説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】微細化しても高い性能を実現可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】実施の形態の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、ゲート電極の両側に形成された第1のゲート側壁と、半導体基板上に形成され、ゲート電極との間に第1のゲート側壁を挟むソース・ドレイン半導体層と、を備える。さらに、ゲート電極の両側に、第1のゲート側壁上およびソース・ドレイン半導体層上に形成され、第1のゲート側壁との境界がゲート電極の側面で終端し、第1のゲート側壁よりもヤング率が小さく、かつ、低誘電率の第2のゲート側壁、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲート長縮小によるMISFETの性能向上は依然として継続している。しかし、ゲート長が50nmを下回る領域になると、ゲート下のチャネル領域の抵抗は低下する一方で、浅い不純物領域として形成されるソース・ドレイン領域の抵抗は一定かあるいは増加する。このため、トータルのトランジスタ抵抗に占める寄生抵抗の割合が増加し、トランジスタの性能向上を鈍化させてしまう。
【0003】
ソース・ドレイン領域の寄生抵抗を低減させるために、ソース・ドレイン領域にシリコンを選択的にエピタキシャル成長させて、ソース・ドレイン領域の体積を増加させる手法がある。
【0004】
ソース・ドレイン領域にシリコンを選択的にエピタキシャル成長する手法は、短チャネル効果耐性が強い。このため、さらに微細な世代で必須とされる立体型のトランジスタ、例えばFinFETやナノワイヤトランジスタ、においては欠かせないものとされている。これは立体型のトランジスタではチャネル領域だけでなくソース・ドレイン領域も細線形状であり、ソース・ドレイン領域の寄生抵抗が大きくなるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−110088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、微細化しても高い性能を実現可能な半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、ゲート電極の両側に形成された第1のゲート側壁と、半導体基板上に形成され、ゲート電極との間に第1のゲート側壁を挟むソース・ドレイン半導体層と、を備える。さらに、ゲート電極の両側に、第1のゲート側壁上およびソース・ドレイン半導体層上に形成され、第1のゲート側壁との境界がゲート電極の側面で終端し、第1のゲート側壁よりもヤング率が小さく、かつ、低誘電率の第2のゲート側壁、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図2】第1の実施の形態の半導体装置の上面模式図。
【図3】第1の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図4】第1の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図5】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図6】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図7】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図8】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図9】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図10】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図11】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図12】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図13】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図14】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図15】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図16】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図17】第1の実施の形態の断面TEM写真。
【図18】第1の実施の形態のナノワイヤトランジスタの移動度の測定結果を示す図。
【図19】第1の実施の形態のデバイスシミュレーションで仮定したトランジスタの断面構造を示す図。
【図20】第1の実施の形態の単位ゲート幅当たりの寄生容量を計算した結果を示す図。
【図21】第1の実施の形態の第1の側壁と、第2の側壁との離間距離の説明図。
【図22】第2の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図23】第3の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図24】第4の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図25】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図26】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図27】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図28】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図29】第5の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図30】第6の実施の形態の半導体装置の上面模式図。
【図31】第6の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図32】第6の実施の形態の半導体装置の断面模式図。
【図33】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図34】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図35】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図36】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図37】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図38】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【図39】第6の実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施の形態について説明する。
【0010】
なお、本明細書中においては、{100}面、{110}面を代表する表記として、(100)面、(110)面という表記を用いる。そして、[100]方向、[110]と結晶学的に等価な方向を代表する表記として、それぞれ<100>方向、<110>方向という表記を用いる。
【0011】
また、本明細書中、シリコンゲルマニウム、シリコンカーボンとは、シリコンとゲルマニウム、シリコンとカーボンが規則的に配列した結晶に限られる概念ではなく、シリコン中にゲルマニウムやカーボンがランダムに含有される結晶をも意味するものとする。
【0012】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、ゲート電極の両側に形成された第1のゲート側壁と、半導体基板上に形成され、ゲート電極との間に第1のゲート側壁を挟むソース・ドレイン半導体層と、ゲート電極の両側に、第1のゲート側壁上およびソース・ドレイン半導体層上に形成され、第1のゲート側壁との境界がゲート電極の側面で終端し、第1のゲート側壁よりもヤング率が小さく、かつ、低誘電率の第2のゲート側壁と、を備える。
【0013】
半導体基板は、狭窄部を含む基板半導体層を備える。そして、ゲート絶縁膜が狭窄部の側面上および上面上に形成される。
【0014】
本実施の形態の半導体装置は、いわゆるナノワイヤトランジスタである。以下、特に、n型のナノワイヤトランジスタについて説明する。
【0015】
このナノワイヤトランジスタは、第1のゲート側壁がチャネル領域に与える歪により、移動度が向上する。また、低誘電率の第2の側壁により寄生容量が低減する。
【0016】
また、安定したゲート側壁の製造方法を採用することが可能になる。したがって、プロセスバラツキが抑制され、ばらつきの少ないトランジスタ特性を実現することができる。
【0017】
図1は、本実施の形態の半導体装置の断面模式図である。図2は、本実施の形態の上面模式図である。図1は、図2のA−A断面の断面模式図である。である。図3は、図2のB−B断面の断面模式図である。図4は、図2のC−C断面の断面模式図である。
【0018】
本実施の形態のナノワイヤトランジスタは、半導体基板10に形成される。半導体基板10は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板である。
【0019】
半導体基板10は、例えば、(100)面シリコン基板10a、このシリコン基板上に形成された埋め込み酸化膜10b、この埋め込み酸化膜10b上に形成された狭窄部12を含むSOI層10cで構成される。この狭窄部12が、いわゆるナノワイヤまたはシリコンナノワイヤに相当する。以下、シリコンナノワイヤと称する。また、SOI層10cが基板半導体層に相当する。
【0020】
狭窄部12の側面上および上面上には、ゲート絶縁膜14が形成されている。ゲート絶縁膜14は、例えばシリコン酸化膜である。また、シリコン酸化膜に限らず、シリコン酸窒化膜、ハフニウム酸化膜やジルコニウム酸化膜等の高誘電率膜(high−k膜)、あるいはシリコン酸化膜と高誘電率膜の積層膜等を適用することも可能である。
【0021】
ゲート絶縁膜14上には、ゲート電極16が形成される。本実施の形態では、ゲート電極16はポリシリコン層16aと、金属シリサイド層16bで形成される。金属シリサイド層16bは、例えばニッケルシリサイドである。金属シリサイド層16bは、ニッケルシリサイドに限らず、プラチナシリサイド、ニッケルプラチナシリサイド、コバルトシリサイド等の金属シリサイドを適用することが可能である。また、ゲート電極16は、ポリシリコン単体膜、金属シリサイドなどの金属半導体化合物単体膜、チタンナイトライド(TiN)、タングステン(W)、タンタルカーバイド(TaC)等の金属膜、金属シリサイド以外の金属半導体化合物膜とポリシリコン膜等の半導体との積層膜、あるいは金属膜とポリシリコン膜等の半導体との積層膜等で形成することも可能である。
【0022】
ゲート電極16の両側には、ゲート電極16を挟んで第1のゲート側壁18が形成される。第1のゲート側壁18は、例えば、シリコン窒化膜である。
【0023】
ゲート電極16の両側の半導体基板10上には、ソース・ドレイン半導体層20が形成される。ソース・ドレイン半導体層20とゲート電極16との間には、第1のゲート側壁18が挟み込まれる。ソース・ドレイン半導体層20は、例えば、選択エピタキシャル成長により形成されたシリコン層である。
【0024】
ゲート電極16の両側に、ゲート電極16を挟んで第2のゲート側壁22が形成される。第2のゲート側壁22は、第1のゲート側壁18上およびソース・ドレイン半導体層20上に、第1のゲート側壁18およびソース・ドレイン半導体層20をまたいで形成される。
【0025】
また、第1のゲート側壁18と、第2のゲート側壁22の境界の一端がゲート電極16の側面で終端している。すなわち、第2のゲート側壁22の一部が、ゲート電極16の側面に接している。
【0026】
第2のゲート側壁22は、第1のゲート側壁18よりもヤング率が小さく、かつ、低誘電率である。第1のゲート側壁18がシリコン窒化膜の場合、第2のゲート側壁22は、シリコン窒化膜よりもヤング率が小さく、かつ、低誘電率の、例えばシリコン酸化膜である。また、例えば、第1のゲート側壁18をシリコン酸窒化膜とし、第2のゲート側壁22をシリコン酸化膜とすることも可能である。
【0027】
また、第1の側壁絶縁膜18として、シリコン酸化膜よりも誘電率の高い、タンタル酸化膜、ハフニウム酸化膜やジルコニウム酸化膜等の、いわゆるhigh−k膜を適用することも可能である。また、第2の側壁絶縁膜22として、シリコン酸化膜よりも誘電率の低い、フッ素添加シリコン酸化膜、カーボン添加シリコン酸化膜等の、いわゆるlow−k膜を適用することも可能である。
【0028】
第2のゲート側壁22の両側のソース・ドレイン半導体層20上には、金属シリサイド層24が形成される。金属シリサイド層24は、例えばニッケルシリサイドである。金属シリサイド層24は、ニッケルシリサイドに限らず、プラチナシリサイド、ニッケルプラチナシリサイド、コバルトシリサイド等の金属シリサイドを適用することが可能である。
【0029】
なお、ゲート電極16の両側のSOI層10cには、エクステンション不純物領域26が形成されている。また、ゲート電極16の両側のソース・ドレイン半導体層20にソース・ドレイン不純物領域28が形成される。エクステンション不純物領域26とソース・ドレイン不純物領域28が、ソース・ドレイン領域として機能する。
【0030】
以下、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。図5−図16は、本実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図である。図5、図7、図8、図11、図13、図15、図16は断面模式図である。図6、図9、図10、図12、図14は上面模式図である。
【0031】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、ゲート電極の両側に第1のゲート側壁を形成し、ゲート電極の両側の半導体基板上に、選択成長によりソース・ドレイン半導体層を形成し、熱処理を行い、ウェットエッチングにより、第1のゲート側壁の一部を除去し、ゲート電極の両側の第1のゲート側壁上およびソース・ドレイン半導体層上に、第1のゲート側壁よりもヤング率が小さく低誘電率の第2のゲート側壁を形成する。
【0032】
まず、図5に示すように、例えば、シリコン基板10aの(100)面上に埋め込み酸化膜10b、SOI層10cが形成された半導体基板10を準備する。そして、半導体基板10の上部のSOI層(基板半導体層)10c上にハードマスク層30を形成する。SOI層10cの厚さは、例えば、3〜40nm程度である。ハードマスク層30は、例えば、シリコン窒化膜である。
【0033】
次に、上面模式図である図6、図6のD−D断面の断面模式図である図7に示すように、ハードマスク層30をパターニングする。その後、このハードマスク層30をマスクとしてSOI層10cをエッチングし、SOI層10cにゲート幅方向に一部狭くなった板状の狭窄部12を形成する。この狭窄部12が、いわゆるシリコンナノワイヤである。シリコンナノワイヤ12の幅は、例えば3〜20nm程度である。
【0034】
ハードマスク層30をパターニングする際、ゲート長方向及び狭窄部12の狭窄方向を共に<110>方向にすることで、エッチング後のシリコンナノワイヤの側面は(110)面となる。ゲート長方向及び狭窄部12の狭窄方向を共に<100>方向にすれば、エッチング後のシリコンナノワイヤの側面は(100)面となる。
【0035】
次に、ゲート幅方向の断面模式図である図8に示すように、ハードマスク層30を除去した後、シリコンナノワイヤ12の側面と上面にゲート絶縁膜14を形成する。ゲート絶縁膜14は、例えばシリコン酸化膜である。また、シリコン酸化膜に限らず、シリコン酸窒化膜、ハフニウム酸化膜やジルコニウム酸化膜等の高誘電率膜(high−k膜)、あるいはシリコン酸化膜と高誘電率膜の積層膜等を適用することも可能である。
【0036】
次に、ゲート絶縁膜14の上にゲート電極のポリシリコン層16aを形成し、さらにポリシリコン層16a上に、例えばシリコン窒化膜のハードマスク窒化膜32を形成し、このハードマスク窒化膜32をパターニングする。なお、最終的に形成するゲート電極としては、ポリシリコン単体膜、金属シリサイドなどの金属半導体化合物単体膜、TiN、W、TaC等の金属膜、金属半導体化合物膜とポリシリコン膜等の半導体との積層膜、あるいは金属膜とポリシリコン膜等の半導体との積層膜等を適用することが可能である。
【0037】
次に、ハードマスク窒化膜32をマスクとして、ポリシリコン層16a、ゲート絶縁膜14をパターニングする。そして、上面模式図である図9に示すようにシリコンナノワイヤ12上の一部にのみゲート電極のポリシリコン層16aとゲート絶縁膜14を残す。
【0038】
次に、全面に、例えばシリコン窒化膜を堆積後、上面模式図である図10、および、図10のE−E断面の断面模式図である図11に示すように、ドライエッチングを行ってゲート電極のポリシリコン層16aの両側に、例えばシリコン窒化膜の第1のゲート側壁18を形成する。第1のゲート側壁18のゲート長方向の厚さは、寄生容量低減の観点から5nm以上であることが望ましく、後に形成するエピタキシャル層とゲート電極16の距離を短くして寄生抵抗低減を図る必要から30nm以下であることが望ましい。
【0039】
次に、イオン注入を行い、上部にゲート電極のポリシリコン層16aまたは第1のゲート側壁18が形成されておらず、露出しているSOI層10c中にエクステンション不純物領域26を形成する。
【0040】
エクステンション不純物領域26を形成するイオン注入は比較的低い加速電圧で行うことが望ましい。例えば、砒素(As)のイオン注入については1〜4keV程度で行う。
【0041】
イオン注入後に、窒素雰囲気下でのアニールを行ってシリコンナノワイヤ12の結晶性を回復させる。アニールの温度は、十分な活性化および再結晶化を行う必要から800度以上が望ましく、過度な不純物拡散を防ぐ観点から1100度以下であることが望ましい。なお、このイオン注入とアニールは省略することも可能である。
【0042】
次に、上面模式図である図12、図12のF−F断面の断面模式図である図13に示すように、SOI層10cの露出部上に、選択エピタキシャル成長により、ソース・ドレイン半導体層20となるエピタキシャルシリコン層を形成する。ここで、SOI層10cの露出部上に選択的にエピタキシャル膜を形成するプロセスは、例えば、SOI層10c表面の自然酸化膜除去のための希フッ酸処理及び水素ベイク処理を行った後に、水素キャリアガス雰囲気下で塩酸をエッチングガス、ジクロロシランを成膜ガスとして用いてエピタキシャルシリコン層を成長させるプロセスである。
【0043】
エピタキシャルシリコン層20の厚さは、寄生抵抗低減の観点から10nm以上であることが望ましく、ゲート電極16とソース・ドレイン半導体層22間の寄生容量の低減とプロセス時間低減の観点から50nm以下であることが望ましい。
【0044】
次に、エピタキシャルシリコン層20中にイオン注入を行い、ソース・ドレイン不純物領域28を形成する。このイオン注入で注入する不純物種としては、リン(P)あるいは砒素(As)などを用いることができる。
【0045】
ここで形成するソース・ドレイン不純物領域28と上述のエクステンション注入により形成したエクステンション不純物領域26が合わさってソース・ドレイン領域として機能する。ソース・ドレイン不純物領域28の不純物濃度は寄生抵抗低減の観点から1×1019cm−3以上であることが望ましい。
【0046】
次に、熱処理であるアニールを行い、ソース・ドレイン不純物領域28中の不純物を活性化する。アニール中、シリコン窒化膜である第1のゲート側壁18の熱膨張を、両側のゲート電極16とエピタキシャルシリコン層であるソース・ドレイン半導体層20が抑制する。これにより、第1のゲート側壁18のうちゲート電極16とソース・ドレイン半導体層20に挟まれた領域、すなわち、ソース・ドレイン半導体層20上面よりも下の領域が高密度化される。アニールの温度は、十分な活性化を行う必要から800度以上が望ましく、過度な不純物拡散を防ぐ観点から1100度以下であることが望ましい。
【0047】
次に、上面模式図である図14、図14のG−G面の断面模式図である図15に示すように、熱リン酸によるウェットエッチングを行い、シリコン窒化膜であるゲート電極のポリシリコン層16a上のハードマスク窒化膜32、および、第1のゲート側壁18の一部を除去する。第1のゲート側壁18で除去されるのは、第1のゲート側壁18の上部、すなわち、ソース・ドレイン半導体層20の上面より上の領域である。
【0048】
このウェットエッチングの際、第1のゲート側壁18のソース・ドレイン半導体層20上面より下の領域は上述のアニール中に高密度化されている。このために、熱リン酸によるエッチング速度が大幅に低下するので、除去されずに自己整合的に残存する。特に、シリコン窒化膜は、熱リン酸によるエッチング速度の低下が顕著であるため、第1のゲート側壁18の材料として望ましい。
【0049】
次に、全面に例えばシリコン酸化膜を堆積後、図16の模式断面図に示すように、ドライエッチングを行ってゲート電極のポリシリコン層16aの両側の第1のゲート側壁18上およびソース・ドレイン半導体層20上に、ゲート電極のポリシリコン層16aを挟むように、第2のゲート側壁22を形成する。
【0050】
ここで形成する第2のゲート側壁22の材料は、第1のゲート側壁18の材料よりもヤング率が小さく低誘電率の材料であれば、特に、限定されるものではないが、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)膜等のシリコン酸化膜が望ましい。
【0051】
第2のゲート側壁22の材料が、第1のゲート側壁18の材料よりもヤング率が小さく低誘電率の材料となる組み合わせとしては、例えば、第1のゲート側壁18がシリコン窒化膜で第2のゲート側壁22がシリコン酸化膜、第1のゲート側壁18がシリコン窒化膜で第2のゲート側壁22がシリコン酸窒化膜、第1のゲート側壁18がシリコン酸窒化膜で第2のゲート側壁22がシリコン酸化膜という組み合わせがあげられる。
【0052】
なお、第2のゲート側壁22形成後に、さらにイオン注入と活性化アニールを行ってソース・ドレイン領域の不純物濃度を高めてもかまわない。
【0053】
その後、いわゆるサリサイドプロセスにより、ゲート電極のポリシリコン層16a上の金属シリサイド層16b、ソース・ドレイン半導体層20上の金属シリサイド層24が形成される。以上のプロセスにより、図1に示す本実施の形態の半導体装置が形成される。
【0054】
図17は、実際に上述のプロセスを行って作製したナノワイヤトランジスタのゲート長方向の断面TEM写真である。アニールにより高密度化したため、エピタキシャルシリコン層上面より下の領域のシリコン窒化膜が熱リン酸によるウェットエチング時に除去されず残存し、第1のゲート側壁18が形成されている。
【0055】
本実施の形態のナノワイヤトランジスタにおいて、シリコンナノワイヤは幅(ゲート幅方向の長さ)が3〜20nm程度、高さが3〜40nm程度の板状構造である。この構造では、ゲートがシリコンナノワイヤ中のチャネル領域上面、左右側面の三方向から、チャネル領域の電界を強く支配する。このため、本実施の形態のナノワイヤトランジスタは、ゲート長30nm以下の極短チャネルトランジスタとして動作することが可能である。なお、シリコンナノワイヤの側面は(110)面または(100)面である。
【0056】
また、本実施の形態のナノワイヤトランジスタは、例えば、厚さ10〜50nmのソース・ドレイン半導体層20を備えることで、ソース・ドレイン領域の断面積が大きくなっている。したがって、寄生抵抗が大幅に低減され、トランジスタのオン電流が増大する。
【0057】
本実施の形態の半導体装置では、n型トランジスタのゲート電極のポリシリコン層16aと、例えば、エピタキシャル成長により形成されるソース・ドレイン半導体層20との間に、ヤング率の大きい第1のゲート側壁18が形成される。ヤング率の大きい第1のゲート側壁18がポリシリコン層16aを圧迫することによって、シリコンナノワイヤの上面および側面に垂直な方向には圧縮歪みが、チャネル領域のゲート長方向には伸張歪みが発生する。
【0058】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、熱処理であるアニール中、第1のゲート側壁18の熱膨張を、両側のゲート電極16とソース・ドレイン半導体層20が抑制する。これにより、第1のゲート側壁18がポリシリコン層16aを圧迫することによって、シリコンナノワイヤの上面および側面に垂直な方向には圧縮歪みが、チャネル領域のゲート長方向には伸張歪みが発生する。
【0059】
このように、ナノワイヤトランジスタのチャネル領域には、ナノワイヤトランジスタのゲート長方向に、大きな伸長歪が発生する。ナノワイヤトランジスタがn型トランジスタである場合、このようなゲート長方向の伸長歪によりナノワイヤトランジスタの移動度が向上する。したがって、n型トランジスタの移動度が増加し、結果としてオン電流性能も向上する。
【0060】
図18は、本実施の形態の製造方法で製造するn型ナノワイヤトランジスタの移動度のゲート長依存性の測定結果を示す図である。ナノワイヤはシリコンナノワイヤ、ナノワイヤ幅は25nm、ナノワイヤ高さは15nmである。移動度はゲート長10μmの移動度に対する比率として示している。また、シリコン窒化膜側壁をポリシリコンのゲート電極とエピタキシャルシリコン成長により形成されるソース・ドレイン半導体層の間にのみ残す本実施の形態の構造と、全面TEOS側壁(SiO側壁)の場合の結果を示している。
【0061】
ゲート側壁の種類によらず、移動度は、ゲート長が短い短チャネルほど増加しているが、その増加率は本実施の形態の構造の方が高い。これはシリコン窒化膜側壁による歪みの影響と考えられる。このように、本実施の形態の構造によりトランジスタの移動度が向上し、この結果として電流性能も向上する。
【0062】
なお、微細世代においては、回路面積を小さくするために二つのトランジスタの間隔、いわゆるゲートピッチも短くなる。本実施の形態の構造ではゲート直近の側壁によって歪みが生じるため、短ゲートピッチにおいても大きな歪み効果を得ることができる。
【0063】
また、トランジスタのチャネルへの歪み導入技術として一般的となっている、シリコン窒化膜ストレスライナー技術、すなわち、ゲート電極及びゲート側壁上部全体に応力性のシリコン窒化膜を堆積する手法を本実施の形態に導入すれば、さらに誘起される歪み量を増加することも可能である。
【0064】
なお、上述の説明においては、ソース・ドレイン半導体層20を形成するエピタキシャル半導体膜について、主にシリコンを例に説明したが、これをシリコンよりも格子定数の小さい例えばシリコンカーボンとすることにより、チャネル領域中のゲート長方向の伸張歪みを増加させることができる。
【0065】
また、上述の説明においては、ゲート電極16をポリシリコン層と金属シリサイド層の積層構造を例に説明したが、ゲート電極16をポリシリコン単層の構造、または、ゲート電極として厚さ10nm程度の薄い金属上に厚さ数十nmのポリシリコンを積層した構造の場合にも、ポリシリコンと金属シリサイドの積層構造と同等の歪み効果が期待できる。
【0066】
また、ゲート電極16として金属単層あるいは異なる金属材料の積層構造を採用した場合には、一般的に金属の熱膨張係数がシリコンやシリコン窒化膜の熱膨張係数よりも高い。このため、シリコン窒化膜の第1のゲート側壁をゲート電極とエピタキシャルシリコン層で挟んでアニールした際に、シリコン窒化膜の第1のゲート側壁が、ポリシリコンのゲート電極の場合よりも強く圧迫されてより高い密度となると考えられる。これにより、金属のゲート電極の下に存在するナノワイヤのチャネル領域にはより大きな歪みが加わり、n型ナノワイヤトランジスタの移動度向上効果がさらに増すと考えられる。
【0067】
また、本実施の形態のナノワイヤトランジスタは、第1のゲート側壁18上に第1のゲート側壁18よりも低誘電率の第2のゲート側壁22を備えている。このため、例えば、ゲート電極16とソース・ドレイン半導体層20との間の容量、ゲート電極16とソース・ドレイン半導体層20上に設けられるコンタクトプラグ(図示せず)との容量が、第2のゲート側壁22が第1のゲート側壁18と同一の材料で形成される場合に比べ、小さくなりトランジスタの動作速度が向上する。
【0068】
ゲート側壁材料の種類による寄生容量の変化を、デバイスシミュレーションを用いて計算した。図19は、デバイスシミュレーションで仮定したトランジスタの断面構造を示す図である。ソース・ドレイン半導体層として20nmのエピタキシャルシリコン層が形成されるとし、ゲート電極とエピタキシャルシリコン層の間隔は10nmとしている。また、ゲート電極とタングステンプラグ(金属配線)の間隔は20nmとしている。ゲート電極両側全面に厚さ10nmのTEOS側壁が形成された場合(SiO側壁:図19(a))、ゲート両側全面に厚さ10nmのシリコン窒化膜側壁が形成された場合(SiN側壁:図19(b))、そして、ゲート電極とエピタキシャルシリコン層間にはシリコン窒化膜側壁が、ゲート電極両側でエピタキシャルシリコン層より上の領域には厚さ10nmのTEOS側壁が形成された場合(実施の形態:図19(c))の3通りについて、シミュレーションを行った。なお、ゲート電極とタングステンプラグ(金属配線)の間の上記側壁以外の領域は、SiOであると仮定する。
【0069】
図20は、単位ゲート幅当たりの寄生容量を計算した結果を示す図である。シリコン窒化膜の方がTEOSよりも誘電率が高いため、SiN側壁の場合にはSiO側壁に比べて容量は30%増加する。しかし、シリコン窒化膜側壁をゲート電極とエピタキシャルシリコン層間にのみ形成する本実施の形態の場合、容量増加は15%に抑制される。従って、本実施の形態により、SiN側壁の場合より寄生容量が低減し、トランジスタの動作速度が向上する。
【0070】
図21は、本実施の形態の第1の側壁と、第2の側壁との離間距離の説明図である。
【0071】
本実施の形態において、第1のゲート側壁18と第2のゲート側壁22との境界である第1の境界面B1が、ソース・ドレイン半導体層20と第2のゲート側壁22との境界である第2の境界面B2よりも半導体基板10側(図21中下方)にあり、第1の境界面B1と第2の境界面B2との離間距離が、ゲート絶縁膜14と半導体基板10との境界面B3の法線方向で10nm以下であることが望ましい。第1の境界面B1の全部が第2の境界面B2よりも半導体基板10側にあることが望ましいが、例えば、ゲート電極16の近傍で第1の境界面B1の一部が第2の境界面B2よりも半導体基板10反対側(図21中上方)にあっても構わない。
【0072】
図21は、第1の境界面B1と第2の境界面B2に対し、略垂直な断面である。「ゲート絶縁膜と半導体基板との境界面の法線方向の、第1の境界面と第2の境界面との離間距離」とは、例えば、図21中の距離dで表わされる距離である。図21中ゲート絶縁膜と半導体基板との境界面の法線方向は白矢印で表わされている。
【0073】
なお、第1の境界面B1と第2の境界面B2との離間距離が一定でない場合は、断面で評価される離間距離の最大値が10nm以下であることが望ましい。
【0074】
離間距離が10nmを超えると、第1の側壁18の体積が十分でなくなり、ナノワイヤトランジスタのゲート長方向の伸長歪が低減する。したがって、十分な移動度向上効果が得られなくなる恐れがある。また、第1の境界面B1が、第2の境界面B2よりも半導体基板10と反対側、すなわち図の上側にあると、誘電率の高い第1の側壁18の体積が大きくなりすぎる。したがって、寄生容量の増大による性能の劣化が懸念される。
【0075】
本実施の形態の半導体装置においては、第1の側壁18と第2の側壁22について、適当なヤング率および誘電率の材料を選択し、構造を最適化することで、歪み印加による移動度増加による性能向上効果と、寄生容量低減による性能向上効果が最適化されたナノワイヤトランジスタの実現が可能である。
【0076】
本実施の形態の製造方法によれば、ゲート電極16とエピタキシャル成長により形成されるソース・ドレイン半導体層20の間には、ゲート電極16形成直後に形成した第1のゲート側壁18が最後まで残存する。このため、例えば、ゲート電極とソース・ドレイン半導体層の間の溝にシリコン酸化膜側壁を埋め込むような製造方法とは異なり、溝中の側壁にボイドが生じることはない。したがって、デバイス構造が安定して製造できるため、デバイス特性のばらつきが抑制されるという利点がある。
【0077】
また、本実施の形態の製造方法によれば、例えばシリコン窒化膜をゲート電極16とエピタキシャルシリコン層20の間にのみ自己整合的に残すことができるので、熱リン酸によるシリコン窒化膜側壁のエッチング処理時間を厳密に制御する必要がなく、製造歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0078】
また、本実施の形態の製造方法では、シリコン酸化膜のゲート側壁後に追加のイオン注入と活性化アニールを行わない場合には、従来の一般的なナノワイヤトランジスタの製造方法と工程数が同じであり、プロセスコストの増大を招かない。
【0079】
ゲート長をLとしたとき、強い短チャネル効果耐性を得るためには、ナノワイヤの幅及び高さは(2/3)×L以下であることが望ましい。一方、キャリア移動度の過度の低下を避ける観点から、シリコンナノワイヤの幅及び高さは3nm以上であることが望ましい。
【0080】
また、上記の説明においては、SOI層の狭窄部(ナノワイヤ)は一つであったが、複数のシリコンナノワイヤを並列に並べることも可能である。並べるシリコンナノワイヤの数を増やすことによってトランジスタの電流量が増加し、動作速度が向上する。
【0081】
また、上記実施の形態においては、n型ナノワイヤトランジスタを例に説明した。第1の側壁により印加される歪みに伴う移動度向上効果については、n型ナノワイヤトランジスタに固有である。
【0082】
もっとも、上記実施の形態をp型ナノワイヤトランジスタに適用する場合であっても、デバイス構造が安定して製造でき、デバイス特性のばらつきが抑制されるという効果は得ることが可能である。なお、p型ナノワイヤトランジスタの場合には、ソース・ドレイン領域の不純物は、p型不純物であるボロン(B)やインジウム(In)などが用いられる。
【0083】
エクステンション不純物領域の形成は、例えば、ボロン(B)や二フッ化ボロン(BF)の1〜2keV程度の加速エネルギーのイオン注入で行う。また、ソース・ドレイン不純物領域の形成は、例えば、ボロン(B)、二弗化ボロン(BF)あるいはインジウム(In)をイオン注入することで行われる。
【0084】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置および半導体装置の製造方法は、第1の実施の形態がSOI基板を用いるのに対し、バルク基板を用いる点で異なっている。半導体基板が異なる以外は、基本的に第1の実施の形態と同様であるので重複する内容については記載を省略する。
【0085】
図22は、本実施の形態の半導体装置の断面模式図である。図22(a)は、基板面に垂直なゲート長方向の模式断面図である。図22(b)は、基板面に垂直なゲート電極部のゲート幅方向の模式断面図である。
【0086】
半導体基板10としてバルク基板が適用される。そして、このバルク基板に狭窄部12、いわゆる、ナノワイヤが形成される。本実施の形態においては、この狭窄部12下の半導体基板10内に、素子分離不純物領域36が設けられる。
【0087】
この素子分離不純物領域36は、バルク基板中のナノワイヤより下の領域を通じてソース領域からドレイン領域にリーク電流が流れることを防ぐ。n型トランジスタの場合は、p型不純物が、p型トランジスタの場合はn型不純物で形成される。不純物濃度は、1×1017cm−3以上1×1019cm−3以下であることが望ましい。
【0088】
この不純物導入は、狭窄部12の形成前にシリコン基板中の深い位置全面にイオン注入を行い、狭窄部12下の領域に熱処理で横方向拡散させることによって実現できる。あるいは、狭窄化部12の形成後に狭窄部12以外にイオン注入を行って、シリコン狭窄部12下の領域に熱処理で横方向拡散させることによって実現できる。
【0089】
本実施の形態によれば、高価なSOI基板を用いず安価に、微細化しても高い性能を実現可能なナノワイヤトランジスタおよびその製造方法が実現される。
【0090】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置および半導体装置の製造方法は、第1の実施の形態が半導体基板に設けられた板状の狭窄部の上面上および側面上にゲート絶縁膜およびゲート電極が設けられたナノワイヤトランジスタおよびその製造方法であるのに対し、狭窄部の上面上にはゲート絶縁膜およびゲート電極が設けられず、狭窄部の側面上にのみゲート絶縁膜およびゲート電極が設けられた、いわゆるFinFETおよびその製造方法である。FinFETであること以外は、基本的に第1の実施の形態と同様であるので重複する内容については記載を省略する。
【0091】
図23は、本実施の形態の半導体装置の断面模式図である。図23(a)は、基板面に垂直なゲート長方向の模式断面図である。図23(b)は、ゲート電極部の基板面に垂直なゲート幅方向の模式断面図である。図23(c)は、基板面に平行な狭窄部の模式断面図である。
【0092】
図23に示すように、本実施の形態のFinFETは、狭窄部12の側面上にのみゲート絶縁膜14およびゲート電極16が設けられ、狭窄部12の側面部のみがチャネル領域として機能する。狭窄部12の上面上には、ゲート絶縁膜14およびゲート電極16との間にハードマスク層30が設けられ、狭窄部12の上面部はチャネル領域として機能しない。
【0093】
本実施の形態のFin型トランジスタは、狭窄部12形成に用いるハードマスク層30を、ゲート絶縁膜14形成前に剥離しないことにより製造が可能である。
【0094】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、トランジスタ特性の向上を実現することが可能である。よって、本実施の形態によれば、微細化しても高い性能を実現可能なFinFETおよびその製造方法が実現される。
【0095】
なお、本実施の形態では、半導体基板としてSOI基板を用いる場合を例に説明したが、第2の実施の形態のようにバルク基板を用いることも可能である。
【0096】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置および半導体装置の製造方法は、同一SOI基板上に、n型ナノワイヤトランジスタと、p型ナノワイヤトランジスタを有する半導体装置およびその製造方法である。
【0097】
図24は、本実施の形態の半導体装置の断面模式図である。図24は、基板面に垂直なゲート長方向の模式断面図である。
【0098】
n型ナノワイヤトランジスタ100と、p型ナノワイヤトランジスタ200は、同一のSOI基板である半導体基板10上に形成されている。n型ナノワイヤトランジスタ100およびp型ナノワイヤトランジスタ200は、第1の実施の形態と同様の構造を有している。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0099】
ここで、n型ナノワイヤトランジスタ100のソース・ドレイン半導体層20はシリコンであり、p型ナノワイヤトランジスタ200のソース・ドレイン半導体層40は、シリコンゲルマニウムである。
【0100】
以下、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。図25−図28は、本実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図である。図25−図28は、基板面に垂直なゲート長方向の模式断面図である。
【0101】
ゲート電極16の一部となるポリシリコン層16aの両側に、例えばシリコン窒化膜の第1のゲート側壁18を形成した後、イオン注入を行ってn型ナノワイヤトランジスタ100、p型ナノワイヤトランジスタ200それぞれにエクステンション不純物領域26を形成し、活性化および再結晶化のためのアニールを行うところまでは第1の実施の形態と同様である。
【0102】
次に、図25に示すように、p型トランジスタ200領域上に例えばシリコン酸化膜の保護絶縁膜42を形成した後、n型トランジスタ100領域のSOI層10c露出部上にエピタキシャルシリコン層を成長させ、ソース・ドレイン半導体層20を形成する。続いて、n型トランジスタ100のソース・ドレイン半導体層20中にn型不純物のイオン注入を行い、ソース・ドレイン領域28を形成する。
【0103】
次に、p型トランジスタ200領域上の保護絶縁膜42を除去する。保護絶縁膜42がシリコン酸化膜であれば、例えば希フッ酸処理により除去する。
【0104】
次に、図26に示すようにn型トランジスタ100領域上に、例えば、シリコン酸化膜の保護酸化膜44を形成した後、p型トランジスタ200領域のSOI層10c露出部上にエピタキシャルシリコンゲルマニウム層を成長させ、ソース・ドレイン半導体層40を形成する。続いて、p型トランジスタ200のソース・ドレイン半導体層20中にp型不純物のイオン注入を行い、ソース・ドレイン領域28を形成する。
【0105】
次に、n型トランジスタ100領域上の保護絶縁膜44を除去した後に、熱処理であるアニールを行い、ソース・ドレイン半導体層20、40の不純物を活性化する。そして、活性化とともに、アニール中の第1のゲート側壁18の熱膨張を両側のゲート電極ポリシリコン層16aとエピタキシャルシリコン層20またはエピタキシャルシリコンゲルマニウム層40が抑制することにより、第1のゲート側壁18のうちポリシリコン層16aとエピタキシャルシリコン層20またはエピタキシャルシリコンゲルマニウム層40に挟まれた領域、すなわち、エピタキシャルシリコン層20またはエピタキシャルシリコンゲルマニウム層40上面よりも下の領域が高密度化される。
【0106】
次に、図27に示すように、例えば熱リン酸によるウェットエッチング処理を行い、ゲート電極ポリシリコン層16a上のハードマスク窒化膜32および第1のゲート側壁18上部、すなわち、エピタキシャルシリコン層20またはエピタキシャルシリコンゲルマニウム層40上面よりも上の領域を除去する。
【0107】
第1のゲート側壁18のエピタキシャルシリコン層またはエピタキシャルシリコンゲルマニウム層上面よりも下の領域は、上述のアニール中に高密度化しているために、ウェットエッチング処理によるエッチング速度、例えば熱リン酸によるエッチング速度が低下しているために除去されず残存する。
【0108】
次に、全面にシリコン酸化膜を堆積後、図28に示すように、ドライエッチングを行ってゲート電極のポリシリコン層16aを挟むように、第1のゲート側壁18とエピタキシャルシリコン層のソース・ドレイン半導体層20、および、シリコンゲルマニウム層のソース・ドレイン半導体層40上に、第1のゲート側壁18よりもヤング率が小さく低誘電率の第2のゲート側壁22を形成する。第1のゲート側壁18の材料がシリコン窒化膜である場合、第2のゲート側壁22の材料は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0109】
その後、いわゆるサリサイドプロセスにより、ゲート電極のポリシリコン層16a上の金属シリサイド層16b、ソース・ドレイン半導体層20、40上の金属シリサイド層24が形成される。以上のプロセスにより、図24に示す本実施の形態の半導体装置が形成される。
【0110】
第1の実施の形態と同様、本実施の形態の半導体装置では、n型トランジスタ100のゲート電極のポリシリコン層16aと、例えば、エピタキシャル成長により形成されるソース・ドレイン半導体層20との間に、ヤング率の大きい第1のゲート側壁18が形成される。ヤング率の大きい第1のゲート側壁18がポリシリコン層16aを圧迫することによって、シリコンナノワイヤの上面および側面に垂直な方向には圧縮歪みが、チャネル領域のゲート長方向には伸張歪みが発生する。
【0111】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、熱処理であるアニール中、第1のゲート側壁18の熱膨張を、両側のゲート電極16とソース・ドレイン半導体層20が抑制する。これにより、第1のゲート側壁18がポリシリコン層16aを圧迫することによって、シリコンナノワイヤの上面および側面に垂直な方向には圧縮歪みが、チャネル領域のゲート長方向には伸張歪みが発生する。
【0112】
このように、ナノワイヤトランジスタのチャネル領域には、ナノワイヤトランジスタのゲート長方向に、大きな伸長歪が発生する。ナノワイヤトランジスタがn型トランジスタである場合、このようなゲート長方向の伸長歪によりナノワイヤトランジスタの移動度が向上する。したがって、n型トランジスタ100の移動度が増加し、結果としてオン電流性能も向上する。
【0113】
一方、p型トランジスタ200については、ヤング率の高い第1のゲート側壁18によってチャネル誘起されるゲート長方向の伸張歪みは移動度を劣化させる。しかし、p型トランジスタ200のソース・ドレイン半導体領域40であるシリコンよりも格子定数の大きいエピタキシャルシリコンゲルマニウム層からチャネル領域に、ゲート長方向の圧縮歪みが誘起される。このため、トータルとしてゲート長方向の歪みはキャンセルされるか、シリコンゲルマニウム層からの圧縮歪み量が十分に大きければ、トータルとしてはゲート長方向に圧縮歪みが生じ、p型ナノワイヤトトランジスタの移動度も向上する。
【0114】
したがって、本実施の形態では、n型ナノワイヤトトランジスタとp型ナノワイヤトランジスタの移動度をともに向上させることが可能である。
【0115】
また、第1の実施形態の場合と同様、本実施の形態においても、ゲート電極16両側の下部のみに比較的誘電率の高い、例えばシリコン窒化膜の第1のゲート側壁18が形成され、ゲート電極16両側の上部には比較的誘電率の低い、例えば、シリコン酸化膜の第2のゲート側壁22が形成される。このため、ゲート電極16両側全体に、誘電率の高いシリコン窒化膜のゲート側壁が形成されるような場合と比べて寄生容量の増加が抑制される。
【0116】
第1の実施の形態の場合と同様、本実施の形態においても、ゲート電極16とエピタキシャルシリコン層20およびシリコンゲルマニウム層40の間には、ゲート電極16形成直後に形成した第1の側壁18が最後まで残存する。このため、ゲート電極とエピタキシャルシリコン層の間の溝に、例えばシリコン酸化膜の側壁膜を埋め込むようなプロセスとは異なり、溝中の側壁にボイドが生じることはない。したがって、デバイス構造が安定して製造できるため、デバイス特性のばらつきが抑制されるという利点がある。
【0117】
また、第1の実施の形態の場合と同様、本実施の形態においても、第1のゲート側壁18をゲート電極16とエピタキシャル成長により形成されるソース・ドレイン半導体層20の間のみ自己整合的に残すことができる。したがって、熱リン酸等のウェットエチング処理時間を厳密に制御する必要がなく、製造歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0118】
また、第1の実施の形態の場合と同様、本実施の形態おいても、第2のゲート側壁22形成後に追加のイオン注入と活性化アニールを行わない場合には、n型トランジスタのソース・ドレイン領域にエピタキシャルシリコン膜を、p型トランジスタのソース・ドレイン領域にエピタキシャルシリコンゲルマニウム膜を形成する従来のナノワイヤトランジスタの製造方法と工程数が同等であり、プロセスコストの増大を招かない。
【0119】
以上、本実施の形態によれば、微細化しても高い性能を実現可能な、n型ナノワイヤトランジスタと、p型ナノワイヤトランジスタを有する半導体装置およびその製造方法が実現される。
【0120】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置および半導体装置の製造方法は、第1の実施の形態がSOI基板上に形成されるナノワイヤトランジスタおよびその製造方法であるのに対し、バルク基板上に形成される平面トランジスタおよびその製造方法である。ゲート側壁周りの構造および製造方法は、基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、重複する内容については記載を省略する。
【0121】
図29は、本実施の形態の半導体装置の断面模式図である。図29(a)は、基板面に垂直なゲート長方向の模式断面図である。図29(b)は、基板面に垂直なゲート電極部のゲート幅方向の模式断面図である。
【0122】
この平面トランジスタは、(100)面シリコンの半導体基板10に形成されたゲート絶縁膜14、ゲート絶縁膜14上に形成されたゲート電極16、ゲート電極16の両側に形成された第1のゲート側壁18、半導体基板10中のゲート電極16下の領域であるチャネル領域を挟むように形成されたエクステンション不純物領域26、エクステンション不純物領域26上に、ゲート電極16との間に、第1のゲート側壁18を挟むように形成されたソース・ドレイン半導体層20、ゲート電極16の両側の、第1のゲート側壁18上およびソース・ドレイン半導体層20上に形成され、第1のゲート側壁との境界がゲート電極の側面で終端し、第1のゲート側壁18よりもヤング率が小さく、かつ、低誘電率の第2のゲート側壁、を備えている。
【0123】
そして、第1の実施の形態と同様、第1のゲート側壁18と第2のゲート側壁22との境界である第1の境界面が、ソース・ドレイン半導体層20と第2のゲート側壁22との境界である第2の境界面よりも半導体基板10側にあり、第1の境界面と第2の境界面との離間距離が、ゲート絶縁膜14と半導体基板10との境界面の法線方向で10nm以下であることが望ましい。いいかえれば、第1のゲート側壁18の上面はソース・ドレイン半導体層20上面以下10nm以内の位置にあることが望ましい。
【0124】
第1のゲート側壁18は、例えば、シリコン窒化膜であり、第2のゲート側壁22は、例えば、シリコン酸化膜である。また、ソース・ドレイン半導体層20は、例えば、厚さ10〜50nmのエピタキシャルシリコン層である。
【0125】
第2のゲート側壁22の両側のソース・ドレイン半導体層20上には、金属シリサイド層24が形成される。
【0126】
この構造では、ソース・ドレイン半導体層20によってソース・ドレイン領域の半導体の断面積が増加しているため、寄生抵抗が大幅に低減され、トランジスタのオン電流が著しく向上する。
【0127】
本実施の形態の製造方法は、第1の実施の形態の製造方法において、チャネル領域が形成されるSOI層を狭窄化する工程を除いた以外はほぼ同一である。ただし、平面トランジスタをゲート長50nm以下の領域で動作させるためには、半導体基板10中にn型トランジスタの場合の場合はp型不純物、p型トランジスタの場合はn型不純物を1×1017cm−3から1×1019cm−3の濃度で導入することが不可欠である。この不純物導入はゲート絶縁膜14形成前にシリコンの半導体基板10全面にウェルイオン注入あるいはチャネルイオン注入を行うか、ゲート電極16およびゲート側壁形成後にイオン注入、いわゆるハローイオン注入を行うことによって実現できる。
【0128】
第1の実施の形態の半導体装置と同様、n型トランジスタのゲート電極のポリシリコン層16aと、例えば、エピタキシャル成長により形成されるソース・ドレイン半導体層20との間に、ヤング率の大きい第1のゲート側壁18が形成される。ヤング率の大きい第1のゲート側壁18がポリシリコン層16aを圧迫することによって、チャネル領域の上面に垂直な方向には圧縮歪みが、チャネル領域のゲート長方向には伸張歪みが発生する。
【0129】
また、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、熱処理であるアニール中、第1のゲート側壁18の熱膨張を、両側のゲート電極16とソース・ドレイン半導体層20が抑制する。これにより、第1のゲート側壁18がポリシリコン層16aを圧迫することによって、チャネル領域の上面に垂直な方向には圧縮歪みが、チャネル領域のゲート長方向には伸張歪みが発生する。
【0130】
このように、平面トランジスタのチャネル領域には、ゲート長方向に、大きな伸長歪が発生する。n型トランジスタである場合、このようなゲート長方向の伸長歪により平面トランジスタの移動度が向上する。したがって、n型トランジスタの移動度が増加し、結果としてオン電流性能も向上する。
【0131】
また、第1の実施の形態と同様、本実施の形態においても、ゲート電極16両側の下部、すなわち、ソース・ドレイン半導体層20上面より下の領域のみに誘電率の高い第1のゲート側壁18が形成され、ゲート電極16両側の上部には誘電率の低い第2のゲート側壁22が形成される。このため、ゲート電極16両側全体に、例えばシリコン窒化膜のような誘電率の高いゲート側壁が形成される場合と比べて寄生容量の増加が抑制される。
【0132】
また、本実施の形態の製造方法によれば、ゲート電極16とエピタキシャル成長により形成されるソース・ドレイン半導体層20の間には、ゲート電極16形成直後に形成した第1のゲート側壁18が最後まで残存する。このため、例えば、ゲート電極とソース・ドレイン半導体層の間の溝にシリコン酸化膜側壁を埋め込むような製造方法とは異なり、溝中の側壁にボイドが生じることはない。したがって、デバイス構造が安定して製造できるため、デバイス特性のばらつきが抑制されるという利点がある。
【0133】
また、本実施の形態の製造方法によれば、例えば、シリコン窒化膜をゲート電極とエピタキシャルシリコン層の間にのみ自己整合的に残すことができるので、熱リン酸によるシリコン窒化膜側壁のエッチング処理時間を厳密に制御する必要がなく、製造歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0134】
また、本実施の形態の製造方法では、例えば、シリコン酸化膜の第2のゲート側壁形成後に追加のイオン注入と活性化アニールを行わない場合には、従来のソース・ドレイン領域上にエピタキシャルシリコン膜を形成する平面トランジスタの製造方法と工程数が同等であり、プロセスコストの増大を招かない。
【0135】
以上、本実施の形態によれば、微細化しても高い性能を実現可能な平面トランジスタおよびその製造方法が実現される。
【0136】
(第6の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に第1の犠牲半導体層、第1の半導体層、第2の犠牲半導体層、第2の半導体層を順に形成する。そして、第1の犠牲半導体層、第1の半導体層、第2の犠牲半導体層、第2の半導体層を加工して狭窄部を形成する。そして、狭窄部の少なくとも側面上にトンネル絶縁膜を形成する。そして、トンネル絶縁膜上に電荷を蓄積するシリコン窒化膜の電荷蓄積膜を形成する。そして、電荷蓄積膜上にブロック絶縁膜を形成する。そして、ブロック絶縁膜上にゲート電極膜を形成する。そして、トンネル絶縁膜、電荷蓄積膜、ブロック絶縁膜、ゲート電極膜を加工し、ゲート電極構造を形成する。そして、第1の犠牲半導体層と第2の犠牲半導体層とを選択的に除去することで、狭窄部の第1の半導体層と第2の半導体層との間に第1の空洞を形成する。そして、熱処理を行い、ウェットエッチングによりシリコン窒化膜の一部を除去することで、電荷蓄積膜に第2の空洞を形成する。さらに、第1の空洞および第2の空洞を埋めるシリコン窒化膜と異なる絶縁体膜を堆積し、絶縁体膜を加工してゲート電極構造の両側にゲート側壁を形成する。
【0137】
本実施の形態は、ナノワイヤをチャネル領域とするMONOS(Metal−Oxide−Nitride−Oxide−Semiconductor)メモリを備える半導体記憶装置の製造方法である。
【0138】
本明細書中、「電荷蓄積膜」は、メモリセル情報として積極的に電荷を蓄積する機能を有する膜である。また、「トンネル絶縁膜」は、メモリセルの書き込み・消去時には、トンネリング現象によりチャネル領域と電荷蓄積膜との間での電子・正孔移動経路として機能する膜である。そして、読み出し時・待機時にはそのバリアハイトにより、チャネル領域と電荷蓄積膜との間での電子・正孔移動を抑制する機能を有する膜である。また、「ブロック絶縁膜」は、いわゆる電極間絶縁膜であり、電荷蓄積膜とゲート電極との間の電子・正孔の流れをブロックする機能を有する膜である。
【0139】
図30は、本実施の形態の半導体装置の製造方法によって製造される半導体記憶装置の上面模式図である。図31は、図30のH−H断面、すなわち、基板に垂直なゲート長方向断面の断面模式図である。図32は、図30のI−I断面、すなわち、基板に垂直なゲート電極部のゲート幅方向断面の断面模式図である。
【0140】
この半導体記憶装置は、例えばシリコン基板である半導体基板50に形成された狭窄部を有する第1の絶縁体層52と、第1の絶縁体層52の上面に形成された狭窄部である第1のナノワイヤ54を有する、例えばシリコンの第1の半導体層56と、を備える。そして、第1の半導体層56の上面に形成された狭窄部を有する第2の絶縁体層58と、第2の絶縁体層58の上面に形成された狭窄部である第2のナノワイヤ60を有する、例えばシリコンの第2の半導体層62と、を備える。
【0141】
そして、第1のナノワイヤ54と第2のナノワイヤ60の少なくとも側面に形成されたトンネル絶縁膜64と、トンネル絶縁膜64上に形成されたシリコン窒化膜の電荷蓄積膜66と、を備える。そして、電荷蓄積膜66に形成されるシリコン窒化膜と異なる絶縁体膜で形成される電荷蓄積膜間絶縁体層68と、電荷蓄積膜66および電荷蓄積膜間絶縁体層68上に形成されたブロック絶縁膜70と、ブロック絶縁膜70上に形成されたゲート電極膜72と、を備える。
【0142】
トンネル絶縁膜64、電荷蓄積用膜66であるシリコン窒化膜、ブロック絶縁膜70、ゲート電極膜72でゲート電極構造98が形成される。
【0143】
そして、ゲート電極構造98を挟むように形成されたゲート側壁74を備える。さらに、第1の半導体層56および第2の半導体層62中にゲート側壁74両側に形成されたソース領域80およびドレイン領域82を備える。
【0144】
第1の絶縁体層52および第2の絶縁体層58は、例えばシリコン酸化膜である。また、第1の半導体層56および第2の半導体層62は、例えばシリコンである。したがって、この場合、第1のナノワイヤ54および第2のナノワイヤ60は、ともにシリコンナノワイヤである。以下、それぞれ、第1のシリコンナノワイヤ54、第2のシリコンナノワイヤと称する。
【0145】
また、トンネル絶縁膜64は、例えば、シリコン酸化膜である。また、電荷蓄積膜間絶縁体層68は、例えば、シリコン酸化膜で形成される。また、ゲート電極膜72は、例えば、ポリシリコン膜である。
【0146】
第1の半導体層56中のドレイン領域82と、第2の半導体層62中のドレイン領域82は電気的に絶縁されている。そして、第1のシリコンナノワイヤ54をチャネルとするトランジスタと、第2のシリコンナノワイヤ60をチャネルとするトランジスタは独立したMONOSセルトランジスタとして動作する。
【0147】
すなわち、第1のシリコンナノワイヤ54をチャネル領域とするトランジスタと、第2のシリコンナノワイヤ60をチャネル領域とするMONOSセルトランジスタは、それぞれ”0”または”1”のデータを記憶する役割を担う。
【0148】
以下、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。図33−図39は、本実施の形態の半導体装置の製造方法の工程模式図である。図33、図35、図36、図38、図39は、断面模式図である。図34、図37は、上面模式図である。
【0149】
なお、以下、基板はシリコン基板、第1および第2の半導体層はシリコン、第1および第2の犠牲半導体層は、シリコンゲルマニウムである場合を例に説明する。
【0150】
まず、図33に示すように、シリコン基板50上に、第1の犠牲半導体層84である第1のシリコンゲルマニウム層、第1の半導体層56である第1のシリコン層、第2の犠牲半導体層86である第2のシリコンゲルマニウム層、第2の半導体層62である第2のシリコン層、ハードマスク層88からなる構造を形成する。第1および第2のシリコンゲルマニウム層84、86、第1および第2のシリコン層56、62の厚さは3〜40nm程度である。
【0151】
次に、上面模式図である図34、図34のJ−J断面である図35に示すように、ハードマスク層88をパターニングした後、このハードマスク層88をマスクとして第1のシリコンゲルマニウム層84、第1のシリコン層56、第2のシリコンゲルマニウム層86、第2のシリコン層62をエッチングする。このエッチングにより、第1のシリコンゲルマニウム層84、第1のシリコン層56、第2のシリコンゲルマニウム層86、第2のシリコン層62をゲート幅方向に一部狭くする。すなわち、これらの層の一部を加工して板状化し狭窄部を形成する。板状化した各層の幅は3〜40nm程度である。
【0152】
次に、ゲート幅方向の断面模式図である図36に示すように、ハードマスク層88を除去した後、狭窄化した第2のシリコン層62、すなわち第2のシリコンナノワイヤ60の側面と上面、狭窄化した第2のシリコンゲルマニウム層86の側面、狭窄化した第1のシリコン層56、すなわち第1のシリコンナノワイヤの側面、狭窄化した第1のシリコンゲルマニウム層84の側面にトンネル絶縁膜64、電荷蓄積用膜66であるシリコン窒化膜、ブロック絶縁膜70、ゲート電極膜72を形成する。
【0153】
トンネル絶縁膜64およびブロック絶縁膜70としては、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層膜、高誘電率絶縁膜、あるいはシリコン酸化膜と高誘電率膜の積層膜などが考えられる。ゲート電極膜72としては、ポリシリコン単体膜、金属シリサイドなどの金属半導体化合物単体膜、TiN、W、TaC等の金属膜、金属シリサイド以外の金属半導体化合物膜とポリシリコン膜等の半導体との積層膜、あるいは金属膜とポリシリコン膜等の半導体との積層膜等を適用することが可能である。
【0154】
次に、ゲート電極膜72上にハードマスク窒化膜90を形成し、このハードマスク窒化膜90をパターニングする。その後、このハードマスク窒化膜90をマスクとして、トンネル絶縁膜64、電荷蓄積用膜66、ブロック絶縁膜70、ゲート電極膜72を加工する。そして、図37に示すように、シリコンナノワイヤ上の一部にのみ、トンネル絶縁膜64、電荷蓄積用膜66、ブロック絶縁膜70、ゲート電極膜72を残しゲート電極構造98を形成する。
【0155】
次に、ゲート幅方向の断面模式図である図38に示すように、シリコンゲルマニウムを選択的に除去するエッチングを行って、第1のシリコンゲルマニウム層84、第2のシリコンゲルマニウム層86を除去する。シリコンゲルマニウムの選択エッチングは例えば塩酸系溶液によって実現できる。第1のシリコンゲルマニウム層84、第2のシリコンゲルマニウム層86が除去された領域には第1の空洞92が形成される。
【0156】
次に、熱処理であるアニールを行い、第1のシリコンナノワイヤ54とゲート電極膜72に挟まれた電荷蓄積用膜66であるシリコン窒化膜と、第2のシリコンナノワイヤ60とゲート電極膜72に挟まれた電荷蓄積用膜66を高密度化する。
【0157】
次に、ゲート幅方向の断面模式図である図39に示すように、熱リン酸によるウェット処理を行い、ハードマスク窒化膜88と、電荷蓄積膜66の中で、第1のシリコンナノワイヤ54とゲート電極98、あるいは第2のシリコンナノワイヤ60とゲート電極98に挟まれていない領域を除去し、第2の空洞94を形成する。電荷蓄積用膜66であるシリコン窒化膜の中で、第1のシリコンナノワイヤ54とゲート電極98、あるいは第2のシリコンナノワイヤ60とゲート電極98に挟まれた領域は、アニール工程で高密度化しているため、熱リン酸を行っても除去されず残存する。
【0158】
次に、全面に例えば、シリコン窒化膜と異なる絶縁体膜96、例えばシリコン酸化膜を堆積し、シリコンゲルマニウム層除去工程とシリコン窒化膜除去工程で生じた第1の空洞92および第2の空洞94を埋める。この絶縁体膜96は、電荷蓄積用膜66よりも絶縁性の高い物質である。
【0159】
そして、ドライエッチングを行ってゲート電極構造98を挟むように、ゲート側壁74を形成する(図31)。また、第1の絶縁体層52および第2の絶縁体層58を形成する。
【0160】
ゲート側壁74形成後に、イオン注入を行って第1のシリコン層56および第2のシリコン層62中にゲート側壁74を挟むようにソース領域80とドレイン領域82を形成する(図31)。
【0161】
以後、通常のMONOSメモリ製造工程を行うことにより図30〜図32に示す構造が完成する。
【0162】
本実施の形態の製造方法によれば、第1のシリコンナノワイヤ54とゲート電極膜72に挟まれた電荷蓄積膜66、すなわち第1のシリコンナノワイヤ54をチャネルとするトランジスタが記憶電荷を保持する領域と、第2のシリコンナノワイヤ60とゲート電極74に挟まれた電荷蓄積膜66、すなわち第2のシリコンナノワイヤ60をチャネルとするトランジスタが記憶電荷を保持する領域との間が、物理的に分離されて絶縁される。したがって、一方のセルトランジスタからもう一方のセルトランジスタに記憶電荷が流出して、各セルトランジスタの記憶データが干渉することがない。よって、微細化しても高いメモリ性能を実現できる。
【0163】
なお、上記の説明においては、積層するシリコンナノワイヤは第1のシリコンナノワイヤ54と第2のシリコンナノワイヤ60の2層であったが、さらに第3、第4と積層するシリコンナノワイヤ数を増やしていくことも可能である。シリコンナノワイヤの積層数を増やすことにより、記憶するビット数、すなわちメモリの容量、が増加する。
【0164】
また、上記の説明においては、シリコン基板50に平行な同一面内に形成するシリコンナノワイヤは一つであったが、同一平面内に複数のシリコンナノワイヤ、すなわちシリコン層の狭窄部、を並列に並べることも可能である。並べるシリコンナノワイヤの数を増やすことによっても記憶するビット数が増加する。
【0165】
以上、本実施の形態によれば、微細化しても高い性能を実現可能な、ナノワイヤをチャネル領域とするMONOSメモリを備える半導体記憶装置の製造方法が実現される。
【0166】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。実施の形態の説明においては、半導体装置、半導体装置の製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる半導体装置、半導体装置の製造方法等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0167】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置、半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
【0168】
なお、実施の形態では、基板はシリコン基板、第1および第2の半導体層はシリコン、第1および第2の犠牲半導体層は、シリコンゲルマニウムである場合を例に説明したが、その他の半導体材料を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0169】
10 半導体基板
12 狭窄部
14 ゲート絶縁膜
16 ゲート電極
18 第1のゲート側壁
20 ソース・ドレイン半導体層
22 第2のゲート側壁
50 半導体基板
56 第1の半導体層
62 第2の半導体層
64 トンネル絶縁膜
66 電荷蓄積膜
70 ブロック絶縁膜
72 ゲート電極膜
84 第1の犠牲半導体層
86 第2の犠牲半導体層
92 第1の空洞
94 第2の空洞
96 絶縁体膜
98 ゲート電極構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側に形成された第1のゲート側壁と、
前記半導体基板上に形成され、前記ゲート電極との間に前記第1のゲート側壁を挟むソース・ドレイン半導体層と、
前記ゲート電極の両側に、前記第1のゲート側壁上および前記ソース・ドレイン半導体層上に形成され、前記第1のゲート側壁との境界が前記ゲート電極の側面で終端し、前記第1のゲート側壁よりもヤング率が小さく、かつ、低誘電率の第2のゲート側壁と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板が狭窄部を含む基板半導体層を備え、
前記ゲート絶縁膜が前記狭窄部の少なくとも側面上に形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のゲート側壁がシリコン窒化膜であり、前記第2のゲート側壁がシリコン酸化膜であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のゲート側壁と前記第2のゲート側壁との境界である第1の境界面が、前記ソース・ドレイン半導体層と前記第2のゲート側壁との境界である第2の境界面よりも前記半導体基板側にあり、前記第1の境界面と前記第2の境界面との離間距離が、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との境界面の法線方向で10nm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極が、ポリシリコン膜、金属半導体化合物膜とポリシリコン膜の積層膜、金属膜とポリシリコン膜の積層膜、または、金属膜であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ソース・ドレイン半導体層が、シリコン、シリコンゲルマニウム、または、シリコンカーボンであることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極の両側に第1のゲート側壁を形成し、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板上に、選択成長によりソース・ドレイン半導体層を形成し、
熱処理を行い、
ウェットエッチングにより、前記第1のゲート側壁の一部を除去し、
前記ゲート電極の両側の前記第1のゲート側壁上および前記ソース・ドレイン半導体層上に、前記第1のゲート側壁よりもヤング率が小さく低誘電率の第2のゲート側壁を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板の上部の基板半導体層に狭窄部を形成し、前記ゲート絶縁膜を前記狭窄部の少なくとも側面上に形成することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1のゲート側壁がシリコン窒化膜であり、前記ウェットエッチングが熱リン酸処理であることを特徴とする請求項7または請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板上に第1の犠牲半導体層、第1の半導体層、第2の犠牲半導体層、第2の半導体層を順に形成し、
前記第1の犠牲半導体層、前記第1の半導体層、前記第2の犠牲半導体層、前記第2の半導体層を加工して狭窄部を形成し、
前記狭窄部の少なくとも側面上にトンネル絶縁膜を形成し、
前記トンネル絶縁膜上に電荷を蓄積するシリコン窒化膜の電荷蓄積膜を形成し、
前記電荷蓄積膜上にブロック絶縁膜を形成し、
前記ブロック絶縁膜上にゲート電極膜を形成し、
前記トンネル絶縁膜、前記電荷蓄積膜、前記ブロック絶縁膜、前記ゲート電極膜を加工し、ゲート電極構造を形成し、
前記第1の犠牲半導体層と前記第2の犠牲半導体層とを選択的に除去することで、前記狭窄部の前記第1の半導体層と前記第2の半導体層との間に第1の空洞を形成し、
熱処理を行い、
ウェットエッチングにより前記シリコン窒化膜の一部を除去することで、前記電荷蓄積膜に第2の空洞を形成し、
前記第1の空洞および前記第2の空洞を埋めるシリコン窒化膜と異なる絶縁体膜を堆積し、
前記絶縁体膜を加工して前記ゲート電極構造の両側にゲート側壁を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−124296(P2012−124296A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273271(P2010−273271)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノエレクトロニクス半導体新材料・新構造ナノ電子デバイス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】