説明

半導体装置の製造方法

【課題】P型MOSFETの閾値のバラつきを抑制して高品質の半導体装置を形成することができ、また、製品開発のコストを抑制することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板上100にゲート絶縁膜102を形成する第1の工程と、ゲート絶縁膜102上に、ゲート電極104を構成する導電体膜103を、有機材料を用いた形成法によって形成する第2の工程と、導電体膜103が形成されたシリコン基板100を、酸化性雰囲気である水蒸気と、還元性雰囲気である水素との混合雰囲気中で加熱する第3の工程と、を備えた半導体装置の製造方法であって、第3の工程における水蒸気に対する水素の分圧比が、炭素が酸化され、かつ、導電体膜104を構成する金属材料が還元される分圧であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、導電体膜をゲート電極に用いたMOSトランジスタを具備する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の高性能化を実現するために、デバイスの微細化が追求されており、デバイスの微細化と共に、消費電力を低減する必要性が生じてきた。消費電力を低減するためには、トランジスタの閾値を低い値に抑える必要がある。
【0003】
一般的に、トランジスタのゲート電極には多結晶シリコンが用いられており、N型MOSFET、P型MOSFETのゲート電極である多結晶シリコンに不純物をドーピングして、それぞれn型多結晶シリコン、p型多結晶シリコンにし、それぞれの多結晶シリコンの仕事関数を伝導帯(Conduction Band)と価電子帯(Valance Band)の近傍に設定することで、低閾値を実現している。
【0004】
しかし、多結晶シリコンからなるゲート電極では、不純物濃度が導電性不純物の固溶限である1020cm−3台になるように高濃度にドーピングしても、ゲート電極側に空乏層が形成されるために、ゲート容量がその分減少してしまう。このため、ゲート絶縁膜を形成する際には、空乏層のゲート容量を見込んで0.5nm程度余分に薄くする必要があるが、ゲート絶縁膜のトンネル電流によりゲートリーク電流が増加してしまうという問題があるために、ゲート絶縁膜の薄膜化は難しい現状にある。
【0005】
これを回避する方策として、ゲート絶縁膜の高誘電率化や金属ゲート電極の活用が検討されている。ゲート絶縁膜の高誘電率化は、ゲート絶縁膜を高誘電体膜に置き換えることで、ゲート絶縁膜の物理膜厚を稼いでトンネル電流を抑えるものである。最近では特に高誘電体ゲート絶縁膜の材料開発が盛んに行われているが、従来のシリコン酸化膜のような信頼性を含めた議論には至っておらず、実デバイスへの適用にはまだ時間を要する。
【0006】
金属ゲート電極の活用は、ゲート電極を多結晶シリコンから金属に置き換えることで、ゲート電極の空乏化を防ぐものである。金属ゲート電極を採用する場合、トランジスタの閾値を低い値に抑えるために、N型MOSFETには、シリコンの伝導帯である4.0eV近傍の仕事関数を持つ金属をゲート電極材料とし、P型MOSFETには、シリコンの価電子帯である5.1eV近傍の仕事関数を持つ金属をゲート電極材料としてデバイスを形成する。
【0007】
近年、P型MOSFETのゲート電極材料として、5.0eVの仕事関数を有するタングステン(W)が有望視されており、ソースガスにW(CO)ガスを用いた化学的気相成長法(以下、CVD法と示す)によってタングステン膜を成膜し、タングステンゲート電極を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたような方法などにより、W(CO)ガスを用いて成膜したタングステン膜の膜中には多くの炭素(C)が含まれてしまう。タングステン膜に含まれた炭素(以下、残留炭素と示す)は、製造の過程で半導体装置に加えられる熱によりゲート絶縁膜中に拡散し、ゲート絶縁膜との界面近傍に析出して固定電荷の要因となる。ゲート電極とゲート絶縁膜との界面に固定電荷が存在することによって、ゲート絶縁膜の膜厚の変化に応じてフラットバンド電圧が変動してしまうため、半導体装置に複数搭載されているP型MOSFET間で閾値がバラついてしまい、半導体装置の品質が低下してしまうという問題があった。また、デバイスの微細化に伴って半導体装置の設計、特にゲート絶縁膜の膜厚が変更された場合、これに伴ってP型MOSFETの閾値が変わってしまうため、所望の閾値を得るためにゲート電極の設計や製造プロセスを変更する必要が生じるため、製品開発のコストが増大してしまうという問題があった。
【特許文献1】米国特許第5789312号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、P型MOSFETの閾値のバラつきを抑制して高品質の半導体装置を形成することができ、また、製品開発のコストを抑制することができる、半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する第1の工程と、前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を構成する導電体膜を、有機材料を用いた形成法によって形成する第2の工程と、前記導電体膜が形成された前記半導体基板を、酸化性雰囲気と還元性雰囲気の混合雰囲気中で加熱する第3の工程と、を備えた半導体装置の製造方法であって、前記第3の工程における前記酸化性雰囲気に対する前記還元性雰囲気の分圧比が、炭素が酸化され、かつ、前記導電体膜を構成する金属材料が還元される分圧比であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
P型MOSFETの閾値のバラつきを抑制して高品質の半導体装置を形成することができ、また、製品開発のコストを抑制することができる、半導体装置の製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
始めに、本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の製造方法について、図1(a),(b)を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図である。なお、本実施の形態においては、本発明の半導体装置の製造方法を、P型MOSFETのゲート部分を構成するP型MOSキャパシタの製造工程に適応した場合について説明する。
【0014】
まず、図1(a)に示すように、単結晶の結晶構造を有するシリコン基板100上に、素子形成領域以外の領域に、例えばLOCOS技術などを用いて素子分離絶縁膜101a,101bを形成する。続いて、シリコン基板100表面に、例えば熱酸化によって、シリコン酸化膜などの薄いゲート絶縁膜102を形成する。続いて、ゲート絶縁膜102上に、ソースとして有機材料を用いた化学的気相成長法(以下、CVD法と示す)により仕事関数5.0eVを有するタングステン膜103を100nmの膜厚で堆積させる。
【0015】
次いで、タングステン膜103上に、P型MOSキャパシタのゲート電極が形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成する。続いて、レジストをマスクとしてタングステン膜103を異方性エッチングした後、アッシング処理を施してレジストを除去し、図1(b)に示すように、所定のゲート幅を有するゲート電極105を形成する。
【0016】
続いて、例えば800℃程度の温度で10分間程度、例えば水素などの還元性雰囲気と、例えば水蒸気などの酸化性雰囲気との混合雰囲気中で加熱処理を行う。このとき、水素と水蒸気との分圧比は、例えば水素:水蒸気=5:1に設定されている。すなわち、加熱処理における還元性雰囲気と酸化性雰囲気との分圧比は、ゲート電極104を構成するタングステン膜103は酸化されず、タングステン膜103中に含有される炭素は酸化されるように設定される。尚、加熱処理を行うときの温度、及び還元性雰囲気と酸化性雰囲気との分圧比は、ゲート電極104を構成する金属の種類に応じて適切な値に設定される。加熱処理の具体的な設定条件の導出方法については、後述する。
【0017】
最後に、例えば10%希釈の水素雰囲気中で450℃程度の温度で加熱処理を行い、MOSキャパシタを完成させる。
【0018】
このようにして形成したMOSキャパシタのゲート電極105の仕事関数に関する説明に先立って、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタのゲート電極104の仕事関数について説明する。まず、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタのゲート電極の仕事関数について、図2,図3を用いて説明する。
【0019】
図2は、MOSキャパシタの電気容量の電圧依存性を測定した結果を示すC−V特性図であり、図3は、C−V特性から求めたフラットバンド電圧と酸化膜厚との関係を示す特性図である。図2において、ゲート電極104形成後、混合雰囲気での加熱処理を行わずに10%希釈の水素雰囲気中で加熱処理を施したMOSキャパシタのC−V曲線を201で示している。また、図2において、ゲート電極104形成後、1000℃程度の温度で30秒間程度の加熱処理を施した後に10%希釈の水素雰囲気中で加熱処理を施したMOSキャパシタのC−V曲線をC−V曲線202で示している。
【0020】
C−V曲線201は、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタのC−V特性に相当し、C−V曲線202は、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタをゲート電極とするP型MOSFETのC−V特性に相当する。図2に示すC−V曲線201,202からフラットバンド時の電圧Vfbを求めると、C−V曲線201は+0.05Vであるのに対し、C−V曲線202は−0.50Vである。すなわち、1000℃・30秒間の高温加熱処理を施すことによって、Vfbの値が−0.50Vシフトしていることがわかる。
【0021】
次に、C−V曲線201に示すようなC−V特性を有するMOSキャパシタにおけるゲート電極の仕事関数と、C−V曲線202に示すようなC−V特性を有するMOSキャパシタにおけるゲート電極の仕事関数とを求めるために、それぞれゲート絶縁膜102の膜厚が異なる複数のMOSキャパシタを形成し、それぞれのMOSキャパシタについて図2に示すようなC−V特性を取得してVfbを求めることで、Vfbのゲート絶縁膜厚依存性を評価した(図3参照)。
【0022】
図3において、ゲート電極104形成後、混合雰囲気での加熱処理を行わずに10%希釈の水素雰囲気中で加熱処理を施したMOSキャパシタにおけるVfbのゲート絶縁膜厚依存特性を特性301で示し、ゲート電極104形成後、1000℃程度の温度で30秒間程度の加熱処理を施した後に10%希釈の水素雰囲気中で加熱処理を施したMOSキャパシタにおけるVfbのゲート絶縁膜厚依存特性を特性302で示している。すなわち、図3において、特性301は、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタに関するVfbのゲート絶縁膜厚依存特性を示しており、特性302は、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタをゲート電極とするP型MOSFETに関するVfbのゲート絶縁膜厚依存特性を示している。
【0023】
図3に示すように、特性301から、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタのゲート電極の仕事関数は5.0eVであることがわかる。また、特性302から、従来の製造方法を用いて形成後に1000℃・30秒間の高温加熱処理を施したMOSキャパシタ(=従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタをゲート電極とするP型MOSFET)のゲート電極の仕事関数は4.8eVであることがわかる。すなわち、両方のゲート電極の仕事関数はほぼ同じ値であるように思われる。
【0024】
しかしながら、1000℃・30秒間の高温加熱処理を施していないMOSキャパシタでは、特性301に示すように、ゲート絶縁膜厚によらずVfbがほぼ一定である、すなわち傾きがほぼゼロであるのに対し、1000℃・30秒間の高温加熱処理を施したMOSキャパシタでは、特性302に示すように、大きな傾きを有しており、ゲート絶縁膜厚が厚くなるほどVfbが小さくなっている。上記で求めたゲート電極の仕事関数は、ゲート絶縁膜とシリコン基板との界面の界面順位が一定であり、ゲート絶縁膜の膜厚がゼロである点のフラットバンド電圧の値を基にし、ゲート電極とゲート絶縁膜との界面の固定電荷量がゼロであることを前提として算出している。同一のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極同士の場合、ゲート電極とゲート絶縁膜との界面の固定電荷量がゼロであれば、Vfbのゲート絶縁膜厚依存特性はほぼ同じ傾きを示す。
【0025】
しかし、1000℃・30秒間の高温加熱処理を施していないMOSキャパシタの特性301の傾きに比べ、1000℃・30秒間の高温加熱処理を施したMOSキャパシタの特性302の傾きは非常に大きい。これより、1000℃・30秒間の高温加熱処理を施したMOSキャパシタは、ゲート電極とゲート絶縁膜との界面に大量の固定電荷を含んでいると考えられる。
【0026】
そこで、1000℃・30秒間の高温加熱処理を施したMOSキャパシタについて、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry)を用い、ゲート電極からシリコン基板に向かう、深さ方向への構成元素の分布を測定した結果、ゲート電極からゲート絶縁膜に向かって炭素(C)元素が拡散していることが判った。本実施の形態においては、有機ソースを用いたCVD法によって成膜したタングステン膜103を加工してゲート電極104を形成しているため、ゲート電極104中に炭素が数パーセント程度残留してしまう。この残留炭素が、1000℃・30秒間のという高温の熱処理を加えられたことによってゲート絶縁膜中103に拡散し、ゲート電極104とゲート絶縁膜102との界面で固定電荷として機能したと考えられる。従って、図3の特性302〜算出された仕事関数(=4.8eV)は、多くの固定電荷を含んだ値であり、真の仕事関数を表しているとはいえない。
【0027】
すなわち、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタは、ゲート電極中に大量の残留炭素を含有しているため、MOSFETを形成するためのソース・ドレイン拡散層を形成するための高温の熱処理を引き続き施されることにより、この残留炭素がゲート絶縁膜中に拡散して固定電荷として機能することによって、Vfbがマイナス方向にシフトしていると考えられる。このVfbのシフト量は、ゲート絶縁膜の膜厚に応じて変化してしまうため、プロセス変動などに起因するゲート絶縁膜の膜厚のばらつきにより、半導体装置に搭載された複数のMOSFETでVfbがばらついてしまうため、品質の低下を招く。
【0028】
つまり、タングステン膜103に含まれる残留炭素を除去することで、ゲート電極104とゲート絶縁膜102との界面に固定電荷が発生するのを抑制することができ、安定したVfbを得ることができる。残留炭素を除去する方法として最も有効な手段は、炭素の熱酸化である。この場合、ゲート電極104となるタングステン膜103も一緒に酸化されてしまうと、ゲート電極104としての機能が損なわれてしまうため、炭素は酸化されるがタングステンは酸化されないような条件で熱処理を行う必要がある。以下、炭素は酸化されるがタングステンは酸化されないような熱処理の条件を求めていく。
【0029】
C+HO=CO+H ・・・ (1)
W+2HO=WO+2H ・・・ (2)
(1)式は、炭素の酸化・還元に関する反応式を示しており、(2)式は、タングステンの酸化・還元に関する反応式を示している。酸化性雰囲気である水蒸気雰囲気中では、炭素とタングステンとは酸化され、それぞれ(1)式,(2)式の左辺から右辺へと反応が進み、それぞれの酸化物(一酸化炭素,二酸化タングステン)が生成される。一方、還元性雰囲気である水素雰囲気中では、一酸化炭素と二酸化タングステンとは還元され、それぞれ(1)式,(2)式の右辺から左辺へと反応が進み、炭素とタングステンとが生成される。
【0030】
酸化もしくは還元のどちらの反応が起こるのか、すなわち、(1)式、および(2)式の反応がどちらの方向に進むかは、それぞれの系におけるギブスの自由エネルギーの降下分(ΔG)が負となるか否かで決定される。例えば、(1)式のように炭素を水蒸気雰囲気中で熱処理する場合、947K以上の温度領域ではΔG<0となるので、(1)式の反応は左辺から右辺へと進み、炭素は酸化される。一方、947K未満の温度領域では、ΔG>0となるため、(1)式の反応は右辺から左辺へと進み、炭素は還元される。
【0031】
酸化性雰囲気である水蒸気雰囲気と、還元性雰囲気である水素雰囲気との混合雰囲気中で熱処理を施す場合、(3)式に示すように、ΔGはその分圧比に支配される。
【0032】
ΔG∝ln(pH/pHO) ・・・ (3)
(3)式において、pHとpHOとは、それぞれ水素の圧力と水蒸気の圧力とを示している。混合雰囲気中での加熱処理において、ΔGの符号が変化する点、すなわち、酸化反応と還元反応との境界となる臨界分圧比は、図4に示すように、温度に依存する。図4は、水蒸気雰囲気と水素雰囲気の混合雰囲気における水素/水蒸気臨界分圧比の温度依存性示す特性図である。図4において、特性401は、炭素に関する水素/水蒸気臨界分圧比の温度依存特性を示しており、特性402は、タングステンに関する水素/水蒸気臨界分圧比の温度依存特性を示している。それぞれ、特性401,402よりの下側の領域、すなわち、分圧比が小さい範囲では、(1),(2)式の左辺から右辺への方向である酸化反応が進み、特性401,402より上側の領域、すなわち、分圧比が大きい範囲では、(1),(2)式の右辺から左辺への方向である還元反応が起こる。
【0033】
図4に示すように、炭素に関する水素/水蒸気臨界分圧比の温度依存特性401と、タングステンに関する水素/水蒸気臨界分圧比の温度依存特性402とは、1030K付近の温度で互いに交差している。これより、この特性401と特性402とが交差する温度よりも高い温度で、水蒸気と水素の分圧比を、特性401よりも下側の領域かつ特性402よりも上側の領域、すなわち、図4における領域403に含まれる分圧比に設定して熱処理を行うことで、タングステンは酸化せずに炭素のみを酸化させることが可能となる。なお、酸化性雰囲気中で炭素を加熱処理した場合、一酸化炭素でなく二酸化炭素が生成される場合もありうるが、1000K以上の温度においては、一酸化炭素の1酸素原子あたりの生成エネルギーΔGCOは、二酸化炭素1酸素原子あたりの生成エネルギーΔGCO2よりも低く、熱力学的に安定である。従って、混合雰囲気における酸化条件を求める際には、一酸化炭素が生成される場合のみを考慮すれば足りる。
【0034】
例えば、図1を用いて説明したMOSキャパシタの製造工程において、図1(b)に示すMOSキャパシタを混合雰囲気で加熱する際、温度約800℃(=約1073K)、水素:水蒸気=5:1、加熱時間10分間の条件で加熱処理を行った場合、タングステン膜103で形成されたゲート電極104を酸化することなく、ゲート電極104中の炭素濃度が0.01%程度にまで減少させることができる。
【0035】
図1を用いて説明した、本実施の形態の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタのC−V特性は、従来の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタのC−V特性(図2におけるC−V曲線201)と同じ特性を示す。また、本実施の形態の製造方法を用いて形成したMOSキャパシタに、さらに1000℃で3秒間の高温加熱処理を施した場合にも、C−V特性には変化がみられなかった。また、このようにして形成したMOSキャパシタのゲート電極104の仕事関数は5.0eVであり、P型MOSFETに要求される、シリコンの価電子帯である5.1eV近傍の仕事関数を実現することができる。
【0036】
このように、本実施の形態においては、P型MOSFETのゲート部分を構成するP型MOSキャパシタを製造する際に、タングステン膜103を加工してゲート電極を形成した後、上述した条件(酸化性雰囲気と還元性雰囲気の混合雰囲気中であって、炭素は酸化されるがタングステンは酸化されない温度・分圧比)で加熱処理することによって、ゲート電極104中の残留炭素のみを酸化して除去することができ、引き続きMOSFETのソース・ドレインを形成するために高温加熱処理が施された場合にも、ゲート電極104からゲート絶縁膜102中に残留炭素が拡散するのを防止し、これに起因する固定電荷の発生を抑制することができるため、ゲート絶縁膜102の膜厚が変化してもフラットバンド電圧が一定の値を保つことができ、半導体装置の品質を向上させることができ、かつ、製品開発のコストを抑制することが可能となる。
【0037】
尚、本実施の形態においては、ゲート電極104の材料として、タングステンを用いたが、元素周期律表においてタングステンと同族元素(VIa族に属する元素)であればよく、例えば、モリブデン(Mo)やこれらの合金を用いても良い。
【0038】
また、ゲート絶縁膜102は、熱酸化によるシリコン酸化膜でなくてもよく、シリコン酸化膜よりも高い誘電率を有する絶縁膜、例えば、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の酸化物、もしくはZrSixOyなどそれら元素とシリコンの酸化物でも良い。さらには、それら酸化物の積層膜でも良い。
【0039】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態における半導体装置の製造方法について、図5(a)〜(e)及び図6(a)〜(d)を用いて説明する。図5と図6とは、本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図である。なお、本実施の形態においては、本発明の半導体装置の製造方法を、N型MOSFETとP型MOSFETとを有するCMOS型半導体装置の製造工程に適応した場合について説明する。
【0040】
まず、図5(a)に示すように、シリコン基板400上の素子形成領域以外の領域に、STI技術などを用いて素子分離絶縁膜401a〜401cを形成する。続いて、シリコン基板400のN型MOSFET及びP型MOSFETを形成する領域に、p−ウェル402p及びn−ウェル402nを形成する。更に、シリコン基板400表面に、ソースとして有機材料を用いたCVD法により、ハフニウムを含むゲート絶縁膜403を形成する。
【0041】
続いて、ゲート絶縁膜403上に、ソースとして有機材料を用いたCVD法により、仕事関数4.9eVを有するタングステン膜404を10nmの膜厚で堆積させる。更に、例えば850℃程度の温度で30分間程度、例えば水素などの還元性雰囲気と、例えば水蒸気などの酸化性雰囲気との混合雰囲気中で加熱処理を行う。このとき、加熱処理を行う酸化炉に供給するガスの流量比は、例えば水素(H):水蒸気(HO):窒素(N)=2:0.4:3.5slmに設定されている。この条件は、炭素は酸化されるがタングステンは酸化されない条件であり、このような条件で加熱処理を施すことによって、表面層であるタングステン膜404について、膜中に含まれる残留炭素のみを選択的に酸化させて除去することができる。なお、上述した選択酸化の温度や酸化性雰囲気と還元性雰囲気の分圧比は、上述した条件に限られるものでなく、炭素は酸化されるがタングステンは酸化されない条件(図4における領域403に含まれる条件)に該当するものであればよい。
【0042】
次に、図5(b)に示すように、例えば過酸化水素水を用いて、N型MOSFETが形成される領域のタングステン膜404を選択的に除去(エッチング)する。続いて、図5(c)に示すように、例えばCVD法により、仕事関数4.2eVを有する窒化タングステンシリコン(WSiN)膜405を10nmの膜厚で表面全面に堆積させる。
【0043】
引き続き、図5(d)に示すように、例えばCVD法により、多結晶シリコン膜406を100nmの膜厚で表面全面に堆積させた後、P型MOSFETが形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成する。続いて、レジストをマスクとして、N型MOSFETが形成される領域に成膜された多結晶シリコン膜406中に、例えばAsイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFETが形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成する。続いて、レジストをマスクとして、P型MOSFETが形成される領域に成膜された多結晶シリコン膜406中に、例えばBイオンをイオン注入する。更に、アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えばCVD法により、シリコン窒化膜407を40nmの膜厚で表面全面に堆積させる。
【0044】
次に、図5(e)に示すように、N型MOSFET及びP型MOSFETのゲート電極が形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成し、レジストをマスクとしてシリコン窒化膜407,多結晶シリコン膜406,窒化タングステンシリコン(WSiN)膜405,タングステン膜404を異方性エッチングした後、アッシング処理を施してレジストを除去する。このエッチング処理によって、例えば30nmの幅を有するゲート電極408n,408pが形成される。
【0045】
続いて、例えばCVD法により、シリコン窒化膜409とシリコン酸化膜410とをこの順に表面全面に堆積させた後、全面エッチバックを行うことにより、図6(a)に示すように、ゲート電極408n,408pの側壁に、シリコン窒化膜409及びシリコン酸化膜410からなるゲート側壁絶縁膜411を形成する。
【0046】
次に、P型MOSFETが形成される領域の表面に図示しないレジストを選択的に形成し、レジスト、ゲート電極408n、及びゲート側壁絶縁膜411をマスクとして、N型MOSFETが形成される領域のシリコン基板400中に、例えばPイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFETが形成される領域の表面に図示しないレジストを選択的に形成し、レジスト、ゲート電極408p、及びゲート側壁絶縁膜411をマスクとして、P型MOSFETが形成される領域のシリコン基板400中に、例えばBイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えば1030℃の温度で5秒間加熱処理を施すことによって、深い拡散層412,413を形成する。
【0047】
続いて、図6(b)に示すように、ゲート側壁絶縁膜411を形成しているシリコン窒化膜409及びシリコン酸化膜410を、例えばウェットエッチングによって剥離する。このとき、ゲート電極408n,408pの最表層に形成されているシリコン窒化膜407も剥離される。次に、例えばCVD法により、表面全面にシリコン窒化膜414を堆積させた後、全面エッチバックを行うことにより、ゲート電極408n,408pの側壁をシリコン窒化膜414で囲む構造を形成する。
【0048】
更に、P型MOSFETが形成される領域の表面に図示しないレジストを選択的に形成し、レジスト、ゲート電極408n、及びシリコン窒化膜414をマスクとして、N型MOSFETが形成される領域のシリコン基板400中に、例えばAsイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、N型MOSFETが形成される領域の表面に図示しないレジストを選択的に形成し、レジスト、ゲート電極408p、及びシリコン窒化膜414をマスクとして、P型MOSFETが形成される領域のシリコン基板400中に、例えばBイオンをイオン注入する。アッシング処理を施してレジストを除去した後、例えば800℃の温度で5秒間加熱処理を施すことによって、浅い拡散層415,416を形成する。
【0049】
以上のようにして、ゲート電極408n,408pの両側のシリコン基板400中には、深い拡散層412,413と浅い拡散層415,416とから成る、ソース/ドレイン拡散層417,418が形成される。なお、本実施の形態においては、浅い拡散層415,416を形成する前に深い拡散層412,413を形成しているので、浅い拡散層415,416に不必要な高熱(深い拡散層412,413を形成する際に施される熱処理)が加わることを防止することができ、浅い拡散層415,416の深さ方向の伸びを抑制することができる。
【0050】
次に、例えばCVD法により、シリコン窒化膜419とシリコン酸化膜420とをこの順に表面全面に堆積させた後、全面エッチバックを行うことにより、図6(c)に示すように、ゲート電極408n,408pの側壁に形成されたシリコン窒化膜414を囲むように、シリコン窒化膜419及びシリコン酸化膜420からなるゲート側壁絶縁膜421を形成する。
【0051】
続いて、例えば、図示しないニッケル膜を表面全面に10nm程度堆積した後、350℃の温度で30秒間程度加熱処理を施して、ニッケル膜とシリコン基板400とを化学反応させる。引き続き、シリコン基板400と未反応のニッケル膜を、例えば硫酸と過酸化水素水の混合液を用いたウェットエッチングにより選択的に除去した後、500℃の温度で30秒間程度加熱処理を行う。これにより、ソース/ドレイン拡散層417,418表面と、ゲート電極408n,408pの最表層である多結晶シリコン膜406の表面とに、自己整合的にニッケルシリサイド層422,423が形成される。なお、本実施の形態においては、多結晶シリコン膜406の表面の一部のみにニッケルシリサイド層423が形成されるようにしたが、多結晶シリコン膜406すべてがニッケルシリサイド層423となるようにしてもよい。
【0052】
次に、図6(d)に示すように、例えばCVD法により、第一の層間絶縁膜424を表面全面に堆積させ、化学的機械的研磨法(以下、CMP法と示す)によって表面を平坦化する。続いて、ソース/ドレイン拡散層417,418上に形成されたニッケルシリサイド層422の上面を覆う第一の層間絶縁膜424と、ゲート電極408n,408p上に形成されたニッケルシリサイド層423の上面を覆う第一の層間絶縁膜424とを異方性エッチングによって除去し、コンタクトパターンを形成する。すなわち、コンタクトパターンの底部から、ソース/ドレイン拡散層417,418上に形成されたニッケルシリサイド層422と、ゲート電極408n,408p上に形成されたニッケルシリサイド層423とが露出するように、第一の層間絶縁膜424を異方性エッチングする。
【0053】
続いて、コンタクトパターンの内部に、例えばスパッタ法によって、チタン(Ti)と、窒化チタン(TiN)と、タングステン(W)とをこの順に堆積させる。次に、CMP法によって、第一の層間絶縁膜424の表面を平坦化し、内部にコンタクトプラグ425が埋め込まれたコンタクトパターンが形成される。次いで、例えばCVD法により、第二の層間絶縁膜426を表面全面に堆積させ、CMP法によって表面を平坦化する。
【0054】
続いて、コンタクトプラグ425の上面を覆う第二の層間絶縁膜426を異方性エッチングによって除去し、コンタクトパターンを形成する。このコンタクトパターンの内部に、例えばスパッタ法によって、窒化タンタル(TaN)と、銅(Cu)とをこの順に堆積させる。最後に、CMP法によって、第二の層間絶縁膜426の表面を平坦化し、コンタクトプラグ425を介してソース/ドレイン拡散層417,418もしくはゲート電極408n,408pと電気的に接続された配線層427が形成される。このようにして、N型MOSFETとP型MOSFETとを有するCMOS型半導体装置を完成させる。
【0055】
上述のようにして製造した半導体装置では、N型MOSFET,P型MOSFET共に、ゲート電極408n,408pは複数の異なる膜を積層した構造になっている。ここで、トランジスタの閾値を支配するのは、ゲート絶縁膜403に接している金属膜の仕事関数である。上述の半導体装置の場合、N型MOSFETでは仕事関数4.2eVを有する窒化タングステンシリコン(WSiN)膜405がゲート絶縁膜403と接しており、P型MOSFETでは、仕事関数4.9eVを有するタングステン膜404がゲート絶縁膜403と接している。すなわち、本実施の形態の製造方法を用いることで、ゲート電極408nの仕事関数が4.2eVのN型MOSFETと、ゲート電極408pの仕事関数が4.9eVのP型MOSFETとを具備するCMOS型半導体装置を製造することができる。
【0056】
このように、本実施の形態においては、P型MOSFETのゲート電極408pの閾値を支配するタングステン膜404に対し、炭素は酸化されるがタングステンは酸化されない条件で選択酸化処理を施しているため、ゲート絶縁膜403の膜厚が変化してもフラットバンド電圧が一定の値を保つことができ、半導体装置の品質を向上させることができ、かつ、製品開発のコストを抑制することが可能となる。
【0057】
尚、本実施の形態においては、ゲート電極408nの材料として窒化タングステンシリコン(WSiN)を,ゲート電極408pの材料としてタングステンを用いたが、ゲート電極408nの材料としては、表面に窒化層が形成されたタングステンシリコン(WSi)を用いてもよい。また、このほかにも、ゲート電極408nとゲート電極408pとの材料の組み合わせとして、炭化タングステンシリコン(WSiC)と炭化タングステン(WC)などのタングステンの炭化物同士の組み合わせや、硼化タングステンシリコン(WSiB)と硼化タングステン(WB)などのタングステンの硼物同士の組み合わせを用いてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、ゲート電極408n,408pの材料としてタングステン元素を主成分とする電極材料を用いたが、元素周期律表においてタングステンと同族元素(VIa族に属する元素)であればよく、例えば、モリブデン(Mo)やこれらの合金を用いても良い。更に、N型MOSFETのゲート電極408nは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)など元素周期律表においてIVa族に属する元素や、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)など元素周期律表においてVa族に属する元素を主成分とする電極材料を用いてもよい。
【0059】
また、ゲート絶縁膜403は、ハフニウムを含む酸化膜でなくてもよく、例えば、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の酸化物、もしくはZrSixOyなどそれら元素とシリコンの酸化物でも良い。さらには、それら酸化物の積層膜でも良い。
【0060】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態における半導体装置の製造方法について、図7(a)〜(e)及び図8(a)〜(c)を用いて説明する。図7と図8とは、本発明の第3の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図である。なお、本実施の形態においては、第2の実施の形態と同様、本発明の半導体装置の製造方法を、N型MOSFETとP型MOSFETとを有するCMOS型半導体装置の製造工程に適応した場合について説明する。
【0061】
上述した第2の実施の形態と本実施の形態では、N型MOSFET及びP型MOSFETのゲート電極を構成する層の構造と、ソース/ドレイン拡散層の形成方法が異なっている。
【0062】
まず、図7(a)に示すように、シリコン基板500上の素子形成領域以外の領域に、STI技術などを用いて素子分離絶縁膜501a〜501cを形成する。続いて、シリコン基板100のN型MOSFET及びP型MOSFETを形成する領域に、p−ウェル502p及びn−ウェル502nを形成する。素子分離絶縁膜501a〜501cと、p−ウェル502p及びn−ウェル502nとの具体的な形成方法は、図5(a)を用いて説明した、第2の実施の形態と同様である。
【0063】
続いて、シリコン基板500表面に、シリコン基板500表面に、ソースとして有機材料を用いたCVD法により、ハフニウムを含むゲート絶縁膜503を形成する。次いで、ゲート絶縁膜503上に、ソースとして有機材料を用いたCVD法により、仕事関数5.0eVを有する窒化モリブデン(MoN)膜504を10nmの膜厚で堆積させる。
【0064】
更に、例えば850℃程度の温度で30分間程度、例えば水素などの還元性雰囲気と、例えば水蒸気などの酸化性雰囲気との混合雰囲気中で加熱処理を行う。このとき、加熱処理を行う酸化炉に供給するガスの流量比は、例えば水素(H):水蒸気(HO):窒素(N)=2:0.4:3.5slmに設定されている。
【0065】
モリブデンの酸化・還元反応は、(4)式に示す反応式で表すことができる。
【0066】
Mo+2HO=MoO+2H ・・・ (4)
この(4)式と、ギブスの自由エネルギーとを用い、実施例1で導出したように、モリブデンの加熱温度に対する酸化反応と還元反応との境界となる臨界分圧比を求めると、図4に示したタングステンの水素/水蒸気臨界分圧比特性と同様の特性が得られる。
【0067】
すなわち、この加熱処理の条件は、炭素は酸化されるがモリブデンは酸化されない条件であり、このような条件で加熱処理を施すことによって、表面層である窒化モリブデン(MoN)膜504について、膜中に含まれる残留炭素のみを選択的に酸化させて除去することができる。なお、上述した選択酸化の温度や酸化性雰囲気と還元性雰囲気の分圧比は、上述した条件に限られるものでなく、炭素は酸化されるがモリブデンは酸化されない条件(図4における領域403に含まれる条件)に該当するものであればよい。
【0068】
次に、図7(b)に示すように、例えば過酸化水素水を用いて、N型MOSFETが形成される領域の窒化モリブデン(MoN)膜504を選択的に除去(エッチング)する。続いて、図7(c)に示すように、例えばCVD法により、仕事関数4.2eVを有する窒化モリブデンシリコン(MoSiN)膜505を10nmの膜厚で表面全面に堆積させる。
【0069】
引き続き、図7(d)に示すように、例えばCVD法により、低抵抗層としてのタングステン膜506を80nmの膜厚で表面全面に堆積させた後、例えばCVD法により、シリコン窒化膜507を80nmの膜厚で表面全面に堆積させる。
【0070】
次に、図7(e)に示すように、N型MOSFET及びP型MOSFETのゲート電極が形成される領域にのみ、図示しないレジストを選択的に形成し、レジストをマスクとしてシリコン窒化膜507,タングステン膜506,窒化モリブデンシリコン(MoSiN)膜505,窒化モリブデン(MoN)膜504を異方性エッチングした後、アッシング処理を施してレジストを除去する。このエッチング処理によって、例えば30nmの幅を有するゲート電極508n,508pが形成される。
【0071】
続いて、図8(a)に示すように、例えばCVD法により、表面全面にシリコン窒化膜509を堆積させた後、全面エッチバックを行うことにより、ゲート電極508n,508pの側壁をシリコン窒化膜509で囲む構造を形成する。更に、ゲート電極508n,508pの両側のシリコン基板500中に、浅い拡散層510,511を形成する。浅い拡散層510,511の具体的な形成方法は、図6(b)を用いて説明した、第2の実施の形態と同様である。
【0072】
次に、例えばCVD法により、シリコン窒化膜512とシリコン酸化膜513とをこの順に表面全面に堆積させた後、全面エッチバックを行うことにより、図8(b)に示すように、ゲート電極508n,508pの側壁に形成されたシリコン窒化膜509を囲むように、シリコン窒化膜512とシリコン酸化膜513からなるゲート側壁絶縁膜514を形成する。続いて、ゲート電極508n,508pの両側のシリコン基板500中に、深い拡散層515,516を形成する。深い拡散層515,516の具体的な形成方法は、図6(a)を用いて説明した、第2の実施の形態と同様である。
【0073】
以上のようにして、ゲート電極508n,508pの両側のシリコン基板500中には、深い拡散層515,516と浅い拡散層510,511とから成る、ソース/ドレイン拡散層517,518が形成される。更に、ソース/ドレイン拡散層517,518表面に、ニッケルシリサイド層519を形成する。ニッケルシリサイド層519の具体的な形成方法は、図6(c)を用いて説明した、第2の実施の形態と同様である。
【0074】
最後に、図8(c)に示すように、第1の層間絶縁膜520、コンタクトプラグ521、第二の層間絶縁膜522、及び配線層523を形成する。これらの具体的な形成方法は、図6(d)を用いて説明した、第2の実施の形態と同様である。ただし、ゲート電極508n,508pの上面にコンタクトプラグ521を形成する際、第1の層間絶縁膜520とともにゲート電極508n,508pの最表面に位置するシリコン窒化膜507もエッチングし、コンタクトプラグ521とタングステン膜506とが電気的に接続されるように形成する点のみ、第2の実施の形態とは異なる。このようにして、N型MOSFETとP型MOSFETとを有するCMOS型半導体装置を完成させる。
【0075】
このように、本実施の形態においては、P型MOSFETのゲート電極508pの閾値を支配する窒化モリブデン(MoN)膜504に対し、炭素は酸化されるがモリブデンは酸化されない条件で選択酸化処理を施しているため、ゲート絶縁膜503の膜厚が変化してもフラットバンド電圧が一定の値を保つことができ、半導体装置の品質を向上させることができ、かつ、製品開発のコストを抑制することが可能となる。
【0076】
尚、本実施の形態においても、第2の実施の形態と同様に、ゲート絶縁膜503はハフニウムを含む酸化膜でなくてもよく、例えば、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等の酸化物、もしくはZrSixOyなどそれら元素とシリコンの酸化物でも良い。さらには、それら酸化物の積層膜でも良い。

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【図2】MOSキャパシタの電気容量の電圧依存性を測定した結果を示すC−V特性図。
【図3】C−V特性から求めたフラットバンド電圧と酸化膜厚との関係を示す特性図。
【図4】水蒸気雰囲気と水素雰囲気の混合雰囲気における水素/水蒸気臨界分圧比の温度依存性示す特性図。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係わる半導体装置の製造工程を説明する断面図。
【符号の説明】
【0078】
100…シリコン基板、103…ゲート絶縁膜、104…タングステン膜、105…ゲート電極、


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する第1の工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、ゲート電極を構成する導電体膜を、有機材料を用いた形成法によって形成する第2の工程と、
前記導電体膜が形成された前記半導体基板を、酸化性雰囲気と還元性雰囲気の混合雰囲気中で加熱する第3の工程と、
を備えた半導体装置の製造方法であって、前記第3の工程における前記酸化性雰囲気に対する前記還元性雰囲気の分圧比が、炭素が酸化され、かつ、前記導電体膜を構成する金属材料が還元される分圧比であることを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
P型MOSトランジスタが形成された半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する第1の工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記P型MOSトランジスタのゲート電極を構成する導電体膜を、有機材料を用いた形成法によって形成する第2の工程と、
前記導電体膜が形成された前記半導体基板を、酸化性雰囲気と還元性雰囲気の混合雰囲気中で加熱する第3の工程と、
を備え、前記第3の工程における前記酸化性雰囲気に対する前記還元性雰囲気の分圧比が、炭素が酸化され、かつ、前記導電体膜を構成する金属材料が還元される分圧比であることを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記導電体膜を構成する前記金属材料が、仕事関数4.8eV以上かつ5.1eV未満の前記金属材料、複数の仕事関数4.8eV以上かつ5.1eV未満の前記金属材料の合金であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記導電体膜を構成する前記金属材料が、元素周期律表においてVIa族に属する前記金属材料、もしくは、元素周期律表においてVIa族に属する複数の前記金属材料の合金であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記酸化性雰囲気が水素雰囲気であり、前記還元性雰囲気が水素雰囲気であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−207994(P2007−207994A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24888(P2006−24888)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】