説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ソース領域およびドレイン領域をシリサイド化しても、リーク電流を可及的に抑えることを可能にする。
【解決手段】半導体領域7を有するシリコン基板2と、半導体領域に離間して形成されたソース/ドレイン領域11a、15a、11b15bと、ソース領域とドレイン領域との間の半導体領域上に形成された絶縁膜9aと、絶縁膜上に形成されたゲート電極10aと、ゲート電極の側部に形成された側壁絶縁膜13aと、第1ソース/ドレイン領域上に形成され、少なくとも{111}面となる表面を有する単結晶シリコン層17a、17bと、少なくとも単結晶シリコン層の{111}面上に形成され、かつ側壁絶縁膜に接する部分を有し、この部分と単結晶シリコン層との界面が単結晶シリコン層の{111}面であるNiSi層21a、21bと、NiSi層に接する第1のTiN膜23a、23bと、を有する第1のMOSFETと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSFETを備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波移動体通信の目覚しい普及に代表されるように、超高速高機能半導体装置の実現により社会生活の情報化が著しく進行している。これに伴い、これらに用いられる個々の半導体素子の高速化、微細化、大規模集積化、ワンチップ化に対する要求は時を追って増大している。しかし、これらの半導体素子の主要な構成要素であるMOSFETの微細化、高速化を考えた場合、これには様々な困難が伴う。
【0003】
例えば、MOSFETのチャネル長 、即ちゲート電極の長さの縮小に伴いしきい値電圧が低下する(短チャネル効果)。半導体回路の設計時に意図したしきい値電圧と異なった素子が形成されると、設計の意図とは異なる素子動作を引き起こし、回路全体の機能を損なう。更にゲート電極の加工寸法に、しきい値電圧が依存するため、わずかな加工ずれでも、目途の特性の素子を得る事が不可能となり、多数の均一な素子を必要とする半導体回路、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)の製造には、極めて不都合となる。
【0004】
この様な短チャネル効果は、MOSFETのソース電極およびドレイン電極部分での電界の歪みが、チャネル長の縮小に伴い、チャネル部分中央付近にまで影響を与える事に起因している。この影響は、ソース領域およびドレイン領域が形成するpn接合の接合位置を半導体表面に近づける、即ちpn接合を”浅くする”事で回避出来る。しかし、単に、pn接合を浅くすると、これにより構成されているソース電極およびドレイン電極の抵抗が増大し、素子を伝わる信号の高速伝達を阻害する。
【0005】
この問題に対処し、ソース電極およびドレイン電極の低抵抗化を図るために、ソース領域およびドレイン領域の上部を一部、金属と化合(シリサイド化)させることが行われる。シリサイドを行うための金属種としては、Co,Ti,Niのような元素が使用されている。これらの元素のうち、細線形状にしたときに電気抵抗の上昇(細線効果)がみられず、微細化LSIに対応可能なシリサイド化用の金属種はNiである。SiとNiの金属化合反応(シリサイド化反応)は、CoSiの形成温度である800℃よりも低温の450℃で行うことができ、この際、低電気抵抗相であるNiSiという相が形成される。NiSi相は、さらに高温の熱処理を施すと、750℃前後で電気抵抗の高いNiSiという最終相へ転移していく。LSIに利用するのは、抵抗率の小さいNiSi相となる。
【0006】
しかし、低抵抗相のNiSiを形成した後、このシリサイド層と金属配線との電気的接合を得るために500℃、90分程度の低温熱処理が必要になるが、この際に、Ni原子は急速に拡散し、この熱処理を行っただけで、140nmの深さにまで達してしまうことが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
このように、金属原子の高速な拡散は、金属とシリコンが接した面では不可避的に進行する。シリコン基板の深くに侵入した金属原子により、シリコン禁止帯中に、リーク電流の生成を媒介する準位が形成される。当然ソース領域およびドレイン領域の接合部分に準位が形成されれば、ここにリーク電流が発生してしまう。ソース領域およびドレイン領域の接合を通じて電流が漏れ出すと、素子の動作が損なわれ、DRAMなどの記憶素子では、書き込まれた情報が失われてしまい、半導体装置の本来の機能が喪失する。
【0008】
このような問題に対処するため、従来、ソース電極およびドレイン電極を形成しようとする半導体基板の表面部分に選択的に半導体物質(例えば、シリコン)を追加形成し、この領域の表面を元々の半導体表面、即ちチャネルの形成される面より上方に移動させ、この追加形成された表面を通じてソース領域およびドレイン領域のpn接合の形成、およびシリサイド層の形成を行うことで、接合の位置は本来の半導体表面、即ちチャネルの形成される面に対しては浅く、しかし追加形成された表面からは深く、従ってソース領域およびドレイン領域を形成する電極部分の厚み(拡散層の厚み)は確保するというエレベーテッドソース/ドレイン法(Elevated source drain method)が用いられて来た。こうした選択シリコン成長は、エピタキシャル成長技法を用いて達成することが出来る。
【0009】
しかしながら、選択シリコン成長膜はゲート電極に隣接した領域でその膜厚が薄くなる。このため、金属を堆積した層から、接合面への最短距離はこの部分で決まってしまい、選択シリコン成長膜をいくら厚くしても、接合リーク電流を抑制する機能は限られてしまうことになる。
【0010】
結局、ゲート電極の直近に形成される接合が極めて浅いソース/ドレインエクステンション領域上にシリコン層を追加形成し、これをシリサイド化すれば、忽ち、著しい接合リーク電流が発生してしまうことになる。よって、ソース/ドレインエクステンション領域上には金属化合層を形成することはできず、この部分の電気的抵抗は非常に高くなり、大きな電位降下が発生する。即ち、素子に印加する電位が充分チャネル部分に伝達せず、高駆動力のMOSFETの実現を妨げることになる。
【0011】
また、半導体基板への接合リーク電流を遮断するために、SOI(Silicon On Insulator)構造へのLSI回路の製造が提案されている。しかし、この場合であっても、ソース電極およびドレイン電極の低抵抗化を図るために、ソース領域およびドレイン領域の上部を一部、金属と化合(シリサイド化)させることが必要であることには変わりはない。この際、金属原子の高速な拡散は、金属とシリコンが接した面では不可避的に進行するので、金属原子がチャネル部分に浸潤すれば、当然、ゲート電極によりチャネル電流を制御する能力が毀損され、意図したように、チャネル電流を遮断することが適わなくなり、半導体装置の本来の機能が喪失する。
【0012】
したがって、接合リーク電流の発生を回避するためには、ゲート電極に隣接した領域でシリサイド層から金属原子が放出されることを抑制する新たな手立てを確立することが必要不可欠の課題となる。
【非特許文献1】M.Tsuchiaki, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, p.5166 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上詳しく説明した通り、素子の微細化に伴い、ソース領域およびドレイン領域の接合位置を浅く保ちつつ、且つ、ソース電極およびドレイン電極の電気抵抗を低く抑えるために、これをシリサイド化することが必要になるが、シリサイドを形成する金属原子の高速拡散と、これが引き起こす接合リーク電流、或いはソース領域とドレイン領域間のチャネルリーク電流を低く抑えることが困難になってくる。
【0014】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、ソース領域およびドレイン領域をシリサイド化しても、リーク電流を可及的に抑えることのできる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様による半導体装置は、第1導電型の第1半導体領域を有するシリコン基板と、前記第1半導体領域に離間して形成された第2導電型の第1ソース/ドレイン領域と、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記第1半導体領域上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の側部に形成された第1側壁絶縁膜と、前記第1ソース/ドレイン領域上に形成され、少なくとも{111}面となる表面を有する第1単結晶シリコン層と、少なくとも前記第1単結晶シリコン層の{111}面上に形成され、かつ前記第1側壁絶縁膜に接する部分を有し、前記部分と前記第1単結晶シリコン層との界面が前記第1単結晶シリコン層の{111}面である第1のNiSi層と、前記第1のNiSi層に接する第1のTiN膜と、を有する第1のMOSFETと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第2の態様による半導体装置は、第1導電型の第1半導体領域を有するシリコン基板と、前記第1半導体領域に離間して形成された第2導電型の第1ソース/ドレイン領域と、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記第1半導体領域上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の側部に形成された第1側壁絶縁膜と、前記第1ソース/ドレイン領域上に形成され、前記第1ソース/ドレイン領域に達する複数の第1溝が設けられ、前記第1溝の側面が{111}面となる第1単結晶シリコン層と、前記第1単結晶シリコン層の、少なくとも{111}面上に形成された第1のNiSi層と、前記第1のNiSi層に接する第1のTiN膜と、を有する第1のMOSFETと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第3の態様による半導体装置は、第1導電型の第1半導体領域を有するシリコン基板と、前記第1半導体領域に離間して形成された第2導電型の第1ソース/ドレイン領域と、前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記第1半導体領域上に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の側部に形成された第1側壁絶縁膜と、前記第1ソース/ドレイン領域上に形成された第1単結晶シリコン層と、前記第1単結晶シリコン層上に形成された第1のNiSi層と、前記第1のNiSi層上に接するように形成された第1のTiN膜と、
を有する第1のMOSFETと、を備え、前記第1単結晶シリコン層と前記第1のNiSi層との界面が前記第1単結晶シリコン層の{111}面であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第4の態様による半導体装置は、絶縁膜上に形成され、対向した一対の第1側面及び対向した一対の第2側面を有する実質的に板状の単結晶シリコン層のチャネル領域と、前記絶縁膜上に形成され、対向した一対の第3側面及び対向した一対の第4側面を有する実質的に板状の単結晶シリコン層であって、前記第3側面が{111}面となり、前記第4側面のうちの一方の側面が前記チャネル領域の前記第1側面のうちの一方の側面に接続されたソース領域と、前記絶縁膜上に形成され、対向した一対の第5側面及び対向した一対の第6側面を有する実質的に板状の単結晶シリコン層であって、前記第5側面が{111}面となり、前記第6側面のうちの一方の側面が前記チャネル領域の前記一対の第1側面のうちの他方の側面に接続されたドレイン領域と、前記チャネル領域の前記一対の第2側面を覆う一対のゲート絶縁膜と、前記一対の絶縁膜を介しての前記チャネル領域の側面を覆う一対のゲート電極と、前記ソース/ドレイン領域の前記単結晶シリコン層の{111}面に形成されたNiSi層と、前記NiSi層に接して形成されたTiN膜と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第5の態様による半導体装置の製造方法は、シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクにして前記シリコン基板にソース/ドレイン領域を形成する工程と、前記ソース/ドレイン領域上にシリコン層を選択的に追加形成し、前記ゲート電極の側面に対向した前記シリコン層の露出した面がシリコンの{111}面となるようにする工程と、前記追加形成されたシリコン層のシリコンの{111}面上にNiSi層を形成する工程と、前記NiSi層を覆うTiN膜を形成する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第6の態様による半導体装置の製造方法は、シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極をマスクにして前記シリコン基板にソース/ドレイン領域を形成する工程と、前記ソース/ドレイン領域上に、シリコン層を堆積する工程と、前記シリコン層の上面上に第1炭素含有シリコン層を形成する工程と、前記シリコン層の、前記第1炭素含有シリコン層が形成されていない露出している面を熱酸化する工程と、前記第1炭素含有シリコン層を除去する工程と、前記シリコン層に、側面がシリコンの{111}面となる複数の溝を形成する工程と、前記溝の側面にNiSi層を形成する工程と、前記NiSi層を覆うTiN膜を形成する工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ソース領域およびドレイン領域をシリサイド化しても、リーク電流を可及的に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に至った経緯について説明する。
【0023】
前述したように、我々は、NiSiがNiSiへの相転移温度である750℃よりもはるかに低いが、NiSiと電気配線物質との良好な電気的接続を小さい開口部のコンタクトホールを通じて達成しようとする時に不可欠な500℃前後の熱処理を行っただけでも、シリサイド膜よりずっと深い接合で、すでに接合リークを発生させることを見出した。そこで、我々は、NiSiの熱的不安定性に起因した接合リーク電流が、NiSi層を形成するシリコン面の結晶方位により、どのように変化するかをさらに詳細に調べた。
【0024】
この結果、NiSi層を特定のシリコン結晶面に形成し、特定の積層膜を構築することにより、接合リーク電流を抑制することが可能であることを新たに発見した。このことを以下に詳細に説明する。
【0025】
接合リーク電流の面方位依存性
まず、我々は、様々な深さのpn接合を形成した{100}面、{110}面、{111}面を主表面にもつSi基板をそれぞれ用意し、この上にNiを堆積した後、450℃の窒素雰囲気中でRTA(Rapid Thermal Annealing)処理を行い、NiSi層を30nmの厚さに形成した。なお、{100}面は(100)面に等価な結晶面を表し、{110}面は(110)面に等価な結晶面を表し、{111}面は(111)面に等価な結晶面を表している。その後、これらの試料に500℃の温度の熱処理を90分間行い、発生する接合リーク電流密度を、様々な接合深さxで観測した。熱処理の昇降温度の速度は100℃/minに設定した。
図1は、Si基板の{100}面にNiSi層を形成した場合の接合リーク電流面密度分布を、様々な接合深さをパラメータにとってワイブルプロットとして表した図である。接合リーク電流の分布は312個の、1mm×1mmの矩形接合のリーク電流分布より求めた。参考のため、シリサイドを施さなかった接合(No Silicide)の接合リーク電流のデータも合わせて示してある。図1および後述する図2、3において、横軸は接合リーク電流面密度の常用対数値であり、縦軸はlnを自然対数関数とするとき、ln(−ln(1−F))の値を示す。Fは対応するリーク電流以下の接合数の全接合数に対する割合である。
【0026】
図2は、Si基板の{110}面にNiSi層を形成した場合の接合リーク電流面密度分布を、様々な接合深さをパラメータにとってワイブルプロットとして表した図である。
【0027】
図3は、Si基板の{111}面にNiSi層を形成した場合の接合リーク電流面密度分布を、様々な接合深さをパラメータにとってワイブルプロットとして表した図である。
【0028】
{100}面にNiSi層を形成した場合
図1に示すように、接合深さxが浅くなるに従って、ワイブルプロットは傾きがほぼ垂直のまま、接合リーク電流が増大する。即ち、すべての接合において、余すところ無く、一斉に、接合リーク電流が、接合深さの減少に伴い増大している。このことは、リーク電流の発生には、均一で多数のリーク源が関与していることの証左であり、リーク電流はNi原子が細かくSi基板に拡散し、シリコン禁止帯中にリーク電流の生成を媒介する準位を多数形成したことを示す(例えば、M.Tsuchiaki, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, p.5166 (2004)参照)。
【0029】
{110}面にNiSi層を形成した場合
図2に示すように、やはり、Si基板の{100}面にNiSi層を形成した場合と同様、接合深さxが浅くなるに従って、ワイブルプロットはほぼ垂直のまま、接合リーク電流が増大する。この場合も、リーク電流はNi原子が、細かくSi基板中に拡散し、シリコン禁止帯中にリーク電流の生成を媒介する準位を多数形成したことが示される。
【0030】
{111}面にNiSi層を形成した場合
しかしながら、Si基板の{111}面にNiSi層を形成した場合は、{100}面、{110}面にNiSi層を形成した場合とは全く異なり、図3に示すように、接合深さxが浅くなるに従って、ワイブルプロットは、下方部を共有したまま、上方部が漸進的に傾いてくる。このことは、リーク電流が殆ど発生しない接合(ワイブルプロット下方部)も有れば、リーク電流が著しく発生してくる接合(ワイブルプロット上方部)も混在していることを意味する。即ち、リーク電流は確率的に発生したりしなかったりする。このような確率的挙動が見られるのは、リーク電流の発生が少数の壊滅的リーク電流発生源によってもたらされているためである。Ni原子が拡散し、接合を貫通するような、シリサイド層の突出部(シリサイドスパイク)が形成されたことが示唆される。
【0031】
実際、これを確かめるために、Si基板の{111}面にNiSi層を形成した接合のうち、大きなリーク電流を示す試料に、逆バイアス電位を与え、これからの発光を観察した結果を、図4に示す。発光は局在化しており、特定の部位からのみ観測される。これは、リーク電流がこの特定の部位に集中して発生しており、逆バイアス電位で加速された荷電担体(キャリア)が散乱されたり、再結合したりすることにより光子を放出することによる。
【0032】
更に、このリーク電流発生源の物理的実態を探るため、この発光部位のNiSi層の断面を透過型電子顕微鏡で観察した。典型的な結果を図5に示す。NiSi層のシリコン基板への突出部(シリサイドスパイク)が形成されていることがわかる。この部分の組成をEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)法によって解析した結果、NiSi相が形成されていることが判明した。{111}面にNiSi層を形成した場合、500℃という低温でも、NiSiからNiSiへの相転移が進行し、これに伴い、Ni原子が拡散し、シリサイド層の突出部(シリサイドスパイク)が形成されたことがわかる。これは、NiSiの{111}面とSiの{111}面の結晶構造が極めて整合性が良いために起こる特異的現象であると考えられる。
【0033】
これに対し、Si基板の{100}面、{110}面にNiSi層を形成した場合、NiSiのNiSiへの相転移は確認されなかったことを付言しておく。
【0034】
以上、述べてきたように、NiSi層に起因した接合リーク電流の発生機構には明らかに、NiSi層を形成するSi基板の結晶方位依存性があることが解明された。
【0035】
Si基板の{100}面、{110}面にNiSi層を形成した場合、Ni原子が細かくSi基板に拡散し、シリコン禁止帯中にリーク電流の生成を媒介する準位を多数形成するが、Si基板の{111}面にNiSi層を形成した場合、NiSiからNiSiへの相転移が進行し、これに伴い、Ni原子が拡散し、シリサイド層の突出部(シリサイドスパイク)が形成される。
【0036】
更に、ここで特筆すべきは、Si基板の{111}面にNiSi層を形成した場合は、Si基板の{100}面、{110}面にそれぞれNiSi層を形成した場合のように、Ni原子が細かくSi基板に拡散することは無いということである。即ち、シリサイドスパイクの形成さえ抑制できれば、{111}面上のNiSi層からは一切、接合リーク電流が発生しない(図3のワイブルプロット下方部に対応)ということになる。
【0037】
シリサイドスパイク発生の積層膜構造依存性
このような、Siの{111}面上のNiSi層からのシリサイドスパイクの形成を、詳しく分析した結果、我々は、シリサイドスパイクの発生が、NiSi層の上部に積層する膜により大きく異なることを発見した。
【0038】
図6Aに、Siの{111}面上に形成した、細線状の複数のNiSi層をSEM(Scanning Electron Microscope)によって観察した結果を示す。NiSi層中に散在している多角形の斑紋は、シリサイドスパイクの発生に伴う表面凹凸を反映していると考えられる。また、NiSi層上に規則的に整列している白い円状のパターンは、コンタクトホールのあった位置を示している。このコンタクトホールの断面図を図6Bに示す。試料は、素子形成過程と同様に、NiSi層の形成後、SiN層、SiO層を堆積し、その後これらのSiO層、SiN層を貫き、NiSi層に至るコンタクトホールを穿ち、この外表面にTiN層を形成し、これに、500℃、90minの熱処理を加えた後のものを使用している。
【0039】
この図6A、6Bからわかるように、非常に特徴的なことに、シリサイドスパイクの発生は、SiN層を積層したNiSi層領域では頻発しているが、TiN層が上部に形成されているNiSi層領域(規則的に整列している白い円状のパターン内)では、一切発生していないことである。このことを、更によく見るために、一つのTiN層が上部に形成されているNiSi層領域(白い円状のパターン)の拡大図を、図6Cに示す。図6Cからわかるように、NiSi層にTiN層が積層されている限り、NiSi層にスパイクの発生の元となるような表面の変性は一切観測されないことが明確に見て取れる。また、表面の変性がコンタクトホール位置に依存していることから、スパイクの発生が、コンタクトホール形成後の熱処理にあることも証明されることを付言しておく。
【0040】
このような、TiN層をシリサイド層に積層する効果は、Siの{111}面上に形成したNiSi層に特異的に発現するものである。図7、図8に、それぞれ、Siの{100}面、Siの{110}面上に形成したNiSi層の同様なSEM観察結果を示す。Siの{100}面、Siの{110}面上に形成したNiSi層のリーク電流の発生機構が、Siの{111}面上に形成したNiSi層と異なることに対応して、これらの面上では、上部にTiN層が積層されているか否かに係わらず、規則的に整列している白い円状のパターン内でも、NiSi層の変性が進み、Ni原子がSi基板中に拡散消失していることが理解される。
【0041】
TiN層の積層によるNiSi層の安定性向上効果の特異的発現の起源を探るため、Siの{100}面、Siの{110}面、Siの{111}面上に形成したNiSi層の結晶配向性をXRD(X-Ray Diffraction)分析によって調べた結果を、図9に示す。図9からわかるように、Siの{100}面上のNiSi層は色々な結晶配向性をもっているが、TiN層の積層によるNiSi層の安定性向上は見られない。また、Siの{110}面上のNiSi層は主にNiSi(112)に配向しているが、このときも、TiN層の積層によるNiSi層の安定性向上は見られない。しかし、Si{111}面上のNiSi層では、スパイクの存在を示すNiSi{111}面が観測されるほかは、NiSi層には、Si{100}面およびSi{110}面上と異なり、NiSi(200)に対応するBragg反射条件由来のピークのみが観測されている。すなわちNiSiは単一、或いは、複数の単結晶体から構成されは、それぞれの単結晶体の(100)面が、Si{111}面と平行となっている(以後、これをNiSi(200)方向に配向していると称する)。このときに限り、TiN層の積層によるNiSi層の安定性向上効果が特異的に発現していることになる。NiSiの(100)面上にTiN層が形成されると、その界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる結果、層形状の変性、スパイクの発生が効果的に抑制されたと解することが出来る。
【0042】
以上、詳しく説明したように、Siの{111}面上にNiSi層を形成すると、NiSiの(200)面に配向したNiSi層が得られる。この上にTiN層を積層すると、界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる結果、膜形状の変性、スパイクの発生が効果的に抑制できる。このため、接合リークの発生を完全に抑止できる。
【0043】
よって、MOSFETのエクステンション領域、ゲート電極、ゲート側壁、ソース/ドレイン領域を形成後、エクステンション領域を含むソース/ドレイン領域上に選択的にシリコン層を追加形成する際、ゲート電極に隣接した領域に、Siの{111}面を形成し、この面上にNiSi層を形成し、TiNからなるゲート側壁を更に積層することで、シリサイド化され、且つ、Ni原子の移動および接合リーク電流が低く抑えられ、熱的安定性向上により、配線金属との良好な電気的接触が確保された、超高速微細MOSFETを実現できることになる。
【0044】
また、エクステンション領域、ソース/ドレイン領域をSiの{111}面で構成し、この上にNiSi層を形成し、TiNを更に積層することで、シリサイド化され、且つNi原子の移動および接合リーク電流が低く抑えられ、熱的安定性向上により、配線金属との良好な電気的接触が確保された、超高速微細MOSFETを実現できることになる。
【0045】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0046】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、Siの{100}面上に形成されたエレベーテッドソース/ドレイン構造を有する相補型MOSFET(C−MOSFET)であって、ゲート電極に隣接した領域に、Siの{111}面が形成され、この上にNiSi層が形成され、TiNからなるゲート側壁が更に積層された構造を有している。この構造とすることで、浅いソース/ドレイン拡散層を有し、シリサイド化され、且つ、接合リーク電流が低く抑えられ、熱的安定性の向上により、配線金属との良好な電気的接触が確保された、C−MOSFET構造を具現する。
【0047】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を、図10乃至図18を参照して説明する。
【0048】
まず、図10に示すように、(100)面を主表面とするp型単結晶シリコンの半導体基板2に、素子分離用の浅い溝(shallow trench)を形成し、この溝を絶縁膜、例えばシリコン酸化膜で埋め込むことにより、素子分離領域4を形成する。この素子分離領域4によって、n−MOSFETの形成予定領域5およびp−MOSFETの形成予定領域6が画定される。これらの素子分離領域4を備えるシリコン基板は、リソグラフィー工程およびRIE工程等により基板表面に溝を形成した後、CVD(chemical vapor deposition)法による絶縁膜堆積、さらに、CMP(chemical mechanical polishing)法による平坦化等、公知の技術の効果的な方法により達成できる。
【0049】
次に、図11に示すように、n−MOSFETの形成予定領域5およびp−MOSFETの形成予定領域6にそれぞれ、p型ウェル領域7およびn型ウェル領域8を、イオン注入法および熱処理等公知の技術の効果的な方法を用いて形成する。続いて、基板2上に、一面にゲート絶縁材料膜、例えば膜厚が5nmの酸窒化膜を、例えば熱酸窒化法などの、公知の技術の効果的な方法を用いて形成する。このゲート絶縁材料膜上に、ゲート電極材料膜、例えば膜厚200nmのポリシリコン膜を、例えばCVD法などの公知の技術の効果的な方法を用いて堆積する。この後、リソグラフィー法によりマスク材、例えばフォトレジストを形成し、RIE工程等により、ゲート電極材料膜およびゲート絶縁材料膜をパターニングし、p型ウェル領域7上にゲート絶縁膜9aおよびゲート電極10aを形成し、n型ウェル領域8上にゲート絶縁膜9bおよびゲート電極10bを形成する。なお、ゲート電極10a、10bはSiの<110>方向に沿って形成する。ここで、<110>方向は、[110]方向に等価な結晶方向を示している。
【0050】
次に、n型ウェル領域8およびゲート電極10bをフォトレジストで覆い、ゲート電極10aをマスクとして、n型の不純物をp型ウェル領域7にイオン注入することにより、接合深さが浅いn型のエクステンション領域11a、11bを形成する(図11参照)。続いて、フォトレジストを除去し、p型ウェル領域およびゲート電極10aをフォトレジストで覆い、ゲート電極10bをマスクとして、p型の不純物をn型ウェル領域8にイオン注入することにより、接合深さの浅いp型のエクステンション領域12a、12bを形成し、その後上記フォトレジストを除去する(図11参照)。なお、本実施形態においては、n型のエクステンション領域11a、11bを形成し、その後にp型のエクステンション領域12a、12bを形成したが、逆の順序で形成してもよい。
【0051】
次に、例えばCVD法を用いて膜厚が10nmのシリコン窒化膜を一面に堆積し、その後、上記シリコン窒化膜を覆うように例えばスパッタ法を用いて膜厚30nmの炭素膜を堆積する。続いて、RIE工程等の異方性エッチングを行い、ゲート電極10aの側部(左右)に上記シリコン窒化膜からなるゲート側壁13aおよび上記炭素膜からなるゲート側壁14aを形成するとともに、ゲート電極10bの側部(左右)に上記シリコン窒化膜からなるゲート側壁13bおよび上記炭素膜からなるゲート側壁14bを形成する(図12参照)。
【0052】
次に、n型ウェル領域8およびゲート電極10bをフォトレジストで覆い、ゲート電極10aをマスクとして、n型の不純物をp型ウェル領域7にイオン注入することにより、n型エクステンション領域11a、11bよりも接合深さが深いn型の拡散層15a、15bを形成する(図12参照)。このとき、ゲート電極10aにn型の不純物がイオン注入される。続いて、フォトレジストを除去し、p型ウェル領域およびゲート電極10aをフォトレジストで覆い、ゲート電極10bをマスクとして、p型の不純物をn型ウェル領域8にイオン注入することにより、p型エクステンション領域12a、12bよりも接合深さの深いp型の拡散層16a、16bを形成し、その後上記フォトレジストを除去する(図12参照)。このとき、ゲート電極10bにp型の不純物がイオン注入される。なお、本実施形態においては、n型の拡散層15a、15bを形成し、その後にp型の拡散層16a、16bを形成したが、逆の順序で形成してもよい。n型の拡散層15aおよびエクステンション領域11aがn型ソース/ドレイン領域の一方、例えばn型ソース領域となり、拡散層15bおよびエクステンション領域11bがn型ソース/ドレイン領域の他方、例えばn型ドレイン領域となる。また、p型の拡散層16aおよびエクステンション領域12aがp型ソース/ドレイン領域の一方、例えばp型ソース領域となり、拡散層16bおよびエクステンション領域12bがp型ソース/ドレイン領域の他方、例えばp型ドレイン領域となる。このようにして、ソース/ドレイン領域を形成した後、急速昇降温熱処理を施し、注入された不純物を活性化しておく。この熱処理により、拡散層15a、15b、16a、16bは、シリコン半導体基板2の表面より、例えば50nmの深さまで形成される。
【0053】
次に、炭素膜からなるゲート側壁14a、14bを酸素プラズマに晒すことにより、選択的に除去する。その後、図13に示すように、単結晶からなる追加シリコン層17aをエクステンション領域11aの一部と拡散層15a上に形成し、単結晶からなる追加シリコン層17bをエクステンション領域11bの一部と拡散層15b上に形成し、単結晶からなる追加シリコン層18aをエクステンション領域12aの一部と拡散層16a上に形成し、単結晶からなる追加シリコン層18bをエクステンション領域12bの一部と拡散層16b上に形成する。これらの追加シリコン層17a、17b、18a、18bは、エピタキシャル成長技法を用いて、例えば800℃、10Torrの条件下で、SiHClを300cm/分、HClを200cm/分、Hを10000cm/分の流量で供給することで得ることができる。追加シリコン層17a、17b、18a、18bの層厚は、例えば50nm程度になるようにする。
【0054】
エピタキシャル成長は、Siの{100}面に比べSiの{111}面での進行が遅いので、図13に示すように、ゲート電極10a、10bに隣接した領域にはSiの{111}面19a、19b、20a、20bが自動的に形成される。更に、素子分離領域4との境界部分でも、エピタキシャル成長層の一部が素子分離領域4上に乗り上げるように横方向に成長する。このようにして形成された追加シリコン層17a、17b、18a、18bは、ソース/ドレイン電極の一部を構成する。したがって、本実施形態においては、ソース/ドレイン電極が素子分離領域4上に一部延在しているために、基板2との結合容量が低減し、素子の高速動作が可能となる。また、このとき、図13には明示しないが、ゲート電極10a、10b上にも追加シリコン層は形成されることを理解されたい。当然ながら、エピタキシャル成長時に、ソース/ドレイン領域と同じ極性の導電性不純物を含むガスをさらに供給し、追加シリコン層を導電性にしても良いことはいうまでもない。或いは、ウェル領域7、8と逆の導電性を有する不純物を追加的にイオン注入することで、導電性にしても良い。それ以外に、拡散層15a、15b、16a、16bの形成に先立ち、追加シリコン層を形成し、その後、イオン注入法を用いて、追加シリコン層を導電性とする同時に、拡散層を形成することもできる。
【0055】
次に、Niを公知の技術のうちの効果的な方法、例えばスパッタ法などを用いて、例えば12nmの膜厚で、全面に堆積し、Ni層を形成する。必要に応じて、このNi層上にさらに、キャップ層となる金属物質、例えばTi、TiNのような材料からなる層を堆積しても良い。続いて、この半導体基板を、例えば450℃で30秒間、窒素中で急速熱処理し、Niと直接接しているシリコンとの間でシリサイド化反応を選択的に進行させる。未反応のNiは、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸すことで選択的に除去する。このとき、Ni層上に形成されたTi層、TiN層も同時に剥離されてしまうことを強調しておく。従って、この自己整合的シリサイド形成法(SALICIDE法)においては、TiN層はこの時点で一切残存していないことを理解すべきである。この結果、図14に示すように、NiSi層21a、21bが追加シリコン層17a、17b上に、NiSi層21cがゲート電極10a上に形成されるとともに、NiSi層22a、22bが追加シリコン層18a、18b上に、NiSi層22cがゲート電極10b上に形成される。もちろん、NiSi層は、Siの{111}面19a、19b、20a、20b上にも形成される。
【0056】
次に、図15に示すように、例えば、スパッタ法或いは、TiとNを含む有機化合物(例えば、TDMA(Tetrakis-DiMethyl-Amino-titanium))を利用したCVD法など、公知の技術のうちの効果的な方法を用いて、窒化Ti(TiN)膜を一面に被覆堆積する。その後、RIE工程等によりエッチングすることによりゲート電極10a、10bのそれぞれの左右の側部にのみTiN膜を選択的に残存させ、TiN膜からなるゲート側壁23a、23b、24a、24bを形成する。なお、TiN膜を堆積する場合は、TiN膜からなるゲート側壁23a、23b、24a、24bが、Siの{111}面19a、19b、20a、20b上に形成されたNiSi層を覆うように、TiN膜の膜厚を調節する。また、不要なTiN膜は、リソグラフィー工程や硫酸と過酸化水素水の混合液によって容易に剥離可能である。
【0057】
このような構成とすることにより、ゲート電極10a、10bに隣接する拡散層15a、15b、16a、16bおよびエクステンション領域11a、11b、12a、12bでは、NiSi層21a、21b、22a、22bがSiの{111}面に形成されているので、NiSi(200)に配向したNiSi層が得られ、これからのNi原子の細かい基板への拡散はない。加えて、当該NiSi層上にはTiN膜が積層されているので、NiSi層とTiN膜との界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる。この結果、この後の500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部(シリサイドスパイク)の発生が抑制される。このため、エクステンション領域11a、11b、12a、12b上にNiSi層を形成しても接合リークの発生を完全に抑止できる。
【0058】
その上、金属性物質(NiSi、及び、TiN)がエクステンション領域11a、11b、12a、12b上にまで形成されていることから、この部分の電気的抵抗を大きく低減し、素子に印加する電位が充分チャネル部分に伝達される。これにより、エクステンション領域11a、11b、12a、12bでも、電流が界面抵抗の低いNiSi層21a、21b、22a、22bに容易に流入できるようになるので、高駆動力のMOSFETが実現できる。
【0059】
また、Siの{100}面上に形成されたNiSi層は、接合位置より効果的に離隔されているために、ここからのNi原子の細かい基板への拡散による接合リークの発生も効果的に低減される。
【0060】
更に、素子分離領域4との境界部分のSiの{111}面上のNiSi層も、一部素子分離領域上に乗り上げるように形成されていること、およびその接合深さもエクステンション領域に比して増加していることによる相乗効果により、リーク発生の脅威とはならないことを明記しておく。
【0061】
次に、図16に示すように、一面に層間絶縁膜26を堆積する。層間絶縁膜26としては、例えば薄いシリコン窒化膜と、シリコン酸化膜との積層構造を用いることが出来る。この後、図16に示すように、公知の手法、例えばリソグラフィー法およびRIE法等を用いて層間絶縁膜26に、底面にNiSi層21a、21b、22a、22bが露出するコンタクトホール27a、27b、28a、28bを形成する。この時、RIEは2段階に分けて行うのが好ましい。まず、シリコン窒化膜に対して選択性がある、層間絶縁膜26を構成するシリコン酸化膜のエッチングを行い、薄いシリコン窒化膜をエッチングストッパーとして利用する。引き続き、コンタクトホール27a、27b、28a、28bの底部に残存する薄いシリコン窒化膜を短時間のエッチング処理にて除去する。エッチングが短時間で完了できるので、下地に対するプラズマダメージ等を軽減できる。このため、仮にコンタクトホール27a、27b、28a、28bの底部が一部、素子分離領域に重なった場合でも、この重なった部分での、コンタクトホールの素子分離領域内への突貫を防ぐことが可能となる。コンタクトホールの形成は必ずしもNiSi層と精密に位置整合せずに行うことができる(Borderless Contact形成)。このため、素子製造工程を簡略化でき、製造コストの低減化が図れることになる。
【0062】
また、シリコン窒化膜は、緻密で、微細な形状の外表面に対し一様均一に整合して形成されることが望ましい。緻密でなければ、バリア層、エッチングストップ層として機能できないし、一様均一でなければ微細な素子の形成に適応できないからである。このような、緻密で均一なシリコン窒化膜を得るためには、低温で形成できるPECVD法(Plasma Enhanced CVD)よりも、SiClとNHを供給ガスとした化学気層成長法(CVD(Chemical Vapor Deposition))、或いはSiHClとNHを用いた原子層堆積法(ALD(Atomic Layer Deposition))を用いるほうが、好都合である。本実施形態で形成されたTiN層を積層したエクステンション領域のNiSi層は熱的に安定なので、500℃以上の成膜温度でこのような極めて緻密で均一なシリコン窒化膜を形成することができることを、ここに強調しておく。
【0063】
次に、図17に示すように、コンタクトホールの底部に露出したNiSi層21a、21b、22a、22bを、例えば、NF含むプラズマに短時間暴露して、露出したNiSi層21a、21b、22a、22bの表面を洗浄する。続いて、図17に示すように、半導体基板2の全面にバリア性を持つ金属材料の層、例えばTi層30を例えば5nmの厚さで、例えばスパッタ法により被覆形成する。次いで、NiSi層21a、21b、22a、22bとの電気的接触を良好にするために、例えば500℃、窒素雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理で、NiSi層21a、21b、22a、22bの表面に形成された薄い酸化物がTi層によって還元除去され、良好な電気的接触が確保される。
【0064】
一般に、ソース/ドレイン領域に形成されたNiSi層と電気配線物質との良好な電気的接続を達成しようとする時には、500℃前後の熱処理は欠かせない。なぜならば、これ以下の温度では、NiSiと配線金属との間にわずかに形成される酸化物起因の絶縁性物質を、十分に融解除去することが適わなくなるからである。Ni原子のSi基板への拡散浸潤を阻止するために、熱処理温度を厳しく制限すると、結果的に、ソース/ドレイン領域との接触抵抗が上昇する。この結果、電気配線の歩留まりが低下し、シリサイドを形成した利点が完全に損なわれてしまうという困難に直面することになる事を、付言しておく。本実施形態で形成されたNiSi層は熱的に安定なので、リーク電流の発生を気にすることなく、500℃以上の熱処理で良好な電気的接続が達成できるようになる事を、ここに強調しておく。
【0065】
次に、図18に示すように、コンタクトホールの内部に配線金属32、例えばWを充填形成する。WはWFとHを供給ガスとした化学気層成長法(CVD法)や、CMP法などの公知の技術のうち効果的な方法を用いて充填する。更に、この後、層間絶縁膜であるシリコン酸化膜33を堆積し、これにリソグラフィー法およびRIE法等の公知の手法を用いて、配線材料を埋め込むべき溝を形成する。この溝の中に配線材料、例えばCu配線34を充填形成する(ダマシン法)。引き続き、配線材料34の上部を覆うように、さらに絶縁材料膜、例えばシリコン酸化膜35を堆積する。
【0066】
さらに、必要ならば、多層の配線を構築し、また実装工程などを経て、半導体装置を完成させる。
【0067】
なお、本実施形態においては、NiSi層21a、21b、22a、22bは、少なくとも単結晶シリコン層17a、17b、18a、18bの{111}面に平行な面上に形成され、側壁絶縁膜13a、13bに接する部分を有し、この部分と第1単結晶シリコン層17a、17b、18a、18bとの界面が第1単結晶シリコン層17a、17b、18a、18bの{111}面に平行となっている。
【0068】
このようにして、接合深さが最も浅いゲート電極に隣接した領域で、Siの{111}面上にNiSi層を形成し、TiNからなるゲート側壁を更に積層することによって、浅いソース/ドレインとなる拡散層を有し、この拡散層の表面がシリサイド化され、且つ接合リーク電流が低く抑えられとともに熱的安定性が向上し、配線金属との良好な電気的接触が確保された、C−MOSFET構造が実現される。
【0069】
また、本実施形態においては、以下の効果を奏することができる。
【0070】
(a) エクステンション領域を含むソース/ドレイン領域上に、追加シリコン層を選択的に形成するに際して、ゲート電極に隣接した接合深さが最も浅い領域にSiの{111} 面を有するシリコン層を自動的に形成できる。
【0071】
(b) 追加シリコン層を選択的に形成するに際して、素子分離領域との境界部分でも、一部が素子分離領域上に乗り上げるように横方向成長させるため、ソース電極およびドレイン電極が素子分離領域上に一部延在することになり、基板との結合容量が低減し、素子の高速動作が可能となる。
【0072】
(c) 接合深さが最も浅い領域にSiの{111}面上のNiSiの(100)面に配向したNiSi層を具備することで、Ni原子のSi基板への拡散を効果的に抑制できる。
【0073】
(d) 接合深さが最も浅い領域上のNiSiの(100)面に配向したNiSi層にはTiN層が積層されているので、それらの層の間の界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げることが可能となる。その結果、この後、500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部(シリサイドスパイク)の発生が抑制される。また、エクステンション領域上にNiSi層を形成しても接合リークの発生を完全に抑止できる。
【0074】
(e) 金属性物質(NiSi層およびTiN層がエクステンション領域上にまで形成されていることから、この部分の電気的抵抗を大きく低減し、素子に印加する電位が充分チャネル部分に伝達され、エクステンション領域でも、電流が界面抵抗の低いNiSi層に容易に流入できる様になるので、高駆動力のMOSFETが実現できる。
【0075】
(f) NiSi層は熱的に安定なので、リーク電流の発生を気にすることなく、500℃以上の熱処理で良好な電気的接続が達成できるようになる。
【0076】
(g) 加えて、耐熱性が向上したため、バリア層、エッチングストップ層に適した、緻密なシリコン窒化膜を形成することが可能である。
【0077】
また、本実施形態においては、一組のC−MOSFETを用いて説明してきたが、上記手法が複数組の素子に対しても同様に適応可能であること、また、半導体装置の一部を形成する素子群に対して選択的に応用できることはいうまでもない。
【0078】
また、本実施形態では、ゲート電極の上部の一部をシリサイド化するとしてきたが、ゲート電極をすべてシリサイド化する場合(Fully-Silicidated Gate)に対しても、同様に適応可能である。
【0079】
(第1変形例)
本実施形態の第1変形例による半導体装置の断面を図19に示す。この変形例の半導体装置は、n−MOSFETを有し、このn−MOSFETが第1実施形態のC−MOSFETのn−MOSFETと同じ構造を備えている。
【0080】
この変形例も第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例においては、n−MOSFETを有していたが、n−MOSFETの代わりにp−MOSFETを有し、このp−MOSFETが第1実施形態のC−MOSFETのp−MOSFETと同じ構造を備えていても、同様の効果を得ることができる。
【0081】
(第2変形例)
本実施形態の第2変形例による半導体装置の断面を図20に示す。本変形例の半導体装置は、図19に示す第1変形例の半導体装置において、ゲートをMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Semiconductor)構造にした構成となっている。すなわち、本変形例による半導体装置のゲートは、ソース領域11a、15aと、ドレイン領域11b、15bとの間のチャネルとなるシリコン基板2上にゲート絶縁膜9aが形成され、このゲート絶縁膜9a上に例えば窒化膜からなる電荷蓄積膜36が形成され、この電荷蓄積膜36上に例えば酸化膜からなるブロック絶縁膜37が形成され、このブロック絶縁膜37上に例えばポリシリコンからなる制御ゲート電極38が形成された構造を有している。なお、ポリシリコンからなる制御ゲート電極38上に、第1変形例と同様に、NiSi層22cが形成されていてもよい。この変形例も第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、Si{110}面上に形成されたエレベーテッドソース/ドレイン構造を有するC−MOSFETであって、ソース/ドレイン領域に、Siの{111}面を有する壁面を形成し、この壁面上にNiSi層を形成し、このNiSi層を被覆するようにTiNからなる側壁を更に形成した構造を有している。この構造とすることにより、浅いソース/ドレイン領域を有し、シリサイド化され、且つ接合リーク電流が低く抑えられ、熱的安定性向上により、配線金属との良好な電気的接触が確保された、C−MOSFET構造を具現する。
【0083】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を図21乃至図28を参照して説明する。
【0084】
まず、第1実施形態の図10から図12に示す工程を、(110)面を主表面とするp型単結晶のシリコン半導体基板42に対して施す。次いで、図12に示す炭素膜からなるゲート側壁14a、14bを、例えば酸素プラズマに晒すことで選択的に除去する。本実施形態においては、チャネル方向(電流の流れる方向)は[1−11]方向に揃えてある。このように、チャネル方向を[1−11]方向にそろえることで、チャネル部分に機械的応力を付与することにより、p−MOSFETの電流を荷なう正孔の移動度を、効果的に向上させることができる(例えば、H.C.H.Wang et.al, IEDM Tech. Dig. pp.67-70, 2006参照)。
引き続き、図21に示す様に、シリコン膜を、公知の技術のうちの効果的な方法、例えばCVD法などを用いて、全面に追加形成する。その後、リソグラフィー法、RIE工程等を用いて、上記シリコン膜をエッチングすることにより、素子分離領域4上に延在し、かつエレベーテッドソース/ドレインとなる部分のシリコン膜44a、44bを残置する。このとき、ゲート電極10a、10bのシリコン窒化膜からなるゲート側壁13a、13bの側部およびゲート電極10a、10bの上部にもシリコン膜44a、44bが残置される。なお、追加形成するシリコン膜はアモルファス相とすることで、堆積後、熱工程を加えることで、下地基板の結晶性を参照して下地基板と一体化した結晶となることを注意しておく。また、ソース/ドレイン電極の一部となるシリコン膜44a、44bが素子分離領域4上に延在することになるので、基板42との結合容量が低減し、素子の高速動作が可能となることにも注目すべきである。
【0085】
続いて、この基板42を炭素含有プラズマに晒す。炭素含有プラズマは、公知の技術の範囲内の効果的な方法で生成することができる。炭素の供給源は、プラズマ内に炭素を供給できる任意の供給源で良い。例えば、炭素含有プラズマは、CF、CHF、CCl、 CHなどのガスをプラズマ中に供給することで生成できる。また、炭素は基板にフォトレジストマスクのような炭素含有物質がある場合、ここから、RIEに伴うイオン衝撃を利用して供給させることもできる。
【0086】
一般に、プラズマは、その状態を維持するために、周囲の物質に対し、正の電位を帯びる様になる。この結果、プラズマより、周囲の物質に対して正電荷を帯びた粒子を垂直に入射させる方向に電界が発生する。よって、プラズマ中の正電荷を帯びた炭素粒子は、シリコン膜44a、44bに垂直に衝突する。このため、シリコン膜44a、44bの、基板に水平な表面のみ、すなわちシリコン膜44a、44bの上面にのみ炭素粒子は注入され、垂直となる表面には炭素粒子は注入されない。こうして、炭素含有シリコン層45a、45b、45cがシリコン膜44aの水平な表面に形成され,炭素含有シリコン層46a、46b、46cがシリコン膜44bの水平な表面に形成される(図21)。通常使われるRIEプラズマからの入射粒子は1KV以下で加速されているので、この炭素含有シリコン層45a、45b、45c、46a、46b、46cの層厚は数nmにとどまる。炭素含有シリコン層の炭素含有率は1原子%以上あれば良い。
【0087】
次に、熱酸化処理を行う。本発明者によって発明された米国特許第6,271,566号明細書に開示されているように、炭素含有シリコン層45a、45b、45c、46a、46b、46cには酸化抑制機能がある。したがって、図22に示すように、ゲート側壁部のシリコン膜44a、44bが上記熱酸化によって完全にシリコン酸化膜47a、47bとなっても、ソース/ドレイン領域11a、11b、12a、12b、15a、15b、16a、16b上およびゲート電極10a、10b上には、なおシリコン膜44a、44bが残る。このとき、シリコン膜44a、44bの側部にはシリコン酸化膜47a、47bが形成される。その後、RIEなどの異方性エッチングを施し、炭素含有シリコン層45a、45b、45c、46a、46b、46cおよびその酸化膜を除去することで、図22に示す構造を得る。もちろん、シリコン膜44a、44bは、この時点で、下地の基板42と一体化した結晶となっている。
【0088】
次いで、リソグラフィー法およびRIE法等を用いて、ソース/ドレイン領域上のシリコン膜44a、44bにゲート電極10a、10bの方向に沿った複数の溝48を形成する。このとき、溝48の側面はSiの{111}面となることに注意する。しかる後、図21で説明した要領で、更にこの基板42を炭素含有プラズマに晒す。この結果、図23に示すように、炭素含有シリコン層49が、シリコン膜44a、44bの水平表面に形成される。
【0089】
続いて、エッチング能力のある原子、例えば、スパッタエッチングを行う場合はAr原子を傾角で注入する。このとき、Ar原子の入射方向はチャネル方向に直交し、その入射角はAr原子が溝48の底部に達しないように調節する。この結果、炭素含有シリコン層49は、溝48の底部のみに残存する。ここで、米国特許第6,271,566号明細書に開示されているように、この炭素含有シリコン層49を熱酸化すると、HF溶液に対してエッチング耐性をもった1nm〜2nmの炭素含有シリコン酸化層50が自動的に形成される。酸化後、200:1の希HF溶液中に浸すと、図24に示すように、HF溶液に対してエッチング耐性をもった炭素含有シリコン酸化層50が溝48の底部のみに選択的に形成される。このとき、リソグラフィー工程を必要とすることなく選択的に形成することができる。
【0090】
続いて、Niを公知の技術のうちの効果的な方法、例えばスパッタ法などを用いて、例えば12nmの膜厚で、全面に堆積する。必要に応じて、この上にさらに、キャップ層となる金属物質、例えばTi、TiNのような物質を堆積形成しても良い。次いで、この半導体基板を、例えば450℃、30秒間、窒素中で急速熱処理し、Niと直接接しているシリコンとの間でシリサイド化反応を選択的に進行させる。未反応のNiは、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸すことで選択的に除去する。このとき、Ti、TiNも同時に剥離されてしまうことを強調しておく。従って、従来の自己整合的シリサイド形成法(SALICIDE法)においては、TiN膜はこの時点で一切残存していない。
【0091】
この結果、図25に示すように、NiSi層52a、52b、52cがn−MOSFETのソース/ドレイン領域の単結晶追加シリコン膜44aの水平最上面およびSiの{111}面となる側面、ならびにゲート電極10aのシリコン膜44a上に形成される。また、NiSi層53a、53b、53cがp−MOSFETのソース/ドレイン領域の単結晶追加シリコン膜44bの水平最上面およびSiの{111}側面ならびにゲート電極10bのシリコン膜44b上に形成される。特に、Siの{111}側面上に形成されたNiSi層52a、52b、53a、53bがNiSiの(100)面に配向することはいうまでも無い。
【0092】
またこのとき、溝48の幅を追加シリコン膜44a、44bの膜厚以下にすれば、NiSi層とソース/ドレイン領域の界面面積が、ソース/ドレイン領域の水平面の面積を上回り、NiSi層とソース/ドレイン領域のコンタクト抵抗が低減される。
【0093】
その後、図26に示すように、例えば、スパッタ法、或いは、TiとNを含む有機化合物(例えば、TDMA)を利用したCVD法など、公知の技術のうちの効果的な方法を用いて、窒化Ti(TiN)膜を一面に被覆堆積する。その後、RIE工程等により、ソース/ドレイン領域の単結晶追加シリコン膜44a、44bに設けられたSiの{111}側面を持つ溝を充填する。Siの{111}側面上に形成されたNiSi層52a、52b、53a、53b上にはTiN膜の側壁54a、54bが形成される。被覆堆積するTiN層の膜厚を、ソース/ドレイン領域単結晶追加シリコン層に設けられた溝の幅以上にしておけば、RIE工程や、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸すことで、TiN膜54a、54bが溝のみを充填するように形成できる。
【0094】
このとき、ソース/ドレイン領域およびエクステンション領域の単結晶追加シリコン層に設けられた溝48のSiの{111}壁面に形成されているNiSi層は、NiSiの(100)面に配向しており、これからのNi原子の基板への拡散はない。加えて、このNiSi層上にはTiN膜が積層されているので、界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる。この結果、この後に500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部(シリサイドスパイク)の発生が抑制される。このため、エクステンション領域上にNiSi層を形成しても接合リークの発生を完全に抑止できる。
【0095】
その上、金属性物質(NiSi層およびTiN膜)がエクステンション領域上にまで形成されていることから、この部分の電気的抵抗を大きく低減し、素子に印加する電位が充分チャネル部分に伝達され、エクステンション領域でも、電流が界面抵抗の低いNiSi層に容易に流入できるようになるので、高駆動力のMOSFETが実現できる。
【0096】
また、Siの{110}面上に形成されたNiSi層は、接合位置より効果的に離隔されているために、ここからのNi原子の細かい基板への拡散による接合リークの発生も効果的に低減される。
【0097】
次に、図27に示すように、層間絶縁膜56を堆積する。層間絶縁膜としては、例えば薄いシリコン窒化膜とシリコン酸化膜の積層構造を用いることができる。このとき、内部応力を保持するシリコン窒化膜を形成することが効果的である。例えば、シリコン窒化膜層が、チャネル方向に圧縮応力を付与するようにすることで、p−MOSFETのホール移動度が大きく向上し、素子の動作速度が増大する。この後、公知の手法、例えばリソグラフィー法およびRIE法等を用いて、層間絶縁膜56に、ソース/ドレイン領域にいたるコンタクトホール57a、57b、58a、58bを形成する。この時、RIEは2段階に分けて行うのが好ましい。まず、シリコン窒化膜に対して選択性のある、層間絶縁膜を構成するシリコン酸化膜のエッチングを行い、薄いシリコン窒化膜をエッチングストッパーとして利用する。引き続き、コンタクト底部に残存する薄いシリコン窒化膜を短時間のエッチング処理にて除去する。エッチングが短時間で完了できるので、下地に対するプラズマダメージ等を軽減できる。このため、コンタクト底部が一部、素子分離領域に重なった場合でも、この重なった部分での、コンタクトホールの素子分離領域内への突貫を防ぐことが可能となる。コンタクトホールの形成は必ずしもNiSi領域と精密に位置整合せずに行うことができる(Borderless Contact形成)。このため、素子製造工程を簡略化でき、製造コストの低減化が図れることになる。
【0098】
また、第1実施形態と同様に、シリコン窒化膜は、緻密で、微細な形状の外表面に対し一様均一に整合して形成されることが望ましい。緻密でなければ、バリア層、エッチングストップ層として機能できないし、一様均一でなければ微細な素子の形成に適応できないからである。このような、緻密で均一なシリコン窒化膜を得るためには、低温で形成できるPECVD法よりも、SiClとNHを供給ガスとした化学気層成長法(CVD)、或いは、SiHClとNHを用いた原子層堆積法(ALD)を用いるほうが、好都合である。本実施形態で形成されたTiN層を積層したエクステンション領域のNiSi層は熱的に安定なので、500℃以上の成膜温度でこのような極めて緻密で均一な膜を形成することができる。
【0099】
次いで、コンタクトホールの底部に露出したNiSi層を、例えば、NF含むプラズマ中に短時間暴露して、この表面を洗浄する。続いて、図27に示すように、半導体基板の全面にバリア性を持つ金属物質、例えばTi層60を例えば5nmの厚さで、例えばスパッタ法により被覆形成する。次いで、NiSi層との電気的接触を良好にするために、例えば500℃、窒素雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理で、NiSi層の表面に形成された薄い酸化物がTi層60によって還元除去され、良好な電気的接触が確保される。
【0100】
次に、図28に示すように、コンタクトホール内部に配線金属膜、例えばW膜62を充填するように形成する。WはWFとHを供給ガスとした化学気層成長法(CVD)や、CMP法などの公知の技術のうち効果的な方法を用いて充填する。更に、この後、層間絶縁膜としてシリコン酸化膜64を堆積し、これにリソグラフィー法およびRIE法等の公知の手法を用いて、配線物質を埋め込むべき溝を形成する。この溝の中に金属物質、例えばCuからなる配線66を充填形成する(ダマシン法)。引き続き、配線66の上部を覆うように、さらに絶縁物質、例えばシリコン酸化膜68を堆積する。
【0101】
さらに、必要ならば、多層の配線を構築し、また実装工程などを経て、半導体装置を完成させる。
【0102】
このようにして、接合深さが最も浅いゲート電極に隣接した領域で、Siの{111}面上にNiSi層を形成し、TiNを更に積層することによって、浅いソース/ドレインとなる拡散層を有し、この拡散層の表面がシリサイド化され、且つ接合リーク電流が低く抑えられるとともに熱的安定性が向上し、配線金属との良好な電気的接触が確保された、C−MOSFET構造が実現される。
【0103】
このとき、
(a) 接合深さが最も浅い領域にSiの{111}面上のNiSiの(100)面に配向したNiSi層を具備することで、Ni原子のSi基板への拡散を効果的に抑制できる。
【0104】
(b) 接合深さが最も浅い領域上のNiSiの(100)面に配向したNiSi層にはTiNが積層されているので、それらの層の間の界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる結果、この後、500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部(シリサイドスパイク)の発生が抑制される。エクステンション領域上にNiSi層を形成しても接合リークの発生を完全に抑止できる。
【0105】
(c) 金属性物質(NiSi、及び、TiN)がエクステンション領域上にまで形成されていることから、この部分の電気的抵抗を大きく低減し、素子に印加する電位が充分チャネル部分に伝達され、エクステンション領域でも、電流が界面抵抗の低いNiSi層に容易に流入できる様になるので、高駆動力のMOSFETが実現できる。
【0106】
(d) NiSi層は熱的に安定なので、リーク電流の発生を気にすることなく、500℃以上の熱処理で良好な電気的接続が達成できるようになる。
【0107】
(e) チャネル方向を[1−11]方向にそろえることで、p−MOSFETの電流を荷なう正孔の移動度を、チャネル部分に機械的応力を付与することで、効果的に向上させることが出来る。
【0108】
(f) Si{111}面を壁面とする溝の幅を追加シリコン膜厚以下にすれば、NiSi層とソースドレイン領域の界面面積が、ソースドレイン領域の水平面の面積を上回り、NiSi層とソースドレイン領域のコンタクト抵抗が低減される。
【0109】
(g) 炭素含有プラズマを利用して、炭素含有シリコン層を形成することで、HF溶液に対してエッチング耐性をもった炭素含有シリコン酸化膜をSiの{111}面を壁面とする溝の底部のみに選択的に形成できる。
【0110】
また、本実施形態は、一組のC−MOSFETを用いて説明してきたが、上記手法が複数組の素子に対しても同様に適応可能であること、また、半導体装置の一部を形成する素子群に対して選択的に応用できることはいうまでもない。
【0111】
また、本実施形態では、ゲート電極の上部の一部をシリサイド化するとしてきたが、ゲート電極をすべてシリサイド化する場合(Fully-Silicidated Gate)に対しても、同様に適応可能である。
【0112】
更に、本実施形態では、チャネル方向(電流の流れる方向)は[1−11]方向にそろえていたが、他の方向にチャネルの向きをそろえることができることはいうまでも無い。このとき、ソースドレイン領域となる単結晶追加シリコン膜に設けられたSiの{111} 側面を有する溝の方向は、ゲート電極の方向とは平行ではなくなるが、本発明の効果は同様に発現する。
【0113】
(第1変形例)
本実施形態の第1変形例による半導体装置の断面を図29に示す。この変形例の半導体装置は、n−MOSFETを有し、このn−MOSFETが第2実施形態のC−MOSFETのn−MOSFETと同じ構造を備えている。
【0114】
この変形例も第2実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例においては、n−MOSFETを有していたが、n−MOSFETの代わりにp−MOSFETを有し、このp−MOSFETが第2実施形態のC−MOSFETのp−MOSFETと同じ構造を備えていても、同様の効果を得ることができる。
【0115】
(第2変形例)
本実施形態の第2変形例による半導体装置の断面を図30に示す。本変形例の半導体装置は、図29に示す第1変形例の半導体装置において、ゲートをMONOS構造にした構成となっている。すなわち、本変形例による半導体装置のゲートは、ソース領域11a、15aと、ドレイン領域11b、15bとの間のチャネルとなるシリコン基板2上にゲート絶縁膜9aが形成され、このゲート絶縁膜9a上に例えば窒化膜からなる電荷蓄積膜36が形成され、この電荷蓄積膜36上に例えば酸化膜からなるブロック絶縁膜37が形成され、このブロック絶縁膜37上に例えばポリシリコンからなる制御ゲート電極38が形成された構造を有している。なお、ポリシリコンからなる制御ゲート電極38上に、第1変形例と同様に、シリコン膜44a、NiSi層52cが形成されていてもよい。この変形例も第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0116】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、DSB(Direct Silicon Bonding)基板を用いたエレベーテッドソース/ドレイン構造を有するC−MOSFETであって、DSB基板を構成するSi(100)面上にn−MOSFETが形成され、Si(110)面上にp−MOSFETが形成された構造を有している。この構造とすることで、それぞれの極性のMOSFETの移動度を同時に最大化しつつ、ソース/ドレイン領域に、Siの{111}面を形成し、この面上にNiSi層を形成し、TiN膜を積層することで、浅いソース、ドレイン拡散層を有し、シリサイド化され、且つ、接合リークが低く抑えられ、熱的安定性向上により、配線金属との良好な電気的接触が確保された、C−MOSFET構造を具現する。なお、DSB基板に関しては、例えば、文献C.Y.Sung et.al, IEDM Tech. Dig. pp.235-238, 2005を参照。
【0117】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を、図31乃至図40(b)を参照して説明する。
【0118】
まず、図31に示すように、(110)面を主表面とするp型単結晶シリコン半導体基板72の主表面に、(100)面を主表面とするp型単結晶シリコン半導体基板73を直接に貼り付け、接合する。シリコン半導体基板72とシリコン半導体基板73を接合するには、まず、(110)面を主表面とするシリコン半導体基板72と、(100)面を主表面とするシリコン半導体基板73の表面を希釈されたHF溶液などで処理した後、この表面同士を密着させて、例えばAr雰囲気中で熱処理することでこれらの表面に存在する一部のSi原子間の化学結合を形成させて接合する。
【0119】
次に、図32に示すように、表面に直接貼り付けられた(100)面を主表面とするシリコン半導体基板73をCMP法などの公知の手法を用いて薄膜化して、単結晶シリコン半導体層74を形成する。さらに、このシリコン半導体層74を貫き、シリコン半導体基板72に達する浅い溝を形成し、この溝を絶縁膜、例えばシリコン酸化膜で埋め込むことにより、素子分離領域4を形成する。この素子分離領域4によって、n−MOSFET形成予定領域5およびp−MOSFET形成予定領域6が画定される。
【0120】
次に、図33に示すように、p−MOSFET形成予定領域6のみに、例えばArをイオン注入することで、この領域6の単結晶シリコン半導体層74を完全に非晶質化する。続いて、これを再結晶化する。再結晶化は、この非晶質化した半導体層に接している単結晶シリコン半導体基板72の結晶性を参照して進行するので、p−MOSFET形成予定領域6の非晶質化した半導体層は単結晶シリコン半導体基板72と一体の単結晶領域74bとなり、その表面方位も(110)に変換される。一方、n−MOSFET形成予定領域5の単結晶シリコン半導体層74はそのまま保持されることは言うまでもない。このようにして、DSB基板が完成する。
【0121】
次に、第1実施形態の図10乃至図12で説明した工程を、DSB基板に対して施し、p型ウェル領域7、n型ウェル領域8、ゲート絶縁膜9a、9b、ゲート電極10a、10b、シリコン窒化膜からなるゲート側壁13a、13b、炭素膜からなるゲート側壁14a、14b、エクステンション領域となる浅い拡散層11a、11b、12a、12b、ソース/ドレイン領域となる拡散層15a、15b、16a、16bを形成する。続いて、炭素膜からなるゲート側壁14a、14bを、例えば酸素プラズマにさらすことで選択的に除去し、図34に示す構造を得る。
【0122】
次に、図35に示すように、単結晶からなる追加シリコン層17aを、エクステンション領域11aの一部と拡散層15a上に形成し、単結晶からなる追加シリコン層17bを、エクステンション領域11bの一部と拡散層15b上に形成し、単結晶からなる追加シリコン層18aを、エクステンション領域12aの一部と拡散層16a上に形成し、単結晶からなる追加シリコン層18bを、エクステンション領域12bの一部と拡散層16b上に形成する。これらの追加シリコン層17a、17b、18a、18bは、エピタキシャル成長技法を用いて、例えば800℃、10Torrの条件下で、SiHClを300cm/分、HClを200cm/分、Hを10000cm/分の流量で供給することで得ることができる。追加シリコン層17a、17b、18a、18bの層厚は、例えば50nm程度になるようにする。
【0123】
このときの上面図を結晶方位と共に図36に示す。図36からわかるように、n−MOSFETのゲート電極10aはSiの<110>方向に、p−MOSFETのゲート電極10bはSiの<100>方向に沿って形成されている。p−MOSFETのチャネル方向(チャネル電流の流れる方向)をSiの<110>方向とすることで、ホールの移動度が最大化されている事に着目すべきである(例えば、H.Irie et.al, IEDM Tech. Dig. pp.225-228, 2004参照)。
【0124】
また、図36に示す切断線A−A、B−Bで切断した断面図を、図37(a)、37(b)に示す。図37(a)に示すように、n−MOSFETの追加シリコン層17a、17bは、チャネル長方向(切断線A−Aの方向)の端面がSiの{111}面19a、19a、19b、19bとなり、図37(b)に示すように、p−MOSFETの追加シリコン層18a、18bは、ゲート幅方向(切断線B−Bの方向)の端面がSiの{111}面20b、20bとなる。
【0125】
次に、図38(a)、38(b)に示すように、例えばシリコン酸化膜76を一面に堆積した後、p−MOSFET上のシリコン酸化膜76にスリット状の開口部77を形成する。
【0126】
追加シリコン層18a、18bのゲート幅方向(切断線B−Bの方向)の端面にはスリットは設けない。なお、図38(a)、38(b)はそれぞれ、図36に示す切断線A−A、B−Bで切断した断面図である。
【0127】
次に、半導体基板を、水酸化カリウム(KOH)溶液に浸す。KOH溶液はSiをエッチングするがSiの{111}面のエッチングの進行が他の結晶面に比して極端に遅いので、エッチングの結果、スリット状の開口部77の下面の追加シリコン層18a、18bに、斜めのSiの{111}面78を有する多数のV字形状の溝79が形成される。その後、シリコン酸化膜76を、HF溶液に浸す等により除去する。こうして、図39(a)、39(b)に示す構造を得る。
【0128】
次に、Niを公知の技術のうちの効果的な方法、例えばスパッタ法などを用いて、例えば12nmの膜厚で、全面に堆積する。必要に応じて、この上にさらに、キャップ層となる金属物質、例えばTi、TiNのような物質を堆積形成しても良い。次いで、この半導体基板を、例えば450℃、30秒間、窒素中で急速熱処理し、Niと直接接しているシリコンとの間でシリサイド化反応を選択的に進行させる。未反応のNiは、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸すことで選択的に除去する。このとき、Ti、TiNも同時に剥離されてしまう。従って、従来の自己整合的シリサイド形成法においては、TiN膜はこの時点で一切残存していない。
【0129】
その後、例えば、スパッタ法、或いは、TiとNを含む有機化合物(例えば、TDMA、)を利用したCVD法など、公知の技術のうちの効果的な方法を用いて、窒化Ti(TiN)膜、を一面に被覆堆積する。その後、RIE工程等を用いてゲート側壁およびSiの{111}側面上にTiN膜を残存させる。RIE工程は第1実施形態に比べて短時間とし、不必要なTiN膜は、別途、リソグラフィー工程などを援用し除去する。
【0130】
この結果、図40(a)、40(b)に示すように、NiSi層21a、21bが追加シリコン層17a、17b上に、NiSi層21cがゲート電極10a上に形成されるとともに、NiSi層22bが追加シリコン層18b上に、NiSi層22cがゲート電極10b上に形成される。なお、図示しないが追加シリコン層18aおよびゲート電極10b上にもNiSi層は形成される。更に、TiN膜からなるゲート側壁23a、23bがNiSi層21a、21bとゲート電極10aとの間に形成されるとともに、Siの{111}側面上にもTiN膜80a、80b、81が形成される。
【0131】
このとき、ゲート電極に隣接するソース/ドレイン領域およびエクステンション領域では、NiSi層がSiの{111}面に形成されているので、NiSi(100)に配向したNiSi層が得られ、これからのNi原子の細かい基板への拡散はない。加えて、NiSi層上にはTiNが積層されているので、界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる結果、この後、500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部(シリサイドスパイク)の発生が抑制される。このため、エクステンション領域上にNiSi層を形成しても接合リークの発生を完全に抑止できる。
【0132】
その上、金属性物質(NiSiおよびTiN)がエクステンション領域上にまで形成されていることから、この部分の電気的抵抗を大きく低減し、素子に印加する電位が充分チャネル部分に伝達され、エクステンション領域でも、電流が界面抵抗の低いNiSi層に容易に流入できるようになるので、高駆動力のMOSFETが実現できる。
【0133】
また、Siの{100}面上に形成されたNiSi層は、接合位置より効果的に離隔されているために、ここからのNi原子の細かい基板への拡散による接合リーク電流の発生も効果的に低減される。
【0134】
更に、NiSi層とソースドレイン領域の界面面積が、ソースドレイン領域の水平面の面積を上回り、NiSi層とソースドレイン領域のコンタクト抵抗が低減される。
【0135】
この後、第1実施形態の図16から図18まで説明した工程を繰り返し、層間絶縁膜、ソース/ドレイン領域にいたるコンタクトホールを形成して、このコンタクトホールに電気配線物質の充填し、さらに金属配線の形成を経て、必要ならば、多層の配線を構築し、また実装工程などを経て、半導体装置を完成させる。
【0136】
このようにして、DSB基板を構成するSiの(100)面上にn−MOSFETを形成し、Siの(110)面上にp−MOSFETを形成することで、それぞれの極性のMOSFETの移動度を同時に最大化しつつ、接合深さが最も浅いゲート電極に隣接した領域で、Si{111}面上にNiSi層を形成し、TiNを更に積層することで、浅いソース、ドレイン拡散層を有し、これらの拡散層の表面がシリサイド化され、且つ接合リーク電流が低く抑えられるとともに熱的安定性が向上し、配線金属との良好な電気的接触が確保されたC−MOSFET構造が実現される。
【0137】
本実施形態は、一組のC−MOSFETを用いて説明してきたが、上記手法が複数組の素子に対しても同様に適応可能であること、また、半導体装置の一部を形成する素子群に対して選択的に応用できることはいうまでもない。
【0138】
更に、本実施形態では、チャネル方向(電流の流れる方向)はSiの<110>方向にそろえていたが、他の方向にチャネルの向きをそろえることが出来ることはいうまでも無い。このとき、ソースドレイン領域の追加シリコン層に設けられた、側面がSiの{111}面である溝の方向は、ゲート電極の方向と直交しなくなるが、本実施形態の効果は同様に発現する。
【0139】
また、本実施形態では、ゲート電極の上部の一部をシリサイド化するとしてきたが、ゲート電極をすべてシリサイド化する場合(Fully-Silicidated Gate)に対しても、同様に適応可能である。
【0140】
当然、上記手法は、シリコン層を薄い壁(Fin)状に垂直加工し、このシリコン壁の中央部を跨ぐゲート電極を形成する、いわゆるFin−MOSFET構造を構成する場合にも、NiSiを形成するに際して応用できる。Si(110)基板を用いれば、垂直面として、Siの{100}面、Siの{110}面、Siの{111}面、何れをも形成できる。従って、ソース、ドレイン領域の垂直壁面をSiの{111}面とすることが可能となる。すなわち、第2実施形態と同様に、Siの{111}面上にNiSi層とTiN層を積層することで、NiSi結晶の熱的安定性が向上し、熱処理を加えても、NiSi層が変性したり、Ni原子がチャネル領域に到達し、オフ電流を増加させることが無くなる。
【0141】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による半導体装置を説明する。本実施形態の半導体装置は、SOI基板上に形成されたFin−MOSFETであって、ソース/ドレイン領域にSiの{111}側面を形成し、この面上にNiSi層を形成し、このNiSi層上にTiN膜を積層した構造を備えている。この構造とすることで、ソース/ドレイン領域の表面がシリサイド化され、且つ、チャネルリークが低く抑えられ、熱的安定性が向上し、配線金属との良好な電気的接触を得ることができる。なお、Fin−MOSFET構造については、例えば、文献、X.Huang, et al, IEEE ED vol.48, p880 (2001)を参照。
【0142】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を図41乃至図47(c)を参照して説明する。
【0143】
まず、図41に示すように、シリコン支持基板101、シリコン酸化膜102、Siの{110}面を上面とする単結晶シリコン層(SOI層)103からなるSOI基板100上に、公知の手法のうち効果的な方法、例えばCVD法により、例えばシリコン窒化膜104を形成し、このシリコン窒化膜104上に、リソグラフィーなどの公知の手法のうち効果的な方法により、例えばフォトレジストからなるエッチングマスク105a、105bを形成する。
【0144】
次に、図42に示すように、エッチングマスク105a、105bを用いて、シリコン窒化膜104、単結晶シリコン層103を例えば、RIE法によってパターニングする。その後、エッチングマスク105a、105bを除去し、側面がSiの{111}面となる実質的に直方体形状(板状)のシリコン層(Fin)103a、103bを得る。このとき、シリコン層103a、103b上にはパターニングされたシリコン窒化膜104a、104bが残置している。なお、図42は壁の厚さ方向の断面を示す。
【0145】
次に、図43に示すように、シリコン層103a、103bの側面に、ゲート絶縁膜として、例えば膜厚2nmの熱酸化膜106を形成し、その後、例えばCVD法を用いてポリシリコン膜108を堆積し、続いてCMP法を用いてポリシリコン膜108を平坦化する。その後、ポリシリコン膜108上に例えばCVD法を用いてシリコン窒化膜110を堆積し、続いてCMP法を用いてシリコン窒化膜110の上面を平坦化する。
【0146】
次に、リソグラフィーなどの公知の手法のうち効果的な方法を用いて、図示しないエッチングマスクを、シリコン窒化膜110上に形成する。このエッチングマスクは、シリコン層103a、103bの延在する方向を直交する方向(紙面と平行方向)に延在するように形成される。ポリシリコン膜108およびシリコン窒化膜110は平坦化されているので、エッチングマスクを形成するためのリソグラフィー工程は比較的容易に行える。
【0147】
しかる後、このエッチングマスクを用いて、シリコン窒化膜110およびポリシリコン膜108を、RIEのような、公知の手法のうち効果的な方法により異方性エッチングする。そしてエッチング後、上記エッチングマスクを除去し、シリコン層103aおよび103bの側面を挟み込むように、ポリシリコン膜108からなるゲート電極を形成する。なお、このゲート電極の形成に先立ち、リソグラフィー、イオン注入法などの公知の手法のうち効果的な方法によって、シリコン層103a、103bの近傍のポリシリコン膜108に導電性不純物を導入してもよいことは言うまでもない。
【0148】
次に、公知の手法のうち効果的な方法、例えばCVD法を用いてシリコン窒化膜を堆積し、その後、シリコン窒化膜を、RIEのような、公知の手法のうち効果的な方法により異方性エッチングし、このシリコン窒化膜を、ゲート電極108の側部に側壁112として残存させる(図44参照)。この際、異方性エッチングを十分に行い、Finとなるシリコン層103a、103bの側部には、シリコン窒化膜112を残存させない。また、シリコン層103a、103bの露出した側部(すなわち、チャネルとなる領域以外のシリコン層の側部)のゲート絶縁膜106は、例えば、HF溶液などにより除去する(図45参照)。なお、図44は、この段階の構造体の、図43に示す切断線A−Aで切断した断面図であり、図45は、この段階の構造体の斜視図を示す。
【0149】
以後、本実施形態の説明において示す、水平方向、或いは、垂直上部方向からの投影、断面、乃至、簡略図等には、このような、Fin−MOSFET構造体が仮定されていることを理解されたい。
【0150】
さらに、斜めからのイオン注入などにより、Finとなるシリコン層103a、103bのソース、ドレイン領域となる部分に、ゲート電極をマスクとして、導電性不純物、例えばn型不純物Asを導入する。その後、熱処理によりこの不純物をFinとなるシリコン層103a、103bの厚み方向に均等に拡散させると同時に、活性化させる。
【0151】
続いて、例えばスパッタ法などを用いて、膜厚が12nmのNi膜114を全面に堆積する。必要に応じて、この上にさらに、キャップ層となる金属物質、例えばTi、TiNのような物質を堆積形成しても良い。
【0152】
次いで、この半導体基板を、例えば450℃で30秒間、窒素中で急速熱処理し、Niと直接接しているシリコン層103a、103bとの間でシリサイド化反応を選択的に進行させる。未反応のNiは、硫酸と過酸化水素水の混合液に浸すことで選択的に除去する。このとき、上記Ti、TiNも同時に剥離されてしまう。従って、従来の自己整合的シリサイド形成法(SALICIDE法)においては、TiN膜はこの時点で一切残存していない。この結果、NiSi層114a、114bが、ソース/ドレイン領域のSiの{111}両側面に形成される(図46参照)。
【0153】
特に、Siの{111}側面上に形成されたNiSi層がNiSi(200)に配向することはいうまでも無い。また、このとき、ソース/ドレイン領域のSiの{111}両側面にシリサイドが形成されるので、NiSi層とソース/ドレイン領域の界面面積が、単位チャネル幅(Finの高さ)あたり、Fin構造を有しないMOSFETに比して2倍となり、NiSi層とソース/ドレイン領域のコンタクト抵抗が低減される。
【0154】
その後、例えば、スパッタ法、或いは、TiとNを含む有機化合物(例えば、TDMA)を利用したCVD法など、公知の技術のうちの効果的な方法を用いて、窒化Ti(TiN)膜を一面に被覆堆積し、しかるのち、RIE工程等により、Finとなるシリコン層103a、103bのSi{111}両側面上に形成されたNiSi層114a、114b上に選択的に残存させ、TiN膜からなる側壁116a、116bを形成する(図46参照)。不要なTiN膜は、リソグラフィー工程や硫酸と過酸化水素水の混合液によって剥離する。なお、図46は、Finとなるシリコン層103a、103bの延在する方向と直交する方向(例えば、図44に示す切断線B−Bで切断した平面)における、ソース領域またはドレイン領域の断面図である。
【0155】
このとき、RIE工程等により、Finとなるシリコン層103a、103bのSiの{111}両側面上に形成されたNiSi層114a、114bは、膜厚方向がNiSi(200)に配向しており、これからのNi原子のチャネル領域への拡散はない。よって電流遮断時のチャネルリークが抑止される。
【0156】
加えて、このNiSi層を挟むように、シリコン層103a、103bのSiの{111}両側面上にはTiN膜からなる側壁116a、116bが形成されているので、界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる結果、この後、500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部の発生が抑制される。このため、薄壁状のシリコン層のゲート端部に於いて、シリサイド層が、Finの厚み方向に肥厚し、チャネル電流が通過すべきシリコン層を不必要に狭窄することを回避できる。従って、NiSi層とソース/ドレイン領域の界面全体がコンタクトとして作用することになるので、コンタクト抵抗の上昇を免れる。
【0157】
また、熱処理によって、NiSi層が凝集し、部分的にNiSi層が消失、欠落することによる、NiSi層のシート抵抗の増加を阻止することができることも付言しておく。
【0158】
もちろん、薄いチャネルシリコン層を左右からゲート絶縁膜を介してゲート電極で挟みこむ、いわゆるダブルゲートSOI−MOSFET構造をとることで、シリコン層の左右界面がそれぞれチャネルとして機能するようになり、また左右のチャネル領域に形成される量子井戸の干渉効果によりシリコン層中の導伝帯の電子状態のエネルギー縮退が容易に解除され、即ち、高速の電子のみが誘起され、チャネル部の移動度が上昇し、MOSFETの駆動力は二倍以上の向上が見込まれることはいうまでもない(例えば、M.Shoji et al, J. Appl. Phys. p.2722, (1999)参照)。
【0159】
この後、第1実施形態の図16から図18までの工程を行うことにより、層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜にソース/ドレイン領域にいたるコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールを電気配線物質で充填し、金属配線の形成を経て、さらに、必要ならば、多層の配線を構築し、また実装工程などを経て、半導体装置を完成させる。
【0160】
かくして、ソース、ドレイン領域にSiの{111}側面を形成し、この面上にNiSi層を形成し、TiN膜を積層することで、ソース/ドレイン領域の表面がシリサイド化されて且つチャネルリークが低く抑えられるとともに熱的安定性が向上し、配線金属との良好な電気的接触が確保された、Fin−MOSFET構造が実現される。
【0161】
本実施形態では、ゲート電極としてポリシリコンを用いたが、これ以外に、金属性の材料を用いても良いことは言うまでもない。また、ポリシリコンからなるゲート電極の上部の窒化膜を適宜除去し、ポリシリコンゲート電極の上部、或いは、すべてをシリサイド化することも可能である。さらに、このシリサイド化は、ソース、ドレイン電極のシリサイド化工程と別途行うこともできるし、同時に行うこともできることは明らかであろう。
【0162】
また、本実施形態のソース/ドレイン電極のシリサイド化に先立って、ソース、ドレイン電極に追加的にシリコン層を選択成長させ、ソース、ドレイン電極の厚さを増加させることも、もちろん可能である。
【0163】
加えて、本実施形態では、2本のFin状シリコン層を持って、1つのMOSFETを構成したが、1本のFinによってMOSFETを実現できることは言うまでも無い。また、2本以上の複数のFinを持つMOSFET構造としても良い。更に、本実施形態では、単一極性のn−MOSFETの製造を例示したが、もちろん、p−MOSFETを同様に形成できることは明らかであり、C−MOSFET半導体装置の製造にも適用できることは明白である。
【0164】
その上、本実施形態では、Finの形状を一直線の直方体形状としているが、図47(a)、47(b)、47(c)に示すような形状としてもよい。すなわち、ソース/ドレイン領域の側壁の結晶方位がSiの<111>であるのに対して、チャネル面の方位を、図47(a)に示すように、Siの<111>方向、図47(b)に示すようにSiの<100>方位、図47(c)に示すように、Siの<110>方位と選択してもよい。なお、図47(a)、47(b)、47(c)は、Finの上面図を示している。
【0165】
また、本発明のソース、ドレイン電極のシリサイド化を、Fin構造だけでなく、従来のFin構造を有しないSOI−MOSFETに対しても同時に適応することも可能である。
【0166】
以上、複数の実施形態を持って詳述したように、本発明によれば、以下の長所が具現する。
【0167】
(1) 接合深さが最も浅い領域に、Siの{111}面上にNiSiの(100)面に配向したNiSi層を具備することで、Ni原子のSi基板への拡散を効果的に抑制できる。
【0168】
(2) 接合深さが最も浅い領域上のNiSi(100)に配向したNiSi層にはTiNが積層されているので、その界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げることができる。この結果、この後、500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部(シリサイドスパイク)の発生が抑制される。エクステンション領域上にNiSi層を形成しても接合リークの発生を完全に抑止できる。
【0169】
(3) 金属性物質(NiSiおよびTiN)がエクステンション領域上にまで形成されていることから、この部分の電気的抵抗が大きく低減することが可能となり、このため、素子に印加する電位が充分チャネル部分に伝達され、エクステンション領域でも、電流が界面抵抗の低いNiSi層に容易に流入できる様になるので、高駆動力のMOSFETが実現できる。
【0170】
(4) NiSi層は熱的に安定なので、リーク電流の発生を気にすることなく、500℃以上の熱処理で良好な電気的接続が達成できるようになる。
【0171】
(5) 加えて、耐熱性が向上したため、バリア層、エッチングストップ層に適した、緻密なシリコン窒化膜を形成することが可能である。
【0172】
更に、第1実施形態のように、Siの{100}面を主表面とする基板のエクステンション領域を含むソース/ドレイン領域上に、シリコン層を選択的に追加形成するに際して、
(6)ゲート電極に隣接した接合深さが最も浅い領域にSiの{111}面を有するシリコン層を自動的に形成できる。
【0173】
(7) シリコン層を選択的に追加形成するに際して、素子分離領域との境界部分でも、一部素子分離領域上に乗り上げるように横方向成長させるため、ソース/ドレイン電極が素子分離領域上に一部延在することになり、基板との結合容量が低減し、素子の高速動作が可能となる。
【0174】
また、第2実施形態のように、Siの{110}面を主表面とする基板のエクステンション領域を含むソース/ドレイン領域上に、シリコン層を選択的に追加形成し、Siの{111}面を壁面とする溝をするに際して、
(8) 炭素含有プラズマを利用して、炭素含有シリコン層を形成することで、HF溶液に対してエッチング耐性をもった炭素含有シリコン酸化膜をSiの{111}面を壁面とする溝の底部のみに選択的に形成できる。
【0175】
(9) 溝の幅を追加シリコン層厚以下にすれば、NiSi層とソース/ドレイン領域の界面面積が、ソース/ドレイン領域の水平面の面積を上回り、NiSi層とソース/ドレイン領域のコンタクト抵抗が低減される。
【0176】
(10) チャネル方向を[1−11]方向にそろえることで、p−MOSFETの電流を荷なう正孔の移動度を、チャネル部分に機械的応力を付与することで、効果的に向上させることが出来る。
【0177】
加えて、第3実施形態のように、DSB基板を構成するSi(100)面上にn−MOSFETを形成し、Si(110)面上にp−MOSFETを形成することで、それぞれの極性のMOSFETの移動度を同時に最大化しつつ、
(11) 水酸化カリウム(KOH)溶液によって、エクステンション領域を含むソース/ドレイン領域上に追加形成したシリコン層に、斜面がSiの{111}面を有するV字型の溝を簡便に形成することで、NiSi層とソース/ドレイン領域の界面面積を増大させ、NiSi層とソース/ドレイン領域のコンタクト抵抗が低減される。
【0178】
その上、本発明の第4実施形態のように、SOI基板上に、シリコン層を薄い板上に垂直加工し、このシリコン層の裏表を跨ぐゲート電極を形成するFin−MOSFET構造において、ソース/ドレイン領域にSiの{111}側面を形成し、この面上にNiSi層を形成し、TiN膜を積層することで、
(12) Siの{111}両側面上に形成されたNiSi層がNiSiの(100)面に配向し、これからのNi原子のチャネル領域への拡散の抑止によって電流遮断時のチャネルリークが抑止される。
【0179】
(13) 界面の熱力学的安定性が向上し、Ni原子の移動を妨げる結果、この後、500℃の熱処理を加えても、膜形状の変性、突出部の発生が抑制される。このため、薄壁状のシリコン層のゲート端部に於いて、シリサイド層が、Finの厚み方向に肥厚し、チャネル電流が通過すべきシリコン層を不必要に狭窄することを回避できる。従って、NiSi層とソース/ドレイン領域の界面全体がコンタクトとして作用する事になるので、コンタクト抵抗の上昇を免れる。
【0180】
(14) 熱処理によって、NiSi層が凝集し、部分的にNiSi層が消失、欠落することによる、NiSi層のシート抵抗の増加を阻止することが出来る。
【0181】
(15) ソース/ドレイン領域のSiの{111}両側面にシリサイドが形成されるので、NiSi層とソース/ドレイン領域のコンタクト抵抗が低減される。
【0182】
(16) 薄いチャネルシリコン層を左右からゲート絶縁膜を介してゲート電極ではさみこむいわゆるダブルゲートSOI−MOSFET構造をとることで、シリコン層の左右界面がそれぞれチャネルとして機能するようになり、また左右のチャネル領域に形成される量子井戸の干渉効果によりシリコン層中の導伝帯の電子状態のエネルギー縮退が容易に解除され、即ち、高速の電子のみが誘起され、チャネル部の移動度が上昇し、MOSFETの駆動力は二倍以上の向上が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】{100}面にNiSi層を形成した場合の接合リーク電流面密度分布を、ワイブルプロットとした図。
【図2】{110}面にNiSi層を形成した場合の接合リーク電流面密度分布を、ワイブルプロットとした図。
【図3】{111}面にNiSi層を形成した場合の接合リーク電流面密度分布を、ワイブルプロットとした図。
【図4】{111}面にNiSi層を形成した接合の発光を観察した結果を示す写真。
【図5】図4の発光部位のNiSi層の断面を透過型電子顕微鏡で観察した写真。
【図6A】Siの{111}面上に形成した、細線状の複数のNiSi層をSEMによって観察した結果を示す写真。
【図6B】図6AにおけるTiN膜が上部に形成されているコンタクトの断面図。
【図6C】図6AにおけるTiN膜が上部に形成されているコンタクト部分を拡大した写真。
【図7】Siの{100}面上に形成したNiSi層のSEMによって観察した結果を示す写真。
【図8】Siの{110}面上に形成したNiSi層のSEMによって観察した結果を示す写真。
【図9】Siの{100}面、{110}面、{111}面上に形成したNiSi層の結晶配向性をXRD分析によって調べた結果を示す図。
【図10】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図11】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図12】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図13】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図14】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図15】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図16】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図17】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図18】第1実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図19】第1実施形態の第1変形例による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図20】第1実施形態の第2変形例による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図21】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図22】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図23】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図24】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図25】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図26】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図27】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図28】第2実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図29】第2実施形態の第1変形例による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図30】第2実施形態の第2変形例による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図31】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図32】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図33】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図34】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図35】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図36】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す平面図。
【図37】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図38】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図39】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図40】第3実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図41】第4実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図42】第4実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図43】第4実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図44】第4実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図45】第4実施形態による半導体装置の製造工程を示す斜視図。
【図46】第4実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図47】第4実施形態による半導体装置のFinの上面図。
【符号の説明】
【0184】
2 (100)面を主表面とするp型単結晶シリコン半導体基板
4 素子分離領域
5 n−MOSFET形成予定領域
6 p−MOSFET形成予定領域
7 pウェル領域
8 nウェル領域
9a、9b ゲート絶縁膜
10a、10b ゲート電極
11a、11b n型エクステンション領域
12a、12b p型エクステンション領域
13a、13b シリコン窒化膜からなるゲート側壁
14a、14b 炭素膜からなるゲート側壁
15a、15b n型拡散層
16a、16b p型拡散層
17a、17b n型追加シリコン層
18a、18b p型追加シリコン層
21a、21b、21c NiSi層
22a、22b、22c NiSi層
23a、23b TiNからなるゲート側壁
24a、24b TiNからなるゲート側壁
26 層間絶縁膜
27a、27b コンタクトホール
28a、28b コンタクトホール
30 Ti層
32 配線金属
33 層間絶縁膜
34 配線
35 シリコン酸化膜
36 電荷蓄積膜
37 ブロック絶縁膜
38 制御ゲート電極
42 (110)面を主表面とするp型単結晶シリコン半導体基板
44a、44b 追加シリコン膜
45a、45b、45c 炭素含有シリコン層
46a、46b、46c 炭素含有シリコン層
47a、47b シリコン酸化膜
48 溝
49 炭素含有シリコン層
50 炭素含有シリコン酸化層
52a、52b、52c NiSi層
53a、53b、53c NiSi層
54a、54b TiNからなる側壁
56 層間絶縁膜
57a、57b コンタクトホール
58a、58b コンタクトホール
60 Ti層(バリアメタル)
62 W膜
64 層間絶縁膜
66 配線
68 シリコン酸化膜
72 (110)面を主表面とするp型単結晶シリコン半導体基板
73 (100)面を主表面とするp型単結晶シリコン半導体基板
74 (100)面を主表面とする単結晶シリコン半導体層
74b 単結晶化したシリコン半導体層
76 シリコン酸化膜
77 開口部
78 Siの{111}面
79 溝
80a、80b NiSi層
81 NiSi層
100 SOI基板
101 シリコン支持基板
102 シリコン酸化膜
103 単結晶シリコン層(SOI層)
103a、103b 直方体形状(板状)のシリコン層(Fin)
104 シリコン窒化膜
105a、105b エッチングマスク
106 ゲート絶縁膜
108 ポリシリコン膜(ゲート電極)
110 シリコン窒化膜
112 シリコン窒化膜
114a、114b NiSi層
116a、116b TiNからなる側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体領域を有するシリコン基板と、
前記第1半導体領域に離間して形成された第2導電型の第1ソース/ドレイン領域と、
前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記第1半導体領域上に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の側部に形成された第1側壁絶縁膜と、
前記第1ソース/ドレイン領域上に形成され、少なくとも{111}面となる表面を有する第1単結晶シリコン層と、
少なくとも前記第1単結晶シリコン層上に形成され、かつ前記第1側壁絶縁膜に接する部分を有し、前記部分と前記第1単結晶シリコン層との界面が前記第1単結晶シリコン層の{111}面である第1のNiSi層と、
前記第1のNiSi層に接する第1のTiN膜と、
を有する第1のMOSFETと、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1単結晶シリコン層は前記第1側壁絶縁膜に対向しかつ前記第1単結晶シリコン層の{111}面となる側面を有し、前記第1のTiN膜は前記側面と前記第1側壁絶縁膜との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体領域の上面がシリコンの{100}面であることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
第1導電型の第1半導体領域を有するシリコン基板と、
前記第1半導体領域に離間して形成された第2導電型の第1ソース/ドレイン領域
と、
前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記第1半導体領域上に形成
された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の側部に形成された第1側壁絶縁膜と、
前記第1ソース/ドレイン領域上に形成され、前記第1ソース/ドレイン領域に達する複数の第1溝が設けられ、前記第1溝の側面が{111}面となる第1単結晶シリコン層と、
前記第1単結晶シリコン層の、少なくとも{111}面上に形成された第1のNi
Si層と、
前記第1のNiSi層に接する第1のTiN膜と、
を有する第1のMOSFETと、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域の上面がシリコンの{110}面であることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1溝の底部に炭素含有シリコン酸化層が形成されていることを特徴とする請求項4または5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1単結晶シリコン層の{111}面上に形成された前記第1のNiSi層は単一或いは複数の単結晶体NiSiから構成されており、各単結晶体NiSiの(100)面は前記第1単結晶シリコン層の{111}面に平行であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1半導体領域を取り囲む素子分離領域を更に備え、前記第1単結晶シリコン層は前記素子分離領域上に延在していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1ソース/ドレイン領域は、前記ゲート電極に隣接して形成された第1拡散層領域と、前記ゲート電極に対して前記第1拡散層領域よりも遠くに形成されかつ前記第1拡散層領域よりも接合深さが深い第2の拡散層領域とを備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1ゲート電極は、前記第1絶縁膜上に形成された電荷蓄積膜と、前記電荷蓄積膜上に形成されたブロック絶縁膜と、前記ブロック絶縁膜上に形成された制御ゲート電極とを備えていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記シリコン基板は前記第1半導体領域と素子分離された第2導電型の第2半導体領域を更に備え、前記第2半導体領域に第2のMOSFETが形成され、前記第2のMOSFETは、
前記第2半導体領域に離間して形成された第1導電型の第2ソース/ドレイン領域と、
前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域との間の前記第2半導体領域上に形成された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極の側部に形成された第2側壁絶縁膜と、
前記第2ソース/ドレイン領域上に形成され、少なくとも{111}面となる表面を有する第2単結晶シリコン層と、
少なくとも前記第2単結晶シリコン層の{111}面上に形成され、かつ前記第2側壁絶縁膜に接する部分を有し、前記部分と前記第1単結晶シリコン層との界面が前記第1単結晶シリコン層の{111}面である第2のNiSi層と、
前記第2のNiSi層に接する第2のTiN膜と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記シリコン基板は前記第1半導体領域と素子分離された第2導電型の第2半導体領域を更に備え、前記第2半導体領域に第2のMOSFETが形成され、前記第2のMOSFETは、
前記第2半導体領域に離間して形成された第2ソース/ドレイン領域と、
前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域との間の前記第2半導体領域上に形成された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極の側部に形成された第2側壁絶縁膜と、
前記第2ソース/ドレイン領域上に形成され、少なくとも{111}面となる表面を有する第2単結晶シリコン層と、
少なくとも前記第2単結晶シリコン層の{111}面上に形成され、かつ前記第2側壁絶縁膜に接する部分を有し、前記部分と前記第1単結晶シリコン層との界面が前記第1単結晶シリコン層の{111}面である第2のNiSi層と、
前記第2のNiSi層に接する第2のTiN膜と、
を有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第2単結晶シリコン層の{111}面上に形成された前記第2のNiSi層は単一或いは複数の単結晶体NiSiから構成されており、各単結晶体NiSiの(100)面は前記第2単結晶シリコン層の{111}面に平行であることを特徴とする請求項11または12に記載の半導体装置。
【請求項14】
第1導電型の第1半導体領域を有するシリコン基板と、
前記第1半導体領域に離間して形成された第2導電型の第1ソース/ドレイン領域と、
前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記第1半導体領域上に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成された第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の側部に形成された第1側壁絶縁膜と、
前記第1ソース/ドレイン領域上に形成された第1単結晶シリコン層と、
前記第1単結晶シリコン層上に形成された第1のNiSi層と、
前記第1のNiSi層上に接するように形成された第1のTiN膜と、
を有する第1のMOSFETと、
を備え、
前記第1単結晶シリコン層と前記第1のNiSi層との界面が前記第1単結晶シリコン層の{111}面であることを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
前記第1のMOSFETはp−MOSFETであってかつ前記第1半導体領域の上面がシリコンの{110}面であり、
前記シリコン基板は、前記第1半導体領域と素子分離され上面がシリコンの{100}面であるp型の第2半導体領域を更に備え、前記第2半導体領域にn−MOSFETが形成され、前記n−MOSFETは、
前記第2半導体領域に離間して形成されたn型の第2ソース/ドレイン領域と、
前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域との間の前記第2半導体領域上に形成された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に形成された第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極の側部に形成された第2側壁絶縁膜と、
前記第2ソース/ドレイン領域上に形成され、少なくとも{111}面となる表面を有する第2単結晶シリコン層と、
少なくとも前記第2単結晶シリコン層上に形成され、かつ前記第2側壁絶縁膜に接する部分を有し、前記部分と前記第1単結晶シリコン層との界面が前記第1単結晶シリコン層の{111}面である第2のNiSi層と、
前記第2のNiSi層に接する第2のTiN膜と、
を有することを特徴とする請求項14記載の半導体装置。
【請求項16】
絶縁膜上に形成され、対向した一対の第1側面及び対向した一対の第2側面を有する実質的に板状の単結晶シリコン層のチャネル領域と、
前記絶縁膜上に形成され、対向した一対の第3側面及び対向した一対の第4側面を有する実質的に板状の単結晶シリコン層であって、前記第3側面が{111}面となり、前記第4側面のうちの一方の側面が前記チャネル領域の前記第1側面のうちの一方の側面に接続されたソース領域と、
前記絶縁膜上に形成され、対向した一対の第5側面及び対向した一対の第6側面を有する実質的に板状の単結晶シリコン層であって、前記第5側面が{111}面となり、前記第6側面のうちの一方の側面が前記チャネル領域の前記一対の第1側面のうちの他方の側面に接続されたドレイン領域と、
前記チャネル領域の前記一対の第2側面を覆う一対のゲート絶縁膜と、
前記一対の絶縁膜を介しての前記チャネル領域の側面を覆う一対のゲート電極と、
前記ソース/ドレイン領域の前記単結晶シリコン層の{111}面に形成されたNiSi層と、
前記NiSi層に接して形成されたTiN膜と、
を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
前記ソース/ドレイン領域の単結晶シリコン層の{111}面上に形成された前記NiSi層はNiSiの(100)面に配向し、このNiSiの(100)面は、前記単結晶シリコン層の{111}面に平行であることを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項18】
シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極をマスクにして前記シリコン基板にソース/ドレイン領域を形成する工程と、
前記ソース/ドレイン領域上にシリコン層を選択的に追加形成し、前記ゲート電極の側面に対向した前記シリコン層の露出した面がシリコンの{111}面となるようにする工程と、
前記追加形成されたシリコン層のシリコンの{111}面上にNiSi層を形成する工程と、
前記NiSi層を覆うTiN膜を形成する工程と、
を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
シリコン基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極をマスクにして前記シリコン基板にソース/ドレイン領域を形成する工程と、
前記ソース/ドレイン領域上に、シリコン層を堆積する工程と、
前記シリコン層の上面上に第1炭素含有シリコン層を形成する工程と、
前記シリコン層の、前記第1炭素含有シリコン層が形成されていない露出している面を熱酸化する工程と、
前記第1炭素含有シリコン層を除去する工程と、
前記シリコン層に、側面がシリコンの{111}面となる複数の溝を形成する工程と、
前記溝の側面にNiSi層を形成する工程と、
前記NiSi層を覆うTiN膜を形成する工程と、
を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記溝を設けられた前記シリコン層の、前記シリコン基板の面に平行な面上および前記溝の底部に第2炭素含有シリコン層を形成する工程と、
前記溝の底部以外の前記第2炭素含有シリコン層を、エッチング性イオンの斜め注入により除去する工程と、
熱酸化処理を行って前記第2炭素含有シリコン層を炭素含有シリコン酸化層に変える工程と、
前記炭素含有シリコン酸化層を前記溝の底部のみに残存させる工程と、
を更に備えていることを特徴とする請求項19記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−70971(P2009−70971A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236710(P2007−236710)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】