説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】STI構造の素子分離を行う場合にソース/ドレイン領域の形成時点で半導体基板に対する転位の発生を抑制できるようにする。
【解決手段】素子分離絶縁膜3を活性領域2との間の接触領域においてシリコン基板1の表面の高さよりも深く且つソース/ドレイン領域1bのピーク濃度となる高濃度不純物拡散領域1bの形成深さd4(もしくはPN接合部)よりも浅い高さに位置し、当該領域よりも外方領域に遠ざかるに連れて深さd4よりも深い深さd2に位置するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性領域の周囲に素子分離領域が設けられた構造を具備した半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置として代表的なフラッシュメモリでは、微細な素子分離構造を形成するためSTI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離を採用している。STI構造は、半導体基板の表面に所定方向に沿って素子分離溝を形成し当該素子分離溝内に素子分離用の絶縁膜を埋込むことで構成されているもので、これにより活性領域が分離されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の技術思想によれば、素子分離用の溝内に塗布型絶縁膜としてポリシラザン膜が埋込まれ、当該ポリシラザン膜上にHDP−CVD(High Density Plasma - Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン酸化膜が形成されており、これにより素子分離絶縁膜を構成している。
【0003】
上記したポリシラザン膜は、ポリシラザンの塗布液を塗布した後に熱処理をすることで酸化膜に転換するものであるが、この熱処理をする際にポリシラザン自身が収縮するのでその応力が半導体基板側に作用する。特に塗布量が多い部分においては発生する応力も大きくなるので、ポリシラザンと接触している部分の半導体基板に与えるひずみ応力も大きくなる。
【0004】
たとえば周辺回路部のトランジスタを形成する領域では、半導体基板の活性領域を囲むようにしてSTIを形成するので、活性領域がポリシラザン膜と接する部分では大きな応力を受けて結晶欠陥や転位が発生する原因となりやすい。特に、トランジスタの不純物拡散領域としてLDD(lightly doped drain)構造を採用する場合に、高濃度不純物領域を形成する際に転位が発生しやすくなる問題がある。
【0005】
すなわち、LDD構造の高濃度不純物領域を形成する場合に、半導体基板の内部においてpn接合が形成される深さ、つまりイオン注入時に不純物濃度がピークレベルにある深さの位置で、イオン打ち込みによる結晶欠陥が多数発生している。この結晶欠陥を低減させて不純物を活性化させるために熱処理を行う。このとき、活性領域と接するSTIの部分で半導体基板がポリシラザンから応力を受けるので、結晶欠陥を核として半導体基板の内部に線状欠陥である転位が発生しやすくなる。このような転位はpn接合のリーク電流増大の原因となるので抑制することが望ましい。そこで、フッ酸などのウェットエッチング処理により酸化膜を落とし込むと良い。すると、ゲート電極下の半導体基板コーナー部の酸化膜をもエッチング処理できる。
【0006】
ゲート電極の側壁を保護するため、予めゲート電極の側壁に絶縁膜を形成すると良いが、素子分離絶縁膜のウェットエッチング処理により当該側壁絶縁膜も処理に曝されるため当該側壁絶縁膜が薄くなり例えば全て処理されてしまうと露出したゲート絶縁膜が処理に曝されてしまい、トランジスタ特性や信頼性に悪影響が及ぼされる可能性が考えられる。したがってウェットエッチング処理量は側壁の絶縁膜の膜厚で制限されてしまい、結晶欠陥対策として十分に素子分離絶縁膜の落とし込みができない。
【特許文献1】特開2006−156471号公報
【特許文献2】特開2004−228557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、STI構造の素子分離を行う場合にソース/ドレイン領域の形成時点で半導体基板に対する転位の発生を抑制できるようにした半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、基板表面からの深さが第1深さを有する溝が周囲に形成されることで区画された活性領域を有する半導体基板と、前記活性領域の一部上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極の両脇の前記活性領域内に、前記半導体基板の表面からの深さが第1の深さより浅い第2の深さで形成され、前記溝の側壁に露出した露出面を有するソース/ドレイン領域と、前記溝内に塗布型絶縁膜を含んで埋込み形成された素子分離絶縁膜とを備え、前記ゲート電極は前記活性領域から前記素子分離絶縁膜上に延出し、前記ゲート電極が上方に位置していない領域における前記素子分離絶縁膜は、前記活性領域との接触領域付近においては前記半導体基板の表面の高さよりも深く前記第2の深さより浅い高さに位置し、前記接触領域付近よりも外方領域において前記第2の深さより深く位置していることを特徴としている。
【0009】
本発明の一態様は、第1導電型の半導体基板の活性領域の周囲に溝を形成する工程と、前記溝内に塗布型絶縁膜を含んだ素子分離絶縁膜を埋込み形成し素子分離領域を形成する工程と、前記活性領域上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記活性領域に前記ゲート電極をマスクとして不純物を導入して前記第1導電型とは逆導電型の第2導電型の低濃度の不純物導入領域を形成する工程と、前記ゲート電極の側壁に沿ってLDD(Lightly Doped Drain)構造形成用のスペーサ膜を形成する工程と、前記ゲート電極およびスペーサ膜をマスクとして第2導電型の高濃度の不純物導入領域を活性領域に形成する工程と、前記活性領域および素子分離領域間における前記素子分離絶縁膜の接触端部を覆うようにマスクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンをマスクとして前記素子分離絶縁膜の接触端部を除く領域において溝内の素子分離絶縁膜の上部を所定膜厚除去する工程と、前記マスクパターンを剥離する工程と、前記素子分離絶縁膜の接触端部を含む溝内の素子分離絶縁膜の上部および前記スペーサ膜をウェットエッチング処理する工程と、前記不純物を活性化させるために熱処理する工程と、前記素子分離絶縁膜上に非塗布型絶縁膜を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ソース/ドレイン領域の形成時点で半導体基板に対する転位の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をNAND型フラッシュメモリ装置の周辺回路部などに形成されるLDD構造を有するトランジスタとその周辺構造に適用した場合の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0012】
まず、図1および図2を参照して本実施形態の低電圧トランジスタの構成を説明する。図1(a)はNAND型フラッシュメモリ装置の周辺回路の低電圧トランジスタの縦断面図、図1(b)はメモリセル領域内に構成されるメモリセルトランジスタの縦断面図を示しており、図2(a)は低電圧トランジスタおよびその周辺の平面図、図2(b)はメモリセルトランジスタおよびその周辺の平面図を模式的に示しており、図1(a)は、図2(a)中1A−1A線、図1(b)は図2(b)の1B−1B線で示す部分の断面を模式的に示している。
【0013】
図1(a)および図1(b)に示すように、半導体基板としてのP型のシリコン基板1には、メモリセル領域M内および周辺回路領域の低電圧トランジスタ形成領域Rの表層にNウェル(図示せず)が形成されており、さらにその表層にPウェル1aが形成されており、当該Pウェル1aに活性領域2が構成されている。STI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離領域が、活性領域2を囲うように形成されている。この素子分離領域内には素子分離絶縁膜3が形成されている。
【0014】
素子分離絶縁膜3は、シリコン基板1に形成されたトレンチ(溝に相当)4の内面に沿って形成されたHTO(High Temperature Oxide)膜5およびこのHTO膜5の内側に形成された塗布型絶縁膜、塗布型酸化膜であるSOG(Spin On Glass)膜6によって構成されている。
【0015】
トレンチ4は、その底面がシリコン基板1の表面からの深さd1に位置するように形成されている。SOG膜6は、その上面がトレンチ4の底面部から所定高さに位置し且つシリコン基板1の表面からの深さが深さd1よりも浅い深さd2に位置するようにトレンチ4内に埋込まれている。
【0016】
SOG膜6は、例えばポリシラザン(PSZ:polysilazane)の薬液を塗布して熱処理することで酸化膜に転換したシリコン酸化膜である。また、このSOG膜6の上面には所定膜厚のTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)酸化膜7およびシリコン窒化膜8が積層されており、さらにトレンチ4内およびその上部を埋め込むようにBPSG膜9が形成されている。
【0017】
活性領域2の上部にはゲート絶縁膜10を介してシリコン基板1の表面内の所定方向に横切るようにゲート電極PGが形成されており、当該ゲート電極PGの両脇にソース/ドレイン領域1dが構成されることによって低電圧トランジスタTrpが構成されている。ゲート電極PGは、下層から多結晶シリコン層11、ゲート間絶縁膜12、多結晶シリコン層13、コバルトシリサイド(CoSi)14が積層されることにより構成されている。
【0018】
尚、このゲート電極PGは、メモリセルトランジスタTrmのゲート電極MGの形成工程と同じ工程で形成されている。なお、ゲート電極MGの浮遊ゲート電極FGに相当する多結晶シリコン層11と、メモリセルトランジスタTrmの制御ゲート電極CGを構成する多結晶シリコン層13との間のゲート間絶縁膜12には開口部12aが形成され、多結晶シリコン層11および13間が構造的に接触し電気的に短絡した状態に構成されている。
【0019】
図1(a)および図2(a)に示すように、活性領域2の表層には、ゲート電極PGの両脇にLDD構造のソース/ドレイン領域1dがゲート電極PGの中央下領域を除く活性領域2全体に渡って形成されている。このLDD構造のソース/ドレイン領域1dは、Pウェル1aの導電型とは逆導電型となるN型の不純物拡散領域であり、第1濃度の低濃度不純物拡散領域1cと、当該第1濃度よりも高い第2濃度の高濃度不純物拡散領域1bにより構成されている。
【0020】
低濃度不純物拡散領域1cは、一端がゲート電極PGの下まで延出することでゲート電極PGの側部と所定長だけオーバーラップしている。高濃度不純物拡散領域1bは、一端がゲート電極PGの側壁から所定間隔離間している。また、シリコン基板1の表面からの高濃度不純物拡散領域1bの形成深さ(不純物分布がピークレベルにある深さまたはPN接合部の深さ)d4は、低濃度不純物拡散領域1cの形成深さ(低濃度不純物分布がピークレベルにある深さまたはPN接合部の深さ)d3よりも深く形成されている。
【0021】
なお、高濃度不純物領域1bは深さd4を保ちながらゲート電極PGの脇から活性領域2の端部まで形成されている。同様に、低濃度不純物領域1cも深さd3を保ちながら、ゲート電極PGの脇から活性領域2の端部まで形成されている。
【0022】
したがって、活性領域2と素子分離絶縁膜3との境界面である活性領域2の側壁にソース/ドレイン領域1dのPN接合部が露出している。また、高濃度不純物領域1bの形成深さd4は、活性領域2から外方に離間した所定位置におけるSOG膜6の上面の深さd2より浅くなるように形成されている。
【0023】
ゲート電極PGの側壁面および活性領域2の上面には、TEOS酸化膜7が形成されており、当該TEOS酸化膜7の外面に沿ってシリコン窒化膜8が形成されている。シリコン窒化膜8の上には、ゲート電極PGの上面高さまで非塗布型絶縁膜としてBPSG膜9が埋込み形成されている。
【0024】
ゲート電極PGの上面およびBPSG膜9の上面には、エッチングストッパ、バリア膜としてのシリコン窒化膜15が形成されている。シリコン窒化膜15の上面には層間絶縁膜16が形成されている。層間絶縁膜16は、TEOS酸化膜により構成されている。層間絶縁膜16、シリコン窒化膜15、BPSG膜9、シリコン窒化膜8およびTEOS酸化膜7を貫通するようにコンタクトホール17aが形成されており、当該コンタクトホール17a内にコンタクトプラグ17が形成されている。コンタクトプラグ17の上には配線層18が形成されている。コンタクトプラグ17の下端はソース/ドレイン領域1dを構成する高濃度不純物領域1bに接触している。
【0025】
尚、メモリセル領域M内においては、図2(b)に示すように、活性領域2がX方向に沿って形成されており、当該活性領域2がX方向に直交するY方向に所定間隔を以って並設されている。また、ワード線WLがY方向に沿って形成されており、X方向に所定間隔を以って並設されている。活性領域2とワード線WLとの交差領域にはメモリセルトランジスタTrmのゲート電極MGが配設されている。
【0026】
図1(b)に示すように、ゲート電極MGは、シリコン基板1のPウェル1a上にゲート絶縁膜10を介して多結晶シリコン層11、ゲート間絶縁膜12、多結晶シリコン層13、コバルトシリサイド層14の積層構造により形成されており、ゲート間絶縁膜12には開口は設けられていない。多結晶シリコン層11が浮遊ゲート電極FGとして機能し、多結晶シリコン層13およびコバルトシリサイド層14が制御ゲート電極CGとして機能する。メモリセルトランジスタTrmは、ゲート電極MGと当該ゲート電極MGのY方向両脇に低濃度不純物拡散領域1cからなるソース/ドレイン領域1eとを備えている。このようにして、ゲート電極MGは、ゲート電極PGとほぼ同様構造によって構成されている。尚、図示しないが、メモリセル領域M内にもバリア膜としてシリコン窒化膜15が形成されている。
【0027】
上記構成において、低電圧トランジスタTrpの周囲に形成されたSOG膜6は、その上端6aが活性領域2との接触領域付近においてシリコン基板1の上面(表面)高さよりも深く、高濃度不純物領域1bの形成深さd4よりも浅い深さに位置し、SOG膜6の上面は接触領域付近よりも外方領域においては深さd4よりも深い深さd2に位置している。このため、高濃度不純物領域1bがSOG膜6から受ける応力の影響が緩和される。これにより、結晶欠陥が応力を受けることによりシリコン基板1内での転位の発生を抑制することができ、リーク電流の低減を図るとともに転位発生に起因した素子不良の発生を抑制できる。
【0028】
次に、上記構成の低電圧トランジスタの製造工程について説明する。尚、メモリセルトランジスタTrmやその他の領域の製造方法の説明は省略する。下記説明において一般的な工程であれば付加しても良いし、必要に応じて各工程を入れ替えて適用しても良い。
【0029】
まず、図3に示すように、P型のシリコン基板1を洗浄後、基板汚染やリソグラフィの際のレジスト倒れの防止を目的として犠牲酸化膜18を形成する。次に、ウェル/チャネル領域の形成を目的としてリソグラフィ技術によりレジスト(図示せず)を塗布しトランジスタTrpの形成領域を含む領域について開口し、B、BF2等の不純物イオンを注入し、Pウェル1aを形成した後、Nチャネルを形成するためにトランジスタTrpの閾値電圧を調整するための不純物イオンを再度注入する。ただし、トランジスタTrpの閾値電圧を0付近に保持したい場合には不純物イオンの注入処理は必要なく、逆に閾値電圧を負としディプレッション型のトランジスタとしたい場合にはリン(P)またはヒ素(As)などのN型の不純物をイオン注入する。不純物イオンの注入時のマスクとして使用したレジストは不要であるため、Oドライアッシャー、薬液処理により剥離する。この後、アニールすることで不純物イオンを活性化する。
【0030】
次に、図4に示すように、犠牲酸化膜18をフッ酸などで剥離した後、水蒸気雰囲気中で加熱し必要な厚さのゲート絶縁膜10を形成し、浮遊ゲート電極FG用の多結晶シリコン層11、加工用のシリコン窒化膜19およびシリコン酸化膜20をCVD法により順次堆積する。その後、通常のリソグラフィ法によりレジスト(図示せず)を塗布してパターンニングし、加工用のシリコン酸化膜20をRIE(Reactive Ion Etching)法により加工した後、Oドライアッシャー処理、薬液処理によってレジストを剥離し、加工用のシリコン酸化膜20をマスクとして多結晶シリコン層11、ゲート絶縁膜10、シリコン基板1の上部をRIE法によりエッチング処理しシリコン基板1にトレンチ4を深さd1で形成する。このとき、トレンチ4の加工が行われずゲート絶縁膜10、多結晶シリコン層11の積層構造が残留する領域が活性領域2となる。
【0031】
次に、図5に示すように、LP−CVD法によりHTO膜5をトレンチ4の内面に沿って形成し、この後、SOG膜6を形成するためのポリシラザンを塗布し、トレンチ4内をポリシラザン塗布液で充填する。次に、400〜500℃の酸化性雰囲気中にて熱処理を行い、ポリシラザン塗布液をシリコン酸化膜に転換しSOG膜6を形成する。
【0032】
次に、図6に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、シリコン窒化膜19をストッパとしてSOG膜6およびHTO膜5を研磨することで平坦化処理を行い、トレンチ4内にSOG膜6が埋め込まれた状態に形成する。
【0033】
次に、図7に示すように、SOG膜6をシリコン窒化膜19の膜厚分だけエッチバックし、シリコン窒化膜19を剥離する。次に、メモリセルトランジスタTrm用のゲート間絶縁膜12を例えばONO膜、NONON膜またはアルミナ(Al)を含有した高誘電体膜により形成する。
【0034】
次に、図8に示すように、ゲート間絶縁膜12の上に多結晶シリコン膜13を堆積する。尚、ゲート間絶縁膜12の形成後で且つ多結晶シリコン膜13を厚く堆積する前に、多結晶シリコン膜を薄く堆積し、低電圧トランジスタTrp用のゲート間絶縁膜12に開口12aを形成し、その後、多結晶シリコン膜13を厚く堆積する。これにより、多結晶シリコン膜13と多結晶シリコン層11とが開口12aを通じて構造的に接触する。
【0035】
次に、図9に示すように、ゲート電極PGの加工時に使用するマスク材としてシリコン窒化膜21をCVD法により堆積する。次に、図10に示すように、フォトリソグラフィ法および異方性エッチング(RIE法)を用いてゲート電極PGのパターンニングを行う。このとき、シリコン窒化膜21上にレジストをパターンニングしてシリコン窒化膜21をエッチング処理しハードマスクとして形成し、当該シリコン窒化膜21をマスクとして多結晶シリコン層13、ゲート間絶縁膜12、多結晶シリコン層11をエッチング処理する。このとき、SOG膜6もその上面がシリコン基板1の表面付近に位置する程度までエッチバックされる。
【0036】
次に、図11に示すように、ゲート電極PGおよび素子分離絶縁膜3を構成するSOG膜6をマスクとしてN型の不純物のイオン注入を行い、ゲート電極PGの脇のシリコン基板1の表層である活性領域2全体に、シリコン基板1の表面からの深さd3の位置に不純物分布のピークレベルが位置するN型の低濃度不純物領域1cを形成する。この低濃度不純物領域1cは、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有するソース/ドレインを形成するために設けられている。図11に示す低濃度不純物領域1cとその下部周囲を覆うシリコン基板1のP型領域との境界線が不純物分布のピークレベルを示している。
【0037】
次に、図12に示すように、レジスト22を塗布してパターンニングする。図13に平面図を示すように、レジスト22のパターンニング残留領域は、活性領域2を平面的に覆い且つ所定のマージンを加味して素子分離絶縁膜3の一部上に張り出した領域である。
【0038】
次に、図14に示すように、パターンニングされたレジスト22をマスクとしてRIE法によりSOG膜6をエッチング加工する。このエッチング加工深さは、予め定められた所望の深さであり、例えば、低濃度不純物領域1cの深さよりも深い深さである。
【0039】
尚、フラッシュメモリ装置1内には、高電圧トランジスタ(図示せず)が別途形成されるが、当該高電圧トランジスタのゲート絶縁膜は低電圧トランジスタTrpのゲート絶縁膜10よりも厚く形成される。高電圧トランジスタのソース/ドレイン領域について浅く不純物を導入するためには、高電圧トランジスタの厚いゲート絶縁膜を除去加工する必要があるが、このとき行われるRIE法によるエッチング加工は当該工程と同一工程で行っても良い。これにより工程数を削減できる。
【0040】
次に、図15に示すように、アッシング等によりレジスト22を剥離し、シリコン酸化膜23をCVD法により全面に堆積し、当該シリコン酸化膜23をRIE法により異方性エッチング処理することで多結晶シリコン層11、ゲート間絶縁膜12、多結晶シリコン層13、シリコン窒化膜21の側壁に沿ってシリコン酸化膜23を残留させるようにスペーサ加工を行う。次に、イオンインプランテーション技術によりリン(P)または砒素(As)等のN型の不純物をシリコン基板1の表層に高濃度にイオン注入する。このときのイオン注入の濃度ピーク位置は、例えば前述のRIE法によるSOG膜6のエッチング加工最深部よりも深い位置に調整される。なお、このイオン注入では、イオン注入領域がイオン損傷によりシリコンがアモルファス化している。また、不純物のピーク分布深さd3、d4は、注入するイオン種や注入条件である加速電圧や注入量に依存している。加工途中におけるゲート電極PGの側壁にはスペーサとしてシリコン酸化膜23が形成されている。高濃度不純物領域1bの端部はシリコン酸化膜23の外側に沿う位置に形成されている。
【0041】
図16は、このときの3次元構造を模式的に示している。この図16に示すように、シリコン基板1の活性領域2は、素子分離絶縁膜3で包囲された状態に設けられている。
次に、図17に示すように、側壁絶縁膜、スペーサ膜として残留したシリコン酸化膜23を除去可能にするように当該シリコン酸化膜23の側壁膜厚に応じてフッ酸系の薬液によるウェットエッチング処理を行う。このウェットエッチング処理によりゲート電極PGの側壁に形成されたシリコン酸化膜23の膜厚よりも厚くSOG膜6の上部が除去される。
【0042】
素子分離絶縁膜3は、特にSOG膜6の上端6aが活性領域2との間の接触領域においてシリコン基板1の表面の高さよりも深く且つ高濃度不純物拡散領域1bの形成深さd2よりも浅い高さに位置し、当該領域よりも外方領域に遠ざかるに連れて形成深さd2よりも深く位置するように形成される。
【0043】
図18は、このときの3次元構造を模式的に示している。この図18に示すように、ウェットエッチング処理によりSOG膜6が等方的に除去処理されることになり、ゲート電極PGがゲート長方向に素子分離絶縁膜3の上面上まで延設したゲート電極PGの延設領域において、当該延設領域におけるゲート電極PGのゲート幅方向中央下の支持部が残留した状態で当該支持部のゲート幅方向脇で且つゲート電極PGの側部下方の素子分離絶縁膜3(SOG膜6)がエッチング除去される。
【0044】
RIE法によりSOG膜6の上部をエッチング処理してから最小限のウェットエッチング処理を等方的に行うため、ゲート絶縁膜10に与えられる悪影響は抑制される。ウェットエッチング量は、ゲート電極PG脇に形成されたシリコン酸化膜23の膜厚で制限されるものの、SOG膜6の上部を事前にRIE法で除去処理しているため、側壁に形成されたシリコン酸化膜23の膜厚がたとえ薄くても素子分離絶縁膜3の上部について必要な膜厚だけ除去処理を行うことができる。
【0045】
次に、RTA(Rapid Thermal Annealing)により、イオン注入処理により低濃度不純物領域1cおよび高濃度不純物領域1bに導入した不純物の活性化を行い、結晶性の回復を行う。これにより、活性領域2にLDD構造のソース/ドレイン領域1dを形成できる。このようにSOG膜6の落とし込みを行ってから熱処理しているため、SOG膜6による高い引張ストレスの影響を低減した状態で熱処理することができ、RTA処理に起因した転位の発生を抑制することができる。このアニール処理を施すことによってN型の各不純物領域1bおよび2cとP型シリコン基板1との間にPN接合が形成されるが、このPN接合部の位置は不純物のピーク分布の深さに比較して若干深くなる。このPN接合部の深さに合わせて活性領域2に接触領域の素子分離絶縁膜3の上面位置を調整すると良い。
【0046】
次に、図19に示すように、ゲート電極PGの上面、側面、活性領域2の上面および素子分離絶縁膜3の上露出面を覆うようにTEOS酸化膜7をLP−CVD法により成膜し、続いてシリコン窒化膜8をLP−CVD法により成膜する。
【0047】
次に、図20に示すように、非塗布型酸化膜としてCVD法によりBPSG膜9をゲート電極PGの脇に埋設し、この後、メルト処理を行うことでボイドの発生を抑制し、CMP法によりシリコン窒化膜8をストッパとして研磨することで平坦化処理する。
【0048】
次に、図21に示すように、シリコン窒化膜8、TEOS酸化膜7、およびシリコン窒化膜21を除去し、BPSG膜9のエッチバックを行い、ゲート電極PGを構成する多結晶シリコン層13の上面を露出させた状態とする。図19では、BPSG膜9の上面と多結晶シリコン層13の上面とを一致させた状態としているが、多結晶シリコン層13をBPSG膜9の上面よりも突出するようにしても良い。
【0049】
次に、図22に示すように、多結晶シリコン層13の上部をコバルト(Co)によりコバルトシリサイド層14として形成し、全面にバリア膜としてシリコン窒化膜15を成膜する。コバルトシリサイド層14の形成では、図13に示す状態から多結晶シリコン層13の露出面をウェットエッチング処理などで洗浄した後にコバルトを成膜し、熱処理を行うことでコバルトと接触している多結晶シリコン層13の上部を部分的に反応させてシリサイド化し、コバルトシリサイド層14を形成できる。シリサイド化の後、未反応の金属を剥離し、シリコン窒化膜15をコバルトシリサイド層14による汚染防止のバリア絶縁膜として形成する。なお、未反応金属の剥離後、再度熱処理を行った上でシリコン窒化膜15の形成しても良い。
【0050】
次に、図23に示すように、プラズマCVD法により層間絶縁膜16としてTEOS酸化膜を所定膜厚形成する。次に、フォトリソグラフィ処理およびRIE法によりコンタクトホール17aおよび配線溝18aを形成し、図1に示すように、コンタクトホール17aおよび配線溝18a内に導体を埋込み、コンタクトプラグ17および配線層18を形成する。この埋込む導体はバリアメタルとしてチタン(Ti)/窒化チタン(TiN)の積層構造を形成し、次にタングステン(W)をCVD法により充填する。これにより、図1に示す構造を得ることができる。この後の工程は図示しないが、さらに上層の多層配線プロセスに続く。
【0051】
本実施形態によれば、素子分離絶縁膜3を構成するSOG膜6を溝4内に埋込み形成し、素子分離絶縁膜3を活性領域2との間の接触領域においてシリコン基板1の表面の高さよりも深く且つソース/ドレイン領域1dのピーク濃度となる高濃度不純物拡散領域1bの形成深さd4(もしくはPN接合部)よりも浅い高さに位置し、当該領域よりも外方に遠ざかるに連れて深さd4よりも深く位置するように形成することができ、SOG膜6が活性領域2に及ぼす引張応力を緩和することができ、LDD構造を形成するための高濃度不純物のイオン注入後にRTA処理で発生しやすい結晶欠陥に起因した転位の発生を抑制することができる。
【0052】
例えば、高電圧トランジスタの場合には耐圧を高めるため、半導体基板2上に形成されるゲート絶縁膜の膜厚が低電圧トランジスタTrpのゲート絶縁膜10の膜厚に比較して厚い。したがって高電圧トランジスタのゲート絶縁膜を加工するプロセスが必要な場合には高電圧トランジスタ周辺の素子分離絶縁膜3の高さ調整は比較的容易となる。
【0053】
低電圧トランジスタTrpの場合には、ゲート絶縁膜10が比較的薄いため高電圧トランジスタのゲート絶縁膜を加工し同時に素子分離絶縁膜が落とし込む工程を要しない。このため、素子分離絶縁膜3がウェットエッチング処理前に大きく落ち込むようなことはない。よって、特に低電圧トランジスタTrpの周辺領域においては、ウェットエッチングによる落とし込み前に活性領域2をマスクにより覆った状態でのRIE法による素子分離絶縁膜3の落とし込み処理は結晶欠陥の抑制に多大な効果を奏する。
【0054】
レジストマスク22を活性領域2の全領域を覆うように形成した状態でRIE法により素子分離絶縁膜3の上部を処理しているため、シリコン基板1のガウジングを防止できトランジスタのショートチャネル効果を防止できる。
【0055】
素子分離絶縁膜3を構成するSOG膜6の上部をRIE法により事前に除去してからウェットエッチング処理を行っているため、ウェットエッチング除去量を低減することができ、ゲート絶縁膜10への悪影響を防止でき、低電圧トランジスタTrpの特性劣化を抑制できる。
【0056】
このウェットエッチング処理は等方的であるため、事前にRIE法にて除去できない領域もエッチング処理することができる。そして、活性領域2と素子分離絶縁膜3との境界を超えた領域までレジスト22が覆われているため、事前のRIE法によるエッチング処理時に同時に活性領域2のシリコン基板1表面が加工されることもなく、素子特性を良好に保持できる。
【0057】
素子分離絶縁膜3のウェットエッチング処理では、LDD構造のスペーサとしての側壁絶縁膜23も同時に除去処理しているため、工程削減できる。尚、側壁絶縁膜23をウェットエッチング処理するときにゲート絶縁膜10との接触部の側壁に残留させるように処理するとゲート絶縁膜10の信頼性を高く保つことができる。
【0058】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形または拡張が可能である。
【0059】
半導体基板としてP型のシリコン基板1に適用したが、N型のシリコン基板の表層にPウェルを形成した基板等を適用しても良く、半導体基板の種類は限られない。 低電圧型のnチャネル型のMOSFETに適用したが、各領域内にドープされる不純物種を変更すればpチャネル型のMOSFETに適用しても良い。
【0060】
ゲート電極PGの上部にコバルトシリサイド層14を形成した実施形態を示したが、その他、タングステン(W)、タンタル(Ta)等をゲート電極PGとして適用したメタルゲート構造に適用しても良い。
【0061】
また、高濃度不純物領域1bの不純物のピーク分布深さd2を基準として説明をしているが、より厳密にはイオン注入後のRTA処理後には不純物深さが若干深くなる。本来イオン注入後の深さ方向のプロファイルから得られる分布と活性化アニールにより不純物が拡散した後の分布とは一致しないが、半導体素子形成技術の微細化に伴いイオン注入後の活性化アニール温度が低温化され、ほぼイオン注入後の分布ピーク位置とアニール後のピーク分布(PN接合部)の深さとは若干異なるもののほぼ一致するとみなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態を示す要部の縦断面図
【図2】模式的に示す平面図
【図3】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その1)
【図4】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その2)
【図5】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その3)
【図6】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その4)
【図7】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その5)
【図8】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その6)
【図9】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その7)
【図10】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その8)
【図11】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その9)
【図12】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その10)
【図13】製造工程の一段階を模式的に示す平面図(その1)
【図14】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その11)
【図15】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その12)
【図16】製造工程の一段階を三次元的に示す模式図(その1)
【図17】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その13)
【図18】製造工程の一段階を三次元的に示す模式図(その2)
【図19】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その14)
【図20】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その15)
【図21】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その16)
【図22】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その17)
【図23】製造工程の一段階を模式的に示す縦断面図(その18)
【符号の説明】
【0063】
図面中、1はシリコン基板(半導体基板)、1dはソース/ドレイン領域、2は活性領域、3は素子分離絶縁膜、4はトレンチ(溝)、6はSOG膜(塗布型絶縁膜)、9はBPSG膜(非塗布型絶縁膜)、PGはゲート電極を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面からの深さが第1深さを有する溝が周囲に形成されることで区画された活性領域を有する半導体基板と、
前記活性領域の一部上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の両脇の前記活性領域内に、前記半導体基板の表面からの深さが第1の深さより浅い第2の深さで形成され、前記溝の側壁に露出した露出面を有するソース/ドレイン領域と、
前記溝内に塗布型絶縁膜を含んで埋込み形成された素子分離絶縁膜とを備え、
前記ゲート電極は前記活性領域から前記素子分離絶縁膜上に延出し、
前記ゲート電極が上方に位置していない領域における前記素子分離絶縁膜は、前記活性領域との接触領域付近においては前記半導体基板の表面の高さよりも深く前記第2の深さより浅い高さに位置し、前記接触領域付近よりも外方領域において前記第2の深さより深く位置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は、低電圧トランジスタのゲート電極であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
第1導電型の半導体基板の活性領域の周囲に溝を形成する工程と、
前記溝内に塗布型絶縁膜を含んだ素子分離絶縁膜を埋込み形成し素子分離領域を形成する工程と、
前記活性領域上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記活性領域に前記ゲート電極をマスクとして不純物を導入して前記第1導電型とは逆導電型の第2導電型の低濃度の不純物導入領域を形成する工程と、
前記ゲート電極の側壁に沿ってLDD(Lightly Doped Drain)構造形成用のスペーサ膜を形成する工程と、
前記ゲート電極およびスペーサ膜をマスクとして第2導電型の高濃度の不純物導入領域を活性領域に形成する工程と、
前記活性領域および素子分離領域間における前記素子分離絶縁膜の接触端部を覆うようにマスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンをマスクとして前記素子分離絶縁膜の接触端部を除く領域において溝内の素子分離絶縁膜の上部を所定膜厚除去する工程と、
前記マスクパターンを剥離する工程と、
前記素子分離絶縁膜の接触端部を含む溝内の素子分離絶縁膜の上部および前記スペーサ膜をウェットエッチング処理する工程と、
前記不純物を活性化させるために熱処理する工程と、
前記素子分離絶縁膜上に非塗布型絶縁膜を形成する工程とを備えたことを特徴とする 半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記マスクパターンを形成する工程では、前記活性領域の全領域を覆うように形成することを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ウェットエッチング処理する工程では、前記スペーサ膜も同時に除去することを特徴とする請求項3または4記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−67683(P2010−67683A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230878(P2008−230878)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】