説明

半導体装置の製造方法

【課題】サリサイドプロセスにより金属シリサイド層を形成した半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】全反応方式のサリサイドプロセスを用いず、部分反応方式のサリサイドプロセスによりゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの表面に金属シリサイド層41を形成する。金属シリサイド層41を形成する際の熱処理では、ランプまたはレーザを用いたアニール装置ではなく、カーボンヒータを用いた熱伝導型アニール装置を用いて半導体ウエハを熱処理することにより、少ないサーマルバジェットで精度良く薄い金属シリサイド層41を形成し、最初の熱処理によって金属シリサイド層41内にNiSiの微結晶を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、金属シリサイド層を有する半導体素子の製造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化が進むにつれて、電界効果トランジスタ(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)はスケーリング則に従い微細化されるが、ゲート電極やソース・ドレイン領域の抵抗が増大して電界効果トランジスタを微細化しても高速動作が得られないという問題が生じる。そこで、ゲート電極を構成する導電膜およびソース・ドレイン領域を構成する半導体領域の表面に自己整合により低抵抗の金属シリサイド層、例えばニッケルシリサイド層またはコバルトシリサイド層などを形成することにより、ゲート電極やソース・ドレイン領域を低抵抗化するサリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術が検討されている。
【0003】
特開2004−521486号公報(特許文献1)には、2段階アニール方法により、シリコン電極のエッジに形成されるシリサイドの厚さを実質的に電極の中央の厚さと等しくできる技術が記載されている。具体的には、レーザアニール、ランプ加熱または放射アニールを用いたアニール装置による第1の加熱処理(250〜350℃)によってNiSiおよびNiSiをシリサイド層内に形成し、第2の加熱処理(350〜700℃)によってシリサイド層内にニッケルモノシリサイドを形成することが記載されており、第1の加熱処理によってシリサイド層内にNiSiの微結晶を形成する旨の記載はない。また、第1の加熱処理の前に半導体基板上に形成する金属膜としてNi合金膜を形成することを記載しているが、Ni−Pt膜などの具体的な合金膜は例示されておらず、シリサイド層を形成する加熱処理の際に熱伝導アニール装置を用いる旨の記載はない。
【0004】
特開2007−299899号公報(特許文献2)には、シリサイド層の表面酸化を抑制し、シリサイド層のシート抵抗を上昇させずにニッケルモノシリサイドを含むシリサイド層を形成する技術が記載されている。具体的には、半導体基板上にNi膜およびTiN膜を順次形成した後、シンター加熱方式により第1の温度処理(200〜350℃)によってNiSiをシリサイド層内に形成し、同じくシンター加熱方式により第2の温度処理(370〜500℃)によってシリサイド層内にニッケルモノシリサイドを形成することが記載されており、第1の温度処理によってシリサイド層内にNiSiの微結晶を形成する旨の記載はない。また、ここでは第1の温度処理の前に半導体基板上に形成する金属膜をNi膜としており、Ni−Pt膜などのNi合金膜を形成する旨の記載はない。
【0005】
特開2009−176975号公報(特許文献3)には、全反応方式のサリサイドプロセスによりニッケルプラチナシリサイド層を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−521486号公報
【特許文献2】特開2007−299899号公報
【特許文献3】特開2009−176975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体装置の微細化に伴い、電界効果トランジスタのソース・ドレイン領域およびゲート電極の上面に形成されるシリサイド層の薄膜化が求められてきている。しかし、シリサイド層が薄膜化するとシリサイド層の安定性が物理的に不安定になり、半導体基板内においてシリサイド層が異常成長し、ゲート電極の下部の半導体基板内に主にNiSiを含むシリサイド層が形成される。この場合、接合リーク電流に起因するリーク欠陥が増加し、半導体装置の信頼性が損なわれる虞があるため、シリサイド層を薄膜化することは困難であった。
【0008】
近年ではシリサイド層を形成するサリサイドプロセスでは、半導体基板上に形成した金属膜をソース領域、ドレイン領域およびゲート電極の一部と反応させてシリサイド層を形成するため、二回に分けてアニール処理(熱処理)する方法が一般的となっている。この場合、二回目のアニール処理工程である2ndアニール処理では、最初のアニール処理工程である1stアニール処理よりも高い温度で半導体基板を加熱する。
【0009】
特許文献3に示すように、従来のサリサイドプロセスではランプを用いたアニール装置内においてソース・ドレイン領域およびゲート電極の上面に形成された金属膜を全て反応させてシリサイド層を形成する全反応方式のサリサイドプロセスが用いられていた。しかし、この方法は長い加熱時間を必要とするため、長時間の加熱によりシリサイド層を構成する結晶の大きさ(グレインサイズ)が大きくなり、シリサイド層が半導体基板内にまで異常成長する原因の1つとなっている。
【0010】
本発明の第1の目的は、半導体装置の性能を向上させることができる技術を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、半導体装置の信頼性を向上させることができる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
すなわち、本願発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板に半導体領域を形成してから前記半導体基板上に金属膜を形成し、第1の熱処理を行って前記金属膜と前記半導体領域とを反応させて金属シリサイド層を形成した後、未反応の前記金属膜を除去し、前記第1の熱処理よりも熱処理温度が高い第2の熱処理を行うもので、前記第1の熱処理の昇温レートは、250〜500℃/秒であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
代表的な実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0017】
また、ソース・ドレイン領域の表面に金属シリサイド層が形成された電界効果トランジスタを有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図11】本発明の一実施の形態における熱伝導型アニール装置の一部を破断して示す断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態における熱伝導型アニール装置の一部を示す平面図である。
【図13】図12のA−A線における断面図である。
【図14】本発明の一実施の形態における熱伝導型アニール装置の一部を示す断面図である。
【図15】熱伝導型アニール装置を示す断面図である。
【図16】比較例として示すバッチ式アニール装置の断面図である。
【図17】比較例として示すランプ式アニール装置の断面図である。
【図18】(a)は比較例として示すランプ式アニール装置による熱処理における半導体ウエハの温度と時間の関係を示したグラフである。(b)は本実施の形態の第1の熱処理における半導体ウエハの温度と時間の関係を示したグラフである。
【図19】図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図22】比較例として示す半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図25】比較例として示す半導体装置の一部を拡大して示す要部断面図である。
【図26】加熱時間に対するNi−Ptと半導体基板との反応量の関係を示すグラフである。
【図27】(a)は図26と同様の条件において熱処理中の半導体装置の一部を拡大して示す要部断面図である。(b)は図26と同様の条件において熱処理中の半導体装置の一部を拡大して示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0021】
本実施の形態の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図1〜図8は、本発明の一実施の形態である半導体装置、例えばCMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0022】
まず、図1に示すように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。次に、この半導体基板1を熱酸化してその表面に例えば厚さ11nm程度の絶縁膜2を形成した後、その上層にCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、例えば厚さ90nm程度の絶縁膜3を堆積する。絶縁膜2は酸化シリコンなどからなり、絶縁膜3は窒化シリコン膜などからなる。それから、図2に示すように、フォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして絶縁膜3、絶縁膜2および半導体基板1を順次ドライエッチングすることにより、素子分離形成予定領域の半導体基板1に、例えば深さ300nm程度の溝(素子分離用の溝)4aを形成する。溝4aは、素子分離用の溝であり、すなわち後述する素子分離領域4形成用の溝である。
【0023】
次に、図3に示すように、溝4aの内部(側壁および底部)を含む半導体基板1の主面上に、例えば厚み10nm程度の絶縁膜4bを形成する。それから、半導体基板1の主面上(すなわち絶縁膜4b上)に、溝4a内を埋めるように、絶縁膜4cをCVD法などにより形成(堆積)する。
【0024】
絶縁膜4bは、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。絶縁膜4bが酸窒化シリコン膜の場合には、絶縁膜4b形成工程以降の熱処理によって溝4aの側壁が酸化することによる体積膨張を防止でき、半導体基板1に働く圧縮応力を低減できる効果がある。
【0025】
絶縁膜4cは、HDP−CVD(High Density Plasma CVD:高密度プラズマCVD)法により成膜された酸化シリコン膜、またはO−TEOS酸化膜などである。なお、O−TEOS酸化膜とは、O(オゾン)およびTEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン、Tetra Ethyl Ortho Silicateとも言う)を原料ガス(ソースガス)として用いて熱CVD法により形成した酸化シリコン膜である。
【0026】
それから、半導体基板1を例えば1150℃程度で熱処理することにより、溝4aに埋め込んだ絶縁膜4cを焼き締める。焼き締め前の状態では、O−TEOS酸化膜よりもHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の方が緻密である。このため、絶縁膜4cがO−TEOS酸化膜の場合、焼き締めによる絶縁膜4cの収縮により、半導体基板1に働く圧縮応力を低減できる効果がある。一方、絶縁膜4cがHDP−CVD法により成膜された酸化シリコン膜の場合には、絶縁膜4cがO−TEOS酸化膜の場合に比べて、焼き締め時の絶縁膜4cの収縮が少ないため、素子分離領域4によって半導体基板1に働く圧縮応力が大きくなる。
【0027】
次に、図4に示すように、絶縁膜4cをCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により研磨して絶縁膜3を露出させ、熱リン酸などを用いたウエットエッチングにより絶縁膜3を除去した後、HFなどにより溝4aの外部の絶縁膜4cおよび絶縁膜2を除去し、溝4aの内部に絶縁膜4b,4cを残すことにより、素子分離領域(素子分離)4を形成する。
【0028】
このようにして、溝4a内に埋め込まれた絶縁膜4b,4cからなる素子分離領域4が形成される。本実施の形態では、素子分離領域4は、LOCOS(Local Oxidization of Silicon)法ではなく、好ましくはSTI(Shallow Trench Isolation)法により形成される。すなわち、本実施の形態の素子分離領域4は、好ましくは、半導体基板1に形成された素子分離用の溝4a内に埋め込まれた絶縁体(ここでは絶縁膜4b,4c)からなる。後述するnチャネル型MISFETQn(すなわちnチャネル型MISFETQnを構成するゲート絶縁膜7、ゲート電極8aおよびソース・ドレイン用のn型半導体領域9aおよびn型半導体領域9b)は、素子分離領域4で規定された(囲まれた)活性領域に形成される。また、後述するpチャネル型MISFETQp(すなわちpチャネル型MISFETQpを構成するゲート絶縁膜7、ゲート電極8bおよびソース・ドレイン用のp型半導体領域10aおよびp型半導体領域10b)も、素子分離領域4で規定された(囲まれた)活性領域に形成される。
【0029】
次に、図5に示すように、半導体基板1の主面から所定の深さに渡ってp型ウエル5およびn型ウエル6を形成する。p型ウエル5は、pチャネル型MISFET形成予定領域を覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、nチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。また、n型ウエル6は、nチャネル型MISFET形成予定領域を覆う他のフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして、pチャネル型MISFET形成予定領域の半導体基板1に例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。
【0030】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板1の表面を清浄化(洗浄)した後、半導体基板1の表面(すなわちp型ウエル5およびn型ウエル6の表面)上にゲート絶縁膜7を形成する。ゲート絶縁膜7は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。
【0031】
次に、半導体基板1上(すなわちp型ウエル5およびn型ウエル6のゲート絶縁膜7上)に、ゲート電極形成用の導体膜として、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜8を形成する。シリコン膜8のうちのnチャネル型MISFET形成予定領域(後述するゲート電極8aとなる領域)は、フォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のn型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜8のうちのpチャネル型MISFET形成予定領域(後述するゲート電極8bとなる領域)は、他のフォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のp型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜8は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。
【0032】
次に、図6に示すように、シリコン膜8をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極8a,8bを形成する。
【0033】
nチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極8aは、n型の不純物を導入した多結晶シリコン(n型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、p型ウエル5上にゲート絶縁膜7を介して形成される。すなわち、ゲート電極8aは、p型ウエル5のゲート絶縁膜7上に形成される。また、pチャネル型MISFETのゲート電極となるゲート電極8bは、p型の不純物を導入した多結晶シリコン(p型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、n型ウエル6上にゲート絶縁膜7を介して形成される。すなわち、ゲート電極8bは、n型ウエル6のゲート絶縁膜7上に形成される。ゲート電極8a,8bのゲート長は、必要に応じて変更できるが、例えば50nm程度とすることができる。
【0034】
次に、図7に示すように、p型ウエル5のゲート電極8aの両側の領域にリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)n型半導体領域9aを形成し、n型ウエル6のゲート電極8bの両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)p型半導体領域10aを形成する。n型半導体領域9aおよびp型半導体領域10aの深さ(接合深さ)は、例えば30nm程度とすることができる。
【0035】
次に、ゲート電極8a,8bの側壁上に、絶縁膜として、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンあるいはそれら絶縁膜の積層膜などからなる側壁スペーサまたはサイドウォール(側壁絶縁膜)11を形成する。サイドウォール11は、例えば、半導体基板1上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜を堆積し、この酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜をRIE(Reactive Ion Etching)法などにより異方性エッチングすることによって形成することができる。
【0036】
サイドウォール11の形成後、(一対の)n型半導体領域9b(ソース、ドレイン領域)を、例えば、p型ウエル5のゲート電極8aおよびサイドウォール11の両側の領域にリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより形成する。例えば、リン(P)を5×1015/cm程度、ヒ素(As)を4×1015/cm程度注入して形成する。また、(一対の)p型半導体領域10b(ソース、ドレイン領域)を、例えば、n型ウエル6のゲート電極8bおよびサイドウォール11の両側の領域にホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより形成する。例えば、ホウ素(B)を4×1015/cm程度注入して形成する。n型半導体領域9bを先に形成しても、あるいはp型半導体領域10bを先に形成してもよい。イオン注入後、導入した不純物の活性化のためのアニール処理を、例えば1050℃程度のスパイクアニール処理にて行うこともできる。n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの深さ(接合深さ)は、例えば80nm程度とすることができる。
【0037】
型半導体領域9bは、n型半導体領域9aよりも不純物濃度が高く、p型半導体領域10bは、p型半導体領域10aよりも不純物濃度が高い。これにより、nチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n型半導体領域(不純物拡散層)9bおよびn型半導体領域9aにより形成され、pチャネル型MISFETのソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p型半導体領域(不純物拡散層)10bおよびp型半導体領域10aにより形成される。従って、nチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域は、LDD(Lightly doped Drain)構造を有している。n型半導体領域9aは、ゲート電極8aに対して自己整合的に形成され、n型半導体領域9bは、ゲート電極8aの側壁上に形成されたサイドウォール11に対して自己整合的に形成される。p型半導体領域10aは、ゲート電極8bに対して自己整合的に形成され、p型半導体領域10bは、ゲート電極8bの側壁上に形成されたサイドウォール11に対して自己整合的に形成される。
【0038】
このようにして、p型ウエル5に、電界効果トランジスタとしてnチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qnが形成される。また、n型ウエル6に、電界効果トランジスタとしてpチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qpが形成される。これにより、図7の構造が得られる。nチャネル型MISFETQnは、nチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができ、pチャネル型MISFETQpは、pチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができる。また、n型半導体領域9bは、nチャネル型MISFETQnのソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができ、p型半導体領域10bは、pチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用の半導体領域とみなすことができる。
【0039】
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、nチャネル型MISFETQnのゲート電極8aおよびソース・ドレイン領域(ここではn型半導体領域9b)の表面と、pチャネル型MISFETQpのゲート電極8bおよびソース・ドレイン領域(ここではp型半導体領域10b)の表面とに、低抵抗の金属シリサイド層(後述の金属シリサイド層41に対応)を形成する。本実施の形態におけるサリサイドプロセスは部分反応方式のサリサイドプロセスを用い、以下に、この金属シリサイド層の形成工程について説明する。
【0040】
図8は、図7に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。図9、図10、図19〜図21は、図8に続く半導体装置の製造工程中における要部断面図である。
【0041】
上記のようにして図7の構造が得られた後、図8に示すように、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの表面を露出させてから、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10b上を含む半導体基板1の主面(全面)上に金属膜12を、例えばスパッタリング法を用いて形成(堆積)する。すなわち、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10b上を含む半導体基板1上に、ゲート電極8a,8bを覆うように、金属膜12が形成される。
【0042】
また、金属膜12の堆積工程の前に、HFガス、NFガス、NHガス又はHガスのうち少なくともいずれか1つを用いたドライクリーニング処理を行って、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの表面の自然酸化膜を除去した後、半導体基板1を大気中(酸素含有雰囲気中)にさらすことなく、金属膜12の堆積工程を行えば、より好ましい。
【0043】
金属膜12は、例えばNi(ニッケル)−Pt(白金)合金膜(NiとPtの合金膜)からなり、その厚さ(堆積膜厚)は、例えば15〜40nm程度とすることができる。ここでは、金属膜12内のPt(白金)の濃度は例えば3〜10at%とする。
【0044】
このようにして金属膜12を形成した後、図9に示すように、半導体基板1に第1の熱処理(1stアニール処理)を施す。ここで、第1の熱処理は、250〜300℃で行うことが好ましい。例えば、後述する枚葉式の熱伝導型アニール装置を用い、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中でRTA(Rapid Thermal Anneal)法を用いて、280℃程度の温度にて30秒以程度の熱処理を半導体基板1に施すことにより、第1の熱処理を行うことができる。このとき、熱処理を行う目標の温度(ここでは280℃)よりも低い温度で金属膜12が加熱される時間をできるだけ短くし、半導体基板1の温度を早く目標温度に到達させるために、昇温レート(単位時間当たりに上昇する温度の度合い)を高く(250〜300℃/秒程度)設定すればより好ましい。なお、後述する熱伝導型のアニール装置は1秒間に半導体ウエハの温度を500℃程度に上昇させることができるので、第1の熱処理の昇温レートは250〜500℃/秒としても良い。
【0045】
第1の熱処理により、図9に示すように、ゲート電極8a,8bを構成する多結晶シリコン膜と金属膜12、およびn型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bを構成する単結晶シリコンと金属膜12を選択的に反応させて、金属・半導体反応層である金属シリサイド層41を形成する。このとき、金属膜12内のNi−Pt合金膜は、半導体基板1(ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの各上部)に接する底面側から反対側の上面方向に向かって5〜8nmの範囲のNi−Pt合金がゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの各上部と反応する。これにより、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの各上部に、PtおよびNiSi(ダイニッケルシリサイド)を含むメタルリッチ相であって、NiSi(ニッケルモノシリサイド)の微結晶(結晶の核となるもの)が形成された金属シリサイド層41を形成する。なお、ここで言うメタルリッチ相とは、NiSiのようにSiの原子と金属原子とが1:1で化合してる化合物とは違い、NiSiまたはNiSiのように、Siに対して多くの金属原子が化合している化合物からなる相のことを指す。
【0046】
すなわち、図8に示す工程において半導体基板1上に15〜40nmの厚さで形成された金属膜12が、第1の熱処理において、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの各上部において反応して図9に示す金属シリサイド層41となるのは、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの各上部の金属膜12の全膜厚の内の一部である。このため、図9に示すように、金属シリサイド層41が形成された半導体基板1上の金属膜12は、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの各上部において、他の領域の金属膜12の膜厚に比べて膜厚が薄くなっている。このように、金属膜12の膜厚の一部のみを必要量だけ反応させて金属シリサイド層41を形成するサイリサイドプロセスを、ここでは部分反応方式のサリサイドプロセスと呼ぶ。
【0047】
なお、本実施の形態では金属膜12中にPtを添加させているが、これは、金属シリサイド層としてニッケルシリサイド層を用いる場合、ニッケルシリサイド層(金属シリサイド層41)中にPtなどを添加することにより、形成された金属シリサイド層の凝集を減らし、形成された金属シリサイド層において、NiSi結晶の異常成長を抑制することができるためである。また、金属膜12中にPtを添加することで、第1の熱処理によって形成される金属シリサイド層41内に、より微細な結晶粒径を有するNiSiの結晶が形成されやすくなる。
【0048】
このように、本実施の形態の第1の熱処理では、半導体基板1上に形成した金属膜12を、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの各上部において全て反応させる全反応方式のサリサイドプロセスではなく、金属膜12の膜厚の一部のみを必要量だけ反応させて金属シリサイド層41を形成する部分反応方式のサリサイドプロセスを用いる。全反応方式のサリサイドプロセスについては、後に図22〜図24を用いて説明する。
【0049】
後述する全反応方式のサリサイドプロセスでは、第1の熱処理の前に形成する金属膜12の膜厚により、金属膜12とゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bとの反応量(金属シリサイド層41の膜厚)を制御する。これに対し、本実施の形態で用いる部分反応方式のサリサイドプロセスでは、第1の熱処理において半導体基板1を加熱する温度および時間によって金属膜12とゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bとの反応量(金属シリサイド層41の膜厚)を制御することが可能である。このため、全反応方式に比べ、部分反応方式のサリサイドプロセスは15nm以下の薄い膜厚を有するシリサイド層を形成することが容易であるという特徴がある。また、全反応方式ではなく部分反応方式のサリサイドプロセスを用いることにより、第1の熱処理により形成される金属シリサイド層41内に含まれるPt(白金)をより高濃度で金属シリサイド層41内に含ませることができる。
【0050】
次に、図10に示すように、ウェット洗浄処理を行うことにより、未反応の金属膜12(すなわちゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bまたはp型半導体領域10bと反応しなかった金属膜12)とを除去する。この際、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの表面上に金属シリサイド層41を残存させる。ウェット洗浄処理は、硫酸を用いたウェット洗浄、またはSPM(Sulfuric acid Hydrogen
Peroxide Mixture:硫酸と過酸化水素水との混合液)を用いたウェット洗浄などにより行うことができる。
【0051】
その後、半導体基板1に第2の熱処理(2ndアニール処理)を施す。第2の熱処理は、上記第1の熱処理の熱処理温度よりも高い熱処理温度で行う。例えば不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で半導体基板1にRTA法を用い、500℃〜600℃程度で、5秒程度の短時間の熱処理(スパイクアニール)または30秒程度の熱処理(ソークアニール)を施すことにより、第2の熱処理を行うことができる。本実施の形態では、第2の熱処理も第1の熱処理と同様に枚葉式の熱伝導型アニール装置を用いて行う。
【0052】
第2の熱処理を行うことで、NiSiまたはNiSiからなるメタルリッチ相を主に含む金属シリサイド層41の全体をNiSi相に相変化することができる。なお、NiSiは、NiSiおよびNiSiよりも低い抵抗率を有し、第2の熱処理以降も(半導体装置の製造終了まで)金属シリサイド層41は低抵抗のNiSiのまま維持され、製造された半導体装置では(例えば半導体基板1を個片化して半導体チップとなった状態でも)、金属シリサイド層41は低抵抗のNiSiとなっている。
【0053】
なお、15nm程度の膜厚を有する金属シリサイド層41を形成する本実施の形態では、第2の熱処理後の金属シリサイド層41中のNiSiの平均な結晶粒径はnチャネル型MISFETQnでは100nm以下、pチャネル型MISFETQpでは200nm以下となる。すなわち、本実施の形態の金属シリサイド層41中に形成されるNiSiの微結晶の平均的な結晶粒径は20〜30nm程度であるため、第1の熱処理によって形成されるNiSiの結晶粒径は、第2の熱処理後のNiSiの結晶粒径の3分の1以下となる。なお、ここで言う結晶粒径とは、半導体基板1の主面に沿う方向における結晶の直径のことである。
【0054】
ここで、本実施の形態の第1および第2の熱処理に用いる枚葉式の熱伝導型アニール装置について、図11〜図14を用いて説明をする。図11〜図14に示す熱伝導型アニール装置は枚葉式であるため、1つの炉の中で複数枚の半導体ウエハを同時にアニールするバッチ式のアニール装置とは異なり、1つのアニール装置のアニール炉内に1枚ずつ半導体ウエハを配置して熱処理を行うものである。
【0055】
図11は熱伝導型アニール装置の一部を破断して主要部を示す平面図であり、熱伝導型アニール装置20は、半導体ウエハを熱伝導型アニール装置20内に運搬するロードポート21、熱伝導型アニール装置20内において半導体ウエハを移動させるロボットアーム22、スワッパー23およびキャリアプレート24を有し、半導体ウエハを加熱するリアクタ25を有している。熱伝導型アニール装置20によって熱処理を行う工程では、まずロードポートによって半導体ウエハが熱伝導型アニール装置20内に運び込まれた後、ロボットアーム22によって、半導体ウエハはロードポート上から、対向する2枚の板からなるスワッパー23上に移される。その後、半導体ウエハはスワッパー23によってキャリアプレート24上に配置され、キャリアプレート24は半導体ウエハを搭載したまま、2枚のカーボンヒータからなるリアクタ25同士の間に移動する。その後、リアクタ25によって半導体ウエハを熱処理した後、半導体ウエハはキャリアプレート24上において冷却され、前述した運搬手順とは逆の手順により、半導体ウエハはキャリアプレート24、スワッパー23およびロボットアーム22によってロードポート21上に戻され、ロードポート21によって熱伝導型アニール装置20の外に運び出される。
【0056】
ここで、キャリアプレート24を拡大して示す平面図を図12に示す。また、図12のキャリアプレート24のA−A線における断面図を図13に示す。図12および図13に示すように、キャリアプレート24は2本のバー26に沿ってスライドして移動することが可能な円形のプレートであり、外側のカーボンリング27、カーボンリング27からキャリアプレート24の中央に向かって延びるサポートピン28およびサポートピン28上であってカーボンリング27よりもキャリアプレートの内側に配置されたガードリング29を有している。半導体ウエハ30を運搬、熱処理する際はガードリング29の内側のサポートピン上に半導体ウエハ30を配置する。ここで、ガードリング29は半導体ウエハ30の位置がズレるのを防止し、また、半導体ウエハが効率よく加熱するために半導体ウエハ30の側方から熱が逃げるのを防ぐ壁の役割を果たすものである。
【0057】
図14に示すように、本実施の形態で用いる熱伝導型アニール装置20は、上下に可動する2枚の導体であるカーボンヒータ(リアクタ25)を有する。熱処理の際は、N(窒素)の雰囲気中において、ベルヌーイチャックによってキャリアプレート24(図示せず)に非接触保持(チャック保持)される半導体ウエハ30を上下(半導体ウエハ30の主面側および裏面側)から2枚のリアクタ25により挟み込むことで半導体ウエハ30の主面および裏面の近傍に配置し、電流によってリアクタ25を発熱させ、半導体ウエハ30を加熱して熱処理する。すなわち、2枚のリアクタ25は熱伝導型アニール装置20内のキャリアプレート24上に配置された半導体ウエハ30の主面に対して垂直な方向である上下方向に移動させることが可能であり、半導体ウエハ30が2枚のリアクタ25の間に配置された後に、半導体ウエハ30の主面および裏面に各リアクタ25をそれぞれ接近させて熱処理を行う。
【0058】
熱伝導型アニール装置20では、リアクタ25が上下に可動して半導体ウエハ30の主面および裏面のそれぞれに近接するため、図14に示す半導体ウエハ30の主面と、半導体ウエハ30の主面に対向するリアクタ25との距離Lを150μm程度にまで近付けることができ、半導体ウエハ30の裏面も同様に、対向するリアクタ25との距離を150μm程度に近付けることができる。リアクタ25と半導体ウエハ30とを限りなく近付けることにより、半導体ウエハ30の加熱を開始する時点から高い昇温レートで加熱することができ、短時間で半導体ウエハ30の温度を目標温度(ここでは280℃)に到達させることができる。
【0059】
また、2枚のリアクタ25同士の間に近接して半導体ウエハ30が配置されているため、リアクタ25の温度を半導体ウエハ30の温度としてみなすことができる。このため、熱伝導型アニール装置20では半導体ウエハ30自体の温度を計測しておらず、半導体ウエハ30はリアクタ25に流す電流値などから算出されたリアクタ25の温度と同じ温度を有しているものとし、半導体ウエハ30の温度を制御している。また、この熱伝導型アニール装置20は枚葉式の小型のアニール装置であるため、アニール装置内のリアクタ25を発熱したままの状態で保持し、高温のリアクタ25同士の間において半導体ウエハ30を出し入れできる。このため、熱処理の際にリアクタ25が半導体ウエハ30を加熱するための所望の温度に達するまでの時間を省き、リアクタ25間に配置された時点から半導体ウエハ30を急速に加熱することができる。また、均一に加熱されたリアクタ25を半導体ウエハ30に近接させて熱処理を行うことにより、半導体ウエハ30の主面および裏面の全面を均一に加熱することができる。
【0060】
このように、可動式のカーボンヒータを用いて近距離で半導体ウエハ30を熱することができ、また、既に高温に達しているアニール装置内に半導体ウエハ30を入れることができるため、本実施の形態の第1および第2の熱処理に用いる枚葉式の熱伝導型アニール装置20では、高い昇温レートで急速に半導体ウエハ30を加熱することが可能である。第1の熱処理においては、半導体ウエハ30の温度を、室温(常温)からアニール処理の目標温度である250℃〜300℃まで1秒もかからず加熱することが可能であるため、昇温レートとしては、250〜300℃/秒以上となる。また、第2の熱処理においては、半導体ウエハ30の温度をアニール処理の目標温度である500℃〜600℃まで1秒程度で加熱することが可能であるため、昇温レートは、500℃/秒程度となる。
【0061】
また、この熱伝導型アニール装置20では、半導体ウエハ30を加熱する際に、半導体ウエハ30の温度にオーバーシュートが発生しないという特徴がある。すなわち、例えば第1の熱処理の目標温度を280℃とした場合に、半導体ウエハ30を加熱し始め、半導体ウエハ30の温度が目標温度である280℃に達した後に、半導体ウエハ30の温度を280℃よりも上昇させず、半導体ウエハ30の温度が280℃に達した後も一定の温度で所望の時間ソークアニールすることができる。これは、半導体ウエハ30を加熱するリアクタ25の温度を予め半導体ウエハ30を熱処理する目標温度と同じ温度で保った状態で半導体ウエハ30の加熱を開始し、熱処理中にリアクタ25の温度がそれ以上上がることがないためである。よって、熱伝導型アニール装置20では半導体ウエハ30の温度を精密に制御することが可能であり、余計な加熱時間が無いため、図9に示す金属シリサイド層41内のNiSiの結晶粒径が大きくなることを防ぎ、結晶粒径が20〜30nm程度の微結晶の状態で金属シリサイド層41内にNiSiを形成することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では可動式の2枚のリアクタ25により半導体ウエハ30を挟み込み、半導体ウエハ30の間近から熱処理を施す熱伝導型アニール装置20を用いたが、同じく枚葉式の熱伝導型アニール装置であって、図15に示すような、装置内に固定された複数枚の固定ヒータ31を備えた熱伝導型アニール装置32を用いても良い。図15は熱伝導型アニール装置32の断面図であり、熱伝導型アニール装置32は、装置内に複数枚の冷却プレート33、ロボットアーム34および固定ヒータ31を有するアニール装置である。なお、熱伝導型アニール装置32の内部はチャンバ(図示せず)によってN雰囲気に保たれる。
【0063】
熱処理の際は、まず冷却プレート33同士の間に半導体ウエハ30を熱伝導型アニール装置32の外から入れて配置した後、ロボットアーム34によって半導体ウエハ30を固定ヒータ31同士の間に配置し、固定ヒータ31によって半導体ウエハ30を熱処理する。その後はロボットアーム34によって半導体ウエハ30を固定ヒータ31同士の間から冷却プレート33同士の間に移動させ、冷却プレートによって半導体ウエハ30を冷却した後、冷却プレート上から熱伝導型アニール装置32の外部に半導体ウエハ30を取り出す。
【0064】
この熱伝導型アニール装置32では、固定ヒータ31自体は動かず、半導体ウエハ30を移動させて複数枚の固定ヒータ31同士の間に挿入し、熱処理を施した後に半導体ウエハ30を取り出すため、図11〜図14に示して説明した熱伝導型アニール装置20ほどヒータを半導体ウエハ30に近付けることはできない。しかし、図15に示す熱伝導型アニール装置32は枚葉式の小型のアニール炉を有するため、固定ヒータ31を熱した状態で半導体ウエハ30を出し入れでき、高い昇温レートで半導体ウエハ30を急速に加熱することができるため、第1および第2の熱処理では図15に示す熱伝導型アニール装置32を用いても構わない。なお、図15に示す固定ヒータ31は、例えば主にアルミニウムからなり、抵抗加熱(ジュール熱)によって発熱するヒータである。
【0065】
ただし、比較例として図16に示すバッチ式アニール装置35および比較例として図17に示すランプ式アニール装置36は本実施の形態における第1および第2の熱処理において適用しない。
【0066】
図16に示すバッチ式アニール装置35は、複数枚の半導体ウエハ30を配置したラック37を、抵抗加熱により発熱する複数枚の固定ヒータ38の間に固定ヒータ38の下方から挿入して複数枚の半導体ウエハ30を加熱するバッチ式の熱伝導型アニール装置である。しかし、このバッチ式アニール装置35は大型のアニール炉を有する装置であるため、固定ヒータ38が高温を保持している状態では、半導体ウエハ30を配置したラック37をバッチ式アニール装置35に出し入れすることができない。このため、半導体ウエハ30を配置したラック37を固定ヒータ38同士の間に挿入した後に固定ヒータ38を昇温させるので、固定ヒータ38の昇温には長い時間を要し、所望の温度によって半導体ウエハ30を加熱し始めるまでに、目標温度よりも低く制御性の悪い温度で半導体ウエハ30を加熱する時間が長く生ずる。
【0067】
また、図17に示すランプ式アニール装置36では、前述したバッチ式アニール装置35と同様に、半導体ウエハ30の温度を熱処理に必要な所望の温度にまで上昇させるのに時間がかかるという問題がある。これは、ランプ式アニール装置36の場合、半導体ウエハ30の温度を放射温度計62で測っていることと、半導体ウエハ30をランプ式アニール装置内に配置する際にランプ(ヒータ)60の温度を高温で保つことができないことに起因している。
【0068】
ランプ式アニール装置36は、図17に示すように、装置内の底部にウエハ台61を有し、装置内であって半導体ウエハ30の主面側の上方には半導体ウエハ30を加熱するための複数のランプ(タングステンハロゲンランプ)60を有し、装置内の底部であってウエハ台61の下部には半導体ウエハ30の温度を計測するための複数の放射温度計62を有しているものである。なお、ランプ式アニール装置36内において、半導体ウエハ30の裏面側の下方には半導体ウエハ30を加熱するものは配置されていない。ランプ式アニール装置36の種類としては、例えばハロゲンランプまたはフラッシュランプがある。
【0069】
ここで、本実施の形態の第1の熱処理においてランプ式アニール装置36を用いて半導体ウエハ30を加熱した場合の半導体ウエハ30の温度と時間の関係を表わしたグラフを図18(a)に示す。第1の熱処理において金属シリサイド層41を形成するためには250〜300℃で30秒程度熱処理する必要があるため、図18(a)に示すグラフでは、半導体ウエハ30の温度を約280℃に保ち30秒間ソークアニールしている。
【0070】
図17に示すように、ランプ式アニール装置36では半導体ウエハ30の温度を計測するために放射温度計62を用いており、通常、半導体ウエハ30の表面に反射した赤外線を検知して半導体ウエハ30の温度を測る。しかし、半導体ウエハ30の温度が250℃以下の場合では赤外線の周波数が、赤外線が半導体ウエハ30を透過する周波数となるため、放射温度計62は半導体ウエハ30の温度が常温の状態から260℃程度まで上昇するまで半導体ウエハ30の温度を検知することができない。このため、図18(a)のグラフに示すように、ランプ式アニール装置36では半導体ウエハ30の温度の測定が可能となる260℃程度で一旦半導体ウエハ30の温度を一定に保つために30〜60秒かけて260℃程度でソークアニールを行う必要がある。その後、第1の熱処理において必要な温度である280℃まで半導体ウエハ30を加熱する。260℃程度でソークアニールを行った後のランプ式アニール装置36の昇温レートは高く、260℃の半導体ウエハ30を280℃まで加熱するのに1秒もかからないため、ここでは昇温レートは約20℃/秒とする。
【0071】
また、図18(a)のグラフに示すように、ランプ式アニール装置36で半導体ウエハ30を熱処理した場合、半導体ウエハ30の温度が目標温度である280℃に達した後に280℃よりも高い温度に達する現象(オーバーシュート)が起きている。これは、ランプ式アニール装置36では、放射温度計62で半導体ウエハ30の温度を測り、半導体ウエハ30の温度が目標温度に達した時にランプ60による加熱を停止して半導体ウエハ30の温度を目標温度に近付けるためである。このとき、半導体ウエハ30の温度が目標温度に達した時にランプ60による加熱を停止しても、半導体ウエハ30の温度上昇がすぐには止まらないため、オーバーシュートが発生する。また、ランプ式アニール装置36では、半導体ウエハ30の温度がオーバーシュートした後、半導体ウエハ30の温度が下がるのを待ち、半導体ウエハ30の温度が目標温度にまで下がった時にまたランプ60を発熱させて半導体ウエハ30の加熱を開始することで半導体の温度を目標温度付近で保ち、ソークアニールを行う。このように、最初に半導体ウエハ30の温度が目標温度に達した後は、しばらく半導体ウエハ30の温度が目標温度よりも高くなったり低くなったりすることを繰り返し、温度を一定に保つことができないため、ランプ式アニール装置36では精度良く半導体ウエハ30を熱処理することができない。
【0072】
このように、オーバーシュートが起こるアニール装置では半導体ウエハ30を熱処理する際の加熱温度を精度良く制御することができない。これは、前述したランプ式アニール装置36に限らず、レーザによって半導体ウエハ30を熱処理するレーザ式アニール装置も同様であり、半導体ウエハ30を精度良く熱処理することができない。これは、レーザ式アニール装置も、放射温度計によって半導体ウエハ30の温度を測定し、その測定値から加熱プロセス中に温度調整を行う点でランプ式アニール装置36と同様であるためである。本実施の形態において使用する熱伝導型アニール装置20では2枚のリアクタ25をあらかじめ熱処理を行う目標温度まで加熱した状態で待機させ、その間に半導体ウエハ30を挿入する。すなわち、装置内に前記半導体基板を入れる時点で、既に前記半導体装置を加熱するヒータが前記半導体装置を熱処理するための目標の温度に達しているため、半導体ウエハ30の温度がリアクタ25の温度以上に昇温されることはなく、オーバーシュートは起こさずに高い昇温レートで半導体ウエハ30を熱処理することができる。
【0073】
例えば、比較例であるランプ式アニール装置36を用いて第1の熱処理を行った場合、前記昇温工程を経て半導体ウエハ30を280℃に加熱した後、半導体ウエハ30の温度を280℃に保ったまま30秒ほどソークアニールを行うことで、金属シリサイド層41を形成する。しかし、前述したように、ランプ式アニール装置36を用いた場合は半導体ウエハ30の温度が常温から所望の熱処理温度(ここでは280℃)に達するまでに長い時間を要する。更に、半導体ウエハ30の温度が250℃以下である時間帯および半導体ウエハ30の温度を260℃で一定に保つソークアニールが終了するまでの時間帯は半導体ウエハ30の温度を制御することができない時間帯(非制御領域)となる。
【0074】
また、ランプ式アニール装置36は半導体ウエハ30の表面を均一に加熱することが難しいため、熱処理の際は、ほぼ円形の形状を有する半導体ウエハ30の主面の中心であって半導体ウエハ30の主面に垂直に交わる方向を軸として半導体ウエハ30を回転させながら熱処理を行う。これは、半導体ウエハ30の全面を均一に加熱するためであるが、ランプ式アニール装置36では半導体ウエハ30を回転させるため、半導体ウエハ30をベルヌーイチャック、真空チャックまたは機械的保持などの方法により固定していない。
【0075】
前述したように、ランプ式アニール装置36では半導体ウエハ30の温度が目標温度に到達するまでに比較的長い時間を要するが、その時間を短縮する目的で昇温レート更に上げ、短時間で急速に半導体ウエハ30を加熱しようとすると、急激な加熱によって回転中の半導体ウエハ30の表面温度にムラが生じることで振動し、半導体ウエハ30が跳ねてウエハ台61から脱落する虞がある。この場合、半導体ウエハ30の表面が破損し、また、半導体ウエハ30の全面が均一に熱処理されなくなる。
【0076】
以上に述べたように、ランプ式アニール装置36では高い昇温レートで半導体ウエハ30を加熱すると半導体ウエハ30が跳ねる問題がある。また、ランプ式アニール装置36では半導体ウエハ30の加熱中にオーバーシュートが発生するため、高い昇温レートで半導体ウエハ30を加熱すると、さらに大きなオーバーシュートが起こり、半導体ウエハ30の熱処理を精度良く行うことができない。
【0077】
また、第1の熱処理において金属膜12と半導体基板1とは200℃以上の温度で反応し、金属シリサイド層41を形成する。しかし、ランプ式アニール装置36を用いて第1の熱処理を行った場合、半導体ウエハ30の温度が200℃以上となる非制御領域においても金属シリサイド層41が形成され、その後に半導体ウエハ30が目標温度に達するまでに長い時間を必要とする。
【0078】
以上のことから、ランプ式アニール装置36は熱伝導型アニール装置20のように半導体ウエハ30をオーバーシュートを起こさず、かつ急速に加熱することができず、熱処理の際に長い加熱時間を必要とするため、サーマルバジェット(熱履歴)が大きくなり、第1の熱処理において形成される金属シリサイド層41内のNiSiの結晶粒径が大きくなる。具体的には、熱伝導型アニール装置20を用いて第1の熱処理を行った場合、第1の熱処理により形成される金属シリサイド層41内には、平均的な結晶粒径が20〜30nm程度のNiSiの微結晶が形成されるが、ランプ式アニール装置36により第1の熱処理を行った場合では、形成されるシリサイド層内のNiSiの結晶粒径は数μm程度に大きくなる。また、ランプ式アニール装置36を用いて熱処理を行った場合、シリサイド層内の結晶が大きく成長しやすいことから、半導体基板1のチャネル内にシリサイド層が異常成長しやすくなる問題がある。
【0079】
これに対し、図11〜図14を用いて説明した本実施の形態の第1および第2の熱処理で使用する熱伝導型アニール装置20では、半導体ウエハ30の温度を計測して半導体ウエハ30の温度が目標温度に達した際にリアクタ25の温度を昇降させて調節するのではなく、あらかじめリアクタ25の温度を半導体ウエハ30の熱処理に必要な目標温度と同じ温度に熱した状態で半導体ウエハ30の加熱を開始する。このため、上述したように、半導体ウエハ30の温度がリアクタ25より高い温度に上がることはなく、オーバーシュートが起こることがない。
【0080】
また、熱伝導型アニール装置20では半導体ウエハ30の温度を計測しておらず、リアクタ25を構成するカーボンヒータの温度はカーボンヒータに流す電流値などから計算され、熱処理の目標温度を保持するように設定されている。このため、前述したように、半導体ウエハ30の温度は熱伝導型アニール装置20のリアクタ25の温度と同じ温度を有しているとみなすことができるため、熱伝導型アニール装置20を用いた本実施の形態における第1および第2の熱処理では半導体ウエハ30の温度を制御できない非制御領域が存在しない。
【0081】
ここで、本実施の形態の第1の熱処理において使用する熱伝導型アニール装置20を用いて半導体ウエハ30を熱処理する際の、半導体ウエハ30の温度と時間の関係を表わしたグラフを図18(b)に示す。図18(b)に示すように、熱伝導型アニール装置20によって半導体ウエハ30を熱処理した際の昇温レートは250℃〜300℃/秒程度であり、短時間で半導体ウエハ30が目標の温度(約280℃)に達する。
【0082】
このように、熱処理において半導体ウエハ30を短時間で目標の温度まで加熱し、ソークアニール時以外の加熱時間を短くすれば、サーマルバジェット(熱履歴)を小さくし、形成する金属シリサイド層41内のNiSiの結晶粒径を小さく抑えることができる。
【0083】
以上に述べたように、本実施の形態のように、金属シリサイド層41の異常成長を防ぎ、15nm以下の低抵抗率の金属シリサイド層41を形成する場合、第1および第2の熱処理において熱伝導型アニール装置20を用い、また、部分反応方式のサリサイドプロセスを用いることは非常に有利である。
【0084】
このようにして、本実施の形態では熱伝導型アニール装置20を用いて第1および第2の熱処理を行い、nチャネル型MISFETQnのゲート電極8aおよびソース・ドレイン領域(n型半導体領域9b)の表面(上層部)と、pチャネル型MISFETQpのゲート電極8bおよびソース・ドレイン領域(p型半導体領域10b)の表面(上層部)とに、NiSiおよびPtからなる金属シリサイド層41を形成する。また、半導体基板1と反応する金属膜12の膜厚によるが、反応する金属膜12の膜厚が例えば8nm程度の場合、反応後に形成される金属シリサイド層41の膜厚は、例えば15nm程度である。
【0085】
次に、図19に示すように、半導体基板1の主面上に絶縁膜42を形成する。すなわち、ゲート電極8a,8bを覆うように、金属シリサイド層41上を含む半導体基板1上に絶縁膜42を形成する。絶縁膜42は例えば窒化シリコン膜からなり、成膜温度(基板温度)450℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。それから、絶縁膜42上に絶縁膜42よりも厚い絶縁膜43を形成する。絶縁膜43は例えば酸化シリコン膜などからなり、TEOSを用いて成膜温度450℃程度のプラズマCVD法などにより形成することができる。これにより、絶縁膜42,43からなる層間絶縁膜が形成される。その後、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨するなどして、絶縁膜43の上面を平坦化する。下地段差に起因して絶縁膜42の表面に凹凸形状が形成されていても、絶縁膜43の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜を得ることができる。
【0086】
次に、図20に示すように、絶縁膜43上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜43,42をドライエッチングすることにより、絶縁膜42,43にコンタクトホール(貫通孔、孔)44を形成する。この際、まず絶縁膜42に比較して絶縁膜43がエッチングされやすい条件で絶縁膜43のドライエッチングを行い、絶縁膜42をエッチングストッパ膜として機能させることで、絶縁膜43にコンタクトホール44を形成してから、絶縁膜43に比較して絶縁膜42がエッチングされやすい条件でコンタクトホール44の底部の絶縁膜42をドライエッチングして除去する。コンタクトホール44の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの表面上の金属シリサイド層41の一部や、ゲート電極8a,8bの表面上の金属シリサイド層41の一部などが露出される。
【0087】
次に、コンタクトホール44内に、タングステン(W)などからなるプラグ(接続用導体部、埋め込みプラグ、埋め込み導体部)45を形成する。プラグ45を形成するには、例えば、コンタクトホール44の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜43上に、成膜温度(基板温度)450℃程度のプラズマCVD法によりバリア導体膜45a(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜45bをCVD法などによってバリア導体膜45a上にコンタクトホール44を埋めるように形成し、絶縁膜43上の不要な主導体膜45bおよびバリア導体膜45aをCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグ45を形成することができる。ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bまたはp型半導体領域10b上に形成されたプラグ45は、その底部でゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bまたはp型半導体領域10bの表面上の金属シリサイド層41と接して、電気的に接続される。
【0088】
次に、図21に示すように、プラグ45が埋め込まれた絶縁膜43上に、ストッパ絶縁膜51および配線形成用の絶縁膜52を順次形成する。ストッパ絶縁膜51は絶縁膜52への溝加工の際にエッチングストッパとなる膜であり、絶縁膜52に対してエッチング選択比を有する材料を用いる。ストッパ絶縁膜51は、例えばプラズマCVD法により形成される窒化シリコン膜とし、絶縁膜52は、例えばプラズマCVD法により形成される酸化シリコン膜とすることができる。なお、ストッパ絶縁膜51と絶縁膜52には次に説明する第1層目の配線が形成される。
【0089】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線を形成する。まず、レジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜52およびストッパ絶縁膜51の所定の領域に配線溝53を形成した後、半導体基板1の主面上(すなわち配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜52上)にバリア導体膜(バリアメタル膜)54を形成する。バリア導体膜54は、例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜などを用いることができる。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜54上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成する。銅めっき膜により配線溝53の内部を埋め込む。それから、配線溝53以外の領域の銅めっき膜、シード層およびバリア導体膜54をCMP法により除去して、銅を主導電材料とする第1層目の配線55を形成する。配線55は、プラグ45を介してnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用のn型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bやゲート電極8a,8bなどと電気的に接続されている。その後、デュアルダマシン法により第2層目の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。以上により、本実施の形態の半導体装置を完成する。
【0090】
次に、本実施の形態の効果について、より詳細に説明する。図22〜図24は、比較例として示す半導体装置の製造工程中の要部断面図である。図25は、比較例の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、図24に対応する工程段階のnチャネル型MISFETが形成された領域が示されている。
【0091】
図22〜図25に比較例として示す半導体装置は、本実施の形態の金属シリサイド層41に相当するNiSi層141aおよびNiSi層141bが、本実施の形態とは異なりランプ式アニール装置36を用いた全反応方式のサリサイドプロセスにより形成されている以外は、本実施の形態の半導体装置と同様にして製造されている。
【0092】
比較例の半導体装置を製造するには、本実施の形態の上記図7に相当する構造が得られた後、図22に示すように、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10b上を含む半導体基板1の主面上にNi膜112(本実施の形態の金属膜12に相当するもの)を堆積させる。ここで、比較例において本実施の形態の金属シリサイド層41と同様の厚さの金属シリサイド層を半導体基板1の表面に形成する場合は、Ni膜112は、その膜厚が図8に示した金属膜12の膜厚よりも薄くなるように形成する。これは、全反応方式のサリサイドプロセスを用いた場合、熱処理の前に形成するNi膜112の膜厚によって熱処理後に形成される金属シリサイド層の厚さが決まるためであり、全反応方式のサリサイドプロセスにおいて、前述した部分反応方式のサリサイドプロセスで形成した金属膜12のように厚い膜を形成して熱処理を行うと、必要以上に厚い金属シリサイド層が形成されてしまう。
【0093】
その後、図17に示したランプ式アニール装置36内においてRTA法で350℃以下(ここでは280℃程度とする)の温度で一度目の熱処理を30秒程度行うことで、図23に示すように、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10b(を構成するシリコン)とNi膜112とを選択的に反応させて、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの表面にNiSi層141aを形成する。なお、上記した一度目の熱処理は本実施の形態の第1の熱処理に相当する工程である。
【0094】
ここで、比較例では全反応方式のサリサイドプロセスを用いているため、ゲート電極8a,8b上、n型半導体領域9b上およびp型半導体領域10b上に形成されたNi膜112は、前記一度目の熱処理によって全てゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bのそれぞれと反応し、サイドウォール11の表面および素子分離領域4上に未反応のNi膜112が残る。すなわち、Ni膜112はゲート電極8a,8b上、n型半導体領域9b上およびp型半導体領域10b上以外の領域に残り、ゲート電極8a,8b上、n型半導体領域9b上およびp型半導体領域10b上に形成されていたNi膜112は、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bと反応してNiSi層141aを形成する。NiSi層141aは主にNiSiおよびNiSiを含むメタルリッチ相であるが、結晶粒径が数μm程度のNiSiの結晶も形成されている。
【0095】
次に、図24に示すように、ウェット洗浄処理を行うことにより、未反応のNi膜112とを除去してから、図17に示すランプ式アニール装置36によりRTA法で300℃以上650℃以下の二度目の熱処理を30秒程度行う。これにより、NiSi層141aと、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bのシリコン(Si)とを、この二度目の熱処理で更に反応させて(NiSi+Si→2NiSiの反応をさせて)、NiSiより安定で低抵抗率のNiSiからなるNiSi層141bをゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10bの表面上に形成する。なお、上記した二度目の熱処理は本実施の形態の第2の熱処理に相当する工程である。また、上記した熱処理による反応で形成されたNiSiは、更に加熱された場合、熱反応によりNiSiになる。
【0096】
このように、比較例では一度目の熱処理で、NiSiを主に含み結晶粒径の大きいNiSiを含む層(NiSi層141a)を形成し、このNiSiをその後の二度目の熱処理でNiSiからなる層(NiSi層141b)に変化させる。その後、比較例の半導体装置でも、本実施の形態と同様に、絶縁膜42,43、コンタクトホール44、プラグ45、ストッパ絶縁膜51、絶縁膜52および配線55を形成するが、ここではその図示および説明は省略する。以上により、比較例の半導体装置が製造される。
【0097】
比較例で示した全反応方式のサリサイドプロセスは半導体基板1上に形成するNi膜112の膜厚によりNiSi層141bの膜厚を制御するものであるが、この方法はNi膜112の膜厚の精度によりNiSi層141bの膜厚がばらつきやすい。これに対し、本実施の形態では精度良く熱処理の温度および加熱時間を管理することが可能な熱伝導式アニール装置20を用い、かつ熱処理の時間および温度によって金属シリサイド層41の膜厚を制御する部分反応方式のサリサイドプロセスを用いているため、膜厚が15nm程度の金属シリサイド層41であってもばらつきなく精度の良い膜厚で金属シリサイド層41を形成することができる。
【0098】
また、本発明者らが、上記のようにして製造した比較例の半導体装置を調べたところ、NiSi層141bからチャネル部に向かってNiSiが異常成長しやすいことが分かった。
【0099】
図25では、NiSiが異常成長しやすい領域を、NiSi異常成長領域141cとして模式的に示している。このようなNiSi異常成長領域141cの発生は、本発明者らの実験(半導体装置の断面観察および断面の組成分析など)により確認された。そして、NiSi層141bからチャネル部にNiSiが異常成長していると、MISFETのソース・ドレイン領域間のリーク電流が増大し、ソース・ドレイン領域の拡散抵抗が増大しデバイスの収率(歩留まり)が低下することも分かった。
【0100】
比較例のようにランプ式アニール装置36を用いて全反応方式のサリサイドプロセスによりNiSi層141bを形成した場合、NiSi層141bからNiSi異常成長領域141cがnチャネル型MISFETのチャネル領域に向かって形成されやすくなり、リーク電流が発生しやすくなる。特に、比較例の方法で形成するNiSi層141bの膜厚が約22nm以下の場合、NiSi層141bの膜厚を薄くする程、このような異常成長が形成されやすくなり、リーク欠陥の発生数が多くなることが本発明者らによって確認されている。これは、約22nm以下にNiSi層141bの膜厚を薄くすると、シリサイド層の体積が小さくなるために熱によるNi膜112とn型半導体領域9b、p型半導体領域10bおよびゲート電極8a、8bとの反応を進みやすくなり、更に結晶の成長しやすくなるためである。このとき、一度目の熱処理において形成されるNiSiの結晶粒径が大きければ、より異常成長の発生が顕著となる。
【0101】
そこで、本実施の形態では、上述したように、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10b上を含む半導体基板1の主面上に金属膜12を堆積してから熱伝導型アニール装置20により第1の熱処理を行い、この第1の熱処理により、NiSiの微結晶を含む金属シリサイド層41が形成されるようにする。すなわち、第1の熱処理で、ゲート電極8a,8b、n型半導体領域9bおよびp型半導体領域10b(を構成するシリコン)と金属膜12を選択的に反応させて金属シリサイド層41を形成するが、第1の熱処理を行った段階で、金属シリサイド層41をNiSi(ダイニッケルシリサイド)やNiSi(ニッケルダイシリサイド)相のメタルリッチ相内に、NiSi(ニッケルモノシリサイド)の微結晶が含まれる層とする。
【0102】
ここで、金属シリサイド層41内にNiSiの微結晶または微結晶よりも結晶粒径の大きい結晶が形成される原理を、図18(a)、(b)、図26および図27(a)、(b)を用いて説明する。図26は200℃以上の温度で半導体基板を熱処理した際の加熱時間に対する金属膜内のNi−Ptと半導体基板との反応量を関係を示すグラフである。また、図27(a)、(b)は図26と同様の条件において熱処理中のpチャネル型MOSFETのp型半導体領域10bの上面に形成された金属シリサイド層70および金属膜72の近傍を拡大して示す要部断面図である。図27(a)は熱処理中の反応初期の金属シリサイド層70を示し、図27(b)は図27(a)よりも長い時間加熱された反応後半の金属シリサイド層70を示している。
【0103】
200℃以上の熱処理を行った際、図26に示す領域FRと領域ARがあり、それぞれNiの拡散係数がことなる。領域FRでは、金属シリサイド層はNiSiメタルリッチ相とその中に形成されるNiSiの微結晶(NiSiの核)とで構成され、領域ARでは、金属シリサイド層は大きく結晶成長したNiSiとメタルリッチ相とで構成されるために拡散係数が異なる。NiSi微結晶は、臨界核形成の自由エネルギーを超えない限りNiSiの結晶として大きく成長しないが、図26に示す領域ARのように一度臨界の自由エネルギーを超えるとNiSiの結晶として結晶粒径が大きく成長する。
【0104】
従って、熱処理工程中において加熱開始からあまり時間の経っていない反応初期(図26に示す領域FR)ではNi原子はNiSiメタルリッチ相を拡散する拡散係数は大きく、加熱開始から長い時間の経った反応後半(図26に示す領域AR)ではNiSiの結晶が成長し、NiSiメタルリッチ相を拡散係数は小さくなる。すなわち、図27(a)に示すように、熱処理中の反応初期ではNiSiメタルリッチ相73を含む金属シリサイド層70内のNiSi結晶71の結晶粒径は数十nm程度の微結晶であるが、図27(b)に示すように、熱処理中の反応後半では金属シリサイド層70内のNiSi結晶71の結晶粒径は、大きいものでは数μmにまで成長している。
【0105】
このことから、長時間熱処理を行う程NiSiの結晶粒径は大きくなることがわかる。すなわち、第1の熱処理において一度成長したNiSiの粒径はその後小さくなることはなく、第2の熱処理にてさらに大きなNiSiの結晶が形成される。一方、第1の熱処理にてNiSiの微結晶を形成した状態で第2の熱処理を行えば、第2の熱処理後に結晶粒径の小さいNiSiが形成することができる。つまり、本実施の形態の第1の熱処理では図27(a)の状態まで反応を進めたところで第1の熱処理を終了するが、比較例の一度目の熱処理では図27(b)の状態にまで反応が進み、大きな結晶粒径を有するNiSiを形成した時点で一度目の熱処理を終了することになる。
【0106】
このように、第1の熱処理においてNiSiの微結晶を形成するためには、NiSiの臨界核形成の自由エネルギーを超えない低温で、かつ比較的短い時間で熱処理を行う必要がある。図18(a)に示すように、ランプ型アニール装置36は260℃付近の非制御領域が存在するのに対し、熱伝導型アニール装置20では18(b)に示すように非制御領域は存在せず、サーマルバジェットが小さくなるため、NiSiの臨界核形成の自由エネルギーを超えない低温で、かつ比較的短い時間で熱処理を行うことができる。
【0107】
本実施の形態では、第1の熱処理の後に第2の熱処理を行うことで、金属シリサイド層41をNiSi相とするが、第1の熱処理でNiSiの結晶の成長を抑制しているため、本実施の形態の第1の熱処理後に金属シリサイド層41内に形成されるNiSiの微結晶の結晶粒径は、比較例の一度目の熱処理後におけるNiSi層141a内に形成されるNiSiの結晶よりも結晶粒径が極めて小さい。これは、比較例における一度目の熱処理で形成されるNiSiが、ランプ式アニール装置36により必要以上に長い時間加熱されているためである。本実施の形態では第1の熱処理において熱伝導型アニール装置20を用いて結晶粒径の小さいNiSiの微結晶を形成しているため、第2の熱処理後の金属シリサイド層41内のNiSiの結晶粒径も、比較例の第2の熱処理後のNiSi層141b内のNiSiの結晶粒径より小さいものとなる。
【0108】
また、部分反応方式のサリサイドプロセスは熱処理の温度および時間によってシリサイド層の膜厚を制御することができるため、熱伝導型アニール装置20を用いれば、半導体基板上に形成する金属膜の膜厚によってシリサイド層の膜厚を制御する全反応方式のサリサイドプロセスよりも、シリサイド層の薄膜化において膜厚を精度よく制御できるため有利である。これは、ランプ式アニール装置36は熱処理における温度管理が難しく、加熱時間が長くなるためであり、このようなランプ式アニール装置36は加熱時間の精度が求められる部分反応式のサリサイドプロセスには不向きである。
【0109】
また、比較例のように長時間の加熱によりNiSiの結晶が大きく成長するような場合においてNiSi異常成長領域141cは形成されやすくなるが、これに対し、ニッケルシリサイドはシリサイド層内のNiSiの結晶粒径を小さくすることで物理的に安定し、異常成長を抑えることができる。本実施の形態では金属シリサイド層41内のニッケルシリサイドの結晶が大きく成長することを防ぐことで、NiSi異常成長領域141cgが形成されることを防ぎ、また、それによりリーク電流の発生を防ぐことで半導体装置の信頼性を向上することを可能としている。また、これにより約22nm以下の膜厚を有する金属シリサイド層41を物理的に安定した状態で形成することができる。このため、15nm程度の膜厚を有する金属シリサイド層41であっても膜厚を精度良く制御して形成できるため、MISFETの微細化を可能としており、また、微細化により半導体装置の動作速度を向上させることができ、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0110】
また、金属膜12が、Ni膜またはNi合金膜の場合、特に、Ni(ニッケル)膜、Ni−Pt(ニッケル−白金)合金膜、Ni−Pd(ニッケル−パラジウム)合金膜、Ni−Y(ニッケル−イットリウム)合金膜、Ni−Yb(ニッケル−イッテルビウム)合金膜、Ni−Er(ニッケル−エルビウム)合金膜またはNi-ランタノイド合金膜である場合に、本実施の形態を適用すれば、効果が大きい。特に、金属膜12をNi−Pt合金膜すれば、Ptは金属シリサイド層41内に形成されるNiSiの結晶粒径を小さくすることができる。
【0111】
また、図25に示すようなNiSi層141bからチャネル部へのNiSi異常成長領域141cは、pチャネル型のMISFETよりもnチャネル型のMISFETで形成されやすい。n型シリコン領域よりもp型シリコン領域の方が、より低い温度でNiとSiの反応が進んでおり、n型シリコン領域よりもp型シリコン領域の方が、Niが拡散しやすいと考えられる。このため、NiSi異常成長領域141cはn型ウエル6よりもNiが拡散しやすいp型ウエル5で生じやすく、本実施の形態を適用したときの金属シリサイド層41からチャネル部へのNiSiの異常成長を防止できる効果は、pチャネル型MISFETQpよりもnチャネル型MISFETQnにおいて、より大きくなる。
【0112】
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、金属シリサイド層を有する半導体素子を備えた半導体装置の製造技術に適用して有効である。
【符号の説明】
【0114】
1 半導体基板
2 絶縁膜
3 絶縁膜
4 素子分離領域
4a 溝
4b 絶縁膜
4c 絶縁膜
5 p型ウエル
6 n型ウエル
7 ゲート絶縁膜
8 シリコン膜
8a,8b ゲート電極
9a n型半導体領域
9b n型半導体領域
10a p型半導体領域
10b p型半導体領域
11 サイドウォール
12、72 金属膜
20、32 熱伝導型アニール装置
21 ロードポート
22、34 ロボットアーム
23 スワッパー
24 キャリアプレート
25 リアクタ
26 バー
27 カーボンリング
28 サポートピン
29 ガードリング
30 半導体ウエハ
31、38 固定ヒータ
33 冷却プレート
35 バッチ式アニール装置
36 ランプ式アニール装置
37 ラック
41 金属シリサイド層
42、43、52 絶縁膜
44 コンタクトホール
45 プラグ
45a バリア導体膜
45b 主導体膜
51 ストッパ絶縁膜
53 配線溝
54 バリア導体膜
55 配線
60 ランプ
61 ウエハ台
62 放射温度計
70 金属シリサイド層
71 NiSi結晶
73 NiSiメタルリッチ相
112 Ni膜
141a NiSi層
141b NiSi層
141c NiSi異常成長領域
Qn nチャネル型MISFET
Qp pチャネル型MISFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体基板を準備する工程、
(b)前記半導体基板に半導体領域を形成する工程、
(c)前記半導体領域上を含む前記半導体基板上に金属膜を形成する工程、
(d)第1の熱処理を行って前記金属膜と前記半導体領域とを選択的に反応させて前記半導体領域の上部に金属シリサイド層を形成する工程、
(e)前記(d)工程後に、未反応の前記金属膜を除去し、前記半導体領域上に前記金属シリサイド層を残す工程、
(f)前記(e)工程後に、前記第1の熱処理よりも熱処理温度が高い第2の熱処理を行う工程、
(g)前記(f)工程後に、前記金属シリサイド層上を含む前記半導体基板上に絶縁膜を形成する工程、
を有し、
前記(d)工程の前記第1の熱処理の昇温レートは、250〜500℃/秒であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記(d)工程の前記第1の熱処理において熱処理を行うアニール装置は、前記アニール装置内に前記半導体基板を入れる時点で、既に前記半導体装置を加熱するヒータが前記半導体装置を熱処理するための目標の温度に達していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記(d)工程の前記第1の熱処理において熱処理を行うアニール装置は、前記半導体基板の主面側および裏面側のそれぞれの近傍に導体を配置し、前記導体に電流を流して前記導体を発熱させることにより前記半導体基板を熱処理するものであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記各導体は前記アニール装置内に配置された前記半導体基板の主面に対して垂直な方向に移動することが可能であり、前記半導体基板が前記アニール装置内に配置された後に、前記半導体基板の主面および裏面に前記各導体をそれぞれ接近させて熱処理するものであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記(d)工程の前記第1の熱処理において熱処理を行うアニール装置は、カーボンヒータまたは抵抗加熱によって熱処理を行うものであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記(d)工程の前記第1の熱処理で形成される前記金属シリサイド層は、NiSiを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記(d)工程の前記第1の熱処理において熱処理を行うアニール装置は、枚葉式のアニール装置であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記(d)工程では、前記半導体領域上の前記金属膜の膜厚の一部を前記半導体領域と反応させて前記金属シリサイド層を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記(d)工程の前記第1の熱処理では、前記半導体基板の温度が熱処理を行う温度より高い温度になるオーバーシュートが起こらないことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記(d)工程の前記第1の熱処理によって形成される前記金属シリサイド層内のNiSiの結晶粒径は、前記(f)工程の前記第2の熱処理後の前記金属シリサイド層内のNiSiの結晶粒径の3分の1以下であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記(b)工程後であって前記(c)工程の前に、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成し、
前記(c)工程では、前記半導体基板上に前記金属膜を形成すると同時に前記ゲート電極上に前記金属膜を形成し、
前記(d)工程では、前記ゲート電極上の前記金属膜と前記ゲート電極とを反応させて前記ゲート電極の上部に前記金属シリサイド層を形成し、
前記(d)工程では、前記ゲート電極上の未反応の前記金属膜を除去し、前記ゲート電極の上部に前記金属シリサイド層を残すことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記金属膜はNiとPtの合金を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
(a)半導体基板を準備する工程、
(b)前記半導体基板に半導体領域を形成する工程、
(c)前記半導体領域上を含む前記半導体基板上に金属膜を形成する工程、
(d)第1の熱処理を行って前記金属膜と前記半導体領域とを選択的に反応させて前記半導体領域の上部に金属シリサイド層を形成する工程、
(e)前記(d)工程後に、未反応の前記金属膜を除去し、前記半導体領域上に前記金属シリサイド層を残す工程、
(f)前記(e)工程後に、前記第1の熱処理よりも熱処理温度が高い第2の熱処理を行う工程、
(g)前記(f)工程後に、前記金属シリサイド層上を含む前記半導体基板上に絶縁膜を形成する工程、
を有し、
前記(d)工程での前記半導体基板の温度が前記第1の熱処理を開始する直前の前記半導体基板の温度から前記第1の前記金属膜と前記半導体領域とを反応させる目標温度に達するまでの時間は1秒未満であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記(d)工程の前記第1の熱処理において熱処理を行うアニール装置は、前記半導体基板の主面側および裏面側のそれぞれの近傍に導体を配置し、前記導体に電流を流して前記導体を発熱させることにより前記半導体基板を熱処理するものであることを特徴とする請求項13記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記(d)工程の前記第1の熱処理において熱処理を行うアニール装置は、カーボンヒータまたは抵抗加熱によって熱処理を行うものであることを特徴とする請求項13記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記(d)工程の前記第1の熱処理で形成される前記金属シリサイド層は、NiSiを含むことを特徴とする請求項13記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記(d)工程では、前記半導体領域上の前記金属膜の膜厚の一部を前記半導体領域と反応させて前記金属シリサイド層を形成することを特徴とする請求項13記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記(d)工程の前記第1の熱処理では、前記半導体基板の温度が熱処理を行う温度より高い温度になるオーバーシュートが起こらないことを特徴とする請求項13記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記(d)工程の前記第1の熱処理によって形成された前記金属シリサイド層内のNiSiの結晶粒径は、前記(f)工程の前記第2の熱処理後の前記金属シリサイド層内のNiSiの結晶粒径の3分の1以下であることを特徴とする請求項16記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記(b)工程後であって前記(c)工程の前に、前記半導体基板上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成し、
前記(c)工程では、前記半導体基板上に前記金属膜を形成すると同時に前記ゲート電極上に前記金属膜を形成し、
前記(d)工程では、前記ゲート電極上の前記金属膜と前記ゲート電極とを反応させて前記ゲート電極の上部に前記金属シリサイド層を形成し、
前記(d)工程では、前記ゲート電極上の未反応の前記金属膜を除去し、前記ゲート電極の上部に前記金属シリサイド層を残すことを特徴とする請求項13記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−210790(P2011−210790A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74775(P2010−74775)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】