説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】本発明では、酸素欠損を低減させ、信頼性を改善した半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の発明の半導体装置は、基板と、基板に形成された半導体領域と、半導体領域上に形成され、1種以上の第1金属元素の酸化物で形成された絶縁膜と、絶縁膜上に形成され、酸化物の生成自由エネルギーについて第1金属元素よりも大でありかつ金属状態である第2金属元素、および第1金属元素の酸化物で形成された遷移層と、遷移層上に形成された電極と、電極をゲート長方向に挟む半導体領域に形成されたソース・ドレイン領域とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(complementary metal oxide semiconductor)デバイスは、高速、低消費電力なシステムLSI製品の心臓部を構成する電子デバイスである。また、FG(floating gate)型やMONOS(metal oxide nitride oxide silicon)型のNANDフラッシュメモリ等の不揮発性メモリデバイスは、メモリ製品の心臓部を構成する電子デバイスである。
【0003】
最小加工寸法が数10nm程度まで微細化するCMOS/メモリデバイスを製造する場合、キャリアの膜中での直接トンネリング現象に起因して、絶縁膜のリーク電流が増加することが大きな課題である。こうしたトンネリング現象を回避すべく、SiO2よりも比誘電率が大きい材料を用いて絶縁膜を形成することが提案されている。具体的には、ZrO2やHfO2といった高誘電率金属の酸化物、あるいはそれとSiO2との化合物いわゆるシリケート等をはじめとする高誘電率の金属酸化膜である。さらに窒素を含有するシリケートは、1000℃でもアモルファス状態を維持することができ、比誘電率は20程度と高い。
【0004】
しかしながら、金属酸化膜中の酸素欠損、すなわち金属酸化膜内の酸素が電極などへ移動することにより、信頼性劣化、リーク電流の増大、閾値変動などの問題が生じてしまうことが最近の研究で明らかとなってきた。
【0005】
例えば、多結晶Siからなるゲート電極とHfやZrのような金属酸化物からなるゲート絶縁膜とを組み合わせた場合には、トランジスタの閾値が変動してしまう。この変動は非常に大きく、通常行なわれるような基板部の不純物濃度の調整により閾値を合わせ込むことは困難である。こうした現象は、SiやGeといった純粋な半導体ゲート電極の場合のみならず、金属シリサイドあるいは金属ジャーマナイドでも起こる現象であることが確認されている。また、金属、金属化合物(窒化物、炭化物など)からなるゲート電極を用いたトランジスタでも、高温熱処理を施した場合にはこの現象が起こりうるという報告がある。
【0006】
そこで、ハフニウム化合物からなるゲート絶縁膜に対し、タングステンなどのハフニウムよりも価数の高い元素を添加し、これらを酸化状態となすことで、ハフニウム化合物中の酸素欠損を低減しハフニウム原子を安定化させ、ハフニウムの外方拡散を抑制することが提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−183422公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1ではハフニウム原子の外方拡散は抑制されるものの、信頼性などを改善するほどに、酸素欠損の低減効果が顕在化したという報告はされていない。一般に、例えハフニウム原子の外方拡散が抑制できたとしても、酸素欠損による信頼性劣化等の問題を解決することにはならない。これは、金属原子と比較して酸素の拡散係数は高いことに起因している。
【0008】
本発明では、上記事情に鑑みて、信頼性を改善した半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の半導体装置は、基板と、基板に形成された半導体領域と、半導体領域上に形成され、1種以上の第1金属元素の酸化物で形成された絶縁膜と、絶縁膜上に形成され、酸化物の生成自由エネルギーについて第1金属元素よりも大でありかつ金属状態である第2金属元素、および第1金属元素の酸化物で形成された遷移層と、遷移層上に形成された電極と、電極をゲート長方向に挟む半導体領域に形成されたソース・ドレイン領域とを備えたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明の半導体装置は、基板と、基板に形成されたN型半導体領域と、N型半導体領域上に形成され、1種以上の第1金属元素の酸化物で形成された第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート絶縁膜上に形成され、酸化物の生成自由エネルギーについて第1金属元素よりも大でありかつ金属状態であるクロム・モリブデン・タングステン・鉄・コバルト・ニッケルのいずれかからなる第2金属元素、および第1金属元素の酸化物で形成された第1遷移層と、第1遷移層上に形成された第1ゲート電極と、第1ゲート電極をゲート長方向に挟むN型半導体領域に形成された第1ソース・ドレイン領域と、を具備するPチャネルMISトランジスタと、基板に形成されたP型半導体領域と、P型半導体領域上に形成され、第1金属元素の酸化物で形成された第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート絶縁膜上に形成され、金属状態の第2金属元素および第1金属元素の酸化物で形成された第2遷移層と、第2遷移層上に形成され、第1ゲート電極と同じ材料で形成された第2ゲート電極と、第2ゲート電極をゲート長方向に挟むP型半導体領域に形成された第2ソース・ドレイン領域と、を具備するNチャネルMISトランジスタと、を備えることを特徴とする。
【0011】
第3の発明の半導体装置は、基板と、基板に形成されたN型半導体領域と、N型半導体領域上に形成され、1種以上の第1金属元素の酸化物で形成された第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート絶縁膜上に形成され、酸化物の生成自由エネルギーについて第1金属元素よりも大でありかつ金属状態であるルテニウム・ロジウム・パラジウム・レニウム・イリジウム・白金のいずれかからなる第2金属元素、および第1金属元素の酸化物で形成された第1遷移層と、第1遷移層上に形成された第1ゲート電極と、第1ゲート電極をゲート長方向に挟むN型半導体領域に形成された第1ソース・ドレイン領域と、を具備するPチャネルMISトランジスタと、基板に形成されたP型半導体領域と、P型半導体領域上に形成され、第1金属元素の酸化物を有する第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート絶縁膜上に形成され、第1ゲート電極と同じ材料で形成された第2ゲート電極と、第2ゲート電極をゲート長方向に挟むP型半導体領域に形成された第2ソース・ドレイン領域と、を具備するNチャネルMISトランジスタと、を備えることを特徴とする。
【0012】
第4の発明の半導体装置の製造方法は、半導体領域上に、1種以上の第1金属元素の酸化物を有するゲート絶縁膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜上に、第1金属元素の酸化物の生成自由エネルギーよりも大きい生成自由エネルギーを有する第2金属元素の酸化物、および第1金属元素の酸化物の混合物層を形成する工程と、混合物層上に、ゲート電極材料層を形成する工程と、ゲート絶縁膜、混合物層およびゲート電極材料層を加工しゲート電極を形成する工程と、その後、熱処理によって第2金属元素の酸化物を還元し、第2金属元素を金属状態にする工程と、ゲート電極をゲート長方向に挟む半導体領域に、ソース・ドレイン領域を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、信頼性を改善した半導体装置およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0015】
なお、各実施の形態においては、CMOSFETやFG型フラッシュメモリを例に挙げ説明するが、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically EPROM)、MONOS型を含むフラッシュメモリ等のPROM全般についても、同様に各実施の形態を適用できる。
【0016】
さらに、上述した半導体素子が集積化したメモリ、ロジック回路等、並びにこれらが同一チップ上に混載されるシステムLSI等も本発明の範囲内である。
【0017】
(概要および原理)
図1(a)(b)は、本発明の半導体装置の製造方法を説明するための概念図である。
【0018】
本発明においては、まず、図1(a)に表したように、シリコン基板11の上に、第1金属元素の酸化物で形成された高誘電体ゲート絶縁膜12を堆積した後に、第1金属元素の酸化物かつ第2金属元素の酸化物を含む混合物層100を堆積する。さらにその上部にゲート電極層14を堆積する。このような積層構造を形成した後に熱処理を施すと、第2金属元素の酸化物が還元されて、金属状態となる。その結果、高誘電体ゲート絶縁膜12とゲート電極層14との界面領域に、金属状態の第2金属元素を含む遷移層13が形成される(図1(b))。
【0019】
この製造方法から、図1(b)に示した遷移層13が形成されるための要件は、酸化物の生成自由エネルギーについて、(第1金属元素<第2金属元素)の大小関係にあること、すなわち、第1金属元素の方がより安定な酸化物を形成することである。
【0020】
表1および表2に代表的な金属元素の1000Kにおける酸素1分子当たり酸化物生成自由エネルギーの値を表にして示す。通常、高誘電体ゲート絶縁膜に用いられるハフニウム、ジルコニウム、チタン、シリコン、アルミニウムおよびランタノイド系元素を表1、それに対し第2金属元素の候補となりうる元素の酸化物生成自由エネルギーを表2に示す。表1(b)に示した元素は、1000Kにおいて金属および酸化物がともに固体であり、さらに酸化物が1000Kにおいて自己分解しない元素を示してある。第1金属元素について表1、第2金属元素については表2から適宜1種類以上選択することにより、後述するような本発明に特有な効果が得られる。
【表1】

【表2】

【0021】
図2(a)(b)に、本実施の形態の原理と効果を説明するための模式図を示す。ここでは、第1金属元素としてハフニウム、第2金属元素としてタングステンを例に説明する。図2(a)に示すように、HfO2中には酸素欠損が生成している。この酸素欠損は、成膜直後のみならず、ゲート電極の形成工程あるいは活性化相当の熱処理工程において形成される。その量はゲート絶縁膜の成膜条件あるいはゲート電極の形成条件あるいは活性化相当の熱処理条件によるが、欠損量の多い場合には0.1at%にも達する。これらの酸素欠損は、金属酸化物のバンドの禁制帯内に数々の準位を形成する。結果、電子あるいは正孔の捕獲等による絶縁膜の信頼性劣化、リーク電流の増大、トランジスタの閾値異常を引き起こす。特に、閾値異常は酸素欠損が微量であっても生じてしまい、重大な問題となっている。
【0022】
本実施形態においては、まず、図2(a)に示すように、第1金属元素と第2金属元素の酸化物からなる混合物層、すなわちここではHfO2とWO3の混合物を、ゲート絶縁膜とゲート電極との間の界面領域に形成する。図2(b)に示すように、熱処理を行うことにより、化学的により不安定なWO3が還元され、酸素をHfO2へ供給する。これにより、HfO2中の酸素欠損量が著しく低減し、先に述べた信頼性劣化、リーク電流の増大、トランジスタ閾値異常、などの問題を解決することができる。
【0023】
さらに、WO3はもともと結合していた酸素を外部へ供給することにより自身は金属化する。金属状態のタングステンを含む遷移層はもはや絶縁体ではなく金属的な物性を示す。この構造的特徴により、本実施の形態では、たとえゲート電極に半導体材料(Si、SiGeなど)を用いたとしても、界面における空乏層の形成を抑制することができる。従って、従来用いられてきた半導体ゲートプロセスを利用することが可能になり、メタルゲートプロセスより容易に、空乏層の抑制による素子特性向上が可能である。
【0024】
第1金属元素としてハフニウム(Hf)、第2金属元素としてタングステン(W)を選択した場合において、絶縁膜層を形成した直後と、半導体ゲート電極層を堆積後、850℃で30分熱処理を施した後の絶縁膜層のXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)で測定されたスペクトルを図3に示す。
【0025】
図3(a)が絶縁膜層を形成した直後、図3(b)が熱処理を施した後のスペクトルである。まず、図3(a)では、絶縁膜層中に含まれたタングステンは、WOという酸化物として絶縁層中に存在することが観測された。一方、図3(b)では、タングステンの信号はWOと異なるピーク位置に観測され、金属状態であることが観測された。なお、図中、Hfの5p軌道が観測されているが、これは干渉ピークであり、Hfの5p軌道がWの4f軌道の結合エネルギーと近い箇所に現れるために生じるものである。
【0026】
ここで、図4に、本実施形態と従来例において、半導体ゲート電極層にn型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合のゲート容量−ゲート電圧特性のヒステリシス特性を示す。まず図4(b)の従来例において、ゲート電圧を負に挿引した場合と、ゲート電圧を正に挿引した場合において、ゲート容量−ゲート電圧特性を比較すると、100mVのシフトが見られた。この現象は、ゲート電圧を負に挿引した場合に、ゲート電極から絶縁膜層に電子が注入され、その電子が高誘電体ゲート絶縁膜中の酸素欠損起因の捕獲準位に捕獲されるためである。こうした電子の捕獲準位の存在は、ゲート絶縁膜の破壊などゲート絶縁膜の信頼性劣化および閾値電圧のシフトの要因であり、トランジスタとして到底許容できない。
【0027】
ところが、図4(a)に示すように、本実施形態においては、ゲート電圧を負に挿引した場合と、ゲート電圧を正に挿引した場合において、ゲート容量−ゲート電圧特性に変化が見られなかった。この現象は、上記で示した高誘電体ゲート絶縁膜中の酸素欠損起因の捕獲準位が本実施形態の半導体装置において無視できるほど低減できたことを示す。タングステンにもともと結合していた酸素が熱処理工程において放出され、ハフニウムに結合したため、酸素欠損が無視できるほど低減され、上述した捕獲準位が低減した結果である。したがって、本実施の形態によれば、ゲート絶縁膜の信頼性の劣化要因を無視できるほど低減できる半導体装置を提供できることがわかった。
【0028】
図5に本実施例と従来例において、ゲート電極層にn型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合とp型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合のゲート容量−ゲート電圧特性を示す。図5(a)は、本実施例での半導体装置のゲート容量−ゲート電圧特性、図4(b)は、従来例として第2金属元素(タングステン)をハフニウムを含む絶縁膜層に添加しなかった場合の半導体装置のゲート容量−ゲート電圧特性である。
【0029】
まず、図5(b)に示すように、従来例においては、ゲート電極にn型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合のゲート容量とp型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合のゲート容量が異なっていた。この原因は、p型多結晶シリコンゲート電極での容量は、半導体ゲート電極に有限の長さで広がった空乏層による容量がゲート絶縁膜による容量に直列に上乗せされたため、全体としてゲート容量が低下しているためである。これにより、トランジスタ素子の電流駆動力が低下するという問題が生じる。
【0030】
一方、図5(a)においては、ゲート電極にn型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合のゲート容量とp型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合のゲート容量が一致しており、上記空乏層によるゲート容量の低下が起きていない。このことは、図3(b)で形成が確認された金属状態のタングステンの作用により、多結晶シリコン中に空乏層が形成されなかったためである。したがって、トランジスタ素子の電流駆動力が低下せず、実用的なトランジスタ素子が実現可能である。
【0031】
このような作用は、半導体ゲート電極の代わりに金属ゲート電極(化合物含む)を利用すれば実現できるものである。しかしながら本発明では、ゲート絶縁膜とゲート電極の界面近傍に少しの工夫を施すことにより、従来型の半導体ゲートプロセスを踏襲しつつ、メタルゲート電極の作用という恩恵を享受することができる。
【0032】
また、図5(a)において、ゲート電極にn型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合とp型多結晶シリコンゲート電極を用いた場合のゲート容量−ゲート電圧特性からそれぞれのMIS構造におけるフラットバンド電圧を算出すると、両者は一致していた。次に、このフラットバンド電圧から金属状態のタングステンの仕事関数を算出すると4.6eVであった。さらに、上部多結晶シリコンゲート電極の種類によらず、仕事関数の揺らぎがほとんどないため、閾値電圧のばらつきもほとんど生じない。したがって、NチャネルMISトランジスタとPチャネルMISトランジスタを同一のメタルゲートで構成するシングルメタルゲート技術に適した材料であるといえる。
【0033】
上述した特許文献1では、ハフニウム酸化物で形成されたゲート絶縁膜に酸化状態のタングステンを添加することによりハフニウム原子を安定化させ、その外方拡散を抑制している。この従来技術では信頼性の向上、閾値の安定化などの効果はまったく報告されていない。詳しい理由は特許文献には記されていないが、これは、該技術がタングステンを酸化状態のまま用いており、本技術とは異なり余剰な酸素をHfO2に対し供給する構成となっていないため、ヒステリシスの消失や信頼性の向上が顕在化するほどに酸素欠損を低減することができなかったためと思われる。
【0034】
また、特許文献1で利用されているタングステン酸化物は、熱力学的には自己分解しない特性を有しているものの、現実的にはやや不安定な物性を示すことがよく知られている。具体的には、WO3は揮発性が高く、固体として不安定である。この構造不安定さが却って絶縁膜中の酸素欠損量を増加させている可能性がある。本実施の形態では、熱処理を経ることによりタングステンは還元され安定な金属状態に落ち着くため、このような危惧は無い。
【0035】
以上その概要を述べた構成により、特性ばらつきが非常に小さく、信頼性劣化、リーク電流の増大、トランジスタ閾値異常などが無い高性能なMISデバイスを備えた半導体装置を、容易なプロセスによって提供することが可能となる。
【0036】
遷移層の厚さは、0.5nm以上あれば半導体ゲート電極の空乏層抑制に効果がある。また、前述のとおり1.5nm以上であればタングステンそのものの仕事関数がトランジスタの閾値の決定要因となる。また、3nmより厚いときにはタングステンから放出された酸素が過剰となってしまう。以上の要請から、遷移層の物理的厚みは0.5nm以上、3nm以下が望ましく、より望ましくは1.5nm以上3nm以下がよい。
【0037】
上述したように、遷移層の厚みが1.5nm以上の時には、この遷移層を構成する第2金属元素の仕事関数でトランジスタの閾値が決定されるようになる。ここで第2金属元素としてその仕事関数がSiのバンドギャップの中央付近の値を示す、いわゆるミッドギャップ金属を用いると、CMOSトランジスタの双方のゲート電極を本実施の形態の構造で形成することにより、n型トランジスタとp型トランジスタの閾値を対称的に揃えることができるため、望ましい。ミッドギャップ仕事関数を示す第2金属元素としては、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルが該当する。
【0038】
なお、本実施の形態の遷移層13を構成する元素の組合せとしては、W、Hfを含むことが最も望ましい。WとHfはHfW2組成の熱力学的に安定な化合物相を有する。本実施の形態のHfO2−WO3還元プロセスにおいて、酸素と結合しきれない不安定なHf原子と還元された金属Wが化学反応し熱力学的に安定なHfW2を作ることで、下記2つの効果が得られる。第一には、酸素と結合しきれていないHfO2から余剰Hfを抜き取ることで遷移層の構造安定性が向上すること。第二にはHfW2は完全に金属的な物性を示すため、原子結合的に不完全なHfO2が残った構造よりも遥かに抵抗率の低い遷移層が実現できるためである。
【0039】
遷移層中のW比率(W/(W+Hf)x100(%))が3%以上であるとき、ゲート絶縁膜の酸素欠損を低減させ、信頼性劣化、閾値異常、リーク電流やヒステリシスの増大といった問題を解決する本実施形態の作用がより増大する。
【0040】
ここで、遷移層の抵抗率を下げてゲート絶縁膜の酸素欠損を減じるという目的からは、W比率は多ければ多いほどよい。これにより前記遷移層の酸素濃度が低下するため比抵抗が低減するし、さらにはより多くの酸素をゲート絶縁膜に供給できるためである。ただしW比率が高すぎると還元されて生じた余剰な酸素が酸素欠損の量を上回り、ゲート電極やシリコン基板を酸化してしまうため、デバイスの性能が劣化する。このため、遷移層のW比率は最大でも50%にとどめなくてはならない。
【0041】
本実施の形態では、遷移層の第2金属元素を効率よく還元し酸素を吐き出させ、ハフニウムなどからなるゲート絶縁膜に対し供給する必要がある。この観点から、図1(a)の混合物層100に含まれる第2金属元素の酸化状態が化学的により不安定な状態になるよう、その酸化物組成は化学量論組成よりも酸素プアな組成にしておくことが望ましい。すなわち、混合物層の酸素組成は、第1金属元素の酸化物の化学量論組成と、第2金属元素の酸化物の化学量論組成から予測される混合物の酸素組成よりも少ないことが望ましい。
【0042】
以下、本実施の形態をより詳細に説明する。
【0043】
(第1の実施の形態:CMOSFET 第2金属元素のW.F.=ミッドギャップ)
図6は、本発明の第1の実施形態に係わる半導体装置の概略構成を示す素子構造断面図である。
【0044】
シリコン基板11上に埋め込み絶縁膜21を介してシリコン層23を形成することによりSOI基板20が構成され、このSOI基板20のシリコン層23には、n型ウェル領域24及びp型ウェル領域25が設けられている。n型ウェル領域24とp型ウェル領域25は、素子分離絶縁膜22により分離されている。なお、本実施形態では基板としてSOI基板を用いたが、バルク基板を用いても良いのは勿論のことである。
【0045】
n型ウェル領域24には、pチャネルMISトランジスタ31が設けられる。pチャネルMISトランジスタ31は、p型拡散層26aと、p型エクステンション層26bと、高誘電体高誘電体ゲート絶縁膜12と、p型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13とを備えている。高誘電体ゲート絶縁膜12はn型ウェル領域24上に設けられ、この高誘電体ゲート絶縁膜12上にp型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13が設けられている。なお、本実施形態においては、高誘電体ゲート絶縁膜12とp型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13の積層構造の両側部には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などの絶縁体からなるゲート側壁絶縁膜28が設けられている。
【0046】
また、p型エクステンション層26bは高誘電体ゲート絶縁膜12とp型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13の積層構造両側のn型ウェル領域24に設けられ、p型拡散層26aはゲート側壁絶縁膜28の両側のn型ウェル領域24に設けられている。p型拡散層26aは、p型エクステンション層26bよりもn型ウェル領域24との接合深さが深くなるように構成されている。そして、p型拡散層26a及びp型エクステンション層26bがpチャネルMISトランジスタ31のソース・ドレイン領域となる。
【0047】
一方、p型ウェル領域25には、nチャネルMISトランジスタ32が設けられる。nチャネルMISトランジスタ32は、n型拡散層27aと、n型エクステンション層27bと、高誘電体ゲート絶縁膜12と、n型半導体ゲート電極層15bおよび遷移層13とを備えている。高誘電体ゲート絶縁膜12はp型ウェル領域25上に設けられ、この高誘電体ゲート絶縁膜12上にn型半導体ゲート電極層15bおよび遷移層13が設けられている。なお、本実施形態においては、高誘電体ゲート絶縁膜12とn型半導体ゲート電極層15bおよび遷移層13の積層構造の両側部には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などの絶縁体からなるゲート側壁絶縁膜28が設けられている。
【0048】
また、n型エクステンション層27bは高誘電体ゲート絶縁膜12とn型半導体ゲート電極層15bおよび遷移層13の積層構造両側のp型ウェル領域25に設けられ、n型拡散層27aはゲート側壁絶縁膜28の両側のp型ウェル領域25に設けられている。n型拡散層27aは、n型エクステンション層27bよりもp型ウェル領域25との接合深さが深くなるように構成されている。そして、n型拡散層27a及びn型エクステンション層27bがnチャネルMISトランジスタ32のソース・ドレイン領域となる。
【0049】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を、図7〜図11を参照して説明する。
【0050】
まず、図7(a)に示すように、シリコン基板11上に埋め込み絶縁膜21を介してシリコン層23を形成したSOI基板20を用意し、SOI層(シリコン層23)に、よく知られた方法により素子分離絶縁膜22を形成した。すなわち、まず、SOI基板20にSTI(Shallow Trench Isolation)用の溝(例えば、深さが約0.4μm)を設けてCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン酸化膜を全面に堆積した。続いて、CMP(Chemical mechanical planarization)を行ってデバイスを平坦化し、図7(a)に示すような構造を得た。次に素子分離絶縁膜によって分離されたSOI基板20のnチャネルMISトランジスタ31とpチャネルMISトランジスタの予定領域に例えばリンとボロンを選択的に約1MeVにてイオン注入し、約1100℃程度の高温短時間熱処理を行ない、n型ウェル領域24とp型ウェル領域25を形成する(図7(b))。さらに、各ウェルの表面領域にトランジスタの閾値調整のためにイオン注入を行う。
【0051】
引き続き、ウェハ上の全面に高誘電体ゲート絶縁膜12を堆積する(図7(c))。このとき、高誘電体ゲート絶縁膜12としては、第1金属元素の酸化物を形成する。第一金属元素としては、表1(a)に示したように、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、シリコン、アルミニウム、ランタン等希土類元素から少なくとも1つを選択する。したがって、堆積する絶縁膜としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ランタン等希土類元素の酸化物あるいはこれらの混合酸化物、酸窒化物ならびに窒化物、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ランタン等希土類元素のシリケート・アルミネートあるいはこれらに窒素を添加した絶縁膜などが挙げられる。ここでは一例としてハフニウム酸化物をCVD法によって3nm堆積した。
【0052】
引き続き、図7(c)の構造に対し第1金属元素、第2金属元素からなる酸化物層100を全面に堆積し、図7(d)の構造を得た。ここで第2金属元素としては、表1(b)に示したように、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金の中から選択する。したがって、堆積する絶縁膜としては、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金の酸化物あるいは混合酸化物ならびに酸窒化物、クロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金のシリケート・アルミネートあるいはこれらに窒素を添加した絶縁膜と、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ランタン等希土類元素の酸化物あるいは混合酸化物ならびに酸窒化物、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ランタン等希土類元素のシリケート・アルミネートあるいはこれらに窒素を添加した絶縁膜の混合物があげられる。
【0053】
ここでは、一例として第1金属元素からハフニウムおよびシリコン、第2金属元素からタングステンを選択し、HfSiWO膜をスパッタリング法により成膜した。ハフニウムシリサイドのターゲットとタングステンのターゲットを用い、印加するパワー比を制御して絶縁膜中のW添加量を制御した。本実施形態では、W比率を10%とした。成膜時の基板温度は任意に設定することが可能であるが、本実施形態では室温で行った。混合物層100の膜厚は、0.5nm以上、3nm以下の範囲内で適宜決定することができるが、本実施形態では、2.0nmとした。
【0054】
次に、Si26ガスあるいはSiH4ガスを含む雰囲気においてCVD法によって、混合物層100上に半導体ゲート電極層14となる多結晶シリコン膜を図8(e)に示すように堆積した。
【0055】
次に、多結晶シリコン膜上に通常のリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて、レジストパターン40を形成する。このレジストパターン40をマスクとして、CFxガスを用いた反応性イオンエッチングを用いて、多結晶シリコン膜をパターニングすることによって、図8(f)に示すように半導体ゲート電極層14を形成した。続いて、上記レジストパターン40を残置した状態で、酸化物層100、高誘電体ゲート絶縁膜12をフッ化水素酸水溶液によりエッチングして、図8(g)に示す構造を得る。
【0056】
次に、図9(g)に示すように、O2 アッシャー処理によりレジストパターン40を除去する。この際、半導体ゲート電極層14の側面は若干酸化される。引き続き、硫酸と過酸化水素水の混合液によってO2 アッシャーで除去しきれなかったレジスト、残渣物などを化学的に除去する。この際、半導体ゲート電極層14は元来耐薬品性が強いが、これに加えてその表面が薄い酸化物で被覆されているため、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸食されにくい。
【0057】
ここで、図9(h)の構造に対し、600〜900℃程度の温度で長時間の熱処理を施すことにより、酸化物層100内の第2金属元素の還元作用を起こさせ、酸化物層100を遷移層13へと変化させることにより、図9(i)の構造を実現した。ここでは一例として850℃、30分のArアニールを行った。この熱処理は、酸化物層100の還元作用を効率的に進行させる目的から還元雰囲気で行うことが望ましく、N2、N2+H2、H2アニールなどでもよい。
【0058】
このアニール工程は、通常のLSI製造工程には無い、本発明独特の工程である。酸化物層100内の第2金属還元反応、本実施例においてはHfSiO、WO3の組合せにおけるWO3の還元反応は、HfSiO中の酸素欠損をドライビングフォースとして進行する。熱力学的には自発的に進行する化学反応ではあるが、現実に反応を進行させるためには熱平衡に近い状態の設定、すなわちある程度長時間の熱処理を施す必要がある。典型的には30分程度の熱処理時間が必要である。
【0059】
これに対し、従来のLSI製造工程では、ゲート電極の不純物を活性化するための熱処理がもっとも高温の熱処理だが、その時間は典型的にはゼロ秒、すなわちスパイクアニールが主流である。トランジスタ内部の不純物再分布を抑え、トランジスタ性能を維持するためである。このようなアニールでは、本発明の酸化物層内での第2金属還元作用を得ることはかなわない。
【0060】
この熱処理工程の温度が低いほど反応速度は低下し、より長い時間の熱処理を要するようになる。LSIを製造する上で許容できる熱処理時間、典型的には1時間程度の時間で前記還元作用を進行させるためには、少なくともその温度は600℃以上である必要がある。一方、このときの温度が高すぎると、閾値電圧制御のためにチャネル中に配置したチャネル不純物の再分布が生じる。還元反応を完遂させつつ不純物の再分布を起こさない上限温度は900℃であり、本熱処理工程の温度は900℃以下に限定される。
【0061】
上記還元反応を効率的に進行させるもうひとつの手段は、前記第1金属と第2金属の酸化物の混合物からなる酸化物層を、個々の酸化物の化学量論組成よりも酸素プア組成になるように成膜することである。本実施例であれば、HfSiWO膜の酸素量をHfxSi1−xO2:WO3から導かれる化学量論組成よりも少なく設定すればよい。具体的な手法としては、HfSiWO層のスパッタリングプロセスにおける酸素ガス量を、化学量論組成膜を製造する際より少なめにすることで実現可能である。具体的なガス流量・比は製造装置によって大きく異なるので、これを限定することにあまり意味は無いが、典型的にはHfSi、Wターゲットを用いたスパッタリングであれば、Ar/O2〜20sccm/0.02sccm程度の条件で所望する酸素プア酸化物層を形成させることが可能である。
【0062】
酸素プアな酸化物層を形成する手段としては他にも、スパッタリングターゲットの少なくともどちらかひとつに酸化物を用い、非酸化雰囲気で堆積を行う方法が挙げられる。例えば、HfSiOのターゲットとWターゲットを用い、Arガスのみでスパッタリングさせることによって酸素プアなHfSiWO酸化物を形成させることが可能となる。また、HfSiO、WOxターゲットを用いてArガスのみのスパッタを実施しても酸素不足HfSiWO膜を形成させることが可能である。
【0063】
以上のような酸素不足混合酸化物層の形成を行うことによって、前記温度範囲(600〜900℃)であっても、より短い時間で還元反応を完遂させることが可能となる。時間が短縮されることは、形成済みのチャネル不純物の再分布を極力抑えることにつながるため、望ましい。
【0064】
なお、この還元熱処理工程は、前記混合酸化物の加工工程後に行うのが望ましい。還元反応を経て遷移層13が形成されてしまうと、金属である遷移層13と絶縁体である高誘電体ゲート絶縁膜の加工プロセスはおのずと別のプロセスを要するため、加工プロセス数が増加してしまうためである。
【0065】
また、前記還元熱処理工程はソース・ドレイン領域形成よりも前に行うことが望ましい。ソース・ドレイン領域形成のための1000℃以上の短時間熱処理が施されると、前記混合酸化物層では還元反応が進行するが、短時間であるがゆえに反応が完遂しない。短時間で部分的に還元反応が進行した状態で一度室温程度に冷却されることで、混合酸化物層が準安定状態になり、その後の追加熱処理を施しても還元反応が完遂しなくなる可能性があるためである。
【0066】
次に、図9(j)に示すように、n型ウェル領域24の上部をレジスト(図示せず)で保護し、p型ウェル領域25の領域に、n型の不純物、例えばリン,砒素,アンチモンなどをイオン注入する。そして、n型ウェル領域24上のレジストを除去した後、1000℃以上のスパイクアニールにより、n型エクステンション層27bを形成する。この際半導体ゲート電極層14にもn型のイオンが注入されるため、n型半導体ゲート電極層15bとなる。
【0067】
次に、図9(k)に示すように、p型ウェル領域25の上部をレジスト(図示せず)で保護し、n型ウェル領域24の領域に、p型の不純物、例えばボロン,インジウムなどをイオン注入し、p型ウェル領域25上のレジストを除去した後、1000℃以上のスパイクアニールにより、p型エクステンション層26bを形成する。この際半導体ゲート電極層14にもp型のイオンが注入されるため、p型半導体ゲート電極層15aとなる。
【0068】
次に、図10(l)に示すように、通常のプロセスでゲート側壁絶縁膜28を形成する。即ち、基板上の全面にCVD法等により酸化膜を堆積した後、半導体ゲート電極層14の上面が露出するまで、異方性エッチングを用いて全面エッチングすることによって、半導体ゲート電極層15a、15b、遷移層13および高誘電体ゲート絶縁膜12の側面に10nmの膜厚でゲート側壁28を残置した。
【0069】
次に、図10(m)に示すように、n型ウェル領域24の上部をレジスト41で保護し、p型ウェル領域25の領域に、n型の不純物、例えばリン,砒素,アンチモンなどをイオン注入し、n型拡散層27aを形成する。
【0070】
次に、図10(n)に示すように、n型ウェル領域24の上部のレジスト41を剥離した後に、p型ウェル領域25の上部をレジスト42で保護し、n型ウェル領域24の領域に、p型の不純物、例えばボロン,インジウムなどをイオン注入し、p型拡散層26aを形成する。
【0071】
次に、図11(o)に示すように、p型ウェル領域25の上部のレジスト42を剥離した後に、900℃以上の熱処理を行うことで、n型拡散層27a、p型拡散層26aを完全に活性化させた。
【0072】
これ以降は、層間絶縁膜29の形成、平坦化処理など通常の工程を経て、図6に示す構造を得ることができる。
【0073】
図示していないが、その後は、よく知られた方法により製造することにより、第一層配線までのMOS構造が得られる。例えば、層間絶縁膜29に、半導体ゲート電極層15a、15bに通じるコンタクトホールを開口し、コンタクトホールの底面にバリアメタルとしてのTiNをCVDで堆積した後、全面にプラグ材料としてのWを堆積し、コンタクトホールを埋め込む。その後、全面をCMPすることにより平坦化し、続いて配線材料としてAl−Cu膜を堆積し、フォトリソグラフィによりAl−Cu膜をパターニングすることによって、第一層配線までのMOS構造が得られる。
【0074】
本実施形態においては、pチャネルMISトランジスタ31およびnチャネルMISトランジスタ32に同一のゲート電極材料を使用するため、それぞれのトランジスタの閾値を対称にするためには、第2金属元素としてミッドギャップ仕事関数を持つ材料を選択するのが望ましい。具体的には、表2の第1列に記載のクロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケルから選択するのが望ましい。
【0075】
ゲート電極層としては、シリコン、ゲルマニウムおよびそれらの混合物から適宜選択される半導体ゲート電極層がもっとも好ましい。しかしながら、これに限られるものではなく、TiN、TaN、TaSiN、TaC、W、WN、Ru、などの金属、およびこれら金属の積層膜、これら金属とポリSiの積層膜も適用可能である。これらのゲート電極層は耐熱性が高く、1000℃以上の熱処理にも耐えられるため、本発明の構成としてふさわしい。
【0076】
本実施形態が最大限有効に活用されるためには、SOIデバイス、Fin−FETデバイスなど、ゲート電極の仕事関数がミッドギャップであっても、閾値電圧が低く設定できるデバイスとの組み合わせが最も望ましい。
【0077】
ゲート絶縁膜と遷移層との間およびゲート絶縁膜と半導体基板との間のいずれか一方にシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物からなる絶縁膜を備えていても良い。LSIの製造工程で使用される高温熱処理において、高誘電体ゲート絶縁膜からゲート電極に酸素が拡散し、高誘電体ゲート絶縁膜中の酸素欠損が増大するのを防ぐためにゲート絶縁膜と遷移層との間およびゲート絶縁膜と半導体基板との間のいずれか一方にシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物からなる絶縁膜を備えることは効果的である。
【0078】
また、スパッタリングの際に雰囲気に混入させる窒素および酸素の量を制御することによって、誘電体膜中に窒素を含んだ酸窒化膜にしてもよい。
【0079】
高誘電体ゲート絶縁膜の形成には、本実施形態で示したスパッタリング法のほか、MO(Metal organic)−CVD法、ALD(Atomic layer deposition)法、MBE(Molecular beam epitaxy)法、PVD(Physical vapor deposition)法などを用いることもできる。
【0080】
本実施の形態のゲート積層構造において遷移層13に金属状態の第2金属元素が含有されていることは、CMOSトランジスタの完成後にも確認することが可能である。具体的には、図6のようなCMOSデバイスを完成させた後、通常のいわゆるピックアップ法などの手段によって断面TEM(Transmission electron microscopy)観察のための試料をLSIウェハから抜き取る。断面TEMにより図6の構造を確認した後、遷移層13の部分に電子ビームを照射し、その箇所における電子線の損失スペクトルから、その箇所に存在する元素の種類と、結合状態を解析することができる。TEMの電子ビームを用いたEELS(Electron energy loss spectroscopy)法である。この手法では電子ビームを収束させることにより分析の空間分解能を1nm以下にまで向上させることが可能である。本実施例では、CMOSデバイス完成後の界面遷移層の内部に10%程度の金属状態タングステンが存在することを、EELSのスペクトルにおけるタングステンのピーク位置とピーク面積から容易に判定できる。タングステンの金属状態と酸化状態の間には4〜5eVあまりの結合エネルギー差があるため、両状態の判別、定量的なピーク分離は十分可能である。
【0081】
以上説明したように本実施形態によれば、低抵抗で耐熱性を有し、空乏化閾値電圧ばらつきといった問題もないゲート電極を有するCMOSデバイスを得ることができる。また、このCMOSデバイスを製造する際のステップ数が増加するのを防止できると共に複雑なプロセスが必要でなくなる。
【0082】
(第2の実施の形態:CMOSFET 第2金属元素のW.F.=Siの価電子帯近傍)
図12は、本発明の第2の実施形態に係わる半導体装置の概略構成を示す素子構造断面図である。
【0083】
シリコン基板11上に、n型ウェル領域24及びp型ウェル領域25が設けられている。n型ウェル領域24とp型ウェル領域25は、STI構造の素子分離絶縁膜22により分離されている。なお、本実施形態では基板としてバルク基板を用いたが、SOI基板を用いることも可能である。
【0084】
n型ウェル領域24には、pチャネルMISトランジスタ31が設けられる。pチャネルMISトランジスタ31は、p型拡散層26aと、p型エクステンション層26bと、高誘電体高誘電体ゲート絶縁膜12と、p型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13とを備えている。高誘電体ゲート絶縁膜12はn型ウェル領域24上に設けられ、この高誘電体ゲート絶縁膜12上にp型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13が設けられている。なお、本実施形態においては、高誘電体ゲート絶縁膜12とp型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13の積層構造の両側部には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などの絶縁体からなるゲート側壁絶縁膜28が設けられている。
【0085】
また、p型エクステンション層26bは高誘電体ゲート絶縁膜12とp型半導体ゲート電極層15aおよび遷移層13の積層構造両側のn型ウェル領域24に設けられ、p型拡散層26aはゲート側壁絶縁膜28の両側のn型ウェル領域24に設けられている。p型拡散層26aは、p型エクステンション層26bよりもn型ウェル領域24との接合深さが深くなるように構成されている。そして、p型拡散層26a及びp型エクステンション層26bがpチャネルMISトランジスタ31のソース・ドレイン領域となる。
【0086】
一方、p型ウェル領域25には、nチャネルMISトランジスタ32が設けられる。nチャネルMISトランジスタ32は、n型拡散層27aと、n型エクステンション層27bと、高誘電体ゲート絶縁膜52と、n型半導体ゲート電極層15bとを備えている。高誘電体ゲート絶縁膜52はp型ウェル領域25上に設けられ、この高誘電体ゲート絶縁膜52上にn型半導体ゲート電極層15bが設けられている。なお、本実施形態においては、高誘電体ゲート絶縁膜52とn型半導体ゲート電極層15bの両側部には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などの絶縁体からなるゲート側壁絶縁膜28が設けられている。
【0087】
また、n型エクステンション層27bは高誘電体ゲート絶縁膜52とn型半導体ゲート電極層15bの積層構造両側のp型ウェル領域25に設けられ、n型拡散層27aはゲート側壁絶縁膜28の両側のp型ウェル領域25に設けられている。n型拡散層27aは、n型エクステンション層27bよりもp型ウェル領域25との接合深さが深くなるように構成されている。そして、n型拡散層27a及びn型エクステンション層27bがnチャネルMISトランジスタ32のソース・ドレイン領域となる。
【0088】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を、図13〜図18を参照して説明する。
【0089】
まず、図13(a)に示すように、シリコン基板11上によく知られた方法により素子分離絶縁膜22を形成した。すなわち、まず、SOI基板20にSTI用の溝(例えば、深さが約0.4μm)を設けてCVD法によりシリコン酸化膜を全面に堆積した。続いて、CMPを行ってデバイスを平坦化することにより、図13(a)に示す構造を得た。次に素子分離絶縁膜によって分離されたシリコン基板11のnチャネルMISトランジスタ31とpチャネルMISトランジスタの予定領域に例えばリンとボロンを選択的に約1MeVにてイオン注入し、約1100℃程度の高温短時間熱処理を行ない、n型ウェル領域24とp型ウェル領域25を形成する(図13(b))。さらに、各ウェルの表面領域にトランジスタの閾値調整のためにイオン注入を行う。
【0090】
引き続き、実施例1と同様な工程によって、ウェハ全面に高誘電体ゲート絶縁膜12、酸化物層100を堆積する(図13(c))。本実施例においては酸化物層100として第1金属元素からハフニウムおよびシリコン、第2金属元素から白金を選択し、HfSiPtO膜をスパッタリング法により成膜した。ハフニウムシリサイドのターゲットと白金のターゲットを用い、印加するパワー比を制御して絶縁膜中のPt添加量を制御した。本実施形態では、Ptの比率は10%とした。成膜時の基板温度は任意に設定することが可能であるが、本実施形態では室温で行った。混合物層100の膜厚は、0.5nm以上、3nm以下の範囲内で適宜決定することができるが、本実施形態では、2.0nmとした。ゲート絶縁膜はHfSiO膜をスパッタリング法により2.5nm成膜した。
【0091】
次に、Si26ガスあるいはSiH4ガスを含む雰囲気においてCVD法によって、酸化物層100上に半導体ゲート電極層14となる多結晶シリコン膜を図14(d)に示すように堆積した。
【0092】
次に、図14(d)の構造に対し全面にSiN層51を堆積し、通常のリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて、n型ウェル領域24上部のみSiN層51で被覆する。このSiN層51をマスクとして、CFxガスを用いた反応性イオンエッチングを用いて、p型ウェル領域25上の多結晶シリコン膜をエッチングする。さらにフッ化水素酸水溶液などの薬液を使用することにより、p型ウェル領域25上の酸化物層100、高誘電体ゲート絶縁膜12も除去することにより、図14(e)の構造を得る。
【0093】
次に、図14(e)の構造全面に、高誘電体ゲート絶縁膜52を堆積する。(図14(f))。このとき、高誘電体ゲート絶縁膜52としては、金属元素、酸素を含む絶縁膜層を選択して堆積する。金属元素としては、具体的には、表1(a)に示したように、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、シリコン、アルミニウム、ランタン等希土類元素から選択する。したがって、堆積する絶縁膜としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ランタン等希土類元素の酸化物あるいは混合酸化物ならびに酸窒化物、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、ランタン等希土類元素のシリケート・アルミネートあるいはこれらに窒素を添加した絶縁膜などが挙げられる。ここでは、一例としてハフニウムおよびシリコンを選択し、HfSiO膜をスパッタリング法により成膜した。ハフニウムシリサイドのターゲットを用い、印加するパワーを制御した。成膜時の基板温度は任意に設定することが可能であるが、本実施形態では室温で行った。高誘電体ゲート絶縁膜52の膜厚は、2nm〜5nmの範囲内で適宜決定することができるが、本実施形態では、2.5nmとした。
【0094】
次に、Si26ガスあるいはSiH4ガスを含む雰囲気においてCVD法によって、高誘電体ゲート絶縁膜52上に半導体ゲート電極層14となる多結晶シリコン膜を図15(g)に示すように堆積した。
【0095】
次に、図15(h)に示すように、SiN膜51の除去により、n型ウェル領域24上部の高誘電体ゲート絶縁膜12および半導体ゲート電極層14をリフトオフにより除去する。具体的には、例えば熱燐酸プロセスによってSiNを溶解することができる。そしてこの場合、半導体ゲート電極層14は熱燐酸には溶解しないため、図15(h)の構造を得ることが可能である。
【0096】
次に、多結晶シリコン膜上に通常のリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて、レジストパターン40を形成する。このレジストパターン40をマスクとして、CFxガスを用いた反応性イオンエッチングを用いて、多結晶シリコン膜をパターニングすることによって、図15(i)に示すように半導体ゲート電極層14を形成した。続いて、上記レジストパターン40を残置した状態で、酸化物層100、高誘電体ゲート絶縁膜12、52をフッ化水素酸水溶液によりエッチングして、図16(j)に示すような構造を得る。
【0097】
次に、図16(k)に示すように、O2 アッシャー処理によりレジストパターン40を除去する。この際、半導体ゲート電極層14の側面は若干酸化される。引き続き、硫酸と過酸化水素水の混合液によってO2 アッシャーで除去しきれなかったレジスト、残渣物などを化学的に除去する。この際、半導体ゲート電極層14は元来耐薬品性が強いが、これに加えてその表面が薄い酸化物で被覆されているため、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸食されにくい。
【0098】
ここで、図16(k)の構造に対し、600〜900℃程度の温度で熱処理を施すことにより、酸化物層100内の第2金属元素の還元作用を起こさせ、酸化物層100を遷移層13へと変化させることにより、図16(l)の構造を実現した。ここでは一例として850℃、30分のArアニールを行った。
【0099】
次に、図16(m)に示すように、n型ウェル領域24の上部をレジスト(図示せず)で保護し、p型ウェル領域25の領域に、n型の不純物、例えばリン,砒素,アンチモンなどをイオン注入する。そして、n型ウェル領域24上のレジストを除去した後、1000℃以上のスパイクアニールにより、n型エクステンション層27bを形成する。この際半導体ゲート電極層14にもn型のイオンが注入されるため、n型半導体ゲート電極層15bとなる。
【0100】
次に、図17(n)に示すように、p型ウェル領域25の上部をレジスト(図示せず)で保護し、n型ウェル領域24の領域に、p型の不純物、例えばボロン,インジウムなどをイオン注入し、p型ウェル領域25上のレジストを除去した後、1000℃以上のスパイクアニールにより、p型エクステンション層26bを形成する。この際半導体ゲート電極層14にもp型のイオンが注入されるため、p型半導体ゲート電極層15aとなる。
【0101】
次に、図17(o)に示すように、通常のプロセスでゲート側壁絶縁膜28を形成する。即ち、基板上の全面にCVD法等により酸化膜を堆積した後、半導体ゲート電極層15a、15bの上面が露出するまで、異方性エッチングを用いて全面エッチングすることによって、半導体ゲート電極層15a、15b、遷移層13および高誘電体ゲート絶縁膜12,52の側面に10nmの膜厚でゲート側壁28を残置した。
【0102】
次に、図17(p)に示すように、n型ウェル領域24の上部をレジスト41で保護し、p型ウェル領域25の領域に、n型の不純物、例えばリン,砒素,アンチモンなどをイオン注入し、n型拡散層27aを形成する。
【0103】
次に、図18(q)に示すように、n型ウェル領域24の上部のレジスト41を剥離した後に、p型ウェル領域25の上部をレジスト42で保護し、n型ウェル領域24の領域に、p型の不純物、例えばボロン,インジウムなどをイオン注入し、p型拡散層26aを形成する。
【0104】
次に、図18(r)に示すように、p型ウェル領域25の上部のレジスト42を剥離した後に、900℃以上の熱処理を行うことで、n型拡散層27a、p型拡散層26aを完全に活性化させた。
【0105】
これ以降は、層間絶縁膜29の形成、平坦化処理など通常の工程を経て、図12に示す構造を得ることができる。
【0106】
図示していないが、その後は、よく知られた方法により製造することにより、第一層配線までのMOS構造が得られる。例えば、層間絶縁膜29に、半導体ゲート電極層15a、15bに通じるコンタクトホールを開口し、コンタクトホールの底面にバリアメタルとしてのTiNをCVDで堆積した後、全面にプラグ材料としてのWを堆積し、コンタクトホールを埋め込む。その後、全面をCMPすることにより平坦化し、続いて配線材料としてAl−Cu膜を堆積し、フォトリソグラフィによりAl−Cu膜をパターニングすることによって、第一層配線までのMOS構造が得られる。
【0107】
本実施形態においては、pチャネルMISトランジスタ31のみに第2金属元素を配することを特徴としている。したがってそれぞれのトランジスタの閾値を対称にするためには、第2金属元素としてシリコンの価電子帯近傍のエネルギーに仕事関数を持つ材料を選択するのが望ましい。具体的には、表2の第2列に記載のルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金から選択するのが望ましい。
【0108】
ゲート電極層としては、シリコン、ゲルマニウムおよびそれらの混合物から適宜選択される半導体ゲート電極層がもっとも好ましい。しかしながら、これに限られるものではなく、TiN、TaN、TaSiN、TaC、W、WN、Ru、などの金属、およびこれら金属の積層膜、これら金属とポリSiの積層膜も適用可能である。これらのゲート電極層は耐熱性が高く、1000℃以上の熱処理にも耐えられるため、本発明の構成としてふさわしい。ただし、シリコンの伝導帯近傍のエネルギーに仕事関数を持つ材料であることがより望ましく、TaSiN、TaCなどがよい。
【0109】
本実施形態においては、pチャネルMISトランジスタ31のみ、仕事関数が高く、nチャネルMISトランジスタ32には従来のn型半導体ゲート電極層15bをそのまま使用するため、通常のCMOSデバイスにおいても、閾値電圧が低く設定できる。
【0110】
さらには、遷移層とゲート電極との間およびゲート絶縁膜と半導体基板との間のいずれか一方にシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物からなる絶縁膜を備えていても良い。LSIの製造工程で使用される高温熱処理において、高誘電体ゲート絶縁膜からゲート電極に酸素が拡散し、高誘電体ゲート絶縁膜中の酸素欠損が増大するのを防ぐためにゲート絶縁膜と遷移層との間およびゲート絶縁膜と半導体基板との間のいずれか一方にシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物からなる絶縁膜を備えることは効果的である。
【0111】
また、スパッタリングの際に雰囲気に混入させる窒素および酸素の量を制御することによって、誘電体膜中に窒素を含んだ酸窒化膜にしてもよい。
【0112】
高誘電体ゲート絶縁膜の形成には、本実施形態で示したスパッタリング法のほか、MOCVD法、ALD法、MBE法、PVD法などを用いることもできる。
【0113】
以上説明したように本実施形態によれば、低抵抗で耐熱性を有し、空乏化閾値電圧ばらつきといった問題もないゲート電極を有するCMOSデバイスを得ることができる。また、このCMOSデバイスを製造する際のステップ数が増加するのを防止できると共に複雑なプロセスが必要でなくなる。
【0114】
(第3の実施の形態:FG型フラッシュメモリ)
図19は、第3の実施の形態に係るスタック型メモリセルの一例の、ワード線方向、およびワード線方向に垂直な面で切った断面模式図である。図19に示すように、半導体基板134上にトンネル絶縁膜136、浮遊ゲート電極137、電極間High−k絶縁膜138、界面遷移層139、制御ゲート電極140がこの順に積層されていて、本実施例においてはトンネル絶縁膜136、浮遊ゲート電極137、電極間High−k絶縁膜138、界面遷移層139、制御ゲート電極140の積層構造(以下、メモリゲートスタック)の側壁部には側壁酸化膜141、が形成されている。側壁酸化膜141で被覆されたメモリゲートスタックは、層間絶縁膜142で覆われている。半導体基板134中にはソース・ドレイン拡散層135が、メモリゲートスタックの両側に設けられている。個々のスタック型メモリセルは素子分離143で互いに隔てられている。
【0115】
本実施例では、制御ゲート電極140は従来同様のn+ポリシリコンの他、金属、金属シリサイド、金属窒化物、窒化金属シリサイド、金属炭化物、などを用いることが出来る。デバイス製造方法が従来法を踏襲できるという観点からは、ポリシリコンゲートを用いるのが最も良い。界面遷移層139は、先の実施例で説明したような製造方法によって形成された。界面遷移層139は還元されたWあるいはHfW2を含有する層であり、これら含有金属の作用で金属的な振る舞いを示す。これにより、従来のメモリセルで課題となっていたポリシリコンゲートの空乏領域における制御ゲート電圧降下の問題が回避されるため、有効に書き込み/消去の動作を行うことが可能になり、Vthウィンドウが大きくなり記憶容量の機能が向上する。
【0116】
ここで、遷移層で還元される金属としては出来るだけ仕事関数の高い材料が好ましい。浮遊ゲートへの書き込み動作時には制御ゲートに高い電圧が印加される。このとき遷移層で還元される金属元素の仕事関数が低いと、電極間絶縁膜に対し容易にキャリアが注入されるようになり、これは制御ゲート⇔浮遊ゲート間の漏れ電流の原因となる。このような理由から還元される金属元素の種類としては、より仕事関数の大きい、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などを選択するのが良い。
【0117】
また、電極間絶縁膜は、High−k絶縁膜138で構成されているため、書き込み/消去時に制御ゲートに大きな電圧が印加されたとき、浮遊ゲートとの間の容量カップリングを強く保ちつつ、漏れ電流は低く制限することが可能となる。これにより、書き込み/消去動作を従来よりも有効に行える。
【0118】
もちろん、先の実施例と同様、遷移層から排出された酸素が電極間High-k絶縁膜に供給されるため、電極間High-k絶縁膜中の酸素欠損濃度は著しく低減する。この作用により、制御ゲートと浮遊ゲートの間の漏れ電流はさらに低減し、メモリのしきい値ウィンドウがさらに拡大し、望ましい。
【0119】
以上のように、本発明の第3の実施例では、スタック型メモリセルの制御ゲート/電極間絶縁膜の界面に酸化物から還元された金属元素を含む層を配する。これにより、従来の制御ゲートポリシリコンのために構築された一般的プロセスを活用しながら、酸化物還元層によるポリ空乏化の抑制、電極間High-k絶縁膜の酸素欠損補償を同時に達成する。これにより、より簡便なプロセスで、メモリウィンドウの広いスタック型メモリセルを準備することが可能となった。
【0120】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限られず、特許請求の範囲に記載の発明の要旨の範疇において様々に変更可能である。また、本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するための概念図。
【図2】本実施の形態の半導体装置の原理を説明するための模式図。
【図3】半導体装置のゲート絶縁膜に添加されたWの結合状態を表すXPSによって測定されたスペクトル。
【図4】本実施の形態と従来例の半導体装置の容量−電圧ヒステリシス特性を示す図。
【図5】本実施の形態と従来例の半導体装置の容量−電圧特性を示す図。
【図6】第1実施形態に係わる半導体装置の概略構成を示す素子構造断面図。
【図7】第1実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図8】第1実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図9】第1実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図10】第1実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図11】第1実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図12】第2実施形態に係わる半導体装置の概略構成を示す素子構造断面図。
【図13】第2実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図14】第2実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図15】第2実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図16】第2実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図17】第2実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図18】第2実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図19】第3実施形態に係わる半導体装置断面図。
【符号の説明】
【0122】
11・・・シリコン基板
12・・・高誘電体ゲート絶縁膜
13・・・金属ゲート電極層
14・・・半導体ゲート電極層
15a・・・p型半導体ゲート電極層
15b・・・n型半導体ゲート電極層
20・・・SOI基板
21・・・埋め込み酸化膜
22・・・素子分離絶縁膜
23・・・シリコン層
24・・・n型ウエル領域
25・・・p型ウエル領域
26a・・・p型拡散層
26b・・・p型エクステンション層
27a・・・n型拡散層
27b・・・n型エクステンション層
28・・・ゲート側壁絶縁膜
29・・・層間絶縁膜
31・・・pチャネルMISトランジスタ
32・・・nチャネルMISトランジスタ
40・・・ゲート電極レジストパターン
41・・・レジスト
42・・・レジスト
51・・・SiN層
52・・・高誘電体ゲート絶縁膜
100・・・混合物層
134・・・半導体基板
135・・・ソース・ドレイン拡散層
136・・・トンネル絶縁膜
137・・・浮遊ゲート電極
138・・・電極間High−k膜
139・・・遷移層
140・・・制御ゲート電極
141・・・側壁酸化膜
142・・・層間絶縁膜
143・・・素子分離用絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成された半導体領域と、
前記半導体領域上に形成され、1種以上の第1金属元素の酸化物で形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成され、酸化物の生成自由エネルギーについて前記第1金属元素よりも大でありかつ金属状態である第2金属元素、および前記第1金属元素の酸化物で形成された遷移層と、
前記遷移層上に形成された電極と、
前記電極をゲート長方向に挟む前記半導体領域に形成されたソース・ドレイン領域とを備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板に形成されたN型半導体領域と、
前記N型半導体領域上に形成され、1種以上の第1金属元素の酸化物で形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成され、酸化物の生成自由エネルギーについて前記第1金属元素よりも大でありかつ金属状態であるクロム・モリブデン・タングステン・鉄・コバルト・ニッケルのいずれかからなる第2金属元素、および前記第1金属元素の酸化物で形成された第1遷移層と、
前記第1遷移層上に形成された第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極をゲート長方向に挟む前記N型半導体領域に形成された第1ソース・ドレイン領域と、を具備するPチャネルMISトランジスタと、
前記基板に形成されたP型半導体領域と、
前記P型半導体領域上に形成され、前記第1金属元素の酸化物で形成された第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成され、金属状態の前記第2金属元素および前記第1金属元素の酸化物で形成された第2遷移層と、
前記第2遷移層上に形成され、前記第1ゲート電極と同じ材料で形成された第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極をゲート長方向に挟む前記P型半導体領域に形成された第2ソース・ドレイン領域と、を具備するNチャネルMISトランジスタと、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
基板と、
前記基板に形成されたN型半導体領域と、
前記N型半導体領域上に形成され、1種以上の第1金属元素の酸化物で形成された第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に形成され、酸化物の生成自由エネルギーについて前記第1金属元素よりも大でありかつ金属状態であるルテニウム・ロジウム・パラジウム・レニウム・イリジウム・白金のいずれかからなる第2金属元素、および前記第1金属元素の酸化物で形成された第1遷移層と、
前記第1遷移層上に形成された第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極をゲート長方向に挟む前記N型半導体領域に形成された第1ソース・ドレイン領域と、を具備するPチャネルMISトランジスタと、
前記基板に形成されたP型半導体領域と、
前記P型半導体領域上に形成され、前記第1金属元素の酸化物を有する第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上に形成され、前記第1ゲート電極と同じ材料で形成された第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極をゲート長方向に挟む前記P型半導体領域に形成された第2ソース・ドレイン領域と、を具備するNチャネルMISトランジスタと、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記第1金属元素がハフニウムであり、
前記第2金属元素がタングステンであることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記遷移層の厚さは、0.5nm以上3nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体領域上に、1種以上の第1金属元素の酸化物を有するゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記第1金属元素の酸化物の生成自由エネルギーよりも大きい生成自由エネルギーを有する第2金属元素の酸化物、および前記第1金属元素の酸化物の混合物層を形成する工程と、
前記混合物層上に、ゲート電極材料層を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜、前記混合物層およびゲート電極材料層を加工しゲート電極を形成する工程と、
その後、熱処理によって前記第2金属元素の酸化物を還元し、第2金属元素を金属状態にする工程と、
前記ゲート電極をゲート長方向に挟む前記半導体領域に、ソース・ドレイン領域を形成する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記混合物層の形成工程において、前記混合物層の酸素組成は、前記第1金属元素の酸化物の化学量論組成と前記第2金属元素の酸化物の化学量論組成とから予測される酸素組成よりも少ないことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−91555(P2008−91555A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269774(P2006−269774)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】