説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 ゲートとドレインの間で生じる電界集中を緩和する半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば,半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極と、前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜を介して形成され、かつ、第1のゲート電極の側面に絶縁性のスペーサを介して配置された第2のゲート電極と、第1及び第2のゲート電極を挟むように前記半導体基板上に形成されたソース領域及びドレイン領域と、第1のゲート電極下方における前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、第2のゲート電極及び前記ソース領域及びドレイン領域と重なるように形成された電界緩和領域と、を備える半導体装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関し、特に、高耐圧トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタは、製造プロセスの微細化が進み、近年ますますトランジスタの小型化が進んでいる。これに伴い、ドレイン端部に生じる電界集中を回避することが求められている。耐圧特性が求められる高圧用トランジスタ(例えば、液晶ディスプレイ用ドライバ−回路に用いられるMOSトランジスタ)においても、製造プロセスの微細化が進み、トランジスタのサイズが縮小される一方、ゲートとドレインの間で生じる電界集中の改善が望まれている。特に、この電界集中によるGIDL(Gate Induced Drain Leakage)の改善が望まれている。
この電界集中を改善する技術として、ゲート電極端部下のゲート酸化膜がチャンネル領域より厚く形成される技術(オフセットLOCOS)やこの技術を改良した技術、例えば、ドレイン高濃度領域及びシリサイド領域とゲート電極の間にオフセット領域を設ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
以下に、このドレイン高濃度領域及びシリサイド領域とゲート電極の間にオフセット領域を設ける技術について、図19を参照して説明する。
図19はこの従来技術の半導体装置の断面図である。この従来技術に係る半導体装置は、MOS型電界効果トランジスタのドレイン領域130が、第1導電型の半導体基板1表面に形成された第2導電型の低濃度拡散層70と、低濃度拡散層70に囲まれ、低濃度拡散層70の周囲から所定距離だけ離れて内側に形成された第2導電型の高濃度拡散層130と、高濃度拡散層130に囲まれ、高濃度拡散層130の周囲から所定距離だけ離れて内側に形成されたシリサイド層120とを有する。そして、このシリサイド層120は、ゲート電極90上の一領域から高濃度拡散層130の一領域にかけて形成されたオフセット形成用絶縁膜層300により、ゲート電極120等から所定距離のオフセット領域(図19のB)を設けて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−47721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来技術では、オフセット形成用絶縁膜層を形成しパターンニングする必要がある。上層に新たな層をパターンニングするため、フォトリソグラフィー工程の加工精度を考慮してトランジスタのサイズを大きくする必要がある(例えば、図19のA,Cの加工精度)。また、上層に設けたオフセット形成用絶縁膜層がゲート電極と重なる場合には、ゲート電極に不純物を均一にドーピングすることが難しくなり、トランジスタの特性のばらつき(例えば、ゲート電極の電気的なばらつき)を考慮した設計が必要になる。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ゲートとドレインの間で生じる電界集中を緩和するとともに、より簡易な工程で製造することができる高圧用トランジスタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によれば、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極と、前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜を介して形成され、かつ、第1のゲート電極の側面に絶縁性のスペーサを介して配置された第2のゲート電極と、前記第1及び第2のゲート電極を挟むように前記半導体基板上に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記第1のゲート電極下方における前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、第2のゲート電極及び前記ソース領域及びドレイン領域と重なるように形成された電界緩和領域と、を備える半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
この発明の半導体装置は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極と、前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜を介して形成され、かつ、第1のゲート電極の側面に絶縁性のスペーサを介して配置された第2のゲート電極と、第1及び第2のゲート電極を挟むように前記半導体基板上に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記第1のゲート電極下方における前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、第2のゲート電極及び前記ソース領域及びドレイン領域と重なるように形成された電界緩和領域と、を備えるので、第1のゲート電極とソース領域及びドレイン領域との距離を大きくするとともに、電界緩和領域を経由して電界をかけることができる。このため、ゲートとドレインの間で生じる電界集中を緩和することができる。また、ゲート電極を形成する段階で、前記第1のゲート電極とソース領域及びドレイン領域との距離を大きくする領域を設けることができるので、上層に新たな層をパターンニングする必要がない。このため、より簡易な工程で製造することができる半導体装置を提供することができる。また、上層に新たな層をパターンニングする必要がないので、フォトリソグラフィー工程の加工精度の影響を受けにくく、より小さい半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施形態の半導体装置の概念的な断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図3】この発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図4】この発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図5】この発明の一実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図6】従来の構造の半導体装置と、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の概念的な平面図である。
【図7】この発明の第1の実施形態に係る変形例の半導体装置の概念的な平面図である。
【図8】この発明の第2の実施形態及び第3の実施形態に係る半導体装置の概念的な平面図である。
【図9】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置及び第1の実施形態に係る変形例並びに第3の実施形態に係る半導体装置の性能を説明するための概念的な断面図である。
【図10】この発明の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る半導体装置の性能を説明するための概念的な断面図である。
【図11】この発明の第4の実施形態に係る半導体装置の概念的な平面図である。
【図12】この発明の第5の実施形態及び第6の実施形態に係る半導体装置の概念的な平面図である。
【図13】この発明の第1の実施形態及び第4の実施形態並びに第6の実施形態に係る半導体装置の性能を説明するための概念的な断面図である。
【図14】従来の構造の半導体装置とこの発明の第1の実施形態に係る半導体装置との電気的特性を示す模式的なグラフである。
【図15】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置及び第1の実施形態に係る変形例の電気的特性を示す模式的なグラフである。
【図16】この発明の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る半導体装置の電気的特性を示す模式的なグラフである。
【図17】この発明の第1の実施形態及び第4の実施形態に係る半導体装置の電気的特性を示す模式的なグラフである。
【図18】この発明の第7の実施形態に係る半導体装置の概念的な断面図である。
【図19】従来技術の半導体装置の概念的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の半導体装置は、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極と、前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜を介して形成され、かつ、第1のゲート電極の側面に絶縁性のスペーサを介して配置された第2のゲート電極と、第1及び第2のゲート電極を挟むように前記半導体基板上に形成されたソース領域及びドレイン領域と、前記第1のゲート電極下方における前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、第2のゲート電極及び前記ソース領域及びドレイン領域と重なるように形成された電界緩和領域と、を備える。
ここで、半導体基板とは、予め不純物が注入された基板のみならず、1又は複数の領域に不純物が注入されて形成された、いわゆるウエル領域を有する基板も含む。また、絶縁性のスペーサとは、電極の側面や電極と電極とのスペースを埋める、絶縁性構造物をいい、例えば、いわゆるサイドウォールがこれに該当する。この絶縁性のスペーサは、サイドウォールと同様の機能を備える構造物であればよく、その材料は特に限定されない。
また、ここでいう電界緩和領域は、第1のゲート電極の下方における半導体基板の一領域に生じるチャネルを挟むように、ソース領域側とドレイン領域側にそれぞれ設けられる領域をいう。この電界緩和領域は、チャネルからソース領域又はドレイン領域までの半導体基板の領域をいい、この領域の一部分がチャネルに接し、この領域のほかの部分がソース領域又はドレイン領域に接する。この電界緩和領域は、ソース領域・ドレイン領域と同じ導電型の不純物を含んで構成され、また、チャネルと逆の導電型の不純物を含んで構成される。
【0010】
この発明の1つの実施形態において、第2のゲート電極が複数の電極で構成されるとともに、前記複数の電極が互いに絶縁性のスペーサを介して配置される。この実施形態によれば、第1のゲート電極とソース領域及びドレイン領域との距離を大きくするとともに、第2のゲートとソース領域及びドレイン領域との間の容量を小さくすることができる。また、この容量を小さくするために、前記複数の電極の線幅は第1のゲート電極の線幅より小さくするものであってもよい。
また、前記複数の電極における絶縁性のスペーサの幅は、0.3ミクロン以下であってもよい。スペーサは、例えば、絶縁膜で構成されるところ、スペーサの幅が0.3ミクロンより大きいと、一般的な膜厚の厚さ(例えば、0.05〜0.15ミクロン)よりこの絶縁膜の膜厚を大きくする必要があり、製造上のコストが大きくなる。このため、前記スペーサの幅は0.3ミクロン以下であるとよい。
【0011】
また、この発明の1つの実施形態において、第2のゲート電極の線幅が第1のゲート電極の線幅よりも大きい。この実施形態によれば、第1のゲート電極とソース領域及びドレイン領域との距離をより大きくすることができるので、高耐圧用途に適したトランジスタを提供できる。この実施形態においても、第2のゲート電極が複数の電極で構成されるとともに、前記複数の電極が互いに絶縁性のスペーサを介して配置されてもよいし、前記複数の電極の線幅は第1のゲート電極の線幅より小さくしてもよい。
【0012】
また、この発明の1つの実施形態において、第1及び第2のゲート電極のうち、第2のゲート電極が、ドレイン領域側にのみ配置される。この実施形態によれば、第1のゲート電極とドレイン領域との距離を大きくするとともに、第1のゲート電極とソース領域との距離を小さくすることができるので、ゲートとドレインの間で生じる電界集中を緩和しつつ、より小さいトランジスタを設計できる。
また、この発明の1つの実施形態において、前記半導体基板及び第1及び第2のゲート電極がシリコン材料で形成されるとともに、第1及び第2のゲート電極の表面にシリサイド層が形成され、かつ前記ソース領域及びドレイン領域の表面に前記シリサイド層が形成される。この実施形態によれば、ゲート電極、前記ソース領域及びドレイン領域の抵抗値を小さくできるので、電界集中を緩和しつつ、トランジスタの低抵抗化及び高速化を実現できる。
【0013】
また、この発明の1つの実施形態において、第1のゲート電極がゲート電極に電位を印加して制御する信号配線と電気的に接続され、第2のゲート電極が第1のゲート電極と電気的に絶縁され、かつ、前記信号配線と電気的に絶縁される。この実施形態によれば、第2のゲート電極は、前記ソース領域及びドレイン領域に対し、能動的な作用を及ぼさないので、ゲートとドレイン間の寄生容量が増加することを考慮する必要性がない。このため、第1のゲート電極とソース領域及びドレイン領域との距離をより大きく設定できる。このため、より高耐圧用途に適したトランジスタを提供できる。
また、この発明の1つの実施形態において、第1のゲート電極が前記信号配線と電気的に接続され、第2のゲート電極が第1のゲート電極及び前記信号配線と電気的に接続される。この実施形態によれば、第1のゲート電極に制御信号からの電位が印加されたときに、第2のゲート電極も同様の電位が印加されるので、電界緩和領域の半導体基板表面側のキャリアが高濃度化され、トランジスタの低抵抗化及び高速化を実現できる。
【0014】
また、この発明の1つの実施形態において、前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜を介して形成され、側面に絶縁性のスペーサを備えたゲート電極と、前記ゲート電極を挟むように前記半導体基板上に形成された第2のソース領域及びドレイン領域と、前記ゲート電極下部の前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、第2のソース領域及びドレイン領域と重なるように形成された第2の電界緩和領域とを備える第2の半導体装置をさらに備えた半導体基板であってもよい。この実施形態によれば、電界集中を緩和できる高耐圧用半導体と低耐圧用半導体と同一の半導体基板に形成できるので、例えば、表示装置に好適な表示装置用半導体基板を提供できる。
【0015】
また、この発明の半導体装置製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に、フォトレジスト膜を形成して、前記フォトレジスト膜が前記半導体基板上の一領域を覆うように、フォトレジスト膜をパターニングする工程と、パターニングされた前記フォトレジスト膜をマスクにして、前記半導体基板に、前記半導体基板の有する導電型と逆の導電型の不純物を注入する第1の不純物注入工程と、第1の不純物注入工程により不純物が注入された半導体基板上の前記フォトレジスト膜を除去する工程と、前記フォトレジスト膜が除去された基板に、ゲート電極膜を形成して、前記半導体基板上の一領域に、前記ゲート絶縁膜を介して第1のゲート電極が配置され、かつ、前記第1のゲート電極の側面にスペースを介して、前記半導体基板上の一領域以外の領域に、第2のゲート電極が配置されるように、前記ゲート電極膜をパターニングする工程と、パターニングされた第1のゲート電極及び第2のゲート電極の上に絶縁膜を形成し、エッチバックすることにより、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の側面と、第1のゲート電極と第2のゲート電極とのスペースと、に絶縁性のスペーサを形成する工程と、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と前記絶縁性のスペーサをマスクにして、前記半導体基板に、前記不純物と同じ導電型の不純物を注入する第2の不純物注入工程と、を備える。
この発明の半導体装置製造方法によれば、ゲート電極を形成する段階で、前記第1のゲート電極と前記第2のゲート電極を形成し、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と前記絶縁性のスペーサをマスクにして、ソース領域及びドレイン領域を形成するので、前記第1のゲート電極とソース領域及びドレイン領域との距離を大きくするために、上層に新たな層をパターンニングする必要がない。このため、より簡易な方法で高耐圧用トランジスタを製造することができる。また、上層に新たな層をパターンニングする必要がないので、フォトリソグラフィー工程の加工精度の影響を受けにくく、より小さい半導体装置を製造することができる。
【0016】
また、この発明の半導体装置製造方法は、素子分離法により第1の領域と第2の領域に分離された半導体基板上に、ゲート絶縁膜を形成する第1のゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、フォトレジスト膜を形成して、前記フォトレジスト膜が前記半導体基板上の、第1の領域における一領域と、第2の領域と、を覆うように、フォトレジスト膜をパターニングする工程と、パターニングされた前記フォトレジスト膜をマスクにして、前記半導体基板に、前記半導体基板の有する導電型と逆の導電型の不純物を注入する第1の不純物注入工程と、第1の不純物注入工程により不純物が注入された半導体基板上の前記フォトレジスト膜を除去する工程と、前記フォトレジスト膜が除去された基板の、第2の領域における前記ゲート絶縁膜を除去し、第2の領域に前記ゲート絶縁膜と異なる第2のゲート絶縁膜を形成する第2のゲート絶縁膜形成工程工程と、第2のゲート絶縁膜が形成された基板に、ゲート電極膜を形成して、前記半導体基板上の第1の領域における一領域に、前記ゲート絶縁膜を介して第1のゲート電極が配置され、かつ、第1のゲート電極の側面にスペースを介して、前記半導体基板上の第1の領域における一領域以外の領域に、第2のゲート電極が配置され、
さらに、第2の領域に第3のゲート電極が配置されるように、前記ゲート電極膜をパターニングする工程と、パターニングされた前記ゲート電極膜をマスクにして、前記半導体基板の第2の領域に、前記不純物と同じ導電型の不純物を注入する第2の不純物注入工程と、第2の不純物注入工程により不純物が注入された前記半導体基板上に絶縁膜を形成し、エッチバックすることにより、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の側面と、第1のゲート電極と第2のゲート電極とのスペースと、第3のゲート電極の側面と、に絶縁性のスペーサを形成する工程と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第3ゲート電極と、前記絶縁性のスペーサと、をマスクにして、前記半導体基板に、前記不純物と同じ導電型の不純物を注入する第3の不純物注入工程と、を備える。
この発明の半導体装置製造方法によれば、ゲート電極を形成する段階で、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極並びに第3のゲート電極を形成し、第1のゲート電極及び第2のゲート電極、第3のゲート電極並びに前記絶縁性のスペーサをマスクにして、ソース領域及びドレイン領域を形成するので、前記第1のゲート電極とソース領域及びドレイン領域との距離を大きくした高耐圧用トランジスタ及び低耐圧用トランジスタを同一の半導体基板に形成できる。
【0017】
以下、図面に示す実施形態を用いて、この発明を詳述する。
(第1の実施形態)
図1に、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す。図1は、この半導体装置の概念的な断面図である。図1に示されるように、この実施形態に係る半導体装置1は、P型の半導体基板1の上にゲート酸化膜6を介して形成されているゲート電極9A、9B、9Cと、このゲート電極9A、9B、9Cを挟むように形成されているN型ソース・ドレイン領域12と、ゲート電極9Aの下方における半導体基板1の一部の領域を挟むように形成され、ゲート電極9B、9C及びN型ソース・ドレイン領域12と重なるように形成されているN型ドリフト領域7を備えている。
【0018】
この実施形態に係る半導体装置1では、半導体基板1として、シリコン基板が用いられている。シリコン基板にPウエル領域4Aが設けられ、この領域内に半導体装置1が形成されている。この半導体基板1には、P型又はN型の不純物がドープされた1又は複数のウエル領域が形成されたものを用いてもよいが、P型又はN型の不純物が所定の濃度で予めドープされたものを用いてもよい。この実施形態では、後述するシリサイド層13を設けるために、半導体基板1としてシリコン材料を用いているが、この半導体基板1は、トランジスタ(半導体装置)を形成することができる材料であれば特に限定されず、シリコンのほか、例えば、ゲルマニウム等の元素半導体、化合物半導体(例えば、シリコンゲルマニウム等)、ガラス基板上に堆積された、多結晶シリコン、アモルファスシリコンであってもよい。
【0019】
そして、図1に示すように、ゲート酸化膜6が前記半導体基板1の上に形成されている。このゲート酸化膜6は、ゲート電極9A、9B、9Cと半導体基板1を電気的に絶縁するために、ゲート電極9A、9B、9Cの下部に、ゲート電極9A、9B、9Cと接して設けられている。また、このゲート酸化膜6は、ゲート電極9A、9B、9Cの下部からN型ソース・ドレイン領域12の側方まで延びている。この実施形態では、このゲート酸化膜6に、シリコン酸化膜が用いられている。このゲート酸化膜6は、ゲート電極と半導体基板を電気的に絶縁する膜であれば特に限定されず、例えば、シリコン窒化膜のような単層膜や、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜から構成される積層膜が用いられる。
このゲート酸化膜6の膜厚は、求めるトランジスタの特性、動作電圧等によりその膜厚を適宜変更できるが、この実施形態は、高耐圧用のトランジスタであるため、45nmの厚さで形成されている。高耐圧の用途に用いるトランジスタの場合、例えば、30〜60nmの厚さで形成するとよい。
【0020】
次に、図1に示すように、ゲート電極9A、9B、9Cは、前記ゲート酸化膜6上に形成されているとともに、その表面にシリサイド層13が形成されている。また、ゲート電極9A、9B、9Cは、中央にあるゲート電極9Aと、その両脇に、ゲート電極9Aの側面のサイドウォール11を介してゲート電極9Bとゲート電極9Cとにより構成されている。
【0021】
このゲート電極9Aは、トランジスタのソースとドレイン間に流れる電流を制御するための電極であり、通常のトランジスタのゲート電極に相当する。つまり、ゲート電極9Aは、このゲート電極9Aの下方における半導体基板の一領域にチャネルを備えている。これに対して、ゲート電極9B、9Cは、トランジスタのソースとドレイン間に流れる電流を積極的に制御するための電極ではなく、言わば擬似的なゲート電極である。つまり、このゲート電極9B、9Cは、後述するN型ドリフト領域7に電界をかけることによりN型ドリフト領域7の電気的抵抗を変化させることができる電極であるが、このゲート電極9B、9Cの下方にはチャネルが存在しない。そして、これらゲート電極9A、9B、9Cは、その側面にサイドウォール11を備え、このサイドウォール11により、ゲート電極9A、9B、9Cは、互いに絶縁されている。上面方向から捉えると、対を構成する2つのN型ソース・ドレイン領域12の間の領域(チャネルがある領域)で、サイドウォール11により、ゲート電極9A、9B、9Cは、互いに絶縁されている。
このような構成を採用することにより、ゲート電極9Aがトランジスタのソースとドレイン間に流れる電流を制御するゲート電極としての機能を果たし、ゲート電極9B、9Cが、ゲート電極としての前記機能を果たさないことになる。つまり、ゲート電極9B、9Cは、トランジスタのソースとドレイン間の前記電流を積極的に制御しないことになる。また、後述するN型ドリフト領域7とチャネルの境界がゲート電極9A側面下方付近に設けられるとともに、ゲート電極9B、9Cと離れて配置されているので、ゲート電極9Aは、ゲート電極9Aとドレイン間の電界集中を緩和させるが、ゲート電極9B、9Cは、ゲート電極9Aとドレイン間の電界集中にほとんど影響を与えない。このため、ゲート電極9B、9Cは、ゲート電極9Aとソース・ドレイン拡散領域12との距離を大きくすることに寄与する。また、ゲート電極9Aとドレインと間は、N型ドリフト領域7を経由して電界をかけることができる。
【0022】
これらゲート電極9A、9B、9Cは、ポリシリコン膜で構成されており、同じ層で形成されている。この実施形態では、これらゲート電極9A、9B、9Cは、同じ層、つまり同じ層構成で形成されているので、同じ工程で形成することができ、このため、後述するN型ソース・ドレイン拡散領域12の形成の際に、オフセット領域を形成するための新たな層をパターンニングする必要がない。
なお、これらのゲート電極は、後述するシリサイド層13を設けて低抵抗化することを考慮すれば、シリコン材料が好ましいが、シリサイド層13を設けないとすれば、電極に通常用いられる導電性の材料であれば特に限定されない。例えば、アルミニウム、銅、金、白金、タングステン、タンタル、チタン等の金属材料を用いてもよい。また、単層構造、複層構造のいずれであってもよい。
【0023】
次に、サイドウォール11は、ゲート電極9A、9B、9Cの側面に設けられ、ゲート電極9Aとゲート電極9B、9Cとのスペースを埋めている。この実施形態では、シリコン酸化膜で形成されている。この膜厚は、ゲート電極9Aとゲート電極9B、9Cとのスペースを埋めるため、このスペースの1/2以上の膜厚が必要である。このため、この実施形態では、ゲート電極9Aとゲート電極9B、9Cとのスペース0.3ミクロンに対し、0.15ミクロン以上の膜厚で形成されている。このサイドウォール11がゲート電極9Aとゲート電極9B、9Cとのスペースを埋めることにより、後述するN型ソース・ドレイン拡散領域12の形成の際に、これらゲート電極9A、9B、9Cとサイドウォール11がオフセット領域を形成するための層として機能することができる。
なお、このサイドウォール11は、電極の側面や電極と電極とのスペースを埋める、絶縁性材料、つまり、サイドウォールと同様の機能を備える材料であれば、特に材料は限定されない。例えば、シリコン窒化膜等の絶縁膜を用いてもよい。
【0024】
そして、シリサイド層13が、ゲート電極9A、9B、9Cの表面に形成されている。このシリサイド層13は、ゲート電極を低抵抗化するために設けられており、この実施形態では、チタンシリコン(TiSi2)の材料で形成されている。この実施形態では、後述するN型ソース・ドレイン領域12にも、このシリサイド層13が形成されているが、このシリサイド層13は、ゲート電極9A、9B、9CとN型ソース・ドレイン領域12とをシリコン材料(シリコン、ポリシリコン)で形成し、かつ、高融点金属とシリサイド反応させることにより、ゲート電極とソース・ドレイン領域とに、同時かつ自己整合的にシリサイド層を設けることができる。このため、ゲート電極9A、9B、9CとN型ソース・ドレイン領域12の両方にシリサイド層を設けるとよい。また、ゲート電極9A、9B、9CとN型ソース・ドレイン領域12とに、同時にシリサイド層13を形成しても、ゲート電極9A、9B、9Cの側面にあるサイドウォール11により、ゲート電極9A、9B、9CとN型ソース・ドレイン領域12との間で電気的なショートが発生しない。このため、ゲート電極とソース・ドレイン領域を容易に低抵抗化できるので、トランジスタの特性の向上に便宜である。
なお、このシリサイド層13には、前記のチタンシリコン(TiSi2)のほか、タングステンやモリブデン等の高融点金属とシリコンとの化合物(WSi2,MoSi2)のほか、コバルト、ニッケル、白金などの貴金属とシリコンとの化合物(CoSi2,NiSi2,PtSi2)を用いてもよい。
【0025】
そして、図1に示すように、N型ソース・ドレイン領域12がゲート電極9A、9B、9Cを挟むように、ゲート電極9A、9B、9Cの側の半導体基板1上に形成され、N型ドリフト領域7が、ゲート電極9Aの下方の半導体基板1の一部の領域を挟むように形成され、かつゲート電極9B、9C及びN型ソース・ドレイン領域12と重なるように形成されている。
【0026】
N型ソース・ドレイン領域12は、ゲート電極9Bの左側(図1)のサイドウォール11の側面下方から素子分離領域2の側面までの間の半導体基板1上に形成されている。また、N型ソース・ドレイン領域12は、ゲート電極9Cの右側(図1)のサイドウォール11の側面下方から素子分離領域2の側面までの間の半導体基板1上に形成されている。さらに、このN型ソース・ドレイン領域12の表面にはシリサイド層が形成されている。この実施形態では、半導体基板1(P型)とは逆の導電型であるN型の不純物を半導体基板にドープすることにより形成されている。つまり、このN型ソース・ドレイン領域12は、高濃度(1×1015〜1×1016cm-3程度)のN型の不純物を、ゲート電極9A、9B、9Cとサイドウォール11をマスクとして、半導体基板にイオン注入することにより形成されている。これにより、ゲート電極9A、9B、9CとN型ソース・ドレイン領域12へのイオン注入が同時に行うことができるとともに、サイドウォール11の側面下方から素子分離領域2の側面までの間にN型ソース・ドレイン領域12が自己整合的に形成できる。また、この実施形態では、ゲート電極9AとN型ソース・ドレイン領域12との距離を大きくするために、ゲート電極9B、9Cとサイドウォール11を設けているので、ゲート電極9AやN型ソース・ドレイン領域12の上層に新たな層を設ける必要がない。このため、ゲート電極9A、9B、9CとN型ソース・ドレイン領域12へのイオン注入の障害となるものがなく、均一なイオン注入をすることができる。これにより均一な電気特性を持つゲート電極9A、9B、9CとN型ソース・ドレイン領域12が形成できる。
そして、シリサイド層13は、ゲート電極と同様にN型ソース・ドレイン領域12を低抵抗化するために設けられており、図1に示す実施形態では、チタンシリコン(TiSi2)の材料で形成されている。この実施形態では、上記で説明したように、ゲート電極とソース・ドレイン領域とに同時かつ自己整合的にシリサイド層を設けることができる。
【0027】
次に、N型ドリフト領域7は、ゲート電極9Aの下方の半導体基板1の一部の領域を挟むように、つまり、N型ドリフト領域7は、チャネルの両側に形成されている。また、N型ドリフト領域7は、ゲート電極9B、9Cの下方にゲート酸化膜6を介して重なり、さらにN型ソース・ドレイン領域12と接するとともにその領域と重なるように形成されている。
このN型ドリフト領域7は、半導体基板1(P型)とは逆の導電型であるN型の不純物を半導体基板にドープすることにより形成されており、N型の不純物の濃度は、N型ドリフト領域7が接するN型ソース・ドレイン領域12の不純物の濃度よりも低濃度である。例えば、この実施形態では、3×1012〜1.2×1013cm-3程度のN型の不純物をイオン注入することにより形成されている。このN型ドリフト領域7は、N型ソース・ドレイン領域12と接することにより電気的に接続され、その電界集中を緩和する。ゲート電極9B、9Cの下方にゲート酸化膜6を介して重なっているので、ゲート電極9AとN型ソース・ドレイン領域12との距離を大きくすることができる。このため、N型ソース・ドレイン領域12とゲート電極9Aとの間で生じる電界集中を緩和することができる。
【0028】
そして、図1に示すように、N型ソース・ドレイン領域12は、層間絶縁膜14に設けられたコンタクト電極15を介してメタル配線16に接続されている。このメタル配線16からソース・ドレインへの電流が供給され、ゲート電極9Aがこの電流を制御することによりトランジスタ(半導体装置)がその機能を果たすことになる。
【0029】
(製造方法)
次に、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図2、図3、図4、図5に、この実施形態に係る半導体装置の製造方法の各段階における半導体基板の断面図を示す。これらの図面は、上記の第1の実施形態で説明した実施高耐圧nMOSトランジスタと低耐圧nMOSトランジスタとが同じ半導体基板上で製造される場合の製造方法を表している。これらの図面において、左側は、高耐圧用MOSトランジスタ形成領域50を示し、右側は、低耐圧用MOSトランジスタ形成領域60を示す。
【0030】
まず、図2(a)に示すように、P型の半導体基板1上に、周知のSTI技術(Shallow Trench Isolation)又は、選択酸化技術(LOCOS:Local Oxidation Of Silicon)を用いて、素子分離領域2を深さ0.3〜1.0ミクロンで形成する。2つの素子分離領域2の間が活性領域となる。図2(a)に示すように、図の左側と図の中央の、2つの素子分離領域2の間が高耐圧用nMOSトランジスタが形成される活性領域50となり、図の中央と図の右側の、2つの素子分離領域2の間が低耐圧用nMOSトランジスタが形成される活性領域60となる。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、2つの素子分離領域2の間にある活性領域にパッド酸化膜3を膜厚5〜20nmで形成し、次いで、周知のフォトリソグラフィー技術、イオン注入技術、及びアニール技術を用いて、パッド酸化膜3の下側に、高耐圧用P型ウェル領域4及び低耐圧用P型ウェル領域5をそれぞれ形成する。
【0032】
次いで、図2(c)に示すように、高耐圧用ゲート酸化膜(ゲート絶縁膜)6及びN型ドリフト領域7を形成する。
まず、800〜1000℃の酸素雰囲気中にて、高耐圧用ゲート酸化膜(ゲート絶縁膜)6を膜厚30〜60nmで形成する。この酸素雰囲気は、例えば、酸素,窒素含有酸素,ハロゲン系添加酸素(HCl または DCE:ジクロルエチレン)を用いる。また、高耐圧用ゲート酸化膜6の膜厚は、高耐圧トランジスタの動作範囲に応じて定める。
続いて、周知のフォトリソグラフィー技術にて、高耐圧用P型ウェル領域4に、電界緩和拡散層となるN型ドリフト領域7をパターニングして形成する。例えば、注入エネルギーが80〜150keV、ドーズ量が3×1012〜1.2×1013(ions/cm2)にて、N型不純物である燐(P)をイオン注入し、N型ドリフト領域7を形成する。このN型ドリフト領域7は、高耐圧用nMOSトランジスタにて、電界緩和領域として機能するものであり、後述するゲート電極の下部に相当する、高耐圧用P型ウェル領域4の一部の領域を挟むように配置される。この領域は、ゲート電極の下部のチャネル領域に対応する。
【0033】
次いで、図3(d)に示すように、低耐圧トランジスタ用のゲート酸化膜8を形成する。まず、低耐圧用MOSトランジスタ形成領域60の、高耐圧用ゲート酸化膜6を除去する。続いて、低耐圧用MOSトランジスタ形成領域60に、低耐圧トランジスタ用のゲート酸化膜8を膜厚3〜8nmで形成する。この低耐圧トランジスタは、例えば、1.8〜3.3Vで動作するトランジスタであり、このゲート酸化膜8の膜厚は、この動作範囲を考慮して定める。
【0034】
次に、図3(e)に示すように、ゲート電極9A、9B、9C、9Hを形成する。
まず、高耐圧用MOSトランジスタ形成領域50及び低耐圧用MOSトランジスタ形成領域60の両領域、つまり、全面にゲート電極用のポリシリコン膜を150〜350nmの膜厚で堆積する。
続いて、周知のフォトリソグラフィー技術にて、所定のレジストパターンを用いて、高耐圧用nMOSトランジスタのゲート電極9A、9B、9C及び低耐圧用nMOSトランジスタのゲート電極9Hを同時に形成する。このレジストパターンによるゲート電極の配置パターンは、図2(c)で形成したN型ドリフト領域7がゲート電極9Aの下部の両側に配置されるようなパターンとする。また、フォトリソグラフィー技術の加工精度を考慮して、ゲート電極9Aと、N型ドリフト領域7を下部に備える9B、9Cとの間隙が、0.3um以下となるようなパターンとする。
【0035】
次いで、図3(f)に示すように、LDD領域10及びサイドウォール11を形成する。
まず、周知のフォトリソグラフィー技術にて、高耐圧用MOSトランジスタ形成領域50をレジストパターンで覆い、低耐圧用MOSトランジスタ形成領域60のゲート電極9Hと素子分離領域2をマスクとして、自己整合的に、低耐圧用トランジスタのLDD領域10(LDD:Lightly Doped Drain)を形成する。例えば、LDD領域10の形成にN型不純物である燐(P)を用いる。
続いて、高耐圧用MOSトランジスタ形成領域50を覆っていたレジストパターンを除去し、さらに、高耐圧用MOSトランジスタ形成領域50及び低耐圧用MOSトランジスタ形成領域60に絶縁膜を堆積する。そして、この堆積された絶縁膜並びにゲート酸化膜6及びゲート酸化膜8をエッチバックすることにより、ゲート電極9Hにサイドウォール11を自己整合的に形成する。この工程で、高耐圧用NMOSトランジスタ形成領域50のゲート電極9A、9B、9Cにも同様のサイドウォール11が形成される。つまり、ゲート電極9B、9Cの側面にサイドウォール11が形成され、ゲート電極9Aと9B、9Cの間隙は、サイドウォール11を形成する絶縁膜で埋められる。なお、このサイドウォール11を形成する絶縁膜の膜厚は、ゲート電極9Aと9B、9Cとの間隙の1/2以上の膜厚が必要である。
【0036】
次いで、図4(g)に示すように、イオン注入技術にて、ゲート電極9A、9B、9C、9H及びサイドウォール11、素子分離領域2をマスクとして、自己整合的にN型ソース・ドレイン拡散領域12を形成する。例えば、注入エネルギーが40keV、ドーズ量が1×1015〜1×1016(ions/cm2)にて、N型不純物であるヒ素(As)をイオン注入し、電極16に電流を取り出すための高濃度N型ソース・ドレイン領域を形成する。このイオン注入の工程で、N型ソース・ドレイン拡散領域12のほか、ゲート電極9A、9B、9C、9HにもN型不純物が注入され、その抵抗値が制御される。なお、この実施形態では、Nチャンネルトランジスタを例に説明しているが、例えば、P+領域(基板コンタクト)又はPMOSと、Nチャンネルトランジスタとが同じ半導体基板上で製造される場合には、周知のフォトリソグラフィーを用いることになる。
次に、熱処理にて、イオン注入により注入した不純物の活性化を行う。例えば、熱拡散炉を用いて、800〜900℃の温度で、10〜20分程度のアニーリングを行ったり、900〜1050℃の温度で、10〜60秒程度のRTA処理を行ったりして、不純物の活性化を行う。
【0037】
次いで、図4(h)に示すように、ゲート電極9及びN型ソース・ドレイン拡散領域12に低抵抗のシリサイド層13を自己整合的に形成する。まず、所定のHF系の薬液により、表面に露出している導電膜(ゲート電極9及びN型ソース・ドレイン拡散領域12)上の絶縁膜を除去する。そして、高耐圧用NMOSトランジスタ形成領域50及び低耐圧用NMOSトランジスタ形成領域60の、両領域、つまり、全面に、高融点金属、例えば、Tiを、スパッタ法又はCVD法にて堆積し、400〜700℃の温度で、30〜90秒程度、RTA処理(Rapid Thermal Annealing)を行う。これにより、導電膜(N型ソース・ドレイン拡散領域12のSi、ゲート電極9のPolySi)とこの高融点金属とをシリサイド反応させる。この高融点金属は、Tiのほか、Co,Ni等を用いる。
次に、素子分離領域2の表面及び、サイドウォール11表面にある未反応の高融点金属(例えば、Ti)を、H2SO4系の薬液等で除去し、さらに、層転移を行ない、シリサイド層13を形成する。例えば、600〜900℃の温度で、20〜40秒程度のRTA処理をして、層転移を行ない、低抵抗のシリサイド層13を形成する。
【0038】
そして、図5(i)に示すように、層間絶縁膜14を介して電極16を形成する。まず、層間絶縁膜14をCVD法等により形成し、次いで、この層間絶縁膜14の一部を開口して、コンタクトホール15を形成する。そして、周知の技術にて、コンタクトホール15を金属で埋めるとともに、層間絶縁膜14上に金属膜を堆積し、この金属膜をパターニングして、電極16を形成する。これにより、N型ソース・ドレイン拡散領域12にある低抵抗のシリサイド層13と電極16が接続される。以上により、この実施形態に係る半導体装置が完成する。
なお、この実施形態では、Nチャンネルトランジスタを例に、説明を行っているが、Pチャンネルトランジスタについても、全領域の不純物タイプを換えることにより、この発明に採用することができる。
【0039】
(第1の実施形態)
次に、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図6に、従来の構造の半導体装置とこの発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す。また、図7に、第1の実施形態に係る半導体装置の変形例を示す。さらに、図15、図16にこれらの半導体装置の電気的特性を示す。図6、図7は、これらの半導体装置の概念的な平面図である。図6の(R)は従来の半導体装置の構造を示し、図6の(A)は、第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す。図7の(A1)は、第1の実施形態に係る変形例の構造を示し、図7の(A2)は、第1の実施形態に係る別の変形例の構造を示す。図14は従来の構造の半導体装置と第1の実施形態に係る半導体装置のソース・ドレイン耐圧特性を示す図である。図15は、第1の実施形態に係る半導体装置とその変形例のソース・ドレイン耐圧特性を示す図である。なお、図14、図15は、横軸がソース・ドレイン間の電圧、縦軸がドレイン電流(対数表示)を表す。
【0040】
まず、図6を用いて、従来の構造の半導体装置とこの発明の第1の実施形態に係る半導体装置について説明する。図6の(R)に示されるように、従来の構造の半導体装置は、ゲート電極9と、ゲート電極9の両側に形成されたソース側シリサイド層13S及びドレイン側シリサイド層13Dと、ソース側シリサイド層13S又はドレイン側シリサイド層13Dとコンタクト電極15を介して接続されたメタル配線16により構成されている。ソース側シリサイド層13Sとドレイン側シリサイド層13Dの下側には、ソース・ドレイン拡散領域12が形成され(図示せず)、さらに、このソース・ドレイン領域12の下方には、このソース・ドレイン拡散領域12と接し、ゲート電極9の側面の下側付近までドリフト領域7が設けられている(図示せず)。また、ゲート電極9は、電位を印加して制御する信号配線と電気的に接続されている(図示せず)。
一方、第1の実施形態に係る半導体装置は、図6の(A)に示されるように、ゲート電極9の形状が従来の構造と異なっている。つまり、第1の実施形態に係る半導体装置のゲート電極9は、対をなしている二つのソース・ドレイン拡散領域12間の中央にある第1の電極と、この中央にある電極とスペースを隔てて両側に設けられた第2の電極と、を備え、この第1の電極と第2の電極とが、ソース・ドレイン拡散領域に挟まれた領域の外側で互いに接続されている。言い換えると、ゲート電極9は、ソース・ドレイン拡散領域に挟まれた領域の外側で、第1の電極と、第1の電極と第2の電極とに分岐した構造を備えており、フォーク状の形状となっている。そして、このフォーク状の形状の電極と電極との前記スペースは、サイドウォールで埋められている(図示せず)。なお、図6の(A)のX−Xの断面が図1の断面図に相当する。
【0041】
図14に示すように、従来の構造の半導体装置は、ソース・ドレイン間の電圧をあげていくと、図14の横軸中央付近からドレイン電流が徐々に増加するが、第1の実施形態に係る半導体装置は、ソース・ドレイン間の電圧をあげても、図14の横軸の右側付近まであまりドレイン電流が増加しないことがわかる。これは、第1の実施形態に係る半導体装置が、従来の構造の半導体装置と比較して、第1のゲート電極とソース・ドレイン拡散領域との距離が大きく、かつ、第1のゲート電極からソース・ドレイン拡散領域にドリフト領域7を経由して電界をかけることになるため、ゲートとドレインの間で生じる電界集中によるGIDL(Gate Induced Drain Leakage)が改善されるからと考えられる。
また、従来の構造の半導体装置と第1の実施形態に係る半導体装置は、ソース・ドレイン間の電圧をあげていくと、ソース・ドレイン間の電圧にあまり関係がなく多量にドレイン電流が流れる電圧領域があるが、図14に示すように、第1の実施形態に係る半導体装置は、従来の構造の半導体装置と比べて、この領域となるソース・ドレイン間の電圧値が高いことがわかる。つまり、耐圧特性に優れる。
さらに、第1の実施形態に係る半導体装置のような、中央にある第1の電極とその両側に設けられた第2の電極とがソース・ドレイン拡散領域に挟まれた領域の外側で互いに接続されている構造の場合、第1の電極のほか、第2の電極にも電圧が印加されるので、第2の電極の下方にあるドリフト領域7に第2の電極による電界が生じ、ドリフト領域7の電気的抵抗が小さくなる。
【0042】
(第1の実施形態に係る変形例)
次に、図7を用いて、第1の実施形態に係る変形例について説明する。図7の(A1)に示されるように、第1の実施形態に係る変形例は、図6の(A)に示される第1の実施形態に係る半導体装置と、各構成要素が同じ位置関係にあるが、ソース・ドレイン拡散領域12間の中央付近にある第1の電極とスペースを隔てて両側に設けられた第2の電極は、その線幅が実施形態Aの線幅よりも大きい。さらに、図7の(A2)に示される別の変形例の半導体装置は、第1の実施形態に係る半導体装置や第1の実施形態に係る変形例と同じ構造であるものの、第2の電極は、第1の実施形態に係る半導体装置や第1の実施形態に係る変形例の線幅よりも、その線幅が大きい。また、図7の(A2)に示される別の変形例の半導体装置は、中央にある第1の電極よりもその両側に設けられた第2の電極のほうが、線幅が大きい。
【0043】
この第1の実施形態に係る変形例(図7の(A1))と第1の実施形態に係る半導体装置(図6の(A))を比較すると、図15に示されるように、第1の実施形態に係る変形例のほうが耐圧特性に優れる。つまり、図15のソース・ドレイン耐圧特性では、第1の実施形態に係る変形例のほうが、ソース・ドレイン間の電圧に関係がなく、多量にドレイン電流が流れる電圧領域となる電圧値が高いことがわかる。
これは、第1の実施形態に係る半導体装置よりも第1の実施形態に係る変形例のほうが、第1のゲート電極とソース・ドレイン拡散領域との距離が大きいため、ゲートとドレインの間で生じる電界集中によるGIDLが改善され、耐圧特性に優れることによると考えられる。
【0044】
(第2及び第3の実施形態)
次に、この発明の第2及び第3の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図8に、この発明の第2〜第3の実施形態に係る半導体装置を示す。また、図16に第2の実施形態に係る半導体装置の電気的特性を示す。図8は、この発明の第2及び第3の実施形態に係る半導体装置の概念的な平面図である。図8の(B)は、第2の実施形態に係る半導体装置を示し、図8の(C)は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す。さらに、図16は、この発明の第2の実施形態に係る半導体装置について、ソース・ドレイン耐圧特性を示しており、横軸がソース・ドレイン間の電圧、縦軸がドレイン電流を表している(対数表示)。
【0045】
図8に示されるように、図8の(B)の第2の実施形態に係る半導体装置は、各構成要素が第1の実施形態とほぼ同じ位置関係にあるが、第1の電極の両側に設けられた第2の電極が、複数の電極で構成されている。つまり、左右にそれぞれ2つの電極を備えることにより第2の電極が構成されている。そして、これらの複数の電極は、第1の電極よりもその線幅が小さい。また、これらの複数の電極における電極間も、第1の電極との電極間と同様に、サイドウォールで埋められている(図示せず)。この実施形態では、これらの電極間の間隔は、0.3ミクロンとなっている。
この第2の実施形態に係る半導体装置(図8の(B))と第1の実施形態に係る半導体装置(図6の(A))とを比較すると、図16に示されるように、第2の実施形態に係る半導体装置のほうが耐圧特性に優れる。つまり、図16のソース・ドレイン耐圧特性では、第2の実施形態に係る半導体装置のほうが、ソース・ドレイン間の電圧に関係がなく多量にドレイン電流が流れる電圧領域となる電圧値が高いことがわかる。
これは、上記の第1の実施形態に係る半導体装置と第1の実施形態に係る変形例の場合と同様に、第1の実施形態に係る半導体装置よりも第2の実施形態に係る半導体装置のほうが、第1のゲート電極とソース・ドレイン拡散領域との距離が大きいので、ゲートとドレインの間で生じる電界集中によるGIDLが改善され耐圧特性に優れることによると考えられる。
【0046】
また、図8に示されるように、図8の(C)の第3の実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態に係る半導体装置とほぼ同じ構成要素を備えるが、第2の電極が第1の電極の両側ではなく、片側に設けられている構成となっている。つまり、2つの、対をなしているソース・ドレイン拡散領域12間にある第1の電極と、スペースを隔てて第1の電極の両側に設けられた第2の電極とから構成されるゲート電極は、第2の電極がドレイン領域側に配置された構成となっている。この構成は、例えば、第1の実施形態に係る半導体装置、第2の実施形態に係る半導体装置において、ドレイン領域側に第2の電極を設け、ソース側に第2の電極を設けない構造であってもよい。この場合、GIDLが生じる部分に着目しているので、第1の実施形態と同様の効果を発揮できるとともに、トランジスタの大きさを小さくすることができる。
この第3の実施形態について、以下、断面図を用いて第1の実施形態に係る半導体装置と比較して説明する。なお、あわせて、第2の実施形態に係る半導体装置についても説明する。
【0047】
図9に、従来の構造の半導体装置における変形例(図9の(1))及び第1の実施形態に係る半導体装置(図9の(2))、第1の実施形態に係る変形例(図9の(3))、第3の実施形態に係る半導体装置(図9の(4))の断面図を示す。また、図10に、従来の構造の半導体装置における変形例(図10の(1))及び第1の実施形態(図10の(2))、第2の実施形態に係る半導体装置の断面図(図10の(3))を示す。図9、図10は、これらの半導体装置の性能を説明するための概念的な断面図であり、シリサイド層13より上層の膜は省略している(層間絶縁膜及びコンタクト電極、メタル配線は図示せず)。また、図に示すGは、ゲート電極9の電気的な接続関係(結線関係)を示す。Gに所定の電圧が印加された場合、接続関係があるときは、その電圧が印加されることを意味する。
【0048】
図9の(1)に示すように、ここに記載している従来の構造の半導体装置における変形例は、半導体基板1上にゲート絶縁膜6を介して形成されたゲート電極9Aと、ゲート電極9Aの側面に形成された絶縁性のスペーサ11と、前記ゲート電極9Aを挟むように前記半導体基板1上に形成されたソース領域及びドレイン領域12と、前記ゲート電極9A下方における前記半導体基板1の一部の領域を挟むように形成され、前記スペーサ11及び前記ソース領域及びドレイン領域12と重なるように形成された電界緩和領域7と、を備えている。また、前記電界緩和領域7及び前記ソース領域及びドレイン領域12は、素子分離領域2まで延在し、シリサイド層13が前記ソース領域及びドレイン領域12及び前記ゲート電極9Aの上に形成されている。さらに、図示されていないが、この従来の構造の半導体装置における変形例は、前記ソース領域及びドレイン領域12と前記ゲート電極9Aとの間であって、前記ゲート絶縁膜上6にオフセット形成用絶縁膜が設けられている。このオフセット形成用絶縁膜をマスクとして、前記ソース領域及びドレイン領域12が形成されているため、いわゆるドリフト長は、図9の(1)の矢印D1で示す幅となっている。
一方、図9の(2)に示す第1の実施形態に係る半導体装置は、図1と同様に、ゲート電極が第一のゲート電極9Aと、第1のゲート電極9Aの側面に絶縁性のスペーサ11を介して配置された第2のゲート電極9B,9Cとにより構成されている。そして、ソース領域及びドレイン領域12は、第1及び第2のゲート電極9A,9B,9Cを挟むように前記半導体基板1上に形成され、電界緩和領域7は、前記第1のゲート電極9A下方における前記半導体基板1の一部の領域を挟むように形成され、第2のゲート電極9B,9C及び前記ソース領域及びドレイン領域12と重なるように形成されている。この第1の実施形態に係る半導体装置は、従来の構造の半導体装置における変形例のオフセット形成用絶縁膜よりも幅が小さい、第2のゲート電極9B,9C及びその側面に形成された絶縁性の前記スペーサ11をマスクとして、前記ソース領域及びドレイン領域12が形成されているので、図9の(2)に示すドリフト長(矢印D2)は、従来の構造の半導体装置における変形例より幅が小さい。
また、図9の(3)に示す第1の実施形態に係る変形例は、第1の実施形態に係る半導体装置と同じ構造であるものの、第2のゲート電極9B、9Cの幅が大きく設定されている。図9の(3)に示す第1の実施形態に係る変形例では、従来の構造の半導体装置における変形例のオフセット形成用絶縁膜と、第2のゲート電極9B,9C及びその側面に形成された絶縁性の前記スペーサ11との幅が同じ幅になっている。このため、図9の(3)に示す第1の実施形態に係る変形例のドリフト長(矢印D3)の幅は、従来の構造の半導体装置における変形例のドリフト長(矢印D1)と同じ幅となっている。
さらに、図9の(4)に示す第3の実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態に係る変形例と同様の構成要素を備えているものの、第2のゲート電極9Cは、片方のソース領域及びドレイン領域12側にのみ形成されている(この図9では、ドレイン領域に形成されている)。また、この第2のゲート電極9Cは、図9の(3)に示す第1の実施形態に係る変形例の第2のゲート電極と同じ幅となっている。このため、図9の(4)に示す第3の実施形態のドリフト長(矢印D4)の幅は、図9の(3)に示す第1の実施形態に係る変形例の第2のゲート電極と同じ幅となっている。
これらの半導体装置は、いずれのゲート電極も外部からの信号入力(電圧)を受けるようになっており、図9の(2)(3)(4)に示される半導体装置は、それぞれ第1のゲート電極と第2のゲート電極とが電気的に接続されている。
【0049】
これらの半導体装置を比較すると、耐圧性能は、ドリフト長の幅で定まるので、従来の構造の半導体装置における変形例(図9の(1))、第1の実施形態に係る変形例(図9の(3))、第3の実施形態に係る半導体装置(図9の(4))は同じ耐圧性能を備える。一方、第1の実施形態に係る半導体装置(図9の(2))は、ドリフト長の幅が短いので、耐圧性能がやや劣るものの、トランジスタ能力(IV特性)が第1の実施形態に係る変形例(図9の(3))より優れる。そして、第3の実施形態に係る半導体装置(図9の(4))は、第2のゲート電極9Cは、片方のソース領域及びドレイン領域12側にのみ形成されているので、片方のドリフト領域の抵抗がかからず、トランジスタ能力(IV特性)が同じ幅のドリフト長を備える第1の実施形態に係る変形例(図9の(3))より優れる。
【0050】
続いて、第2の実施形態に係る半導体装置の性能について、上記の第1の実施形態に係る変形例と比較して説明する。
図10の(3)に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態に係る変形例(図10(2),図9(3))と同様の構成を備えるものの、第2のゲート電極は、第1のゲート電極9Aの側面に絶縁性のスペーサ11を介して配置され、かつ、第1のゲート電極9Aの片側にそれぞれ2つずつ配置された電極により構成されている。そして、これらの第2のゲート電極9B1,9B2,9C1,9C2は、互いに電気的に接続され、また、第1のゲート電極9Aとも電気的に接続されている。
この図10の(3)に示す第2の実施形態に係る半導体装置は、第1及び第2のゲート電極9A,9B1,9B2,9C1,9C2並びにスペーサ11の幅が、図9(3)及び図10(2)に示す第1の実施形態に係る変形例の第1及び第2のゲート電極9A,9B,9C並びにスペーサ11の幅と同じ幅となっている。このため、図10の(3)に示す第2の実施形態に係る半導体装置のドリフト長(矢印D3)の幅は、第1の実施形態に係る変形例のドリフト長(図9の矢印D3又は図10の矢印D2)と同じ幅となっている。
【0051】
これらの半導体装置を比較すると、耐圧性能は、ドリフト長の幅で定まるので、第2の実施形態に係る半導体装置(図10の(3))は、第1の実施形態に係る変形例(図9の(3)又は図10の(2))と同じ耐圧性能を備える。一方、第2の実施形態に係る半導体装置(図9の(2))は、第2のゲート電極とドリフト領域7が重なる部分の面積が第1の実施形態に係る変形例のその面積よりも小さいので、第1の実施形態に係る変形例と比較して、GIDLの発生が抑制される。また、第1の実施形態に係る変形例よりもゲート電極とドレインとの間の容量が小さい。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、この発明の第4の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図11に、この発明の第4の実施形態に係る半導体装置を示す。また、図17に第1の実施形態に係る半導体装置と比較した第4の実施形態に係る半導体装置の電気的特性を示す。図11は、第4の実施形態に係る半導体装置の概念的な平面図であり、図17は、この発明の第1及び第4の実施形態に係る半導体装置について、(1)がソース・ドレイン耐圧特性を示し、(2)がトランジスタの駆動能力を示す。なお、図17は、横軸がソース・ドレイン間の電圧、縦軸がドレイン電流を表し、図17の(1)は、縦軸が対数表示となっている。
【0053】
図11に示されるように、第4の実施形態に係る半導体装置は、各構成要素が第1の実施形態に係る半導体装置と同じ位置関係にあるが、中央にある第1の電極と両側に設けられた第2の電極とが互いに接続されていない構成となっている(図11の(D))。この第2の電極は、他の電極・配線と接続されておらず、外部からの電気的入力を受けない構造となっている。つまり、いわゆるフロートの状態となっている。
この第4の実施形態に係る半導体装置(図11の(D))と第1の実施形態に係る半導体装置(図6の(A))とを比較すると、図17に示されるように、第4の実施形態に係る半導体装置のほうが、やや耐圧特性に優れる。また、第1の実施形態に係る半導体装置のほうが、駆動能力が高いことがわかる。つまり、図17の(1)のソース・ドレイン耐圧特性では、第4の実施形態に係る半導体装置のほうが、ソース・ドレイン間の電圧に関係がなく多量にドレイン電流が流れる電圧領域(及びこの領域の最小電圧値)がやや高いことがわかる。また、図17の(2)のトランジスタの駆動能力では、第1の実施形態に係る半導体装置のほうが、同じソース・ドレイン間の電圧に対し、ドレイン電流量が多いことがわかる。
これは、耐圧特性について、第1の実施形態に係る半導体装置と第1の実施形態に係る変形例(図7の(A1))との関係と同様の要因が当てはまるものと考えられる。一方、駆動能力について、第1の実施形態に係る半導体装置は、第2の電極に電圧を印加するため、ドリフト領域7の電気抵抗が小さくする効果があるが、これに対して、第3の実施形態に係る半導体装置は、第2の電極がフロート状態にあるため、このような効果が発生しない。このため、第4の実施形態に係る半導体装置のほうが相対的に駆動能力が低くなるものと考えられる。
このように、第4の実施形態に係る半導体装置の場合、第2の電極に電圧が印加されないので、第1の実施形態に係る半導体装置のようなドリフト領域7の電気抵抗が小さくなる効果は得られない。しかし、第4の実施形態に係る半導体装置は、第1のゲート電極とソース・ドレイン拡散領域との距離が大きくすることができるとともに、第1のゲート電極からソース・ドレイン拡散領域にドリフト領域7を経由して電界を緩和する効果が、第1の実施形態に係る半導体装置と比較して相対的に強くなる。このため、ゲートとドレインの間で生じる電界集中によるGIDLがより改善される。
【0054】
(第5及び第6の実施形態)
次に、この発明の第5及び第6の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図12に第5及び第6の実施形態に係る半導体装置を示す。図12の(E)は、第5の実施形態に係る半導体装置を示し、図12の(F)は、第6の実施形態に係る半導体装置を示す。この図12は、これら実施形態に係る半導体装置の概念的な平面図である。
図12に示されるように、第5の実施形態に係る半導体装置は、図8に示される第2の実施形態に係る半導体装置(図8の(B))と同様の構成と備えるものの、中央にある第1の電極と両側に設けられた第2の電極とが互いに電気的に接続されていない(図12の(E))。また、第2の電極が複数の電極、つまり、左右にそれぞれ2つの電極で構成されているものの、これらの第2の電極は互いに電気的に接続されていない。つまり、複数の電極で構成される第2の電極は、フロートの状態となっている。
また、第6の実施形態に係る半導体装置は、図12に示されるように、図8に示される第3の実施形態に係る半導体装置(図8の(C))と同様の構成と備えるものの、第5の実施形態に係る半導体装置と同様に、第2の電極がフロートの状態となっている(図12の(F))。
【0055】
続いて、第4及び第6の実施形態に係る半導体装置の性能について、上記の第1の実施形態に係る変形例と比較して、説明する。
図13に、従来の構造の半導体装置における変形例(図13の(1))及び第1の実施形態に係る変形例(図13の(2))、第4の実施形態に係る半導体装置(図13の(3))、第6の実施形態に係る半導体装置(図13の(4))の断面図を示す。図13は、これらの半導体装置の性能を説明するための概念的な断面図であり、図9及び図10と同様に、シリサイド層13より上層の膜は省略している(層間絶縁膜及びコンタクト電極、メタル配線は図示せず)。また、図に示すGは、ゲート電極9の電気的な接続関係(結線関係)を示す。Gに所定の電圧が印加された場合、接続関係があるときは、その電圧が印加されることを意味する。
図13の(3)に示されるように、第4の実施形態に係る半導体装置は、図9の(3)、図13の(2)に示される第1の実施形態に係る変形例と同様の構成要素で構成されるものの、第4の実施形態に係る半導体装置は、第1のゲート電極9Aと第2のゲート電極9B,9Cとが電気的に接続されていない。また、第2のゲート電極9Bと第2のゲート電極9Cとが電気的に接続されていない。つまり、第2のゲート電極9Bと第2のゲート電極9Cは、フロート状態になっている。
また、図13の(4)に示されるように、第6の実施形態に係る半導体装置は、図9の(4)に示される第3の実施形態に係る半導体装置と同様の構成要素で構成されるものの、第6の実施形態に係る半導体装置は、第1のゲート電極9Aと第2のゲート電極9Cとが電気的に接続されていない。つまり、第2のゲート電極9Cは、フロート状態になっている。
この図13の(3)に示す第4の実施形態に係る半導体装置は、第1及び第2のゲート電極9A,9B,9C並びにスペーサ11の幅が、図9の(3)、図13の(2)に示す第1の実施形態に係る変形例の、第1及び第2のゲート電極9A,9B,9C並びにスペーサ11の幅と同じ幅となっている。このため、図13の(3)に示す第4の実施形態に係る半導体装置のドリフト長(矢印D3)の幅は、第1の実施形態に係る変形例のドリフト長(図9の矢印D3又は図13の矢印D2)と同じ幅となっている。
また、図13の(4)に示す第6の実施形態に係る半導体装置も、これと同様に、そのドリフト長(矢印D4)の幅は、第1の実施形態に係る変形例のドリフト長(図9の矢印D3又は図13の矢印D2)と同じ幅となっている。
【0056】
これらの半導体装置を比較すると、耐圧性能は、ドリフト長の幅で定まるので、第4の実施形態に係る半導体装置(図13の(3))及び第6の実施形態に係る半導体装置(図13の(4))は、第1の実施形態に係る変形例(図9の(3)又は図13の(2))と同じ耐圧性能を備える。一方、第4の実施形態に係る半導体装置(図9の(2))及び第6の実施形態に係る半導体装置(図9の(2))は、第2のゲート電極が、フロート状態になっているので、第1の実施形態に係る変形例と比較して、トランジスタ能力(IV特性)がやや劣るものの、GIDLの発生が抑制され、ゲート電極とドレインとの間の容量が小さい。
【0057】
(第7の実施形態)
次に、この発明の第7の実施形態に係る半導体基板について、図面を用いて説明する。図18に、この発明の第7の実施形態に係る半導体基板を示す。図18は、第7の実施形態に係る半導体基板の概念的な断面図である。
図18に示されるように、この実施形態に係る半導体基板は、半導体基板1に形成された複数のウエル領域4A,4B,5A、5Bに設けられた複数の半導体装置により構成されている。つまり、この半導体基板は、ウエル領域5A、5Bに設けられた低耐圧用トランジスタとウエル領域4A、4Bに設けられた高耐圧用トランジスタとにより構成されている。ウエル領域5A、5Bには、半導体基板1上にゲート絶縁膜8を介して形成され、側面に絶縁性のスペーサを備えたゲート電極9G,9Hと、前記ゲート電極9G,9Hを挟むように半導体基板1上に形成されたソース・ドレイン拡散領域12、12Aと、ゲート電極9G,9H下部における前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、ソース・ドレイン拡散領域12、12Aと重なるように形成されたLDD領域10、10Aとを備える低耐圧用トランジスタが形成されている。さらに、ウエル領域4A、4Bには、第1の実施形態に係る高耐圧用トランジスタが形成されている。
【0058】
また、ウエル領域5A、5Bは、それぞれ低耐圧用Pウェル領域5A、低耐圧用Nウェル領域5Bで構成されており、ウエル領域4A、4Bは、それぞれ高耐圧用Pウェル領域4A、高耐圧用Nウェル領域4Bで構成されている。これらのウエル領域は、N型チャネルMOSトランジスタとPチャネルMOSトランジスタとを同一の半導体基板に形成するために設けられる領域であり、各ウエル領域は、素子分離領域2により区分けされている。また、この実施形態に係る半導体基板の場合、高耐圧用トランジスタと耐圧用トランジスタとを同一の半導体基板に形成するために、さらにウエル領域が設けられ、これらのウエル領域も、素子分離領域2により区分けされている。これらウエル領域は、フォトレジストをマスクとして用いる周知の方法により形成することができる。
このような構成を採用することにより、電界集中を緩和できる高耐圧用半導体と低耐圧用半導体と同一の半導体基板に形成できるので、例えば、表示装置に好適な半導体基板を提供できる効果が得られる。なお、この半導体基板は、いわゆる半導体チップであってもよい。
【0059】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、この発明に採用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 半導体基板
2 素子分離領域
3 パッド酸化膜
4 Pウエル領域(ウエル領域)
4A 高耐圧用Pウェル領域
4B 高耐圧用Nウェル領域
5 Nウエル領域(ウエル領域)
5A 低耐圧用Pウェル領域
5B 低耐圧用Nウェル領域
6 高耐圧ゲート酸化膜(ゲート絶縁膜)
7 N型ドリフト領域(電界緩和領域)
7A P型ドリフト領域(電界緩和領域)
8 低耐圧ゲート酸化膜(ゲート絶縁膜)
9 ゲート電極
9A 9B 9C 9D 9E 9F 9G 9H ゲート電極
10 N型LDD(LDD領域)
10A P型LDD(LDD領域)
11 サイドウォール
12 N型ソース・ドレイン拡散領域(ソース領域及びドレイン領域)
12A P型ソース・ドレイン領域(ソース領域及びドレイン領域)
13 シリサイド層
13S ソース側シリサイド層
13D ドレイン側シリサイド層
14 層間絶縁膜
15 コンタクト電極
16 メタル配線
50 51 52 高耐圧MOSトランジスタ形成領域
60 61 62 低耐圧MOSトランジスタ形成領域
10 半導体基板
20 素子分離領域
60 ゲート酸化膜
70 低濃度拡散層
90 ゲート電極
120 シリサイド層
130 高濃度拡散層
300 オフセット形成用絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成された第1のゲート電極と、
前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜を介して形成され、かつ、第1のゲート電極の側面に絶縁性のスペーサを介して配置された第2のゲート電極と、
第1及び第2のゲート電極を挟むように前記半導体基板上に形成されたソース領域及びドレイン領域と、
前記第1のゲート電極下方における前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、第2のゲート電極及び前記ソース領域及びドレイン領域と重なるように形成された電界緩和領域と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
第2のゲート電極が複数の電極で構成されるとともに、前記複数の電極が互いに絶縁性のスペーサを介して配置された請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の電極の線幅が第1のゲート電極の線幅よりも小さい請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の電極における絶縁性のスペーサの幅は、0.3ミクロン以下である請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
第2のゲート電極の線幅が第1のゲート電極の線幅よりも大きい請求項1〜4の何れか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
第1及び第2のゲート電極のうち、第2のゲート電極が、ドレイン領域側にのみ配置された請求項1〜5の何れか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板及び第1及び第2のゲート電極がシリコン材料で形成されるとともに、
第1及び第2のゲート電極の表面にシリサイド層が形成され、かつ前記ソース領域及びドレイン領域の表面に前記シリサイド層が形成された請求項1〜6の何れか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
第1のゲート電極がゲート電極に電位を印加して制御する信号配線と電気的に接続され、
第2のゲート電極が第1のゲート電極と電気的に絶縁され、かつ、前記信号配線と電気的に絶縁された請求項1〜7の何れか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
第1のゲート電極がゲート電極に電位を印加して制御する信号配線と電気的に接続され、
第2のゲート電極が第1のゲート電極及び前記信号配線と電気的に接続された請求項1〜7の何れか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜を介して形成され、側面に絶縁性のスペーサを備えたゲート電極と、前記ゲート電極を挟むように前記半導体基板上に形成された第2のソース領域及びドレイン領域と、前記ゲート電極下部の前記半導体基板の一部の領域を挟むように形成され、第2のソース領域及びドレイン領域と重なるように形成された第2の電界緩和領域とを備えた第2の半導体装置と、
請求項1に記載の半導体装置とを備えた表示装置用半導体基板。
【請求項11】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、フォトレジスト膜を形成して、前記フォトレジスト膜が前記半導体基板上の一領域を覆うように、フォトレジスト膜をパターニングする工程と、
パターニングされた前記フォトレジスト膜をマスクにして、前記半導体基板に、前記半導体基板の有する導電型と逆の導電型の不純物を注入する第1の不純物注入工程と、
第1の不純物注入工程により不純物が注入された半導体基板上の前記フォトレジスト膜を除去する工程と、
前記フォトレジスト膜が除去された基板に、ゲート電極膜を形成して、
前記半導体基板上の一領域に、前記ゲート絶縁膜を介して第1のゲート電極が配置され、かつ、前記第1のゲート電極の側面にスペースを介して、前記半導体基板上の一領域以外の領域に、第2のゲート電極が配置されるように、前記ゲート電極膜をパターニングする工程と、
パターニングされた第1のゲート電極及び第2のゲート電極の上に絶縁膜を形成し、エッチバックすることにより、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の側面と、第1のゲート電極と第2のゲート電極とのスペースと、に絶縁性のスペーサを形成する工程と、
第1のゲート電極及び第2のゲート電極と前記絶縁性のスペーサをマスクにして、前記半導体基板に、前記不純物と同じ導電型の不純物を注入する第2の不純物注入工程と、
を備える半導体装置製造方法。
【請求項12】
素子分離法により第1の領域と第2の領域に分離された半導体基板上に、ゲート絶縁膜を形成する第1のゲート絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、フォトレジスト膜を形成して、前記フォトレジスト膜が前記半導体基板上の、第1の領域における一領域と、第2の領域と、を覆うように、フォトレジスト膜をパターニングする工程と、
パターニングされた前記フォトレジスト膜をマスクにして、前記半導体基板に、前記半導体基板の有する導電型と逆の導電型の不純物を注入する第1の不純物注入工程と、
第1の不純物注入工程により不純物が注入された半導体基板上の前記フォトレジスト膜を除去する工程と、
前記フォトレジスト膜が除去された基板の、第2の領域における前記ゲート絶縁膜を除去し、第2の領域に前記ゲート絶縁膜と異なる第2のゲート絶縁膜を形成する第2のゲート絶縁膜形成工程工程と、
第2のゲート絶縁膜が形成された基板に、ゲート電極膜を形成して、
前記半導体基板上の第1の領域における一領域に、前記ゲート絶縁膜を介して第1のゲート電極が配置され、かつ、第1のゲート電極の側面にスペースを介して、前記半導体基板上の第1の領域における一領域以外の領域に、第2のゲート電極が配置され、
さらに、第2の領域に第3のゲート電極が配置されるように、前記ゲート電極膜をパターニングする工程と、
パターニングされた前記ゲート電極膜をマスクにして、前記半導体基板の第2の領域に、前記不純物と同じ導電型の不純物を注入する第2の不純物注入工程と、
第2の不純物注入工程により不純物が注入された前記半導体基板上に絶縁膜を形成し、エッチバックすることにより、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の側面と、第1のゲート電極と第2のゲート電極とのスペースと、第3のゲート電極の側面と、に絶縁性のスペーサを形成する工程と、
第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第3ゲート電極と、前記絶縁性のスペーサと、をマスクにして、前記半導体基板に、前記不純物と同じ導電型の不純物を注入する第3の不純物注入工程と、
を備える半導体装置製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−66165(P2011−66165A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215037(P2009−215037)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】