説明

半導体装置及びその作製方法

【課題】外部から局所的に圧力がかかっても破損しにくい半導体装置を提供する。また、外部からの局所的押圧による非破壊の信頼性が高い半導体装置を歩留まり高く作製する方法を提供する。
【解決手段】単結晶半導体領域を用いて形成された半導体素子を有する素子基板上に、有機化合物または無機化合物の高強度繊維に有機樹脂が含浸された構造体を設け、加熱圧着することにより、有機化合物または無機化合物の高強度繊維に有機樹脂が含浸された構造体及び素子基板が固着された半導体装置を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する半導体装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、無線チップ、センサ等、各種装置の薄型化が製品小型化の上で重要な要素となっており、薄型化技術や小型化製品の使用範囲が急速に広まっている。これらの薄型化された各種装置はある程度フレキシブルなため湾曲したものに設置して使用することが可能である。
【0003】
また、特許文献1では、0.5mm以下サイズの半導体チップを紙またはフィルム状の媒体に埋め込み、曲げや集中荷重を改善した半導体装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−78991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンテナをチップに作り込んで内蔵(オンチップ化)する半導体装置の場合、チップの大きさが小さいとアンテナサイズが小さくなり通信距離が短くなる問題がある。また、紙またはフィルム媒体に設けられたアンテナをチップに接続して半導体装置を作製する場合、チップの大きさが小さいと、接続不良が生じ、歩留まりが低下する。
【0005】
そこで本発明は、外部から局所的に圧力がかかっても破損しにくい半導体装置を提供する。また、外部からの局所的押圧による非破壊の信頼性が高い半導体装置を歩留まり高く作製する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する素子基板上に、有機化合物または無機化合物の繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を設け、加熱圧着することにより、有機化合物または無機化合物の繊維体に有機樹脂が含浸された構造体及び素子基板が固着された半導体装置を作製することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する素子基板を形成し、素子基板上に、有機化合物または無機化合物の繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を設け、加熱圧着することにより、素子基板上に有機化合物または無機化合物の繊維体に有機樹脂が含浸された封止層を形成し、剥離層から素子基板を剥離して半導体装置を作製することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の半導体装置は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する素子基板と、素子基板に接し且つ局所的な押圧を緩和させる封止層とを有する半導体装置である。なお、有機樹脂は、素子基板及び繊維体を固着すると共に、繊維体に含浸される。
【0009】
また、本発明の半導体装置は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する素子基板と、有機化合物または無機化合物の繊維体と、素子基板及び繊維体を固着する有機樹脂とを有する半導体装置である。なお、有機樹脂は、素子基板及び繊維体を固着すると共に、繊維体に含浸される。
【0010】
また、本発明の半導体装置は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する素子基板と、有機化合物または無機化合物の繊維体及び繊維体に含浸される有機樹脂を含む封止層とを有する半導体装置である。
【0011】
素子基板の厚さは1μm以上80μm以下、さらには1μm以上50μm以下、さらには1μm以上20μm以下、さらには1μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下が好ましい。また、封止層の厚さは厚さ10μm以上100μm以下であることが好ましい。このような厚さにすることにより、湾曲することが可能な半導体装置を作製することができる。
【0012】
繊維体としては、有機化合物または無機化合物の高強度繊維を用いた織布または不織布である。高強度繊維としては、具体的には引張弾性率が高い繊維である。またはヤング率が高い繊維である。
【0013】
また、有機樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0014】
繊維体として高強度繊維を用いることにより、局所的な押圧が半導体装置にかかったとしても、当該圧力が高強度繊維全体に分散し、半導体装置の一部が延伸することを防ぐことができる。即ち、一部の延伸に伴う配線、半導体素子等の破壊を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、外部から局所的な圧力がかかっても破損しにくく、信頼性が高い半導体装置を歩留まり高く作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる形態で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態では、局所的押圧(点圧、線圧等)によっても破損しにくく、信頼性の高い半導体装置について、図1、図8及び図9を用いて示す。
【0018】
本実施の形態の半導体装置は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板上に、有機化合物または無機化合物の繊維体及び繊維体に含浸される有機樹脂を含む封止層が形成されていることを特徴とする。
【0019】
素子基板に含まれる単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子の代表例としては、MOSトランジスタ、ダイオード、不揮発性記憶素子等の能動素子、抵抗素子、容量素子等の受動素子がある。また、結晶半導体基板としては、代表的には、n型又はp型の導電型を有する単結晶シリコン基板(シリコンウェハー)、化合物半導体基板(GaAs基板、InP基板、GaN基板、SiC基板、サファイア基板、ZnSe基板等)を用いることが好ましい。また、SOI基板として、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温アニールすることにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作られた所謂SIMOX(Separation by IMplanted OXygen)基板や、水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用してSi基板を劈開するスマートカット法や、ELTRAN法(Epitaxial Layer Transfer:キャノン社の登録商標)等を用いて形成したSOI基板を用いても良い。素子基板の厚さとしては、1μm以上80μm以下、さらには1μm以上50μm以下、さらには1μm以上20μm以下、さらには1μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下が好ましい。このような厚さにすることにより、湾曲することが可能な半導体装置を作製することができる。また、半導体装置の上面の面積は、4mm以上、さらには9mm以上が好ましい。
【0020】
図1は、本実施の形態の半導体装置の断面図を示す。
【0021】
図1(A)に示す半導体装置1050は、MOSトランジスタ1060a、1060bを有する素子基板1051の一表面に、繊維体113が有機樹脂114によって固着されている。また封止層120は、素子基板に形成される半導体素子を覆うように設けられる。ここでは、素子基板1051に固着される繊維体113及び有機樹脂114を封止層120と示す。このような半導体装置1050の代表例として、他の装置の制御やデータの計算・加工を行なうマイクロプロセッサ(MPU)がある。MPUは、CPU、メインメモリ、コントローラ、インターフェース、I/Oポート等を有し、これらをMOSトランジスタ、抵抗素子、容量素子、配線等で構成することができる。
【0022】
また、素子基板1051は、フォトダイオードを有してもよい。代表的には、半導体基板にPNダイオード、PINダイオード、アバランシェダイオード、ショットキーダイオード等のフォトダイオードを形成する。このような半導体装置の代表例として、イメージセンサがある。
【0023】
また、図1(B)に示す半導体装置1070は、記憶素子1072及びMOSトランジスタ1060a、1060bを有する素子基板1071の一表面に、繊維体113が有機樹脂114によって固着されている。記憶素子としては、フローティングゲートまたは電荷蓄積層を有する不揮発性記憶素子、MOSトランジスタ及びそれに接続される容量素子、MOSトランジスタ及びそれに接続される強誘電体層を有する容量素子、一対の電極の間に有機化合物層が挟まれる有機メモリ素子等がある。また、このような記憶素子を有する半導体装置としては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、マスクROM(Read Only Memory)、EPROM(Electrically Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置がある。ここでは、記憶素子1072としてフローティングゲート電極1073を有する不揮発性記憶素子を示す。
【0024】
また、図1(C)に示す半導体装置1080は、MOSトランジスタ1060a、1060bを有する素子基板1081、及びMOSトランジスタ1060aまたは1060bに電気的に接続するアンテナ83の一表面に、繊維体113が有機樹脂114によって固着されている。このような半導体装置の代表例としては、無線で情報を送受信することが可能なIDタグ、ICタグ、RF(Radio Frequency)タグ、無線タグ、電子タグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、ICカード、IDカード等(以下、RFIDと示す。)がある。また、本発明の半導体装置は、MOSトランジスタ等で構成される集積回路部とアンテナを封止したインレットや、当該インレットをシール状やカード状にしたものを含む。また、半導体装置1080の上面の面積を、4mm以上、さらには9mm以上とすることで、アンテナの面積を大きく形成することが可能であるため、通信機との通信距離の長いRFIDとすることができる。
【0025】
なお、素子基板1051、1071、1081は、裏面部が一部除去されて薄膜化されていることが好ましい。代表的には、素子基板1051、1071、1081の厚さが1μm以上80μm以下、さらには1μm以上50μm以下、さらには1μm以上20μm以下、さらには1μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下が好ましい。または、半導体基板の一部を剥離して、素子基板1051、1071、1081を薄膜化してもよい。
【0026】
さらには、図1(A)乃至(C)に示す素子基板の一表面の他に、他方の面にも繊維体113が有機樹脂によって固着されていてもよい。即ち、素子基板の両表面に封止層を有し、素子基板に形成される半導体素子を両面から覆うように対向する一対の封止層が設けられる。図1(D)に示す半導体装置1090では、図1(A)に示す半導体装置の素子基板1051の一方の面に封止層120aを有し、素子基板1051の他表面に封止層120bを有する。このときの封止層120a、120bは同じ材質の繊維体及び有機樹脂で形成されていることが反り低減の為には好ましいが、表裏を判別して使用する用途の場合には必ずしも同じ材質である必要性はない。このように繊維体に含浸される有機樹脂が固着されることにより、素子基板の両面が繊維体により支持されるため、半導体装置の反りを減少させることが可能であり、後のラミネートフィルムやシール等へ当該半導体装置を搭載することが容易となる。
【0027】
素子基板の一表面または両面に設けられる繊維体113は、有機化合物または無機化合物の高強度繊維を用いた織布または不織布であり、素子基板全面を覆う。高強度繊維としては、具体的には引張弾性率が高い繊維である。または、ヤング率が高い繊維である。高強度繊維の代表例としては、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、アラミド系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ガラス繊維、または炭素繊維である。ガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラス繊維を用いることができる。なお、繊維体113は、一種類の上記高強度繊維で形成されてもよい。また、複数種類の上記高強度繊維で形成されてもよい。
【0028】
また、繊維体113は、繊維(単糸)の束(以下、糸束という。)を経糸及び緯糸に使って製織した織布、または複数種の繊維の糸束をランダムまたは一方向に堆積させた不織布で構成されてもよい。織布の場合、平織り、綾織り、しゅす織り等適宜用いることができる。
【0029】
糸束の断面は、円形でも楕円形でもよい。糸束として、高圧水流、液体を媒体とした高周波の振動、連続超音波の振動、ロールによる押圧等によって、開繊加工をした糸束を用いてもよい。開繊加工をした糸束は、糸束幅が広くなり、厚み方向の単糸数を削減することが可能であり、糸束の断面が楕円形または平板状となる。また、糸束として低撚糸を用いることで、糸束が扁平化しやすく、糸束の断面形状が楕円形状または平板形状となる。このように、断面が楕円形または平板状の糸束を用いることで、繊維体113の厚さを薄くすることが可能である。このため、封止層120の厚さを薄くすることが可能であり、薄型の半導体装置を作製することができる。糸束幅は4μm以上400μm以下、さらには4μm以上200μm以下において本発明の効果を確認しており、原理上は更に細くてもよい。また、糸束の厚さは、4μm以上20μm以下において本発明の効果を確認しており、原理上は更に薄くても良く、それらは繊維の材料に依存する。
【0030】
なお、本明細書の図面においては、繊維体113は、断面が楕円形の糸束で平織りした織布で示されている。また、MOSトランジスタ1060a、1060bが繊維体113の糸束よりも大きいが、MOSトランジスタの大きさが繊維体113の糸束よりも小さい場合もある。
【0031】
繊維体113が糸束を経糸及び緯糸に使って製織した織布の上面図を図8に示す。
【0032】
図8(A)に示すように、繊維体113は、一定間隔をあけた経糸113a及び一定間隔をあけた緯糸113bが織られている。このような繊維体には、経糸113a及び緯糸113bが存在しない領域(バスケットホール113cという)を有する。このような繊維体113は、有機樹脂が繊維体に含浸される割合が高まり、繊維体113及び素子基板の密着性を高めることができる。
【0033】
また、図8(B)に示すように、繊維体113は、経糸113a及び緯糸113bの密度が高く、バスケットホール113cの割合が低いものでもよい。代表的には、バスケットホール113cの大きさが、局所的に押圧される面積より小さいことが好ましい。代表的には一辺が0.01mm以上0.2mm以下の矩形であることが好ましい。繊維体113のバスケットホール113cの面積がこのように小さいと、先端の細い部材(代表的には、ペンや鉛筆等の筆記用具)により押圧されても、当該圧力を繊維体113全体で吸収することが可能である。
【0034】
また、糸束内部への有機樹脂の浸透率を高めるため、糸束に表面処理が施されても良い。例えば、糸束表面を活性化させるためのコロナ放電処理、プラズマ放電処理等がある。また、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤を用いた表面処理がある。
【0035】
繊維体113に含浸され、且つ素子基板表面を封止する有機樹脂114は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、またはシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、またはフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、上記熱可塑性樹脂及び上記熱硬化性樹脂の複数を用いてもよい。上記有機樹脂を用いることで、熱処理により繊維体を素子基板に固着することが可能である。なお、有機樹脂114はガラス転移温度が高いほど、局所的押圧に対して破壊しにくいため好ましい。
【0036】
また、封止層120の厚さは、10μm以上100μm以下、さらには10μm以上30μm以下が好ましい。このような厚さの封止層を用いることで、薄型で湾曲することが可能な半導体装置を作製することができる。
【0037】
有機樹脂114または繊維体の糸束内に高熱伝導性フィラーを分散させてもよい。高熱伝導性フィラーとしては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、アルミナ等がある。また、高熱伝導性フィラーとしては、銀、銅等の金属粒子がある。高熱伝導性フィラーが有機樹脂または糸束内に含まれることにより素子基板での発熱を外部に放出しやすくなるため、半導体装置の蓄熱を抑制することが可能であり、半導体装置の破壊を低減することができる。
【0038】
また、図1(D)において、素子基板1051に形成される封止層120aの繊維体の経糸または緯糸の方向と、封止層120bの繊維体の経糸または緯糸の方向とが30°以上60°以下、好ましくは40°以上50°以下ずれていてもよい。この場合、素子基板の表裏に設けられる繊維体の引っ張り方向が表裏で異なるため、局所的押圧の際の延伸が等方性的になる。このため、局所的押圧による破壊をさらに低減することができる。
【0039】
ここで、本実施の形態で示す半導体装置が有する効果について、図2を用いて示す。
【0040】
図2(A)に示すように、従来の半導体装置40は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板41が接着材42a、42bを用いてフィルム43a、43bで封止される。このような半導体装置に局所的な押圧44を加える。
【0041】
その結果、図2(B)に示すように、素子基板41を構成する層、接着材42a、42b、フィルム43a、43bがそれぞれ延伸してしまい、押圧部において曲率半径の小さな湾曲が生じてしまう。この結果、素子基板41を構成する半導体素子、配線等に亀裂が生じてしまい、半導体装置が破壊されてしまう。
【0042】
しかしながら、本実施の形態で示す半導体装置1050は、図2(C)に示すように、素子基板1051の片面または両面には有機樹脂を含有する繊維体からなる封止層が設けられる。繊維体を形成する繊維は、引張弾性率が高い、またはヤング率が高い。このため、点圧や線圧等の局所的な押圧44がかかっても繊維は延伸せず、押圧された力が繊維体全体に分散され、半導体装置全体で湾曲するようになる。この結果、局所的な押圧が加えられても、半導体装置で生じる湾曲は曲率半径の大きなものとなり、素子基板1051を構成する半導体素子、配線等に亀裂が生じず、半導体装置の破壊を低減することができる。
【0043】
また、素子基板1051の厚さを薄くすることで、半導体装置を湾曲させることが可能となる。このため、素子基板1051の面積を大きくすることが可能であり、半導体装置を作製する工程が容易となる。また、当該半導体装置がアンテナ内蔵のRFIDの場合、アンテナの大きさを増大させることが可能である。このため、通信距離の長いRFIDを作製することができる。
【0044】
次に、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子の構成について、以下に示す。
【0045】
図1(A)に示すMOSトランジスタ1060aは、半導体基板1052、ゲート絶縁層1055a、ゲート電極1056aで構成される。また、MOSトランジスタ1060bは、pウェル領域1053、ゲート絶縁層1055b、ゲート電極1056bで構成される。半導体基板1052がn型である場合には、p型不純物が注入されたpウェル領域1053が形成されている。p型不純物として、例えばホウ素が用いられ、5×1015cm−3〜1×1016cm−3程度の濃度で添加されている。pウェル領域1053を形成することにより、この領域にnチャネル型のトランジスタを形成することができる。また、pウェル領域1053に添加するp型不純物は、MOSトランジスタのしきい値電圧を制御する作用もある。半導体基板1052、及びpウェル領域1053に形成されるチャネル形成領域は、ゲート電極1056a、1056bと略一致する領域に形成されるものであり、半導体基板1052、pウェル領域1053に形成される低濃度不純物領域1054d、1054eまたは一対の不純物領域1054a、1054bの間に位置している。なお、半導体基板1052をp型半導体基板で形成し、pウェル領域1053をn型不純物が添加されたnウェル領域としてもよい。
【0046】
一対の不純物領域1054a、1054bはMOSトランジスタにおいてソース及びドレインとして機能する領域である。一対の不純物領域1054a、1054bは、それぞれn型不純物であるリン若しくはヒ素、p型不純物であるボロンを1×1019atoms/cm乃至1×1021atoms/cm程度で添加することで形成される。
【0047】
ゲート電極1056a、1056bの側壁にはスペーサ1057a、1057bが形成され、その端部においてリーク電流を防ぐ効果がある。また、このスペーサ1057a、1057bを利用して、ゲート電極1056a、1056bのチャネル長方向の両端の下方に低濃度不純物領域1054d、1054eを形成することができる。この低濃度不純物領域1054d、1054eは低濃度ドレイン(LDD)として機能する。低濃度不純物領域1054d、1054eは必須の構成とはならないが、この領域を設けることにより、ドレイン端の電界を緩和して、MOSトランジスタの劣化を抑制することができる。
【0048】
ゲート絶縁層1055a、1055bは、熱処理を行い半導体基板1052の表面を酸化させることにより酸化珪素膜で形成することができる。また、熱酸化法により酸化珪素膜を形成した後に、窒化処理を行うことによって酸化珪素膜の表面を窒化させることにより、酸化珪素膜と酸素と窒素を有する膜(酸窒化珪素膜)との積層構造で形成することができる。ゲート絶縁層1055a、1055bは、厚さ5〜50nm酸化珪素及び酸化窒化珪素などの無機絶縁物で形成する。また、ゲート絶縁層1055a、1055bとして、高誘電率物質(high−k材料ともいう)であるタンタル酸化物、酸化ハフニウム、酸化ハフニウムシリケート、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物、または酸化ランタンなどの希土類酸化物を形成することができる。
【0049】
ゲート電極1056a、1056bは、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された金属、又はこれらの金属を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成することが好ましい。また、リン等の不純物元素を添加した多結晶シリコンを用いることができる。また、一層又は複数層の金属窒化物層と上記の金属層の積層構造でゲート電極を形成しても良い。金属窒化物としては、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化チタンを用いることができる。金属窒化物層を設けることにより、金属窒化物層上に形成される金属層の密着性を向上させることができ、剥離を防止することができる。
【0050】
絶縁層1059は、MOSトランジスタ及び配線として機能する導電層を絶縁するための層間絶縁層として機能する。絶縁層1059は、CVD法やスパッタ法等により、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等の酸素または窒素を有する絶縁層やDLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の炭素を含む層、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル等の有機材料またはシロキサン樹脂等のシロキサン材料からなる単層または積層構造で設けることができる。
【0051】
導電層1061、1062は、配線、プラグ等として機能する。導電層1061、1062は、CVD法やスパッタリング法等により、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素と珪素の一方又は両方とを含む合金材料に相当する。導電層1061、1062は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜に相当する。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電層1061、1062を形成する材料として最適である。また、上層と下層にバリア膜を設けると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンからなるバリア膜を形成すると、半導体基板上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元し、半導体基板と良好なコンタクトをとることができる。
【0052】
また、導電層1062、絶縁層1059上に保護膜として機能する絶縁層1063が形成されてもよい。絶縁層1063は、窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化炭素、DLC等で形成される。保護膜として機能する絶縁層1063を設けることにより、外部からMOSトランジスタへ水分が浸入することを抑制することが可能であり、MOSトランジスタ及び半導体装置の電気的特性の信頼性を高めることができる。
【0053】
また、絶縁層1063上に、導電層及び当該導電層を絶縁する絶縁層を1組または複数組形成し多層構造としてもよい。多層構造とすることにより、高集積化が可能である。この場合、導電層を絶縁する絶縁層として、SiOF、SiOC、DLC、ポーラスシリカ等の誘電率がおよそ4以下の低誘電率材料を用いて形成することが好ましい。なお、誘電率4以下の低誘電率材料はlow−k材料ともいわれ、low−k材料を用いて作製される膜はlow−k膜といわれている。このようにlow−k材料を用いて絶縁層を形成することで、配線間容量を下げることができ、消費電力の低減が可能である。
【0054】
図1(B)に示す記憶素子1072は、pウェル領域1053、トンネル酸化層1055c、フローティングゲート電極1073、コントロール絶縁層1074、コントロールゲート電極1056cで構成される不揮発性記憶素子である。
【0055】
トンネル酸化層1055cは、厚さ1nm〜10nm、好ましくは1nm〜5nmの酸化珪素の単層若しくは酸化珪素と窒化珪素の積層構造を、減圧CVD法、プラズマCVD法、熱酸化法などで形成することができる。また、プラズマ処理により半導体層を酸化又は窒化することによりトンネル酸化層を形成することができる。さらには、プラズマCVD法により形成した酸化珪素をプラズマ処理により酸化又は窒化してもよい。当該プラズマ処理して形成した絶縁層は、緻密で絶縁耐圧が高く信頼性に優れている。
【0056】
フローティングゲート電極1073は、導電層、ポリシリコン層、シリコンドット等で形成することができる。また、フローティングゲート電極の代わりに、窒化珪素、窒化ゲルマニウム等で形成された電荷蓄積層を用いてもよい。
【0057】
コントロール絶縁層1074は、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウムなどの一層若しくは複数層を、減圧CVD法やプラズマCVD法などで形成する。第2の絶縁層22の厚さは1nm〜20nm、好ましくは5〜10nmで形成する。
【0058】
図1(C)に示すアンテナ83は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子を有する液滴やペーストを液滴吐出法(インクジェット法、ディスペンス法など)により吐出し、乾燥焼成して形成する。液滴吐出法によりアンテナを形成することで、工程数の削減が可能であり、それに伴うコスト削減が可能である。
【0059】
また、スクリーン印刷法を用いてアンテナ83を形成してもよい。スクリーン印刷法を用いる場合、アンテナ83の材料としては、粒径が数nmから数十μmの導電性粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性ペーストを選択的に印刷する。導電性粒子としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。
また、導電性ペーストに含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。代表的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂が挙げられる。また、導電層の形成にあたり、導電性のペーストを印刷した後に焼成することが好ましい。
【0060】
また、アンテナ83は、スクリーン印刷法の他にもグラビア印刷等を用いてもよいし、メッキ法、スパッタリング法等を用いて、導電性材料により形成することができる。
【0061】
また、RFIDの信号の伝送方式として、電磁結合方式または電磁誘導方式(例えば13.56MHz帯)を適用する。磁界密度の変化による電磁誘導を利用する場合、アンテナの上面形状を輪状(例えば、ループアンテナ)、らせん状(例えば、スパイラルアンテナ)に形成することができる。
【0062】
また、RFIDにおける信号の伝送方式として、マイクロ波方式(例えば、UHF帯(860〜960MHz帯)、2.45GHz帯等)を適用することもできる。その場合には、信号の伝送に用いる電磁波の波長を考慮してアンテナの長さ等の形状を適宜設定すればよい。
【0063】
マイクロ波方式を適応することが可能なRFIDのアンテナ83の例を図9(A)〜(D)に一例を示す。例えば、アンテナの上面形状を線状(例えば、ダイポールアンテナ(図9(A)参照))、平坦な形状(例えば、パッチアンテナ(図9(B)参照))またはリボン型の形状(図9(C)、(D)参照)等に形成することができる。また、アンテナとして機能する導電層の形状は線状に限られず、電磁波の波長を考慮して曲線状や蛇行形状またはこれらを組み合わせた形状で設けてもよい。
【0064】
以下の実施の形態では、半導体装置としてRFIDを一例にあげて、本実施の形態で示す半導体装置の作製方法を示す。
【0065】
(実施の形態2)
本実施の形態では、外部からの局所的圧力がかかっても破損しにくい半導体装置を歩留まり高く作製する方法を、図3を用いて示す。
【0066】
図3(A)に示すように、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板1102及びアンテナ112を形成する。次に、素子基板1102及びアンテナ112上に、繊維体に有機樹脂が含浸された構造体115を設ける。なお、素子基板1102の厚さとしては、1μm以上80μm以下、さらには1μm以上50μm以下、さらには1μm以上20μm以下、さらには1μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下が好ましい。このような厚さにすることにより、湾曲することが可能な半導体装置を作製することができる。
【0067】
ここでは、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子の代表例として、実施の形態1で示す単結晶半導体基板を用いて形成したMOSトランジスタ1060a、1060bを示す。
【0068】
また、ここでは、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板1102としては、MOSトランジスタ1060a、1060b、MOSトランジスタ1060a、1060bを覆う絶縁層106、絶縁層106を介してMOSトランジスタ1060aの半導体基板、及びMOSトランジスタ1060bのpウェル領域1053のソース領域及びドレイン領域に接続する配線108、109、配線108、109及び絶縁層106を覆う絶縁層111を示す。また、素子基板1102上には絶縁層111を介して配線109に接続するアンテナ112が形成される。
【0069】
絶縁層106は、MOSトランジスタ及び配線を絶縁する層間絶縁層として機能する。絶縁層106は、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法、印刷法等により、無機化合物を用いて単層又は多層で形成する。無機化合物の代表例としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等がある。なお、ここでは、絶縁層106の単層構造としたが、積層とすることができる。ここでは、絶縁層106として、塗布法によりエポキシ樹脂を有機溶剤で希釈した組成物を塗布し乾燥し焼成して絶縁層106を形成する。
【0070】
配線108、109は、実施の形態1に示す導電層1061、1062と同様に形成することができる。ここでは、チタン層、アルミニウム層、及びチタン層を順に積層形成した後、フォトリソグラフィー工程により形成したレジストマスクを用いて選択的にエッチングして、配線108、109を形成する。
【0071】
配線108、109の上に、窒化珪素、窒化酸化珪素、ダイヤモンドライクカーボン、窒化炭素等の保護層を設けてもよい。保護層を設けることにより、外部からMOSトランジスタへ水分が浸入することを抑制することが可能であり、MOSトランジスタ及び半導体装置の電気的特性の信頼性を高めることができる。
【0072】
絶縁層111は、絶縁層106と同様の形成方法及び材料を用いて形成する。なお、絶縁層111は後に形成されるアンテナの下地層である。このため、絶縁層111の表面は平坦であることが好ましい。このため、絶縁層111は、有機樹脂を有機溶剤で希釈した組成物を塗布し、乾燥焼成して形成することが好ましい。また、感光性樹脂を希釈した組成物を用いて絶縁層111を形成することで、従来のフォトリソグラフィー工程で形成したレジストマスクを用いてエッチングする工程よりも工程数が減るため、歩留まりが高くなる。ここでは、感光性ポリイミド樹脂を有機溶剤で希釈した組成物を塗布し乾燥し、フォトマスクを用いて露光した後、未硬化部を除去し焼成して絶縁層111を形成する。
【0073】
アンテナ112は、実施の形態1に示すアンテナ83と同様の形成方法及び材料を用いて形成する。ここでは、スパッタリング法によりアルミニウム層を形成した後、フォトリソグラフィー工程により形成したレジストマスクを用いて選択的にエッチングして、アンテナ112を形成する。
【0074】
なお、素子基板1102は、裏面部が一部除去されて薄膜化されていることが好ましい。裏面部を一部除去する方法としては、物理的研磨及び化学的除去がある。物理的研磨は、半導体基板の表面(半導体素子が形成される側)に保護テープを貼り付けた後、半導体基板の裏面を機械研削し、化学的機械研磨により裏面を研磨する。また、化学的除去は、SF、CF等のガスを用いたドライエッチング、フッ酸・硝酸・酢酸混合液、または水酸化カリウム水溶液を用いたドライエッチング等がある。代表的には、素子基板1102の厚さが1μm以上80μm以下、さらには1μm以上50μm以下、さらには1μm以上20μm以下、さらには1μm以上10μm以下、さらには1μm以上5μm以下が好ましい。または、半導体基板の一部を剥離して、薄膜化して素子基板1102を形成してもよい。
【0075】
次に、アンテナ112上に、繊維体113に有機樹脂114が含浸された構造体115を設ける。このような構造体115は、プリプレグとも呼ばれる。プリプレグは、具体的には繊維体にマトリックス樹脂を有機溶剤で希釈した組成物を含浸させた後、乾燥して有機溶剤を揮発させてマトリックス樹脂を半硬化させたものである。構造体115の厚さは、10μm以上100μm以下、さらには10μm以上30μm以下が好ましい。このような厚さの構造体を用いることで、薄型で湾曲することが可能な半導体装置を作製することができる。
【0076】
次に、構造体115を加熱し圧着して、構造体115の有機樹脂114を可塑化または硬化する。なお、有機樹脂114が可塑性有機樹脂の場合、この後、室温に冷却することにより可塑化した有機樹脂を硬化する。
【0077】
有機樹脂114は加熱及び圧着により、素子基板1102及びアンテナ112の表面に有機樹脂114が均一に広がり硬化する。この結果、図3(B)に示すように、繊維体113に含浸し、かつ素子基板1102及びアンテナ112の片面に固着される有機樹脂121となる。なお、素子基板1102及びアンテナ112の片面に固着された有機樹脂121及び繊維体113を実施の形態1と同様、封止層120と示す。構造体115を圧着する工程は、大気圧下または減圧下で行う。
【0078】
以上により、半導体装置を作製することができる。なお、半導体基板101側にも封止層を形成してもよい。この場合は、図1(A)と同様に半導体基板101上に構造体を設け、構造体を加熱し圧着して、構造体の有機樹脂を可塑化または硬化する。有機樹脂が可塑性の場合、この後、室温に冷却することにより可塑化した有機樹脂も硬化する。この結果、図3(C)に示すように、繊維体113及び繊維体113に含浸する有機樹脂121からなる封止層125を形成することができる。即ち、素子基板1102の両面に封止層120、125が設けられる半導体装置を作製することができる。
【0079】
なお、素子基板1102に複数の半導体装置が含まれる場合、素子基板1102及び封止層を分断して、複数の半導体装置を切り出してもよい。このような工程により、複数の半導体装置を作製することができる。分断する際は、ダイシング、スクライビング、はさみやナイフなどの刃物を有する裁断機、又はレーザーカット法等により選択的に分断することができる。
【0080】
本実施の形態で示す半導体装置は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する素子基板と、繊維体とが有機樹脂で固着されている。繊維体は、局所的な押圧による圧力を繊維全体へ分散するため、局所的に圧力がかかりにくい。このため、半導体装置を構成する配線や半導体素子が延伸されず、半導体装置が破壊されにくい。また、素子基板に高強度繊維からなる繊維体が固着されているため、剥離工程においても、素子基板が延伸しにくい。即ち、素子基板に形成される半導体素子、配線等が延伸することを低減することができる。このため、歩留まりを向上させることができる。
【0081】
また、素子基板の厚さを薄くすることで、半導体装置を湾曲させることが可能となる。このため、素子基板の面積を大きくすることが可能である。このため、半導体装置を作製する工程が容易となる。また、当該半導体装置がアンテナ内蔵のRFIDの場合、アンテナの大きさを増大させることが可能である。このため、通信距離の長いRFIDを作製することができる。
【0082】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2と比較して、さらに破壊されにくい半導体装置の作製方法を図4を用いて説明する。
【0083】
実施の形態1と同様に、図4(A)に示すように、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板1102及びアンテナ112を形成する。次に、素子基板1102及びアンテナ112上に構造体115を設け、構造体115上に保護フィルム131を設ける。
【0084】
保護フィルム131としては、高強度材料で形成されていることが好ましい。高強度材料の代表例としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アラミド系樹脂、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール樹脂、ガラス樹脂等がある。
【0085】
保護フィルム131が高強度材料で形成されていることで、実施の形態2と比較してさらに局所的な押圧による破壊を抑制することができる。具体的には、構造体115の繊維体113において、経糸束及び緯糸束が分布しないバスケットホールの面積が局所的圧力がかけられる面積より大きい場合、バスケットホールに局所的に荷重されると、当該圧力が構造体115の繊維体113で吸収されず、直接素子基板1102及びアンテナ112にかかってしまう。この結果、素子基板1102及びアンテナ112が延伸し、半導体素子または配線が破壊されてしまう。
【0086】
しかしながら、高強度材料で形成される保護フィルム131を構造体115上に設けることで、局所的な荷重を保護フィルム131全体で吸収するため、局所的な押圧による破壊の少ない半導体装置となる。
【0087】
次に、図4(B)に示すように、実施の形態2と同様に、構造体115を加熱し圧着して、封止層120を形成する。また、有機樹脂121は保護フィルム131を素子基板1102及びアンテナ112に固着する。即ち、封止層120は、繊維体113及び保護フィルム131を素子基板1102及びアンテナ112に固着している。また、封止層120に含まれる有機樹脂121は繊維体113中に含浸される。
【0088】
この後、図4(C)に示すように、素子基板1102の半導体基板101に構造体を設け、構造体上に保護フィルムを設け、加熱し圧着して封止層125により保護フィルム141を素子基板1102に固着する。
【0089】
なお、図4(A)において、保護フィルム131が熱可塑性材料の場合、素子基板1102及びアンテナ112と構造体115との間に保護フィルム131を設け加熱圧着してもよい。また、図4(C)において、保護フィルム141が熱可塑性材料の場合、半導体基板101と封止層125の間に保護フィルム141を設け加熱圧着してもよい。当該構造においても、局所的押圧による荷重を保護フィルム及び封止層の繊維体で分散させることが可能であり、破壊を低減することができる。
【0090】
なお、素子基板1102に複数の半導体装置が含まれる場合、素子基板1102及び封止層を分断して、複数の半導体装置を切り出してもよい。このような工程により、複数の半導体装置を作製することができる。
【0091】
以上により、局所的押圧による破壊が少ない半導体装置を作製することができる。
【0092】
(実施の形態4)
本実施の形態では、素子基板にアンテナが形成されず、別の基板に設けられたアンテナを素子基板に接続した半導体装置の作製方法について、図5及び図6を用いて説明する。
【0093】
図5(A)に示すように、実施の形態2と同様に、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板1151を形成する。次に、素子基板1151上に、繊維体113に有機樹脂114が含浸された構造体を設ける。
【0094】
ここでは、素子基板1151としては、実施の形態1に示すように、半導体基板101にMOSトランジスタ1060a、1060bを形成する。MOSトランジスタ1060a、1060b上に絶縁層106を形成し、絶縁層106を介してMOSトランジスタのソース領域及びドレイン領域に接続する配線108、109を形成する。配線108、109、絶縁層106上に絶縁層111を形成し、絶縁層111を介して配線109と接続する電極パッド152を形成する。
【0095】
次に、実施の形態1と同様に、素子基板1151上に設けた構造体を加熱し圧着して、素子基板1151の片面に有機樹脂121及び繊維体113からなる封止層120を形成する。
【0096】
次に、封止層120の一部を除去し、電極パッド152の一部を露出させる。ここでは、レーザビームを図5(A)の矢印で示すように封止層120側から電極パッド152へ照射して、封止層120の一部を除去する。なお、当該手法以外にも、通常のフォトリソグラフィー工程を用いて封止層120の一部を除去し電極パッド152の一部を露出してもよい。
【0097】
次に、図5(B)に示すように、封止層120の開口部に接続端子161を形成する。接続端子161は、印刷法、液滴吐出法等で形成することができる。接続端子161の材料としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。
【0098】
この後、図5(C)に示すように、素子基板1151に固着された封止層120と、アンテナ172が形成された基板171とを接着材174にて接着する。このとき、素子基板1151に形成された接続端子161とアンテナ172とを異方性導電接着材173を用いて電気的に接続する。
【0099】
異方性導電接着材173としては、分散した導電性粒子(粒径が、数nm〜数十μm)を含有する接着性樹脂であり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、導電性粒子は、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、炭素、または白金から選ばれた一元素、若しくは複数の元素で形成される。また、これらの元素の多層構造を有する粒子でも良い。更には、樹脂で形成された粒子の表面に、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、または白金から選ばれた一元素、若しくは複数の元素で形成される薄膜が形成された導電性粒子を用いてもよい。さらには、導電性粒子として、CNT(カーボンナノチューブ)を用いてもよい。
【0100】
アンテナ172としては、実施の形態1に示すアンテナ83と同様の材料及び形成方法を適宜用いることができる。
【0101】
アンテナ172が形成された基板171としては、フィルム状のプラスチック基板、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを用いることができる。
【0102】
次に、図6(A)に示すように、実施の形態1と同様に、半導体基板101表面に構造体を設け、加熱し圧着して封止層125を半導体基板101上に形成する。
【0103】
次に、図6(B)に示すように、アンテナ172が形成される基板171と、封止層120、素子基板1151、及び封止層125を封止するようにフィルム175を設けてもよい。フィルム175としては、アンテナ172が形成された基板171と同様のフィルムを用いることができる。
【0104】
上記形態では、アンテナ172を有する基板171が素子基板1151の一方の面にのみ接着された半導体装置を示したが、素子基板1151の両面にそれぞれアンテナが形成された基板を接着してもよい。その形態を図7を用いて以下に示す。
【0105】
素子基板1181としては、実施の形態1に示すように、半導体基板101にMOSトランジスタ1060a、1060bを形成する。MOSトランジスタ1060a、1060b上に絶縁層106を形成し、絶縁層106を介してMOSトランジスタソース領域及びドレイン領域に接続する配線108、109を形成する。配線108、109、絶縁層106上に絶縁層111を形成し、絶縁層111を介して配線109と接続する電極パッド152、導電層153を形成する。
【0106】
次に、半導体基板101、絶縁層106、絶縁層111に貫通孔を形成し、貫通孔の表面に貫通電極183を形成する。なお、貫通電極183は、導電層153に接する。また、貫通電極183は、絶縁層184によって、半導体基板101と絶縁されている。
【0107】
この後、当該素子基板1181の一表面に図5(A)及び(B)と同様の工程により、接続端子161を形成する。次に、図5(C)と同様の工程により、アンテナ172が形成された基板171と、素子基板1181の一方の面に設けられた封止層120とが接着材174で接着される。このとき、素子基板1181に形成された接続端子161とアンテナ172とを異方性導電接着材173を用いて電気的に接続する。また、素子基板1181の他方の面には封止層125が設けられる。
【0108】
次に、素子基板1181の半導体基板101上に構造体を設けた後、加熱圧着して、封止層125を形成する。次に、貫通電極183に接続する接続端子を形成するために、封止層125の一部に開口部を形成する。ここでは、封止層125側から貫通電極183にレーザビーム185を照射して開口部を形成し、貫通電極183を一部露出される。
【0109】
次に、図7(B)に示すように、開口部を充填するように、接続端子186を形成する。接続端子186は、接続端子161と同様に形成することができる。
【0110】
次に、図7(C)に示すように、封止層125と、アンテナ192が形成された基板191を接着材194で接着すると共に、接続端子186及びアンテナ192を異方性導電接着材193で電気的に接続する。
【0111】
以上により、素子基板の両面にアンテナが設けられた半導体装置を作製することができる。このような構造は、UHF帯の電波受信可能なRFIDのように、対称構造のアンテナを有する半導体装置に適用すると、半導体装置の大きさを小さくすることが可能であるため、好ましい。
【0112】
なお、素子基板1151、1181に複数の半導体装置が含まれる場合、素子基板1151、1181及び封止層を分断して、複数の半導体装置を切り出してもよい。このような工程により、複数の半導体装置を作製することができる。
【0113】
本実施の形態で示す半導体装置は、単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を有する素子基板と、繊維体とが有機樹脂で固着されている。繊維体は、局所的な押圧による圧力を繊維全体へ分散するため、局所的に圧力がかかりにくい。このため、半導体装置を構成する配線や半導体素子が延伸されず、半導体装置が破壊されにくい。また、素子基板に高強度繊維からなる繊維体が固着されているため、剥離工程においても、素子基板が延伸しにくい。即ち、素子基板に形成される半導体素子、配線等が延伸することを低減することができる。このため、歩留まりを向上させることができる。
【0114】
また、素子基板の厚さを薄くすることで、半導体装置を湾曲させることが可能となる。このため、素子基板の面積を大きくすることが可能である。このため、外部アンテナを素子基板に接続する際、接続面積を大きくすることが可能となり、半導体装置を作製する工程が容易となる。また、当該半導体装置がアンテナ内蔵のRFIDの場合、アンテナの大きさを増大させることが可能である。このため、通信距離の長いRFIDを作製することができる。
【0115】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至4で示す単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板がプリント基板に接続された半導体装置について、図10を用いて説明する。
【0116】
図10(A)は、本実施の形態の半導体装置250の斜視図を示す。半導体装置250は、フレキシブルプリント基板に実施の形態1乃至4に示す単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板が設けられている。例えば、ポリエステル、ポリイミド等で形成されるベースフィルム251上に、銅、金、銀、アルミニウム等で形成される配線252が設けられる。また、配線252上に絶縁層を介して、実施の形態1乃至4に示す単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板及び封止層の積層体253a、253bが設けられている。また、配線252及び積層体253a、253bは、封止層のコンタクトホールに形成される接続端子を介して接続されている。ベースフィルム251、配線252、及び積層体253a、253bは、保護フィルム254で覆われている。また、半導体装置250の端部においては、保護フィルム254の一部が切除され、コネクタ等の外部回路と配線252が露出されている。
【0117】
素子基板は封止層を介して配線に設け、加熱圧着することで配線及びベースフィルムに素子基板を固着させることができる。
【0118】
なお、ここでは、1層の配線252を有する半導体装置を示したが、この代わりに多層配線構造であってもよい。また、複数の配線で積層体253a、253bが挟まれていてもよい。このように配線を多層にすることで、実装密度を高めることが可能である。
【0119】
図10(B)は、本実施の形態の半導体装置260の断面図を示す。半導体装置260は、プリント基板に、実施の形態1乃至4に示す単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板が設けられている。例えば、コア層261の一方の面に実施の形態1乃至4に示す単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板262が設けられている。また、コア層261と、実施の形態1乃至4に示す単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む素子基板262に含まれる半導体素子または配線が、封止層263を貫通するビア264で接続される。
【0120】
また、素子基板262にはビルドアップ層265が設けられる。ビルドアップ層265の有機樹脂層266に形成されるビア267によって、コア層261、素子基板262に形成される半導体素子及び配線等が、半導体装置260表面に形成される導体パターン268と接続される。
【0121】
また、コア層261の他方の面にはビルドアップ層269が設けられている。
【0122】
また、半導体装置260に、コンデンサ、コイル、抵抗、ダイオード等のチップ271を導電性ペーストやワイヤー等の実装部材272で実装してもよい。
【0123】
本実施の形態の半導体装置は、プリント基板に単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された半導体素子を含む層を有する。また、繊維体を用いたプリプレグを用いて素子基板をプリント基板内に設ける。このため、局所的荷重(点圧、線圧等)がかかっても、繊維体で圧力が分散されるため、実装工程や湾曲による破壊を低減することができる。また、高集積化が可能である。
【0124】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の半導体装置の構成及び応用例を示す。ここでは、半導体装置の代表例として、RFID及び記憶装置について説明する。
【0125】
はじめに、本発明の半導体装置の一つであるRFID501の回路構成例について説明する。図11に、RFID501のブロック回路図を示す。
【0126】
図11のRFID501の仕様は、国際標準規格のISO15693に準拠し、近傍型で、交信信号周波数は13.56MHzである。また、受信はデータ読み出し命令のみ対応し、送信のデータ伝送レートは約13kHzであり、データ符号化形式はマンチェスタコードを用いている。
【0127】
RFID501の回路部412は、大別して、電源部460、信号処理部461から構成される。電源部460は、整流回路462と保持容量463を有する。また、電源部460に、アンテナ411から受信した電力が過剰であった場合、内部回路を保護するための保護回路部(リミッタ回路部ともいう)と、保護回路部を動作させるかどうかを制御するための保護回路制御回路部とを設けてもよい。当該回路部を設けることにより、RFIDと通信機との通信距離が極端に短い状況等においてRFIDが大電力を受信することによって生じる不具合を防ぐことができ、RFIDの信頼性の向上を図ることができる。すなわち、RFID内部の素子の劣化や、RFID自体を破壊することなく、RFIDを正常に動作させることができる。
【0128】
なお、ここでは、通信機とはRFIDと無線通信により情報の送受信を行う手段を有していればよく、例えば、情報を読み取るリーダや、読み取り機能及び書き込み機能を備えたリーダ/ライタ等が挙げられる。また、読み取り機能と書き込み機能の一方又は両方を備える携帯電話やコンピュータ等も含まれる。
【0129】
整流回路462は、アンテナ411で受信された搬送波を整流し、直流電圧を生成する。保持容量463は、整流回路462で生成された直流電圧を平滑化する。電源部460において生成された直流電圧は電源電圧として、信号処理部461の各回路に供給される。
【0130】
信号処理部461は、復調回路464、クロック生成/補正回路465、認識/判定回路466と、メモリコントローラ467、マスクROM468、符号化回路469、および変調回路470を有する。
【0131】
復調回路464はアンテナで受信した信号を復調する回路である。復調回路464で復調された受信信号はクロック生成/補正回路465と認識/判定回路466に入力される。
【0132】
クロック生成/補正回路465は信号処理部461の動作に必要なクロック信号を生成し、さらにそれを補正する機能を有する。例えば、クロック生成/補正回路465は、電圧制御発振回路(以下VCO(Voltage Controlled Oscillator)回路)を有し、VCO回路の出力を帰還信号にして、供給される信号との位相比較し、入力される信号と帰還信号が一定の位相になるよう負帰還により出力信号の調整を行う。
【0133】
認識/判定回路466は、命令コードを認識し判定する。認識/判定回路466が認識し、判定する命令コードは、フレーム終了信号(EOF、end of frame)、フレーム開始信号(SOF、start of frame)、フラグ、コマンドコード、マスク長(mask length)、マスク値(mask value)等である。また、認識/判定回路466は、送信エラーを識別する巡回冗長検査(CRC、cyclic redundancy check)機能も含む。
【0134】
メモリコントローラ467は、認識/判定回路466で処理された信号を基に、マスクROM468からデータを読み出す。また、マスクROM468は、IDなどが記憶されている。マスクROM468を搭載することで、複製や改ざんが不可能な読み取り専用のRFID501として構成される。このような読み取り専用のRFID501を紙に抄き込むことで、偽造防止の紙を提供することができる。
【0135】
符号化回路469はメモリコントローラ467がマスクROM468から読み出したデータを符号化する。符号化されたデータは変調回路470で変調される。変調回路470で変調されたデータはアンテナ411から搬送波として送信される。
【0136】
次に、RFIDの使用例について示す。本発明のRFIDはあらゆる紙媒体及びフィルム媒体に使用できる。特に、本発明のRFIDは、偽造防止が要求されるあらゆる紙媒体に使用することができる。例えば、紙幣、戸籍謄本、住民票、パスポート、免許証、身分証、会員証、鑑定書、診察券、定期券、手形、小切手、貨物引換証、船貨証券、倉庫証券、株券、債券、商品券、チケット、抵当証券などである。
【0137】
また、本発明の実施により、紙媒体上で視覚的に示される情報以上の多くの情報を紙媒体及びフィルム媒体に持たせることができるため、本発明のRFIDを商品ラベルなどに適用することで、商品の管理の電子システム化や、商品の盗難の防止に利用できる。以下、図12を用いて、本発明に係る紙の使用例を説明する。
【0138】
図12(A)は、本発明のRFID501を抄き込んだ紙を使用した無記名債券類511の一例である。無記名債券類511には、切手、切符、チケット、入場券、商品券、図書券、文具券、ビール券、おこめ券、各種ギフト券、各種サービス券等が含まれるが、勿論これらに限定されるものではない。また、図12(B)は、本発明に係るRFID501を抄き込んだ紙を使用した証書類512(例えば、住民票、戸籍謄本)の一例である。
【0139】
図12(C)は、本発明のRFIDをラベルに適用した一例である。ラベル台紙(セパレート紙)513上に、RFID501が抄き込まれた紙でラベル(IDシール)514が形成されている。ラベル514は、ボックス515内に収納されている。ラベル514上には、その商品や役務に関する情報(商品名、ブランド、商標、商標権者、販売者、製造者等)が印刷されている。さらに、RFID501には、その商品(又は商品の種類)固有のIDナンバーが記憶されているため、偽造や、商標権、特許権等の知的財産権侵害、不正競争等の不法行為を容易に把握することができる。RFID501には、商品の容器やラベルに明記しきれない多大な情報、例えば、商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格、生産方法、使用方法、生産時期、使用時期、賞味期限、取扱説明、商品に関する知的財産情報等を入力しておくことができる。そのため、取引者や消費者は、簡易な通信機によって、それらの情報にアクセスすることができる。また、生産者側からは容易に書換え、消去等も可能であるが、取引者、消費者側からは書換え、消去等ができない仕組みになっている。
【0140】
図12(D)は、RFID501を抄き込んだ紙またはフィルムでなるタグ516を示している。RFID501を抄き込んだ紙またはフィルムでタグ516を作製することで、プラスチックの筐体を使用した従来のIDタグよりも安価に製造することができる。図12(E)は、本発明のRFIDを表紙に用いた書籍517であり、表紙にRFID501が抄き込まれている。
【0141】
本発明の半導体装置の一例であるRFIDを搭載したラベル514やタグ516を商品に取り付けておくことで、商品管理が容易になる。例えば、商品が盗難された場合に、商品の経路を辿ることによって、その犯人を迅速に把握することができる。このように、本発明のRFIDをIDタグとして用いることで、商品の原材料や産地、製造や加工、流通、販売などに至るまでの履歴管理や、追跡照会を可能にする。すなわち、商品のトレーサビリティを可能にする。また、本発明により、商品のトレーサビリティ管理システムを従来よりも低コストで導入をすることを可能する。
【0142】
また、本発明の半導体装置の一例であるRFIDは、局所的押圧により破壊しにくい。このため、本発明の半導体装置の一例であるRFIDを有する紙媒体及びフィルム媒体は、貼り付けや設置等の処理において、湾曲させることが可能であり、処理効率が高まる。また、本発明の半導体装置の一例であるRFIDを有する紙媒体及びフィルム媒体に筆記用具で情報を記入することが可能であるため、用途範囲が広がる。
【0143】
次に、本発明の半導体装置の一形態である記憶装置の構成について、以下に示す。ここでは記憶装置の代表例として不揮発性記憶装置を用いて示す。
【0144】
図13は、不揮発性半導体記憶装置の回路ブロック図の一例を示している。不揮発性半導体記憶装置は、メモリセルアレイ552と周辺回路554が同一の素子基板上に形成されている。メモリセルアレイ552は、実施の形態1で示すような不揮発性記憶素子を有している。周辺回路554の構成は以下の通りである。
【0145】
ワード線選択のためにロウデコーダ562と、ビット線選択のためにカラムデコーダ564が、メモリセルアレイ552の周囲に設けられている。アドレスは、アドレスバッファ556を介してコントロール回路558に送られ、内部ロウアドレス信号及び内部カラムアドレス信号がそれぞれロウデコーダ562及びカラムデコーダ564に転送される。
【0146】
データ書き込み及び消去には、電源電位を昇圧した電位が用いられる。このため、コントロール回路558により動作モードに応じて制御される昇圧回路560が設けられている。昇圧回路560の出力はロウデコーダ562やカラムデコーダ564を介して、ワード線やビット線に供給される。センスアンプ566はカラムデコーダ564から出力されたデータが入力される。センスアンプ566により読み出されたデータは、データバッファ568に保持され、コントロール回路558からの制御により、データがランダムアクセスされ、データ入出力バッファ570を介して出力されるようになっている。書き込みデータは、データ入出力バッファ570を介してデータバッファ568に一旦保持され、コントロール回路558の制御によりカラムデコーダ564に転送される。
【0147】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の半導体装置を用いた電子機器について以下に示す。
【0148】
本発明の半導体装置を適用した電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら電子機器の具体例を図14に示す。
【0149】
図14(A)、(B)は、デジタルカメラを示している。図14(B)は、図14(A)の裏側を示す図である。このデジタルカメラは、筐体2111、表示部2112、レンズ2113、操作キー2114、シャッターボタン2115などを有する。筐体2111内部には、記憶装置、MPU、イメージセンサ等の機能を有する本発明の半導体装置2116を備えている。
【0150】
また、図14(C)は、携帯電話を示しており、携帯端末の1つの代表例である。この携帯電話は筐体2121、表示部2122、操作キー2123などを含む。また、携帯電話の内部には、記憶装置、MPU、イメージセンサ等の機能を有する本発明の半導体装置2125を備えている。
【0151】
また、図14(D)は、デジタルプレーヤーを示しており、オーディオ装置の1つの代表例である。図14(D)に示すデジタルプレーヤーは、本体2130、表示部2131、記憶装置、MPU、イメージセンサ等の機能を有する本発明の半導体装置2132、操作部2133、イヤホン2134等を含んでいる。
【0152】
また、図14(E)は、電子ブック(電子ペーパーともいう)を示している。この電子ブックは、本体2141、表示部2142、操作キー2143、記憶装置、MPU、イメージセンサ等の機能を有する本発明の半導体装置2144を含んでいる。またモデムが本体2141に内蔵されていてもよいし、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。
【0153】
以上の様に、本発明の半導体装置の適用範囲は極めて広く、他の電子機器に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明の半導体装置を説明する断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図6】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図7】本発明の半導体装置の作製方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に適用可能な繊維体を説明する上面図である。
【図9】本発明に適用可能なアンテナを説明する上面図である。
【図10】本発明の半導体装置を説明する斜視図及び断面図である。
【図11】本発明の半導体装置を説明する図である。
【図12】本発明の半導体装置の応用例を説明する斜視図である。
【図13】本発明の半導体装置を説明する図である。
【図14】本発明の半導体装置を適用することが可能な電子機器を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶半導体基板またはSOI基板で能動素子が形成され、該能動素子が絶縁層で覆われた厚さ1μm以上80μm以下の素子基板と、
局所的な押圧を緩和させる厚さ10μm以上100μm以下の封止層と、
を有し、
前記素子基板の一方の面または向かい合う一対の面に前記封止層が固着されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
単結晶半導体基板またはSOI基板で能動素子が形成され、該能動素子が絶縁層で覆われた厚さ1μm以上80μm以下の素子基板と、
有機化合物材料又は無機化合物材料の繊維体に有機樹脂が含浸された厚さ10μm以上100μm以下の封止層と、
を有し、
前記素子基板の一方の面または向かい合う一対の面に前記封止層が固着されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
単結晶半導体基板またはSOI基板で能動素子が形成され、該能動素子が絶縁層で覆われた厚さ1μm以上80μm以下の素子基板と、
有機化合物材料又は無機化合物材料の単糸を複数本束ねた経糸及び緯糸が密に織り込まれた繊維体に有機樹脂が含浸された厚さ10μm以上100μm以下の封止層と、
を有し、
前記素子基板の一方の面または向かい合う一対の面に前記封止層が固着されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
単結晶半導体基板またはSOI基板で能動素子が形成され、該能動素子が絶縁層で覆われた厚さ1μm以上80μm以下の厚さの素子基板と、
有機化合物材料又は無機化合物材料の単糸を複数本束ねた経糸及び緯糸が密に織り込まれた繊維体に有機樹脂が含浸された厚さ10μm以上100μm以下の封止層と、
を有し、
前記素子基板の一方の面または向かい合う一対の面は、前記封止層の前記繊維体で全面が覆われ、且つ前記有機樹脂が固着されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項において、前記繊維体は織布または不織布であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか一項において、繊維体は、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、アラミド系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ガラス繊維、または炭素繊維で形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記有機樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7において、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、またはシアネート樹脂であることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項7において、前記熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、またはフッ素樹脂であることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項において、前記能動素子は、MOSトランジスタ、不揮発性記憶素子、またはダイオードの一つ以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、前記素子基板及び前記封止層の間に前記素子基板の前記能動素子に電気的に接続するアンテナが形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された能動素子及び前記能動素子を覆う絶縁層を有する素子基板を形成し、
繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を前記素子基板上に設けた後加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む封止層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された能動素子及び前記能動素子を覆う絶縁層を有する素子基板を形成し、
繊維体に有機樹脂が含浸された第1の構造体を前記素子基板の一方の面に設けた後加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む第1の封止層を形成し、
繊維体に有機樹脂が含浸された第2の構造体を前記素子基板の他方の面に設けた後加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む第2の封止層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された能動素子、前記能動素子を覆う絶縁層、及び配線を有する素子基板を形成し、
繊維体に有機樹脂が含浸された構造体を前記素子基板上に設けた後加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む封止層を形成し、前記封止層の一部を除去して前記配線に接続する接続端子を形成し、
前記封止層にアンテナを有する基板を貼り付けると共に、前記接続端子及び前記アンテナを電気的に接続することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項15】
単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された能動素子、前記能動素子を覆う絶縁層、及び配線を有する素子基板を形成し、
繊維体に有機樹脂が含浸された第1の構造体を前記素子基板の一方の面に設けた後加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む第1の封止層を形成し、前記第1の封止層の一部を除去して前記配線に接続する接続端子を形成し、
前記封止層にアンテナを有する基板を貼り付けると共に、前記接続端子及び前記アンテナを電気的に接続し、
繊維体に有機樹脂が含浸された第2の構造体を前記素子基板の他方の面に設けた後、加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む第2の封止層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項16】
単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された能動素子、前記能動素子を覆う絶縁層、第1の配線、及び第2の配線を有する素子基板を形成し、
繊維体に有機樹脂が含浸された第1の構造体を前記素子基板の一方の面に設けた後加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む第1の封止層を形成し、前記第1の封止層の一部を除去して前記第1の配線に接続する第1の接続端子を形成し、
前記第1の封止層に第1のアンテナを有する基板を貼り付けると共に、前記第1の接続端子及び前記第1のアンテナを電気的に接続し、
繊維体に有機樹脂が含浸された第2の構造体を前記素子基板の他方の面に設けた後、加熱し圧着して、前記素子基板上に前記繊維体及び前記繊維体に含浸された有機樹脂を含む第2の封止層を形成し、前記第2の封止層の一部を除去して前記第2の配線に接続する第2の接続端子を形成し、
前記第2の封止層に第2のアンテナを有する基板を貼り付けると共に、前記第2の接続端子及び前記第2のアンテナを電気的に接続することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項17】
請求項12乃至16のいずれか一項において、前記単結晶半導体基板またはSOI基板を用いて形成された能動素子は、MOSトランジスタ、不揮発性記憶素子、またはダイオードの一つ以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−262547(P2008−262547A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62133(P2008−62133)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】