説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】FEOLレベルから正負とも低電圧の範囲で拡散工程中のチャージアップから被保護素子を保護し、且つ、拡散工程完了後は被保護素子の駆動に必要な正負両極性の高電圧を被保護素子に印加することが可能な半導体装置を実現できるようにする。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板11に形成され、被保護素子電極22を有する被保護素子21と、半導体基板11と電気的に接続された基板接続電極42を有する基板接続部41と、被保護素子電極22と基板接続電極42との間に形成されたヒューズ素子電極32を有するヒューズ素子部31とを備えている。ヒューズ素子電極32は、所定の電流を流すことにより切断可能に形成され、ヒューズ素子電極32が切断されていない状態において、被保護素子電極22、基板接続電極42及びヒューズ素子電極32は、一体に形成された導電膜15からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、拡散工程中のチャージアップの影響が問題となるメモリ装置等の半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
局所電荷蓄積型不揮発性メモリ装置においては、拡散工程中にチャージアップにより電荷注入を受けると、拡散工程完了後にそれを除去することが困難な場合が多い。このため、拡散工程中におけるメモリ素子部へのチャージアップダメージを抑制する技術は重要性を増している。チャージアップダメージを抑制する方法として、拡散工程中にメモリ素子部に保護素子を接続する方法が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
図14は、従来例に係るチャージアップダメージの抑制方法を示している。図14に示すように、配線工程において、被保護素子150にチャージアップ保護トランジスタ部152を配線140により接続する。これにより、配線工程よりも後の工程において被保護素子150の電極に正のチャージが印加された場合には、同時に保護トランジスタ部152の電極にも正電圧が印加される。従って、保護トランジスタ部152が導通し、チャージは被保護素子150の電極に帯電することなく基板141に抜ける。また、被保護素子150に負のチャージが印加された場合には、保護トランジスタ部152のソース/ドレイン拡散層とウェル拡散層とが順バイアスとなる。その結果、チャージは被保護素子150の電極に帯電することなく基板141に抜ける。
【特許文献1】特開2001−57389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の従来技術においては、保護効果は、配線工程以降にしか発効しないという問題がある。このため、FEOL(Front End Of Line)レベルの拡散工程中に生じるチャージングからメモリ素子を保護することができない。また、拡散工程完了後に被保護素子に負バイアスを印加することができないという問題もある。
【0005】
メモリ素子の微細化が進行するに伴い、FEOLレベルの拡散工程中におけるチャージアップが、メモリセルの初期閾値(Vt)のばらつき等へ及ぼす影響が無視できなくなってきている。具体的には、微細化に伴い低温プロセスが必要となるが、それに伴いFEOLレベルにおいて蓄積された電荷を引き抜く熱処理の工程を入れることができなくなってきている。このため、配線工程以降のメモリ素子保護では、チャージアップダメージの抑制が不十分となる。
【0006】
また、微細化により電荷を蓄積する酸化膜−窒化膜−酸化膜(ONO膜)の膜厚が薄くなると、電荷注入による初期Vtの変動が生じやすくなる。例えば、ONO膜の膜厚が30nmから15nmになると、FEOLレベルの拡散工程中におけるチャージングにおいて、例えば10V程度の電圧が長時間にわたり印加されただけで、電荷注入による初期Vtの変動が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決し、FEOLレベルから正負とも低電圧の範囲で拡散工程中のチャージアップから被保護素子を保護し、且つ、拡散工程完了後は被保護素子の駆動に必要な正負両極性の高電圧を被保護素子に印加することが可能な半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は半導体装置を、被保護素子電極が一体となったヒューズ素子電極及び基板接続電極により基板と電気的に接続される構成とする。
【0009】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、半導体基板に形成され、被保護素子電極を有する被保護素子と、半導体基板と電気的に接続された基板接続電極を有する基板接続部と、被保護素子電極と基板接続電極との間に形成されたヒューズ素子電極を有するヒューズ素子部とを備え、ヒューズ素子電極は、所定の電流を流すことにより切断可能に形成され、被保護素子電極、基板接続電極及びヒューズ素子電極は、ヒューズ素子電極が切断されていない状態において、一体に形成された導電膜からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体装置は、被保護素子電極、基板接続電極及びヒューズ素子電極は、ヒューズ素子電極が切断されていない状態において、一体に形成された導電膜からなる。このため、被保護素子電極である導電膜が形成されたときから、被保護素子へのチャージアップダメージの発生を回避することが可能となる。また、ヒューズ素子電極は、所定の電流を流すことにより切断可能に形成されている。このため、拡散工程終了後にヒューズ素子電極を切断することにより、被保護素子の駆動に必要な正負両極性の高電圧を印加することが可能となる。
【0011】
本発明の半導体装置において、ヒューズ素子電極は切断され、導電膜は被保護素子電極と基板接続電極とが絶縁されていてもよい。
【0012】
本発明の半導体装置は、導電膜と基板との間に形成された絶縁膜をさらに備えていてもよい。
【0013】
本発明の半導体装置においてヒューズ素子部は、導電膜におけるヒューズ素子電極の両側の部分とそれぞれ電気的に接続された第1の切断端子及び第2の切断端子とを有していてもよい。
【0014】
本発明の半導体装置において、半導体基板における基板接続電極と接続された部分は、第1導電型であり、基板接続電極は第2導電型であってもよい。
【0015】
この場合において基板接続部は、半導体基板における基板接続電極と接続された部分に形成された第1導電型の拡散層を有していてもよい。
【0016】
さらにこの場合において半導体基板は、第1導電型ウェルを有し、第1導電型の拡散層は、第1導電型ウェルに形成されていてもよい。
【0017】
本発明の半導体装置において基板接続電極は、膜厚が4nm以下の基板接続絶縁膜を介在させて半導体基板と接続されていてもよい。
【0018】
本発明の半導体装置において被保護素子は、電荷蓄積層への電子又は正孔の蓄積及び除去により特性が変化する不揮発性メモリであってもよい。
【0019】
本発明の半導体装置においてヒューズ素子電極の線幅は、被保護素子電極の線幅及び基板接続電極の線幅よりも狭くてもよい。
【0020】
本発明の半導体装置において導電膜は複数であり且つ互いに間隔をおいて平行に形成され、隣接する導電膜において、ヒューズ素子電極及び基板接続電極は、被保護素子電極に対して反対側に形成され、導電膜におけるヒューズ素子電極の両側の部分の線幅は、被保護素子電極の線幅よりも太くてもよい。
【0021】
本発明の半導体装置において導電膜は、ヒューズ素子電極の部分を除いて金属シリサイド化されていてもよい。
【0022】
本発明の半導体装置において導電膜は、ヒューズ素子電極の部分を除いて下層導電膜と上層導電膜とを含み、ヒューズ素子電極は、ヒューズ素子絶縁膜と上層導電膜とが積層された積層構造を有していてもよい。
【0023】
この場合において基板接続電極は、上層導電膜が基板と接続されていてもよい。
【0024】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1導電型の半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程(a)と、絶縁膜に第1の開口部を形成すると共に、絶縁膜の上に第1の開口部において半導体基板と電気的に接続された第2導電型の導電膜を形成する工程(b)と、半導体基板における、第1の開口部と離間された領域に導電膜を電極とする被保護素子を形成する工程(c)と、工程(c)よりも後に、導電膜を第1の開口部と被保護素子との間の部分において切断する工程(d)とを備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板と電気的に接続された導電膜を電極とする被保護素子を形成する。このため、被保護素子の電極が形成されたときから、被保護素子をチャージアップダメージから保護することが可能となる。また、導電膜を第1の開口部と被保護素子との間の部分において切断する工程を備えている。このため、拡散工程終了後は、被保護素子の駆動に必要な正負両極性の高電圧を印加することが可能となる。
【0026】
本発明の半導体装置の製造方法において、導電膜における工程(d)において切断する部分の両側とそれぞれ電気的に接続されるように第1の切断端子及び第2の切断端子を形成する工程(e)をさらに備え、工程(d)において、第1の切断端子と第2の切断端子との間に電流を流すことにより導電膜における第1の切断端子と第2の切断端子との間の部分を切断してもよい。
【0027】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(b)よりも後で且つ工程(d)よりも前に、導電膜における工程(d)において切断する部分を除く部分を金属シリサイド化する工程(f)をさらに備えていてもよい。
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程(b)は、絶縁膜の上に下層導電膜を形成する工程(b1)と、下層導電膜及び絶縁膜を選択的に除去することにより第1の開口部を形成する工程(b2)と、下層導電膜の上に第1の開口部を埋めるように上層導電膜を形成する工程(b3)とを含んでいてもよい。
【0029】
この場合において工程(b)は、工程(b1)よりも後で且つ工程(b3)よりも前に、下層導電膜における第1の開口部と被保護素子が形成される領域との間の部分に第2の開口部を形成する工程(b4)と、第2の開口部を埋めるヒューズ素子絶縁膜を形成する工程(b5)とを含み、工程(b3)では、上層導電膜をヒューズ素子絶縁膜の上を覆うように形成してもよい。
【0030】
本発明の半導体装置の製造方法において、半導体基板に第1導電型の不純物を注入して第1導電型ウェルを形成する工程(g)をさらに備え、第1の開口部は、第1導電型ウェルを露出するように形成してもよい。
【0031】
本発明の半導体装置の製造方において、工程(b)は、半導体基板における第1の開口部から露出した部分に第1導電型の不純物を注入して第1導電型の拡散層を形成する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る半導体装置によれば、FEOLレベルから正負とも低電圧の範囲で拡散工程中のチャージアップから被保護素子を保護し、且つ、拡散工程完了後は被保護素子の駆動に必要な正負両極性の高電圧を被保護素子に印加することが可能な半導体装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。図1に示すように、本実施形態の半導体装置は、被保護素子21と、ヒューズ素子部31と、基板接続部41とを備えている。
【0034】
被保護素子21は、シリコン(Si)等からなる第1導電型の半導体基板11に形成された不揮発性メモリ素子等であり、図1においては被保護素子21のうち被保護素子電極22のみを示している。被保護素子電極22は、例えばメモリ素子のゲート電極である。ヒューズ素子部31は、電流を流すことにより切断可能に形成されたヒューズ素子電極32を有している。基板接続部41は、半導体基板11と接続された基板接続電極42を有している。
【0035】
被保護素子電極22、ヒューズ素子電極32及び基板接続電極42は、半導体基板11に設けられた第1導電型のウェル12の上に、絶縁膜14を介在させて一体に形成された導電膜15からなる。導電膜15は、例えば第2導電型の不純物が注入されたポリシリコン膜とすればよい。
【0036】
絶縁膜14は、基板接続電極42が形成された部分に開口部を有し、基板接続電極42は、開口部を介して半導体基板11と電気的に接続されている。また、半導体基板11における基板接続電極42と接する領域には、第1導電型拡散層13が形成されている。
【0037】
ヒューズ素子電極32は、被保護素子電極22と基板接続電極42との間に形成されている。導電膜15におけるヒューズ素子電極32の両側の部分には、それぞれ第1の切断端子52A及び第2の切断端子52Bが電気的に接続されている。第1の切断端子52A及び第2の切断端子52Bは、半導体基板11の上に形成された配線層50に形成された第1の配線層配線51A及び第2の配線層配線51Bを介在させて導電膜15と接続されている。第1の切断端子52Aと第2の切断端子52Bとの間に電流を流すことにより、ヒューズ素子電極32を切断することができる。なお、第2の切断端子52Bが導電膜15と接続された構造を示したが、ヒューズ素子電極32に電流が流すことができればよく、例えばウェル12と直接接続してもよい。
【0038】
図2(a)及び(b)は、図1に示す第1の実施形態に係る半導体装置の等価回路であり、(b)はヒューズ素子電極32が切断される前の状態であり、(b)はヒューズ素子電極32が切断された状態である。なお、被保護素子21は不揮発性メモリ素子アレイとして表示している。
【0039】
拡散工程中に正のチャージアップが生じた際には図2(a)に示す導電膜15に正電圧が印加される。導電膜15が第2導電型である場合には、基板接続電極42と第1導電型拡散層13とによりPN接合ダイオード61が形成される。正のチャージアップの場合には、PN接合ダイオード61は逆バイアスとなる。しかし、導電膜15及び第1導電型拡散層への不純物注入量をそれぞれ、6×15cm-2及び2×15cm-2程度とすることにより、PN接合ダイオード61の耐圧は1V程度となる。このため、第1導電型のウェル12又は第1導電型の半導体基板11へチャージが抜け、被保護素子21へのチャージアップダメージを抑制できる。
【0040】
被保護素子電極22、ヒューズ素子電極32及び基板接続電極42は、共通の導電膜15を有するため電位差はほぼ0Vである。また、基板接続部に形成されるPN接合ダイオード61の耐圧を1V程度とすることにより、FEOLレベルにおける拡散工程中において生じる1V程度の正のチャージングを抑制できる。
【0041】
一方、拡散工程中に負のチャージアップが生じた際には導電膜15に負電圧が印加される。これにより、PN接合ダイオード61が順バイアスとなり、第1導電型のウェル12又は第1導電型の半導体基板11へチャージが抜け、被保護素子21へのチャージアップダメージを抑制できる。
【0042】
被保護素子電極22、ヒューズ素子電極32及び基板接続電極42は、共通の導電膜15を有するため電位差はほぼ0Vである。また、基板接続部に形成されるPN接合ダイオード61の順方向バイアスでの電位障壁を0.7V程度とすることにより、FEOLレベルにおける拡散工程中において生じる−1V程度の負のチャージングを抑制できる。なお、導電膜15及び第1導電型拡散層への不純物注入量をそれぞれ、6×15cm-2及び2×15cm-2程度とすれば、電位障壁を0.7V程度にできる。
【0043】
さらに、拡散工程完了後に図2(b)に示すように第1の切断端子52Aと第2の切断端子52Bとの間に電流を流すことによりヒューズ素子電極32を切断する。これにより、被保護素子21に対して必要な正負両極性の高電圧を印加することが可能となる。
【0044】
以下に、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。まず、図3に示すように、第1導電型の半導体基板11に第1導電型のウェル12を形成する。ウェル12の上における、被保護素子形成領域71、ヒューズ素子形成領域72及び基板接続部形成領域73に絶縁膜14を形成する。続いて、絶縁膜14における基板接続部形成領域73に開口部14aを形成する。絶縁膜14の膜厚は2nm〜30nm程度とすればよい。なお、絶縁膜14は、被保護素子形成領域71に形成する他の絶縁膜と一体に形成しても、独立して形成してもよい。
【0045】
次に、図4に示すように、ウェル12における開口部14aから露出した部分に第1導電型の不純物を注入して、第1導電型拡散層13を形成する。不純物注入量は、例えば、2×1015cm-2とすればよい。続いて、絶縁膜14の上に、開口部14aを埋めるように導電膜15を形成した後、導電膜15に第2導電型の不純物を注入する。不純物注入量は、例えば、6×1015cm-2とすればよい。導電膜15における被保護素子形成領域71に形成された部分は被保護素子電極22となり、ヒューズ素子形成領域72に形成された部分はヒューズ素子電極32となり、基板接続部形成領域73に形成された部分は基板接続電極42となる。この時点から、被保護素子の被保護素子電極22及びゲート絶縁膜(図示せず)へのチャージングを保護することができる。
【0046】
なお、第1導電型拡散層13及び導電膜15の不純物濃度は、保護が可能なチャージアップ電圧等を考慮して適宜設定すればよい。また、基板接続電極42と半導体基板11との間に適切な耐圧のPN接合ダイオードが形成されればよく、第1導電型拡散層13は必要に応じて形成すればよい。
【0047】
なお、導電膜15におけるヒューズ素子形成領域72に形成された部分を、他の領域よりも細線化してもよい。このようにすることにより、ヒューズ素子電極32の切断が容易となる。細線化は、リソグラフィとRIE(ReactiveIonEtching)及びFIB(FocusedIonBeam)等のイオンミリングとを用いて行えばよい。
【0048】
また、導電性を高めるため導電膜15を金属シリサイドしてもよい。この場合にはさらに、ヒューズ素子部形成領域72においてはシリサイド化を行わず高抵抗化すれば、ヒューズ素子電極32の切断が容易となる。
【0049】
また、基板接続電極42と第1導電型拡散層13との界面に自然酸化膜や化学酸化膜等からなる膜厚が4nm以下の薄い絶縁膜を形成してもよい。この程度の膜厚ならば、工程中においてチャージされたときに十分なトンネル電流が流れるか又は破壊されて基板接続電極42と半導体基板11とが接続されるので、動作上の問題とならない。
【0050】
次に、拡散工程等を含む被保護素子を完成させる工程を経た後、図5に示すように配線層50を形成し、導電膜15におけるヒューズ素子電極32の一方の側方と電気的に接続された第1の配線層配線51A及び第1の切断端子52Aと、他方の側方と電気的に接続された第2の配線層配線51B及び第2の切断端子52Bとを形成する。なお、被保護素子を完成させる工程は、配線層50を形成する工程や、第1の配線層配線51A及び第1の切断端子52Aと第2の配線層配線51B及び第2の切断端子52Bを形成する工程と重複していてもよい。
【0051】
次に、図6に示すように、拡散工程終了後の検査工程において、第1の切断端子52Aと第2の切断端子52Bとの間に電流を流し、ヒューズ素子電極32を切断する。これにより、被保護素子電極22と基板接続電極42とは絶縁される。例えば、ヒューズ素子電極32が、6×1015cm-2の不純物注入量が導入されたポリシリコンにより、厚さが0.2μm、幅が0.12μm、長さが0.96μm、シート抵抗が130Ω/□となるように形成した場合、ヒューズ素子電極32に対して電流密度が200mA/μm2の電流を1ミリ秒程度流すことにより、ヒューズ素子電極32を切断できる。
【0052】
なお、図7に示すように、複数の被保護素子電極22を形成する場合、導電膜15を平行に配置し、隣接するヒューズ素子電極32及び基板接続電極42を対応する被保護素子電極22に対して反対側に形成してもよい。第1の配線層配線51A及び第2の配線層配線51Bを接続するためのマージンを確保するために、導電膜15におけるヒューズ素子電極32の両側の部分のサイズを大きくしても、被保護素子の間隔を広くする必要がなく、装置全体を小型化できる。
【0053】
以上のように、本実施形態の半導体装置及びその製造方法は、被保護素子をFEOLレベルから保護することができ、拡散工程の完了後に被保護素子に正負両極性の高電圧を被保護素子に印加することが可能である。
【0054】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図8は第2の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。図8において図1と同一の構成要素には同一の符号を附すことにより説明を省略する。
【0055】
第2の実施形態の半導体装置は、導電膜15が下層導電膜15Aと上層導電膜15Bとにより形成されている。また、ヒューズ素子電極32においては、下層導電膜15Aが形成されておらず、ヒューズ素子絶縁膜33の上に上層導電膜15Bが形成されている。
【0056】
第2の実施形態の半導体装置は、ヒューズ素子電極32における導電膜の膜を薄くし、高抵抗化することができる。このため、第1の実施形態の半導体装置と比べてヒューズ素子電極32の切断が容易となる。
【0057】
以下に、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。まず、図9に示すように、第1導電型の半導体基板11に第1導電型のウェル12を形成し、ウェル12の上にSiO2等からなる絶縁膜14及びポリシリコン等からなる下層導電膜15Aを形成する。絶縁膜14の膜厚は2nm〜30nm程度とすればよく、下層導電膜15Aの膜厚は5nm〜80nm程度とすればよい。なお、絶縁膜14は、被保護素子に用いる他の絶縁膜と一体に形成しても、独立して形成してもよい。
【0058】
次に、図10に示すように、下層導電膜15A及び絶縁膜14における基板接続部を形成する部分に開口部14bを形成する。続いて、ウェル12における開口部14bから露出した部分に第1導電型の不純物を注入して、第1導電型拡散層13を形成する。不純物注入量は、例えば、2×1015cm-2とすればよい。続いて、下層導電膜15Aにおけるヒューズ素子部31を形成する部分に開口部15aを形成する。なお、開口部14bと開口部15aとは同時に形成してもよい。また、開口部15aを形成する際に、絶縁膜14を除去してもよい。ウェル12における開口部15aから露出した部分に第1導電型の不純物が注入されていても問題ない。
【0059】
次に、図11に示すように、開口部15aを埋めるようにヒューズ素子絶縁膜33を形成した後、下層導電膜15Aの上に、開口部14bを埋めるように上層導電膜15Bを形成した後、導電膜15に第2導電型の不純物を注入する。不純物注入量は、例えば、6×1015cm-2とすればよい。導電膜15は、被保護素子21の被保護素子電極22、ヒューズ素子部31のヒューズ素子電極32、基板接続部41の基板接続電極42となる。この時点から、被保護素子21の被保護素子電極22及びゲート絶縁膜(図示せず)へのチャージングを保護することができる。
【0060】
なお、導電膜15におけるヒューズ素子電極32となる領域を、他の領域よりも細線化してもよい。このようにすることにより、ヒューズ素子電極32の切断が容易となる。細線化は、リソグラフィとRIE(ReactiveIonEtching)及びFIB(FocusedIonBeam)等のイオンミリングとを用いて行えばよい。
【0061】
また、導電性を高めるため導電膜15を金属シリサイドしてもよい。この場合にはさらに、ヒューズ素子電極32となる領域はシリサイド化を行わず高抵抗化すれば、ヒューズ素子電極32の切断が容易となる。
【0062】
また、基板接続電極42と第1導電型拡散層13との界面に自然酸化膜や化学酸化膜等からなる膜厚が4nm以下の薄い絶縁膜を形成してもよい。この程度の膜厚ならば、工程中にチャージされたときに十分なトンネル電流が流れるか破壊されて基板接続電極42と半導体基板11とが接続されるので、動作上の問題とならない。
【0063】
次に、拡散工程等を含む被保護素子を完成させる工程を経た後、図12に示すように配線層を形成し、導電膜15におけるヒューズ素子電極32の一方の側方と電気的に接続された第1の配線層配線51A及び第1の切断端子52Aと、他方の側方と電気的に接続された第2の配線層配線51B及び第2の切断端子52Bとを形成する。なお、被保護素子を完成させる工程は、配線層50を形成する工程や、第1の配線層配線51A及び第1の切断端子52Aと第2の配線層配線51B及び第2の切断端子52Bを形成する工程と重複していてもよい。
【0064】
次に、図13に示すように、拡散工程終了後の検査工程において、第1の切断端子52Aと第2の切断端子52Bとの間に電流を流し、ヒューズ素子電極32を切断する。これにより、被保護素子電極22と基板接続電極42とは絶縁される。例えば、ヒューズ素子電極32が、6×1015cm-2の不純物注入量が導入されたポリシリコンにより、厚さが0.1μm、幅が0.12μm、長さが0.96μm、シート抵抗が260Ω/□となるように形成した場合、ヒューズ素子電極32に対して電流密度が200mA/μm2の電流を0.7ミリ秒程度流すことにより、ヒューズ素子電極32を切断できる。第2の実施形態の半導体装置は、ヒューズ素子電極32における導電膜の膜厚だけを薄くし、高抵抗化することができる。このため、第1の実施形態の半導体装置よりもヒューズ素子電極32の切断が容易である。
【0065】
本実施形態の半導体装置についても、被保護素子を複数形成する場合には、図7に示すようなレイアウトとすれば、装置を小型化することができる。
【0066】
各実施形態において、モノス(MONOS:metal-oxide-nitride-oxide-silicon)型メモリ及びフローティングゲート(FG)型メモリをはじめとする不揮発性メモリ素子、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)及びダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)をはじめとする揮発性メモリ素子等を被保護素子として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、FEOLレベルから正負とも低電圧の範囲で拡散工程中のチャージアップから被保護素子を保護し、且つ、拡散工程完了後は被保護素子の駆動に必要な正負両極性の高電圧を被保護素子に印加することが可能な半導体装置を実現でき、特に拡散工程中のチャージアップの影響が問題となるメモリ装置等の半導体装置及びその製造方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す等価回路図であり、(a)はヒューズ素子電極の切断前であり、(b)はヒューズ素子電極の切断後である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置のレイアウトの一例を示す平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法の1工程を示す断面図である。
【図14】従来例に係る半導体素子の保護回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0069】
11 半導体基板
12 ウェル
13 第1導電型拡散層
14 絶縁膜
14a 開口部
14b 開口部
15 導電膜
15A 下層導電膜
15B 上層導電膜
15a 開口部
21 被保護素子
22 被保護素子電極
31 ヒューズ素子部
32 ヒューズ素子電極
33 ヒューズ素子絶縁膜
41 基板接続部
42 基板接続電極
50 配線層
51A 第1の配線層配線
51B 第2の配線層配線
52A 第1の切断端子
52B 第2の切断端子
61 PN接合ダイオード
71 被保護素子形成領域
72 ヒューズ素子形成領域
73 基板接続部形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成され、被保護素子電極を有する被保護素子と、
前記半導体基板と電気的に接続された基板接続電極を有する基板接続部と、
前記被保護素子電極と前記基板接続電極との間に形成されたヒューズ素子電極を有するヒューズ素子部とを備え、
前記ヒューズ素子電極は、所定の電流を流すことにより切断可能に形成され、
前記被保護素子電極、基板接続電極及びヒューズ素子電極は、前記ヒューズ素子電極が切断されていない状態において、一体に形成された導電膜からなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ヒューズ素子電極は、切断され、
前記導電膜は、前記被保護素子電極と前記基板接続電極とが絶縁されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記導電膜と前記基板との間に形成された絶縁膜をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ヒューズ素子部は、
前記導電膜における前記ヒューズ素子電極の両側の部分とそれぞれ電気的に接続された第1の切断端子及び第2の切断端子とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板における前記基板接続電極と接続された部分は、第1導電型であり、
前記基板接続電極は第2導電型であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板接続部は、前記半導体基板における前記基板接続電極と接続された部分に形成された第1導電型の拡散層を有していることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板は、第1導電型ウェルを有し、
前記第1導電型の拡散層は、前記第1導電型ウェルに形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記基板接続電極は、膜厚が4nm以下の基板接続絶縁膜を介在させて前記半導体基板と接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記被保護素子は、電荷蓄積層への電子又は正孔の蓄積及び除去により特性が変化する不揮発性メモリであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ヒューズ素子電極の線幅は、前記被保護素子電極の線幅及び前記基板接続電極の線幅よりも狭いことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記導電膜は複数であり且つ互いに間隔をおいて平行に形成され、
隣接する導電膜において、前記ヒューズ素子電極及び基板接続電極は、前記被保護素子電極に対して反対側に形成され、
前記導電膜における前記ヒューズ素子電極の両側の部分の線幅は、前記被保護素子電極の線幅よりも太いことを特徴とする請求項1〜10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記導電膜は、前記ヒューズ素子電極の部分を除いて金属シリサイド化されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記導電膜は、前記ヒューズ素子電極の部分を除いて下層導電膜と上層導電膜とを含み、
前記ヒューズ素子電極は、ヒューズ素子絶縁膜と前記上層導電膜とが積層された積層構造を有していることを特徴とする請求項1〜12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記基板接続電極は、前記上層導電膜が前記基板と接続されていることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
第1導電型の半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記絶縁膜に第1の開口部を形成すると共に、前記絶縁膜の上に前記第1の開口部において前記半導体基板と電気的に接続された第2導電型の導電膜を形成する工程(b)と、
前記半導体基板における、前記第1の開口部と離間された領域に前記導電膜の一部を電極とする被保護素子を形成する工程(c)と、
前記工程(c)よりも後に、前記導電膜を前記第1の開口部と前記被保護素子との間の部分において切断する工程(d)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記工程(c)よりも後で且つ工程(d)よりも前に、前記導電膜における前記工程(d)において切断する部分の両側とそれぞれ電気的に接続された第1の切断端子及び第2の切断端子を形成する工程(e)をさらに備え、
前記工程(d)において、前記第1の切断端子と前記第2の切断端子との間に電流を流すことにより前記導電膜における前記第1の切断端子と前記第2の切断端子との間の部分を切断することを特徴とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記工程(b)よりも後で且つ前記工程(d)よりも前に、前記導電膜における前記工程(d)において切断する部分を除く部分を金属シリサイド化する工程(f)をさらに備えていることを特徴とする請求項15又は16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記工程(b)は、
前記絶縁膜の上に下層導電膜を形成する工程(b1)と、
前記下層導電膜及び前記絶縁膜を選択的に除去することにより前記第1の開口部を形成する工程(b2)と、
前記下層導電膜の上に前記第1の開口部を埋めるように上層導電膜を形成する工程(b3)とを含むことを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記工程(b)は、前記工程(b1)よりも後で且つ前記工程(b3)よりも前に、
前記下層導電膜における前記第1の開口部と前記被保護素子が形成される領域との間の部分に第2の開口部を形成する工程(b4)と、
前記第2の開口部を埋めるヒューズ素子絶縁膜を形成する工程(b5)とを含み、
前記工程(b3)では、前記上層導電膜を前記ヒューズ素子絶縁膜の上を覆うように形成することを特徴とする請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記半導体基板に第1導電型の不純物を注入して第1導電型ウェルを形成する工程(g)をさらに備え、
前記第1の開口部は、前記第1導電型ウェルを露出するように形成することを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
工程(b)は、
前記半導体基板における前記第1の開口部から露出した部分に第1導電型の不純物を注入して第1導電型の拡散層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−76777(P2009−76777A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245928(P2007−245928)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】