シリコン酸化膜の形成方法および不揮発性半導体記憶装置の製造方法
【課題】低温で良好な絶縁膜であるシリコン酸化膜を形成する。
【解決手段】シリコン基板1上にトレンチ1a、1bを形成し、シラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する。塗布膜に含まれる有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する。ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射し、そのポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜3に転換する。
【解決手段】シリコン基板1上にトレンチ1a、1bを形成し、シラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する。塗布膜に含まれる有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する。ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射し、そのポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜3に転換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜を用いたシリコン酸化膜の形成方法および不揮発性半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、高集積化による素子の動作速度向上あるいは低消費電力化などの性能向上や、製造コストの抑制を目的として微細化が積極的に進められている。半導体装置の微細化のためにはトランジスタや配線の微細化が重要であるが、微細化に伴い素子間を絶縁する素子分離領域形成の困難度も急激に増している。これは、トランジスタ等の素子の微細化に伴い素子間のスペースの微細化も当然行われ、微細なスペースに良好な絶縁特性をもつ絶縁膜を埋め込むこと自体が微細化に伴い困難度を増しているからである。
【0003】
また、素子の微細化に伴い、配線やバリアメタルにも銅(Cu)やタンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)等の耐酸化性の低い金属や、あるいは熱工程においてシリコン(Si)中に拡散しやすい金属など、従来は半導体工程で使用されていなかったような金属が用いられるようになってきている。
【0004】
さらに、トランジスタにおいても、ゲート絶縁膜にハフニウム(Hf)やジルコニウム(Zr)等の金属が用いられたり、ゲート電極にコバルトシリサイド(CoSi)、ニッケルシリサイド(NiSi)、プラチナシリサイド(PtSi)等の耐酸化性が低い金属や、あるいは熱工程でシリコン中へ拡散しやすい金属等が使われはじめるようになっており、素子間絶縁領域形成の工程において低温処理化を推進することが重要になってきている。
【0005】
不揮発性半導体記憶装置の素子分離絶縁膜としてSTI(shallow trench isolation)構造を用いた微細なスペースの埋め込み技術としては、たとえば特許文献1に示されるように、SOG(spin on glass)技術が採用されるようになってきているが、SOG膜は膜が形成された段階では膜中不純物、膜中の吸着水を除去するために水蒸気を含む酸化性雰囲気中での熱処理が不可欠であった。しかし、前述のように素子の微細化に伴い水蒸気を含む酸化性雰囲気中での熱処理は困難であったり、更なる低温化を余儀なくされており、良質の絶縁膜を狭スペースに形成することは非常に難しくなっている。
【特許文献1】特開2004−179614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温で良好な絶縁膜であるシリコン酸化膜を形成する方法およびその形成方法を利用した不揮発性半導体記憶装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリコン酸化膜の形成方法の一態様は、基板上にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程とを備えたところに特徴を有する。
【0008】
本発明の不揮発性半導体記憶装置の製造方法の一態様は、半導体基板にメモリセルトランジスタおよび周辺回路トランジスタを形成してなる不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、前記半導体基板に、前記メモリセルトランジスタに対応した第1の素子分離用溝および前記周辺回路のトランジスタに対応した第2の素子分離用溝を形成する工程と、前記第1および第2の素子分離用溝内にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程とを順次実行することにより、前記第1及び第2の素子分離用溝内に前記シリコン酸化膜を埋め込み形成するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温で良好な絶縁膜であるシリコン酸化膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明を不揮発性半導体記憶装置の一つであるNAND型フラッシュメモリ装置に適用した場合の第1の実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0011】
図1は、メモリセル領域の端部から周辺回路領域に渡る境界部分におけるメモリセルトランジスタのワード線WLの形成方向に沿った断面図である。メモリセル領域にはメモリセルトランジスタが形成され、周辺回路領域には周辺回路のトランジスタが形成されている。また、これら図1は、製造工程の一段階である配線工程の途中段階での状態を示している。
【0012】
図1において、半導体基板であるシリコン基板1の表層部には、メモリセル領域で浅く、他の部分で深く形成されたトレンチ1a、1bが設けられている。それら各トレンチ1a、1bには、ALD(atomic layer deposition)法により形成された薄いシリコン酸化膜2が内面に形成され、その内側に後述するシリコン酸化膜3が埋め込み形成されている。これらシリコン酸化膜2、3によりSTI(shallow trench isolation)構造の素子分離絶縁膜が構成されている。
【0013】
この素子分離絶縁膜となるシリコン酸化膜2、3によりシリコン基板1の素子形成領域である複数の活性領域4が分離形成されている。活性領域4の上面にはゲート絶縁膜となるシリコン熱酸窒化膜5が膜厚8nmで形成され、その上にメモリセルトランジスタのゲート電極MG、周辺回路のトランジスタのゲート電極PGが形成されている。また、メモリセルトランジスタのゲート電極MGと周辺回路領域のトランジスタのゲート電極PGとの境界部分にはダミーゲート電極DGが形成されている。
【0014】
各ゲート電極MG、DG、PGは、下から浮遊ゲート電極となるリン(P)ドープの多結晶シリコン膜6が膜厚50nmで形成され、電極間絶縁膜としてのONO(oxide-nitride-oxide)膜7、制御ゲート電極膜となるリン(P)ドープの多結晶シリコン膜8、9が積層された構成である。ONO膜7上に形成された多結晶シリコン膜8、9は、メモリセルトランジスタの各ゲート電極MG間および周辺回路のトランジスタのゲート電極PGを連結するワード線として形成されている。なお、ONO膜7に代えて、NONON(nitride-oxide-nitride-oxide-nitride)膜を用いることもできる。
【0015】
また、周辺回路のトランジスタのゲート電極PGは、ONO膜7に開口部7aが形成され、上下に位置する多結晶シリコン膜6と8とが開口部7aを介して電気的に接続された状態に形成されている。なお、図中、周辺回路領域に形成された広い幅のトレンチ1bに埋め込まれたシリコン酸化膜3の上面には、図示しない他のゲート電極から延出されたONO膜7、多結晶シリコン膜8、9からなる電極が形成されている。
【0016】
多結晶シリコン膜9の上面部分を覆うように層間絶縁膜(ILD;Inter-Layer Dielectric)としてのシリコン酸化膜10が形成されている。ワード線となる多結晶シリコン膜9の端部あるいはシリコン酸化膜3上に形成された多結晶シリコン膜9の上面には、シリコン酸化膜10を貫通するようにコンタクト11が形成されている。シリコン酸化膜10の上面には、コンタクト11に接続される配線層12が形成されている。なお、この構成に加えて、さらに上層には層間絶縁膜としてのシリコン酸化膜および配線層が形成されている。
【0017】
上記構成において、トレンチ1a、1b内に埋め込まれたシリコン酸化膜3は、シリコン基板1の上面に、シラザン結合を有するポリマー(過水素化シラザン)を有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して形成した塗布膜(過水素化シラザン膜)を形成し、その塗布膜に含まれる有機溶媒を蒸発させると共に、後述する各種の処理を低温の条件で実行することにより形成している。これによって低温処理による良質なシリコン酸化膜3として形成したものである。この構成においては、ポリマー膜をシリコン酸化膜に転換するための高温の酸化性雰囲気での熱処理を必要としないため、電気的特性においてもしきい値電圧のシフトが少なく、且つオフリーク電流も低減したものを得ることができる。
【0018】
次に、上記構成の製造工程のうち、シリコン酸化膜3を低温で形成する工程を中心として図2〜図5を参照すると共に、各種特性について図6〜図9を参照して説明する。なお、図2〜図5は、図1に対応した部分の製造過程における模式的な構成を示している。この実施形態においては、NAND型フラッシュメモリ装置において、STI構造の素子分離用絶縁膜となるシリコン酸化膜3に適用したものであり、ポリシラザン膜に紫外線(UV;ultra violet)照射後、温水処理とSPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)処理によるキュアを行い、続いて水蒸気酸化を行うことで、不純物の少ない良質な絶縁膜が埋め込まれた素子分離絶縁膜を実現する例である。
【0019】
まず、図2に示すように、シリコン基板1の上面にトンネル酸化膜となるシリコン熱酸窒化膜5を膜厚8nmで形成する。続いて、浮遊ゲート電極となるリン(P)ドープ多結晶シリコン膜6を膜厚50nmで形成する。さらに、この上面にCMP(chemical mechanical polishing)法による研磨工程でのストッパ材となるシリコン窒化膜13を膜厚60nmで形成する。
【0020】
次に、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE;reactive ion etching)法により、シリコン窒化膜13、多結晶シリコン膜6、シリコン熱酸窒化膜5、シリコン基板1を順次エッチング加工して、所定深さのトレンチ1a、1bを形成する。
【0021】
次に、シリコン基板1の表面全面つまりシリコン基板1上のシリコン窒化膜13の上面およびトレンチ1a、1bの内壁面および底面のそれぞれに、成膜温度が450℃で原料ガスとしてTDMAS(トリジメチルアミノシラン)と酸素(O2)とを用いてALD法によりシリコン酸化膜2を膜厚12nmで形成する。
【0022】
続いて、図3に示すように、ポリシラザン膜14をシリコン基板1の平坦な部分で膜厚が600nmになるようにスピン塗布してトレンチ1a、1b内を完全に埋め込む。ポリシラザン膜14の形成は以下のように行う。平均分子量が1500〜5500の過水素化シラザン(パーハイドロシラザン)ポリマー[(SiH2NH)n]をキシレン、ジブチルエーテル等に分散して過水素化シラザン重合体溶液を生成し、その過水素化シラザン重合体(過水素化ポリシラザン)溶液をスピンコーティング法により、シリコン基板1の表面に塗布する。スピンコーティング法の条件は例えばシリコン基板1の回転速度1000rpm、回転時間30秒、過水素化シラザン重合体溶液の滴下量2ccである。
【0023】
次に塗布膜であるポリシラザン膜14を形成したシリコン基板1をホットプレート上で150℃に加熱し、不活性ガス雰囲気中で3分間ベークすることにより、過水素化シラザン重合体溶液中の溶媒を揮発させてポリシラザン膜14をポリマー膜に転換する。この状態では、膜中には溶媒起因の炭素(C)あるいは炭化水素(CH)が不純物として数原子パーセントから十数原子パーセント程度、ポリシラザンのポリマーに起因する窒素(N)が数十原子パーセント残存している。
【0024】
次に、ポリマー膜に転換したポリシラザン膜14に波長が150nm〜300nmの紫外光(UV)を照射する。紫外光照射によりポリシラザン膜14中のシリコン―窒素(Si−N)結合が解離してポリシラザン膜14は活性な状態に変化する。また、このときシリコン―酸素(Si−O)結合のエネルギーとほぼ等しくなる紫外線の波長は142nmであるため、それよりも長波長側の紫外線を用いないとポリシラザン膜14が転換されることで形成されるシリコン酸化膜3中に紫外線照射ダメージが残存することになるので好ましくない。一方、紫外線の光の波長が300nmよりも長くなると以下に述べるようなポリシラザンの酸化が殆ど起こらないことがわかった。なお紫外光を照射する温度としては室温が望まれ、更にポリシラザン膜14を形成した基板を冷却することが好ましい。これは紫外光照射時の温度が高く、例えば90℃を超えるとポリシラザンからの低分子成分の昇華がおこり、ポリシラザンの機械強度が低下してしまい膜のクラック等の原因になりやすいためである。
【0025】
次に、図4に示すように、ポリシラザン膜14を、50℃以上で且つ80℃未満の温度に保った純水中に30分間浸漬することで酸化する。純水中での酸化工程ではポリシラザン膜14中に水(H2O)を浸透させ、シリコン(Si)のダングリングボンドやシリコン−水素(Si−H)結合を酸化して水酸化シリコン(SiOH)を生成するとともに、シリコン−窒素(Si−N)結合の解離で生じたアンモニアを膜外に排出し膜を緻密化する。このように本処理では水(H2O)を含む50℃以上の溶液であることが重要であり、純水に代えて酸性の水溶液を用いることも可能である。
【0026】
本反応は溶液温度に依存し、溶液温度が10℃低下する毎に拡散及び反応の効率が1/2程度ずつ低下するために、溶液温度が50℃未満では埋め込み工程で要求される500nm以上のポリシラザン膜14の改質には不十分となる。なお、膜中に水(H2O)を導入する前に例えば100℃以上の高温の水蒸気中で加熱することは、残存した不純物の炭素(C)や窒素(N)が膜中で熱拡散し、シリコン基板1の界面でパイルアップして固定電荷形成を促進するので好ましくない。また、80℃以上の純水の使用は、純水の沸騰により均一な反応が阻害されるために好ましくない。したがって、純水の温度は、好ましくは60℃〜70℃の範囲に設定すると良い。また浸漬時間は好ましくは10分〜30分の範囲で行うと良い。
【0027】
図6、図7は、紫外線照射直後のポリシラザン膜(as UV(図中、破線で示す))、紫外線照射後に室温(25℃)で洗浄したポリシラザン膜(UV+25℃Wash(図中、細実線で示す))、紫外線照射後に温水(60℃、70℃)に浸漬したポリシラザン膜(UV+60℃Boil、UV+70℃Boil(図中、一点鎖線、太実線で示す))のそれぞれについて昇温脱離ガス分析(TDS;thermal desorption spectroscopy)を行った結果を示している。
【0028】
この結果、紫外線照射後に温水(60℃、70℃)に浸漬したポリシラザン膜ではTDSのピークが大きく変化し、400℃以下で放出される膜中に吸収した水(H2O)の放出ピーク値が減少し、逆に400℃以上で観測される水酸化シリコン(SiOH)起因の放出ピーク値が大きくなっており、水(H2O(m/z=18))の総放出量も少ないことがわかる。また、この反応は主に温水の温度に依存しており50℃より低温では殆ど効果がないことがわかる。これは前述のようにポリシラザン膜中の水(H2O)の拡散と酸化反応が温水温度に強く依存するためである。すなわち、50℃以上の温水に浸漬する工程は、ポリシラザンの酸化工程であって吸水工程ではない。なお、TDSでは測定前に真空排気を十分行ってから測定を開始するため、単に表面に吸着し、真空排気の際に容易に離脱する水(H2O)は測定されない。以上でポリシラザン膜は1at%程度の窒素(N)を含むシリコン酸化膜3に転換する。
【0029】
次に、前記紫外線照射後に温水処理したポリシラザン膜を100℃以上好ましくは120℃以上200℃以下のSPM(硫酸過酸化水素水混合液)中に15分間浸漬する。SPM温度は100℃以上に達するために、前記紫外線照射後に温水処理したポリシラザン膜14中に浸透した水(H2O)とシリコン(Si)のダングリングボンドやシリコン−水素(Si−H)結合との反応による酸化が促進されるとともに、酸性のSPM中へのアンモニアの吸出しも促進される。なお、SPM温度が200℃を超えて高いとポリシラザン膜が溶解するおそれが生じるため好ましくない。
【0030】
本反応では反応を促進するために100℃以上の薬液が好ましいが、薬液中に水分を含んでいることが重要である。これは水分を含まない薬液の場合、前の温水工程でポリシラザン膜14中に取り込ませた水酸化シリコン(SiOH)が解離して水(H2O)が再度放出されてしまうためである。SPMの場合には過酸化水素の解離によって水分が発生するため、本用途に適している。本処理後にはポリシラザン膜14は0.5at%程度の窒素(N)を含むシリコン酸化膜3へと変化する。但し、トレンチ1aのように狭い幅のメモリセルトランジスタのゲート電極MG部分では、トレンチ1a部分の内部への紫外光が殆ど到達できないために、図4に示しているように、埋め込まれているポリシラザン膜14はまだベーク後に近い状態にある。なお、比較例としてSPM処理を行わないサンプルも作成した。
【0031】
次に、シリコン酸化膜3を水蒸気雰囲気で熱処理を行うことで緻密化するとともに、メモリセル領域のトレンチ1a内のポリシラザン膜14をシリコン酸化膜3に転換する。シリコン酸化膜3中には0.5at%程度の窒素(N)が残存しており、この窒素(N)は紫外線照射の影響でシリコン(Si)と強く結合していないために動きやすい状態にあるので、窒素(N)の拡散が抑制できる300℃以下好ましくは250℃以下で水蒸気を導入し遊離しやすい窒素(N)を酸化したあとに、500℃まで水蒸気中で連続的に昇温して熱処理を行う。以上の処理でシリコン酸化膜3中の窒素濃度は0.1at%以下まで減少し、且つ、シリコン酸化膜3自体が熱処理によって緻密化される。なお、従来技術のものと比較をするために、紫外線照射とウェット処理とを行わず、いきなり水蒸気酸化をおこなった場合のサンプルも作成してデータを測定した。
【0032】
図8に水蒸気酸化の水蒸気導入温度依存性を調べた結果を示す。この図8は、p型のシリコン基板上にポリシラザン膜を形成し、紫外線照射(with UV)/温水+SPM処理後の500℃水蒸気酸化での水蒸気導入温度を様々の条件で行い、キャパシタのフラットバンド電圧のシフトを測定した結果である。これにより、ポリシラザン起因の不純物による固定電荷を評価している。ポリシラザン中の不純物が熱処理中にp型のシリコン基板の表面まで拡散すると固定電荷化するので、フラットバンド電圧のシフトが大きい条件は可動不純物が多いということになる。また、比較例として紫外線照射を行わない場合(without UV)も示した。
【0033】
この結果から、紫外線照射を行った場合(with UV)に、水蒸気導入温度にフラットバンド電圧シフトが依存し、水蒸気導入温度が低い場合は紫外線照射を行わない場合(without UV)に比べて固定電荷が低減されているが、水蒸気導入温度が高い場合は紫外線照射をおこなわない場合に比べても悪化していることがわかる。
【0034】
これは紫外線照射ではシラザン結合が切れて窒素原子(N)が遊離した状態になるため、通常のポリシラザン膜に比べて窒素(N)が酸化により除去しやすい状態にある反面、熱処理中に容易に拡散しやすい状態にあるためである。以上の結果からは水蒸気酸化時の水蒸気導入温度としては300℃以下、好ましくは250℃以下が適していることがわかる。
【0035】
図9は、製造工程の各段階でのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR;fourier transform infrared spectroscopy)測定での赤外吸収のスペクトルを示す。この結果によると、ポリシラザン膜が温水中でほぼ酸化してしまっており、SPM処理以降ではシリコン−酸素(Si−O)ピーク強度が殆ど同じであり、SPM処理終了の段階で酸化反応はほぼ完了していることがわかる。
【0036】
次に、図5に示すように、シリコン酸化膜3を875℃の窒素(N2)アニールにより緻密化してから、CMP法によりシリコン窒化膜13をストッパーとしてシリコン酸化膜3、2を研磨して、トレンチ1a、1b内部にのみ残存せしめる。続いて、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法によって、トレンチ1a、1b内に残存するシリコン酸化膜3を所望の高さまでエッチバックする。次に、ホット燐酸中でシリコン窒化膜13を除去する。これにより、素子分離絶縁膜が形成される。
【0037】
この後、図1に示すように、電極間絶縁膜となるONO膜7、制御ゲート電極となるリン(P)ドープの多結晶シリコン膜8を形成する。次に、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法によってリン(P)ドープ多結晶シリコン膜8およびONO膜7に周辺回路のリン(P)ドープの多結晶シリコン膜6に連通するスリット状の開口部7aを形成する。続いて、シリコン基板1全面にリン(P)ドープの多結晶シリコン膜9を形成し、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法によってリン(P)ドープの多結晶シリコン膜9、8、およびONO膜7、リン(P)ドープの多結晶シリコン膜6を順次加工して、制御ゲート電極および浮遊ゲート電極を分離形成する。以降の工程では層間絶縁膜としてのシリコン酸化膜10を形成し、コンタクト11、配線12などの形成を行なうが、ここでは詳細は省略する。
【0038】
上記のようにしてシリコン酸化膜3を形成した場合のものと、比較のために水蒸気酸化のみで酸化をおこなったものとで、周辺回路のオフリーク電流(Ioff)のゲート幅(W)依存性を測定した結果を次の表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
上記表1に示す結果において、ゲート幅Wが1μm以下では本実施例と比較して従来技術の場合オフリーク電流Ioffが大きく増大していることがわかる。これは活性領域(AA;active area)の幅(=W)の幅が狭くなるほど劣化がおこり、かつNチャンネル型トランジスタにおいて影響が顕著であることからSTI構造の素子分離絶縁膜に正固定電荷が存在するために素子分離絶縁膜近傍の活性領域(AA)でトランジスタのしきい値電圧Vtが低下していることによるものである。そして、SPM処理を行わない場合でも本実施形態のシーケンスでトランジスタのオフリーク電流Ioffが改善するが、SPM処理と組み合わせることで更に良好な結果が得られている。すなわち、不純物拡散の起こり得ない200℃以下の低温で紫外線照射/温水処理/SPM処理等の組み合わせで、固定電荷のもととなる不純物を効率よく除去できたことによるものである。一方、温水のような酸化効果を伴わない室温での洗浄工程を紫外線照射後に追加しても不純物除去効果はなく、そのためトランジスタ特性の改善も得られないことがわかる。
【0041】
なお、本実施形態ではNAND型フラッシュメモリ装置に適用した場合の例を説明したが、これに限らず、チャージトラップ型のメモリや、DRAM(dynamic random access memory)、ロジックデバイス等のSTI構造の素子分離絶縁膜への適用が可能であり、塗布型のポリシラザン膜の良好な埋め込み性を損なうことなく、固定電荷の少ない素子分離絶縁膜のトレンチ内への埋め込みが可能になるので半導体装置の更なる微細化が可能になる。
【0042】
(第2の実施形態)
図10〜図13は、本発明の第2の実施形態を示すもので、2層積層構造の抵抗変化型メモリ装置(ReRAM)の配線間埋め込みにポリシラザン膜を使ってシリコン酸化膜に転換する場合の例を示している。この実施形態では、ポリシラザン膜をシリコン酸化膜に転換する際に、基本的に200℃以下の温度で形成が可能になることで、周辺回路及びセル部のダイオード特性を劣化させることなく、メモリセルの積層が可能になるという利点がある。以下、ポリシラザン膜をシリコン酸化膜に転換する工程を中心に製造工程を概略的に説明する。
【0043】
図10〜図13は、抵抗変化型メモリ装置のメモリセル領域において、直交するビット線方向およびワード線方向のそれぞれの方向に切断した場合の断面を示している。なお、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0044】
まず、図10において、シリコン基板21上に抵抗変化型メモリ装置の周辺回路となるトランジスタ22、トレンチ21aにシリコン酸化膜を埋め込んで形成した素子分離絶縁膜23、層間絶縁膜24、コンタクトプラグ25、26、27、第1の配線層28、第2の配線層29を公知の半導体製造技術によって形成する。
【0045】
次に、図11に示すように、メモリ素子のワード線となるタングステン膜30を膜厚200nmで形成する。続いて抵抗変化素子となるGeSbxTey膜31を膜厚10nm、ヒーターとなるタンタルオキサイド膜32を膜厚2nm、上部電極兼バリアメタルとなる窒化タングステン膜33を膜厚10nm、pinダイオードとなるn+/n−/p+非晶質シリコン積層膜34を膜厚50nm/100nm/50nm、バリアメタルとなる窒化タングステン膜35を膜厚10nm、CMP法による研磨のストッパーとなるタングステン膜36を膜厚50nmでそれぞれ形成する。
【0046】
続いて、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)技術により積層形成したタングステン膜36、窒化タングステン膜35、非晶質シリコン積層膜34、窒化タングステン膜33、タンタルオキサイド膜32、GeSbxTey膜31およびタングステン膜30を帯状をなす形状に一括加工する。
【0047】
次に、図12に示すように、一括加工された前記積層膜間にALD法によりシリコン窒化膜37を膜厚3nmで形成する。続いて、ポリシラザンを原料とするシリコン酸化膜38を形成する。ここで、シリコン酸化膜38の形成方法は第1の実施形態と同様である。すなわち、ポリシラザン膜をスピン塗布し、150℃でベークした後、波長172nmの紫外線を照射する。この後、第1のウエット処理として60〜70℃の温水中で30分間を実施し、続いて、第2のウエット処理としてSPM中で20分の処理を行いポリシラザン膜をシリコン酸化膜38に転換する。
【0048】
次にタングステン膜36をストッパーとして公知のCMP技術でシリコン酸化膜38を平坦化処理する。この後、第1のビット線となるタングステン膜39を膜厚100nm、バリアメタルとなる窒化タングステン膜40を膜厚10nm、p+/n−/n+非晶質シリコン積層膜41を膜厚50nm/100nm/50nm、バリアメタル兼下部電極となる窒化タングステン膜42を膜厚10nm、ヒーターとなるタンタルオキサイド膜43を膜厚2nm、抵抗変化素子となるGeSbxTey膜44を膜厚10nm、CMP処理時のストッパーとなるタングステン膜45を膜厚50nmで形成する。さらに、積層した膜39〜45を公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)技術により一括加工し、更にシリコン酸化膜38及びシリコン酸化膜38間に埋め込まれた積層膜39〜36を一括加工する。
【0049】
次に、図13に示すように、一括加工された積層膜31〜36、39〜45の間に面した側壁部に、一層目と同様にALD法によるシリコン窒化膜46、ポリシラザン膜を塗布して前述と同様の処理を行って形成するシリコン酸化膜47により埋め込む。ポリシラザン膜は、塗布後に紫外線照射、第1のウェット処理、第2のウェット処理を順次行ってシリコン酸化膜47に転換する。この後、シリコン酸化膜47を公知のCMP技術により平坦化する。
【0050】
次に、2本目のワード線となるタングステン膜48を形成し、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)技術により、タングステン膜48、シリコン酸化膜47およびシリコン酸化膜47間に埋め込まれた積層された膜40〜45を一括加工する。次に一括加工された積層膜40〜45とタングステン膜48の間に、1層目、2層目と同様にしてALD法によるシリコン窒化膜49、ポリシラザン膜を塗布して前述と同様の処理を行って形成するシリコン酸化膜50により埋め込む。ポリシラザン膜は、塗布後に紫外線照射、第1のウェット処理、第2のウェット処理を順次行ってシリコン酸化膜50に転換する。この後、シリコン酸化膜50を公知のCMP技術により平坦化する。
【0051】
次にRTP(Rapid Thermal Processing)技術を用いてn+/n−/p+非晶質シリコン積層膜34、p+/n−/n+非晶質シリコン積層膜41を結晶化すると共に、不純物を活性化する。以上により、2層積層された抵抗変化型メモリセルが形成された。以下、層間絶縁膜51を形成し、アルミニウム配線52、パシベーション膜53を形成することにより、抵抗変化メモリ装置が完成する。
【0052】
なお、本実施例では抵抗変化材料としてGST(GeSbxTey)膜を用いたが、両端に印加された電圧で発生するジュール熱により、その抵抗状態が変わるカルコゲナイド系のGST(GeSbxTey)、窒素(N)ドープのGST、酸素(O)ドープのGST、GeSb、InGexTey等の材料を用いることができる。
【0053】
また、ヒーター材料としてタンタルオキサイドを用いたが、ニオブオキサイド、チタニア等を用いることも可能であり、またヒーターを用いないことも可能である。また、カルコゲナイド系ではないが、両端に印加された電圧によって抵抗値が変わるTiO2、NiO、Tiなどの金属をドープしたNiO、CuO、HfO2、ZrO2、PrxCa1-xMnO3、SrTiO3、FeO等の金属酸化物可変抵抗材料を用いることも可能である。
【0054】
電極材料として本実施例では窒化タングステンを用いたが、上記ヒーター材料と反応して可変抵抗性を損わない材料、例えば窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化タンタル、窒化チタンシリサイド、タンタルカーバイド、チタンシリサイド、タングステンシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケル白金シリサイド、白金、ルテニウム、白金ロジウム、イリジウム等を用いることが可能である。
また、ダイオード材料としては、シリコン、ゲルマニウム等の半導体以外にNiO、TiO、CuO、InZnO等の金属酸化物半導体のpn接合、あるいは金属と半導体のショットキー接合を用いるショットキーダイオードを用いることも可能である。
【0055】
表2は、本実施形態における構造を採用したものと、従来技術に相当するポリシラザン膜を600℃の水蒸気酸化でシリコン酸化膜に転換して層間絶縁膜として用いた場合のものについて、ダイオードの順方向電流/逆方向オフリーク電流、書き込み電流/消去電流を比較した結果を示す。
【0056】
【表2】
【0057】
上記の結果から、本実施形態のものの構造では、シリコン酸化膜を形成する工程を低温化できることで、ダイオードの不純物プロファイルが崩れにくくダイオードの整流特性が大幅に改善するため、書き込み/消去電流の低いセルが実現できることがわかる。
【0058】
このように本実施形態の構造では、消去電流を低減することができるため、特に消費電力を抑制したいモバイル用途に適した抵抗変化型メモリ装置を作成することができるという利点がある。
【0059】
(第3の実施形態)
図14〜図17は、本発明の第3の実施形態を示すもので、本実施形態では液晶ディスプレー装置の薄膜トランジスタ(TFT;thin film transistor)形成に必要な絶縁膜の形成工程において適用した場合の例を示している。
【0060】
液晶ディスプレー装置では、ガラス基板上にTFTを形成するため低温での絶縁膜形成が要求されており、通常プラズマCVD(chemical vapor deposition)法が用いられてきたが、プラズマCVD法で形成する場合には、第1に大面積の液晶対応が難しく膜厚均一性確保が困難であり、真空系が必要であるため装置が巨大化しやすい点、第2にプラズマによるTFTへのダメージが入りやすい点等の問題があった。
【0061】
この点、本実施形態ではプラズマを用いることなく比較的良質なシリコン酸化膜を形成できるので、良好なTFTをシンプルな製造工程で実現が可能になるという利点がある。
本実施形態では、特に、当該方法をTFT液晶に適用される半導体装置のシリコン酸化膜に適用した構成について述べる。
【0062】
まず、図14に示すように、基板であるガラス基板61の全面に過水素化ポリシラザン溶液を200nm塗布して第1のポリシラザン膜62を形成する。過水素化ポリシラザン溶液の形成方法は第1の実施形態で示した方法と同様である。次に、ガラス基板61をオーブン中で150℃に加熱し過水素化ポリシラザン塗布膜中の溶媒を揮発させる。続いて、ポリシラザン膜62に波長が150nm〜190nmの範囲の紫外光を照射する。紫外光照射によりポリシラザン膜62中のSi−N結合が解離し、ポリシラザン膜62は活性な状態に変化する。
【0063】
次に、第1のウェット工程として、70℃〜80℃の温度に保った純水中に10分間浸漬することでポリシラザン膜62を酸化する。具体的にはポリシラザン膜62中に水(H2O)を浸透させ、シリコン(Si)のダングリングボンドやSi−H結合を酸化するとともに、Si−N結合の解離で生じたアンモニアを膜外に排出する。
【0064】
続いて、第2のウェット工程として、紫外線照射後に温水処理したポリシラザン膜62をSPM(硫酸過酸化水素水混合液)中に15分間浸漬することでポリシラザン膜をガラス基板からの金属拡散を抑制するためのシリコン酸化膜63へと転換する。
【0065】
次に、ガラス基板61のシリコン酸化膜63の上面全面に非晶質シリコン膜を200nm堆積し、フォトリソグラフィ処理によりパターニングを行う。続いてレーザーアニール処理により、非晶質シリコン膜を結晶化して多結晶シリコン膜64を形成する。
【0066】
次に、多結晶シリコン膜64上にゲート酸化膜となる過水素化ポリシラザンを例えばインクジェット方式で50nm塗布し第2のポリシラザン膜を形成し、第1のポリシラザン膜と同様に波長が150nm〜190nmの範囲の紫外光照射、第1のウェット処理工程、第2のウェット処理工程を行いシリコン酸化膜65を形成する。更に200℃の炉中にガラス基板61を導入し、200℃で水蒸気を導入し30分間の酸化処理を行い、その後に400℃まで水蒸気中で連続的に昇温し400℃で10分間酸化することによりゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜65内に、窒素(N)を0.3at%程度しか含まない高純度なものに形成する。
【0067】
次に、シリコン酸化膜65の上面にゲート電極膜の材料を成膜してパターニング処理を行ってゲート電極膜66を形成する。続いて、イオン注入と活性化処理により多結晶シリコン膜64にソース/ドレインとなる拡散層64a、64bを形成する。次にガラス基板61の上面全面に第3のポリシラザン溶液の塗布膜を400nmで形成し、前述した第1および第2のポリシラザン膜の場合と同様に、波長が150nm〜190nmの範囲の紫外光照射、第1のウェット処理工程、第2のウェット処理工程を行うことによりシリコン酸化膜67を層間絶縁膜として形成する。
【0068】
次に、シリコン酸化膜67にコンタクトホールを形成して、トランジスタのゲート電極68、拡散層64a、64bに連通するコンタクトホールを形成する。続いて、コンタクトホール内を埋め込むようにアルミニウム膜を形成する。続いて、公知のリソグラフィ技術及びエッチング技術によりアルミニウム膜を加工してコンタクトプラグ68、69、70を形成すると共に配線を形成し、TFT液晶のTFTトランジスタが形成される。
【0069】
上記実施形態での過水素化ポリシラザン膜(Coat+Bake)およびこれを本実施形態の形成方法により転換したシリコン酸化膜(UV+Boil+SPM)について膜中の不純物分布を、SIMS(secondary ion mass spectroscopy)により測定した結果を図16、図17に示す。図16では、炭素(C)の濃度分布を示し、図17では、窒素(N)の濃度分布を示している。この結果から、シリコン酸化膜を形成する過程で、高温の熱処理工程を殆ど用いていないにも関わらず、膜中で一様に窒素(N)が酸素(O)に転換され、炭素(C)も減少していることがわかる。なお、基板界面で現れるピークは、SIMS測定起因のピークで実際のピークではない。
【0070】
このような本実施形態によれば、過水素化ポリシラザン膜のベーク温度を、150℃を最高温度として、それ以下の低温で比較的良質のシリコン酸化膜を形成することができるので、低温でトランジスタwo形成することができ、これによってTFTの特性向上を図ることができる。
【0071】
表3は、本実施形態における方法で形成したシリコン酸化膜中の残留炭素(C)濃度と上記トランジスタのしきい値電圧を示す。ここで、比較のために、
(A)TEOS(tetra-ethoxysilane)原料のプラズマCVDで形成した酸化膜を用いる場合、
(B)低温酸化触媒としてアミンを添加して低温(300℃以下)でシリコン酸化膜へ改質できる過水素化ポリシラザンを用いる場合
について酸化膜中の残留炭素(C)濃度とゲート酸化膜の120℃での経時的絶縁膜破壊であるTDDB(time dependent dielectric breakdown)[年]、およびこれらの酸化膜を用いて形成したトランジスタのしきい値電圧を示す。
【0072】
【表3】
【0073】
このように、本実施形態に係る絶縁膜形成方法によれば、不純物として炭素(C)が膜中に残留しやすいアミンを導入しなくても、過水素化ポリシラザンを低温で残留炭素の少ない比較的良質なシリコン酸化膜に改質することができる。そのため、トランジスタのしきい値電圧への炭素起因固定電荷を最小にすることができる。また、低温工程しか存在しないためにガラス基板61からのナトリウム等の金属の拡散を最小限に抑制することが可能であるので、ゲート酸化膜の信頼性改善(より長いTDDB)の実現が可能である。すなわち、本実施形態に係るシリコン酸化膜の形成方法によれば、炭素が膜中に残留しやすいプラズマCVDよりも純度の高い良質なシリコン酸化膜を更に低温で形成することができる。
【0074】
本発明は各実施形態に示した応用例に限定されることなく、過水素化ポリシラザン膜を用いて低温で不純物の少ない良質なシリコン酸化膜を形成する、あるいは埋め込み性のすぐれたシリコン酸化膜を低温で形成する応用への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す模式的断面図
【図2】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その1)
【図3】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その2)
【図4】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その3)
【図5】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その4)
【図6】各種条件でシリコン酸化膜の昇温脱離ガス分析(TDS)を行った結果(TDS温度を横軸にとったときの強度分布)
【図7】各種条件でシリコン酸化膜の昇温脱離ガス分析(TDS)を行った結果(Boil温度を横軸にとったときのピーク値のデータ)
【図8】水蒸気酸化の水蒸気導入温度依存性をキャパシタのフラットバンド電圧のシフトとして測定した結果を示す図
【図9】製造工程の各段階でのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)測定での赤外吸収のスペクトルを示す図
【図10】本発明の第2の実施形態を示し、製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その1)
【図11】製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その2)
【図12】製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その3)
【図13】製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その4)
【図14】本発明の第3の実施形態を示し、製造工程の一段階における模式的断面図(その1)
【図15】製造工程の一段階における模式的断面図(その2)
【図16】シリコン酸化膜および過水素化ポリシラザン膜中の炭素分布をSIMSで測定した結果を示す図
【図17】シリコン酸化膜および過水素化ポリシラザン膜中の窒素分布をSIMSで測定した結果を示す図
【符号の説明】
【0076】
図面中、1はシリコン基板(半導体基板)、3はシリコン酸化膜、5はシリコン熱酸窒化膜、6は多結晶シリコン膜、7はONO膜、8、9は多結晶シリコン膜、14は過水素化ポリシラザン膜(ポリマー膜)、21はシリコン基板(半導体基板)、22はトランジスタ、23は素子分離絶縁膜、38、47、50はシリコン酸化膜、61はガラス基板(基板)、62はポリマー膜、63、65、67はシリコン酸化膜である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜を用いたシリコン酸化膜の形成方法および不揮発性半導体記憶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、高集積化による素子の動作速度向上あるいは低消費電力化などの性能向上や、製造コストの抑制を目的として微細化が積極的に進められている。半導体装置の微細化のためにはトランジスタや配線の微細化が重要であるが、微細化に伴い素子間を絶縁する素子分離領域形成の困難度も急激に増している。これは、トランジスタ等の素子の微細化に伴い素子間のスペースの微細化も当然行われ、微細なスペースに良好な絶縁特性をもつ絶縁膜を埋め込むこと自体が微細化に伴い困難度を増しているからである。
【0003】
また、素子の微細化に伴い、配線やバリアメタルにも銅(Cu)やタンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)等の耐酸化性の低い金属や、あるいは熱工程においてシリコン(Si)中に拡散しやすい金属など、従来は半導体工程で使用されていなかったような金属が用いられるようになってきている。
【0004】
さらに、トランジスタにおいても、ゲート絶縁膜にハフニウム(Hf)やジルコニウム(Zr)等の金属が用いられたり、ゲート電極にコバルトシリサイド(CoSi)、ニッケルシリサイド(NiSi)、プラチナシリサイド(PtSi)等の耐酸化性が低い金属や、あるいは熱工程でシリコン中へ拡散しやすい金属等が使われはじめるようになっており、素子間絶縁領域形成の工程において低温処理化を推進することが重要になってきている。
【0005】
不揮発性半導体記憶装置の素子分離絶縁膜としてSTI(shallow trench isolation)構造を用いた微細なスペースの埋め込み技術としては、たとえば特許文献1に示されるように、SOG(spin on glass)技術が採用されるようになってきているが、SOG膜は膜が形成された段階では膜中不純物、膜中の吸着水を除去するために水蒸気を含む酸化性雰囲気中での熱処理が不可欠であった。しかし、前述のように素子の微細化に伴い水蒸気を含む酸化性雰囲気中での熱処理は困難であったり、更なる低温化を余儀なくされており、良質の絶縁膜を狭スペースに形成することは非常に難しくなっている。
【特許文献1】特開2004−179614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温で良好な絶縁膜であるシリコン酸化膜を形成する方法およびその形成方法を利用した不揮発性半導体記憶装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリコン酸化膜の形成方法の一態様は、基板上にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程とを備えたところに特徴を有する。
【0008】
本発明の不揮発性半導体記憶装置の製造方法の一態様は、半導体基板にメモリセルトランジスタおよび周辺回路トランジスタを形成してなる不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、前記半導体基板に、前記メモリセルトランジスタに対応した第1の素子分離用溝および前記周辺回路のトランジスタに対応した第2の素子分離用溝を形成する工程と、前記第1および第2の素子分離用溝内にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程とを順次実行することにより、前記第1及び第2の素子分離用溝内に前記シリコン酸化膜を埋め込み形成するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温で良好な絶縁膜であるシリコン酸化膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、本発明を不揮発性半導体記憶装置の一つであるNAND型フラッシュメモリ装置に適用した場合の第1の実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0011】
図1は、メモリセル領域の端部から周辺回路領域に渡る境界部分におけるメモリセルトランジスタのワード線WLの形成方向に沿った断面図である。メモリセル領域にはメモリセルトランジスタが形成され、周辺回路領域には周辺回路のトランジスタが形成されている。また、これら図1は、製造工程の一段階である配線工程の途中段階での状態を示している。
【0012】
図1において、半導体基板であるシリコン基板1の表層部には、メモリセル領域で浅く、他の部分で深く形成されたトレンチ1a、1bが設けられている。それら各トレンチ1a、1bには、ALD(atomic layer deposition)法により形成された薄いシリコン酸化膜2が内面に形成され、その内側に後述するシリコン酸化膜3が埋め込み形成されている。これらシリコン酸化膜2、3によりSTI(shallow trench isolation)構造の素子分離絶縁膜が構成されている。
【0013】
この素子分離絶縁膜となるシリコン酸化膜2、3によりシリコン基板1の素子形成領域である複数の活性領域4が分離形成されている。活性領域4の上面にはゲート絶縁膜となるシリコン熱酸窒化膜5が膜厚8nmで形成され、その上にメモリセルトランジスタのゲート電極MG、周辺回路のトランジスタのゲート電極PGが形成されている。また、メモリセルトランジスタのゲート電極MGと周辺回路領域のトランジスタのゲート電極PGとの境界部分にはダミーゲート電極DGが形成されている。
【0014】
各ゲート電極MG、DG、PGは、下から浮遊ゲート電極となるリン(P)ドープの多結晶シリコン膜6が膜厚50nmで形成され、電極間絶縁膜としてのONO(oxide-nitride-oxide)膜7、制御ゲート電極膜となるリン(P)ドープの多結晶シリコン膜8、9が積層された構成である。ONO膜7上に形成された多結晶シリコン膜8、9は、メモリセルトランジスタの各ゲート電極MG間および周辺回路のトランジスタのゲート電極PGを連結するワード線として形成されている。なお、ONO膜7に代えて、NONON(nitride-oxide-nitride-oxide-nitride)膜を用いることもできる。
【0015】
また、周辺回路のトランジスタのゲート電極PGは、ONO膜7に開口部7aが形成され、上下に位置する多結晶シリコン膜6と8とが開口部7aを介して電気的に接続された状態に形成されている。なお、図中、周辺回路領域に形成された広い幅のトレンチ1bに埋め込まれたシリコン酸化膜3の上面には、図示しない他のゲート電極から延出されたONO膜7、多結晶シリコン膜8、9からなる電極が形成されている。
【0016】
多結晶シリコン膜9の上面部分を覆うように層間絶縁膜(ILD;Inter-Layer Dielectric)としてのシリコン酸化膜10が形成されている。ワード線となる多結晶シリコン膜9の端部あるいはシリコン酸化膜3上に形成された多結晶シリコン膜9の上面には、シリコン酸化膜10を貫通するようにコンタクト11が形成されている。シリコン酸化膜10の上面には、コンタクト11に接続される配線層12が形成されている。なお、この構成に加えて、さらに上層には層間絶縁膜としてのシリコン酸化膜および配線層が形成されている。
【0017】
上記構成において、トレンチ1a、1b内に埋め込まれたシリコン酸化膜3は、シリコン基板1の上面に、シラザン結合を有するポリマー(過水素化シラザン)を有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して形成した塗布膜(過水素化シラザン膜)を形成し、その塗布膜に含まれる有機溶媒を蒸発させると共に、後述する各種の処理を低温の条件で実行することにより形成している。これによって低温処理による良質なシリコン酸化膜3として形成したものである。この構成においては、ポリマー膜をシリコン酸化膜に転換するための高温の酸化性雰囲気での熱処理を必要としないため、電気的特性においてもしきい値電圧のシフトが少なく、且つオフリーク電流も低減したものを得ることができる。
【0018】
次に、上記構成の製造工程のうち、シリコン酸化膜3を低温で形成する工程を中心として図2〜図5を参照すると共に、各種特性について図6〜図9を参照して説明する。なお、図2〜図5は、図1に対応した部分の製造過程における模式的な構成を示している。この実施形態においては、NAND型フラッシュメモリ装置において、STI構造の素子分離用絶縁膜となるシリコン酸化膜3に適用したものであり、ポリシラザン膜に紫外線(UV;ultra violet)照射後、温水処理とSPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)処理によるキュアを行い、続いて水蒸気酸化を行うことで、不純物の少ない良質な絶縁膜が埋め込まれた素子分離絶縁膜を実現する例である。
【0019】
まず、図2に示すように、シリコン基板1の上面にトンネル酸化膜となるシリコン熱酸窒化膜5を膜厚8nmで形成する。続いて、浮遊ゲート電極となるリン(P)ドープ多結晶シリコン膜6を膜厚50nmで形成する。さらに、この上面にCMP(chemical mechanical polishing)法による研磨工程でのストッパ材となるシリコン窒化膜13を膜厚60nmで形成する。
【0020】
次に、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE;reactive ion etching)法により、シリコン窒化膜13、多結晶シリコン膜6、シリコン熱酸窒化膜5、シリコン基板1を順次エッチング加工して、所定深さのトレンチ1a、1bを形成する。
【0021】
次に、シリコン基板1の表面全面つまりシリコン基板1上のシリコン窒化膜13の上面およびトレンチ1a、1bの内壁面および底面のそれぞれに、成膜温度が450℃で原料ガスとしてTDMAS(トリジメチルアミノシラン)と酸素(O2)とを用いてALD法によりシリコン酸化膜2を膜厚12nmで形成する。
【0022】
続いて、図3に示すように、ポリシラザン膜14をシリコン基板1の平坦な部分で膜厚が600nmになるようにスピン塗布してトレンチ1a、1b内を完全に埋め込む。ポリシラザン膜14の形成は以下のように行う。平均分子量が1500〜5500の過水素化シラザン(パーハイドロシラザン)ポリマー[(SiH2NH)n]をキシレン、ジブチルエーテル等に分散して過水素化シラザン重合体溶液を生成し、その過水素化シラザン重合体(過水素化ポリシラザン)溶液をスピンコーティング法により、シリコン基板1の表面に塗布する。スピンコーティング法の条件は例えばシリコン基板1の回転速度1000rpm、回転時間30秒、過水素化シラザン重合体溶液の滴下量2ccである。
【0023】
次に塗布膜であるポリシラザン膜14を形成したシリコン基板1をホットプレート上で150℃に加熱し、不活性ガス雰囲気中で3分間ベークすることにより、過水素化シラザン重合体溶液中の溶媒を揮発させてポリシラザン膜14をポリマー膜に転換する。この状態では、膜中には溶媒起因の炭素(C)あるいは炭化水素(CH)が不純物として数原子パーセントから十数原子パーセント程度、ポリシラザンのポリマーに起因する窒素(N)が数十原子パーセント残存している。
【0024】
次に、ポリマー膜に転換したポリシラザン膜14に波長が150nm〜300nmの紫外光(UV)を照射する。紫外光照射によりポリシラザン膜14中のシリコン―窒素(Si−N)結合が解離してポリシラザン膜14は活性な状態に変化する。また、このときシリコン―酸素(Si−O)結合のエネルギーとほぼ等しくなる紫外線の波長は142nmであるため、それよりも長波長側の紫外線を用いないとポリシラザン膜14が転換されることで形成されるシリコン酸化膜3中に紫外線照射ダメージが残存することになるので好ましくない。一方、紫外線の光の波長が300nmよりも長くなると以下に述べるようなポリシラザンの酸化が殆ど起こらないことがわかった。なお紫外光を照射する温度としては室温が望まれ、更にポリシラザン膜14を形成した基板を冷却することが好ましい。これは紫外光照射時の温度が高く、例えば90℃を超えるとポリシラザンからの低分子成分の昇華がおこり、ポリシラザンの機械強度が低下してしまい膜のクラック等の原因になりやすいためである。
【0025】
次に、図4に示すように、ポリシラザン膜14を、50℃以上で且つ80℃未満の温度に保った純水中に30分間浸漬することで酸化する。純水中での酸化工程ではポリシラザン膜14中に水(H2O)を浸透させ、シリコン(Si)のダングリングボンドやシリコン−水素(Si−H)結合を酸化して水酸化シリコン(SiOH)を生成するとともに、シリコン−窒素(Si−N)結合の解離で生じたアンモニアを膜外に排出し膜を緻密化する。このように本処理では水(H2O)を含む50℃以上の溶液であることが重要であり、純水に代えて酸性の水溶液を用いることも可能である。
【0026】
本反応は溶液温度に依存し、溶液温度が10℃低下する毎に拡散及び反応の効率が1/2程度ずつ低下するために、溶液温度が50℃未満では埋め込み工程で要求される500nm以上のポリシラザン膜14の改質には不十分となる。なお、膜中に水(H2O)を導入する前に例えば100℃以上の高温の水蒸気中で加熱することは、残存した不純物の炭素(C)や窒素(N)が膜中で熱拡散し、シリコン基板1の界面でパイルアップして固定電荷形成を促進するので好ましくない。また、80℃以上の純水の使用は、純水の沸騰により均一な反応が阻害されるために好ましくない。したがって、純水の温度は、好ましくは60℃〜70℃の範囲に設定すると良い。また浸漬時間は好ましくは10分〜30分の範囲で行うと良い。
【0027】
図6、図7は、紫外線照射直後のポリシラザン膜(as UV(図中、破線で示す))、紫外線照射後に室温(25℃)で洗浄したポリシラザン膜(UV+25℃Wash(図中、細実線で示す))、紫外線照射後に温水(60℃、70℃)に浸漬したポリシラザン膜(UV+60℃Boil、UV+70℃Boil(図中、一点鎖線、太実線で示す))のそれぞれについて昇温脱離ガス分析(TDS;thermal desorption spectroscopy)を行った結果を示している。
【0028】
この結果、紫外線照射後に温水(60℃、70℃)に浸漬したポリシラザン膜ではTDSのピークが大きく変化し、400℃以下で放出される膜中に吸収した水(H2O)の放出ピーク値が減少し、逆に400℃以上で観測される水酸化シリコン(SiOH)起因の放出ピーク値が大きくなっており、水(H2O(m/z=18))の総放出量も少ないことがわかる。また、この反応は主に温水の温度に依存しており50℃より低温では殆ど効果がないことがわかる。これは前述のようにポリシラザン膜中の水(H2O)の拡散と酸化反応が温水温度に強く依存するためである。すなわち、50℃以上の温水に浸漬する工程は、ポリシラザンの酸化工程であって吸水工程ではない。なお、TDSでは測定前に真空排気を十分行ってから測定を開始するため、単に表面に吸着し、真空排気の際に容易に離脱する水(H2O)は測定されない。以上でポリシラザン膜は1at%程度の窒素(N)を含むシリコン酸化膜3に転換する。
【0029】
次に、前記紫外線照射後に温水処理したポリシラザン膜を100℃以上好ましくは120℃以上200℃以下のSPM(硫酸過酸化水素水混合液)中に15分間浸漬する。SPM温度は100℃以上に達するために、前記紫外線照射後に温水処理したポリシラザン膜14中に浸透した水(H2O)とシリコン(Si)のダングリングボンドやシリコン−水素(Si−H)結合との反応による酸化が促進されるとともに、酸性のSPM中へのアンモニアの吸出しも促進される。なお、SPM温度が200℃を超えて高いとポリシラザン膜が溶解するおそれが生じるため好ましくない。
【0030】
本反応では反応を促進するために100℃以上の薬液が好ましいが、薬液中に水分を含んでいることが重要である。これは水分を含まない薬液の場合、前の温水工程でポリシラザン膜14中に取り込ませた水酸化シリコン(SiOH)が解離して水(H2O)が再度放出されてしまうためである。SPMの場合には過酸化水素の解離によって水分が発生するため、本用途に適している。本処理後にはポリシラザン膜14は0.5at%程度の窒素(N)を含むシリコン酸化膜3へと変化する。但し、トレンチ1aのように狭い幅のメモリセルトランジスタのゲート電極MG部分では、トレンチ1a部分の内部への紫外光が殆ど到達できないために、図4に示しているように、埋め込まれているポリシラザン膜14はまだベーク後に近い状態にある。なお、比較例としてSPM処理を行わないサンプルも作成した。
【0031】
次に、シリコン酸化膜3を水蒸気雰囲気で熱処理を行うことで緻密化するとともに、メモリセル領域のトレンチ1a内のポリシラザン膜14をシリコン酸化膜3に転換する。シリコン酸化膜3中には0.5at%程度の窒素(N)が残存しており、この窒素(N)は紫外線照射の影響でシリコン(Si)と強く結合していないために動きやすい状態にあるので、窒素(N)の拡散が抑制できる300℃以下好ましくは250℃以下で水蒸気を導入し遊離しやすい窒素(N)を酸化したあとに、500℃まで水蒸気中で連続的に昇温して熱処理を行う。以上の処理でシリコン酸化膜3中の窒素濃度は0.1at%以下まで減少し、且つ、シリコン酸化膜3自体が熱処理によって緻密化される。なお、従来技術のものと比較をするために、紫外線照射とウェット処理とを行わず、いきなり水蒸気酸化をおこなった場合のサンプルも作成してデータを測定した。
【0032】
図8に水蒸気酸化の水蒸気導入温度依存性を調べた結果を示す。この図8は、p型のシリコン基板上にポリシラザン膜を形成し、紫外線照射(with UV)/温水+SPM処理後の500℃水蒸気酸化での水蒸気導入温度を様々の条件で行い、キャパシタのフラットバンド電圧のシフトを測定した結果である。これにより、ポリシラザン起因の不純物による固定電荷を評価している。ポリシラザン中の不純物が熱処理中にp型のシリコン基板の表面まで拡散すると固定電荷化するので、フラットバンド電圧のシフトが大きい条件は可動不純物が多いということになる。また、比較例として紫外線照射を行わない場合(without UV)も示した。
【0033】
この結果から、紫外線照射を行った場合(with UV)に、水蒸気導入温度にフラットバンド電圧シフトが依存し、水蒸気導入温度が低い場合は紫外線照射を行わない場合(without UV)に比べて固定電荷が低減されているが、水蒸気導入温度が高い場合は紫外線照射をおこなわない場合に比べても悪化していることがわかる。
【0034】
これは紫外線照射ではシラザン結合が切れて窒素原子(N)が遊離した状態になるため、通常のポリシラザン膜に比べて窒素(N)が酸化により除去しやすい状態にある反面、熱処理中に容易に拡散しやすい状態にあるためである。以上の結果からは水蒸気酸化時の水蒸気導入温度としては300℃以下、好ましくは250℃以下が適していることがわかる。
【0035】
図9は、製造工程の各段階でのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR;fourier transform infrared spectroscopy)測定での赤外吸収のスペクトルを示す。この結果によると、ポリシラザン膜が温水中でほぼ酸化してしまっており、SPM処理以降ではシリコン−酸素(Si−O)ピーク強度が殆ど同じであり、SPM処理終了の段階で酸化反応はほぼ完了していることがわかる。
【0036】
次に、図5に示すように、シリコン酸化膜3を875℃の窒素(N2)アニールにより緻密化してから、CMP法によりシリコン窒化膜13をストッパーとしてシリコン酸化膜3、2を研磨して、トレンチ1a、1b内部にのみ残存せしめる。続いて、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法によって、トレンチ1a、1b内に残存するシリコン酸化膜3を所望の高さまでエッチバックする。次に、ホット燐酸中でシリコン窒化膜13を除去する。これにより、素子分離絶縁膜が形成される。
【0037】
この後、図1に示すように、電極間絶縁膜となるONO膜7、制御ゲート電極となるリン(P)ドープの多結晶シリコン膜8を形成する。次に、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法によってリン(P)ドープ多結晶シリコン膜8およびONO膜7に周辺回路のリン(P)ドープの多結晶シリコン膜6に連通するスリット状の開口部7aを形成する。続いて、シリコン基板1全面にリン(P)ドープの多結晶シリコン膜9を形成し、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法によってリン(P)ドープの多結晶シリコン膜9、8、およびONO膜7、リン(P)ドープの多結晶シリコン膜6を順次加工して、制御ゲート電極および浮遊ゲート電極を分離形成する。以降の工程では層間絶縁膜としてのシリコン酸化膜10を形成し、コンタクト11、配線12などの形成を行なうが、ここでは詳細は省略する。
【0038】
上記のようにしてシリコン酸化膜3を形成した場合のものと、比較のために水蒸気酸化のみで酸化をおこなったものとで、周辺回路のオフリーク電流(Ioff)のゲート幅(W)依存性を測定した結果を次の表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
上記表1に示す結果において、ゲート幅Wが1μm以下では本実施例と比較して従来技術の場合オフリーク電流Ioffが大きく増大していることがわかる。これは活性領域(AA;active area)の幅(=W)の幅が狭くなるほど劣化がおこり、かつNチャンネル型トランジスタにおいて影響が顕著であることからSTI構造の素子分離絶縁膜に正固定電荷が存在するために素子分離絶縁膜近傍の活性領域(AA)でトランジスタのしきい値電圧Vtが低下していることによるものである。そして、SPM処理を行わない場合でも本実施形態のシーケンスでトランジスタのオフリーク電流Ioffが改善するが、SPM処理と組み合わせることで更に良好な結果が得られている。すなわち、不純物拡散の起こり得ない200℃以下の低温で紫外線照射/温水処理/SPM処理等の組み合わせで、固定電荷のもととなる不純物を効率よく除去できたことによるものである。一方、温水のような酸化効果を伴わない室温での洗浄工程を紫外線照射後に追加しても不純物除去効果はなく、そのためトランジスタ特性の改善も得られないことがわかる。
【0041】
なお、本実施形態ではNAND型フラッシュメモリ装置に適用した場合の例を説明したが、これに限らず、チャージトラップ型のメモリや、DRAM(dynamic random access memory)、ロジックデバイス等のSTI構造の素子分離絶縁膜への適用が可能であり、塗布型のポリシラザン膜の良好な埋め込み性を損なうことなく、固定電荷の少ない素子分離絶縁膜のトレンチ内への埋め込みが可能になるので半導体装置の更なる微細化が可能になる。
【0042】
(第2の実施形態)
図10〜図13は、本発明の第2の実施形態を示すもので、2層積層構造の抵抗変化型メモリ装置(ReRAM)の配線間埋め込みにポリシラザン膜を使ってシリコン酸化膜に転換する場合の例を示している。この実施形態では、ポリシラザン膜をシリコン酸化膜に転換する際に、基本的に200℃以下の温度で形成が可能になることで、周辺回路及びセル部のダイオード特性を劣化させることなく、メモリセルの積層が可能になるという利点がある。以下、ポリシラザン膜をシリコン酸化膜に転換する工程を中心に製造工程を概略的に説明する。
【0043】
図10〜図13は、抵抗変化型メモリ装置のメモリセル領域において、直交するビット線方向およびワード線方向のそれぞれの方向に切断した場合の断面を示している。なお、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0044】
まず、図10において、シリコン基板21上に抵抗変化型メモリ装置の周辺回路となるトランジスタ22、トレンチ21aにシリコン酸化膜を埋め込んで形成した素子分離絶縁膜23、層間絶縁膜24、コンタクトプラグ25、26、27、第1の配線層28、第2の配線層29を公知の半導体製造技術によって形成する。
【0045】
次に、図11に示すように、メモリ素子のワード線となるタングステン膜30を膜厚200nmで形成する。続いて抵抗変化素子となるGeSbxTey膜31を膜厚10nm、ヒーターとなるタンタルオキサイド膜32を膜厚2nm、上部電極兼バリアメタルとなる窒化タングステン膜33を膜厚10nm、pinダイオードとなるn+/n−/p+非晶質シリコン積層膜34を膜厚50nm/100nm/50nm、バリアメタルとなる窒化タングステン膜35を膜厚10nm、CMP法による研磨のストッパーとなるタングステン膜36を膜厚50nmでそれぞれ形成する。
【0046】
続いて、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)技術により積層形成したタングステン膜36、窒化タングステン膜35、非晶質シリコン積層膜34、窒化タングステン膜33、タンタルオキサイド膜32、GeSbxTey膜31およびタングステン膜30を帯状をなす形状に一括加工する。
【0047】
次に、図12に示すように、一括加工された前記積層膜間にALD法によりシリコン窒化膜37を膜厚3nmで形成する。続いて、ポリシラザンを原料とするシリコン酸化膜38を形成する。ここで、シリコン酸化膜38の形成方法は第1の実施形態と同様である。すなわち、ポリシラザン膜をスピン塗布し、150℃でベークした後、波長172nmの紫外線を照射する。この後、第1のウエット処理として60〜70℃の温水中で30分間を実施し、続いて、第2のウエット処理としてSPM中で20分の処理を行いポリシラザン膜をシリコン酸化膜38に転換する。
【0048】
次にタングステン膜36をストッパーとして公知のCMP技術でシリコン酸化膜38を平坦化処理する。この後、第1のビット線となるタングステン膜39を膜厚100nm、バリアメタルとなる窒化タングステン膜40を膜厚10nm、p+/n−/n+非晶質シリコン積層膜41を膜厚50nm/100nm/50nm、バリアメタル兼下部電極となる窒化タングステン膜42を膜厚10nm、ヒーターとなるタンタルオキサイド膜43を膜厚2nm、抵抗変化素子となるGeSbxTey膜44を膜厚10nm、CMP処理時のストッパーとなるタングステン膜45を膜厚50nmで形成する。さらに、積層した膜39〜45を公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)技術により一括加工し、更にシリコン酸化膜38及びシリコン酸化膜38間に埋め込まれた積層膜39〜36を一括加工する。
【0049】
次に、図13に示すように、一括加工された積層膜31〜36、39〜45の間に面した側壁部に、一層目と同様にALD法によるシリコン窒化膜46、ポリシラザン膜を塗布して前述と同様の処理を行って形成するシリコン酸化膜47により埋め込む。ポリシラザン膜は、塗布後に紫外線照射、第1のウェット処理、第2のウェット処理を順次行ってシリコン酸化膜47に転換する。この後、シリコン酸化膜47を公知のCMP技術により平坦化する。
【0050】
次に、2本目のワード線となるタングステン膜48を形成し、公知のリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)技術により、タングステン膜48、シリコン酸化膜47およびシリコン酸化膜47間に埋め込まれた積層された膜40〜45を一括加工する。次に一括加工された積層膜40〜45とタングステン膜48の間に、1層目、2層目と同様にしてALD法によるシリコン窒化膜49、ポリシラザン膜を塗布して前述と同様の処理を行って形成するシリコン酸化膜50により埋め込む。ポリシラザン膜は、塗布後に紫外線照射、第1のウェット処理、第2のウェット処理を順次行ってシリコン酸化膜50に転換する。この後、シリコン酸化膜50を公知のCMP技術により平坦化する。
【0051】
次にRTP(Rapid Thermal Processing)技術を用いてn+/n−/p+非晶質シリコン積層膜34、p+/n−/n+非晶質シリコン積層膜41を結晶化すると共に、不純物を活性化する。以上により、2層積層された抵抗変化型メモリセルが形成された。以下、層間絶縁膜51を形成し、アルミニウム配線52、パシベーション膜53を形成することにより、抵抗変化メモリ装置が完成する。
【0052】
なお、本実施例では抵抗変化材料としてGST(GeSbxTey)膜を用いたが、両端に印加された電圧で発生するジュール熱により、その抵抗状態が変わるカルコゲナイド系のGST(GeSbxTey)、窒素(N)ドープのGST、酸素(O)ドープのGST、GeSb、InGexTey等の材料を用いることができる。
【0053】
また、ヒーター材料としてタンタルオキサイドを用いたが、ニオブオキサイド、チタニア等を用いることも可能であり、またヒーターを用いないことも可能である。また、カルコゲナイド系ではないが、両端に印加された電圧によって抵抗値が変わるTiO2、NiO、Tiなどの金属をドープしたNiO、CuO、HfO2、ZrO2、PrxCa1-xMnO3、SrTiO3、FeO等の金属酸化物可変抵抗材料を用いることも可能である。
【0054】
電極材料として本実施例では窒化タングステンを用いたが、上記ヒーター材料と反応して可変抵抗性を損わない材料、例えば窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化タンタル、窒化チタンシリサイド、タンタルカーバイド、チタンシリサイド、タングステンシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、コバルトシリサイド、ニッケル白金シリサイド、白金、ルテニウム、白金ロジウム、イリジウム等を用いることが可能である。
また、ダイオード材料としては、シリコン、ゲルマニウム等の半導体以外にNiO、TiO、CuO、InZnO等の金属酸化物半導体のpn接合、あるいは金属と半導体のショットキー接合を用いるショットキーダイオードを用いることも可能である。
【0055】
表2は、本実施形態における構造を採用したものと、従来技術に相当するポリシラザン膜を600℃の水蒸気酸化でシリコン酸化膜に転換して層間絶縁膜として用いた場合のものについて、ダイオードの順方向電流/逆方向オフリーク電流、書き込み電流/消去電流を比較した結果を示す。
【0056】
【表2】
【0057】
上記の結果から、本実施形態のものの構造では、シリコン酸化膜を形成する工程を低温化できることで、ダイオードの不純物プロファイルが崩れにくくダイオードの整流特性が大幅に改善するため、書き込み/消去電流の低いセルが実現できることがわかる。
【0058】
このように本実施形態の構造では、消去電流を低減することができるため、特に消費電力を抑制したいモバイル用途に適した抵抗変化型メモリ装置を作成することができるという利点がある。
【0059】
(第3の実施形態)
図14〜図17は、本発明の第3の実施形態を示すもので、本実施形態では液晶ディスプレー装置の薄膜トランジスタ(TFT;thin film transistor)形成に必要な絶縁膜の形成工程において適用した場合の例を示している。
【0060】
液晶ディスプレー装置では、ガラス基板上にTFTを形成するため低温での絶縁膜形成が要求されており、通常プラズマCVD(chemical vapor deposition)法が用いられてきたが、プラズマCVD法で形成する場合には、第1に大面積の液晶対応が難しく膜厚均一性確保が困難であり、真空系が必要であるため装置が巨大化しやすい点、第2にプラズマによるTFTへのダメージが入りやすい点等の問題があった。
【0061】
この点、本実施形態ではプラズマを用いることなく比較的良質なシリコン酸化膜を形成できるので、良好なTFTをシンプルな製造工程で実現が可能になるという利点がある。
本実施形態では、特に、当該方法をTFT液晶に適用される半導体装置のシリコン酸化膜に適用した構成について述べる。
【0062】
まず、図14に示すように、基板であるガラス基板61の全面に過水素化ポリシラザン溶液を200nm塗布して第1のポリシラザン膜62を形成する。過水素化ポリシラザン溶液の形成方法は第1の実施形態で示した方法と同様である。次に、ガラス基板61をオーブン中で150℃に加熱し過水素化ポリシラザン塗布膜中の溶媒を揮発させる。続いて、ポリシラザン膜62に波長が150nm〜190nmの範囲の紫外光を照射する。紫外光照射によりポリシラザン膜62中のSi−N結合が解離し、ポリシラザン膜62は活性な状態に変化する。
【0063】
次に、第1のウェット工程として、70℃〜80℃の温度に保った純水中に10分間浸漬することでポリシラザン膜62を酸化する。具体的にはポリシラザン膜62中に水(H2O)を浸透させ、シリコン(Si)のダングリングボンドやSi−H結合を酸化するとともに、Si−N結合の解離で生じたアンモニアを膜外に排出する。
【0064】
続いて、第2のウェット工程として、紫外線照射後に温水処理したポリシラザン膜62をSPM(硫酸過酸化水素水混合液)中に15分間浸漬することでポリシラザン膜をガラス基板からの金属拡散を抑制するためのシリコン酸化膜63へと転換する。
【0065】
次に、ガラス基板61のシリコン酸化膜63の上面全面に非晶質シリコン膜を200nm堆積し、フォトリソグラフィ処理によりパターニングを行う。続いてレーザーアニール処理により、非晶質シリコン膜を結晶化して多結晶シリコン膜64を形成する。
【0066】
次に、多結晶シリコン膜64上にゲート酸化膜となる過水素化ポリシラザンを例えばインクジェット方式で50nm塗布し第2のポリシラザン膜を形成し、第1のポリシラザン膜と同様に波長が150nm〜190nmの範囲の紫外光照射、第1のウェット処理工程、第2のウェット処理工程を行いシリコン酸化膜65を形成する。更に200℃の炉中にガラス基板61を導入し、200℃で水蒸気を導入し30分間の酸化処理を行い、その後に400℃まで水蒸気中で連続的に昇温し400℃で10分間酸化することによりゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜65内に、窒素(N)を0.3at%程度しか含まない高純度なものに形成する。
【0067】
次に、シリコン酸化膜65の上面にゲート電極膜の材料を成膜してパターニング処理を行ってゲート電極膜66を形成する。続いて、イオン注入と活性化処理により多結晶シリコン膜64にソース/ドレインとなる拡散層64a、64bを形成する。次にガラス基板61の上面全面に第3のポリシラザン溶液の塗布膜を400nmで形成し、前述した第1および第2のポリシラザン膜の場合と同様に、波長が150nm〜190nmの範囲の紫外光照射、第1のウェット処理工程、第2のウェット処理工程を行うことによりシリコン酸化膜67を層間絶縁膜として形成する。
【0068】
次に、シリコン酸化膜67にコンタクトホールを形成して、トランジスタのゲート電極68、拡散層64a、64bに連通するコンタクトホールを形成する。続いて、コンタクトホール内を埋め込むようにアルミニウム膜を形成する。続いて、公知のリソグラフィ技術及びエッチング技術によりアルミニウム膜を加工してコンタクトプラグ68、69、70を形成すると共に配線を形成し、TFT液晶のTFTトランジスタが形成される。
【0069】
上記実施形態での過水素化ポリシラザン膜(Coat+Bake)およびこれを本実施形態の形成方法により転換したシリコン酸化膜(UV+Boil+SPM)について膜中の不純物分布を、SIMS(secondary ion mass spectroscopy)により測定した結果を図16、図17に示す。図16では、炭素(C)の濃度分布を示し、図17では、窒素(N)の濃度分布を示している。この結果から、シリコン酸化膜を形成する過程で、高温の熱処理工程を殆ど用いていないにも関わらず、膜中で一様に窒素(N)が酸素(O)に転換され、炭素(C)も減少していることがわかる。なお、基板界面で現れるピークは、SIMS測定起因のピークで実際のピークではない。
【0070】
このような本実施形態によれば、過水素化ポリシラザン膜のベーク温度を、150℃を最高温度として、それ以下の低温で比較的良質のシリコン酸化膜を形成することができるので、低温でトランジスタwo形成することができ、これによってTFTの特性向上を図ることができる。
【0071】
表3は、本実施形態における方法で形成したシリコン酸化膜中の残留炭素(C)濃度と上記トランジスタのしきい値電圧を示す。ここで、比較のために、
(A)TEOS(tetra-ethoxysilane)原料のプラズマCVDで形成した酸化膜を用いる場合、
(B)低温酸化触媒としてアミンを添加して低温(300℃以下)でシリコン酸化膜へ改質できる過水素化ポリシラザンを用いる場合
について酸化膜中の残留炭素(C)濃度とゲート酸化膜の120℃での経時的絶縁膜破壊であるTDDB(time dependent dielectric breakdown)[年]、およびこれらの酸化膜を用いて形成したトランジスタのしきい値電圧を示す。
【0072】
【表3】
【0073】
このように、本実施形態に係る絶縁膜形成方法によれば、不純物として炭素(C)が膜中に残留しやすいアミンを導入しなくても、過水素化ポリシラザンを低温で残留炭素の少ない比較的良質なシリコン酸化膜に改質することができる。そのため、トランジスタのしきい値電圧への炭素起因固定電荷を最小にすることができる。また、低温工程しか存在しないためにガラス基板61からのナトリウム等の金属の拡散を最小限に抑制することが可能であるので、ゲート酸化膜の信頼性改善(より長いTDDB)の実現が可能である。すなわち、本実施形態に係るシリコン酸化膜の形成方法によれば、炭素が膜中に残留しやすいプラズマCVDよりも純度の高い良質なシリコン酸化膜を更に低温で形成することができる。
【0074】
本発明は各実施形態に示した応用例に限定されることなく、過水素化ポリシラザン膜を用いて低温で不純物の少ない良質なシリコン酸化膜を形成する、あるいは埋め込み性のすぐれたシリコン酸化膜を低温で形成する応用への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す模式的断面図
【図2】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その1)
【図3】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その2)
【図4】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その3)
【図5】製造工程の一段階で示す図1相当の模式的断面図(その4)
【図6】各種条件でシリコン酸化膜の昇温脱離ガス分析(TDS)を行った結果(TDS温度を横軸にとったときの強度分布)
【図7】各種条件でシリコン酸化膜の昇温脱離ガス分析(TDS)を行った結果(Boil温度を横軸にとったときのピーク値のデータ)
【図8】水蒸気酸化の水蒸気導入温度依存性をキャパシタのフラットバンド電圧のシフトとして測定した結果を示す図
【図9】製造工程の各段階でのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)測定での赤外吸収のスペクトルを示す図
【図10】本発明の第2の実施形態を示し、製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その1)
【図11】製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その2)
【図12】製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その3)
【図13】製造工程の一段階で互いに直交する平面方向で切断した場合の模式的断面図(その4)
【図14】本発明の第3の実施形態を示し、製造工程の一段階における模式的断面図(その1)
【図15】製造工程の一段階における模式的断面図(その2)
【図16】シリコン酸化膜および過水素化ポリシラザン膜中の炭素分布をSIMSで測定した結果を示す図
【図17】シリコン酸化膜および過水素化ポリシラザン膜中の窒素分布をSIMSで測定した結果を示す図
【符号の説明】
【0076】
図面中、1はシリコン基板(半導体基板)、3はシリコン酸化膜、5はシリコン熱酸窒化膜、6は多結晶シリコン膜、7はONO膜、8、9は多結晶シリコン膜、14は過水素化ポリシラザン膜(ポリマー膜)、21はシリコン基板(半導体基板)、22はトランジスタ、23は素子分離絶縁膜、38、47、50はシリコン酸化膜、61はガラス基板(基板)、62はポリマー膜、63、65、67はシリコン酸化膜である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、
前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程と
を有することを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法において、
前記ポリマー膜に90℃以下の温度で照射する紫外線の波長は、150nm〜300nmの範囲であることを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法において、
前記ポリマー膜をシリコン酸化膜に転換する工程に続いて、
300℃以下の水蒸気雰囲気中で酸化処理を行う工程を実施することを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法において、
前記ポリマー膜をシリコン酸化膜に転換する工程では、
前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬する工程に続いて、100℃以上の水を含有する薬液中へ浸漬する工程を行うことを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項5】
半導体基板にメモリセルトランジスタおよび周辺回路トランジスタを形成してなる不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記半導体基板に、前記メモリセルトランジスタに対応した第1の素子分離用溝および前記周辺回路トランジスタに対応した第2の素子分離用溝を形成する工程と、
前記第1および第2の素子分離用溝内にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、
前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程と
を順次実行することにより、前記第1及び第2の素子分離用溝内に前記シリコン酸化膜を埋め込み形成することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【請求項1】
基板上にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、
前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程と
を有することを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法において、
前記ポリマー膜に90℃以下の温度で照射する紫外線の波長は、150nm〜300nmの範囲であることを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法において、
前記ポリマー膜をシリコン酸化膜に転換する工程に続いて、
300℃以下の水蒸気雰囲気中で酸化処理を行う工程を実施することを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法において、
前記ポリマー膜をシリコン酸化膜に転換する工程では、
前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬する工程に続いて、100℃以上の水を含有する薬液中へ浸漬する工程を行うことを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項5】
半導体基板にメモリセルトランジスタおよび周辺回路トランジスタを形成してなる不揮発性半導体記憶装置の製造方法であって、
前記半導体基板に、前記メモリセルトランジスタに対応した第1の素子分離用溝および前記周辺回路トランジスタに対応した第2の素子分離用溝を形成する工程と、
前記第1および第2の素子分離用溝内にシラザン結合を有するポリマーを有機溶媒に溶かした塗布剤を塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜に含まれる前記有機溶媒を気化させてポリマー膜を形成する工程と、
前記ポリマー膜に90℃以下の温度で紫外線を照射する工程と、
前記紫外線を照射したポリマー膜を50℃以上80℃未満の温度の純水または水溶液中に浸漬することによってシリコン酸化膜に転換する工程と
を順次実行することにより、前記第1及び第2の素子分離用溝内に前記シリコン酸化膜を埋め込み形成することを特徴とする不揮発性半導体記憶装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−80709(P2010−80709A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247958(P2008−247958)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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