び第1の層121を介して剥離層103にレーザビーム122を照射する。ここでは、のちに選択的に除去する第1の層121を介して剥離層103にレーザビームを照射する。
【0127】
この結果、図5(B)に示すように、レーザビームが照射された剥離層の一部の付着力が低下する。こののち、実施の形態1に示す除去方法により、付着力が低下した剥離層及び当該剥離層に接する透光性を有する層を除去する。
【0128】
次に、図5(C)に示すように、実施の形態4と同様に、残存する剥離層113及び透光性を有する層114をマスクとして、第1の層121をエッチングする。この結果、第2の層123を形成することができる。
【0129】
この後、図5(D)に示すように、剥離層113及び透光性を有する層114をエッチングして、第2の層123を露出してもよい。なお、透光性を有する層115のエッチング時にエッチングされた下地層101を下地層124と示す。
【0130】
以上の工程により、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、基板上に選択的に任意の形状の層を形成することができる。また、剥離層上に引っ張り応力を有する透光性を有する層を形成することで、残渣少なく剥離層及び剥離層上の透光性を有する層を除去することができる。また、より低いレーザビームのエネルギー及び少ないショット数で剥離層の付着力を低減することができる。
【0131】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態1乃至3と比較して、剥離層及び第1の層の膜厚及び材料の選択幅を広げることが可能なプロセスについて図6を用いて説明する。なお、ここでは実施の形態3を用いて説明する。
【0132】
図6(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板100上に下地層101を形成し、下地層101上に剥離層103を形成する。次に、剥離層103上に透光性を有する層104を形成する。
【0133】
本実施の形態では、基板100及び下地層101は、のちに剥離層に照射するレーザビームを透過する材料を用いて形成することが好ましい。基板100及び下地層101の代表例は、実施の形態2に示す基板100及び下地層101の代表例を適宜用いることができる。
【0134】
次に、実施の形態1に示すレーザ照射装置を用いて、剥離層103側から少なくとも剥離層103にレーザビーム105を照射し、剥離層103の一部の付着力を低下させる。ここでは、のちに形成される第1の層133において、残存させたい領域に剥離層が残存しないように、レーザビームを照射する。即ち、のちに形成される第2の層135が形成される領域と重畳する剥離層103にレーザビームを照射する。こののち、付着力の低下した剥離層、当該剥離層に接する透光性を有する層、及び当該透光性を有する層に接する第1の層133を、実施の形態1に示す除去方法を用いて除去する。
【0135】
この結果、図6(B)に示すように、レーザビーム105が照射されない領域に、マスクとして機能する剥離層131及び透光性を有する層132を形成することができる。
【0136】
次に、図6(C)に示すように、下地層101の露出部及びマスクとして機能する剥離層131及び透光性を有する層132の露出部に第1の層133を形成する。第1の層133としては、実施の形態1で示す第1の層102と同様の材料を用いて形成することができる。
【0137】
次に、基板100側から少なくとも剥離層131にレーザビーム134を照射し、剥離層131の付着力を低下させる。こののち、付着力の低下した剥離層131を、実施の形態1に示す除去方法を用いて除去する。この際、剥離層131に接する第1の層133も除去される。この結果、第2の層135を形成することができる。
【0138】
以上の工程により、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、基板上に選択的に任意の形状の層を形成することができる。また、剥離層上に引っ張り応力を有する透光性を有する層を形成することで、残渣少なく剥離層及び剥離層上の透光性を有する層を除去することができる。また、より低いレーザビームのエネルギー及び少ないショット数で剥離層の付着力を低減することができる。
【実施例1】
【0139】
本実施の形態は、上記実施の形態で説明した薄膜の加工方法を用いて形成した薄膜トランジスタ及び画素電極を有する液晶表示装置の作製工程一例について図面を参照して説明する。本実施例ではVA(Vertical Alignment)型液晶について示す。VA型液晶とは、液晶パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型液晶は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。本実施例では、特に画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されている。これをマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計という。以下の説明では、マルチドメイン設計が考慮された液晶パネルの画素について、製造工程に従って説明する。また、画素電極の電圧を制御する半導体素子として逆スタガ型薄膜トランジスタを用いて説明するが、トップゲートものを用いることができる。
【0140】
図9、図10、及び図15は、ゲート電極、ゲート絶縁層及び半導体層を形成する段階を示している。なお、図15は平面図であり、図中に示す切断線A−Bに対応する断面構造を図10(B)に表している。以下の説明ではこの両図を参照して説明する。
【0141】
基板600上に導電層601を形成し、導電層601上に剥離層602を形成し、剥離層602上に透光性を有する層603を形成する。
【0142】
基板600は、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノシリケートガラスなど、フュージョン法やフロート法で作製される無アルカリガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。また、ステンレス合金などの金属基板の表面に絶縁層を設けた基板を適用しても良い。ここでは、基板600としてガラス基板を用いる。
【0143】
導電層601は、チタン、モリブデン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウムなどの金属で形成する。導電層601を用いて、薄膜トランジスタのゲート電極、ゲート配線、容量配線を形成するため、低抵抗な材料を用いて形成することが好ましい。導電層601を低抵抗化するにはアルミニウムを用いることが好ましいが、この場合にはアルミニウム層の上下を、チタン、モリブデン、タンタルなどの高融点金属で挟んだ構造にすることが好ましい。これは、アルミニウムの腐蝕を防ぎ、耐熱性を向上させるためである。ここでは、スパッタリング法によりモリブデンを用いて導電層601を形成する。
【0144】
剥離層602は、レーザビームの照射により付着力が低下する材料を用いて形成する。代表的には実施の形態1で示す剥離層103の材料や作製方法を適宜用いることができる。ここでは、導電層601の表面に一酸化二窒素のプラズマを曝して、厚さ1〜10nmの酸化モリブデンからなる剥離層602を形成する。
【0145】
透光性を有する層603は、実施の形態4で示す透光性を有する層104の材料や作製方法を適宜用いることができる。ここでは、透光性を有する層603として、プラズマCVD法により厚さ20〜40nmの窒化酸化珪素層を形成する。なお、ここでは、透光性を有する層603として、引っ張り応力を有する窒化酸化珪素層を形成することで、のちに選択的に剥離層を除去するときに容易に透光性を有する層も除去できる。このため、歩留まりを向上させることができる。また、のちに照射するレーザビームのエネルギーの低下及びショット数の削減が可能で有り、スループットの向上及びコスト削減が可能である。
【0146】
次に、レーザビームを透光性を有する層603側から剥離層602及び導電層601に照射して、剥離層602の一部の付着力を低下させる。こののち、付着力の低下した剥離層及び当該剥離層上に設けられる透光性を有する層を除去する。この結果、図9に示すように、マスクとして機能する透光性を有する層603a、603b、及び剥離層602a、602bを形成する。
【0147】
ここでは、レーザビーム607としてエキシマレーザビーム(波長308nm)を用いる。このときのレーザビーム607のエネルギー密度を200〜400mJ/cm、ショット数を1〜5shot、走査速度を10〜20mm/secとして、剥離層602に照射することで、剥離層の付着力を低下するとともに、透光性を有する層を脆弱化することができる。
【0148】
レーザビームを照射することで、選択的に剥離層の付着力を低下させることが可能である。また、付着力が低下した剥離層は容易に除去しやすい。このため、残存した剥離層をマスクとして用いることができる。即ち、フォトリソグラフィー工程を用いずとも、マスクを形成することができる。
【0149】
次に、透光性を有する層603a、603b、及び剥離層602a、602bをマスクとして導電層601をエッチングする。ここでは、リン酸、酢酸、硝酸、純水を体積%で、85:5:5:5の比率で混合した混合液を用いたウェットエッチングにより導電層601をエッチングする。この結果、図9(C)に示すように、導電層604、605を形成する。導電層604はゲート電極、ゲート配線として機能し、導電層605は容量配線として機能する。
【0150】
なお、導電層604は、半導体層と重なる位置で所謂ゲート電極として機能する。すなわち電界効果型薄膜トランジスタの一種である薄膜トランジスタにおいてゲート電圧を印加する電極として機能する。ここでは、説明の便宜上、ゲート配線604と呼んで以下の説明を行うが、機能的にはゲート電極としての構成要素を備えている。また、同じ導電層から、容量配線605を形成する。容量配線605は、画素に印加した電圧を保持するために設ける容量素子の一方の電極を形成するものである。
【0151】
次に、透光性を有する層603a、603b、及び剥離層602a、602bを除去する。透光性を有する層603a、603b、及び剥離層602a、602bの除去方法は、実施の形態4で示す透光性を有する層104及び剥離層103の除去方法を適宜用いることができる。ここでは、透光性を有する層603a、603b、及び剥離層602a、602bにエキシマレーザビーム(波長308nm)を照射して剥離層の付着力を低下させた後、水洗して透光性を有する層603a、603b、及び剥離層602a、602bを除去する。
【0152】
次に、図10(A)に示すように、基板600、ゲート電極604、及び容量配線605上に絶縁層610を形成する。絶縁層610としては、スパッタリング法やプラズマCVD法を用いて、窒化珪素の単層若しくは窒化珪素及び酸化珪素の積層を形成することが好ましい。絶縁層610はゲート絶縁層として用いる。低い成膜温度でゲートリーク電流が少ない緻密な絶縁膜を形成するには、アルゴンなどの希ガス元素を反応ガスに含ませ、希ガス元素を形成される絶縁膜中に混入させると良い。ここでは、CVD法により、窒化珪素及び酸化珪素の積層を形成する。
【0153】
次に、半導体層611を形成する。半導体層611は、結晶性、非結晶性のいずれのものでもよい。また、セミアモルファス等でもよい。
【0154】
なお、セミアモルファスな半導体とは、次のようなものである。非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるものである。また少なくとも膜中の一部の領域には、0.5〜20nmの結晶粒を含んでおり、所謂微結晶半導体(マイクロクリスタル半導体)とも言われている。半導体層611がセミアモルファスの場合、半導体層611は、珪化物を含む気体をグロー放電分解(プラズマCVD)して形成する。珪化物を含む気体としては、SiH、その他にもSi、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどを用いることが可能である。この珪化物を含む気体をH、又は、HとHe、Ar、Kr、Neから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈しても良い。希釈率は2〜1000倍の範囲、圧力は0.1Pa〜133Paの範囲、電源周波数は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHz、基板加熱温度は300℃以下でよく、好ましくは100〜250℃である。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020/cm以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019/cm以下、好ましくは1×1019/cm以下とする。なお、セミアモルファスなものを有する半導体層を用いた薄膜トランジスタの移動度はおよそ1〜10m/Vsecとなる。また、スパッタリング法で形成しても良い。
【0155】
また、半導体層が結晶性のものの具体例としては、単結晶または多結晶性の珪素、或いはシリコンゲルマニウム等から成るものがある。これらはレーザ結晶化によって形成されたものでもよいし、例えばニッケル等を用いた固相成長法による結晶化によって形成されたものでもよい。
【0156】
なお、薄膜トランジスタの半導体層が非晶質の物質、例えばアモルファスシリコンで形成される場合には、薄膜トランジスタおよびその他の薄膜トランジスタ(発光素子を駆動するための回路を構成する薄膜トランジスタ)は全てNチャネル型薄膜トランジスタで回路を構成することが好ましい。それ以外については、Nチャネル型またはPチャネル型のいずれか一の薄膜トランジスタで回路を構成してもよいし、両方の薄膜トランジスタで構成してもよい。
【0157】
ここでは、半導体層611は、水素化非晶質シリコン又は水素化微結晶シリコンで形成することが好ましい。水素化非晶質シリコン又は水素化微結晶シリコン膜は、半導体材料ガスとしてシラン若しくはジシランを用い、プラズマCVD法により、100〜250nmの厚さで形成する。半導体層611は、絶縁層610を介して、ゲート配線604と重なるように形成する。さらに、半導体層611上には、薄膜トランジスタのソース領域及びドレイン領域を形成するため、n型半導体層612として、プラズマCVD法によりn型の水素化非晶質シリコン又は微結晶シリコン膜を20〜50nmの厚さで形成する。
【0158】
n型半導体層612上にマスク613を形成する。ここでは、液滴吐出法により選択的に組成物を吐出し、焼成して、マスク613を形成する。マスク613はポリイミドで形成される。
【0159】
次に、マスク613を用いて半導体層611及びn型半導体層612をエッチングする。ここでは、エッチングガスとしてフッ化炭素及び酸素の混合気体を用いる。以上の結果、図10(B)に示すように、半導体層614及びn型半導体層615を形成する。
【0160】
また、半導体層614として、有機半導体を用いて形成することもできる。有機半導体としては、その骨格が共役二重結合から構成されるπ電子共役系の高分子材料が望ましい。代表的には、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリチオフェン誘導体等の可溶性の高分子材料を用いることができる。
【0161】
図16及び図11は、配線を形成する段階を示している。なお、図16は平面図であり、図中に示す切断線A−Bに対応する断面構造を図11(C)に表している。以下の説明ではこの両図を参照して説明する。
【0162】
次に、図11(A)に示すように、絶縁層610、半導体層614、n型半導体層615上に導電層622を形成する。導電層622はアルミニウム、若しくは銅、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性向上元素若しくはヒロック防止元素が添加されたアルミニウムを用いて形成することが好ましい。また、銀、銅などの導電性ナノペーストを用いてスクリーン印刷法、インクジェット法等を用いて形成しても良い。なお、導電層622の密着性向上と下地への拡散を防ぐバリアメタルとして機能するため、窒化金属層等を設けてもよい。
【0163】
導電層622上に剥離層623を形成し、剥離層623上に透光性を有する層624を形成する。剥離層623及び透光性を有する層624はそれぞれ、実施の形態4に示す剥離層103及び透光性を有する層104の材料及び形成方法を適宜用いることができる。ここでは、導電層622として、モリブデンターゲットを用いたスパッタリング法により30〜200nmのモリブデン層を形成する。剥離層623としては、一酸化二窒素プラズマを導電層620表面に照射して導電層の表面を酸化して、厚さ1〜10nmの酸化モリブデン層を形成する。透光性を有する層624としては、CVD法により厚さ20〜40nmの窒化酸化珪素層を形成する。なお、ここで、透光性を有する層624として引っ張り応力を有する窒化酸化珪素層を形成することで、レーザビームの照射により付着力が低下した剥離層とともに、透光性を有する層624を容易に除去することができる。
【0164】
次に、レーザビーム625を剥離層623及び導電層622に照射して付着力を低下させた後、付着力の低下した剥離層を除去する。
【0165】
ここでは、レーザビームとして周波数30Hzのエキシマレーザビーム(波長308nm)を用いる。このときのレーザビームのエネルギー密度を200〜400mJ/cm、ショット数を1〜5shot、走査速度を10〜20mm/secとして、レーザビームを照射することで、剥離層の付着力を低下するとともに、透光性を有する層を脆弱化することができる。
【0166】
この結果、図11(B)に示すように、マスクとして機能する剥離層623a、623b、及び透光性を有する層624a、624bを形成する。レーザビーム625を照射することで、剥離層の付着力を低下させる。こののち、付着力が低下した剥離層及び当該剥離層上の透光性を有する層を除去する。ここでは、水洗によりこれらの層を除去する。この結果、マスクとして機能する剥離層623a、623b、及び透光性を有する層624a、624bを形成することができる。
【0167】
次に、剥離層623a、623b、及び透光性を有する層624a、624bをマスクとして導電層622をエッチングする。ここでは、リン酸、酢酸、硝酸、純水を体積%で、85:5:5:5の比率で混合した混合液を用いて導電層622をエッチングする。次に、導電層631〜633を形成した後、これをエッチングマスクとして用いて、n型半導体層615をフッ化炭素及び酸素の混合気体を用いてエッチングする。
【0168】
この結果、図11(C)に示すように、導電層631〜633を形成する。なお、導電層631は画素部のマトリクスを形成するデータ線であり、導電層632はTFT668と画素電極664を繋ぐ配線である。
【0169】
導電層633は、絶縁層610を介して容量配線606と重なる領域を有している。この重畳領域は、この液晶パネルの画素における容量素子となる。
【0170】
導電層631及び導電層632は、半導体層614上で離間して形成されている。なお、このエッチングの際に半導体層614の一部もエッチングされ、チャネル形成領域として機能する半導体層639となる。
【0171】
図12、図13、及び図17は、画素電極を形成する段階を示している。なお、図17は平面図であり、図中に示す切断線A−Bに対応する断面構造を図13(B)に表している。以下の説明ではこの両図を参照して説明する。
【0172】
図12(A)に示すように、透光性を有する層624a〜624c、絶縁層610、及び半導体層639上に絶縁層641を形成する。また、絶縁層641上に、表面の平坦化を目的として絶縁層642を形成することが好ましい。なお、ここでは、図12(A)に示すように、絶縁層641及び絶縁層642を積層しているが、絶縁層641または絶縁層642の単層でもよい。
【0173】
絶縁層641は窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化珪素膜、酸素含有量が窒素含有量よりも多い酸化窒化珪素膜、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜、アルゴンを含む窒化珪素膜、その他の無機絶縁性材料を含む物質から選ばれた材料で形成することができる。
【0174】
絶縁層642は、塗布法によってされる平坦性のよい層を用いることが好ましい。絶縁層642の代表例としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、ポリシラザン、シロキサン樹脂を用いることができる。なお、各層を構成する物質については、特に限定はなく、ここに述べたもの以外のものを用いてもよい。また、これら以外の物質から成る層をさらに組み合わせてもよい。
【0175】
ここでは、絶縁層641として、プラズマCVD法により厚さ50〜200nmの窒化シリコン、または窒化酸化シリコンで形成する。絶縁層641をこのような層で形成することで、半導体層639の汚染を防ぐ保護膜として形成する。また、導電層631、導電層632と画素電極を絶縁分離する層間絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁層642は組成物を塗布し焼成して厚さ200〜1000nmのポリイミドで形成する。導電層631、導電層632と画素電極664の間に平坦化膜としての絶縁層642を形成することで、のちに形成される画素電極664の面積を大きくすることができ、開口率を向上させることができる。
【0176】
絶縁層642上に剥離層643を形成する。剥離層643は、実施の形態1に示す剥離層103と同様に形成することができる。ここでは、タングステンターゲットを酸素プラズマでスパッタリングした反応性スパッタリング法により厚さ1〜10nmの酸化タングステン層を剥離層643として形成する。次に、剥離層643の一部にレーザビーム645を照射して剥離層の一部の付着力を低下させる。ここでは、レーザビームとしてエキシマレーザビーム(波長308nm)を照射する。こののち、付着力が低下した剥離層を除去する。ここでは、水洗により付着力が低下した剥離層を除去する。この結果、図12(B)に示すように、剥離層の一部が残存する。このとき残存した剥離層を剥離層643aとする。
【0177】
次に、図13(A)に示すように、剥離層643aをマスクとして、絶縁層642をエッチングし、絶縁層651を形成する。ここでは、ドライエッチングにより絶縁層642をエッチングする。次に、絶縁層651をマスクとして、絶縁層641をエッチングし、絶縁層652を形成する。また、透光性を有する層624bをエッチングして、透光性を有する層653を形成する。ここでは、エッチャントとしてフッ化水素アンモニウム及びフッ化アンモニウムの混合溶液を用いて透光性を有する層624bをエッチングする。また、剥離層623bをエッチングして、剥離層654を形成する。ここでは、エッチャントとしてフッ酸水溶液を用いて剥離層654をウェットエッチングする。また、導電層632の一部を露出する。以上の工程により、開口部663を形成する。
【0178】
次に、剥離層643a及び開口部663に、導電層655を形成する。導電層655を透光性を有する導電性材料を用いて形成する。ここでは、導電層655として厚さ50〜150nmのITOをスパッタリング法により形成する。次に、剥離層643a及び導電層655に選択的にレーザビーム656を照射し、剥離層の一部の付着力を低減する。ここでは、レーザビーム656として、エキシマレーザ(波長308nm)を照射する。次に、付着力の低下した剥離層及びその上に形成される導電層655を除去する。ここでは、水洗により付着力の低下した剥離層及びその上に形成される導電層655を除去する。この結果、図13(B)に示すように、画素電極664を形成する。このとき、一部剥離層661も残存する。
【0179】
画素電極664は剥離層661上に形成される。なお、剥離層661は、膜厚が薄く可視光に対して透光性を有するため、画素電極664と積層されていても良い。画素電極664は、絶縁層652、絶縁層642を貫通する開口部663で導電層632と接続する。この画素電極664は、50〜100nmの厚さで形成することができる。
【0180】
また、導電層655を除去する際、画素電極664にはスリット665が設けられるように選択的に導電層655にレーザビームを照射する。本実施例では、レーザビームを選択的に照射して薄膜を加工することができるため、微細な構造の加工も容易である。このため、加工される薄膜の形状の選択幅を広げることが可能である。なお、スリット665は液晶の配向を制御するためのものである。
【0181】
このようにして、基板600上にTFT668とそれに接続する画素電極664、及び容量素子670が形成される。図17に示すTFT669とそれに接続する画素電極666、及び容量素子671も同様である。TFT668とTFT669は共に配線631と接続している。この液晶パネルの画素(ピクセル)は、画素電極664と画素電極666により構成されている。画素電極664と画素電極666はサブピクセルである。
【0182】
この画素構造の等価回路を図19に示す。TFT668とTFT669は、共にゲート配線604、配線631と接続している。この場合、容量配線605と容量配線606の電位を異ならせることで、液晶素子692と液晶素子693の動作を異ならせることができる。すなわち、容量配線605と容量配線606の電位を個別に制御することにより液晶の配向を精密に制御して視野角を広げている。
【0183】
図18に対向基板側の構造を示す。遮光層672上に対向電極680が形成されている。対向電極680は、酸化インジウム、酸化インジウム−酸化スズ、酸化亜鉛などの透明導電膜で形成する。対向電極680上には液晶の配向を制御する突起684が形成されている。また、遮光層672の位置に合わせてスペーサ682が形成されている。
【0184】
図14は、TFT668とそれに接続する画素電極664、及び容量素子670が形成された基板600と、対向電極680等が形成された対向基板690を重ね合わせ、液晶を注入した状態を示している。対向基板690においてスペーサ682が形成される位置には、遮光層672、第1着色層674、第2着色層676、第3着色層678、対向電極680が形成されている。この構造により、液晶の配向を制御するための突起684とスペーサ682の高さを異ならせている。画素電極664上には配向膜685が形成され、同様に対向電極680上にも配向膜686が形成されている。この間に液晶層691が形成されている。
【0185】
図20はこのような画素構造を有する液晶パネルの動作を説明する図である。スリット665を設けた画素電極664に電圧を印加すると、スリット665の近傍には電界の歪み(斜め電界)が発生する。このスリット665と、対向基板690側の突起684とを交互に咬み合うように配置することで、斜め電界が効果的に発生させて液晶の配向を制御することで、液晶が配向する方向を場所によって異ならせている。すなわち、マルチドメイン化して液晶パネルの視野角を広げている。
【0186】
本発明により、表示装置を構成する配線等の構成物を、所望の形状で形成できる。また複雑なフォトリソグラフィー工程を用いずとも、簡略化された工程で液晶表示装置を作製することができるので、材料のロスが少なく、コストダウンも達成できる。また、剥離層にレーザビームを選択的に照射してマスクを形成し、当該マスクを用いて薄膜を加工することができる。このため、マスクを形成する際レーザビームの大きさを制御することで、マスクを微細な形状に加工することも容易である。このため、加工される薄膜の形状の選択幅を広げることが可能である。よって、高精細な液晶表示装置を歩留まりよく作製することができる。
【実施例2】
【0187】
本実施例では、上記実施の形態で説明した薄膜の加工方法を用いて形成した薄膜トランジスタ及び画素電極を有する液晶表示装置の作製工程一例について図面を参照して説明する。本実施の形態では液晶表示装置の他の形態として、TN型液晶について示す。
【0188】
図21〜図23は、TN型液晶パネルの画素構造を示している。図21は半導体層、遮光層、ゲート配線、及び容量配線を形成する段階を示す断面図である。
【0189】
図21(A)に示すように、基板700上に導電層702を形成し、導電層702上に剥離層703を形成し、剥離層703上に絶縁層704を形成し、絶縁層704上に半導体層705を形成する。
【0190】
基板700としては、実施例1に示す基板600を適宜用いることができる。導電層702は、のちに薄膜トランジスタの半導体層に光が照射されるのを妨げるための遮光層として機能するため、遮光性を有する材料、代表的には、厚さ50〜500nmのモリブデン層、チタン層、タングステン層、クロム層、窒化チタン層等を用いて形成する。ここでは、導電層702として、スパッタリング法により、厚さ100〜300nmのモリブデン層を形成する。
【0191】
絶縁層704は、基板700からのちに形成される薄膜トランジスタの半導体層に不純物が侵入するのを防止するために設ける。絶縁層704の代表例としては、代表的には、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム等がある。ここでは、下地層101として、厚さ50〜200nmの酸化窒化珪素層をCVD法により形成する。
【0192】
半導体層705としては、実施例1に示す半導体層611の材料及び作製方法を適宜用いることができる。ここでは、プラズマCVD法により厚さ50〜100nmの非晶質珪素層を形成した後、エキシマレーザビームを照射して結晶化して結晶性珪素層を形成する。
【0193】
次に、半導体層705側から剥離層703及び導電層702にレーザビーム706を照射する。ここでは、半導体層705及び絶縁層704では透過し、剥離層703及び導電層702で吸収される波長は可視光であるため、エキシマレーザビーム(波長308nm)をレーザビームとして用いる。このときのレーザビームのエネルギー密度を150〜300mJ/cm、好ましくは200〜250mJ/cm、とし、ショット数を1〜5shot、走査速度を50〜200mm/secとして、レーザビームを照射することで、剥離層の付着力を低下するとともに、透光性を有する層を脆弱化することができる。こののち、付着力が低下した剥離層、その上に形成される絶縁層、及び半導体層を除去する。
ここでは水洗して付着力が低下した剥離層を除去する。
【0194】
この結果、図21(B)に示すように、剥離層711、絶縁層713、及び半導体層715の積層と、剥離層712、絶縁層714、及び半導体層716の積層とが残存する。次に、上記積層をマスクとして、導電層702をエッチングする。ここでは、エッチャントとして、リン酸、酢酸、硝酸、純水を体積%で、85:5:5:5の比率で混合した酸水溶液を用いて、導電層702をウェットエッチングする。この結果、図21(C)に示すように、分離された導電層717、718を形成する。
【0195】
こののち、のちに容量電極として機能する半導体層716に導電性を付与するため、半導体層716に液滴吐出法でマスクを形成した後、半導体層716にリンを添加する。
【0196】
次に、図21(D)に示すように、基板700、導電層717、718、剥離層711、712、絶縁層713、714、半導体層715、716の露出部を覆うように絶縁層721を形成し、絶縁層721上に導電層722を形成し、導電層722上に剥離層723を形成し、剥離層723上に透光性を有する層724を形成する。
【0197】
絶縁層721は、薄膜トランジスタのゲート絶縁層として機能する絶縁層である。このため、実施例1の絶縁層610と同様に形成することができる。ここでは、絶縁層721として、厚さ50〜150nmの窒素を含む酸化珪素層をプラズマCVD法用いて形成する。
【0198】
導電層722は、のちに薄膜トランジスタのゲート電極、ゲート配線、及び容量配線を構成する導電層である。このため、実施例1の導電層601と同様に形成することができる。ここでは、スパッタリング法により厚さ300〜500nmのモリブデン層を用いて導電層722を形成する。
【0199】
剥離層723は、実施例1の剥離層602と同様に形成することができる。ここでは、剥離層723として、導電層722の表面を一酸化二窒素を用いたプラズマに曝して、厚さ1〜10nmの酸化モリブデン層を形成する。
【0200】
透光性を有する層724は実施例1の透光性を有する層603と同様に形成することができる。ここでは、透光性を有する層724として、引っ張り応力を有する窒化酸化珪素層を形成する。また、透光性を有する層724の厚さを20〜40nmとする。
【0201】
次に、レーザビーム725を照射する。ここでは、透光性を有する層724、導電層722、及び剥離層723にレーザビームを照射して剥離層の付着力を選択的に低下させる。この後、付着力が低下した剥離層及びその上に設けられる透光性を有する層を選択的に除去する。こののち、剥離層及びその上に設けられた透光性を有する層をマスクとして導電層722をエッチングする。この結果、図21(E)に示すように、導電層731、732、剥離層733、734、透光性を有する層735、736が残存する。
【0202】
次に、剥離層733、734にレーザビームを照射して、剥離層の付着力を弱めた後、剥離層及びその上に形成される透光性を有する層を除去して、絶縁層721上に導電層731、732のみを残存させる。なお、導電層731は、ゲート電極、ゲート配線として機能し、導電層732は容量配線として機能する。ここでは、説明の便宜上、ゲート配線731と呼んで以下の説明を行うが、機能的にはゲート電極としての構成要素を備えている。また、ゲート配線731と同じ層を使って容量配線732を形成する。容量配線732は、画素に印加した電圧を保持するために設ける保持容量の一方の電極を形成するものである。
【0203】
こののち、半導体層715に、リン、ボロン等を添加してソース領域及びドレイン領域737、並びにチャネル形成領域738を形成する。
【0204】
図22は、画素電極を形成する段階を示している。なお、図22は図23の切断線A−Bに対応する断面構造を示している。以下の説明ではこの両図を参照して説明する。
【0205】
図22(A)に示すように、導電層731、導電層732、絶縁層721上に絶縁層741を形成する。絶縁層741は実施例1で用いたように、窒化シリコン、窒化酸化シリコンで形成される絶縁層、及び表面の平坦化を目的とする絶縁層を積層して形成することが好ましい。ここでは、実施例1と同様に、プラズマCVD法により厚さ50〜200nmの窒化シリコン、または窒化酸化シリコンを形成し、その上に厚さ200〜1000nmのポリイミド層を形成する。
【0206】
絶縁層741上に剥離層742を形成する。剥離層742は、実施例1に示す剥離層602と同様に形成することができる。次に、剥離層742の一部にレーザビーム743を照射して剥離層の一部の付着力を低下した後、付着力が低下した剥離層を除去する。図22(B)に示すように、このとき残存した剥離層を剥離層755とする。
【0207】
次に、剥離層755をマスクとして、絶縁層741をエッチングし、絶縁層754を形成する。以上の工程により、開口部753を形成する。また、絶縁層754をマスクとして、絶縁層721をエッチングし、絶縁層756を形成するとともに、半導体層715の一部を露出する。以上の工程により、開口部751、752を形成する。
【0208】
ここでは、剥離層755及び絶縁層741のエッチングの選択比が高いエッチャントを使うため、剥離層755上に透光性を有する層を設けていない。しかしながら、剥離層755及び絶縁層741のエッチングの選択比が低い場合は、剥離層755上に透光性を有する層を形成してもよい。
【0209】
次に、図22(C)に示すように、剥離層755及び開口部751〜753上に、導電層761〜763を形成する。ここでは、導電層761〜763として液滴吐出法により、銀粒子を含む組成物を開口部751〜753に吐出し加熱して、導電層761〜763を形成する。
【0210】
次に、導電層761〜763及び剥離層755上に導電層764を形成する。ここでは、導電層764として厚さ50〜150nmのITOをスパッタリング法により形成する。次に、導電層764に選択的にレーザビーム765を照射し、選択的に剥離層755の付着力を弱めて、付着力が低下した剥離層及びその上に形成される導電層764を選択的に除去する。ここでは、レーザビーム765として、エキシマレーザビームを用いる。この結果、図22(D)に示すように、画素電極772を形成することができる。また、画素電極772と同時に、導電層761を覆う導電層771を形成することができる。なお、導電層761はソース配線として機能するため、導電層761上に導電層771が形成されることにより、ソース配線の抵抗値を低減することが可能である。
【0211】
また、実施例1と同様に、遮光層、着色層、または対向電極の少なくとも一つ以上が形成される対向基板と、当該基板700とをシール材で貼りあわせる。また、基板700、対向基板、及びシール材の間に液晶材料を充填する。以上により、液晶表示装置を作製することができる。
【0212】
本発明により、表示装置を構成する半導体層、配線等の構成物を、所望の形状で形成できる。本実施例においては、フォトリソグラフィーを用いずとも、分離された半導体層を形成するとともに、当該半導体層への外光の侵入を回避することが可能な遮光層をも形成することができる。即ち、複雑なフォトリソグラフィー工程を用いずとも、簡略化された工程で液晶表示装置を作製することができるので、材料のロスが少なく、コストダウンも達成できる。また、剥離層にレーザビームを選択的に照射してマスクを形成し、当該マスクを用いて薄膜を加工することができる。このため、マスクを形成する際レーザビームの大きさを制御することで、マスクを微細な形状に加工することも容易である。このため、加工される薄膜の形状の選択幅を広げることが可能である。よって、高精細な液晶表示装置を歩留まりよく作製することができる。
【実施例3】
【0213】
実施例1に適用可能な半導体層の形成方法について、図29を用いて説明する。
【0214】
実施例1と同様の工程により、図21(C)に示すような導電層604、605を形成する。次に、導電層604、605上にゲート絶縁膜として機能する絶縁層610を実施例1と同様に形成する。次に、絶縁層610上に剥離層695を形成する。剥離層695としては、実施の形態1に示す剥離層103を適宜用いることができる。ここでは、剥離層695として、モリブデンターゲットを酸素プラズマでスパッタリングした反応性スパッタリング法により、厚さ1〜10nmの酸化モリブデン層を形成する。
【0215】
次に、剥離層695に選択的にレーザビーム696を照射する。ここでは、のちに分離された半導体層が形成される領域以外の領域にレーザビーム696を照射する。
【0216】
ここでは、レーザビーム696として、エキシマレーザビーム(波長308nm)を照射する。
【0217】
この結果、レーザビームが照射された剥離層695の付着力が低下する。当該付着力が低下した剥離層を水洗して、図29(B)に示すような、マスクとして機能する剥離層697を形成する。
【0218】
次に、マスクとして機能する剥離層697、及び絶縁層610の露出部上に、実施例1と同様に半導体層611及びn型半導体層612を形成する。
【0219】
次に、基板600側からマスクとして機能する剥離層697にレーザビーム698を照射する。図29(B)においては、レーザビーム698は剥離層697に選択的に照射する図を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、半導体層611及びn型半導体層612が吸収せず、剥離層697で選択的に吸収する波長のレーザビーム698を基板600から照射してもよい。この場合、剥離層697においてレーザビームが吸収される。この結果、剥離層697の付着力が低下する。こののち、粘着性を有する部材でn型半導体層612表面を押し付けることで、付着力が低下した剥離層697及びその上に設けられる半導体層並びにn型半導体層を除去する。
【0220】
この結果、図29(C)に示すように、分離された半導体層614及びn型半導体層615を形成することができる。
【0221】
こののち、実施例1と同様の工程により薄膜トランジスタを形成することができる。
【実施例4】
【0222】
本実施例では、上記実施の形態で説明した薄膜の加工方法を用いて形成した薄膜トランジスタ及び画素電極を有する発光装置の一態様について図24を用いて説明する。図24(A)は発光装置の画素部における一画素を示す上面図であり、図24(B)は図24(A)をA−Bで切断した断面図である。
【0223】
発光装置の画素部には図24(A)で示すような画素が複数設けられている。各画素には、発光素子780と、発光素子780に接続し、電流の供給を制御する薄膜トランジスタ(以下、駆動用の薄膜トランジスタ775と示す。)が設けられている。また、駆動用の薄膜トランジスタ775のソース領域またはドレイン領域の一方には電源線793、794が接続され、ソース領域またはドレイン領域の他方には第1の電極772が接続される。また、駆動用の薄膜トランジスタ775のゲート電極は、スイッチング用の薄膜トランジスタ795のソース領域またはドレイン領域の一方と接続される。スイッチング用の薄膜トランジスタ795のソース領域またはドレイン領域の他方はソース配線791、792に接続される。また、スイッチング用の薄膜トランジスタ795のゲート配線790がソース配線791、792と交差している。なお、ソース配線791、792は積層構造であり、電源線793、794も同様に積層構造であり、ソース配線792及び電源線794は、第1の電極772と同じ層で形成される。
【0224】
図24(B)において、駆動用の薄膜トランジスタ775は、発光素子780を駆動するために設けられている。駆動用の薄膜トランジスタ775は実施例2で示す工程により作製することができる。また、駆動用の薄膜トランジスタ775は、基板700と半導体層との間に遮光層として機能する導電層717を有する。発光素子が基板700側に発光する場合、基板700側から駆動用の薄膜トランジスタ775の半導体層に外光が入り込んでしまい、半導体層でキャリアが発生し、薄膜トランジスタ775のオフ時に電流が流れてしまうという問題がある。しかしながら、薄膜トランジスタの半導体層及び基板700の間に遮光層として機能する導電層717を設けることとで、このような外光による薄膜トランジスタの不良動作を防止することが可能である。
【0225】
発光素子780は、第1の電極772と第2の電極783との間にEL(Electro Luminescence)層782を有する。また、発光素子780は、隔壁層781によって、隣接して設けられている別の発光素子と分離されている。
【0226】
なお、図24(B)に示された薄膜トランジスタ775は、半導体層を中心として基板と逆側にゲート電極が設けられたトップゲート型のものである。但し、薄膜トランジスタ775の構造については、特に限定はなく、例えばボトムゲート型のものでもよい。またボトムゲートの場合には、チャネルを形成する半導体層の上に保護膜が形成されたもの(チャネル保護型)でもよいし、或いは実施例1に示すようなチャネルを形成する半導体層の一部が凹状になったもの(チャネルエッチ型)でもよい。
【0227】
隔壁層781は、エッジ部において、曲率半径が連続的に変化する形状であることが好ましい。また隔壁層781は、アクリルやシロキサン、ポリイミド、酸化珪素等を用いて形成される。なお隔壁層781は、無機絶縁層と有機絶縁層のいずれか一で形成されたものでもよいし、または両方を用いて形成されたものでもよい。
【0228】
なお、図24(B)では、絶縁層754のみが薄膜トランジスタ775と発光素子780の間に設けられた構成であるが、絶縁層754の他、第2の絶縁層が設けられた構成のものであってもよい。第2の絶縁層は、絶縁層754と同様に、多層でもよいし、または単層でもよい。第2の絶縁層としては、絶縁層754と同様な材料を用いて形成することができる。また、第2の絶縁層は、無機絶縁層と有機絶縁層の両方を用いて形成されたものでもよいし、または無機絶縁層と有機絶縁層のいずれか一で形成されたものでもよい。
【0229】
発光素子780において、第1の電極772および第2の電極783がいずれも透光性を有する電極である場合、第1の電極772側と第2の電極783側の両方から発光を取り出すことができる。また、第2の電極783のみが透光性を有する電極である場合、第2の電極783側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第1の電極772は反射率の高い材料で構成されているか、または反射率の高い材料から成る膜(反射膜)が第1の電極772の下方に設けられていることが好ましい。また、第1の電極772のみが透光性を有する電極である場合、第1の電極772側のみから発光を取り出すことができる。この場合、第2の電極783は反射率の高い材料で構成されているか、または反射膜が第2の電極783の上方に設けられていることが好ましい。
【0230】
また、発光素子780は、第1の電極772の電位よりも第2の電極783の電位が高くなるように電圧を印加したときに動作するようにEL層782が積層されたものであってもよいし、或いは、第1の電極772の電位よりも第2の電極783の電位が低くなるように電圧を印加したときに動作するようにEL層782が積層されたものであってもよい。前者の場合、薄膜トランジスタ775はNチャネル型薄膜トランジスタであり、後者の場合、薄膜トランジスタ775はPチャネル型薄膜トランジスタであることが好ましい。
【0231】
なお、導電層771及び第1の電極772は実施例2と同様に形成したため、導電層771及び第1の電極772と絶縁層754との間には、剥離層773、774が残存する。
【0232】
ここで、発光素子780の構造について、図25を用いて説明する。
【0233】
EL層782に、有機化合物を用いた発光機能を担う層(以下、発光層343と示す。)を形成することで、発光素子780は有機EL素子として機能する。図25(A)に有機EL素子の構造を示す。
【0234】
第1の電極772としては、IWO、IWZO、ITiO、ITTiO、ITO、IZO、ITSO等が挙げられる。また、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン、窒化タングステン、窒化モリブデン)等を用いることも可能である。
【0235】
EL層782は、単層でもよいし、複数の層が積層された構成であってもよい。つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質等から成る層と、発光層とを適宜組み合わせて構成すればよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて構成することができる。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。なお、図16では、一態様として、第1の層341、第2の層342、発光層343、第4の層344、第5の層345を積層したEL層について説明する。
【0236】
第1の層341は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子化合物等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0237】
また、第1の層341として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、第1の電極772として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることができる。アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0238】
第2の層342は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0239】
発光層343は、発光性の高い物質を含む層であり、種々の材料を用いることができる。例えば、発光性の高い物質と、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)や2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)等のキャリア輸送性が高く膜質がよい(つまり結晶化しにくい)物質とを自由に組み合わせて構成される。発光性の高い物質としては、具体的には、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)やクマリン6、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−[2−(ジュロリジン−9−イル)ビニル]−4H−ピラン(略称:DCM2)、9,10−ジフェニルアントラセン、5,12−ジフェニルテトラセン(略称:DPT)、ペリレン、ルブレンなどの一重項発光材料(蛍光材料)や、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(アセチルアセトナート)(略称:Ir(btp)(acac))などの三重項発光材料(燐光材料)などを用いることができる。但し、AlqやDNAは発光性も高い物質であるため、これらの物質を単独で用いた構成とし、発光層343としても構わない。
【0240】
第4の層344は、電子輸送性の高い物質を含む層である。例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0241】
第5の層345は電子注入性の高い物質を含む層である。第5の層345としては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。また、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることにより、第2の電極783からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。
【0242】
第2の電極783を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極783と第4の層344との間に、第5の層345を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ITSO、IZO、IWZO等様々な導電性材料を第2の電極783として用いることができる。
【0243】
EL層782の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0244】
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、第1の電極772と第2の電極783との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む発光層343において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層343に発光領域が形成されるような構成となっている。
【0245】
発光は、第1の電極772または第2の電極783のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。なお、第1の電極772は透光性の高い複合材料を用いて形成されているため、第1の電極を通って外部に発光が取り出される構成とすることが好ましい。第1の電極772のみが透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極772を通って基板側から取り出される。また、第1の電極772および第2の電極783がいずれも透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極772および第2の電極783を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
【0246】
なお第1の電極772と第2の電極783との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光が防ぐように、第1の電極772および第2の電極783から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成であれば、上記以外のものでもよい。
【0247】
つまり、EL層782の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質、正孔ブロック材料等から成る層を、発光層と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0248】
また、EL層782として、無機化合物を用いた発光機能を担う層(以下、発光層349という。)を有することで、発光素子1205は無機EL素子として機能する。無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。前者は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光物質を含む層を有し、後者は、発光材料の薄膜からなる発光物質を含む層を有している点に違いはあるが、高電界で加速された電子を必要とする点では共通である。なお、得られる発光のメカニズムとしては、ドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光と、金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光とがある。分散型無機ELではドナー−アクセプター再結合型発光、薄膜型無機EL素子では局在型発光である場合が多い。以下に、無機EL素子の構造について示す。
【0249】
本実施例で用いることのできる発光材料は、母体材料と発光中心となる不純物元素とで構成される。含有させる不純物元素を変化させることで、様々な色の発光を得ることができる。発光材料の作製方法としては、固相法や液相法(共沈法)などの様々な方法を用いることができる。また、噴霧熱分解法、複分解法、プレカーサーの熱分解反応による方法、逆ミセル法やこれらの方法と高温焼成を組み合わせた方法、凍結乾燥法などの液相法なども用いることができる。
【0250】
固相法は、母体材料と、不純物元素又はその化合物を秤量し、乳鉢で混合、電気炉で加熱、焼成を行い反応させ、母体材料に不純物を含有させる方法である。焼成温度は、700〜1500℃が好ましい。温度が低すぎる場合は固相反応が進まず、温度が高すぎる場合は母体材料が分解してしまうからである。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、ペレット状態で焼成を行うことが好ましい。比較的高温での焼成を必要とするが、簡単な方法であるため、生産性がよく大量生産に適している。
【0251】
液相法(共沈法)は、母体材料又はその化合物と、不純物元素又はその化合物を溶液中で反応させ、乾燥させた後、焼成を行う方法である。発光材料の粒子が均一に分布し、粒径が小さく低い焼成温度でも反応が進むことができる。
【0252】
無機EL素子の発光材料に用いる母体材料としては、硫化物、酸化物、窒化物を用いることができる。硫化物としては、例えば、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化カルシウム、硫化イットリウム、硫化ガリウム、硫化ストロンチウム、硫化バリウム等を用いることができる。また、酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化イットリウム等を用いることができる。また、窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム等を用いることができる。また、セレン化亜鉛、テルル化亜鉛等も用いることができる。また、硫化カルシウム−ガリウム、硫化ストロンチウム−ガリウム、硫化バリウム−ガリウム等の3元系の混晶であってもよい。
【0253】
局在型発光の発光中心として、マンガン(Mn)、銅(Cu)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)などを用いることができる。なお、電荷補償として、フッ素(F)、塩素(Cl)などのハロゲン元素が添加されていてもよい。
【0254】
一方、ドナー−アクセプター再結合型発光の発光中心として、ドナー準位を形成する第1の不純物元素及びアクセプター準位を形成する第2の不純物元素を含む発光材料を用いることができる。第1の不純物元素は、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。第2の不純物元素としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)等を用いることができる。
【0255】
ドナー−アクセプター再結合型発光の発光材料を固相法を用いて合成する場合、母体材料と、第1の不純物元素又はその化合物と、第2の不純物元素又はその化合物をそれぞれ秤量し、乳鉢で混合した後、電気炉で加熱、焼成を行う。母体材料としては、上述した母体材料を用いることができ、第1の不純物元素又はその化合物としては、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、硫化アルミニウム等を用いることができる。また、第2の不純物元素又はその化合物としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、硫化銅(Cu2S)、硫化銀(Ag2S)等を用いることができる。焼成温度は、700〜1500℃が好ましい。温度が低すぎる場合は固相反応が進まず、温度が高すぎる場合は母体材料が分解してしまうからである。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、ペレット状態で焼成を行うことが好ましい。
【0256】
また、固相反応を利用する場合の不純物元素として、第1の不純物元素と第2の不純物元素で構成される化合物を組み合わせて用いてもよい。この場合、不純物元素が拡散されやすく、固相反応が進みやすくなるため、均一な発光材料を得ることができる。さらに、余分な不純物元素が入らないため、純度の高い発光材料が得ることができる。第1の不純物元素と第2の不純物元素で構成される化合物としては、例えば、塩化銅(CuCl)、塩化銀(AgCl)等を用いることができる。
【0257】
なお、これらの不純物元素の濃度は、母体材料に対して0.01〜10atom%であればよく、好ましくは0.05〜5atom%の範囲であればよい。
【0258】
図25(B)は、EL層782が第1の絶縁層348、発光層349、及び第2の絶縁層350で構成される無機EL素子の断面を示す。
【0259】
薄膜型無機ELの場合、発光層349は、上記発光材料を含む層であり、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着(EB蒸着)法等の真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いて形成することができる。
【0260】
第1の絶縁層348及び第2の絶縁層350は、特に限定されることはないが、絶縁耐圧が高く、緻密な膜質であることが好ましく、さらには、誘電率が高いことが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、窒化シリコン、酸化ジルコニウム等やこれらの混合膜又は2種以上の積層を用いることができる。第1の絶縁層348及び第2の絶縁層350は、スパッタリング、蒸着、CVD等により成膜することができる。膜厚は特に限定されることはないが、好ましくは10〜1000nmの範囲である。なお、本実施の形態の発光素子は、必ずしもホットエレクトロンを必要とはしないため、薄膜にすることもでき、駆動電圧を低下できる長所を有する。好ましくは、500nm以下の膜厚、より好ましくは100nm以下の膜厚であることが好ましい。
【0261】
なお、図示しないが、発光層349と絶縁層348、350、又は発光層349と第1の電極772の間にバッファ層を設けても良い。このバッファ層はキャリアの注入を容易にし、かつ両層の混合を抑制する役割をもつ。バッファ層としては、特に限定されることはないが、例えば、発光層の母体材料である、硫化亜鉛、硫化セレン、硫化テルル、硫化カドミウム、硫化ストロンチウム、硫化バリウム、硫化銅、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム等を用いることができる。
【0262】
また、図25(C)に示すように、EL層782が発光層349及び第1の絶縁層348で構成されてもよい。この場合、図25(C)においては、第1の絶縁層348は第2の電極783及び発光層349の間に設けられている形態を示す。なお、第1の絶縁層348は第1の電極772及び発光層349の間に設けられていてもよい。
【0263】
さらには、EL層782が、発光層349のみで構成されてもよい。即ち、第1の電極772、EL層782、第2の電極783で発光素子780を構成してもよい。
【0264】
分散型無機ELの場合、粒子状の発光材料をバインダ中に分散させ膜状の発光物質を含む層を形成する。発光材料の作製方法によって、十分に所望の大きさの粒子が得られない場合は、乳鉢等で粉砕などによって粒子状に加工すればよい。バインダとは、粒状の発光材料を分散した状態で固定し、発光物質を含む層としての形状に保持するための物質である。発光材料は、バインダによって発光物質を含む層中に均一に分散し固定される。
【0265】
分散型無機ELの場合、発光物質を含む層の形成方法は、選択的に発光物質を含む層を形成できる液滴吐出法や、印刷法(スクリーン印刷やオフセット印刷など)、スピンコート法などの塗布法、ディッピング法、ディスペンサ法などを用いることもできる。膜厚は特に限定されることはないが、好ましくは、10〜1000nmの範囲である。また、発光材料及びバインダを含む発光物質を含む層において、発光材料の割合は50wt%以上80wt%以下とするよい。
【0266】
図25(D)における素子は、第1の電極772、EL層782、第2の電極783を有し、EL層782が、発光材料352がバインダ351に分散された発光層及び絶縁層348で構成される。なお、絶縁層348は、図25(D)においては、第2の電極783に接する構造となっているが、第1の電極772に接する構造でもよい。また、素子は、第1の電極772及び第2の電極783それぞれに接する絶縁層を有してもよい。さらには、素子は、第1の電極772及び第2の電極783に接する絶縁層を有さなくてもよい。
【0267】
本実施例に用いることのできるバインダとしては、有機材料や無機材料の絶縁材料を用いることができる。また、有機材料及び無機材料の混合材料を用いてもよい。有機絶縁材料としては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。また、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)などの耐熱性高分子、又はシロキサン樹脂を用いてもよい。なお、シロキサン樹脂とは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニル樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、オキサゾール樹脂(ポリベンゾオキサゾール)等の樹脂材料を用いてもよい。また光硬化型などを用いることができる。これらの樹脂に、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムなどの高誘電率の微粒子を適度に混合して誘電率を調整することもできる。
【0268】
また、バインダに用いる無機材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸素及び窒素を含む珪素、窒化アルミニウム、酸素及び窒素を含むアルミニウムまたは酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸鉛、酸化タンタル、タンタル酸バリウム、タンタル酸リチウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛その他の無機材料を含む物質から選ばれた材料で形成することができる。有機材料に、誘電率の高い無機材料を含ませる(添加等によって)ことによって、発光材料及びバインダよりなる発光物質を含む層の誘電率をより制御することができ、より誘電率を大きくすることができる。
【0269】
作製工程において、発光材料はバインダを含む溶液中に分散されるが本実施例に用いることのできるバインダを含む溶液の溶媒としては、バインダ材料が溶解し、発光層を形成する方法(各種ウエットプロセス)及び所望の膜厚に適した粘度の溶液を作製できるような溶媒を適宜選択すればよい。有機溶媒等を用いることができ、例えばバインダとしてシロキサン樹脂を用いる場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEAともいう)、3−メトシキ−3メチル−1−ブタノール(MMBともいう)などを用いることができる。
【0270】
無機EL発光素子は、発光物質を含む層を挟持する一対の電極間に電圧を印加することで発光が得られるが、直流駆動又は交流駆動のいずれにおいても動作することができる。
【0271】
ここでは、発光素子として有機EL素子を形成する。また、赤色を表示する発光素子として、第1の電極772として膜厚125nmの酸化珪素を含むITO層を形成する。また、EL層782として、DNTPDを50nm、NPBを10nm、ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(アセチルアセトナート)(略称:Ir(Fdpq)(acac))が添加されたNPBを30nm、Alqを30nm、Alqを30nm、及びLiFを1nm積層して形成する。第2の電極783として、膜厚200nmのAl層を形成する。
【0272】
また、緑色を表示する発光素子として、第1の電極772として膜厚125nmの酸化珪素を含むITO層を形成する。また、EL層782として、DNTPDを50nm、NPBを10nm、クマリン545T(C545T)が添加されたAlqを40nm、Alqを30nm、及びLiFを1nm積層して形成する。第2の電極783として、膜厚200nmのAl層を形成する。
【0273】
また、青色を表示する発光素子として、第1の電極772として膜厚125nmの酸化珪素を含むITO層を形成する。また、EL層782として、DNTPDを50nm、NPBを10nm、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)が添加された、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)を30nm、Alqを30nm、及びLiFを1nm積層して形成する。第2の電極783として、膜厚200nmのAl層を形成する。
【0274】
次に、第2の電極783上に保護膜を形成することが好ましい。
【0275】
この後、走査線、信号線の接続端子部に、接続導電層を介して配線基板、代表的にはFPCを貼り付ける。以上の工程により、発光装置を形成することができる。
【0276】
なお、静電破壊防止のための保護回路、代表的にはダイオードなどを、接続端子とソース配線(ゲート配線)の間または画素部に設けてもよい。
【0277】
本発明により、表示装置を構成する配線等の構成物を、所望の形状で形成できる。また複雑なフォトリソグラフィー工程を用いずとも、簡略化された工程で発光装置を作製することができるので、材料のロスが少なく、コストダウンも達成できる。また、剥離層にレーザビームを選択的に照射してマスクを形成し、当該マスクを用いて薄膜を加工することができる。このため、マスクを形成する際レーザビームの大きさを制御することで、マスクを微細な形状に加工することも容易である。このため、加工される薄膜の形状の選択幅を広げることが可能である。よって、高精細な発光装置を歩留まりよく作製することができる。
【実施例5】
【0278】
次に、上記実施例で示される表示パネルを有するモジュールについて、図26を用いて説明する。図26は表示パネル9801と、回路基板9802を組み合わせたモジュールを示している。回路基板9802には、例えば、コントロール回路9804や信号分割回路9805などが形成されている。また、表示パネル9801と回路基板9802とは、接続配線9803で接続されている。表示パネル9801に実施例1乃至4で示すような、液晶表示パネル、または発光表示パネルのほか、電気泳動素子を有する電気泳動表示パネル等を適宜用いることができる。
【0279】
この表示パネル9801は、発光素子が各画素に設けられた画素部9806と、走査線駆動回路9807、選択された画素にビデオ信号を供給する信号線駆動回路9808を備えている。画素部9806の構成は、実施例1乃至3と同様である。また、走査線駆動回路9807や信号線駆動回路9808は、異方性導電接着剤、または異方性導電フィルムを用いた実装方法、COG方式、ワイヤボンディング方法、または半田バンプを用いたリフロー処理等の手法により、基板上にICチップで形成される走査線駆動回路9807、信号線駆動回路9808を実装する。
【0280】
本実施例により、表示パネルを有するモジュールの製造コストの削減が可能である。
【実施例6】
【0281】
上記実施例に示される半導体装置を有する電子機器として、テレビジョン装置(単にテレビ、又はテレビジョン受信機ともよぶ)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどのカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニター、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置等が挙げられる。その具体例について、図27を参照して説明する。
【0282】
図27(A)に示す携帯情報端末は、本体9201、表示部9202等を含んでいる。表示部9202に、上記実施例を適用することにより、携帯情報端末を安価に提供することができる。
【0283】
図27(B)に示すデジタルビデオカメラは、表示部9701、表示部9702等を含んでいる。表示部9701に、上記実施例を適用することにより、デジタルビデオカメラを安価に提供することができる。
【0284】
図27(C)に示す携帯端末は、本体9101、表示部9102等を含んでいる。表示部9102に、上記実施例を適用することにより、携帯端末を安価に提供することができる。
【0285】
図27(D)に示す携帯型のテレビジョン装置は、本体9301、表示部9302等を含んでいる。表示部9302に、上記実施例を適用することにより、携帯型のテレビジョン装置を安価に提供することができる。このようなテレビジョン装置は携帯電話などの携帯端末に搭載する小型のものから、持ち運びをすることができる中型のもの、また、大型のもの(例えば40インチ以上)まで、幅広く適用することができる。
【0286】
図27(E)に示す携帯型のコンピュータは、本体9401、表示部9402等を含んでいる。表示部9402に、上記実施例を適用することにより、携帯型のコンピュータを安価に提供することができる。
【0287】
図27(F)に示すテレビジョン装置は、本体9601、表示部9602等を含んでいる。表示部9602に、上記実施例を適用することにより、テレビジョン装置を安価に提供することができる。
【0288】
ここで、テレビジョン装置の構成について、図28を用いて説明する。
【0289】
図28は、テレビジョン装置の主要な構成を示すブロック図である。チューナ9511は映像信号と音声信号を受信する。映像信号は、映像検波回路9512と、そこから出力される信号を赤、緑、青の各色に対応した色信号に変換する映像信号処理回路9513と、その映像信号をドライバICの入力仕様に変換するためのコントロール回路9514により処理される。コントロール回路9514は、表示パネル9515の走査線駆動回路9516と信号線駆動回路9517にそれぞれ信号が出力する。デジタル駆動する場合には、信号線側に信号分割回路9518を設け、入力デジタル信号をm個に分割して供給する構成としても良い。
【0290】
チューナ9511で受信した信号のうち、音声信号は音声検波回路9521に送られ、その出力は音声信号処理回路9522を経てスピーカー9523に供給される。制御回路9524は受信局(受信周波数)や音量の制御情報を入力部9525から受け、チューナ9511や音声信号処理回路9522に信号を送出する。
【0291】
このテレビジョン装置は、表示パネル9515を含んで構成されることにより、テレビジョン装置の低消費電力を図ることが可能である。
【0292】
なお、本発明はテレビ受像機に限定されず、パーソナルコンピュータのモニターをはじめ、鉄道の駅や空港などにおける情報表示盤や、街頭における広告表示盤など特に大面積の表示媒体として様々な用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0293】
【図1】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図6】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図7】本発明に適用可能なレーザ照射装置を説明する斜視図である。
【図8】本発明に適用可能なレーザ照射装置を説明する斜視図である。
【図9】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図10】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図11】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図13】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図14】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図15】本発明の半導体装置の作製方法を説明する上面図である。
【図16】本発明の半導体装置の作製方法を説明する上面図である。
【図17】本発明の半導体装置の作製方法を説明する上面図である。
【図18】本発明の半導体装置の作製方法を説明する上面図である。
【図19】本発明の半導体装置に適用可能な等価回路を説明する断面図である。
【図20】本発明の半導体装置を説明する断面図である。
【図21】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図22】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図23】本発明の半導体装置の作製方法を説明する上面図である。
【図24】本発明の半導体装置を説明する上面図及び断面図である。
【図25】本発明に適応可能な発光素子の断面構造を説明する図である。
【図26】本発明の半導体装置を説明する上面図である。
【図27】本発明の半導体装置を用いた電子機器を説明する斜視図である。
【図28】本発明の半導体装置を用いた電子機器を説明する図である。
【図29】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の層を形成し、前記第1の層上に剥離層を形成し、
前記剥離層に選択的にレーザビームを照射して前記剥離層の付着力を低下させ、
前記レーザビームが照射された剥離層を除去して前記第1の層の一部を露出し、
前記露出された第1の層をエッチングして、第2の層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記レーザビームは少なくとも前記剥離層で吸収される波長を有し、前記レーザビームを前記剥離層の表面から前記剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
基板上に第1の層を形成し、前記第1の層上に剥離層を形成し、前記剥離層上に透光性を有する層を形成し、
前記剥離層に選択的にレーザビームを照射して前記剥離層の付着力を低下させ、
前記レーザビームが照射された剥離層及び前記剥離層に接する透光性を有する層を除去して前記第1の層の一部を露出し、
前記露出された第1の層をエッチングして、第2の層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項3において、前記レーザビームは少なくとも前記剥離層で吸収される波長を有し、前記レーザビームを前記透光性を有する層から前記剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1または請求項3において、前記レーザビームは前記剥離層で吸収され、且つ前記基板及び前記第1の層を透過する波長を有し、前記レーザビームを前記基板から前記剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
基板上に第1の剥離層を形成し、
前記第1の剥離層に選択的に第1のレーザビームを照射して前記第1の剥離層の付着力を低下させ、
前記第1のレーザビームが照射された第1の剥離層を除去して前記第2の剥離層を形成し、
前記第2の剥離層、及び基板上に第1の層を形成し、
前記第2の剥離層に第2のレーザビームを照射して前記第2の剥離層の付着力を低下させ、
前記第2のレーザビームが照射された第2の剥離層、及び前記第2の剥離層に接する第1の層を除去して第2の層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項6において、前記第1のレーザビームは少なくとも前記第1の剥離層で吸収される波長を有し、前記第1のレーザビームを前記剥離層の表面から前記第1の剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項6において、前記第2のレーザビームは少なくとも前記第2の剥離層で吸収され、且つ前記第1の層を透過する波長を有し、前記第2のレーザビームを前記剥離層の表面から前記第2の剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
基板上に第1の剥離層を形成し、前記第1の剥離層上に第1の透光性を有する層を形成し、
前記第1の剥離層に選択的に第1のレーザビームを照射して前記第1の剥離層の付着力を低下させ、
前記第1のレーザビームが照射された第1の剥離層及び前記の剥離層に接する第1の透光性を有する層を除去して前記第2の剥離層及び第2の透光性を有する層を形成し、
前記第2の剥離層、第2の透光性を有する層、及び基板上に第1の層を形成し、
前記第2の剥離層に第2のレーザビームを照射して前記第2の剥離層の付着力を低下させ、
前記第2のレーザビームが照射された第2の剥離層、及び前記第2の剥離層に接する第2の透光性を有する層、並びに前記第2の透光性を有する層に接する第1の層を除去して第2の層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項9において、前記第1のレーザビームは少なくとも前記第1の剥離層で吸収される波長を有し、前記第1のレーザビームを前記第1の透光性を有する層の表面から前記第1の剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項9において、前記第2のレーザビームは少なくとも前記第2の剥離層で吸収され、且つ前記第1の層及び第2の透光性を有する層を透過する波長を有し、前記第2のレーザビームを前記第2の透光性を有する層の表面から前記第2の剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項6または請求項9において、前記第1のレーザビームは、前記第1の剥離層で吸収され、且つ前記基板を透過する波長を有し、前記第1のレーザビームを前記基板から前記第1の剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項6または請求項9において、前記第2のレーザビームは前記第2の剥離層で吸収される波長を有し、且つ前記基板を透過する波長を有し、前記第1の層は前記第2のレーザビームを遮光し、前記第2のレーザビームを前記基板から前記第2の剥離層に照射することを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−147626(P2008−147626A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268621(P2007−268621)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】