説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】高周波電力増幅用電界効果型半導体装置において、耐圧を確保しながらの小型化と高効率化の両立が困難になる。
【解決手段】高周波電力増幅用出力段LDMOSに、歪Siチャネルを用いることで更なる効率向上を実現する。更に、チャネル領域を有する歪Si層の膜厚、欠陥の不活性化、或いはフィールドプレート構造の最適化などによってリーク電流を低減しつつ最大限に効率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界効果型半導体装置に関し、特に、移動体通信装置に用いられる800MHz以上の高周波電力増幅用電界効果型半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の移動体通信端末の急速な普及に伴い、より低消費電力かつ高効率な携帯端末用電力増幅器の要求が高まってきている。この用途向けの電力増幅用素子は、化合物半導体を用いたトランジスタ(HBT)やシリコン半導体(Si)を用いた絶縁ゲート電界効果型トランジスタ(Si-MOSFET)などが使用されている。
【0003】
化合物半導体を用いた電力増幅器については、例えば、IEEE Journal of Solid-State Circuits、 Volume: 35 Issue: 8、 p.1109-1120 (2000)(非特許文献1)に述べられている。
【0004】
一方、Si-MOSFETを用いた電力増幅器については、例えば、IEDM99 Technical Digest(1999)、 pp.205-208(非特許文献2)あるいは特開2001-94094号公報(USP 6528848)(特許文献1)に詳しく述べられている。
【0005】
これまで、携帯端末の低消費電力化のために高周波電力増幅器モジュールの一層の高効率化を求めて技術開発がなされてきた。一方で、携帯端末へのカメラ内蔵や動画再生など高度な機能を搭載する傾向が強まっているために、上記高周波モジュールの一層の小型化要求が強まっている。モジュールの小型化と高効率化は相反する側面があるために両方を満足するための高度なデバイスおよびモジュール設計が要求されている。
【0006】
Si-MOSFETを用いた電力増幅器に関しては、これまで、主としてゲート長の微細化による。トランジスタの性能向上と寸法低減を同時に推し進める方向で技術開発が進められてきた。しかしながら、携帯端末の電源は3.5Vのリチウム電池単一電源であり高周波出力段の駆動電圧が変わらないことから微細化にも限界が見えてきている。これを解決する手段として、特開2003-110102号公報(特許文献2)に述べられているような歪Siの適用や、J. G. Fiorenza et al.、 Proc. 1999 IEEE International SOI Conference、 pp. 96 (1999)(非特許文献3)に述べられているようなSOIの適用、或いは、H. Brech et al.、 Tech. Dig. IEDM、 2003、 pp. 359 (2003)(非特許文献4)に述べられているようなトランジスタの寄生容量を低減させるためのフィールドプレートの適用が検討されている。
【0007】
SOI(Silicon on Insulator)デバイスは非特許文献5に開示されているように、 SOIの膜厚が20 nm以下では界面のトラップによるクーロン散乱により移動度が低下するので、Siの膜厚の下限値が存在する。
【0008】
また、非特許文献6の図6、図8には歪SiのGe濃度に対する実験値が開示されており、これらを簡単にまとめて図2に示す。
【0009】
【特許文献1】特開2001−94094号公報/対応米国特許公報:USP6、528、848号
【特許文献2】特開2003−110102号公報
【非特許文献1】IEEE Journal of Solid-State Circuits、 Volume: 35 Issue: 8、p.1109-1120 (2000)
【非特許文献2】IEDM99 Technical Digest(1999)、 pp.205-208
【非特許文献3】J. G. Fiorenza et al.、 Proc. 1999 IEEE International SOI Conference、 pp. 96 (1999)
【非特許文献4】H. Brech et al.、 Tech . Dig. IEDM、 2003、 pp. 359 (2003)
【非特許文献5】J. Koga et al.、「Influence of Buried-Oxide Interface on Inversion-Layer Mobility in Ultra-Thin SOI MOSFETs」、IEEE. Transactions on Electron Devices, 49(2002)1042。
【0010】
【非特許文献6】Si系高移動度MOSトランジスタ技術(高木)、応用物理、第74巻第9号(2005)1158頁−1170頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記非特許文献1に開示されたような化合物半導体を適用した場合、ウェハ単価の高さが問題であった。
【0012】
一方、特許文献1に示されたようなシリコン半導体(Si)を適用した場合、ウェハ単価が化合物半導体に比べて安価であり、更に、既存のSiプロセス技術が適用できる効果がある。こうした観点から、この手法は化合物半導体に比べて有利である。しかし、前にも述べたように、駆動電圧の制限から素子の微細化にも限界が見えてきており、高効率化に限界があった。これを解決する方法として、特許文献2に示された歪Si、非特許文献3のSOI、或いは非特許文献4のフィールドプレートが検討され、ある程度の性能向上が見込まれている。
【0013】
歪Siは、Si基板上に結晶格子の不整合を緩和させたSiGeバッファ層を堆積し、然る後に歪Si層を堆積させた、いわゆるバルク歪Si基板を用いることが一般的である。この基板を用いるにあたり、注意を要する点は、歪Si層とSiGeバッファ層との界面に結晶欠陥を発生させないことである。この結晶欠陥は、ミスフィット転位と呼ばれ、歪Si層の膜厚が厚くなりSiGeバッファ層から受ける応力に耐えきれなくなったときに発生するものである。このミスフィット転位がトランジスタのチャネル近傍に発生すると、リーク電流増大の原因となるため、ミスフィット転位の発生防止あるいは、発生位置の制御が重要となる。
【0014】
ミスフィット転位が発生しない上限の膜厚は臨界膜厚と呼ばれ、一般にマシューズとブラケスレーによる計算値が認められている。図1にSiGeバッファ層のGe濃度に対する臨界膜厚のマシューズとブラケスレーによる計算値を示す。こうした計算値は、例えば、J.W. Matthews and A.E. Blackeslee、 Journal of Crystal Growth、Vol.27、pp.118−125(1974)などが教えるところである。横軸はGe濃度、縦軸は臨界膜厚を示す。曲線はMB(マシューズ・ブラケスレー)の理論曲線を示す。左の曲線が臨界膜厚(hc)、右の曲線が発明者らが発見した第2臨界膜厚(hc)を示す曲線であるが、第2臨界膜厚については後述する。 所望のGe濃度に対し、臨界膜厚(hc)以下の値に歪Si膜厚(h)が設定されておれば、デバイス製造工程で熱処理を加えてもミスフィット転位が形成されない。但し、デバイス製造工程において、ゲート電極材料や素子分離領域埋め込み材料、或いは層間絶縁膜などによる外部応力が印加された場合はこの限りではない。歪SiはSiGeバッファ層のGe濃度が高く歪量が大きい方が、高移動度となるためデバイス性能は向上するが、臨界膜厚が薄くなるためプロセスマージンが狭くなるという、トレードオフの関係がある。
【0015】
Siに引っ張り歪を与えることにより、キャリアの移動度を向上させることを目的とした従来技術は、以下に述べる難点がある。
【0016】
歪Si層の膜厚が臨界膜厚hc未満でなければならず、Si膜厚に制限が生ずる。従来技術によれば、膜厚がhc以上になると、SiとSiGeの界面にミスフィット転位が形成されるからである。半導体デバイス技術において、転位は、デバイス特性に悪影響を及ぼすのは常識となっている。また、ミスフィット転位の増加に伴い歪Si層の歪が緩和してしまう。
【0017】
NMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ作製を目的とした歪Si層は、従来技術によれば、SiGe層のGe濃度5%以上が望ましい(図2の曲線101参照)。また、SiGe層のGe濃度が15%程度になると移動度はこれ以上Ge濃度を増やしてもあまり向上は見られない。典型的な微細MOSのチャネルにキャリアが流れる厚みに相当する反転層は、1 nm幅程度であるので、Ge濃度5%のときの臨界膜厚80 nmは、十分な値であるが、Ge濃度を15%以上にすると、臨界膜厚hcは、図1より17 nm以下となってしまう。デバイス作製プロセス(特に洗浄)は,基本的にSi表面に酸化膜を形成してエッチングを行うプロセスなので,デバイス作製後のSi膜厚は,初期の基板のそれよりも薄くなってしまうことを考慮にいれなければならない。また、Si/SiGe界面からのSi層へのGeの拡散を抑えるようにプロセスに注意を払う必要がある。
【0018】
さらに、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタ作製を目的とした歪Si層は、上記従来技術によれば、Ge濃度15%以上が望ましい(図2の曲線101、102参照)。よって、臨界膜厚hcは、図1より17 nm以下となってしまう。このSi膜厚の制限から以下の課題が生ずる。
【0019】
歪Si層の膜厚が薄いと、チャネルはSiGe層にも形成されてしまうため、移動度は向上しなくなってしまう。混晶散乱効果により、移動度が低くなってしまうからである。
【0020】
上記のとおり、デバイス作製プロセスにより、歪Si層がエッチングされ、デバイス作製後のSi膜厚は、初期の基板のそれよりも薄くなってしまう。従来技術(非特許文献5)によれば、SOI基板のSi膜厚が20 nm以下では、キャリア移動度が低下してしまい、CMOSの性能向上を実現することが難しくなってしまう。
【0021】
また、歪Si層の膜厚が20nm以下と薄くなると、SiGe層にも電流が流れる。SiGe層は、Si層よりも熱伝導度が低く、抵抗も高いため、放熱性が低下し、素子が温度上昇してしまう問題点もある。
【0022】
また、アナログ用の電界効果型トランジスタにおいては、動作電圧が高くなることから、歪Si層の薄膜化は一層深刻になる。
【0023】
本発明の目的は、歪Si層の膜厚を厚くすることにより、高周波電力増幅用半導体装置における電力効率の向上を実現させる技術を提供することにある。本発明の他の目的は高周波電力増幅器の小型化、軽量化を図る技術を提供することにある。本発明の他の目的は歪Siを用いた電界効果型半導体装置において、リーク電流を低減し、かつ高性能化を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願発明の主な形態を説明すれば、以下の通りである。
【0025】
本願発明の第1の形態は、第1導電型のSi基板と、前記第1導電型のSi基板の一主面上に形成された第1導電型のSiGe層と、前記第1導電型のSiGe層上に形成された第1導電型の歪Si層と前記第1導電型の歪Si層上にゲート絶縁膜を介したゲート電極と、
前記ゲート電極下のチャネル領域となる歪Si層を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に形成された第2導電型のソース領域及びドレイン領域と、を有し、前記第2導電型のドレイン領域は、前記チャネル形成領域とは離間されており、前記チャネル領域と前記ドレイン領域に挟まれた部分には前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域となっており、前記チャネル形成領域の歪Si層の厚さと、前記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さが異なること電界効果型半導体装置である。
【0026】
そして、前記第1導電型のSiGe層は、比較的高不純物濃度の第1導電型の第1SiGe層と、第1導電型で前記第1SiGe層の不純物濃度より低不純物濃度の第2SiGe層との積層を有するのが、より実際的な形態である。前記第1導電型のSiGe層が、いわゆる歪緩和SiGe層を構成する。又、横方向拡散型電界効果型半導体装置として、前記ソース領域に電気的に接続されたリーチスルー層が、少なくとも前記第1SiGe層、あるいはSi基板に到達するように前記第2SiGe層を貫通して形成することが実際的な形態である。
【0027】
前述した通り、前記チャネル形成領域の歪Si層の厚さと、前記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さが異なることが本願発明の特徴であるが、更に、次の関係を満たすことが本願の目的に合致する。
(1)上記チャネル領域の厚さhch、上記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さhoff、及び歪Si層の臨界膜厚hcとの関係が0.5hch≦hoff<hc、且つhch<hcであること。
(2)上記チャネル形成領域の厚さhch、上記ドレインオフセット領域における歪Si層の
厚さhoff、及び歪Si層の臨界膜厚hcとの関係がhch<hc≦hoff、且つhch<hcであること。
【0028】
更に、前記(2)の形態の場合、臨界膜厚を越える膜厚の領域が生ずる。この対策としては、大きくは二つの形態が考えられる。
【0029】
その第1は、歪Si層とその下部の半導体層の界面近傍に発生するミスフィット転位を、炭素、窒素、フッ素、酸素、及び水素の群から選ばれた少なくとも1種によって終端することによって好結果を得ることが出来る。
こうした歪Si層とその下部の半導体層の界面近傍に発生するミスフィット転位を、炭素、窒素、フッ素、酸素、及び水素の群から選ばれた少なくとも1種によって終端する発明は、歪Si層の半導体装置の活性領域(活性領域とは、例えば、電界効果型半導体装置でのチャネルである)を有する半導体装置に用いて極めて有用である。当然、本願発明の前記諸形態に適用出来ることは云うまでもない。
【0030】
第2は、前記ミスフィット転位の位置と接合領域(即ち、空乏層を形成する領域)の位置とを離間させておくことである。
【0031】
本願諸発明の形態に対して、前記ドレインオフセット領域の上部にフィールドプレート電極を、更に設けることが、寄生容量低減の観点から有用である。即ち、寄生容量低減と本願発明の歪Si層を活性領域に用いた電界効果型半導体装置の特徴をより顕著に確保することが出来る。フィールドプレート電極には、ソース電極への印加電圧以上、且つドレイン電圧への印加電圧以下の直流電圧を印加する。
【0032】
歪Si層の膜厚が臨界膜厚hcを超えた半導体装置の代表的なものの骨子を説明すれば、以下の通りである。
【0033】
本発明の半導体基板の有する歪Si積層構造の基本構成は、第1導電型のSi基板の一主面の全面もしくは一部に、SiGe層とSi層とが順次積層された第1の半導体積層構造を有する。前記Si層の膜厚は臨界膜厚hcを超えかつ第2臨界膜厚hc'未満である。第1の半導体積層構造のSiGe層とSi層の界面には、ミスフィット転位の拡張転位が含まれる。ここで、第2臨界膜厚hc'は、発明者らが発見した臨界膜厚であり、Si層に積層欠陥が形成され始める臨界膜厚(nm)で、hc'=3/x2、xはSiGe層のGeの組成比でGe濃度は100×x(%)となる。また、一般的にSiGe層をSi1-xGexと表記することもある。本願発明は、従来技術に比べて格段に厚い歪Si膜を有する基板となり、前記Si層の歪は面内で引っ張りとなる。
【0034】
本願発明者らは、臨界膜厚以上でも、第2臨界膜厚未満であれば、ミスフィット転位の拡張転位が起こっても積層欠陥は形成されず、SiGe層中のGe濃度を15%以にしても、上歪Si層の膜厚を20nmを超える厚さにできることを見出し本発明に到った(図1を参照)。
【0035】
前記第1の半導体積層構造のSi層の一主面とSi基板に所定の膜厚の酸化膜を形成した第2の半導体積層構造の酸化膜の一主面とを貼り合わせて形成した第3の半導体積層構造において、SiGe層内部で基板を分離し、第2半導体積層基板側に残った該SiGe層の表面をSi層の表面から10 nmほどの深さまで、研磨し形成した第4の半導体積層構造とする。
【0036】
さらに第4の半導体積層構造のSi層の一主面にSi膜を成膜して第5の半導体積層構造を得る。本願発明は、従来技術に比べて格段に厚い歪SOI構造を提供できる。
本発明の第1の電界効果型半導体装置の構成は、前記第1の半導体積層構造の一主面上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域となる歪Si層を挟むように、電界効果型半導体装置が構成されている。この場合、通例、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内の両者に第2導電型のソース領域及びドレイン領域が形成されている。
【0037】
本発明の第2の電界効果型半導体装置の構成は、前記第4もしくは第5の半導体積層構造の一主面上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域となる歪Si層を挟むように、電界効果型半導体装置が構成されている。この場合、通例、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内の両者に第2導電型のソース領域及びドレイン領域が形成されている。
【0038】
上記電界効果型半導体装置において、一般に、第1の電界効果型半導体装置のソース領域、ドレイン領域はN型(Nチャネル電界効果型半導体装置)、P型(Pチャネル電界効果型半導体装置)のいずれでもよい。
【0039】
又、第1の電界効果型半導体装置と第2の電界効果型半導体装置のNチャネル、Pチャネルを隣接させてCMOSを構成することもできる。
【0040】
本発明の半導体基板を製造する一例は次の工程を有するものである。即ち、Si基板上に、SiGe層を、前記基板の一主面の全面もしくは1部領域に堆積する工程、前記SiGe層上にSi層を形成する工程、を有する。
【0041】
また、本発明のSOI基板を製造する一例は次の工程を有するものである。即ち、前記半導体基板のSi層の一主面と、Si基板に所定の膜厚の酸化膜を形成した半導体支持基板の酸化膜の一主面とを貼り合わせて半導体積層構造を作製する工程、前記半導体積層構造のSiGe層に水素イオンを注入、アニールによって、SiGe層内部で基板を分離する工程、前記半導体支持基板上のSiGe層を研磨し、さらにSi層を10 nm程の深さまで、研磨する工程、を有する。
【0042】
本願の製造方法の主な形態を列挙すれば、次の通りである。
【0043】
製造方法の第1は、第1導電型のSi基板の一主面に第1導電型のSiGe層と、第1導電型の歪Si層とが順次積層された半導体積層構造を準備し、前記半導体積層構造の主面上にゲート絶縁膜およびゲート電極を順に形成し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域以外の部分における歪Si層の一部あるいは全部の上部に、さらに歪Si層を形成することにより、この部分の膜厚をより厚くせしめ、然る後に前記ゲート電極を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に第2導電型のソース領域、チャネル形成領域と離間されたドレイン領域、およびチャネル領域とドレイン領域に挟まれた、前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域をそれぞれ形成することを特徴とする横方向拡散型電界効果型半導体装置の製造方法である。当該横方向拡散型電界効果型半導体装置は、わけても高周波電力増幅用として好ましい。
【0044】
製造方法の第2は、歪緩和SiGe層に接して形成された歪Si層内部にチャネルが形成される電界効果型半導体装置の製造方法において、前記歪緩和SiGe層と歪Si層の界面付近に、炭素、窒素、フッ素、酸素、水素の群から選ばれた少なくとも1者を拡散あるいは注入させることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0045】
製造方法の第3は、歪緩和SiGe層に接して形成された歪Si層内部にチャネルが形成される電界効果型半導体装置の製造方法において、ゲート電極を形成後に多結晶シリコンによる側壁を形成する工程を有し、上記工程により形成されたゲート電極および側壁をマスク領域として自己整合的にドレインオフセットないしはソースドレインエクステンション部分を形成する為の不純物注入を行なう工程を有し、かつ前記不純物注入の工程を実施した後に、上記多結晶シリコン側壁を除去する工程を有することを特徴とする電界効果型半導体装置の製造方法である。
【0046】
製造方法の第4は、第1導電型のSi基板の一主面に第1導電型のSiGe層と、第1導電型の歪Si層とが順次積層された半導体積層構造を具備し、前記半導体積層構造の主面上にゲート絶縁膜およびゲート電極を形成する工程を有し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域となる歪Si層を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に第2導電型のソース領域及び、前記チャネル形成領域とは離間されたドレイン領域を形成する工程を有し、かつ、チャネル領域とドレイン領域に挟まれた部分に前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域を形成する工程を有し、上記ゲート電極に隣り合い、上記ドレインオフセット領域の上部に位置するフィールドプレート電極を形成する工程を有することを特徴とする横方向拡散型電界効果型半導体装置の製造方法である。当該横方向拡散型電界効果型半導体装置は、わけても高周波電力増幅用として好ましい。こうした諸製造方法の更なる詳細は、実施の形態の説明においてなされるであろう。
【発明の効果】
【0047】
本願諸発明は、半導体装置のリーク電流を低減し、かつ電力増幅器効率を向上させることが可能である。本願諸発明は、高周波電力増幅用に極めて適している。従って、高周波電力増幅モジュール及びこれを用いた通信装置の小型軽量化と高効率化を両立できる。
【0048】
また、本願発明は、半導体装置のリーク電流を低減し、キャリア移動度を向上させることが可能であるので、上記高周波電力増幅モジュールのみならず、CMOSを用いたアナログLSIやマイコン用LSIの高速、低消費電力化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本願発明の具体的な実施の形態を説明するに先立って、発明者らによるこれまでの技術の考察と実験結果、並びに本願に到る経緯を説明する。
【0050】
発明者らは高周波電力増幅用電界効果型半導体装置への歪Si適用に際し、前記トレードオフの問題に鑑み、歪Si膜厚を中心に最適なデバイス構造に関する詳細な検討を行った。
【0051】
前記特許文献2に示された、歪Siを用いた高周波電力増幅用電界効果型半導体装置の構造を図3に示す。p型Si基板1に、p+低抵抗の第1SiGe層2、p-高抵抗の第2SiGe層3、及びp型高抵抗Si層4が積層されている。中心にn型のドレイン領域12、n型ソース領域9が配置される。符号6はp型ウエル、7はゲート絶縁膜、8はゲート電極、10はn型ドレインオフセット領域、11はポケットパンチストッパー、13は基板コンタクト、14は第1配線、15はソースコンタクト、17はドレインコンタクトプラグ、100は基板1の裏面に設けられたソース電極である。この型の素子構造を横方向拡散絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(LDMOS)と呼ぶ。通常の電界効果型半導体装置とは異なり、耐圧確保のためにドレイン側にオフセット領域10が設けられている。従って、電界効果型半導体装置のオン抵抗には、通常の電界効果型半導体装置の場合の抵抗に、オフセット領域の抵抗分が付加されることになる。これまでの発明者らによる検討結果によれば、ゲート電極下部のチャネル領域の抵抗よりもオフセット領域の抵抗の方が全体のオン抵抗に占める比率が大きい。更に、チャネル部分ではゲート電極直下のごく薄い反転層領域のみを電流が流れるが、オフセット部分ではこれよりも深い領域を電流が流れることが判明した。この状態を図4に示す。図4には説明に関連する主要部のみ示した。半導体層4が歪Si層である。半導体層3は前述のp型SiGe層、p型ウエル6内にゲート電極8が配置され、ソース領域9、ドレイン領域12が対向している。この例では、ソース領域9とドレイン領域12の間には、チャネル部とオフセット部が存在する。斜線を施した領域34が電流の範囲を例示している。即ち、オフセット部分ではチャネル部より深い領域を電流が流れている。
【0052】
その一方で、歪Si層の移動度と、SiGeバッファ層の移動度とを比較すると、前者はSiよりも高く、後者はSiよりも低い。言い換えると、歪Si層4とSiGeバッファ層3各々の部分の抵抗は、それぞれ前者がSiよりも低く、後者がSiよりも高くなる。このことから、特にオフセット部分の抵抗を低減させるためには、その部分で歪Si層4内を流れる電流成分が大きくなるようにすることが重要な課題となる。
【0053】
又、歪Si層は前記したように限られた膜厚しか許されていないため、素子製造工程において削れを最小限に抑えることで動作に支障のない程度の膜厚を残してやることも重要な課題である。特に、電界効果型半導体装置においては、寄生容量を低減するためにゲート電極の周囲を絶縁体の側壁で覆うことが一般的に行われている。しかし、この側壁を形成する工程(ゲートに対して自己整合的に側壁絶縁膜を加工する工程)において絶縁膜とシリコンのエッチング選択比の関係で、シリコンのオーバーエッチングが起こりやすいという問題点があった。これまでのSi素子では、例えオーバーエッチングが起こったとしても、大きな問題とはならなかったが、歪Si半導体装置の場合には大問題であり、極端な場合には歪Si層が完全に消失してしまう可能性もある。
【0054】
又、既往の技術においては、歪Si層はいかなる場合においても臨界膜厚を超えてはならない。言い換えれば、半導体装置中にミスフィット転位が入ることが許されないことが前提となっている。しかしながら、この制限のもとで電界効果型半導体装置の高性能化を図ることには自ずから限界がある。なぜなら、前記トレードオフ関係のために、性能向上に足る十分多いGe濃度、即ち、歪の量を与え、且つプロセスマージンを確保するに足る十分な歪Si膜厚を与えることが著しく困難なためである。もし、所望のGe濃度のもとで臨界膜厚を超えてもデバイスのリーク電流を増大させない技術が開発されれば、前記トレードオフ関係を克服することになり、より大きな性能向上が期待できるようになる。本願発明はこうした背景の元になされたものである。
【0055】
次に、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0056】
本発明の代表的な電力増幅用電界効果型半導体装置の構成は、図3に示すように第1導電型の高不純物濃度半導体基板一主面上に、第1導電型で比較的低不純物濃度の半導体層が積層された半導体積層構造を具備し、前記半導体積層構造の主面上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域となる半導体層を挟むように、前記半導体層内に第2導電型のソース領域及びドレイン領域が形成され、前記ソース領域に電気的に接続されたリーチスルー層が前記半導体基板に到達するように形成されていることを特徴とする。この基本構成自体は前述した通りである。
【0057】
前記半導体積層構造として、第1導電型の高不純物濃度のSiGe層、第1導電型の低不純物濃度のSiGe層を積層して、更にSi層が形成された構造を用いることも可能である。この場合、このSi層には引張り歪が印加されることになり、チャネルの移動度が向上する。
【0058】
又、図5に示すように、前記半導体基板1上に絶縁膜5を挟んで、第1導電型の低不純物濃度のSiGe層3、前記Si層4の順に積層された構造を用いることも可能である。この例で前記絶縁膜5はSiO2膜である。この構造は、いわゆる歪SOI(Silicon On Insulator)構造である。SOI構造をとることにより、接合容量を低減させることが出来る。
【0059】
SOI構造でLDMOSを構成した場合の最大の問題は、ドレインに到達した電子によるインパクトイオン化で発生した正孔が、バルクSi基板に比べて効率よくソース(或いは基板)に吸収されないことにより、チャネルの電位が変化し、いわゆる寄生バイポーラ効果が起こることである。これはロジック用のSOI-CMOSなどではI-V特性にキンクが生じる現象としてよく知られている。電力増幅器用のLDMOSの場合には著しい耐圧の低下が問題になる。
【0060】
この現象を回避させるためにはSOIの膜厚を厚くして正孔がソース側に流れる断面積を広げる方法がある。しかし、余りSOI膜厚を厚くすると、接合容量の低減というSOI素子の利点が失われてしまうために、厚さの上限としては1μm、望ましくは500nm以下である。限られたSOI膜厚の中で、ソースの正孔捕獲効率を上げるためには、ソース拡散層(N+)の下部にP+層を形成することが効果的である。チャネルの下部にも、しきい電圧を著しく上昇させない程度にP型不純物濃度を高めることが効果的である。更に、正孔の移動度が高く、且つバンドギャップの狭いSiGe層をソース及びチャネルの下部に設けることも効果的である。SiGe層を含む歪SOI基板はこの目的に合致した構造をとっており、より望ましい。
【0061】
これらの電界効果型半導体装置において、通常ソース電極は前記リーチスルー層を介して前記半導体基板に接続され、基板裏面を増幅回路モジュールのグランド面に接触させることにより低抵抗なソース接地を実現している。
【0062】
図6は、ソース電極、ドレイン電極配線及びゲート電極配線の平面配列の例を示す。
ドレイン電極31とゲート電極32は交互にフィンガー状に配置されることで、各々の素子が高密度に配置され、且つ配線抵抗が低減される。尚、符号30はソース電極配線である。通常は複数本のトランジスタ(チャネル)が平行に配置されており、その各々を跨ぐようにドレインおよびゲートの配線が交互に並べられている。
【0063】
さて、前記歪Siを用いたLDMOSにおいて最大限の性能を得るためには、前記チャネル部分とオフセット部分の歪Si層の膜厚を独立に設定することが望ましい。この理由は、前記課題の項で述べたように、チャネル部分とオフセット部分とでは深さ方向で電流の流れる範囲が異なるため、さらに、歪SiはSiより抵抗が低いがその下のSiGeはSiより抵抗が高いためである。チャネル部分では電流の広がりが小さいために、歪Si層の厚さは必ずしも厚くする必要はないが、オフセット部分では電流の広がりが大きいために歪Si層が厚いことが望ましい。
【0064】
次に、歪Si膜厚、オフセット部分の歪Si膜厚、及び臨界膜厚の関係について説明する。ここで、チャネル部分の歪Si膜厚をhch、オフセット部分の歪Si膜厚をhoffとする。又、臨界膜厚をhcとする。
【0065】
本願発明の第一のケースとして、前記各膜厚の関係を(1)0.5hch≦hoff<hc、且つhch<hc、或いは(2)hch<hoff<hcとなるようにする。図7、図8はこの状態を示す断面図である。図7は0.5hch≦hoff<hc、且つhch<hcなる形態を示す模式的断面図、図7は前記各膜厚の関係をhch<hoff<hcなる形態を示す模式的断面図である。
つまり、チャネル部分もオフセット部分も臨界膜厚を超えない条件となる。又、チャネル部分とオフセット部分の歪Si膜厚の大小関係は任意であるが、オフセット部分の膜厚がチャネル部分の半分を下回らないことが必要となる。この理由はオフセット部分の歪Si膜厚がチャネル部分の歪Si膜厚の半分を下回ると、チャネル部分からオフセット部分に至る電流経路に乱れが生じて素子動作に悪影響を与えることが判明したためである。第一のケースにおいて性能を最大化させるためには、課題の項で述べたように、特にオフセット部分の歪Si膜厚を最大限大きくすることが望ましい。
【0066】
本願発明の第二のケースとして、前記各膜厚の関係をhch≦hc<hoffとなるようにする。図9はこの状態を示す断面図である。オフセット領域の膜厚hoffが臨界膜厚hcを超えるために、オフセット領域の歪Si層4とSiGeバッファ30層の界面近傍にミスフィット転位31が発生する可能性がある。しかし、以下に述べる対策を施すことによって、半導体装置のリーク電流に大きな影響を与えずにすむことが判明した。
【0067】
前記オフセット層の臨界膜厚hcを超過することに対する対策は、発生したミスフィット転位に内在する不対結合を炭素、窒素、フッ素、酸素、或いは水素で終端することである。
【0068】
この方法は多結晶シリコン薄膜トランジスタにおいて結晶粒界の特性を改善する手法として考えられていたが、歪Si/SiGe界面付近に発生するミスフィット転位に対する効果は不明であった。なぜなら、多結晶シリコンの粒界と歪Si/SiGe界面のミスフィット転位とでは、結晶構造、ひいては不対結合の形態が異なるため、同様な考え方にそって不対結合終端の効果を議論することが不可能なためである。発明者らは、歪Si/SiGe界面近傍にあるミスフィット転位の結晶構造を断面透過電子顕微鏡などの手法を用いて詳細に検討した。この結果、一定の結晶面にそって線状にミスフィット転位が走っており、前記界面付近に選択的に不対結合を終端する原子を導入することによって、半導体装置のリーク電流を低減出来ることを見いだした。多結晶シリコンの場合は粒界の方位が多種であり不対結合に乱れのある粒界も存在するために、前記終端の効果は限定的であった。しかし、ミスフィット転位の場合には不対結合と結晶方位との関係が揃っているために、終端の効果が多結晶シリコンの場合と比べて遥かに大きいことを見いだした。
【0069】
具体的な終端の方法は、以下に述べるような3種類の方法がある。第一の方法は、終端に使用する原子種を電界で加速して注入する方法である。これは半導体製造工程で一般的に使用されるイオン注入工程と同じ方法が使用可能である。第二の方法は、終端に使用する原子を含む雰囲気にウェハをさらし、気相から半導体内部に浸透させる方法である。これもいわゆる酸化拡散工程と同様の方法が使用可能である。更に、前記第一第二の方法をおこなう工程の順序としては、(1)歪Si層のエピタキシャル成長が終了した基板状態からゲート電極加工を行う前の状態までの間、(2)ゲート電極加工を終了した状態、(3)ソースドレイン等の拡散工程が終了した以降の工程、など素子製造工程のいずれの間でも本工程を挿入することが出来る。注意すべきは、次のような事項である。前記(1)、(2)のように工程のはじめの方で終端処理を行った場合には、その後の熱工程を適切に制御して終端原子の脱離を防止する必要がある。又、前記(2)、(3)のようにパターニングが進んだ場合には、角度を変えてイオン注入するなど、ゲート電極や配線などのパターンに隠れた部分にも終端原子が行き渡るように配慮する必要がある。
【0070】
第三の方法は、特に水素終端の場合に有効な方法であるが、層間絶縁膜の一部或いは全部にシリコン窒化膜を用いる方法である。特にプラズマ化学気相成長法(P-CVD)を用いると膜中に多量の水素が含有されているため、その後の熱工程において活性な水素原子が半導体装置の活性領域内に拡散されやすくなる。この為、この方法は、効果がより大きい。
【0071】
以上述べた、ミスフィット転位を終端するという考え方は、前記オフセット部分のみが臨界膜厚を超過している場合のみならず、あらゆる部分が臨界膜厚を超過していたとしてもリーク電流を低減させる効果をもつ。更には、LDMOSだけではなく、通常の電界効果型半導体装置に一般的に適用可能である。通常の電界効果型半導体装置においては、ソースおよびドレインはゲート電極を中心に対照的に配置される。又、前記第一のケースのようにミスフィット転位が発生しない状態においても、終端に用いる原子を注入することを否定するものではない。著しく多量の原子を注入しない限りは、半導体装置の特性に悪影響を与える可能性は小さい。
【0072】
次に、オフセット部分の歪Si膜厚を十分な厚さに確保するための方法を説明する。第一の方法は、素子作製工程を経た後で残る歪Siの膜厚が所望の値となるように、はじめから歪Si基板の歪Si膜厚を設定しておく方法である。この場合は素子作製工程に特段の配慮が不要であるが、前記したように素子全体で歪Si層の臨界膜厚を超過してミスフィット転位が発生する恐れが高いために、前記終端の手法を併用することが望ましい。
【0073】
第二の方法は、素子作製工程、特にゲート加工およびゲート側壁加工(必要な場合)を経て減少した歪Si膜厚を所望の値になるように、エピタキシャル成長により積み増す方法である。素子活性領域のうち、ソースドレイン電極形成部も含めてゲート電極および側壁(必要な場合)以外のすべての領域に歪Si層を積み増す方法と、オフセット領域のみに積み増す方法がある。また、積み増しを行う領域で必要とさせるもののうち最も低濃度な第2導電型の不純物濃度があらかじめ含まれた膜を形成することも可能である。この場合、より高濃度の不純物が必要とされる領域に関しては、さらにイオン注入を行うことにより、不純物濃度を適正化させることができる。
【0074】
第三の方法は、第一ないしは第二の方法との組み合わせが望ましいが、特に程度の大きいゲート側壁加工時の歪Si層削れを最小限に抑える方法である。従来の方法では、側壁材料にシリコン酸化膜ないしは窒化膜、或いはその組み合わせが用いられていた。酸化膜を用いる場合には、側壁加工のドライエッチング工程におけるエッチング選択比が下地のSi(あるいは歪Si)に対して十分でないために、削れが大きくなる。窒化膜の場合は酸化膜エッチングのストッパーとしての用途はあるものの、酸化膜以上にシリコンに対する選択比が悪く、酸化膜エッチングによるシリコンの削れは防げたとしてもその後の窒化膜エッチングでシリコンを削ってしまう。しかも誘電率が高いためにゲート容量を増大させてしまう。通常の電界効果型半導体装置、特に微細なCMOSの場合にはゲート側壁もごく薄く(100nm以下)て良いために、これら従来の方法を用いたとしても削れの影響は問題にならない。しかしながらLDMOSの場合には、耐圧確保と寄生容量低減の目的でゲート側壁が厚く(代表的には300nm)なり、その分だけ側壁絶縁膜の削れ量が大きくなる。また、高周波素子であるために側壁絶縁膜の誘電率増大による寄生容量増大の影響もより深刻である。
【0075】
そもそもゲート側壁を設ける理由は、特にLDMOSにおいては、ドレイン側(オフセット含む)の第2導電型の不純物濃度を段階的に変化させるための不純物注入用マスクを自己整合的に形成することにある。この効果としては、ゲート近傍の不純物濃度を下げて電界強度を弱めて耐圧を確保すると同時に寄生容量を低減することと、それより離れた部分の不純物濃度を上げてオン抵抗を低減させること、にある。従って、不純物注入を行った後は除去しても構わない。この観点に立てば、側壁材料としてはエッチング選択比を第一義に考えれば良いことになる。
【0076】
そこで、本発明で用いた側壁材料は多結晶シリコンである。多結晶シリコンのシリコン酸化膜に対するドライエッチング選択比は大きいためである。もちろん、ゲート電極とドレインオフセット部分とはごく薄い酸化膜によって隔てられているため、側壁の多結晶シリコンをドライエッチングする際にはこの酸化膜がストッパーとして作用する。また、オフセット部分の不純物注入用の側壁として機能した後には、ドライエッチングによりこれを除去する。この2回にわたる多結晶シリコンのドライエッチング工程において、下地の酸化膜との高選択性のためにドレインオフセット部分のSi(歪Si)は全く削られることはなく、かつエッチングダメージを受けることもない。
【0077】
同様の考え方に沿えば、多結晶シリコン以外、たとえばシリコン窒化膜を用いることも可能である。この場合、窒化膜の除去にドライエッチングを用いることは選択比の関係で必ずしも有利とはいえないため、熱リン酸などのウェットエッチングを用いることが望ましくなる。
【0078】
次に、本発明の歪Si電界効果型半導体装置に適合したフィールドプレートの動作設定方法について述べる。従来の電界効果型半導体装置、とりわけ高周波電力用電界効果型半導体装置において、フィールドプレートはソース電位と同電位に保持されるのが通常である。このようにすると、フィールドプレート直下のオフセット領域、通常はゲートの近傍領域のみ、が空乏化するためにこの部分のドレイン電界が緩和され、しかもこのゲート近傍付近がデバイス全体で最も電界強度が高い領域となるため、結局、電界効果型半導体装置の耐圧が向上する。さらに空乏化の効果としてゲート容量が低減するため高周波動作に適する。
【0079】
歪Si電界効果型半導体装置においても同様の効果が期待できるが、さらに最適化を図るためにはフィールドプレートの印加電圧を調節することが望ましい。前記のようにフィールドプレートの印加電圧をソースと同じ(通常は0V)にするとフィールドプレート直下のオフセット領域は空乏化するが、このことは同時に流れる電流がゲート酸化膜近傍から離れてより深い部分を流れることを意味する。前記のごとく、オフセット領域を流れる電流がより深く、言い換えれば下部にあるSiGe層中をより多くの電流が流れるようになる、ことはオン抵抗の低減の観点では望ましいことではない。そこで、歪Si電界効果型半導体装置においては、フィールドプレートに印加する電圧をソース電圧以上ドレイン電圧以下の最適値に設定することで、耐圧の確保、寄生容量の低減、オン抵抗の低減を両立して最適化を図ることができる。
【0080】
また、本願発明者らは、臨界膜厚を超えた歪Siの結晶性と歪量に関しては、臨界膜厚を超えても膜厚が数100 nm程度であれば、歪緩和はほとんど認められなかった。図10Aは歪Siの歪量とSiGeのGe濃度を評価するためのラマン分光スペクトルである。リファレンスのSi基板のラマンスペクトル105と典型的な歪Si/SiGeのラマンスペクトル106を示す。Si基板では1つのラマンピーク104が、歪Si/SiGeからのラマンピークには歪Siのピーク107とSiGe層のピーク108が得られる。2つのラマンスペクトルより、Ge濃度を示す波数ΔSiGe9と歪Siの歪量を示す波数ΔSi110を測定し、図10Bのグラフにまとめた。横軸は、Ge濃度を示しており、縦軸は、Si膜の歪量に相当する。歪Siの膜厚が15 nm以下(臨界膜厚以下)のデータを黒丸103 aでプロットし、臨界膜厚以上のデータを黒四角103cでプロットした。これらのデータは、直線103bの傾向を示している。即ち、臨界膜厚を超えても、歪Si膜はほとんど歪緩和していないことを意味している。
【0081】
また、歪Si層内の貫通転位密度は、5×105 /cm2 以下であることを発見した。この値は、Si/SiGe界面にミスフィット転位が存在することを除けば、臨界膜厚以下の歪Si層とほぼ同等の性質を有することを示唆している。貫通転位密度の値は図12A-Cに示すように、セコエッチング法を用いたエッチピット評価から得た。即ち、SiGe層111の上に成膜したSi層115をセコエッチング液で、Si層内でエッチングを止め、(エッチングされた領域は116)その後、光学顕微鏡でエッチピット数を評価した。図13Aは、典型的な光学顕微鏡写真である。円で囲んだ117がエッチピットである。尚、図13Bは、本発明の実施例6に関わる、歪Si層内の貫通転位起因のエッチピットと積層欠陥起因のエッチ痕を示す光学顕微鏡写真である。
【0082】
図12Cのように、SiGe層まで、エッチングを行って、表面形態を原子間力顕微鏡で観察した。図14A-Dが,典型的な原子間力顕微鏡像であり、サンプルは図14A、図14B、図14C、図14Dの順で、歪Si層の歪エネルギーが増加している。図14Aは、臨界膜厚を超えた段階でクロスハッチ状のミスフット転位(見やすくするため114aのように強調した)のエッチ痕が見られる。また、エッチ深さの深いピット120とエッチ深さの浅いピット120aがある。ピット120は、歪Si層内部の貫通転位に起因し、ピット120aはSiGe層の貫通転位に起因している。図14Bにおいて、114bで示すようにクロスハッチ状のミスフィット転位の密度が増加しているのが判る。またセグメント状のエッチ痕121a、121bが見られ、これは拡張ミスフィット転位であることが判った。図14Cでは、クロスハッチ状のミスフィット転位は観察されず、セグメント状のエッチ痕(拡張ミスフィット転位)とエッチピット(貫通転位)のみが観察されている。図14Dでは、最も深いセグメント状のエッチ痕122が観察されている。これは、積層欠陥に対応することが判った。図14A-Dの結果から発明者が見いだした臨界膜厚を超えた歪Si層の転位反応モデルを図15A-Dに示す。臨界膜厚を超えると、ミスフィット転位が形成されるが、Si層の膜厚が増加すると、単純にミスフィット転位114の密度が増加するのではなく、転位拡張140、積層欠陥145の形成と進行するのである。従来技術である図11A-Cとは一見して異なっていることが判るであろう。
【0083】
臨界膜厚を超えた歪Si層の貫通転位密度は、本発明の範囲では図15に示すように、歪エネルギー密度の増加に伴って増加しているが、最大でも5×105 cm-2 未満である。図16は、図15Dの場合の断面TEM(Transmission Electron Microscopy)写真であり、拡張ミスフィット転位150と積層欠陥151が観察されている。152、153はそれぞれ、150、151の拡大像である。拡張ミスフィット転位の幅は約10 nm以下であり、Si/SiGe界面に局在している。一方、積層欠陥は、歪Si層表面に達している。図17は、図15Dの場合の平面TEM写真であり、拡張ミスフィット転位150aと積層欠陥151aが観察されている。
【0084】
さらに、従来の臨界膜厚(ミスフィット転位形成に関わる)に加えて、第2臨界膜厚hc'があることを発見した。第2臨界膜厚は、図15Cから図15Dの状態になる臨界膜厚であり、即ち、積層欠陥が形成される膜厚である。発明者らは、多くのサンプルを作製し、念入りに図12-14に示すような評価を進めた結果、hc'=3/x2の関係があることを突き止めた。図18に臨界膜厚103と第2臨界膜厚103aを示す。領域103cではミスフィット転位と積層欠陥が形成される領域であり、領域103bではミスフィット転位は形成されるが、積層欠陥は形成されない領域である。ただし、マシューズ・ブラケスレーの臨界膜厚hcも同様であるが、成膜条件(成長速度、成長温度など)によって第2臨界膜厚値hc'が若干異なることがあるが、2/x2 ≦hc' ≦3/x2 の範囲内である。
【0085】
また、歪Si基板を用いて電界効果トランジスタを試作し、電気特性を評価した結果、歪Si層に積層欠陥が存在するとオフリーク電流が急激に増大し、即ち、積層欠陥が電界効果トランジスタの性能に悪影響を及ぼすことも明らかになった。ゆえに、発明者らは、第2臨界膜厚hc'未満の膜厚の歪Si層を用いて電界効果トランジスタを作製できる可能性を発見したのである。
【0086】
以下、本発明の実施の形態を図面により詳細に説明する。
<実施例1>
本実施例は、チャネル及びオフセット部分の歪Si膜厚関係を、前述の本願発明の手段において、第一のケースに設定した場合の高周波電力増幅用電界効果型半導体装置を例示する。即ち、各種膜厚の関係が0.5hch≦hoff<hc、且つhch<hcとなるケースである。
【0087】
図6は本実施例1の歪Si膜厚関係を示す断面構造図である。
【0088】
先ず、図3および図19を参照して本実施例1の電界効果型半導体装置の断面構造を具体的に説明する。
【0089】
図3を参酌して、本例の基本的な積層構造を説明する。本例の半導体積層構造は、P型低抵抗Si基板1上に、P型低抵抗第1SiGe層2、P型高抵抗第2SiGe層3、P型高抵抗歪Si層4がこの順に積層されている。SiGe層及びSi層は化学気相成長法によって形成される。SiGe層をSi基板上に形成させることで生じる欠陥領域は、第1のSiGe層2に例えば2ミクロンといった厚みを与えることでほとんど第1のSiGe層2に埋め込まれることになる。一方ドレインの電界によって形成される空乏層は、第2のSiGe層3を例えば1.5ミクロンといった厚みを持たせることによって第2のSiGe層3内のみで広がることになり、ドレイン接合リークを低減させることが可能になる。Si基板1の抵抗率は5mΩcmである。P型で低抵抗なる第1のSiGe層(以下、P型低抵抗第1SiGe層と略記する)2の不純物濃度は1×1018/cm3以上、P型で高抵抗である第2のSiGe層(以下、P型高抵抗第2SiGe層と略記する)3、及びP型で高抵抗なる歪Si層(以下、P型高抵抗歪Si層と略記する)4の不純物濃度は1×1016/cm3以下である。
【0090】
ゲート酸化膜等の酸化工程ではP型高抵抗歪Si層4の一部が消費されることになり、チャネル下部で少なくとも5nm以上のP型高抵抗歪Si層4が残されるように、且つ各Ge濃度における臨界膜厚(即ち、図1に示した臨界膜厚)を超過しないように、P型高抵抗歪Si層4の初期膜厚が設定される。素子分離工程においては、SiGe層がエッチングされ、そこに絶縁膜が埋め込まれるが、その際にSiGe層が酸化されないような配慮を行う。例えば絶縁膜として酸化膜を埋め込む場合に、あらかじめSiGeが露出した溝内面にSi層を形成させておき、溝内面が酸化されたとしてもSiのみが酸化され、SiGe層に到達しないような配慮を行う。歪Si基板を用いることでしきい値電圧が低下するので、P型ウェル領域6やポケットパンチスルーストッパー11の不純物濃度を高めてこれを調整する。
【0091】
P型高抵抗歪Si層4の主面一部にP型ウェル領域6が形成される。P型ウェル領域6の上部にゲート絶縁膜7を介してゲート電極8が形成される。これにより、ゲート電極8下部、Si層4内のゲート絶縁膜7界面近傍にチャネルが形成される。
【0092】
又、P型高抵抗歪Si層4の主面一部に、N型ソース領域9とこれより低不純物濃度のN型ドレインオフセット領域10が、N型ソース領域9とP型ウェル領域6の間にはポケットパンチスルーストッパー11が形成される。ゲート電極8にはゲート側壁33が形成されている。この構造により、N型ドレインオフセット領域10は2段の分布をもつ。N型ドレインオフセット領域10には高不純物濃度のN型ドレイン領域12が接している。
【0093】
P型高抵抗Si層4およびゲート絶縁膜7を貫通して基板コンタクト領域13が形成されており、層間絶縁膜19の上部に形成された第1配線層14とソースコンタクトプラグ15を介してN型ソース領域9と電気的に接続されている。
【0094】
次に、図19を参酌して、本例の平面配置を説明する。図19は、図3に対応した素子分離領域16に挟まれたトランジスタ領域を示している。素子のチャネル領域の幅(即ち、チャネル幅)は、素子分離領域16の間隔により規定されている。トランジスタ領域の中央にドレイン領域12が配され、その両側にソース領域9が配置される。各ソース領域9とドレイン領域12の間に各ゲート電極8が配置される。そして、本例では、各ドレイン領域に接してドレインオフセット領域10が設けられている。図19には、各領域に対するコンタクトプラグが示される。ソースコンタクトプラグ15、ドレインコンタクトプラグ17、ゲートコンタクトプラグ18及び基板コンタクト領域13などである。N型ドレイン領域12に接続されるドレインコンタクトプラグ17、及び素子分離領域16上でゲート電極8に接続されるゲートコンタクトプラグ18は、いずれも第1配線層14(第1配線層14は図3に示される)及び、更に上部の第2配線層と電気的に接続される。これらの接続関係は、図19に図示されていない。
【0095】
次に、本例の製造方法を説明する。図20Aより図20Hを参照する。図20Aのみは、図19の平面図の線II−IIでの断面図、その他は図19の平面図の線I−Iでの断面図であえる。即ち、図20Aは図3と同一の方向での断面図である。
【0096】
先ず、歪Si/SiGe半導体積層構造の半導体ウエハを準備する。歪Si/SiGe半導体積層構造とは、Si基板上にバッファ層としてSiGe層を設け、この上部に歪Si層が積層された半導体積層構造である。実際的な積層としては、p+-SiGe層2、p--SiGe層3、歪Si層4が用いられる。尚、図20Aより図20Hでは、これらの歪Si層4、p--SiGe層3、p+-SiGe層2は、簡単のために一つの層にまとめて書いてあり、且つ符号は再表面の歪Si層4で代表させてある。
【0097】
図20Aに示す如く、歪Si/SiGe半導体積層構造を有する半導体ウエハに素子分離領域16を形成する。この素子分離領域16は、深さ300nmの溝を形成し、絶縁膜を埋め込む浅溝分離法により形成される。その製造は、通例のフォトプロセス、ドライエッチングプロセス、及び化学機械研磨プロセスを用いて十分である。
【0098】
次に、フォトレジスト20をマスクとし、B(ボロン)イオンを200keVのエネルギーで2×1013/cm2程度注入してP型ウェル領域6を形成する(図20B)。イオン注入後のアニールは瞬時加熱処理(RTA: Rapid Thermal Annealing)により、950℃30秒行う。
【0099】
次に、歪Si層4の酸化処理を行うことにより、厚さ8nmのゲート絶縁膜7を形成する。
【0100】
その上部に、CVDによりP(リン)イオンを5×1020/cm3程度ドープした多結晶Si膜100nmのゲート電極膜8を形成する(図20C)。ゲート電極は、ゲート長0.18μmに加工する。
【0101】
その加工は、通例のKrFエキシマレーザステッパーによるリソグラフィーとドライエッチングによる。ゲート電極の加工後、ゲート周辺に対して3nm程度のライト酸化を行う。尚、ゲート電極加工後およびライト酸化加工後の状態は、ごく一般的なプロセスであるので、図面での表示は省略されている。
【0102】
図20Dに示す如く、フォトレジスト20及びゲート電極8をマスクとして、P(リン)イオンを40keVのエネルギーで1.5×1013/cm2程度注入して、N型ドレインオフセット領域10を形成する。更に、ホトレジストを除去し、厚さ300nmのO3-TEOS酸化膜を形成する。尚、O3-TEOS酸化膜とはO(オゾン)とTEOS(テトラエトキシシラン)を原料に用いたCVD酸化膜のことで、以下この略称を用いる。
【0103】
この後、エッチバックを行うことによって、ゲート側壁33を形成する。更に、フォトレジスト20及びゲート電極8をマスクとして、P(リン)イオンを40keVのエネルギーで2×1013/cm2程度注入して、N型ドレインオフセット領域10を形成する(図20E)。
【0104】
次に、B(ボロン)イオンを15keVのエネルギーで5×1014/cm2程度注入し、P型ウェル領域6内に位置したポケットパンチスルーストッパー11を形成する(図20F)。更に、As(砒素)イオンを50keVのエネルギーで6×1015/cm2程度注入して、N型ソース領域9とN型ドレイン領域12を形成する(図20G)。
【0105】
この後、前記半導体積層構造の一部を、第2SiGe層3を貫通して第1SiGe層2に達するまで、フォトリソグラフィーとドライエッチングにより開口する。そして、この開口に、Bドープのp型poly-Siを基板コンタクト領域13の下部に埋め込む(図20H)。
【0106】
次に、O3-TEOSにより層間絶縁膜19を形成し、一部をフォトリソグラフィーとドライエッチングにより開口してソース・ドレイン・ゲートの各コンタクトプラグ15、17、18(但し、18は図示されない)と、基板コンタクト領域13の残り上部をWなる導体層40で埋め込む(図20I)。更に、AlとTiNの積層膜で第1配線層14が形成される。図示していないが、第1配線層14上には、層間絶縁膜19と同様の層間絶縁膜を介して第2配線層が形成される。一方、基板1の底面には、ソース電極100が形成される。このソース電極100はニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)および半田付け性の良い銀(Ag)層を順次積層することにより形成される。
【0107】
ゲート側壁33加工の工程において、ドレインオフセット領域の歪Siが一部削り取られることになる。しかし、削り取られて残ったドレインオフセット領域の歪Si膜厚が、チャネル領域の歪Si膜厚の半分よりは厚くなるように削り量を低減するようにエッチング条件を制御する。
【0108】
最終的に残った歪Siの膜厚関係は図21Aに示される状態となる。本願発明では、この関係が極めて重要である。上記の膜厚関係になっておれば、全ての部分でミスフィット転位が発生しないためにリーク電流が増大せず、且つ、オフセット部分の膜厚がチャネル部分の半分以上になっているために電流経路の乱れが生じないために素子が正常に動作する。
【0109】
<実施例2>
本実施例は、チャネルおよびオフセット部分の歪Si膜厚関係を、前記第一のケースで、且つhch<hoff<hcとなした高周波電力増幅用電界効果型半導体装置の例である。
【0110】
基本構造及び製造工程は、実施例1に示したものと同様である。実施例1と異なる点は、前述のチャネルおよびオフセット部分の歪Si膜厚関係をhch<hoff<hcとなすように、厚みの成長、加工を調整することである。即ち、本実施例では、チャネル下の歪Si膜厚(hch)よりもオフセット部の歪Si膜厚(hoff)が厚くなっており、且つどちらも臨界膜厚(hc)以下となっている。図8がこの状態を示す説明図である。
【0111】
実施例1でゲート電極8を加工した後、第2導電型の不純物濃度が7×1017/cm3のSi膜を30nm選択エピタキシャル成長することで、図8に示したような膜厚関係を実現する。実施例1の場合と同様に、低リークかつ電流経路の乱れを生じない利点があり、更に、オフセット部分の歪Si膜厚がより厚くなるためにオン抵抗が低減する。
【0112】
<実施例3>
本実施例では、チャネルおよびオフセット部分の歪Si膜厚関係を、前記第二のケースに設定した場合の高周波電力増幅用電界効果型半導体装置を例示する。即ち、第二のケースでは、膜厚の諸関係がhch≦hc<hoffとなされている。
【0113】
基本構造及び製造工程は、実施例1に示したものと同様である。実施例1と異なる点は、前述のチャネルおよびオフセット部分の歪Si膜厚関係をhch≦hc<hoffとなすように、厚みの成長、加工を調整することである。
【0114】
図9がこの状態を示す説明図である。本実施例ではチャネル下の歪Si膜厚よりもオフセット部の歪Si膜厚が厚くなっており、前者は臨界膜厚以下であるが、後者が臨界膜厚以上となっている。従って、リーク電流を増大させないためのしかるべき対策を施す必要がある。ミスフィット転位を炭素、窒素、フッ素、酸素、及び水素の群から選ばれた少なくとも1種によって終端することが一つの方法である。
【0115】
第一の対策は、歪Si層とその下部層との間に発生するミスフィット転位を水素によって終端することである。
【0116】
実施例1に示す製造工程において、図20Iに示す如く、O3-TEOSにより層間絶縁膜19を形成する工程の後で、更に200nmのシリコン窒化膜35を形成する。次に、コンタクトプラグ用の開口をする前に、窒素雰囲気400℃で1時間熱処理を行う。すると、図21Aに示すごとく、窒化膜に含まれる多量の水素原子が活性なラジカル状となってミスフィット転位発生部位に移動して、不対原子を終端する。図21Aにおいて×印がミスフィット転位を○印が終端原子を模式的に示している。
【0117】
第二の対策は、層間絶縁膜19を形成する工程の前に、終端する原子をイオン注入法により注入する。本例では、注入原子は具体的にはフッ素である。図21Bに示すように、イオン注入の飛程はミスフィット転位が発生する深さにあわせるようにする。又、注入量は1×1012/cm2(一般に1×1011/cm2より3×1015/cm2程度の範囲を用いる)とする。本図においても×印がミスフィット転位を○印が終端原子を模式的に示している。
【0118】
第三の対策は、歪Si半導体積層基板の状態で、終端する原子、本実施例ではフッ素をイオン注入法により注入する。図22に示すように、イオン注入の飛程はミスフィット転位が発生する深さにあわせるようにする。また注入量は1×1012/cm2(一般に1×1011/cm2より3×1015/cm2程度の範囲を用いる)とする。本図においても×印がミスフィット転位を○印が終端原子を模式的に示している。
【0119】
第四の対策は、歪Si半導体積層基板の状態で、終端する原子を含む雰囲気中で熱処理を行う。本例では、終端する原子は、具体的にはフッ素である。フッ素分圧は0.01気圧、温度は700℃の条件で1時間熱処理を行うことにより、ミスフィット転位がフッ素原子で終端される。
【0120】
以上、いずれの対策方法を用いても、ミスフィット転位による不対結合が終端されるために半導体装置の不純物分布とミスフィット転位の位置関係がいかなる状態にあっても、目立ったリーク電流の増大は発生しない。
【0121】
<実施例4>
本実施例では、ゲート側壁33の形成において、オフセット部分の歪Si層の削れをなくす方法を例示する。この方法を用いることによって、本願発明の歪Si膜厚、オフセット部分の歪Si膜厚、及び臨界膜厚の諸関係を安定して実現することが出来る。
【0122】
製造工程は、実施例1の場合と類似しているため、相違点のみを示す。側壁形成工程を、この部分のみを説明に取り上げ、図23及び図24を用いて順に説明する。
【0123】
図23(a)は、基体50にゲート電極8の加工を終了した状態の断面図である。ここで、基体50とは、当該ゲート電極8を形成するまでの工程を経た半導体基板を模式的に指す。先ず、実施例1と同様に3nmのライト酸化を行い、直ちに厚さ12nmのO3-TEOS酸化膜36を形成する(図23(b))。ここで、実施例1の図20Dに示すものと同じ工程で、ゲート電極8をマスクとして自己整合的にドレインオフセット領域10を形成する。
【0124】
次に、ゲート電極8の周囲を覆うかたちで厚さ200nmの多結晶シリコン膜37を形成する(図23(c))。更に、異方性ドライエッチングを行うとゲート電極8の周囲のみの多結晶シリコン膜37が側壁状に残される。この時、酸化膜と多結晶シリコンのエッチング選択比は大きいため酸化膜36はほとんど削られることがない。従って、その下部にある歪Si層も全く削られることがなく、かつエッチングダメージを受けることもない。
【0125】
次に、図23(d)に示すように、ゲート電極8、酸化膜36及び多結晶シリコン側壁37をマスクとして、自己整合的に、2度目のドレインオフセット領域10形成工程を実施する。この工程は、実施例1における図20Eに示す工程と同じであるが、フォトレジスト20は図示していない。ドレインオフセット領域10の注入が終了すれば、もはやゲート側壁33は不要である。従って、再び異方性ドライエッチングによって多結晶シリコンのゲート側壁33を除去する。この際にも、酸化膜と多結晶シリコンのエッチング選択比は大きいため酸化膜36はほとんど削られることがない。従って、その下部にある歪Si層も全く削られることがなく、かつエッチングダメージを受けることもない。ゲート側壁33を除去した状態を図23(e)に示す。この後、実施例1同様に、図20Fに示すもの以下の工程を順次行い、
半導体装置が完成する。
【0126】
<実施例5>
本実施例では、フィールドプレート構造を適用した場合の高周波電力増幅用電界効果型半導体装置を例示する。製造工程は、実施例4の場合と類似しているため、相違点のみを示す。
【0127】
フィールドプレートは実施例4の多結晶シリコン側壁37の一部をフィールドプレート電極として使用する。この部分の製造工程を以下に示す。
【0128】
図23(c)に示す多結晶シリコン膜37は、2×1020/cm3と高濃度のリンを含む多結晶シリコンとする。それ以外は、図23(d)に示す工程までは共通である。ドレインオフセット領域10の注入が終了してから、図24(f)に示すように、フォトレジスト20をゲート側壁37のうちゲート電極8に対してドレイン側のみを覆うようにしてから、多結晶シリコンの異方性ドライエッチングを行う。このようにすると、図24(g)に示すように、ゲート側壁37のうちゲート電極8に対してドレイン側のみが除去されずに残される。これをフィールドプレート電極38として使用する。
【0129】
次に全面に厚さ50nmのO3-TEOS酸化膜36を形成し、図24(h)に示す状態になる。さらに、通常の側壁形成工程と同様の異方性ドライエッチングによって酸化膜36を除去してフィールドプレート電極38を覆う第2の側壁を形成する。この状態を図24(i)に示す。この後、実施例1同様に図20Fに示す工程以下の工程を順次行い、半導体装置が完成する。
【0130】
フィールドプレート電極38の取り出し方は、以下の方法で行う。図25はゲート8、ドレイン17、およびフィールドプレート38の配置を示す平面図である。電界効果トランジスタの基本的セル構造は図19と同じである。図25では中央にドレイン領域12、その左右両側にドレインオフセット領域10、ゲート電極8、ソース領域9の順に並んでおり、都合ゲートフィンガー2本分が示されている。フィールドプレート38はドレインオフセット領域10の上部にゲート電極8に沿うように配置されている。お互いのフィールドプレート38同士の接続は、図の上部に示された素子分離領域16の上に、フィールドプレート38と同じ多結晶シリコン37で配線される形をとる。又、配線を規定するマスクは、フィールドプレート38のドレイン側を残してソース側を除去するために用いるものと共用する。尚、フィールドプレート電極38は直流電位を与えるだけであるため、ゲート電極8やドレイン電極12のように図示された基本セル一つ一つについてコンタクト穴を開けて金属配線層と接続する必要はなく、多数の基本セルが並んだブロック構造ごとに配線取り出し用のコンタクト穴を設ければよい。尚、この状態は、図25には示していない。
【0131】
図26に電力増幅器最終段の素子への電源電圧供給状態を例示する。フィールドプレート38に印加する電圧Vfpは、ドレイン電圧Vdd以下でソース電圧(0V)以上の直流電圧を加える。
【0132】
以下に、本願発明の主な実施の形態を列挙する。
【0133】
本願発明の第1の実施の形態は、第1導電型のSi基板一主面上に第1導電型で比較的高不純物濃度の第1SiGe層と、第1導電型で比較的低不純物濃度の第2SiGe層と、第1導電型で比較的低不純物濃度の歪Si層とが順次積層された半導体積層構造を具備し、前記半導体積層構造の主面上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域となる歪Si層を挟むように、前記第2SiGe層内に第2導電型のソース領域及びドレイン領域が形成され、かつ、第2導電型のドレイン領域は前記チャネル形成領域とは離間されており、チャネル領域とドレイン領域に挟まれた部分には前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域となっており、さらに前記ソース領域に電気的に接続されたリーチスルー層が少なくとも前記第1SiGe層、あるいはSi基板に到達するように前記第2SiGe層を貫通して形成されていることを特徴とする、横方向拡散型高周波電力増幅用電界効果型半導体装置において、前記チャネル形成領域の歪Si層の厚さと、前記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さが異なる半導体装置である。
【0134】
本願発明の第2の実施の形態は、上記チャネル形成領域の厚さhch、上記ドレインオフ
セット領域における歪Si層の厚さhoff、および歪Si層の臨界膜厚hcとの関係が
0.5hch≦hoff<hc、かつhch<hcであることを特徴とする、請求項1記載の半導体装置。
【0135】
本願発明の第3の実施の形態は、上記チャネル形成領域の厚さhch、上記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さhoff、及び歪Si層の臨界膜厚hcとの関係が
hch<hc≦hoff、かつhch<hcであることを特徴とする前記項目(1)に記載の半導体装置である。
【0136】
本願発明の第4の実施の形態は、歪緩和SiGe層に接して形成された歪Si層内部にチャネルが形成される電界効果型半導体装置において、前記歪緩和SiGe層と歪Si層の界面付近に炭素、窒素、フッ素、酸素、水素のうちのいずれか1種ないしは数種を拡散あるいは注入させる半導体装置である。
【0137】
本願発明の第5の実施の形態は、歪緩和SiGe層に接して形成された歪Si層内部にチャネルが形成される電界効果型半導体装置において、ドレインオフセットないしはソースドレインエクステンション部分を形成する際の不純物注入を行うために用いられるゲート側壁に多結晶シリコンを使用し、且つ前記不純物注入を実施した後にこれを除去することを特徴とする半導体装置。
【0138】
本願発明の第6の実施の形態は、第1導電型のSi基板一主面上に第1導電型で比較的高不純物濃度の第1SiGe層と、第1導電型で比較的低不純物濃度の第2SiGe層と、第1導電型で比較的低不純物濃度の歪Si層とが順次積層された半導体積層構造を具備し、前記半導体積層構造の主面上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域となる歪Si層を挟むように、前記第2SiGe層内に第2導電型のソース領域及びドレイン領域が形成され、かつ、第2導電型のドレイン領域は前記チャネル形成領域とは離間されており、チャネル領域とドレイン領域に挟まれた部分には前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域となっており、さらに前記ソース領域に電気的に接続されたリーチスルー層が少なくとも前記第1SiGe層、あるいはSi基板に到達するように前記第2SiGe層を貫通して形成されていることを特徴とする、横方向拡散型高周波電力増幅用電界効果型半導体装置において、上記ゲート電極に隣り合い、上記ドレインオフセット領域の上部に位置するフィールドプレート電極を有し、かつ前記フィールドプレート電極にソース電圧以上ドレイン電圧以下の直流電圧を印加することを特徴とする半導体装置である。
【0139】
<実施例6>
本実施例では、図27Aより図27Eを用いて、化学気相成長法を用いた、厚膜歪Si層を有する歪Si基板とその製造方法を例示する。SiGe層のGe濃度は、30%で歪Si層の膜厚は30 nm程度の例である。
【0140】
Si(001)基板160を化学洗浄した(図27A)後、減圧化学気相成長(LPCVD)装置に導入して、基板160上に第1SiGe層161,第2SiGe層162を成長する(図27B)。原料ガスはHガスで希釈したSiH及びGeHを用い、成長温度は650℃である。第1SiGe層の膜厚は2 μmでGe濃度を段階的に増加させ、表面のGe濃度は30%となるようにする。第1SiGe層の内部には、転位が大量に含まれており、その結果、第1SiGe層内の歪は十分に緩和している。第2SiGe層膜厚は2 μmであり、Ge濃度は一定にし、30%にする。第2SiGe層成長後、GeH4を停止してSi層163を成長する(図27C)。Si層の膜厚が30 nmに達した段階で成長は完了である(図27E)。Si層166とSiGe層162の界面には、拡張ミスフィット転位が形成されている。図27DのSi膜厚は、臨界膜厚7 nmを超えた段階で、ミスフィット転位165が形成されている。SiGe層の歪緩和と歪Si層の歪み量は、ラマン分光法やX線回折法を用いて確認することができる。ここでは、ビーム径1μmΦのアルゴンイオンレーザをプローブ光とした顕微ラマン分光法を用いて歪緩和を確認した。歪Si層166の膜厚は、分光エリプソメトリを用いて評価できる。又、透過電子顕微鏡法を用いた断面観察を用いると、SiGe層162と歪Si層166の界面には拡張ミスフィット転位が形成されており、積層欠陥は観察されていなかった。
【0141】
本実施例で形成した厚膜歪Si層の貫通転位密度は、105 cm-2程度であった。その検証は、上記のとおり図12A-Cに示すセコエッチング後、エッチピット密度を微分干渉顕微鏡を用いて評価することにより確認できる。ここで、最も注意しなければならないことは、歪Si層166が第2臨界膜厚を超えると、図29Aのように積層欠陥172が形成されてしまうことである。図29Aの半導体積層構造では、後の実施例3の電界効果トランジスタでは、十分な性能を期待することはできない。
【0142】
<実施例7>
本実施例では、図28Aより図28Fを用いて、貼り合わせ法による膜厚30 nm程度の歪Si層を有する歪SOI基板とその製造方法を例示する。
【0143】
Si(001)基板160aを化学洗浄した後、熱酸化を用いてSiO2層168を形成する(図28A)。酸化膜168は、SOIのボックスであり、膜厚は10 nmから50 nm程度である。本実施例では、30 nmの酸化膜を形成した。実施例1の厚膜歪Si基板を用意する(図28B)。次に図28Aの基板の168の表面と図28Bの166の表面を貼り合わせ、1000℃以上に加熱する。次に169付近に水素イオンを注入する(図28C)。その後、1100℃に加熱して169を境界としてウエハを分離する。図28Dの表面の、SiGe層169aと拡張ミスフィット転位167を除去する。除去方法はCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いた。他の方法として、ドライエッチングを行って除去した後、1000℃の水素アニーリングで表面を平坦にしてもよい。前記除去処理によって、歪Si層170の膜厚は、20 nm程度になっている。これでは、電界効果トランジスタを作製するには、十分な膜厚でないので、さらにSi層を積み上げて膜厚30nmの歪Si層171にして、歪SOI基板を完成させる。ここで、最も注意しなければならないことは、Si層166が第2臨界膜厚を超えると、図29Aのように積層欠陥172が形成されてしまうことである。図29Aの半導体積層構造を用いて、上記SOI構造を形成すると、図29Bに示すように、積層欠陥172を消滅させることはできない。また、Si層を積み上げても図29Cのように積層欠陥を含んで成長してしまう。後の実施例9の電界効果トランジスタでは、十分な性能を期待することはできない。
【0144】
<実施例8>
本例は、厚膜歪Si基板を用いた電界効果型半導体装置、具体的にはNMOSを例示する。歪Si基板は、前述の実施例1に示した方法で良い。MOSトランジスタ自体の製造は、これまでの製造方法に従って十分である。基板160上に傾斜SiGe層161、SiGe層162、引っ張り歪Si層166が形成される。こうして準備された半導体基板に通例の方法によってNMOSが形成される。図30Aは、本例のNMOSトランジスタの断面図である。ソース領域181とドレイン領域182がチャネル領域となる引っ張り歪Si層166を挟んで形成される。ソース、ドレイン領域にはヒ素をイオン注入し、ランプ加熱やレーザアニールなどで活性化する。即ち、浅い接合を形成することが望ましい。この上部にゲート絶縁膜185が形成され、前記チャネル領域に対向する領域にゲートポリシリコン186、ゲート電極187が配置される。符号184、183はそれぞれ、ドレイン電極、ソース電極である。符号188は側壁絶縁物層である。前記ソース領域181とドレイン領域182には拡張ミスフィット転位167が含まれてはならない。尚、素子分離にはSTI(Shallow Trench Isolation)180を用いた。なお、PMOSに関しては、ソース、ドレインをPタイプ(例えばボロンを注入する)に置き換えればよい。
【0145】
実施例7で述べたように、歪Si層166に積層欠陥172が形成されると、図31Aのように、拡散層領域を積層欠陥がまたいでしまい、接合リーク電流が発生する。
【0146】
<実施例9>
本例は、厚膜歪SOI基板を用いた電界効果型半導体装置、具体的にはNMOSを例示する。歪SOI基板は、前述の実施例2示した方法で良い。MOSトランジスタ自体の製造は、これまでの製造方法に従って十分である。基板160a上にSiO2ボックス層168、引っ張り歪Si層171が形成される。こうして準備された半導体基板に通例の方法によってNMOSが形成される。図30Bは、本例のNMOSトランジスタの断面図である。ソース領域81とドレイン領域182がチャネル領域となる引っ張り歪Si層171を挟んで形成される。ソース、ドレイン領域にはヒ素をイオン注入し、ランプ加熱やレーザアニールなどで活性化する。即ち、浅い接合を形成することが望ましい。この上部にゲート絶縁膜185が形成され、前記チャネル領域に対向する領域にゲートポリシリコン186、ゲート電極187が配置される。符号184、183はそれぞれ、ドレイン電極、ソース電極である。符号188は側壁絶縁物層である。前記ソース領域181とドレイン領域182には拡張ミスフィット転位167が含まれてはならない。尚、素子分離にはSTI(Shallow Trench Isolation)180を用いた。なお、PMOSに関しては、ソース、ドレインをPタイプ(例えばボロンを注入する)に置き換えればよい
以上、本願発明をいくつかの実施例等を用いて詳細に説明した。本発明によれば、結晶性に優れ、しかも歪が制御された厚膜Si層が形成された基板を作製することができ、電界効果トランジスタなどの電子素子の性能を向上することができる。
実施例3で述べたように、歪Si層166に積層欠陥172がされると、図31Bのように、拡散層領域を積層欠陥がまたいでしまい、接合リーク電流が発生する。
【0147】
以上の効果は、単にトランジスタ単体の性能向上のみならず、たとえば、アナログ-デジタル混載回路などに適した高速、高耐圧、低消費電力の電子素子が実現できることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、SiGe層バッファのGe濃度とその上部に形成した歪Si層の臨界膜厚の関係を示す図である。
【図2】図2は、歪Siの電子と正孔移動度向上におけるSiGeのGe濃度依存性を示す図である。
【図3】図3は、本願発明の半導体装置の基本的構造を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の課題となる電界効果型半導体装置のチャネル部分とドレインオフセット部分の電流分布を示す模式的な断面図である。
【図5】図5は、本願発明の歪SOI型の電界効果型半導体装置の断面図である。
【図6】図6は、本願発明の電界効果型半導体装置における、ドレイン及びゲート電極配線の配列を例示する平面図である。
【図7】図7は、本発明の実施例1、2に関わる、歪Si膜厚関係を示す断面構造図である。
【図8】図8は、本発明の実施例1、2に関わる、歪Si膜厚関係を示す断面構造図である。
【図9】図9は、本発明の実施例3に関わる、歪Si膜厚関係を示す断面構造図である。
【図10A】図10Aは、本発明の実施例6に関わるSiと歪Si/SiGeのラマンスペクトルである。
【図10B】図10Bは,本発明の実施例6に関わる歪Siの歪量とSiGeのGe濃度の関係を示す図である。
【図11A】図11Aは、臨界膜厚以下の歪Siの概念図である。
【図11B】図11Bは,臨界膜厚を超えた歪Siにミスフィット転位が形成されることを示す概念図である。
【図11C】図11Cは,臨界膜厚を大きく超えた歪Siにおいて,ミスフィット転位の密度増加していることを示す概念図である。
【図12A】図12Aは、本発明の実施例6に関わる、歪Siの結晶欠陥の評価法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図12B】図12Bは、本発明の実施例6に関わる、歪Siの結晶欠陥の評価法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図12C】図12Cは、本発明の実施例6に関わる、歪Siの結晶欠陥の評価法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図13A】図13Aは、本発明の実施例6に関わる、歪Si層内の貫通転位起因のエッチピットを示す光学顕微鏡写真である。
【図13B】図13Bは、本発明の実施例6に関わる、歪Si層内の貫通転位起因のエッチピットと積層欠陥起因のエッチ痕を示す光学顕微鏡写真である。
【図14A】図14Aは、本発明の実施例6に関わる、SiGe層までエッチングした後の原子間力顕微鏡像である。
【図14B】図14Bは、本発明の実施例6に関わる、SiGe層までエッチングした後の原子間力顕微鏡像である。
【図14C】図14Cは、本発明の実施例6に関わる、SiGe層までエッチングした後の原子間力顕微鏡像である。
【図14D】図14Dは、本発明の実施例6に関わる、SiGe層までエッチングした後の原子間力顕微鏡像である。
【図15A】図15Aは、本発明の実施例6に関わる、臨界膜厚を超えた歪Si膜において、クロスハッチ状ミスフィット転位が形成されたことを示す概念図である。
【図15B】図15Bは、本発明の実施例6に関わる、臨界膜厚を超えた歪Si膜において、クロスハッチ状ミスフィット転位の一部の領域が拡張したことを示す概念図である。
【図15C】図15Cは、本発明の実施例6に関わる、臨界膜厚を超えた歪Si膜において、拡張した領域に挟まれた転位線が分解し、貫通転位を形成したことを示す概念図である。
【図15D】図15Dは、本発明の実施例6に関わる、臨界膜厚を超えた歪Si膜において、拡張した領域幅が広がり、積層欠陥を形成したことを示す概念図である。
【図16】図16は、本発明の実施例6に関わる、拡張ミスフィット転位と積層欠陥を示す透過電子顕微鏡の断面写真である。
【図17】図17は、本発明の実施例6に関わる、拡張ミスフィット転位と積層欠陥を示す透過電子顕微鏡の平面写真である。
【図18】図18は、本発明の実施例6に関わる、Ge濃度と歪Si膜厚の領域を示す図である。
【図19】図19は、実施例1に関わる高周波電力増幅用電界効果型半導体装置の平面図である。
【図20A】図20Aは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20B】図20Bは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20C】図20Cは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20D】図20Dは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20E】図20Eは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20F】図20Fは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20G】図20Gは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20H】図20Hは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図20I】図20Iは、実施例1に関わる電界効果型半導体装置を製造工程順に示す断面図である。
【図21A】図21Aは、本発明の実施例3に関わる半導体装置の断面図である。
【図21B】図21Bは、本発明の実施例3に関わる別な半導体装置の断面図である。
【図22】図22は、本発明の実施例3に関わる歪Si半導体積層基板の断面図である。
【図23】図23は、ゲート側壁およびフィールドプレート形成工程の例を示す断面図である。
【図24】図24は、ゲート側壁およびフィールドプレート形成工程の例を示す断面図である。
【図25】図25は、フィールドプレートと、ドレインおよびゲート電極との位置関係を示す平面図である。
【図26】図26は、電力増幅器最終段の素子への電源電圧供給状態を示す回路図である。
【図27A】図27Aは、本発明の実施例6に関わる歪Si基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図27B】図27Bは、本発明の実施例6に関わる歪Si基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図27C】図27Bは、本発明の実施例6に関わる歪Si基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図27D】図27Dは、本発明の実施例6に関わる歪Si基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図27E】図27Eは、本発明の実施例6に関わる歪Si基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図28A】図28Aは、本発明の実施例7に関わる歪SOI基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図28B】図28Bは、本発明の実施例7に関わる歪SOI基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図28C】図28Cは、本発明の実施例7に関わる歪SOI基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図28D】図28Dは、本発明の実施例7に関わる歪SOI基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図28E】図28Eは、本発明の実施例7に関わる歪SOI基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図28F】図28Fは、本発明の実施例7に関わる歪SOI基板の製造方法を工程順に説明する基板の断面図である。
【図29A】図29Aは、本発明の実施例6に関わり、本発明を用いないで形成される歪Si基板の断面図である。
【図29B】図29Bは、本発明の実施例7に関わり、本発明を用いないで形成される歪SOI基板の断面図である。
【図29C】図29Bは、本発明の実施例7に関わり、本発明を用いないで形成される歪SOI基板の断面図である。
【図30A】図30Aは、本発明の実施例8に関わる、FETの断面図である。
【図30B】図30Bは、本発明の実施例9に関わる、FETの断面図である。
【図31A】図31Aは、本発明の実施例8に関わり、本発明を用いないで製造したFETの断面図である。
【図31B】図31Bは、本発明の実施例9に関わり、本発明を用いないで製造したFETの断面図である。
【符号の説明】
【0149】
1…P型低抵抗Si基板、2…P型低抵抗第1SiGe層、3…P型高抵抗第2SiGe層、4…P型高抵抗Si層、5…埋込絶縁層、6…P型ウェル、7…ゲート絶縁膜、8…ゲート電極、9…N型ソース領域、10…N型ドレインオフセット領域、11…ポケットパンチスルーストッパー、12…N型ドレイン領域、13…基板コンタクト領域、14…第1配線層、15…ソースコンタクトプラグ、16…素子分離領域、17…ドレインコンタクトプラグ型トランジスタ、22…正電源、23…バイアス電源、24…入力部、25…出力部、26…ストリップ線路、27…コンデンサ、28…P形トランジスタ、29…負電源、30…ソース配線、31…ドレイン配線、32…ゲート配線、33…ゲート側壁、34−電流範囲、35−シリコン窒化膜、36−O3-TEOS酸化膜、37−多結晶シリコン、38−フィールドプレート、40…導体層、100…ソース電極、101…歪Siの電子移動度、102…歪Siの正孔移動度、103…歪Siの臨界膜厚、103a…第二臨界膜厚、103b…本発明の領域、103c…積層欠陥形成領域、104…Si基板のラマンピーク、105…Si基板のラマンスペクトル、106…歪Si基板のラマンスペクトル、107…歪Si層のラマンピーク、108…SiGe層のラマンピーク、109,…歪Siの歪量波数、110…SiGe濃度波数、111…基板、112…臨界膜厚以下のエピタキシャル膜、113…臨界膜厚を超えたエピタキシャル膜、114…ミスフィット転位、114a…クロスハッチ状のミスフィット転位起因のエッチ痕、114b…クロスハッチ状のミスフィット転位起因のエッチ痕、115…臨界膜厚を超えたエピタキシャル膜、115a…エッチングされたエピタキシャル膜、117…貫通転位起因のエッチピット、118…積層欠陥起因のエッチ痕、120a…浅いエッチピット、120…深いエッチピット、121a…セグメント状のエッチ痕、121b…深いセグメント状のエッチ痕、122…積層欠陥起因のエッチ痕、130…歪Si層内の貫通転位密度、140…拡張ミスフィット転位、141…拡張ミスフィット転位、142…拡張ミスフィット転位、143…貫通転位、144…貫通転位、145…積層欠陥、146…拡張ミスフィット転位、150…拡張ミスフィット転位、150a…拡張ミスフィット転位、151…積層欠陥、151a…積層欠陥、152…拡張ミスフィット転位部の拡大像、153…積層欠陥部の拡大像、160…Si基板、160a…Si基板、161…濃度傾斜SiGe層、162…SiGe層、163…臨界膜厚以下の歪Si層、164…臨界膜厚を超えた歪Si層、165…ミスフィット転位、166…臨界膜厚を超えた歪Si層、167…拡張ミスフィット転位、168…SiO2、169…水素イオン注入領域、170…歪Si層、171…歪Si層、172…積層欠陥、173…歪Si層、174…歪Si層、180…STI、181…ソース、182…ドレイン、183…ソース電極、184…ドレイン電極、185…ゲート絶縁膜、186…ゲートポリシリコン、187…ゲート電極、188…側壁スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のSi基板と、
前記第1導電型のSi基板の一主面上に形成された第1導電型のSiGe層と、
前記第1導電型のSiGe層上に形成された第1導電型の歪Si層と
前記第1導電型の歪Si層上にゲート絶縁膜を介したゲート電極と、
前記ゲート電極下のチャネル領域となる歪Si層を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に形成された第2導電型のソース領域及びドレイン領域と、を有し、
前記第2導電型のドレイン領域は、前記チャネル形成領域とは離間されており、前記チャネル領域と前記ドレイン領域に挟まれた部分には前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域となっており、
前記チャネル形成領域の歪Si層の厚さと、前記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さが異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1導電型のSi基板と、
前記第1導電型のSi基板の一主面上に形成された第1導電型のSiGe層と、
前記第1導電型のSiGe層上に形成された第1導電型の歪Si層と
前記第1導電型の歪Si層上にゲート絶縁膜を介したゲート電極と、
前記ゲート電極下のチャネル領域となる歪Si層を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に形成された第2導電型のソース領域及びドレイン領域と、を有し、
前記第2導電型のドレイン領域は、前記チャネル形成領域とは離間されており、前記チャネル領域と前記ドレイン領域に挟まれた部分には前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域となっており、
前記第1導電型のSiGe層は、第1導電型の第1SiGe層と、第1導電型で前記第1SiGe層の不純物濃度より低不純物濃度の第2SiGe層との積層を有し、前記ソース領域に電気的に接続されたリーチスルー層が、少なくとも前記第1SiGe層、あるいはSi基板に到達するように前記第2SiGe層を貫通して形成されており、
前記チャネル形成領域の歪Si層の厚さと、前記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さが異なることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
上記チャネル領域の厚さhch、上記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さhoff、
及び歪Si層の臨界膜厚hcとの関係が
0.5hch≦hoff<hc、かつ
hch<hc
であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
上記チャネル領域の厚さhch、上記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さhoff、
及び歪Si層の臨界膜厚hcとの関係が
0.5hch≦hoff<hc、かつ
hch<hc
であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
上記チャネル形成領域の厚さhch、上記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さhoff、及び歪Si層の臨界膜厚hcとの関係が
hch<hc≦hoff、かつ
hch<hc
であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
上記チャネル形成領域の厚さhch、上記ドレインオフセット領域における歪Si層の厚さhoff、及び歪Si層の臨界膜厚hcとの関係が
hch<hc≦hoff、かつ
hch<hc
であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項7】
歪緩和SiGe層と
これに接して形成された歪Si層と、
少なくとも前記歪Si層の内部に活性領域とを有し、且つ
前記歪緩和SiGe層と歪Si層との界面付近に炭素、窒素、フッ素、酸素、及び水素の群から選ばれた少なくとも1種を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記活性領域が電界効果型トランジスタのチャネルであり、前記半導体装置が電界効果型トランジスタであることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1導電型のSiGe層と前記第1導電型の歪Si層との界面付近に炭素、窒素、フッ素、酸素、及び水素の群から選ばれた少なくとも1種を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1導電型のSiGe層と前記第1導電型の歪Si層との界面付近に炭素、窒素、フッ素、酸素、及び水素の群から選ばれた少なくとも1種を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ドレインオフセット領域の上部にフィールドプレート電極を、更に有することを特徴とする請求項1、3、5、及び9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
第1導電型のSi基板の一主面に第1導電型のSiGe層と、第1導電型の歪Si層とが順次積層された半導体積層構造を準備し、前記半導体積層構造の主面上にゲート絶縁膜およびゲート電極を順に形成し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域以外の部分における歪Si層の一部あるいは全部の上部に、さらに歪Si層を形成することにより、この部分の膜厚をより厚くせしめ、然る後に前記ゲート電極を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に第2導電型のソース領域、チャネル形成領域と離間されたドレイン領域、およびチャネル領域とドレイン領域に挟まれた、前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域をそれぞれ形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
歪緩和SiGe層に接して形成された歪Si層内部にチャネルが形成される電界効果型半導体装置の製造方法において、前記歪緩和SiGe層と歪Si層の界面付近に、炭素、窒素、フッ素、酸素、水素の群から選ばれた少なくとも1者を拡散あるいは注入させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
歪緩和SiGe層に接して形成された歪Si層内部にチャネルが形成される電界効果型半導体装置の製造方法において、ゲート電極を形成後に多結晶シリコンによる側壁を形成する工程を有し、上記工程により形成されたゲート電極および側壁をマスク領域として自己整合的にドレインオフセットないしはソースドレインエクステンション部分を形成する為の不純物注入を行なう工程を有し、かつ前記不純物注入の工程を実施した後に、上記多結晶シリコン側壁を除去する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
第1導電型のSi基板の一主面に第1導電型のSiGe層と、第1導電型の歪Si層とが順次積層された半導体積層構造を具備し、前記半導体積層構造の主面上にゲート絶縁膜およびゲート電極を形成する工程を有し、前記ゲート電極下のチャネル形成領域となる歪Si層を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に第2導電型のソース領域及び、前記チャネル形成領域とは離間されたドレイン領域を形成する工程を有し、かつ、チャネル領域とドレイン領域に挟まれた部分に前記ドレイン領域よりも低不純物濃度の第2導電型であるドレインオフセット領域を形成する工程を有し、上記ゲート電極に隣り合い、上記ドレインオフセット領域の上部に位置するフィールドプレート電極を形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
歪緩和SiGe層と
これに接して形成された歪Si層と、
少なくとも前記歪Si層の内部に活性領域とを有し、且つ
前記歪Si層の膜厚が臨界膜厚以上である部分を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
前記歪Si層の膜厚が第2臨界膜厚未満であることを特徴とする請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
歪緩和SiGe層と
これに接して形成された歪Si層と、
少なくとも前記歪Si層の内部に活性領域とを有し、且つ
前記SiGe層と前記歪Si層との界面には拡張転位を含んでいる部分を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項19】
前記歪Si層には積層欠陥は含んでいないことを特徴とする請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
第1導電型のSi基板と、
前記第1導電型のSi基板の一主面上に形成された第1導電型のSiGe層と、
前記第1導電型のSiGe層上に形成された第1導電型の歪Si層と
前記第1導電型の歪Si層上にゲート絶縁膜を介したゲート電極と、
前記ゲート電極下のチャネル領域となる歪Si層を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に形成された第2導電型のソース領域及びドレイン領域と、を有し、
前 記SiGe層は部分的もしくは完全に歪緩和しており、
前記SiGe層と前記歪Si層との界面には拡張転位を含んでいる部分を有し、且つ
前記歪Si層には積層欠陥は含んでいないことを特徴とする半導体装置。
【請求項21】
前記SiGe層のGe濃度が、原子数%で15%以上であることを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記歪Si層の膜厚が20 nmを超えることを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項23】
第1導電型のSi基板と、
前記第1導電型のSi基板の一主面上に形成された第1導電型のSiGe層と、
前記第1導電型のSiGe層上に形成された第1導電型の歪Si層と
前記第1導電型の歪Si層上にゲート絶縁膜を介したゲート電極と、
前記ゲート電極下のチャネル領域となる歪Si層を挟むように、前記歪Si層内もしくは歪SiおよびSiGe層内に形成された第2導電型のソース領域及びドレイン領域と、を有し、
前記SiGe層は部分的もしくは完全に歪緩和しており、
前記歪Si層の膜厚は、第2臨界膜厚未満である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項24】
前記第2臨界膜厚は、Si層に積層欠陥が形成され始める臨界膜厚(nm)であり、第2臨界膜厚hc'=3/x2、xはSiGe層のGeの組成比(Si1-xGexと表す)である請求項23に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記SiGe層のGe濃度が、原子数%で15%以上であることを特徴とする請求項23に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記歪Si層の膜厚が20 nmを超えることを特徴とする請求項23に記載の半導体装置。
【請求項27】
第1導電型のSi基板と、
前記基板の一主面上に、SiGe層とSi層とが順次積層された半導体積層構造とを有し、
前記SiGe層は部分的もしくは完全に歪緩和しており、
前記SiGe層と前記Si層との界面には拡張転位を含んでいる部分があり、且つ
前記Si層には積層欠陥は含んでおらず、
前記Si層は、面内で引っ張り歪を有する歪Si層である半導体基板と、
前記歪Si層上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、該ゲート電極下の前記歪Si層をチャネル形成領域とする電界効果型トランジスタとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項28】
前記SiGe層のGe濃度が、原子数%で15%以上であることを特徴とする請求項27に記載の半導体装置。
【請求項29】
前記歪Si層の膜厚が20 nmを超えることを特徴とする請求項27に記載の半導体装置。
【請求項30】
第1導電型のSi基板と、
前記基板の一主面上に、SiGe層とSi層とが順次積層された半導体積層構造とを有し、
前記SiGe層は部分的もしくは完全に歪緩和しており、
前記Si層の膜厚は、第2臨界膜厚未満であり
前記Si層は、面内で引っ張り歪を有する歪Si層である半導体基板と、
前記歪Si層上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、該ゲート電極下の前記歪Si層をチャネル形成領域とする電界効果型トランジスタとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項31】
前記第2臨界膜厚は、Si層に積層欠陥が形成され始める臨界膜厚(nm)であり、第2臨界膜厚hc'=3/x2、xはSiGe層のGeの組成比(Si1-xGexと表す)である請求項30に記載の半導体装置。
【請求項32】
前記SiGe層のGe濃度が、原子数%で15%以上であることを特徴とする請求項30に記載の半導体装置。
【請求項33】
前記歪Si層の膜厚が20nmを超えることを特徴とする請求項30に記載の半導体装置。
【請求項34】
第1導電型のSi基板の一主面上に、SiGe層とSi層とが順次積層され、
前記SiGe層は部分的もしくは完全に歪緩和しており、
前記SiGe層と前記Si層との界面には拡張転位を含んでいる部分があり、且つ
前記Si層には積層欠陥は含んでおらず、
前記Si層は、面内で引っ張り歪を有する歪Si層である第1の半導体積層構造と、
第1導電型のSi基板の一主面上にSiO2層が積層された第2の半導体積層構造とを貼り合わせて形成したSOI基板と、
該SOI基板上に設けられ、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、該ゲート電極下の前記歪Si層をチャネル形成領域とする電界効果型トランジスタとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項35】
前記SiGe層のGe濃度が、原子数%で15%以上であることを特徴とする請求項34に記載の半導体装置。
【請求項36】
前記歪Si層の膜厚が20 nmを超えることを特徴とする請求項34に記載の半導体装置。
【請求項37】
第1導電型のSi基板の一主面上に、SiGe層とSi層とが順次積層され、
前記SiGe層は部分的もしくは完全に歪緩和しており、
前記Si層の膜厚は、第2臨界膜厚未満であり、
前記Si層は、面内で引っ張り歪を有する歪Si層である半導体積層構造と、
第1導電型のSi基板の一主面上にSiO2層が積層された第2の半導体積層構造と
を貼り合わせて形成したSOI基板と、
該SOI基板上に設けられ、ゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、該ゲート電極下の前記歪Si層をチャネル形成領域とする電界効果型トランジスタとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項38】
前記第2臨界膜厚は、Si層に積層欠陥が形成され始める臨界膜厚(nm)であり、第2臨界膜厚hc'=3/x2、xはSiGe層のGeの組成比(Si1-xGexと表す)である請求項37に記載の半導体装置。
【請求項39】
前記SiGe層のGe濃度が、原子数%で15%以上であることを特徴とする請求項37に記載の半導体装置。
【請求項40】
前記歪Si層の膜厚が20 nmを超えることを特徴とする請求項37に記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図14D】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図15D】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20A】
image rotate

【図20B】
image rotate

【図20C】
image rotate

【図20D】
image rotate

【図20E】
image rotate

【図20F】
image rotate

【図20G】
image rotate

【図20H】
image rotate

【図20I】
image rotate

【図21A】
image rotate

【図21B】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27A】
image rotate

【図27B】
image rotate

【図27C】
image rotate

【図27D】
image rotate

【図27E】
image rotate

【図28A】
image rotate

【図28B】
image rotate

【図28C】
image rotate

【図28D】
image rotate

【図28E】
image rotate

【図28F】
image rotate

【図29A】
image rotate

【図29B】
image rotate

【図29C】
image rotate

【図30A】
image rotate

【図30B】
image rotate

【図31A】
image rotate

【図31B】
image rotate


【公開番号】特開2006−140447(P2006−140447A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271758(P2005−271758)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】