説明

半導体集積回路装置の製造方法

【課題】近年、半導体集積回路装置の製造プロセスにおいて、窒化シリコン膜等が有する応力に起因する歪を利用したキャリア移動度向上技術が活用されている。これに伴って、ウエハの表側における複雑なデバイス構造上の窒化シリコン膜を高選択で除去するため、熱燐酸によるバッチ方式ウエット処理が必須となっている。これによって、ウエハの裏面の窒化シリコン膜も除去され、一群の歪付与工程の後のプロセスにおいては、ウエハの裏側の表面はポリ・シリコン部材ということとなる。しかし、一般的なウエハの裏面等の洗浄に使用する方法は、裏面が窒化シリコン膜等であることを前提とするものであり、その特性の異なるポリ・シリコン主体の裏面を有するウエハでは洗浄の効果が十分といえない恐れがある。
【解決手段】リソグラフィ工程の前に、FPM処理の後SPM処理を実行する2工程を含むウエハ裏面に対するウエット洗浄処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置(または半導体装置)の製造方法における重金属汚染防止技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本特開2001−110766号公報(特許文献1)または米国特許第6592677号公報(特許文献2)には、銅埋め込み配線工程において、銅メッキ後のシリコン系ウエハの裏面洗浄として、まず、FPM(弗酸、過酸化水素の水溶液)でシリコン酸化膜とともに銅等の汚染金属を除去した後、SPM(硫酸、過酸化水素の水溶液)で洗浄することにより、洗浄した面にシリコン酸化膜を形成することにより、親水性を付与する技術が開示されている。
【0003】
日本特開2002−158207号公報(特許文献3)には、銅膜が付着したシリコン系ウエハの再生方法として、SPMで洗浄した後、FPMで洗浄し、その後、再び、SPMで洗浄する技術が開示されている。
【0004】
日本特開2000−269178号公報(特許文献4)または米国特許公開2004−053508号公報(特許文献5)には、銅埋め込み配線工程からのクロス・コンタミネーション防止対策として、SPM、FPM等を用いてシリコン系ウエハの裏面等を洗浄する技術が開示されている。
【0005】
日本特開2002−176022号公報(特許文献6)には、銅埋め込み配線工程からのクロス・コンタミネーション防止対策として、硫酸、過酸化水素、フッ化水素酸の水溶液等を用いてシリコン系ウエハの裏面等を洗浄する技術が開示されている。
【0006】
日本特開2006−148149号公報(特許文献7)または米国特許第6586161号公報(特許文献8)には、銅埋め込み配線工程からのクロス・コンタミネーション防止対策として、硫酸又は硝酸等を用いてシリコン系ウエハの裏面等を洗浄する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−110766号公報
【特許文献2】米国特許第6592677号公報
【特許文献3】特開2002−158207号公報
【特許文献4】特開2000−269178号公報
【特許文献5】米国特許公開2004−053508号公報
【特許文献6】特開2002−176022号公報
【特許文献7】特開2006−148149号公報
【特許文献8】米国特許第6586161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、半導体集積回路装置の製造プロセスにおいて、窒化シリコン膜等が有する応力に起因する歪を利用したキャリア移動度向上技術が活用されている。これに伴って、ウエハの表側における複雑なデバイス構造上の窒化シリコン膜を高選択で除去するため、熱燐酸によるバッチ方式ウエット処理が必須となっている。
【0009】
このバッチ方式ウエット処理によって、ウエハの裏面の窒化シリコン膜も除去され、一群の歪付与工程の後のプロセスにおいては、ウエハの裏側の表面はポリ・シリコン部材(アモルファス・シリコンを含む)ということとなる。
【0010】
一方、45nmテクノロジ・ノードの製品の製造工程の内、特にFEOL(Front End of Line)におけるゲート電極パターニング工程、コンタクト・ホール形成工程等、および、BEOL(Back End of Line)におけるビアおよびトレンチ形成工程等の微細寸法のリソグラフィ工程(レジスト膜形成、露光、現像等の一連の工程)においては、液浸型露光装置(Immersion Type Exposure Apparatus)の使用が必須となる。この液浸型露光装置は、非常に高価なため、各工程専用の装置とすることが困難な場合もあり、同一の装置をフロント・エンド工程およびバック・エンド工程に属するウエハが相前後して通過するという事態も起こりえる。この結果、ウエハの裏面等からの汚染によるクロス・コンタミネーションの問題が懸念される。
【0011】
しかし、一般的なウエハの裏面等の洗浄(表側の面を洗浄するときに自動的に裏面も洗浄される場合等を含む)に使用する方法は、裏面が窒化シリコン膜、シリコン酸化膜等であることを前提とするものであり、それらと特性の異なるポリ・シリコン主体の裏面を有するウエハでは洗浄の効果が十分といえない恐れがある。
【0012】
また、このような問題は、ウエハの裏面に窒化シリコン膜等が残るような製品プロセスにおいても、装置の枚葉化による裏面窒化シリコン膜の薄膜化のため、バック・エンド工程の一部の工程では、裏面窒化シリコン膜が部分的に消失する等の事態も考えられる。
【0013】
更に、液浸型露光装置を使用する場合のみでなく、32nmおよび22nmテクノロジ・ノードの製品の製造工程で使用されるEUV(Extreme Ultraviolet)露光装置についても、同様な状況になると見られる。
【0014】
本願発明は、これらの課題を解決するためになされたものである。
【0015】
本発明の目的は、信頼性の高い半導体集積回路装置の製造プロセスを提供することにある。
【0016】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0018】
すなわち、本願の一つの発明は、半導体集積回路装置の製造方法において、ウエハの裏面にシリコン部材が露出する状態で、配線工程を実行するに際して、リソグラフィ工程の前に、以下の2工程を含むウエハ裏面に対するウエット洗浄処理を実行するものである。
【0019】
ここで、前記2工程は、
(1)弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする第1の水溶液を用いて、前記第1のウエット洗浄を実行する工程;
(2)前記工程(1)の後、硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする第2の水溶液を用いて、前記第1のウエット洗浄を実行する工程とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0021】
すなわち、リソグラフィ工程の前に、FPM処理の後SPM処理を実行する2工程を含むウエハ裏面に対するウエット洗浄処理を実行するので、裏面の重金属汚染レベルを大幅に低下させることができ、その結果、リソグラフィ工程を介してのクロス・コンタミネーションを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスとその中での裏面洗浄プロセスとの関係を説明するプロセス・ブロック・フロー図である。
【図2】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセス中での裏面洗浄プロセスの詳細を示すプロセス・ブロック・フロー図である。
【図3】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセス中での裏面洗浄プロセスに使用する洗浄装置の全体上面図である。
【図4】図3に示す洗浄装置のスピン・テーブル周辺の構造を示す装置側断面図である。
【図5】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(ゲート電極パターニング)である。
【図6】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(サイド・ウォール等形成)である。
【図7】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(歪付与膜形成)である。
【図8】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(歪付与膜選択エッチ)である。
【図9】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(歪付与膜選択エッチ用レジスト除去)である。
【図10】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(歪付与膜全面除去)である。
【図11】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(ゲート電極構造保護用酸化シリコン膜除去)である。
【図12】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(シリサイド形成)である。
【図13】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(SAC用窒化シリコン膜形成)である。
【図14】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(コンタクト・ホール開口)である。
【図15】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(第2層埋め込み配線層の層間絶縁膜形成)である。
【図16】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(第2層埋め込み配線層のビア・ホール開口)である。
【図17】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(第2層埋め込み配線層のトレンチ加工用レジスト膜パターニング)である。
【図18】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(第2層埋め込み配線層のトレンチ形成)である。
【図19】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(第2層埋め込み配線層のエッチ・ストップ膜除去)である。
【図20】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(第2層埋め込み配線層の銅系配線埋め込み)である。
【図21】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー(パッド開口)である。
【図22】本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセス中での裏面洗浄プロセスとその他の裏面洗浄プロセスとのデータ比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施の形態の概要〕
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。
【0024】
1.以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)ウエハのデバイス面上の第1の絶縁膜上に、埋め込み配線の層間絶縁膜となる第2の絶縁膜を形成する工程;
(b)前記工程(a)の後、前記ウエハの裏面に対して、第1のウエット洗浄を実行する工程;
(c)前記工程(b)の後、前記ウエハを第1のリソグラフィ装置に導入して、第1のレジスト膜のパターニングを実行する工程;
(d)前記工程(c)の後、パターニングされた前記第1のレジスト膜がある状態で、前記ウエハの前記デバイス面側に対して、第1のドライ・エッチングにより、前記第2の絶縁膜への第1の加工を実行する工程、
ここで、前記工程(b)は、以下の下位工程を含む:
(b1)弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする第1の水溶液を用いて、前記第1のウエット洗浄を実行する工程;
(b2)前記下位工程(b1)の後、硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする第2の水溶液を用いて、前記第1のウエット洗浄を実行する工程。
【0025】
2.前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、更に、以下の工程を含む:
(e)前記工程(d)の後、前記第1のレジスト膜を除去する工程;
(f)前記工程(e)の後、前記ウエハの裏面に対して、第2のウエット洗浄を実行する工程;
(g)前記工程(f)の後、前記ウエハを第1のリソグラフィ装置または第2のリソグラフィ装置に導入して、第2のレジスト膜のパターニングを実行する工程;
(h)前記工程(g)の後、パターニングされた前記第2のレジスト膜がある状態で、前記ウエハの前記デバイス面側に対して、第2のドライ・エッチングにより、前記第2の絶縁膜への第2の加工を実行する工程、
ここで、前記工程(f)は、以下の下位工程を含む:
(f1)弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする第3の水溶液を用いて、前記第2のウエット洗浄を実行する工程;
(f2)前記下位工程(f1)の後、硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする第4の水溶液を用いて、前記第2のウエット洗浄を実行する工程。
【0026】
3.前記1または2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の加工は、前記埋め込み配線のビア・エッチ加工である。
【0027】
4.前記2または3項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第2の加工は、前記埋め込み配線のトレンチ・エッチ加工である。
【0028】
5.前記1から4項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記埋め込み配線は、銅系のデュアル・ダマシン配線である。
【0029】
6.前記1から5項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のウエット洗浄は、枚葉方式により実行される。
【0030】
7.前記1から5項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第2のウエット洗浄は、枚葉方式により実行される。
【0031】
8.前記1から7項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)から(d)は、前記ウエハの前記裏面に窒化シリコン系絶縁膜が実質的にない状態で実行される。
【0032】
9.前記1から7項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(e)から(h)は、前記ウエハの前記裏面に窒化シリコン系絶縁膜が実質的にない状態で実行される。
【0033】
10.前記1から9項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液は、FPMであり、前記第2の水溶液は、SPMである。
【0034】
11.前記1から10項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第3の水溶液は、FPMであり、前記第4の水溶液は、SPMである。
【0035】
12.前記1から11項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液および前記第2の水溶液は、それぞれ常温で、前記ウエハの前記裏面に供給される。
【0036】
13.前記1から12項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第3の水溶液および前記第4の水溶液は、それぞれ常温で、前記ウエハの前記裏面に供給される。
【0037】
14.前記1から13項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第2の絶縁膜の形成工程は、枚葉方式によって実行される。
【0038】
15.前記1から14項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、MISFETを有し、前記半導体集積回路装置の製造方法は、更に、以下の工程を含む:
(i)前記工程(a)の前であって、前記MISFETのゲート電極のパターニング工程の後に、前記ウエハに対して、熱燐酸によるバッチ方式のウエット処理を実行する工程。
【0039】
16.以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)ウエハのデバイス面上の絶縁膜上に、メタル配線を形成するための薄膜を形成する工程;
(b)前記工程(a)の後、前記ウエハの裏面に対して、ウエット洗浄を実行する工程;
(c)前記工程(b)の後、前記ウエハをリソグラフィ装置に導入して、レジスト膜のパターニングを実行する工程;
(d)前記工程(c)の後、パターニングされた前記レジスト膜がある状態で、前記ウエハの前記デバイス面側に対して、ドライ・エッチングにより、前記薄膜への加工を実行する工程、
ここで、前記工程(b)は、以下の下位工程を含む:
(b1)弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする第1の水溶液を用いて、前記ウエット洗浄を実行する工程;
(b2)前記下位工程(b1)の後、硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする第2の水溶液を用いて、前記ウエット洗浄を実行する工程。
【0040】
17.前記16項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のウエット洗浄は、枚葉方式により実行される。
【0041】
18.前記16または17項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第2のウエット洗浄は、枚葉方式により実行される。
【0042】
19.前記16から18項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)から(d)は、前記ウエハの前記裏面に窒化シリコン系絶縁膜が実質的にない状態で実行される。
【0043】
20.前記16から19項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液は、FPMであり、前記第2の水溶液は、SPMである。
【0044】
21.前記16から20項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液および前記第2の水溶液は、それぞれ常温で、前記ウエハの前記裏面に供給される。
【0045】
22.前記16から21項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記薄膜の形成工程は、枚葉方式によって実行される。
【0046】
23.前記16から22項のいずれか一つの半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、MISFETを有し、前記半導体集積回路装置の製造方法は、更に、以下の工程を含む:
(i)前記工程(a)の前であって、前記MISFETのゲート電極のパターニング工程の後に、前記ウエハに対して、熱燐酸によるバッチ方式のウエット処理を実行する工程。
【0047】
〔本願における記載形式・基本的用語・用法の説明〕
1.本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0048】
更に、本願において、「半導体集積回路装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)を中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(たとえば単結晶シリコン基板)上に集積したものをいう。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を例示することができる。このとき、集積回路構成の代表的なものとしては、Nチャネル型MISFETとPチャネル型MISFETを組み合わせたCMOS(Complemetary Metal Oxide Semiconductor)型集積回路に代表されるCMIS(Complemetary Metal Insulator Semiconductor)型集積回路を例示することができる。
【0049】
今日の半導体集積回路装置、すなわち、LSI(Large Scale Integration)のウエハ工程は、通常、原材料としてのシリコンウエハの搬入からプリ・メタル(Premetal)工程(M1配線層下端とゲート電極構造の間の層間絶縁膜等の形成、コンタクト・ホール形成、タングステン・プラグ、埋め込み等からなる工程)あたりまでのFEOL(Front End of Line)工程と、M1配線層形成から始まり、アルミニウム系パッド電極上のファイナル・パッシベーション膜へのパッド開口の形成あたりまで(ウエハ・レベル・パッケージ・プロセスにおいては、当該プロセスも含む)のBEOL(Back End of Line)工程に大別できる。FEOL工程の内、ゲート電極パターニング工程、コンタクト・ホール形成工程等は、特に微細な加工が要求される微細加工工程である。一方、BEOL工程においては、ビアおよびトレンチ形成工程、特に、比較的下層のローカル配線(たとえば4層程度の構成の埋め込み配線では、M1からM3あたりまで、10層程度の構成の埋め込み配線では、M1からM5あたりまでの微細埋め込み配線)等において、特に微細加工が要求される。なお、「MN(通常N=1から15程度)」で、下から第N層配線を表す。M1は第1層配線であり、M3は第3層配線である。
【0050】
2.同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。同様に、「酸化シリコン膜」、「酸化シリコン系絶縁膜」等と言っても、比較的純粋な非ドープ酸化シリコン(Undoped Silicon Dioxide)だけでなく、FSG(Fluorosilicate Glass)、TEOSベース酸化シリコン(TEOS-based silicon oxide)、SiOC(Silicon Oxicarbide)またはカーボンドープ酸化シリコン(Carbon-doped Silicon oxide)またはOSG(Organosilicate glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)、BPSG(Borophosphosilicate Glass)等の熱酸化膜、CVD酸化膜、SOG(Spin ON Glass)、ナノ・クラスタリング・シリカ(Nano-Clustering Silica:NSC)等の塗布系酸化シリコン、これらと同様な部材に空孔を導入したシリカ系Low-k絶縁膜(ポーラス系絶縁膜)、およびこれらを主要な構成要素とする他のシリコン系絶縁膜との複合膜等を含むことは言うまでもない。
【0051】
また、酸化シリコン系絶縁膜と並んで、半導体分野で常用されているシリコン系絶縁膜としては、窒化シリコン系絶縁膜がある。この系統の属する材料としては、SiN,SiCN,SiNH,SiCNH等がある。ここで、「窒化シリコン」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiNおよびSiNHの両方を含む。同様に、「SiCN」というときは、特にそうでない旨明示したときを除き、SiCNおよびSiCNHの両方を含む。
【0052】
なお、SiCは、SiNと類似の性質を有するが、SiONは、むしろ、酸化シリコン系絶縁膜に分類すべき場合が多い。
【0053】
窒化シリコン膜は、SAC(Self−Aligned Contact)技術におけるエッチ・ストップ膜として、多用されるほか、SMT(Stress Memorization Technique)における応力付与膜としても使用される。
【0054】
同様に、「ニッケル・シリサイド」というときは、通常、ニッケル・モノ・シリサイドを指すが、比較的純粋なものばかりではなく、ニッケル・モノ・シリサイドを主要な構成要素とする合金、混晶等を含む。また、シリサイドは、ニッケル・シリサイドに限らず、従来から実績のあるコバルト・シリサイド、チタン・シリサイド、タングステン・シリサイド等でもよい。また、シリサイド化のための金属膜としては、Ni(ニッケル)膜以外にも、例えばNi−Pt合金膜(NiとPtの合金膜)、Ni−V合金膜(NiとVの合金膜)、Ni−Pd合金膜(NiとPdの合金膜)、Ni−Yb合金膜(NiとYbの合金膜)またはNi−Er合金膜(NiとErの合金膜)のようなニッケル合金膜などを用いることができる。なお、これらのニッケルを主要な金属元素とするシリサイドを「ニッケル系のシリサイド」と総称する。
【0055】
3.同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0056】
4.さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0057】
5.「ウエハ」というときは、通常は半導体集積回路装置(半導体装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0058】
6.本願において「リソグラフィ装置」というときは、少なくとも露光装置を有する半導体製造装置(関連した検査装置を有することがある)を指すものとする。通常の条件では、このリソグラフィ装置は、統合型の装置であり、レジスト等塗布部(塗布、プリ・ベーク等)、露光部、現像部(現像、ポスト・ベーク等)等を有する。
【0059】
7.埋め込み配線等のメタル配線層に関して、「層間絶縁膜」というときは、特に、そうでない旨明示したとき、または、そうでないことが明らかである場合を除き、いわゆる狭義の層間絶縁膜および層内絶縁膜の両方を含むものとする。
【0060】
8.「SMT(Stress Memorization Technique)」は、熱処理等のタイミングを調整することにより、MISFET等のチャネルまたは、その近傍の部材(応力記憶部材)に、窒化シリコン膜等の応力付与膜の応力を記憶させることにより、キャリアのチャネル移動度を向上させ、トランジスタ特性の向上を図る技術である。応力記憶部材の選定等により種々の方法があるが、ここでは、ゲート・ポリシリコン部材(完成時のゲート電極中のポリシリコン部分)がアモルファス状態から狭義のポリ・シリコンに変化する際に応力を記憶する性質を利用した方法について具体的に説明するが、それに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0061】
9.本願で使用する各種の洗浄液又は薬液について説明する。なお、薬液等の組成は、特に明記しないときは、体積比すなわち体積%で表示する。
(1)DHF(Dilute Hydrofluoric acid)は、希弗酸(通常0.5から10%)であり、一般的な金属不純物除去能力は、比較的高いが、銅のようなイオン化傾向の低いものの除去能力は低い。FPMは、これに酸化剤である過酸化水素を添加して、対銅除去能力を強化したものということができる。
(2)第1の水溶液、または、第3の水溶液であるFPM(Hydrogen Flouride−Hydrogen Peroxide Mixtureからとった略称)は、弗酸過酸化水素水溶液(弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする水溶液)であり、ポリ・シリコン等をエッチングせず、酸化シリコン膜をエッチングするので、ウエハ裏面の表層の数nm以下程度の自然酸化膜または化学酸化膜(これらのシリコン酸化膜を「表層酸化膜」と呼ぶ)中に取り込まれた銅汚染を除去することも可能であると考える。常温で使用できるので、枚葉処理に適している。通常の代表的な組成は、HF:H:HO=1:1:100程度である。この比の最も好適な範囲は、0.2:0.5:100から1:1:50程度の範囲と考えられる。また、実用的な範囲は、0.1:0.2:100から1:1:5程度の範囲と考えられる。なお、これ以外の範囲を排除するものではないことは言うまでもない。組成の一般的な考え方は、代表組成を中心として、HFをあまり濃くするとウエハ表面側の窒化シリコン膜等を削りすぎるので、HFを大幅に濃くできないが、Hは、かなり自由出が高いと考えられる。しかし、コスト面からの制限がある。
【0062】
比較的微量または作用の弱い添加物については、一般に許容されるが、硝酸等は、ポリ・シリコン等のシリコン部材を削るので、パーティクルの元になる恐れがある。
【0063】
なお、代替薬液としては、たとえば1%以下程度のDHFとオゾン水等の混合水溶液等が考えられる。
(3)第2の水溶液、または、第4の水溶液であるSPM(Sulfuric Acid−Hydrogen Peroxide Mixture)は、硫酸過酸化水素水溶液(硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする水溶液)であり、ペロオキソ硫酸(カロ酸)の非常に強力な酸化作用を利用して、通常、有機物汚染除去に利用される。しかし、HPMと同様な比較的強力な金属汚染除去能力(対銅除去能力を有する)を持つ。弗酸等の酸化シリコン膜エッチ剤を実質的に含まないので、ポリ・シリコン部材をほとんどエッチングせず、パーティクルの発生もない。常温で使用できるので、枚葉処理に適している。通常、微細パターンのあるウエハの表面側の洗浄では、硫酸の高い粘性が敬遠されるが、裏面では、そのような問題がない。通常の代表的な組成は、HSO:H:H2O=1:3.3:47.7程度である。この比の最も好適な範囲は、0.5:1:50から5:10:50程度の範囲と考えられる。また、実用的な範囲は、0.2:0.5:50から10:10:50程度の範囲と考えられる。なお、これ以外の範囲を排除するものではないことは言うまでもない。
【0064】
比較的微量または作用の弱い添加物については、一般に許容されるが、弗酸等の酸化シリコン・エッチ剤は、通常の条件では不適当である。
【0065】
なお、代替薬液としては、たとえばHPM(組成比範囲HCl:H:HO=1:1:500から1:1:5程度)や硫酸を主要な溶質成分とする水溶液等が考えられる。
(4)APM(Ammonium Hydroen−Hydrogen Peroxide Mixture)はSC1(Standard Clean 1)とも呼ばれ、いわゆるRCA洗浄における主要薬液の一つであり、主に、有機汚染除去の目的で使用される。摂氏80から90度程度の比較的高い温度での使用が主流のため、枚葉洗浄においては、若干不利な点がある。通常の代表的な組成は、NHOH:H:H2O=1:1:5程度である。なお、pHは、通常、10から12程度である。
(5)HPM(Hydrogen Chloride−Hydrogen Peroxide Mixture)はSC2(Standard Clean 2)とも呼ばれ、いわゆるRCA洗浄における主要薬液の一つであり、主に、金属汚染除去の目的で使用される。摂氏80から90度程度の比較的高い温度での使用が主流のため、枚葉洗浄においては、若干不利な点がある。通常の代表的な組成は、HCl:H:HO=1:1:5程度である。なお、pHは、通常、0から2程度である。
(6)BHF(Buffered HF)は、緩衝弗酸であり、通常、HF(弗酸)とNHF(弗化アンモニウム)の混合溶液(代表的混合体積比HF:NHF=1:7)であるが、界面活性剤等の添加物を含むこともある。一般に、微細加工におけるシリコン酸化膜エッチングに使用される。
(7)オゾン水は、通常、オゾン・ガスをユース・ポイント近傍で純水にppmオーダで溶け込ませたものであり、強力な酸化作用のため、本願においてもSPMの代替剤と考えられる。常温で使用でき、ランニング・コストが非常に安い等のメリットがある。
【0066】
〔実施の形態の詳細〕
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0067】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。
【0068】
なお、SMT(Stress Memorization Technique)プロセスの詳細については、日本特願第2008−128113号(日本出願日2008年5月15日)に詳しく記載されているので、本願では原則として、それらの部分の説明は繰り返さない。
【0069】
1.本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスとその中での裏面洗浄プロセスとの関係等の説明(主に図1)
以下では、45nmテクノロジ・ノードのCMIS型集積回路構成によるSOC(System On Chip)製品を例にとり、本発明の一実施の形態を説明する。まず、図1に基づいて、本実施の形態におけるウエハ・プロセス全体の流れと裏面洗浄の関係を説明する。
【0070】
図1に示すように、半導体集積回路のウエハ処理工程は、配線工程に対応するBEOL(Back End of Line)工程102と、それよりも前のFEOL(Front End of Line)工程101に二分される。配線工程の一例は、以下で説明する銅ダマシン配線に代表されるメタル埋め込み配線である。バック・エンド繰り返し工程102(各工程の詳細はセクション3で説明する)は、複数の配線層ごとの埋め込み配線プロセス・ループ103から構成されている。埋め込み配線プロセス・ループ103の各工程のうち、ビア露光・現像工程(ビア・リソグラフィ処理)123およびトレンチ露光・現像工程(トレンチ・リソグラフィ処理)126は、特に微細加工が要求される最小寸法のリソグラフィ処理工程に属する。フロント・エンド工程101のうち、ゲート電極パターニングのための塗布・露光・現像111、コンタクト・ホール形成のための塗布・露光・現像113等は、同様に、微細加工が要求される最小寸法のリソグラフィ処理工程に属する。これらの最小寸法のリソグラフィ処理工程においては、ArFエキシマ・レーザの193nmの単色紫外線露光用の液浸型投影スキャンニング露光装置等の極めて高価な微細リソグラフィ装置(第1のリソグラフィ装置)71を必要とする。
【0071】
一方、主に45nmテクノロジ・ノード以降のCMIS型集積回路技術においては、デバイスの動作速度向上を目的として、種々のSMT(Stress Memorization Technique)プロセスの適用が期待されている。このSMTプロセスにおいては、主に窒化シリコン膜等(バッチ式CVDにより成膜されるため、通常、裏面にも成膜される)の強い応力を伴った歪付与膜をゲート電極構造上に形成して、特性を向上しようとするチャネル領域に歪を記憶させた後、高選択比の熱燐酸によるバッチ型ウエット・エッチ(図1の裏面窒化シリコン膜ウエット・エッチ工程112)によりウエハ1(図5参照)のデバイス面1aの窒化シリコン膜を全面除去(図10参照)することが必要となる。ところが、このとき、ウエハ1は、全体が薬液に浸されるため、ウエハ1の裏面1bの窒化シリコン膜も同時に全面除去される。すなわち、ウエハ1の裏面1bには、ゲート電極のためのポリ・シリコン膜の成膜の際に(図5参照)、裏面1bにも同時に成膜されたポリ・シリコン膜のみがある状態となる。現在の最先端プロセス・ラインでは、これ以降の工程では、枚葉式CVDが主流技術であるため、ウエハ1の裏面1bは、ほぼ、このままの状態で、ウエハ工程の最終工程まで達することとなる。
【0072】
そうすると、図1に示すように、同一の微細リソグラフィ装置(第1のリソグラフィ装置)71によって、フロント・エンド工程101のウエハとバック・エンド繰り返し工程102のウエハが、処理される事態が想定される。この結果、両工程のウエハ間で、銅等の重金属汚染の移行、すなわち、クロス・コンタミネーションの発生が懸念される。
【0073】
これに対して、第1の対策として、微細リソグラフィ装置71への汚染の持込を阻止する観点から、埋め込み配線プロセス・ループ103の中の微細リソグラフィ工程、すなわち、ビア・リソグラフィ工程123およびトレンチ・リソグラフィ工程126の前に(微細リソグラフィ装置71へ導入する前)ウエハ1の裏面1bの重金属を除去可能な洗浄、すなわち、裏面洗浄122,125を実施することが有効である。
【0074】
なお、これらの裏面洗浄は、複数の埋め込み配線プロセス・ループ103の少なくとも一つのループの該当工程(すなわち、ビア・リソグラフィ工程123およびトレンチ・リソグラフィ工程126)に適用しても効果が期待できる。しかし、ほぼ全ての埋め込み配線プロセス・ループ103の該当工程に適用すると、ほぼ完璧にクロス・コンタミネーションの発生を排除することができる。また、一つのループの複数の該当工程のうち、少なくとも一つに適用しても効果が期待できる。しかし、ほぼ全ての該当工程に適用すると、より完璧なクロス・コンタミネーションの発生防止が可能となる。なお、「微細リソグラフィ装置71へ導入する前」というのは、微細リソグラフィ装置71へ導入する直前が望ましい。ここで、「直前」とは、裏面洗浄工程と当該リソグラフィ工程間に、新たな汚染源がない程度に、両工程が接近していることを示す。従って、両工程間に別の工程が介在することを排除するものではない。
【0075】
次に、第2の対策として、ポリ・シリコンを主体とする(数nm程度の自然酸化膜がある状態を含む意味である)ウエハ1の裏面1bに最適化した洗浄プロセスを適用することが有効である。これは、在来のウエハ裏面洗浄は、裏面1bに窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等の絶縁膜の存在を前提にして構築された洗浄技術であり、裏面1bがポリ・シリコン膜である点が考慮されていないからである。なお、この第2の対策は、単独でも効果があるが、先の第1の対策と組み合わせると、大幅に、クロス・コンタミネーションの発生防止効果が向上する。
【0076】
この実施の形態では、図1に示すように、層間膜成膜121(キャップ膜成膜等も含む)およびビア・エッチ124後のレジスト除去の後に、被処理ウエハ1に対して、裏面洗浄122,125が実行される。
【0077】
2.本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセス中での裏面洗浄プロセスに使用する洗浄装置の説明(主に図2、図3および図4)
図2から図4に基づいて、ウエハ裏面洗浄工程122,125の詳細を説明する。
【0078】
図3に示すように、被処理ウエハ1は、たとえば、フープ(ウエハ搬送容器)73に収容された状態で、裏面洗浄装置78のロード・ポート72にセットされる。なお、裏面洗浄装置78は、単独の装置であってもよいが、たとえば、レジスト除去装置等と一体化された装置であってもよい。次に、ロード・ポート中間室間ウエハ搬送ロボット75によって、フープ73から装置内の中間室74に導入され、洗浄テーブル中間室間ウエハ搬送ロボット76に受け渡される。その後、ウエハ1は洗浄テーブル中間室間ウエハ搬送ロボット76によって、図4に示すように、洗浄テーブル(スピン・テーブル)77a、77b,77c,77d(77)のいずれかに、そのデバイス面1aを上にしてセットされる。
【0079】
ここで、図2および図4に基づいて、スピン・テーブル77周辺の構造、働き、および裏面洗浄プロセスの流れを説明する。図4に示すように、ウエハ1は、スピン・テーブル77の上面にある複数本(通常3から4本)のウエハ保持チャック・ピン(ウエハ保持機構)81によって保持されている。
【0080】
この状態で、ウエハ1とスピン・テーブル77は、回転を開始し、たとえば、1500rpm程度の回転速度を維持する。一方、ウエハ1のデバイス面1aに対向するように、上方には、雰囲気遮断板83が設けられている。この雰囲気遮断板83は、スピン・テーブル77の回転に伴って、同一の方向に同一の速度で回転するようになっている。
【0081】
このように回転している状態で、先ず、上部ガス・ノズル84および下部ガス・ノズル85から雰囲気遮蔽用の窒素ガス流87、88の供給が開始される。それに続いて、薬液又は洗浄液(純水を含む)86の供給が開始される。洗浄液の供給時間、すなわち、洗浄処理時間は、たとえば、40秒程度である。このときの洗浄液は、FPMすなわち弗酸および過酸化水素を主要な溶質成分として含む水溶液である。液温は常温、通常、摂氏25度程度である。これが図2に示すFPM洗浄工程131である。なお、各種の洗浄液は、あらかじめ混合されて供給される。
【0082】
続いて、そのままの状態で(窒素ガス流87、88の供給はそのまま維持されている。以下同じ)、洗浄液86が純水に切り替わると、ほぼ同時に、回転速度がたとえば1000から1200rpm程度に減速されて、その状態を維持する。洗浄処理時間は、たとえば、15秒程度である。液温は常温、通常、摂氏25度程度である。これが図2に示す純水洗浄工程132(純水リンス)である。
【0083】
続いて、そのままの状態で洗浄液86がSPMすなわち硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分として含む水溶液に切り替わると、ほぼ同時に、回転速度が再び、たとえば1500rpm程度に上昇して、その状態を維持する。洗浄処理時間は、たとえば、20秒程度である。液温は常温、通常、摂氏25度程度である。これが図2に示すSPM洗浄工程133である。
【0084】
続いて、そのままの状態で、洗浄液86が純水に切り替わると、ほぼ同時に、回転速度が、たとえば200から1200rpm程度に減速されて、その状態を維持する。洗浄処理時間は、たとえば、30秒程度である。液温は常温、通常、摂氏25度程度である。これが図2に示す純水洗浄工程134(純水リンス)である。
【0085】
続いて、そのままの状態で(もちろん、窒素ガス流87、88の供給はそのまま維持されている)洗浄液86が停止し、ほぼ同時に、回転速度が、たとえば2500rpm程度まで上昇し、その状態を維持する。この回転速度を維持する時間、すなわち、乾燥処理時間は、たとえば30秒程度である。これが図2に示すスピン・ドライ工程135である。
【0086】
その後、回転が停止すると同時に、窒素ガス流87、88が停止する。それに続いて、処理済のウエハ1は、洗浄テーブル中間室間ウエハ搬送ロボット76によって、中間室74に取り出される。その後、ロード・ポート中間室間ウエハ搬送ロボット75に受け渡され、ロード・ポート中間室間ウエハ搬送ロボット75により、フープ73に戻される。これで裏面洗浄工程が終了する。
【0087】
なお、薬液洗浄の間の水洗やリンス等の処理は、必ずしも必須ではないが、通常、薬液間の干渉を防止するために実施することが望ましい。次の薬液がそれ自体リンス等の役割をする場合には、省略すると処理時間の短縮につながる場合もある。また、図2に示した各ステップ間に追加のステップを付加することを排除するものではない。また、ここでは、図2に示した各ステップを同一のスピン・テーブル77上で実行する例を説明したが、複数のテーブルに分けて一連のステップを実行するようにしてもよい。ただし、同一のスピン・テーブル77上で処理する方が処理時間の短縮につながる。
【0088】
3.本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フローの説明(主に図1および図5から図11)
ここでは、本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセスの主要部におけるデバイス断面フロー等を説明する。先ず、図5に基づいて、ゲート電極パターニング完了時点でのデバイス断面構造を説明する。
【0089】
図5に示すように、CMIS型集積回路装置は、通常、比較的不純物濃度の低い単結晶P型シリコン系ウエハ1(たとえば300φウエハ、200φでも450φそのたのサイズのウエハでもよい)のデバイス面1a側(第1の主面または裏面1bの反対の面)に形成される(必要に応じて、N型半導体基板でもよいし、各種のエピタキシャル基板、SOI基板等を使用してもよい。)。すなわち、ウエハ1のデバイス面1a側にP型ウエル領域2pおよびN型ウエル領域2nが形成されており、その間のシリコン基板1の表面には、素子分離のためのSTI絶縁膜3が配置されている。P型ウエル領域2pの表面近傍にはNチャネルMISFET4nが、N型ウエル領域2nの表面近傍にはPチャネルMISFET4pが、それぞれ設けられている。また、P型ウエル領域2pの表面には、NチャネルMISFET4nのN型低濃度ソース又はドレイン領域5nが、N型ウエル領域2nの表面には、PチャネルMISFET4pのP型低濃度ソース又はドレイン領域5pが、それぞれ設けられている。これらのNチャネルMISFET4nおよびPチャネルMISFET4pは、それぞれゲート絶縁膜6n,6p、ゲート電極7n,7p等を有している。なお、この時点で、ウエハ1の裏面1bには、ゲート・ポリシリコン膜7n,7pをバッチ式CVDによって形成したときに、同時に形成された裏面のポリ・シリコン膜7bが形成されている。この膜の厚さは、たとえば、70nm程度である。
【0090】
次に、デバイス形成プロセスをゲート電極のパターニングから順次、簡略に説明する。図5に示すように、裏面洗浄が完了したウエハ1を、微細リソグラフィ装置71(第1のリソグラフィ装置)または、その他の、微細リソグラフィ装置(第2のリソグラフィ装置)に導入して、その中のレジスト塗布部で、デバイス面1aのほぼ全面に、たとえばポリ・シリコン膜を形成し、その上に、たとえば、ArF露光用のネガ型のフォト・レジスト膜を塗布する。その後、その中の液浸露光部でマスク上のゲート電極パターンをたとえばスキャン型の縮小投影露光により、転写する。その後、微細リソグラフィ装置71等内の現像部で現像処理等することで、図5に示すようなゲート電極パターニング用レジスト膜8を形成する。その後、微細リソグラフィ装置71等外に排出する(図1のゲート電極パターニングのための塗布・露光・現像工程111)。ここでは、微細リソグラフィ装置71内に塗布部、露光部、および現像部がある例を説明したが、それぞれ、または、いずれか一つを別個の装置としてもよい。
【0091】
その後、ゲート電極パターニング用レジスト膜8をマスクとして、ポリ・シリコン膜をドライ・エッチングすることで、図5に示すようなゲート電極7n,7pを形成する。その後、不要になったゲート電極パターニング用レジスト膜8をアッシング等により全面除去する。
【0092】
続いて、P型ウエル領域2pおよびN型ウエル領域2n上のウエハ1のデバイス面1aを交互にレジスト膜で覆って、それぞれの領域の表面にN型低濃度ソース又はドレイン領域5nおよびP型低濃度ソース又はドレイン領域5pをイオン注入により形成する。
【0093】
次に、図6に示すように、ウエハ1のデバイス面1aのほぼ全面にバッチ式CVDによって,比較的薄いオフセット絶縁膜(窒化シリコン膜)11aを形成する。このとき、同時に、オフセット絶縁膜11aに対応する裏面の窒化シリコン膜11bが成膜される。次に、デバイス面1aに対して、異方性ドライ・エッチングを実行することによって、L字状の一対のオフセット絶縁膜11aがパターニングされる。続いて、オフセット絶縁膜11aよりも厚いサイド・ウォール・スペーサ絶縁膜(窒化シリコン膜)12aをウエハ1のデバイス面1aのほぼ全面にバッチ式CVDによって,成膜する。このとき、同時に、サイド・ウォール・スペーサ絶縁膜に対応する裏面の窒化シリコン膜12bが成膜される。次に、デバイス面1aに対して、異方性ドライ・エッチングを実行することによって、サイド・ウォール・スペーサ絶縁膜12aがパターニングされる。
【0094】
続いて、P型ウエル領域2pおよびN型ウエル領域2n上のウエハ1のデバイス面1aを交互にレジスト膜で覆って、それぞれの領域の表面にN型高濃度ソース又はドレイン領域9nおよびP型高濃度ソース又はドレイン領域9pをイオン注入により形成する。
【0095】
次に、図7に示すように、ウエハ1のデバイス面1aのほぼ全面に、たとえば枚葉式のプラズマCVDによって,酸化シリコン系膜のキャップ絶縁膜14(ゲート電極構造保護用酸化シリコン膜)を成膜する。更にその上のウエハ1のデバイス面1aのほぼ全面に渉って、応力付与用窒化シリコン膜15aを、たとえばバッチ式CVDによって,成膜する。厚さは、たとえば、35nm程度である。好適な範囲として、20から50nm程度の範囲を例示することができる。応力付与用窒化シリコン膜15aは、引張応力を有する膜であり、その強さは、たとえば0.3から1.7GPa程度を好適な範囲として例示することができる。これは、NチャネルMISFET4nのキャリア(電子)移動度を向上させる場合であるが、逆に、PチャネルMISFET4pのキャリア(ホール)移動度を向上させる場合には、圧縮応力を付与する応力付与用窒化シリコン膜を形成する必要がある。引張応力、圧縮応力または、その強度は、プラズマCVDの成膜条件を調整することによって自由に制御できることが広く知られている。
【0096】
次に、図8に示すように、P型ウエル領域2p上を、応力付与用窒化シリコン膜選択エッチ用レジスト膜16で被覆した状態で、ウエハ1のデバイス面1aに対して、異方性ドライ・エッチングを実行することによって、PチャネルMISFET4pのサイド・ウォール・スペーサ絶縁膜12aの近傍の一部を残して、レジスト膜16がない部分の応力付与用窒化シリコン膜15aをほぼ全面除去する。
【0097】
次に、図9に示すように、不要になったレジスト膜16をアッシング等により全面除去する。続いて、ゲート電極7n、7pのアモルファス・シリコン状態をポリ・シリコン状態にするためのアニール処理を実行する。この処理は、たとえば、摂氏950度から1150度程度のスパイク・アニール処理とすることができる。このアニールの際、通常、N型低濃度ソース又はドレイン領域5n、P型低濃度ソース又はドレイン領域5p、N型高濃度ソース又はドレイン領域9n、およびP型高濃度ソース又はドレイン領域9pが活性化される。
【0098】
次に、図10に示すように、熱燐酸によるバッチ式ウエット処理によって、ウエハ1の表側表面1aの窒化シリコン膜15a、応力付与用窒化シリコン膜に対応する裏面の窒化シリコン膜15b、サイド・ウォール・スペーサ絶縁膜に対応する裏面の窒化シリコン膜12bおよびオフセット絶縁膜に対応する裏面の窒化シリコン膜11bを全面除去する。このとき、熱燐酸の液温は、たとえば摂氏155度程度であり、処理時間は、たとえば10分程度である。
【0099】
次に、図11に示すように、窒化シリコン系の膜およびポリ・シリコン膜に対して実質的に非エッチング性の弗酸系のウエット・エッチング液により、ウエハ1のデバイス面1a上のゲート電極構造保護用酸化シリコン膜(ゲート・キャップ膜)14をほぼ全面除去する。なお、このとき、周辺回路等で、シリサイド化すべきでない部分がある場合については、ゲート・キャップ膜を残して、シリサイド化のマスクとする。
【0100】
次に、図12に示すように、N型高濃度ソース又はドレイン領域9n、P型高濃度ソース又はドレイン領域9p、NチャネルMISFETのゲート電極7n、およびPチャネルMISFETのゲート電極7pの表面をたとえばニッケル系のシリサイド膜17とする。
【0101】
次に、図13に示すように、ウエハ1のデバイス面1aのほぼ全面に、たとえば枚葉式のCVDによって,比較的薄いSAC用窒化シリコン膜18を成膜する。
【0102】
次に、図14に示すように、窒化シリコン膜18上に、それよりも厚いプリ・メタル層間絶縁膜(酸化シリコン膜)21をたとえば枚葉式のプラズマCVDによって,成膜する。更に、ウエハ1を、微細リソグラフィ装置71または、その他の、微細リソグラフィ装置(第2のリソグラフィ装置)に導入して、その中のレジスト塗布部で、デバイス面1aのプリ・メタル層間絶縁膜21上に、たとえば、ArF露光用のポジ型のコンタクト・ホール形成用フォト・レジスト膜22を塗布する。その後、その中の液浸露光部でマスク上のコンタクト・ホール・パターンをたとえばスキャン型の縮小投影露光により、転写する。その後、微細リソグラフィ装置71内の現像部で現像処理等することでコンタクト・ホール形成用レジスト膜22を形成する。その後、微細リソグラフィ装置71外に排出する(図1のコンタクト・ホール形成のための塗布・露光・現像113)。
【0103】
更に、図14に示すように、パターニングされたレジスト膜22をマスクとして、異方性ドライ・エッチングにより、まず、コンタクト・エッチ・ストップ膜18の上面に達するコンタクト・ホール23を開口する。更に、ガスを変えて、ドライ・エッチングにより、コンタクト・エッチ・ストップ膜18をエッチングして、コンタクト・ホール23を下地のニッケル系シリサイド膜の上面まで延長する。その後、不要になったレジスト膜22をアッシング等により、全面除去する。
【0104】
次に、図15に示すように、コンタクト・ホール23にタングステン・プラグ24(通常、下層及び周辺の薄い窒化チタン膜等および主要部のタングステン系のプラグ本体からなる。以下、タングステン・プラグ等について同じ)を埋め込む。
【0105】
更に、図15に示すように、プリ・メタル絶縁膜21上に、第1層埋め込み配線層のエッチ・ストップ膜20(たとえば、窒化炭化珪素膜すなわちSiCN膜を例示することができるが、窒化シリコン膜系のものであればよい。以下、エッチ・ストップ膜について同じ)および第1層埋め込み配線層の層間絶縁膜26(プラズマTEOS膜等の酸化シリコン系の膜を例示することができるが、FSG膜,SiOC膜,その他のLow−k酸化シリコン系絶縁膜であってもよい。また、Low−k酸化シリコン系絶縁膜の上部に、プラズマTEOS膜等の通常のシリコン酸化膜をキャップ膜として重ねてもよい。以下、層間絶縁膜について同じ)をたとえば枚葉式のプラズマCVDによって,形成する。それらの中には、第1層埋め込み配線層のバリア・メタル膜(通常、窒化タンタルおよびタンタルの重ね膜等が使用されるが、ルテニウムその他の高融点金属単体または、それと、その窒化物膜との重ね膜でもよい。以下、バリア・メタル膜について同じ)を介して、第1層埋め込み配線27(銅系M1ダマシン配線)が埋め込まれている(銅の埋め込みは、通常、シード銅層を形成した後、電解銅メッキ等により実行される。以下、銅の埋め込みに付いて同じ)。第1層埋め込み配線層は、いわゆるシングル・ダマシン構造である。
【0106】
更に、この第1層埋め込み配線層の層間絶縁膜26上に、第2層埋め込み配線層のエッチ・ストップ膜29および第2層埋め込み配線層の層間絶縁膜28をたとえば枚葉式のプラズマCVDによって,形成する(図1の層間絶縁膜形成工程121)。
【0107】
次に、図16に示すように、裏面洗浄(図1の裏面洗浄工程122)が完了したウエハ1を、微細リソグラフィ装置71または、その他の、微細リソグラフィ装置に導入して、その中のレジスト塗布部で、デバイス面1aの層間絶縁膜28上に、たとえば、ArF露光用のポジ型のビア・ホール形成用フォト・レジスト膜31を塗布する。その後、その中の液浸露光部でマスク上のビア・ホール・パターンをたとえばスキャン型の縮小投影露光により、転写する。その後、微細リソグラフィ装置71等内の現像部で現像処理等することでビア・ホール形成用レジスト膜31を形成する。その後、微細リソグラフィ装置71等の外に排出する(図1のビア露光・現像工程またはビア・リソグラフィ工程123)。
【0108】
更に、図16に示すように、パターニングされたレジスト膜31をマスクとして、異方性ドライ・エッチングにより、まず、エッチ・ストップ膜29の上面に達するビア・ホール32を開口する(図1のビア・エッチ工程124)。その後、不要になったレジスト膜31をアッシング等により、全面除去する。
【0109】
次に、図17に示すように、裏面洗浄(図1の裏面洗浄工程125)が完了したウエハ1を、微細リソグラフィ装置71または、その他の、微細リソグラフィ装置に導入して、その中のレジスト等塗布部で、まず、ビア・ホール32内に、たとえば、塗布系のレジスト・プラグ33を充填する。その後、デバイス面1aの層間絶縁膜28上に、たとえば、ArF露光用のポジ型のトレンチ形成用フォト・レジスト膜34を塗布する。その後、その中の液浸露光部でマスク上のトレンチ・パターンをたとえばスキャン型の縮小投影露光により、転写する。その後、微細リソグラフィ装置71等内の現像部で現像処理等することでトレンチ形成用レジスト膜34を形成する。その後、微細リソグラフィ装置71等の外に排出する(図1のトレンチ露光・現像工程またはトレンチ・リソグラフィ工程126)。
【0110】
次に、図18に示すように、パターニングされたレジスト膜34をマスクとして、異方性ドライ・エッチングにより、まず、トレンチ35を形成する(図1のトレンチ・エッチ工程127)。
【0111】
次に、図19に示すように、不要になったレジスト膜34およびレジスト・プラグ33をアッシング等により、全面除去する。その後、ビア底部分のエッチ・ストップ膜29をドライ・エッチング等により、除去する。
【0112】
次に、図20に示すように、たとえば、第2層埋め込み配線層の層間絶縁膜28の上面(すなわち、ウエハ1のデバイス面1a側上面)、トレンチ35およびビア・ホール32の内面等に、窒化タンタル等の埋め込み配線層のバリア・メタル膜を成膜する。更に、銅シード膜の成膜に引き続き、電解メッキ法等により、ウエハ1のデバイス面1a側上面、トレンチ35およびビア・ホール32の内部等に銅を主要な成分とする配線材料を成膜する。
【0113】
更に、図20に示すように、メタルCMP法等によって、トレンチ35およびビア・ホール32外の配線材料およびバリア・メタル膜を除去する。これによって、埋め込み配線36が形成されたことになる。第2層埋め込み配線36の配線ピッチは、たとえば、300nm程度である。なお、通常、第1層から第3層埋め込み配線層の層間絶縁膜の厚さは、たとえば、100から200nm程度である。一方、第1層から第3層埋め込み配線の配線ピッチは、たとえば、300nm程度である。第4層以上の埋め込み配線層の層間絶縁膜の厚さおよび配線ピッチは、これと同等か、これよりも大きい。
【0114】
次に、図21に示すように、第2層埋め込み配線層と同様に、第3層埋め込み配線層の層間絶縁膜19、第3層埋め込み配線層のエッチ・ストップ膜30等の中にデュアル・ダマシン構造の第3層埋め込み配線層39を形成する。更に、これを最上層埋め込み配線(通常第4層ないしは第12層)である第N層埋め込み配線層の層間絶縁膜(N≧3)37中の第N層埋め込み配線(N≧3)38まで繰り返す。その後、最上層埋め込み配線層の層間絶縁膜37上に、アルミニウム系パッド下層絶縁膜41を形成し、それを貫通するアルミニウム系パッド下タングステン・プラグ42を埋め込む。
【0115】
更に、図21に示すように、アルミニウム系パッド下層絶縁膜41上に、たとえばスパッタリング法等により、アルミニウム系金属膜(通常は、メタル多層膜構造)を成膜する。このアルミニウム系金属膜45を通常のリソグラフィにより、パターニングし、アルミニウム系パッド電極44を形成する。続いて、これらのアルミニウム系パッド下層絶縁膜41およびアルミニウム系パッド電極44上に、たとえばプラズマCVD法等によって、ファイナル・パッシベーション膜43を成膜する。続いて、通常のリソグラフィにより、パターニングすることによって、アルミニウム系パッド電極44上に、パッド開口45を形成する。
【0116】
以上説明および図1等に示すように、各埋め込み配線層のパターニングにおけるバック・エンド繰り返し工程102の埋め込み配線プロセス・ループ103上の微細工程(たとえばビア露光・現像工程123、トレンチ露光・現像工程126等)において、特に、微細リソグラフィ装置71等をFEOL工程の微細工程(たとえば、図1のゲート電極パターニングのための塗布・露光・現像工程111、コンタクト・ホール形成のための塗布・露光・現像113等)と共用する場合は、その装置に導入する直前のバック・エンド工程に属するウエハに対して、セクション2で説明したような裏面洗浄を施すことが有益である。しかし、必ずしも、該当する全部の工程に適用する必要はない。これらの裏面洗浄をどこまで適用するかは、最終的にはコスト・パフォーマンスの問題である。配線層のうち等に適用すると効果の出るものとしては、M1からM5などのローカル配線に属する比較的下層の配線(セミ・グローバル配線やグローバル配線よりも下層の配線)である。
【0117】
4.本願の一実施の形態の半導体集積回路装置(銅系埋め込み配線の製品)の製造方法のウエハ・プロセス中での裏面洗浄プロセスとその他の裏面洗浄プロセスとの比較等の説明(主に図22)
図22は、2群の同一程度の銅汚染度のウエハ1(図4等参照)の裏面1bに対して、本発明の裏面洗浄(FPM後SPMの2段洗浄)を適用したものと、裏面が窒化シリコン膜である場合に多用される比較例の裏面洗浄(SPM後FPMの2段洗浄)を適用したものとの裏面の汚染量の比較を示したものである。これより、本発明の裏面洗浄の方が、二桁程度汚染が低減されていることがわかる。
【0118】
5.サマリ
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0119】
例えば、前記実施の形態においては、銅系の埋め込み配線に例をとり具体的に説明したが、本願発明はそれに限定されるものではなく、銀系の埋め込み配線、アルミニウム系通常配線(非埋め込み配線)等にも適用できることは言うまでもない。たとえば、アルミニウム系配線(メタル配線)パターン等の薄膜の加工等である。
【0120】
前記実施の形態では、SMT技術を適用する結果、ウエハの裏面がバック・エンド繰り返し工程において、ポリ・シリコンを主体とした膜になるものを中心に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、SMT技術を適用しないものにも適用して効果があることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
1 半導体ウエハまたは半導体基板(単結晶P型シリコン系ウエハ)
1a 半導体ウエハのデバイス面(第1の主面)
1b 半導体ウエハの裏面(第2の主面)
2p P型ウエル領域
2n N型ウエル領域
3 STI絶縁膜(酸化シリコン膜)
4n NチャネルMISFET
4p PチャネルMISFET
5n N型低濃度ソース又はドレイン領域(N型エクステンション領域)
5p P型低濃度ソース又はドレイン領域(P型エクステンション領域)
6n NチャネルMISFETのゲート絶縁膜
6p PチャネルMISFETのゲート絶縁膜
7n NチャネルMISFETのゲート電極
7p PチャネルMISFETのゲート電極
7b 裏面のポリ・シリコン膜
8 ゲート電極パターニング用レジスト膜
9n N型高濃度ソース又はドレイン領域
9p P型高濃度ソース又はドレイン領域
11a オフセット絶縁膜(窒化シリコン膜)
11b オフセット絶縁膜に対応する裏面の窒化シリコン膜
12a サイド・ウォール・スペーサ絶縁膜(窒化シリコン膜)
12b サイド・ウォール・スペーサ絶縁膜に対応する裏面の窒化シリコン膜
14 ゲート電極構造保護用酸化シリコン膜(ゲート・キャップ膜)
15a 応力付与用窒化シリコン膜
15b 応力付与用窒化シリコン膜に対応する裏面の窒化シリコン膜
16 応力付与用窒化シリコン膜選択エッチ用レジスト膜
17 ニッケル系シリサイド膜
18 SAC用窒化シリコン膜(コンタクト・エッチ・ストップ膜)
19 第3層埋め込み配線層の層間絶縁膜
20 第1層埋め込み配線層のエッチ・ストップ膜
21 プリ・メタル層間絶縁膜(酸化シリコン膜)
22 コンタクト・ホール形成用レジスト膜
23 コンタクト・ホール
24 コンタクト部のタングステン・プラグ
26 第1層埋め込み配線層の層間絶縁膜(第1の絶縁膜の一例)
27 第1層銅系埋め込み配線
28 第2層埋め込み配線層の層間絶縁膜(第2の絶縁膜の一例)
29 第2層埋め込み配線層のエッチ・ストップ膜
30 第3層埋め込み配線層のエッチ・ストップ膜
31 ビア開口用レジスト膜
32 ビア・ホール
33 レジスト・プラグ
34 トレンチ加工用レジスト膜
35 トレンチ(配線溝)
36 第2層埋め込み配線
37 第N層埋め込み配線層の層間絶縁膜(N≧3)
38 第N層埋め込み配線(N≧3)
39 第3層埋め込み配線層
41 アルミニウム系のパッド電極下の層間絶縁膜
42 アルミニウム系のパッド電極下のタングステン・プラグ
43 ファイナル・パッシベーション膜
44 アルミニウム系のパッド電極
45 パッド開口
71 微細リソグラフィ装置(第1のリソグラフィ装置)
72 ロード・ポート
73 フープ(ウエハ搬送容器)
74 中間室
75 ロード・ポート中間室間ウエハ搬送ロボット
76 洗浄テーブル中間室間ウエハ搬送ロボット
77、77a、77b,77c,77d 洗浄テーブル(スピン・テーブル)
78 裏面洗浄装置
81 ウエハ保持チャック・ピン(ウエハ保持機構)
82 薬液ノズル
83 雰囲気遮断板
84 上部ガス・ノズル
85 下部ガス・ノズル
86 薬液(純水含む)または洗浄用液体()
87 下部ガス流
88 上部ガス流
101 フロント・エンド工程
102 バック・エンド繰り返し工程
103 埋め込み配線プロセス・ループ
111 ゲート電極パターニングのための塗布・露光・現像
112 ウエハ裏面の窒化シリコン膜ウエット全面除去(ウエハの表側主面の窒化シリコン膜ウエット全面除去)
113 コンタクト・ホール形成のための塗布・露光・現像
121 層間絶縁膜形成工程
122 裏面洗浄工程
123 ビア露光・現像工程(ビア・リソグラフィ工程)
124 ビア・エッチ工程
125 裏面洗浄工程
126 トレンチ露光・現像工程(トレンチ・リソグラフィ工程)
127 トレンチ・エッチ工程
128 銅埋め込み工程
129 メタルCMP工程
131 FPM洗浄工程(第1のウエット洗浄)
132 純水リンス
133 SPM洗浄工程(第2のウエット洗浄)
134 純水リンス
135 スピン・ドライ工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)ウエハのデバイス面上の第1の絶縁膜上に、埋め込み配線の層間絶縁膜となる第2の絶縁膜を形成する工程;
(b)前記工程(a)の後、前記ウエハの裏面に対して、第1のウエット洗浄を実行する工程;
(c)前記工程(b)の後、前記ウエハを第1のリソグラフィ装置に導入して、第1のレジスト膜のパターニングを実行する工程;
(d)前記工程(c)の後、パターニングされた前記第1のレジスト膜がある状態で、前記ウエハの前記デバイス面側に対して、第1のドライ・エッチングにより、前記第2の絶縁膜への第1の加工を実行する工程、
ここで、前記工程(b)は、以下の下位工程を含む:
(b1)弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする第1の水溶液を用いて、前記第1のウエット洗浄を実行する工程;
(b2)前記下位工程(b1)の後、硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする第2の水溶液を用いて、前記第1のウエット洗浄を実行する工程。
【請求項2】
前記1項の半導体集積回路装置の製造方法において、更に、以下の工程を含む:
(e)前記工程(d)の後、前記第1のレジスト膜を除去する工程;
(f)前記工程(e)の後、前記ウエハの裏面に対して、第2のウエット洗浄を実行する工程;
(g)前記工程(f)の後、前記ウエハを第1のリソグラフィ装置または第2のリソグラフィ装置に導入して、第2のレジスト膜のパターニングを実行する工程;
(h)前記工程(g)の後、パターニングされた前記第2のレジスト膜がある状態で、前記ウエハの前記デバイス面側に対して、第2のドライ・エッチングにより、前記第2の絶縁膜への第2の加工を実行する工程、
ここで、前記工程(f)は、以下の下位工程を含む:
(f1)弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする第3の水溶液を用いて、前記第2のウエット洗浄を実行する工程;
(f2)前記下位工程(f1)の後、硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする第4の水溶液を用いて、前記第2のウエット洗浄を実行する工程。
【請求項3】
前記2項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の加工は、前記埋め込み配線のビア・エッチ加工である。
【請求項4】
前記3項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第2の加工は、前記埋め込み配線のトレンチ・エッチ加工である。
【請求項5】
前記4項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記埋め込み配線は、銅系のデュアル・ダマシン配線である。
【請求項6】
前記5項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のウエット洗浄および前記第2のウエット洗浄は、それぞれ枚葉方式により実行される。
【請求項7】
前記6項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)から(h)は、前記ウエハの前記裏面に窒化シリコン系絶縁膜が実質的にない状態で実行される。
【請求項8】
前記7項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液は、FPMであり、前記第2の水溶液は、SPMである。
【請求項9】
前記8項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第3の水溶液は、FPMであり、前記第4の水溶液は、SPMである。
【請求項10】
前記9項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液および前記第2の水溶液は、それぞれ常温で、前記ウエハの前記裏面に供給される。
【請求項11】
前記10項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第3の水溶液および前記第4の水溶液は、それぞれ常温で、前記ウエハの前記裏面に供給される。
【請求項12】
前記11項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第2の絶縁膜の形成工程は、枚葉方式によって実行される。
【請求項13】
前記12項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、MISFETを有し、前記半導体集積回路装置の製造方法は、更に、以下の工程を含む:
(i)前記工程(a)の前であって、前記MISFETのゲート電極のパターニング工程の後に、前記ウエハに対して、熱燐酸によるバッチ方式のウエット処理を実行する工程。
【請求項14】
以下の工程を含む半導体集積回路装置の製造方法:
(a)ウエハのデバイス面上の絶縁膜上に、メタル配線を形成するための薄膜を形成する工程;
(b)前記工程(a)の後、前記ウエハの裏面に対して、ウエット洗浄を実行する工程;
(c)前記工程(b)の後、前記ウエハをリソグラフィ装置に導入して、レジスト膜のパターニングを実行する工程;
(d)前記工程(c)の後、パターニングされた前記レジスト膜がある状態で、前記ウエハの前記デバイス面側に対して、ドライ・エッチングにより、前記薄膜への加工を実行する工程、
ここで、前記工程(b)は、以下の下位工程を含む:
(b1)弗化水素および過酸化水素を主要な溶質成分とする第1の水溶液を用いて、前記ウエット洗浄を実行する工程;
(b2)前記下位工程(b1)の後、硫酸および過酸化水素を主要な溶質成分とする第2の水溶液を用いて、前記ウエット洗浄を実行する工程。
【請求項15】
前記14項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1のウエット洗浄および前記第2のウエット洗浄は、それぞれ枚葉方式により実行される。
【請求項16】
前記15項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記工程(a)から(d)は、前記ウエハの前記裏面に窒化シリコン系絶縁膜が実質的にない状態で実行される。
【請求項17】
前記16項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液は、FPMであり、前記第2の水溶液は、SPMである。
【請求項18】
前記17項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記第1の水溶液および前記第2の水溶液は、それぞれ常温で、前記ウエハの前記裏面に供給される。
【請求項19】
前記18項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記薄膜の形成工程は、枚葉方式によって実行される。
【請求項20】
前記19項の半導体集積回路装置の製造方法において、前記半導体集積回路装置は、MISFETを有し、前記半導体集積回路装置の製造方法は、更に、以下の工程を含む:
(i)前記工程(a)の前であって、前記MISFETのゲート電極のパターニング工程の後に、前記ウエハに対して、熱燐酸によるバッチ方式のウエット処理を実行する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−206056(P2010−206056A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51666(P2009−51666)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】