説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置の製造方法に関し、光吸収膜を利用して実行する新たな製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に光吸収膜を堆積し、前記光吸収膜を加工して、第1の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第1領域と、前記第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第2領域と、前記第2の膜厚よりも薄い第3の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第3領域とを形成し、前記基板に光を照射することにより、前記基板をアニールすることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの微細化は一般に、LSIの性能の向上をもたらす。トランジスタの寸法や配線の寸法の縮小により、トランジスタのスイッチング動作速度を高め、LSIの処理速度を高めることが可能となるからである。よって、LSIの性能を向上させるため、LSIの微細化が推進されてきた。しかしながら、LSIを微細化するためには、トランジスタの寸法や配線の寸法だけでなく、不純物拡散層の寸法も縮小する必要がある。特に、不純物拡散層は、水平方向だけでなく鉛直方向にも寸法を縮小する必要がある。そのため、浅く低抵抗な不純物拡散層を形成することが求められている。
【0003】
不純物拡散層の形成工程は一般に、半導体基板中に不純物イオンを注入するイオン注入工程と、注入された不純物原子を活性化させる活性化アニール工程とを含む。半導体基板としてシリコン基板が採用される場合、不純物原子としては例えば、III族原子のボロン、V族原子の砒素、又はV族原子のリン等が注入される。浅い不純物拡散層を形成するためには、不純物を浅く注入する必要がある。そのため、イオン注入工程での注入深さを決定する重要な要因である加速エネルギーは、年々減少してきている。近年では、限界に近い加速エネルギーで不純物を注入するようになってきている。
【0004】
一方、活性化アニール工程では、不純物の活性化率を高めるために、1000℃以上の高温で熱処理を行う必要がある。しかしながら、温度が高くなるほど、不純物の拡散係数が大きくなり不純物の拡散長が長くなるため、浅い接合を形成することが困難になる。
【0005】
活性化アニール工程に関しては、ランプアニール装置やレーザーアニール装置が注目されている。
【0006】
しかしながら、ランプアニールでは、少なくとも数秒間の加熱時間がかかるため、熱拡散によりアニール温度が平準化されてしまう。そのため、ランプアニールにおいてアニール温度を所定の領域毎に変化させるのは困難である。
【0007】
一方、レーザーアニールにおいては、加熱時間がミリ秒のオーダーであり平準化の効果が小さいので、基板上に温度差を発生させやすい。しかし、レーザーアニールでは、既に1個のチップ内にある程度のパターンが形成されている場合、チップ内の各領域を均等に加熱することができない。これにより、トランジスタの特性にばらつきが生じ、LSIの歩留りや生産性に悪影響が及んでしまう。
【0008】
なお、特許文献1には、絶縁性基板上に光吸収膜を形成する工程を含む薄膜集積回路の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、基板上の所定の領域に反射防止膜を選択的に形成する工程を含む半導体装置の製造方法が開示されている。しかし、これらの文献の方法で形成された膜では、目的を十分に達成できない場合がある。
【特許文献1】特開平8−139016号公報
【特許文献2】特開平9−260286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、光吸収膜を利用して実行する新たな製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例は例えば、基板上に光吸収膜を堆積し、前記光吸収膜を加工して、第1の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第1領域と、前記第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第2領域と、前記第2の膜厚よりも薄い第3の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第3領域とを形成し、前記基板に光を照射することにより、前記基板をアニールすることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0011】
本発明の実施例は例えば、基板上に光吸収膜を堆積し、前記光吸収膜を加工して、第1の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第1領域と、前記第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第2領域と、前記光吸収膜が除去された第3領域とを形成し、前記基板に光を照射することにより、前記基板をアニールすることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、半導体装置の製造方法に関し、光吸収膜を利用して実行する新たな製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先ず、不純物拡散層の形成工程における活性化アニール工程について、本発明者らの知見に基づいた問題点について詳細に述べる。
【0014】
活性化アニール工程では、ランプアニール装置が用いられる事が多い。ランプアニール装置は一般に、処理対象の基板を設置する処理室と、処理室を不活性雰囲気にするためのガスを処理室に導入するガス配管と、石英等の透明材料を介して基板に対向するよう処理室の外部に配置されたハロゲンランプとを備える。熱処理の際には、ランプが点灯され、ランプから放射される輻射光により基板が加熱される。
【0015】
ランプアニール装置による活性化アニールの際、基板の温度は例えば、50℃/秒程度の速度で昇温され、1000℃から1100℃の温度で10秒から30秒程度保持され、20℃/秒程度の速度で降温されるよう制御される。しかしながら近年、不純物の拡散を抑制してより浅い接合を形成する必要性から、昇温中、温度保持中、及び降温中の不純物の拡散を更に抑制するような温度条件が採用されるようになっている。この場合、基板の温度は例えば、150℃/秒程度の速度で急速に昇温され、1000℃から1100℃の温度に到達すると直ちに降温が開始され、60℃/秒程度の速度で急速に降温されるよう制御される。この場合、1000℃から1100℃の温度の保持時間は例えば、1秒以下に制御される。このようなアニールは、スパイクアニールと呼ばれる。低加速エネルギーでのイオン注入とスパイクアニールによる活性化アニールとを組み合わせることで、接合深さが20nmから30nm程度の不純物拡散層を比較的低抵抗で形成することが可能となる。なお、基板中の不純物の濃度が1×18cm−3となる深さを、接合深さと呼ぶ。
【0016】
LSIの微細化の更なる進展に伴い、接合深さが10nmから20nmのより浅くより低抵抗な不純物拡散層を形成することが求められている。しかしながら、ランプアニール装置による活性化アニールでは、昇温中や降温中に不純物が拡散することが不可避であるため、このような不純物拡散層の形成にランプアニール装置で対処するのは困難である。そこで近年、昇温時間や降温時間を含む基板の加熱時間をミリ秒まで短縮可能なアニール装置として、ランプアニール装置やレーザーアニール装置が注目されている。
【0017】
レーザーアニール装置は一般に、光源として使用されるレーザー発振源と、処理対象の基板に光を導くミラー等を含む光学系と、基板を設置する可動式のステージと、ステージが設置された処理室とを備えている。レーザーアニール装置は、ステージを高速で動かすことにより、レーザー光で基板を走査することができる。基板上のある一点をレーザー光で照射する時間は、10ミリ秒以内という短時間である。レーザーアニール装置は更に、レーザー発振源の出力を適切に調整することにより、基板を1000℃以上の温度に加熱することが可能である。レーザーアニール装置は更に、昇温時間と降温時間とを合わせて10ミリ秒以下にすることができるため、不純物の拡散を抑制しつつ抵抗を低減した浅い不純物拡散層を形成することが可能である。そのため、レーザーアニール装置をLSIの製造工程に適用する検討が進められている。
【0018】
しかしながら、レーザーアニール装置による熱処理には、以下のような問題がある。
【0019】
第1の問題点として、基板上に形成されたパターンに応じて基板に温度差が生じることが挙げられる。活性化アニールが実行される際には、基板上に既にある程度のパターンが形成されている。例えば、STI(Shallow Trench Isolation)や、AA(Active Area)や、ゲート電極を構成するゲート導電体(Gate Conductor:GC)は、基板上に既に設けられているのが普通である。基板がシリコン基板である場合、STI及びGCはそれぞれシリコン酸化物及びポリシリコンからなる事が多い。
【0020】
STIやAAやGCは一般に、1個のチップ内の各領域に均等に存在する訳ではない。例えば、メモリ回路とロジック回路と周辺I/O回路とでは一般に、STIやAAやGCの存在密度は異なる。そのため、基板に光を照射すると、光の吸収率が基板上の領域毎に異なるという現象が生じる。そのため、レーザーアニールの際、アニール温度が基板上の領域毎に異なってしまう。これは、1個のチップ内の各領域を均等に加熱できないことを意味する。これにより、トランジスタの特性にばらつきが生じ、LSIの歩留りや生産性に悪影響が及ぶ。
【0021】
このような事態を防止するための手法として、基板上に光吸収膜を形成するような手法が提案されている。当該手法では、輻射率の高い膜を基板上に形成しておくことにより、輻射光を所定の割合だけ当該膜に吸収させ、基板を熱伝導により加熱する。これにより、パターンの粗密の影響を抑制することができる。
【0022】
しかしながら、単に光吸収膜を形成するだけでは解決できない問題があることが、本発明者らの研究によって明らかとなった。レーザー光による加熱は急速に行われるため、熱平衡が実現されない事が多い。そのため、熱伝導率の異なる材料が存在する領域間では温度差が生じる。例えば、GCの材料であるポリシリコンと基板の材料であるシリコン単結晶は同等の熱伝導率を有し、約1.3W/cm・Kであるが、STIの材料であるシリコン酸化物の熱伝導率はシリコンよりも遥かに小さい約0.0015W/cm・Kである。そのため、STI上のGCから基板に拡散する熱量は、基板上のGCから基板に拡散する熱量より少なくなり、STI上のGCが高温で保持される時間は、基板上のGCが高温で保持される時間より長くなる。そのため、STI上のGCが融点を超える温度で加熱されて溶解するような事態も生じ得る。一方、STI上のGCが溶解しない程度にレーザー光の照射エネルギーを低下させると、不純物を十分に活性化させるという本来の目的が達成されない結果となる。
【0023】
光吸収膜をパターニングして、光吸収膜のある部分とない部分とを作ることにより、光吸収率を領域ごとに変化させる手法も提案されている。しかし、この手法では光吸収率の違いは2段階しか設定できない。基板上には様々な種類の層が存在するため、光吸収膜の有無だけでアニール温度のばらつきを抑制するのは困難である。
【0024】
第2の問題点として、上記の場合とは逆に基板上に意図的に温度差を発生させたい場合に、それを実現する方法がないことが挙げられる。これは例えば、金属シリサイドの形成工程において問題となる。ゲート電極やソースドレイン領域の表面には、金属シリサイドを形成する事が多い。金属シリサイドは、ゲート電極やソースドレイン領域の表面に金属膜を形成し、基板の熱処理によりゲート電極中やソースドレイン領域中のシリコン原子と金属膜中の金属原子とを反応させることにより形成される。未反応の金属は、熱処理後に薬液により除去される。
【0025】
この工程では、ゲート電極やソースドレイン領域の面積に対してこれらの周囲のSTIの面積が非常に大きい場合、これらの周囲に大量の金属原子が存在することになる。この場合、ゲート電極やソースドレイン領域には、金属原子が過剰に供給されることになる。そのため、異常反応が発生して正常な金属シリサイドが形成されなくなり、ゲート電極やソースドレイン領域におけるコンタクト抵抗が規格からはずれるという問題が生じる。
【0026】
このような問題には、金属シリサイドの形成工程におけるアニール温度を領域毎に変化させることで対処できると考えられるのだが、それを実現する方法が存在しない。例えばランプアニールでは、少なくとも数秒間の加熱時間がかかるため、熱拡散によりアニール温度が平準化されてしまう。そのため、ランプアニールにおいてアニール温度を所定の領域毎に変化させるのは困難である。
【0027】
一方、レーザーアニールにおいては、加熱時間がミリ秒のオーダーであり平準化の効果が小さいので、基板上に温度差を発生させやすい。しかし、レーザーアニールでは、既に1個のチップ内にある程度のパターンが形成されている場合、チップ内の各領域を均等に加熱することができない。これにより、トランジスタの特性にばらつきが生じ、LSIの歩留りや生産性に悪影響が及んでしまう。更には、上記のように光吸収膜のある部分とない部分とを形成して温度差を発生させる手法では、光吸収率の違いは2段階しか設定できない。また、表面に金属膜が存在する部分は光の反射率が極めて高いので、表面に金属膜が存在するが光吸収膜は存在しない部分では光がほとんど吸収されず、加熱することが困難である。よって、金属シリサイドの形成工程におけるレーザーアニールにこの手法を適用するのは困難である。
【0028】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。該図面では、同一又は類似の部分に同一又は類似の符号が付してある。該図面は模式的なものであり、該図面における種々の寸法同士の比率は、必ずしも現実の比率とは一致しない。
【0029】
(第1実施例)
図1及び図2は、第1実施例の半導体装置101の製造工程図である。
【0030】
先ず、図1aのように、既知の方法等により、基板111上に素子分離層112を形成する。基板111はここでは、シリコン基板(シリコンウエハ)である。基板111は、半導体基板でも、SOI(Semiconductor On Insulator)基板でも構わない。素子分離層112はここでは、STI(Shallow Trench Isolation)層である。素子分離層112はここでは、シリコン酸化膜である。図1aには、基板領域121及び素子分離領域122が示されている。基板領域121は、基板111の表面に素子分離層112が設けられていない領域である。素子分離領域122は、基板111の表面に素子分離層112が設けられている領域である。
【0031】
素子分離層112は例えば、以下のように形成される。先ず、基板111上にシリコン熱酸化膜を堆積し、当該シリコン熱酸化膜上にシリコン窒化膜を堆積する。次に、当該シリコン窒化膜上にフォトレジストを塗布し、当該フォトレジストをパターニングする。次に、当該フォトレジストをマスクとするドライエッチングにより、上記シリコン窒化膜と上記シリコン熱酸化膜とを部分的に除去して、基板111を部分的に露出させる。次に、薬液又はアッシングにより、上記フォトレジストを除去する。次に、上記シリコン窒化膜と上記シリコン熱酸化膜とをマスクとするドライエッチングにより、基板111の表面に素子分離用の溝を形成する。次に、当該溝にプラズマ酸化膜(シリコン酸化膜)を埋め込み、当該プラズマ酸化膜をCMP等により平坦化し、上記シリコン窒化膜と上記シリコン熱酸化膜とを除去する。このようにして、素子分離層112が形成される。次に、ウエル領域及びチャネル領域を形成するためのイオン注入を行う。当該イオン注入では、各領域に例えばボロン、砒素、又はリンが注入される。次に、注入された不純物を活性化させるための活性化アニールを行う。
【0032】
次に、図1bのように、基板111上にゲート絶縁膜131を形成する。ゲート絶縁膜131はここでは、シリコン酸化膜である。次に、ゲート絶縁膜131上に、ゲート電極132を構成する導電層を形成する。当該導電層は、ゲート導電体(Gate Conductor:GC)に相当する。当該導電層はここでは、ポリシリコン層である。すなわち、ゲート電極132はここでは、ポリシリコン電極である。
【0033】
ゲート絶縁膜131及びゲート電極132は例えば、以下のように形成される。先ず、基板111上にゲート絶縁膜131を堆積する。次に、LPCVDにより、ゲート絶縁膜131上にポリシリコン層を堆積する。次に、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、上記ポリシリコン層とゲート絶縁膜131とをパターニングする。この工程にてパターニングされた上記ポリシリコン層が、ゲート電極(ゲート導電体)132となる。次に、ゲート電極132の側面に側壁絶縁膜を形成する。当該側壁絶縁膜は例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、又はこれらの両方を含む絶縁膜である。
【0034】
次に、図1cのように、フォトレジスト201のパターンを形成する。次に、pMOSを形成する領域に、矢印Aで示すように、III族原子のイオンを注入する。イオン種は例えば、ボロンイオン又は三フッ化ボロンイオンである。これにより、pMOS領域のゲート電極(ゲート導電体)132及びソースドレイン領域に不純物が導入される。
【0035】
次に、図1dのように、フォトレジスト202のパターンを形成する。次に、nMOSを形成する領域に、矢印Bで示すように、V族原子のイオンを注入する。イオン種は例えば、リンイオン又は砒素イオンである。これにより、nMOS領域のゲート電極(ゲート導電体)132及びソースドレイン領域に不純物が導入される。
【0036】
次に、活性化のための熱処理(活性化アニール)を行う。この熱処理を高温で行うことで、ゲート電極132及びソースドレイン領域に注入された不純物原子の電気的な活性化率を高めることができる。これにより、ゲート電極132の空乏化を抑制できると共に、ソースドレイン領域の電気抵抗を低減することができる。これにより、トランジスタ特性の向上がもたらされる。一方、ソースドレイン領域に注入された不純物原子の拡散を抑制しないと、不純物原子がチャネル領域まで拡散し、トランジスタ特性の劣化につながる。そこで、当該活性化アニールには、基板111の温度を数ミリ秒で1000度以上にまで上げることが可能なレーザーアニールを適用する。
【0037】
本実施例では、レーザーアニールによる活性化アニールを行う前に、基板111の全面に光吸収膜を堆積する。本実施例では更に、当該活性化アニールの前に、当該光吸収膜の膜厚を、フォトリソグラフィ及びエッチングにより場所ごとに変化させる。当該光吸収膜は例えば、以下のように形成される。
【0038】
先ず、図1eのように、基板111及びゲート電極(ゲート導電体)132上に光吸収膜301を堆積する。これにより、基板111の全面に一定膜厚の光吸収膜301が形成される。光吸収膜301は例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、又はこれらの両方を含む積層膜である。光吸収膜301は例えば、主にカーボンからなる膜でもよい。光吸収膜301は、使用するレーザー光の波長に対する吸収率が0でないような膜であれば、上記以外の膜を使用することもできる。
【0039】
次に、図1fのように、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト211のパターンを光吸収膜301上に形成する。次に、図1gのように、フォトレジスト211をマスクとするドライエッチングにより、光吸収膜301を加工する。これにより、光吸収膜301が部分的に薄膜化される。次に、図2aのように、薬液又はアッシングにより、フォトレジスト211を除去する。こうして、チップ1個分の範囲内で膜厚が2段階に変化する光吸収膜301が形成される。基板111上には、第1の膜厚T1の光吸収膜301で覆われた第1領域R1と、第1の膜厚T1よりも薄い第2の膜厚T2の光吸収膜301で覆われた第2領域R2とが形成される。
【0040】
次に、図2bのように、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト212のパターンを光吸収膜301上に形成する。次に、図2cのように、フォトレジスト212をマスクとするドライエッチングにより、光吸収膜301を加工する。これにより、光吸収膜301が部分的に薄膜化される。次に、図2dのように、薬液又はアッシングにより、フォトレジスト212を除去する。こうして、チップ1個分の範囲内で膜厚が3段階に変化する光吸収膜301が形成される。基板111上には、第1の膜厚T1の光吸収膜301で覆われた第1領域R1と、第1の膜厚T1よりも薄い第2の膜厚T2の光吸収膜301で覆われた第2領域R2と、第2の膜厚T2よりも薄い第3の膜厚T3の光吸収膜301で覆われた第3領域R3とが形成される。
【0041】
本実施例では、第2領域R2の形成後に第3領域R3を形成するが、代わりに、第3領域R3の形成後に第2領域R2を形成してもよい。
【0042】
次に、図2eのように、第1領域R1,第2領域R2,第3領域R3を有する基板111の活性化アニールを行う。すなわち、基板111にレーザー光を照射することにより、基板111をアニールする。図2eでは、基板111にレーザー光が照射される様子が、矢印Cで示されている。ここでは、レーザー光の照射エネルギー密度が40J/cm、加熱時間が1ミリ秒となるようなスキャン条件の下、活性化アニールが行われる。当該活性化アニールにより、ゲート電極(ゲート導電体)132及びソースドレイン領域141内の不純物が活性化され、ゲート電極(ゲート導電体)132及びソースドレイン領域141が完成する。次に、図2fのように、薬液又はアッシングにより、光吸収膜301を除去する。
【0043】
なお、図2cの工程において、光吸収膜301を薄膜化する代わりに、光吸収膜301を除去してもよい。これにより、図2dのような基板111の代わりに、図3aのような基板111が得られる。図3aでは、基板111上に、第1の膜厚T1の光吸収膜301で覆われた第1領域R1と、第1の膜厚T1よりも薄い第2の膜厚T2の光吸収膜301で覆われた第2領域R2と、光吸収膜301が除去された第3領域R3とが形成されている。また、本実施例では、膜厚が3段階に変化する光吸収膜301を形成する代わりに、膜厚が4段階以上に変化する光吸収膜301を形成してもよい。このような光吸収膜301を有する基板111の例を、図3b及び図3cに示す。図3bの第4領域R4では、光吸収膜301が薄膜化されている。図3cの第4領域R4では、光吸収膜301が除去されている。
【0044】
以下、本実施例の光吸収膜301について、図2dを参照して詳細に説明する。但し、以下の説明は、膜厚が3段階に変化する光吸収膜301だけでなく、膜厚が4段階以上に変化する光吸収膜301にも適宜適用可能である。
【0045】
消衰係数は、光吸収膜301の光学的な特性を示す指標の1つである。光吸収膜301の消衰係数が一定の場合、光吸収膜301の光吸収率は膜厚に応じて変化する。光吸収膜301の消衰係数をK、膜厚T1,T2,T3の光吸収膜301の光吸収率をA1,A2,A3とすると、近似的に以下の関係が成り立つと考えられる。
1:A2:A3 = KT1:KT2:KT3 ・・・ (1)。
【0046】
よって、膜厚TNと光吸収率ANとの間には、近似的に以下の関係が成り立つものと考えられる。Nは1,2,又は3であり、Cは定数である。
N = CKTN ・・・ (2)。
【0047】
ここで、光吸収膜301に入射したが、光吸収膜301では吸収されず、基板111の表面に到達した光について考える。当該光の量をQ、基板111の表面における反射率をRとする。この場合、基板111で吸収される光の量は(1−R)Qとなり、基板111では吸収されずに反射される光の量はRQとなる。反射光RQは、その一部が光吸収膜301で吸収されることになる。
【0048】
ここで、光吸収膜301の単位面積に入射する光のエネルギー密度をWとする。また、光吸収膜301で吸収される入射光のエネルギー密度をW1とする。また、光吸収膜301では吸収されずに基板111に到達する光のエネルギー密度をW2とする。また、基板111で吸収される光のエネルギー密度をW3とする。また、基板111では吸収されずに反射される光のエネルギー密度をW4とする。また、光吸収膜301で吸収される反射光のエネルギー密度をW5とする。この場合、W1,W2,W3,W4,W5は次のように与えられる。
1 = WAN = WCKTN ・・・ (3)。
2 = W(1−AN) = W(1−CKTN) ・・・ (4)。
3 = W2(1−R) = W(1−R)(1−AN) ・・・ (5)。
4 = W2R = WR(1−AN) ・・・ (6)。
5 = W4N = WR(1−AN)AN ・・・ (7)。
【0049】
基板111及び光吸収膜301により吸収される光の量をWTとする。当該光の量WTは次のように与えられる。
T = W1+W3+W5
= W{AN+(1−R)(1−AN)+R(1−AN)AN}
= W{1−R(1−AN)2} ・・・ (8)。
【0050】
よって、W{1−R(1−AN)2}が実効的な光吸収量となる。よって、入射した光の量に対する吸収された光の量である光吸収率WT/Wは、{1−R(1−AN)2}となる。なお、0<AN<1である。WTはANの関数であり、ANはTNの関数であるため、WTはTNの関数となる。即ち、基板111及び光吸収膜301により吸収される光の量は、光吸収膜301の膜厚に応じて変化する。よって、基板111のアニール温度は、光吸収膜301の膜厚に応じて変化することになる。
【0051】
本実施例では、光吸収膜301の膜厚を、ゲート導電体(GC)132の配置に応じて変化させる。
【0052】
ゲート導電体132は一般に、基板領域121と素子分離領域122とにまたがって形成されている。基板121及び素子分離領域122の詳細については、図1aを参照されたい。本実施例では、ゲート導電体132が基板領域121に形成されているような領域に、第1領域R1を形成し、ゲート導電体132が素子分離領域122に形成されているような領域に、第2領域R2及び第3領域R3を形成する。ゲート導電体132は一般に、基板領域121内に存在する部分と素子分離領域122内に存在する部分とを有し、前者の部分の面積は一般に後者の部分の面積よりも狭い。
【0053】
また、基板111上には通常、様々な面積の素子分離層112が形成される。例えば、メモリ回路内の素子分離層112の面積は通常、周辺I/O回路内の素子分離層112の面積よりも狭い。本実施例では、ゲート導電体132が比較的狭い素子分離層112上に形成されているような領域に、第2領域R2を形成し、ゲート導電体132が比較的広い素子分離層112上に形成されているような領域に、第3領域R3を形成する。例えば、ゲート導電体132が素子分離層112上に形成されており、当該素子分離層112の面積が閾値よりも小さいような領域に、第2領域R2を形成し、ゲート導電体132が素子分離層112上に形成されており、当該素子分離層112の面積が上記閾値よりも大きいような領域に、第3領域R3を形成する。なお、ゲート導電体132が素子分離層112上に形成されており、当該素子分離層112の面積が上記閾値と等しいような領域については、第2領域R2を形成するようにしてもよいし、第3領域R3を形成するようにしてもよい。
【0054】
ゲート導電体132の材料であるポリシリコンと基板111の材料であるシリコン単結晶は同等の熱伝導率を有し、約1.3W/cm・Kであるが、素子分離層112の材料であるシリコン酸化物の熱伝導率はシリコンよりも遥かに小さい約0.0015W/cm・Kである。そのため、基板111のレーザーアニールの際、素子分離層112が密な領域では熱が基板111に伝わりにくいのに対し、素子分離層112が疎な領域では熱が基板111に伝わりやすい。熱伝導率が高いということは、一定時間内に熱が拡散する距離が長いことを意味する。レーザーにより加熱された部分は、熱が周囲に拡散することで温度が低下する。よって、熱伝導率の高い材料は熱伝導率の低い材料よりも早く温度低下する傾向がある。つまり、基板領域121は比較的冷めやすく、素子分離領域122は比較的冷めにくいという傾向がある。
【0055】
そのため、基板111のレーザーアニールの際、基板領域121内のゲート導電体132と、比較的狭い素子分離層112上のゲート導電体132と、比較的広い素子分離層112上のゲート導電体132は、異なる温度履歴を示す。よって、これらのゲート導電体132のアニール温度が、異なる温度になってしまう。そこで、本実施例では、光吸収膜301の膜厚をゲート導電体132の配置に応じて変化させて、ゲート導電体132間のアニール温度のずれを抑制する。
【0056】
図4は、ゲート導電体132の配置について説明するための図である。図4A及び図4aは、基板領域121に形成されたゲート導電体132を表す。図4A及び図4aはそれぞれ、断面図及び平面図である。図4B及び図4bは、比較的狭い素子分離層112上に形成されたゲート導電体132を表す。図4B及び図4bはそれぞれ、断面図及び平面図である。図4C及び図4cは、比較的広い素子分離層112上に形成されたゲート導電体132を表す。図4C及び図4cはそれぞれ、断面図及び平面図である。
【0057】
レーザーアニール用のレーザーの例としては、波長0.78μm乃至0.98μmの半導体レーザーや、波長1.0μm乃至1.1μmのNd:YAGレーザーが挙げられる。但し、レーザーアニール用のレーザーは、これらのレーザーには限定されない。光吸収膜301はここでは、主にカーボンからなる膜を堆積することにより形成する。上記の例のレーザーに対する当該光吸収膜301の消衰係数Kは、0.15である。
【0058】
ここで、光吸収膜301の加工方法の例を説明する。図4Aの領域では、基板111及びゲート導電体132内の不純物を高濃度に活性化させることが望ましいので、光吸収膜301の膜厚を厚くする。図4Aの領域における光吸収膜301の膜厚は例えば、4μmとする。図4Cの領域では、ゲート導電体132の溶解を防ぐために、光吸収膜301の膜厚を薄くする。図4Cの領域における光吸収膜301の膜厚は例えば、2μmとする。図4Bの領域における光吸収膜301の膜厚は、図4Aの領域の膜厚と図4Cの領域の膜厚との間の膜厚とする。図4Cの領域における光吸収膜301の膜厚は例えば、3μmとする。このようにして、基板111上には、第1の膜厚T1(=4μm)の光吸収膜301で覆われた第1領域R1と、第1の膜厚T1よりも薄い第2の膜厚T2(=3μm)の光吸収膜301で覆われた第2領域R2と、第2の膜厚T2よりも薄い第3の膜厚T3(=2μm)の光吸収膜301で覆われた第3領域R3とが形成される。
【0059】
このような光吸収膜301の例を図5に示す。図5は、光吸収膜301の膜厚について説明するための図である。図5Aは、図4Aと同様、基板領域121に形成されたゲート導電体132を表す。図5Aの領域は、第1領域R1となっている。図5Bは、図4Bと同様、比較的狭い素子分離層112上に形成されたゲート導電体132を表す。図5Bの領域は、第2領域R2となっている。図5Cは、図4Cと同様、比較的広い素子分離層112上に形成されたゲート導電体132を表す。図5Cの領域は、第3領域R3となっている。
【0060】
ここで、実効的な光吸収率WT/Wを算出する事にする。ここでは、膜厚2μmの光吸収膜301の光吸収率ANを0.3、基板111の反射率Rを0.3とする。この場合、第1領域R1(T1=4μm),第2領域R2(T2=3μm),第3領域R3(T3=2μm)の実効的な光吸収率WT/Wの比はそれぞれ、0.95,0.91,0.85となり、基板111上での実効的な光吸収率WT/Wが、10%程の幅で変化する。これにより、第1領域R1の不純物の十分な活性化と第3領域R3のゲート導電体132の溶解防止とを両立することが可能になる。
【0061】
本実施例には、以下のような利点がある。
【0062】
本実施例には第1に、光吸収膜301の膜厚を変化させることで素子分離層112上のゲート導電体132の過加熱を抑制できるので、レーザー光のエネルギー密度の設定自由度が高いという利点がある。光吸収膜301の膜厚が均一な場合には、基板領域121を十分に活性化させるためにレーザー光のエネルギー密度を高くすると、素子分離層112上のゲート導電体132が過剰に加熱されて溶解することがある。かといって、素子分離層112上のゲート導電体132が溶解しないようにレーザー光のエネルギー密度を低くすると、基板領域121の活性化が不十分となる。一方、本実施例においては、素子分離層112上のゲート導電体132の過加熱を抑制しつつ、基板領域121を十分に活性化させることが可能である。
【0063】
本実施例には第2に、光吸収率WT/Wの変化をゆるやかにすることができるという利点がある。光吸収膜301のある部分とない部分とを作り、光吸収膜301の膜厚を2段階分変化させる場合、前者の部分と後者の部分とで光吸収率WT/Wが急激に変化する。よって、基板領域121の十分な活性化と素子分離層112上のゲート導電体132の過加熱の抑制との両立が困難な事が多い。一方、本実施例では、素子分離層112上のゲート導電体132の過加熱を抑制しつつ、基板領域121を十分に活性化させることが比較的容易である。本実施例では、必要に応じて、光吸収膜301の膜厚を4段階以上変化させることも可能である。
【0064】
図6は、トランジスタの性能の評価結果を示したグラフである。曲線Aは、本実施例のトランジスタの性能の評価結果を表す。当該トランジスタは、図1及び図2のような製造工程により製造されたものである。曲線Bは、比較例のトランジスタの性能の評価結果を表す。当該トランジスタは、均一な膜厚を有する光吸収膜301を利用して製造されたものである。なお、これらのトランジスタを製造する際には、素子分離層112上のゲート導電体132が溶解しない範囲内での最大の照射エネルギー密度で、レーザーアニールを実施した。
【0065】
曲線A及び曲線Bはそれぞれ、トランジスタのオフ時及びオン時にソースドレイン間に流れる電流値を測定し、オフ時及びオン時の電流値の関係を表示したものである。一定のオフ電流値に対してオン電流値が大きいほど、トランジスタの特性が優れている。図6によれば、曲線Aの方がオン電流値が大きく、本実施例のトランジスタの特性の方が優れていることが解る。本実施例の製造方法では、素子分離層112上のゲート導電体132を過剰に加熱することなく、基板領域121を十分に活性化させることができる。よって、本実施例の製造方法によれば、優れた特性のトランジスタを製造することができる。
【0066】
以上のように、本実施例では、光吸収膜301の膜厚を3段階以上に変化させる。これにより、アニール温度の不均一による不具合や、アニール温度を領域ごとに変化させられないことによる不具合を抑制することができる。
【0067】
なお、本実施例の光吸収膜301は、レーザー光による活性化アニール用として有用であるだけでなく、その他の光による活性化アニール用としても有用である。本実施例の光吸収膜301は例えば、タングステンハロゲンランプ光やキセノンフラッシュランプ光による活性化アニール用としても有用である。ただし、アニール温度を制御することは特にレーザーアニールやフラッシュランプアニールにおいて必要となるものなので、本実施例の光吸収膜301は主にレーザーアニール用やフラッシュランプアニール用として有用である。
【0068】
また、本実施例では例えば、pMOS領域(又はnMOS領域)に第1領域R1を形成し、nMOS領域(又はpMOS領域)に第2領域R2を形成し、その他の領域(例えばキャパシタ領域)に第3領域R3を形成してもよい。これは例えば、pMOSとnMOSの一方のゲート電極がメタル電極で、pMOSとnMOSの他方のゲート電極がポリシリコン電極の場合に有用である。
【0069】
(第2実施例)
図7は、第2実施例の半導体装置101の製造工程図である。図7a乃至dの製造工程図は、図1a乃至g及び図2a乃至fの後に続く製造工程図である。
【0070】
図7aは、図2fの工程の終了直後の基板111を表す。図7aには、基板111と、素子分離層112と、ゲート絶縁膜131と、ゲート電極132と、ソースドレイン領域141と、側壁絶縁膜151とが示されている。
【0071】
続いて、図7bのように、CVD(化学気層成長)等により、基板111の全面に層間絶縁膜161を堆積する。これにより、基板111及びゲート電極132上に層間絶縁膜161が形成される。層間絶縁膜161はここでは、シリコン酸化膜である。次に、既知の方法等により、層間絶縁膜161を加工して、基板111及びゲート電極132の表面が露出するようなコンタクトホール162を形成する。これにより、基板111(ソースドレイン領域141)の表面と、ゲート電極132の表面とが露出する。次に、スパッタリング等により、基板111の全面に金属膜163を堆積する。これにより、基板111及びゲート電極132の表面に金属膜163が形成される。該金属膜163はここでは、シリサイド化用のニッケル膜である。
【0072】
次に、金属膜163上に光吸収膜401を堆積する。これにより、基板111の上方に一定膜厚の光吸収膜401が形成される。光吸収膜401の例は、光吸収膜301の例と同様である。次に、光吸収膜401を加工する。基板111上には、第1の膜厚T1の光吸収膜401で覆われた第1領域R1と、第1の膜厚T1よりも薄い第2の膜厚T2の光吸収膜401で覆われた第2領域R2と、第2の膜厚T2よりも薄い第3の膜厚T3の光吸収膜401で覆われた第3領域R3とが形成される。光吸収膜401の加工方法の例は、光吸収膜301の加工方法の例と同様である。次に、第1領域R1,第2領域R2,第3領域R3を有する基板111のシリサイド化アニールを行う。該シリサイド化アニールには、レーザーアニールが含まれる。該レーザーアニールの後には、反応しなかった余分な金属膜163を、薬液により除去する。その後、2回目のアニール処理を、一般的なアニール装置により行う。当該シリサイド化アニールにより、図7cのように、基板111及びゲート電極132の表面に金属シリサイド層164が形成される。この工程の詳細については、後述する。
【0073】
次に、図7dのように、コンタクトホール162内にコンタクト材料を埋め込む。これにより、金属シリサイド層164上にコンタクトプラグ165が形成される。コンタクトプラグ165はここでは、W(タングステン)プラグである。
【0074】
以上のように、本実施例では、金属シリサイド層164の形成工程でレーザーアニールを利用する。以下、該レーザーアニールについて説明する。
【0075】
本実施例のレーザーアニールでは、金属膜163の表面にレーザーを照射する。しかしながら、金属膜163は一般に光の反射率が高いため、金属膜163をレーザー光により加熱するのは困難である。そこで本実施例では、金属膜163の表面に光吸収膜401を形成する。そして本実施例では更に、コンタクト領域(シリサイド領域)の面積と絶縁体領域(非シリサイド領域)の面積との比率に応じて光吸収膜401の膜厚を変化させる。これにより、コンタクト領域の面積と絶縁体領域の面積との比率に応じて、アニール温度が変化することになる。
【0076】
ここで、金属シリサイド層164が形成される領域であるシリサイド領域の面積をSとする。本実施例では、図7bの工程で露出した基板111及びゲート電極132の表面がシリサイド領域となる。シリサイド領域では、シリコン(ここではシリコン基板及びポリシリコン電極)の表面に金属シリサイド層164が形成される。また、金属シリサイド層164が形成されない領域である非シリサイド領域の面積をAとする。本実施例では、非シリサイド領域は層間絶縁膜161等の絶縁体で占められる。
【0077】
レーザーアニールの際、シリサイド領域の金属はシリコンと反応するが、非シリサイド領域の金属は反応しない。よって、面積Aが面積Sに比べて十分に広い場合、シリサイド領域の周囲には、未反応の金属原子が大量に存在することになる。この場合、シリサイド領域には、金属原子が過剰に供給されることになる。そのため、異常反応が起きて正常な金属シリサイドが形成されなくなり、ソースドレイン領域141及びゲート電極132のコンタクト抵抗が規格からはずれる場合がある。そこで本実施例では、面積Aが面積Sに比べて十分に広い領域では、アニール温度が相対的に低くなるよう光吸収膜401の膜厚を設定する。これにより、異常反応の発生が抑制される。
【0078】
本実施例では、半導体装置101のレイアウト設計の際に、設計図面の全領域を1μm×1μmの正方形領域に分割する。そして、各正方形領域におけるシリサイド領域の面積率αを算出する。面積率αは、正方形領域の面積に占めるシリサイド領域の面積の割合を表し、α=S/(S+A)で表される。本実施例では、各正方形領域におけるシリサイド領域の面積率αに応じて、各正方形領域の光吸収膜401の膜厚を変化させる。なお、各分割領域の形状は、正方形以外の形状でも構わない。
【0079】
図8は、光吸収膜401の膜厚について説明するための図である。図8A乃至Cはそれぞれ、正方形領域の上面図である。図8A乃至Cにはそれぞれ、シリサイド領域171と非シリサイド領域172とが模式的に示されている。図8Aには、面積率αが閾値Xよりも大きいような正方形領域が示されている。また、図8Bには、面積率αが閾値Xよりも小さく閾値Yよりも大きいような正方形領域が示されている。また、図8Cには、面積率αが閾値Yよりも小さいような正方形領域が示されている。但し、閾値Xと閾値Yとの間には、0<Y<X<1の関係が成り立つとする。ここでは、X=0.5(50%)とし、Y=0.1(10%)とする。
【0080】
本実施例では、図8Aのような正方形領域に第1領域R1を形成し、図8Bのような正方形領域に第2領域R2を形成し、図8Cのような正方形領域に第3領域R3を形成する。この様子は、図8a乃至cに模式的に示されている。図8aは図8Aの断面図、図8bは図8Bの断面図、図8cは図8Cの断面図である。第1膜厚T1はここでは、1.5μmとする。第2膜厚T2はここでは、0.75μmとする。第3膜厚T3はここでは、0.5μmとする。なお、面積率αが閾値Xと等しいような正方形領域については、第1領域R1を形成するようにしてもよいし、第2領域R2を形成するようにしてもよい。また、面積率αが閾値Yと等しいような正方形領域については、第2領域R2を形成するようにしてもよいし、第3領域R3を形成するようにしてもよい。
【0081】
ここで、実効的な光吸収率WT/Wを算出してみる。ここでは、金属膜163の光反射率を0.7とする。この場合、第1領域R1(T1=1.5μm),第2領域R2(T2=0.75μm),第3領域R3(T3=0.5μm)の実効的な光吸収率WT/Wの比はそれぞれ、0.58,0.45,0.40となり、基板111上での実効的な光吸収率WT/Wが、10%以上の幅で変化する。これにより、十分なアニール温度の変化が得られる。
【0082】
本実施例においては、図8のような光吸収膜401を形成した後、基板111のシリサイド化アニールを行う。以下、当該シリサイド化アニールについて説明する。
【0083】
先ず、基板111のレーザーアニールを行う。即ち、基板111にレーザー光を照射することにより、基板111をアニールする。ここでは、レーザー光の照射エネルギー密度が20J/cm2、加熱時間が1ミリ秒となるようなスキャン条件の下、レーザーアニールが行われる。次に、薬液又はアッシングにより、光吸収膜401を除去する。次に、基板111を薬液に浸漬して、未反応のニッケルを除去する。当該薬液はここでは、硫酸と過酸化水素水との混合液とする。
【0084】
次に、基板111のランプアニールを行う。当該ランプアニールはここでは、窒素等の不活性ガス雰囲気で、450℃から600℃の温度で、30秒間から60秒間行われる。これにより、ニッケルとシリコンとが完全に反応して、ニッケルシリサイド層が形成される。以上のように、本実施例では、1回目のアニール工程ではレーザーアニールを行い、2回目のアニール工程ではランプアニールを行う。本実施例では、1回目のアニール後に過剰なニッケルが除去されるので、2回目のアニールとしてランプアニールを採用することができる。なお、1回目のアニールは、フラッシュランプアニールでもよい。
【0085】
図9は、トランジスタの性能の評価結果を示したグラフである。曲線Aは、本実施例のトランジスタ20個の性能の評価結果を表す。これらのトランジスタは、図7a乃至dのような製造工程により製造されたものである。曲線Bは、比較例のトランジスタ20個の性能の評価結果を表す。これらのトランジスタは、均一な膜厚を有する光吸収膜401を利用して製造されたものである。
【0086】
曲線A及び曲線Bはそれぞれ、20個のトランジスタの接合リーク特性を表す。比較例では、接合リークが異常に大きいトランジスタが存在する事が解る。これに対し、本実施例では、接合リークが異常に大きいトランジスタは存在しない事が解る。よって、本実施例の製造方法によれば、良好な接合リーク特性を示すトランジスタが製造される事が期待される。
【0087】
なお、半導体装置101の製造工程では、光吸収膜301及び光吸収膜401の両方を利用してもよいし、光吸収膜301及び光吸収膜401のいずれか一方のみを利用してもよい。また、光吸収膜301について行った説明は、光吸収膜401についても適宜適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1実施例の半導体装置の製造工程図である。
【図2】第1実施例の半導体装置の製造工程図である。
【図3】第1実施例の半導体装置の製造工程図(変形例)である。
【図4】ゲート導電体の配置について説明するための図である。
【図5】光吸収膜の膜厚について説明するための図である。
【図6】トランジスタの性能の評価結果を示したグラフである。
【図7】第2実施例の半導体装置の製造工程図である。
【図8】光吸収膜の膜厚について説明するための図である。
【図9】トランジスタの性能の評価結果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0089】
101 半導体装置
111 基板
112 素子分離層
121 基板領域
122 素子分離領域
131 ゲート絶縁膜
132 ゲート電極
141 ソースドレイン領域
151 側壁絶縁膜
161 層間絶縁膜
162 コンタクトホール
163 金属膜
164 金属シリサイド層
165 コンタクトプラグ
171 シリサイド領域
172 非シリサイド領域
201 フォトレジスト
202 フォトレジスト
211 フォトレジスト
212 フォトレジスト
301 光吸収膜
401 光吸収膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に光吸収膜を堆積し、
前記光吸収膜を加工して、第1の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第1領域と、前記第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第2領域と、前記第2の膜厚よりも薄い第3の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第3領域とを形成し、
前記基板に光を照射することにより、前記基板をアニールすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板上に光吸収膜を堆積し、
前記光吸収膜を加工して、第1の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第1領域と、前記第1の膜厚よりも薄い第2の膜厚の前記光吸収膜で覆われた第2領域と、前記光吸収膜が除去された第3領域とを形成し、
前記基板に光を照射することにより、前記基板をアニールすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記光吸収膜は、前記基板及び前記ゲート電極上に堆積されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート電極を構成する導電層が基板領域に形成されているような領域に、前記第1領域を形成し、
前記ゲート電極を構成する前記導電層が素子分離層上に形成されており、該素子分離層の面積が閾値よりも小さいような領域に、前記第2領域を形成し、
前記ゲート電極を構成する前記導電層が素子分離層上に形成されており、該素子分離層の面積が前記閾値よりも大きいような領域に、前記第3領域を形成することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記基板及び前記ゲート電極上に層間絶縁膜を形成し、
前記層間絶縁膜を加工して、前記基板及び前記ゲート電極の表面が露出するようなコンタクトホールを形成し、
前記基板及び前記ゲート電極の表面にシリサイド化用の金属膜を形成し、
前記光吸収膜は、前記金属膜上に堆積され、
更に、
領域の面積に占めるシリサイド領域の面積の割合が第1の閾値Xよりも大きい領域に、前記第1領域を形成し、
領域の面積に占めるシリサイド領域の面積の割合が前記第1の閾値Xよりも小さく第2の閾値Yよりも大きい領域に、前記第2領域を形成し、
領域の面積に占めるシリサイド領域の面積の割合が前記第2の閾値Yよりも小さい領域に、前記第3領域を形成する(ただし0<Y<X<1)ことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−130243(P2009−130243A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305512(P2007−305512)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】