説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】半導体基板1上に複数のロジック用pチャネル型MISFETQp1と、複数のロジック用nチャネル型MISFETQn1と、複数のメモリ用pチャネル型MISFETQp2と、複数のメモリ用nチャネル型MISFETQn2とが混載されている。複数のロジック用pチャネル型MISFETQp1のうちの少なくとも一部は、シリコンゲルマニウムで構成されたソース・ドレイン領域を有し、複数のロジック用nチャネル型MISFETQn1の全ては、それぞれシリコンで構成されたソース・ドレイン領域を有している。複数のメモリ用pチャネル型MISFETQp2の全ては、それぞれシリコンで構成されたソース・ドレイン領域を有し、複数のメモリ用nチャネル型MISFETQn2の全ては、それぞれシリコンで構成されたソース・ドレイン領域を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、MISFETを有する半導体装置およびその製造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、トランジスタを微細化させ、その性能向上を図ることが幅広く行われている。しかしながら、微細化のみによるトランジスタの性能の向上は、対性能比で見た場合のコストの上昇といった問題がある。
【0003】
そこで、微細化のみによるトランジスタの性能向上ばかりでなく、応力を制御してトランジスタの性能を向上させる手法が現れてきている。
【0004】
例えば、応力膜を用いてトランジスタの性能向上を図る手法の一つとして、国際公開2002/043151号パンフレット(特許文献1)に記載されているような、pチャネル型MISFET上に圧縮応力膜を形成し、nチャネル型MISFET上に引張応力膜を形成し、両方のMISFETのチャネルに応力を印加して性能向上を図る、いわゆるDSL(Dual Stress Liner)と呼ばれる技術がある。
【0005】
また、特開2008―053288号公報(特許文献2)には、pチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域にSiGeを適用して性能向上を図る技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2002/043151号パンフレット
【特許文献2】特開2008−053288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者の検討によれば、次のことが分かった。
【0008】
pチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域をシリコンゲルマニウムで構成し、
このシリコンゲルマニウムで構成されたソース・ドレイン領域によって、pチャネル型MISFETQp1のチャネル領域に圧縮応力を作用させるSiGe歪み技術により、pチャネル型MISFETのチャネル領域における正孔の移動度を増加させることができる。これにより、pチャネル型MISFETのチャネルを流れるオン電流を増加させることができる。
【0009】
しかしながら、このSiGe歪み技術においては、Si基板の溝内にシリコンゲルマニウムをエピタキシャル成長させることで、シリコンゲルマニウムで構成されたソース・ドレイン領域を形成することができるが、SiGe/Si界面付近に結晶欠陥が生じやすく、この結晶欠陥に起因して、MISFETのリーク電流が増加する可能性がある。従って、正孔の移動度を向上できる反面、リーク電流の増加が懸念されることになる。このため、様々な回路が混載された半導体装置において、このSiGe歪み技術を半導体装置全体に一律に適用すれば、半導体装置全体の性能が、かえって低下してしまう懸念がある。そこで、半導体装置全体の特性を考慮したトランジスタ設計を行うことが望まれる。
【0010】
また、上述のようなSiGe歪み技術を用いる場合には、歪みに対する移動度(正孔の移動度)の感度が高い<110>チャネルを用いることが好ましい。これは、SiGe歪み技術を用いたpチャネル型MISFETのチャネル領域を<110>チャネルとすることで、正孔の移動度の向上効果を高めることができ、オン電流の向上効果を高めることができるからである。
【0011】
しかしながら、本発明者が検討したところ、MISFETのソース・ドレイン領域上にサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層を形成した場合、特にnチャネル型MISFETにおいて、ソース・ドレイン領域上のニッケルシリサイド層からチャネル領域にNiSiが異常成長しやすいことが分かった。この異常成長は、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いてしまう。そして、本発明者が、この異常成長について詳細に検討したところ、ニッケルシリサイド層から基板Siの<110>方向に異常成長しやすいことが分かった。すなわち、チャネル領域として<110>チャネルを用いた場合には、ソース・ドレイン領域上のニッケルシリサイド層からチャネル領域にNiSiが特に異常成長しやすくなるのである。
【0012】
このため、上述のようなSiGe歪み技術を用いる効果を高めるためにチャネル方向を<110>方向にしようとすると、ソース・ドレイン領域上のニッケルシリサイド層からチャネル領域へのNiSiの異常成長に起因したリーク電流の増加の懸念が生じ、半導体装置全体の性能をかえって低下させてしまう可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、半導体装置の性能を向上させることができる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
代表的な実施の形態による半導体装置は、半導体基板上に複数のロジック用pチャネル型電界効果トランジスタと複数のロジック用nチャネル型電界効果トランジスタと複数のメモリ用pチャネル型電界効果トランジスタとが混載された半導体装置である。そして、前記複数のロジック用pチャネル型電界効果トランジスタのうちの少なくとも一部は、シリコンゲルマニウムで構成された第1ソース・ドレイン領域を有し、前記複数のロジック用nチャネル型電界効果トランジスタの全ては、それぞれシリコンで構成された第2ソース・ドレイン領域を有し、前記複数のメモリ用pチャネル型電界効果トランジスタの全ては、それぞれシリコンで構成された第3ソース・ドレイン領域を有している。
【0017】
また、代表的な他の実施の形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板のロジック第1領域にロジック用pチャネル型電界効果トランジスタを、前記半導体基板のロジック第2領域にロジック用nチャネル型電界効果トランジスタを、前記半導体基板のメモリ第1領域にメモリ用pチャネル型電界効果トランジスタを、前記半導体基板のメモリ第2領域にメモリ用nチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置の製造方法である。そして、(a)前記半導体基板を準備する工程を有する。更に、(b)前記(a)工程後、前記ロジック第1領域に前記ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタの第1ゲート電極を、前記ロジック第2領域に前記ロジック用nチャネル型電界効果トランジスタの第2ゲート電極を、前記メモリ第1領域の前記メモリ用pチャネル型電界効果トランジスタの第3ゲート電極を、前記メモリ第2領域に前記メモリ用nチャネル型電界効果トランジスタの第4ゲート電極を、前記半導体基板上にそれぞれゲート絶縁膜を介して形成する工程を有する。更に、(c)前記ロジック第1領域に溝を形成し、該溝内にシリコンゲルマニウム領域をエピタキシャル成長させることで、前記ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタのシリコンゲルマニウムで構成された第1ソース・ドレイン領域を形成する工程を有する。更に、(d)前記ロジック第2領域に前記ロジック用nチャネル型電界効果トランジスタの第2ソース・ドレイン領域を、前記メモリ第1領域に前記メモリ用pチャネル型電界効果トランジスタの第3ソース・ドレイン領域を、前記メモリ第2領域に前記メモリ用nチャネル型電界効果トランジスタの第4ソース・ドレイン領域を、それぞれ前記半導体基板に不純物をイオン注入することによって形成する工程を有する。そして、前記溝および前記シリコンゲルマニウム領域は、前記ロジック第1領域には形成されるが、前記ロジック第2領域、前記メモリ第1領域および前記メモリ第2領域には形成されない。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
代表的な実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図14】第1の熱処理の手法の好ましい一例を示す説明図である。
【図15】第1の熱処理の手法の好ましい一例を示す説明図である。
【図16】図13に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図20】本発明の一実施の形態である半導体装置の平面図である。
【図21】ソース・ドレイン領域上に形成したニッケルシリサイド層の異常成長の説明図である。
【図22】ソース・ドレイン領域上にニッケルシリサイド層を形成した場合の歩留まりを示すグラフである。
【図23】ソース・ドレイン領域上にニッケルシリサイド層を形成した場合のスタンバイリーク電流を示すグラフである。
【図24】本発明の一実施の形態である半導体装置に形成されたnチャネル型MISFETの説明図である。
【図25】<110>チャネルを有するnチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域上にニッケルシリサイド層を形成した場合と金属シリサイド層の歩留まりを示すグラフである。
【図26】<110>チャネルを有するnチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域上にニッケルシリサイド層を形成した場合と金属シリサイド層を形成した場合のスタンバイリーク電流を示すグラフである。
【図27】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図29】図28に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図32】図31に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0023】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図1〜図13、図16〜図19は、本発明の一実施の形態である半導体装置、ここではCMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置(後述の半導体装置SM1に対応)の製造工程中の要部断面図である。図14および図15は、第1の熱処理の手法の好ましい一例を示す説明図である。
【0025】
まず、図1に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。半導体基板1は、Si(100)基板であり、半導体基板1の面方位は(100)方位である。
【0026】
本実施の形態の半導体装置が形成される半導体基板1は、ロジック回路を構成するnチャネル型のMISFETが形成される領域であるロジックnMIS領域(ロジック第2領域)1Aと、ロジック回路を構成するpチャネル型のMISFETが形成される領域であるロジックpMIS領域(ロジック第1領域)1Bを有している。半導体基板1は、更に、メモリ(メモリセル)を構成するnチャネル型MISFETが形成される領域であるメモリnMIS領域(メモリ第2領域)1Cと、メモリ(メモリセル)を構成するpチャネル型MISFETが形成される領域であるメモリpMIS領域(メモリ第1領域)1Dとを有している。メモリnMIS領域1Cに形成されるnチャネル型MISFETとメモリpMIS領域1Dに形成されるpチャネル型MISFETは、SRAM(Static Random Access Memory)などのメモリセルアレイを構成する。ロジックnMIS領域1AおよびロジックpMIS領域1Bは、後述のロジック回路領域42a(後述の図20に示してある)の一部に対応し、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dは、後述のメモリ領域41(後述の図20に示してある)の一部に対応する。
【0027】
次に、半導体基板1の主面に素子分離領域2を形成する。素子分離領域2は酸化シリコンなどの絶縁体からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon)法などにより形成される。例えば、半導体基板1に形成された溝(素子分離溝)に埋め込まれた絶縁膜により、素子分離領域2を形成することができる。
【0028】
次に、半導体基板1のロジックnMIS領域1Aにp型ウエルPW1を、半導体基板1のロジックpMIS領域1Bにn型ウエルNW1を、半導体基板1のメモリnMIS領域1Cにp型ウエルPW2を、半導体基板1のメモリpMIS領域1Dにn型ウエルNW2を、それぞれ形成する。p型ウエルPW1,PW2およびn型ウエルNW1,NW2は、それぞれフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いたイオン注入によって形成することができる。
【0029】
次に、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより半導体基板1の表面を清浄化(洗浄)した後、図2に示されるように、半導体基板1の表面(すなわちp型ウエルPW1,PW2およびn型ウエルNW1,NW2の表面)上にゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜3は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。
【0030】
次に、半導体基板1の主面全面上に、すなわちゲート絶縁膜3上に、導電膜としてシリコン膜4を形成する。シリコン膜4は、多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)または非晶質シリコン膜とすることができるが、成膜時には非晶質シリコン膜であった場合でも、成膜後の熱処理(例えばソース・ドレイン用に導入した不純物の活性化アニール)で多結晶シリコン膜となる。シリコン膜4の膜厚(堆積膜厚)は、例えば50〜150nm程度とすることができる。
【0031】
次に、シリコン膜4上に、絶縁膜として酸化シリコン膜5を形成し、酸化シリコン膜5上に絶縁膜として窒化シリコン膜6を形成する。酸化シリコン膜5および窒化シリコン膜6は、例えばCVD法などを用いて形成することができ、酸化シリコン膜5の膜厚(堆積膜厚)は、例えば2〜8nm程度、窒化シリコン膜6の膜厚(堆積膜厚)は、例えば10〜60nm程度とすることができる。
【0032】
次に、図3に示されるように、シリコン膜4、酸化シリコン膜5および窒化シリコン膜6の積層膜をフォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を用いてパターニングする。これにより、パターニングされたシリコン膜4からなるゲート電極GE1とその上の酸化シリコン膜5および窒化シリコン膜6からなる積層構造(積層パターン)が、ロジックnMIS領域1Aのp型ウエルPW1の表面上にゲート絶縁膜3を介して形成される。また、パターニングされたシリコン膜4からなるゲート電極GE2とその上の酸化シリコン膜5および窒化シリコン膜6からなる積層構造(積層パターン)が、ロジックpMIS領域1Bのn型ウエルNW1の表面上にゲート絶縁膜3を介して形成される。また、パターニングされたシリコン膜4からなるゲート電極GE3とその上の酸化シリコン膜5および窒化シリコン膜6からなる積層構造(積層パターン)が、メモリnMIS領域1Cのp型ウエルPW2の表面上にゲート絶縁膜3を介して形成される。また、パターニングされたシリコン膜4からなるゲート電極GE4とその上の酸化シリコン膜5および窒化シリコン膜6からなる積層構造(積層パターン)が、メモリpMIS領域1Dのn型ウエルNW3の表面上にゲート絶縁膜3を介して形成される。
【0033】
次に、図4に示されるように、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4の側壁上を含む半導体基板1の主面上に、絶縁膜として酸化シリコン膜7を形成する。酸化シリコン膜7は、例えば熱酸化法などにより形成することができる。他の形態として、酸化シリコン膜7をCVD法で形成することもでき、この場合には、酸化シリコン膜7は窒化シリコン膜6上にも形成される。
【0034】
次に、半導体基板1の主面上に、すなわち酸化シリコン膜7上に、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4を覆うように、絶縁膜として窒化シリコン膜8を形成する。窒化シリコン膜8は酸化シリコン膜7よりも厚く、例えば、酸化シリコン膜7の膜厚(堆積膜厚)を4〜20nm程度とし、窒化シリコン膜8の膜厚(堆積膜厚)を50nm程度とすることができる。
【0035】
次に、半導体基板1の主面上に、すなわち窒化シリコン膜8上に、フォトレジスト膜を塗布し、このフォトレジスト膜を露光、現像することで、図5に示されるように、フォトレジストパターン(レジストパターン)PR1を形成する。フォトレジストパターンPR1は、ロジックnMIS領域1A、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dの窒化シリコン膜8上には形成されるが、ロジックpMIS領域1Bには形成されない。このため、ロジックnMIS領域1A、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dの窒化シリコン膜8はフォトレジストパターンPR1で覆われているが、ロジックpMIS領域1Bの窒化シリコン膜8はフォトレジストパターンPR1で覆われずに露出した状態となる。
【0036】
次に、フォトレジストパターンPR1で覆われていない領域(すなわちロジックpMIS領域1B)における窒化シリコン膜8と酸化シリコン膜7とを異方性エッチング(エッチバック)する。これにより、図5に示されるように、ロジックpMIS領域1Bのゲート電極GE2の側壁上に残存する酸化シリコン膜7および窒化シリコン膜8からなるサイドウォール(側壁絶縁膜、サイドウォールスペーサ)SW1を形成することができる。この異方性エッチング(エッチバック)によって、ロジックpMIS領域1Bでは、ゲート電極GE2の側壁上にサイドウォールSW1として残った部分以外の窒化シリコン膜8および酸化シリコン膜7は除去される。一方、ロジックnMIS領域1A、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dにおいては、フォトレジストパターンPR1がエッチングマスクとして機能するため、窒化シリコン膜8および酸化シリコン膜7はエッチングされずに残存する。その後、フォトレジストパターンPR1を除去する。
【0037】
次に、図6に示されるように、異方性と等方性のドライエッチングをどちらか単独で、若しくは組み合わせて行うことにより、ロジックpMIS領域1Bにおいて、半導体基板1(のn型ウエルNW1)を所定の深さまでエッチングして溝(基板リセス部、基板後退部)9を形成する。この際、ロジックpMIS領域1Bにおいて、ゲート電極GE2およびその上の酸化シリコン膜5および窒化シリコン膜6と、サイドウォールSW1とが、エッチングマスクとして機能する。このため、溝9は、ゲート電極GE2のゲート長方向に沿ったサイドウォールSW1の膜厚にほぼ相当する分、ゲート電極GE2から離間して形成される。但し、等方性のドライエッチングを行う場合、溝9は、サイドウォールSW1の端部(ゲート電極GE2に接する側とは反対側の端部)近傍に、サイドウォールSW1と若干オーバーラップする(平面的に重なる)ように形成される。溝9の底部および側壁では、Si基板領域(n型ウエルNW1を構成している部分の半導体基板1)が露出する。また、溝9を形成するためのこの等方性のドライエッチング工程では、ロジックnMIS領域1A、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dにおいては、窒化シリコン膜8がエッチングマスクとして機能するため、半導体基板1(p型ウエルPW1,PW2およびn型ウエルNW2)はエッチングされず、溝9に相当するものは形成されない。溝9の深さは、例えば20〜80nm程度とすることができる。
【0038】
次に、図7に示されるように、ロジックpMIS領域1Bの溝9内に、シリコンゲルマニウム領域(SiGe領域、シリコンゲルマニウム層、エピタキシャルシリコンゲルマニウム層)10をエピタキシャル成長させ、更に連続してシリコンゲルマニウム領域10上にシリコン領域(シリコン層、エピタキシャルシリコン層)11をエピタキシャル成長させる。溝9以外の領域では、窒化シリコン膜6、サイドウォールSW1あるいは窒化シリコン膜8で覆われている(すなわちSi基板領域が露出していない)ため、シリコンゲルマニウム領域10(およびその上のシリコン領域11)は形成(エピタキシャル成長)されない。従って、シリコンゲルマニウム領域10(およびその上のシリコン領域11)は、ロジックpMIS領域1Bに形成されるが、ロジックnMIS領域1A、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dには形成されない。
【0039】
シリコンゲルマニウム領域10は、例えば60〜80原子%のSiと20〜40原子%のGeとからなり、Si1−xGeと表記すると、例えば0.2≦x≦0.4となる。また、シリコンゲルマニウム領域10は、ロジックpMIS領域1Bの溝9内を埋め、半導体基板1の主面よりもシリコンゲルマニウム領域10が若干、例えば20nm、盛り上がる程度に形成することが好ましい。シリコンゲルマニウム領域10は、例えば40〜100nm程度の厚みに形成することができ、シリコン領域11は、例えば5〜20nm程度の厚みに形成することができる。
【0040】
次に、熱酸化法などによりシリコン領域11の表層部を酸化させることで、シリコン領域11の表面上に酸化シリコン膜(図示せず)を形成する。シリコン領域11の表面にこの酸化シリコン膜を形成するのは、後で熱燐酸などで窒化シリコン膜8を除去する際に、この酸化シリコン膜をエッチング保護膜として機能させることで、シリコン領域11やシリコンゲルマニウム領域10がエッチングされないようにするためである。
【0041】
次に、図8に示されるように、熱燐酸(熱リン酸)などを用いて、ロジックnMIS領域1A、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dの窒化シリコン膜8と、ロジックpMIS領域1BのサイドウォールSW1の窒化シリコン膜8とを、エッチングして除去する。この際、ゲート電極GE1〜GE4上の窒化シリコン膜6も除去され得る。
【0042】
次に、酸化シリコン膜7を、異方性エッチングまたはウェットエッチングなどによって除去する。この際、ゲート電極GE1〜GE4上の酸化シリコン膜5も除去され得る。また、シリコン領域11表面の上述した酸化シリコン膜も除去され得る。酸化シリコン膜7(および酸化シリコン膜5)を除去する際に、異方性エッチングを用いれば、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4の側壁上に酸化シリコン膜7を残すことができる(他の部分の酸化シリコン膜7は除去される)。ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4の側壁上に酸化シリコン膜7を残せば、後述のn型半導体領域EX1,EX3およびp型半導体領域EX2,EX4を形成するためのイオン注入の際に、ゲート電極GE1〜GE4の側壁上の酸化シリコン膜7によって、ゲート電極GE1〜GE4を保護することができる。
【0043】
次に、図9に示されるように、ロジックnMIS領域1Aにおけるp型ウエルPW1のゲート電極GE1の両側の領域にn型半導体領域(n型エクステンション領域)EX1を形成する。また、ロジックpMIS領域1Bにおけるn型ウエルNW1のゲート電極GE2の両側の領域にp型半導体領域(p型エクステンション領域)EX2を形成する。また、メモリnMIS領域1Cにおけるp型ウエルPW2のゲート電極GE3の両側の領域にn型半導体領域(n型エクステンション領域)EX3を形成する。また、メモリpMIS領域1Dにおけるn型ウエルNW2のゲート電極GE4の両側の領域にp型半導体領域(p型エクステンション領域)EX4を形成する。
【0044】
ロジックnMIS領域1Aにおいて、n型半導体領域EX1は、ゲート電極GE1をマスクとして機能させてn型不純物(例えばリンまたはヒ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE1に整合して形成され、ロジックpMIS領域1Bにおいて、p型半導体領域EX2は、ゲート電極GE2をマスクとして機能させてp型不純物(例えばホウ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE2に整合して形成される。また、メモリnMIS領域1Cにおいて、n型半導体領域EX3は、ゲート電極GE3をマスクとして機能させてn型不純物(例えばリンまたはヒ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE3に整合して形成され、メモリpMIS領域1Dにおいて、p型半導体領域EX4は、ゲート電極GE4をマスクとして機能させてp型不純物(例えばホウ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE4に整合して形成される。n型半導体領域EX1とn型半導体領域EX3とは、同じイオン注入で形成すれば、工程数を低減できるが、別々のイオン注入によって形成することもでき、同様に、p型半導体領域EX2とp型半導体領域EX3とは、同じイオン注入で形成すれば、工程数を低減できるが、別々のイオン注入によって形成することもできる。
【0045】
次に、図10に示されるように、半導体基板1の主面上に、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4を覆うように、絶縁膜として窒化シリコン膜13を形成する。窒化シリコン膜13の膜厚(堆積膜厚)は、例えば10〜40nm程度とすることができる。
【0046】
次に、窒化シリコン膜13を異方性エッチング(エッチバック)ことにより、図11に示されるように、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4の側壁上に残存する窒化シリコン膜13からなるサイドウォール(側壁絶縁膜、サイドウォールスペーサ)SW2を形成する。この異方性エッチング(エッチバック)によって、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4の側壁上にサイドウォールSW2として残った部分以外の窒化シリコン膜13は除去される。また、工程の変更などによって図10の工程段階までゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4の上部に上記窒化シリコン膜6が残存していた場合であっても、その窒化シリコン膜6は、サイドウォールSW2を形成するための異方性エッチング工程で除去され得る。
【0047】
次に、ロジックnMIS領域1Aにおけるp型ウエルPW1のゲート電極GE1およびサイドウォールSW2の両側の領域にn型半導体領域SD1を形成する。また、ロジックpMIS領域1Bにおけるシリコンゲルマニウム領域10(およびその上部のシリコン領域11)にp型半導体領域SD2を形成する。また、メモリnMIS領域1Cにおけるp型ウエルPW2のゲート電極GE3およびサイドウォールSW2の両側の領域にn型半導体領域SD3を形成する。また、メモリpMIS領域1Dにおけるn型ウエルNW2のゲート電極GE4およびサイドウォールSW2の両側の領域にp型半導体領域SD4を形成する。
【0048】
ロジックnMIS領域1Aにおいて、n型半導体領域SD1は、ゲート電極GE1およびその側壁上のサイドウォールSW2をイオン注入阻止マスクとして機能させてn型不純物(例えばリンまたはヒ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE1の側壁上のサイドウォールSW2に整合して形成される。また、ロジックpMIS領域1Bにおいて、p型半導体領域SD2は、ゲート電極GE2およびその側壁上のサイドウォールSW2をマスクとして機能させてp型不純物(例えばホウ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE2の側壁上のサイドウォールSW2に整合して形成される。また、メモリnMIS領域1Cにおいて、n型半導体領域SD3は、ゲート電極GE3およびその側壁上のサイドウォールSW2をマスクとして機能させてn型不純物(例えばリンまたはヒ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE3の側壁上のサイドウォールSW2に整合して形成される。また、メモリpMIS領域1Dにおいて、p型半導体領域SD4は、ゲート電極GE4およびその側壁上のサイドウォールSW2をマスクとして機能させてp型不純物(例えばホウ素)のイオン注入で形成するため、ゲート電極GE4の側壁上のサイドウォールSW2に整合して形成される。n型半導体領域SD1とn型半導体領域SD3とは、同じイオン注入で形成すれば、工程数を低減できるが、別々のイオン注入によって形成することもでき、同様に、p型半導体領域SD2とp型半導体領域SD4とは、同じイオン注入で形成すれば、工程数を低減できるが、別々のイオン注入によって形成することもできる。
【0049】
イオン注入後、導入した不純物の活性化のためのアニール処理(活性化アニール、熱処理)を行う。例えば900〜1100℃程度のスパイクアニールを行うことができる。これにより、n型半導体領域EX1,EX3、p型半導体領域EX2,EX4、n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD2,SD4などに導入された不純物を活性化することができる。
【0050】
また、シリコンゲルマニウム領域10の形成時に、シリコンゲルマニウム領域10にp型不純物(例えばホウ素)を導入(ドープ)して、シリコンゲルマニウム領域10全体をp型の半導体領域とすることもでき、同様に、シリコン領域11の形成時に、シリコン領域11にp型不純物(例えばホウ素)を導入(ドープ)して、シリコン領域11全体をp型の半導体領域とすることもできる。この場合には、ロジックpMIS領域1Bのシリコンゲルマニウム領域10に対してp型半導体領域SD2形成用のイオン注入を行なわなくともよく、シリコンゲルマニウム領域10とシリコン領域11とを合わせたもの全体を、ソース・ドレイン用のp型半導体領域SD2とみなすことができる。図11では、シリコンゲルマニウム領域10とシリコン領域11とを合わせたもの全体をソース・ドレイン用のp型半導体領域SD2とした場合が図示されている。シリコンゲルマニウム領域10の上層部分(およびシリコン領域11)にイオン注入でp型半導体領域SD2を形成した場合には、シリコンゲルマニウム領域10の下層部分が、シリコンゲルマニウム領域10の上層部分(p型半導体領域SD2となる部分)よりも低不純物濃度となっていてもよい。
【0051】
このようにして、図11に示されるような構造が得られる。すなわち、ロジックnMIS領域1Aに、ロジック用nチャネル型電界効果トランジスタとして、nチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qn1が形成される。また、ロジックpMIS領域1Bに、ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタとして、pチャネル型MISFETQp1が形成される。また、メモリnMIS領域1Cに、メモリ用nチャネル型電界効果トランジスタとして、nチャネル型MISFETQn2が形成される。また、メモリpMIS領域1Dに、メモリ用pチャネル型電界効果トランジスタとして、pチャネル型MISFETQp2が形成される。
【0052】
なお、図11では、ロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dのそれぞれに、MISFETが1つずつ示されているが、実際には、複数形成される。すなわち、実際には、ロジックnMIS領域1Aに複数のnチャネル型MISFETQn1が形成され、ロジックpMIS領域1Bに複数のpチャネル型MISFETQp1が形成され、メモリnMIS領域1Cに複数のnチャネル型MISFETQn2が形成され、メモリpMIS領域1Dに複数のpチャネル型MISFETQp2が形成されているが、図11では、代表して各1つずつが示されているのである。
【0053】
ロジックnMIS領域1Aにおいて、n型半導体領域SD1は、n型半導体領域EX1よりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深く形成されており、これにより、nチャネル型MISFETQn1のソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n型半導体領域SD1およびn型半導体領域EX1により形成される。また、ロジックpMIS領域1Bにおいて、p型半導体領域SD2は、p型半導体領域EX2よりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深く形成されており、これにより、pチャネル型MISFETQp1のソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p型半導体領域SD2およびp型半導体領域EX2により形成される。また、メモリnMIS領域1Cにおいて、n型半導体領域SD3は、n型半導体領域EX3よりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深く形成されており、これにより、nチャネル型MISFETQn2のソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n型半導体領域SD3およびn型半導体領域EX3により形成される。また、メモリpMIS領域1Dにおいて、p型半導体領域SD4は、p型半導体領域EX4よりも不純物濃度が高くかつ接合深さが深く形成されており、これにより、pチャネル型MISFETQp2のソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p型半導体領域SD4およびp型半導体領域EX4により形成される。
【0054】
従って、nチャネル型MISFETQn1,Qn2およびpチャネル型MISFETQp1,Qp2のソース・ドレイン領域は、LDD(Lightly doped Drain)構造を有している。n型半導体領域SD1は、nチャネル型MISFETQn1のソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)とみなすことができ、p型半導体領域SD2は、pチャネル型MISFETQp1のソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)とみなすことができる。また、n型半導体領域SD3は、nチャネル型MISFETQn2のソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)とみなすことができ、p型半導体領域SD4は、pチャネル型MISFETQp2のソースまたはドレイン用の半導体領域(ソース・ドレイン領域)とみなすことができる。
【0055】
次に、必要に応じて、半導体基板1の主面上に、絶縁膜として酸化シリコン膜などを形成してから、この酸化シリコン膜をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、後述する金属シリサイド層23の形成を阻止すべき領域にのみ残す工程を行ってもよい。例えば、半導体基板1の主面上に上記シリコン膜4を利用してポリシリコン抵抗素子(図示せず)を形成した場合には、後述の金属シリサイド層23を形成しない部分のポリシリコン抵抗素子上に上記酸化シリコン膜を残すようにする。これにより、後述の金属シリサイド層23を形成すべきでない領域での金属シリサイド層23の形成を防止することができる。なお、図11には、後述の金属シリサイド層23を形成すべきでない領域(例えばポリシリコン抵抗素子など)が示されていないため、この工程は、図示を省略している。
【0056】
次に、RCA洗浄などを用いて半導体基板1の表面の清浄化を行う。また、RCA洗浄の後、フッ酸などを用いて、半導体基板1の表面の自然酸化膜の除去工程を行う。
【0057】
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、ロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1C、メモリpMIS領域1Dのゲート電極GE1〜GE4およびソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD2,SD4)の表面に、低抵抗の金属シリサイド層(後述の金属シリサイド層23に対応)を形成する。以下に、この金属シリサイド層(後述の金属シリサイド層23に対応)の形成工程について詳細に説明する。
【0058】
上記自然酸化膜の除去工程によってゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4、n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD2,SD4の表面を露出させてから、図12に示されるように、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4、n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD2,SD4上を含む半導体基板1の主面(全面)上にニッケル合金膜21を形成する。すなわち、n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD2,SD4上を含む半導体基板1上に、ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4を覆うように、ニッケル合金膜21が形成される。ニッケル合金膜21は、例えばスパッタリング法を用いて形成(堆積)することができる。
【0059】
ニッケル合金膜21は、ニッケル(Ni)を含有する合金膜であるが、ニッケル(Ni)に加えて、更に、Pt(白金),Pd(パラジウム),Hf(ハフニウム),V(バナジウム),Al(アルミニウム),Er(エルビウム),Yb(イッテルビウム),Co(コバルト)からなる群から選択された少なくとも一種以上の元素を含有している。
【0060】
以下では、ニッケル合金膜21が含有するNi以外の金属元素をMeで表すものとし、ニッケル合金膜21は、Ni1−yMe合金膜と表記することができる。Meは、Pt,Pd,Hf,V,Al,Er,Yb,Coからなる群から選択された少なくとも一種以上の元素である。
【0061】
また、本実施の形態において、ニッケル合金膜21は、より好ましくはニッケル(Ni)と白金(Pt)とを含有する合金膜であり、最も好ましくはNi(ニッケル)とPt(白金)の合金膜であるNi−Pt合金膜(ニッケル白金合金膜)であり、NiとPtの比(原子比)を1−y:yとすると、Ni1−yPt合金膜と表記することができる。すなわち、上記MeがPtであることが最も好ましいのである。
【0062】
ニッケル合金膜21中のPtの濃度としては、3〜7原子%の範囲が好ましく、成膜したニッケル合金膜21の膜厚(堆積膜厚)としては7〜20nmの範囲が好ましい。Ni1−yPt合金膜におけるNiの割合(比率)は、(1−y)×100%であり、Ni1−yPt合金膜におけるPtの割合(比率)は、y×100%であるため、ニッケル合金膜21がNi1−yPt合金膜の場合は、Ni1−yPtにおけるyは、0.03≦y≦0.07の範囲が好ましい。なお、本願で元素の割合(比率、濃度)を%で示す場合には、原子%である。
【0063】
次に、ニッケル合金膜21上に、バリア膜22を形成(堆積)する。バリア膜22は、スパッタリング法などによって形成することができ、例えば窒化チタン(TiN)膜からなる。バリア膜22は、ニッケル合金膜21の酸化防止などの機能を有しており、後述の第1の熱処理を行ってもニッケル合金膜21と反応し難い膜である。バリア膜22は、上記機能を有しているため、形成した方がより好ましいが、不要であれば、バリア膜22の形成を省略することもできる。
【0064】
次に、半導体基板1に第1の熱処理(アニール処理)を施す。この第1の熱処理により、ゲート電極GE1〜GE4を構成するシリコン膜(上記シリコン膜4に対応)とニッケル合金膜21、n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD4を構成する単結晶シリコンとニッケル合金膜21、およびp型半導体領域SD2を構成するシリコン領域11(場合によってはシリコンゲルマニウム領域10の上層部分も含む)とニッケル合金膜21とを選択的に反応させる。これにより、図13に示されるように、金属・半導体反応層である金属シリサイド層23aを形成する。但し、図13には、第1の熱処理後、後述するようにバリア膜22および未反応のニッケル合金膜21を除去した段階が示されている。
【0065】
具体的には、第1の熱処理によって、ゲート電極GE1〜GE4のそれぞれの上部(上層部分)とニッケル合金膜21とが反応することにより、ゲート電極GE1〜GE4のそれぞれの表面(上層部分)に金属シリサイド層23aが形成される。また、第1の熱処理によって、n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD4のそれぞれの上部(上層部分)とニッケル合金膜21とが反応することにより、n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD4のそれぞれの表面(上層部分)に金属シリサイド層23aが形成される。また、第1の熱処理によって、ロジックpMIS領域1Bにおいては、シリコン領域11(場合によってはシリコンゲルマニウム領域10の上層部分も含む)とニッケル合金膜21とが反応することにより、p型半導体領域SD2(シリコンゲルマニウム領域10)の表面に金属シリサイド層23aが形成される。ここで、ニッケル合金膜21がニッケル白金合金膜の場合には、金属シリサイド層23aはNiおよびPtのシリサイド(ニッケル白金シリサイド、白金添加ニッケルシリサイド)からなる。第1の熱処理では、ニッケル合金膜21の全厚みを反応(消費)させて金属シリサイド層23aを形成しても、ニッケル合金膜21の全厚みの一部(すなわちニッケル合金膜21の下層部分のみ)を反応(消費)させて金属シリサイド層23aを形成してもよい。
【0066】
このように、第1の熱処理で、ゲート電極GE1〜GE4、n型半導体領域SD1,SD3、p型半導体領域SD2,SD4とニッケル合金膜21を選択的に反応させて、ニッケル合金膜21を構成する金属元素のシリサイドからなる金属シリサイド層23aを形成するが、第1の熱処理を行った段階では、金属シリサイド層23aは、Ni1−yMeSi相にはなっていない。すなわち、第1の熱処理を行った段階では、金属シリサイド層23aは、Ni1−yMeSi相よりもメタルリッチ(すなわちNiとMeを合わせたものの含有率がNi1−yMeSi相よりも多い)なシリサイド相となっており、好ましくは(Ni1−yMeSi相(ここで0<y<1)となっている。従って、第1の熱処理は、金属シリサイド層23aが(Ni1−yMeSi相となるが、Ni1−yMeSi相とはならないような熱処理温度で行なうことが好ましい。
【0067】
この第1の熱処理は、低温短時間アニールが好ましい。具体的には、第1の熱処理の熱処理温度は、200〜300℃の範囲内が好ましく、240〜280℃の範囲内がより好ましく、また、第1の熱処理の熱処理時間は、10〜60秒の範囲内が好ましい。また、第1の熱処理時の雰囲気は、好ましくは窒素(N)ガス雰囲気であるが、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または不活性ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気中で行うこともできる。
【0068】
本実施の形態では、第1の熱処理が過剰とならないように、第1の熱処理の熱処理温度と熱処理時間を上記範囲に制御することが重要である。但し、ニッケル合金膜21とゲート電極GE1〜GE4、n型半導体領域SD1,SD3、p型半導体領域SD2,SD4とを反応させる観点から、第1の熱処理の熱処理温度は、200℃以上、熱処理時間は10秒以上が好ましい。
【0069】
図14および図15は、第1の熱処理の手法の好ましい一例を示す説明図である。
【0070】
第1の熱処理を行うには、まず、図14に示されるように、窒素ガス(または不活性ガス)雰囲気とされた熱処理用のチャンバCMB内において、一対のヒータブロック(加熱ブロック)HB1,HB2の間に、半導体基板1に対応する半導体ウエハWFを配置する。各ヒータブロックHB1,HB2は、ヒータ(加熱機構)などが内蔵されることで、所望の温度に加熱可能に構成されるとともに、半導体ウエハWFに向かって窒素ガス(または不活性ガス)を噴出(放出)可能な複数の噴出孔(噴出口)H1を有している。図14では、理解を簡単にするために、ヒータブロックHB1,HB2の噴出孔H1から窒素ガス(または不活性ガス)を噴出した場合の窒素ガス(または不活性ガス)の流れを、矢印で模式的に示してある。
【0071】
半導体ウエハWFを熱処理(第1の熱処理)するためには、ヒータブロックHB1,HB2を所定の温度に加熱してから、加熱されたヒータブロックHB1,HB2を図14の状態から図15の状態のように半導体ウエハWFの表面および裏面に近づけ、近接(但し非接触)したヒータブロックHB1,HB2からの熱によって半導体ウエハWFを加熱する。この際、ヒータブロックHB1,HB2の噴出孔H1から、加熱された窒素ガス(または不活性ガス)が半導体ウエハWFに対して吹きつけられ、これも半導体ウエハWFの加熱に寄与する。なお、図15においては、図面が見づらくなるのを防ぐために、ヒータブロックHB1,HB2の噴出孔H1から半導体ウエハWFに向かって吹き付けられる窒素ガス(または不活性ガス)の流れは、図示を省略している。
【0072】
半導体ウエハWFを所定の時間、所定の温度に加熱(熱処理)した後、図15の状態から図14の状態のようにヒータブロックHB1,HB2を半導体ウエハWFから離れさせることで、半導体ウエハWFの熱処理(加熱)が終了する。このようにすることで、比較的低温(好ましくは200〜300℃の範囲内、より好ましくは240〜280℃の範囲内)で短時間(好ましくは10〜60秒)の第1の熱処理を行うことができる。第1の熱処理の熱処理温度は、ヒータブロックHB1,HB2の温度を調整することで制御することができ、第1の熱処理の熱処理時間は、ヒータブロックHB1,HB2を半導体ウエハWFの表面および裏面に近接させる時間を調整することで制御することができる。
【0073】
第1の熱処理をランプアニールなどで行うこともできるが、260℃程度の低温の熱処理をランプ加熱で行おうとすると、熱処理温度の制御性はあまりよくない。それに対して、上述のように加熱されたヒータブロックHB1,HB2を半導体ウエハWFに近づけることで半導体ウエハWFを加熱すれば、260℃程度の低温の熱処理であっても、熱処理温度の制御性を向上させることができ、第1の熱処理をより的確に行うことができるようになる。
【0074】
第1の熱処理によって金属シリサイド層23aを形成した後、例えば硫酸過水などを用いたウェット洗浄処理を行うことにより、バリア膜22と、未反応のニッケル合金膜21(すなわち第1の熱処理工程にてゲート電極GE1〜GE4、n型半導体領域SD1,SD3、p型半導体領域SD2,SD4と反応しなかったニッケル合金膜21)とを除去する。この際、未反応のニッケル合金膜21が除去されるが、ゲート電極GE1〜GE4、n型半導体領域SD1,SD3、p型半導体領域SD2,SD4の表面上に金属シリサイド層23aを残存させる。上記図13には、このウェット洗浄処理によって、バリア膜22および未反応のニッケル合金膜21を除去した段階が示されている。
【0075】
次に、半導体基板1に第2の熱処理(アニール処理)を施す。この第2の熱処理を行うことにより、図16に示されるように、第1の熱処理で形成された(Ni1−yMeSi相の金属シリサイド層23aは、Ni1−yMeSi相の金属シリサイド層23に変わり、金属元素(NiとMeを足したもの)とSiとの組成比が1:1の化学量論比により近い、安定な金属シリサイド層23が形成される。
【0076】
すなわち、(Ni1−yMeSi相の金属シリサイド層23aと、ゲート電極GE1〜GE4、n型半導体領域SD1,SD3、p型半導体領域SD2,SD4のSiとを、第2の熱処理で更に反応させる。これにより、(Ni1−yMeSi相よりも安定で低抵抗率のNi1−yMeSi相からなる金属シリサイド層23を、ゲート電極GE1〜GE4、n型半導体領域SD1,SD3、p型半導体領域SD2,SD4の表面上(上層部分)に形成する。従って、第2の熱処理前の金属シリサイド層23aと第2の熱処理後の金属シリサイド層23とは、いずれも、Niおよび金属元素Meのシリサイドからなるが、金属シリサイド層23aは(Ni1−yMeSi相であり、金属シリサイド層23はNi1−yMeSi相である。
【0077】
第2の熱処理は、金属シリサイド層23aをNi1−yMeSi相の金属シリサイド層23にすることができるような温度で行う必要があるため、第2の熱処理の熱処理温度は、少なくとも第1の熱処理の熱処理温度よりも高くする必要がある。また、金属シリサイド層23がNi1−yMeSi相よりも高抵抗率のNi1−yMeSi相にはならないようにするため、第2の熱処理は、金属シリサイド層23がNi1−yMeSi相となるが、Ni1−yMeSi相とはならないような熱処理温度で行なうことが好ましい。具体的には、第2の熱処理の熱処理温度は、400〜600℃の範囲内が好ましく、500〜550℃の範囲内がより好ましく、また、第2の熱処理の熱処理時間は、30秒以下が好ましい。また、Ni1−yMeSi相の金属シリサイド層23をより確実に形成する観点から、第2の熱処理の熱処理時間は5秒以上が好ましい。また、第2の熱処理時の雰囲気は、好ましくは窒素(N)ガス雰囲気であるが、不活性ガス(例えばアルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガスまたはヘリウム(He)ガス)または不活性ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気中で行うこともできる。また、第2の熱処理は、第1の熱処理よりも高温の熱処理であるため、熱処理温度の制御がしやすく、例えばランプアニールなどのRTA法を用いて行なうことができる。また、第1の熱処理と同様に、第2の熱処理も、上記図14および図15を参照して説明した熱処理法で行うこともできる。
【0078】
なお、Ni1−yMeSi相は、(Ni1−yMeSi相およびNi1−yMeSi相よりも低抵抗率である。第2の熱処理工程以降も(半導体装置の製造終了まで)、金属シリサイド層23は低抵抗のNi1−yMeSi相のまま維持され、製造された半導体装置では(例えば半導体基板1を個片化して半導体チップ(後述の半導体装置SM1)となった状態でも)、金属シリサイド層23は低抵抗のNi1−yMeSi相となっている。
【0079】
このようにして、ロジックnMIS領域1Aのnチャネル型MISFETQn1、ロジックpMIS領域1Bのpチャネル型MISFETQp1、メモリnMIS領域1Cのnチャネル型MISFETQn2およびメモリpMIS領域1Dのpチャネル型MISFETQp2の各ゲート電極GE1〜GE4と各ソース・ドレイン領域の表面(上層部)に、Ni1−yMeSi相の金属シリサイド層23が形成される。
【0080】
nチャネル型MISFETQn1,Qn2およびpチャネル型MISFETQp1,Qp2の各ゲート電極GE1,GE2,GE3,GE4上に形成された金属シリサイド層23は、Niと金属元素MeとSiとを構成元素とするNi1−yMeSi相の金属シリサイド層である。同様に、nチャネル型MISFETQn1,Qnおよびpチャネル型MISFETQp2のソース・ドレイン領域(すなわちn型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD4)上に形成された金属シリサイド層23も、Niと金属元素MeとSiとを構成元素とするNi1−yMeSi相の金属シリサイド層である。
【0081】
しかしながら、ロジックpMIS領域1Bのpチャネル型MISFETQp1のソース・ドレイン領域(すなわちp型半導体領域SD2)上に形成された金属シリサイド層23は、Niと金属元素MeとSiに加えて、更にGeを含有する場合もある。これは、第1の熱処理で金属シリサイド層23aを形成した際、あるいは第2の熱処理で金属シリサイド層23を形成した際に、シリコンゲルマニウム領域10も反応(金属シリサイド層23a,23の生成)に寄与した場合である。
【0082】
すなわち、金属シリサイド層23を形成するのに十分な厚みをシリコン領域11が有していた場合、ロジックpMIS領域1Bでは、第1の熱処理および第2の熱処理において、シリコン領域11は反応(シリサイド化反応)するが、シリコンゲルマニウム領域10は反応しない。この場合は、ロジックpMIS領域1Bのpチャネル型MISFETQp1のソース・ドレイン領域(すなわちp型半導体領域SD2)上に形成された金属シリサイド層23は、nチャネル型MISFETQn1,Qn2およびpチャネル型MISFETQp2のソース・ドレイン領域(すなわちn型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD4)上に形成された金属シリサイド層23と同様の組成を有し、Geは含有しない。その代わりに、ロジックpMIS領域1Bにおいて、シリコンゲルマニウム領域10と金属シリサイド層23との間に、薄いシリコン領域11が残る場合もある。
【0083】
一方、金属シリサイド層23を形成するのに十分な厚みをシリコン領域11が有していない場合、ロジックpMIS領域1Bでは、第1の熱処理および第2の熱処理の両方または第2の熱処理のみにおいて、シリコン領域11だけでなく、シリコンゲルマニウム領域10の一部(上層部分)も反応する。この場合は、ロジックpMIS領域1Bのpチャネル型MISFETQp1のソース・ドレイン領域(すなわちp型半導体領域SD2)上に形成された金属シリサイド層23は、Niと金属元素MeとSiに加えて、更にGeを含有する。すなわち、ロジックpMIS領域1Bのpチャネル型MISFETQp1のソース・ドレイン領域(すなわちp型半導体領域SD2)上に形成された金属シリサイド層23は、Ni1−yMeSi1−zGe相の金属シリサイド層23となり、シリコンゲルマニウム領域10とNi1−yMeSi1−zGe相の金属シリサイド層23との間に、シリコン領域11は残存しない。また、第1の熱処理において、シリコン領域11だけでなく、シリコンゲルマニウム領域10の一部(上層部分)もニッケル合金膜21と反応した場合には、pチャネル型MISFETQp1のソース・ドレイン領域(すなわちp型半導体領域SD2)上に形成された金属シリサイド層23aは、Niと金属元素MeとSiに加えてGeも含有し、(Ni1−yMeSi1−zGe相の金属シリサイド層23aとなる。(Ni1−yMeSi1−zGe相の金属シリサイド層23aやNi1−yMeSi1−zGe相の金属シリサイド層23は、金属シリコンゲルマニウム、金属ゲルマニウムシリサイドあるいは金属シリコンジャーマナイドなどと呼ぶこともできる。
【0084】
このように、ロジックpMIS領域1Bのpチャネル型MISFETQp1のソース・ドレイン領域(すなわちp型半導体領域SD2)上に形成された金属シリサイド層23a,23は、Geを含む場合もあり、その場合には、nチャネル型MISFETQn1,Qn2およびpチャネル型MISFETQp2のソース・ドレイン領域上に形成された金属シリサイド層23a,23のSiの一部をGeに置換した組成となる。
【0085】
このようにして金属シリサイド層23が形成された後、図17に示されるように、半導体基板1の主面全面上に、すなわちロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dを含む半導体基板1の主面上に、絶縁膜31を形成する。この絶縁膜31は、ゲート電極GE1〜GE4およびサイドウォールSW1,SW2を覆うように、金属シリサイド層23上を含む半導体基板1上に形成される。絶縁膜31は、例えば窒化シリコンからなり、プラズマCVD法などを用いて形成することができ、その膜厚(堆積膜厚)は、20〜50nm程度とすることができる。
【0086】
絶縁膜31は、引張応力膜または圧縮応力膜のいずれかとすれば、より好ましい。絶縁膜31が引張応力膜であれば、絶縁膜31(引張応力膜)によってnチャネル型MISFETQn1,Qn2のチャネル領域の電子の移動度を増加させることができ、それによってnチャネル型MISFETQn1,Qn2のオン電流を増加させることができる。また、絶縁膜31が圧縮応力膜であれば、絶縁膜31(圧縮応力膜)によってpチャネル型MISFETQp1,Qp2のチャネル領域の正孔の移動度を増加させることができ、それによってpチャネル型MISFETQp1,Qp2のオン電流を増加させることができる。
【0087】
絶縁膜31として、窒化シリコンからなる引張応力膜を形成する場合は、例えば、シラン(SiH)、一酸化二窒素(NO)およびアンモニア(NH)を用いて、250℃から400℃程度の温度でプラズマCVDで窒化シリコン膜を成膜した後、紫外線を照射しながら400℃から550℃程度の熱処理を施すことにより、この窒化シリコン膜からなる引張応力膜を形成することができる。また、絶縁膜31として、窒化シリコンからなる圧縮応力膜を形成する場合は、例えば、シラン(SiH)、一酸化二窒素(NO)およびアンモニア(NH)を用いて、350℃から500℃程度の温度でプラズマCVDで窒化シリコン膜を成膜することで、この窒化シリコン膜からなる圧縮応力膜を形成することができる。
【0088】
なお、本実施の形態および以下の実施の形態2において、引張応力膜とは、その引張応力膜を形成した半導体基板に引張応力を与える膜(絶縁膜)であり、半導体基板上に引張応力膜が形成された領域では、その引張応力膜によって半導体基板に引張応力が作用している(与えられている、生じている)。nチャネル型MISFETが形成された半導体基板(におけるチャネル領域)に引張応力膜によって引張応力が作用すると、電子の移動度が増加するなどして、nチャネル型MISFETのチャネルを流れるオン電流を増加させることができる。また、引張応力膜を、引張の応力膜という場合もある。一方、圧縮応力膜とは、その圧縮応力膜を形成した半導体基板に圧縮応力を与える膜(絶縁膜)であり、半導体基板上に圧縮応力膜が形成された領域では、その圧縮応力膜によって半導体基板に圧縮応力が作用している(与えられている、生じている)。pチャネル型MISFETが形成された半導体基板(におけるチャネル領域)に圧縮応力膜によって圧縮応力が作用すると、正孔の移動度が増加するなどして、pチャネル型MISFETのチャネルを流れるオン電流を増加させることができる。また、圧縮応力膜を、圧縮の応力膜という場合もある。
【0089】
次に、半導体基板1の主面全面上に、すなわち絶縁膜31上に、絶縁膜として層間絶縁膜32を形成する。層間絶縁膜32の膜厚は、絶縁膜31の膜厚よりも厚い。層間絶縁膜32の材料としては、例えば酸化シリコンなどを用いることができる。層間絶縁膜32の形成後、層間絶縁膜32の表面をCMP法により研磨するなどして、層間絶縁膜32の上面を平坦化する。
【0090】
次に、層間絶縁膜32上にフォトリソグラフィ法で形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、層間絶縁膜32および絶縁膜31をドライエッチングすることにより、図18に示されるように、絶縁膜31および層間絶縁膜32からなる積層膜にコンタクトホール(貫通孔、孔)CNTを形成する。
【0091】
コンタクトホール22を形成するには、まず、絶縁膜31に比較して層間絶縁膜32がエッチングされやすい条件で層間絶縁膜32のドライエッチングを行い、絶縁膜31をエッチングストッパ膜として機能させることで、層間絶縁膜32にコンタクトホールCNTを形成する。それから、層間絶縁膜32に比較して絶縁膜31がエッチングされやすい条件でコンタクトホールCNTの底部の絶縁膜31をドライエッチングして除去することで、貫通孔としてのコンタクトホールCNTが形成される。
【0092】
次に、コンタクトホールCNT内に、タングステン(W)などからなる導電性のプラグ(接続用導体部)PGを形成する。プラグPGを形成するには、例えば、コンタクトホールCNTの内部(底部および側壁上)を含む層間絶縁膜32上に、バリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、このバリア導体膜上にタングステン膜などからなる主導体膜をコンタクトホールCNTを埋めるように形成し、層間絶縁膜32上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグPGを形成することができる。なお、図面の簡略化のために、図18では、プラグPGを構成するバリア導体膜および主導体膜(タングステン膜)を一体化して示してある。
【0093】
ロジックnMIS領域1Aにおいて、nチャネル型MISFETQnのソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD1)の上部に形成されたプラグPGは、そのソース・ドレイン領域の表面上の金属シリサイド層23と接して電気的に接続される。また、ロジックpMIS領域1Bにおいて、pチャネル型MISFETQp1のソース・ドレイン領域(p型半導体領域SD2)の上部に形成されたプラグPGは、そのソース・ドレイン領域の表面上の金属シリサイド層23と接して電気的に接続される。また、メモリnMIS領域1Cにおいて、nチャネル型MISFETQn2のソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD3)の上部に形成されたプラグPGは、そのソース・ドレイン領域の表面上の金属シリサイド層23と接して電気的に接続される。また、メモリpMIS領域1Dにおいて、pチャネル型MISFETQp2のソース・ドレイン領域(p型半導体領域SD4)の上部に形成されたプラグPGは、そのソース・ドレイン領域の表面上の金属シリサイド層23と接して電気的に接続される。また、図示はしないが、ゲート電極GE1〜GE4の上部にプラグPGを形成することもできる。
【0094】
次に、図19に示されるように、プラグPGが埋め込まれた層間絶縁膜32上に、ストッパ絶縁膜(エッチングストッパ用絶縁膜)33および配線形成用の絶縁膜(層間絶縁膜)34を順次形成する。ストッパ絶縁膜33は、絶縁膜34への溝加工の際にエッチングストッパとなる膜であり、絶縁膜34に対してエッチング選択性を有する材料を用い、例えば、ストッパ絶縁膜33を窒化シリコン膜とし、絶縁膜34を酸化シリコン膜とすることができる。
【0095】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線を形成する。まず、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜34およびストッパ絶縁膜33の所定の領域に配線溝(図19において配線M1が埋め込まれた溝の部分)を形成する。それから、半導体基板1の主面上(すなわち配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜34上)にバリア導体膜(例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜など)を形成する。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成し、銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の銅めっき膜、シード層およびバリアメタル膜をCMP法により除去して、銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。なお、図面の簡略化のために、図19では、配線M1を構成する銅めっき膜、シード層およびバリア導体膜を一体化して示してある。
【0096】
配線M1は、プラグPGを介して、nチャネル型MISFETQn1,Qn2およびpチャネル型MISFETQp1,Qp2のソース・ドレイン領域やゲート電極GE1〜GE4などと電気的に接続されている。その後、デュアルダマシン法などにより2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。また、配線M1はダマシン配線に限定されず、配線用の導電体膜をパターニングして形成することもでき、例えばタングステン配線またはアルミニウム配線などとすることもできる。その後、半導体基板1をダイシングなどで切断(分割)して、半導体装置(後述の半導体装置SM1に対応)に個片化される。
【0097】
このようにして製造された本実施の形態の半導体装置は、同一の半導体基板1上にロジック用のpチャネル型MISFETQp1とロジック用のnチャネル型MISFETQn1とメモリ用のpチャネル型MISFETQp2とメモリ用のnチャネル型MISFETQn2とが、それぞれ複数形成(混載)された半導体装置である。
【0098】
この本実施の形態の半導体装置の特徴について説明する。
【0099】
図20は、上述のようにして製造された本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)SM1の一例を示す平面図である。
【0100】
本実施の形態の半導体装置SM1は、SRAM(Static Random Access Memory)などのメモリセルアレイが形成されたメモリ領域(メモリ回路領域、メモリセルアレイ領域、SRAM領域)41と、メモリ以外の回路(周辺回路)が形成された周辺回路領域42とを有している。周辺回路領域42は、ロジック回路が形成されたロジック回路領域42aを含んでいる。メモリ領域41と周辺回路領域42との間や、周辺回路領域42同士の間は、半導体装置SM1の内部配線層(上記配線M1およびそれよりも上層の配線)を介して必要に応じて電気的に接続されている。また、半導体装置SM1の主面(表面)の周辺部には、半導体装置SM1の主面の四辺に沿って複数のパッド電極(ボンディングパッド)PDが形成されている。各パッド電極PDは、半導体装置SM1の内部配線層を介してメモリ領域41や周辺回路領域42などに電気的に接続されている。なお、図20は平面図であるが、理解を簡単にするために、メモリ領域41およびロジック回路領域42aにハッチングを付してある。
【0101】
半導体装置SM1において、メモリ領域41および周辺回路領域42(ロジック回路領域42aを含む)のそれぞれには、複数のMISFETが形成されている。すなわち、メモリ領域41には、複数のメモリ用pチャネル型MISFETおよび複数のメモリ用nチャネル型MISFETが形成され、ロジック回路領域42aには、複数のロジック用pチャネル型MISFETおよび複数のロジック用nチャネル型MISFETが形成されている。
【0102】
上記ロジックnMIS領域1Aは、ロジック回路領域42aにおいてnチャネル型のMISFETが形成される領域に対応し、上記ロジックpMIS領域1Bは、ロジック回路領域42aにおいてpチャネル型のMISFETが形成される領域に対応する。また、上記メモリnMIS領域1Cは、メモリ領域41においてnチャネル型のMISFETが形成される領域に対応し、上記メモリpMIS領域1Dは、メモリ領域41においてpチャネル型のMISFETが形成される領域に対応する。従って、ロジック回路領域42aには、ロジック用の上記nチャネル型MISFETQn1およびロジック用の上記pチャネル型MISFETQp1がそれぞれ複数形成されており、メモリ領域41には、メモリ用の上記nチャネル型MISFETQn2およびメモリ用の上記pチャネル型MISFETQp2がそれぞれ複数形成されている。
【0103】
上記pチャネル型MISFETQp1は、ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタであり、シリコンゲルマニウム(シリコンゲルマニウム領域10)で構成されたソース・ドレイン領域(p型半導体領域SD2)を有している。このシリコンゲルマニウム領域10によって、pチャネル型MISFETQp1のチャネル領域(ゲート電極GE2の直下の基板領域(n型ウエルNW1))に圧縮応力を作用させ(印加し)、それによって、正孔の移動度(チャネル領域における正孔の移動度)を増加させることができる(この技術をSiGe歪み技術と称する)。これにより、pチャネル型MISFETQp1のチャネルを流れるオン電流を増加させることができ、高速動作化を図ることができる。シリコンゲルマニウム領域10がチャネル領域に圧縮応力を作用させるのは、シリコンゲルマニウム(シリコンゲルマニウム領域10)の格子定数がシリコン(n型ウエルNW1を含む半導体基板1)の格子定数よりも大きいことに主に起因している。
【0104】
一方、上記nチャネル型MISFETQn1は、ロジック用nチャネル型電界効果トランジスタであり、シリコンで構成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD1)を有している。また、上記pチャネル型MISFETQp2は、メモリ用pチャネル型電界効果トランジスタであり、シリコンで構成されたソース・ドレイン領域(p型半導体領域SD4)を有している。また、上記nチャネル型MISFETQn2は、メモリ用nチャネル型電界効果トランジスタであり、シリコンで構成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD3)を有している。すなわち、上記pチャネル型MISFETQp1は、SiGe歪み技術を適用したMISFETであり、上記nチャネル型MISFETQn1,Qn2および上記pチャネル型MISFETQp2は、SiGe歪み技術を適用していないMISFETである。
【0105】
上記pチャネル型MISFETQp1のシリコンゲルマニウム(シリコンゲルマニウム領域10)で構成されたソース・ドレイン領域(p型半導体領域SD2)は、上述したように、半導体基板1に設けた溝9内にエピタキシャル成長したシリコンゲルマニウム(シリコンゲルマニウム領域10)で形成されている。一方、上記nチャネル型MISFETQn1.n2および上記pチャネル型MISFETQp2のシリコンで構成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD1,SD3およびp型半導体領域SD4)は、上述したように、半導体基板1に不純物を導入(イオン注入)することで形成されている。
【0106】
上述のようなSiGe歪み技術を用いる場合には、歪みに対する移動度(正孔の移動度)の感度が高い<110>チャネルを用いることが好ましい。すなわち、チャネル領域が圧縮応力によって歪んだときの正孔の移動度の変化量は、<110>方向が他の方向に比べて高いことから、SiGe歪み技術によって移動度の向上およびそれに起因したオン電流の向上を図るには、<110>チャネルを用いることが好ましいのである。ここで、<110>チャネルとは、チャネル領域のゲート長方向が結晶Siの<110>方向(すなわちウエル領域を含む半導体基板1を構成するシリコンの<110>方向)であることに対応する。pチャネル型MISFETQp1のようなSiGe歪み技術を用いたpチャネル型MISFETのチャネル領域を<110>チャネルとすることで、正孔の移動度の向上効果を高めることができ、オン電流の向上効果を高めることができる。
【0107】
一方、nチャネル型MISFETに対しては、上述のようなSiGe歪み技術を適用しないことが好ましい。これは、nチャネル型MISFETのキャリアは電子であるが、nチャネル型MISFETのチャネル領域に圧縮応力が作用すると、キャリアである電子の移動度は、かえって低下してしまうためである。このため、上記nチャネル型MISFETQn1,Qn2は、上述のようなSiGe歪み技術を適用しておらず、シリコンで構成されたソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD1,SD3)を有している。
【0108】
このように、pチャネル型MISFETに対して上述のようなSiGe歪み技術を適用し、かつnチャネル型MISFETに対して上述のようなSiGe歪み技術を適用しないことで、nチャネル型MISFETのチャネル領域における電子の移動度を低下させることなく、pチャネル型MISFETのチャネル領域における正孔の移動度を向上させることができる。従って、nチャネル型MISFETのオン電流を低下させることなく、pチャネル型MISFETのオン電流を向上させることができるようになる。
【0109】
しかしながら、上述のようなSiGe歪み技術においては、シリコンゲルマニウム領域をSi基板の溝内にエピタキシャル成長させる際に、SiGe/Si界面付近に結晶欠陥が生じやすく、この結晶欠陥に起因して、MISFETのリーク電流が増加する可能性がある。従って、SiGe歪み技術を適用したpチャネル型MISFETは、SiGe歪み技術を適用しないpチャネル型MISFETに比べて、正孔の移動度を向上できる反面、リーク電流の増加が懸念されることになる。
【0110】
このため、同一の半導体基板(半導体チップ)に複数のpチャネル型MISFETと複数のnチャネル型MISFETとを混載する場合、全てのpチャネル型MISFETにSiGe歪み技術を一律に適用すると、全てのpチャネル型MISFETでのリーク電流の増加による半導体装置の性能の低下が懸念される。
【0111】
そこで、本実施の形態では、同一の半導体基板(半導体チップ)に複数のpチャネル型MISFETと複数のnチャネル型MISFETとを混載する場合に、全てのpチャネル型MISFETにSiGe歪み技術を一律に適用するのではなく、複数のpチャネル型MISFETに対して、SiGe歪み技術を適用するものと適用しないものとを使い分ける。すなわち、リーク電流の増加の可能性よりも、正孔の移動度の向上(すなわちオン電流の増加や動作速度の向上)を優先させたいpチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用し、一方、リーク電流の増加をできるだけ抑えたいpチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用しないようにするのである。そして、nチャネル型MISFETは、全てSiGe歪み技術を適用しないようにする。これにより、各MISFETに対して要求される特性に合わせて、各MISFETを設計することができるため、半導体装置全体の性能を向上させることができる。
【0112】
本実施の形態では、このような設計思想で半導体装置を製造するが、具体的には、次のようにSiGe歪み技術の適用と非適用とを使い分けている。
【0113】
半導体装置SM1のメモリ領域41には、複数のpチャネル型MISFETと複数のnチャネル型MISFETとが形成されているが、メモリ領域41に形成されている全てのpチャネル型MISFETおよびnチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用しない。これは、SRAMなどのメモリ(メモリセル)では、他の回路(回路素子)に比べて低消費電力化の要求が特に高いため、できるだけリーク電流を低減させることが望ましいためである。本実施の形態では、メモリ領域41に形成されている全てのpチャネル型MISFETおよびnチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用しないことで、リーク電流を抑制してスタンバイ電流を小さくすることができ、メモリの低消費電力化を図ることができる。
【0114】
従って、メモリ領域41には、上記nチャネル型MISFETQn2および上記pチャネル型MISFETQp2がそれぞれ複数形成されているが、上記ロジックpMIS領域1Bに形成されている上記pチャネル型MISFETQp1のようなSiGe歪み技術を適用したMISFETは、メモリ領域41には形成されていない。
【0115】
一方、本実施の形態では、半導体装置SM1のロジック回路領域42aには、複数のpチャネル型MISFETと複数のnチャネル型MISFETとが形成されている。そして、ロジック回路領域42aに形成されている全てのnチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用しないが、ロジック回路領域42aに形成されている複数のpチャネル型MISFETのうちの少なくとも一部のpチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用する。これは、ロジック素子(ロジック回路)には、高速動作の要求が高いため、できるだけキャリアの移動度を向上させることが望ましいためである。本実施の形態では、ロジック回路領域42aに形成されている複数のpチャネル型MISFETの少なくとも一部のpチャネル型MISFETにSiGe歪み技術を適用することで、そのpチャネル型MISFETが使用されたロジック素子(ロジック回路)の動作を高速化することができ、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0116】
従って、ロジック回路領域42aに形成されている複数のpチャネル型MISFETのうちの少なくとも一部のpチャネル型MISFETは、SiGe歪み技術を適用した上記ロジックpMIS領域1Bの上記pチャネル型MISFETQp1と同様の構成を有している。また、ロジック回路領域42aに形成されている複数のnチャネル型MISFETは、SiGe歪み技術を適用しないため、上記ロジックnMIS領域1Aに形成された上記nチャネル型MISFETQn1と同様の構成を有している。
【0117】
そして、本実施の形態では、半導体装置SM1には複数のnチャネル型MISFETが形成されているが、半導体装置SM1に形成されている全てのnチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用しない。これにより、半導体装置SM1に形成されているnチャネル型MISFETのチャネル領域における電子の移動度の低下を防止でき、nチャネル型MISFETのオン電流や動作速度の低下を防止できる。
【0118】
従って、半導体装置SM1に形成されている複数のnチャネル型MISFETは、全てのnチャネル型MISFETに対してSiGe歪み技術を適用しないため、上記ロジックnMIS領域1Aに形成された上記nチャネル型MISFETQn1、あるいは上記メモリnMIS領域1Cに形成された上記nチャネル型MISFETQn2と同様の構成を有している。
【0119】
このように、本実施の形態の半導体装置SM1は、半導体装置SM1を構成する半導体基板1に複数のロジック用pチャネル型MISFETと複数のロジック用nチャネル型MISFETと複数のメモリ用pチャネル型MISFETと複数のメモリ用nチャネル型MISFETとが混載されている。そして、半導体基板1上に形成された複数のロジック用pチャネル型MISFETのうちの少なくとも一部(上記pチャネル型MISFETQp1)は、SiGe歪み技術を適用して、シリコンゲルマニウム(シリコンゲルマニウム領域10)で構成されたソース・ドレイン領域を有している。しかしながら、半導体基板1に形成された複数のロジック用nチャネル型MISFET、複数のメモリ用pチャネル型MISFETおよび複数のメモリ用nチャネル型MISFETの全ては、SiGe歪み技術を適用せず、それぞれシリコンで構成されたソース・ドレイン領域を有しているのである。
【0120】
このように、本実施の形態では、同一の半導体基板1(半導体装置SM1)にロジック回路領域42aの複数のロジック用pチャネル型MISFETとメモリ領域41の複数のメモリ用pチャネル型MISFETとを混載する場合に、ロジック回路領域42aのロジック用pチャネル型MISFETに選択的にSiGe歪み技術を適用し、メモリ領域41のメモリ用pチャネル型MISFETにはSiGe歪み技術を適用しないようにする。すなわち、リーク電流の増加の可能性よりも、正孔の移動度の向上(すなわちオン電流の増加や動作速度の向上)を優先させたいロジック回路領域42aのロジック用pチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用する。そして、低消費電力化のためにリーク電流の増加をできるだけ抑えたいメモリ領域41のメモリ用pチャネル型MISFETには、SiGe歪み技術を適用しないようにする。こうすることで、高速動作が優先されるロジック回路領域42aのロジック素子(ロジック回路)の高速動作化と、低消費電力化が優先されるメモリ領域41のメモリ回路の消費電力の低減とを実現することができ、各回路の種類に応じて要求される特性に合わせて、各MISFETを設計することができるため、半導体装置全体の性能を向上させることができる。
【0121】
また、半導体基板1上に形成された複数のロジック用pチャネル型MISFETの全てに対して、SiGe歪み技術を適用して、シリコンゲルマニウムで構成されたソース・ドレイン領域を有した構成(上記pチャネル型MISFETQp1と同様の構成)とすれば、複数のロジック用pチャネル型MISFETの全てについて、正孔の移動度の向上(すなわちオン電流の増加や動作速度の向上)を図ることができる。この場合、ロジック素子(ロジック回路)の動作速度の向上効果を最大化することができる。
【0122】
一方、半導体基板1上に形成された複数のロジック用pチャネル型MISFETにおいて、高速動作化が優先されるロジック用pチャネル型MISFETとリーク電流の抑制が優先されるロジック用pチャネル型MISFETとが混在する場合がある。この場合、半導体基板1上に形成された複数のロジック用pチャネル型MISFETのうち、一部のロジック用pチャネル型MISFET(高速動作化が優先されるロジック用pチャネル型MISFET)のみに対してSiGe歪み技術を適用して、シリコンゲルマニウムで構成されたソース・ドレイン領域を有した構成(上記pチャネル型MISFETQp1と同様の構成)とする。そして、残りのロジック用pチャネル型MISFETは、SiGe歪み技術を適用せず、シリコンで構成されたソース・ドレイン領域を有した構成(上記pチャネル型MISFETQp2と同様の構成)とする。これにより、ロジック素子(ロジック回路)のリーク電流を抑制しながら、ロジック素子(ロジック回路)の動作速度を向上することができる。ロジック用pチャネル型MISFETのうち、特に高速動作が求められるのは、演算回路に用いられるロジック用pチャネル型MISFETである。このため、半導体基板1上に形成された複数のロジック用pチャネル型MISFETのうち、一部のロジック用pチャネル型MISFETのみに対してSiGe歪み技術を適用する場合であっても、演算回路に用いられるロジック用pチャネル型MISFETは、SiGe歪み技術を適用して、シリコンゲルマニウムで構成されたソース・ドレイン領域を有した構成(pチャネル型MISFETQp1と同様の構成)とすることが好ましい。
【0123】
図21は、ソース・ドレイン領域SD上に形成したニッケルシリサイド層123の異常成長の説明図である。
【0124】
図21には、サリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123を形成した段階(上記図16に相当する工程段階)のnチャネル型MISFETの要部断面図が示されている。図21において、本実施の形態のp型ウエルPW1,PW2に相当するp型ウエルPW上に、ゲート絶縁膜3を介して本実施の形態のゲート電極GE1,GE3に相当するゲート電極GEが形成され、ゲート電極GEの側壁上にサイドウォールSW2が形成されている。そして、p型ウエルPWに、本実施の形態のn型半導体領域EX1,EX3に相当するエクステンション領域EXと本実施の形態のn型半導体領域SD1,SD3に相当するソース・ドレイン領域SDとが形成され、ソース・ドレイン領域SD上にサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123が形成されている。
【0125】
本発明者が、nチャネル型MISFETが形成された半導体装置について丹念に調べたところ、ソース・ドレイン領域SD上にサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123を形成すると、図21に示されるように、NiSi相のニッケルシリサイド層123からチャネル領域にNiSi(ニッケルダイシリサイド)が異常成長しやすいことが分かった。図21では、NiSiが異常成長しやすい領域を、NiSi異常成長領域123cとして模式的に示してある。このようなNiSi異常成長領域123cの発生は、本発明者の実験(半導体装置の断面観察および断面の組成分析など)により確認された。そして、ニッケルシリサイド層123からチャネル領域にNiSiが異常成長していると、MISFETのソース・ドレイン間のリーク電流の増大を招いてしまうことも分かった。このNiSi異常成長領域123cは、pチャネル型MISFETよりもnチャネル型MISFETで顕著に発生する現象である。
【0126】
そして、本発明者が、このNiSi異常成長領域123cについて、更に詳細に検討したところ、NiSi異常成長領域123cは、ニッケルシリサイド層123から基板Siの<110>方向に成長しやすいことが分かった。すなわち、チャネル領域として<110>チャネルを用いた場合には、チャネル方向(ゲート長方向)が<110>方向ではない場合に比べて、ニッケルシリサイド層123からチャネル領域にNiSiが特に異常成長しやすくなるのである。このため、nチャネル型MISFETのチャネル領域として<110>チャネルを用いた場合には、NiSi異常成長領域123cに起因したリーク電流の増大を招く可能性がある。
【0127】
図22は、上記図21のようにnチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域SD上にサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123を形成した場合において、nチャネル型MISFETのチャネル領域が<100>チャネルである場合と、<110>チャネルである場合の歩留まりを示すグラフである。図23は、SRAMを構成するnチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域SD上にサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123を形成した場合において、SRAMを構成するnチャネル型MISFETのチャネル領域が<100>チャネルである場合と、<110>チャネルである場合のスタンバイリーク電流(待機時のリーク電流)を示すグラフである。但し、図22および図23のグラフの縦軸は任意単位(arbitrary unit)である。
【0128】
上述したように、nチャネル型MISFETのチャネル領域が<110>チャネルである場合には、<100>チャネルである場合に比べて上記NiSi異常成長領域123cが発生しやすいため、このNiSi異常成長領域123cに起因して、<110>チャネルの場合には、<100>チャネルの場合に比べて、図22に示されるように、歩留まりが低下し、また、図23に示されるように、リーク電流が増加する。
【0129】
NiSi異常成長領域123cに起因したリーク電流の増大を防止するために、nチャネル型MISFETに対して<110>チャネルを使用しないことも考えられる。しかしながら、本実施の形態では、ロジック回路領域42aに、SiGe歪み技術を適用した上記pチャネル型MISFETQp1を形成しており、このpチャネル型MISFETQp1のチャネル領域には、正孔の移動度の向上効果を高めるために、<110>チャネルを用いることが好ましい。このため、ロジック回路領域42aに形成された複数のpチャネル型MISFETQp1は、それぞれ<110>チャネルを有していることが好ましい。
【0130】
このため、MISFET間のレイアウトのしやすさや、半導体装置SM1全体の面積をできるだけ縮小するという観点から、ロジック回路領域42aに形成される上記nチャネル型MISFETQn1のチャネル領域も、<110>チャネルにする要求がある。同様の観点から、メモリ領域41に形成される上記nチャネル型MISFETQn2のチャネル領域も、<110>チャネルにする要求がある。しかしながら、ロジック回路領域42aに形成されるnチャネル型MISFETQn1やメモリ領域41に形成されるnチャネル型MISFETQn2のチャネル領域も<110>チャネルとすると、ソース・ドレイン領域SD上にサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123を形成すると、上記NiSi異常成長領域123cが発生する懸念がある。
【0131】
そこで、本発明者は、nチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域上に形成する金属シリサイド層について、いかなる金属シリサイドを用いれば、たとえ<110>チャネルを用いたとしても、上記NiSi異常成長領域123cのような異常成長部の発生を防止できるかについて検討した。その結果、ニッケルシリサイド層123の代わりに、上記金属シリサイド層23を用いることで、nチャネル型MISFETのチャネル領域に、たとえ<110>チャネルを用いたとしても、金属シリサイド層23からチャネル領域への上記NiSi異常成長領域123cのような異常成長部の発生を防止できることが分かった。
【0132】
図24は、本実施の形態の半導体装置SM1に形成されたnチャネル型MISFETの説明図(要部平面図)であり、上記nチャネル型MISFETQn1,Qn2に対応するものである。図24において、p型ウエルPW1,PW2に対応するp型ウエルPW上に、ゲート絶縁膜3を介してゲート電極GE1,GE3に対応するゲート電極GEが形成され、ゲート電極GEの側壁上にサイドウォールSW2が形成されている。そして、p型ウエルPWに、n型半導体領域EX1,EX3に対応するエクステンション領域EXとn型半導体領域SD1,SD3に対応するソース・ドレイン領域SDとが形成され、ソース・ドレイン領域SD上に金属シリサイド層23が形成されている。金属シリサイド層23の構成および製造方法については、上述した部分については、繰り返しの説明はできるだけ省略する。
【0133】
上記ニッケルシリサイド層123を形成した場合には、上記NiSi異常成長領域123cが生じやすいが、本実施の形態のように、金属シリサイド層23が、Niに加えて更に、Pt,Pd,Hf,V,Al,Er,Yb,Coからなる群から選択された少なくとも一種以上の元素(すなわち金属元素Me)、より好ましくはPtも含有することで、金属シリサイド層23からチャネル領域への異常成長部の発生を防止できる。
【0134】
これは、図24に模式的に示されるように、金属シリサイド層23と、シリコンで構成された半導体基板1との界面近傍に、金属シリサイド層23に添加されている金属元素Me(より好ましくはPt)が偏析するためである。なお、p型ウエルPW、エクステンション領域EXおよびソース・ドレイン領域SDは、半導体基板1に不純物を導入(イオン注入)することにより形成されているので、シリコンで構成された半導体基板1の一部(シリコン基板領域)とみなすことができる。図24では、金属元素Me(Pt,Pd,Hf,V,Al,Er,Yb,Coからなる群から選択された少なくとも一種以上の元素、より好ましくはPt)が偏析した領域を、偏析領域23bとして模式的に示してある。なお、偏析領域23bは、RBS(ラザフォード後方散乱分析)によって確認された。
【0135】
金属シリサイド層23とシリコン基板領域(半導体基板1)との界面近傍に、金属シリサイド層23内の金属元素Meの濃度よりも金属元素Meが高濃度に存在(偏析)する偏析領域23bがあると、この偏析領域23bがバリアとなって、金属シリサイド層23からチャネル領域へのNi1−yMeSiの異常成長(上記NiSi異常成長領域123cに対応するもの)を防止することができる。このため、本実施の形態では、金属シリサイド層23とシリコン基板領域との界面近傍に偏析領域23bを形成しやすい金属元素Meを、金属シリサイド層23が含有している。偏析領域23bの形成によるNi1−yMeSiの異常成長防止効果を得るためには、金属シリサイド層23がNiに加えて含有する金属元素Meは、Pt,Pd,Hf,V,Al,Er,Yb,Coからなる群から選択された少なくとも一種以上の元素が好ましく、Ptが最も好ましい。
【0136】
また、上記異常成長を防止するためには、金属シリサイド層23とシリコン基板領域(半導体基板1)との界面近傍に偏析領域23bが形成されることが重要であるが、実際には、図24に模式的に示されるように、金属シリサイド層23とシリコン基板領域(半導体基板1)との界面だけでなく、金属シリサイド層23の外表面(金属シリサイド層23の上面、下面および側面)全体に偏析領域23bが形成され得る。この場合であっても、少なくとも金属シリサイド層23とシリコン基板領域(半導体基板1)との界面近傍に偏析領域23bが形成されていれば、上記異常成長を防止する効果を得ることができる。
【0137】
また、上記NiSi異常成長領域123cは、nチャネル型MISFETに比べてpチャネル型MISFETでは発生しにくいため、上記偏析領域23bは、少なくとも上記nチャネル型MISFETQn1,Qn2のソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD1,SD3)上に形成された金属シリサイド層23において生じていれば、上記異常成長防止効果を得ることができる。
【0138】
しかしながら、実際には、nチャネル型MISFETQn1,Qn2の金属シリサイド層23と同工程でpチャネル型MISFETQp1,Qp2の金属シリサイド層23も形成される。このため、nチャネル型MISFETQn1,Qn2のソース・ドレイン領域(n型半導体領域SD1,SD3)上に形成された金属シリサイド層23と同様に、pチャネル型MISFETQp1,Qp2のソース・ドレイン領域(p型半導体領域SD2,SD4)上に形成された金属シリサイド層23においても、金属シリサイド層23とシリコン基板領域との界面近傍に偏析領域23bが形成されている。また、ゲート電極GE1〜GE4上に形成された金属シリサイド層23においても、金属シリサイド層23の外表面(金属シリサイド層23の上面、下面および側面)全体に偏析領域23bが形成され得る。
【0139】
また、サリサイドプロセスで金属シリサイド層23を形成する際に、金属シリサイド層23とシリコン基板領域との界面近傍に偏析領域23bができるだけ形成されやすい製造条件で、金属シリサイド層23を形成することが好ましい。この観点から、上述した第1の熱処理および第2の熱処理の熱処理条件は設定されている。
【0140】
すなわち、第1の熱処理を行って上記金属シリサイド層23aを形成した段階で、金属シリサイド層23aとシリコン基板領域との界面近傍に金属元素Meが偏析しやすいような熱処理条件で、第1の熱処理を行うのである。第1の熱処理が過剰であると、金属元素Meは偏析せずに金属シリサイド層23a内に十分に拡散してしまうので、第1の熱処理が過剰とならないように、第1の熱処理の熱処理温度と熱処理時間を制御し、低温短時間アニールとすることが好ましい。これにより、第1の熱処理を行って金属シリサイド層23aを形成した段階で、金属シリサイド層23aとシリコン基板領域(半導体基板1)との界面近傍に金属元素Meが偏析している。第1の熱処理の熱処理温度や熱処理時間の好ましい範囲などについては、上述したので、ここではその説明は省略する。
【0141】
また、第1の熱処理を行った段階で、金属シリサイド層23aとシリコン基板領域との界面近傍に金属元素Meが偏析するようにした後、第2の熱処理を行った段階でも、金属シリサイド層23とシリコン基板領域との界面近傍に金属元素Meが偏析した状態が維持されやすいような熱処理条件で、第2の熱処理を行うのである。第2の熱処理が過剰であると、金属元素Meは偏析せずに金属シリサイド層23内に十分に拡散してしまうので、第2の熱処理が過剰とならないように、第2の熱処理の熱処理温度と熱処理時間を制御することが好ましい。これにより、第2の熱処理を行って金属シリサイド層23を形成した段階で、金属シリサイド層23とシリコン基板領域(半導体基板1)との界面近傍に金属元素Meが偏析している。第2の熱処理の熱処理温度や熱処理時間の好ましい範囲などについては、上述したので、ここではその説明は省略する。
【0142】
このように、本実施の形態では、金属シリサイド層23とシリコン基板領域との界面近傍に偏析領域23bを形成しやすい金属元素Meを金属シリサイド層23に含有させ、更に好ましくは偏析領域23bが形成されやすい製造条件で金属シリサイド層23を形成することで、金属シリサイド層23からチャネル領域へのNi1−yMeSiの異常成長を防止することができる。これにより、MISFETのリーク電流を低減することができ、半導体装置の性能や信頼性を向上させることができる。
【0143】
このため、本実施の形態では、<110>チャネルを用いたとしても、金属シリサイド層23からチャネル領域へのNi1−yMeSiの異常成長を防止できるため、リーク電流の低下を防止しながら、<110>チャネルを有するnチャネル型MISFETを半導体装置SM1に形成することができる。従って、リーク電流の低下を防止しながら、ロジック回路領域42aやメモリ領域41に、<110>チャネルを有する上記nチャネル型MISFETQn1,Qn2を設けることができるため、MISFET間のレイアウトがしやすくなり、また半導体装置SM1全体の面積縮小を図ることができる。このため、ロジック回路領域42aに、<110>チャネルを有する上記nチャネル型MISFETQn1が形成されている場合や、メモリ領域41に、<110>チャネルを有する上記nチャネル型MISFETQn2が形成されている場合に、本実施の形態を適用すれば、効果が大きい。
【0144】
図25は、<110>チャネルを有するnチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域SD上に、上記図21のようにサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123を形成した場合と、上記図22(本実施の形態)のように金属シリサイド層23を形成した場合とについての歩留まりを示すグラフである。図26は、SRAMを構成しかつ<110>チャネルを有するnチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域SD上に、上記図21のようにサリサイドプロセスでニッケルシリサイド層123を形成した場合と、上記図22(本実施の形態)のように金属シリサイド層23を形成した場合とについてのスタンバイリーク電流(待機時のリーク電流)を示すグラフである。但し、図25および図26のグラフの縦軸は任意単位(arbitrary unit)である。
【0145】
上述したように、nチャネル型MISFETのソース・ドレイン領域SD上に本実施の形態のような金属シリサイド層23を形成することで、ニッケルシリサイド層123を形成した場合に比べて、<110>チャネルを用いた場合でも上記NiSi異常成長領域123cのような異常成長を防止できるため、図25に示されるように歩留まりを向上させることができ、また、図26に示されるようにリーク電流を低減させることができる。
【0146】
(実施の形態2)
図27〜図32は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0147】
本実施の形態の半導体装置の製造工程は、金属シリサイド層23を形成するまでは、上記実施の形態1と同様であるのでここではその説明は省略する。
【0148】
本実施の形態では、上記実施の形態と同様にして上記図16の構造(金属シリサイド層23が形成された構造)を得た後、図27に示されるように、半導体基板1の主面全面上に、すなわちロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dを含む半導体基板1の主面上に、絶縁膜31を形成する。この絶縁膜31は、ゲート電極GE1〜GE4およびサイドウォールSW1,SW2を覆うように、金属シリサイド層23上を含む半導体基板1上に形成される。
【0149】
本実施の形態においては、絶縁膜31は、引張応力膜または圧縮応力膜のいずれかであり、以下では絶縁膜31が圧縮応力膜の場合について主として説明する。
【0150】
絶縁膜31は、例えば窒化シリコンからなり、プラズマCVD法などを用いて形成することができ、その膜厚(堆積膜厚)は、20〜50nm程度とすることができる。絶縁膜31として、窒化シリコンからなる圧縮応力膜を形成する場合は、例えば、シラン(SiH)、一酸化二窒素(NO)およびアンモニア(NH)を用いて、350℃から500℃程度の温度でプラズマCVDで窒化シリコン膜を成膜することで、この窒化シリコン膜からなる圧縮応力膜を形成することができる。
【0151】
絶縁膜31を形成した後、ロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dを含む半導体基板1の主面全面上に、すなわち絶縁膜31上に、絶縁膜51を形成する。絶縁膜31として最適なのは、SiOに代表される酸化シリコン膜(例えばNSG(ノンドープシリケートガラス)膜)であるが、後で形成する絶縁膜52に対してエッチングの選択性が得られるものであれば、これには限定されない。但し、後で形成される絶縁膜52と絶縁膜51とでエッチングの選択性を得られるようにするために、絶縁膜51は、絶縁膜52とは異なる材料により形成されていることが必要である。例えば、後で形成する絶縁膜52を窒化シリコン膜とする場合には、絶縁膜51として酸化シリコン膜が好適であるが、それ以外にも、炭化シリコン膜、炭窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜を絶縁膜51として用いることができる。絶縁膜51の膜厚(形成膜厚)は、6〜20nm程度が好ましい。
【0152】
次に、図28に示されるように、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dを覆い、かつロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cを露出するフォトレジスト膜PR2を、フォトリソグラフィ法を用いて絶縁膜51上に形成する。それから、このフォトレジスト膜PR2をエッチングマスクとして、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cにある絶縁膜51およびその下の絶縁膜31をドライエッチングして除去する。この図28のドライエッチング工程では、フォトレジスト膜PR2がエッチングマスクとして機能するので、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dの絶縁膜51およびその下の絶縁膜31は、エッチングされずに残存する。その後、フォトレジスト膜PR2をアッシングなどで除去する。
【0153】
図28のドライエッチング工程で絶縁膜51および絶縁膜31をドライエッチングする際のドライエッチング対象領域(絶縁膜31がエッチングされて除去される領域)と非対象領域(絶縁膜31がエッチングされずに残存する領域)との境目(境界)の下には、金属シリサイド層23を保護するために、素子分離領域2が位置することとが好ましい。
【0154】
なお、絶縁膜31が圧縮応力膜ではなく引張応力膜の場合には、フォトレジスト膜PR2がロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cを覆いかつロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dを露出するようにし、このフォトレジスト膜PR2をエッチングマスクとして、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dにある絶縁膜51および絶縁膜31をドライエッチングして除去すればよい。
【0155】
次に、図29に示されるように、半導体基板1の主面全面上に、すなわちロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dを含む半導体基板1の主面上に、絶縁膜52を形成する。上記絶縁膜31が圧縮応力膜の場合は、絶縁膜52は、引張応力膜とする。絶縁膜52は、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cにおいては、ゲート電極GE1,GE3およびその側壁上のサイドウォールSW2を覆うように、金属シリサイド層23上を含む半導体基板1上に形成され、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dにおいては、絶縁膜51およびその下の絶縁膜31の積層膜が存在するため、絶縁膜51上に形成される。
【0156】
絶縁膜52は、例えば窒化シリコンからなり、プラズマCVD法などを用いて形成することができ、その膜厚(堆積膜厚)は、20〜50nm程度とすることができる。絶縁膜52として、窒化シリコンからなる引張応力膜を形成する場合は、例えば、シラン(SiH)、一酸化二窒素(NO)およびアンモニア(NH)を用いて、250℃から400℃程度の温度でプラズマCVDで窒化シリコン膜を成膜した後、紫外線を照射しながら400℃から550℃程度の熱処理を施すことにより、この窒化シリコン膜からなる引張応力膜を形成することができる。
【0157】
なお、上記絶縁膜31が圧縮応力膜ではなく引張応力膜の場合には、絶縁膜52は、圧縮応力膜とすればよい。
【0158】
次に、図30に示されるように、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cを覆いかつロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dを露出するフォトレジスト膜PR3をフォトリソグラフィ法を用いて形成する。それから、このフォトレジスト膜PR3をエッチングマスクとしてロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dにある絶縁膜52をドライエッチングして除去する。このドライエッチング工程では、絶縁膜51をエッチングストッパと機能させる。
【0159】
すなわち、図30のドライエッチング工程では、フォトレジスト膜PR3がエッチングマスクとして機能するので、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cの絶縁膜52は、エッチングされずに残存する。また、図30のドライエッチング工程では、絶縁膜51に比較して絶縁膜52がエッチングされやすい条件で絶縁膜52のドライエッチングを行い、絶縁膜51をエッチングストッパ膜として機能させる。このため、フォトレジスト膜PR3で覆われていないロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dにおいて、絶縁膜51およびその下の絶縁膜31が残存する。このため、金属シリサイド層23は、ロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dのいずれにおいても、露出しない。図30のドライエッチング工程において、絶縁膜51がエッチングストッパ(絶縁膜31のエッチング保護膜)として機能するため、絶縁膜31がエッチングされるのを防止でき、絶縁膜31の膜厚が減少するのを防止することができる。図30のドライエッチング工程の後、フォトレジスト膜PR3をアッシングなどで除去する。
【0160】
また、図30のドライエッチング工程では、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dにおいて、オーバーエッチングにより絶縁膜51の一部(上層部分)がエッチング(除去)される場合もあり得る。但し、図30のドライエッチング工程が終了した段階で、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dにおいて、絶縁膜31上に絶縁膜51の少なくとも一部(下層部分)が層状に残存して、絶縁膜31が露出されないようにすることが好ましい。これにより、図30のドライエッチング工程で、絶縁膜31がエッチングされるのを的確に防止することができる。
【0161】
なお、絶縁膜51が引張応力膜ではなく圧縮応力膜の場合(すなわち絶縁膜31が圧縮応力膜ではなく引張応力膜の場合)には、フォトレジスト膜PR3がロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dを覆いかつロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cを露出するようにする。そして、このフォトレジスト膜PR3をエッチングマスクとし、絶縁膜51をエッチングストッパとして機能させてロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cにある絶縁膜52をドライエッチングして除去すればよい。
【0162】
以降の工程は、上記実施の形態1とほぼ同様である。すなわち、図31に示されるように、半導体基板1の主面全面上に、すなわちロジックnMIS領域1A、ロジックpMIS領域1B、メモリnMIS領域1CおよびメモリpMIS領域1Dを含む半導体基板1の主面上に、層間絶縁膜32を形成する。層間絶縁膜32は、絶縁膜51および絶縁膜31の積層膜上と絶縁膜52上に形成され、層間絶縁膜32の膜厚は、絶縁膜31,51,52の各膜厚よりも厚い。層間絶縁膜32の形成後、層間絶縁膜32の表面をCMP法により研磨するなどして、層間絶縁膜32の上面を平坦化する。
【0163】
次に、層間絶縁膜32上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとしたドライエッチングにより、コンタクトホールCNTを形成する。この際、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cにおいては、層間絶縁膜32および絶縁膜52からなる積層膜に、この積層膜を貫通するコンタクトホールCNTが形成され、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dにおいては、層間絶縁膜32、絶縁膜51および絶縁膜31からなる積層膜に、この積層膜を貫通するコンタクトホールCNTが形成される。
【0164】
コンタクトホールCNTは、次のようにして形成することができる。まず、絶縁膜31,52に比較して層間絶縁膜32および絶縁膜51がエッチングされやすい条件で層間絶縁膜32のドライエッチングを行い、絶縁膜31および絶縁膜52をエッチングストッパ膜として機能させることで、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cの層間絶縁膜32とロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dの層間絶縁膜32および絶縁膜51とにコンタクトホールCNTを形成する。それから、層間絶縁膜32および絶縁膜51に比較して絶縁膜31,52がエッチングされやすい条件でロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1CのコンタクトホールCNTの底部の絶縁膜52およびロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1DのコンタクトホールCNTの底部の絶縁膜31をドライエッチングして除去することで、貫通孔としてのコンタクトホールCNTが形成される。
【0165】
次に、上記実施の形態1と同様にして、コンタクトホールCNT内に導電性のプラグPGを形成する。
【0166】
その後、上記実施の形態1と同様にして、図32に示されるように、上記ストッパ絶縁膜33および上記絶縁膜34を形成してから、ストッパ絶縁膜33および絶縁膜34の積層膜に配線溝を形成し、配線溝内に上記配線M1を形成する。その後、デュアルダマシン法などにより2層目以降の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。
【0167】
このようにして製造された本実施の形態の半導体装置においては、図32に示されるように、半導体基板1上に、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cのnチャネル型MISFETQn1,Qn2を覆うように、すなわちゲート電極GE1,GE3およびn型半導体領域SD1,SD3を覆うように、引張応力膜である絶縁膜52が形成されている。また、半導体基板1上に、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dのpチャネル型MISFETQp1,Qp2を覆うように、すなわちゲート電極GE2,GE4およびp型半導体領域SD2,SD4を覆うように、圧縮応力膜である絶縁膜31が形成されている。
【0168】
本実施の形態では、上記実施の形態1で得られる効果に加えて、更に次のような効果を得ることができる。すなわち、本実施の形態では、引張応力膜(ここでは絶縁膜52)による引張応力が、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cに形成されたnチャネル型MISFETQn1,Qn2のチャネル領域に加わることで、そのチャネル領域のキャリア(電子)の移動度を向上させることができる。また、圧縮応力膜(ここでは絶縁膜31)の圧縮応力が、ロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dに形成されたpチャネル型MISFETQp1,Qp2のチャネル領域に加わることで、そのチャネル領域のキャリア(正孔)の移動度を向上させることができる。これにより、ロジックnMIS領域1AおよびメモリnMIS領域1Cのnチャネル型MISFETQn1,Qn2とロジックpMIS領域1BおよびメモリpMIS領域1Dのpチャネル型MISFETQp1,Qp2の両方のオン電流を更に向上させることができる。
【0169】
また、絶縁膜51を、図30のドライエッチング工程(絶縁膜52の除去工程)でエッチングストッパ(絶縁膜31のエッチング保護膜)として機能させることで、絶縁膜31がエッチングされるのを防止し、絶縁膜31の膜厚減少を防止することができる。これにより、製造された半導体装置における絶縁膜31の厚みは、堆積膜厚のままとなる。半導体ウエハ上に成膜する際の堆積膜厚は精度よく制御できるため、本実施の形態のように絶縁膜31の厚みが堆積膜厚を維持できると、製造された半導体装置における絶縁膜31の膜厚をほぼ設計値通りとすることができ、それによって、MISFETに作用する応力値をほぼ設計値通りとすることができる。また、絶縁膜31の厚みが堆積膜厚を維持できるため、ウエハ毎に絶縁膜31の膜厚が変動するのを抑制でき、ウエハ間でMISFETの特性がばらつくのを抑制することができる。
【0170】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に適用して有効である。
【符号の説明】
【0172】
1 半導体基板
1A ロジックnMIS領域
1B ロジックpMIS領域
1C メモリnMIS領域
1D メモリpMIS領域
2 素子分離領域
3 ゲート絶縁膜
4 シリコン膜
5 酸化シリコン膜
6 窒化シリコン膜
7 酸化シリコン膜
8 窒化シリコン膜
9 溝
10 シリコンゲルマニウム領域
11 シリコン領域
21 ニッケル合金膜
22 バリア膜
23,23a 金属シリサイド層
23b 偏析領域
31 絶縁膜
32 層間絶縁膜
33 ストッパ絶縁膜
34 絶縁膜
41 メモリ領域
42 周辺回路領域
42a ロジック回路領域
51 絶縁膜
52 絶縁膜
123 ニッケルシリサイド層
123c NiSi異常成長領域
CMB チャンバ
CNT コンタクトホール
EX エクステンション領域
EX1,EX3 n型半導体領域
EX2,EX4 p型半導体領域
GE,GE1,GE2,GE3,GE4 ゲート電極
H1 噴出孔
HB1,HB2 ヒータブロック
M1 配線
NW1,NW2 n型ウエル
PD パッド電極
PG プラグ
PW,PW1,PW2 p型ウエル
Qn1,Qn2 nチャネル型MISFET
Qp1,Qp2 pチャネル型MISFET
SD ソース・ドレイン領域
SD1,SD3 n型半導体領域
SD2,SD4 p型半導体領域
SM1 半導体装置
SW1,SW2 サイドウォール
WF 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に複数のロジック用pチャネル型電界効果トランジスタと複数のロジック用nチャネル型電界効果トランジスタと複数のメモリ用pチャネル型電界効果トランジスタとが混載された半導体装置であって、
前記複数のロジック用pチャネル型電界効果トランジスタのうちの少なくとも一部は、シリコンゲルマニウムで構成された第1ソース・ドレイン領域を有し、
前記複数のロジック用nチャネル型電界効果トランジスタの全ては、それぞれシリコンで構成された第2ソース・ドレイン領域を有し、
前記複数のメモリ用pチャネル型電界効果トランジスタの全ては、それぞれシリコンで構成された第3ソース・ドレイン領域を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記半導体基板上に形成された複数のメモリ用nチャネル型電界効果トランジスタを更に有し、
前記複数のメモリ用nチャネル型電界効果トランジスタの全ては、それぞれシリコンで構成された第4ソース・ドレイン領域を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記複数のロジック用pチャネル型電界効果トランジスタのうち、演算回路に用いられる前記ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタは、シリコンゲルマニウムで構成された前記第1ソース・ドレイン領域を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置において、
前記半導体基板は、シリコン基板であり、面方位は(100)方位であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
シリコンゲルマニウムで構成された前記第1ソース・ドレイン領域を有する前記ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタは、チャネル領域のゲート長方向が<110>方向であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置において、
前記複数のロジック用nチャネル型トランジスタの前記第2ソース・ドレイン領域および前記複数のメモリ用nチャネル型電界効果トランジスタの前記第4ソース・ドレイン領域上には、それぞれ金属シリサイド層が形成されており、
前記金属シリサイド層は、Pt,Pd,Hf,V,Al,Er,Yb,Coからなる群から選択された少なくとも一種以上の金属元素とNiとを含有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置において、
前記複数のロジック用nチャネル型電界効果トランジスタおよび前記複数のメモリ用nチャネル型電界効果トランジスタは、チャネル領域のゲート長方向が<110>方向であるnチャネル型電界効果トランジスタを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
シリコンで構成された前記第2、第3および第4ソース・ドレイン領域は、前記半導体基板に不純物を導入することで形成され、
シリコンゲルマニウムで構成された前記第1ソース・ドレイン領域は、前記半導体基板に設けた溝内にエピタキシャル成長したシリコンゲルマニウムで形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置において、
前記金属シリサイド層は、シリコンで構成された前記半導体基板との界面近傍に前記金属元素が偏析していることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置において、
前記金属元素はPtであることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置において、
前記複数のロジック用pチャネル型電界効果トランジスタおよび前記複数のメモリ用pチャネル型電界効果トランジスタを覆うように前記半導体基板上に形成された圧縮応力膜と、前記複数のロジック用nチャネル型電界効果トランジスタおよび前記複数のメモリ用nチャネル型電界効果トランジスタを覆うように前記半導体基板上に形成された引張応力膜とを更に有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
半導体基板のロジック第1領域にロジック用pチャネル型電界効果トランジスタを有し、前記半導体基板のロジック第2領域にロジック用nチャネル型電界効果トランジスタを有し、前記半導体基板のメモリ第1領域にメモリ用pチャネル型電界効果トランジスタを有し、かつ前記半導体基板のメモリ第2領域にメモリ用nチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体基板を準備する工程、
(b)前記(a)工程後、前記ロジック第1領域に前記ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタの第1ゲート電極を、前記ロジック第2領域に前記ロジック用nチャネル型電界効果トランジスタの第2ゲート電極を、前記メモリ第1領域の前記メモリ用pチャネル型電界効果トランジスタの第3ゲート電極を、前記メモリ第2領域に前記メモリ用nチャネル型電界効果トランジスタの第4ゲート電極を、前記半導体基板上にそれぞれゲート絶縁膜を介して形成する工程、
(c)前記ロジック第1領域に溝を形成し、該溝内にシリコンゲルマニウム領域をエピタキシャル成長させることで、前記ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタのシリコンゲルマニウムで構成された第1ソース・ドレイン領域を形成する工程、
(d)前記ロジック第2領域に前記ロジック用nチャネル型電界効果トランジスタの第2ソース・ドレイン領域を、前記メモリ第1領域に前記メモリ用pチャネル型電界効果トランジスタの第3ソース・ドレイン領域を、前記メモリ第2領域に前記メモリ用nチャネル型電界効果トランジスタの第4ソース・ドレイン領域を、それぞれ前記半導体基板に不純物をイオン注入することによって形成する工程、
を有し、
前記溝および前記シリコンゲルマニウム領域は、前記ロジック第1領域には形成されるが、前記ロジック第2領域、前記メモリ第1領域および前記メモリ第2領域には形成されないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板は、シリコン基板で、面方位は(100)方位であり、
前記ロジック用pチャネル型電界効果トランジスタは、チャネル領域のゲート長方向が<110>方向であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程後に、
(e)前記第2および第4ソース・ドレイン領域上を含む前記半導体基板上に、ニッケル合金膜を形成する工程、
(f)前記(e)工程後、第1熱処理を行って前記ニッケル合金膜と前記第2および第4ソース・ドレイン領域とを反応させて、前記第2および第4ソース・ドレイン領域上に金属シリサイド層を形成する工程、
(g)前記(f)工程後、前記(f)工程にて反応しなかった前記ニッケル合金膜を除去する工程、
(h)前記(g)工程後、前記第1熱処理よりも高い熱処理温度で第2熱処理を行って、前記金属シリサイド層を前記第2および第4ソース・ドレイン領域と更に反応させる工程、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法において、
前記ニッケル合金膜は、Pt,Pd,Hf,V,Al,Er,Yb,Coからなる群から選択された少なくとも一種以上の元素とNiとの合金膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法において、
前記ニッケル合金膜は、ニッケル白金合金膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程の前記第1熱処理の熱処理温度は200〜300℃の範囲内で、熱処理時間は10〜60秒の範囲内であり、
前記(h)工程の前記第2熱処理の熱処理温度は400〜600℃の範囲内で、熱処理時間は30秒以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程の前記第1熱処理の熱処理温度は240〜280℃の範囲内であり、
前記(h)工程の前記第2熱処理の熱処理温度は500〜550℃の範囲内であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、
前記ニッケル合金膜における白金濃度は、3〜7原子%であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の半導体装置の製造方法において、
前記(h)工程後、前記半導体基板上に引張応力膜または圧縮応力膜を形成する工程、
を更に有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程で前記第1の熱処理を行った段階の前記金属シリサイド層および前記(h)工程で前記第2の熱処理を行った段階の前記金属シリサイド層は、シリコンで構成された前記半導体基板との界面近傍にPtが偏析していることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−40641(P2011−40641A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188000(P2009−188000)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】