説明

成膜方法および半導体装置の製造方法

【課題】誘電率が低くかつエッチング耐性に優れた窒化シリコン系絶縁膜を形成する。
【解決手段】基材上にシラン系ガス(DCS)、窒化性ガス(NH3)及びホウ素含有ガス(BCl3)を、N2パージを逐次行いながらこの順で供給してホウ素含有窒化シリコン層を形成する工程と、このホウ素含有窒化シリコン層に、プラズマにより活性化された窒化性ガス(活性化NH3)を供給する工程とを含み、これらの工程をこの順で繰り返し行う成膜方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化シリコン系絶縁膜の成膜方法および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、窒化シリコン膜は、エッチング保護膜や耐酸化マスク膜、サイドウォール膜、不純物拡散防止膜等として広く使用されている。窒化シリコン膜は、配線間に設けられると、その誘電率が高いため、半導体装置の微細化が進むにつれて配線間容量が大きくなり、寄生容量が問題になる。
【0003】
窒化シリコン膜の形成方法としては、原料ガスにDCS(ジクロロシラン)とアンモニア(NH3)を用いた原子層成長(ALD:atomic layer deposition)法による成膜方法が知られている。このような成膜方法により得られる窒化シリコン膜の比誘電率は7.0程度と大きい。
【0004】
誘電率が低減された窒化シリコン膜の形成方法として、原料ガスにDCS、NH3及びBCl3を用いてホウ素含有窒化シリコン膜を形成する方法が知られている。
【0005】
例えば特開2006−270016号公報(特許文献1)には、シラン系ガス(DCS等)及び不純物含有ガス(BCl3等)の同時供給と窒化性ガス(NH3等)の供給を交互に行い、その際、窒化性ガスはプラズマにより活性化することによって、低誘電率で高エッチング耐性の不純物含有窒化シリコン膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
一方、特開2008−112826号公報(特許文献2)には、タングステン(W)からなるビット線等の配線上に酸化シリコンからなる層間絶縁膜を形成する際、この層間絶縁膜形成前に酸化防止膜として配線上に窒化シリコン膜を形成し、この窒化シリコン膜はDCSとプラズマにてラジカル化されたアンモニアとを用いたALD法により500〜550℃の範囲で形成することが記載されている。この方法によれば、配線抵抗の増加の原因となる窒化タングステン(WN)層の形成が抑制されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−270016号公報
【特許文献2】特開2008−112826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
他の関連する成膜方法では、最初にDCSを供給してシリコン層を形成し、次にプラズマにより活性化したアンモニアを供給して窒化シリコン層を形成し、次に三塩化ホウ素(BCl3)を供給してホウ素含有窒化シリコン層を形成する。このプロセスを1サイクルとして繰り返すことにより、比誘電率が5程度のホウ素含有窒化シリコン膜が形成される。このプロセスのサイクルにおいて、各原料ガスの供給後にはN2によるパージ処理を行う。成膜条件としては、例えばプロセス温度を600℃とし、DCSの流量は80sccm、アンモニアの流量は650sccm、BCl3の流量は6sccmに設定できる。ここでsccmは標準状態での単位時間あたりの流量(cm3/min)を示す(以下も同じ)。図1に、この成膜方法におけるガス供給のタイミングチャートを示す。時間0〜t1においてDCS供給、時間t1〜t2においてパージ処理、時間t2〜t3においてNH3供給、時間t3〜t4においてパージ処理、時間t4〜t5においてBCl3供給、時間t5〜t6においてパージ処理を行う。このプロセスを1サイクルとして繰り返す。図2には、BCl3の供給量(0、2sccm、6sccm)と、得られた膜のエッチングレート(相対値)との関係を示し、図3には、BCl3の供給量(0、2sccm、6sccm)と、得られた膜の比誘電率との関係を示す。
【0009】
このような成膜方法では、図2及び図3に示されているように、BCl3の供給量を増やすと、誘電率は低減するが、フッ酸等のエッチング液に対するエッチング耐性が窒化シリコン膜より低下する。BCl3の供給量を減らすと、ウェットエッチング耐性は向上するが、誘電率が高くなってしまう。ウェットエッチング耐性の低下は、BCl3の供給量に依存するため、膜中に残留したCl成分に起因すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、基材上にシラン系ガス、窒化性ガス及びホウ素含有ガスをこの順で供給してホウ素含有窒化シリコン層を形成する工程と、該ホウ素含有窒化シリコン層に、プラズマにより活性化された窒化性ガスを供給する工程とを含み、これらの工程をこの順で繰り返し行う成膜方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、導電層を形成する工程と、前記導電層上に保護絶縁膜を形成する工程と、前記保護絶縁膜上に酸化膜を形成する工程とを含み、前記保護絶縁膜は上記の成膜方法により形成する、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誘電率が低くかつエッチング耐性に優れた窒化シリコン系絶縁膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】関連技術による成膜方法におけるガス供給のタイミングチャート。
【図2】関連技術により形成された窒化シリコン膜のエッチングレートとBCl3供給量との関係を示す図。
【図3】関連技術により形成された窒化シリコン膜の比誘電率とBCl3供給量との関係を示す図。
【図4】本発明の実施形態の成膜方法におけるガス供給のタイミングチャート。
【図5】本発明の実施形態の成膜方法に用いられる成膜装置の断面図。
【図6】本発明の実施形態の製造方法により製造される半導体装置(DRAM)の部分断面図。
【図7】本発明の実施形態の製造方法を説明するための、ビット線形成プロセス途中の構造を示す断面図。
【図8】図7に示す構造の形成工程に続く工程後の構造を示す断面図。
【図9】図8に示す構造の形成工程に続く工程後の構造を示す断面図。
【図10】図9に示す構造の形成工程に続く工程後の構造を示す断面図。
【図11】成膜方法の違いと得られた膜のエッチングレートとの関係を示す図。
【図12】成膜方法の違いと得られた膜のエッチングレートとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態の成膜方法は、基材上にシラン系ガス(例えばDCS)を供給し、続いて窒化性ガス(例えばアンモニア)を供給して窒化シリコン層を形成し、次にこの窒化シリコン層へホウ素含有ガス(例えばBCl3)を供給し、この窒化シリコン層にホウ素(B)を添加してホウ素含有窒化シリコン層を形成し、次にプラズマにより活性化された窒化性ガス(例えばアンモニア)を前記ホウ素含有窒化シリコン層へ供給する。このプロセスを1サイクルとして繰り返すことにより、低誘電率で高エッチング耐性のホウ素含有窒化シリコン膜を形成することができる。
【0015】
この成膜は、原子層成長(ALD:atomic layer deposition)法に従って行うことができる。例えば、シラン系ガスを供給してシリコン原子の1原子層分のシリコン層を形成し、次いで窒化性ガスを供給し、このシリコン層を窒化して窒化シリコン層を形成する。次に、この窒化シリコン層にホウ素含有ガスを供給してホウ素含有窒化シリコン層を形成する。次にプラズマにより活性化された窒化性ガスを前記ホウ素含有窒化シリコン層へ供給する。このプロセスを1サイクルとして繰り返すことにより、シリコン原子の1原子層分ごとに成膜とホウ素添加と膜処理が行われ、膜厚および膜組成の制御性が良く、厚み及び組成の均一な膜を形成できる。
【0016】
窒化性ガスのプラズマによる活性化は、反応器内に導入された窒化性ガスに高周波電界をかけて窒化性ガスをプラズマ化することにより行うことができる。この活性化により生じた活性種が、ホウ素含有窒化シリコン膜中の、不純物含有ガス由来の残留成分と反応し、結果、その残留成分を除去することができる。例えば、窒化性ガスとしてアンモニアを用い、ホウ素含有ガスとしてBCl3を用いた場合、アンモニア由来のHラジカル等の活性種が、ホウ素含有窒化シリコン膜中の、BCl3由来の残留Cl成分と反応し、結果、残留Cl成分を除去することができる。これにより、ホウ素含有窒化シリコン膜中のホウ素量を増大させて低誘電率化を行うために、十分な量のBCl3の供給を行っても、BCl3供給量の増大に伴うホウ素含有窒化シリコン膜のエッチング耐性の低下を抑えることができる。
【0017】
図4に、本実施形態の成膜方法におけるガス供給のタイミングチャートを示す。時間0〜t1においてDCS供給、時間t1〜t2においてN2パージ処理、時間t2〜t3においてNH3供給、時間t3〜t4においてN2パージ処理、時間t4〜t5においてBCl3供給、時間t5〜t6においてN2パージ処理、時間t6〜t7においてNH3供給、時間t7〜t8においてN2パージ処理を行う。このプロセスを1サイクルとして繰り返し行う。
【0018】
本実施形態の成膜方法において、ホウ素添加前の窒化シリコン層の形成においては、窒化性ガスをプラズマにより活性化させて供給することが好ましい。活性化した窒化性ガスを供給することにより、窒化シリコン層の成膜反応を促進でき、比較的低温下で窒化シリコン層を形成することができる。また、プロセス温度を低くできるため、タングステン等の導電層上に窒化シリコン膜を形成する場合は、配線抵抗の増加の原因となる窒化タングステン(WN)等の窒化層の形成を抑制することができる。窒化性ガスを活性化しない場合は、活性化を行わない分のエネルギーを補償するためにプロセス温度を上げて成膜を行うことができる。
【0019】
具体的な成膜条件としては、例えばプロセス温度を600℃とし、DCSの流量は80sccm、アンモニアの流量は650sccm、BCl3の流量は6sccmに設定できる。ここでsccmは標準状態での単位時間あたりの流量(cm3/min)を示す(以下も同じ)。
【0020】
実際に上記のタイミングチャートと成膜条件下で本実施例のホウ素含有窒化シリコン膜を形成し、エッチングレートと比誘電率を求めた。比較として、ホウ素を添加しなかった以外は本実施例と同様にして窒化シリコン膜を形成し、また、活性化アンモニアによる処理(時間t6〜t7の処理)を行わなかった以外は本実施例と同様にしてホウ素含有窒化シリコン膜を形成し、これらの膜のエッチングレート及び比誘電率も求めた。
【0021】
図11には、成膜方法の違いと得られた膜のエッチングレート(相対値)の関係を示し、図12には、成膜方法の違いと得られた膜の非誘電率の関係を示す。これらの図において、横軸のSiNはホウ素未添加の比較例、SiBNは本実施例、SiBN(REF)は活性化アンモニアによる処理を行わなかった比較例を示す。これらの図から、本発明によれば、誘電率が低く且つエッチング耐性に優れたホウ素含有窒化シリコン膜を形成できることが分かる。
【0022】
本発明の成膜方法におけるシラン系ガスとしては、ジクロロシラン(DCS)、ヘキサクロロジシラン、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si26)、ヘキサメチルジシラザン、テトラクロロシラン、ジシリルアミン、トリシリルアミン、ビスターシャリーブチルアミノシランが挙げられる。
【0023】
本発明の成膜方法における窒化性ガスとしては、アンモニア(NH3)、窒素(N2)、一酸化二窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)が挙げられる。
【0024】
本発明の成膜方法におけるホウ素含有ガスとしては、BCl3、B26、BF3、B(CH33が挙げられる。
【0025】
本発明の成膜方法において、シラン系ガスの流量は10〜3000sccmの範囲に設定でき、窒化シリコン膜形成時の窒化性ガスの流量は500〜5000sccmの範囲に設定でき、ホウ素含有ガスの流量は1〜100sccmの範囲に設定することができる。プロセス温度は、300〜800℃の範囲に設定でき、400〜700℃の範囲が好ましい。プロセス圧力は、0.1Torr(13Pa)〜10Torr(1333Pa)の範囲に設定することができる。
【0026】
各原料ガスの供給時間および各パージ処理は5〜30秒の範囲において適宜設定できる。
【0027】
本発明の成膜方法に用いられる成膜装置としては、プラズマを形成する活性化手段を反応器内に一体に組み込んだものを用いてもよいし、活性化手段を反応器とは別体に設けたものを用いてもよい。前者の場合は、反応器内に導入された窒化性ガスが活性化され、後者の場合は反応器外で活性化された窒化性ガスが反応器内に供給される。
【0028】
本発明の実施形態に用いられる成膜装置としては、例えば図5に示されるバッチ式縦形ホットウォール型リモートプラズマCVD装置を用いることができる。
【0029】
このCVD装置は、石英ガラス製の一端が開口し他端が閉塞した円筒形状のプロセスチューブ201(反応器)を備え、これを加熱するためのヒータ202が、プロセスチューブ201の周囲を覆うように同心円状に設置されている。
【0030】
プロセスチューブ201の側壁の一部には排気口203があり、この排気口とこの排気口に接続する排気装置(図示せず)との間にスロットルバルブ(図示せず)が設けられている。このスロットルバルブによりプロセスチューブ内の圧力を制御することができる。
【0031】
原料ガスを供給するためのガス供給管204は、プロセスチューブ内に垂直に設置され、複数個の吹出口205がガス供給管204の延在方向(垂直方向)に沿って設けられている(プロセスチューブ内の矢印はガスの吐出方向を示す)。
【0032】
また、プラズマで活性化するガスを供給するためのガス供給管206もプロセスチューブ内に垂直に設置され、複数個の吹出口がガス供給管206の延在方向(垂直方向)に沿って設けられている(プロセスチューブ内の矢印はガスの吐出方向を示す)。ガス供給管206の両脇には一対の保護管207が設置され、その中空部内にそれぞれ電極208が設けられている。各電極208には、高周波電力を印加する高周波電源(図示せず)が整合器(図示せず)を介して電気的に接続されている。
【0033】
一方、被処理物(基材)としてのウエハ209は、プロセスチューブの外部に設置されたエレベータ(図示せず)によって垂直方向に昇降されるボート(図示せず)によって保持される。
【0034】
シラン系ガス(例えばDCS)はガス供給管204を介して、窒化性ガス(例えばNH3)はガス供給管206を介して、ホウ素含有ガス(例えばBCl3)はガス供給管204又は206を介して順にプロセスチューブ内に供給する。窒化性ガスの供給時には、一対の電極に高周波電力を印可してプラズマによる活性化を行う。プラズマ活性化時の高周波電源のRF出力は100〜400Wの範囲に設定することができる。
【0035】
上述の成膜方法は、半導体装置の製造方法に適用することができる。
【0036】
本発明の一実施形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に配線層を形成する工程と、この配線層を覆うように保護絶縁膜を形成する工程と、この保護絶縁膜上に層間絶縁膜を形成する工程を含み、この保護絶縁膜を、前述の成膜方法で形成する。
【0037】
以下、DRAM(dynamic random access memory)の製造方法に上述の成膜方法を適用した実施形態を、図面を参照して説明する。
【0038】
図6は本実施形態の製造方法により製造するDRAMの部分断面図を示す。
【0039】
この図において、半導体基板1は所定濃度の不純物、例えばp型(ボロン等)の不純物が導入された半導体、例えばシリコンから形成されている。
【0040】
素子分離領域2は、STI(shallow trench isolation)法により、半導体基板のトランジスタ形成領域以外の部分に形成され、トランジスタ(選択用トランジスタ)を絶縁分離する。
【0041】
トランジスタ形成領域において、半導体基板1の表面に、例えば熱酸化法などにより、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜(図示しない)が形成されている。
【0042】
このゲート絶縁膜の上にゲート電極30が、例えば多結晶シリコン膜31と金属膜32との積層膜により形成されている。多結晶シリコン膜31は、CVD法により形成でき、成膜時に不純物を導入することができる。金属膜32の材料は、タングステン(W)やタングステンシリサイド(WSi)などの高融点金属を用いることができる。ゲート電極30の上には窒化シリコン膜等からなるキャップ膜20が形成され、ゲート電極30の側壁には窒化シリコン膜等からなるサイドウォール21が形成されている。
【0043】
上記ゲート電極30の一方の側の半導体基板にソース拡散層3bが形成され、ゲート電極30の他方の側の半導体基板にドレイン拡散層3aが形成されている。
【0044】
キャップ膜20及びサイドウォール21により自己整合的にコンタクトホールが形成され、各コンタクトホール内に所定の不純物濃度の多結晶シリコンが充填され、ソース又はドレインの拡散層と接続されたコンタクトプラグ102が形成されている。コンタクトプラグ102は第1の層間絶縁膜101を貫通するように形成されている。コンタクトプラグ102は、第1の層間絶縁膜101により隣接する他のコンタクトプラグ102と電気的に絶縁されている。
【0045】
コンタクトプラグ102及び第1の層間絶縁膜101の上には、全面に第2の層間絶縁膜103、ホウ素含有窒化シリコン膜(SiBN)106及び第3の層間絶縁膜107が形成されている。
【0046】
ドレイン拡散層3aに接続されたコンタクトプラグ102の上面が露出するように、第2の層間絶縁膜103を貫通するビット線コンタクトホールが形成され、このビット線コンタクトホール内に、Ti/TiN/Wからなるビット線コンタクトプラグ8が形成されている。
【0047】
ビット線コンタクトプラグ8に接続するように、第2の層間絶縁膜103上にW膜からなるビット線104が形成され、ビット線104上に窒化シリコン膜105が形成されている。すなわち、ビット線104は、コンタクトプラグ102及びビット線コンタクトプラグ8を介して、MOSトランジスタのドレイン拡散層3aと接続されている。このビット線104の側壁には、サイドウォールとしてホウ素含有窒化シリコン膜106が形成されている。
【0048】
ソース拡散層3bに接続されたコンタクトプラグ102の上面が露出するように、第2の層間絶縁膜103及び第3の層間絶縁膜107を貫通する容量コンタクトホール12が形成され、この容量コンタクトホール12内に、P(燐)を含む多結晶シリコンからなる容量コンタクトプラグ108が形成されている。
【0049】
第3の層間絶縁膜上には、シリコン酸化膜15及び窒化シリコン膜14(ストッパ膜)からなる第4の層間絶縁膜16が形成されている。第4層間絶縁膜16には、容量コンタクトプラグ13の直上にキャパシタ用シリンダホール17が形成されている。このキャパシタ用シリンダホール17の底面及び側壁に、下部電極24と、この下部電極24の上に容量絶縁膜25が形成されている。さらに、キャパシタ用シリンダホールを充填するよう上部電極26が形成されている。上部電極26は、例えばTiN膜及びW層の複合層により形成できる。
【0050】
次に、上述のDRAMを製造する方法について、図面を参照して説明する。
【0051】
まず、図6に示すように、通常の方法に従って、半導体基板1上に素子分離領域2を形成し、その後、ゲート電極30、ソース拡散層3b、ドレイン拡散層3a、キャップ膜20及びサイドウォール21を含むMOSトランジスタを形成する。
【0052】
次に、図6に示すように、MOSトランジスタを含む全面に、シリコン酸化膜からなる第1の層間絶縁膜101をプラズマCVD(chemical vapor deposition)法により450nmの厚さに形成する。次いで、リフロー処理の後に、CMP(chemical mechanical polishing)法により表面を平坦化する。
【0053】
次に、第1の層間絶縁膜101の上に、フォトリソグラフィにより、コンタクトプラグ102に対応する開口を持つレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして、異方性エッチングを行い、コンタクトプラグ102を形成するためのコンタクトホールを形成する。
【0054】
次に、レジストパターンを除去した後、CVD法により全面に、不純物が導入された多結晶シリコンを、上記コンタクトホールがこの多結晶シリコンにより充填される厚さに堆積させる。この多結晶シリコンの不純物濃度は、1.0×1020〜4.5×1020atoms/cm3の範囲に設定することができる。
【0055】
次に、塩素系プラズマガスを用いたドライエッチングによるエッチバックの後、CMP法により平坦化処理を行い、ホール外の第1の層間絶縁膜101の上の多結晶シリコンを除去し、上記コンタクトホール内に充填された多結晶シリコンを残すことにより、コンタクトプラグ102を形成する。このコンタクトプラグ102は、図6に示されるように、ビット線104と拡散層3aとを接続し、または容量コンタクトプラグ108と拡散層3bとを接続できるように形成する。
【0056】
次に、プラズマCVD法により、酸化シリコンからなる厚さ200nmの第2の層間絶縁膜103を形成する。次いで、フォトリソグラフィと異方性エッチングにより、第2の層間絶縁膜103に、ドレイン拡散層3aに接続されたコンタクトプラグ102に達するコンタクトホールを形成する。このコンタクトホールを充填するように、全面にTi/TiN/Wからなる多層金属膜をCVD法により順次成膜する。その後、CMPを行って、コンタクトホール外の多層金属膜を除去し、このコンタクトホール内にビット線コンタクトプラグ8が形成される。
【0057】
次に、図7に示すように、第2の層間絶縁膜103の上に、スパッタリング法により厚さ50nmのタングステン(W)膜104Fを堆積させる。このとき、このW膜104Fと第2の層間絶縁膜103との間に、厚み5〜10nmの窒化タングステン膜や窒化チタン膜を密着層として形成してもよい。次に、W膜104Fの上に、ハードマスクとして利用するための窒化シリコン膜105をプラズマCVD法により堆積させる。
【0058】
次に、窒化シリコン膜105の上に、フォトリソグラフィにより、W膜104Fからビット線104を形成するためのレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして窒化シリコン膜105を異方性エッチングして、ビット線に対応する形状を持つパターンを形成する。
【0059】
次に、レジストパターンを除去し、図8に示すように、窒化シリコン膜105のパターンをハードマスクとして、W膜104Fを異方性エッチングして、25nmの幅のビット線104を形成する。このとき、ビット線104の側壁が露出、すなわちW膜が露出する。
【0060】
次に、図9に示すように、後に第3の層間絶縁膜107を形成する際の酸化防止膜(保護絶縁膜)として(特に、ビット線104の側壁に露出されたW膜の酸化防止膜として)、前述の成膜方法にしたがって、プラズマアシストALD法により、ホウ素含有窒化シリコン膜106を全面に形成する。これにより、ビット線104のW膜が露出された側壁が、酸化防止膜としてホウ素含有窒化シリコン膜106により被覆される。ホウ素を含有しない窒化シリコン膜を形成した場合に対して、配線間容量に起因する寄生容量の低減を行うことができる。
【0061】
ホウ素含有窒化シリコン膜106の形成は、例えば、前述したように、縦型バッチ式のプラズマアシストALD装置を用い、例えば600〜630℃の温度下で、DCS、アンモニア、BCl3、及びプラズマによりラジカル化したアンモニアを、窒素パージを介挿して順に反応室(チャンバ)内に供給し、このプロセスを1サイクルとして繰り返すことにより実施できる。ホウ素含有窒化シリコン膜106は、量産レベルとして、10nmの厚みに形成することができる。
【0062】
ホウ素含有窒化シリコン膜106の形成後、次工程へのクロスコンタミネーションによる汚染の回避のため、希釈HF溶液(弗酸)にて洗浄を行う。このホウ素含有窒化シリコン膜は、十分なエッチング耐性を有するため、洗浄工程後において、ホウ素を含有しない窒化シリコン膜を酸化防止膜として用いた場合と同等の膜厚を保持することができる。
【0063】
次に、図10に示すように、ホウ素含有窒化シリコン膜106の上に、HDP(high density plasma)−CVDにより、酸化シリコンからなる第3の層間絶縁膜107を全面に形成し、CMP法により平坦化を行う。
【0064】
酸化シリコンからなる第3の層間絶縁膜107を成膜する際、酸化防止膜であるホウ素含有窒化シリコン膜106によって、ビット線104の露出していた側壁が酸化雰囲気から保護され、ビット線104を構成するW膜の酸化が防止される。このため、第3の層間絶縁膜107形成時における、ビット線104の配線抵抗の上昇を防止することができる。
【0065】
次に、第3の層間絶縁膜107上に、フォトリソグラフィにより、コンタクトプラグ102の直上に容量コンタクトプラグ108に対応する開口を持つレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、第3の層間絶縁膜107に対して異方性エッチングを行い、コンタクトプラグ102に達する容量コンタクトホール12を形成する。
【0066】
次に、CVD法により全面に、不純物が導入された多結晶シリコンを、容量コンタクトホール12がこの多結晶シリコンにより充填される厚さに堆積させる。
【0067】
次に、塩素系プラズマガスを用いたドライエッチングによるエッチバックの後、CMP法により平坦化処理を行い、ホール外の第3の層間絶縁膜107の上の多結晶シリコンを除去し、容量コンタクトホール12内に充填された多結晶シリコンを残すことにより、容量コンタクトプラグ108を形成する。
【0068】
次に、キャパシタ用シリンダホール17を形成する際の酸化膜エッチングストッパとして、全面にLP(low pressure-chemical vapor deposition)−CVD法により、窒化シリコン膜14を形成する。その後、プラズマCVDにより、全面にシリコン酸化膜15を3000nmの厚さに形成する。このようにして、窒化シリコン膜14とシリコン酸化膜15からなる第4の層間絶縁膜16を形成する。
【0069】
次に、第4の層間絶縁膜16上に、フォトリソグラフィにより、コンタクトプラグ108の直上にキャパシタ用シリンダホール17に対応する開口を持つレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして第4の層間絶縁膜16に対して異方性エッチングを行い、窒化シリコン膜14(エッチングストッパ)に達するホールを形成する。次いで、レジストパターンを除去した後、ホール内に露出した窒化シリコン膜14を異方性エッチング等により除去し、コンタクトプラグ108の上面を露出させ、第4の層間絶縁膜16を貫通するキャパシタ用シリンダホール17を形成する。
【0070】
次に、シリンダキャパシタの下部電極24を形成する。下部電極となる導電膜を形成する前に、キャパシタ用シリンダホール17内のコンタクトプラグ108の露出面に対し、フッ酸含有溶液によりウェットエッチング処理を行い、コンタクトプラグ108の露出面に形成された自然酸化膜を除去する。
【0071】
次に、キャパシタ用シリンダホール17の側面および底面を含む全面に下部電極となる導電膜24を形成する。例えば、全面にチタン及び窒化チタンをCVD法により順次成膜し、TiN/Tiの2層からなる厚み30nmの導電膜を形成する。
【0072】
次に、フォトレジストを塗布し、キャパシタ用シリンダホール17内のみフォトレジストを残存させた後、キャパシタ用シリンダホール17の外、すなわち第4の層間絶縁膜16表面の導電膜24をエッチングにより除去する。その後、フォトレジストを除去し、結果、キャパシタ用シリンダホール17内の導電膜24からなる下部電極24が得られる。
【0073】
次に、下部電極24の表面をN2雰囲気中において熱処理することにより窒化して保護膜を形成する。この保護膜は、キャパシタ絶縁膜25となる酸化タンタル膜を形成する際の下部電極24の酸化を抑制する。
【0074】
次に、下部電極24上に容量絶縁膜(誘電体膜)25を形成する。この容量絶縁膜25としては、ペンタエトキシタンタルを原料とし、酸化剤に酸素を用いたCVD法により厚さ8nmの酸化タンタル膜を形成することができる。この酸化タンタル膜の絶縁性を向上させるために、750℃の酸化性雰囲気にて熱処理してもよい。容量絶縁膜としては、酸化タンタル膜に限らず、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化ジルコニウム膜などの金属酸化物の単層膜または積層膜を用いることができる。
【0075】
その後、上部電極26となる導電層をキャパシタ用シリンダホールを充填するように形成する。例えば、窒化チタン膜及びタングステン膜をCVD法により順次形成して、これらの積層膜からなる上部電極26を形成する。
【0076】
上述したプロセスにより形成されたビット線104は、酸化保護膜として従来のLP−CVD法による窒化シリコン膜(処理温度630℃、露出されたW膜上に窒化膜が形成される)を用いた場合に比較し、ビット線104を構成するW膜の窒化が抑制されるため、配線抵抗が低減できると考えられる。
【0077】
また、上述のプロセスでは、ビット線104間のボイドの発生が抑えられ、短絡等の問題が生じることがなく、十分な歩留まりを確保できる。
【符号の説明】
【0078】
1 半導体基板
2 素子分離領域
3a ドレイン拡散層
3b ソース拡散層
8 ビット線コンタクトプラグ
12 容量コンタクトホール
14 窒化シリコン膜(ストッパ膜)
15 シリコン酸化膜
16 第4の層間絶縁膜
17 キャパシタ用シリンダホール
20 キャップ膜
21 サイドウォール
24 下部電極
25 容量絶縁膜
26 上部電極
30 ゲート電極
31 多結晶シリコン膜
32 金属膜
101 第1の層間絶縁膜
102 コンタクトプラグ
103 第2の層間絶縁膜
104 ビット線
104F タングステン膜
105 窒化シリコン膜
106 ホウ素含有窒化シリコン膜
107 第3の層間絶縁膜
108 容量コンタクトプラグ
201 プロセスチューブ(反応器)
202 ヒータ
203 排気口
204 ガス供給管
205 吹出口
206 ガス供給管
207 保護管
208 電極
209 ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にシラン系ガス、窒化性ガス及びホウ素含有ガスをこの順で供給してホウ素含有窒化シリコン層を形成する工程と、該ホウ素含有窒化シリコン層に、プラズマにより活性化された窒化性ガスを供給する工程とを含み、これらの工程をこの順で繰り返し行う成膜方法。
【請求項2】
前記シラン系ガスの供給後前記ホウ素含有ガス供給前に供給する前記窒化性ガスは、プラズマにより活性化して供給する、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記シラン系ガスはジクロロシランである、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記窒化性ガスはアンモニアである、請求項1から3のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記ホウ素含有ガスはBCl3である、請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記シラン系ガスの供給後前記窒化性ガスの供給前に不活性ガスパージを行い、前記窒化性ガスの供給後前記ホウ素含有ガスの供給前に不活性ガスパージを行い、前記ホウ素含有ガスの供給後前記活性化された窒化性ガスの供給前に不活性ガスパージを行い、前記活性化された窒化性ガスの供給後前記シラン系ガスの供給前に不活性ガスパージを行う、請求項1から5のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項7】
導電層を形成する工程と、
前記導電層上に保護絶縁膜を形成する工程と、
前記保護絶縁膜上に酸化膜を形成する工程とを含み、
前記保護絶縁膜は、請求項1から6のいずれか一項に記載の成膜方法により形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記保護絶縁膜の形成後前記酸化膜の形成前に洗浄液を用いた洗浄工程を含む、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄液はフッ酸を含む、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記導電層はタングステン層を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記導電層は、DRAMのビット線を構成する、請求項7から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−251654(P2010−251654A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102066(P2009−102066)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】